IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミネベア株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-矯正装置および噛み合わせ矯正装置 図1
  • 特開-矯正装置および噛み合わせ矯正装置 図2
  • 特開-矯正装置および噛み合わせ矯正装置 図3
  • 特開-矯正装置および噛み合わせ矯正装置 図4
  • 特開-矯正装置および噛み合わせ矯正装置 図5
  • 特開-矯正装置および噛み合わせ矯正装置 図6
  • 特開-矯正装置および噛み合わせ矯正装置 図7
  • 特開-矯正装置および噛み合わせ矯正装置 図8
  • 特開-矯正装置および噛み合わせ矯正装置 図9
  • 特開-矯正装置および噛み合わせ矯正装置 図10
  • 特開-矯正装置および噛み合わせ矯正装置 図11
  • 特開-矯正装置および噛み合わせ矯正装置 図12
  • 特開-矯正装置および噛み合わせ矯正装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138396
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】矯正装置および噛み合わせ矯正装置
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/08 20060101AFI20230922BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20230922BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20230922BHJP
   A61C 19/05 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
A61C7/08
A61B5/11 300
G01L5/00 Z
A61C19/05 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034761
(22)【出願日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2022044670
(32)【優先日】2022-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】浅川 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】北村 厚
【テーマコード(参考)】
2F051
4C038
4C052
【Fターム(参考)】
2F051AA17
2F051AB03
2F051AB05
2F051AB06
2F051BA07
4C038VA04
4C038VB06
4C038VC20
4C052JJ01
4C052NN07
4C052NN16
(57)【要約】
【課題】ユーザの歯の咬合圧を適切な値に矯正する。
【解決手段】矯正装置は、ユーザの歯の咬合面に直接または間接的に装着され、咬合により生じる圧力を抵抗値として検出する1つ以上のひずみゲージと、前記ユーザの前記咬合面を覆う緩圧部材と、前記抵抗値に応じて前記緩圧部材の高さ、形状、大きさ、および厚さの少なくともいずれかを調整する調整部と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの歯の咬合面に直接または間接的に装着され、咬合により生じる圧力を抵抗値として検出する1つ以上のひずみゲージと、
前記ユーザの前記咬合面の少なくとも一部分を覆う緩圧部材と、
前記抵抗値に応じて前記緩圧部材の高さ、形状、大きさ、および厚さの少なくともいずれかを調整する調整部と、を備える、矯正装置。
【請求項2】
前記緩圧部材は、前記ユーザの歯の咬合面を覆うマウスピースであって、
前記調整部は、前記抵抗値に応じて前記マウスピースの高さ、形状、大きさ、および厚さの少なくともいずれかを調整する、請求項1に記載の矯正装置。
【請求項3】
前記緩圧部材は、前記ユーザの歯列の周囲に設置された、膨張および収縮が可能なバルーンであって、
前記調整部は、前記抵抗値に応じて前記バルーンを膨張または収縮させることによって、前記緩圧部材の高さ、形状、大きさ、および厚さの少なくともいずれかを調整する、請求項1に記載の矯正装置。
【請求項4】
前記調整部は、前記抵抗値が第1閾値より大きい場合、前記緩圧部材の高さ、大きさ、および厚さの少なくともいずれかが小さくなるように前記緩圧部材を調整する、請求項1~3のいずれか1項に記載の矯正装置。
【請求項5】
前記第1閾値は、前記ひずみゲージが装着されている歯の位置および/または種類に応じて異なる、請求項4に記載の矯正装置。
【請求項6】
前記調整部は、前記抵抗値が第2閾値未満である場合、前記緩圧部材の高さ、大きさ、および厚さの少なくともいずれかが大きくなるように前記緩圧部材を調整する、請求項1~5のいずれか1項に記載の矯正装置。
【請求項7】
前記第2閾値は、前記ひずみゲージが装着されている歯の位置および/または種類に応じて異なる、請求項6に記載の矯正装置。
【請求項8】
前記ひずみゲージは、Cr、CrN、及びCrNを含む膜から形成された抵抗体を有する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の矯正装置。
【請求項9】
ユーザの歯の咬合面に直接または間接的に装着され、咬合により生じる圧力を直接または間接的に検出する1つ以上の検出部と、
前記ユーザの前記咬合面の少なくとも一部分を覆う緩圧部材と、
前記検出部の検出値に応じて前記緩圧部材の高さ、形状、大きさ、および厚さの少なくともいずれかを調整する調整部と、を備える、矯正装置。
【請求項10】
前記緩圧部材は、前記ユーザの歯の咬合面を覆うマウスピースであって、
前記調整部は、前記検出値に応じて前記マウスピースの高さ、形状、大きさ、および厚さの少なくともいずれかを調整する、請求項9に記載の矯正装置。
【請求項11】
前記緩圧部材は、前記ユーザの歯列の周囲に設置された、膨張および収縮が可能なバルーンであって、
前記調整部は、前記検出値に応じて前記バルーンを膨張または収縮させることによって、前記緩圧部材の高さ、形状、大きさ、および厚さの少なくともいずれかを調整する、請求項9に記載の矯正装置。
【請求項12】
前記調整部は、前記検出値が第1閾値より大きい場合、前記緩圧部材の高さ、大きさ、および厚さの少なくともいずれかが小さくなるように前記緩圧部材を調整する、請求項9~11のいずれか1項に記載の矯正装置。
【請求項13】
前記第1閾値は、前記検出部が装着されている歯の位置および/または種類に応じて異なる、請求項12に記載の矯正装置。
【請求項14】
前記調整部は、前記検出値が第2閾値未満である場合、前記緩圧部材の高さ、大きさ、および厚さの少なくともいずれかが大きくなるように前記緩圧部材を調整する、請求項9~13のいずれか1項に記載の矯正装置。
【請求項15】
前記第2閾値は、前記検出部が装着されている歯の位置および/または種類に応じて異なる、請求項14に記載の矯正装置。
【請求項16】
前記検出部は、前記咬合により生じる圧力によって引き起こされる磁気変化を検出する検出素子を有する、請求項9~15のいずれか一項に記載の矯正装置。
【請求項17】
前記検出素子は磁性体を含み、
前記検出素子は、前記咬合により前記磁性体に圧力が加わったときの前記磁性体の磁化の強さの変化を検出する検出素子である、請求項16に記載の矯正装置。
【請求項18】
前記検出素子は、磁性膜で絶縁膜を挟んだ磁気トンネル接合の構造を含んでおり、
前記検出素子は、前記咬合により前記構造で発生する磁気変化を検出する検出素子である、請求項16に記載の矯正装置。
【請求項19】
前記検出部は半導体式のひずみゲージである、請求項9~15のいずれか一項に記載の矯正装置。
【請求項20】
前記検出部は静電容量式の圧力センサである、請求項9~15のいずれか一項に記載の矯正装置。
【請求項21】
前記検出部は光ファイバ式のひずみゲージである、請求項9~15のいずれか一項に記載の矯正装置。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項に記載の矯正装置を複数備えた、噛み合わせ矯正装置。
【請求項23】
ユーザの下歯の咬合面に直接または間接的に装着され、咬合により生じる圧力を抵抗値として検出する1つ以上のひずみゲージと、
前記ユーザの下顎を少なくとも含む顔側面を覆うバンドと、
前記抵抗値に応じて前記バンドの長さおよび/または締め付け力を調整するバンド調整部と、を備える、噛み合わせ矯正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、矯正装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
歯の噛み合わせを適切な状態に保つことは健康維持において重要である。ゆえに、従来から、歯の噛み合わせの状態を検査する技術が種々開発されている。例えば、特許文献1には、マウスピースに設けた圧力センサで咀嚼圧を測定するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-142242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のような検査システムが開発される一方、検査の結果を用いて噛み合わせの状態(例えば、咬合圧)を改善する装置も求められている。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みたものであり、ユーザの歯の咬合圧を適切な値に矯正することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る矯正装置は、ユーザの歯の咬合面に直接または間接的に装着され、咬合により生じる圧力を抵抗値として検出する1つ以上のひずみゲージと、前記ユーザの前記咬合面を覆う緩圧部材と、前記抵抗値に応じて前記緩圧部材の高さ、形状、大きさ、および厚さの少なくともいずれかを調整する調整部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、ユーザの歯の咬合圧を適切な値に矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態1に係る矯正装置の概略を示す図である。
図2】噛み合わせ矯正装置の要部構成を示すブロック図である。
図3】ひずみゲージごとの第1閾値および第2閾値を示す図である。
図4】噛み合わせ矯正装置の緩圧部材の厚さを調整した場合の一例を示す図である。
図5】ひずみゲージを例示する平面図である。
図6】ひずみゲージを例示する断面図である。
図7】ひずみゲージの他の例を示す断面図である。
図8】本発明の実施形態2に係る噛み合わせ矯正装置の概要を示す図である。
図9】実施形態3に係る噛み合わせ矯正装置の概要を示す図である。
図10】実施形態4に係るひずみゲージに含まれる検出素子の一例を示す平面図および断面図である。
図11】実施形態5に係るひずみゲージに含まれる検出素子の一例を示す斜視図、平面図、および断面図である。
図12】実施形態5に係るひずみゲージに含まれる検出素子の他の一例を示す斜視図、平面図、および断面図である。
図13】実施形態5に係るひずみゲージに含まれる検出素子の、更に他の一例を示す斜視図、平面図、および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。なお、以降の図面において、「右」「左」という用語は、図面上での左右を指すものとする。
【0010】
〔実施形態1〕
図1は、本実施形態に係る噛み合わせ矯正装置100の概要を示す図である。図1の(a)は噛み合わせ矯正装置100を口腔内から見た平面図であり、図1の(b)は噛み合わせ矯正装置100を側面から見た場合の斜視図である。
【0011】
本実施形態に係る噛み合わせ矯正装置100は、ユーザの下の歯列全体を覆う形状をしている。噛み合わせ矯正装置は、1つ以上のひずみゲージと、1つ以上のアクチュエータ(調整部)と、緩圧部材と、を含む。図1に示す噛み合わせ矯正装置100は、ひずみゲージ11A~11Hと、アクチュエータ12A~12Hと、緩圧部材13A~13Hを含んだマウスピース50である。なお、緩圧部材13A~13Hは、便宜上、それぞれ別個の部材としているが、緩圧部材13A~13Hは連続した1つの部材であってもよい。
【0012】
噛み合わせ矯正装置100は、ユーザの歯の咬合面にかかる圧力(すなわち、咬合圧)を適切な値に調整するための装置である。各部材の詳細な説明は後述するが、噛み合わせ矯正装置100は、各ひずみゲージが検出した咬合圧に応じて、当該ひずみゲージが装着されている部位の緩圧部材の高さ、形状、大きさ、および厚さの少なくともいずれかを調整することにより、咬合圧を適切な値に調整する。これにより、マウスピース50の各部に存在する緩圧部材を別個に調整することができ、マウスピース50による噛み合わせの矯正効果が向上する。
【0013】
なお、図1の例では、噛み合わせ矯正装置100は、ユーザの下の歯列全体を覆う形状をしているが、噛み合わせ矯正装置100の形状はこれに限られない。例えば、噛み合わせ矯正装置100は、1つ以上のひずみゲージと、1つ以上のアクチュエータと、1つ以上の緩圧部材とを含む部分用のマウスピースであってもよい。また、図1の例ではユーザの歯がすべてそろっている例を示しているが、噛み合わせ矯正装置100は、一部の歯が欠損しているユーザに対し用いることもできる。
【0014】
図2は、噛み合わせ矯正装置100の要部構成を示すブロック図である。噛み合わせ矯正装置100は、1つ以上の矯正ユニット(矯正装置)から成る。本実施形態に係る噛み合わせ矯正装置100は矯正ユニット1A~1Hを有し、矯正ユニット1A~1Hはそれぞれ、1つのひずみゲージと、当該ひずみゲージの装着位置に配置されている緩圧部材と、当該緩圧部材を調整するためのアクチュエータと、を含む。
【0015】
なお、図の見やすさのため、図2ではひずみゲージ11C~11G、アクチュエータ12C~12G、および、緩圧部材13C~13Gについては記載を省略している。しかしながら、これらの構成についても、ひずみゲージ11A、アクチュエータ12A、および緩圧部材13Aから成る矯正ユニット1Aと同様のユニットを成している。また、ひずみゲージ11Aとひずみゲージ11B~11Hは同様の構成であり、アクチュエータ12Aとアクチュエータ12B~12Hは同様の構成であり、緩圧部材13Aと緩圧部材13B~13Hも同様の構成である。
【0016】
ひずみゲージ11A~11Hは、本開示において咬合圧を検出する検出部の一例である。以下、ひずみゲージ11Aを例にとり、本実施形態に係るひずみゲージについて詳述する。ひずみゲージ11Aは、ユーザの歯の咬合面に直接または間接的に装着され、咬合により生じる圧力を抵抗値として検出する。例えば、ひずみゲージ11Aは歯科医療用の樹脂等を用いて歯に直接接着されてもよい。また例えば、ひずみゲージ11Aはマウスピース50に固定されており、マウスピース50を介して(すなわち、緩圧部材13Aを挟んで)、歯の咬合面に装着されることとしてもよい。この他、設置場所において咬合圧を検出可能であるならば、ひずみゲージ11Aの装着方法は特に限定されない。ひずみゲージ11Aの詳細な構成は後述する。ひずみゲージ11Aは、アクチュエータ12Aと配線で接続されており、検出した抵抗値をアクチュエータに出力する。もしくは、ひずみゲージ11Aは、アクチュエータ12Aと通信可能に接続されており、アクチュエータ12Aに検出した抵抗値を送信する構成であってもよい。
【0017】
アクチュエータ12Aは、ひずみゲージ11Aの抵抗値に応じて緩圧部材13Aの高さ、形状、大きさ、および厚さの少なくともいずれかを調整する調整部としてはたらく。アクチュエータ12Aは、制御部22と、モータ23と、を有する。なお、アクチュエータ12Aの配置位置は、以下で説明する処理を実行可能であれば、図1の位置に限定されない。
【0018】
制御部22は、アクチュエータ12Aを統括的に制御する。制御部22は、例えば、メモリと制御回路から成る。制御部22の各種機能は、制御回路によって予め規定された処理が実行されることによって実現される。制御部22の処理内容については後述する。
【0019】
モータ23は、制御部22の指示に応じて駆動することによって、緩圧部材13Aの高さ、形状、大きさ、および厚さの少なくともいずれかを調整する。モータ23による前記調整の方法は特に限定されない。例えば、モータ23が駆動することにより、緩圧部材13Aの底面に配置された板状の部材を持ち上げる機構、または緩圧部材13Aに取り付けられたギア等の機構が動作する。これにより、緩圧部材13Aの高さが調整される。なお、アクチュエータ12Aはモータ23ではなく、ピエゾ素子を備えていてもよい。この場合、ピエゾ素子が緩圧部材13Aの高さ、形状、大きさ、および厚さの少なくともいずれかを調整する。
【0020】
緩圧部材13Aは、ユーザの前記咬合面の少なくとも一部分を覆う部材であって、咬合圧を緩和するための部材である。緩圧部材13Aの材料は特に限定されないが、例えばシリコーン、プラスチック、ゴム、および樹脂等の材料を主として構成されてよい。緩圧部材13Aの少なくとも一部分は、モータ23又はピエゾ素子によってその高さ、形状、大きさ、および厚さの少なくともいずれかが調整される。
【0021】
なお、アクチュエータ12Aの制御部22はメモリを含んでいてもよい。もしくは、アクチュエータ12Aは制御部22と別個にメモリを有していてもよい。当該メモリには、制御部22が処理の際に参照する、第1閾値と第2閾値とが記憶されている。なお、本実施形態では、ユーザの下歯の一部分のみに矯正ユニットが設けられている構成とした。しかしながら、噛み合わせ矯正装置100は、ユーザの下歯全部および/または上歯全部に矯正ユニットを設ける構成としてもよい。例えば、ユーザの下歯および/または上歯の1本1本にひずみゲージを装着し、当該ひずみゲージに対応するアクチュエータを設け、そして、当該アクチュエータによって高さ、形状、大きさ、および厚さの少なくともいずれかが調整される緩圧部材が設けられていてもよい。
【0022】
図3は、ひずみゲージごとの第1閾値および第2閾値を示す図である。なお、図3では、噛み合わせ矯正装置100のすべてのひずみゲージに関する第1および第2閾値が記載されているが、第1閾値および第2閾値は、各矯正ユニットのアクチュエータのメモリに、当該矯正ユニットに含まれるひずみゲージの分だけ、記憶されていればよい。
【0023】
第1閾値は、咬合圧の適切な値の上限値を示している。第2閾値は、咬合圧の適切な値の下限値を示している。なお、第1閾値と第2閾値とが等しい値であってもよい。この場合、第1閾値(すなわち、第2閾値)は、最も適切な咬合圧の値(すなわち、咬合圧の理想値)を示しているといえる。
【0024】
図3に示す通り、第1閾値および第2閾値は、ひずみゲージ毎に異なっていてよい。より厳密に言えば、ひずみゲージが装着されている歯の位置および/または種類に応じて第1閾値および第2閾値が異なっていてもよい。ここで、「歯の位置」とは、ある歯が、ユーザの口腔内のどの位置(上の歯列か下の歯列か、および、何番目の歯か)に在るのかを意味する。また、「歯の種類」とは、前歯、犬歯、奥歯など、歯科医療における歯の分類を意味する。例えば、口腔の奥の歯に位置するひずみゲージほど、第1閾値および第2閾値が高く設定されていてよい。また、第1閾値および第2閾値は、ユーザが実際に噛み合わせ矯正装置100を装着したときの値に応じて調整されてもよい。
【0025】
次に、図4を用いて、アクチュエータ12Aによる緩圧部材13Aの調整方法について説明する。図4は、噛み合わせ矯正装置100の緩圧部材13A~13Hの厚さを調整した場合の一例を示している。
【0026】
アクチュエータ12Aの制御部22は、ひずみゲージ11Aから抵抗値を取得すると、当該抵抗値と、メモリに記憶されたひずみゲージ11Aの第1閾値、および第2閾値とをそれぞれ比較判定する。そして、制御部22は、比較の結果に応じて、モータ23を制御する。
【0027】
具体的には、取得した抵抗値が第1閾値より大きい場合、制御部22は、緩圧部材13Aの高さ、大きさ、および厚さの少なくともいずれかが小さくなるように、モータ23を稼働させる。モータ23は、制御部22の制御にしたがって動作する。これにより、緩圧部材13Aの高さ、大きさ、および厚さの少なくともいずれかが小さくなるよう調整される。
【0028】
取得した抵抗値、すなわち咬合圧が第1閾値より大きい場合とは、ひずみゲージ11Aの装着位置において、咬合圧が大きすぎていることを示している。例えば、ひずみゲージ11Aの装着位置の歯が隣接する歯よりも大きすぎたり、突出しすぎていたりすると、このような状況が起こり得る。この場合、緩圧部材13Aの高さ、大きさ、および厚さの少なくともいずれかが小さくなるよう調整することによって、咬合圧を小さくすることができる。
【0029】
これに対し、取得した抵抗値が第2閾値未満である場合、制御部22は、緩圧部材13Aの高さ、大きさ、および厚さの少なくともいずれかが大きくなるように、モータ23を稼働させる。モータ23は、制御部22の制御にしたがって動作する。これにより、緩圧部材13Aの高さ、大きさ、および厚さの少なくともいずれかが大きくなるよう調整される。
【0030】
取得した抵抗値、すなわち咬合圧が第2閾値未満である場合とは、ひずみゲージ11Aの装着位置において、咬合圧が小さすぎていることを示している。例えば、ひずみゲージ11Aの装着位置の歯と、対向している歯との間に隙間が空いている場合等に、このような状況が起こり得る。この場合、緩圧部材13Aの高さ、大きさ、および厚さの少なくともいずれかが大きくなるよう調整することによって、緩圧部材が対向する歯に当たるようにすることができ、よって咬合圧を大きくすることができる。
【0031】
以上のように、制御部22は、ひずみゲージ11Aの装着位置における咬合圧が適切な範囲(すなわち、第2閾値以上第1閾値以下)になるように、モータ23を制御する。これにより、ユーザの歯の咬合圧を適切な値に矯正することができる。
【0032】
なお、噛み合わせ矯正装置100は、各ひずみゲージの検出した抵抗値を、外部の記憶装置に送信して記憶させてもよい。この場合、噛み合わせ矯正装置100は、各矯正ユニットから各ひずみゲージの検出した抵抗値を収集し、記憶装置に送信するための通信部を有する。
【0033】
[ひずみゲージの構成]
次に図5図6を参照してひずみゲージ11Aの構成について説明する。図5は、本発明の実施形態1に係るひずみゲージ11Aを例示する平面図である。図6は、実施形態1に係るひずみゲージを例示する断面図であり、図5のA-A線に沿う断面を示している。なお、下記ではひずみゲージ11Aを用いて構成を説明するが、ひずみゲージ11B~11Hも同様の構成である。
【0034】
図5及び図6を参照すると、ひずみゲージ11Aは、基材121と、抵抗体122と、配線123、124と、電極125、126と、カバー層127とを有している。なお、図5では、便宜上、カバー層127の外縁のみを破線で示している。なお、カバー層127は、必要に応じて設けることができる。
【0035】
図5に示すひずみゲージ11Aは、基材121において構成要素がない側が、マウスピース50の咬合面又は歯の咬合面に貼り付けられる。この際、基材121の構成要素がない側が接着剤等でマウスピース50の咬合面又は対象者の奥歯の咬合面に貼り付けられる。又、図5の平面視とは、基材121の上面121Fに対する上側から下側への法線方向で対象物を視ることを指すものとする。そして、平面形状とは、前記法線方向で対象物を視たときの、対象物の形状を指すものとする。
【0036】
基材121は、抵抗体122等を形成するためのベース層となる部材である。基材121は可撓性を有する。基材121の厚さは特に限定されないが、例えば、5μm~500μm程度であってよい。なお、ひずみゲージ11Aの外面から受感部へのひずみの伝達性、および、環境変化に対する寸法安定性の観点から考えると、基材121の厚さは5μm~200μmの範囲内であることが好ましい。また、絶縁性の観点から考えると、基材121の厚さは10μm以上であることが好ましい。
【0037】
基材121は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、LCP(液晶ポリマー)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成される。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、かつ可撓性を有する部材を指す。
【0038】
基材121が絶縁樹脂フィルムから形成される場合、当該絶縁樹脂フィルムには、フィラーや不純物等が含まれていてもよい。例えば、基材121は、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成されてもよい。
【0039】
基材121の樹脂以外の材料としては、例えば、SiO、ZrO(YSZも含む)、Si、Si、Al(サファイヤも含む)、ZnO、ペロブスカイト系セラミックス(CaTiO、BaTiO)等の結晶性材料が挙げられる。又、前述の結晶性材料以外に非晶質のガラス等を基材121の材料としてもよい。又、基材121の材料として、アルミニウム、アルミニウム合金(ジュラルミン)、チタン等の金属を用いてもよい。金属を用いる場合、金属製の基材121上に絶縁膜が設けられる。
【0040】
抵抗体122は、基材121の上側に所定のパターンで形成された薄膜である。ひずみゲージ11Aにおいて、抵抗体122は、ひずみを受けて抵抗変化を生じる受感部である。抵抗体122は、基材121の上面121Fに直接形成されてもよいし、基材121の上面121Fに他の層を介して形成されてもよい。なお、図5では、便宜上、抵抗体122を濃い梨地模様で示している。
【0041】
抵抗体122は、複数の細長状部が長手方向を同一方向(図5の例では横方向)に向けて所定間隔で配置され、隣接する細長状部の端部が互い違いに連結されて、全体としてジグザグに折り返す構造である。複数の細長状部の長手方向がグリッド方向となり、グリッド方向と垂直な方向がグリッド幅方向(図5の例では縦方向)となる。
【0042】
抵抗体122において、図5中、最も上側に位置する細長状部の左側の端部は、上方向に屈曲し、抵抗体122のグリッド幅方向の一方の終端122eに達する。また、図5中、最も下側に位置する細長状部の左側の端部は、下方向に屈曲し、抵抗体122のグリッド方向の他方の終端122eに達する。各々の終端122e及び122eは、配線123、124を介して、電極125、126と電気的に接続されている。言い換えれば、配線123、124は、抵抗体122のグリッド幅方向の各々の終端122e及び122eと各々の電極125、126とを電気的に接続している。
【0043】
抵抗体122は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成することができる。すなわち、抵抗体122は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成することができる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu-Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0044】
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、及びCrN等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでいてもよい。
【0045】
抵抗体122の厚さは特に限定されないが、例えば、0.05μm~2μm程度であってよい。特に、抵抗体122の厚さが0.1μm以上である場合、抵抗体122を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する。また、抵抗体122の厚さが1μm以下である場合、抵抗体122を構成する膜の内部応力に起因する、(i)膜のクラックおよび(ii)膜の基材121からの反りが、低減される。
【0046】
横感度を生じ難くすることと、断線対策とを考慮すると、抵抗体122の幅は10μm以上100μm以下であることが好ましい。更に言えば、抵抗体122の幅は10μm以上70μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であるとより好ましい。
【0047】
例えば、抵抗体122がCr混相膜である場合、安定な結晶相であるα-Cr(アルファクロム)を主成分とすることで、ゲージ特性の安定性を向上させることができる。又例えば、抵抗体122がCr混相膜である場合、抵抗体122がα-Crを主成分とすることで、ひずみゲージ11Aのゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。ここで、「主成分」とは、抵抗体を構成する全物質の50重量%以上を占める成分のことを意味する。ゲージ特性を向上させるという観点から考えると、抵抗体122はα-Crを80重量%以上含むことが好ましい。更に言えば、同観点から考えると、抵抗体122はα-Crを90重量%以上含むことがより好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0048】
又、抵抗体122がCr混相膜である場合、Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNは20重量%以下であることが好ましい。Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNが20重量%以下であることで、ひずみゲージ11Aのゲージ率の低下を抑制することができる。
【0049】
又、Cr混相膜におけるCrNとCrNとの比率は、CrNとCrNの重量の合計に対し、CrNの割合が80重量%以上90重量%未満となるようにすることが好ましい。更に言えば、同比率は、CrNとCrNの重量の合計に対し、CrNの割合が90重量%以上95重量%未満となるようにすることがより好ましい。CrNは半導体的な性質を有する。そのため、前述のCrNの割合を90重量%以上95重量%未満とすることで、TCRの低下(負のTCR)が一層顕著となる。更に、前述のCrNの割合を90重量%以上95重量%未満とすることで抵抗体122のセラミックス化を低減することができるため、抵抗体122の脆性破壊が起こりにくくすることができる。
【0050】
一方で、CrNは化学的に安定であるという利点も有する。Cr混相膜にCrNをより多く含むことで、不安定なNが発生する可能性を低減することができるため、安定なひずみゲージを得ることができる。ここで「不安定なN」とは、Cr混相膜の膜中に存在し得る、微量のN2もしくは原子状のNのことを意味する。これらの不安定なNは、外的環境(例えば高温環境)によっては膜外へ抜け出ることがある。不安定なNが膜外へ抜け出るときに、Cr混相膜の膜応力が変化し得る。
【0051】
配線123、124は、基材121上に設けられている。配線123、124は、抵抗体122及び電極125、126と電気的に接続されている。配線123、124は、直線状には限定されず、任意のパターンとすることができる。また、配線123、124は、任意の幅及び任意の長さとすることができる。なお、図5では、便宜上、配線123、124を抵抗体122よりも薄い梨地模様で示している。
【0052】
電極125、126は、基材121上に設けられている。電極125、126は、配線123、124を介して抵抗体122と電気的に接続されている。電極125、126は、平面視において、配線123、124よりも拡幅して略矩形状に形成されている。電極125、126は、ひずみにより生じる抵抗体122の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極である。電極125、126には、例えば外部接続用のリード線(不図示)が接合される。電極125、126の上面に、銅等の抵抗の低い金属層、または、金等のはんだ付け性が良好な金属層を積層してもよい。抵抗体122と配線123、124と電極125、126とは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成することができる。なお、図5では、便宜上、電極125、126を配線123、124と同じ梨地模様で示している。
【0053】
カバー層127は、必要に応じて、基材121上に設けられる。カバー層127は、基材121の上面121Fに、抵抗体122及び配線123、124を被覆し電極125、126を露出するように設けられる。カバー層127の材料としては、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂が挙げられる。なお、カバー層127は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層127の厚さは、例えば、2μm~30μm程度とすることができる。カバー層127を設けることで、抵抗体122に機械的な損傷等が生じることを抑制することができる。又、カバー層127を設けることで、抵抗体122を、対象者の口腔内の食べ物や、飲料、唾液から保護することができる。
【0054】
ひずみゲージ11Aにおいて、抵抗体122の材料としてCr混相膜を用いた場合、高感度化かつ、小型化を実現することができる。例えば、従来のひずみゲージの出力が0.04mV/2V程度であったのに対して、抵抗体122の材料としてCr混相膜を用いた場合は0.3mV/2V以上の出力を得ることができる。また、従来のひずみゲージの大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)が3mm×3mm程度であったのに対して、抵抗体122の材料としてCr混相膜を用いた場合の大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)は0.3mm×0.3mm程度に小型化することができる。
【0055】
したがって、抵抗体122の材料としてCr混相膜を用いたひずみゲージ11Aは、マウスピース50又は対象者の歯に対してコンパクトに設置できるため、対象者の口腔内での違和感を低減できる。また、抵抗体122の材料としてCr混相膜を用いたひずみゲージ11Aは、従来のひずみゲージよりも高抵抗である。したがって、小型電池(不図示)でひずみゲージ11Aを駆動する場合に、低消費電力化が可能となるため、電池寿命を長くし、より長く、あるいは繰り返し、歯の加圧力を測定することができる。
【0056】
(ひずみゲージの他の積層構造)
図7は、実施形態1に係るひずみゲージの他の例を示す断面図である。図7は、抵抗体122、配線123、124、及び電極125、126の下地層として機能層128を設けた場合のひずみゲージ11A-1の断面形状を示している。
【0057】
機能層128の平面形状は、例えば抵抗体122、配線123、124、及び電極125、126の平面形状と略同一にパターニングされてよい。しかしながら、機能層128と抵抗体122、配線123、124、及び電極125、126との平面形状は略同一でなくてもよい。例えば、機能層128が絶縁材料から形成される場合には、機能層128を抵抗体122、配線123、124、及び電極125、126の平面形状と異なる形状にパターニングしてもよい。この場合、機能層128は例えば抵抗体122、配線123、124、及び電極125、126が形成されている領域にベタ状に形成されてもよい。或いは、機能層128は、基材121の上面全体にベタ状に形成されてもよい。
【0058】
本構成では、配線等の構成要素が形成された金属層の下層に機能層128を設けることにより、金属層の結晶成長を促進可能となり、安定な結晶相からなる金属層を作製することができる。その結果、ひずみゲージ11A-1において、ゲージ特性の安定性が向上する。又は、機能層を構成する材料が金属層に拡散することにより、ひずみゲージ11A-1において、ゲージ特性が向上する。
【0059】
図1および図2の例では、1つのひずみゲージに対応する1つのアクチュエータおよび1つの緩圧部材をまとめて1つの矯正ユニットであることとした。しかしながら、矯正ユニットの構造はこれに限定されない。例えば、複数のひずみゲージの抵抗値に基づいて、1つのアクチュエータが、1つの緩圧部材を調整してもよい。この場合、アクチュエータの制御部は、対応する複数のひずみセンサから受信した抵抗値を総合した抵抗値を、第1閾値および第2閾値と比較してよい。なお、ここで言う「総合して」とは、例えば複数の抵抗値の平均値、合計値、最大値、または最小値のいずれかを意味する。
【0060】
〔実施形態2〕
本開示に係る緩圧部材は、空気または液体等の出し入れによって膨張および収縮するバルーンであってもよい。以下、実施形態2に係る噛み合わせ矯正装置200について、図8を用いて説明する。なお、本実施形態において前述の実施形態1と同様の部分については説明を繰り返さない。これは、以降の実施形態についても同様である。
【0061】
図8は、噛み合わせ矯正装置200の概要を示す図である。図8の(a)は噛み合わせ矯正装置200を口腔内から見た平面図であり、図8の(b)は噛み合わせ矯正装置200を側面から見た場合の斜視図である。
【0062】
図8に示す通り、噛み合わせ矯正装置200は、緩圧部材13Iおよび13Jとして、空気または液体で膨らむバルーンを用いている点で、噛み合わせ矯正装置200と異なる。
【0063】
また、噛み合わせ矯正装置200は、ひずみゲージ11A~11Dと、アクチュエータ12Iと、緩圧部材13Iとで構成される矯正ユニット1Iが搭載された部分用マウスピース50Iと、ひずみゲージ11E~11Hと、アクチュエータ12Jと、緩圧部材13Jを含む矯正ユニット1Jが搭載された部分用マウスピース50Jを含んでいる。
【0064】
本実施形態に係るアクチュエータ12Iおよび12Jは、実施形態1に係るアクチュエータ12Aと同様の構成を有する。ただし、アクチュエータ12Iおよび12Jは、モータではなくエアポンプまたは液体ポンプを有し、アクチュエータ12Iおよび12Jの制御部は、これらエアポンプまたは液体ポンプを制御する。エアポンプは空気を緩圧部材13Iおよび13Jに出し入れする。また、液体ポンプは液体を緩圧部材13Iおよび13Jに出し入れする。以上の構成によれば、実施形態1に係る噛み合わせ矯正装置100と同様に、咬合圧を適切な値に保つことができる。
【0065】
〔実施形態3〕
本開示に係る噛み合わせ矯正装置は、1つ以上のひずみゲージと、ユーザの下顎を少なくとも含む顔側面を覆うバンドと、バンドの長さおよび/または締め付け力を調整するバンド調整部と、を有する構成であってもよい。以下、図9を用いて実施形態3に係る噛み合わせ矯正装置400について説明する。
【0066】
図9は、噛み合わせ矯正装置400の概要を示す図である。図9の(a)は噛み合わせ矯正装置400を口腔内から見た平面図であり、図9の(b)は噛み合わせ矯正装置400をユーザに装着した正面図である。
【0067】
図9に示す通り、噛み合わせ矯正装置400は、アクチュエータと緩圧部材を有していない点と、バンド調整部42と、バンド30を備える点について、実施形態1に係る噛み合わせ矯正装置100と異なる。
【0068】
噛み合わせ矯正装置400において、ひずみゲージ11A~11Hは、バンド調整部42と通信可能に接続されている。ひずみゲージ11A~11Hはそれぞれ咬合圧を抵抗値として検出し、バンド調整部42へ送信する。
【0069】
バンド調整部42は、アクチュエータ12Aと同様の構成を備えている。ただし、バンド調整部42の制御部22は、モータ23(またはピエゾ素子等)を制御することによって、バンド30の長さおよび/または締め付け力を調整する。例えば、バンド調整部42は、モータ23によってギアを動作させることによって、バンド30の巻き取りまたは巻き出しを行う。
【0070】
バンド30は、ユーザの下顎および額関節の部分を少なくとも含む顔側面を覆うバンドである。バンド30は、バンド調整部42によって長さおよび/または締め付け力を調整可能であれば、その材質、大きさ、および形状は特に限定されない。
【0071】
本実施形態に係る制御部22は、ひずみゲージ11A~11Dの出力する抵抗値を総合した値を、ユーザの左下の歯列の咬合圧として、当該左下の歯列の咬合圧を第1閾値および第2閾値と比較する。比較の結果、咬合圧が第1閾値より大きい場合、制御部22は、バンド30の左側の長さを長くする、またはバンド30の左側を緩めるようにモータ23を制御する。また、咬合圧が第2閾値未満である場合、制御部22は、バンド30の右側の長さを短くする、またはバンド30の右側を絞めるようにモータ23を制御する。また、制御部22は、ひずみゲージ11E~11Hの出力する抵抗値を総合した値をユーザの右下の歯列の咬合圧として、同様の処理を実行する。
【0072】
以上の処理によれば、噛み合わせ矯正装置400は、ユーザの歯の咬合圧を適切な値に保つことができる。
【0073】
<変形例1>
以上の例では、ユーザの下歯に装着する矯正装置(実施形態1および2)、および、ユーザの下歯の咬合圧に応じてバンドを調整する矯正装置(実施形態3)を説明した。しかしながら、実施形態1および2に係る矯正装置は、ユーザの上歯に装着されるものであってもよい。また、実施形態3に係る矯正装置は、ユーザの上歯に装着したひずみゲージが検出した咬合圧に応じてバンドを調整してもよい。
【0074】
<変形例2>
また、前記各実施形態に記載の矯正装置において、アクチュエータの制御部が実行している処理は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置で実行されてもよい。すなわち、矯正装置および噛み合わせ矯正装置は、ひずみゲージと、アクチュエータと、緩圧部材と、情報処理装置と、を少なくとも含むシステムで実現されてもよい。この場合、アクチュエータは制御部を備えていなくてもよい。またこの場合、各ひずみゲージの第1閾値および/または第2閾値は、情報処理装置の記憶部に記憶されていてよい。またこの場合、制御部22の一部又は全部は、ソフトウェアプログラムにより実現されてもよい。又、制御部22は、物理的に複数の装置等により構成されてもよい。例えば、制御部22は、マイクロプロセッサや、CPU(Central Processing Unit)等であり、制御部22の各種機能は、ROM等に記録されたプログラムがメインメモリに読み出されてCPUにより実行されることによって実現されてもよい。また、制御部22は、物理的に複数の装置等により構成されてもよい。また、制御部22は不揮発性のメモリを備えていてもよい。
【0075】
この変形例の場合、各実施形態において各ひずみゲージは通信部を備えており、抵抗値を情報処理装置に送信する。このとき、ひずみゲージは抵抗値とともに、自身を識別可能な情報も情報処理装置に送信する。情報処理装置は、受信した抵抗値を用いて、前記各実施形態における制御部と同様の処理を実行する。そして、情報処理装置は、アクチュエータに対し、各ひずみゲージの抵抗値についての処理結果を、適切なアクチュエータに送信する。ここで、適切なアクチュエータとは、各ひずみゲージに対応するアクチュエータ(例えば、ひずみゲージ11Aの場合、アクチュエータ12A)である。これにより、アクチュエータは緩圧部材またはバンドを前述の各実施形態の場合と同様に調整することができる。
【0076】
[実施形態4]
上述した各実施形態およびその変形例では、本開示に係る検出部が抵抗体を用いたひずみゲージである例について説明した。すなわち、前記各実施形態では、本開示に係る検出部が電気抵抗式の金属ひずみゲージである場合について説明した。しかしながら、本開示に係る検出部は金属ひずみゲージに限定されない。例えば、本開示に係る検出部は、当該ひずみゲージに含まれる検出素子によって、咬合により生じる圧力によって引き起こされる磁気変化を検出するひずみゲージであってもよい。
【0077】
具体的には、本開示に係る検出部は、ビラリ現象(後述)を利用した検出素子を含んだひずみゲージであってもよい。また、本開示に係る検出部は、磁気トンネル接合(後述)の構造を有する検出素子を含んだひずみゲージであってもよい。以下、実施形態4では、ビラリ現象を利用した検出素子を含むひずみゲージについて説明する。また、実施形態5では、磁気トンネル接合の構造を有する検出素子を含んだひずみゲージについて説明する。
【0078】
なお、本明細書の各実施形態では、同様の機能を有する部材には同様の名称および部材番号を付し、説明を繰り返さないこととする。また、以降の各実施形態に係る各図面(図10以降の図面)におけるx軸、y軸、およびz軸の方向は、図5図7で示したx軸、y軸、およびz軸の方向と同一である。また、以降の説明では、z軸の正方向を「上」、z軸の負方向を「下」と称する。すなわち、以降の説明において「上側」とはz軸の正方向側であり、「上面」はz軸の正方向側にある面を示す。また、「下側」とはz軸の負方向側であり、「下面」とはz軸の負方向側にある面を示す。
【0079】
図10は、実施形態4に係るひずみゲージに含まれる検出素子300の一例を示す図である。図10の(a)は検出素子300をz軸の正方向から負方向(すなわち、上面から下面側)に見下ろしたときの平面図である。一方、図10の(b)は、図10の(a)に示す検出素子300のα-α´直線での断面図を示している。なお、図10の(a)および(b)では、検出素子300から延びる配線は図示していない。しかしながら、検出素子300には、後述する駆動コイル320と電源とを接続する配線と、感知コイル380によって検出された電流を伝達するための配線が接続されていてもよい。
【0080】
図10の(a)に示す通り、検出素子300は、駆動コイル320と、感知コイル380と、ベース層310とを含む。ベース層310は駆動コイル320および感知コイル380の芯材となる層である。感知コイル380は、ベース層310(より厳密には、後述するベース金属370)の磁化の強さを検出するためのコイルである。駆動コイル320は、磁界を発生させるためのコイルである。検出素子300は、ベース層310を芯材として、感知コイル380が内側、そして駆動コイル320が外側に巻かれた2重構造を有している。なお、駆動コイル320および感知コイル380の材料は、Cu、Ag、Al、およびAu等の導電性金属、ならびに、これらの金属の合金であることが望ましい。また、駆動コイル320および感知コイル380の巻き数および断面積の大きさは、検出素子300に要求されるひずみの検知感度に応じて適宜設計されてよい。
【0081】
後で詳述するが、ベース層310に応力が加わると、ベース層310に含まれるベース金属370(後述)の磁化の強さが変化する。検出素子300は、感知コイル380でこの磁化の強さの変化を検出することによって、ベース層310にかかる応力の強さ(すなわち、ひずみ度合)を特定することができる。
【0082】
図10の(b)の断面図を参照して、検出素子300の構成について更に説明する。なお、図10の(b)において、駆動コイル320、感知コイル380、および3つの絶縁層340、350、および360はそれぞれ、芯材であるベース金属370を取り囲むように形成されている。すなわち、図10の(b)において同じ部材番号を付した層は、ベース金属370を取り囲んで繋がっている。
【0083】
ベース金属370は、各種コイルおよび絶縁層の芯材となる部材である。ベース金属370は、例えば略平板状の金属板であってよい。ベース金属370は絶縁層360で取り囲むように被覆されている。ベース金属370は、例えば、センダスト等のFe-Si-Al系合金、および、パーマロイ等のNi-Fe系合金等の軟磁性体材料で構成されることが望ましい。前述のベース層310は、図10の(b)に示す通り、このベース金属370と絶縁層360から成る。
【0084】
絶縁層360の外側には、絶縁層360を取り囲むように絶縁層350が形成される。そして、絶縁層350の外側には、更に絶縁層340が形成されている。絶縁層350は、感知コイル380を含む層であり、感知コイル380の間隙を絶縁材料で充填した層である。絶縁層340は、駆動コイル320を含む層であり、駆動コイル320の間隙を絶縁材料で充填した層である。絶縁層340、350、および360は、磁界に影響しないドライフィルムまたは感光性ポリイミド等のレジスト硬化物から成ることが望ましい。
【0085】
検出素子300の一面は、図10の(b)に示すように、基材110に貼り付けられていてよい。基材110は、検出素子300を固定する部材である。例えば、基材110は、プラスチックフィルム等で構成されるフレキシブル基板であってよい。検出素子300は基材110を介してマウスピース50、50I、または50Jの咬合面又は歯の咬合面(以降、これらを総称して単に「咬合面」とも称する)に貼り付けられる。なお、検出素子300は、全体として平板または薄膜状の検出素子であってもよい。検出素子300が平板または薄膜状である場合、検出素子300を基材110により容易に貼り付けることができる。また、検出素子300において基材110は必須の構成ではない。例えば、検出素子300に基材110を設けず、検出素子300の下面を咬合面に直接貼り付けて使用してもよい。
【0086】
本実施形態のひずみゲージを含むマウスピース50、50I、および50Jと、バンド30は、基本的には実施形態1~3に係るマウスピース50、50I、および50Jと、バンド30と同様の構成および材料であってよい。しかしながら、本実施形態のマウスピース50、50I、および50Jと、バンド30は、非磁性体から成ることがより望ましい。本実施形態に係るマウスピース50、50I、および50Jと、バンド30は、例えば、樹脂等を材料として作製することができる。
【0087】
次に、検出素子300を用いてひずみを検出する原理を概説する。検出素子300は、磁性体であるベース金属370を含んでいる。電源から駆動コイル320に交流電流が供給されると、駆動コイル320はその周囲に交番磁界を生じさせる。これにより磁界が発生し、ベース金属370は磁化される。この状態で咬合面に圧力がかかると、圧力は基材110を伝わり、ベース金属370に応力が加わる。なお、検出素子300を、基材110を介さずに咬合面に貼り付けている場合は、咬合面からベース金属370(およびそれを被覆する絶縁層340~360)に直接応力が伝わる。
【0088】
ベース金属370に応力が加わると、その応力に応じてベース金属370の透磁率が変化する。したがって、ベース金属370の磁化の強さ(磁化の程度)が変化する。このように、磁性体に応力がかかると磁性体の透磁率および磁化の強さが変化する現象のことを「ビラリ現象」という。検出素子300の構成によれば、ピックアップコイルである感知コイル380には、ベース金属370の磁化の強さに応じた交流電圧が誘起される。したがって、ビラリ現象の原理に基づけば、この交流電圧の値から、ベース金属370にかかる応力を算出することができる。そして、当該算出した応力から、咬合面にかかる圧力を特定することができる。なお、検出素子300が図10の(a)および(b)に示す形状である場合、検出素子300のグリッド方向は、図10の(a)におけるα-α´方向に等しい。以上説明した原理に基づいて、検出素子300は、咬合により生じる圧力を検出することができる。すなわち、検出素子300は、ひずみゲージの検出素子として機能する。
【0089】
なお、駆動コイル320は、感知コイル380の外側、かつ当該感知コイル380が存在している領域全体に、できる限り均一に巻き付けられることが望ましい。これにより、ベース金属370の、感知コイル380が存在する領域全体に、より均一に交番磁界を加えることができる。これにより、ビラリ現象によるベース金属370の磁化の強さの変化をより精密に検出することができる。したがって、検出素子300の性能が向上する。
【0090】
また、絶縁層360は、ベース金属370の全部ではなく一部に形成されていてもよい。例えば、ベース金属370のうち、感知コイル380および駆動コイル320を巻き付ける領域の部分を絶縁層360で覆い、絶縁層360の上から感知コイル380を含む絶縁層350で覆い、更に、絶縁層350の上から駆動コイル320を含む絶縁層340で覆うような構成であってもよい。
【0091】
また、ベース金属370が略平板状である場合、絶縁層360はベース金属370の、コイルを巻く方向のみ取り囲んで形成されていてもよい。すなわち、図10の(b)において、ベース金属370のx方向の両端部は絶縁層360で覆われていなくてもよい。
【0092】
本実施形態のひずみゲージを含む矯正装置において、咬合面に圧力がかかると、ひずみゲージの基材110(または、検出素子300自体)がひずむ。検出素子300は、このひずみによって生じる磁性変化を、前述のビラリ現象の原理に基づき検出することができる。
【0093】
本実施形態に係る検出素子300を含んだひずみゲージは、実施形態1~3およびこれらの変形例で示したあらゆる配置パターンで咬合面に配置可能である。すなわち、本実施形態に係る検出素子300を用いて、電気抵抗式のひずみゲージを用いたときと同様に咬合面にかかる圧力を検出することができる。したがって、当該検出値に応じた単位で第1閾値および第2閾値を設定しておくことで、制御部22は、検出値と第1閾値および第2閾値の大小を比較することができる。そして、比較結果に基づいて、モータ23又はピエゾ素子は、緩圧部材の高さ、形状、大きさ、および厚さの少なくともいずれかを調整することができる。したがって、実施形態4で説明した各種センサを用いた場合も、実施形態1~3およびこれらの変形例と同様に、ユーザの歯の咬合圧を適切な値に矯正することができる。
【0094】
[実施形態5]
図11は、実施形態5に係るひずみゲージに含まれる検出素子の一例である検出素子500を示す図である。図12は、実施形態5に係るひずみゲージの含まれる検出素子の他の一例である検出素子600を示す図である。また、図13は、実施形態5に係るひずみゲージの含まれる検出素子の更に他の一例である検出素子700を示す図である。図11~13の(a)はそれぞれ、検出素子500、600、および700の斜視図である。図11~13の(b)はそれぞれ、検出素子500、600、および700をz軸の正方向から負方向に見下ろしたときの平面図である。図11~13の(c)は、検出素子500、600、および700の、zx平面に平行な面での断面図である。なお、図11~13のいずれの図も、検出素子から延びる配線は図示していない。しかしながら、これらの検出素子500、600、および700には、後述する上流電極510と電源とを接続する配線と、下流電極520と電源とを接続する配線とが接続されていてもよい。
【0095】
図11~13の(a)に示す通り、検出素子500、600、および700は、上流電極510と、下流電極520と、磁性膜530と、絶縁膜540と、を含む。絶縁膜540は、図示のように磁性膜530で挟まれている。この磁性膜530と絶縁膜540によって、磁気トンネル接合が形成される。すなわち、検出素子500、600、および700は、磁気トンネル接合の構造に電極を接続した構造である。
【0096】
なお、検出素子500、600、および700の下面は、実施形態1~3およびこれらの変形例に係るひずみゲージ12Aの基材121と同様の基材に貼り付けられていてもよい。そして、検出素子500は基材を介して咬合面に貼り付けられてよい。また、検出素子500、600、および700は、全体として平板または薄膜状の検出素子であってもよい。検出素子500、600、および700が平板または薄膜状である場合、検出素子500、600、および700を基材または咬合面により容易に貼り付けることができる。また例えば、検出素子500、600、および700の下面を咬合面に直接貼り付けて使用してもよい。
【0097】
磁性膜530は磁性ナノ薄膜である。絶縁膜540は絶縁体のナノ薄膜である。磁気トンネル接合の構造が形成可能であれば、磁性膜530と、絶縁膜540の材料は特に限定されない。例えば、磁性膜530としてコバルト鉄ボロン、または、Fe、Co、Niなどの3d遷移金属強磁性体及びそれらを含む合金等を用いることができる。また、絶縁膜540として、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウムや酸化マグネシウム等を用いることができる。
【0098】
上流電極510および下流電極520は、磁気トンネル接合の構造に対し電圧を印加するための電極である。図11~13の例では、電流は上流電極510から下流電極520へと流れる。例えば図11の(c)の場合、上流電極510と下流電極520の間に電圧を印加すると、電子は上側(z軸正方向側)の磁性膜530から、絶縁膜540を超えて下側(z軸負方向側)の磁性膜530に流れ込む。これは「トンネル効果」と呼ばれている現象であり、電子が絶縁膜540を通過するときの電気抵抗は、「トンネル抵抗」と呼ばれている。なお、図11~13の例では、電極の各部の接合部は、磁気トンネル接合の構造をショートパスする電流が流れない様に端部が処理された構造となっている。
【0099】
ところで、咬合面に圧力がかかると、ひずみゲージの基材110または検出素子500がひずむ。すると、検出素子500のトンネル接合の構造において、磁気変化が起こる。より具体的には、上側と下側の磁性膜530の磁化方向がずれる。このように、上下の磁性膜530の磁化方向がずれると、磁化方向が平行な場合に比べて、トンネル抵抗が大きくなる(トンネル磁気抵抗効果)。したがって、前述の構成を備えた検出素子500では、検出素子500(より厳密には、磁気トンネル接合の部分)のひずみの大きさに応じて、電極間を流れる電流が小さくなる。すなわち、ひずみが大きくなるにつれ、電気抵抗が大きくなる。検出素子500は、このように、印加した電圧に対する電流値に基づきひずみを検出することができる。したがって、検出素子500を咬合面に貼り付けることによって、咬合面にかかる圧力を測定することができる。
【0100】
磁気トンネル接合の構造を有する検出素子は、図11に示した例に限定されない。例えば、図12および図13に示すような検出素子600および700を採用することも可能である。図12に示す検出素子600も、図13に示す検出素子700も、上流電極510、下流電極520、磁性膜530、および絶縁膜540で構成されること、および、これらの構成によってひずみを検出する原理については、検出素子500と同様である。また、検出素子600および700の基本的な動作についても、検出素子500と同様である。なお、検出素子500、600、および700のグリッド方向は、それぞれ図11図13におけるx軸方向(x軸の正方向およびx軸の負方向)に相当する。図12に示す検出素子600は図示の通り、上側の磁性膜530と下側の磁性膜530が、一部繋がった構造をしている。すなわち、磁性膜530の一部の領域においてのみ、磁気トンネル接合の構造が形成されており、当該構造においてトンネル磁気抵抗効果が生じる。一方、図13に示す検出素子700は、基板710を介して基材110に貼り付けられる。図11図13に示すように、検出素子は前述の原理を超えない範囲であれば、要求されるサイズ、耐久性、および検出すべき応力の大きさ等に応じて、適宜その設計が変更されてよい。
【0101】
なお、本実施形態のひずみゲージを含むマウスピース50、50I、および50Jと、バンド30は、基本的に実施形態1~3に係るマウスピース50、50I、および50Jと、バンド30と同様の構成および材料であってよい。しかしながら、本実施形態において、マウスピース50、50I、および50Jと、バンド30は、非磁性体から成ることがより望ましい。本実施形態に係るマウスピース50、50I、および50Jと、バンド30は、例えば、樹脂等を材料として作製することができる。
【0102】
また、検出素子500、600、および700は素子全体として、フィルム型などの略平板状の形状であってよい。これにより、咬合面に、検出素子500を容易に貼り付けることができる。また、検出素子500、600、および700は、駆動コイル等、磁気トンネル接合の構造部分に対して、微弱な磁界を印加するための構造を有していてもよい。磁気トンネル接合の構造部分に対して磁界を印加することにより、前述のトンネル磁気抵抗効果をより安定して測定することができるため、安定してひずみを検出することができる。
【0103】
また、検出素子500、600、および700における「上流電極」および「下流電極」は便宜上の名称であり、電流の流れる方向は逆であってもよい。つまり、図11図13で示した検出素子500、600、および700において、下流電極520の方から、上流電極510の方へと電流が流れる設計であってもよい。
【0104】
本実施形態のひずみゲージを含む矯正装置において、咬合面に圧力がかかると、ひずみゲージの基材(または、検出素子500、600、または700自体)がひずむ。検出素子500、600、または700は、このひずみによって生じる磁性変化を、前述のトンネル磁気抵抗効果の原理に基づき検出することができる。
【0105】
本実施形態に係る検出素子500、600、および700を含んだひずみゲージは、実施形態1~3およびこれらの変形例に示したあらゆる配置パターンで咬合面に配置可能である。すなわち、本実施形態に係る検出素子500、600、および700を用いて、電気抵抗式のひずみゲージを用いたときと同様に咬合により生じる圧力を検出することができる。したがって、当該検出値に応じた単位で第1閾値および第2閾値を設定しておくことで、制御部22は、検出値と第1閾値および第2閾値の大小を比較することができる。そして、比較結果に基づいて、モータ23又はピエゾ素子は、緩圧部材の高さ、形状、大きさ、および厚さの少なくともいずれかを調整することができる。したがって、実施形態5で説明した各種センサを用いた場合も、実施形態1~3およびこれらの変形例と同様に、ユーザの歯の咬合圧を適切な値に矯正することができる。
【0106】
[実施形態6]
本開示に係る検出部は、半導体式のひずみゲージ、静電容量式の圧力センサ、または光ファイバ式のひずみゲージであってもよい。また、本開示に係る検出部は、機械式圧力センサ、振動式圧力センサ、または圧電式圧力センサであってもよい。以下、各種ひずみゲージ及び圧力センサの原理を説明する。
【0107】
(半導体式のひずみゲージ)
半導体式のひずみゲージは、半導体の圧抵抗効果を利用してひずみを検出するひずみゲージである。すなわち、半導体式のひずみゲージは、半導体をひずみの検出素子として用いるひずみゲージである。
【0108】
半導体に応力が印加されると、半導体の結晶格子にひずみが生じて半導体中のキャリアの数及び移動度が変化するため、結果として電気抵抗が変化することが知られている。半導体式のひずみゲージは、電気抵抗式の金属ひずみゲージと同様、咬合面に直接貼り付けて使用することができる。この場合、咬合面に圧力がかかると、貼り付けられた半導体(より詳しくは、半導体の結晶格子)がひずみ電気抵抗が変化する。そのため、当該電気抵抗を測定することで咬合面にかかる圧力を特定することができる。
【0109】
また、半導体式のひずみゲージは、ダイアフラム構造を備えたひずみセンサとして構成することもできる。この場合、ひずみセンサは例えば、非金属のダイアフラム(又は、金属ダイアフラム上に電気絶縁層を形成したもの)と、当該ダイアフラムの上に形成された半導体(例えば、シリコン薄膜の半導体)と、を有する。そして、この様にダイアフラムを含む構造において、ダイアフラムに印加された垂直応力によりダイアフラムがひずむと、半導体の電気抵抗が変化する。そのため、当該電気抵抗を測定することでダイアフラムのひずみ量(ひいては、咬合面にかかる圧力)を特定することができる。
【0110】
(静電容量式の圧力センサ)
静電容量式の圧力センサは、ダイアフラムにかかる圧力を一対の電極の静電容量の変化として計測する圧力センサである。すなわち、静電容量式の圧力センサは、一対の電極を検出素子として用いる圧力センサである。静電容量式の圧力センサは例えば、可動電極としてのダイアフラムと、1つ以上の固定電極と、を備える。ダイアフラムは例えば不純物を含んだシリコン(すなわち、導体として機能するシリコン)等で形成される。
【0111】
ダイアフラムに圧力が印加されると、当該ダイアフラムが変位し、固定電極と可動電極との間の距離が変化する。電極間の静電容量は、電極間媒質の誘電率と電極の面積が一定ならば、電極間の距離に応じて定まることが知られている。したがって、静電容量を計測することで、ダイアフラムの変位量(すなわち、圧力の大きさ)を特定することができる。
【0112】
(光ファイバ式のひずみゲージ)
光ファイバ式のひずみゲージとは、ファイバ・ブラッグ・グレーティング(FBG)が形成されている光ファイバを用いてひずみを検出するひずみゲージである。すなわち、光ファイバ式のひずみゲージは、光ファイバをひずみの検出素子として用いるひずみゲージである。FBGは光ファイバの他の部分とは異なる光の反射を起こす回折格子であり、この格子の一つ一つは一定間隔で形成されている。光ファイバがひずんで伸びると、FBGの格子間隔が広がるため、光ファイバに入射した光(例えば、レーザ光)の反射光の波長が変化する。また、光ファイバがひずんで縮むと、FBGの格子間隔は狭くなるため、ファイバに入射した光(例えば、レーザ光)の反射光の波長が変化する。
【0113】
このような特性を有する光ファイバを咬合面の裏側等、咬合面に対する圧力が間接的にかかる位置に貼り付けておき、光ファイバの反射光の波長スペクトルを計測することで、光ファイバのひずみ量(すなわち、咬合面にかかる圧力)を特定することができる。なお、光ファイバ式のひずみゲージは、光ファイバ内で生じるブリルアン散乱光の周波数の変化から当該光ファイバのひずみ量を特定するひずみゲージであってもよい。
【0114】
(機械式圧力センサ)
機械式圧力センサは機械的構造物の変位量を計測することで、当該構造物にかかる圧力を特定するセンサである。機械式圧力センサは、例えば、ばね又は曲げた管を備えており、このばねの伸縮量又は曲げた管の伸縮量を計測する。これらの伸縮量(すなわち、変位量)は、ばね又は曲げた管にかかる圧力の大きさに応じて変化する。したがって、当該伸縮量を計測することで、ばね又は曲げた管にかかる圧力を特定することができる。なお、ばね又は曲げた管の形状や大きさは、機械式圧力センサの取り付け対象の大きさ及び形状に応じて適宜定められてよい。
【0115】
(振動式圧力センサ)
振動式圧力センサは、弾性梁の固有振動数が、当該弾性梁の軸に沿って生じる圧力(すなわち、軸力)によって変化するという現象を利用して圧力を検出するセンサである。振動式圧力センサは、電気抵抗式の金属ひずみゲージと同様、咬合面に直接貼り付けて使用することができる。また例えば、振動式圧力センサは、基板上に形成されたダイアフラムと、当該ダイアフラムの表面に形成された梁状の振動子と、で構成される圧力センサであってもよい。
【0116】
いずれの場合でも、咬合面に圧力がかかると、その圧力は直接または間接的に振動子に伝わり、振動子に軸力が生じる。振動子の固有振動数は、軸力に応じて変化する。したがって、振動子の固有振動数を計測することで、咬合面に対する圧力の大きさを特定することができる。
【0117】
(圧電式圧力センサ)
圧電式圧力センサとは、圧電素子(ピエゾ素子とも称する)を含んでおり、この圧電素子の特性を用いて圧力を検出するセンサである。圧電素子は、力が加わり変形する(ひずむ)と、その力に応じた起電力を発生する特性を持っている。また、圧電素子は、電圧をかけると、その電圧に応じた力を発生させて伸縮する特性を持っている。
【0118】
圧電式圧力センサは、圧電素子の起電力を測定することで、圧電素子にかかった力(すなわち、圧電素子のひずみ量)を特定することができる。したがって、圧電式圧力センサを咬合面に貼り付けておくことで、咬合面にかかる圧力を特定することができる。
【0119】
以上の説明の通り、半導体式のひずみゲージ、静電容量式の圧力センサ、光ファイバ式のひずみゲージ、機械式圧力センサ、振動式圧力センサ、および圧電式圧力センサを用いた場合でも、咬合により生じる圧力を数値として検出することができる。したがって、当該検出値に応じた単位で第1閾値および第2閾値を設定しておくことで、制御部22は、検出値と第1閾値および第2閾値の大小を比較することができる。そして、比較結果に基づいて、モータ23又はピエゾ素子は、緩圧部材の高さ、形状、大きさ、および厚さの少なくともいずれかを調整することができる。したがって、実施形態6で説明した各種センサを用いた場合も、実施形態1~3およびこれらの変形例と同様に、ユーザの歯の咬合圧を適切な値に矯正することができる。
【0120】
以上、好ましい実施形態等について詳説した。しかしながら、本開示に係る矯正装置は、上述した実施形態および変形例等に限定されない。例えば、上述した実施形態等に係る矯正装置について、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0121】
1A~1J 矯正ユニット(矯正装置)、 2 情報処理装置、11A~11H ひずみゲージ(検出部)、 12A~12J アクチュエータ(調整部)、 13A~13J 緩圧部材、 21 通信部、 22 制御部、 23 モータ、 30 バンド 42 バンド調整部、 50,50I,50J マウスピース、 100,200,400 噛み合わせ矯正装置、 300,500,600,700 ひずみゲージの検出素子、 310 ベース層、 320 駆動コイル、 340,350,360 絶縁層、 370 ベース金属、 380 感知コイル、 510 上流電極、 520 下流電極、 530 磁性膜、 540 絶縁膜、 710 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13