IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タキイ種苗株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ヒマワリ植物 図1
  • 特開-ヒマワリ植物 図2
  • 特開-ヒマワリ植物 図3
  • 特開-ヒマワリ植物 図4
  • 特開-ヒマワリ植物 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138382
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】ヒマワリ植物
(51)【国際特許分類】
   A01H 5/10 20180101AFI20230922BHJP
   A01H 6/14 20180101ALI20230922BHJP
【FI】
A01H5/10 ZNA
A01H6/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032214
(22)【出願日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2022042597
(32)【優先日】2022-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390028130
【氏名又は名称】タキイ種苗株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003557
【氏名又は名称】弁理士法人レクシード・テック
(72)【発明者】
【氏名】池口 英明
(72)【発明者】
【氏名】千藤 貴博
(72)【発明者】
【氏名】青池 仁美
【テーマコード(参考)】
2B030
【Fターム(参考)】
2B030AA02
2B030AB02
2B030AD11
2B030CA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新たなヒマワリ品種を提供する。
【解決手段】本開示のヒマワリ植物は、受託番号FERM BP-22444、受託番号FERM BP-22445、受託番号FERM BP-22446、受託番号FERM BP-22447、受託番号FERM BP-22448、受託番号FERM BP-22449、受託番号FERM BP-22450、または受託番号FERM BP-22451で特定されるヒマワリ植物の種子から生育される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号FERM BP-22444、受託番号FERM BP-22445、受託番号FERM BP-22446、受託番号FERM BP-22447、受託番号FERM BP-22448、受託番号FERM BP-22449、受託番号FERM BP-22450、または受託番号FERM BP-22451で特定される、ヒマワリ植物の種子。
【請求項2】
受託番号FERM BP-22444、受託番号FERM BP-22445、受託番号FERM BP-22446、受託番号FERM BP-22447、受託番号FERM BP-22448、受託番号FERM BP-22449、受託番号FERM BP-22450、または受託番号FERM BP-22451で特定されるヒマワリ植物の種子から生育された、ヒマワリ植物。
【請求項3】
請求項2に記載のヒマワリ植物の後代系統を含み、
前記後代系統の花茎は、上向き形質を示す、ヒマワリ植物。
【請求項4】
請求項2または3に記載のヒマワリ植物の雑種第1代系統を含む、ヒマワリ植物。
【請求項5】
請求項2または3に記載のヒマワリ植物の部分。
【請求項6】
請求項2または3に記載のヒマワリ植物の種子。
【請求項7】
請求項2または3に記載のヒマワリ植物を自殖させる自殖工程を含む、ヒマワリ植物の製造方法。
【請求項8】
請求項2または3に記載のヒマワリ植物と、他のヒマワリ植物とを交雑する交雑工程を含む、ヒマワリ植物の製造方法。
【請求項9】
種子を採種する採種工程を含む、請求項7に記載のヒマワリ植物の製造方法。
【請求項10】
種子を採種する採種工程を含む、請求項8に記載のヒマワリ植物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒマワリ植物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒマワリ植物(Helianthus annuus L.)は、キク科に属し、北アメリカ南西部を原産とする1年生または多年生の草本である。本種は油糧用として世界で広く栽培されているのみでなく、観賞用としても多くの品種が販売されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Vandenbrink, Joshua P et al. “Turning heads: the biology of solar tracking in sunflower.” Plant science : an international journal of experimental plant biology vol. 224 (2014): 20-6. doi:10.1016/j.plantsci.2014.04.006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒマワリ植物では、花茎の向きは、遺伝的形質により東向き方向となる(非特許文献1)。このため、営利生産現場では出荷時に出荷規格に合わせて複数本の切花を束ねる際に、花の向きをそろえ結束する必要があり、労力と時間を費やす必要がある。また、ヒマワリ植物の箱詰めにおいても、同様の理由から花の向きを揃える必要がある。
【0005】
フラワーアレンジメントの分野では、特に上向きで利用したい場面において、花首の屈曲をワイヤーで矯正する等の労力が必要である。このため、花茎の向きが上向きであるヒマワリ植物が求められている。
【0006】
そこで、新たなヒマワリ植物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本開示のヒマワリ植物は、受託番号FERM BP-22444、受託番号FERM BP-22445、受託番号FERM BP-22446、受託番号FERM BP-22447、受託番号FERM BP-22448、受託番号FERM BP-22449、受託番号FERM BP-22450、または受託番号FERM BP-22451で特定される種子から生育される。
【0008】
本開示のヒマワリ植物の製造方法は、前記本開示のヒマワリ植物を自殖させる自殖工程を含む。
【0009】
本開示のヒマワリ植物の製造方法は、前記本開示のヒマワリ植物と、他のヒマワリ植物とを交雑する交雑工程を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、新たなヒマワリ植物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、ヒマワリ植物の頭花の向きの例を示す模式図である。
図2図2は、ヒマワリ植物の花茎の傾き角度を示す模式図である。
図3図3は、ヒマワリ植物の花の成長ステージの例を示す模式図である。
図4図4は、各系統におけるヒマワリ植物の頭花の傾き角度を比較した写真である。
図5図5は、各系統におけるヒマワリ植物の頭花の傾き角度を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<定義>
本開示において、「ヒマワリ植物」は、キク科(Asteraceae)のキク亜科(Asteroideae)、ヒマワリ属(Helianthus)のヒマワリ種(Helianthus annuus)に属する植物を意味する。前記ヒマワリ植物は、例えば、近縁種または野生種との交雑種でもよい。前記近縁種は、例えば、Helianthus argophyllus(シロタエヒマワリ、Silverleaf Sunflower)、Helianthus debilis(ヒメヒマワリ、Cucumberleaf Sunflower)、Helianthus giganteus(ジャイアントサンフラワー)等があげられる。
【0013】
本明細書において、「栽培用ヒマワリ植物」、「栽培用ヒマワリ品種」、または「栽培用ヒマワリ」は、ヒトが栽培し、栽培学的に優れたヒマワリ植物またはその品種、育種系統または栽培品種を意味する。前記「栽培用ヒマワリ植物」、「栽培用ヒマワリ品種」、または「栽培用ヒマワリ」は、純系でもよいし、それらの交雑種、または他のHelianthus argophyllus種との、他のHelianthus debilis種との、または他のHelianthus giganteus種等の近縁種との交雑種であってもよい。
【0014】
本明細書において、「植物体」または「植物」は、植物全体を示す植物個体を意味する。
【0015】
本明細書において、「植物体の部分」または「植物の部分」は、植物個体の部分を意味する。
【0016】
本明細書において、「交雑」は、2つの親系統の交雑を意味する。前記交雑は、例えば、交配ということもできる。
【0017】
以下、本開示について例をあげて説明するが、本開示は以下の例等に限定されるものではなく、任意に変更して実施できる。また、本開示における各説明は、特に言及がない限り、互いに援用可能である。なお、本明細書において、「~」という表現を用いた場合、その前後の数値または物理値を含む意味で用いる。本明細書において、数値範囲において、複数の上限値および/または複数の下限値を例示する場合、前記数値範囲の上限値および下限値として、例示している任意の上限値および下限値を組合せ可能である。また、本明細書において、「Aおよび/またはB」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「AおよびBの双方」が含まれる。
【0018】
<ヒマワリ植物>
ある態様において、本開示は、花茎の向きが上向きであるヒマワリ植物を提供する。本開示のヒマワリ植物は、受託番号FERM BP-22444、受託番号FERM BP-22445、受託番号FERM BP-22446、受託番号FERM BP-22447、受託番号FERM BP-22448、受託番号FERM BP-22449、受託番号FERM BP-22450、または受託番号FERM BP-22451で特定される種子から生育されたヒマワリ植物またはその後代系統を含む。
【0019】
本開示のヒマワリ植物において、受託番号FERM BP-22444、受託番号FERM BP-22445、受託番号FERM BP-22446、受託番号FERM BP-22447、受託番号FERM BP-22448、受託番号FERM BP-22449、受託番号FERM BP-22450、または受託番号FERM BP-22451で特定される種子は、本開示のヒマワリ植物の代表的なサンプルを表す種子である。
【0020】
本開示は、前記ヒマワリ植物の部分であってもよい。前記植物の部分は、例えば、植物細胞、植物プロトプラスト、植物体を再生可能な植物細胞培養物または組織培養物、植物カルス、植物塊(plant clumps)、植物または植物の部分から単離した植物細胞、葉、花粉、胚、子葉、胚軸、根、根の先端(根端)、葯、雌しべ、花、子房(ovary)、胚珠、種子、果実、茎、苗等があげられる。前記植物個体の部分は、例えば、器官、組織、細胞または栄養繁殖体等があげられ、いずれでもよい。前記器官は、例えば、花弁、花冠、花、葉、種子、果実、茎、根等があげられる。前記組織は、例えば、前記器官の部分である。具体例として、前記植物個体の部分は、小胞子(microspore)、花、花芽、雌しべ、葯、花粉、子房(ovary)、胚、胚珠、胚軸、胚嚢、卵細胞、挿し木、根、根端、幹、茎、葉、葉柄、葉髄、子葉、細胞、分裂組織細胞(meristematic cell)、プロトプラスト、種子等があげられる。前記花粉は、成熟した花粉でも、未成熟の花粉でもよい。前記植物個体の部分は、例えば、植物のいずれの成長段階由来のものでもよく、例えば、発根前、発根後、苗、挿し木、成熟個体等に由来するものがあげられる。前記植物個体の部分は、例えば、一種類の器官、組織および/または細胞でもよいし、二種類以上の器官、組織および/または細胞でもよい。
【0021】
<寄託系統>
本開示のヒマワリ植物は、一例として、受託番号FERM BP-22444、受託番号FERM BP-22445、受託番号FERM BP-22446、受託番号FERM BP-22447、受託番号FERM BP-22448、受託番号FERM BP-22449、受託番号FERM BP-22450、または受託番号FERM BP-22451で寄託されたヒマワリ植物(寄託系統)またはその後代系統があげられる。寄託の情報を以下に示す。以下、Takii 23~30を、系統1~8ともいう。
寄託の種類:国際寄託
寄託機関名:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター
あて名:日本国 〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室
(系統1)
受託番号:FERM BP-22444
識別のための表示:Takii23
受領日:2022年2月10日
(系統2)
受託番号:FERM BP-22445
識別のための表示:Takii24
受領日:2022年2月10日
(系統3)
受託番号:FERM BP-22446
識別のための表示:Takii25
受領日:2022年2月10日
(系統4)
受託番号:FERM BP-22447
識別のための表示:Takii26
受領日:2022年2月10日
(系統5)
受託番号:FERM BP-22448
識別のための表示:Takii27
受領日:2022年2月10日
(系統6)
受託番号:FERM BP-22449
識別のための表示:Takii28
受領日:2022年2月10日
(系統7)
受託番号:FERM BP-22450
識別のための表示:Takii29
受領日:2022年2月10日
(系統8)
受託番号:FERM BP-22451
識別のための表示:Takii30
受領日:2022年2月10日
【0022】
前記寄託系統は、例えば、下記表1に示す形態学的および生理学的特徴を示す。下記表1において、前記形態学的および生理学的特徴は、2021年における日本における試作に基づいている。下記表1において、前記形態学的および生理学的特徴は、農林水産省(Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries of Japan、MAFF)により発行されている、ヒマワリ(Helianthus L.)の審査基準(2007年3月発行)に基づき評価している。また、下記表1における前記形態学的および生理学的特徴は、後述の基準に基づき評価している。なお、前記形態学的および生理学的特徴は、図1を参照できる。
【0023】
【表1】
【0024】
(形質番号20)
前記「舌状花の主な色」は、開花した舌状花の色を意味する。前記「舌状花の主な色」は、F3.2のヒマワリ植物の目視観察により評価できる。前記「舌状花の主な色」は、階級1(黄白)、階級2(淡黄)、階級3(黄)、階級4(橙黄)、階級5(橙)、階級6(紫)、階級7(赤茶)、および階級8(複色)を基準として評価できる。前記F3.2のヒマワリは、最も外側3列の筒状花が開葯し、見えるようになり、柱頭が展開する時期を意味する。
【0025】
(形質番号21)
前記「筒状花の色」は、開花した筒状花の色を意味する。前記「筒状花の色」は、F3.2のヒマワリ植物の目視観察により評価できる。前記「筒状花の色」は、階級1(黄)、階級2(橙)、および階級3(紫)を基準として評価できる。
【0026】
(形質番号24)
前記「筒状花の花粉の有無」は、筒状花の花粉の有無を意味する。前記「筒状花の花粉の有無」は、F3.2のヒマワリ植物の目視観察により評価できる。前記「筒状花の花粉の有無」は、階級1(無)および階級9(有)を基準として評価できる。
【0027】
(形質番号33)
前記「頭花の向き」は、頭花の向きを意味する。前記「頭花の向き」は、観賞用の品種の場合、F3.2のヒマワリ植物の目視観察により評価できる。前記「頭花の向き」は、図1を参照して、階級1(上向き)、階級2(斜上、標準品種:太陽)、階級3(横向き)、階級4(直立茎でやや下向き)、階級5(曲がった茎でやや下向き)、階級6(直立茎で下向き)、階級7(やや曲がった茎で下向き)、階級8(強く曲がった茎で下向き)、および階級9(巻き込み)を基準として評価できる。
【0028】
前記寄託系統は、花茎の向きが上向きを示す(以下、「上向き形質」という。)。前記花茎の向きは、対象のヒマワリ植物の栽培試験により測定できる。前記上向き形質の栽培試験は、下記栽培試験条件で実施できる。前記花茎の向きは、図2に示すように、対象のヒマワリ植物の花茎において、花の台座部の底面方向(A)に対して直交方向の線(B)と、茎の軸方向の線(C)とが交わる角度(花茎の傾き角度:D)として測定できる。前記花茎の傾き角度の測定は、下記測定条件で実施できる。そして、前記対象のヒマワリ植物の花茎の傾き角度(D)の中央値が、40°以下、35°以下、30°以下、25°以下、20°以下、15°以下、または10°以下の場合、前記対象のヒマワリ植物の花茎の向きは、上向きと評価できる。前記中央値は、例えば、20個体以上の対象のヒマワリ植物の花茎の傾き角度の測定値の中央値である。

(栽培試験条件)
栽培開始時期(播種時期):日本の一般地では4~5月(発芽温度:20~25℃、生育温度:15~30℃を満たす時期)
栽培環境:無加温ハウス
株間:20cm×20cm
条数:4条
播種:直播
潅水:発芽2週間後からは葉にしおれが見られた場合のみ潅水

(測定条件)
測定時期:図3に示すE~Fのステージ
測定対象:畝の中央部の花(各畝の両端3条分を除く個体)
【0029】
本開示において、「寄託系統の本質的にすべての生理学的および形態学的特徴」を有する植物は、同一環境で生育した場合に、寄託系統の主要な形質を有する植物であることを意味する。前記主要な形質は、前記上向き形質、前記形質番号20、21、24、および33の形質があげられる。前記主要な形質は、好ましくは、前記上向き形質があげられる。前記「寄託系統の本質的にすべての生理学的および形態学的特徴」を有する植物は、例えば、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、または1個の形質を除き、寄託系統と同じ形質を有する植物であってもよい、すなわち、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、または1個の形質が、寄託系統と異なる形質であってもよい。前記「寄託系統と異なる形質」は、前記寄託系統の主要な形質でもよいし、寄託系統の主要な形質以外の形質でもよいが、寄託系統の主要な形質以外の形質が好ましい。前記「寄託系統と異なる形質」は、例えば、後述の形質の導入および/または遺伝子の導入により実施できる。前記「寄託系統の本質的にすべての生理学的および形態学的特徴」を有する植物において、前記上向き形質ならびに前記形質番号20、21、24、および33の全ての形質は、前記寄託系統と同じでもよい。
【0030】
前記寄託系統は、例えば、下記表2に記載されている一塩基多型(SNP)を有する。前記表2において、括弧で示す塩基[N/N]が、一塩基多型を示し、Nが、the sunflower genome databaseにHa412HOv2.0(https://sunflowergenome.org/assembly-data/)で登録されているデータセット(ヒマワリ系統:HA412HO)のゲノム塩基配列)における塩基(REF=F)であり、Nが、前記データセットにおける塩基以外の塩基(ALT=V)である。前記データセットの解析は、例えば、下記参考文献1を参照できる。
参考文献1:Badouin H. et al., "The sunflower genome provides insights into oil metabolism, flowering and Asterid evolution" Nature, 2017, 546(7656): 148-152.
【0031】
【表2】
【0032】
<後代系統>
本開示のヒマワリ植物は、寄託系統の後代系統であってもよい。前記後代系統は、後代系統の植物個体でもよいし、後代系統の植物個体の部分または後代系統の種子でもよい。
【0033】
本開示において、「後代系統」または「後代ヒマワリ植物」(以下、あわせて「後代系統」という)は、寄託系統のヒマワリ植物またはその後代系統から得られる植物である。本開示において、前記後代系統は、前記寄託系統と、別の寄託系統もしくは他のヒマワリ植物との交雑、または前記寄託系統と野生のヒマワリ植物との交雑から得られた植物でもよい。また、前記後代系統は、前記寄託系統もしくはその後代系統を自殖および/または他家受粉することにより直接または間接的に取得するか、取得しうるか、または由来してもよいし、自殖および/または他家受粉などの伝統的な育種方法を使用して、寄託系統から得られた親系統に由来してもよい。前記後代系統は、例えば、自殖後代系統、第1世代ハイブリッドF1(雑種第1代系統、F1ハイブリッド)等があげられる。前記後代系統の取得において、前記寄託系統は、雌親として用いてもよいし、雄親として用いてもよいし、両親として用いてもよい。
【0034】
前記交雑は、「他家受粉」でもよいし、「自家受粉」でもよい。前記他家受粉は、異なる植物に由来する2つの配偶子が結合することによる受精を意味する。前記自家受粉は、花粉が、同じ植物の葯から柱頭に移動することを意味する。前記自家受粉は、例えば、自殖ということもできる。前記交雑は、伝統的な育種法の1つである戻し交雑を含んでもよい。
【0035】
前記「戻し交雑」は、伝統的な育種技術の1つであり、ブリーダーがハイブリッドの後代系統を繰り返し親系統の1つに戻し交雑し、植物または品種に形質を導入する方法である。前記導入する形質を含む植物は、例えば、ドナー植物ということできる。また、前記形質が導入される植物は、例えば、反復親(recurrent parent)ということができる。前記戻し交雑では、ドナー植物と反復親とを交雑することにより実施でき、これにより、第1世代ハイブリッドF1(雑種第1代系統、F1ハイブリッド)が取得できる。つぎに、前記形質を有する後代系統を、反復親と交雑する。そして、数世代の戻し交雑および/または自殖することで、前記反復親に、ドナー植物の形質を導入できる。
【0036】
本開示において、前記後代系統は、前記寄託系統由来の細胞培養物もしくは組織培養物、プロトプラストまたは植物個体の部分から再生してもよいし、前記寄託系統の自殖によって取得してもよいし、前記寄託系統の植物個体から種子を生産することによって取得してもよい。
【0037】
本開示において、前記「再生」は、細胞培養物、組織培養物またはプロトプラストからの植物の発生または栄養繁殖を意味する。
【0038】
前記「組織培養物」または「細胞培養物」は、同じまたは異なるタイプの単離された細胞を含む組成物であってもよいし、植物の部分に組織化される細胞の集合体であってもよい。ヒマワリ植物のさまざまな組織の組織培養物および前記組織培養物からの植物の再生方法は、よく知られており、例えば、下記参考文献2を参照できる。
参考文献2:E1onore Guilley et al., “Callus formation from isolated sunflower (Helianthus annuus) mesophyll protoplasts”,Plant Cell Reports (1989) 8:226-229
【0039】
前記後代系統は、所望の形質を有してもよい。前記後代系統は、例えば、同一の栽培条件で栽培した場合に、「寄託系統の本質的にすべての生理学的および形態学的特徴」を有してもよい。具体的には、前記後代系統は、寄託系統と共通する形質を有してもよい。具体例として、前記後代系統は、例えば、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、または13個以上の形質が、寄託系統の形質と一致する。前記後代系統は、寄託系統の主要な形質を有する植物であってもよい。前記主要な形質は、前記上向き形質、前記形質番号20、21、24、および33の形質があげられる。前記後代系統は、例えば、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、または1個の形質を除き、寄託系統と同じ形質を有する植物であってもよい、すなわち、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下または1個の形質が、寄託系統と異なる形質であってもよい。前記「寄託系統と異なる形質」は、前記寄託系統の主要な形質でもよいし、寄託系統の主要な形質以外の形質でもよいが、寄託系統の主要な形質以外の形質が好ましい。前記「寄託系統と異なる形質」は、例えば、後述の形質の導入および/または遺伝子の導入により実施できる。前記後代系統において、前記上向き形質、ならびに前記形質番号20、21、24、および33の形質は、寄託系統と同じでもよい。前記寄託系統と異なる形質は、例えば、病害抵抗性等があげられる。各形質は、例えば、各形質と関連する遺伝子座を有する公知の植物と交雑することにより、導入できる。
【0040】
前記後代系統は、前記寄託系統に由来する、少なくとも1セットの染色体を含む細胞を含んでもよい。前記後代系統は、例えば、そのアリル(対立遺伝子)の少なくとも6.25%、12.5%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%が、前記寄託系統由来でもよい。すなわち、前記後代系統は、前記寄託系統と、少なくとも約6.25%、12.5%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の遺伝的相補性(genetic complement)を有してもよい。
【0041】
前記「アリル(対立遺伝子)」は、1または複数の遺伝子のいずれかであり、そのすべてがヒマワリ植物の特性または形質に関連している。二倍体の細胞または生物では、所定の遺伝子の一対のアリルが、一対の相同染色体上の対応する遺伝子座を占める。
【0042】
前記遺伝的相補性は、例えば、分子マーカーまたは塩基配列を解読し、Takii23~30の分子マーカーまたは塩基配列と比較し、一致率を計算することにより算出できる。前記分子マーカーは、例えば、SNP(一塩基多型)マーカー、増幅断片長多型(AFLP)マーカー、制限酵素断片長多型(RFLP)マーカー、マイクロサテライトマーカー、sequence-characterized amplified region (SCAR)マーカー、cleaved amplified polymorphic sequence (CAPS)マーカー等があげられる。前記分子マーカーを用いたゲノムの解析方法は、よく知られており、広く公開されている(例えば、下記参考文献3)。前記塩基配列の解読は、例えば、前記後代系統から染色体を抽出し、前記染色体に対してシークエンスを行なうことにより実施できる。前記寄託系統由来のアリルの割合および遺伝的相補性の割合は、例えば、交雑回数により推定してもよい。この場合、前記割合は、寄託系統からの交雑回数から推定できる。具体例として、前記寄託系統からの交雑回数がn回の場合、前記割合は、例えば、(1/2)×100%と推定できる。
参考文献3:Talukder ZI, Gong L, Hulke BS, Pegadaraju V, Song Q, et al. (2014) A High-Density SNP Map of Sunflower Derived from RAD-Sequencing Facilitating Fine-Mapping of the Rust Resistance Gene R12. PLoS ONE 9(7):
【0043】
前記寄託系統由来のアリルおよび遺伝的相補性の割合は、例えば、複数の後代系統の割合の平均値であることが好ましい。前記複数は、例えば、統計学的な検討が可能な個体数であり、具体例として、200個体以上であり、好ましくは、200~1000個体である。
【0044】
前記後代系統は、前記寄託系統に由来するSNPを有してもよい。前記後代系統は、例えば、SNPと前記後代系統の形質とを組合せて評価することにより、由来する寄託系統を判定できる。前記寄託系統のSNPは、前記表2AおよびBに示すSNPである。前記後代系統は、例えば、そのSNPの少なくとも6.25%、12.5%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%が、前記寄託系統由来でもよい。すなわち、前記後代系統は、前記寄託系統と、少なくとも約6.25%、12.5%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のSNPが一致してもよい。本開示において、対象のヒマワリ植物が、例えば、50%、55%、60%、65%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%以上のSNPが、前記寄託系統のSNPと一致する場合、前記対象のヒマワリ植物は、前記寄託系統の後代系統であると判定(判別、推定、鑑定、または鑑別)できる。前記後代系統は、例えば、前記寄託系統のSNPのうち、前記寄託系統に由来するSNPを含むことが好ましい。具体例として、前記後代系統は、例えば、SNP1~3および4からなる群から選択された少なくとも1つのSNPを含む。前記後代系統は、例えば、前記SNP1~4および前記形質番号24の形質を組合せて評価することにより、由来する寄託系統を好適に判定できる。前記後代系統は、例えば、前記SNP1~4ならびに前記形質番号20、21、24、および33の形質を組合せて評価してもよい。この場合、前記後代系統は、例えば、前記SNP1~4ならびに前記形質番号20、21、24、および33の形質からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0045】
前記後代系統は、例えば、変異または導入遺伝子を有してもよい。この場合、前記後代系統は、例えば、1以上の形質が修飾されている。前記後代系統は、例えば、前記寄託系統またはその後代系統に対して、変異の導入または導入遺伝子の導入により、作製できる。前記変異は、人為的に導入されてもよいし、自然に導入されてもよい。前記変異は、例えば、化学物質誘導性の変異でもよいし、放射線誘導性の変異でもよい。また、前記変異は、例えば、分子生物学的手法またはゲノム編集技術により導入されてもよい(例えば、下記参考文献4)。前記導入遺伝子は、例えば、アグロバクテリウム属(Agrobacterium tumefaciens)を用いる方法等があげられる。
参考文献4:Yanfei Mao et.al., “Gene editing in plants: progress and challenges”, National Science Review, 2019, vol. 6, pp. 421-437
【0046】
前記1以上の形質は、例えば、病害抵抗性等があげられる。
【0047】
前記導入遺伝子(transgene)は、例えば、遺伝子工学的手法または伝統的な育種方法により、植物のゲノム内に導入された所望の遺伝子を意味する。前記導入遺伝子は、例えば、同一種に由来してもよいし、異なる種に由来してもよい。また、前記導入遺伝子は、由来の種と同一の塩基配列を含む遺伝子でもよいし、異なる塩基配列を含む遺伝子でもよい。後者の場合、異なる塩基配列は、例えば、前記同一の塩基配列に対して、コドン最適化、プロモーター等の転写制御因子の付加等を実施することにより調製できる。前記導入遺伝子は、翻訳領域と非翻訳領域とを含んでもよい。
【0048】
<半数体および倍加半数体植物>
本開示のヒマワリ植物は、前記寄託系統から取得された、取得可能な、または誘導された半数体植物および/または倍加半数体植物であってもよい。前記寄託系統の半数体植物および/または倍加半数体植物は、前記寄託系統の親系統を生産する方法において使用してもよい。一実施形態において、本開示は、半数体植物および/または倍加半数体植物の植物、半数体植物および/または倍加半数体植物の植物部分、または半数体植物および/または倍加半数体植物の種子を提供してもよい。
【0049】
前記倍加半数体植物は、半数体植物または細胞において染色体を倍加することにより製造できる(例えば、下記参考文献5)。具体例として、半数体である花粉を、所定の条件下で培養することで染色体が1nの小植物体(plantlets)を形成させる。つぎに、前記小植物体に対して、例えば、コルヒチン等の化学物質で処理することにより、染色体を倍加させる。これにより、前記小植物体の細胞は、染色体が2nになる(倍加半数体)。そして、前記処理後の小植物体を生育することで、前記倍加半数体植物およびその後代系統を取得することができる。
参考文献5: M. Todorova et al., “Doubled haploid production of sunflower (Helianthus annuus L.) through irradiated pollen-induced parthenogenesis”, Euphytica 97: 249-254, 1997.
【0050】
<ヒマワリ植物の製造方法>
別の態様において、本開示は、上向き形質を示すヒマワリ植物の製造方法を提供する。本開示のヒマワリ植物の製造方法は、前述のように、第1のヒマワリ植物と、第2のヒマワリ植物とを交雑する交雑工程を含み、前記第1のヒマワリ植物は、前記本開示のヒマワリ植物である。
【0051】
また、本開示のヒマワリ植物の製造方法は、前記本開示のヒマワリ植物を自殖(自家受粉)させる自殖工程を含む。本開示の製造方法は、前記本開示のヒマワリ植物を自殖させることが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。
【0052】
本開示の製造方法によれば、前記寄託系統の後代系統を製造できる。本開示の製造方法は、本開示のヒマワリ植物の説明を援用できる。
【0053】
本開示において、前記第1の親系統は、前記本開示のヒマワリ植物であり、例えば、前述の受託番号FERM BP-22444、受託番号FERM BP-22445、受託番号FERM BP-22446、受託番号FERM BP-22447、受託番号FERM BP-22448、受託番号FERM BP-22449、受託番号FERM BP-22450、または受託番号FERM BP-22451で寄託された種子から生育されたヒマワリ植物またはその後代系統である。
【0054】
前記第2の親系統は、特に制限されず、任意のヒマワリ植物を使用できる。前記第2の親系統は、例えば、前記第1の親系統と、分類学上、同じ種のヒマワリ植物でもよいし、異なる種のヒマワリ植物でもよい。前記第2の親系統は、例えば、前記寄託系統または後代系統でもよいし、その他のヒマワリ植物でもよい。
【0055】
本開示の製造方法は、例えば、前記交雑工程の後、さらに、前記交雑工程で得られた後代系統を育成する育成工程を含んでもよい。前記育成工程における育成条件は、例えば、ヒマワリ植物における一般的な育成条件があげられる。
【0056】
本開示のヒマワリ植物は、例えば、前記本開示の製造方法により得ることができる。
【0057】
<ヒマワリ植物の種子の生産方法>
別の態様において、本開示は、ヒマワリ種子の製造方法を提供する。本開示のヒマワリ種子の製造方法は、前記寄託系統のヒマワリ植物を、自殖または別のヒマワリ植物と交雑させる工程と、その結果得られる種子を任意で採種(収集または収穫)する工程とを含む。本開示の種子の製造方法は、ヒマワリ植物の種子を生育させることにより、植物、植物部分または種子を提供してもよい。
【0058】
本開示の種子の生産方法は、前記寄託系統に由来する種子の生産方法であってもよい。この場合、本開示の種子の生産方法は、(a)前記寄託系統の植物を別のヒマワリ植物と交雑して種子を生産する工程を含んでもよい。本開示の種子の生産方法は、さらに、(b)前記(a)工程の種子からヒマワリ植物を栽培して、前記寄託系統に由来するヒマワリ植物を生産する工程と、(c)前記(b)工程のヒマワリ植物を、自殖または別のヒマワリ植物と交雑し、前記寄託系統に由来する追加のヒマワリ植物を作出する工程とを含んでもよい。さらに、本開示の種子の生産方法は、(d)任意に、前記(b)工程および前記(c)工程を1回以上繰り返し、前記寄託系統に由来するさらなるヒマワリ植物を生産してもよい。この場合、前記(b)工程における前記(a)工程の種子から栽培したヒマワリ植物としては、前記(c)工程で得られた追加のヒマワリ植物を用いることができる。前記「1回以上」は、例えば、1回~10回、3回~7回、3回~5回である。本開示の種子の生産方法は、さらに、種子を収集または収穫する工程を含んでもよい。本開示の種子の生産方法は、上記の方法によって生産された種子、および種子を生育させることによって得られる植物または植物個体の部分を提供してもよい。
【0059】
<雑種ヒマワリ植物の生産方法>
別の態様において、本開示は、ハイブリッド(雑種)ヒマワリ植物を生産する方法を提供する。本開示の雑種植物の生産方法では、本開示のヒマワリ植物を別のヒマワリ植物と交雑させる工程を含む。本開示の雑種植物の生産方法では、交雑により得られた種子を収集または収穫する工程を含んでもよい。また、本開示の雑種植物の生産方法は、上記の方法により生産された種子および雑種植物または雑種植物個体の部分を提供してもよい。
【0060】
<新たな形質の導入方法>
別の態様において、本開示は、前記寄託系統に少なくとも1つの新しい特性または形質(以下、あわせて、「形質」という)を導入する方法を提供する。本開示の形質の導入方法は、例えば、新たな形質が導入されたヒマワリ植物の生産方法ということもできる。本開示の形質の導入方法は、例えば、(a)前記寄託系統の植物を、後代系統を作出するために、少なくとも1つの新しい形質を含むヒマワリ植物と交配させる工程と、(b)少なくとも1つの新しい形質を含む後代系統を選択する工程とを含む。本開示の形質の導入方法は、例えば、(c)前記後代系統を、前記寄託系統と交雑し、戻し交雑後代の種子を生産する工程と、(d)少なくとも1つの新しい形質と、前記寄託系統の本質的にすべての生理学的および形態学的特徴を含む戻し交雑後代を選択する工程とを含む。前記(b)および(d)工程において、新たな形質を有する後代系統の選抜は、例えば、前記形質を検出することにより実施してもよいし、前記形質と関連(連鎖)する遺伝子または分子マーカーを検出することにより実施してもよい。前記新たな形質は、例えば、病害抵抗性等があげられる。
【0061】
本開示の形質の導入方法は、(e)任意に、前記(c)工程および(d)工程を1回以上繰り返して、少なくとも1つの新しい形質を含むヒマワリ植物を生産してもよい。この場合、本開示の形質の導入方法は、前記(c)工程における前記後代系統としては、前記(d)工程で選択された戻し交雑後代を用いることができる。前記(e)工程で取得された、または取得可能なヒマワリ植物は、前記寄託系統の本質的にすべての生理学的および形態学的特徴のすべてを有してもよい。前記「本質的にすべての生理学的および形態学的特徴」は、前記後代系統の説明において、「後代系統」を「前記(e)工程で取得された、または取得可能なヒマワリ植物」に読み替えて、その説明を援用できる。前記「1回以上」は、例えば、1回~10回、3回~7回、3回~5回である。本開示の形質の導入方法は、種子を収集または収穫する工程を含んでもよい。本開示の形質の導入方法は、上記の方法により生産された種子、および種子を生育させることによって得られる植物または植物個体の部分を提供してもよい。
【0062】
<導入遺伝子の導入方法>
本開示は、少なくとも1つの新しい特性または形質を含む、寄託系統に由来する植物を生産する方法を提供する。本開示の導入遺伝子の導入方法は、例えば、新たな形質が導入されたヒマワリ植物の生産方法ということもできる。
【0063】
本開示の導入遺伝子の導入方法は、例えば、少なくとも1つの新しい形質を付与する突然変異または導入遺伝子を寄託系統の植物に導入する工程を含む。前記変異または導入遺伝子の導入は、例えば、前記後代系統における変異または導入遺伝子の導入と同様にして実施できる。前記導入工程により取得された、または取得可能なヒマワリ植物は、前記寄託系統の本質的にすべての生理学的および形態学的特徴のすべてを有してもよい。前記「本質的にすべての生理学的および形態学的特徴」は、前記後代系統の説明において、「後代系統」を「前記導入工程により取得された、または取得可能なヒマワリ植物」に読み替えて、その説明を援用できる。本開示の導入遺伝子の導入方法は、種子を収集または収穫する工程を含んでもよい。本開示の導入遺伝子の導入方法は、上記の方法により生産された種子、および種子を生育させることによって得られる植物または植物個体の部分を提供してもよい。前記新たな形質は、例えば、病害抵抗性等があげられる。
【0064】
<ヒマワリ植物の再生体および再生方法>
本開示は、寄託系統の細胞培養物、組織培養物、またはプロトプラストから再生されたヒマワリ植物(以下、「再生体」という)を提供する。本開示は、再生可能な細胞の細胞培養物もしくは組織培養物、または寄託系統のヒマワリ植物に由来するプロトプラストを提供してもよい。前記細胞培養物、前記組織培養物、またはプロトプラストは、葉、花粉、胚、子葉、胚軸、分裂組織細胞、根、根端、葯、花、種子または幹を含む組織に由来してもよい。
【0065】
本開示は、寄託系統のヒマワリ植物の増殖または繁殖の方法を提供する。前記寄託系統のヒマワリ植物の繁殖は、前記寄託系統のヒマワリ植物の栄養繁殖であってもよい。この場合、本開示のヒマワリ植物の再生方法は、例えば、(a)寄託系統の植物から増殖することができる組織を収集する工程と、(b)前記組織を培養して増殖したシュート(shoot)を取得する工程と、(c)前記増殖したシュートを発根させ、発根した小植物(plantlet)を取得する工程とを含む。本開示のヒマワリ植物の再生方法は、さらに、(d)任意に、発根した小植物から植物を生育させる工程を含んでもよい。前記栄養繁殖の方法は、例えば、下記参考文献6を参照できる。本開示の再生方法は、例えば、上記の方法により再生(生産)された小植物、植物または植物個体の部分を提供してもよい。前記植物は、前記寄託系統の本質的にすべての生理学的および形態学的特徴のすべてを有してもよい。前記「本質的にすべての生理学的および形態学的特徴」は、前記後代系統の説明において、「後代系統」を「再生された植物」に読み替えて、その説明を援用できる。
参考文献6:Ibrahim Ilker Ozyigit et al., “Genotype dependent callus induction and shoot regeneration in sunflower (Helianthus annuus L.)”, African Journal of Biotechnology Vol. 6 (13), pp. 1498-1502, 4 July, 2007
【0066】
<ヒマワリ植物の収穫物および加工品>
別の態様において、本開示は、寄託系統または後代系統の収穫物および/または加工品を提供する。前記収穫物は、植物全体または植物個体の部分であり、好ましくは、花、花および茎(花茎)、または種子を含む。
【0067】
前記収穫物が花である場合、前記収穫物は、前記花に加えて前記花の直下の茎を含んでもよい。収穫される茎の長さは、例えば、約40~100cm、約60~80cmである。前記収穫物が花茎である場合、前記花茎は、複数の花茎を束ねたものでもよい。
【0068】
前記加工品は、前記寄託系統または後代系統を処理した任意の製品が含まれる。前記処理は、特に制限されず、例えば、カット、スライス、粉砕(ground)、ピューレ、乾燥、缶詰、瓶詰め、洗浄、包装、冷凍および/または加熱処理等があげられる。前記寄託系統または後代系統において、前記加工品に用いられる植物または植物個体の部分は、例えば、花、花および茎、または種子である。前記加工品は、例えば、前記寄託系統または後代系統を洗浄し、包装したものでもよい。前記加工品は、例えば、任意のサイズまたは形状の容器に収納されてもよい。前記容器の具体例としては、バッグ、箱、カートン(carton)等があげられる。
【0069】
本開示は、1つまたは複数のヒマワリ植物を含む容器を提供してもよい。前記容器は、植物全体または植物個体の部分、好ましくは、花、または、花および茎を含む。
【0070】
本開示は、ヒマワリ植物を切花として製造する方法(切花の製造方法)を提供してもよい。本開示の切花の製造方法は、例えば、前記寄託系統または後代系統の植物全体または植物個体の部分、好ましくは、前記寄託系統または後代系統の花、または、花および茎を収集または収穫する工程を含む。
【0071】
<遺伝子型の決定方法>
本開示は、寄託系統または後代系統の遺伝子型を決定または検出する方法を提供する。本開示の遺伝子型の決定方法は、例えば、(a)寄託系統または後代系統から核酸サンプルを入手する工程と、(b)核酸サンプル中のゲノムを検出する工程とを含む。前記(a)工程において、前記寄託系統または後代系統からの核酸の調製方法は、組織から核酸を調製する一般的な核酸の調製方法を用いて実施できる。前記(b)工程では、例えば、前記核酸サンプル中のゲノムにおける多型および/またはアリルを検出する。前記多型および/またはアリルの検出は、例えば、SNP(一塩基多型)ジェノタイピング、増幅断片長多型検出(AFLP)、ゲノムDNAの制限酵素断片長多型識別(RFLP)、ゲノムDNAのsequence-characterized amplified region detection (SCAR)、ゲノムDNAのcleaved amplified polymorphic sequence detection (CAPS)、ゲノムDNAのrandom amplified polymorphic detection (RAPD)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、DNAシーケンス、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(allele specific oligonucleotide 、ASO)プローブ、またはDNAマイクロアレイ等を用いて実施できる。前記多型および/またはアリルの検出は、例えば、前記ゲノムの塩基配列をシークエンスすることにより実施してもよいし、前述のように、寄託系統のSNPを参照して実施してもよい。前記(b)工程では、前記ゲノムDNAにおける1つの多型および/またはアリルを検出してもよいし、2つ以上の多型および/またはアリルを検出してもよい。本開示の遺伝子型の決定方法は、多型および/またはアリル(対立遺伝子)の検出結果をコンピュータ可読媒体に保存する工程を含んでもよい。本開示は、そのような方法によって生成されたコンピュータ可読媒体を提供してもよい。
【0072】
本開示の遺伝子型の決定方法は、例えば、前記寄託系統または前記後代系統に代えて、任意のヒマワリ植物(対象ヒマワリ植物)に対して実施してもよい。この場合、本開示の遺伝子型の決定方法は、例えば、さらに、前記(b)工程の結果に基づき、前記対象ヒマワリ植物が、前記後代系統であるかを判定する工程を含んでもよい。前記判定は、例えば、判別、推定、鑑定、または鑑別ということもできる。前記判定は、例えば、前記(b)工程の結果と、前記寄託系統の遺伝子型との一致率に基づき判断できる。
【実施例0073】
以下、実施例を用いて本開示を詳細に説明するが、本開示は実施例に記載された態様に限定されるものではない。
【0074】
[実施例1]
寄託系統のヒマワリ植物を育種し、その特性および形質を確認した。
【0075】
(1)寄託系統の育種
2005年に、タキイ種苗社が保有する様々なヒマワリ系統から、上向き形質を有するヒマワリ系統(タキイ種苗社製)を選抜した。2006年に選抜された上向き形質を有するヒマワリ系統を、複数のヒマワリ系統(タキイ種苗社製)と交雑し、その後代系統が上向き性を有することを確認した。前記複数のヒマワリ系統は、上向き形質を有さず、種々の花色を持つヒマワリ系統を用いた。2007年以後、これら複数のヒマワリ系統との交雑で得られた後代系統を、それぞれ、交配および選抜を繰り返し実施した。前記選抜は、上向き形質および早生性等に基づき実施した。そして、2012~2016年において、前記後代系統では、それぞれ目標の形質が固定された固定系統と判断し、8系統の育成を終了とした。
【0076】
2015~2021年において、各固定系統について、タキイ種苗本社生産部にて、それぞれ播種して特性にばらつきがないことを確認した。これにより、各固定系統が、均一性および安定性を有していることを確認した。そして、各固定系統を集団採種することにより得られた種子を受託番号FERM BP-22444、受託番号FERM BP-22445、受託番号FERM BP-22446、受託番号FERM BP-22447、受託番号FERM BP-22448、受託番号FERM BP-22449、受託番号FERM BP-22450、および受託番号FERM BP-22451として、NITE-IPODに寄託した。
【0077】
(2)寄託系統の形質
各寄託系統の植物個体の特性および形質について、MAFFが発行しているヒマワリ変種の審査基準にしたがって評価した。具体的には、採種後3カ月以上経過した前記各寄託系統の種子を、試験場(滋賀県湖南市)において、2021年4月28日に播種し、無加温ハウス雨よけ栽培にて栽培した。前記栽培は、30g/mの肥料IB化成1号(全農10-10-10)と、4g/mの微量要素肥料F・T・E(マンガン19%、ホウ素9%、TOMATEC社製)とを混和し、底面80cmの畝を南北方向に立て、20cm×20cmの株間で4条栽培を行った。前記播種は、前記寄託系統の種子を直播で2cm程度の深さに播種し、前記播種後、圃場の土を用いて覆土した。前記播種および覆土の後、十分に潅水を行った。発芽2週間後以降、潅水は葉に萎れが見られた場合にのみ行った。前記栽培において、ヒマワリが倒れないように、草丈に応じて20cm×20cm目のフラワーネットを設置した。前記設置は、前記播種および覆土以降に行った。2021年6月20日から、筒状花が開花し始めたため、開花期F3.2(図3のFの時期)に各寄託系統の頭花の向きの評価を行った。前記評価は、水分条件および日照条件の差異を排除するために、畝の端の3列のヒマワリは評価せずに畝の中央部のヒマワリのみ評価を行った。前記評価は、形質番号20、21、24、および33の評価基準に基づき評価した。この結果を下記表3に示す。なお、形質番号33の頭花の向きは、前記図1を参照できる。各寄託系統の植物個体の栽培方法および評価方法と同様の方法で、比較対象のヒマワリ植物を栽培および評価した。
【0078】
【表3】
【0079】
(3)寄託系統の花茎の傾き角度
前記各寄託系統の植物個体の花茎の傾き角度について検討した。具体的には、前記実施例1(2)と同様の栽培方法で得た、前記各寄託系統の植物個体(20個体)および比較対象のヒマワリ植物(30個体)の花茎の傾き角度(D)を測定した。花茎の傾き角度の測定は、前述の上向き形質の栽培試験における栽培試験条件および測定条件に基づき測定した。開花期F3.2において、前記各寄託系統の植物個体および比較対象のヒマワリ植物を真横から撮影し、Image JのAngle機能を用いて、角度を測定した。前記測定は、水分条件および日照条件の差異を排除するために、畝の端の3列のヒマワリは評価せずに畝の中央部のヒマワリのみ測定を行った。これらの結果を、下記表4および表5、ならびに、図4および図5に示す。下記表4は、図4に示す各系統の代表的な個体の測定値である。
【0080】
【表4】
【0081】
図4および表4は、各系統におけるヒマワリ植物の花茎の傾き角度を比較した写真および表である。図4に示すように、系統1~8では、いずれの個体も花茎の傾き角度が、40°以下であり、花茎の向きは、上向きであった。他方、サマーサンリッチオレンジ45(オレンジ45)では、花茎の向き角度が、40°を超えており、花茎の向きは、上向きでなかった。
【0082】
【表5】
【0083】
図5および表5は、各系統におけるヒマワリ植物の花茎の傾き角度を比較した図および表である。図5において、縦軸は、花茎の傾き角度を示し、横軸は、ヒマワリ植物の系統を示す。図5および表5に示すように、系統3の花茎の傾き角度(D)は、平均約13.4°、中央値約12.0°を示し、比較対象のヒマワリ植物と比較して、花茎の向きが、上向きであることがわかった。また、他の系統においても、同様に、中央値は、20°以下であり、花茎の向きが、上向きであった。
【0084】
(3)寄託系統のSNPマーカー
寄託系統のヒマワリ植物および市販品種のヒマワリ植物について、全ゲノム領域にSNPを設計して、各SNPの分析を行った。下記表6のヒマワリ植物について、DNAを抽出し、前記表2に記載のSNPマーカーを用いて、SNPの分析を行った。前記表2において、括弧で示す塩基[N/N]が、一塩基多型を示し、Nが、the sunflower genome databaseにHa412HOv2.0(https://sunflowergenome.org/assembly-data/)で登録されているデータセットにおける塩基(REF=F)であり、Nが、前記データセットにおける塩基以外の塩基(ALT=V)である。これらの結果を、下記表6に示す。下記表6において、Fは、各SNPをリファレンスの多型のホモで保有することを示し、Vは、各SNPをN以外の多型をホモで保有することを示し、Hは、各SNPをリファレンスの多型とN以外の多型とをヘテロで保有することを示す。下記表6に示すように、SNP1~SNP4および花粉の有無を確認することで、寄託系統のヒマワリ植物と市販品種のヒマワリ植物との識別ができ、後代系統の由来を識別できることがわかった。
(タキイ種苗社製)
オレンジ45、サンリッチオレンジ、サンリッチバレンシア50
(Seedsense社製)
プロカットホワイトナイト、
(サカタのタネ社製)
ビンセントオレンジ、ビンセントネーブル、ビンセントクリアオレンジ
【0085】
【表6】
【0086】
以上、実施形態および実施例を参照して本開示を説明したが、本開示は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0087】
この出願は、2022年3月17日に出願された日本出願特願2022-042597を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【0088】
<付記>
上記の実施形態および実施例の一部または全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
<ヒマワリ植物>
(付記1)
受託番号FERM BP-22444、受託番号FERM BP-22445、受託番号FERM BP-22446、受託番号FERM BP-22447、受託番号FERM BP-22448、受託番号FERM BP-22449、受託番号FERM BP-22450、または受託番号FERM BP-22451で特定される、ヒマワリ植物の種子。
(付記2)
受託番号FERM BP-22444、受託番号FERM BP-22445、受託番号FERM BP-22446、受託番号FERM BP-22447、受託番号FERM BP-22448、受託番号FERM BP-22449、受託番号FERM BP-22450、または受託番号FERM BP-22451で特定されるヒマワリ植物の種子から生育された、ヒマワリ植物。
(付記3)
付記2に記載のヒマワリ植物の後代系統を含み、
前記後代系統の花茎は、上向き形質を示す、ヒマワリ植物。
(付記4)
付記2または3に記載のヒマワリ植物の雑種第1代系統を含む、ヒマワリ植物。
(付記5)
付記2から4のいずれかに記載のヒマワリ植物の部分。
(付記6)
付記2から4のいずれかに記載のヒマワリ植物の種子。
<ヒマワリ植物の製造方法>
(付記7)
付記2または3に記載のヒマワリ植物を自殖させる自殖工程を含む、ヒマワリ植物の製造方法。
(付記8)
付記2または3に記載のヒマワリ植物と、他のヒマワリ植物とを交雑する交雑工程を含む、ヒマワリ植物の製造方法。
(付記9)
種子を採種する採種工程を含む、付記7または8に記載のヒマワリ植物の製造方法。
<ヒマワリ植物>
(付記10)
ヒマワリ品種Takii23、Takii24、Takii25、Takii26、Takii27、Takii28、Takii29、またはTakii30の種子であり、
代表的なサンプルが、それぞれ、受託番号FERM BP-22444、受託番号FERM BP-22445、受託番号FERM BP-22446、受託番号FERM BP-22447、受託番号FERM BP-22448、受託番号FERM BP-22449、受託番号FERM BP-22450、または受託番号FERM BP-22451で寄託されているヒマワリ植物の種子である、種子。
(付記11)
ヒマワリ品種Takii23、Takii24、Takii25、Takii26、Takii27、Takii28、Takii29、またはTakii30のヒマワリ植物であり、
代表的なサンプルが、それぞれ、受託番号FERM BP-22444、受託番号FERM BP-22445、受託番号FERM BP-22446、受託番号FERM BP-22447、受託番号FERM BP-22448、受託番号FERM BP-22449、受託番号FERM BP-22450、または受託番号FERM BP-22451で寄託されているヒマワリ植物の種子である、ヒマワリ植物。
(付記12)
ヒマワリ植物またはその部分であり、
前記ヒマワリ植物またはその部分は、付記11に記載の対応する(由来する)ヒマワリ植物の本質的にすべての生理学的および形態学的特徴を有する、ヒマワリ植物またはその部分。
(付記13)
付記11に記載のヒマワリ植物の部分。
(付記14)
付記11記載のヒマワリ植物の後代ヒマワリ植物であり、
前記後代ヒマワリ植物は、付記11記載の対応する(由来する)ヒマワリ植物の少なくとも50%のアレルを含み、
前記後代ヒマワリ植物は、下記(1)または(2)の形質を有する、後代ヒマワリ植物:
(1)付記11記載の対応するヒマワリ植物が、Takii23またはTakii28である場合、筒状花の花粉が無い;
(2)付記11記載の対応するヒマワリ植物が、Takii24、Takii25、Takii26、Takii27、Takii29、またはTakii30である場合、筒状花の花粉が有る。
(付記15)
付記14記載のヒマワリ植物を生産する、種子。
(付記16)
付記11記載のヒマワリ植物の後代ヒマワリ植物であり、
前記後代ヒマワリ植物は、付記11記載の対応する(由来する)ヒマワリ植物の少なくとも50%のアレルを含み、
前記後代ヒマワリ植物は、SNP1~3および4からなる群から選択された少なくとも1つのSNPについて、前記対応するヒマワリ植物と同じSNPを有する、後代ヒマワリ植物。
(付記17)
付記16記載のヒマワリ植物を生産する、種子。
(付記18)
付記13、14、または16に記載の植物の部分であり、
前記植物の部分は、小胞子(microspore)、花粉、子房(ovary)、胚珠、胚嚢、卵細胞、挿し木、根、幹、葉、細胞またはプロトプラストを含む、植物の部分。
(付記19)
ヒマワリ種子の生産方法であり、
前記方法は、
付記11に記載のヒマワリ植物を、自殖または他のヒマワリ植物と交雑し、
得られた種子を採取(採種)することを含む、方法。
(付記20)
付記19に記載の方法により生産された、ヒマワリ植物由来のヒマワリ種子。
(付記21)
付記20に記載のヒマワリ種子を育てることにより生産された、ヒマワリ植物またはその部分。
(付記22)
付記21に記載のヒマワリ植物またはその部分であって、
前記ヒマワリ植物またはその部分は、代表的なサンプルが、受託番号FERM BP-22444、受託番号FERM BP-22445、受託番号FERM BP-22446、受託番号FERM BP-22447、受託番号FERM BP-22448、受託番号FERM BP-22449、受託番号FERM BP-22450、または受託番号FERM BP-22451で寄託されているヒマワリ植物の種子であり、かつ対応する(由来する)ヒマワリ品種Takii23、Takii24、Takii25、Takii26、Takii27、Takii28、Takii29、またはTakii30の本質的にすべての生理学的および形態学的特徴を有する、ヒマワリ植物またはその部分。
(付記23)
付記21に記載のヒマワリ植物またはその部分であって、
前記ヒマワリ植物またはその部分は、代表的なサンプルが、受託番号FERM BP-22444、受託番号FERM BP-22445、受託番号FERM BP-22446、受託番号FERM BP-22447、受託番号FERM BP-22448、受託番号FERM BP-22449、受託番号FERM BP-22450、または受託番号FERM BP-22451で寄託されているヒマワリ植物の種子である、ヒマワリ品種Takii23、Takii24、Takii25、Takii26、Takii27、Takii28、Takii29、またはTakii30の少なくとも50%のアレルを含み、
前記ヒマワリ植物またはその部分は、SNP1~3および4からなる群から選択された少なくとも1つのSNPについて、前記対応するヒマワリ植物と同じSNPを有する、ヒマワリ植物またはその部分。
(付記24)
付記11に記載のヒマワリ植物由来のヒマワリ植物の種子を生産する方法であって、
前記方法は、
(a)受託番号FERM BP-22444、受託番号FERM BP-22445、受託番号FERM BP-22446、受託番号FERM BP-22447、受託番号FERM BP-22448、受託番号FERM BP-22449、受託番号FERM BP-22450、または受託番号FERM BP-22451で寄託されているヒマワリ植物の種子である、ヒマワリ品種Takii23、Takii24、Takii25、Takii26、Takii27、Takii28、Takii29、またはTakii30を、別のヒマワリ植物と交雑し、種子を生産し、
(b)前記(a)工程の種子からヒマワリ植物を育て、ヒマワリ品種Takii23、Takii24、Takii25、Takii26、Takii27、Takii28、Takii29、またはTakii30由来のヒマワリ植物を生産し、
(c)前記(b)工程のヒマワリ植物を、自殖または別のヒマワリ植物と交雑し、ヒマワリ品種Takii23、Takii24、Takii25、Takii26、Takii27、Takii28、Takii29、またはTakii30由来の追加のヒマワリ植物を生産し、
(d)任意に(b)および(c)工程を1回以上繰り返し、ヒマワリ品種Takii23、Takii24、Takii25、Takii26、Takii27、Takii28、Takii29、またはTakii30由来のヒマワリ植物をさらに生産し、前記(b)工程におけるヒマワリ植物は、前記(c)工程の追加のヒマワリ植物から生育する、
ことを含む、方法。
(付記25)
付記24に記載の方法により生産される種子であり、
前記種子から育つヒマワリ植物の花茎は、上向き形質を示す、種子。
(付記26)
付記25に記載のヒマワリ植物の種子を育てることにより生産される、ヒマワリ植物。
(付記27)
付記24に記載の方法により生産される種子であり、
前記種子は、受託番号FERM BP-22444、受託番号FERM BP-22445、受託番号FERM BP-22446、受託番号FERM BP-22447、受託番号FERM BP-22448、受託番号FERM BP-22449、受託番号FERM BP-22450、または受託番号FERM BP-22451で寄託されているヒマワリ植物の種子である、ヒマワリ品種Takii23、Takii24、Takii25、Takii26、Takii27、Takii28、Takii29、またはTakii30の少なくとも50%のアレルを含み、
前記種子から育つヒマワリ植物は、SNP1~3および4からなる群から選択された少なくとも1つのSNPについて、前記対応するヒマワリ植物と同じSNPを有する、種子。
(付記28)
付記27に記載のヒマワリ植物の種子を育てることにより生産される、ヒマワリ植物。
(付記29)
付記11に記載のヒマワリ植物に、少なくとも1つの新たな形質を導入する方法であり、
前記方法は、
(a)受託番号FERM BP-22444、受託番号FERM BP-22445、受託番号FERM BP-22446、受託番号FERM BP-22447、受託番号FERM BP-22448、受託番号FERM BP-22449、受託番号FERM BP-22450、または受託番号FERM BP-22451で寄託されているヒマワリ植物の種子である、ヒマワリ品種Takii23、Takii24、Takii25、Takii26、Takii27、Takii28、Takii29、またはTakii30を、少なくとも1つの新たな形質を有するヒマワリ植物と交雑し、後代を生産し、
(b)少なくとも1つの新しい形質を含む後代を選抜し、
(c)前記後代を、ヒマワリ品種Takii23、Takii24、Takii25、Takii26、Takii27、Takii28、Takii29、またはTakii30と交雑し、戻し交雑後代を生産し、
(d)少なくとも1つの新しい形質を含み、対応する(由来する)ヒマワリ品種Takii23、Takii24、Takii25、Takii26、Takii27、Takii28、Takii29、またはTakii30の本質的にすべての生理学的および形態学的特徴を有する戻し交雑後代を選抜し、
(e)任意に、前記(c)工程および(d)工程を1回以上繰り返し、少なくとも1つの新しい形質を含み、対応する(由来する)ヒマワリ品種Takii23、Takii24、Takii25、Takii26、Takii27、Takii28、Takii29、またはTakii30の本質的にすべての生理学的および形態学的特徴を有するヒマワリ植物を生産し、前記(c)工程におけるヒマワリ植物は、前記(d)工程の選抜された戻し交雑後代である、
ことを含む、方法。
(付記30)
付記29に記載の方法により生産された、ヒマワリ植物。
(付記31)
付記11に記載のヒマワリ植物に、少なくとも1つの新たな形質を導入する方法であり、
前記方法は、
(a)受託番号FERM BP-22444、受託番号FERM BP-22445、受託番号FERM BP-22446、受託番号FERM BP-22447、受託番号FERM BP-22448、受託番号FERM BP-22449、受託番号FERM BP-22450、または受託番号FERM BP-22451で寄託されているヒマワリ植物の種子である、ヒマワリ品種Takii23、Takii24、Takii25、Takii26、Takii27、Takii28、Takii29、またはTakii30を、少なくとも1つの新たな形質を有するヒマワリ植物と交雑し、後代を生産し、
(b)少なくとも1つの新しい形質を含む後代を選抜し、
(c)前記後代を、ヒマワリ品種Takii23、Takii24、Takii25、Takii26、Takii27、Takii28、Takii29、またはTakii30と交雑し、戻し交雑後代を生産し、
(d)少なくとも1つの新しい形質を含み、対応する(由来する)ヒマワリ品種Takii23、Takii24、Takii25、Takii26、Takii27、Takii28、Takii29、またはTakii30の少なくとも50%のアレルを含み、且つSNP1~3および4からなる群から選択された少なくとも1つのSNPについて、前記対応するヒマワリ植物と同じSNPを有する戻し交雑後代を選抜し、
(e)任意に、前記(c)工程および(d)工程を1回以上繰り返し、少なくとも1つの新しい形質を含み、対応する(由来する)ヒマワリ品種Takii23、Takii24、Takii25、Takii26、Takii27、Takii28、Takii29、またはTakii30の少なくとも50%のアレルを含み、且つSNP1~3および4からなる群から選択された少なくとも1つのSNPについて、前記対応するヒマワリ植物と同じSNPを有するヒマワリ植物を生産し、前記(c)工程におけるヒマワリ植物は、前記(d)工程の選抜された戻し交雑後代である、
ことを含む、方法。
(付記32)
付記31に記載の方法により生産された、ヒマワリ植物。
(付記33)
少なくとも1つの新たな形質を含むヒマワリ品種Takii23、Takii24、Takii25、Takii26、Takii27、Takii28、Takii29、またはTakii30に由来するヒマワリ植物の生産方法であり、
前記方法は、
受託番号FERM BP-22444、受託番号FERM BP-22445、受託番号FERM BP-22446、受託番号FERM BP-22447、受託番号FERM BP-22448、受託番号FERM BP-22449、受託番号FERM BP-22450、または受託番号FERM BP-22451で寄託されているヒマワリ植物の種子である、ヒマワリ品種Takii23、Takii24、Takii25、Takii26、Takii27、Takii28、Takii29、またはTakii30に、少なくとも1つの形質を付与する突然変異または導入遺伝子を導入する、
ことを含む、方法。
(付記34)
付記33に記載の方法により生産された、ヒマワリ植物。
(付記35)
ヒマワリ植物の切花を生産する方法であり、
前記方法は、
付記11に記載のヒマワリ植物またはその後代系統の花または前記花および茎を収穫する、
ことを含む、方法。
(付記36)
付記11に記載のヒマワリ植物またはその後代系統の加工品であり、
前記加工品は、カット、スライス、粉砕(ground)、ピューレ、乾燥、缶詰、瓶詰め、洗浄、包装、冷凍および/または加熱処理された花、前記花および茎、または種子を含む、
加工品。
(付記37)
付記11に記載のヒマワリ植物またはその後代系統由来の再生可能な細胞またはプロトプラストの培養組織(tissue culture)。
(付記38)
付記37に記載の培養組織であり、
前記細胞またはプロトプラストは、葉、花粉、胚、子葉、胚軸、分裂組織細胞(meristematic cell)、根、根端、葯、花、種子または茎に由来する、
培養組織。
(付記39)
付記38に記載の培養組織から再生された、ヒマワリ植物。
(付記40)
付記39に記載のヒマワリ植物であり、
前記ヒマワリ植物は、受託番号FERM BP-22444、受託番号FERM BP-22445、受託番号FERM BP-22446、受託番号FERM BP-22447、受託番号FERM BP-22448、受託番号FERM BP-22449、受託番号FERM BP-22450、または受託番号FERM BP-22451で寄託されているヒマワリ植物の種子であり、かつ対応する(由来する)ヒマワリ品種Takii23、Takii24、Takii25、Takii26、Takii27、Takii28、Takii29、またはTakii30の本質的にすべての生理学的および形態学的特徴を有する、
ヒマワリ植物。
(付記41)
付記39に記載のヒマワリ植物であり、
前記ヒマワリ植物は、受託番号FERM BP-22444、受託番号FERM BP-22445、受託番号FERM BP-22446、受託番号FERM BP-22447、受託番号FERM BP-22448、受託番号FERM BP-22449、受託番号FERM BP-22450、または受託番号FERM BP-22451で寄託されているヒマワリ植物の種子であり、かつ対応する(由来する)ヒマワリ品種Takii23、Takii24、Takii25、Takii26、Takii27、Takii28、Takii29、またはTakii30の少なくとも50%のアレルを含み、且つSNP1~3および4からなる群から選択された少なくとも1つのSNPについて、前記対応するヒマワリ植物と同じSNPを有する、
ヒマワリ植物。
(付記42)
付記11に記載のヒマワリ植物を栄養繁殖する方法であり、
前記方法は、
(a)受託番号FERM BP-22444、受託番号FERM BP-22445、受託番号FERM BP-22446、受託番号FERM BP-22447、受託番号FERM BP-22448、受託番号FERM BP-22449、受託番号FERM BP-22450、または受託番号FERM BP-22451で寄託されているヒマワリ植物の種子である、ヒマワリ品種Takii23、Takii24、Takii25、Takii26、Takii27、Takii28、Takii29、またはTakii30のヒマワリ植物から繁殖可能な組織を回収し、
(b)前記組織を培養し、増殖したシュート(shoot)を取得し、
(c)前記増殖したシュートを発根させ、発根した小植物(plantlet)を取得し、
(d)任意に、前記発根した小植物から、植物を生育する、
ことを含む、方法。
(付記43)
付記42に記載の方法により生産された、ヒマワリ小植物または植物。
(付記44)
付記42に記載の方法により生産されるヒマワリ小植物または植物であり、
前記ヒマワリ小植物または植物は、受託番号FERM BP-22444、受託番号FERM BP-22445、受託番号FERM BP-22446、受託番号FERM BP-22447、受託番号FERM BP-22448、受託番号FERM BP-22449、受託番号FERM BP-22450、または受託番号FERM BP-22451で寄託されているヒマワリ植物の種子である、対応する(由来する)ヒマワリ品種Takii23、Takii24、Takii25、Takii26、Takii27、Takii28、Takii29、またはTakii30の本質的にすべての生理学的および形態学的特徴を有する、
ヒマワリ小植物または植物。
(付記45)
付記42に記載の方法により生産されるヒマワリ小植物または植物であり、
前記ヒマワリ小植物または植物は、受託番号FERM BP-22444、受託番号FERM BP-22445、受託番号FERM BP-22446、受託番号FERM BP-22447、受託番号FERM BP-22448、受託番号FERM BP-22449、受託番号FERM BP-22450、または受託番号FERM BP-22451で寄託されているヒマワリ植物の種子である、対応する(由来する)ヒマワリ品種Takii23、Takii24、Takii25、Takii26、Takii27、Takii28、Takii29、またはTakii30の少なくとも50%のアレルを含み、且つSNP1~3および4からなる群から選択された少なくとも1つのSNPについて、前記対応するヒマワリ植物と同じSNPを有する、
ヒマワリ小植物または植物。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上のように、本開示によれば、新たなヒマワリ植物を提供できる。このため、本開示は、例えば、育種等の農業分野において極めて有用である。
図1
図2
図3
図4
図5