(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138398
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】排気ガス後処理装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/24 20060101AFI20230922BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20230922BHJP
F01N 13/10 20100101ALI20230922BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20230922BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
F01N3/24 N
F01N3/08 B
F01N13/10
F01N3/28 M
F01N3/20 M
F01N3/28 301C
F01N3/28 301N
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023035183
(22)【出願日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】22162911
(32)【優先日】2022-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515191442
【氏名又は名称】ヴィンタートゥール ガス アンド ディーゼル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル ゾンニッヒセン
【テーマコード(参考)】
3G004
3G091
【Fターム(参考)】
3G004AA05
3G004BA06
3G004DA01
3G004EA01
3G091AA04
3G091AA15
3G091AA21
3G091AB04
3G091BA01
3G091BA14
3G091CA12
3G091CA13
3G091CA16
3G091GA09
3G091HA03
3G091HA46
3G091HB03
(57)【要約】
【課題】内燃エンジン用の排気ガス後処理装置、内燃エンジン、および排気ガス後処理の方法。
【解決手段】排気ガス後処理装置は、複数の吸気ポートと触媒容器とを有する細長い排気マニホルドを備える。排気マニホルドおよび触媒容器は、互いに隣接して並んで配置されており、長手方向に沿って延在する少なくとも1つの仕切り壁によって互いから区切られている。排気マニホルドは、排気ガスを触媒容器内に案内するために、仕切り壁に設けられている少なくとも1つの通路をわたって、触媒容器と流体接続している。例えば尿素噴射器である少なくとも1つの還元体供給要素が、吸気ポートの少なくとも1つの内部または近傍において排気マニホルド内に配置されている。少なくとも1つの流れ案内要素が、排気ガスを通路に向かって案内するために、排気マニホルド内に配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吸気ポート(11)と触媒容器(20)とを有する細長い排気マニホルド(10)を備える内燃エンジン用の排気ガス後処理装置(100)であって、
前記排気マニホルド(10)と前記触媒容器(20)とが、互いに隣接して並んで配置されており、長手方向(L)に沿って延在する少なくとも1つの仕切り壁(30)によって互いから区切られており、
前記排気マニホルド(10)が、排気ガスを前記触媒容器(20)内に案内するために、前記仕切り壁(30)に設けられている少なくとも1つの通路(31)をわたって、前記触媒容器(20)と流体接続しており、
例えば尿素噴射器である少なくとも1つの還元体供給要素(12)が、前記吸気ポート(11)の少なくとも1つの内部または近傍において前記排気マニホルド(10)内に配置されている、排気ガス後処理装置(100)において、
少なくとも1つの流れ案内要素(15)が、排気ガスを前記通路(31)に向かって案内するために、前記排気マニホルド(10)内に配置されていることを特徴とする、排気ガス後処理装置(100)。
【請求項2】
前記排気ガス後処理装置(100)が、前記通路(31)の各々に対して少なくとも1つの流れ案内要素(15)を備える、請求項1に記載の排気ガス後処理装置。
【請求項3】
前記流れ案内要素(15)が、前記通路(31)に向かって開いた第1の端部(16)と、前記排気マニホルド(10)に向かって開いた第2の端部(17)とを有する吸気管(18)である、請求項1または2に記載の排気ガス後処理装置。
【請求項4】
排気ガスを、管壁(19)と前記仕切り壁(30)との間の前記通路(31)に案内できるように、前記流れ案内要素(15)が、前記仕切り壁(30)に配置されている前記管壁(19)を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の排気ガス後処理装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの還元体供給要素(12)が、前記細長い排気マニホルド(10)の中間部(13)に配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の排気ガス後処理装置。
【請求項6】
前記排気ガス後処理装置(100)が、前記長手方向(L)に互いに並んで配置されており、排気ガスを前記排気マニホルド(10)内に送給するための、少なくとも3つの吸気ポート(11)を備え、好ましくは前記少なくとも1つの還元体供給要素(12)が、前記吸気ポートの中央の1つ(11c)内に配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の排気ガス後処理装置。
【請求項7】
前記仕切り壁(30)が、前記排気マニホルド(10)の長手方向の端部のそれぞれに配置されている2つの前記通路(31)を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の排気ガス後処理装置。
【請求項8】
前記排気マニホルド(10)が、バイパスバルブを有するバイパス出口(32)を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の排気ガス後処理装置。
【請求項9】
前記排気ガス後処理装置(100)が、前記通路(31)を閉めるためのルーババルブを備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の排気ガス後処理装置。
【請求項10】
前記触媒容器(20)が、SCR(選択触媒還元)要素(22)の2つの積層体(21)と、排気出口(24)に接続されている、または接続可能である中央通路(23)とを備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の排気ガス後処理装置。
【請求項11】
前記SCR要素(22)の前記積層体(21)が、前記触媒容器(20)内に配置されており、前記触媒容器(20)が、前記積層体(21)を前記長手方向(L)に沿って案内するための、前記積層体(21)の各々のためのレール(25)を有する、請求項10に記載の排気ガス後処理装置。
【請求項12】
少なくとも1つのシリンダ(3)と、請求項1から11のいずれか一項に記載の少なくとも1つの排気ガス後処理装置(100)を備える内燃エンジン(1)であって、特に、最大8つの前記シリンダ(3)用の、好ましくは最大6つの前記シリンダ(3)用の、1つの前記排気ガス後処理装置(100)を備える内燃エンジン(1)。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載の排気ガス後処理装置(100)における排気ガス後処理の方法であって、排気ガスが、前記複数の吸気ポート(11)を介して前記排気マニホルド(10)内に案内され、還元剤が、前記還元体供給要素(12)を介して入れられ、
少なくとも前記流れ案内要素(15)を通る間、および前記仕切り壁(30)の前記通路(31)を介して前記触媒容器(20)に進入する前に、排気ガスと還元剤との混合が行われるように、排気ガスおよび還元剤を、前記流れ案内要素(15)に沿って案内するステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジン用の排気ガス後処理装置、内燃エンジン、および排気ガス後処理の方法に関する。
【0002】
本発明は、好ましくは、大型船舶用のエンジンもしくは船のエンジン、または内径が少なくとも200mmのシリンダを有する定置エンジンのような、内燃エンジンに関する。このエンジンは、好ましくは、2ストロークエンジンまたは2ストローククロスヘッド型エンジンである。このエンジンは、ディーゼルエンジンまたはガスエンジンであり得、デュアル燃料エンジンまたはマルチ燃料エンジンであり得る。そのようなエンジンでの液体燃料および/またはガス燃料の燃焼は、自己点火または強制点火のいずれでも可能である。
【0003】
この内燃エンジンは、長手方向掃気式2ストロークエンジンであり得る。
【0004】
また、内燃エンジンという用語は、燃料の自己点火を特徴とするディーゼルモードだけではなく、燃料のポジティブ点火を特徴とするオットーモードでも、またはその2つの混合状態でも、動作することができる大型エンジンを指す。さらに、内燃エンジンという用語は、特に、燃料の自己点火が別の燃料のポジティブ点火のために用いられる、デュアル燃料エンジンおよび大型エンジンを含む。
【0005】
エンジン速度は、とりわけ4ストロークエンジンについては、好ましくは800RPM未満であり、とりわけ低速エンジンの名称を示す2ストロークエンジンについては、より好ましくは200RPM未満である。
【0006】
燃料は、ディーゼル油、船舶用ディーゼル油、重燃料油、エマルジョン燃料、スラリー燃料、メタノール、またはエタノール、ならびに液化天然ガス(LNG)または液体石油ガス(LPG)のようなガスなどであり得る。
【0007】
要求に応じて添加される可能性があるさらなる燃料は、LBG(Liquefied Biogas:液化バイオガス)、バイオ燃料(例えば、藻または海藻から作られる油)、アンモニア、水素、CO2由来の合成燃料(例えば、パワートゥーガス(Power-To-Gas)またはパワートゥーリキッド(Power-To-Liquid)によって作られる)である。
【背景技術】
【0008】
大型船、特に物品を輸送するための船舶は、通常、内燃エンジンによって動力供給され、そのエンジンは、特にディーゼルエンジンおよび/またはガスエンジンであり、主に2ストロークのクロスヘッド型エンジンである。
【0009】
欧州特許出願公開第2527611号明細書には、複数の吸気口と、触媒容器とを有する細長い排気マニホルドを備える、大型ディーゼルエンジン用の排気ガス後処理装置が開示されている。排気マニホルドと触媒容器とは、互いに本質的に平行に並んで配置されており、各ケース内を長手方向に延びている少なくとも1つの仕切りによって、互いに区切られている。排気マニホルドは、動作中の排気ガスを、触媒要素を通して、対応する出口に誘導するために、1つまたは複数の仕切りに設けられている1つまたは複数の穴を介して、触媒容器に接続されている。
【0010】
この装置は少なくとも1つの混合管を備え、各混合管は排気ガス収集器から通路を通って触媒容器内に延在し、各混合管には、還元剤を噴射するための1つまたは複数のノズルが設けられている。
【0011】
このノズルは、SCR(選択触媒還元)要素の比較的近傍に配置されているので、排気ガスと、還元剤との間の混合が不十分になり、還元剤がスリップするリスクがある。
【0012】
欧州特許出願公開第2860369号明細書には、排気流路において、排気流路内への還元体開口部の上流側に方向付け装置が設けられている、排気後処理システムが開示されている。この方向付け装置は、排気流を、還元体開口部に向かって、かつ方向付け装置の周囲に向けて、排気流を、還元体開口部を通して提供される還元体と効果的に混合して、還元体堆積物の形成を低減するように構成されている。
【0013】
独国特許第112012003742号明細書は、エンジンの排気蒸気内で反応物の分散を高めるために、反応物噴射器の上流側に排気ガス流変更器が提供されている、排気ガス処理システムに関する。
【0014】
欧州特許出願公開第2074293号明細書には、排気パイプラインに設置されている排気ガス流調節器が開示されており、この排気ガス流調節器は、触媒の波形金属プレートを備え、波形金属プレートの起伏の波形方向は、少なくとも横方向において排気ガス流を調節するために、排気ガスの平均的な流れの方向に向かう角度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2527611号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2860369号明細書
【特許文献3】独国特許第112012003742号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第2074293号明細書
【発明の概要】
【0016】
本発明は、既知の排気ガス後処理装置および内燃エンジンの不利点を回避する排気ガス後処理装置および内燃エンジンであって、特に、排気ガスと還元剤との十分かつ均質な混合を実現する排気ガス後処理装置および内燃エンジンを提供するという課題に基づく。
【0017】
本目的は、独立請求項の特徴によって達成される。
【0018】
本発明によれば、内燃エンジンで用いられるべき排気ガス後処理装置は、複数の吸気ポートと、触媒容器とを有する細長い排気マニホルドを備える。
【0019】
排気マニホルドと触媒容器とは、互いに隣接して並んで配置されており、長手方向に沿って延在する少なくとも1つの仕切り壁によって、互いから区切られている。
【0020】
このように、排気マニホルドおよび触媒容器の各々は、垂直方向よりも長手方向に延在する。
【0021】
排気マニホルドは、排気ガスを触媒容器内に案内するために、仕切り壁に設けられている少なくとも1つの通路をわたって、触媒容器と流体接続されている。
【0022】
通路には、通路バルブが配置されてもよい。
【0023】
例えば尿素噴射器である、少なくとも1つの還元体供給要素が、1つの吸気ポートの内部、または少なくとも1つの吸気ポートの近傍において、好ましくはすべての吸気ポートの近傍において、排気マニホルド内に配置されている。
【0024】
本出願の範囲内で、「吸気ポートの近傍」とは、吸気ポートと還元体供給要素との間の流路が、還元体供給要素と通路との間の流路よりも短いことを意味する。
【0025】
吸気ポートは、シリンダの排気出口を排気マニホルドの内容積と流体接続するために、排気マニホルドの壁に配置されている。排気ガスは、吸気ポートを介して排気マニホルド内に案内されてもよい。
【0026】
排気ガスを通路に向かって案内するために、排気マニホルド内に、少なくとも1つの流れ案内要素が配置されている。
【0027】
還元体供給要素が吸気ポートの内部または近傍に配置されているので、還元剤が通路に到達するまでに、いくらかの時間がかかる。とりわけ、この時間は、還元剤が連続的に入れられるのに対して、排気ガスがストロークごとに到着する場合に、均質な混合のために必要である。
【0028】
排気ガスおよび還元剤は、排気マニホルド内部で混合されてもよい。しかしながら、還元体供給要素よりも多くの吸気ポートがあってもよいので、還元体供給要素を有しない吸気ポート、または近傍に還元体供給要素のない吸気ポートによって、排気マニホルド内に導入される一部の排気ガスは、還元体供給要素を有する吸気ポートよって排気マニホルド内に導入される排気ガスよりも、還元剤と接触する機会が少ない場合がある。還元剤は、排気ガス内で不均等に分散する場合がある。
【0029】
特に、全く還元剤と接触しなかった排気ガスが、通路に進入するリスクがある可能性がある。この排気ガスは、洗浄されずに排気ガス後処理装置から漏出するであろう。
【0030】
吸気ポートと通路との間に一定の最小限の通り道があるように、したがって、すべての排気ガス、とりわけ還元体供給要素を有しない吸気ポートによって導入される排気ガスが、排気マニホルドの内部に留まる一定の最小限の継続時間があるように、流れ案内要素は配置されている。
【0031】
流れ案内要素は、排気ガス中で、還元剤が十分に混合され均等に分散する機会を実現する。
【0032】
流れ案内要素は、通路の上流側に、かつ通路に直接隣接して配置される一定の長さの流路を実現することが好ましい。
【0033】
排気ガス後処理装置は、各通路に対して少なくとも1つの流れ案内要素を備えてもよい。こうすることで、未混合の排気ガスが通って触媒容器に進入する可能性がある通路はない。
【0034】
流れ案内要素は、通路に向かって開いた第1の端部と、排気マニホルドに向かって開いた第2の端部とを有する吸気管であってもよい。吸気管は、排気マニホルドの内容積から通路に通じる吸気チャネルを形成する。管の長さは、最小限の経路長さを画定し、それによって、排気ガスと還元剤とを混合するために、一定の最小限の時間が利用可能になる。
【0035】
流れ案内要素は、排気ガスを、管壁と仕切り壁との間の通路に案内できるように、仕切り壁に配置されている管壁を備えてもよい。吸気管の一部は、仕切り壁によって形成されている。
【0036】
内燃エンジンが動作状態である場合、ならびに内燃エンジンが風および/または波により動いている場合、とりわけ内燃エンジンを備える船が航行中である場合に、流れ案内要素がその位置を保つように、流れ案内要素、特に管壁は、排気マニホルド内部に固定されてもよい。
流れ案内要素は、排気マニホルドの外壁との接続、および/または仕切り壁との接続によって、排気マニホルド内部に固定されてもよい。
【0037】
流れ案内要素、特に管壁は、締付け、ねじ接続、または溶接によって固定されてもよい。流れ案内要素と、排気マニホルドおよび/または仕切り壁との間には、着脱可能な接続があることが好ましい。
【0038】
流れ案内要素は、排気ガス後処理装置のメンテナンス、洗浄、および/または交換のために、排気マニホルドから取り外されてもよい。
【0039】
少なくとも1つの還元体供給要素は、細長い排気マニホルドの中間部に配置されてもよい。
【0040】
排気ガス後処理装置は、長手方向に互いに並んで配置されており、排気ガスを排気マニホルド内に送給するための、少なくとも3つの吸気ポートを備えてもよい。各吸気ポートは、シリンダに、流体接続可能であってもよく、または接続されていてもよい。
【0041】
少なくとも1つの還元体供給要素は、吸気ポートの中央の1つに配置されていることが好ましい。中央の吸気ポートは、長手方向において両側に、少なくとも1つの近隣の吸気口を有する。
【0042】
仕切り壁は、排気マニホルドの対応する長手方向の端部のそれぞれに配置されている2つの通路を備えてもよい。
【0043】
還元体供給要素の中央の配置、および長手方向の端部における通路の配置は、最小限の経路を実現し、したがって、排気マニホルド内部での還元剤の最小限の滞留時間を実現し、とりわけ、還元剤と、非連続的に入れられる排気ガスとの混合を可能にする。
【0044】
排気マニホルドは、バルブを有するバイパス出口を備えてもよい。例えば、エンジンがティアツーモードで動作している場合など、排気の洗浄が必須ではない場合には、バイパスバルブを開けてもよい。この場合、還元剤を入れることを止めてもよく、通路バルブによって通路を閉めてもよい。
【0045】
排気ガス後処理装置は、通路を閉めるためのルーババルブを備えてもよい。例えば、エンジンがティアスリーモードで動作している場合など、排気ガスがSCR要素を通って案内されるべき場合には、ルーババルブを開けてもよい。エンジンの動作がティアツーモードに切り替えられる場合、ルーババルブを閉めてもよく、バイパスバルブを開けてもよい。
【0046】
通常、ルーババルブは完全には閉まらない。したがって、吸気ポートから通路に直接吹き出す排気ガスは、閉まっているルーババルブを通って触媒容器に進入する場合がある。流れ案内要素は、前述のように、吸気ポートから通路までの直接の流れを防止し、それによって、ルーババルブを意図せず開くことから保護するように配置されてもよい。このように、SCR要素の汚染を回避することができる。
【0047】
流れ案内要素は、ルーババルブに対する、排気マニホルド内の圧力変動の影響を低減する。
【0048】
触媒容器は、SCR要素の2つの積層体と、排気出口に接続されている、または接続可能である中央通路とを備えてもよい。排気ガスは、仕切り壁の長手方向の端部に配置されている2つの通路を介して、触媒容器に進入してもよく、SCR要素の2つの積層体を通って案内されてもよく、中央通路で集まってもよい。
【0049】
排気出口および/またはバイパス出口は、排気ガスをターボチャージャに向かって案内してもよい出口パイプと、流体接続可能であってもよく、または接続されていてもよい。
【0050】
SCR要素の積層体は、触媒容器内に配置されてもよい。例えば、1つの積層体の内部に、少なくとも3つのSCR要素が配置されている。触媒容器は、積層体を長手方向に沿って案内するための、積層体の各々のためのレールを備えてもよい。触媒容器は、SCR要素を有する積層体を取り外し、導入するために、長手方向の端部において開くことができてもよい。
【0051】
SCR要素は、触媒容器の壁に向かう距離が可能な限り最短であり、かつSCR要素同士の間が規定された距離となるように、触媒容器内部に、非常に正確に置かれる必要がある。したがって、触媒要素は、積層体として配置されてもよく、積層体フレームに固定されてもよい。積層体フレームは、レール用に、対応する凹部などの、対抗要素を提供してもよい。
【0052】
本発明によれば、内燃エンジンは、少なくとも1つのシリンダと、前述のような少なくとも1つの排気ガス後処理装置とを備える。特に、内燃エンジンは、最大8つのシリンダ用の、好ましくは最大6つのシリンダ用の、1つの排気ガス後処理装置を備える。
【0053】
本発明の方法によれば、排気ガスが、複数の吸気ポートを介して排気マニホルド内に案内され、還元剤が、還元体供給要素を介して入れられる。本方法は、次のステップを少なくとも備える。
【0054】
少なくとも流れ案内要素を通る間、および仕切り壁の通路を介して触媒容器に進入する前に、排気ガスと還元剤との混合が行われるように、排気ガスおよび還元剤は、流れ案内要素に沿って案内される。
【0055】
本発明のさらに有利な態様を、例示的な実施形態および図面によって、次に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】燃焼エンジンの第1の例を示す概略斜視図である。
【
図2】排気ガス後処理装置の第1の例を示す概略斜視図である。
【
図3】
図2による第1の例の詳細を示す概略図である。
【0057】
図1は、大型の燃焼エンジン1の一実施形態を示している。通常、ボアが大きい燃焼エンジンは、以下の構成要素、すなわち、クランクシャフト筐体4に回転可能に取り付けられているクランクシャフトと、少なくとも1つのクロスヘッドと、シリンダ3内に移動可能に配置されている少なくとも1つのピストン2とのうちの、1つまたは複数を含む。通常、ピストン2は、ピストンロッド2aを介して各ケースの内のクロスヘッドに接続しており、クロスヘッドは、各ケース内のプッシュロッドを介してクランクシャフトに接続して、クランクシャフトを駆動する。燃焼室は、ピストン2とシリンダカバー7との間に形成されている。
【0058】
シリンダ室の長手方向の掃気が提供されてもよく、すなわちピストン2が掃気スロット3aの下方にくるとすぐに、掃気空気は、掃気溜5からシリンダライナ内の掃気スロット3aを介してシリンダ3内に流れる。掃気空気流れによって、燃焼の排気ガスが、シリンダカバー7内の排気バルブ6を通り、吸気ポート11を通って、排気ガス後処理装置100の排気マニホルド10内に入ることになる。
【0059】
燃焼エンジン1は、さらにターボチャージャ8を含んでもよく、排気ガス後処理装置100は、燃焼エンジン1の排気バルブ6と、排気ガスのターボチャージャ8との間に配置される。排気ガスは、ターボチャージャ8で膨張した後に、外部に排出されてもよい。
【0060】
図2は、排気ガス後処理装置100の第1の例を概略斜視図で示している。
【0061】
排気ガス後処理装置100は、5つの吸気ポート11を有する細長い排気マニホルド10を備える。
【0062】
排気ガス後処理装置100は、さらに触媒容器20を備え、触媒容器20は、排気マニホルド10の下方に配置されており、長手方向Lに沿って延在する仕切り壁30によって、排気マニホルド10から区切られている。
【0063】
排気マニホルド10は、排気マニホルド10の、長手方向の端部のそれぞれにおいて仕切り壁30に設けられている2つの通路31にわたって、触媒容器20と流体接続している。
【0064】
還元体供給要素12が、2つの中央の吸気ポート11cの内部に配置されている。
【0065】
流れ案内要素15が、排気ガスを通路31に向かって案内するために、排気マニホルド10内に配置されている。
【0066】
各流れ案内要素15は、排気ガスを、管壁19と仕切り壁30との間の通路31に案内できるように、仕切り壁30に配置されている管壁19を備える。管壁19、および仕切り壁30は、通路31に向かって開いた第1の端部16と、排気マニホルド10に向かって開いた第2の端部17とを有する吸気管18を形成する。
【0067】
流れ案内要素15がなければ、最も外側の吸気ポート11の1つを通って排気マニホルド10に進入する排気ガスは、対応する吸気ポートの下方の通路31に、短い通り道で直接流れるであろう。その排気ガスは、中央の吸気ポート11cの還元体供給要素12によって入れられる還元剤と、混合しないであろう。
【0068】
流れ案内要素15は、最も外側の吸気ポート11からの排気ガスの向きを、細長い排気マニホルド10の中間部13に向かうように変える。このため、排気ガスと還元剤とを混合するのに十分な時間がある。
【0069】
管壁19は、通路31を覆い、通路31は、概して、明示的には図示されていないルーババルブによって、閉められてもよい。還元剤が供給されないティアツーモードでエンジンが動作している場合、バイパス32は開いており、ルーババルブは閉まっており、そして管壁19は、閉まっているルーババルブを乗り越える可能性がある排気ガスが、最も外側の吸気ポート11から通路31に直接吹き出すことを、防止する。
【0070】
エンジンがティアスリーモードで動作している場合、還元剤と混合された排気ガスは、2つの通路31を介して触媒容器20に進入し、積層体21に配置されている3つのSCR要素22を通る。
【0071】
SCR要素22は、触媒容器20の内部でレール25に沿って案内される積層体フレーム26に配置されている。
【0072】
触媒容器20の長手方向の端部にあるカバー27を開くと、積層体21を、触媒容器20から取り外すことができる。
【0073】
洗浄された排気ガスは、中央通路23に到着し、排気出口24を介して排気ガス後処理装置100から出る。
【0074】
【0075】
流れ案内要素15の管壁19は、締付けによって、仕切り壁30に固定されている。管壁19は、締付け要素33を備え、締付け要素33は、仕切り壁30に配置および固定されているブラケット34の中に、カチッとはまる。
【0076】
メンテナンスのために、排気マニホルド10の長手方向の端部におけるカバー35を取り外してもよく、管壁19を排気マニホルド10から引き出してもよく、通路31を閉めるためのルーババルブ(図示せず)を、洗浄または交換してもよい。その後に、管壁19を再び挿入してもよい。
【0077】
最も外側の吸気ポート11を介して排気マニホルド10に進入する排気ガスは、管壁19および仕切り壁30によって形成されている、吸気管18の開いた端部17を通る迂回路36をとって、通路31を通り抜けるように、流れ案内要素15によって向きを変えられる。
【符号の説明】
【0078】
1 燃焼エンジン
2 ピストン
2a ピストンロッド
3 シリンダ
3a 掃気スロット
4 クランクシャフト筐体
5 掃気溜
6 排気バルブ
7 シリンダカバー
8 ターボチャージャ
10 排気マニホルド
11 吸気ポート
11c 吸気ポート
12 還元体供給要素
13 中間部
15 案内要素
16 第1の端部
17 第2の端部
18 吸気管
19 管壁
20 触媒容器
21 積層体
22 SCR要素
23 中央通路
24 排気出口
25 レール
26 積層体フレーム
27 カバー
30 仕切り壁
31 通路
32 バイパス
33 締付け要素
34 ブラケット
35 カバー
36 迂回路
100 排気ガス後処理装置
【外国語明細書】