IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日油株式会社の特許一覧

特開2023-138437ポリエチレングリコール誘導体の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138437
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】ポリエチレングリコール誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/30 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
C08G65/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039239
(22)【出願日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2022042041
(32)【優先日】2022-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 侑一
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敦
(72)【発明者】
【氏名】平居 翠
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AA04
4J005BC00
4J005BD00
4J005BD05
(57)【要約】
【課題】ポリエチレングリコール誘導体を、高効率および高純度、そして均一な品質で得ることができ、かつ熱履歴の増加による多分散度の増大を抑制できる工業的に実施可能な精製方法を提供する。
【解決手段】生体関連物質と反応可能な官能基、前記官能基の前駆体となる官能基および前記官能基の保護基からなる群より選ばれた一種以上を末端に有するポリエチレングリコール誘導体と、不純物とを含む粗ポリエチレングリコール誘導体を、有機溶剤Aと有機溶剤Bとからなる混合有機溶剤と混合してスラリーとし、スラリーをリパルプ洗浄し、次いで混合有機溶剤からポリエチレングリコール誘導体を回収し、ポリエチレングリコール誘導体を良溶媒に溶解した後に、ポリエチレングリコール誘導体を回収する。(有機溶剤Aの質量/(有機溶剤Aの質量+有機溶剤Bの質量))をYとし、リパルプ洗浄時の温度をT(℃)としたとき、YとTとが以下の関係を満たす: 0.5 ≦ Y×T ≦ 30
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) 生体関連物質と反応可能な官能基、前記官能基の前駆体となる官能基および前記官能基の保護基からなる群より選ばれた一種以上を末端に有するポリエチレングリコール誘導体と、不純物とを含む粗ポリエチレングリコール誘導体を用意する工程;
(B) 前記粗ポリエチレングリコール誘導体を、有機溶剤Aと有機溶剤Bとからなる混合有機溶剤と混合してスラリーとし、このスラリーをリパルプ洗浄し、次いで前記混合有機溶剤から前記ポリエチレングリコール誘導体を回収する工程;および
(C) 前記工程(B)で得られた前記ポリエチレングリコール誘導体を良溶媒に溶解した後に、前記良溶媒から前記ポリエチレングリコール誘導体を回収する工程
を有しており、
前記有機溶剤Aは、キシレン、トルエン、ベンゼン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトニトリル、アセトン、N, N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、クロロホルム、ジクロロメタン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、
前記有機溶剤Bは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、
前記有機溶剤Aの質量と前記有機溶剤Bの質量との合計値に対する前記有機溶剤Aの質量比(有機溶剤Aの質量/(有機溶剤Aの質量+有機溶剤Bの質量))をYとし、前記リパルプ洗浄時の温度をT(℃)としたとき、YとTとが以下の関係を満たすことを特徴とする、ポリエチレングリコール誘導体の製造方法。

0.5 ≦ Y×T ≦ 30
【請求項2】
前記工程(B)を複数回繰り返すことを特徴とする、請求項1記載のポリエチレングリコール誘導体の製造方法。
【請求項3】
前記有機溶剤Aが、酢酸エチル、または酢酸エチルとアセトニトリルの混合溶剤であり、前記有機溶剤Bがヘキサンであることを特徴とする、請求項1または2記載のポリエチレングリコール誘導体の製造方法。
【請求項4】
前記有機溶剤Aの質量および前記有機溶剤Bの質量が、それぞれ前記ポリエチレングリコール誘導体の質量の1~50質量倍であり、前記リパルプ洗浄の温度が1~33℃であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のポリエチレングリコール誘導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精製されたポリエチレングリコール誘導体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホルモンやサイトカイン、酵素などの生体関連物質を用いた医薬品は、通常生体内へ投与されると腎臓における糸球体濾過や肝臓や脾臓などにおけるマクロファージによる取り込みによって、生体内から速やかに排出されてしまう。そのため血中半減期が短く、十分な薬理効果を得ることができないケースがある。この問題を解決するため、生体関連物質をポリエチレングリコールなどの水溶性ポリマーやアルブミンなどによって化学修飾した医薬品が開発されている。化学修飾された生体関連物質は、分子量の増大や水和層の形成などにより血中半減期を延長させることが可能となる。
【0003】
ポリエチレングリコールは、生体関連物質の性能改善に用いられる修飾剤の中で最も汎用されており、現在ではポリエチレングリコール修飾医薬品が複数上市され、世界中の医療現場で使用されている。
【0004】
このような医薬品原料または医薬品添加剤として用いられるポリエチレングリコール誘導体は、医薬品の性能や安全性の観点より、不純物が少なく、均一性の高いものが求められている。ポリエチレングリコール誘導体に含まれる不純物は、高分子化合物と低分子化合物に分類することができ、このうち低分子化合物の不純物は、ポリエチレングリコール末端を誘導体化する際に使用される低分子化合物由来である。低分子化合物由来の不純物は、反応性官能基を有していることも多く、生体関連物質を化学修飾する際に予期せぬ副反応を起こし、医薬品の不純物が生成してしまうため、不純物含量が低いことが望ましい。また、医薬品の品質は製造ロット内の均一性を求められるため、医薬品原料または医薬品添加剤として用いられるポリエチレングリコール誘導体も、同様に不純物含量が製造ロット内で均一であることが求められる。
【0005】
一般的に、ポリエチレングリコールのような両親媒性の高分子化合物から不純物である低分子化合物を除去する場合、非特許文献1に示すような分子量や物理化学的性質の差を利用した透析、限外ろ過、イオン交換クロマトグラフィー、抽出や再沈殿などの精製方法を用いることができる。
【0006】
まず、分子量の違いを利用して分離する方法として、透析や限外ろ過が知られており、静電相互作用の違いを利用して分離する方法として、イオン交換クロマトグラフィーなどの手法が知られている。これらの精製方法を利用するためには、分離対象である低分子化合物が水溶性である必要がある。そのため、低分子不純物が疎水性化合物である場合、これらの方法を用いて効率的な精製を行うことは困難である。
【0007】
次に、水及び有機溶剤への溶解性の違いを利用して分離する方法として、抽出が挙げられる。抽出においては、目的物と不純物の、水または有機溶剤への溶解性が大きく異なることが必要条件である。両親媒性であるポリエチレングリコールは、2相系の抽出において、適切な条件を用いることで有機層または水層のどちらかに選択的に分配できる極めて珍しい物性を有している。そのため、不純物が水溶性化合物の場合は、ポリエチレングリコールを有機層に、不純物を水層に分配させることで精製が可能である。また、不純物が疎水性化合物の場合は、ポリエチレングリコールを水層に、不純物を有機層に分配させることで精製が可能である。しかし、ポリエチレングリコール誘導体によっては、医薬品へ修飾するための反応性官能基が加水分解して品質が低下する場合があるため、適用できるポリエチレングリコール誘導体は限定的である。
【0008】
再沈殿は、抽出と同様に目的物と不純物の溶剤への溶解性の差を利用して分離する方法であり、溶液中から目的物のみの溶解度を下げて沈殿させ、沈殿物と不純物を含有する溶液を分離することで不純物を除去する方法である。再沈殿には、溶液を冷却して目的物の溶解度を下げることで沈殿させる方法、貧溶剤を添加して目的物の溶解度を下げることで沈殿させる方法など複数の手法があり、通常は複数回繰り返すことによって、医薬品原料または医薬品添加剤に求められる不純物含量が少ない高純度な品質のポリエチレングリコール誘導体を得ることができる。これは、ポリエチレングリコールは高分子鎖同士が絡まりあいながら不純物や溶剤を抱き込んで沈殿する性質があり、沈殿物と不純物を含んだ溶液を完全に分離するのは困難であることから、複数回繰り返すことで段階的に系内の不純物濃度を低下させる必要があるためである。特許文献1には、加温した酢酸エチルに溶解させたポリエチレングリコール誘導体に、貧溶媒であるヘキサンを添加することによって行う再沈殿が記載されている。
【0009】
また、高分子化合物と不純物の溶剤への溶解性の差を利用して分離する方法として、リパルプ洗浄が知られている。このリパルプ洗浄は、目的物が溶解せずに不純物だけが溶解する溶剤を用いる洗浄であり、このリパルプ洗浄後に目的物と不純物とを含有する溶液を分離することで不純物を除去可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Harris, J. M. Poly(Ethylene Glycol) Chemistry; Plenum Press: New York, 1992
【非特許文献2】Green’s Protective Groups in Organic Synthesis Fifth edition, Peter G.M. Wuts
【非特許文献3】Gross, Hans; Bilk, L. Tetrahedron (1968), 24(24), 6935-9
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004-197077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
再沈殿は、良溶媒、貧溶媒ともに有機溶剤を使用することから、水に鋭敏な反応性官能基を有するポリエチレングリコール誘導体においても加水分解のリスクは低く、かつ、疎水性化合物を除去可能である。また、再沈殿を複数回繰り返すことによって、医薬品原料または医薬品添加剤に求められる不純物含量が少ない高純度な品質のポリエチレングリコール誘導体を得られることから、ポリエチレングリコール誘導体から不純物を除去、精製する方法として有用である。
【0013】
しかし、再沈殿によるポリエチレングリコール誘導体の精製は、繰り返し行うことによって品質が低下する可能性がある。これは、ポリエチレングリコール誘導体の沈殿物を良溶媒に溶解する際に加熱が必要であり、加温溶解工程が繰り返し発生することにより、熱履歴が増加して、ポリエチレングリコール鎖の酸化分解による多分散度の増大を起こすためである。また、再沈殿回数の増加は製造工数の増加、つまり製造時間の延長につながり、その結果、生産効率は低下する。
【0014】
このように、ポリエチレングリコール誘導体は、医薬用途において重要な素材であるにも関わらず、工業的に製造容易な方法では得られていない。
【0015】
本発明の課題は、ポリエチレングリコール誘導体を、高効率および高純度、そして均一な品質で得ることができ、かつ熱履歴の増加による多分散度の増大を抑制できる工業的に実施可能なポリエチレングリコールの精製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
すなわち、本発明は、以下のものである。
(1) (A) 生体関連物質と反応可能な官能基、前記官能基の前駆体となる官能基および前記官能基の保護基からなる群より選ばれた一種以上を末端に有するポリエチレングリコール誘導体と、不純物とを含む粗ポリエチレングリコール誘導体を用意する工程;
(B) 前記粗ポリエチレングリコール誘導体を、有機溶剤Aと有機溶剤Bとからなる混合有機溶剤と混合してスラリーとし、このスラリーをリパルプ洗浄し、次いで前記混合有機溶剤から前記ポリエチレングリコール誘導体を回収する工程;および
(C) 前記工程(B)で得られた前記ポリエチレングリコール誘導体を良溶媒に溶解した後に、前記良溶媒から前記ポリエチレングリコール誘導体を回収する工程
を有しており、
前記有機溶剤Aは、キシレン、トルエン、ベンゼン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトニトリル、アセトン、N, N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、クロロホルム、ジクロロメタン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、
前記有機溶剤Bは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、
前記有機溶剤Aの質量と前記有機溶剤Bの質量との合計値に対する前記有機溶剤Aの質量比(有機溶剤Aの質量/(有機溶剤Aの質量+有機溶剤Bの質量))をYとし、前記リパルプ洗浄時の温度をT(℃)としたとき、YとTとが以下の関係を満たすことを特徴とする、ポリエチレングリコール誘導体の製造方法。
0.5 ≦ Y×T ≦ 30
(2) 前記工程(B)を複数回繰り返すことを特徴とする、(1)の方法。
(3) 前記有機溶剤Aが、酢酸エチル、または酢酸エチルとアセトニトリルの混合溶剤であり、前記有機溶剤Bがヘキサンであることを特徴とする、(1)または(2)の方法。
(4) 前記有機溶剤Aの質量および前記有機溶剤Bの質量が、それぞれ前記ポリエチレングリコール誘導体の質量の1~50質量倍であり、前記リパルプ洗浄の温度が1~33℃であることを特徴とする、(1)から(3)のいずれか1つの方法。
【発明の効果】
【0017】
リパルプ洗浄は、ポリエチレングリコール誘導体をスラリー状態のまま有機溶剤を用いて洗浄する操作であり、ポリエチレングリコール誘導体を加温溶解することなく精製可能なため、熱履歴が低減し、多分散度の増大の抑制が期待できるはずである。しかし、ポリエチレングリコール誘導体においては、リパルプ洗浄に適した溶剤種や温度に関する報告はこれまでなかった。
【0018】
このため、本発明者らは、不純物を含むポリエチレングリコール誘導体のリパルプ洗浄を具体的に検討したところ、特定の重量比率で混合した2種類以上の有機溶剤を用いてリパルプ洗浄することで、熱履歴の増加による品質低下を抑制したうえで、効率的に不純物を除去でき、大幅に製造時間を削減できることを見出した。
さらに、リパルプ洗浄は不純物を効率的に除去できるが、医薬品原料に要求される均一化能力には不足することを明らかにし、リパルプ洗浄後に改めて再沈殿(良溶媒に溶解してからポリエチレングリコール誘導体を回収する工程)を行うことで、均一な品質の目的物を得ることができるという効果を見出した。
【0019】
本発明の精製方法は、リパルプ洗浄に使用する2種類以上の有機溶剤の重量比率と、リパルプ洗浄時の温度を、適切な範囲に制御することにより実現可能である。また、他の精製方法のように、精製用の樹脂やゲルなどの担体/吸着剤や限外ろ過膜などは必要がないため、工業的に大スケールでも実施可能な方法である。
この結果、本発明は、医薬品原料または医薬品添加剤であるポリエチレングリコール誘導体を、高効率および高純度、そして均一な品質で得るための新規な精製方法である。本精製方法は、ポリエチレングリコール誘導体の特有の溶解性を利用して、不純物を効率的に分離除去することが可能であり、さらに、医薬品原料または医薬品添加剤に求められる高純度で均一な品質を有するポリエチレングリコール誘導体を得ることができる。また、工業的に容易に実施可能で、生産性に優れ、吸着剤やイオン交換樹脂といった廃棄物が発生しない工程にて高収率に実施することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のポリエチレングリコール誘導体の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分析した値であり、様々な既知分子量のポリエチレングリコールを用いて作成した検量線をベースに算出した数平均分子量のことである。このポリエチレングリコール誘導体の数平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは2,000~160,000であり、より好ましくは2,000~120,000であり、さらに好ましくは2,000~80,000である。なお、数平均分子量2,000未満のポリエチレングリコール誘導体は常温で液体である可能性があり、この場合、混合有機溶剤を用いてスラリーとすることが難しいため、適用が難しい。
【0021】
本発明のポリエチレングリコール誘導体は、末端に生体関連物質と反応可能な官能基、前記官能基の前駆体となる官能基、もしくは保護基を1つ以上有する。
生体関連物質と反応可能な官能基は、生体関連物質が有するアミノ基、メルカプト基、アルデヒド基、カルボキシル基、不飽和結合またはアジド基などの官能基に対して化学結合可能な官能基であれば、特に制限されない。具体的には、活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシド基、カルボキシル基、メルカプト基、マレイミド基、置換マレイミド基、ヒドラジド基、ジチオピリジル基、置換スルホネート基、ビニルスルホニル基、アミノ基、オキシアミノ基(HN-O-基)、ヨードアセトアミド基、アルキルカルボニル基、アルケニル基(例えば、アリル基、ビニル基)、アルキニル基、置換アルキニル基(例えば、後記の炭素数1~5の炭化水素基で置換されたアルキニル基)、アジド基、アクリル基、スルホニルオキシ基(例えば、アルキルスルホニルオキシ基)、α-ハロアセチル基などが挙げられ、好ましくは、活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシド基、マレイミド基、置換マレイミド基、ビニルスルホニル基、アクリル基、スルホニルオキシ基(例えば、炭素数1~5のアルキル-スルホニルオキシ基)、置換スルホネート基、カルボキシル基、メルカプト基、ピリジルジチオ基、α-ハロアセチル基、アルキニル基、置換アルキニル基(例えば、後記の炭素数1~5の炭化水素基で置換された炭素数2~5のアルキニル基)、アリル基、ビニル基、アミノ基、オキシアミノ基、ヒドラジド基及びアジド基であり、より好ましくは活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、マレイミド基、カルボキシル基、メルカプト基、オキシアミノ基及びアミノ基であり、特に好ましくは活性エステル基、活性カーボネート基、マレイミド基、カルボキシル基、メルカプト基及びオキシアミノ基である。
【0022】
生体関連物質と反応可能な官能基は、具体的には、下記の群(I)、群(II)、群(III)、群(IV)、群(V)及び群(VI)に分類することができる。
【0023】
群(I):生体関連物質が有するアミノ基と反応可能な官能基
下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(j)、または(k)で示される基が挙げられる。
群(II):生体関連物質が有するメルカプト基と反応可能な官能基
下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)、(k)、または(l)で示される基が挙げられる。
群(III)):生体関連物質が有するアルデヒド基と反応可能な官能基
下記の(h)、(m)、(n)、または(p)で示される基が挙げられる。
群(IV):生体関連物質が有するカルボキシル基と反応可能な官能基
下記の(h)、(m)、(n)、または(p)で示される基が挙げられる。
群(V):生体関連物質が有する不飽和結合と反応可能な官能基
下記の(h)、(m)、または(o)で示される基が挙げられる。
群(VI):生体関連物質が有するアジド基と反応可能な官能基
下記の(l)で示される基が挙げられる。
【0024】
【化1】
【0025】
官能基(j)において、式中のUは塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)またはヨウ素原子(I)などのハロゲン原子を示し、好ましくはBr、またはI、より好ましくはIである。
【0026】
また、官能基(e)及び官能基(l)において、式中のY、Yは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~5の炭化水素基を示す。炭素数1~5の炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第三ブチル基などが挙げられる。式中のY、Yは、好ましくは水素原子、メチル基、またはエチル基である。
【0027】
また、官能基(k)において、式中のYはフッ素原子を含んでいてもよい炭素数が1~10の炭化水素基を示し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第三ブチル基、ヘキシル基、ノニル基、ビニル基、フェニル基、ベンジル基、4-メチルフェニル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、4-(トリフルオロメトキシ)フェニル基などが挙げられ、好ましくはメチル基、ビニル基、4-メチルフェニル基、または2,2,2-トリフルオロエチル基である。
【0028】
活性エステル基とは、脱離能の高いアルコキシ基を有したエステル基である。脱離能の高いアルコキシ基としては、ニトロフェノール、N-ヒドロキシスクシンイミド、ペンタフルオロフェノールなどから誘導されるアルコキシ基が挙げられる。活性エステル基は、好ましくはN-ヒドロキシスクシンイミドから誘導されるアルコキシ基を有したエステル基である。
【0029】
活性カーボネート基とは、脱離能の高いアルコキシ基を有したカーボネート基である。脱離能の高いアルコキシ基としては、ニトロフェノール、N-ヒドロキシスクシンイミド、ペンタフルオロフェノールなどから誘導されるアルコキシ基が挙げられる。活性カーボネート基は、好ましくはニトロフェノールまたはN-ヒドロキシスクシンイミドから誘導されるアルコキシ基を有したカーボネート基である。
【0030】
置換マレイミド基とは、マレイミド基の二重結合の片方の炭素原子に炭化水素基が結合しているマレイミド基である。炭化水素基は、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第三ブチル基などが挙げられ、好ましくはメチル基、またはエチル基である。
【0031】
置換スルホネート基とは、スルホネート基の硫黄原子に対して、フッ素原子を含んでいてもよい炭化水素基が結合しているスルホネート基である。フッ素原子を含んでいてもよい炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第三ブチル基、ヘキシル基、ノニル基、ビニル基、フェニル基、ベンジル基、4-メチルフェニル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、4-(トリフルオロメトキシ)フェニル基などが挙げられ、好ましくはメチル基、ビニル基、4-メチルフェニル基、または2,2,2-トリフルオロエチル基である。
【0032】
生体関連物質と反応可能な官能基の前駆体となる官能基は、生体関連物質と反応可能な官能基を生成する化学反応における前の段階の官能基を指す。例えば、シアノ基は、加水分解によりカルボキシル基、還元すればアルデヒド基やアミノ基が得られることから、前記官能基の前駆体として挙げられる。また、水酸基も化学反応によって生体関連物質と反応可能な官能基へと変換できることから、前駆体として挙げることができる。
【0033】
生体関連物質と反応可能な官能基の保護基は、ある反応条件下で特定の化学反応可能な官能基の反応を防止または阻止する成分である。保護基で保護された官能基は、それぞれの保護基に適した反応条件を用いて脱保護、すなわち化学反応させることで、元の官能基を再生させることができる。保護基の種類について特に制限はなく、保護される化学反応可能な官能基の種類、使用される条件及び分子中の他の官能基もしくは保護基の存在により種々選択でき、具体的な例は多くの一般的な成書に見出すことができる(上記非特許文献2参照)。例えば、水酸基の保護基としては、ベンジル基、p-メトキシフェニルベンジル基、メトキシメチル基、tert-ブチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、アセチル基、ベンゾイル基、トリチル基が挙げられる。カルボキシル基の保護基としては、メチルエステル基、エチルエステル基、ベンジルエステル基、tert-ブチルエステル基を例示できる。アミノ基の保護基としては、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、2,2,2,―トリクロロエトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、フタロイル基、p-トルエンスルホニル基、2-ニトロベンゼンスルホニル基を例示できる。アルデヒド基の保護基としては、ジメチルアセタール基、ジエチルアセタール基、環状アセタール基、ジチオアセタール基が例示できる。チオール基の保護基としては前記水酸基の保護基と同様のものを例示できる。
【0034】
本発明のポリエチレングリコール誘導体は、生体関連物質と反応可能な官能基、前記官能基の前駆体となる官能基、または前記官能基の保護基を1つ以上有するポリエチレングリコール誘導体のことである。
【0035】
(工程(A))
工程(A)は、生体関連物質と反応可能な官能基、前記官能基の前駆体となる官能基、または前記官能基の保護基を1つ以上有するポリエチレングリコール誘導体と、不純物とを含む、粗ポリエチレングリコール誘導体を用意する工程である。
工程(A)は、ポリエチレングリコール誘導体の製造において、反応工程や他の処理工程の後に、不純物およびポリエチレングリコール誘導体が溶解した溶液に対して、貧溶媒である有機溶剤を添加して再沈殿を行い、粗ポリエチレングリコール誘導体を沈殿させる。そして、特定の温度で一定時間撹拌し、混合有機溶剤から粗ポリエチレングリコール誘導体を分離回収することで実施されても良い。
【0036】
粗ポリエチレングリコール誘導体とは、ポリエチレングリコール誘導体と前記不純物を含んだ組成物である。
【0037】
この不純物とは、ポリエチレングリコール誘導体に含まれる不純物であり、具体的には、ポリエチレングリコール誘導体の生成反応時に使用する低分子化合物やそれらの使用により生じる副生成物である。例えば、式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)で示される誘導化反応に使用するN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N-スクシンイミジル-6-マレイミドヘキサン酸(SMH)、N-スクシンイミジル-3-マレイミドプロピオン酸(SMP)、炭酸ジ(N-スクシンイミジル)(DSC)、などが挙げられ、グルタル酸無水物,NHS,およびDCCを用いた反応から副生するジ(N-スクシンイミジル)グルタル酸(Glu-diNHS)やN,N'-ジシクロヘキシルウレア(DCU)、NHSおよびDCCを用いた反応から副生するN-スクシンイミドキシカルボニル-β-アラニン-N-スクシンイミジルエステル(β-Ala-diNHS)などが挙げられる。Β-Ala-diNHSは式(6)に示される機構で生成することが知られている(上記非特許文献3参照)。
【0038】
【化2】
【0039】
【化3】
【0040】
【化4】
【0041】
【化5】
【0042】
【化6】
【0043】
【化7】
【0044】
(工程(B))
工程(A)で得られた粗ポリエチレングリコール誘導体を、有機溶剤Aと有機溶剤Bからなる混合有機溶剤を用いてスラリー化し、スラリーをリパルプ洗浄(目的物が溶解せずに不純物だけが溶解する溶剤を用いる洗浄)した後に、混合有機溶剤からポリエチレングリコール誘導体を分離回収する工程である。
【0045】
本発明におけるリパルプ洗浄は、粗ポリエチレングリコール誘導体に対して、予め調製しておいた混合有機溶剤を加えてスラリーとし、規定の温度(T)℃で、規定時間(撹拌時間)にわたって撹拌洗浄するものである。
【0046】
まず、工程(A)で用意した不純物を含む粗ポリエチレングリコール誘導体に対して、予め調製しておいた有機溶剤Aと有機溶剤Bの混合有機溶剤を添加し、リパルプ洗浄する。そして、特定の温度で一定時間撹拌し、ポリエチレングリコール誘導体を混合有機溶剤から回収する工程である。
【0047】
本工程は、再沈殿と比較し、ポリエチレングリコール誘導体を良溶媒に加温溶解する作業、貧溶媒を添加して沈殿させる作業が不要となり、溶媒への再溶解、再沈殿を繰り返して精製する従来の方法と比較して、工数を削減できる利点がある。
また、再沈殿法によれば、ポリエチレングリコール誘導体(特に、数平均分子量が2,000以上のポリエチレングリコール)は、再沈殿の良溶媒、例えば酢酸エチルやトルエンには常温ではほとんど溶解しないため、溶解するために加温が必要である。ポリエチレングリコール誘導体をリパルプ洗浄すると、加温溶解工程が不要になることから、再沈殿法と比較して熱履歴を低減でき、PEG鎖の酸化分解を抑制できる。
【0048】
本工程(B)を繰り返すことで不純物の含量を低減することができる。本工程(B)を繰り返す際の回数に特に制限はないが、複数回繰り返すことが好ましい。具体的には、工程(B)を繰り返す回数は、好ましくは1回以上20回以下であり、より好ましくは1回以上15回以下であり、さらに好ましくは2回以上10回以下である。ただし、生産性の観点からは、工程(B)の回数は10回以下が好ましい。
【0049】
本発明において使用される有機溶剤Aは、キシレン、トルエン、ベンゼン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトニトリル、アセトン、N, N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、クロロホルム、ジクロロメタン、およびこれらの組み合わせから成る混合溶剤である。
ただし、有機溶媒Aとして、アセトニトリル、アセトン、N, N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、クロロホルム、ジクロロメタンである場合は、単独で使用するとリパルプ洗浄時に沈殿物の性状を変化させ、有機溶剤からポリエチレングリコール誘導体を分離回収する際の作業性を悪化させるおそれがある。このため、アセトニトリル、アセトン、N, N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、クロロホルム、ジクロロメタンは、キシレン、トルエン、ベンゼン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルと組み合わせて使用することが好ましい。
【0050】
有機溶媒Bは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0051】
本発明の目的とするポリエチレングリコール誘導体の精製の効率からは、特に好適な実施形態においては、有機溶剤Aが、キシレン、トルエン、ベンゼン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルおよびアセトニトリルからなる群より選ばれた一種以上の溶剤であり、有機溶剤Bは、ヘキサン、ヘプタンである。より好ましくは、有機溶剤Aが、トルエン、酢酸エチルおよびアセトニトリルからなる群より選ばれた一種以上の溶剤であり、有機溶剤Bが、ヘキサンおよびヘプタンからなる群より選ばれた一種または二種の溶剤である。さらに好ましくは、有機溶剤Aが、酢酸エチル、またはアセトニトリルと酢酸エチルの混合物であり、有機溶剤Bがヘキサンである。
【0052】
本発明の工程中のY×Tの範囲は、0.5≦Y×T≦30とする。すなわち、YとTとが0.5≦Y×T≦30の関係を満たす。
Yは、有機溶剤Aと有機溶剤Bとの合計質量に対する有機溶剤Aの質量比(有機溶剤Aの質量/(有機溶剤Aの質量+有機溶剤Bの質量))である。有機溶剤Aは、ポリエチレングリコール誘導体の前述した良溶媒であり、有機溶剤Bは、ポリエチレングリコール誘導体の前述した貧溶媒である。Yの値が大きいほど良溶媒の割合が高くなるため、ポリエチレングリコール誘導体および不純物の溶解性が高くなる。また、Yの値が小さいほど、貧溶媒の割合が高くなるため、ポリエチレングリコール誘導体および不純物の溶解性が小さくなる。Yの範囲は、0.5~0.9の間が適切であり、好ましくは0.5~0.8の間であり、より好ましくは0.5~0.7である。
【0053】
Tは、リパルプ洗浄を行う温度である。Tが大きいほどポリエチレングリコール誘導体および不純物の溶解性が高くなり、Tが小さいほどポリエチレングリコール誘導体および不純物の溶解性が小さくなる。Tの範囲は、好ましくは1°C~33°Cの間であり、より好ましくは5°C~30°Cの間であり、さらに好ましくは10°C~26°Cである。
【0054】
その上で、Y×Tが大きい場合には、ポリエチレングリコール誘導体の溶解が発生し、回収が困難となる。Y×Tが小さい場合には、精製効率が低下する。こうした観点から、Y×Tの範囲は、0.1~30であり、好ましくは3~27であり、より好ましくは5~25であり、さらに好ましくは7~20である。
【0055】
リパルプ洗浄時の撹拌時間は、特に限定されないが、好ましくは5分~6時間、より好ましくは10分~3時間、さらに好ましくは15分~2時間である。また、リパルプ洗浄操作を実施する雰囲気は特に限定されないが、好ましくは酸化を最小限に抑えることを目的として、典型的には窒素やアルゴンなどの不活性ガス存在下にて行う。また、装置も特に限定されないが、ポリエチレングリコール誘導体の酸化劣化が起きにくい窒素下かつ密閉状態での操作を考慮して耐圧容器にて行うこともできる。
【0056】
使用する有機溶剤Aの質量(合計値)および有機溶媒Bの質量(合計値)は、それぞれポリエチレングリコール誘導体の質量の1~50質量倍が好ましく、より好ましくは1~20質量倍である。
【0057】
(工程(C))
工程(B)で得られたポリエチレングリコール誘導体を良溶媒に溶解した後に、良溶媒からポリエチレングリコール誘導体を回収する工程である。本工程(C)は、工程(B)で不均一な品質となっていたポリエチレングリコール誘導体を再溶解することで、均一な品質とするための工程である。
【0058】
工程(B)で得られたポリエチレングリコール誘導体に良溶媒を添加して溶解する。良溶媒としては、キシレン、トルエン、ベンゼン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトニトリル、アセトン、N, N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、クロロホルム、ジクロロメタン、およびその組み合わせからなるものが好ましい。こうした良溶媒は、好ましくはキシレン、トルエン、ベンゼン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトニトリルであり、より好ましくは、酢酸エチル、トルエン、アセトニトリルであり、さらに好ましくは、酢酸エチルまたは酢酸エチルとアセトニトリルの混合溶剤である。
【0059】
回収方法に特に制限はないが、以下の方法が好ましい。
・ ヘキサン、ヘプタン等の貧溶媒を添加してポリエチレングリコール誘導体を沈殿したあと、ろ過やデカンテーション(上澄み液の抜き取り操作を含む)にてポリエチレングリコール誘導体を回収する方法
・ 凍結乾燥してポリエチレングリコール誘導体を回収する方法
・ 蒸発乾固にてポリエチレングリコール誘導体を回収する方法
【0060】
ポリエチレングリコール誘導体を良溶媒からろ過する方法に特に制限はないが、好ましくは減圧ろ過、加圧ろ過、遠心ろ過である。
【0061】
工程(A)から(C)を通して、系内にはポリエチレングリコール誘導体の酸化劣化を防止するために、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)等の抗酸化物質を添加することができる。
【実施例0062】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
ポリエチレングリコール誘導体の分子量、多分散度は、GPCシステムとしてLC-10Avp(島津)を用い、以下の条件で測定を行った。
GPC装置: LC-10Avp(島津)
展開液: DMF (10mM LiBr)
流速: 0.7ml/min
カラム: PL gel MIXED-D (ポリマーラボラトリー)
カラム温度:65℃
検出器: RI
サンプル濃度(インジェクション量): 30mg/30mL (100μl)
検量線は、ポリエチレングリコール誘導体の標準物質として作成した。
【0063】
(粗ポリエチレングリコール誘導体に含まれる不純物の定量方法)
ポリエチレングリコール誘導体のβ-Ala-diNHS含量は、HPLCシステムとしてalliance (Waters)を用い、以下の条件で測定を行なった。
HPLC装置: alliance (Waters)
流速: 1.0ml/min
カラム: ODSカラム Inertsil ODS-3(ジーエルサイエンス)
カラム温度: 40℃
検出器: UV(194nm)
注入量: 10μl (100mg/mL)
分析時間: 40min
移動相: 移動相A(水/アセトニトリル=7/3、0.02%リン酸)
移動相B(水/アセトニトリル=2/8、0.02%リン酸)
グラジエント条件
時間 %A %B
0min 100% 0%
15min 100% 0%
19min 0% 100%
23min 100% 0%
40min 100% 0%
【0064】
ポリエチレングリコール誘導体のNHS含量、SMP含量およびDSC含量は、1H-NMRを用い、以下の条件で測定を行なった。
NMR装置: JNM-ECP400(JEOL-NMR)またはJNM-ECA600(JEOL-NMR)
温度: 25℃
積算回数: 128または512
サンプル濃度: 20mg/0.7mL
【0065】
ポリエチレングリコール誘導体のDCU含量は、HPLCシステムとしてalliance
(Waters)を用い、以下の条件で測定を行なった。
HPLC装置: alliance (Waters)
流速: 1.0ml/min
カラム: ODSカラム Inertsil-ODS-3(ジーエルサイエンス)
カラム温度: 30℃
検出器: UV (201nm)
注入量: 100μl (10mg/mL)
分析時間: 35min
移動相: 移動相C(水/アセトニトリル=(5/5)
移動相D(水/アセトニトリル=0/10)
グラジエント条件
時間 %C %D
0min 100% 0%
15min 100% 0%
20min 0% 100%
【0066】
ポリエチレングリコール誘導体のSMH含量は、HPLCシステムとしてalliance
(Waters)を用い、以下の条件で測定を行なった。
HPLC装置: alliance(Waters)
流速: 1.0ml/min
カラム: ODSカラム Inertsil ODS-3(ジーエルサイエンス)
カラム温度: 40℃
検出器: UV (220nm)
注入量: 10μl (20mg/mL)
分析時間: 300min
移動相: 移動相E(水/アセトニトリル=55/45、0.1%酢酸)
移動相F(水/アセトニトリル=2/8、0.1%酢酸)
グラジエント条件
時間 %E %F
0min 100% 0%
15min 100% 0%
19min 0% 100%
23min 100% 0%
40min 100% 0%
【0067】
ポリエチレングリコール誘導体のGlu-diNHS含量は、HPLCシステムとしてalliance(Waters)を用い、以下の条件で測定を行なった。
HPLC装置: alliance (Waters)
流速: 1.0ml/min
カラム: ODSカラム Inertsil ODS-3(ジーエルサイエンス)
カラム温度: 40℃
検出器: UV(194nm)
注入量: 10μl(20mg/mL)
分析時間: 40 min
移動相: 移動相G(水/アセトニトリル=7/3、0.1%酢酸)
移動相H(水/アセトニトリル=2/8、0.1%酢酸)
グラジエント条件
時間 %G %H
0min 100% 0%
15min 100% 0%
19min 0% 100%
23min 100% 0%
40min 100% 0%
【0068】
ポリエチレングリコール誘導体のDTT含量は、HPLCシステムとしてalliance
(Waters)を用い、以下の条件で測定を行なった。
HPLC装置: alliance (Waters)
流速: 1.0ml/min
カラム: ODSカラム Inertsil ODS-3(ジーエルサイエンス)
カラム温度: 30℃
検出器: UV(197nm)
注入量: 100μl(10mg/mL)
分析時間: 20min
移動相: 移動相I(10mmol/Lリン酸緩衝液/アセトニトリル=9/1)
【0069】
(実施例1)
機械式攪拌装置、ジムロート冷却管、温度計、窒素吹き込み管を装着した300mLの4つ口フラスコにα-(5-カルボキシペンチル)-ω-メトキシポリ(オキシエチレン)(分子量:20,000):37gとトルエン:111gを入れ、窒素下で攪拌しながら45°Cで溶解した。これにN-ヒドロキシスクシンイミド:427mgとジシクロヘキシルカルボジイミド:840mgを加えて42°Cで2時間反応させた。これにトルエン:74gを加えて希釈したのちにろ過を行い、不溶物を濾別した。
また、濾過ケーキをトルエン:37gで洗浄し、先に得たろ液と混合したのちに酢酸エチル:74gを加えて希釈した。これにヘキサン:130gを添加して再沈殿を行った。スラリーを15°Cで15分間撹拌したのちにろ過を行い、粗ポリエチレングリコール誘導体を回収した(工程(A))。不純物の含量はそれぞれ、β-Ala-diNHS:2819ppm,DCU:3169ppmであった。
【0070】
得られた粗ポリエチレングリコール誘導体に、予め調製しておいた混合有機溶剤(酢酸エチル:133g/ヘキサン:55.5g)を添加して15°Cで45分間撹拌してリパルプ洗浄を行った後に濾過し、ポリエチレングリコール誘導体を回収した。本操作を6回繰り返して、計7回のリパルプ洗浄を実施した(工程(B))。
【0071】
リパルプ洗浄終了後、得られたポリエチレングリコール誘導体に酢酸エチル:222gを加えて40°Cで溶解した後にヘキサン:92.5gを添加して再沈殿を行った。15°Cで15分間撹拌したのちにろ過を行い、ポリエチレングリコール誘導体を回収した(工程(C))。得られたポリエチレングリコール誘導体をヘキサン:148gで洗浄した後、真空にて乾燥を行い、式(7)の化合物を得た。
不純物の含量はそれぞれ、β-Ala-diNHS:8ppm,DCU:13ppmであった。本実施例におけるリパルプ洗浄はY=0.7、T=15であり、Y×T=10.5であった。
【0072】
【化8】
【0073】
(実施例2)
機械式攪拌装置、ジムロート冷却管、温度計、窒素吹き込み管を装着した30Lの反応釜に、α-(5-カルボキシペンチル)-ω-メトキシポリ(オキシエチレン)(分子量:10,000):5500gとトルエン:16.5kgを入れ、窒素下で攪拌しながら45°Cで溶解した。これにN-ヒドロキシスクシンイミド:90.52gとジシクロヘキシルカルボジイミド:147.53gを加えて45°Cで4時間反応させた。ろ過を行い、不溶物を濾別し、濾過ケーキをトルエン:11.0kgで洗浄した。得られたろ液に酢酸エチル:11.0kgを加えて希釈し、これにヘキサン:16.5kgを添加して再沈殿を行った。22°Cで90分間撹拌したのちにろ過を行い、粗ポリエチレングリコール誘導体を回収した(工程(A))。
【0074】
得られた粗ポリエチレングリコール誘導体に予め調製しておいた混合有機溶剤(酢酸エチル:38.5kg/ヘキサン:16.5kg/BHT:7.7g)を添加して22°Cで30分間撹拌して、リパルプ洗浄を行った後に濾過し、ポリエチレングリコール誘導体を回収した。本操作を4回繰り返して、計5回のリパルプ洗浄を実施した(工程(B))。
【0075】
得られたポリエチレングリコール誘導体に酢酸エチル:38.5kg、BHT:7.7gを加えて40°Cで溶解した後にヘキサン: 16.5 kgを添加して再沈殿を行った。22°Cで30分間撹拌したのちにろ過を行い、ポリエチレングリコール誘導体を回収した(工程(C))。得られたポリエチレングリコール誘導体を、BHTを4.4 g溶解させたヘキサン:22.0kgで洗浄した後、真空にて乾燥を行い、式(8)の化合物を得た。
不純物であるβ-Ala-diNHSの含量は0.3ppmであった。本実施例におけるリパルプ洗浄はY=0.7、T=22であり、Y×T=15.4であった。また、総工程時間は64時間26分だった。
【0076】
【化9】
【0077】
(実施例3)
機械式攪拌装置、冷却管、温度計を装着した50Lの反応釜に、α-(5-カルボキシペンチル)-ω-メトキシポリ(オキシエチレン)(分子量:30,000):4900gとトルエン:24.5kgを入れ、窒素下で攪拌しながら40°Cで溶解した。これにN-ヒドロキシスクシンイミド:41.36gとジシクロヘキシルカルボジイミド:67.40gを加えて45°Cで3時間反応させた。ろ過を行い、不溶物を濾別し、濾過ケーキをトルエン:4.9kgで洗浄した。得られたろ液に酢酸エチル:9.8kg、アセトニトリル:2.5kgを加えて希釈し、これにヘキサン:34.3kgを添加して再沈殿を行った。26°Cで90分間撹拌したのちにろ過を行い、粗ポリエチレングリコール誘導体を回収した(工程(A))。
【0078】
得られた粗ポリエチレングリコール誘導体に、予め調製しておいた混合有機溶剤(酢酸エチル:19.6kg/トルエン:19.6kg/アセトニトリル:2.5kg/ヘキサン:34.3kg/BHT:7.84g)を添加して26°Cで30分間撹拌してリパルプ洗浄を行った後に濾過し、ポリエチレングリコール誘導体を回収した。本操作を3回繰り返して、計4回のリパルプ洗浄を実施した(工程(B))。
【0079】
得られたポリエチレングリコール誘導体に、酢酸エチル:19.6kg/トルエン:19.6kg/アセトニトリル:2.5kg/BHT:7.84gを加えて40°Cで溶解した後に、ヘキサン:16.5kgを添加して再沈殿を行った。22°Cで30分間撹拌したのちにろ過を行い、ポリエチレングリコール誘導体を回収した(工程(C))。得られたポリエチレングリコール誘導体をヘキサン:29.4kgで2回洗浄した後、真空にて乾燥を行い、式(9)の化合物を得た。
不純物であるβ-Ala-diNHSの含量は6ppmであった。本実施例におけるリパルプ洗浄はY=0.5、T=26であり、Y×T=13.0であった。
【0080】
【化10】
【0081】
(実施例4)
機械式攪拌装置、ジムロート冷却管、温度計、窒素吹き込み管を装着した100mLの3つ口フラスコに、α-(2-アミノエチル)-ω-メトキシポリ(オキシエチレン)(分子量:20,000):10gとトルエン:40gを入れ、窒素下で攪拌しながら45°Cで溶解した。これに6-マレイミドヘキサン酸N-スクシンイミジル(N-SMH):185mgを加えて42°Cで3時間反応させた。ろ過を行い、不溶物をろ別し、酢酸エチル:10gでケーキを洗浄後、ろ液を酢酸エチル:10gで希釈した。この溶液をヘキサン:60gに添加して再沈殿を行った。15°Cで15分間撹拌したのちにろ過を行い、粗ポリエチレングリコール誘導体を回収した(工程(A))。
【0082】
得られた粗ポリエチレングリコール誘導体に、予め調製しておいた混合有機溶剤(酢酸エチル:60g/ヘキサン:60g/BHT:12mg)を添加して15°Cで15分間撹拌してリパルプ洗浄を行った後に濾過し、ポリエチレングリコール誘導体を回収した。本操作を3回繰り返して計4回のリパルプ洗浄を実施した(工程(B))。
【0083】
得られたポリエチレングリコール誘導体に、酢酸エチル:60g/BHT:10mgを加えて40°Cで溶解した後にヘキサン:60gに添加して再沈殿を行った。15°Cで15分間撹拌したのちにろ過を行い、ポリエチレングリコール誘導体を回収した(工程(C))。得られたポリエチレングリコール誘導体をヘキサン:40gで洗浄した後、真空にて乾燥を行い、式(10)で示される化合物を得た。
不純物の含量はそれぞれ、N-SMH:2ppm, NHS:45ppmであった。本実施例におけるリパルプ洗浄はY=0.5、T=15であり、Y×T=7.5であった。
【0084】
【化11】
【0085】
(実施例5)
機械式攪拌装置、冷却管、温度計を装着した50Lの反応釜に、ポリオキシエチレンペンタエリスリトールエーテル(分子量:20,000):3000gと酢酸ナトリウム:30.0gとトルエン:9.0kgを入れ、窒素下で攪拌しながら45°Cで溶解した。これに無水グルタル酸:82.15gを加えて40°Cで1時間反応させた。これにN-ヒドロキシスクシンイミド:207gとジシクロヘキシルカルボジイミド:260gを加えて40°Cで3時間反応させた。ろ過を行い、不溶物を濾別し、濾過ケーキをトルエン:3kgで洗浄し、先に得たろ液と混合したのちに酢酸エチル:12kgを加えて希釈した。これにヘキサン:12kgを添加して再沈殿を行った。19°Cで1時間撹拌したのちにろ過を行い、粗ポリエチレングリコール誘導体を回収した(工程(A))。
【0086】
得られた粗ポリエチレングリコール誘導体に、予め調製しておいた混合有機溶剤(酢酸エチル:24kg/アセトニトリル:1.2kg/ヘキサン:12kg/BHT:4.8g)を添加して19°Cで30分間撹拌してリパルプ洗浄を行った後に濾過し、ポリエチレングリコール誘導体を回収した。本操作を4回繰り返して計5回のリパルプ洗浄を実施した(工程(B))。
【0087】
得られたポリエチレングリコール誘導体に酢酸エチル:24kgとアセトニトリル:1.2kgとBHT:4.8gを加えて40°Cで溶解した後にヘキサン:12kgを添加して再沈殿を行った。19°Cで1時間撹拌したのちにろ過を行い、ポリエチレングリコール誘導体を回収した(工程(C))。得られたポリエチレングリコール誘導体を、BHT:2.4gを溶解させたヘキサン:12kgで洗浄した後、真空にて乾燥を行い、式(11)の化合物を得た。
不純物の含量はそれぞれ、β-Ala-diNHS:198ppmおよびGlu-diNHS:12ppmであった。本実施例におけるリパルプ洗浄はY=0.7、T=19であり、Y×T=13.3であった。
【0088】
【化12】
【0089】
(実施例6)
機械式攪拌装置、冷却管、温度計を装着した50Lの反応釜に、α-メタンスルホニル-ω-メタンスルホニルオキシポリオキシエチレン(分子量:3,400):4000gとチオ尿素:0.94kgと2-プロパノール:8.0kgを入れ、窒素下で攪拌しながら45°Cで溶解した後に80℃で4時間反応を行った。これにUFW:16.0kgを入れ、濃縮して2-プロパノールを留去した。得られた残渣にジチオスレイトール(DTT):0.726kg、BHT:0.16kg、400g/L水酸化ナトリウム溶液:4.6kgを添加し、70℃で3時間加水分解反応を行った。これに6N HClを6kg添加し、中和し、並塩4.0kgを入れ、溶解させた。クロロホルム:28.0kgを入れ、撹拌した。分層させたのちにクロロホルム層を回収し、抽出を行った。残った水層にクロロホルム:28.0kgを入れもう一度抽出を行った。2回の抽出操作で得た溶液を混合し、20%食塩水:40.0kgを入れ、撹拌洗浄した。分層後、水層を廃棄し、残ったクロロホルム層に20%食塩水:40.0kgを入れ、水洗を2回繰り返し、計3回の水洗を実施した。クロロホルム層を減圧濃縮し、得られた残渣に酢酸エチル:16.0kgを入れ、撹拌した後にろ過を行い、不溶物をろ別した。ケーキを酢酸エチル4.0kgで洗浄し、先のろ液と混合した。この溶液をヘキサン24.0kgに入れ、再沈殿を行った。15°Cで30分間撹拌したのちにろ過を行い、粗ポリエチレングリコール誘導体を回収した(工程(A))。
【0090】
得られた粗ポリエチレングリコール誘導体に、予め混合しておいた酢酸エチル:12.0kg/トルエン:4.0kg/ヘキサン:16.0kg)溶液を添加して20°Cで30分間撹拌してリパルプ洗浄を行った後にろ過し、ポリエチレングリコール誘導体を回収した(工程(B))。
【0091】
得られたポリエチレングリコール誘導体に、酢酸エチル:12.0kg/トルエン:4.0kgを加えて40°Cで溶解した後にヘキサン:16.0kgを添加して再沈殿を行った。20°Cで30分間撹拌したのちにろ過を行い、ポリエチレングリコール誘導体を回収した(工程(C))。得られたポリエチレングリコール誘導体をヘキサン:16.0kgで洗浄した後、真空にて乾燥を行い、式(12)の化合物を得た。
不純物であるDTTの含量は120ppmであった。本実施例におけるリパルプ洗浄はY=0.5、T=20であり、Y×T=10.0であった。
【0092】
【化13】
【0093】
(実施例7)
機械式攪拌装置、ジムロート冷却管、温度計、窒素吹き込み管を装着した200mLの3つ口フラスコに、2,3-ビス(メチルポリオキシエチレン-オキシ)-1-[(3-アミノプロピル)ポリオキシエチレン-オキシプロピルアミノカルボニル-オキシ]-プロパン(分子量:53,000):10g、トルエン:52g、アセトニトリル:8gを入れ、窒素下で攪拌しながら40°Cで溶解した。これにN-メチルモルホリン:97mg、N-スクシンイミジル-3-マレイミドプロピオン酸(SMP):77mgを加えて25°Cで3時間反応させた。酢酸エチル:40gで希釈後、ろ過を行い、不溶物をろ別し、酢酸エチル:20gでケーキを洗浄した。この溶液にヘキサン:60gを添加して再沈殿を行った。25°Cで15分間撹拌したのちにろ過を行い、粗ポリエチレングリコール誘導体を回収した(工程(A))。
【0094】
得られた粗ポリエチレングリコール誘導体に、予め調製しておいた混合有機溶剤(酢酸エチル:120g/ヘキサン:60g/BHT:24mg)を添加して25°Cで15分間撹拌してリパルプ洗浄を行った後に濾過し、ポリエチレングリコール誘導体を回収した。本操作を2回繰り返して計3回のリパルプ洗浄を実施した(工程(B))。
【0095】
得られたポリエチレングリコール誘導体に、酢酸エチル:120g/BHT:24mgを加えて40°Cで溶解した後にヘキサン:60gを添加して再沈殿を行った。25°Cで15分間撹拌したのちにろ過を行い、ポリエチレングリコール誘導体を回収した(工程(C))。得られたポリエチレングリコール誘導体をヘキサン:60g/BHT:12mgで洗浄した後、真空にて乾燥を行い、式(13)で示される化合物を得た。
不純物の含量はそれぞれ、SMP:3ppm, NHS:6ppmであった。本実施例におけるリパルプ洗浄はY=0.67、T=25であり、Y×T=16.7であった。
【0096】
【化14】
【0097】
(実施例8)
機械式攪拌装置、ジムロート冷却管、温度計、窒素吹き込み管を装着した30Lの反応釜に、ポリエチレングリコール(分子量:20,000):2,300 g、トルエン:11.5 kg、BHT:2 gを入れ、加熱溶解後、1時間還流脱水した。DSC:177 gおよびピリジン:82
gを添加し、65℃で8時間反応させた。ろ過を行い、不溶物を濾別後、濾過ケーキを酢酸エチル:7 kgで洗浄し、先に得たろ液と混合したのちにヘキサン:8 kgを添加して再沈殿を行った。25℃で30分攪拌したのちにろ過を行い、粗ポリエチレングリコール誘導体を回収した(工程(A))。
【0098】
得られた粗ポリエチレングリコール誘導体に、予め調製しておいた混合有機溶剤(酢酸エチル:17 kg/ヘキサン:7 kg/BHT:3
g)を添加して25℃で1時間攪拌してリパルプ洗浄を行った後に濾過し、ポリエチレングリコール誘導体を回収した。本操作を3回繰り返して計4回のリパルプ洗浄を実施した(工程(B))。
【0099】
得られたポリエチレングリコール誘導体に酢酸エチル:17 kgとBHT:3 gを加えて40℃で溶解した後にヘキサン7 kgを添加して再沈殿を行った。25℃で30分攪拌したのちにろ過を行い、ポリエチレングリコール誘導体を回収した(工程(C))。得られたポリエチレングリコール誘導体を、BHT:2 gを溶解させたヘキサン:9 kgで洗浄した後、真空にて乾燥を行い、式(14)で示される化合物を得た。
不純物の含量はそれぞれ、DSC:不検出、NHSI:9ppmであった。本実施例におけるリパルプ洗浄はY=0.7、T=25であり、Y×T=17.5であった。
【0100】
【化15】
【0101】
(実施例9)
α-(5-カルボキシペンチル)-ω-メトキシポリ(オキシエチレン)の反応は、実施例1と同スケール、同じ方法で実施した。この反応後、ろ過後のろ液に酢酸エチル74 gを添加し、温度を35°Cに調整後、ヘキサンを130g添加して再沈殿し、25°Cで15分間撹拌した後にろ過して、粗ポリエチレングリコール誘導体を回収した(工程(A))。
【0102】
回収した粗ポリエチレングリコール誘導体に、予め調製しておいた混合有機溶剤(酢酸エチル:133g/ヘキサン:55.5g)を添加して35°Cでリパルプ洗浄を20時間まで延長した(工程(B))。
すなわち、再沈殿工程の繰り返しを想定した溶解時間の延長を行い、比較した。
【0103】
(比較例1)
α-(5-カルボキシペンチル)-ω-メトキシポリ(オキシエチレン)の反応は、実施例1と同スケール、同じ方法で実施した。反応後のろ液に酢酸エチル74gを添加し、温度を35°Cに調整後、ヘキサンを130g添加して再沈殿し、25°Cで15分間撹拌した後にろ過して粗ポリエチレングリコール誘導体を回収した(工程(A))。
回収した粗ポリエチレングリコール誘導体を酢酸エチル185gで溶解し、55°Cに調温後、溶解時間を20時間まで延長した。
実施例9、比較例1の結果を以下の表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
表1より、実施例9で示されるようにポリエチレングリコール誘導体のリパルプ洗浄の攪拌時間を延長しても多分散度の増大は起こらないが、比較例1で示されるように再沈殿を繰り返すために加温による溶解時間を延長することで熱履歴が増加し、多分散度の増大が生じることが示された。
【0106】
よって、リパルプ洗浄は再沈殿と比較して、繰り返し行ってもポリエチレングリコールの酸化劣化による多分散度の増加が起きにくい優れた製造方法であることが示された。
【0107】
以下の実施例10及び比較例2は、工程(C)がポリエチレングリコール誘導体の均一性に与える影響を調べた。
【0108】
(実施例10)
前記反応は実施例1と同スケール、同じ方法で実施した。反応、ろ過後のろ液に酢酸エチル:74gを加えて希釈した。これにヘキサン:130gを添加して再沈殿を行った。15°Cで15分間撹拌したのちにろ過を行い、粗ポリエチレングリコール誘導体を回収した(工程(A))。
得られた粗ポリエチレングリコール誘導体に予め調製しておいた混合有機溶剤(酢酸エチル:133g/ヘキサン:55.5g)を添加して15°Cで45分間撹拌してリパルプ洗浄を行った後に濾過し、ポリエチレングリコール誘導体を回収した。本操作を1回繰り返して、計2回のリパルプ洗浄を実施した(工程(B))。
得られたポリエチレングリコール誘導体に酢酸エチル:222gを加えて40°Cで溶解した後にヘキサン:92.5 gを添加して再沈殿を行った(工程(C))。15°Cで15分間撹拌したのちにろ過を行い、ろ過後のケーキの任意の3か所からサンプリングを行い、β-Ala-diNHS含量を測定した。
【0109】
(比較例2)
前記反応は実施例1と同スケール、同じ方法で実施した。反応、ろ過後のろ液に酢酸エチル:74gを添加し、温度を15°Cに調整後、ヘキサン:130g添加して再沈殿を行った。ろ過にて粗ポリエチレングリコール誘導体を回収した(工程(A))。
粗ポリエチレングリコール誘導体に対して、予め調製した混合有機溶剤(酢酸エチル:133g/ヘキサン:55.5g)を添加して15℃に調温、45分撹拌し、リパルプ洗浄を行った。撹拌後の溶液をろ過し、ポリエチレングリコール誘導体を回収後、本操作を3回実施した(工程(B))。工程(C)は実施しなかった。
ろ過後のケーキの任意の3か所からサンプリングを行い、β-Ala-diNHS含量を測定した。
実施例10、比較例2の結果を表2に示す。
【0110】
【表2】
【0111】
表2より、実施例10では、SD値が1であったのに対し、比較例2では26と高い値を示した。この結果より、工程(B)のリパルプ洗浄だけでは均一性が得られず、均一なポリエチレングリコール誘導体を得るためには、工程(C)が必要であることが示された。
【0112】
(比較例3)
以下の比較例3では工程時間短縮の効果を確認するために、全てリパルプ洗浄を再沈殿に置き換え製造し、比較した。
前記反応は、実施例2と同スケール、同じ方法で実施した。反応、ろ過後のろ液に酢酸エチル:11.0kgを加えて希釈した。これにヘキサン:16.5kgを添加して再沈殿を行った。25°Cで15分間撹拌したのちにろ過を行い、粗ポリエチレングリコール誘導体を回収した(工程(A))。
得られた粗ポリエチレングリコール誘導体を酢酸エチル:38.5kgで溶解し、36°Cに調温後、ヘキサン:16.5kg添加して再沈殿し、22°Cで30分間撹拌した後に濾過してポリエチレングリコール誘導体を回収した。本操作を4回繰り返し、計5回の再沈殿を実施したあと、得られたポリエチレングリコール誘導体に酢酸エチル:38.5kgを加えて40°Cで溶解した後に、ヘキサン:16.5kgを添加して再沈殿を行った。25°Cで30分間撹拌したのちにろ過を行い、ポリエチレングリコール誘導体を回収した。得られたポリエチレングリコール誘導体をヘキサン:22.0kgで洗浄した後、真空にて乾燥を行い、目的物を得た。
総工程時間は73時間11分だった。
実施例2、比較例3の結果より、再沈殿をリパルプ洗浄に変更することで工程時間を短縮できることが示された。
【0113】
【表3】
【0114】
(比較例4)
比較例4では、実施例1と同じ条件で、リパルプ洗浄の条件をY×T=31.5として精製が可能か比較検討を行った。
具体的には、実施例1において、リパルプ洗浄時に、酢酸エチル:170g/ヘキサン:18.9g(Y=0.9)の混合溶剤を用い、35℃に調温し(T=35)、45分撹拌し、リパルプ洗浄を行った。ろ過を行い、残渣であるポリエチレングリコール誘導体を回収後、ろ液を濃縮したところ、ろ液からポリエチレングリコール誘導体が4.4g(全重量の12%)回収された。
比較例4の結果より、リパルプ洗浄のY×Tが上限を超えると、ポリエチレングリコール誘導体が混合溶剤に溶解してしまうことが示された。
【0115】
(比較例5)
実施例1と同じ条件で、リパルプ洗浄の条件をY×T=0.1として精製が可能か比較検討を行った。
すなわち、前記反応は実施例1と同スケール、同じ方法で実施した。反応、ろ過後のろ液に酢酸エチル:74gを加えて希釈した。これにヘキサン:130gを添加して再沈殿を行った。15°Cで15分間撹拌したのちにろ過を行い、粗ポリエチレングリコール誘導体を回収した(工程(A))。
得られた粗ポリエチレングリコール誘導体に、予め調製しておいた混合有機溶剤(酢酸エチル:18.9g/ヘキサン:170g (Y=0.1))を添加して1°C(T=1)で45分間撹拌してリパルプ洗浄を行った後に濾過し、ポリエチレングリコール誘導体を回収した。本操作を6回繰り返して、計7回のリパルプ洗浄を実施した(工程(B))。
次いで、得られたポリエチレングリコール誘導体に酢酸エチル:222gを加えて40°Cで溶解した後に、ヘキサン:92.5gを添加して再沈殿を行った。15°Cで15分間撹拌したのちにろ過を行い、ポリエチレングリコール誘導体を回収した(工程(C)か。得られたポリエチレングリコール誘導体をヘキサン:148 gで洗浄した後、真空にて乾燥を行い、目的物を得た。
比較例5の結果より、リパルプ洗浄のY×Tが下限を下回ると不純物の除去効率が低下することが示された。
【0116】
【表4】
【0117】
比較例4、比較例5の結果より、リパルプ洗浄には適切なY×Tの範囲が必要であることが示された。
【0118】
【表5】