(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138420
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
G01F 23/18 20060101AFI20230922BHJP
G01B 7/24 20060101ALI20230922BHJP
G01B 7/02 20060101ALI20230922BHJP
G01F 23/22 20060101ALN20230922BHJP
【FI】
G01F23/18
G01B7/24
G01B7/02 B
G01F23/22 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038039
(22)【出願日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2022044672
(32)【優先日】2022-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】竹中 恒詞
(72)【発明者】
【氏名】石原 育
【テーマコード(参考)】
2F014
2F063
【Fターム(参考)】
2F014BA10
2F063AA14
2F063DA02
2F063DA05
2F063DD06
2F063EC00
(57)【要約】
【課題】容器に充填された内容物の、前記容器の底面から上面までの高さを測定する。
【解決手段】測定装置は、容器に充填された内容物の、前記容器の底面から上面までの高さを測定する測定装置であって、前記容器の側面の外側に直接または間接的に固定され、前記側面の内側から外側へとかかる圧力に関する値を測定する測定部と、前記測定部の測定値に基づいて、前記内容物の前記容器の底面から表面までの高さを特定する制御部と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に充填された内容物の、前記容器の底面から上面までの高さを測定する測定装置であって、
前記容器の側面の外側に直接または間接的に固定され、前記側面の内側から外側へとかかる圧力に関する値を測定する測定部と、
前記測定部の測定値に基づいて、前記内容物の前記容器の底面から表面までの高さを特定する制御部と、を有する、測定装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記測定部の測定値と前記高さとの相関関係を示すデータである相関データを参照することで前記測定値から前記高さを特定する、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記容器の側面の外側には、高さ方向に異なる位置に複数の前記測定部が固定されており、
前記制御部は、複数の前記測定部それぞれの測定値のうち、所定の閾値以上の値であって、かつ、最も低い値を示す測定値に基づいて前記高さを特定する、請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記容器の側面の外側には、複数の前記測定部のうち少なくとも1つについて、同じ高さの位置に1つ以上の追加の測定部がさらに貼り付けられており、
前記制御部は、複数の前記測定部のうち1つ以上の測定部と、前記追加の測定部のうち1つ以上の測定部と、がそれぞれ測定値に基づいて、前記高さを特定する、請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記制御部は、特定した前記高さと、前記容器の容量とに基づいて、前記内容物の重量を算出する、請求項1~4のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記容器の底面に貼り付けられた底面測定部をさらに備え、
前記制御部は、前記底面測定部の測定値に基づき前記内容物の重さを算出する、請求項1~5のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項7】
前記内容物は液体であって、
前記制御部は、前記内容物の液位を特定する、請求項1~6のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項8】
前記測定部は、ひずみセンサまたはひずみゲージである、請求項1~7のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項9】
前記測定部は、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体を有するひずみゲージを含む、請求項8に記載の測定装置。
【請求項10】
前記ひずみセンサまたはひずみゲージは、前記側面の内側から外側へとかかる圧力によって生じる磁気変化を検出する検出素子を有する、請求項8に記載の測定装置。
【請求項11】
前記検出素子は磁性体を含み、
前記検出素子は、前記側面の内側から外側へとかかる圧力によって前記磁性体に圧力が加わったときの前記磁性体の磁化の強さの変化を検出する検出素子である、請求項10に記載の測定装置。
【請求項12】
前記検出素子は、磁性膜で絶縁膜を挟んだ磁気トンネル接合の構造を含んでおり、
前記検出素子は、前記側面の内側から外側へとかかる圧力によって前記構造で発生する磁気変化を検出する検出素子である、請求項10に記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体等が充填された容器の液位を測定する液位センサが知られている。液位センサの種類としては、例えば、フローティングセンサ、超音波センサ、光学センサ等が挙げられる。また、容器の内壁にダイヤフラムを取り付け、ダイヤフラムが液体から受ける圧力をひずみゲージ等で検出することで液圧を測定し、さらに当該液圧に基づき容器の液位を特定する技術も開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5-28950公報
【特許文献2】特開2003-214924公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の液位センサは、内容物が液体であるか固体であるか、内容物の粘性等、内容物の種々の性質に応じて使い分けが必要であった。本発明は、容器に充填された内容物の、前記容器の底面から上面までの高さを測定することが可能な測定装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る測定装置は、容器に充填された内容物の、前記容器の底面から上面までの高さを測定する測定装置であって、前記容器の側面の外側に直接または間接的に固定され、前記側面の内側から外側へとかかる圧力に関する値を測定する測定部と、前記測定部の測定値に基づいて、前記内容物の前記容器の底面から表面までの高さを特定する制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
開示の技術によれば、容器に充填された内容物の、前記容器の底面から上面までの高さを測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態1に係る測定装置の概要を示す図である。
【
図2】実施形態1に係る測定装置の要部構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態1に係るひずみゲージを例示する平面図である。
【
図4】ひずみセンサが単体の状態の圧力検出面側を示す斜視図である。
【
図5】ひずみセンサの圧力検出面側の正面図である。
【
図7】容器における内容物の充填度合と、ひずみセンサの抵抗値および抵抗変化量との関係を示す図である。
【
図8】実施形態1に係る情報処理装置の制御部で実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】実施形態1に係るひずみセンサが側壁に装着された状態を示す断面図である。
【
図10】実施形態1に係るひずみセンサの圧力検出面側を示す斜視図である。
【
図11】実施形態1に係るひずみセンサの圧力検出面側の正面図である。
【
図12】実施形態2に係る測定装置の概要を示す図である。
【
図13】容器における内容物の充填度合と、ひずみセンサの抵抗値および抵抗変化量との関係の他の一例を示す図である。
【
図14】実施形態3に係るひずみゲージに含まれる検出素子の一例を示す平面図および断面図である。
【
図15】実施形態4に係るひずみゲージに含まれる検出素子の一例を示す斜視図、平面図、および断面図である。
【
図16】実施形態4に係るひずみゲージに含まれる検出素子の他の一例を示す斜視図、平面図、および断面図である。
【
図17】実施形態4に係るひずみゲージに含まれる検出素子の、更に他の一例を示す斜視図、平面図、および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
〔実施形態1〕
まず、
図1および
図2を参照して、本発明の実施形態1に係る測定装置について説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る測定装置の概要を示す図である。
図2は、実施形態1に係る測定装置の要部構成を示すブロック図である。
【0010】
本実施形態に係る測定装置3は、容器9に充填された内容物Lの、容器9の底面から上面までの高さ(以降、単に「高さ」とも称する)を測定するための装置である。本実施形態では一例として、容器9の内容物Lが液体である場合について説明する。すなわち、測定装置3は、「内容物Lの容器9の底面から上面までの高さ」として、容器9に充填された液体の液位を測定する装置であることとする。しかしながら、測定装置3の高さの測定対象は液体に限定されない。例えば、測定装置3は、粉体やペレット等の固体の高さを測定する装置であってもよい。
【0011】
なお、容器9は、少なくとも底面と側面を有している構造であれば、その大きさおよび形状は特に限定されない。例えば、容器9は
図1のように中空の円柱状の容器であってもよい。また例えば、容器9は工場内またはコンビナートのタンク等の大型のものであってもよい。
【0012】
また、前述の通り、容器9の内容物(すなわち、高さの測定対象)は液体に限定されない。例えば、容器9の内容物は、流動体、ペースト、粉体等でありうる。液体は、例えば、水、薬品、石油、調味料、飲料、化粧料等でありうる。流動体、ペーストは、例えば、食料、セメント等でありうる。粉体は、例えば、砂、食品の粉類、材料や加工中の粉末、粉粒体等でありうる。また、内容物はスラッジを含むようなものであってもよい。
【0013】
測定装置3は、1つ以上のひずみセンサ(測定部)と、情報処理装置2と、を含む。
図1の例では、測定装置3は、ひずみセンサ1α、1β、および1γの3つのひずみセンサを含んでいる。ひずみセンサ1α、1β、および1γはそれぞれ、情報処理装置2と有線または無線で通信可能に接続されている。
【0014】
ひずみセンサ1α、1β、および1γは、本開示における測定部の一例である。ひずみセンサ1α、1β、および1γはそれぞれ、容器9の側面(側壁91)の外側に直接または間接的に固定されている。本実施形態では、ひずみセンサ1α、1β、および1γは、容器9の側壁91において高さ方向に異なる位置に複数(3つ)貼り付けられている。なお、本明細書において「貼り付け」とは、接着剤等による貼り付けだけでなく、ひずみセンサ1α、1β、および1γを容器9に直接または間接的に固定するあらゆる固定方法を含む。また、ひずみセンサ1α、1β、および1γの機能を阻害しないのであれば、ひずみセンサ1α、1β、および1γの貼り付け方法は特に限定されない。
【0015】
ひずみセンサ1α、1β、および1γはそれぞれ、貼り付け位置において側壁91の内側から外側へとかかる圧力を検出する。より具体的に言えば、ひずみセンサ1α、1β、および1γはそれぞれ、貼り付け位置において側壁91がひずんだ場合に、ひずみ量に応じて抵抗値が変化する。この抵抗値の変化量から、側壁91の、前記貼り付け位置においてのひずみ量を特定することができる。
【0016】
情報処理装置2は、ひずみセンサ1α、1β、および1γが出力する抵抗値に基づいて、内容物の高さを特定する。情報処理装置2は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)、タブレットPC、およびスマートフォンなどの情報処理装置で実現される。
【0017】
図2は、測定装置3の要部構成を示すブロック図である。なお、ひずみセンサ1βおよび1γの要部構成はひずみセンサ1αと同様であるため、
図2では記載を省略している。
【0018】
ひずみセンサ1αは、ひずみゲージ12a、12b、12c、および12dと、アナログフロントエンド(AFE)13と、信号処理部14と、バッテリー15と、通信部16とを有している。
【0019】
[ひずみゲージの構成]
ここで、
図3および
図4を参照してひずみゲージの構成について説明する。
図3は、本発明の実施形態1に係るひずみゲージを例示する平面図である。
図4は、実施形態1に係るひずみゲージを例示する断面図であり、
図4のA-A線に沿う断面を示している。なお、下記では一例としてひずみゲージ12aを用いて構成を説明するが、ひずみゲージ12b、12c、12dも同様の構成である。
【0020】
図3及び
図4を参照すると、ひずみゲージ12aは、基材121と、抵抗体122と、配線123、124と、電極125、126と、カバー層127とを有している。なお、
図3では、便宜上、カバー層127の外縁のみを破線で示している。なお、カバー層127は、必要に応じて設けることができる。
【0021】
図3に示すひずみゲージ12aは、基材121において、構成要素がない側が、
図11に示す梁部112aに貼り付けられる、又は容器90の側壁91の外側面に貼り付けられる。この際、基材121の構成要素がない側が接着剤等で梁部112aの下面(背面)に貼り付けられる。又、
図3の平面視とは、基材121の上面121Fに対する上側から下側への法線方向で対象物を視ることを指すものとする。そして、平面形状とは、前記法線方向で対象物を視たときの、対象物の形状を指すものとする。
【0022】
基材121は、抵抗体122等を形成するためのベース層となる部材である。基材121は可撓性を有する。基材121の厚さは特に限定されないが、例えば、5μm~500μm程度であってよい。なお、起歪体11の外面から受感部へのひずみの伝達性、および、環境変化に対する寸法安定性の観点から考えると、基材121の厚さは5μm~200μmの範囲内であることが好ましい。また、絶縁性の観点から考えると、基材121の厚さは10μm以上であることが好ましい。
【0023】
基材121は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、LCP(液晶ポリマー)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成される。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、かつ可撓性を有する部材を指す。
【0024】
基材121が絶縁樹脂フィルムから形成される場合、当該絶縁樹脂フィルムには、フィラーや不純物等が含まれていてもよい。例えば、基材121は、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成されてもよい。
【0025】
基材121の樹脂以外の材料としては、例えば、SiO2、ZrO2(YSZも含む)、Si、Si2N3、Al2O3(サファイヤも含む)、ZnO、ペロブスカイト系セラミックス(CaTiO3、BaTiO3)等の結晶性材料が挙げられる。又、前述の結晶性材料以外に非晶質のガラス等を基材121の材料としてもよい。又、基材121の材料として、アルミニウム、アルミニウム合金(ジュラルミン)、チタン等の金属を用いてもよい。金属を用いる場合、金属製の基材121上に絶縁膜が設けられる。
【0026】
抵抗体122は、基材121の上側に所定のパターンで形成された薄膜である。ひずみゲージ12aにおいて、抵抗体122は、ひずみを受けて抵抗変化を生じる受感部である。抵抗体122は、基材121の上面121Fに直接形成されてもよいし、基材121の上面121Fに他の層を介して形成されてもよい。なお、
図3では、便宜上、抵抗体122を濃い梨地模様で示している。
【0027】
抵抗体122は、複数の細長状部が長手方向を同一方向(
図3の例では横方向(±y方向))に向けて所定間隔で配置され、隣接する細長状部の端部が互い違いに連結されて、全体としてジグザグに折り返す構造である。複数の細長状部の長手方向がグリッド方向となり、グリッド方向と垂直な方向がグリッド幅方向(
図3の例では縦方向(±x方向))となる。
【0028】
抵抗体122において、
図3中、最も上側に位置する細長状部の左側の端部は、上方向に屈曲し、抵抗体122のグリッド幅方向の一方の終端122e
1に達する。また、
図3中、最も下側に位置する細長状部の左側の端部は、下方向に屈曲し、抵抗体122のグリッド方向の他方の終端122e
2に達する。各々の終端122e
1及び122e
2は、配線123、124を介して、電極125、126と電気的に接続されている。言い換えれば、配線123、124は、抵抗体122のグリッド幅方向の各々の終端122e
1及び122e
2と各々の電極125、126とを電気的に接続している。
【0029】
抵抗体122は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成することができる。すなわち、抵抗体122は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成することができる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu-Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0030】
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、及びCr2N等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでいてもよい。
【0031】
抵抗体122の厚さは特に限定されないが、例えば、0.05μm~2μm程度であってよい。特に、抵抗体122の厚さが0.1μm以上である場合、抵抗体122を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する。また、抵抗体122の厚さが1μm以下である場合、抵抗体122を構成する膜の内部応力に起因する、(i)膜のクラックおよび(ii)膜の基材121からの反りが、低減される。
【0032】
横感度を生じ難くすることと、断線対策とを考慮すると、抵抗体122の幅は10μm以上100μm以下であることが好ましい。更に言えば、抵抗体122の幅は10μm以上70μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であるとより好ましい。
【0033】
例えば、抵抗体122がCr混相膜である場合、安定な結晶相であるα-Cr(アルファクロム)を主成分とすることで、ゲージ特性の安定性を向上させることができる。又例えば、抵抗体122がCr混相膜である場合、抵抗体122がα-Crを主成分とすることで、ひずみゲージ12aのゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。ここで、「主成分」とは、抵抗体を構成する全物質の50重量%以上を占める成分のことを意味する。ゲージ特性を向上させるという観点から考えると、抵抗体122はα-Crを80重量%以上含むことが好ましい。更に言えば、同観点から考えると、抵抗体122はα-Crを90重量%以上含むことがより好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0034】
又、抵抗体122がCr混相膜である場合、Cr混相膜に含まれるCrN及びCr2Nは20重量%以下であることが好ましい。Cr混相膜に含まれるCrN及びCr2Nが20重量%以下であることで、ひずみゲージ12aのゲージ率の低下を抑制することができる。
【0035】
又、Cr混相膜におけるCrNとCr2Nとの比率は、CrNとCr2Nの重量の合計に対し、Cr2Nの割合が80重量%以上90重量%未満となるようにすることが好ましい。更に言えば、同比率は、CrNとCr2Nの重量の合計に対し、Cr2Nの割合が90重量%以上95重量%未満となるようにすることがより好ましい。Cr2Nは半導体的な性質を有する。そのため、前述のCr2Nの割合を90重量%以上95重量%未満とすることで、TCRの低下(負のTCR)が一層顕著となる。更に、前述のCr2Nの割合を90重量%以上95重量%未満とすることで抵抗体122のセラミックス化を低減することができるため、抵抗体122の脆性破壊が起こりにくくすることができる。
【0036】
一方で、CrNは化学的に安定であるという利点も有する。Cr混相膜にCrNをより多く含むことで、不安定なNが発生する可能性を低減することができるため、安定なひずみゲージを得ることができる。ここで「不安定なN」とは、Cr混相膜の膜中に存在し得る、微量のN2もしくは原子状のNのことを意味する。これらの不安定なNは、外的環境(例えば高温環境)によっては膜外へ抜け出ることがある。不安定なNが膜外へ抜け出るときに、Cr混相膜の膜応力が変化し得る。
【0037】
配線123、124は、基材121上に設けられている。配線123、124は、抵抗体122及び電極125、126と電気的に接続されている。配線123、124は、直線状には限定されず、任意のパターンとすることができる。また、配線123、124は、任意の幅及び任意の長さとすることができる。なお、
図3では、便宜上、配線123、124を抵抗体122よりも薄い梨地模様で示している。
【0038】
電極125、126は、基材121上に設けられている。電極125、126は、配線123、124を介して抵抗体122と電気的に接続されている。電極125、126は、平面視において、配線123、124よりも拡幅して略矩形状に形成されている。電極125、126は、ひずみにより生じる抵抗体122の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極である。電極125、126には、例えば外部接続用のリード線19(
図3参照)が接合される。電極125、126の上面に、銅等の抵抗の低い金属層、または、金等のはんだ付け性が良好な金属層を積層してもよい。抵抗体122と配線123、124と電極125、126とは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成することができる。なお、
図3では、便宜上、電極125、126を配線123、124と同じ梨地模様で示している。
【0039】
カバー層127は、必要に応じて、基材121上に設けられる。カバー層127は、基材121の上面121Fに、抵抗体122及び配線123、124を被覆し電極125、126を露出するように設けられる。カバー層127の材料としては、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂が挙げられる。なお、カバー層127は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層127の厚さは、例えば、2μm~30μm程度とすることができる。カバー層127を設けることで、抵抗体122に機械的な損傷等が生じることを抑制することができる。又、カバー層127を設けることで、抵抗体122を湿気等から保護することができる。
【0040】
ひずみゲージ12aにおいて、抵抗体122の材料としてCr混相膜を用いた場合、高感度化かつ、小型化を実現することができる。例えば、従来のひずみゲージの出力が0.04mV/2V程度であったのに対して、抵抗体122の材料としてCr混相膜を用いた場合は0.3mV/2V以上の出力を得ることができる。また、従来のひずみゲージの大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)が3mm×3mm程度であったのに対して、抵抗体122の材料としてCr混相膜を用いた場合の大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)は0.3mm×0.3mm程度に小型化することができる。
【0041】
したがって、抵抗体122の材料としてCr混相膜を用いたひずみゲージ12aは、起歪体11の狭いスペースでも後付けできる、測定装置3に好適に用いることができる。また、抵抗体122の材料としてCr混相膜を用いたひずみゲージ12aは、従来のひずみゲージよりも高抵抗である。したがって、バッテリー15として電池でひずみゲージ12aを駆動する場合に、低消費電力化が可能となるため、電池寿命を長くし、より長く、あるいは繰り返し、容器の内容量を測定することができる。
【0042】
(ひずみゲージの他の積層構造)
図5は、実施形態1の他の構成に係るひずみゲージを例示する断面図(その2)である。
図5は、抵抗体122、配線123、124、及び電極125、126の下地層として機能層128を設けた場合のひずみゲージ12a-1の断面形状を示している。
【0043】
機能層128の平面形状は、例えば抵抗体122、配線123、124、及び電極125、126の平面形状と略同一にパターニングされてよい。しかしながら、機能層128と、抵抗体122、配線123、124、及び電極125、126の平面形状は略同一でなくてもよい。例えば、機能層128が絶縁材料から形成される場合には、機能層128を抵抗体122、配線123、124、及び電極125、126の平面形状と異なる形状にパターニングしてもよい。この場合、機能層128は例えば抵抗体122、配線123、124、及び電極125、126が形成されている領域にベタ状に形成されてもよい。或いは、機能層128は、基材121の上面全体にベタ状に形成されてもよい。
【0044】
本構成では、配線等の構成要素が形成された金属層の下層に機能層128を設けることにより、金属層の結晶成長を促進可能となり、安定な結晶相からなる金属層を作製することができる。その結果、ひずみゲージ12a-1において、ゲージ特性の安定性が向上する。又は、機能層を構成する材料が金属層に拡散することにより、ひずみゲージ12a-1において、ゲージ特性が向上する。
【0045】
図2に戻って、アナログフロントエンド(AFE)13は、例えば、ブリッジ回路、増幅器、アナログ/デジタル変換回路(A/D変換回路)等を備えている。AFE13は、温度補償回路を備えていてもよい。ひずみゲージ12aの端子部はAFE13のブリッジ回路に接続されている。ブリッジ回路は、ひずみゲージ12aの抵抗体の抵抗値に対応した電圧(アナログ信号)を出力する。ブリッジ回路から出力された電圧は、増幅器で増幅された後、A/D変換回路によりデジタル信号に変換され、信号処理部14に送られる。AFE13が温度補償回路を備えている場合には、温度補償されたデジタル信号が信号処理部14に送られる。
【0046】
AFE13では、例えば、ひずみゲージ12a、12b、12c、12dの全ての端子部である電極125及び126(
図3参照)がブリッジ回路に接続され、フルブリッジが組まれる。これにより、4つのひずみゲージ12a、12b、12c、12dの各抵抗体の抵抗値の変化に対応した電圧(アナログ信号)をブリッジ回路から出力することができる。
【0047】
このような構成の複数のひずみゲージ12a、12b、12c、12dの抵抗値が変化した場合には、ひずみゲージ12a、12b、12c、12dの位置関係が変化したこと、即ち、容器9の外側へのひずみ量が変化したことを検出できる。なお、本実施形態では、各ひずみセンサがそれぞれ4つのひずみゲージを有する例を示した。しかしながら、各ひずみセンサの有するひずみゲージの数は1個以上であれば、その数は特に限定されない。なお、ひずみセンサが1つのひずみゲージを有している場合、「ひずみセンサの抵抗値」とは、「ひずみゲージの抵抗値」と略同義である。
【0048】
また、ひずみセンサ1αにおいて、ひずみゲージ12a、AFE13、信号処理部14、バッテリー15、および通信部16は、同じ筐体内に配置されていなくてもよい。例えば、各ひずみゲージを貼り付けた起歪体のみを直接測定対象物である容器9の側面の外側に貼り付けておき、AFE13、信号処理部14、バッテリー15、および通信部16は、各ひずみゲージとケーブル等で接続された外部装置に内蔵されている構成であってもよい。
【0049】
あるいは、1つのひずみゲージそのものを直接測定対象物に貼り付けて、当該ひずみゲージをAFE13、信号処理部14、バッテリー15、および通信部16に接続してもよい。この場合、ひずみゲージが、容器9の側面の内側から外側へとかかる圧力に関する値を測定する測定部として機能する。このように、ひずみゲージとAFE13、信号処理部14、バッテリー15、および通信部16とを別体の構成とする場合、AFE13、信号処理部14、バッテリー15、および通信部16は、各ひずみゲージで共通の部材であってもよい。また、この場合、各ひずみゲージの出力値を、通信部16を介して情報処理装置2に送り、情報処理装置2の側にAFE13、信号処理部14を設ける構成としてもよい。
【0050】
信号処理部14は、AFE13から送られたデジタル信号を、通信部16を介して情報処理装置2へ出力する。信号処理部14は、例えば、マイクロプロセッサや、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の演算部に加えて、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、メインメモリ等を含む構成とすることができる。信号処理部14は、例えば、情報処理装置2からの指示に応じてひずみゲージ12a、12b、12c、12dで抵抗値を取得するように指示したり、ひずみゲージ12a、12b、12c、12dからAFE13を介して出力された抵抗値を取得して送信する等指示したりするように、プログラムされている。信号処理部14の各種機能は、ROM等に記録されたプログラムがメインメモリに読み出されてCPUにより実行されることによって実現できる。但し、信号処理部14の一部又は全部は、ハードウェアのみにより実現されてもよい。又、信号処理部14は、物理的に複数の装置等により構成されてもよい。
【0051】
バッテリー15は、ひずみセンサ1αの各部に電力を供給する電源である。なお、ひずみセンサ1αはバッテリー15を備える代わりに、外部電源から電力の供給を受けてもよい。
【0052】
通信部16は、ひずみセンサ1αと情報処理装置2との間の通信を行う。具体的には、通信部16は、ひずみゲージ12aの出力する抵抗値を情報処理装置2に送信する。また、ひずみセンサ1αが情報処理装置2の指示に基づき動作する場合、通信部16は、情報処理装置2からひずみセンサ1αに対する制御指示を受信する。通信部16の通信方式は特に限定されない。例えば、通信部16は、Wifi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)等、無線または有線LANなどの通信方式を用いてもよい。
【0053】
情報処理装置2は、通信部21と、制御部22とを少なくとも有する。また、情報処理装置2は、記憶部23および/または表示部24を有していてもよい。
【0054】
通信部21は、ひずみセンサ1α、1β、および1γの各通信部16から発信された抵抗値データを取得する。抵抗値データは、抵抗値そのものの値であってもよいし、抵抗値の変化量を示す値(後述する抵抗変化量)であってもよいし、これら両方を含んでいてもよい。また、情報処理装置2がひずみセンサ1α、1β、および1γに対して稼働/停止等の動作の指示を行う場合、通信部21は、ひずみセンサ1α、1β、および1γに対して制御指示を送信する。
【0055】
表示部24は、制御部22の処理内容および/または処理結果に関連する文字や画像等を表示する。表示の態様は特に限定されない。また、情報処理装置2は、表示部24とともに、もしくは表示部24の代わりに、音声出力部を備えていてもよい。そして、音声出力部は、制御部22の処理内容および/または処理結果に関連する音声を出力してもよい。
【0056】
記憶部23は、情報処理装置2の動作に必要な情報を記憶する。記憶部23は、例えば、閾値データ231と、相関データ232と、を記憶している。閾値データ231は、制御部22において、高さの特定に用いる測定値を決める際の閾値を示すデータである。相関データ232は、各ひずみセンサの抵抗値と高さとの相関関係を予め測定または機械的に算出して記録しておいたデータである。
【0057】
相関データ232のデータ形式は特に限定されない。例えば、相関データ232は、抵抗値と、当該抵抗値に対応する高さの値とを紐づけて記録したデータテーブルであってもよい。また、相関データ232は、抵抗値の値を代入すると、当該抵抗値に対応する高さの値が算出される計算式であってもよい。
【0058】
図6は、記憶部23に記憶されている相関データ232の一例を示す図である。
図6の例では、相関データ232はデータテーブルである。
図6の(a)はひずみセンサ1αの、(b)はひずみセンサ1βの、(c)はひずみセンサ1γの相関データを示している。各表の左列は抵抗変化量を示している。ここで、「抵抗変化量」とは、各ひずみセンサを容器9に貼り付けた状態であって、容器9が空の状態であるときの抵抗値を基準値(すなわち、ゼロ)とおいた場合の、抵抗値の当該基準値からの変化量を示している。
【0059】
一般的に、容器9に内容物が充填されていくと、液面より上の側壁91には圧力がかかりにくいが、液面より下になった段階で側壁91に対してある程度強い圧力が発生すると推測される。また、その圧力は底面に近づくほど強くなると推測される。したがって、側壁91に対する圧力を示す抵抗変化量から、内容物の高さを特定することができるといえる。
【0060】
制御部22は、情報処理装置2を統括的に制御する。制御部22は、例えば、マイクロプロセッサや、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で実現することができる。また、制御部22はメモリを備えていてもよい。制御部22の各種機能は、ROM等に記録されたプログラムがメインメモリに読み出されてCPUにより実行されることによって実現できる。但し、制御部22の一部又は全部は、ハードウェアのみにより実現されてもよい。又、制御部22は、物理的に複数の装置等により構成されてもよい。制御部22は、ひずみセンサ1α、1β、および1γから受信した抵抗値の、少なくとも1つに基づいて、内容物Lの高さ(本実施形態では、液位)を特定する。以下、先程説明した
図6と、
図7とを用いて、制御部22の処理内容について詳細に説明する。
【0061】
図7は、容器9における内容物の充填度合と、ひずみセンサ1α、1β、および1γの抵抗値および抵抗変化量との関係を示す図である。
図7の(a)は空の状態の容器9を示している。
図7の(b)は容器の約20%程度の所まで内容物が充填された状態を示している。
図7の(c)は容器の約80%程度の所まで内容物が充填された状態を示している。
図7の(d)は
図7の(a)の状態のときの各ひずみセンサの抵抗値および抵抗変化量を示す表である。
図7の(e)は
図7の(b)の状態のときの各ひずみセンサの抵抗値および抵抗変化量を示す表である。
図7の(f)は
図7の(c)の状態のときの各ひずみセンサの抵抗値および抵抗変化量を示す表である。
【0062】
図7の(a)および(d)に示す通り、容器9が空の場合、各ひずみセンサの抵抗値は一定の値を示す。なお、この一定の値は、各ひずみセンサの構造(例えば、感度や種類など)により異なっていてもよい。また、抵抗変化量は0である。
【0063】
ここで、容器9に内容物Lが充填され、
図7の(b)の状態になったとする。この場合、
図7の(e)に示す通り、側壁91が内容物Lによって圧力を受けて、抵抗変化量が生じる。特に圧力を受ける領域に貼り付けられているひずみセンサ1γの抵抗変化量が最も高くなる。
【0064】
ここからさらに容器9に内容物Lが充填され、
図7の(c)の状態になったとする。この場合、
図7の(f)に示す通り、側壁91が内容物Lによってより大きな圧力を受けるので、抵抗変化量が増加する。また、底面に近いひずみセンサほど、大きな抵抗変化量が生じる。
【0065】
発明者らは、内容物の高さと抵抗変化量とのこのような関係に着目することで、ひずみセンサの出力する抵抗値に基づき内容物の高さを特定する方法を見出した。
図8は、情報処理装置2の制御部22
で実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0066】
情報処理装置2の制御部22はまず、ひずみセンサ1α、1β、および1γそれぞれから通信部21を介し抵抗値データを取得する(S1)。次に、制御部22は、取得した抵抗値データと、記憶部23の閾値データ231とを比較することで、抵抗値または抵抗変化量が所定の閾値以上であるひずみセンサがあるか否かを判定する(S2)。なお、ここで抵抗値と抵抗変化量のいずれを用いるかは、閾値データ231および相関データ232の形式に応じて適宜決定してよい。以降、抵抗値データが示す抵抗値および抵抗変化量のことをまとめて「測定値」とも称する。
【0067】
抵抗(または抵抗変化量)が所定の閾値以上であるひずみセンサが無い場合(S2でNO)、制御部22は、容器9の高さを0、または測定値未満と判定する(S3)。一方、抵抗(または抵抗変化量)が所定の閾値以上であるひずみセンサが有る場合(S2でYES)、制御部22は、それらのひずみセンサのうち最も抵抗値(または抵抗変化量)が小さいものを特定する(S4)。制御部22は、記憶部23の相関データ232を参照して、特定したひずみセンサの抵抗値(または抵抗変化量)に対応する、液位の値を特定する(S5)。
【0068】
例えば、抵抗変化量の閾値が、20Ωであると仮定する。この条件下で、ひずみセンサ1α、1β、および1γの抵抗値および抵抗変化量が、
図7の(e)に示す値であった場合、抵抗変化量が閾値(20Ω)以上であるひずみセンサは、ひずみセンサ1γである。そのため、制御部22は、ひずみセンサ1γの抵抗変化量に対応する液位を相関データ232から特定する。
図7の(e)ではひずみセンサ1γの抵抗変化量が50Ωであるため、相関データが
図6に示すものである場合、
図6の(c)に示す通り、液位は20センチメートルである。
【0069】
また例えば、同条件下で、ひずみセンサ1α、1β、および1γの抵抗値および抵抗変化量が、
図7の(f)に示す値であった場合、抵抗変化量が閾値(20Ω)以上であるひずみセンサは、ひずみセンサ1α、1β、および1γである。そして、その中で最も抵抗変化量が小さいひずみセンサは、ひずみセンサ1αである。そのため、制御部22は、ひずみセンサ1αの抵抗変化量に対応する液位を相関データ232から特定する。
図7の(f)ではひずみセンサ1αの抵抗変化量が30Ωであるため、相関データが
図6に示すものである場合、
図6の(a)に示す通り、液位は80センチメートルである。
【0070】
以上の処理によれば、測定装置3は、容器9に入れられた内容物Lの液位を測定することができる。また、容器9の外部にあるひずみセンサ1α、1β、および1γと相関データ232とを用いて液位を特定することで、内容物に測定装置を接触させずに液位を測定することができる。ゆえに、測定装置3は、実際に液面を撮影やセンシングして液位を特定する場合と比べて、液体(さらに言えば、容器9の内容物)の種類を問わず液位を測定することができる点で有利である。例えば、スラッジを含んだ内容物、または粘性が高い内容物であっても、測定装置3で液位を測定することが可能である。
【0071】
なお、本開示において、ひずみセンサの数は特に限定されない。例えば測定装置3はひずみセンサを1つだけ有していてもよい。そして、高さ方向において、これ以上内容物が減少したら検知したい、という高さのラインを決めて、当該ラインの近傍にひずみセンサを設置してもよい。これにより、例えば、内容物Lが徐々に減っていき残り少なくなった場合に、制御部22は、ひずみセンサの抵抗値データに基づき液位の低下を検出することができる。
【0072】
前記実施形態1に記載のひずみセンサは、周状の外周部分と、十字状の梁部とを備えていてもよく、前記ひずみゲージは前記十字状の梁部に設けられていてもよい。以下、本実施形態に係るひずみセンサ1α、1β、および1γについて
図9~
図11を用いて説明する。以下の説明では一例としてひずみセンサ1αについて説明するが、ひずみセンサ1β、および1γも同様の構成であってよい。
【0073】
<ひずみセンサ>
図9は、本発明のひずみセンサ1αが容器9の側壁91に装着された状態を示す断面図である。
図10は、ひずみセンサ1αが単体の状態の圧力検出面側を示す斜視図である。
図11は、ひずみセンサ1αの圧力検出面側の正面図である。
【0074】
図9および
図10を参照すると、ひずみセンサ1αは、側壁91との対向する圧力検出面以外は、筐体10で囲われている。筐体10は、筒壁101と、背面壁102と、を有している。
【0075】
そして、筐体10がない、背面壁102と対向する圧力検出面には、複数のひずみゲージ12a、12b、12c、12dが取り付けられた起歪体11が設けられている。また、圧力検出面において、起歪体11の外周側には、円環状の貼付部18が設けられている。
【0076】
また、筐体10の内部には、フレキシブル基板である制御基板17が設けられている。そして、制御基板17上には、AFE13と、信号処理部14と、バッテリー15と、通信部16が設けられている。ひずみゲージ12a、12b、12c、12dはAFE13とリード線19で接続されている。
【0077】
図10および
図11を参照して、起歪体11は、基部111と、梁部112a、112b、112c、112dと、負荷部113と、延伸部114a、114b、114c、114dとを有している。起歪体11は、例えば、平面視で4回対称の形状である。起歪体11の材料としては、例えば、SUS(ステンレス鋼)、銅、及びアルミニウム等を用いることができる。起歪体11は例えば平板状であり、各構成要素は、例えばプレス加工法等により一体に形成されている。起歪体11における、梁部112a、112b、112c、112dは平面であってもよいし、圧力検出側が凸となるようにドーム状等に突起した形状であってもよい。負荷部113を除く起歪体11の厚さは、例えば、一定であって、0.01mm以上0.25mm以下である。
【0078】
ひずみセンサ1αにおいて、筐体10は起歪体11を保持する部分である。筐体10は円筒状であって、外側が塞がれ圧力検出側が開口されている。筐体10は、例えば、金属や樹脂等から形成できる。筐体10の圧力検出側の開口を塞ぐように、略円板状の起歪体11が接着剤等により固定されている。起歪体11は、複数のひずみゲージ12a、12b、12c、12dが配置されており、ひずみ量を検出する部分である。
【0079】
起歪体11において、基部111は、
図10及び
図11で示す円形の破線よりも外側の円形枠状(リング状)の領域である。なお、円形の破線よりも内側の領域を円形開口部と称する場合がある。つまり、起歪体11の基部111は、円形開口部を備えている。基部111の幅w
1は、例えば、1mm以上5mm以下である。基部111の内径d(すなわち、円形開口部の直径)は、例えば、5mm以上40mm以下である。
【0080】
梁部112a、112b、112c、112dは、基部111の内側を橋渡しするように設けられている。梁部112a、112b、112c、112dは、例えば、平面視で十字状に交差する2本の梁を有し、2本の梁の交差する領域は円形開口部の中心を含む。十字を構成する1本の梁が
図11の横方向を長手方向とし、十字を構成する他の1本の梁が
図11の縦方向を長手方向とし、両者は直交している。直交する2本の梁の各々は、基部111の内径d(円形開口部の直径)より内側にあり、かつ可能な限り長いことが好ましい。つまり、各々の梁の長さは、円形開口部の直径と略等しいことが好ましい。梁部112a、112b、112c、112dを構成する各々の梁において、交差する領域以外の幅w
2は一定であり、例えば、1mm以上5mm以下である。幅w
2が一定であることは必須ではないが、幅w
2を一定とすることで、ひずみをリニアに検出するできる点で好ましい。
【0081】
負荷部113は、梁部112a、112b、112c、112dの中央に設けられている。負荷部113は、例えば、梁部112a、112b、112c、112dを構成する2本の梁が交差する領域に設けられる。負荷部113は、梁部112a、112b、112c、112dの上面(圧力検出面)から突起している。梁部112a、112b、112c、112dの上面を基準とする負荷部113の突起量は、例えば、0.1mm程度である。梁部112a、112b、112c、112dは可撓性を有しており、負荷部113に負荷が加わると弾性変形する。
【0082】
4つの延伸部114a、114b、114c、114dは、平面視で基部111の内側から中央に向かって、梁部112a、112b、112c、112dの間で延伸する扇形の部分である。各々の延伸部114a、114b、114c、114dと梁部112a、112b、112c、112dとの間には、1mm程度の隙間が設けられている。なお、当該隙間を例えば0.05~0.2mm程度とした場合には、外部から筐体10内部へのコンタミ侵入を防止することが可能である。延伸部114a、114b、114c、114dは、ひずみセンサ1αのセンシングには寄与しないため、設けなくてもよい。
【0083】
図9を参照して、ひずみセンサ1αにおいて、起歪体11の中央の負荷部113が、筐体10の筒壁101の開口部から突出して、側壁91の外側に接触可能な状態で、容器9の側壁91の外側面に取り付けられる。
【0084】
ひずみセンサ1αは、貼り付け前の状態において、起歪体11の負荷部113が、貼付部18よりも、外側に突出していることが好ましい。負荷部113が、外側(容器側)に突出する場合、貼り付け前の突出量は3mm~7mm程度とすることが好ましい。
【0085】
この突出構成により、ひずみセンサ1αが、空の容器に装着された場合であっても、ひずみセンサ1αが浮かびあがらず、容器の外側面に適度な値の初圧をかけて、初期値でもひずみセンサ1αは所定の抵抗値を示すことができる。
【0086】
ひずみゲージ12a、12b、12c、12dは、起歪体11の一方の面に設けられている。ひずみゲージ12a、12b、12c、12dは、例えば、梁部112a、112b、112c、112dの圧力検出面と対向する背面側に設けることができる。梁部112a、112b、112c、112dは平板状であるため、ひずみゲージを容易に貼り付けることができる。ひずみゲージ12a、12b、12c、12dは、1個以上設ければよいが、本実施形態では、4つのひずみゲージ12a、12b、12c、12dを設けている。4つのひずみゲージ12a、12b、12c、12dを設けることで、フルブリッジにより、ひずみを検出することができる。
【0087】
図11に示すように、4つのひずみゲージのうちの2つのひずみゲージ12b、12dは、梁の負荷部113に近い側(円形開口部の中心側)に、平面視で負荷部113を挟んで対向するように配置されている。4つのひずみゲージのうちの他の2つのひずみゲージ12a、12cは、梁の基部111に近い側に、平面視で負荷部113を挟んで対向するように配置されている。このような配置により、圧縮力と引張力を有効に検出してフルブリッジにより大きな出力を得ることができる。
【0088】
ひずみセンサ1αは、負荷部113が、容器9の外側面に当たるように貼り付けられて使用される。容器9内の内容物の量に応じて負荷部113に負荷が加わって梁部112a、112b、112c、112dが弾性変形すると、ひずみゲージ12a、12b、12c、12dの抵抗体の抵抗値が変化する。ひずみセンサ1αは、梁部112a、112b、112c、112dの変形に伴なうひずみゲージ12a、12b、12c、12dの抵抗体の抵抗値の変化に基づいて、内容量を検出できる。
【0089】
<実施形態2>
以下、本開示の実施形態2について、
図12および
図13を用いて説明する。なお、本実施形態において、前述の実施形態と同様の内容については説明を繰り返さない。これは、以降の実施形態および変形例においても同様である。
【0090】
内容物Lが粘体や粉体の場合、容器9に充填したときに、容器内での内容物の高さに偏りが生じることがある。例えば、内容物Lが粘性の高い液体の場合、上面の一部が盛り上がっていたり、凹んでいたり、斜めであったり等、内容物の高さが一定にならない可能性がある。本実施形態に係る測定装置3Aは、このように高さが一定でない場合でも、およその内容物の高さを特定することができる。以下、測定装置3Aについて詳述する。
【0091】
図12は、本実施形態に係る測定装置3Aの概要を示す図である。測定装置3Aは、ひずみセンサ1α、1β、1γに加え、ひずみセンサ1δ、1ε、および1ζ(追加の測定部)を有している点で、実施形態1に係る測定装置3と異なる。
図12の例では、容器9の側壁91において、ひずみセンサ1αと1δ、ひずみセンサ1βと1ε、およびひずみセンサ1γと1ζはそれぞれ、同じ高さになるよう貼り付けられている。また、ひずみセンサ1α、1β、1γはそれぞれ高さ方向に一直線に貼り付けられており、ひずみセンサ1δ、1ε、および1ζも高さ方向に一直線に貼り付けられている。
【0092】
ひずみセンサ1δ、1ε、および1ζの構成はそれぞれ、ひずみセンサ1α、1β、1γと同一であってよい。本実施形態に係る情報処理装置2の記憶部23は、ひずみセンサ1δ、1ε、および1ζについての相関データ232も記憶している。
【0093】
図13は、容器における内容物の充填度合と、ひずみセンサの抵抗値および抵抗変化量との関係の他の一例を示す図である。
図13の(a)は内容物が偏って充填されており、容器の約20~40%程度の所まで内容物が充填された状態を示している。
図13の(b)は内容物が偏って充填されており、容器の約60~80%程度の所まで内容物が充填された状態を示している。
図13の(c)は
図13の(a)の状態のときの各ひずみセンサの抵抗値および抵抗変化量を示す表である。
図13の(d)は
図13の(b)の状態のときの各ひずみセンサの抵抗値および抵抗変化量を示す表である。なお、実施形態1と同様、本実施形態でも、所定の閾値は抵抗変化量の閾値であり、20Ωであることとする。
【0094】
本実施形態に係る情報処理装置2Aの制御部22は、高さ方向に一直線に並べられているひずみセンサを1ペアとして、各ペアについて、
図8のS2以降の処理を実行する。これにより、
図13の(c)の場合、ひずみセンサ1εの抵抗変化量に対応する液位と、ひずみセンサ1γの抵抗変化量に対応する液位と、が特定される。また、
図13の(d)の場合、ひずみセンサ1δの抵抗変化量に対応する液位と、ひずみセンサ1γの抵抗変化量に対応する液位と、が特定される。
【0095】
制御部22は、これらの液位をそれぞれ測定結果であるとして表示部24に表示してもよい。もしくは、制御部22は、これらの液位の平均値を算出し、当該平均値を容器9における内容物Lの液位と特定してもよい。
【0096】
すなわち、本実施形態に係る測定装置3Aは、容器9の側壁91の外側に、追加でひずみセンサ1δ、1ε、および1ζがさらに貼り付けられている。そして、制御部22は、ひずみセンサ1α、1β、および1γのグループに属するひずみセンサのうち1つ以上のひずみセンサと、ひずみセンサ1δ、1ε、および1ζのグループに属するひずみセンサのうち1つ以上のひずみセンサと、の測定値に基づいて液面を特定する。これにより、内容物の高さが平均化されていない場合であっても、複数のひずみセンサの抵抗値から、内容物の高さを特定することができる。
【0097】
<変形例1>
本開示に係る測定装置は、容器に対する内容物の充填量を算出してもよい。この場合、記憶部23、または制御部22には、予め、以下の(1)~(3)の情報が記憶されていてよい。
(1)容器の容量
(2)容器が一杯になった際の内容物の高さ
(3)内容物の比重
情報処理装置2の制御部22は、下記(式1)を用いて、内容物の体積を算出してもよい。また、制御部22は、下記(式2)を用いて、内容物の重量を算出してもよい。
(式1)容器の容量×内容物の高さ/容器が一杯になった際の内容物の高さ
(式2)容器の容量×内容物の高さ/容器が一杯になった際の内容物の高さ×内容物の比重
本変形例によれば、内容物の高さとともに、内容物の体積および/または重量を測定することができる。
【0098】
<変形例2>
本開示に係る測定装置は、容器の側面の外側に設けられたひずみセンサに加えて、容器の底面に貼り付けられた1つ以上の底面ひずみセンサを備えていてもよい。また、制御部22は、通信部21を介して底面ひずみセンサ(底面測定部)からも抵抗値のデータを取得してもよい。そして、制御部22は、底面ひずみセンサの出力する抵抗値に基づいて、容器の内容物の重さを算出してもよい。底面ひずみセンサの種類は特に限定されないが、例えばロードセルの一部分としてはたらくひずみセンサを底面ひずみセンサとして用いることができる。本変形例によれば、内容物の高さとともに、内容物の重量を測定することができる。
【0099】
<変形例3>
前述の実施形態および変形例では、ひずみセンサは、それぞれが別個に情報処理装置と通信していた。しかしながら、本開示にかかるひずみセンサは、容器9に貼り付けられているひずみセンサの一部または全部のデータをまとめる通信ユニットを介して、情報処理装置2または2Aにまとめて抵抗値データを送信してもよい。この場合、前述の通信ユニットは、例えば容器9に取り付けられる、または容器9の近傍に設置されており、ひずみセンサと有線または無線で接続されている。そして、通信ユニットは情報処理装置とも有線または無線で接続されており、ひずみセンサの抵抗値データを情報処理装置2または2Aに送信する。
【0100】
<実施形態3>
上述した各実施形態およびその変形例では、本開示に係る測定部が抵抗体を用いたひずみセンサ(またはひずみゲージ自体)である例について説明した。特に、前記各実施形態では、本開示に係る測定部が電気抵抗式の金属ひずみゲージを有する場合について説明した。しかしながら、本開示に係るひずみゲージは金属ひずみゲージに限定されない。例えば、本開示に係るひずみセンサまたはひずみゲージは、容器9の側面(側壁91)に対して内側から外側へとかかる圧力によって引き起こされる磁気変化を検出する検出素子を有していてもよい。そして、当該検出素子の測定値に基づいて、容器9の内容物の、底面から表面までの高さを特定してもよい。
【0101】
具体的には、本開示に係る測定部は、ビラリ現象(後述)を利用した検出素子を含んだひずみゲージであってもよい。また、本開示に係る測定部は、磁気トンネル接合(後述)の構造を有する検出素子を含んだひずみゲージであってもよい。以下、実施形態3では、ビラリ現象を利用した検出素子を含むひずみゲージについて説明する。また、実施形態4では、磁気トンネル接合の構造を有する検出素子を含んだひずみゲージについて説明する。
【0102】
なお、本明細書の各実施形態では、同様の機能を有する部材には同様の名称および部材番号を付し、説明を繰り返さないこととする。また、以降の各実施形態に係る各図面(
図14以降の図面)におけるx軸、y軸、およびz軸の方向は、それぞれ同一方向である。また、以降の説明では、z軸の正方向を「上」、z軸の負方向を「下」と称する。すなわち、以降の説明において「上側」とはz軸の正方向側であり、「上面」はz軸の正方向側にある面を示す。また、「下側」とはz軸の負方向側であり、「下面」とはz軸の負方向側にある面を示す。
【0103】
図14は、実施形態3に係るひずみゲージに含まれる検出素子300の一例を示す図である。
図14の(a)は検出素子300をz軸の正方向から負方向(すなわち、上面から下面側)に見下ろしたときの平面図である。一方、
図14の(b)は、
図14の(a)に示す検出素子300のα-α´直線での断面図を示している。なお、
図14の(a)および(b)では、検出素子300から延びる配線は図示していない。しかしながら、検出素子300には、後述する駆動コイル320と電源とを接続する配線と、感知コイル380によって検出された電流を伝達するための配線が接続されていてもよい。
【0104】
図14の(a)に示す通り、検出素子300は、駆動コイル320と、感知コイル380と、ベース層310とを含む。ベース層310は駆動コイル320および感知コイル380の芯材となる層である。感知コイル380は、ベース層310(より厳密には、後述するベース金属370)の磁化の強さを検出するためのコイルである。駆動コイル320は、磁界を発生させるためのコイルである。検出素子300は、ベース層310を芯材として、感知コイル380が内側、そして駆動コイル320が外側に巻かれた2重構造を有している。なお、駆動コイル320および感知コイル380の材料は、Cu、Ag、Al、およびAu等の導電性金属、ならびに、これらの金属の合金であることが望ましい。また、駆動コイル320および感知コイル380の巻き数および断面積の大きさは、検出素子300に要求されるひずみの検知感度に応じて適宜設計されてよい。
【0105】
後で詳述するが、ベース層310に応力が加わると、ベース層310に含まれるベース金属370(後述)の磁化の強さが変化する。検出素子300は、感知コイル380でこの磁化の強さの変化を検出することによって、ベース層310にかかる応力の強さ(すなわち、ひずみ度合)を特定することができる。
【0106】
図14の(b)の断面図を参照して、検出素子300の構成について更に説明する。なお、
図14の(b)において、駆動コイル320、感知コイル380、および3つの絶縁層340、350、および360はそれぞれ、芯材であるベース金属370を取り囲むように形成されている。すなわち、
図14の(b)において同じ部材番号を付した層は、ベース金属370を取り囲んで繋がっている。
【0107】
ベース金属370は、各種コイルおよび絶縁層の芯材となる部材である。ベース金属370は、例えば略平板状の金属板であってよい。ベース金属370は絶縁層360で取り囲むように被覆されている。ベース金属370は、例えば、センダスト等のFe-Si-Al系合金、および、パーマロイ等のNi-Fe系合金等の軟磁性体材料で構成されることが望ましい。前述のベース層310は、
図14の(b)に示す通り、このベース金属370と絶縁層360から成る。
【0108】
絶縁層360の外側には、絶縁層360を取り囲むように絶縁層350が形成される。そして、絶縁層350の外側には、更に絶縁層340が形成されている。絶縁層350は、感知コイル380を含む層であり、感知コイル380の間隙を絶縁材料で充填した層である。絶縁層340は、駆動コイル320を含む層であり、駆動コイル320の間隙を絶縁材料で充填した層である。絶縁層340、350、および360は、磁界に影響しないドライフィルムまたは感光性ポリイミド等のレジスト硬化物から成ることが望ましい。
【0109】
検出素子300の一面は、
図14の(b)に示すように、基材110に貼り付けられていてよい。基材110は、検出素子300を固定する部材である。例えば、基材110は、プラスチックフィルム等で構成されるフレキシブル基板であってよい。検出素子300は基材110を介して起歪体11または側壁91に貼り付けられる。なお、検出素子300は、全体として平板または薄膜状の検出素子であってもよい。検出素子300が平板または薄膜状である場合、検出素子300を基材110により容易に貼り付けることができる。また、検出素子300において基材110は必須の構成ではない。例えば、検出素子300に基材110を設けず、検出素子300の下面を起歪体11または側壁91に直接貼り付けて使用してもよい。
【0110】
本実施形態に係る起歪体11および容器9(特に、側壁91)は、基本的には実施形態1、2、およびその変形例に係る起歪体11および容器9と同様の構成および材料であってよい。しかしながら、本実施形態において、起歪体11および容器9は、非磁性体から成ることがより望ましい。本実施形態に係る起歪体11および容器9は、例えば、非磁性ステンレスを材料として作製することができる。
【0111】
次に、検出素子300を用いてひずみを検出する原理を概説する。検出素子300は、磁性体であるベース金属370を含んでいる。電源から駆動コイル320に交流電流が供給されると、駆動コイル320はその周囲に交番磁界を生じさせる。これにより磁界が発生し、ベース金属370は磁化される。この状態で容器9に内容物が充填されると、内容物の量(より正確には、容器における内容物の高さ)に応じて、容器9の側壁91(および、側壁91に固定されている起歪体11)の各所が変形する。すなわち、側壁91または起歪体11に、内容物の高さに応じたひずみが生じる。ひずみは基材110を伝わり、ベース金属370に応力が加わる。なお、検出素子300を、基材110を介さずに起歪体11または側壁91に貼り付けている場合は、起歪体11または側壁91からベース金属370(およびそれを被覆する絶縁層340~360)に直接応力が伝わる。
【0112】
ベース金属370に応力が加わると、その応力に応じてベース金属370の透磁率が変化する。したがって、ベース金属370の磁化の強さ(磁化の程度)が変化する。このように、磁性体に応力がかかると磁性体の透磁率および磁化の強さが変化する現象のことを「ビラリ現象」という。検出素子300の構成によれば、ピックアップコイルである感知コイル380には、ベース金属370の磁化の強さに応じた交流電圧が誘起される。したがって、ビラリ現象の原理に基づけば、この交流電圧の値から、ベース金属370にかかる応力を算出することができる。前述の通り、検出素子300は側壁91に固定された起歪体11(または側壁91自体)に貼り付けられている。したがって、ベース金属の応力に基づいて、側壁91にかかる圧力を検出することができる。なお、検出素子300が
図14の(a)および(b)に示す形状である場合、検出素子300のグリッド方向は、
図14の(a)におけるα-α´方向に等しい。以上説明した原理に基づいて、検出素子300は、容器9の側壁91に、内側から外側に対してかかる圧力を検出することができる。すなわち、検出素子300は、ひずみゲージの検出素子として機能する。
【0113】
なお、駆動コイル320は、感知コイル380の外側、かつ当該感知コイル380が存在している領域全体に、できる限り均一に巻き付けられることが望ましい。これにより、ベース金属370の、感知コイル380が存在する領域全体に、より均一に交番磁界を加えることができる。これにより、ビラリ現象によるベース金属370の磁化の強さの変化をより精密に検出することができる。したがって、検出素子300の性能が向上する。
【0114】
また、絶縁層360は、ベース金属370の全部ではなく一部に形成されていてもよい。例えば、ベース金属370のうち、感知コイル380および駆動コイル320を巻き付ける領域の部分を絶縁層360で覆い、絶縁層360の上から感知コイル380を含む絶縁層350で覆い、更に、絶縁層350の上から駆動コイル320を含む絶縁層340で覆うような構成であってもよい。
【0115】
また、ベース金属370が略平板状である場合、絶縁層360はベース金属370の、コイルを巻く方向のみ取り囲んで形成されていてもよい。すなわち、
図14の(b)において、ベース金属370のx方向の両端部は絶縁層360で覆われていなくてもよい。
【0116】
本実施形態に係る測定装置において、側壁91の内側から外側へとかかる圧力により、側壁91(および起歪体11)が変形する(すなわち、ひずみが生じる)と、ひずみゲージの基材110(または、検出素子300自体)がひずむ。検出素子300は、このひずみによって生じる磁性変化を、前述のビラリ現象の原理に基づき検出することができる。
【0117】
本実施形態に係る検出素子300を含んだひずみゲージは、実施形態1、2、およびその変形例で示したあらゆる配置パターンで、起歪体11または側壁91に配置可能である。すなわち、本実施形態に係る検出素子300を用いて、電気抵抗式のひずみゲージを用いたときと同様に側壁91にかかる圧力を検出することができる。したがって、本実施形態に係るひずみゲージは、実施形態1、2、およびその変形例に係るひずみゲージ12a~12dと同様の効果を奏する。
【0118】
〈実施形態4〉
図15は、実施形態4に係るひずみゲージに含まれる検出素子の一例である検出素子500を示す図である。
図16は、実施形態4に係るひずみゲージに含まれる検出素子の他の一例である検出素子600を示す図である。また、
図17は、実施形態4に係るひずみゲージに含まれる検出素子の更に他の一例である検出素子700を示す図である。
図15~17の(a)はそれぞれ、検出素子500、600、および700の斜視図である。
図15~17の(b)はそれぞれ、検出素子500、600、および700をz軸の正方向から負方向に見下ろしたときの平面図である。
図15~17の(c)は、検出素子500、600、および700の、zx平面に平行な面での断面図である。なお、
図15~17のいずれの図も、検出素子から延びる配線は図示していない。しかしながら、これらの検出素子500、600、および700には、後述する上流電極510と電源とを接続する配線と、下流電極520と電源とを接続する配線とが接続されていてもよい。
【0119】
図15~17の(a)に示す通り、検出素子500、600、および700は、上流電極510と、下流電極520と、磁性膜530と、絶縁膜540と、を含む。絶縁膜540は、図示のように磁性膜530で挟まれている。この磁性膜530と絶縁膜540によって、磁気トンネル接合が形成される。すなわち、検出素子500、600、および700は、磁気トンネル接合の構造に電極を接続した構造である。
【0120】
なお、検出素子500、600、および700の下面は、実施形態1、2、およびその変形例に係る基材121と同様の基材に貼り付けられていてもよい。そして、検出素子500は基材を介して起歪体11または側壁91に貼り付けられてよい。また、検出素子500、600、および700は、全体として平板または薄膜状の検出素子であってもよい。検出素子500、600、および700が平板または薄膜状である場合、検出素子500、600、および700を基材に、より容易に貼り付けることができる。また例えば、検出素子500、600、および700の下面を起歪体11または側壁91に直接貼り付けて使用してもよい。
【0121】
磁性膜530は磁性ナノ薄膜である。絶縁膜540は絶縁体のナノ薄膜である。磁気トンネル接合の構造が形成可能であれば、磁性膜530と、絶縁膜540の材料は特に限定されない。例えば、磁性膜530としてコバルト鉄ボロン、または、Fe、Co、Niなどの3d遷移金属強磁性体及びそれらを含む合金等を用いることができる。また、絶縁膜540として、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウムや酸化マグネシウム等を用いることができる。
【0122】
上流電極510および下流電極520は、磁気トンネル接合の構造に対し電圧を印加するための電極である。
図15~17の例では、電流は上流電極510から下流電極520へと流れる。例えば
図15の(c)の場合、上流電極510と下流電極520の間に電圧を印加すると、電子は上側(z軸正方向側)の磁性膜530から、絶縁膜540を超えて下側(z軸負方向側)の磁性膜530に流れ込む。これは「トンネル効果」と呼ばれている現象であり、電子が絶縁膜540を通過するときの電気抵抗は、「トンネル抵抗」と呼ばれている。なお、
図15~17の例では、電極の各部の接合部は、磁気トンネル接合の構造をショートパスする電流が流れない様に端部が処理された構造となっている。
【0123】
ところで、基材110等を介して検出素子500にひずみがかかると、トンネル接合の構造において、磁気変化が起こる。より具体的には、上側と下側の磁性膜530の磁化方向がずれる。このように、上下の磁性膜530の磁化方向がずれると、磁化方向が平行な場合に比べて、トンネル抵抗が大きくなる(トンネル磁気抵抗効果)。したがって、前述の構成を備えた検出素子500では、検出素子500(より厳密には、磁気トンネル接合の部分)のひずみの大きさに応じて、電極間を流れる電流が小さくなる。すなわち、ひずみが大きくなるにつれ、電気抵抗が大きくなる。検出素子500は、このように、印加した電圧に対する電流値に基づきひずみを検出することができる。したがって、検出素子500を起歪体11または側壁91に貼り付けることによって、起歪体11または側壁91にかかるひずみを測定することができる。
【0124】
磁気トンネル接合の構造を有する検出素子は、
図15に示した例に限定されない。例えば、
図16および
図17に示すような検出素子600および700を採用することも可能である。
図16に示す検出素子600も、
図17に示す検出素子700も、上流電極510、下流電極520、磁性膜530、および絶縁膜540で構成されること、および、これらの構成によってひずみを検出する原理については、検出素子500と同様である。また、検出素子600および700の基本的な動作についても、検出素子500と同様である。なお、検出素子500、600、および700のグリッド方向は、それぞれ
図15~
図17におけるx軸方向(x軸の正方向およびx軸の負方向)に相当する。
図16に示す検出素子600は図示の通り、上側の磁性膜530と下側の磁性膜530が、一部繋がった構造をしている。すなわち、磁性膜530の一部の領域においてのみ、磁気トンネル接合の構造が形成されており、当該構造においてトンネル磁気抵抗効果が生じる。一方、
図17に示す検出素子700は、基板710を介して基材110に貼り付けられる。
図15~
図17に示すように、検出素子は前述の原理を超えない範囲であれば、要求されるサイズ、耐久性、および検出すべき応力の大きさ等に応じて、適宜その設計が変更されてよい。
【0125】
なお、本実施形態に係る起歪体11および容器9(特に、容器9の側壁91)は、基本的には実施形態1に係る起歪体11および容器9と同様の構成および材料であってよい。しかしながら、本実施形態において、起歪体11および容器9は、非磁性体から成ることがより望ましい。本実施形態に係る起歪体11および容器9は、例えば、非磁性ステンレスを材料として作製することができる。また、検出素子500、600、および700は素子全体として、フィルム型などの略平板状の形状であってよい。これにより、起歪体11および容器9に、検出素子500を容易に貼り付けることができる。また、検出素子500、600、および700は、駆動コイル等、磁気トンネル接合の構造部分に対して、微弱な磁界を印加するための構造を有していてもよい。磁気トンネル接合の構造部分に対して磁界を印加することにより、前述のトンネル磁気抵抗効果をより安定して測定することができるため、安定してひずみを検出することができる。
【0126】
また、検出素子500、600、および700における「上流電極」および「下流電極」は便宜上の名称であり、電流の流れる方向は逆であってもよい。つまり、
図15~
図17で示した検出素子500、600、および700において、下流電極520の方から、上流電極510の方へと電流が流れる設計であってもよい。
【0127】
本実施形態に係る測定装置において、側壁91の内側から外側へとかかる圧力により、側壁91(および起歪体11)が変形する(すなわち、ひずみが生じる)と、ひずみゲージの基材(または、検出素子500、600、または700自体)がひずむ。検出素子500、600、または700は、このひずみによって生じる磁性変化を、前述のトンネル磁気抵抗効果の原理に基づき検出することができる。
【0128】
本実施形態に係る検出素子500、600、および700を含んだひずみゲージは、実施形態1、2、およびその変形例に示したあらゆる配置パターンで、起歪体11または側壁91に配置可能である。すなわち、本実施形態に係る検出素子500、600、および700を用いて、電気抵抗式のひずみゲージを用いたときと同様に側壁91にかかる圧力を検出することができる。したがって、本実施形態に係るひずみゲージは、実施形態1、2、およびその変形例に係るひずみゲージ12a~12dと同様の効果を奏する。
【0129】
以上、好ましい実施形態等について詳説した。しかしながら、本開示に係る測定装置は、上述した実施形態および変形例等に限定されない。例えば、上述した実施形態等に係る測定装置について、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0130】
1α、1β、1γ ひずみセンサ(測定部)、 1δ、1ε、1ζ ひずみセンサ(追加の測定部)、 2 情報処理装置、 3、3A 測定装置、 9 容器、 91 側壁 10 筐体、 11 起歪体、 12a、12b、12c、12d ひずみゲージ(測定部)、 16 通信部、 18 貼付部、 21 通信部、 22 制御部、 23 記憶部、 24 表示部 300,500,600,700 ひずみゲージの検出素子、 310 ベース層、 320 駆動コイル、 340,350,360 絶縁層、 370 ベース金属、 380 感知コイル、 510 上流電極、 520 下流電極、 530 磁性膜、 540 絶縁膜、 710 基板