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特開2023-138371石油化学プロセスの異常変化予測及び故障早期警報方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138371
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】石油化学プロセスの異常変化予測及び故障早期警報方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
G05B23/02 302Z
G05B23/02 R
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028102
(22)【出願日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】202210257382.0
(32)【優先日】2022-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519080861
【氏名又は名称】広東石油化工学院
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】胡紹林
(72)【発明者】
【氏名】文成林
(72)【発明者】
【氏名】張清華
(72)【発明者】
【氏名】陳金鵬
(72)【発明者】
【氏名】柯▲よう▼
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA05
3C223BA01
3C223CC01
3C223DD01
3C223EB01
3C223FF04
3C223FF05
3C223FF06
3C223FF22
3C223FF24
3C223GG01
(57)【要約】
【課題】石油化学プロセスの異常変化予測及び故障早期警報方法を提供する。
【解決手段】本発明は、石油化学プロセスの異常変化予測及び故障早期警報方法を開示し、石油化学プロセスにおける状態異常変化のデータを収集し、状態異常変化のデータに基づいて動的モデリングを行い、目標動的システムモデルを取得することと、目標動的システムモデルに基づいて、石油化学プロセスの傾向解析と状態予測を行い、解析予測結果を取得することと、解析予測結果に基づいて故障予測と早期警報を行い、石油化学プロセスの故障予測を実現することとを含む。本発明は、石油化学プロセスにおける故障予測と早期警報を正確に実現し、予測に必要な精度、正確性及び許容性の要件を満たすことを確保することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油化学プロセスの異常変化予測及び故障早期警報方法であって、
石油化学プロセスにおける状態異常変化のデータを収集し、前記状態異常変化のデータに基づいて動的モデリングを行い、目標動的システムモデルを取得することと、
前記目標動的システムモデルに基づいて、石油化学プロセスの傾向解析と状態予測を行い、解析予測結果を取得することと、
前記解析予測結果に基づいて故障予測と早期警報を行い、石油化学プロセスの故障予測を実現することとを含むことを特徴とする石油化学プロセスの異常変化予測及び故障早期警報方法。
【請求項2】
収集された石油化学プロセスにおける状態異常変化のデータは、石油化学工業プロセスにおけるキーコンポーネント及びプロセスリンクにおける温度、圧力、流量、液面を含むことを特徴とする請求項1に記載の石油化学プロセスの異常変化予測及び故障早期警報方法。
【請求項3】
前記状態異常変化のデータに基づいて動的モデリングを行い、目標動的システムモデルを取得することは、連続変数の測定データに基づいて連続変数の動的モデルを確立することと、離散状態変化状況に基づいて、離散状態変数の動的モデルを確立することと、連続-離散混合システム変数に対して、混合変数の動的モデルを確立することとを含むことを特徴とする請求項1に記載の石油化学プロセスの異常変化予測及び故障早期警報方法。
【請求項4】
連続変数の測定データに基づいて連続変数の動的モデルを確立するプロセスは、連続変数の測定データを収集し、多変数時系列解析理論及び探索的データ解析方法により、定常プロセスの自己相関係数、偏相関係数等の統計指数及び相関係数のトランケーション、テーリングの統計的特性、並びに非定常プロセスの残差又は差分系列の自己相関係数、偏相関係数の統計指数及びトランケーション、テーリングの統計的特性に基づいて、連続変数の多因子回帰、Logistic回帰、自己回帰及び制御自己回帰の動的モデルを確立することとを含むことを特徴とする請求項3に記載の石油化学プロセスの異常変化予測及び故障早期警報方法。
【請求項5】
離散状態変化状況に基づいて、離散状態変数の動的モデルを確立することは、動作状況の切り替え、バルブスイッチの離散状態変化状況に対して、状態遷移を記述するPetriモデル、Markovチェーン、オートマトン、待ち行列理論及び符号有向グラフモデルにより、状態変化を記述し、離散状態変数の動的モデルを取得することを含むことを特徴とする請求項3に記載の石油化学プロセスの異常変化予測及び故障早期警報方法。
【請求項6】
混合変数の動的モデルを確立することは、連続-離散混合システム変数に対して、少なくとも長短記憶LSTMモデルを含む深層学習モデルを用いて、石油化学プロセスの動的モデリングを実現し、混合変数の動的モデルを取得することを含むことを特徴とする請求項3に記載の石油化学プロセスの異常変化予測及び故障早期警報方法。
【請求項7】
目標動的システムモデルを取得することはさらに、石油化学プロセスの履歴データに基づいて、初期目標動的システムモデルに対してチェック、検証及び確認を行い、確認結果に基づいて前記初期目標動的システムモデルを反復的に改善し、モデルを最適化し、前記目標動的システムモデルを取得することを含むことを特徴とする請求項1に記載の石油化学プロセスの異常変化予測及び故障早期警報方法。
【請求項8】
前記目標動的システムモデルに基づいて石油化学プロセスの傾向解析と状態予測を行うことは、それぞれ連続変数及び離散事象に基づいて指向性予測方法を確立することを含み、
連続変数に基づいて指向性予測方法を確立することは、連続変数の測定データに対して高忠実度抽出、モデル適応フィッティング、傾向予測によって連続変数パラメータ及び特徴量の変化傾向予測を行うことを含み、
離散事象に基づいて指向性予測方法を確立することは、離散状態変化状況に対して特徴抽出、状態モデリング、事象予測により、Petriネット、符号有向グラフSDG、グレイシステム及び隠れマルコフモデルHMMに基づいて傾向予測を行うことを含むことを特徴とする請求項1に記載の石油化学プロセスの異常変化予測及び故障早期警報方法。
【請求項9】
前記解析予測結果に基づいて故障予測と早期警報を行うことは、
二重中央値フィルタリング方法により、センサネットワーク監視データストリームに対してフォールトトレラントフィルタリング及びフォールトトレラント予報を行い、監視データ系列本体の変化成分の高忠実度情報を抽出し、フィルタリング及び予報の誤差分散を推定することと、
データストリームを監視するデータ変化システムを確立し、データの異常変化を検出及び診断し、安全パイプラインを超えた全てのデータポイントをマークし、異常値と故障兆候の分離を実現し、異常値をシステム故障と誤判断することを回避することと、
センサ装置と石油化学プロセスフロー、石油化学設備システムコンポーネントの間の接続関係のトポロジー図、及び設備コンポーネントとプロセスフローの間の結合関係のトポロジー図を描画することと、
接続行列及び結合行列を構築し、「多次元故障兆候ベクトル-接続行列-結合行列-故障判定ベクトル」の演算ロジック及びアルゴリズムを確立することと、
ブール演算により、又はルール推論エンジンを用いて、前記解析予測結果がパイプラインを超えたか否かを検出及び判断し、異常変化限界超過の兆候ベクトルを形成し、石油化学生産プロセスの故障予測を実現することとを含むことを特徴とする請求項1に記載の石油化学プロセスの異常変化予測及び故障早期警報方法。
【請求項10】
接続行列及び結合行列を構築し、「多次元故障兆候ベクトル-接続行列-結合行列-故障判定ベクトル」の演算ロジック及びアルゴリズムを確立することは、石油化学プロセスフローと石油化学装置との間の接続行列を構築し、石油化学装置と設備コンポーネントとの間の結合行列、石油化学装置とセンササンプリング設備との間の結合行列、及びセンサシステムの多次元サンプリングデータストリームの1つずつの検出結果により形成された兆候ベクトルを構築し、行列間及び行列とベクトルとの間のブール演算を設計することを含むことを特徴とする請求項1に記載の石油化学プロセスの異常変化予測及び故障早期警報方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、故障リスク予測の分野に属し、特に石油化学プロセスの異常変化予測及び故障早期警報方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、中国内外で石油化学工業事故が時々発生している。石油化学プロセスの安全性の問題は、そのプロセス全体が可燃性、爆発性、毒性、有害な材料を含み、ライフサイクル全体(生産、貯蔵、精製、輸送、廃棄)にいずれも安全性の問題があり、わずかな不注意で壊滅的な事故の発生を引き起こす可能性があるため、他の業界と異なる。したがって、故障予測と早期警報は非常に重要な価値を有し、社会の安定及び生命と財産の安全に直接関係する。石油化学プロセスにおける異常状況の検出及び故障予測をどのように実現するかは、現在解決すべき問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記問題を解決するために、本発明は以下の解決手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
石油化学プロセスの異常変化予測及び故障早期警報方法であって、
石油化学プロセスにおける状態異常変化のデータを収集し、前記状態異常変化のデータに基づいて動的モデリングを行い、目標動的システムモデルを取得することと、
前記目標動的システムモデルに基づいて、石油化学プロセスの傾向解析と状態予測を行い、解析予測結果を取得することと、
前記解析予測結果に基づいて故障予測と早期警報を行い、石油化学プロセスの故障予測を実現することとを含む。
【0005】
好ましくは、収集された石油化学プロセスにおける状態異常変化のデータは、石油化学工業プロセスにおけるキーコンポーネント及びプロセスリンクにおける温度、圧力、流量、液面を含む。
【0006】
好ましくは、前記状態異常変化のデータに基づいて動的モデリングを行い、目標動的システムモデルを取得することは、連続変数の測定データに基づいて連続変数の動的モデルを確立することと、離散状態変化状況に基づいて、離散状態変数の動的モデルを確立することと、連続-離散混合システム変数に対して、混合変数の動的モデルを確立することとを含む。
【0007】
好ましくは、連続変数の測定データに基づいて連続変数の動的モデルを確立するプロセスは、連続変数の測定データを収集し、多変数時系列解析理論及び探索的データ解析方法により、定常プロセスの自己相関係数、偏相関係数等の統計指数及び相関係数のトランケーション、テーリングの統計的特性、並びに非定常プロセスの残差又は差分系列の自己相関係数、偏相関係数の統計指数及びトランケーション、テーリングの統計的特性に基づいて、連続変数の多因子回帰、Logistic回帰、自己回帰(AR)及び制御自己回帰(CAR)の動的モデルを確立することとを含む。
【0008】
好ましくは、離散状態変化状況に基づいて、離散状態変数の動的モデルを確立することは、動作状況の切り替え、バルブスイッチの離散状態変化状況に対して、状態遷移を記述するPetriモデル、Markovチェーン、オートマトン、待ち行列理論及び符号有向グラフモデルにより、状態変化を記述し、離散状態変数の動的モデルを取得することを含む。
【0009】
好ましくは、混合変数の動的モデルを確立することは、連続-離散混合システム変数に対して、少なくとも長短記憶LSTMモデルを含む深層学習モデルを用いて、石油化学プロセスの動的モデリングを実現し、混合変数の動的モデルを取得することを含む。
【0010】
好ましくは、目標動的システムモデルを取得することはさらに、石油化学プロセスの履歴データに基づいて、初期目標動的システムモデルに対してチェック、検証及び確認を行い、確認結果に基づいて前記初期動的システムモデルを反復的に改善、モデルを最適化し、前記目標動的システムモデルを取得することを含む。
【0011】
好ましくは、前記目標動的システムモデルに基づいて石油化学プロセスの傾向解析と状態予測を行うことは、それぞれ連続変数及び離散事象に基づいて指向性予測方法を確立することを含み、
連続変数に基づいて指向性予測方法を確立することは、連続変数の測定データに対して高忠実度抽出、モデル適応フィッティング、傾向予測によって連続変数パラメータ及び特徴量の変化傾向予測を行うことを含み、
離散事象に基づいて指向性予測方法を確立することは、離散状態変化状況に対して特徴抽出、状態モデリング、事象予測により、Petriネット、符号有向グラフSDG、グレイシステム及び隠れマルコフモデルHMMに基づいて傾向予測を行うことを含む。
【0012】
好ましくは、前記解析予測結果に基づいて故障予測と早期警報を行うことは、
二重中央値フィルタリング方法により、センサネットワーク監視データストリームに対してフォールトトレラントフィルタリング及びフォールトトレラント予報を行い、監視データ系列本体の変化成分の高忠実度情報を抽出し、フィルタリング及び予報の誤差分散を推定することと、
データストリームを監視するデータ変化システムを確立し、データの異常変化を検出及び診断し、安全パイプラインを超えた全てのデータポイントをマークし、異常値と故障兆候の分離を実現し、異常値をシステム故障と誤判断することを回避することと、
センサ装置と石油化学プロセスフロー、石油化学設備システムコンポーネントの間の接続関係のトポロジー図、及び設備コンポーネントとプロセスフローの間の結合関係のトポロジー図を描画することと、
接続行列及び結合行列を構築し、「多次元故障兆候ベクトル-接続行列-結合行列-故障判定ベクトル」の演算ロジック及びアルゴリズムを確立することと、
ブール演算により、又はルール推論エンジンを用いて、前記解析予測結果がパイプラインを超えたか否かを検出及び判断し、異常変化限界超過の兆候ベクトルを形成し、石油化学生産プロセスの故障予測を実現することとを含む。
【0013】
好ましくは、接続行列及び結合行列を構築し、「多次元故障兆候ベクトル-接続行列-結合行列-故障判定ベクトル」の演算ロジック及びアルゴリズムを確立することは、石油化学プロセスフローと石油化学装置との間の接続行列を構築し、石油化学装置と設備コンポーネントとの間の結合行列、石油化学装置とセンササンプリング設備との間の結合行列、及びセンサシステムの多次元サンプリングデータストリームの1つずつの検出結果により形成された兆候ベクトルを構築し、行列間及び行列とベクトルとの間のブール演算を設計することを含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以下の技術的効果を開示する。
本発明が提供する石油化学プロセスの異常変化予測及び故障早期警報方法は、石油化学プロセスにおける状態異常変化のデータを収集することにより、状態異常変化のデータに対して動的モデリングを行い、目標動的システムモデルを取得する。連続変数と離散事象を区別し、指向性予測方法を確立し、対応する目標動的システムモデルを用いて傾向予測を行い、解析予測結果を取得する。前記解析予測結果に基づいて故障予測と早期警報を行い、石油化学プロセスの故障予測を実現する。石油化学プロセスにおける故障予測と早期警報を正確に実現し、予測に必要な精度、正確性及び許容性の要件を満たすことを確保することができる。
【0015】
本発明の実施例又は従来技術の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、実施例で使用する必要のある図面を簡単に説明し、明らかに、以下に説明する図面は本発明の一部の実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労働をすることなく、さらにこれらの図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例の方法フローチャートである。
図2】本発明の実施例の予測モデリングプロセスの概略図である。
図3】本発明の実施例のセンサ監視対象の傾向及びプロセス状態変化の予測図である。
図4】本発明の実施例のデータ駆動の石油化学プロセスの故障予測の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例における図面を参照して、本発明の実施例における技術的解決手段を明確かつ完全に説明し、明らかに、説明した実施例は本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をせずに取得した他の実施例は、いずれも本発明の技術的範囲に属する。
【0018】
本発明の上記目的、特徴及び利点をより分かりやすくするために、以下、図面及び具体的な実施形態を参照して、本発明をさらに詳しく説明する。
【0019】
図1に示すように、本発明は、石油化学プロセスの異常変化予測及び故障早期警報方法を提供し、
石油化学プロセスにおける状態異常変化のデータを収集し、前記状態異常変化のデータに基づいて動的モデリングを行い、目標動的システムモデルを取得することと、
前記目標動的システムモデルに基づいて、石油化学プロセスの傾向解析と状態予測を行い、解析予測結果を取得することと、
前記解析予測結果に基づいて故障予測と早期警報を行い、石油化学プロセスの故障予測を実現することとを含む。
【0020】
収集された石油化学プロセスにおける状態異常変化のデータは、石油化学工業プロセスにおけるキーコンポーネント及びプロセスリンクにおける温度、圧力、流量、液面を含む。
【0021】
前記状態異常変化のデータに基づいて動的モデリングを行い、目標動的システムモデルを取得することは、連続変数の測定データに基づいて連続変数の動的モデルを確立することと、離散状態変化状況に基づいて、離散状態変数の動的モデルを確立することと、連続-離散混合システム変数に対して、混合変数の動的モデルを確立することとを含む。
【0022】
連続変数の測定データに基づいて連続変数の動的モデルを確立するプロセスは、連続変数の測定データを収集し、多変数時系列解析理論及び探索的データ解析方法により、定常プロセスの自己相関係数、偏相関係数等の統計指数及び相関係数のトランケーション、テーリングの統計的特性、並びに非定常プロセスの残差又は差分系列の自己相関係数、偏相関係数の統計指数及びトランケーション、テーリングの統計的特性に基づいて、連続変数の多因子回帰、Logistic回帰、自己回帰(AR)及び制御自己回帰(CAR)の動的モデルを確立することとを含む。
【0023】
離散状態変化状況に基づいて、離散状態変数の動的モデルを確立することは、動作状況の切り替え、バルブスイッチの離散状態変化状況に対して、状態遷移を記述するPetriモデル、Markovチェーン、オートマトン、待ち行列理論及び符号有向グラフモデルにより、状態変化を記述し、離散状態変数の動的モデルを取得することを含む。
【0024】
混合変数の動的モデルを確立することは、連続-離散混合システム変数に対して、少なくとも長短記憶LSTMモデルを含む深層学習モデルを用いて、石油化学プロセスの動的モデリングを実現し、混合変数の動的モデルを取得することを含む。
【0025】
目標動的システムモデルを取得することはさらに、石油化学プロセスの履歴データに基づいて、初期目標動的システムモデルに対してチェック、検証及び確認を行い、確認結果に基づいて前記初期動的システムモデルを反復的に改善し、モデルを最適化し、前記目標動的システムモデルを取得することを含む。
【0026】
前記目標動的システムモデルに基づいて石油化学プロセスの傾向解析と状態予測を行うことは、それぞれ連続変数及び離散事象に基づいて指向性予測方法を確立することを含み、
連続変数に基づいて指向性予測方法を確立することは、連続変数の測定データに対して高忠実度抽出、モデル適応フィッティング、傾向予測によって連続変数パラメータ及び特徴量の変化傾向予測を行うことを含み、
離散事象に基づいて指向性予測方法を確立することは、離散状態変化状況に対して特徴抽出、状態モデリング、事象予測により、Petriネット、符号有向グラフSDG、グレイシステム及び隠れマルコフモデルHMMに基づいて傾向予測を行うことを含む。
【0027】
前記解析予測結果に基づいて故障予測と早期警報を行うことは、
二重中央値フィルタリング方法により、センサネットワーク監視データストリームに対してフォールトトレラントフィルタリング及びフォールトトレラント予報を行い、監視データ系列本体の変化成分の高忠実度情報を抽出し、フィルタリング及び予報の誤差分散を推定することと、
データストリームを監視するデータ変化システムを確立し、データの異常変化を検出及び診断し、安全パイプラインを超えた全てのデータポイントをマークし、異常値(WildValue)と故障兆候の分離を実現し、異常値をシステム故障と誤判断することを回避することと、
センサ装置と石油化学プロセスフロー、石油化学設備システムコンポーネントの間の接続関係のトポロジー図、及び設備コンポーネントとプロセスフローの間の結合関係のトポロジー図を描画することと、
接続行列及び結合行列を構築し、「多次元故障兆候ベクトル-接続行列-結合行列-故障判定ベクトル」の演算ロジック及びアルゴリズムを確立することと、
ブール演算により、又はルール推論エンジンを用いて、前記解析予測結果がパイプラインを超えたか否かを検出及び判断し、異常変化限界超過の兆候ベクトルを形成し、石油化学生産プロセスの故障予測を実現することとを含む。
【0028】
接続行列及び結合行列を構築し、「多次元故障兆候ベクトル-接続行列-結合行列-故障判定ベクトル」の演算ロジック及びアルゴリズムを確立することは、石油化学プロセスフローと石油化学装置との間の接続行列を構築し、石油化学装置と設備コンポーネントとの間の結合行列、石油化学装置とセンササンプリング設備との間の結合行列、及びセンサシステムの多次元サンプリングデータストリームの1つずつの検出結果により形成された兆候ベクトルを構築し、行列間及び行列とベクトルとの間のブール演算を設計することを含む。
【0029】
実施例1
【0030】
図1~4に示すように、本発明が提供する石油化学プロセスの異常変化予測及び故障早期警報方法は、関連解析と動的モデリング、異常変化傾向予測及び傾向予測に基づく故障予測と早期警報等の3つの重要な技術的リンクを含み、具体的なステップは以下のとおりである。
【0031】
ステップ1:プロセスにおける状態異常変化の動的モデリング
【0032】
図2に示すように、動的モデリングのステップは(1)~(4)を含む。
【0033】
(1)石油化学工業プロセスのキーコンポーネント及びプロセスリンクの温度、圧力、流量、液面等の典型的な連続変数の測定データを対象とし、多変数時系列解析(TSA)理論及び探索的データ解析(EDA)方法を用いて、定常プロセスの自己相関係数、偏相関係数等の統計指数及び相関係数のトランケーション、テーリング等の統計的特性、並びに非定常プロセスの残差又は差分系列の自己相関係数、偏相関係数等の統計指数及びトランケーション、テーリング等の統計的特性に基づいて、連続変数の多因子回帰、Logistic回帰、自己回帰(AR)及び制御自己回帰(CAR)のモデルを確立する。
【0034】
(2)動作状況の切り替え、バルブスイッチ等の離散状態変化状況に対して、状態遷移を記述するのに適したPetriモデル、Markovチェーン、オートマトン、待ち行列理論及び符号有向グラフモデルを用いて、状態変化を記述し、離散状態変数の動的モデリングを実現する。
【0035】
(3)連続-離散混合システムに対して、長短記憶LSTMモデル等の深層学習モデルを用いて、石油化学プロセスの動的モデリングを実現する。
【0036】
(4)石油化学プロセスの履歴データを利用してモデルに対してチェック、検証及び確認(VV&A)を行い、VV&A結果に基づいてモデルを反復的に改善し、モデルを最適化し、予測に必要な精度、正確性及び許容性の要件を満たすことを確保する。
【0037】
ステップ2:プロセスにおける状態異常変化の傾向予測
【0038】
図3に示すように、石油化学プロセスの故障安全の実際のニーズと組み合わせて、プロセスの傾向解析と状態予測(TA&SF:TendencyAnalysis&StatesForecasting)を行い、具体的には、連続変数TA&SFと離散事象TA&SFを区別し、指向性予測方法を確立する。
【0039】
(1)CVDS変化状況のTA&SFに対して、「高忠実度抽出→モデル適応フィッティング→傾向予測」方法を用いて、変数パラメータ/特徴量の変化傾向予測を行う。石油化学プロセスのセンサネットワークで取得した大部分のデータ及び注目する大部分の状態は、連続変数動的システム(CVDS)の変化状況に属し、それに適応したモデルを用いて傾向予測を行う。
【0040】
(2)DEDS変化状況のTA&SFに対して、「特徴抽出→状態モデリング→事象予測」の方法を用いて、不正確で、一致せず、不完全な情報を解析処理することにより、その中から隠れた知識を発見し、潜在的な法則を明らかにし、将来の変化を予測する。石油化学プロセスには離散事象動的システム(DEDS)に類似するいくつかの変化状況(例えば、状態の切り替え、閾値警報、反応器開始・終了等の動作状況情報)があり、異なる状況を区別し、Petriネット、符号有向グラフSDG、グレイシステム及び隠れマルコフモデルHMMを用いて傾向予測を行う。
【0041】
ステップ3:傾向予測に基づく故障予測と早期警報
【0042】
図4に示すように、具体的なステップは(1)~(5)を含む。
【0043】
(1)二重中央値フィルタリング方法を用いて、センサネットワーク監視データストリームに対してフォールトトレラントフィルタリング及びフォールトトレラント予報を行い、監視データ系列本体の変化成分の高忠実度情報を抽出し、フィルタリング及び予報の誤差分散を推定する。
【0044】
(2)データストリームを監視するデータ変化「安全パイプライン」を確立し、データの異常変化を検出及び診断し、安全パイプラインを超えた全てのデータポイントをマークし、異常値と故障兆候の分離を実現し、異常値をシステム故障と誤判断することを回避する。
【0045】
(3)センサ装置と石油化学プロセスフロー、石油化学設備システムコンポーネントの間の接続関係のトポロジー図、及び設備コンポーネントとプロセスフローの間の結合関係のトポロジー図を描画する。
【0046】
(4)接続行列及び結合行列を構築し、「多次元故障兆候ベクトル-接続行列-結合行列-故障判定ベクトル」の演算ロジック及びアルゴリズムを確立し、具体的には、石油化学プロセスフローと石油化学装置との間の接続行列(要素が0/1:1-接続、0-非接続)を構築し、石油化学装置と設備コンポーネントとの間の結合行列、石油化学装置とセンササンプリング設備との間の結合行列(要素が0/1:1-結合あり、0-結合なし)、及びセンサシステムの多次元サンプリングデータストリームの1つずつの検出結果により形成された兆候ベクトル(要素が0/1:0-正常、1-異常)を構築し、行列間及び行列とベクトルとの間のブール演算を設計する。
【0047】
【数1】

式中、∧及び∨はブール演算子である。
【0048】
(5)ブール演算により、又はルール推論エンジンを用いて、安全パイプラインの外挿と組み合わせて、傾向予測結果がパイプラインを超えたか否かを検出及び判断し、異常変化限界超過の兆候ベクトルを形成し、石油化学生産プロセスの故障予測を実現する。
【0049】
本発明が提供する石油化学プロセスの異常変化予測及び故障早期警報方法は、石油化学プロセスにおける状態異常変化のデータを収集することにより、状態異常変化のデータに対して動的モデリングを行い、目標動的システムモデルを取得する。連続変数と離散事象を区別し、指向性予測方法を確立し、対応する目標動的システムモデルを用いて傾向予測を行い、解析予測結果を取得する。前記解析予測結果に基づいて故障予測と早期警報を行い、石油化学プロセスの故障予測を実現する。石油化学プロセスにおける故障予測と早期警報を正確に実現し、予測に必要な精度、正確性及び許容性の要件を満たすことを確保することができる。
【0050】
以上に記載の実施例は本発明の好適な形態を説明したものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の設計精神から逸脱することなく、当業者が本発明の技術的解決手段に対して行った様々な変形及び改良は、いずれも本発明の特許請求の範囲によって決定される保護範囲内に属すべきである。
図1
図2
図3
図4