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特開2023-138435エポキシ樹脂、硬化性樹脂組成物及びその硬化物、並びに多価ヒドロキシ樹脂
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138435
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂、硬化性樹脂組成物及びその硬化物、並びに多価ヒドロキシ樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/08 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
C08G59/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039176
(22)【出願日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2022040870
(32)【優先日】2022-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本多 理沙
(72)【発明者】
【氏名】遠島 隆行
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 篤彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 一真
(72)【発明者】
【氏名】中西 政隆
【テーマコード(参考)】
4J036
【Fターム(参考)】
4J036AA01
4J036AF07
4J036AF08
4J036AF21
4J036DA01
4J036DA02
4J036DB06
4J036DB15
4J036DC02
4J036FB07
4J036FB08
4J036JA01
4J036JA06
4J036JA07
4J036JA08
4J036JA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低吸水性、難燃性に優れるエポキシ樹脂、硬化性樹脂組成物及びその硬化物、並びにエポキシ樹脂の原料となる多価ヒドロキシ樹脂を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表されるエポキシ樹脂。

(式(1)中、Gはグリシジル基を示す。Rはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6の炭化水素基を示す。複数存在するRはα-メチルスチレン類との置換反応により得られる置換基を示す。pはそれぞれ0~3の実数であり、nは繰り返し数であり、nの平均値naveは1≦nave≦20である。)
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるエポキシ樹脂。
【化1】
(式(1)中、Gはグリシジル基を示す。複数存在するRはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6の炭化水素基を示す。複数存在するRは下記式(1-a)で表される置換基を示す。複数存在するpはそれぞれ0~3の実数であり、pの平均値paveは0.1≦pave≦3.0である。nは繰り返し数であり、nの平均値naveは1≦nave≦20である。)
【化2】
(式(1-a)中、複数存在するRはそれぞれ独立して存在し、水素または炭素数1~6の炭化水素基を示す。qは繰り返し数であり、qの平均値qaveは0.01≦qave≦3である。波線は、結合部位を示す。)
【請求項2】
エポキシ当量が265g/eq.以上320g/eq.以下である請求項1に記載のエポキシ樹脂。
【請求項3】
軟化点が50℃以上90℃以下である請求項1に記載のエポキシ樹脂。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂と、硬化剤とを有する硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、硬化促進剤を含有する請求項4に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項4に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項7】
請求項4に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる半導体封止材料。
【請求項8】
下記式(2)で表される多価ヒドロキシ樹脂。
【化3】
(式(2)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、水素または炭素数1~6の炭化水素基を示し、複数存在するRは下記式(2-a)で表される置換基を示す。複数存在するpはそれぞれ0~3の実数であり、pの平均値paveは0.1≦pave≦3.0である。nは繰り返し数であり、nの平均値naveは1≦nave≦20である。)
【化4】
(式(2-a)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、水素または炭素数1~6の炭化水素基を示す。qは繰り返し数であり、qの平均値qaveは0.01≦qave≦3である。波線は、結合部位を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂、硬化性樹脂組成物及びその硬化物、並びに多価ヒドロキシ樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子分野の進歩にともない、より高性能な樹脂組成物の開発が求められている。特にCPUなどの半導体封止および基板(基板自体、もしくはその周辺材料)においては、半導体の変遷に従い薄層化が進んでおり、実質使用温度領域(室温~100℃、非特許文献1)と鉛フリー半田リフローする高温時(260℃)の両面で反りを抑制できる材料が求められている。具体的には、実質使用温度では駆動時の発熱に耐えられる高い弾性率を有し、高温時では膨張による応力を相殺できる低弾性率を有する材料が求められている(非特許文献2)。また、近年、車載材料の電装化により、電気信頼性の環境耐性も求められており、MSL(Moisture Sensitivity Level)など吸湿耐性が重要視されている。MSLとは半導体などのパッケージ封止樹脂の空気中水分の吸湿により、リフロー時などに水分気化による体積膨張からの破損に至る現象を防ぐことを目的として制定されているJEDEC(Joint Electron Device Engineering Council)の規格である。
【0003】
更に、環境負荷低減の観点から、ハロゲン系難燃剤排除の動きがあり、より難燃性に優れたベース樹脂が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭55-010612号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】西剛伺、ノートブック型パーソナルコンピュータ向けマイクロプロセッサの熱設計と熱制御、伝熱 2020年10月 3-8頁
【非特許文献2】高野希他、半導体実装用低熱膨張・高弾性率基板材料、エレクトロニクス実装学会誌、Vol.3 NO.3、2000年、210-214頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特性を達成するための方策としては、芳香族の置換基が有効と想定される。特許文献1は、p-クミルフェノール-ホルムアルデヒドのエポキシ樹脂を開示している。しかし、ホルムアルデヒドを過剰に使用した場合、アルコール性水酸基が末端に残るため、完全にエポキシ化することが困難である。一方で、p-クミルフェノールを過剰に使用した場合、p-クミルフェノールのモノマーが残存してしまい、十分な特性を達成できない。
【0007】
本発明は、上記状況を鑑みてなされたものであり、低吸水性、難燃性に優れるエポキシ樹脂、硬化性樹脂組成物及びその硬化物、並びにエポキシ樹脂の原料となる多価ヒドロキシ樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、下記[1]~[8]に関する。なお、本発明において「(数値1)~(数値2)」は上下限値を含むことを示す。
[1]
下記式(1)で表されるエポキシ樹脂。
【0009】
【化1】
【0010】
(式(1)中、Gはグリシジル基を示す。複数存在するRはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6の炭化水素基を示す。複数存在するRは下記式(1-a)で表される置換基を示す。複数存在するpはそれぞれ0~3の実数であり、pの平均値paveは0.1≦pave≦3.0である。nは繰り返し数であり、nの平均値naveは1≦nave≦20である。)
【0011】
【化2】
【0012】
(式(1-a)中、複数存在するRはそれぞれ独立して存在し、水素または炭素数1~6の炭化水素基を示す。qは繰り返し数であり、qの平均値qaveは0.01≦qave≦3.0である。波線は、結合部位を示す。)
[2]
エポキシ当量が265g/eq.以上320g/eq.以下である前項[1]に記載のエポキシ樹脂。
[3]
軟化点が50℃以上90℃以下である前項[1]又は[2]に記載のエポキシ樹脂。
[4]
前項[1]から[3]のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂と、硬化剤とを有する硬化性樹脂組成物。
[5]
さらに、硬化促進剤を含有する前項[4]に記載の硬化性樹脂組成物。
[6]
前項[4]または[5]に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
[7]
前項[4]または[5]に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる半導体封止材料。
[8]
下記式(2)で表される多価ヒドロキシ樹脂。
【0013】
【化3】
【0014】
(式(2)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、水素または炭素数1~6の炭化水素基を示し、複数存在するRは下記式(2-a)で表される置換基を示す。複数存在するpはそれぞれ0~3の実数であり、pの平均値paveは0.1≦pave≦3.0である。nは繰り返し数であり、nの平均値naveは1≦nave≦20である。)
【0015】
【化4】
【0016】
(式(2-a)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、水素または炭素数1~6の炭化水素基を示す。qは繰り返し数であり、qの平均値qaveは0.01≦qave≦3.0である。波線は、結合部位を示す。)
【発明の効果】
【0017】
本発明のエポキシ樹脂、及び硬化性樹脂組成物は、低吸水性や難燃性にも優れるものであり、電気・電子部品類の封止材料やCFRPの用途に好適に使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1のGPCチャートである。
図2】実施例1のLC-MSチャートである。
図3】実施例1のH-NMRチャートである。
図4】実施例2のGPCチャートである。
図5】実施例2のLC-MSチャートである。
図6】実施例3のGPCチャートである。
図7】実施例3のH-NMRチャートである。
図8】実施例4のGPCチャートである。
図9】実施例5、比較例1~3のDMAチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施形態のエポキシ樹脂は、下記式(1)で表されるものであって、本実施形態のエポキシ樹脂を含有する硬化性樹脂組成物は実質使用温度領域(室温~100℃)において高弾性を有し、かつ高温時(260℃付近)においては低弾性を有するとともに、低吸水性、難燃性に優れる。
【0020】
【化5】
【0021】
(式(1)中、Gはグリシジル基を示す。複数存在するRはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6の炭化水素基を示す。複数存在するRは下記式(1-a)で表される置換基を示す。複数存在するpはそれぞれ0~3の実数であり、pの平均値paveは0.1≦pave≦3.0である。nは繰り返し数であり、nの平均値naveは1≦nave≦20である。)
【0022】
【化6】
【0023】
(式(1-a)中、複数存在するRはそれぞれ独立して存在し、水素または炭素数1~6の炭化水素基を示す。qは繰り返し数であり、qの平均値qaveは0.01≦qave≦3である。波線は、結合部位を示す。)
【0024】
前記式(1)中、Rは水素原子または炭素数1~6の炭化水素基であり、水素原子または炭素数1~3の炭化水素基であることが好ましく、水素原子またはメチル基であることが更に好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0025】
前記式(1-a)中、Rは水素原子または炭素数1~6の炭化水素基であり、水素原子または炭素数1~3の炭化水素基であることが好ましく、水素原子またはメチル基であることが更に好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0026】
前記式(1)中、pは0~3の実数であり、pの平均値paveは0.1≦pave≦3.0であるが、0.1≦pave≦2.0であることが好ましく、0.1≦pave≦1.5であることが特に好ましい。paveが0.1以上である場合、弾性率、低吸水性、難燃性が良好となり、paveが3以下である場合、官能基密度が高まり硬化性が良好となる。0.1≦pave≦0.9である場合は、耐熱性を損なわずに高弾性率、低吸水性に優れた低粘度なエポキシ樹脂とすることができるため、特に好ましい。
【0027】
前記式(1-a)中、qは繰り返し数であり、qの平均値qaveは0.01≦qave≦3.0であるが、0.01≦qave≦2.0であることが好ましく、0.01≦qave≦1.0であることが更に好ましい。qaveが0.01以上である場合、弾性率、低吸水性、難燃性が良好となり、qaveが3以下である場合、官能基密度が高まり硬化性が良好となる。
【0028】
ave及びqaveの値は、エポキシ樹脂のH-NMRチャートでの3.5~3.9ppmのピークを原料である多価ヒドロキシ樹脂由来のメチレン基水素、2.1~2.4ppmのピークを(1-a)中のメチレン基水素、1.3~1.7ppmのピークを(1-a)中のメチル基の水素と帰属したときのそれぞれのピーク面積から算出することができる。pave及びqaveの値は、前記式(2)で表される多価ヒドロキシ樹脂のpave及びqaveの値とほぼ同じ値となることから、多価ヒドロキシ樹脂のH-NMRチャートの測定結果から算出した値を用いてもよい。
【0029】
前記式(1)中、nの平均値naveの値はエポキシ樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、検出器:RI)の測定により求められた数平均分子量(Mn)、あるいは分離したピークの各々の面積比から算出することができる。またnaveの値は、前記式(2)で表される多価ヒドロキシ樹脂、及び後述する下記式(3)で表される多価ヒドロキシ樹脂のnaveの値とほぼ同じ値となることから、前記式(2)で表される多価ヒドロキシ樹脂、または下記式(3)で表される多価ヒドロキシ樹脂の測定結果から算出した値を用いてもよい。naveは通常1≦nave≦20であるが、1.1≦nave≦10であることが好ましく、5≦nave≦9であることがより好ましい。数平均分子量は、200以上5000未満であるときが好ましく、300以上3000未満であるときがさらに好ましく、400以上2000未満であるときが特に好ましい。重量平均分子量が5000未満であると水洗による精製が容易となり、200以上であると溶剤留去工程において目的化合物が揮発することがない。
【0030】
本発明では、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析を以下の条件にて測定している。
【0031】
・GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析
メーカー:島津製作所
カラム:ガードカラム KF-G4A GPC KF-601(1本)、KF-602 KF-602.5、KF-603
流速:1.5ml/min.
カラム温度:40℃
使用溶剤:THF(テトラヒドロフラン)
検出器:RID-20A(示差屈折検出器)
【0032】
本実施形態のエポキシ樹脂のエポキシ当量は、265g/eq.以上320g/eq.以下であることが好ましく、270g/eq.以上310g/eq.未満であることがより好ましい。エポキシ当量が265g/eq.以上であると低吸水となり、320g/eq.以下であると耐熱性が良好となる。
【0033】
本実施形態のエポキシ樹脂は軟化点を有する樹脂状の形態を有することが好ましく、軟化点は50℃以上90℃以下であることが好ましい。軟化点が50℃未満であると、ブロッキングにより製品のハンドリングが難しくなり、90℃を超えるとフィラーを高充填できなくなるため充分な反り抑制効果が得られない。
【0034】
前記式(1)で表されるエポキシ樹脂(以下、AMSPNEともいう。)は、下記式(2)で表されるα,α-ジメチルベンジル基付加多価ヒドロキシ樹脂(以下、AMSPNともいう。)を公知の手法でエポキシ化することにより得ることができる。
【0035】
【化7】
【0036】
(式(2)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、水素または炭素数1~6の炭化水素基を示し、複数存在するRは下記式(2-a)で表される置換基を示す。複数存在するpはそれぞれ0~3の実数であり、pの平均値paveは0.1≦pave≦3.0である。nは繰り返し数であり、nの平均値naveは1≦nave≦20である。)
【0037】
【化8】
【0038】
(式(2-a)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、水素または炭素数1~6の炭化水素基を示す。qは繰り返し数であり、qの平均値qaveは0.01≦qave≦3.0である。波線は、結合部位を示す。)
【0039】
前記式(2)及び(2-a)中のR、R、R、pave、qave、nave及びその好ましい範囲は前記式(1)及び(1-a)と同じである。
【0040】
AMSPNは、下記式(3)で表される多価ヒドロキシ樹脂と下記式(4)で表されるα-メチルスチレン類やα-クミルアルコールを付加反応させることにより得ることができる。
【0041】
【化9】
【0042】
(式(3)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6の炭化水素基を示す。nは繰り返し数であり、nの平均値naveは1≦nave≦20である。)
【0043】
【化10】
【0044】
(式(4)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、水素または炭素数1~6の炭化水素基を示す。qは繰り返し数であり、qの平均値qaveは0.01≦qave≦3.0である。)
【0045】
前記式(3)及び(4)中のR、R、p、q、n及びその好ましい範囲は前記式(1)及び(1-a)と同じである。
【0046】
AMSPNは、先ず、前記式(3)で表される多価ヒドロキシ樹脂のフェノール性芳香環に対し、前記式(4)で表されるα-メチルスチレン類やα-クミルアルコールを付加させることによって、水酸基当量を任意に調整することができる。ここで、前記式(4)で表されるα-メチルスチレンやα-クミルアルコールを付加させるとは、前記式(3)で表される多価ヒドロキシ樹脂のベンゼン環の水素と式(2-a)で表わされる置換基を置換させることをいう。つまり、エポキシ樹脂硬化物においては、エポキシ基と水酸基との反応によって生成する親水性官能基である水酸基が吸水性に影響を与えるとされているが、水酸基当量を高くすることでエポキシ基由来の親水性官能基の割合が低くなり、高度な耐湿性を発現させることができる。また、芳香族性に富んだ式(2-a)で表される置換基を付加させることにより、芳香族性はより一層向上し、耐湿性の更なる向上に加え、難燃性の向上にも効果的である。
【0047】
よって、AMSPNから合成されるエポキシ樹脂は、実質使用温度領域(室温~100℃)において高弾性を有し、かつ高温時(260℃)においては低弾性を有し、さらに高耐湿性、難燃性に優れる。
【0048】
前記式(3)で表される多価ヒドロキシ樹脂と前記式(4)で表されるα-メチルスチレン類との付加反応の際、多価ヒドロキシ樹脂とα-メチルスチレン類との割合としては、得られる硬化物の難燃性と硬化性のバランスを考慮すると、多価ヒドロキシ樹脂中のフェノール性芳香環1モルに対し、α-メチルスチレン類の使用割合が0.1~2.5モルの範囲が好ましく、より好ましくは0.1~1.0モル、更に好ましくは0.3~0.8モルの範囲である。0.1以上である場合、弾性率、低吸水性、難燃性が良好となり、2.5以下である場合、官能基密度が高まり硬化性が良好となる。このモル比は前記式(2)のp、式(2-a)のqに関係する。
【0049】
前記式(3)で表わされる多価ヒドロキシ樹脂としては、フェノールノボラック又はクレゾールノボラックが代表的であるが、より好ましくはフェノールノボラックである。クレゾールノボラックを使用する場合、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾールのノボラックを含んでもよい。
【0050】
前記式(4)で表されるα-メチルスチレン類は、α-メチルスチレン、炭素数1~6の炭化水素基が置換したα-メチルスチレン、またはそれらが重合した化合物であり、好ましくはα-メチルスチレンまたはα-メチルスチレンが重合した化合物である。
【0051】
前記式(3)で表される多価ヒドロキシ樹脂と前記式(4)で表されるα-メチルスチレン類との付加反応においては酸触媒を用いるのが好ましく、酸触媒は周知の無機酸、有機酸より適宜選択することができる。例えば、塩酸、硫酸、燐酸等の鉱酸や、ギ酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、p‐トルエンスルホン酸、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等の有機酸や、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸あるいはイオン交換樹脂、活性白土、シリカ-アルミナ、ゼオライト等の固体酸等が挙げられる。これらの酸触媒は単独でも2種類以上を併用しても良い。
【0052】
これら酸触媒の使用量は10~1000ppmの範囲で選定することができ、好ましくは100~500ppmの範囲である。これより多いと生成したイソプロピリデン基の架橋結合が一部開裂し易くなり、原料の多価ヒドロキシ樹脂の性質が改良されないままの状態となる傾向がある。一方、これより少ないと反応性が低下し、未反応α-メチルスチレン類のモノマーを多く残存させる。また、これらの酸触媒を反応系内に添加する場合は予めフェノール類の加熱溶融物に添加しておいたり適当な溶剤に希釈したりして徐々に添加することも可能である。
【0053】
これら酸触媒存在下の縮合反応は好ましくは40~120℃の範囲で行われる。これより低いと、反応性が低下し反応時間が長時間となる。また、これより高いと生成したイソプロピリデン基の架橋結合が一部開裂し易くなり、原料の多価ヒドロキシ樹脂の性質が改良されないままの状態となる傾向がある。反応時間は通常1~20時間の範囲で選定することができる。
【0054】
AMSPNは、フェノール性芳香環へのα-メチルスチレン類の置換反応、α-メチルスチレン類の重合反応の協奏反応により得られるため、様々な成分を含有する。例えば、フェノール性芳香環にα-メチルスチレン類が2個結合した構造やα-メチルスチレンダイマーが1個結合した構造が同一の分子量として得られる。
この反応を実施する具体的方法としては、全原料を一括装入し、そのまま所定の温度で反応させるか、又は、多価ヒドロキシ樹脂と触媒を装入し、所定の温度に保ちつつ、α-メチルスチレン類を滴下させながら反応させる方法が一般的である。この際、滴下時間は、5時間以下が好ましく、通常、1~10時間である。反応後、溶媒を使用した場合は、必要により、触媒成分を取り除いた後、溶媒を留去させて本発明に使用する樹脂を得ることができ、溶媒を使用しない場合は、直接熱時排出することによって目的物であるAMSPNを得ることができる。
【0055】
つづいて、本実施形態のエポキシ樹脂を得る反応について説明する。
本実施形態のエポキシ樹脂は、上記AMSPNを公知の手法でエポキシ化して得られる。例えばエピハロヒドリンとの反応やオレフィンの酸化反応などが挙げられる。
【0056】
前記エピハロヒドリンは市場から容易に入手できる。エピハロヒドリンの使用量はAMSPNの水酸基1モルに対し通常4.0~10モル、好ましくは4.5~8.0モル、より好ましくは5.0~7.0モルである。エポキシ化の際は生成したエポキシ樹脂と未反応成分であるフェノール性水酸基が反応しグリセリンエーテル部位有するエポキシ樹脂が生成することが一般的である。このグリセリンエーテル部位が多いとエポキシ樹脂の硬化物の靭性が上がるため好ましい。一方で、グリセリンエーテル部位が多いとエポキシ樹脂の分子量の増加による溶融粘度の上昇によるハンドリング性の低下やエポキシ樹脂硬化物の吸水率の増加が起こるため好ましくなく、設計に応じたエピハロヒドリンの量を使用する必要がある。エピハロヒドリンを原料フェノール樹脂の水酸基に対して過剰に使用することでエポキシ化の際の分子間反応を抑制することができ低粘度のエポキシ樹脂を得ることができるため好ましい。
【0057】
上記反応において、エポキシ化工程を促進する触媒としてアルカリ金属水酸化物を使用することができる。使用しうるアルカリ金属水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、固形物を利用してもよく、その水溶液を使用してもよいが、本発明においては特に、溶解性、ハンドリングの面からフレーク状に成型された固形物の使用が好ましい。
アルカリ金属水酸化物の使用量はAMSPNの水酸基1モルに対して通常0.90~1.5モルであり、好ましくは0.95~1.25モル、より好ましくは0.99~1.15モルである。
【0058】
また、反応を促進するためにテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加してもかまわない。4級アンモニウム塩の使用量としてはAMSPN水酸基1モルに対し通常0.1~15モルであり、好ましくは0.2~10モルである。
【0059】
反応温度は通常30~90℃であり、好ましくは35~80℃である。特に本発明においては、より高純度なエポキシ化のために50℃以上が好ましく、特に60℃以上が好ましい。反応時間は通常0.5~10時間であり、好ましくは1~8時間、特に好ましくは1~3時間である。反応時間が短いと反応が進みきらず、反応時間が長くなると副生成物ができることから好ましくない。
これらのエポキシ化反応の反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下でエピハロヒドリンや溶媒等を除去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、回収したエポキシ樹脂を炭素数4~7のケトン化合物(たとえば、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。)を溶剤として溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて反応を行い、閉環を確実なものにすることもできる。この場合アルカリ金属水酸化物の使用量はエポキシ化に使用したAMSPNの水酸基1モルに対して通常0.01~0.3モル、好ましくは0.05~0.2モルである。反応温度は通常50~120℃、反応時間は通常0.5~2時間である。
【0060】
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に加熱減圧下溶剤を留去することにより本実施形態のエポキシ樹脂が得られる。
【0061】
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、本実施形態のエポキシ樹脂を必須成分として使用するが、本実施形態の目的を損なわない範囲で他のエポキシ樹脂を併用することもできる。なお、エポキシ樹脂の性状は液状であっても固形であってもよく、1種類で用いても、複数併用してもよい。
【0062】
液状エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂等を挙げることができる。具体例としては、「RE310S」、「RE410S」(以上、日本化薬社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「RE303S」、「RE304S」、「RE403S」、「RE404S」(以上、日本化薬社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(以上、DIC社製、ナフタレン型エポキシ樹脂)、「828US」、「jER828EL」、「825」、「828EL」(以上、三菱ケミカル社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jE807」、「1750」(以上、三菱ケミカル社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(三菱ケミカル社製、フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、「630」、「630LSD」(以上、三菱ケミカル社製、グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、「ZX1059」(新日鉄住金化学社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)、「EX-721」(ナガセケムテックス社製、グリシジルエステル型エポキシ樹脂)、「セロキサイド2021P」(ダイセル社製、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、「PB-3600」(ダイセル社製、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)、「ZX1658」、「ZX1658GS」(以上、新日鉄住金化学社製、液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
固形エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフトール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂を挙げることができる。具体例としては、「HP4032H」(DIC社製、ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP-4700」、「HP-4710」(以上、DIC社製、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N-690」(DIC社製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N-695」(DIC社製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP-7200」(DIC社製、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(以上、DIC社製、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP-6000」(以上、DIC社製、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、「EPPN-502H」(日本化薬社製、トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC-7000L」、「NC-7300」(以上、日本化薬社製、ナフトール-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC-3000H」、「NC-3000」、「NC-3000L」、「NC-3100」(以上、日本化薬社製、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂)、「XD-1000-2L」、「XD-1000-L」、「XD-1000-H」、「XD-1000-H」(以上、日本化薬社製、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「ESN475V」(新日鉄住金化学社製、ナフトール型エポキシ樹脂)、「ESN485」(新日鉄住金化学社製、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「YX-4000H」、「YX-4000」、「YL6121」(以上、三菱ケミカル社製、ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX-4000HK」(三菱ケミカル社製、ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX-8800」(三菱ケミカル社製、アントラセン型エポキシ樹脂)、「PG-100」、「CG-500」(大阪ガスケミカル社製、フルオレン系エポキシ樹脂)、「YL-7760」(三菱ケミカル社製、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、「YL-7800」(三菱ケミカル社製、フルオレン型エポキシ樹脂)「jER1010」(三菱ケミカル社製、固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(三菱ケミカル社製、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
上記エポキシ樹脂の配合量は、本実施形態の目的を損なわない範囲であればよいが、AMSPNEと上記樹脂の合計に対して50重量%未満である。好ましくは,AMSPNEを全エポキシ樹脂の60重量%以上、より好ましくは75重量%以上使用する。
【0065】
本実施形態のエポキシ樹脂はエポキシ基と反応し得る公知の硬化剤とともに用いることができる。硬化剤としては、フェノール樹脂、アミン樹脂、活性エステルなどが挙げられる。硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.8~1.5当量が好ましい。エポキシ基1当量に対して0.8当量に満たない場合、或いは1.5当量を越える場合、いずれも硬化が不完全になり、良好な硬化物性が得られない恐れがある。
【0066】
[フェノール樹脂]
フェノール樹脂とは、分子内に2つ以上フェノール性水酸基を有する化合物である。フェノール樹脂としては、例えば、フェノール類とアルデヒド類との反応物、フェノール類とジエン化合物との反応物、フェノール類とケトン類との反応物、フェノール類と置換ビフェニル類との反応物、フェノール類と置換フェニル類との反応物、ビスフェノール類とアルデヒド類との反応物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
上記各原料の具体例を以下に例示するが、これらに限定されるものではない。
<フェノール類>
フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等。
<アルデヒド類>
ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド、フルフラール等。
<ジエン化合物>
ジシクロペンタジエン、テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン、イソプレン等。
<ケトン類>
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、フルオレノン等。
<置換ビフェニル類>
4,4’-ビス(クロルメチル)-1,1’-ビフェニル、4,4’-ビス(メトキシメチル)-1,1’-ビフェニル、4,4’-ビス(ヒドロキシメチル)-1,1’-ビフェニル等。
<置換フェニル類>
1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン等。
【0067】
[アミン樹脂]
アミン樹脂とは、分子内に2つ以上アミノ基を有する化合物である。アミン樹脂としては、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ナフタレンジアミン、アニリンノボラック(アニリンとホルマリンの反応物)、N-メチルアニリンノボラック(N-メチルアニリンとホルマリンの反応物)、オルソエチルアニリンノボラック(オルソエチルアニリンとホルマリンの反応物)、2-メチルアニリンとホルマリンの反応物、2,6-ジイソプロピルアニリンとホルマリンの反応物、2,6-ジエチルアニリンとホルマリンの反応物、2-エチル-6-エチルアニリンとホルマリンの反応物、2,6-ジメチルアニリンとホルマリンの反応物、アニリンとキシリレンクロライドとの反応により得られるアニリン樹脂、日本国特許第6429862号公報に記載のアニリンと置換ビフェニル類(4,4’-ビス(クロルメチル)-1,1’-ビフェニル及び4,4’-ビス(メトキシメチル)-1,1’-ビフェニル等)の反応物、アニリンと置換フェニル類(1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン及び1,4-ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン等)の反応物、4,4’-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、アニリンとジイソプロペニルベンゼンの反応物、ダイマージアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
【0068】
[活性エステル化合物]
活性エステル化合物とは、構造体中にエステル結合を少なくとも1つ含み、かつ、エステル結合の両側に脂肪族鎖、脂肪族環又は芳香族環が結合している化合物をいう。活性エステル化合物としては、例えば、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物を挙げることができ、カルボン酸化合物、酸塩化物、またはチオカルボン酸化合物の少なくともいずれかの化合物と、ヒドロキシ化合物またはチオール化合物の少なくともいずれかの化合物との縮合反応によって得られる。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物または酸塩化物とヒドロキシ化合物から得られるときが好ましく、ヒドロキシ化合物としてはフェノール化合物またはナフトール化合物が好ましい。活性エステル化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
上記カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0070】
上記酸塩化物としては、例えば、アセチルクロリド、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、マロニルクロリド、こはく酸ジクロリド、ジグリコリルクロリド、グルタル酸ジクロリド、スベリン酸ジクロリド、セバシン酸ジクロリド、アジピン酸ジクロリド、ドデカンジオイルジクロリド、アゼラオイルクロリド、2,5-フランジカルボニルジクロリド、フタロイルクロリド、イソフタロイルクロリド、テレフタロイルクロリド、トリメシン酸クロリド、ビス(4-クロロカルボニルフェニル)エーテル、4,4’-ジフェニルジカルボニルクロリド、4,4’-アゾジベンゾイルジクロリド等が挙げられる。
【0071】
上記フェノール化合物及び上記ナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック、後述するフェノール樹脂等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0072】
活性エステル化合物の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物、国際公開第2020/095829号実施例2に記載の化合物、国際公開第2020/059625号にて開示されている化合物等が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0073】
活性エステル化合物の市販品としては、例えば、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」、「EXB-8150-65T」(DIC社製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416-70BK」(DIC社製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱化学社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」(三菱化学社製)、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱化学社製)、リン原子含有活性エステル系硬化剤としてDIC社製の「EXB-9050L-62M」等が挙げられる。
【0074】
[硬化促進剤]
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤を添加することにより硬化性を向上させることもできる。硬化促進剤としては、加熱によりアニオンを発生することで硬化反応を促すアニオン系硬化促進剤、もしくは加熱によりカチオンを発生することで硬化反応を促すカチオン系硬化促進剤が好ましい。
【0075】
アニオン系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。その他、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、テトラブチルアンモニウム塩、トリイソプロピルメチルアンモニウム塩、トリメチルデカニルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム塩等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
【0076】
カチオン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルベンジルフォスフォニウム塩、トリフェニルエチルフォスフォニウム塩、テトラブチルフォスフォニウム塩などの4級フォスフォニウム塩(4級塩のカウンターイオンはハロゲン、有機酸イオン、水酸化物イオンなど、特に指定は無いが、特に有機酸イオン、水酸化物イオンが好ましい。)、オクチル酸スズ、カルボン酸亜鉛(2-エチルヘキサン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛)、リン酸エステル亜鉛(オクチルリン酸亜鉛、ステアリルリン酸亜鉛)等の遷移金属化合物(遷移金属塩)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
【0077】
硬化促進剤の配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対して0.01~5.0質量部が必要に応じて用いられる。
【0078】
[無機充填剤]
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、無機充填剤を含有しても良い。無機充填剤としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、多孔質シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、石英粉、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素、ジルコニア、窒化アルミニウム、グラファイト、フォルステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、酸化鉄アスベスト、ガラス粉末等の粉体、またはこれらを球形状あるいは破砕状にした無機充填材等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
【0079】
無機充填材を半導体封止用の硬化性樹脂組成物を得る場合の使用量は硬化性樹脂組成物100質量部中、好ましくは80~92質量部であり、さらに好ましくは83~90質量部である。また、層間絶縁層形成材料、銅張積層板やプリプレグ、RCC等の基板材料用の硬化性樹脂組成物を得る場合、上記の無機充填材の使用量は硬化性樹脂組成物中、好ましくは5~80質量部、さらに好ましくは10~60質量部である。
【0080】
[重合開始剤]
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、重合開始剤を添加することにより硬化性を向上させることもできる。重合開始剤とは、エチレン性不飽和結合等のオレフィン官能基を重合させることが可能な化合物であり、オレフィンメタセシス重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤、ラジカル重合開始剤等が挙げられる。このなかでも硬化性および適度な安定性を有するラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。ラジカル重合開始剤とは加熱によりラジカルを生じ、連鎖重合反応を開始させる化合物をいう。用い得るラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物、アゾ系化合物、ベンゾピナコール類等が挙げられ、硬化温度制御やアウトガス抑制、分解物の電気特性への影響が少ないことから有機過酸化物を使用することが好ましい。
【0081】
上記有機過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、過酸化ベンゾイル等のジアシルパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、1,3-ビス-(t-ブチルパーオキシイソプロピル)-ベンゼン等のジアルキルパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシベンゾエート、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン等のパーオキシケタール類、α-クミルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル類、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン等のパーオキシカーボネート類、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシオクトエート、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。上記有機過酸化物の中でも、ケトンパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類、パーオキシカーボネート類等が好ましく、ジアルキルパーオキサイド類がより好ましい。
【0082】
上記アゾ系化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
【0083】
重合開始剤の添加量としては、硬化性樹脂組成物100質量部に対して0.01~5質量部が好ましく、0.01~3質量部が特に好ましい。用いる重合開始剤の量が0.01質量部未満であると重合反応時に分子量が十分に伸長しない恐れがあり、5質量部より多いと誘電率、誘電正接等の誘電特性を損なう恐れがある。
【0084】
[重合禁止剤]
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、重合禁止剤を含有しても良い。重合禁止剤を含有することで保管安定性が向上するとともに、反応開始温度を制御することができる。反応開始温度を制御することで、流動性の確保が容易となり、ガラスクロスなどへの含侵性が損なわれない上に、プリプレグ化などBステージ化が容易となる。プリプレグ化時に重合反応が進行しすぎると積層工程で積層が困難となるなどの不具合が発生しやすい。
【0085】
重合禁止剤は、本実施形態のエポキシ樹脂を合成するときに添加しても、合成後に添加してもよい。重合禁止剤の使用量は、本実施形態のエポキシ樹脂100重量部に対して、0.008~1重量部、好ましくは0.01~0.5重量部である。
【0086】
重合禁止剤としては、例えば、フェノール系、イオウ系、リン系、ヒンダートアミン系、ニトロソ系、ニトロキシルラジカル系等が挙げられる。また、重合禁止剤は1種類で用いても、複数併用してもよい。これらのうち本発明では、フェノール系、ヒンダートアミン系、ニトロソ系、ニトロキシルラジカル系が好ましい。
【0087】
上記フェノール系重合禁止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-p-エチルフェノール、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、等のモノフェノール類、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-{β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルスルホン酸エチル)カルシウム等のビスフェノール類、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレイト、1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-S-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール類等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
上記イオウ系重合禁止剤としては、例えば、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリルル-3,3’-チオジプロピオネート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0089】
上記リン系重合禁止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2-t-ブチル-6-メチル-4-{2-(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等のホスファイト類、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-デシロキシ-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド等のオキサホスファフェナントレンオキサイド類等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0090】
上記ヒンダートアミン系重合禁止剤としては、例えば、アデカスタブLA-40MP、アデカスタブLA-40Si、アデカスタブLA-402AF、アデカスタブLA-87、デカスタブLA-82、デカスタブLA-81、アデカスタブLA-77Y、アデカスタブLA-77G、アデカスタブLA-72、アデカスタブLA-68、アデカスタブLA-63P、アデカスタブLA-57、アデカスタブLA-52、Chimassorb2020FDL、Chimassorb944FDL、Chimassorb944LD、Tinuvin622SF、TinuvinPA144、Tinuvin765、Tinuvin770DF、TinuvinXT55FB、Tinuvin111FDL、Tinuvin783FDL、Tinuvin791FB等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
上記ニトロソ系重合禁止剤としては、例えば、p-ニトロソフェノール、N-ニトロソジフェニルアミン、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミンのアンモニウム塩、(クペロン)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、好ましくは、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミンのアンモニウム塩(クペロン)である。
【0092】
上記ニトロキシルラジカル系重合禁止剤としては、例えば、ジ-tert-ブチルニトロキサイド、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-アセトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
[難燃剤]
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、難燃剤を用いてもよい。難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(アンチモン化合物、金属水酸化物、窒素化合物、ホウ素化合物等)、リン系難燃剤等が挙げられるが、ハロゲンフリー難燃性を達成する観点からリン系難燃剤が好ましい。
上記リン系難燃剤としては反応型のものでも添加型のものでもよい。具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル-2,6-ジキシレニルホスフェート、1,3-フェニレンビス(ジキシレニルホスフェート)、1,4-フェニレンビス(ジキシレニルホスフェート)、4,4’-ビフェニル(ジキシレニルホスフェート)等のリン酸エステル類、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド等のホスファン類のほか、エポキシ樹脂と前記ホスファン類の活性水素とを反応させて得られるリン含有エポキシ化合物、赤リン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。上記例示物質のうち、リン酸エステル類、ホスファン類またはリン含有エポキシ化合物が好ましく、1,3-フェニレンビス(ジキシレニルホスフェート)、1,4-フェニレンビス(ジキシレニルホスフェート)、4,4’-ビフェニル(ジキシレニルホスフェート)またはリン含有エポキシ化合物が特に好ましい。
【0094】
難燃剤の含有量は硬化性樹脂組成物中の無機充填剤(フィラー)を除く不揮発分の合計を100質量部とした場合、0.1~0.6質量部の範囲であることが好ましい。0.1質量部未満では難燃性が不十分となる恐れがあり、0.6質量部より多いと硬化物の吸湿性、誘電特性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0095】
[光安定剤]
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、光安定剤を用いてもよい。光安定剤としては、ヒンダートアミン系の光安定剤、特にHALS等が好適である。HALSとしては、例えば、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンの反応物、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン反応物、ポリ〔{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}〕、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)〔〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドリキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクチロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
【0096】
光安定剤の含有量は、硬化性樹脂組成物中の無機充填剤(フィラー)を除く不揮発分の合計を100質量部とした場合、0.001~10質量部の範囲であることが好ましい。0.001質量部未満では光安定効果を発現するのに不十分となる恐れがあり、10質量部より多いと硬化物の吸湿性、誘電特性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0097】
[バインダー樹脂]
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、バインダー樹脂を用いてもよい。バインダー樹脂としては、例えば、ブチラール系樹脂、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ-ナイロン系樹脂、NBR-フェノール系樹脂、エポキシ-NBR系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
【0098】
バインダー樹脂の配合量は、硬化物の難燃性、耐熱性を損なわない範囲であることが好ましく、硬化性樹脂組成物中の無機充填剤(フィラー)を除く不揮発分の合計を100質量部とした場合、0.05~50質量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.05~20質量部である。
【0099】
[添加剤]
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、添加剤を用いてもよい。添加剤としては、例えば、アクリロニトリル共重合体の変性物、ポリエチレン、フッ素樹脂、シリコーンゲル、シリコーンオイル、シランカップリング剤のような充填材の表面処理剤、離型剤、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の着色剤が挙げられる。
【0100】
添加剤の配合量は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して好ましくは1,000質量部以下、より好ましくは700質量部以下の範囲である。
【0101】
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、さらに、ポリフェニレンエーテル化合物、エチレン性不飽和結合を有する化合物、イソシアネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリブタジエンおよびこの変性物、ポリスチレンおよびこの変性物等を用いてもよく、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。これらの化合物のうち、耐熱性、密着性、誘電特性のバランスから、ポリフェニレンエーテル化合物、エチレン性不飽和結合を有する化合物、シアネートエステル樹脂、ポリブタジエンおよびこの変性物、ポリスチレンおよびこの変性物を含有することが好ましい。これらの化合物を含有することによって、硬化物の脆さの改善および金属への密着性を向上でき、はんだリフロー時や冷熱サイクルなどの信頼性試験におけるパッケージのクラックを抑制できる。
【0102】
上記化合物の使用量は、特に断りがない場合、本実施形態のエポキシ樹脂に対して、好ましくは10質量倍以下、さらに好ましくは5質量倍以下、特に好ましくは3質量倍以下の質量範囲である。また、好ましい下限値は0.1質量倍以上、より好ましくは0.25質量倍以上、更に好ましくは0.5質量倍以上である。上記範囲内であることにより、本実施形態のエポキシ樹脂の効果を活かしつつ、添加する各化合物の効果を付加することができる。これらの成分については、以下に例示するものを使用することができる。
【0103】
[ポリフェニレンエーテル化合物]
ポリフェニレンエーテル化合物としては、耐熱性と電気特性の観点から、エチレン性不飽和結合を有するポリフェニレンエーテル化合物であることが好ましく、アクリル基、メタクリル基、又はスチレン構造を有するポリフェニレンエーテル化合物であることがさらに好ましい。市販品としては、SA-9000(SABIC社製、メタクリル基を有するポリフェニレンエーテル化合物)やOPE-2St 1200(三菱瓦斯化学社製、スチレン構造を有するポリフェニレンエーテル化合物)などが挙げられる。
ポリフェニレンエーテル化合物の数平均分子量(Mn)は、500~5000であることが好ましく、2000~5000であることがより好ましく、2000~4000であることがより好ましい。分子量が500未満であると、硬化物の耐熱性としては充分なものが得られない傾向がある。また、分子量が5000より大きいと、溶融粘度が高くなり、充分な流動性が得られないため、成形不良となりやすくなる傾向がある。また、反応性も低下して、硬化反応に長い時間を要し、硬化系に取り込まれずに未反応のものが増加して、硬化物のガラス転移温度が低下し、硬化物の耐熱性が低下する傾向がある。
ポリフェニレンエーテル化合物の数平均分子量が500~5000であれば、優れた誘電特性を維持したまま、優れた耐熱性及び成形性等を発現させることができる。なお、ここでの数平均分子量は、具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー等を用いて測定することができる。
【0104】
ポリフェニレンエーテル化合物は、重合反応により得られたものであっても、数平均分子量10000~30000程度の高分子量のポリフェニレンエーテル化合物を再分配反応させて得られたものであってもよい。また、これらを原料として、メタクリルクロリド、アクリルクロリド、クロロメチルスチレン等、エチレン性不飽和結合を有する化合物と反応させることでラジカル重合性を付与してもよい。再分配反応によって得られたポリフェニレンエーテル化合物は、例えば、高分子量のポリフェニレンエーテル化合部をトルエン等の溶媒中で、フェノール化合物とラジカル開始剤との存在下で加熱し再分配反応させて得られる。このように再分配反応により得られるポリフェニレンエーテル化合物は、分子鎖の両末端に硬化に寄与するフェノール系化合物に由来する水酸基を有するために、さらに高い耐熱性を維持することができることに加え、エチレン性不飽和結合を有する化合物で変性した後も分子鎖の両末端に官能基を導入できる点から好ましい。また、重合反応により得られたポリフェニレンエーテル化合物は、優れた流動性を示す点から好ましい。
【0105】
ポリフェニレンエーテル化合物の分子量の調整は、重合反応により得られたポリフェニレンエーテル化合物の場合、重合条件等を調整することにより行うことができる。また、再分配反応によって得られたポリフェニレンエーテル化合物の場合は、再分配反応の条件等を調整することにより、得られるポリフェニレンエーテル化合物の分子量を調整することができる。より具体的には、再分配反応において用いるフェノール系化合物の配合量を調整すること等が考えられる。すなわち、フェノール系化合物の配合量が多いほど、得られるポリフェニレンエーテル化合物の分子量が低くなる。この際、再分配反応を受ける高分子量のポリフェニレンエーテル化合物としては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)等を用いることができる。また、前記再分配反応に用いられるフェノール系化合物としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のように、フェノール性水酸基を分子中に2個以上有する多官能のフェノール系化合物が好ましく用いられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0106】
ポリフェニレンエーテル化合物の含有量は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物中の無機充填剤(フィラー)を除く不揮発分の合計質量を100質量部とした場合、5~1000質量部であることが好ましく、10~750質量部であることがより好ましい。ポリフェニレンエーテル化合物の含有量が上記範囲であると、耐熱性等に優れるだけではなく、ポリフェニレンエーテル化合物の有する優れた誘電特性を充分に発揮された硬化物が得られる点で好ましい。
【0107】
[エチレン性不飽和結合を含有する化合物]
エチレン性不飽和結合を含有する化合物とは、重合開始剤の使用・不使用を問わず、熱もしくは光により重合可能なエチレン性不飽和結合を分子内に1つ以上有する化合物である。
エチレン性不飽和結合を含有する化合物としては、例えば、前記のフェノール樹脂とエチレン性不飽和結合含有のハロゲン系化合物(クロロメチルスチレン、アリルクロライド、メタリルクロライド、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド等)の反応物、エチレン性不飽和結合含有フェノール類(2-アリルフェノール、2-プロペニルフェノール、4-アリルフェノール、4-プロペニルフェノール、オイゲノール、イソオイゲノール等)とハロゲン系化合物(1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン、4,4’-ビス(クロロメチル)ビフェニル、4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ジブロモベンゾフェノン、塩化シアヌル等)の反応物、エポキシ樹脂若しくはアルコール類と(メタ)アクリル酸類(アクリル酸、メタクリル酸等)の反応物及びこれらの酸変性化物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
【0108】
[イソシアネート樹脂]
イソシアネート樹脂とは、分子内に2つ以上イソシアネート基を有する化合物である。イソシアネート樹脂としては、例えば、p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-キシレンジイソシアネート、m-キシレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環構造のジイソシアネート類、イソシアネートモノマーの一種類以上のビュレット体、又は上記ジイソシアネート化合物を3量化したイソシアネート体等のポリイソシアネート、上記イソシアネート化合物とポリオール化合物とのウレタン化反応によって得られるポリイソシアネート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
【0109】
[ポリアミド樹脂]
ポリアミド樹脂としては、例えば、ジアミン、ジイソシアネート、オキサゾリンのいずれか1種以上とジカルボン酸の反応物、ジアミンと酸塩化物の反応物、ラクタム化合物の開環重合物が挙げられる。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
上記各原料の具体例を以下に例示するが、これらに限定されるものではない。
<ジアミン>
エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカンジアミン、ウンデカンジアミン、ドデカンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、ダイマージアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、キシリレンジアミン、ノルボルナンジアミン、イソホロンジアミン、ビスアミノメチルトリシクロデカン、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ナフタレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)メタンビス(4-アミノ-3,5-ジエチルフェニル)メタン、4,4’-メチレンビス-о-トルイジン、4,4’-メチレンビス-о-エチルアニリン、4,4’-メチレンビス-2-エチル-6-メチルアニリン、4,4’-メチレンビス-2,6-ジイソプロピルアニリン、4,4-エチレンジアニリン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、2,7-ジアミノフルオレン、アミノベンジルアミン、ジアミノベンゾフェノン等。
<ジイソシアネート>
ベンゼンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(4-イソシアナトフェニル)メタン、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(2-イソシアナト-2-プロピル)ベンゼン、2,2-ビス(4-イソシアナトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアナート等。
<ジカルボン酸>
シュウ酸、マロン酸、スクシン酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、フランジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’-ジカルボキシジフェニルスルフィド等。
<酸塩化物>
アセチルクロリド、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、マロニルクロリド、こはく酸ジクロリド、ジグリコリルクロリド、グルタル酸ジクロリド、スベリン酸ジクロリド、セバシン酸ジクロリド、アジピン酸ジクロリド、ドデカンジオイルジクロリド、アゼラオイルクロリド、2,5-フランジカルボニルジクロリド、フタロイルクロリド、イソフタロイルクロリド、テレフタロイルクロリド、トリメシン酸クロリド、ビス(4-クロロカルボニルフェニル)エーテル、4,4’-ジフェニルジカルボニルクロリド、4,4’-アゾジベンゾイルジクロリド等。
<ラクタム>
ε-カプロラクタム、ω-ウンデカンラクタム、ω-ラウロラクタム等。
【0110】
[ポリイミド樹脂]
ポリイミド樹脂としては、例えば、前記ジアミンと以下に例示するテトラカルボン酸二無水物の反応物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
<テトラカルボン酸二無水物>
4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-シクロヘキセン-1,2ジカルボン酸無水物、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、メチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1-エチリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2’-プロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、チオ-4,4’-ジフタル酸二無水物、スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、1,4-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、2,2-ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物)、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、カルボニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、メチレン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,1-エチリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、オキシ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、チオ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、スルホニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、rel-[1S,5R,6R]-3-オキサビシクロ[3,2,1]オクタン-2,4-ジオン-6-スピロ-3’-(テトラヒドロフラン-2’,5’-ジオン)、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、エチレングリコール-ビス-(3,4-ジカルボン酸無水物フェニル)エーテル、4,4’-ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物等。
【0111】
[シアネートエステル樹脂]
シアネートエステル樹脂は、フェノール樹脂をハロゲン化シアンと反応させることにより得られる化合物であり、具体例としては、ジシアナートベンゼン、トリシアナートベンゼン、ジシアナートナフタレン、ジシアンートビフェニル、2、2’-ビス(4-シアナートフェニル)プロパン、ビス(4-シアナートフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-シアナートフェニル)メタン、2,2’-ビス(3,5-ジメチル-4-シアナートフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-シアナートフェニル)エタン、2,2’-ビス(4-シアナートフェニル)ヘキサフロロプロパン、ビス(4-シアナートフェニル)スルホン、ビス(4-シアナートフェニル)チオエーテル、フェノールノボラックシアナート、フェノール・ジシクロペンタジエン共縮合物の水酸基をシアネート基に変換したもの等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
また、特開2005-264154号公報に合成方法が記載されているシアネートエステル化合物は、低吸湿性、難燃性、誘電特性に優れているためシアネートエステル化合物として特に好ましい。
シアネートエステル樹脂は、必要に応じてシアネート基を三量化させてsym-トリアジン環を形成するために、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸鉛、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、鉛アセチルアセトナート、ジブチル錫マレエート等の触媒を含有させることもできる。
【0112】
触媒は、シアネートエステル樹脂および硬化性樹脂組成物中の無機充填剤(フィラー)を除く不揮発成分の合計質量100質量部に対して0.0001~0.10質量部、好ましくは0.00015~0.0015質量部使用する。
【0113】
[ポリブタジエンおよびこの変性物]
ポリブタジエンおよびこの変性物とは、ポリブタジエン、もしくはポリブタジエンに由来する構造を分子内に有する化合物である。ポリブタジエンに由来する構造は水素添加により、不飽和結合を一部、もしくは全て単結合に変換されていても良い。
ポリブタジエンおよびこの変性物としては、例えば、ポリブタジエン、水酸基末端ポリブタジエン、末端(メタ)アクリレート化ポリブタジエン、カルボン酸末端ポリブタジエン、アミン末端ポリブタジエン、スチレンブタジエンゴム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。これらのうち、誘電特性の観点からポリブタジエンもしくはスチレンブタジエンゴムが好ましい。スチレンブタジエンゴム(SBR)としては例えば、RICON-100、RICON-181、RICON-184(いずれもクレイバレー社製)、1,2-SBS(日本曹達社製)などが挙げられ、ポリブタジエンとしては、B-1000、B-2000、B-3000(いずれも日本曹達社製)等が挙げられる。ポリブタジエンおよびスチレンブタジエンゴムの分子量としては重量平均分子量500~10000が好ましく、より好ましくは750~7500、さらに好ましくは1000~5000である。上記範囲の下限以下では揮発量が多く、プリプレグ作成時の固形分調整が困難となり、上記範囲の上限以上では、他の硬化性樹脂との相溶性が悪化する。一般に、ビスマレイミドやポリマレイミドのような酸素や窒素などのヘテロ原子を含む化合物の場合、その極性に起因し、主に炭化水素から構成される化合物もしくは炭化水素のみからなる化合物のような低極性化合物との相溶性の担保が困難である。一方、本実施形態のエポキシ樹脂は、それ自体が酸素や窒素などのヘテロ原子を積極的に導入した骨格設計ではないことに起因し、低極性かつ低誘電特性を有する材料や、炭化水素のみで構成される化合物との相溶性にも優れる。
【0114】
[ポリスチレンおよびこの変性物]
ポリスチレンおよびこの変性物とは、ポリスチレン、もしくはポリスチレンに由来する構造を分子内に有する化合物である。
ポリスチレンおよびこの変性物としては、例えば、ポリスチレン、スチレン・2-イソプロペニル-2-オキサゾリン共重合体(エポクロス RPS-1005、RP-61 いずれも日本触媒社製)、SEP(スチレン-エチレン・プロピレン共重合体:セプトン1020 クラレ社製)、SEPS(スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体:セプトン2002、セプトン2004F、セプトン2005、セプトン2006、セプトン2063、セプトン2104 いずれもクラレ社製)、SEEPS(スチレン-エチレン/エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体:セプトン4003、セプトン4044、セプトン4055、セプトン4077、セプトン4099 いずれもクラレ社製)、SEBS(スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン ブロック共重合体:セプトン8004、セプトン8006、セプトン8007L いずれもクラレ社製)、SEEPS-ОH(スチレン-エチレン/エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体の末端に水酸基を有する化合物:セプトンHG252 クラレ社製)、SIS(スチレン-イソプレン-スチレン ブロック共重合体:セプトン5125、セプトン5127 いずれもクラレ社製)、水添SIS(水添スチレン-イソプレン-スチレン ブロック共重合体:ハイブラー7125F、ハイブラー7311F いずれもクラレ社製)、SIBS(スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体:SIBSTAR073T、SIBSTAR102T、SIBSTAR103T(いずれもカネカ社製)、セプトンV9827(クラレ社製))等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。ポリスチレンおよびこの変性物は、より高い耐熱性を有し、かつ酸化劣化しにくいため、不飽和結合を有さないものが好ましい。また、ポリスチレンおよびこの変性物の重量平均分子量は10000以上であれば特に制限はないが、大きすぎるとポリフェニレンエーテル化合物のほか、重量平均分子量50~1000程度の低分子量成分および、重量平均分子量1000~5000程度のオリゴマー成分との相溶性が悪化し、混合および溶剤安定性の担保が困難になることから、10000~300000程度であることが好ましい。
【0115】
本実施形態の硬化性樹脂組成物の調製方法は特に限定されないが、各成分を均一に混合するだけでも、あるいはプレポリマー化してもよい。例えば、本実施形態のエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、重合開始剤の存在下または非存在下、溶剤の存在下または非存在下において加熱することによりプレポリマー化する。同様に、アミン化合物、エチレン性不飽和結合を有する化合物、マレイミド化合物、シアネートエステル化合物、ポリブタジエンおよびこの変性物、ポリスチレンおよびこの変性物などの化合物、無機充填剤、及びその他添加剤を追加してプレポリマー化してもよい。各成分の混合またはプレポリマー化は溶剤の非存在下では例えば押出機、ニーダ、ロールなどを用い、溶剤の存在下では攪拌装置つきの反応釜などを使用する。
【0116】
均一に混合する手法としては50~100℃の範囲内の温度でニーダ、ロール、プラネタリーミキサー等の装置を用いて練りこむように混合し、均一な樹脂組成物とする。得られた樹脂組成物は粉砕後、タブレットマシーン等の成型機で円柱のタブレット状に成型、もしくは顆粒状の粉体、もしくは粉状の成型体とする、もしくはこれら組成物を表面支持体の上で溶融し0.05mm~10mmの厚みのシート状に成型し、硬化性樹脂組成物成型体とすることもできる。得られた成型体は0~20℃でべたつきのない成型体となり、-25~0℃で1週間以上保管しても流動性、硬化性をほとんど低下させない。
得られた成型体についてトランスファー成型機、コンプレッション成型機にて硬化物に成型することができる。
【0117】
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、有機溶剤を添加してワニス状の組成物(以下、単にワニスという。)とすることもできる。本実施形態の硬化性樹脂組成物を必要に応じてトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の溶剤に溶解させてワニスとし、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させて加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形することにより、本実施形態の硬化性樹脂組成物の硬化物とすることができる。この際の溶剤は、本実施形態の硬化性樹脂組成物と該溶剤の混合物中で10~70重量%、好ましくは15~70重量%を占める量を用いる。また液状組成物であれば、そのまま例えば、RTM方式でカーボン繊維を含有する硬化性樹脂硬化物を得ることもできる。
【0118】
本実施形態の硬化性樹脂組成物を用いて半導体装置は製造することができる。半導体装置としては、例えばDIP(デュアルインラインパッケージ)、QFP(クワッドフラットパッケージ)、BGA(ボールグリッドアレイ)、CSP(チップサイズパッケージ)、SOP(スモールアウトラインパッケージ)、TSOP(シンスモールアウトラインパッケージ)、TQFP(シンクワッドフラットパッケージ)等が挙げられる。
【0119】
本実施形態の硬化性樹脂組成物およびその硬化物は、広範な分野で用いることができる。具体的には、成型材料、接着剤、複合材料、塗料など各種用途に使用できる。本発明記載の硬化性樹脂組成物の硬化物は優れた耐熱性と誘電特性を示すため、半導体素子用封止材、液晶表示素子用封止材、有機EL素子用封止材、積層板(プリント配線板、BGA用基板、ビルドアップ基板など)等の電気・電子部品や炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック等の軽量高強度構造材用複合材料、3Dプリンティング等に好適に使用される。
【実施例0120】
以下に合成例および実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0121】
各種分析方法について以下の条件で行った。
・エポキシ当量
JIS K-7236に記載された方法で測定し、単位はg/eq.である。
・軟化点
JIS K-7234に準拠した方法で測定し、単位は℃である。
・溶融粘度
ICI溶融粘度(150℃)コーンプレート法で測定し、単位はPa・sである。
【0122】
・水酸基当量
以下の方法で測定し、単位はg/eq.である。
フェノール樹脂を過剰の無水酢酸と反応させ、電位差測定装置を用いて、0.5N KOHエタノール溶液で滴定し、遊離の酢酸量を測定する。
試薬:無水酢酸、トリフェニルフォスフィン、ピリジン
溶剤:テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル
自動滴定装置:株式会社HIRANUMA社製 COM-1600
ビュレット:株式会社HIRANUMA社製 B-2000
【0123】
・GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析
メーカー:島津製作所
カラム:ガードカラム KF-G4A GPC KF-601(1本)、KF-602 KF-602.5、KF-603
流速:1.5ml/min.
カラム温度:40℃
使用溶剤:THF(テトラヒドロフラン)
検出器:RID-20A(示差屈折検出器)
【0124】
・LC-MS分析
装置:Q-Exactive(Thermo Fisher Scientific)
カラム:CORTECS C18 2.1×150mm(2.7μm)
オーブン:40℃
MobilPhaseA:5mM 酢酸アンモニウム水溶液
MobilPhaseB:アセトニトリル
TimeProgram:
50%-20min-99%-10min‐99%
FlowRate:0.3mL/min.
Detection:PDA(190-800nm),FT-MS(m/z=50-750,100-1500)
【0125】
H-NMR分析
装置:JNM-ECS400 日本電子株式会社製
【0126】
[実施例1]
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、フェノールノボラック(水酸基当量103.5)310g、トルエン15.9g、酸触媒としてp-トルエンスルホン酸1.65gを仕込み、撹拌、溶解後、100℃へ加熱したところへ、α-メチルスチレン(東京化成工業社製)118gを3時間かけて滴下した。その後100℃で9時間反応させた。ついで室温まで冷却し、トルエン800gに溶解させ、炭酸ナトリウム0.15g、水190gを加えて中和した。水洗を繰り返した後、加熱減圧下において、トルエン及び未反応フェノールを留去せしめて、下記式(2A)で表されるヒドロキシ樹脂(Rは下記式(2A-a)で表される置換基、paveは0.57、naveは7.7、qaveは0.02)を484g得た。その水酸基当量は168.9g/eq.、軟化点は84℃、150℃での溶融粘度は1.10Pa・sであった。GPCチャートは図1、LC-MSチャートは図2H-NMRチャート(400MHz,DMSO-d)は図3に記す。数平均分子量(Mn)は1301であった。
【0127】
【化11】
【0128】
【化12】
【0129】
(式(2A-a)中、波線は、結合部位を示す。)
【0130】
図2のLC-MSチャートにおいて、例えば、11.85分のピークはn=1、α-メチルスチレンが2個付加した分子量の化合物であり、下記式(5)、式(6)、式(7)で表される3通りの構造が考えられる。
【0131】
【化13】
【0132】
[実施例2]
実施例1で得られたフェノール樹脂478gに対してエピクロルヒドリン(ECH、以下同様)1252g、ジメチルスルホキシド(DMSO、以下同様)228g、水46gを反応容器に仕込み、加熱、撹拌、溶解後、フレーク状の水酸化ナトリウム5.0gを一括で仕込み、55℃で1.5時間反応を行った。その後、温度を55℃に保持しながら、フレーク状の水酸化ナトリウム101.9gを90分かけて分割で仕込んだ。その後55℃で90分、70℃で60分反応を行った。ついで油層から加熱減圧下において過剰のエピクロルヒドリンを留去し、残留物に1232gのメチルイソブチルケトンを添加し溶解したのち水洗を行い副成塩とジメチルスルホキシドを除去した。このメチルイソブチルケトン溶液を75℃に加熱し30%水酸化ナトリウム水溶液32.8gを添加し、1時間反応させた後、反応液の水洗を洗浄液が中性となるまで繰り返した。ついで油層から加熱減圧下においてメチルイソブチルケトンを留去することにより下記式(1A)で表されるエポキシ樹脂(Rは下記式(1A-a)で表される置換基、pave、nave、qaveは実施例1と同じ。)を520g得た。GPCチャートは図4、LC-MSチャートは図5に記す。数平均分子量(Mn)は1402であった。
【0133】
【化14】
【0134】
(式(1A)中、Gはグリシジル基を示す。)
【0135】
【化15】
【0136】
(式(1A-a)中、波線は、結合部位を示す。)
【0137】
[実施例3]
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、フェノールノボラック(水酸基当量103.5)103.5g、トルエン5.30g、酸触媒としてp-トルエンスルホン酸0.55gを仕込み、撹拌、溶解後、100℃へ加熱したところへ、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン(東京化成工業社製)118.50gを3時間かけて滴下した。その後100℃で14時間反応させた。ついで室温まで冷却し、トルエン330gに溶解させ、炭酸ナトリウム0.05g、温水100gを加えて中和した。水洗を繰り返した後、加熱減圧下において、トルエン及び未反応フェノールを留去せしめて、下記式(2B)で表される化合物(Rは下記式(2B-a)で表される置換基、paveは0.48、naveは7.7、qaveは1.39)を187g得た。その水酸基当量は257.7g/eq.であった。GPCチャートは図6H-NMRチャート(400MHz,DMSO-d)は図7に記す。数平均分子量(Mn)は675であった。
【0138】
【化16】
【0139】
【化17】
【0140】
(式(2B-a)中、波線は、結合部位を示す。)
【0141】
[実施例4]
実施例3で得られたフェノール樹脂185gに対してエピクロルヒドリン(ECH、以下同様)366.3g、ジメチルスルホキシド(DMSO、以下同様)66.6g、水13.32gを反応容器に仕込み、加熱、撹拌、溶解後、フレーク状の水酸化ナトリウム1.5gを一括で仕込み、55℃で1.5時間反応を行った。その後、温度を55℃に保持しながら、フレーク状の水酸化ナトリウム29.8gを90分かけて分割で仕込んだ。その後55℃で90分、70℃で60分反応を行った。ついで油層から加熱減圧下において過剰のエピクロルヒドリンを留去し、残留物に452gのメチルイソブチルケトンを添加し溶解したのち水洗を行い副成塩とジメチルスルホキシドを除去した。このメチルイソブチルケトン溶液を75℃に加熱し30%水酸化ナトリウム水溶液9.6gを添加し、1時間反応させた後、反応液の水洗を洗浄液が中性となるまで繰り返した。ついで油層から加熱減圧下においてメチルイソブチルケトンを留去した。得られた固形樹脂をトルエン80gで溶解し、MeOHで2回再沈殿することで精製して、下記式(1B)で表されるエポキシ樹脂(Rは下記式(1B-a)で表される置換基、pave、nave、qaveは実施例3と同じ。)を106.4g得た。GPCチャートは図8に記す。数平均分子量(Mn)は1133であった。
【0142】
【化18】
【0143】
(式(1B)中、Gはグリシジル基を示す。)
【0144】
【化19】
【0145】
(式(1B-a)中、波線は、結合部位を示す。)
【0146】
実施例2、4で得られたエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(EPPN-201、日本化薬社製)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(EOCN-1020-55、日本化薬社製)、スチレン変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂(特許第6406847号公報、比較例2を参考に合成)の特性を表1に記す。
【0147】
【表1】
【0148】
[実施例5、6、比較例1~3]
各種エポキシ樹脂、硬化剤としてフェノールノボラック(日本化薬社製 H-1)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(TPP 北興化学社製)を表2の配合組成に示す重量比で混合した。
【0149】
【表2】
【0150】
<吸水率試験>
実施例5、6、比較例1~3の硬化性樹脂組成物を160℃2時間、180℃6時間の硬化条件で硬化物を作製した。直径5cm×厚み4mmの円盤状の試験片を100℃の水中で24時間煮沸し、初期値からの重量増加率(%)を測定した。結果を表3に記載する。
【0151】
【表3】
【0152】
<DMA測定>
実施例5、比較例1~3の硬化性樹脂組成物を160℃2時間、180℃6時間の硬化条件で硬化物を作製した。以下の条件でDMA測定を行い、その結果を表4および図9に記載する。
動的粘弾性測定器:TA-instruments、DMA-2980
測定温度範囲:25~280℃
昇温速度:2℃/分
測定モード:引張
昇温速度:2℃/min.
測定周波数:10Hz
【0153】
【表4】
【0154】
表3の結果より、実施例5、6は低吸水性に優れることが確認された。また、表4および図9の結果より、実施例5は実質使用温度領域(30℃、100℃)において高弾性であり、高温時(260℃)においては低弾性であることが確認された。
【0155】
[実施例7、8、比較例4]
各種エポキシ樹脂と硬化剤(ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、明和化成社製 MEHC-7800SS)を等当量で配合し、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(北興化学社製 TPP)をエポキシ樹脂に対し2重量%、フィラー(溶融シリカ 瀧森社製MSR-2122)を硬化性樹脂組成物全体に対して83重量%になる量を入れ、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、硬化性樹脂組成物を得た。この硬化性樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化された硬化性樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化評価用試験片を得た。以下の条件で難燃性試験を行い、その結果を表5に記載する。
【0156】
<難燃性試験>
・難燃性の判定:UL94に準拠して行った。ただし、サンプルサイズは幅12.5mm×長さ150mmとし、厚さは0.8mmで試験を行った。
・残炎時間:5個1組のサンプルに10回接炎したあとの残炎時間の合計
【0157】
【表5】
【0158】
表5の結果より、実施例7、8は難燃性に優れることが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9