(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138401
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】自車両用支援システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/14 20060101AFI20230922BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20230922BHJP
【FI】
B60W30/14
B60W50/14
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023035633
(22)【出願日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】22465516
(32)【優先日】2022-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】322007626
【氏名又は名称】コンチネンタル・オートナマス・モビリティ・ジャーマニー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・イパティオフ
(72)【発明者】
【氏名】ダン・アレクサンドル・マテイ
(72)【発明者】
【氏名】ボグダン・ティルジオル
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA10
3D241BA60
3D241BB17
3D241BC01
3D241CC03
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD15
3D241CE03
3D241CE04
3D241DC22B
3D241DC22Z
3D241DC39Z
3D241DC51Z
(57)【要約】 (修正有)
【課題】追い越し操縦時の安全性が改善される、支援システムおよびその方法を提供する。
【解決手段】本発明は、自車両(1)用支援システムであって、自車両(1)の縦方向調整を制御可能な支援システムにおいて、自車両のアクチュエータおよび/またはセンサを制御する制御装置と、後方物体を検出可能な少なくとも1つの環境検出用センサ装置と、を備え、制御装置は後方物体の速度および/または自車両に対する後方物体の距離をセンサデータに基づいて算出し、後方物体の速度および/または自車両に対する後方物体の距離に基づいて、自車両を追い越すための後方物体の追い越しプロセスが存在するかまたは間近であるか否かが判断され、支援システムは、追い越しプロセスが存在するかまたは間近である限り、自車両の速度を制限するように構成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両(1)用支援システムであって、前記自車両(1)の縦方向調整を制御可能な支援システムにおいて、
前記自車両(1)のアクチュエータおよび/またはセンサを制御する制御装置(2)と、
後方物体を検出可能な少なくとも1つの環境検出用センサ装置と、を備え、
前記制御装置(2)は後方物体の速度および/または前記自車両(1)に対する前記後方物体の距離をセンサデータに基づいて算出し、
前記後方物体の速度および/または前記自車両(1)に対する前記後方物体の距離に基づいて、前記自車両(1)を追い越すための前記後方物体の追い越しプロセスが存在するかまたは間近であるか否かが判断され、
前記支援システムは、追い越しプロセスが存在するかまたは間近である限り、前記自車両(1)の速度を制限するように構成されている、支援システム。
【請求項2】
前記支援システムは、さらに、追い越しプロセスが存在するかまたは間近である限り、前記自車両(1)の速度および/または加速度を低下させることを特徴とする、請求項1に記載の支援システム。
【請求項3】
前記支援システムは、追い越しプロセスが存在するかまたは間近であることが確定した時点における前記自車両(1)の速度値に前記自車両(1)の速度を制限するように構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の支援システム。
【請求項4】
前記制御装置(2)は、様々な追い越し操縦にアクセス可能であり、追い越し操縦にはそれに対応する、前記自車両(1)を制限する速度値が設定されることを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載の支援システム。
【請求項5】
前記支援システムは、前記自車両(1)の速度の制限が前記自車両(1)の設定可能な自車速度からのみ、特に、50km/hの自車速度から行われるように構成されていることを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の支援システム。
【請求項6】
前記追い越しプロセスを判断するために、さらに、少なくとも1つの追加情報が参照され、追加情報として、特に、以下の情報:
-物体検出および環境情報ならびに/または
-車線情報および/または
-状況解釈および/または
-航法情報および/または
-運転者アテンション情報および/または
-前記後方物体の情報および/または
-自車両情報および/または
-インフラ情報
が考慮されることを特徴とする、請求項1~5の何れか1項に記載の支援システム。
【請求項7】
環境検出用センサ装置として、少なくとも1つのレーダセンサおよび/またはライダセンサおよび/またはカメラセンサおよび/または超音波センサが設けられることを特徴とする、請求項1~6の何れか1項に記載の支援システム。
【請求項8】
アクチュエータとして、制動装置またはモータ制御装置が設けられ、前記自車両(1)の速度は前記制動装置および/または前記モータ制御装置を制御することにより制限および/または減速されることを特徴とする、請求項1~7の何れか1項に記載の支援システム。
【請求項9】
前記自車両(1)を追い越すための前記後方車両の追い越しプロセスが確定されおよび/または前記支援システムが前記自車両(1)の速度を制限すると直ちに、光学的、音響的および/または触覚式の警告が運転者に出力されることを特徴とする、請求項1~8に記載の支援システム。
【請求項10】
前記追い越しプロセスが存在するかまたは間近である限り、前記接近中の物体の軌道が決定され、さらに、前記接近中の物体の前記軌道の方向への操舵動作が防止されることを特徴とする、請求項1~9の何れか1項に記載の支援システム。
【請求項11】
自車両(1)用の方法であって、支援システム、特に、請求項1~10に記載の支援システムに基づいて前記自車両(1)の縦方向調整を制御可能な方法において、
前記支援システムは、前記自車両(1)のアクチュエータおよびセンサ装置を制御する制御装置(2)と、
後方物体を検出可能な少なくとも1つの環境検出用センサ装置と、を備え、
後方物体の速度および/または前記自車両(1)に対する前記後方物体の距離を前記制御装置(2)によりセンサデータに基づいて算出し、
前記後方物体の速度および/または前記自車両(1)に対する前記後方物体の距離に基づいて、前記自車両(1)を追い越すための前記後方物体の追い越しプロセスが存在するかまたは間近であるか否かが判断され、
前記支援システムは、追い越しプロセスが存在するかまたは間近である限り、前記自車両(1)の速度を制限する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の縦方向調整を制御できるか少なくともこれに介入できる(例えば、アダプティブクルーズコントロール、非常制動支援または(部分)自動車両制御)自車両用支援システムおよび自車両の縦方向調整を特にそれに対応する支援システムに基づいて制御可能な自車両用の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な輸送手段、例えば、乗用車(PKW)、貨物自動車(LKW)または自動二輪車にはますます運転支援システムが装備されてきており、運転支援システムはセンサシステムを用いて環境を検出し、交通状況を認識することができ、例えば、制動または操舵に介入することによるか、光学的、触覚式または音響的警告を出力することにより、運転者を支援可能である。環境検出用センサシステムとして、一般に、レーダセンサ、ライダセンサ、カメラセンサ等が使用される。センサにより検出されたセンサデータに基づいて、これにより、環境に関する推論を導くことができ、これに基づいて、運転者警告指示と運転者警告情報、または自車両の操舵、制動および加速の調整指示が出力される。この際、センサデータと環境データを処理する支援機能により、例えば、他の交通参加者との事故を回避し、複雑な運転操縦を軽減することができ、運転タスクまたは車両誘導は支援されるか、それどころか完全に肩代わりされもする(部分/完全自動化)。例えば、車両は、例えば、非常制動支援(EBA:Emergency Brake Assist)、自動非常制動(AEB:Automatic Emergency Brake)により、速度追従調整(ACC:Adaptive Cruise ControlまたはACCシステム)、追従走行、速度調整により、または操舵支援を用いた能動的車線維持支援(LKA:Lane Keeping Assist)により車線維持が可能である。さらに、複数のこれらの機能を1つのシステムに統合することもできる。
【0003】
ここで、最近のACCシステムは、先行車両に合わせて速度調整することができるだけでなく、さらなる周辺環境、つまり隣接車線の物体または車両も速度調整に含めることができる。例えば、自車両の運転者の追い越し意図を(例えば、それに対応する操舵動作、方向指示器の点灯、ヨーレート測定等から)検出することができる。この場合、自車両が目標車線に時期尚早に(例えば、目標車線を物体が低速走行している場合に)侵入しないように、目標車線上の先行物体を調整の考慮に入れることができ、これにより、衝突を回避することができる。その一方、一般に、追い越しプロセスは、例えば、都市または田舎の道路では、対向車との正面衝突のリスクが存在するため、十分に迅速に行われなければならない。この場合、好適な手段は、追い越し意図が検出されると直ちにまたは自車両が追い越し車線上にあると直ちに、自車両の速度を上昇させることであり、これにより、追い越しプロセスと元の車線への復帰を可能な限り迅速に完了することができる。その一方で、この場合、追い越そうとする車両と対向車との重大な衝突がしばしば発生している。
【0004】
特許文献1から、車間距離および速度調整装置(ACCシステム)を用いた車両における追い越しプロセス支援方法が知られており、追い越し車線上の車両も考慮され、センサによって検出された交通状況または運転者の介入から追い越し要求が推論されると、一時的に、追い越し速度上昇の調整が行われる。また、隣接車線の車両が自車線上の先行車両よりも遅い場合、車線変更の準備のために隣接車線の車両との距離調整を行うことができ、この場合、この遅い車両に対して調整されるため、自車両の速度は減速される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第10114187号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術に基づく本発明の課題は、追い越し操縦時の安全性が改善される、支援システムおよびそれに対応する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は請求項1の特徴全体と並列独立請求項の特徴全体によって解決される。本発明の好適な形態は従属請求項において請求される。
【0008】
本発明に係る自車両用支援システムであって、自車両の縦方向調整(つまり、特に、自車両の速度加速度および移動経路)と必要に応じて自車両の横方向調整を制御(つまり、走行機能における完全自動化または部分自動化)可能な支援システムは自車両のアクチュエータおよび/またはセンサを制御する制御装置を含み、後方物体を検出可能な少なくとも1つの環境検出用センサ装置が設けられる。この場合、制御装置は後方物体(例えば、後方から自車両に接近中の車両)の速度および/または自車両に対する後方物体の距離をセンサデータに基づいて算出または検出することができる(特に、この場合、自車両に対する相対速度を検出可能である)。ここで、後方物体の速度および/または自車両に対する後方物体の距離に基づいて、自車両を追い越すための後方物体の追い越しプロセスが存在するかまたは間近であるか否かが判断されてよい。ここで本支援システムは、追い越しプロセスが存在するかまたは間近である限り、自車両の速度を制限するように構成されている。これにより、自車両の速度を追い越しプロセス中に上昇させることが防止される。これにより、後方物体または後方から接近中の車両の追い越しプロセスは、例えば、不注意により自車両を加速操縦が行われる場合の追い越しプロセスと比較して、時間的に短縮される。
【0009】
好適には、支援システムは、さらに、追い越しプロセスが存在するかまたは間近である限り、自車両の速度および/または加速度を低下させることができる。従って、追い越しプロセスが行われる際、安全性をより一層高めるために、(例えば、制動装置またはモータ制御装置の調整により)自車両を減速させることもできる。
【0010】
好ましくは、支援システムは、追い越しプロセスが存在するかまたは間近であることが確定した時点における自車両の速度値に自車両の速度を制限するように構成されている。
【0011】
代替的または追加的に、制御装置は、様々な追い越し操縦に(例えば、内部メモリを介して)アクセス可能であり、追い越し操縦または追い越し操縦の所定のカテゴリにはそれに対応する、自車両を制限する速度値が設定される(例えば、町中/町外の追い越し操縦の区別)。
【0012】
好適には、支援システムは、自車両の速度の制限が自車両の設定可能な自車速度からのみ、特に、50km/hの自車速度から行われるように構成可能であるため、例えば、機能調整は都市シナリオまたは渋滞時においてはオフにされ、車の流れが順調な交通状況において初めてオンになる。さらに、他の速度閾値、例えば、30km/h、60km/h、80km/hまたは100km/hも設定可能である。
【0013】
本発明の特別な形態によると、追い越しプロセスを判断するために、さらに、少なくとも1つの追加情報が参照されてよく、追加情報として、特に、以下の情報:
-物体検出および環境情報(例えば、自車両の周囲における環境センサを用いて検出された物体、特に、対向または先行する交通参加者、交通参加弱者等)ならびに/または
-車線情報(例えば、車線をカメラ支援による車線区分線認識に基づいて検出可能)および/または
-状況解釈(例えば、この場合、検出された物体、例えば、他の後続車両または周囲を、各状況を例えば格納/学習/訓練されたパターンに基づいて評価するモジュールに供給可能)および/または
-航法情報(例えば、航法システムにより受信または取得可能、例えば、地図情報、GPS情報、天候および気象状況、道路状態情報、交通量等)および/または
-運転者アテンション情報(例えば、内部空間センサにより運転者の注意力または疲れを判断可能であり、運転者の動き、運転者の姿勢、運転者の位置または目の動きが検出および解釈される)および/または
-後方物体の情報(例えば、その速度、その走行軌道、加速度、車両タイプ等であり、これらの情報はデータ伝送を用いても、いわゆるCar-to-Carで後方物体から自車両に送信可能であり、例えば、追い越し意図)および/または
-自車両情報(例えば、自車の動き、車両タイプ、ヨーレート、横方向加速度、加速度、速度、重量/積荷等)および/または
-インフラ情報(例えば、センサを用いて検出されるか、いわゆるCar-to-X伝送によりインフラから送信されるかの何れかである交通信号または交通標識)
が考慮される。
また、これにより、接近中の物体の追い越しプロセスをさらに安全にするために、自車速度を簡単に制限するだけで十分であるか否か、または追加で減速が行われるべきか否かを判断可能である。
【0014】
好ましくは、環境検出用センサ装置として、少なくとも1つのレーダセンサおよび/またはライダセンサおよび/またはカメラセンサおよび/または超音波センサが設けられる。
【0015】
また、アクチュエータとして、制動装置またはモータ制御装置が設けられてよく、自車両の速度は制動装置および/またはモータ制御装置を制御することにより制限および/または減速可能である。
【0016】
好適には、自車両を追い越すための後方車両の追い越しプロセスが確定されおよび/または支援システムが自車両の速度を制限すると直ちに、光学的、音響的および/または触覚式の警告が運転者に出力されてよい。例えば、車両の表示装置またはHMI(ヒューマンマシンインタフェース)インタフェース、航法システム、スピーカー、操舵ホイール振動または座席振動、表示ランプ等は、運転者に対して追い越しと、これに伴う速度制限そして必要に応じて減速を示す役割を果たしてよい。
【0017】
本発明の好ましい形態によると、さらに、追い越しプロセスが存在するかまたは間近である限り、接近中の物体の軌道が決定されることにより、さらに、接近中の物体の軌道の方向への操舵動作が防止される。例えば、車線決定および速度に基づいて、接近中の物体の軌道を予測することができ、その結果、この軌道の方向への操舵動作を回避することで、衝突の可能性がより一層低下する。例えば、自車両を追い越そうとする後方の高速走行車両が、追い越し車線に寄ってきていることが検出された場合、追い越し車線への自車両の車線変更を防止することができる。
【0018】
本発明は、自車両用の方法であって、支援システムに基づいて自車両の縦方向調整を制御可能な方法において、支援システムは、自車両のアクチュエータ(例えば、制動装置、モータ制御装置、操舵)およびセンサ装置を制御する制御装置と、後方物体を検出可能な少なくとも1つの環境検出用センサ装置(例えば、カメラ、レーダ、ライダ、超音波等)と、を備える。この場合、後方物体の速度および/または自車両に対する後方物体の距離を制御装置により環境検出用センサ装置のセンサデータに基づいて算出し、後方物体の速度および/または自車両に対する後方物体の距離に基づいて、自車両を追い越すための後方物体の追い越しプロセスが存在するかまたは間近であるか否かが判断され、支援システムは、追い越しプロセスが存在するかまたは間近である限り、自車両の速度を制限する、方法をさらに含む。特に、この場合、本方法は、上記支援システムの全ての特徴を含んでよい。
【0019】
以下、好適な実施形態例を参照して本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明に係る支援システムを備える自車両の簡略概略図である。
【
図2】
図2は、自車両が後方から接近中の車両を検出し、本発明に係る方法により速度を制限する交通状況の簡略図である。
【
図3】
図3は、自車両が後方から接近中の車両を検出し、対向車両を検出するさらなる交通状況の簡略図である。
【
図4】
図4は、自車両が先行車両に対して追従調整し、後方から接近中の車両を検出するさらなる交通状況の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1における参照符号1は自車両を示し、自車両1は本発明に係る支援システムを有し、このために制御装置2を備え、制御装置2は、例えば、中央制御ユニット(ECU(エレクトロニックコントロールユニット)、ADCU(アシステッド自動運転制御ユニット))であってよく、中央制御ユニットは、好適な環境検出用センサまたはセンサ装置に基づいて、周囲とそこに存在する物体を認識し分類することができる。本発明に係る方法は実際に制御装置2を介して実施され、制御装置2は後方物体の速度および/または自車両1に対する後方物体の距離をセンサデータに基づいて算出する。さらに、後方物体の速度および/または自車両1に対する後方物体の距離に基づいて、自車両1を追い越すための後方物体の追い越しプロセスが存在するかまたは間近であるか否かが判断され、支援システムは、追い越しプロセスが存在するかまたは間近である限り、自車両1の速度を制限するように構成されている。
【0022】
環境検出用センサ装置として、自車両1は、さらに自車両1のフロントガラス後方に配置されたカメラ3およびライダセンサ4と、自車両1のフロント領域に配置されたレーダセンサ5とを備える。また、本発明によると、後方物体を検出可能な少なくとも1つの環境検出用センサ装置が設けられる。このため、
図1の自車両1の構成において、後方レーダセンサ6a,6bと、後方向カメラ7と、サラウンドビューカメラ8a,8bとが設けられる。ここで明示的に、本発明は、任意のタイプおよび構成の公知の環境検出用センサ装置を含む。環境検出用センサを用いて、制御装置2は、例えば、他の交通参加者、道路周辺の建設物、ガードレール、路面標示、道路標識等を認識することができ、運転操作の実行/演算用に用いられる。
【0023】
また、運転者に対して追い越しと、これに伴う速度制限そして必要に応じて減速を表示し、つまりこれを警告する、HMI(ヒューマンマシンインタフェース)インタフェースの一部、航法システムの一部等であってよい表示装置9が設けられる。また、当然のことながら、自車両1を追い越すための後方物体の追い越しが確定されかつ/または自車両1の速度が支援システムにより制限されるとすぐに運転者に対して他の警告が出力されてもよい。
【0024】
本発明によると、制御装置2は、環境検出または環境検出用センサ装置のセンサデータに基づいて、車両制御における操舵介入および/または制動介入を行い、自車両1の運転者を支援しまたは自車両1を(部分)運転自動化により案内するために、制動装置10、モータ制御装置11または操舵装置12は制御される。また、無線モジュール13を設けてもよく、他の交通参加者(Car-to-Car)または他の上位ユニットつまりインフラ要素(Car-to-X)と通信するために、この無線モジュール13は、制御装置2に統合されたその構成要素であってもよい。
【0025】
これにより、様々な走行機能を実行可能な運転支援システムが運転者に利用可能となる。一般的な走行機能は、例えば、非常制動支援(EBA:Emergency Brake Assist)、操舵支援を用いた能動的車線維持支援(LKA:Lane Keeping Assist)、追従走行用アダプティブクルーズコントロール(ACC:Adaptive Cruise Control)等である。本発明に係る支援システムまたはその個々の構成要素は、さらに、制御装置2に統合されたその構成要素として実装されてよい。また、本発明に係る方法の実行の命令を含む、コンピュータプログラムをプログラムコードにより保存する、メモリまたはポータブルコンピュータ可読記憶媒体にアクセス可能な、マイクロコントローラまたはマイクロプロセッサを、制御装置2は含んでよい。
【0026】
図2は、自車両1が後方を走行しているか、リアまたは後方から接近中の車両20を検出する交通状況を示す。検出は、環境検出用後方向センサ装置を介して行われる(この場合、レーダセンサ6a,6bであり、また追加的または代替的にカメラ7,8a,8bが設けられてもよい)。ここでは、後方から接近中または後方車両20が、より高速で自車両1に接近していることが認識される。自車両1と比較してより高い速度および/または自車両1に対して縮小中の距離に基づいて、自車両1が接近中の車両20により追い越されるという間近の追い越しを推論することが可能である。これ以降、制御装置2は、アクチュエータ(制動装置10またはモータ制御装置11)をこれに応じて調整することで自車両1の速度を調節することができ、例えば、この自車両1の速度は、接近中の車両20の追い越しプロセスが初めて確定された時点における速度値に制限される。これにより、実際に、自車両1の速度はさらには増加されないため、接近中の車両20の追い越しプロセスは時間的に短縮され、つまり、自車両1を加速するための運転者要求または走行アクション(例えば、アクセルペダルの操作)もオーバーライドされる。また、制御装置2を介して、接近中の車両20の軌道方向への自車両1の運転者による横方向移動を防止またはオーバーライド可能であり、これにより追い越しプロセスの安全性はより一層改善される。さらに、運転者に対して警告が出力されるため、運転者は、他の交通参加者の追い越しプロセスが実行され、速度が制限/減速され、任意で、追い越し車線の方向への操舵が防止されることを知る。また、自車両1は、前方向レーダセンサ5を介して、さらに、自車両1の前方の車両も検出可能である。実際に、前方向レーダセンサ5(または前方向センサ装置)を用いることにより、後方車両20が後方向センサ(レーダセンサ6a,6b)により検出されなくなり前方向センサまたはレーダセンサ5により検出されると直ちに、この車両20の追い越しプロセスが完了したか否かを確認することができる。このために、さらなるセンサを設けてもよい。
【0027】
図3は、自車両1が後方から接近中の車両20と同時に対向車両21または対向車を検出するさらなる交通状況を示す。ここで、交通状況(2つの互いに走行接近中の車両)と、必要に応じて状況解釈は、高い衝突危険性または危険状況を示している。実際に、制御装置2は、この場合、自車速度の制限に加えて、自車両1の速度を、非常制動まで、さらに減速させることができ、これにより車両20の追い越しプロセスを短縮することができ、車両20と車両21の衝突または車両20が早期に割り込む場合には自車両1と車両20の衝突が防止される。
【0028】
図4は、自車両1が追従走行(ACCモード)し、制御装置2が先行車両22との距離を先行車両22の速度と予め設定された距離値とに応じてこれに調節する交通状況を示す。また、この交通状況において、後方車両21の追い越しプロセスが検出されると直ちに、制御装置2を介して自車両1の速度を制限および/または減速することができる。この場合、ACCモードのパラメータは短期間オーバーライドされてよく、先行車両22との距離は速度制限により拡大する。そして、車両20の追い越しプロセスが完了すると直ちに、再び距離追従調整が設定されたACCパラメータに従って行われ、これにより先行車両22との距離を再びACCシステムの設定に応じて縮小することができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
図4は、自車両1が追従走行(ACCモード)し、制御装置2が先行車両22との距離を先行車両22の速度と予め設定された距離値とに応じてこれに調節する交通状況を示す。また、この交通状況において、後方車両21の追い越しプロセスが検出されると直ちに、制御装置2を介して自車両1の速度を制限および/または減速することができる。この場合、ACCモードのパラメータは短期間オーバーライドされてよく、先行車両22との距離は速度制限により拡大する。そして、車両20の追い越しプロセスが完了すると直ちに、再び距離追従調整が設定されたACCパラメータに従って行われ、これにより先行車両22との距離を再びACCシステムの設定に応じて縮小することができる。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の観点として以下も含む。
1.
自車両(1)用支援システムであって、前記自車両(1)の縦方向調整を制御可能な支援システムにおいて、
前記自車両(1)のアクチュエータおよび/またはセンサを制御する制御装置(2)と、
後方物体を検出可能な少なくとも1つの環境検出用センサ装置と、を備え、
前記制御装置(2)は後方物体の速度および/または前記自車両(1)に対する前記後方物体の距離をセンサデータに基づいて算出し、
前記後方物体の速度および/または前記自車両(1)に対する前記後方物体の距離に基づいて、前記自車両(1)を追い越すための前記後方物体の追い越しプロセスが存在するかまたは間近であるか否かが判断され、
前記支援システムは、追い越しプロセスが存在するかまたは間近である限り、前記自車両(1)の速度を制限するように構成されている、支援システム。
2.
前記支援システムは、さらに、追い越しプロセスが存在するかまたは間近である限り、前記自車両(1)の速度および/または加速度を低下させることを特徴とする、上記1に記載の支援システム。
3.
前記支援システムは、追い越しプロセスが存在するかまたは間近であることが確定した時点における前記自車両(1)の速度値に前記自車両(1)の速度を制限するように構成されていることを特徴とする、上記1または2に記載の支援システム。
4.
前記制御装置(2)は、様々な追い越し操縦にアクセス可能であり、追い越し操縦にはそれに対応する、前記自車両(1)を制限する速度値が設定されることを特徴とする、上記1~3の何れか1つに記載の支援システム。
5.
前記支援システムは、前記自車両(1)の速度の制限が前記自車両(1)の設定可能な自車速度からのみ、特に、50km/hの自車速度から行われるように構成されていることを特徴とする、上記1~4の何れか1つに記載の支援システム。
6.
前記追い越しプロセスを判断するために、さらに、少なくとも1つの追加情報が参照され、追加情報として、特に、以下の情報:
-物体検出および環境情報ならびに/または
-車線情報および/または
-状況解釈および/または
-航法情報および/または
-運転者アテンション情報および/または
-前記後方物体の情報および/または
-自車両情報および/または
-インフラ情報
が考慮されることを特徴とする、上記1~5の何れか1つに記載の支援システム。
7.
環境検出用センサ装置として、少なくとも1つのレーダセンサおよび/またはライダセンサおよび/またはカメラセンサおよび/または超音波センサが設けられることを特徴とする、上記1~6の何れか1つに記載の支援システム。
8.
アクチュエータとして、制動装置またはモータ制御装置が設けられ、前記自車両(1)の速度は前記制動装置および/または前記モータ制御装置を制御することにより制限および/または減速されることを特徴とする、上記1~7の何れか1つに記載の支援システム。
9.
前記自車両(1)を追い越すための前記後方車両の追い越しプロセスが確定されおよび/または前記支援システムが前記自車両(1)の速度を制限すると直ちに、光学的、音響的および/または触覚式の警告が運転者に出力されることを特徴とする、上記1~8に記載の支援システム。
10.
前記追い越しプロセスが存在するかまたは間近である限り、前記接近中の物体の軌道が決定され、さらに、前記接近中の物体の前記軌道の方向への操舵動作が防止されることを特徴とする、上記1~9の何れか1つに記載の支援システム。
11.
自車両(1)用の方法であって、支援システム、特に、上記1~10に記載の支援システムに基づいて前記自車両(1)の縦方向調整を制御可能な方法において、
前記支援システムは、前記自車両(1)のアクチュエータおよびセンサ装置を制御する制御装置(2)と、
後方物体を検出可能な少なくとも1つの環境検出用センサ装置と、を備え、
後方物体の速度および/または前記自車両(1)に対する前記後方物体の距離を前記制御装置(2)によりセンサデータに基づいて算出し、
前記後方物体の速度および/または前記自車両(1)に対する前記後方物体の距離に基づいて、前記自車両(1)を追い越すための前記後方物体の追い越しプロセスが存在するかまたは間近であるか否かが判断され、
前記支援システムは、追い越しプロセスが存在するかまたは間近である限り、前記自車両(1)の速度を制限する、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両(1)用支援システムであって、前記自車両(1)の縦方向調整を制御可能な支援システムにおいて、
前記自車両(1)のアクチュエータおよび/またはセンサを制御する制御装置(2)と、
後方物体を検出可能な少なくとも1つの環境検出用センサ装置と、を備え、
前記制御装置(2)は後方物体の速度および/または前記自車両(1)に対する前記後方物体の距離をセンサデータに基づいて算出し、
前記後方物体の速度および/または前記自車両(1)に対する前記後方物体の距離に基づいて、前記自車両(1)を追い越すための前記後方物体の追い越しプロセスが存在するかまたは間近であるか否かが判断され、
前記支援システムは、追い越しプロセスが存在するかまたは間近である限り、前記自車両(1)の速度を制限するように構成されている、支援システム。
【請求項2】
前記支援システムは、さらに、追い越しプロセスが存在するかまたは間近である限り、前記自車両(1)の速度および/または加速度を低下させることを特徴とする、請求項1に記載の支援システム。
【請求項3】
前記支援システムは、追い越しプロセスが存在するかまたは間近であることが確定した時点における前記自車両(1)の速度値に前記自車両(1)の速度を制限するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の支援システム。
【請求項4】
前記制御装置(2)は、様々な追い越し操縦にアクセス可能であり、追い越し操縦にはそれに対応する、前記自車両(1)を制限する速度値が設定されることを特徴とする、請求項1に記載の支援システム。
【請求項5】
前記支援システムは、前記自車両(1)の速度の制限が前記自車両(1)の設定可能な自車速度からのみ、特に、50km/hの自車速度から行われるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の支援システム。
【請求項6】
前記追い越しプロセスを判断するために、さらに、少なくとも1つの追加情報が参照され、追加情報として、特に、以下の情報:
-物体検出および環境情報ならびに/または
-車線情報および/または
-状況解釈および/または
-航法情報および/または
-運転者アテンション情報および/または
-前記後方物体の情報および/または
-自車両情報および/または
-インフラ情報
が考慮されることを特徴とする、請求項1に記載の支援システム。
【請求項7】
環境検出用センサ装置として、少なくとも1つのレーダセンサおよび/またはライダセンサおよび/またはカメラセンサおよび/または超音波センサが設けられることを特徴とする、請求項1に記載の支援システム。
【請求項8】
アクチュエータとして、制動装置またはモータ制御装置が設けられ、前記自車両(1)の速度は前記制動装置および/または前記モータ制御装置を制御することにより制限および/または減速されることを特徴とする、請求項1に記載の支援システム。
【請求項9】
前記自車両(1)を追い越すための前記後方車両の追い越しプロセスが確定されおよび/または前記支援システムが前記自車両(1)の速度を制限すると直ちに、光学的、音響的および/または触覚式の警告が運転者に出力されることを特徴とする、請求項1に記載の支援システム。
【請求項10】
前記追い越しプロセスが存在するかまたは間近である限り、前記接近中の物体の軌道が決定され、さらに、前記接近中の物体の前記軌道の方向への操舵動作が防止されることを特徴とする、請求項1に記載の支援システム。
【請求項11】
自車両(1)用の方法であって、支援システム、特に、請求項1~10の何れか一項に記載の支援システムに基づいて前記自車両(1)の縦方向調整を制御可能な方法において、
前記支援システムは、前記自車両(1)のアクチュエータおよびセンサ装置を制御する制御装置(2)と、
後方物体を検出可能な少なくとも1つの環境検出用センサ装置と、を備え、
後方物体の速度および/または前記自車両(1)に対する前記後方物体の距離を前記制御装置(2)によりセンサデータに基づいて算出し、
前記後方物体の速度および/または前記自車両(1)に対する前記後方物体の距離に基づいて、前記自車両(1)を追い越すための前記後方物体の追い越しプロセスが存在するかまたは間近であるか否かが判断され、
前記支援システムは、追い越しプロセスが存在するかまたは間近である限り、前記自車両(1)の速度を制限する、方法。
【外国語明細書】