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特開2023-138417家庭用浴室内に定量噴射型エアゾールの有効成分を均一に付着させる方法
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  • 特開-家庭用浴室内に定量噴射型エアゾールの有効成分を均一に付着させる方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138417
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】家庭用浴室内に定量噴射型エアゾールの有効成分を均一に付着させる方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/06 20060101AFI20230922BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20230922BHJP
   A01N 31/08 20060101ALI20230922BHJP
   A01N 31/04 20060101ALI20230922BHJP
   A61L 2/22 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
A01N25/06
A01P3/00
A01N31/08
A01N31/04
A61L2/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037540
(22)【出願日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2022042298
(32)【優先日】2022-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】田中 智一
(72)【発明者】
【氏名】立花 誠治
【テーマコード(参考)】
4C058
4H011
【Fターム(参考)】
4C058AA07
4C058BB07
4C058CC02
4C058DD01
4C058JJ01
4C058JJ24
4H011AA02
4H011AA03
4H011BA01
4H011BB03
4H011BC03
4H011DA13
4H011DB05
4H011DD05
4H011DE16
4H011DG15
(57)【要約】
【課題】換気条件下の家庭用浴室内において定量噴射型エアゾールを噴射した場合に、噴霧粒子が浴室内から排出されず、浴室内の天井や壁面に付着することが出来る、さらには、家庭用浴室内の空間中に滞留している水分粒子が多い状態であっても、有効成分を浴室内に十分に拡散することが出来る、家庭用浴室内に前記成分(A)を床面、壁面、天井面の全てに均一に付着させる方法、家庭浴室用定量噴射型エアゾール及び、家庭用浴室内の除菌、殺菌、抗菌または防カビ方法を提供すること。
【解決手段】家庭用浴室において、換気条件下とし、(A)オクタノール/水分配係数(LogP)値が1.5以上である、非イオン性殺菌剤または抗菌性香料成分から選択される1種以上及び、(B)20℃における蒸気圧が1kPa以上である溶剤を含む定量噴射型エアゾールを用いて、前記成分(A)を床面、壁面、天井面の全てに均一に付着させる方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
家庭用浴室において、換気条件下とし、
(A)オクタノール/水分配係数(LogP)値が1.5以上である、非イオン性殺菌剤または抗菌性香料成分から選択される1種以上及び、
(B)20℃における蒸気圧が1kPa以上である溶剤
を含む定量噴射型エアゾールを用いて、
前記成分(A)を床面、壁面、天井面の全てに均一に付着させる方法。
【請求項2】
前記家庭用浴室内の相対湿度が70%RH以上である請求項1の前記成分(A)を床面、壁面、天井面の全てに均一に付着させる方法。
【請求項3】
(A)オクタノール/水分配係数(LogP)値が1.5以上である、非イオン性殺菌剤または抗菌性香料成分から選択される1種以上及び、
(B)20℃における蒸気圧が1kPa以上である溶剤
を含有する原液と噴射剤からなる、
高湿度、換気条件下で用いる家庭浴室用定量噴射型エアゾール。
【請求項4】
(A)オクタノール/水分配係数(LogP)値が1.5以上である、非イオン性殺菌剤または抗菌性香料成分から選択される1種以上及び、
(B)20℃における蒸気圧が1kPa以上である溶剤
を含む定量噴射型エアゾールを、
高湿度、換気条件下の家庭用浴室空間内に向けて噴射する、
家庭用浴室内の除菌、殺菌、抗菌または防カビ方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気条件下における家庭用浴室内に定量噴射型エアゾールの有効成分を均一に付着させる方法、家庭浴室用定量噴射型エアゾール及び、家庭用浴室内の除菌、殺菌、抗菌または防カビ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有効成分と溶剤を含有する原液と噴射剤とからなるエアゾール組成物を、1回の噴射操作で一定量噴射する定量噴射型エアゾールが知られている(例えば、特許文献1等)。この定量噴射型エアゾールは、1回の噴射操作で所定量の有効成分が吐出されるので、使用者による操作方法の差(噴霧ボタンの押し下げ方法や押し下げ時間による噴霧量等の差)が生じにくく、効果のバラツキが少ないという利点がある。
この定量噴射型エアゾールは、微生物汚染の抑制や予防、殺虫や防虫などの目的で家庭内において使用されるようになってきた。
しかしながら、定量噴射型エアゾールを家庭用浴室内で使用する際に換気されている場合も多く、換気条件下の家庭用浴室内で定量噴射型エアゾールを噴射しても、噴霧粒子が浴室内の天井や壁面に付着する前に、浴室内の気流にのって噴霧粒子が浴室内から排出されてしまうという問題があった。さらに、入浴後の家庭用浴室内は、浴室内の空間中に滞留している水分粒子が多いため、水溶性の高い有効成分は空間中の水分粒子に取り込まれやすく、噴霧粒子の大きさによっては水分粒子との衝突頻度が高まるなどして、噴霧粒子が浴室内に十分拡散されないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/117164号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、換気条件下の家庭用浴室内において定量噴射型エアゾールを噴射した場合に、噴霧粒子が浴室内から排出されず、噴霧粒子が家庭用浴室内の床面、壁面、天井面の全てに均一に有効成分を付着することが出来る、さらには、家庭用浴室内の空間中に滞留している水分粒子が多い状態であっても、有効成分を浴室内に十分に拡散することが出来る、家庭用浴室内に前記成分(A)を床面、壁面、天井面の全てに均一に付着させる方法、家庭浴室用の定量噴射型エアゾール及び、家庭用浴室内の除菌、殺菌、抗菌または防カビ方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、より簡便に非水溶性の非イオン性殺菌剤または抗菌性香料成分(有効成分)を家庭用浴室内という湿潤環境(高湿度)に存在する対象物に付着させ、除菌、殺菌、抗菌または防カビ等の所期の効果を発現させるための手法を種々検討した結果、(A)オクタノール/水分配係数(LogP)値が1.5以上である、非イオン性殺菌剤または抗菌性香料成分から選択される1種以上及び、(B)20℃における蒸気圧が1kPa以上である溶剤を併用することにより、換気条件下において有効成分が浴室から排出されないことを、さらには、湿潤環境(高湿度)下において有効成分を浴室内に十分に拡散することができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0006】
本発明は、詳しくは以下の事項を要旨とする。
1.家庭用浴室において、換気条件下とし、
(A)オクタノール/水分配係数(LogP)値が1.5以上である、非イオン性殺菌剤または抗菌性香料成分から選択される1種以上及び、
(B)20℃における蒸気圧が1kPa以上である溶剤
を含む定量噴射型エアゾールを用いて、
前記成分(A)を床面、壁面、天井面の全てに均一に付着させる方法。
2.前記家庭用浴室内の相対湿度が70%RH以上である1.の前記成分(A)を床面、壁面、天井面の全てに均一に付着させる方法。
3.(A)オクタノール/水分配係数(LogP)値が1.5以上である、非イオン性殺菌剤または抗菌性香料成分から選択される1種以上及び、
(B)20℃における蒸気圧が1kPa以上である溶剤
を含有する原液と噴射剤からなる、
高湿度、換気条件下で用いる家庭浴室用定量噴射型エアゾール。
4.(A)オクタノール/水分配係数(LogP)値が1.5以上である、非イオン性殺菌剤または抗菌性香料成分から選択される1種以上及び、
(B)20℃における蒸気圧が1kPa以上である溶剤
を含む定量噴射型エアゾールを、
高湿度、換気条件下の家庭用浴室空間内に向けて噴射する、
家庭用浴室内の除菌、殺菌、抗菌または防カビ方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の家庭用浴室内の床面、壁面、天井面の全てに、有効成分である成分(A)を均一に付着させる方法は、換気条件下の家庭用浴室内において噴霧粒子が浴室内から排出されずに、浴室内の床面、壁面、天井面の全てに、有効成分である成分(A)を含む噴霧粒子を均一に付着させることが出来るため、長期間にわたり有効成分である成分(A)による所期の効果を発揮し得るため極めて有用である。
さらに、家庭用浴室内の空間中に滞留している水分粒子が多い状態であっても、有効成分である成分(A)を浴室内に十分に拡散することが出来るので、入浴直後の浴室内であっても使用することが可能となり有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例記載の「浴室内の床面、壁面、天井面への付着効果の確認試験」の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
<成分(A)>
本発明における成分(A)は、オクタノール/水分配係数(LogP)値が1.5以上である、非イオン性殺菌剤または抗菌性香料成分から選択される1種以上の有効成分である。オクタノール/水分配係数(LogP)値は、オクタノール及び水の2つの溶媒中の有効成分の溶解度差の測定値である。オクタノール/水分配係数(LogP)値は次の式で決定される。
LogP=Log(Coct/Cwater
ここで、「Coct」はオクタノール中の有効成分のモル濃度を表し、「Cwater」は水中の有効成分のモル濃度を表す。
なお、本発明における(LogP)値は、米国環境保護庁(EPA)から入手できる化学物質の物性推算ソフトウェアの1つであるEPI suite version4.11により計算した(LogKow)の推算値を意味する。
本発明における成分(A)が、オクタノール/水分配係数(LogP)値が1.5以上の、非イオン性殺菌剤または抗菌性香料成分から選択される1種以上の有効成分であるため、家庭用浴室空間内に向けて噴射された定量噴射型エアゾールの噴霧粒子は、浴室内の水分粒子との相溶性が低くなり、水分粒子に取り込まれることもないので、有効成分である成分(A)の浴室空間内での拡散性の低下を抑制することが出来る。
本発明における成分(A)のオクタノール/水分配係数(LogP)値は、1.5以上8以下の範囲が好ましく、1.7以上5.5以下の範囲がより好ましく、2以上5以下の範囲がさらに好ましい。
【0010】
本発明における有効成分である成分(A)は、オクタノール/水分配係数(LogP)値が1.5以上である、非イオン性殺菌剤または抗菌性香料成分から選択される1種以上であり、家庭用浴室内において噴霧処理できる薬剤成分であれば特に限定されない。
本発明におけるオクタノール/水分配係数(LogP)値が1.5以上である非イオン性殺菌剤としては、例えば、抗菌活性を有することが公知であるフェノール骨格を有するフェノール化合物、3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメート(IPBC)、ジヨードメチル-p-トリルスルホン、カプリン酸モノグリセリド、[(4-クロロフェノキシ)メチル]3-ヨード-2-プロピニルエーテル等の環境衛生用抗菌成分、テブコナゾール、チアベンダゾール、エニルコナゾール等のアゾール系殺菌剤、プロシミドン、バイレトン、モレスタン等の合成殺菌剤、等が挙げられる。
【0011】
本発明における有効成分である成分(A)の非イオン性殺菌剤としては、抗菌活性を有することが公知であるフェノール骨格を有するフェノール化合物が好ましい。このフェノール化合物は、油溶性(非水溶性)の抗菌活性を有するもので、ベンゼンの水素原子の1つが水酸基に置換した化学構造を基本骨格とする化合物である。このようなフェノール化合物としては、例えば、フェノールや、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、シクロヘキシルフェノール、キシレノール、メチルエチルフェノール、メチルイソプロピルフェノール、ジ-t-ブチルフェノール等のアルキル置換フェノール、メトキシフェノール、オイゲノール等の2価フェノールのアルキルエーテル誘導体、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、サリチル酸等のヒドロキシ安息香酸やサリチル酸メチル等のヒドロキシ安息香酸アルキルエステル誘導体などが挙げられる。
これらの中でも、酸素原子以外にヘテロ原子を有さないフェノール化合物が好ましく、アルキル置換フェノールがより好ましく、炭素数1~6のアルキル基が1つ又は2つ置換したアルキル置換フェノールがさらに好ましく、特に、炭素数1~6のアルキル基が2つ置換したジアルキル置換フェノールが好ましい。アルキル置換フェノールとしては、4-イソプロピル-3-メチルフェノール(IPMP)、2-イソプロピル-5-メチルフェノール(チモール)、5-イソプロピル-2-メチルフェノール(カルバクロール)のいずれか1種以上であることが好ましい。
上記の抗菌活性を有することが公知であるフェノール骨格を有するフェノール化合物は、換気条件下、さらには高湿度条件下の家庭用浴室内において、床面、壁面、天井面の全てに対して当該フェノール化合物が均一に付着するのみならず、その付着量が高く、さらには、浴室内に均一に拡散し得る点において好適である。
【0012】
本発明における有効成分である成分(A)の抗菌性香料成分としては、例えば、酢酸リナリル、α-ピネン、β-ピネン、シトロネロール、シトロネラール、ゲラニオール、ネロール、シトラール(ゲラニアール)、ネラール、アネトール、リナロール、メントール、α-テルピネオール、テルピネン-4-オール、1,8-シネオール(ユーカリプトール)、カルボン、カンファー、メントン、ボルネオール、プラウノトール、ファルネソール、ネロリドール、α-ビサボロール、α-サンタロール、ミルセン、酢酸ゲラニル、酢酸メンチル、酢酸ボルニル、ペリルアルコール、ペリルアルデヒド、3-カレンオキシド(3,4-エポキシカラン)、クミンアルデヒド、ピペリトン、イソメントン、アルテミシニン、チモキノン、ヒノキチオール、シンナムアルデヒド、p-アニスアルデヒド、ゲルマクレンD、β-カリオフィレン、安息香酸ゲラニル、リモネン、酢酸シトロネリル、酢酸メンタニル、酢酸テルピニル、メントフラン、酢酸イソボルニル、6-ジンゲロール、ヘリオナール、安息香酸、安息香酸メチル、α-サントニン、シス-3-ヘキセナール、フェネチルアルコール(2-フェニルエタノール)、トランス-2-ヘキセナール、トランス-2-デセナール、トランス-4-デセナール等が挙げられる。
これらの中でも、本発明における有効成分である成分(A)の抗菌性香料成分としては、酢酸リナリル、α-ピネン、β-ピネン、シトロネロール、シトロネラール、ゲラニオール、ネロール、シトラール(ゲラニアール)、ネラール、アネトール、リナロール、メントール、α-テルピネオール、テルピネン-4-オール、1,8-シネオール(ユーカリプトール)、カルボン、カンファー、メントン、ボルネオール、プラウノトール、ファルネソール、ネロリドール、α-ビサボロール、α-サンタロール、ミルセン、酢酸ゲラニル、酢酸メンチル、酢酸ボルニル、ペリルアルコール、ペリルアルデヒド、3-カレンオキシド(3,4-エポキシカラン)、クミンアルデヒド、ピペリトン、イソメントン、アルテミシニン、チモキノン、ヒノキチオール、シンナムアルデヒド、p-アニスアルデヒド、フェネチルアルコール(2-フェニルエタノール)、トランス-2-ヘキセナール、トランス-2-デセナール、トランス-4-デセナールが好ましく、酢酸リナリル、α-ピネン、β-ピネン、シトロネロール、シトロネラール、ゲラニオール、ネロール、シトラール(ゲラニアール)、ネラール、アネトール、リナロール、メントール、α-テルピネオール、テルピネン-4-オール、1,8-シネオール(ユーカリプトール)、カルボン、カンファー、メントン、ボルネオール、フェネチルアルコール(2-フェニルエタノール)がより好ましく、酢酸リナリル、シトロネラール、ゲラニオール、リナロール、メントール、1,8-シネオール(ユーカリプトール)、カンファー、メントン、ボルネオール、フェネチルアルコール(2-フェニルエタノール)、トランス-2-ヘキセナール、トランス-2-デセナール、トランス-4-デセナールがさらに好ましい。
これらの抗菌性香料成分は、換気条件下、さらには高湿度条件下の家庭用浴室内において、床面、壁面、天井面の全てに対して当該抗菌性香料成分が均一に付着するのみならず、その付着量が高く、さらには、浴室内に均一に拡散し得る点において好適である。
【0013】
本発明における成分(A)としては、4-イソプロピル-3-メチルフェノール、モノカプリン、リナロール、酢酸リナリル、メントン、酢酸メンチル、シトロネラール、ゲラニオール、メントール、カンファー、1,8-シネオール(ユーカリプトール)、ボルネオール、トランス-2-ヘキセナールが好ましく、4-イソプロピル-3-メチルフェノール、モノカプリン、リナロール、酢酸リナリル、メントン、酢酸メンチル、シトロネラール、ゲラニオール、メントール、トランス-2-ヘキセナール、がより好ましく、4-イソプロピル-3-メチルフェノール、モノカプリン、リナロール、酢酸リナリル、メントン、酢酸メンチル、トランス-2-ヘキセナールがさらに好ましい。
【0014】
<成分(B)>
本発明における成分(B)は、20℃における蒸気圧が1kPa以上である溶剤である。
本発明における成分(B)の溶剤の20℃における蒸気圧は、1kPa以上100kPa以下の範囲が好ましく、1kPa以上90kPa以下の範囲がより好ましく、1kPa以上80kPa以下の範囲がさらに好ましく、1kPa以上10kPa以下の範囲が特に好ましい。
本発明における成分(B)の溶剤としては、99.5%エタノール(5.9kPa/20℃)、イソプロパノール(4.3kPa/20℃)、イソペンタン(79kPa/20℃)、イソブタノール(1.2kPa/20℃)が好ましい。
【0015】
本発明における、有効成分である成分(A)及び成分(B)の溶剤の各含有量は、有効成分である成分(A)や成分(B)の種類や目的に応じて適宜決定すれば良い。成分(A)の有効成分1重量部に対して、(B)の溶剤を2~2000重量部の範囲とするのが好ましく、2.5~1500重量部の範囲とするのがより好ましく、3~1000重量部の範囲とするのがさらに好ましい。
また、原液中に、成分(A)を0.1~40w/v%の範囲で含有することが好ましく、1~20w/v%の範囲で含有することがより好ましい。
【0016】
<定量噴射型エアゾール>
定量噴射型エアゾールとは、1回の噴霧操作で一定量のエアゾール組成物を噴霧するエアゾールである。定量噴射型エアゾールは、エアゾールバルブに取り付けられた噴霧部材(以下、噴霧ボタンともいう。)が使用者に操作されることにより、エアゾールバルブを通して耐圧容器内のエアゾール組成物(原液と噴射剤)の一定量が吐出され、原液は噴射剤によって粒子状の噴霧粒子とされて噴霧される。
【0017】
(噴射力)
本発明における定量噴射型エアゾールは、エアゾール用耐圧容器に原液と噴射剤、すなわちエアゾール組成物が充填され、噴霧ボタンを1回押圧(1プッシュ)することにより一定量のエアゾール組成物が噴霧される。25℃の条件下で、噴口から20cm離れた位置におけるエアゾール組成物の噴射力は、5~40gfであることが好ましく、6~35gfであることがより好ましく、8~30gfであることがさらに好ましい。噴射力が前記範囲であることで、噴霧時間を所望の範囲とすることができる。
なお、前記噴射力は、25℃の条件下で、定量噴射型エアゾールの噴口から20cmの距離を置いたところに横倒しにしたデジタルフォースゲージ(例えば、株式会社イマダ製、型番:DS2-2N)に装着した直径φ60mmの円状の平板の中心に向かってエアゾール組成物を噴霧した際の最大値を噴射荷重とし、平均を算出することにより測定できる。
【0018】
(定量噴射型エアゾールバルブ)
本発明における定量噴射型エアゾールバルブは、噴霧部材を1回操作することで一定量のエアゾール組成物が噴霧される定量型のエアゾールバルブであり、その噴霧量は、1回の噴霧操作で0.1~3.0mLの範囲とされている。1回当たりの噴霧量が0.1~3.0mLの範囲の所定量となるエアゾール組成物を、貯留できるハウジングを有する定量噴射型エアゾールバルブを用いることで、1回の噴霧操作により0.1~3.0mLの範囲の所定の一定量を噴霧することができ、薬剤の噴霧が可能となる。定量噴射型エアゾールバルブの1回の噴霧操作による噴霧量は、前記範囲であれば所定の噴霧量を適宜設定することができるが、本発明においては0.1~3.0mLの範囲が好ましく、0.5~3.0mLの範囲がより好ましく、0.8~3.0mLの範囲が特に好ましい。また、1回の処理あたりの噴霧回数は、噴霧する空間の広さに応じて適宜調整することができるが、1回の処理あたり1~10回噴霧が好ましく、1~5回噴霧がさらに好ましく、1~3回噴霧が特に好ましい。
【0019】
(噴射剤)
エアゾール剤に使用される噴射剤としては、公知のものを広く使用することができ、例えば液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、(HFO、HFC等の)代替フロン、炭酸ガス、窒素ガス等を挙げることができる。これらの中でもLPG、ジメチルエーテルを用いるのが好ましい。このエアゾール剤とする場合においては、噴射剤量をエアゾール組成物全体の30~95容量%、特に50~95容量%とし、原液をエアゾール組成物全体の70~5容量%、特に50~5容量%とすることができる。
【0020】
(噴霧部材)
本発明における噴霧部材(噴霧ボタン)は、定量噴射型エアゾールバルブを介して耐圧容器に取り付けられる部材である。噴霧ボタンには、定量噴射型エアゾールバルブのステム孔を介して耐圧容器から取り込まれるエアゾール組成物が通過する操作部内通路とエアゾール組成物が噴霧される噴口が形成されている。
本発明における噴霧ボタンの噴口の内径(噴口孔径)は、噴霧時間を所望の範囲とするという観点から、φ0.45~3.0mmであることが好ましく、φ0.5~2.0mmがより好ましく、φ0.6~1.6mmがさらに好ましい。また、これらと等しい面積を有する複数の噴口を有していても問題ない。
【0021】
(噴霧時間)
本発明における定量噴射型エアゾールは、1回の噴霧操作による噴霧時間が1秒以内である。1回当たりの噴霧量が0.1~3.0mLの範囲の所定量で、特定の成分(A)と成分(B)を含有する本発明におけるエアゾール組成物を1秒以内で噴霧させることにより、成分(A)の有効成分の拡散性を効率良く高めることができるため、換気条件下の家庭用浴室内の床面、壁面、天井面に対する、有効成分である成分(A)を均一に付着させ、その付着量を向上させ、さらには、有効成分である成分(A)を浴室内に十分に拡散することができるものと本発明者らは考えている。
1回の噴霧操作による噴霧時間は、0.75秒以内であることが好ましく、0.05~0.75秒がより好ましく、0.15~0.75秒がさらに好ましく、0.20~0.75秒が特に好ましい。
本発明において、1回の噴霧操作による噴霧時間を調整する方法としては、例えば、噴霧ボタンの噴口の大きさを調整する方法、定量噴射型エアゾールの噴射力を調整する方法、エアゾールバルブのステム孔径を調整する方法、噴射剤の圧力を調整する方法、及びこれらの組み合せ等が挙げられる。
【0022】
(粒子径)
本発明における、特定の成分(A)と成分(B)を含有する本発明におけるエアゾール組成物が噴口から噴霧される時の粒子径については、特に制限はないものの、噴口から50cmの噴霧距離における平均粒子径(D50)が、5μm以上100μm未満の範囲であると、換気条件下の家庭用浴室内の床面、壁面、天井面に対する、有効成分である成分(A)を均一に付着させて、その付着量を向上させ、さらには、有効成分である成分(A)を浴室内に十分に拡散させる点において好適である。
上記粒子径は粒度分布測定容器により測定される数値を意味する。具体的には、粒度分布測定容器のレーザー光発光部より受光部に照射されるレーザービームと、試験検体の噴口との距離が50cm程度となる位置から、噴霧物がレーザービームを垂直に通過するように試験検体を噴霧する。噴霧中に測定を行い、噴霧物の粒度分布を自動演算処理装置により解析することで求めることができる。測定器はマイクロトラック・ベル株式会社製の「LDSA-1400A」を用いることができる。測定は、25℃条件下で行う。
【0023】
<その他の成分>
本発明における、成分(A)の有効成分及び成分(B)の溶剤を含有する原液は、本発明の効果を阻害しない範囲において、消臭成分(フラボノイド類等)などのほか、成分(A)の有効成分以外の香料成分等を配合してもよく、定量噴射型エアゾールに通常利用される製剤助剤、例えば、界面活性剤、固体担体等を配合してもよい。
【0024】
製剤助剤として使用できる界面活性剤としては、特に限定されず、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン界面活性剤等いずれの界面活性剤を用いてもよい。より具体的に、界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、非イオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(以下、POEともいう)ソルビタンモノラウレート、POEソルビタンモノステアレート、POEソルビタンモノオレエートなどのPOEソルビタン脂肪酸エステル、POEモノラウレート、POEモノステアレート、POEモノオレエートなどのPOE脂肪酸エステル、POEグリセリルモノステアレート、POEグリセリルモノオレエートなどのPOEグリセリン脂肪酸エステル、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEイソセチルエーテル、POEイソステアリルエーテルなどのPOEアルキルエーテル、POE・ポリオキシプロピレン(以下、POPともいう)セチルエーテル、POE・POPデシルテトラデシルエーテルなどのPOE・POPアルキルエーテル、デカグリセリルモノラウレート、デカグリセリルモノミリステート、デカグリセリルモノステアレート、デカグリセリルモノオレエート、デカグリセリルジオレエート、ヘキサグリセリルモノラウレート、ヘキサグリセリルモノステアレート、ヘキサグリセリルモノオレエートなどのポリグリセリン脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油等が例示される。陽イオン性界面活性剤としては、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアナイド、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-アルギニンエチル・DL-ピロリドンカルボン酸塩、また、塩化ラウリルトリメチルアンモニウムなどのアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ジデシルジメチルアンモニウムなどのジアルキルジメチルアンモニウム塩等が例示される。陰イオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのPOEアルキルエーテル硫酸塩、POEラウリルエーテル酢酸ナトリウムなどのPOEアルキルエーテル酢酸塩、ミリスチン酸カリウムなどの脂肪酸石けん、ラウロイルメチルタウリンナトリウムのようなアシルタウリン塩等が例示される。両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどのアルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインなどのアルキルアミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイドなどのアルキルジメチルアミンオキサイド等が例示される。シリコーン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン変性ポリシロキサン、PEGジメチコンやPEG・PPGジメチコンなどのポリエーテル変性シリコーン、PEGポリジメチルシロキシエチルジメチコンなどの分岐シリコーン鎖を有するポリエーテル変性シリコーン、アモジメチコンなどのアミノ変性シリコーン等が例示される。
【0025】
製剤助剤として使用できる固体担体としては、例えば、粘土類(カオリン、珪藻土、ベントナイト、クレー、酸性白土等)、合成含水酸化珪素、タルク、セラミック、その他の無機鉱物(セリサイト、石英、硫黄、活性炭、炭酸カルシウム、水和シリカ等)、多孔質体等が挙げられる。固体担体の粒子径としては、0.01μm~15mmの範囲のものが好ましく、中でも0.1μm~10mmの範囲のものがより好ましい。
【0026】
本発明の方法を適用しうる家庭用浴室としては、その容積が2~12mの範囲であることを意味する。中でも、2.5~11mの範囲であることが好ましく、3~10mの範囲であることがより好ましく、また、床面から天井までの高さが180~250cmの範囲であることが好ましく、190~240cmの範囲であることがより好ましく、200~230cmの範囲であることがさらに好ましい。
本発明における換気条件とは、家庭用浴室内の空気の入れ替えがあることを意味し、具体的には、換気扇を稼働させる、窓やドアを開放するなどの条件が例示される。
本発明における家庭用浴室内での換気条件としては、換気される空気量が10~350m/hであることが好ましく、20~330m/hであることがより好ましく、80~200m/hであることが更に好ましい。
家庭用浴室内における換気扇の設置場所は、壁か天井に設置されていることが好ましく、また換気扇の排気部までの高さが床面から2m以上に設置されていることが好ましい。
本発明における家庭用浴室内の換気条件としては、空気の入れ替え速度(風速)は、排気部から5cmの距離での5秒間測定した際の平均風速が、0.005~5.0m/sであることが好ましく、0.0075~3.5m/sがより好ましく、0.01~3.0m/sがさらに好ましい。なお、排気部とは、換気扇の空気取り入れ開口、換気口や窓などの開口部のことを意味する。なお、風速は、例えば、クリモマスター風速計 Model 6501(日本カノマックス株式会社製)を用いて測定することができる。
本発明における家庭用浴室内の相対湿度としては、70%RH以上であることが好ましく、80%RH以上であることがより好ましく、90%RH以上であることがさらに好ましい。本発明における高湿度とは、家庭用浴室内の相対湿度が70%RH以上の状態を意味する。
本発明の方法において、家庭用浴室空間内に向けて噴射する際は、家庭用浴室の入口の床面から150cmの高さの噴口から、入口からみて正面の壁面と浴槽に接する壁面が接した角部に向けて床面と水平になるように定量噴射型エアゾールを噴射することが好適である。なお、上記角部が2つある場合は、噴口からの噴射距離が長い角部に向けて噴射することが好適である。本発明における定量噴射型エアゾールの噴射方法は、定量噴射型エアゾールから噴射された噴霧粒子の軌道が、家庭用浴室内に設置された換気扇による床面から天井に向かう気流に対して、ほぼ垂直方向になる状態が好ましい。
【実施例0027】
以下に実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例において、特に明記しない限り、部は重量部を意味する。
【0028】
<浴室内の床面、壁面、天井への付着効果の確認試験>
(1)試験検体
下記表1に示す組成で、実施例の試験検体1、4、5及び比較例の試験検体2、3を調製した。
表1中の「IPMP」は、4-イソプロピル-3-メチルフェノール(大阪化成株式会社製)を意味し、「IPMP」とフェネチルアルコールは、オクタノール/水分配係数(LogP)値がそれぞれ3.52、1.57である非イオン性の本発明の成分(A)に含まれる成分である。一方、表1中の「BZC」は、塩化ベンザルコニウム(アークサーダジャパン株式会社製)を意味し、非イオン性ではない成分なので本発明の成分(A)には含まれない。
表1中の99.5%エタノールとイソブタノールは、20℃における蒸気圧がそれぞれ5.9kPa、1.2kPaの溶剤であり、本発明の成分(B)に含まれる成分である。一方、表1中のミリスチン酸イソプロピルは、20℃における蒸気圧が0.1kPaより小さい溶剤なので、本発明の成分(B)には含まれない。
各試験検体の組成を表1に示す。
【表1】
【0029】
(定量噴射型エアゾール試験検体)
エアゾール用耐圧缶(容量133mL)に、試験検体1~5の各試験検体原液を15mL充填し、エアゾールバルブ(1回噴霧量1mL、ステム孔(形状:長方形)面積1.0×0.7mm×2個)でエアゾール用耐圧缶を閉止した。続いて、液化石油ガス(0.49MPa(25℃))を35mL加圧充填した。
エアゾールバルブに噴霧ボタン(噴口孔径φ1mm×噴口3個)を取り付け、試験検体1、3、4、5は1プッシュ当たりの噴霧量が1mL、有効成分の吐出量が30mgの定量噴射型エアゾール試験検体1、3、4、5を得た。試験検体2は1プッシュあたりの噴霧量が1mL、有効成分の吐出量が18mgの定量噴射型エアゾール試験検体2を得た。
定量噴射型エアゾール試験検体1~5の、50cmの距離からの平均粒子径(D50)は、定量噴射型エアゾール試験検体1はD50:36μm、定量噴射型エアゾール試験検体2はD50:34μm、定量噴射型エアゾール試験検体3はD50:26μm、定量噴射型エアゾール試験検体4はD50:33μm、定量噴射型エアゾール試験検体5はD50:39μmであった。
上記平均粒子径(D50)は、定量噴射型エアゾール試験検体1~5それぞれの噴口(ノズルの噴口)から噴霧方向(水平方向)に直線で50cm離れた位置に、レーザー光回析式粒度測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製「LDSA-1400A」)を設置し、粒度測定装置に向けて定量噴射型エアゾール試験検体を、25℃条件下において噴霧することにより測定した。
定量噴射型エアゾール試験検体1~5の噴射力は、定量噴射型エアゾール試験検体1は12gf、定量噴射型エアゾール試験検体2は9gf、定量噴射型エアゾール試験検体3は12gf、定量噴射型エアゾール試験検体4は14gf、定量噴射型エアゾール試験検体5は13gfであった。
上記噴射力は、25℃の条件下で、定量噴射型エアゾールの噴口から20cmの距離を置いたところに横倒しにしたデジタルフォースゲージ(例えば、株式会社イマダ製、型番:DS2-2N)に装着した直径φ60mmの円状の平板の中心に向かってエアゾール組成物を噴霧した際の最大値を噴射荷重とし、平均を算出することにより測定した。
【0030】
(2)試験方法
図1に示す家庭用浴室(容積:5.6m、160cm×160cm×高さ220cm)の、床面中央、入口正面の壁面中央、前記壁面と浴槽に接する壁面と天井との接点近くの天井面それぞれに、試験片(直径9cmの円形状ろ紙)2枚を並べて両面テープで貼付した後、浴室内の相対湿度が95%RH又は70%RHとなるように加湿した。相対湿度が95%RHでは、浴室内を湯気が充満した状態とした。
浴室内の天井の浴槽上方中央に設置された換気扇(25cm×25cm、排気部から5cmの距離における5秒間の平均風速:1m/s)を稼働させた直後に、家庭用浴室の入口の床面から150cmの高さの噴口より、入口からみて正面の壁面と浴槽に接する壁面が接合している角部に向かって、床面とほぼ水平に定量噴射型エアゾールを1回噴射した。
浴室内の換気扇を稼働させたまま噴射してから30分経過後に、床面、壁面、天井の3カ所合計6個の試験片を回収した。回収した各試験片を、アセトン約10mLを用いて十分洗浄した。得られたアセトン洗浄液を、4-イソプロピル-3-メチルフェノール、フェネチルアルコール、塩化ベンザルコニウムは、それぞれ4-ヒドロキシ安息香酸アミル、3-フェニル-1-プロパノール、塩化セチルピリジニウムを内部標準として定量分析を行った。なお、4-イソプロピル-3-メチルフェノール、塩化ベンザルコニウムは高速液体クロマトグラフィーにより、フェネチルアルコールはガスクロマトグラフィーにより、それぞれ定量分析を行い、試験片に付着した4-イソプロピル-3-メチルフェノール、フェネチルアルコール、塩化ベンザルコニウムそれぞれの付着量(μg/cm)を解析した。
浴室内の相対湿度が95%RHとして、試験検体1を用いた試験を実施例1、試験検体4を用いた試験を実施例4、試験検体5を用いた試験を実施例5、試験検体2を用いた試験を比較例1、試験検体3を用いた試験を比較例2とした。また、浴室内の換気扇を稼働させず、換気条件として、浴室扉の排気部から5cmにおける5秒間の平均風速を0.03m/sとなるように変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った試験を実施例2とし、浴室内の相対湿度を70%RHに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った試験を実施例3とした。
床面、壁面、天井それぞれ2個の試験片から得られた付着量の平均値を、各場所における4-イソプロピル-3-メチルフェノール、フェネチルアルコール又は塩化ベンザルコニウムの付着量とした。
床面、壁面、天井それぞれの付着量と、床面又は壁面の付着量を天井の付着量で除した値を、下記表2にまとめて示す。
床面又は壁面の付着量を天井の付着量で除した値が「2」未満の場合を、家庭用浴室での拡散均一性に優れるとして、実用性のある定量噴射型エアゾールと判断し、表2中に「○」と示した。また、当該値が「2」以上の場合は、家庭用浴室での拡散均一性に優れておらず、実用性がないと判断し、表2中に「×」と示した。
なお、床面又は壁面の付着量を天井の付着量で除した値が0.5より大きい、すなわち、天井の付着量を床面又は壁面の付着量で除した値が2未満の場合も、同様に家庭用浴室において拡散均一性に優れたものであり、実用性があると判断できる。
【0031】
【表2】
【0032】
表2に示す結果から、以下のことが明らかになった。
実施例1:排気部から5cmの距離における5秒間の平均風速が1m/sである換気条件下で、床面又は壁面の付着量を天井の付着量で除した値が、壁面は1.1、床面は1.8となることから、本発明における成分(A)が、オクタノール/水分配係数(LogP)値が3.52のIPMPであり、成分(B)が20℃における蒸気圧が5.9kPaの99%エタノールである試験検体1は、家庭用浴室での拡散均一性に優れることが確認された。
実施例2:床面又は壁面の付着量を天井の付着量で除した値が、壁面は1.4、床面は1.1となることから、試験検体1を用い、排気部から5cmにおける風速が0.03m/sの換気条件下でも、家庭用浴室での拡散均一性に優れることがわかった。
実施例3:床面又は壁面の付着量を天井の付着量で除した値が、壁面は1.3、床面は1.0となることから、試験検体1を用い、浴室内の相対湿度が70%RHである場合においても、家庭用浴室での拡散均一性に優れることがわかった。
実施例4:床面又は壁面の付着量を天井の付着量で除した値が、壁面は1.2、床面は1.0となることから、本発明における成分(B)を、20℃における蒸気圧が1.2kPaのイソブタノールに代えても、家庭用浴室での拡散均一性に優れることがわかった。
実施例5:床面又は壁面の付着量を天井の付着量で除した値が、壁面は1.0、床面は1.0となることから、本発明における成分(A)を、オクタノール/水分配係数(LogP)値が1.57のフェネチルアルコールに代えても、家庭用浴室での拡散均一性に優れることがわかった。
比較例1:換気条件下で、床面又は壁面の付着量を天井の付着量で除した値が、壁面は0.9、床面は2.8となることから、噴霧粒子に含まれる有効成分の多くが床面に付着していることが確認された。この結果より、本発明における成分(B)の溶剤を、20℃における蒸気圧が1kPaより小さい溶剤に代えて用いると、噴霧後の噴霧粒子が家庭用浴室内の気流にのって均一に拡散されないことが明らかとなった。
比較例2:換気条件下で、床面又は壁面の付着量を天井の付着量で除した値が、壁面は1.7、床面は2.7となることから、噴霧粒子に含まれる有効成分の多くが床面に付着していることが確認された。この結果より、本発明の成分(A)以外の有効成分を用いると、噴霧後の噴霧粒子が家庭用浴室内の気流にのって均一に拡散されないことが明らかとなった。
実施例1、3~5における換気条件は、家庭用浴室内の換気条件としては換気量の多い条件である。本発明は、家庭用浴室内の換気量の多い条件、例えば、排気部から5cmの距離における5秒間の平均風速が0.2~3.5m/sの換気条件下において、家庭用浴室での拡散均一性に優れた効果を発揮することが明らかとなった。
図1