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特開2023-138461創傷治癒に使用するための線維芽細胞の治療的使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138461
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】創傷治癒に使用するための線維芽細胞の治療的使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/33 20150101AFI20230922BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230922BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20230922BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230922BHJP
   A61K 35/36 20150101ALI20230922BHJP
   A61K 35/44 20150101ALI20230922BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230922BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
A61K35/33
A61P17/02
A61K35/15
A61K35/17
A61K35/36
A61K35/44
A61K45/00
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】29
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023041455
(22)【出願日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】63/320,388
(32)【優先日】2022-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/379,220
(32)【優先日】2022-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/383,498
(32)【優先日】2022-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】523096528
【氏名又は名称】フィブロバイオロジクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FIBROBIOLOGICS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピート オヒーロン
(72)【発明者】
【氏名】ハーミド ホージャ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084AA22
4C084MA02
4C084MA13
4C084MA31
4C084MA52
4C084MA63
4C084MA65
4C084MA66
4C084MA70
4C084NA14
4C084ZA89
4C084ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB33
4C087BB37
4C087BB47
4C087BB48
4C087BB63
4C087MA02
4C087MA13
4C087MA31
4C087MA52
4C087MA63
4C087MA65
4C087MA66
4C087MA70
4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZC75
(57)【要約】
【課題】本開示は、創傷ケアのための、活性化もしくは不活性化された線維芽細胞、または線維芽細胞由来の材料、例えば線維芽細胞からのエクソソームの使用に関する。
【解決手段】
本方法及び組成物は、創傷治癒の開始及び/又は維持のためを含む、組織分化、細胞動員、局所幹細胞の分化、及びケラチノサイト、血管上皮細胞、筋線維芽細胞、及び/又は真皮線維芽細胞などの局所細胞の拡大の目的のために有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における1つまたは複数の創傷を処置する方法であって、線維芽細胞及び/又は線維芽細胞由来生成物を含む組成物の治療有効量を個体に投与するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記線維芽細胞由来生成物が、細胞外小胞、エクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体、及び/又は線維芽細胞の断片もしくは生物学的構成要素を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
免疫細胞、ケラチノサイト、血管上皮細胞及び/又はそれらに由来する物質の1つまたは複数の治療上有効量を個体に投与することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記線維芽細胞が筋線維芽細胞である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記線維芽細胞が、個体に関して自己、同種、または異種である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞が活性化され、操作され、及び/又は触媒される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
機械的手段への曝露、及び/又は生物学的もしくは遺伝学的剤の使用により、細胞が活性化され、操作され、及び/又は触媒化される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記機械的手段が、光、レーザー、圧力、及び/又はストレスを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
サイトカイン、ケモカイン、成長因子、化学物質、RNA、マイクロRNA、RNAi、DNA、ウイルス核酸、及び/又はエクソソームへの曝露により細胞が活性化される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記投与が、創傷内に、創傷に隣接するように、及び/又は創傷の表面上になされる、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
個体への投与が全身投与である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
個体に1つまたは複数のアジュバントを投与することをさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記アジュバントが、化学的、機械的、ウイルス的、遺伝子改変成分、または細菌産物ベースである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
個体が、糖尿病、癌を有するか、または免疫学的に不全である、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記創傷が慢性的である、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記創傷が、切り傷、擦り傷、床ずれ、火傷、または個体がこれらのうちの1つ以上を有する、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
投与が1回行われる、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
投与が1回より多く行われる、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
投与が毎日、1日2回、1日3回、または1日4回行われる、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記個体に1つ以上の抗生物質を投与する、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
1つまたは複数の抗生物質が全身投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
1つまたは複数の抗生物質が局所的に投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
線維芽細胞及び/又は線維芽細胞由来生成物を含む組成物を創傷にまたは創傷で投与した後、創傷の少なくとも一部を覆うカバーを設置する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記カバーが、線維芽細胞及び/又は線維芽細胞由来製品が創傷から離れるのを防ぐために、創傷の少なくとも一部を覆うバリアとして機能する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
カバーが材料の保護片を含む、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記カバーが包帯である、請求項23~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記包帯が液体包帯または固体包帯である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
個体における1つまたは複数の創傷の治癒を促進する方法であって、線維芽細胞及び/又は線維芽細胞由来生成物を含む治療上有効な量の組成物を個体に投与する工程を含む、方法。
【請求項29】
前記線維芽細胞由来生成物が、細胞外小胞、エクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体、及び/又は線維芽細胞の断片もしくは生物学的構成要素を含む、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年3月16日に出願された米国仮特許出願第63/320,388、2022年10月12日に出願された米国仮特許出願シリアル番号63/379,220、及び2022年11月13日に出願された米国仮特許出願シリアル番号63/383,498に対する優先権を主張し、これらのすべてが参照によりその全体を本明細書に援用により組み込まれるものとする。
【0002】
本開示の実施形態は、少なくとも細胞生物学、分子生物学、免疫学、及び医学の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
線維芽細胞は、もはや臓器の単なる構造的な構成要素ではなく、免疫系や創傷治癒に関与する複数のシステムの複雑な相互作用のような、複数のシステムの動的な参加者として考えられている。
【0004】
皮膚は、体重の約15%を占める人体最大の臓器であり、物理的、化学的、微生物的な外的影響からの保護、温度と電解質バランスの維持、構造タンパク質、脂質、糖鎖、シグナル伝達分子の合成と代謝のための生体工場としての役割、さらには免疫、神経、内分泌システムの不可欠な構成要素として、複数の複雑な機能を果たしている[1]。このように、皮膚への傷害と皮膚の修復過程は、複数のシステムと細胞タイプが関与する、よく調整されたプロセスである。創傷治癒は、傷害部位に限定された止血、炎症、増殖、上皮化、及びリモデリグの複雑な編成プロセスに従う[2]。
【0005】
傷の治療は、医療制度に大きな負担を与え、治らない傷の犠牲者の生活の質を破壊する。慢性創傷を含む治癒困難な創傷は、治療が持続し、時間がかかり、コストがかかる。さらに、病気(糖尿病や癌など)、切り傷、擦り傷、床ずれ、火傷による皮膚の傷は、患者の身体的、感情的、心理的な健全性に永続的な影響を与えることがある。皮膚に生じた傷の中には正常かつ迅速に治癒するものもあるが、年齢、健康状態、特定の病気などの基礎的な健康面は、複雑に編成された創傷治癒プロセスに悪影響を及ぼし、それによって適切に治癒するために外部からの介入を必要とすることがある。
【発明の概要】
【0006】
本開示の実施形態は、活性化又は不活性化された線維芽細胞、及び/又は線維芽細胞由来材料(線維芽細胞;線維芽細胞様細胞;及び/又はエクソソーム、小胞、アポトーシス体、又はそれらの組み合わせを含む細胞外小胞、又は線維芽細胞の他の任意の断片又は生物学的成分を含む)を、ケラチノサイト及び/又は上皮細胞などの他のタイプの細胞と共に又は細胞を伴わず、創傷上に又は創傷内に導入するための組成物、方法及びシステムを包含する。細胞及び/又は細胞由来生成物(エクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体又は線維芽細胞の任意の他のフラグメント若しくは生物学的成分を含む細胞及び/又は細胞外小胞を含む)は、少なくともスプレー、ゲル、懸濁物として、機械的適用によって、デバイス上で、ゲルマトリクス内で、合成又は有機ポリマーマトリクス内に含まれて、いくつかの実施形態において1種又は複数の細胞タイプから成るものを含む、3D培養細胞、及び/又は3Dプリントされたマトリクスとして、任意の適切な形態において創傷部位に用いることができる。 場合によっては、1つまたは複数の成長因子、1つまたは複数のサイトカイン、1つまたは複数のケモカイン、及び/又は1つまたは複数の活性化因子などの1つまたは複数の追加剤が、創傷部位に、創傷部位の周りに、及び/又は周辺組織内または内部に投与され得る。そのような場合、追加の剤(複数可)は、活性化または不活性化された線維芽細胞、及び/又は線維芽細胞由来物質(線維芽細胞;線維芽細胞様細胞;及び/又はエクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体、線維芽細胞溶解物、またはそれらの組み合わせを含む細胞外小胞、または線維芽細胞の他の断片もしくは生物学的構成要素)と同じ処方または同じ様式で傷部位(複数可)に提供されてもされなくてもよい。
【0007】
特定の実施形態において、本開示は、第1のタイプの細胞又は細胞誘導体(線維芽細胞;線維芽細胞様細胞;及び/又はエクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体、線維芽細胞溶解物、又は線維芽細胞の任意の他のフラグメント若しくは生物学的成分を含む細胞外小胞)と、第2のタイプの細胞及び/又は特定の剤(複数可)との相互作用に関する又はそれを包括し、その相互作用の結果としての第1のタイプ及び/又は第2のタイプの細胞の改変(複数可)を含んでいる。加えて、特定の実施形態において、本開示は、線維芽細胞(線維芽細胞;線維芽細胞様細胞;及び/又はエクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体または線維芽細胞の任意の他のフラグメントもしくは生物学的成分を含む細胞外小胞)が、核酸、サイトカイン、ケモカイン及び/又は成長因子などの特定の細胞及び/又は特定の剤(複数可)の一方もしくは組み合わせへの曝露によりに改変されている組成物、方法、及び系を含む。特定の実施形態では、これらの改変または非改変の線維芽細胞(線維芽細胞;線維芽細胞様細胞、及び/又はエクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体または線維芽細胞の他の断片もしくは生物学的成分を含む細胞外小胞)を創傷及び場合によっては周辺組織上に及び/又は創傷に導入することにより、増殖、上皮化、及び他の生物学的プロセスの誘引というプロセスを開始し、治癒及びリモデリングに必要な治癒に寄与させ得る。例えば、筋線維芽細胞、血管上皮細胞、ヒト真皮線維芽細胞を含む必要な機能的細胞を再生すること、及び/又はコラーゲンI~XIV、フィブリン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、エラスチン、ヒアルロナン、コンドロイチン硫酸、デコリン、バーシカン、SPARC、及び/又はテナシン[3]などの細胞外基質材料の再生により、再生する。
【0008】
特定の実施形態において、創傷部位におけるこれらの細胞及び細胞成分の再生は、以下のような1つ又は複数のいくつかの可能なステップを経て行われるかのいずれかであり得る。
【0009】
(1)改変又は非改変の線維芽細胞(線維芽細胞;線維芽細胞様細胞;及び/又はエキソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体又は線維芽細胞の任意の他の断片又は生物学的成分を含む細胞外小胞)を創傷部位に注入すること[4]又は創傷及び周辺組織に局所的に適用する。
【0010】
(2)線維芽細胞(線維芽細胞;線維芽細胞様細胞;及び/又はエクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体若しくは線維芽細胞の任意の他の断片又は生物学的成分を含む細胞外小胞を含む)によって、好中球、マクロファージ及び血小板を創傷に勧誘すること[5]。
【0011】
(3)改変または非改変の線維芽細胞[6](線維芽細胞;線維芽細胞様細胞;及び/又はエクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体または線維芽細胞の任意の他のフラグメントもしくは生物学的成分を含む細胞外小胞)との細胞間(パラクリン)接触を通じて、患者の老化したヒト皮膚線維芽細胞(線維芽細胞;線維芽細胞様細胞;及び/又はエクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体または線維芽細胞の任意の他のフラグメントもしくは生物学的成分を含む細胞外小胞)、ケラチノサイト、血管上皮細胞または筋線維芽細胞を活性化すること。
【0012】
(4)導入した改変/非改変線維芽細胞又は改変/非改変線維芽細胞の排泄産物の直接/間接作用によって、局所幹細胞、ヒト真皮線維芽細胞(線維芽細胞を含む;線維芽細胞様細胞。及び/又はエクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス小体又は線維芽細胞の他の断片又は生物学的成分を含む細胞外小胞)、ケラチノサイト、血管上皮細胞及び/又は筋線維芽細胞を分化させること。
【0013】
(5)傷ついた皮膚に残存する内因性ヒト真皮線維芽細胞(線維芽細胞;線維芽細胞様細胞;及び/又は線維芽細胞のエクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体又は他の断片若しくは生物学的成分を含む細胞外小胞、並びに老化した個人自身の線維芽細胞を含む)、角質細胞、血管上皮細胞又は筋線維芽細胞を拡張して傷治癒工程に移行させること。
【0014】
(6)導入された線維芽細胞及び/又は線維芽細胞分泌物質の直接的及び/又は間接的相互作用による血管新生を開始すること[7]。
【0015】
(7)導入された線維芽細胞及び/又は導入された線維芽細胞によって排泄された物質の直接的及び/又は間接的な作用により、幹細胞及び治癒プロセスに有用な他のあらゆる細胞を損傷部位にリクルートすること[8]。
【0016】
特定の実施形態において、本開示は、線維芽細胞(線維芽細胞;線維芽細胞様細胞;及び/又は線維芽細胞のエクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体又は任意の他のフラグメント若しくは生物学的成分を含む細胞外小胞)及び/又は線維芽細胞から排泄される又は線維芽細胞内に含まれる特定の剤への曝露により特定の細胞が改変される組成物、方法及びシステムに関する。特定の実施形態では、線維芽細胞(線維芽細胞;線維芽細胞様細胞;及び/又はエクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体または線維芽細胞の任意の他のフラグメントもしくは生物学的成分を含む細胞外小胞)と1つまたは複数の他のタイプの細胞(及び任意でその相互作用はまた1つまたは複数の特定の剤を含む)の相互作用は、線維芽細胞の改変及び/又は創傷治癒に関与する他のタイプの細胞の改変をもたらす。特定の実施形態において、他のタイプの細胞は、少なくともリクルートされた免疫細胞(例えば、樹状細胞、好中球、単球、マクロファージ、NK細胞、T細胞、マスト細胞、及びsin常駐型T細胞)及び局所幹細胞[8]を含む。
【0017】
特定の実施形態において、生きた単細胞懸濁液、生きた多細胞懸濁液、生きた3Dスフェロイド線維芽細胞、不活性化線維芽細胞、死んだ線維芽細胞、及び/又は線維芽細胞由来の材料を創傷に導入することにより、創傷修復を刺激するために、線維芽細胞及び創傷及び/又は周辺組織に見られる他の細胞が改変される。特定の局面において、線維芽細胞及び/又は線維芽細胞由来の剤、またはそれから生成される剤(線維芽細胞;線維芽細胞様細胞;及び/又はエクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体または線維芽細胞の任意の他のフラグメントもしくは生物学的成分を含む細胞外小胞)の事前または現在の暴露は、傷害部位に存在する1種類以上の細胞への改変をもたらす。具体的な実施形態では、1つまたは複数の剤も曝露に含まれ、環境及び/又は細胞及び/又は組織に内因性である他の場合のように、外因的に提供されてもされなくてもよい。
【0018】
特定の実施形態において、本開示の方法は、培養物中などのエクスビボで起こり、例えば、創傷上に適用する前に、線維芽細胞、または治療における他の細胞をエクスビボで活性化/不活性化する。特定の態様において、本方法は、人の手によって生じ、身体における通常のまたはランダムな発生を包含しない。本開示の方法は、特定の態様において、非自然的である。特定の実施形態において、1種類の細胞を別の種類の細胞に曝露する方法において使用される細胞又は細胞由来材料(線維芽細胞;線維芽細胞-由来溶解物;線維芽細胞様細胞;及び/又はエキソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体又は線維芽細胞の任意の他の断片若しくは生物学的成分を含む細胞外小胞)の濃度は自然界で発生せず、自然界でランダムに発生することはない。
【0019】
糖尿病患者における代謝及び免疫不全のための自然な暴露の欠如は、それらの慢性創傷の治癒しない又は治癒し難いことに対する一つの説明となり得る。 特定の実施形態では、1つ以上の剤を1つ以上のタイプの細胞に曝露する方法において使用される1つ以上の剤の濃度は、自然界では発生せず、自然界でランダムに発生することはない。エクスビボまたはインビトロで起こる本開示に包含される任意のタイプの細胞の改変は、同じ方法でインビボで自然に起こることはない。そのような実施形態では、ドナーからの組織生検が、創傷修復の目的のために、細胞の1つ又は組み合わせを単離し、特徴付け、必要に応じて活性化し、拡張し、ドナーに再導入するために使用される。
【0020】
本開示は、上皮細胞、好中球、マクロファージ、ケラチノサイト、血管上皮細胞、線維芽細胞(筋線維芽細胞を含む)、及びそれらの混合物を含む細胞の治療用途を包含する。少なくともいくつかの場合において、線維芽細胞または線維芽細胞由来材料(線維芽細胞;線維芽細胞様細胞;及び/又はエキソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体または線維芽細胞の他の断片もしくは生物学的成分を含む細胞外小胞を含む)は、化学的、遺伝的、ウイルス的、物理的、機械的、エピジェネティック活性化、及び/又は通常体内で見られない条件への暴露などの創傷部位に曝露する前に改変される。他の場合、好中球、マクロファージ、ケラチノサイト、血管上皮細胞、筋線維芽細胞、またはそれらの誘導体は、線維芽細胞への曝露前に、活性化されるなどの改変が施されている。
【0021】
本開示の実施形態は、培養条件の改変を通じて、同種、自家(又は異種又は同種)治療細胞として線維芽細胞を利用する手段を提供する。本開示の一実施形態では、線維芽細胞(線維芽細胞;線維芽細胞様細胞;及び/又はエキソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体または線維芽細胞の任意の他のフラグメントもしくは生物学的成分を含む細胞外小胞)は、免疫原性が低い供給源(例えば、胎盤線維芽細胞、大網組織由来の線維芽細胞、臍帯血由来の線維芽細胞など)から抽出する。本開示の一実施形態では、線維芽細胞(線維芽細胞;線維芽細胞様細胞;及び/又はエクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体または線維芽細胞の任意の他のフラグメントもしくは生物学的成分を含む細胞外小胞)は、皮膚または線維芽細胞に由来する生体治癒プロセスが効力を示す身体の任意の他の領域から抽出される。
【0022】
本開示の一実施形態では、線維芽細胞(線維芽細胞;線維芽細胞様細胞;線維芽細胞由来の溶解物;及び/又はエクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体または線維芽細胞の任意の他の断片もしくは生物学的成分を含む細胞外小胞)を、線維芽細胞の生存能力及び増殖能力を維持するためにインビトロ培養する。本開示は、レシピエントの免疫系による線維芽細胞の認識を減少させるための、既知の培養技術の改変を提供する。一実施形態では、線維芽細胞(線維芽細胞;線維芽細胞様細胞;及び/又はエキソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体または線維芽細胞の任意の他の断片もしくは生物学的成分を含む細胞外小胞を含む)は、異種成分を含まない培地などの異種成分を含まない条件において培養する。いくつかの態様において、例えば、培地は、子牛胎児血清を含まない。特定の実施形態において、本開示は、胎児子牛血清の1つまたは複数の他の剤での置換を包含し、ここで、そのような剤とは、例えば、線維芽細胞の免疫原性の低下を促進するもの(例えば、ヒト血小板豊富血漿、血小板溶解物、臍帯血血清、自己血清、及び/又は線維芽細胞増殖因子、上皮増殖因子、白血病抑制因子、インスリン様増殖因子、アンギオポエチン、及び血管内皮増殖因子の1つまたは組み合わせなどの1つまたは複数の規定サイトカイン)である。
【0023】
本開示の一実施形態では、本開示によって包含される方法で調製される有効量の線維芽細胞(線維芽細胞;線維芽細胞様細胞;及び/又はエクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体または線維芽細胞の任意の他の断片もしくは生物学的構成要素を含む細胞外小胞)が、1以上の病状の治療または予防のために個体に投与される。特定の実施形態において、線維芽細胞及び/又は線維芽細胞由来材料は、創傷修復、増殖、細胞分化、及び組織リモデリングを改善するために投与される。
【0024】
本開示の実施形態は、ユニバーサルドナー線維芽細胞または自己改変された線維芽細胞を、創傷修復プロセスを刺激し維持する1つまたは複数の剤と共投与する方法を提供する。本開示の特定の実施形態では、ユニバーサルドナー線維芽細胞及び/又は線維芽細胞由来材料を、成長因子、ケモカイン、サイトカイン、及び/又は成長因子の1つまたは組み合わせと共投与するための方法が提供される。本開示の一実施形態では、免疫原性を低減する条件下で処理された線維芽細胞由来のユニバーサルドナー線維芽細胞が利用され、導入された改変/未改変線維芽細胞又は内因性細胞によるEGF、FGF-2、TGF-β、PDGF、VEGF、IL-1、IL-6又はTNF-αなどの創傷治癒に必要な線維芽細胞成長因子を刺激し、それによって組織の再生及び創傷の治癒へと導かれる[10]。
【0025】
本開示の実施形態は、特定のタイプの線維芽細胞の免疫原性を低下させる方法を提供する。線維芽細胞は、皮膚、心臓、血管、骨髄、骨格筋、肝臓、膵臓、脳、包皮を含むがこれらに限定されない様々な組織または器官に由来し、生検(適切な場合)または剖検時に入手することができる。いくつかの態様において、細胞は線維芽細胞を含み、これは胎児、新生児、成人由来、またはそれらの組み合わせから由来し得る。
【0026】
本開示の任意の方法において使用するための線維芽細胞は、特定の実施形態において、特定の培地成分(複数可)に曝露され得る。
【0027】
以上、本発明の特徴及び技術的な利点をやや大まかに概説したが、これは、後に続く本発明の詳細な説明をよりよく理解できるようにするためである。以下、本発明の追加の特徴及び利点について説明するが、これらは本発明の特許請求の範囲の主題を形成するものである。開示された構想及び特定の実施形態は、本発明の同じ目的を遂行するための他の構造を修正または設計するための基礎として容易に利用され得ることが、当業者には理解され得るはずである。また、そのような同等の構造は、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の精神及び範囲から逸脱しないことも、当業者には理解されるはずである。本発明の特徴であると考えられる新規な特徴は、その組織及び操作方法の両方に関して、さらなる目的及び利点とともに、添付の図と関連して考慮されるとき、以下の説明からよりよく理解されるであろう。しかしながら、各図は、例示及び説明の目的のみのために提供され、本発明の限界の定義として意図されていないことが、明示的に理解されるであろう。
【0028】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本発明の精神及び範囲内での様々な変更及び修正は、この詳細な説明から当業者に明らかになるので、本発明の特定の実施形態を示しながら、詳細な説明及び特定の実施例は、例示のためにのみ与えられることを理解されたい。
【0029】
以下の図面は、本明細書の一部を構成し、本開示の特定の態様をさらに示すために含まれる。本開示は、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面の1つまたは複数を参照することによって、よりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1A図1Aは、ヒトメタボリックシンドローム及び肥満誘発型2型糖尿病のマウスモデルの食事成分を示す図である。
【0031】
図1B図1Bは、所望のベースライン血中グルコースレベルの経時的な達成を示す。
【0032】
図2図2は、創傷処置のレジメの一例を示す。
【0033】
図3図3は、対照マトリゲルを局所的に提供された線維芽細胞(FB)と比較した場合(対照バーがFBバーの左側にある上部画像);対照マトリゲルをFB由来のエクソソームと比較した場合(対照バーがFBバーの左にある下部左画像);及び対照マトリゲルを皮下的に提供されたFBと比較した場合(対照バーがFBバーの左側にある下部右画像)の日々の創傷閉鎖進行示している。
【0034】
図4図4は、コントロールマトリゲル(上線)と皮下に提供された線維芽細胞(上から2番目の線)、線維芽細胞エキソソーム(上から3番目の線)、及び局所的に提供された線維芽細胞(下線)とを比較した創傷閉鎖の進行度を示す。)
【0035】
図5図5は、創傷治癒及び閉鎖の代表的な画像を示す。
【0036】
図6図6は、線維芽細胞エキソソーム及び線維芽細胞溶解物に対する凍結/解凍保存の効果を調べるための実験設計の一例を示す図である。
【0037】
図7図7は、凍結/解凍された線維芽細胞エキソソーム及び線維芽細胞溶解物の影響を実証するものである。
【0038】
図8図8は、日毎の創傷閉鎖進行:凍結/解凍実施形態を示す。
【0039】
図9図9は、線維芽細胞及び線維芽細胞由来エキソソームを用いた創傷閉鎖を示す図である。
【0040】
図10図10は、細胞生存率に関する創傷被覆製品の試験、特にマウス皮膚線維芽細胞に対する3M Nexcare(登録商標)及びElaSkin(登録商標)の試験の一例を示す図である。
【0041】
図11図11は、対照の未処理細胞と比較した、成長及び細胞サイズの影響を示す。
【0042】
図12図12は、3M Nexcare(登録商標)で覆われた創傷治癒に対する線維芽細胞スフェロイドの効果を調べるための試験設計の一例を示す。
【0043】
図13図13は、3M Nexcare(登録商標)創傷カバーで試験した線維芽細胞スフェロイドを示す。左の画像では、Spheroids + 3M Nexcare(登録商標)の線が一番下の線である。右の画像では、Spheroids+ 3M Nexcare(登録商標)バーは、3M Nexcare(登録商標)コントロールバーの左側である。
【0044】
図14図14は、3M Nexcare(登録商標)で覆われたスフェロイドによる創傷治癒の代表的な画像を提供する。
【0045】
図15図15は、野生型マウスの創傷治癒に対する線維芽細胞スフェロイド及び溶解物の効果を調べるための研究設計の一例を示す。
【0046】
図16図16は、野生型マウスに対する3M Nexcare(登録商標)を用いたスフェロイド及び溶解物の効果を示すものである。左上の画像では、スフェロイド+3M Nexcare(登録商標)が下のラインである。左下の画像では、スフェロイド+3Mネクスケア(登録商標)のバーが3Mネクスケア(登録商標)のバーの右側である。右上の画像では、FB Lysate + 3M Nexcare(登録商標)のラインは3M Nexcare(登録商標)のラインより下にある。右下の画像では、FB由来溶解物+3M Nexcare(登録商標)バーは、対照3M Nexcare(登録商標)バーの右側にある。
【0047】
図17図17は、野生型マウスにおける3M Nexcare(登録商標)カバー付き繊維芽細胞スフェロイドと3M Nexcare(登録商標)カバーのみの画像を提供する。
【0048】
図18図18は、3M Nexcare(登録商標)カバーを有する野生型マウスの創傷閉鎖に対する線維芽細胞溶解物の効果を示す代表的な画像を提供する。
【0049】
図19図19は、Grafix(登録商標)と比較して、マウス線維芽細胞スフェロイド、ヒト線維芽細胞スフェロイド+3M Nexcare(登録商標)による1回処理の効果を調べるための研究デザインの一例を提供する。
【0050】
図20図20は、糖尿病マウスにおけるGrafix(登録商標)と比較したマウス及びヒト線維芽細胞スフェロイドの創傷治癒進行の比較を提供する図である。
【0051】
図21図21は、Grafix(登録商標)と比較した線維芽細胞スフェロイドを用いた創傷閉鎖の代表的な画像を提供する。
【0052】
図22図22は、創傷表面における線維芽細胞スフェロイドの移植、移動、及び増殖の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
I.定義例
本出願を通じて、用語「約」は、値が測定又は定量方法についての誤差の固有の変動を含むことを示すために使用される。
用語”comprising”と組み合わせて使用する場合の単語”a”又は”an”の使用は、「1つ」を意味することがあるが、それは、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、及び「1つ以上」の意味と一致している。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「約」または「およそ」は、基準量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量、または長さに対して30、25、20、25、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1%と同じだけ変化する量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量、または長さを指す。特定の実施形態では、数値に先行する場合の用語「約」または「約」は、15%、10%、5%、または1%の範囲にプラスまたはマイナスした値を示す。生物学的システムまたはプロセスに関して、この用語は、値の1桁以内、例えば5倍以内、及び例えば2倍以内を意味し得る。特に断らない限り、用語「約」は、特定の値について許容できる誤差範囲内を意味する。
【0055】
本明細書で使用されるように、用語「または」及び「及び/又は」は、互いに組み合わせて、または排他的に複数の構成要素を記述するために利用される。例えば、「x、y、及び/又はz」は、x単独、y単独、z単独、「x、y、及びz」、「(x及びy)またはz」、「xまたは(y及びz)」、または「xまたはyまたはz」を指し得る。x、y、またはzが、実施形態から具体的に除外され得ることが特に企図される。
【0056】
本出願を通じて、用語「約」は、値を決定するために採用される装置または方法についての誤差の標準偏差を値が含むことを示すために、細胞及び分子生物学の領域におけるその平易かつ通常の意味に従って使用されている。
【0057】
用語「含んでいる」(含有する;comprising)(及び「comprises」及び「comprises」のようなcomprisingの任意の形式)、「有する」(having)(及び「have」及び「has」のようなhavingの任意の形式)、「含んでいる」(含有する;including)(及び「includes」及び「include」のようなincludingの任意の形式)又は「含んでいる」(含有する;containing)(及び「containing」及び「contain」のようなcontainingの任意の形式の単語)とは包括又は開放性で、追加の、言及されていない要素又は方法手順を除外しない。
【0058】
「含有する」、「包含する」または「によって特徴付けられる」と同義である用語「含む」は、包括的またはオープンエンドであり、追加の、言及されていない要素または方法ステップを除外するものでない。「からなる」という表現は、特定されていない要素、ステップ、または成分を除外する。「本質的にからなる」という表現は、記載された主題の範囲を、指定された材料またはステップ、及びその基本的かつ新規な特性に重大な影響を与えないものに限定するものである。用語「含む」の文脈で説明される実施形態は、用語「からなる」または「本質的にからなる」の文脈でも実施され得ることが企図される。
【0059】
長年の特許法の慣例に従い、請求項を含む本明細書中でcomprisingという言葉と協調して使用される場合、”a”及び”an”という言葉は、1つまたは複数を表わす。本開示のいくつかの実施形態は、本開示の1つまたは複数の要素、方法ステップ、及び/又は方法からなる、または本質的になることがある。本明細書に記載される任意の方法または組成物が、本明細書に記載される任意の他の方法または組成物に関して実施され得、異なる実施形態が組み合わされ得ることが企図される。
【0060】
本明細書全体を通して、文脈が他に要求しない限り、「含む」、「包含する」、及び「含有する」という語は、明記されたステップもしくは要素またはステップもしくは要素のグループを含むことを意味するが、他のステップもしくは要素またはステップもしくは要素のグループを除外することを意味しないと理解されるであろう。「からなる」は、フレーズ「からなる」の後に続くものを含むこと、及びそれに限定することを意味する。従って、「からなる」という表現は、記載された要素が必須又は必須であり、他の要素が存在しない可能性があることを示す。「本質的にからなる」とは、フレーズの後に列挙されたあらゆる要素を含むことを意味し、列挙された要素について開示で指定された活性または作用に干渉しないか寄与しない場合のみ他の要素を含むと限定される。したがって、「本質的にからなる」という表現は、列挙された要素が必要又は必須であるが、他の要素は任意であり、列挙された要素の活性または作用に影響を及ぼすか否かに応じて存在してもしなくてもよいことを示す。
【0061】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「ある実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「ある実施形態」、「追加の実施形態」、または「さらなる実施形態」またはそれらの組み合わせへの言及は、実施形態と関連して説明される特定の特徴、構造または特性が本発明の少なくとも一実施形態に含まれることを意味している。したがって、本明細書中の様々な場所での前述のフレーズの出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではない。 さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0062】
本明細書で使用する場合、「活性化線維芽細胞」という用語は、線維芽細胞における1つ以上の変化(代謝、免疫、エピジェネティック、成長因子分泌、表面マーカー発現、及びマイクロベシクルの生成及び排泄)を誘導することができる1つ以上の刺激又は剤(複数可)で処理した任意の種類の線維芽細胞のことを指す。剤の例としては、少なくともADP、CXCL4、PDGF、TGFβ、IL-1、TNFα、ROS、NO、AMP、IL-17、IL22、dsRNA 1.25D3、IL-8、CXCL1-8、Activin A、β-defensins、cathelicidin、E-selectin、P-selectin、KGF、VEGF、IGF、IL-10、IL-4及びIL-13が挙げられる。
【0063】
本明細書で使用する場合、「活性化免疫細胞」という用語は、代謝、免疫学的、エピジェネティック、成長因子分泌、表面マーカー発現、及びマイクロベシクルの生成及び排泄という細胞内の1以上の変化を誘導できる1以上の刺激又は剤(複数可)で処理した免疫細胞のことをいう。剤の例としては、少なくともADP、CXCL4、PDGF、TGFβ、IL-1、TNFα、ROS、NO、AMP、IL-17、IL22、dsRNA 1.25D3、IL-8、CXCL1-8、Activin A、β-defensins、cathelicidin、E-selectin、P-selectin、KGF、VEGF、IGF、IL-10、IL-4、及びIL-13が挙げられる。
【0064】
本明細書で使用される「投与される」又は「投与する」という用語は、組成物が患者に対してその意図する効果を有するように、組成物を個体に提供する任意の方法を指す。例えば、投与する1つの方法は、カテーテル、アプリケーターガン、注射器、ゲルマトリックス、合成ポリマー又はバイオポリマーにロードされた細胞又は細胞製品、及び1つ以上の細胞タイプ、細胞由来製品及び/又は成長因子及び/又は抗生物質などを含む3Dマトリックスなどの医療機器を使用する間接的な機構によるものであるが、これらに限定はされない。第2の例示的な投与方法は、局所組織投与、経口摂取、経皮パッチ、局所、吸入、坐薬などの直接的な機構によるものである。
【0065】
本明細書で使用される場合、「同種」は、同じ種の1つ以上の個体からではあるが、自然環境では免疫学的に不適合であるか、又は免疫学的に不適合であることが可能な、別の身体からの組織又は細胞を指す。
【0066】
本明細書で使用される場合、「自家」は、同じ個体の身体から由来または移植される組織または細胞を指す(すなわち、自家献血;自家骨髄移植)。
【0067】
本明細書で使用する場合、「剤」とは、核酸、サイトカイン、ケモカイン、転写因子、エピジェネティクス因子、成長因子、ホルモン、又は全細胞溶解物を含むそれらの組み合わせを指す。
【0068】
本明細書で使用される場合、「異種性」とは、患者とは異なる種からの組織又は細胞を指す。
【0069】
「細胞培養」とは、休止期、老化期、又は(活発に)分裂しているかに関わらず、生存可能な細胞を含む人工的なインビトロシステムをいう。細胞培養では、細胞は、適切な温度、典型的には37℃の温度で、典型的には様々な濃度の酸素及びCOを含む雰囲気下で増殖及び維持される。しかし、培養条件は細胞の種類によって大きく異なる場合があり、特定の細胞の種類に対して条件を変化させると、異なる表現型が発現することがある。培養系で最もよく変化する要因は、培養液と培養中の酸素濃度である。成長培地は、栄養素、成長因子の濃度や他の成分の有無で変化する。培地を補うために使用される成長因子は、しばしば子牛血清のような動物の血液に由来する。
【0070】
本明細書で使用する「個体」という用語は、医療施設に収容されていてもいなくてもよく、医療施設の外来患者として治療されていてもよいヒト又は動物を指す。個体は、インターネットを介して1つまたは複数の医療用組成物を受け取ることができる。個体は、ヒトまたは非ヒト動物の任意の年齢を構成することができ、したがって、成人及び少年(すなわち、子供)及び乳児の両方を含む。用語「個体」が医療処置の必要性を意味することは意図されておらず、したがって、個体は、臨床的であるか基礎科学研究の支援であるかを問わず、自発的又は非自発的に実験に参加することができる。用語「被験者」または「個体」は、互換的に使用され得、哺乳類、例えば、ヒト、実験動物(例えば、霊長類、ラット、マウス、ウサギ)、家畜(例えば、牛、羊、山羊、豚、七面鳥、及び鶏)、家庭用ペット(例えば、犬、猫、及び齧歯類)、馬、及びトランスジェニック非ヒト動物などの、方法または物質の対象となる任意の生物または動物の対象者を指す。
【0071】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「ある実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「ある実施形態」、「追加の実施形態」、または「さらなる実施形態」またはそれらの組み合わせへの言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造または特性が本開示の少なくとも一実施形態に含まれることを意味している。したがって、本明細書中の様々な場所での前述のフレーズの出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0072】
治療対象に対する未治療対象における任意の症状の発現に言及する場合の用語「低減」、「阻害」、「減衰」、「抑制」、「減少」、「予防」、及び文法的な同等物(「より低い」、「より小さい」などを含む)は、治療対象における症状の量及び/又は大きさが、医学的に訓練を受けた任意の担当者によって臨床的に関連すると認識されている任意の量だけ未治療対象においてよりも低いことを意味している。一実施形態では、処置対象における症状の量及び/又は大きさは、未処置対象における症状の量及び/又は大きさよりも少なくとも10%低い、少なくとも25%低い、少なくとも50%低い、少なくとも75%低い、及び/又は少なくとも90%低いである。
【0073】
本明細書で使用される場合、用語「移植」は、生きた組織または細胞を採取し、それを身体の別の部分または別の身体に移植するプロセスを指す。
【0074】
本明細書で使用される場合、「治療上有効な量」という用語は、創傷が重症度及び/又はサイズ(直径又は面積を含む)において改善されるように個体に提供される組成物の量である。
【0075】
「治療」、「処置」、または「処置する」は、疾患または状態の影響を低減する方法を意味する。治療はまた、症状だけでなく、疾患または状態そのものを軽減する方法を指すこともある。治療は、治療前のレベルからの任意の減少であり得、疾患、状態、または疾患もしくは状態の症状の完全な切除であり得るが、それらに限定されない。したがって、開示された方法において、「治療」は、疾患の少なくとも1つの症状の重症度の減少を含む、確立された疾患または疾患の進行の重症度の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の減少を指すことができる。例えば、細胞の免疫原性を低減するための開示された方法は、同じ対象又は対照対象において、治療前のレベルと比較した場合に細胞の免疫原性に検出可能な低減がある場合、治療であると見なされる。したがって、減少は、ネイティブ又は対照レベルと比較して、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%、又はその間の任意の量の減少であり得る。治療」は、必ずしも疾患または状態の治癒を意味するのではなく、疾患または状態の見通しの改善を意味することが理解され、ここに企図される。具体的な実施形態では、治療は、少なくとも1つの症状の重症度又は程度を軽減することを指し、代替的に又は追加的に、少なくとも1つの症状の発症を遅延させることを指す場合がある。
【0076】
具体的な実施形態において、外部に適用される線維芽細胞及び/又は線維芽細胞由来材料(線維芽細胞;線維芽細胞様細胞;線維芽細胞由来溶解物;及び/又はエクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体または線維芽細胞の他の断片もしくは生物学的成分を含む細胞外小胞を含む)を創傷に適用すると、糖尿病性潰瘍、非治癒創、外科的切開、外傷、擦り傷、皮膚障害、切り傷及び火傷を含むあらゆる種類の傷において創傷治癒プロセスを開始、維持及び加速させることができる。本明細書で使用する場合、用語「創傷」は、例えば、切り傷、打撃、または他の衝撃によって引き起こされる生体組織への傷害を包含し、典型的には、皮膚が切断または破損されるものである。特定の実施形態では、上述の状態はすべて、治癒を必要とするような傷である。
【0077】
本明細書で使用される用語「線維芽細胞由来材料」は、線維芽細胞断片、条件培地、線維芽細胞から分泌されるエクソソーム、及び/又は線維芽細胞溶解物を指し、線維芽細胞様細胞;及び/又はエクソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体又は線維芽細胞の他の断片又は生体成分を含む細胞外小胞を含む。
【0078】
「線維芽細胞様細胞」という用語は、線維芽細胞の特定の特性特徴を共有するが、特定の場所で密接に関連する細胞と同様の表面マーカー、構造的特徴、発現パターン、及びエピジェネティックプロファイルを示す細胞を指す。例えば、筋線維芽細胞、神経周囲鞘細胞、リンパ系器官樹状細胞、及びビラ線維芽細胞などである。
【0079】
本開示の実施形態は、創傷治癒を開始及び/又は維持することを含む、創傷治癒のための細胞及び/又は細胞生成物の使用を包含する。いくつかの実施形態では、創傷治癒のための使用の前、又は使用中の細胞及び/又は細胞製品は、創傷治癒における使用を強化するために、1つ以上の組成物及び/又は環境に曝される。具体的な実施形態では、創傷治癒を開始し、または維持するために、創傷への導入、創傷の上、及び/又は創傷に隣接するために含む、活性化線維芽細胞、活性化免疫細胞、活性化ケラチノサイトから線維芽細胞由来物質、活性化血管上皮細胞、活性化筋線維芽細胞またはその線維芽細胞誘導体を生成するように、細胞及び/又は細胞生成物は、インビトロ設定において暴露される。いくつかの実施形態において、使用される細胞は、活性化されていない。
【0080】
本開示の実施形態は、線維芽細胞または線維芽細胞由来材料(線維芽細胞;線維芽細胞様細胞;及び/又はエクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体または線維芽細胞の任意の他のフラグメントもしくは生物学的成分を含む細胞外小胞)の導入、1つまたは複数の剤で活性化した線維芽細胞、及び/又は線維芽細胞(筋線維芽細胞または真皮線維芽細胞を含む)プラス1種類または複数の免疫細胞、ケラチノサイト及び/又は血管上皮細胞、及び/又はこれらの誘導体を、創傷治癒を開始または維持する目的で、創傷の中、上部、ならびに隣接するところに、導入する。
【0081】
本開示の方法は、あらゆる擦過傷(粗い表面で身体が擦れたときの摩擦によって生じる傷)、剥離(フラップによって特徴付けられる)、切開(きれいな縁を有する切れ目)、裂傷(ギザギザの縁を有する切れ目)、または刺傷(何かが皮膚を通過するか皮膚に刺さる傷)に利用することができる。創傷は病原体に感染していてもいなくてもよく、感染している場合には、1種類以上の抗生物質が個体の創傷に、及び/又は全身的に使用されることがある。そのような場合、抗生物質及び本明細書に包含される組成物は、同時に投与されてもされなくてもよく、同じ組成物中であってもされなくてもよい。創傷は、米国疾病管理センターによって分類されるクラス1、2、3、又は4の創傷であってもよい。
【0082】
種々の実施形態において、線維芽細胞及び/又は線維芽細胞由来材料(線維芽細胞;線維芽細胞様細胞;及び/又はエクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体または線維芽細胞の他の断片もしくは生物学的成分を含む細胞外小胞)の導入、1つまたは複数の剤で活性化した線維芽細胞、及び/又は線維芽細胞と1つまたは複数のタイプの免疫細胞(その誘導体を含み、活性化していてもよい)を、創傷の上に、及び/又は隣接させて、部分または完全治癒をもたらす、例えば(1)組織分化;(2)創傷部位における幹細胞の細胞リクルート及び分化;(3)既に局所的に存在する角化細胞、血管上皮細胞、筋線維芽細胞、及び/又は真皮線維芽細胞の拡張;及び/又は(4)他の細胞または生体プロセスの治癒を補助するための誘引をもたらし、これらはすべて創傷治癒を開始または維持する目的で行われる。特定の実施形態では、任意の機構による創傷の治癒は、開示された方法または組成物の非存在下での創傷の治癒よりも速い速度で起こる。
【0083】
特定の実施形態では、線維芽細胞(線維芽細胞;線維芽細胞様細胞;及び/又は線維芽細胞のエクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体または任意の他のフラグメントもしくは生物学的成分を含む細胞外小胞を含む)または本明細書に包含される他の細胞は、1以上の条件及び/又は剤への曝露後に活性化するようになる。線維芽細胞を改変し得る特定の剤は、その使用前及び/又は使用中に、核酸、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、及び/又はエクソソームのうちの1つ又は複数を含む。線維芽細胞は、活性化または操作された表面マーカーを有するように、核酸を改変するように、及び/又は1つまたは複数のケモカイン、1つまたは複数のサイトカイン、エクソソーム、及び/又は1つまたは複数の成長因子の発現または排泄を有するようになど、活性化していてもよい。細胞は、1つ以上の化学剤、RNA、マイクロRNA、RNAi、DNA、ウイルス核酸、及び/又はエクソソームによって活性化され得る。具体的な実施形態では、サイトカインは、IFN-γ、TNF-α、インターロイキン(IL)-l、IL-6、IL-7、IL-8、IL-12、IL-15、IL-17、IL-33、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。具体的な実施形態では、成長因子は、FGF-l、VEGF、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。具体的な実施形態では、細胞は、ヒト血小板豊富血漿、血小板溶解物、臍帯血血清、自己血清、ヒト血清、血清代替物、またはそれらの組み合わせへの曝露後に活性化される。特定の実施形態において、細胞は、低酸素への曝露後に活性化される。低酸素は、例えば、0.1%~10%、0.l%~5%、0.l%~2.5%、又は0.l%~l%の酸素であり得る。
特定の実施形態では、低酸素は、少なくとも約30分~約3日の間である期間、またはそれ以上発生するが、場合によっては、30分未満または3日以上であってもよい。線維芽細胞は、低酸素、一酸化炭素、またはそれらの組み合わせに曝露する前および/または曝露中に、1つまたは複数の成長因子に曝露され得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、線維芽細胞または線維芽細胞由来材料(線維芽細胞;線維芽細胞様細胞;及び/又はエクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体または線維芽細胞の任意の他のフラグメントもしくは生物学的成分を含む細胞外小胞)は、免疫系を活性化して傷治癒プロセスを開始しまたは維持するために1つまたは複数のアジュバンドとともに使用される。これらのアジュバントは、化学的、機械的、ウイルス的、遺伝子組み換え成分、または細菌製品ベースであり得る。例としては、少なくとも水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウムモノホスホリルリピッドA、Qs-21、シトシンホスホグアニン、サポニン、及び/又はスクアレンを含む油中水型エマルションが挙げられる。
【0085】
特定の実施形態では、カプセル化されたRNA、マイクロRNA、またはRNAi、及び/又は線維芽細胞由来のエクソソームまたは他のマイクロベシクル、線維芽細胞由来の任意の他の細胞または細胞断片が利用され、線維芽細胞が局所的に創傷治癒プロセスを開始及び維持する。
【0086】
本開示の実施形態は、創傷部位及び周辺組織における血管新生形成、修復、及び/又は再生における線維芽細胞または線維芽細胞由来材料(線維芽細胞;線維芽細胞様細胞;ならびにエキソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス体または線維芽細胞の任意の他の断片もしくは生物学的構成要素を含む細胞外小胞を含む)の使用を含む。
【0087】
特定の実施形態では、治療上有効な量のスフェロイドが創傷に適用され得る。その量は、スフェロイド内の細胞数及び/又は適用されるスフェロイドの数によって規定され得る。一例として、直径8mmの創傷の場合、約300万個の細胞に相当する約100個のスフェロイドを創傷に適用することができる。特定の実施形態では、少なくとも約1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、400、500、750、または1000以上のスフェロイドが、創傷に適用され得る。スフェロイドは、それぞれ少なくとも約5,000、10,000、15,000、20,000、25,000、30,000、35,000、40,000、45,000、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000、100,00、又はそれ以上の細胞を含み得る。
【0088】
特定の実施形態では、治療上有効な量の溶解物、エクソソーム等は、培地で培養した特定の量の線維芽細胞から得られる可能性がある。特定の実施形態において、培養された線維芽細胞の量は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10×100万、又はそれ以上の細胞を含む。具体的には、溶解物、エクソソームなどを生成するための培養線維芽細胞の数は、治療される創傷の大きさによって決定される。一実施形態では、約8mmの創傷に、300万個の線維芽細胞からの溶解物又はエクソソームが提供される。特定の実施形態では、投与される材料の量は、創傷のサイズに依存することになる。特定の実施形態では、投与される材料の量は、1mmあたり、30,000~100,000個の細胞、又はそれらの数の細胞から得られる材料の範囲である。
【0089】
いくつかの実施形態では、1つ以上の組成物が、基材中、基材上、基材の周囲、またはそれらの組み合わせで組成物を構成する基材上に存在するか、またはその上に送達される。他の実施形態では、組成物は、必要な部位で基材に適用される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の組成物が、同じ創傷または熱傷で利用され、同じタイプの基材を採用することもしないこともある。
【0090】
組成物の特定の実施形態では、1つ以上の基材成分のうち、合成ポリマー及び/又はバイオポリマーから構成され、又は含み、特定の場合には、バイオポリマーは天然ポリマーである。合成ポリマー及び/又はバイオポリマーは、個体上及び/又は個体内での使用に適合する限り、どのようなタイプであってもよい。組成物の基材が、ケラチン、フィブリン、コラーゲン、セルロース、アルギン酸、キトサン、シアノフラン、ヒアルロン酸、及び/又はヒドロゲルなどのバイオポリマーからなる実施形態において。ポリマーが1つまたは複数の合成ポリマーを含む実施形態では、合成ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)/ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、[15]、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)(PHEMA)、ポリウレタン(PU)、ポリ(αエステル)[例えば、。ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリラクチド(PLA)、及び/又はポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)である。ポリマーが、PDMS、HPE、天然鉱物、合成ケイ酸塩、リン酸塩、ゼオライト、クレイ、セゾポーラスシリカ、ポリPなどの1つまたは複数の合成無機ポリマーからなる実施形態において。
【0091】
少なくともサイズ、物質、厚さ、任意の1つ以上の区画の存在、任意の1つ以上の開口の存在、形状などを含む基材の構成パラメータは、意図された創傷/火傷に合わせられてもよいし、合わせられなくてもよい。いくつかの実施形態では、基材は、組成物の意図された使用に対して構成パラメータ(複数可)で調整されるが、他のケースでは、基材は既製品で利用される。基材が特定の用途に合わせて調整される場合、組成物は基材上に既に存在してもしなくてもよい。基材が最初に調整されず、既製の方法で利用される場合、組成物は、基材上に既に存在してもしなくてもよい。
【0092】
基材の外枠の形状は、ランダムであってもよいし、正方形、長方形、三角形、円、台形、菱形、三日月形などの特定の形状であってもよい。したがって、基材は特定の幾何学的な形成物であってもよい。部位に適用される基材の幅は、創傷の幅に依存することがある。基材は、基材を創傷部または創傷上に配置する前または後に、創傷に合わせたようなサイズに縮小されることがある。基材のサイズ及び形状は、創傷のサイズに調整することができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、基材は足場であってもよい。具体的な実施形態において、足場は、単細胞又はスフェロイド形式の細胞を、足場の内部に配置することを容易にし、細胞が配置されている場所から、例えば真皮層において、細胞の移動及び/又は細胞の増殖を可能にする。足場は、いくつかの実施形態において、置き換えが必要な組織工学のための生物学的プロセスまたは構造を模倣するように、組織の成長を可能にする。足場は、特定の実施形態において、繊維状、多孔質、又はヒドロゲルのものであってもよい。
【0094】
具体的な実施態様では、基材は、トレイ、カップ、メッシュなどである。基材は、あらゆる種類のバイオポリマー、有機又は無機ポリマー織物で構成されてもよい。
【0095】
具体的な実施態様において、基材は、1つまたは複数の開口部、または穿孔を含んでなる。基材に関する開口部、又は穿孔は、ランダムなパターンであっても、順序付けられたパターンであってもよい。開口部の大きさは、効率的な細胞移動を可能にし、かつ1つ又は複数のスフェロイドを部位に固定することを可能にするのに十分な大きさに構成され得る。
【0096】
特定の実施形態では、合成ポリマー又はバイオポリマーの足場、トレイ、幾何学的形成物、生物学的布、メッシュ、又はポリマー布などの任意の種類の基材上に、単細胞又はスフェロイド線維芽細胞、線維芽細胞からのエクソソーム、線維芽細胞からの溶解物、線維芽細胞からのアポトーシス体、及び/又は線維芽細胞関連製品又はそれらの任意の組み合わせが紹介されている。生物学的成分(複数可)を基材成分に適用するステップ(複数可)は、創傷または熱傷での配置前であるか、創傷または熱傷での配置時であるかどうかにかかわらず、任意の適切な態様であってよい。
【0097】
特定の実施形態では、散布装置などの装置を用いて、単細胞又はスフェロイド線維芽細胞、線維芽細胞からのエクソソーム、線維芽細胞からの溶解物、又は線維芽細胞からのアポトーシス体及び/又は線維芽細胞関連生成物を合成ポリマー又はバイオポリマーの足場、トレイ、幾何学的形成物、生物的布、メッシュ又はポリマー布に導入する。本明細書で言及される任意の散布装置は、アプリケーターと考えられ得る。
【0098】
特定の実施形態では、1つ又は複数の溝を有するように設計された散布装置のような装置を使用して、合成ポリマー又はバイオポリマーの足場、トレイ、幾何学的形成物、生物学的布地、メッシュ、又はポリマー布地に、単細胞又はスフェロイド線維芽細胞、線維芽細胞からのエキソソーム、線維芽細胞からの溶解物、又は線維芽細胞からのアポトーシス小体の導入がある。
【0099】
特定の実施形態では、散布装置などの装置を使用して、合成ポリマーまたはバイオポリマーの足場、トレイ、幾何学的形成物、生物学的布地、メッシュ、またはポリマー布地に、単細胞またはスフェロイド線維芽細胞、線維芽細胞からのエクソソーム、線維芽細胞からの溶解物、または線維芽細胞からのアポトーシス体及び/又は線維芽細胞に関連する生成物の導入がある。特定の実施形態では、装置は、スフェロイドの配置を可能にするために穴の順序付けられたパターンを有するか、またはランダムなスフェロイドの配置を可能にするために穴のランダムな系列を有するように設計される。
【0100】
いくつかの実施形態では、噴霧または霧吹き装置を使用して、合成ポリマーまたはバイオポリマーの足場、トレイ、幾何学的形成物、生物学的布、メッシュ、またはポリマー布上に、単細胞またはスフェロイド線維芽細胞、線維芽細胞からのエクソソーム、線維芽細胞からの溶解物、または線維芽細胞からのアポトーシス体及び/又は線維芽細胞に関連する生成物の導入がある。特定の実施形態では、スプレーまたはミスト化装置は、基材上への生物学的材料の配置の均一化のために利用される。
【0101】
特定の実施形態では、3Dプリンタを使用して、足場、トレイ、幾何学的形成物、生物学的布、メッシュ、またはポリマー布などの合成ポリマー及び/又はバイオポリマーからなる基材上に、単細胞またはスフェロイド線維芽細胞、線維芽細胞からのエキソーム、線維芽細胞からの溶解物、または線維芽細胞からのアポトーシス体及び/又は線維芽細胞関連生成物を導入する。
【0102】
特定の実施形態では、特定のサイズ及び線維芽細胞数を含むスフェロイドから創傷表面への増殖を収容するような方法で開口部が間隔を空けられている有孔合成ポリマーまたはバイオポリマーの孔の内部での線維芽細胞スフェロイドの培養がある。
【0103】
いくつかの実施形態では、開口部の反対側から創傷表面への線維芽細胞の増殖を可能にするために、単一の開口部に1つのスフェロイドのみが配置されるように、特定のサイズの線維芽細胞スフェロイドを合成及び/又は生体高分子基質の開口部に分注する。
【0104】
特定の実施形態では、覆われる創傷の境界を一致させる目的で、3Dプリンタにおける単細胞またはスフェロイド線維芽細胞、線維芽細胞からのエクソソーム、線維芽細胞からの溶解物、または線維芽細胞からのアポトーシス体及び/又は線維芽細胞関連生成物の導入のための画像を生成する高解像度カメラの利用がある。
【実施例0105】
以下の実施例は、本開示の特定の実施形態を示すために含まれている。当業者には、以下に続く実施例で開示される技術は、本発明の実施において良好に機能することが発見された技術を表しており、したがって、その実施のための特定の態様を構成すると考えることができることが理解されよう。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示される特定の実施形態において多くの変更を加えることができ、それでも本開示の実施形態の精神及び範囲から逸脱することなく、同様のまたは類似の結果を得ることができることを理解するべきである。
【0106】
実施例1
創傷治癒に使用するための線維芽細胞の治療的使用
はじめに
【0107】
皮膚の創傷修復は生物の生存に不可欠であり、治癒しない創傷につながる皮膚の修復不全は、世界的に主要な健康問題である。創傷治癒研究は、主に創傷環境の多面的な性質と、炎症、増殖、再上皮化、リモデリングなどの様々な細胞や修復段階を統合する治癒プロセスの複雑さのために、複雑である。足の創傷治癒の遅延は、2型糖尿病(DM)患者における高血糖に起因する重大な合併症であり、これらの創傷は足潰瘍に発展する可能性がある。研究によると、糖尿病患者の傷は、傷に遭遇してから30日後に非糖尿病患者の傷と比較して50%未満しか治癒しないことが示されている。
【0108】
創傷治癒の遅延には、複数の要因が関与している。これらには、線維芽細胞の増殖及び移動の障害、高血糖、ならびにケラチノサイトの増殖及び移動の障害がある。創傷治癒の障害のもう一つの主な原因は、最適でない免疫反応、活性酸素の増加、血管新生の調節、創傷部位の持続的な細菌繁殖です。皮膚線維芽細胞は、止血、炎症、増殖、リモデリングなど、創傷治癒のあらゆる段階に関連している。また、適切な遺伝子マウスモデルがないため、慢性創傷のメカニズム解明は大きな課題となっている。本開示は、糖尿病誘発性潰瘍における線維芽細胞の効果を実証し、線維芽細胞及び線維芽細胞由来材料による創傷治癒の促進を説明する。
【0109】
方法及び材料
【0110】
マウス
【0111】
多遺伝子モデル(レプチン遺伝子、レプチン受容体(LEPR)、Ay遺伝子変異)-Jacksons Laboratoryからの10~12週のNONcNZO10/LtJマウスを研究に使用した。マウスは個々に通気性のあるケージに入れられ、12時間の明暗サイクルで飼育された。300mg/dLの所望のベースライン血糖値に達すると(図1B)、マウスは36%の脂肪を含む高脂肪飼料(F3282ペレット)に置かれた(図1A)。
【0112】
細胞培養を行う。
【0113】
マウス胚線維芽細胞は、American Type Culture Collection (ATCC(登録商標))から入手し、DMEM High Glucose中で培養し、それぞれ10%のウシ胎児血清(FBS)及び1%のペニシリン-ストレプトマイシンで補った。細胞は37℃、5% COで培養された。
【0114】
線維芽細胞由来エクソソーム単離
【0115】
条件培地の調製
【0116】
線維芽細胞をプレーティングし、10%FBSを含むDMEM培地で24時間培養した後、PBSで3回洗浄し、最後に3ml無血清DMEM培地で2時間培養した。条件培地を回収し、0.22μmのフィルターで濾過して細胞残渣を除去した。
【0117】
線維芽細胞から放出されるエクソソームの単離と特徴づけ
【0118】
Total Exosome Isolation Kitを用いて、培養線維芽細胞からエクソソームを分離した。簡単に説明すると、0.5mlの全エキソソーム分離試薬を、ろ過した条件培地1mlずつに加え、転倒させてよく混合した。4℃で一晩培養した後、12,000×g、4℃で70分間遠心分離し、上清をすべて吸引して除去した。エクソソームペレットは、使用前に希釈しないように、非常に少量のDMEM培地に再懸濁した。
【0119】
インビボでの処理
【0120】
細胞調製技術
【0121】
細胞は、T225フラスコで37℃にて培養される。細胞が70%コンフルエントになったら、0.5%トリプシンでトリプシン処理し、400gで5分間遠心分離する。上清を捨て、ペレットをPBSに再懸濁する。細胞はPBSで、1X10を分注する。
【0122】
全厚創傷モデル
【0123】
マウスは、イソフルランの吸入を使用して麻酔された。マウスを剃毛し、ベタジン及びアルコールで滅菌した。0日目に、肩の高さの正中線の両側の背中に、滅菌した8mmのパンチ生検を用いて4つの全厚の創傷を作成した。鋸歯状鉗子を用いて、皮膚を持ち上げ、虹彩鋏を用いて皮下組織を通る全厚の創傷を作成した。
【0124】
傷の治療
【0125】
マウスは、イソフルランの吸入を用いて麻酔された。マウスは4つの治療群にグループ分けされる。マトリゲル、局所的な線維芽細胞(FB(Top))、皮下に与えられた線維芽細胞(FB(SC))、及び線維芽細胞由来のエキソソーム(FB-derived exosome)。それぞれの治療用化合物は、創傷にそっと塗りつけるか、創傷の周囲に皮下投与される。すべてのマウスは、合計5回の治療(1日目、3日目、5日目、7日目、9日目)を受けた(図2)。
【0126】
創傷の測定
【0127】
創傷は毎日測定した。マウスは、5%のイソフルラン吸入を用いて麻酔された。創傷の直径及び面積は、臨床での使用も承認されているeKare(登録商標)insight高度創傷イメージングデバイスを使用して測定された。測定後、清潔な閉塞性ドレッシングを再適用し、完全に回復するまで動物を保温する。4つの創傷の創傷閉鎖は、マウス1匹につき平均された。
【0128】
組織学
【0129】
創傷部を包含する皮膚断片を切除し、さらなる分析に利用した。H&E染色のために、組織サンプルを20日目に収集し、10%NBFで固定し、パラフィンに包埋する。H&E染色はST Infinity H&E染色システムで行い、シリウスレッド染色は0.1%ピクロシリウスレッドで行った。H&E染色したスライドを画像化した。
【0130】
組織の免疫標識化
【0131】
CD31による免疫蛍光のために、組織はホルマリン固定及びパラフィン包埋した。5マイクロメートルの切片を再水和し、10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)中で15分~1時間、抗原回収を実施した。室温で1%BSAで1時間ブロッキングした後、切片を一次抗体(CD31、サーモフィッシャー)と4℃で一晩インキュベートし、次に二次抗体(Alexa Fluor 568,ヤギ、抗ラット、Thermo-Fisher)と共に室温で1時間インキュベートした。
【0132】
パラフィン包埋サンプルについては、組織を4%緩衝パラホルムアルデヒド(PFA)で20分間固定し、0.3%Triton-Xで30分間透過処理した。1%BSAでブロッキングした後(室温で30分間)、切片を一次抗体(Cytokeratin 5, Thermo Fisher)で4℃で一晩インキュベートし、続いて二次抗体(Alexa Fluor 546, ヤギ 抗ラビット)で室温で1時間、核染色(DAPI)で30分インキュベーションした。
【0133】
定量的リアルタイムPCR
【0134】
RNAは、スナップ凍結した組織から単離し、製造者の指示に従ってTrizol試薬で抽出した。cDNAは、High-Capacity cDNA Reverse Transcription Kitを使用して合成された。リアルタイム定量PCRは、SYBR Green Real-Time PCR Master Mixを使用して実施した。
【0135】
酵素結合免疫吸着アッセイ
【0136】
血清の回収
【0137】
血液を室温で2時間凝固させた後、2000gで15分間遠心分離して血清を分離し、直ちにアッセイを開始した。
【0138】
組織生検試料。治癒した創傷部の生検サンプルを、実験中のいくつかの時点で採取し、瞬間冷凍し、保存した。これらの組織からのライセートは、サイトカイン及び成長因子のアッセイに使用された。
【0139】
マウスサイトカインアレイ分析:
【0140】
マウスサイトカイン抗体アレイは、Abcam Mouse cytokine antibody array (120 targets- ab197461)キットを用いて、製造者の指示に従って実施した。
【0141】
アレイ解析で検出されたサイトカイン一覧;
【0142】
腫瘍壊死因子(TNF-α)。
【0143】
インターロイキン-6(IL-6)。
【0144】
IL-1β。
【0145】
インターフェロン-γ(IFN-γ)。
【0146】
IL10。
【0147】
上皮成長因子(EGF)。
【0148】
血管内皮増殖因子(VEGF)。
【0149】
結果
【0150】
局所的な線維芽細胞は糖尿病患者の創傷治癒を促進する。
【0151】
局所投与された線維芽細胞が創傷治癒を促進することを実証するために、10-12週齢のNONcNZO10/LtJマウスに、ベースラインの血糖値が所望の300mg/dL濃度に達した後、脂肪36%の高脂肪食を投与した。血糖値が300mg/dLに達した時点で、マウスを4つの治療群に無作為に割り付けた。マトリゲル、局所用線維芽細胞(外用)(FB(Top))、線維芽細胞皮下投与(FB(SC))、線維芽細胞由来エクソソーム(FB-derived exosome)。これらのマウスの背中にそれぞれ8mmの傷を4つ作り、それぞれの治療薬50uLをマトリゲルに混ぜて投与した。これらの傷の直径は、傷が治癒するまで1日おきに測定し、さらなる解析のためにマウスを安楽死させた。治療の有効性は、臨床での使用も承認されているeKare(登録商標) insight advanced wound imaging deviceによって生成された直径と面積のデータを用いて、傷の直径と面積をプロットすることによって評価された。
【0152】
実験と取り込んだデータの解析により、FB(局所)を投与したマウスは、マトリゲルのみを投与した対照群と比較して、創傷治癒率の促進が確認された。(図3)また、創傷面積の測定では、FB(局所投与)、次いでFB由来エキソソーム、FB(SC)を投与したマウスでは、対照群と比較して、創傷の大きさが有意に改善された。この知見により、FB(局所)が糖尿病性創傷の創傷治癒を促進し、次いで線維芽細胞由来エクソソームが創傷治癒を促進することが確認された。
【0153】
特定の実施形態の意義
【0154】
この研究では、局所的に投与された線維芽細胞が、対照と比較して、創傷治癒速度の有意な増加を示すことが実証された。また、線維芽細胞由来のエクソソームを投与したマウスでは、実質的かつ有意な改善が見られるようである。これらの結果から、線維芽細胞や線維芽細胞由来物質を直接塗布し、真皮層で移動・増殖させることで、糖尿病性創傷の創傷治癒速度が加速することが示唆された。創傷部位への線維芽細胞の受動的な蓄積、及び免疫調節における線維芽細胞の確立された役割は、血管新生を調節する免疫反応を引き起こし、創傷治癒速度を加速させる。また、線維芽細胞及び線維芽細胞由来の材料は治癒速度を高め、線維芽細胞の免疫調節は、糖尿病性創傷の治癒遅延の要因として知られる細菌のコロニー形成を防ぐこともできる。これらの知見は、線維芽細胞治療法の治療効果を高めるための重要な検証ステップとなる。
【0155】
まとめ
【0156】
線維芽細胞及び線維芽細胞由来物質を創傷部位に送達するためのいくつかの治療方法の試験を続けた結果、局所的に適用した線維芽細胞及び線維芽細胞由来エクソソームで治癒率が著しく改善されることがわかった。この知見は、糖尿病患者の創傷治癒に存在する大きな問題を解決するものであり、糖尿病患者に関連するこの慢性疾患を治癒するために有用である。
【0157】
実施例2
創傷ケア
1つのインビボ研究において、本発明者らは、糖尿病マウスモデルで生じた創傷に対する単細胞線維芽細胞投与を試験した。100万個の単細胞線維芽細胞を、創傷縁の周囲に局所的または皮下的に投与した。また、単細胞線維芽細胞を増殖させるために使用した100万個の線維芽細胞培地由来の線維芽細胞エキソソームも、局所投与について試験した。局所細胞及びエクソソームは、細胞及びエクソソームが創傷上に留まるように、塗布直前にマトリゲル(登録商標)と混合した。コントロールとして、Matrigel(登録商標)のみを利用した。すべてのコントロール及びテストサンプルは、傷の直径と面積を測定した後、1日おきに投与された。創傷からかさぶたが剥がれ、上皮化が確認できた時点で、創傷は治癒したと判断した(図2~7)。
【0158】
本試験の結果、単細胞線維芽細胞を局所、及び皮下に投与した場合、線維芽細胞由来のエクソソームと同様に、コントロールよりも有意に早く創傷が治癒することが示された。この研究では、3つの試験材料のうち、単細胞線維芽細胞、及び線維芽細胞由来エクソソームは、皮下注射された線維芽細胞よりも有意に良好な結果を示した。
【0159】
別の研究では、インビボ実験の目的は、事前に(例えば、液体窒素中で)凍結し、使用直前に解凍した単細胞線維芽細胞、及び線維芽細胞由来エクソソームの有効性を試験することであった。100万個の単細胞線維芽細胞を局所的に投与した。また、単細胞線維芽細胞を増殖させるために使用した100万個の線維芽細胞培地由来の線維芽細胞エキソソームも、局所投与について試験した。局所投与された細胞及びエクソソームは、細胞及びエクソソームが創傷に保持されるように、適用直前にマトリゲル(登録商標)と混合された。コントロールとして、Matrigel(登録商標)のみを利用した。すべてのコントロール及びテストサンプルは、傷の直径と面積を測定した後、1日おきに投与された。創傷の大きさは、慢性創傷治癒のモニタリングに使用することが臨床的に承認されているeKare(登録商標)デバイスを使用して、1日おきに測定した。eKare(登録商標)は創傷の画像も撮影することができる。創傷は、かさぶたが創傷から解放され、上皮化が確認された時点で治癒したとみなされた(図6~9を参照)。
【0160】
本試験の結果、凍結/解凍した単細胞線維芽細胞を局所投与した場合、凍結/解凍した線維芽細胞由来のエクソソームと同様に、コントロールよりも有意に早く傷が治癒することが示された。この研究は、細胞またはエクソソームの凍結/解凍が、創傷治癒に対する材料の効力に影響を与えないことを示した。
【0161】
別の研究では、線維芽細胞または線維芽細胞由来のエクソソームを創傷に局所投与した後、創傷を覆うための代替的で簡単な方法を試験することが目的であった。マトリゲルは動物用製品であり、現在ヒトへの使用は認められていないため、ヒトへの創傷被覆として承認されている他の製品が利用された。本試験では、本発明者らは、3M Nexcare(登録商標)とElaSkin(登録商標)について、培養場所の表面に創傷被覆材を塗布し、線維芽細胞を接種して、アジレント社のIncuCyte(登録商標)という装置を用いて、細胞数、細胞の大きさの観点から細胞の成長をモニターすることで試験した。
【0162】
この試験の結果、3M Nexcare(登録商標)は細胞の成長効率やサイズに影響を与えなかったのに対し、ElaSkin(登録商標)は細胞の成長だけでなく、細胞のサイズにも大きな影響を与え、細胞の成長に悪影響を与えることが示された。この研究の結果、その後の研究で3Mネクスケア(登録商標)を利用し、創傷に線維芽細胞及び線維芽細胞由来のエクソソームを覆った(図10~11)。
【0163】
追加の研究では、インビボ実験の目的は、糖尿病マウスモデルで生成された創傷に、スフェロイドオルガノイドとして増殖した線維芽細胞及びその投与を試験することであった。各スフェロイドが約3万個の線維芽細胞(プラスマイナス15%まで)を含む100個の線維芽細胞スフェロイドを、創傷上に局所的に投与した。その後、30-50μlの3M Nexcare(登録商標)を創傷に塗布して創傷を覆った。コントロールとして、3M Nexcare(登録商標)のみを使用した。スフェロイドとコントロールのサンプルは、スフェロイド線維芽細胞の1回限りの適用をテストできるように、1回だけ適用した。傷の大きさは、慢性創傷治癒のモニタリングに使用することが臨床的に承認されているeKare(登録商標)デバイスを使用して、1日おきに測定した。eKare(登録商標)は創傷の画像も撮影する。傷は、かさぶたが傷から解放され、上皮化が確認された時点で治癒したとみなされた(図12~14)。
【0164】
この実験の結果、投与された球状線維芽細胞は、コントロールよりも有意に早く傷を治すことが示された。コントロールよりも約3日早く傷が治っただけでなく、線維芽細胞を投与した傷の炎症は、コントロールよりも有意に少なかった。
【0165】
ある研究では、インビボ実験の目的は、野生型非糖尿病マウスモデルに生じた創傷に対して、スフェロイド・オルガノイドとして増殖した線維芽細胞、及び単細胞線維芽細胞由来溶解物とその投与について試験することであった。各スフェロイドに約3万個(プラスマイナス15%)の繊維芽細胞を含む100個の繊維芽細胞スフェロイドを創傷部に投与した。また、100万個の単細胞線維芽細胞を機械的に溶解して得た溶解物も創傷に投与して試験した。その後、創傷に3M Nexcare(登録商標)を30-50μl塗布することで傷を覆った。対照として、本発明者らは3M Nexcare(登録商標)のみを試験した。スフェロイド、線維芽細胞溶解物、及びコントロールのサンプルは、1回だけの適用を試験するために1回だけ適用した。創傷の大きさは、慢性創傷治癒のモニタリングに使用することが臨床的に承認されているeKare(登録商標)デバイスを使用して、1日おきに測定した。eKare(登録商標)は創傷の画像も撮影する。傷は、かさぶたが傷から解放され、上皮化が確認された時点で治癒したとみなされた(図17~20)。
【0166】
本試験の結果、球状線維芽細胞、及び線維芽細胞由来の溶解物は、糖尿病でない傷でもコントロールよりも有意に早く傷を治癒させることが示された。 線維芽細胞スフェロイドと溶解物を比較した場合、線維芽細胞スフェロイドは溶解物よりも有意に早く傷を治した。
【0167】
別の研究では、インビボ研究の目的は、糖尿病マウスモデルで生成した創傷に、スフェロイドオルガノイドとして増殖したマウス真皮線維芽細胞及びヒト真皮線維芽細胞の両方を投与して試験することであった。さらに、本発明者らは、慢性創傷の治療に使用するためにFDAの認可を受けているGrafix(登録商標)と呼ばれる市販の製品をテストしたいと考えた。各スフェロイドが約30,000(プラスマイナス15%まで)の線維芽細胞を含む100個の線維芽細胞スフェロイドを、創傷に局所的に投与した。また、本発明者らは、Grafix(登録商標)の出版物に記載されている適用方向に従って、Grafix(登録商標)を創傷に適用するテストを行った。その後、3M Nexcare(登録商標)を30-50μl塗布し、創傷を覆った。対照として、本発明者らは3M Nexcare(登録商標)のみを試験した。ヒト及びマウスの線維芽細胞スフェロイド、Grafix(登録商標)、及び対照試料は、スフェロイド線維芽細胞及びGrafix(登録商標)の1回限りの適用を試験するために1回だけ適用した。創傷の大きさは、慢性創傷治癒のモニタリングに使用することが臨床的に承認されているeKare(登録商標)デバイスを使用して、1日おきに測定した。eKare(登録商標)は創傷の画像も撮影する。創傷は、かさぶたが傷から解放され、上皮化が確認された時点で治癒したとみなされた(図21~24)。
【0168】
この研究の結果、ヒト真皮スフェロイド線維芽細胞が、コントロール、マウス真皮線維芽細胞スフェロイド、及びGrafix(登録商標)よりも有意に速く傷を治すことを示した。傷は、ヒト真皮線維芽細胞スフェロイドでは5日目に、マウス真皮線維芽細胞スフェロイドでは7日目に、Grafix(登録商標)では8日目に治癒した。また、ヒト真皮線維芽細胞スフェロイドは、投与後の傷の大きさが増加しないなど、他の試験材料よりも有意に炎症を抑制することがわかりました。実際、投与後すぐに傷の大きさが減少した。ヒト真皮線維芽細胞スフェロイドとマウス真皮線維芽細胞スフェロイドを比較すると、線維芽細胞スフェロイドは傷の治癒が著しく早かった。
【0169】
本明細書で開示され請求される方法の全ては、本開示に照らして過度の実験をすることなく製造及び実行することができる。本発明の組成物及び方法を好ましい実施形態の観点から説明したが、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の方法及びステップまたはステップの順序に変形を適用できることは、当業者には明らかであろう。より具体的には、化学的及び生理学的に関連する特定の剤が、同じまたは類似の結果が達成される間、本明細書に記載の剤に置換され得ることは明らかであろう。当業者に明らかなこのような類似の置換及び変更はすべて、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神、範囲及び概念の範囲内であるとみなされる。
【0170】
参考文献
以下の参考文献は、本明細書に記載されたものを補足する例示的な手順またはその他の詳細を提供する限りにおいて、参照により本明細書に特に組み込まれるものとする。
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【0171】
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【外国語明細書】