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特開2023-138464取り込み角が可変の平行平板型X線コリメータ、及び、X線分析装置
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  • 特開-取り込み角が可変の平行平板型X線コリメータ、及び、X線分析装置 図1
  • 特開-取り込み角が可変の平行平板型X線コリメータ、及び、X線分析装置 図2
  • 特開-取り込み角が可変の平行平板型X線コリメータ、及び、X線分析装置 図3
  • 特開-取り込み角が可変の平行平板型X線コリメータ、及び、X線分析装置 図4
  • 特開-取り込み角が可変の平行平板型X線コリメータ、及び、X線分析装置 図5A
  • 特開-取り込み角が可変の平行平板型X線コリメータ、及び、X線分析装置 図5B
  • 特開-取り込み角が可変の平行平板型X線コリメータ、及び、X線分析装置 図6
  • 特開-取り込み角が可変の平行平板型X線コリメータ、及び、X線分析装置 図7
  • 特開-取り込み角が可変の平行平板型X線コリメータ、及び、X線分析装置 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138464
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】取り込み角が可変の平行平板型X線コリメータ、及び、X線分析装置
(51)【国際特許分類】
   G21K 1/00 20060101AFI20230922BHJP
   G01N 23/203 20060101ALI20230922BHJP
   G01N 23/207 20180101ALI20230922BHJP
   G01N 23/20008 20180101ALI20230922BHJP
   G01N 23/223 20060101ALI20230922BHJP
   G01N 23/2209 20180101ALI20230922BHJP
   G21K 5/02 20060101ALI20230922BHJP
   G01T 7/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G21K1/00 X
G01N23/203
G01N23/207
G01N23/20008
G01N23/223
G01N23/2209
G21K5/02 X
G01T7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023041569
(22)【出願日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】22162751.6
(32)【優先日】2022-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】503310327
【氏名又は名称】マルバーン パナリティカル ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コーガン ウラジミール
(72)【発明者】
【氏名】ベッカーズ デトレフ
(72)【発明者】
【氏名】ハルチェンコ アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
2G001
2G188
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA04
2G001BA15
2G001BA18
2G001BA22
2G001BA23
2G001BA25
2G001BA30
2G001CA01
2G001DA08
2G001EA01
2G001GA01
2G001GA13
2G001JA04
2G001SA02
2G188BB02
2G188BB03
2G188DD04
2G188DD05
2G188DD16
(57)【要約】
【課題】幾何収差が最小限である測定スキャンを取得するためのX線分析機器及びX線分析方法を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態は、入射X線ビームの発散を制限することにより入射X線ビームをコリメートするためのものであり且つ取り込み角が可変であるX線コリメータを提供する。また、取り込み角が可変であるX線コリメータを含むX線分析装置と、このX線分析装置を使用する方法とを提供する。X線分析装置は位置検知型X線検出器を備え、X線コリメータは、試料と位置検知型X線検出器との間に配置されており、試料からのX線の軸方向発散を制限する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射X線ビームの発散を制限することによりX線ビームを視準方向にコリメートするX線コリメータであって、
前記X線コリメータは、複数の平板を備え、
前記複数の平板は、互いから離間しており、且つ、積層軸に沿って、積層体として配置され、複数の長尺コリメータチャネルを規定しており、
各長尺コリメータチャネルは、分離距離だけ互いから離間した、隣接する一対の平板により規定されており、
前記X線コリメータは、前記積層軸に沿った発散を制限するように構成されており、
前記複数の平板のそれぞれは、或る長さを有し、
前記複数の平板の前記長さは、前記積層軸に沿って変わっている、
X線コリメータ。
【請求項2】
請求項1に記載のX線コリメータであって、
前記複数の平板の前記長さは、前記積層軸に沿って減少している、
X線コリメータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のX線コリメータであって、
前記X線コリメータの取り込み角が前記積層軸に沿って減少するように、
隣接する平板同士の対の間の前記分離距離は、前記積層体に沿って変わり、且つ、
前記複数の平板の前記長さは、前記積層軸に沿って変わる、
X線コリメータ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のX線コリメータであって、
前記X線コリメータは、第1部分と、第2部分とを有し、
前記第1部分と前記第2部分はそれぞれ、複数のコリメータチャネルを有し、
前記第1部分では、前記取り込み角が前記積層軸に沿って減少し、
前記第2部分では、前記取り込み角が一定である、
X線コリメータ。
【請求項5】
X線分析装置であって、
試料を支持するための試料台と、
前記試料に入射X線ビームを入射角Θにて照射するように配置されたX線源と、
位置検知型X線検出器であって、
回転軸の周りで回転することによりスキャン経路に沿って移動して前記試料からのX線を角度2θにて受信するように配置されており、
X線を受信するための複数の検出チャネルを有する、
位置検知型X線検出器と、
X線の軸方向発散を制限するように配置されているX線コリメータであって、
積層体であり且つ積層軸に沿って互いから離間している複数の平板を有し、
該X線コリメータの取り込み角は、前記積層軸に沿って変わり、
該X線コリメータは、軸方向に平行移動するように構成されている
X線コリメータと
を備える
X線分析装置。
【請求項6】
請求項5に記載のX線分析装置であって、
前記複数の検出チャネルはそれぞれ、検出ストリップを有し、
前記平板の積層体の幅は、前記検出ストリップの長さよりも大きい、
X線分析装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のX線分析装置であって、
隣接する平板同士の間の分離、及び、前記複数の平板の長さ、の少なくとも一方は、前記X線コリメータの前記取り込み角が前記積層軸に沿って減少するように、前記積層軸に沿って変わる、
X線分析装置。
【請求項8】
請求項5に記載のX線分析装置であって、
前記X線コリメータは、請求項1~4のいずれかに記載のX線コリメータである、
X線分析装置。
【請求項9】
請求項5~8のいずれかに記載のX線分析装置であって、
前記X線コリメータは、前記試料と前記位置検知型X線検出器との間に配置されている、
X線分析装置。
【請求項10】
請求項5~9のいずれかに記載のX線分析装置であって、
前記X線コリメータを移動させるように構成されたコントローラを更に備える
X線分析装置。
【請求項11】
請求項5~10のいずれかに記載のX線分析装置であって、
前記位置検知型X線検出器の角度位置が変化する間、固定された入射角θで前記試料を照射するか、又は、
可変の入射角θで前記試料を照射し、且つ、前記位置検知型X線検出器の前記角度位置2θを前記入射角に応じて対称的に変わるよう制御するか、又は、
可変の入射角θで前記試料を照射し、且つ、前記位置検知型X線検出器の前記角度位置2θを前記入射角に応じて観測中心で変わるよう制御する
ように構成されている
X線分析装置。
【請求項12】
請求項5~11のいずれかに記載のX線分析装置であって、
パラフォーカス型ブラッグブレンターノ反射ジオメトリにおいて、X線回折分析を実行するか、
フォーカス型透過ジオメトリにおいて、X線回折分析を実行するか、
デバイジオメトリにおいて、X線回折分析を実行するか、
斜入射ジオメトリにおいて、X線回折分析を実行するか、
応力分析を実行するか、
テクスチャ分析を実行するか、若しくは、
X線反射率法を実行するように構成されているか、又は、
波長分散型蛍光X線分析を実行するように構成されている
X線分析装置。
【請求項13】
請求項5~12のいずれかに記載のX線分析を使用する方法であって、
前記試料にX線を照射するステップと、
前記X線コリメータが第1軸方向位置にある間に、前記試料からのX線を検出するステップと、
前記X線コリメータの軸方向位置を前記第1軸方向位置から第2軸方向位置へ変化させて、前記X線コリメータの前記取り込み角を変化させるステップと
を含む方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、
前記X線コリメータの前記軸方向位置を変化させるステップは、前記X線コリメータの前記取り込み角を増加させ、
前記方法は、
前記検出器がその第1軸方向位置にある間に、前記試料からのX線を測定角度2θにて検出するステップと、
前記位置検知型X線検出器の角度位置を、2θ>2θである角度2θへ変化させるステップと
を更に含む方法。
【請求項15】
請求項10に記載の装置に、請求項13又は14に記載の方法の各ステップを実行させる命令を含むコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取り込み角が可変の平行平板型X線コリメータ、及び、位置検知型X線検出器と、取り込み角が可変の平行平板型X線コリメータとを備えるX線分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
材料分析の分野において、試料の特性を評価するためにX線が使用される。X線回折法(X-Ray Diffraction)は、試料の化学組成についての洞察を得るために様々な分析手法において使用される。
【0003】
試料にX線を照射して、試料により回折されるX線を検出することにより、結晶成分を含む試料を分析することができる。回折計を使用すれば、回折X線の強度を回折角2θの関数として測定することにより、試料の回折スキャンを取得することができる。スキャン内の回折ピークの2θ位置に基づいて、回折スキャンを分析し、試料内に存在する相(結晶成分)を同定し定量化することができる。
【0004】
回折計にはパラフォーカス(parafocussing)型ブラッグブレンターノジオメトリを使用するものがあり、このジオメトリでは、試料に発散入射X線ビームが照射されて、収束X線ビームとして回折する。このジオメトリでは、X線検出器(及び、場合によりX線源)がゴニオメータに装着される。入射ビームと試料とがなす角度は、X線検出器が、対応する2θ位置になるまでゴニオメータ軸の周りで回転される間に変化する。試料を分析するために、別のX線回折分析ジオメトリを使用することもでき、例えば、透過型ジオメトリによる粉末X線回折、デバイシェラー分析、斜入射X線回折(Grazing Incidence X-ray Diffraction、GIXRD)分析を使用することもできる。
【0005】
X線回折法は、波長分散型蛍光X線(Wavelength Dispersive X-Ray Fluorescence、WDXRF)分析においても使用される。波長分散型蛍光X線分析では、試料を照射して蛍光を発生させる。試料から放出される特性放射線は、分析結晶又はモノクロメータにより、異なる方向へ回折される。X線検出器を、或る角度範囲に亘って移動させることにより、特定の波長のX線の強度を測定することができる。
【0006】
X線反射率法(X-Ray Reflectometry、XRR)は別の分析技術である。この技術は、基板上の薄膜を測定するのに使用される。X線反射率法では、高度にコリメートされた(即ち平行な)X線ビームを試料に照射し、且つ、屈折率の異なる界面にて反射されるX線を或る角度範囲に亘って測定する。
【0007】
幾何収差により、X線回折分析の結果の解釈が複雑になることがある。この幾何収差は、ピークを変形したり、その元の(「理想的な」2θブラッグ)位置からシフトさせたりする。例えば、X線が軸方向に発散する(即ち、入射X線ビームや回折X線ビームがゴニオメータ軸に沿って発散する)ことにより、特に低2θ角度で、回折ピークがピーク非対称性を示すことがある。特に、軸方向発散により、測定された回折ピークが、低2θピークテールを有し、且つ、「理想的な」2θブラッグ位置からの2θ軸に沿ったシフト(例えばピーク「重心」のシフト)を有することがある。試料からの反射が、ピーク広がり(例として、試料内の小さな微結晶から生じる)を示すとき、軸方向発散により引き起こされる極度に非対称な収差を用いた畳み込みにより、その理想的な2θブラッグ位置からシフトした準対称性ピークが生じることがある。収差の影響により、元素分析、相同定、結晶学的単位胞の指数付け、多形間の識別等の分析作業の実行が、特に困難になることがある。
【0008】
同様に、試料からのX線を或る角度範囲に亘って測定することを含む別の種類のX線分析、例えばX線反射率法分析及び二体分布関数分析の解釈も、X線軌道の軸方向発散により複雑になることがある。
【0009】
X線コリメータ(ソーラ―スリットコリメータ等)を使用すれば軸方向発散を低減することができる。ソーラ―スリットコリメータは、軸方向発散を限定するのに使用される平行平板コリメータである。X線コリメータは、発散を、X線コリメータの取り込み角の量に制限するように設計されている。しかしながら、この代償として、強度の低減や測定時間の増加が生じることになる。更に、高角度では、試料が低い強度回折ピークを示すことがあるが、幾何収差を抑制するために強度を犠牲にすることは望ましくないであろう。回折スキャンを中断してソーラ―スリットコリメータを交換することは不便であり時間がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
利用しやすいX線分析を実行することで、或る角度範囲に亘って十分なピーク強度を維持しつつ且つ長い測定時間を必要とすることなく幾何収差が最小限である測定スキャンを取得できることが望ましいであろう。
【0011】
コンパクトなX線分析機器を提供することも望ましいであろう。2θスキャンの取得を含むX線分析法では、通常、X線分析機器の回折ビーム側(試料とX線検出器との間)は、構成要素をさらに配置できる空間が限定される。特に、回折ビーム側にある構成要素は、X線検出器がそのスキャン経路に沿って移動するのを妨げないことが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は特許請求の範囲により規定される。本発明の第1態様による実施例によれば、以下のようなX線コリメータを提供する。入射X線ビームの発散を制限することによりX線ビームを視準方向にコリメートするX線コリメータであって、このX線コリメータは複数の平板を備え、この複数の平板は互いから離間しており且つ積層軸に沿った積層体として配置されて複数の長尺コリメータチャネルを規定しており、各長尺コリメータチャネルは分離距離だけ互いから離間した隣接する一対の平板により規定されており、X線コリメータは積層軸に沿った発散を制限するように構成されており、複数の平板のそれぞれは或る長さを有し、複数の平板の長さは積層軸に沿って変わっている。
【0013】
これら複数の平板の長さ(即ち平板長)は積層軸に沿って変わる。つまり、複数の平板のうちの少なくとも幾つかは、互いに異なる長さを有する。幾つかの実施形態においては、複数の平板のうちの少なくとも幾つかは、互いに同じ長さを有する。幾つかの別の実施形態においては、積層体の平板のいずれもが、異なる長さを有する。平板長は、積層軸に沿った位置の関数として、線形に又は非線形に変わってもよい。
【0014】
複数の平板の長さは、積層軸に沿って減少していてもよい。
【0015】
これら複数の平板の長さは、積層体の少なくとも一部では、積層軸に沿って減少してもよい。つまり、これら複数の平板の長さが減少する、積層体の部分では、各平板の長さは、先行の平板の長さ以下であってもよい(l≧ln+1、ここで、nの各値は、積層体内の平板と関連付けられており、長さが減少する方向において増加する)。
【0016】
幾つかの実施形態において、これら複数の平板の長さは、積層体の少なくとも一部では、積層軸に沿って厳密に減少してもよい(l>ln+1、ここに、nの各値は、積層体の平板と関連付けられており、長さが減少する方向において増加する)。
【0017】
幾つかの実施形態において、これら複数の平板の長さは、積層体の第1端部から、第1端部に対向する積層体の第2端部に向かって減少してもよい(又は、厳密に減少してもよい)。つまり、平板の長さは、積層体全体に亘って連続的に減少してもよい(又は、厳密に減少してもよい)。
【0018】
X線コリメータの取り込み角が積層軸に沿って減少するように、隣接する平板同士の対の間の分離距離は、積層軸に沿って変わってもよく且つ平板の長さは積層軸に沿って変わってもよい。
【0019】
したがって、隣接する複数対の平板同士の間の分離距離は一定でなくてもよい。平板同士の間の分離距離は、X線コリメータの第1端部にある第1対の平板から、積層体の第2端部にある最終対の平板へと、積層体に沿って増加してもよい。分離距離は、積層体に沿って増加してもよく(d≦dn+1)、又は、積層体に沿って厳密に増加してもよい(d<dn+1)。
【0020】
X線コリメータは第1部分と、第2部分とを有してもよく、第1部分と第2部分はそれぞれ複数のコリメータチャネルを有してもよく、第1部分では取り込み角が積層軸に沿って減少してもよく、第2部分をでは取り込み角が一定であってもよい。
【0021】
第1部分において、取り込み角は、線形に減少してもよく、又は、非線形に減少してもよい(例えば、取り込み角は、正弦曲線の減少部分に近似する関数に従って減少してもよい)。
【0022】
本発明の第2態様による実施例によれば、以下のようなX線分析装置を提供する。このX線分析装置は、試料を支持するための試料台と、試料に入射X線ビームを入射角θにて照射するように配置されたX線源と、位置検知型X線検出器であって、回転軸の周りで回転することによりスキャン経路に沿って移動して試料からのX線を角度2θにて受信するように配置されており、X線を受信するための複数の検出チャネルを有する位置検知型X線検出器と、X線の軸方向発散を制限するように配置されているX線コリメータであって、積層体であり且つ積層軸に沿って互いから離間している複数の平板を有し、X線コリメータの取り込み角は積層軸に沿って変わり、X線コリメータは軸方向に平行移動するように構成されているX線コリメータとを備えるX線分析装置である。
【0023】
X線コリメータは、回転軸と平行な方向におけるX線の発散(即ち「軸方向発散」)を制限するように配置されている。そのため、X線コリメータは、その積層軸が回転軸と平行になるように配置されている。
【0024】
X線コリメータは、回転軸と平行な軸に沿って平行移動するように構成されている。
【0025】
位置検知型X線検出器は、各々が互いに独立してX線強度を測定できる多数の独立した検出素子(検出器チャネル)を有するという意味で位置検知型である。
【0026】
X線分析装置は、測定されたX線強度を検出チャネルの各々から受信するように構成されているプロセッサを更に備えてもよい。プロセッサは、測定されたX線測定データと、このX線測定データを取得した検出チャネルの位置とを関連付けてもよい。
【0027】
X線は、試料により回折されてもよく、又は、試料により反射されてもよく、又は、その両方であってもよい。
【0028】
X線分析装置は、X線コリメータを軸方向に平行移動させるように構成されたアクチュエータを備えてもよい。
【0029】
複数の検出チャネルはそれぞれ、検出ストリップを有してもよく、平板の積層体の幅は、検出ストリップの長さそれぞれよりも大きくてもよい。
【0030】
積層された平板の幅とは、積層された平板の、積層軸に沿った寸法のことである。検出ストリップとは、ストリップ形検出素子のことである。
【0031】
隣接する平板同士の間の分離距離、及び、複数の平板の長さ、の少なくとも一方は、X線コリメータの取り込み角が積層軸に沿って減少するように、積層軸に沿って変わってもよい。
【0032】
X線コリメータは、本発明の第1態様による上述の実施例のいずれかに記載のX線コリメータであってもよい。
【0033】
X線コリメータは、試料と位置検知型X線検出器との間に配置されていてもよい。
【0034】
X線分析装置は、X線コリメータを移動させるように構成されたコントローラを更に備えてもよい。コントローラは、X線コリメータの軸方向位置を、位置検知型X線検出器の角度位置に基づいて変化させるように構成されていてもよい。
【0035】
コントローラは、X線コリメータの、位置検知型X線検出器により視認される部分の取り込み角が、X線検出器の角度位置とともに増加するように、X線コリメータを軸方向に移動させるように構成されていてもよい。X線コリメータの取り込み角が2θ角で変わるように、位置検知型X線検出器の角度位置と、X線コリメータの軸方向位置とを同期させてもよい。
【0036】
X線分析装置は、位置検知型X線検出器の角度位置が変化する間、固定された入射角θで試料を照射するか、又は、可変の入射角θで試料を照射し且つ位置検知型X線検出器の角度位置2θをこの入射角に応じて対称的に変わるよう制御するか、又は、可変の入射角θで試料を照射し且つ位置検知型X線検出器の角度位置2θをこの入射角に応じて観測中心(offset)で変わるよう制御するように構成されていてもよい。
【0037】
コントローラは、位置検知型X線検出器の角度位置を制御するように構成されていてもよい。更に、コントローラは、(X線源の位置又は試料の位置又はその両方を変化させることにより)試料に対するX線源の位置を制御し、これによって入射角を制御するように構成されていてもよい。
【0038】
X線分析装置は、パラフォーカス型ブラッグブレンターノ反射ジオメトリにおいてX線回折分析を実行するか、フォーカス型透過ジオメトリにおいてX線回折分析を実行するか、デバイジオメトリにおいてX線回折分析を実行するか、斜入射ジオメトリにおいてX線回折分析を実行するか、応力分析を実行するか、テクスチャ分析を実行するか、若しくは、X線反射率法を実行するように構成されていてもよく、又は、波長分散型蛍光X線分析を実行するように構成されていてもよい。
【0039】
コントローラは、X線源と試料と位置検知型X線検出器とを適切なジオメトリ内に配置するように、X線分析装置を制御するように構成されていてもよい。
【0040】
本発明の第3態様による実施例によれば、上述のX線分析装置を使用する方法であって、試料にX線を照射するステップと、X線コリメータが第1軸方向位置にある間に試料からのX線を検出するステップと、X線コリメータの軸方向位置を第1軸方向位置から第2軸方向位置へ変化させてX線コリメータの取り込み角を変化させるステップとを含む方法が提供される。
【0041】
X線コリメータの軸方向位置は、位置検知型X線検出器の角度位置、又は、分析下にある試料、又は、その両方に基づいて、調整されてもよい。X線コリメータの軸方向位置は、位置検知型X線検出器が移動中である間に変化させてもよい。あるいは、X線コリメータの軸方向位置は、位置検知型X線検出器が静止している間に調整されてもよい。
【0042】
本方法は、第1軸方向位置にあるX線コリメータを用いて(第1)試料からのX線を検出した後に、(第1)試料を異なる(第2)試料に交換し、第2軸方向位置にあるX線コリメータを用いてその試料からのX線を検出するステップを含んでもよい。
【0043】
X線コリメータの軸方向位置を変化させるステップは、X線コリメータの取り込み角を増加させるステップを含んでもよく、本方法は、位置検知型X線検出器がその第1軸方向位置にある間に測定角度2θにて試料からのX線を検出するステップと、位置検知型X線検出器の角度位置を、2θ>2θである角度2θへ変化させるステップとを更に含んでもよい。
【0044】
X線コリメータの軸方向位置とは、X線分析装置の回転軸に沿ったX線コリメータの位置のことである。X線コリメータの位置を変化させることにより、X線コリメータの、位置検知型X線検出器により視認される部分の取り込み角を調整することができる。このようにして、X線コリメータの取り込み角を変化させることが可能になる。
【0045】
本方法は、試料により回折角2θにて回折されるX線を検出するステップを含んでもよい。
【0046】
本発明の第4態様による実施例によれば、上述の装置に上述の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラム製品が提供される。
【0047】
コンピュータプログラムは、位置検知型X線検出器の実際の位置又は予測される位置に基づいて、位置検知型X線検出器の2θ位置と、X線コリメータの軸方向位置とを、コントローラに調整させてもよい。
【0048】
幾つかの実施形態において、X線コリメータを用いて取得される2θスキャンは、様々な取り込み角に関連付けられた可変フラックスを考慮するために処理されてもよい。従って、X線コリメータの取り込み角に基づいて、可変フラックスを調整するために、X線分析装置は、X線分析装置により取得されるX線分析データを処理するように構成されるプロセッサを含んでもよい。
【0049】
本発明のこれらの態様及びその他の態様は、これらの実施形態を参照すれば、以下に記載する実施形態から明らかになり解明される。
【0050】
次に、本発明をより良好に理解するために、及び、本発明がどのように実施され得るかをよりはっきりと示すために、単なる例示として且つ添付の図面を参照して説明する。
【0051】
図を参照して本発明を記載することにする。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明の或る実施形態によるX線コリメータの、斜視図における概略図である。
図2図1のX線コリメータの端面図を示す概略図である。
図3】X線コリメータの別の実施形態の端面図を示す概略図である。
図4】X線コリメータの別の実施形態の平面図を示す概略図である。
図5A】2つの低角度回折スキャンを示す。1つは、取り込み角が調整可能なX線コリメータを使用して取得されるものであり、もう1つは、取り込み角が一定のX線コリメータを使用して取得されるものである。これらのX線コリメータは同じ取り込み角にて動作する。
図5B】2つの高角度回折スキャンを示す。1つは、取り込み角が調整可能なX線コリメータを使用して取得されるものであり、もう1つは、取り込み角が一定のX線コリメータを使用して取得されるものである。
図6】本発明の或る実施形態におけるX線回折分析装置の概略図である。
図7】本発明の或る実施形態による、波長分散型蛍光X線分析を行うために配置されたX線分析装置の概略図である。
図8】本発明の或る実施形態による方法を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、視準方向11に対して垂直な軸15に沿った、X線ビームの発散を制限することによりX線ビームを視準方向11にコリメートするX線コリメータ10の概略図である。X線コリメータ10は、複数の矩形平板13の積層体を備え、これらの平板は、積層軸15に沿って互いから離間しており、複数の長尺コリメータチャネル16を規定する。コリメータチャネルは、隣接する複数対の平板間で規定される。図1に示すように、複数の平板は実質的に互いに平行である。各平板の長さ(平板の、視準方向11に沿った寸法)は、積層軸に沿って変わっている。つまり、図1に図説するように、積層されている各平板が同じ長さを有するのではなく、積層体となっている各平板のうちの少なくとも幾つかは長さが互いに異なる。特に、各平板の長さは、積層軸15に沿って一方向に減少している(l≧ln+1)。
【0054】
各長尺コリメータチャネル16は、分離距離dだけ互いから離間した、隣接する(即ち飛び飛びではない)平板同士の対により規定されている。コリメータチャネル16は、積層軸に沿った、入射X線ビームの発散を制限し、これにより、入射X線ビームを視準方向11にコリメートする。
【0055】
一般に、チャネルを規定する平板同士の間の分離距離dと、チャネルを形成する平板の長さlとにより、各コリメータチャネル16の取り込み角2αが決まる。
【0056】
【数1】
【0057】
視準方向に沿って入射する各X線、又は、視準方向から発散するがチャネルの取り込み角(つまりX線コリメータへの進入点での取り込み角)内にあるX線が、コリメータを通過する。取り込み角外の或る角度にて入射する各X線は、X線コリメータ10を通過することを、チャネルの両側の平板13により妨げられる。本発明によるX線コリメータの実施形態において、チャネルを形成する2つの平板のそれぞれの長さは互いに異なってもよい。この場合、チャネルの取り込み角は以下のように規定することができる。ここに、l及びlは、チャネルを形成する各平板のそれぞれの長さである。
【0058】
【数2】
【0059】
積層軸に沿って様々な平板長を有するX線コリメータ10を使用することは、X線分析の改良を達成するのに役立ち得ることを本発明者らは認識した。特に、この種類のX線コリメータを位置検知型X線検出器と組み合わせて使用すれば、コンパクトな装置で、長い測定時間を必要とすることなく、高強度高分解能のX線分析結果を(特にパラフォーカス型ブラッグブレンターノXRD及びWD-XRFでは)達成できることを本発明者らは認識した。
【0060】
使用時に、平行平板がX線検出器の回転軸に沿って積層された状態で、試料からのX線ビーム内にX線コリメータ10を位置決めすることができ、回折X線ビームの軸方向発散が制限される。X線コリメータの取り込み角は、X線コリメータを、横方向に、回転軸と平行な方向に、移動させることにより調整することができる。例えば、X線コリメータの軸方向位置をX線検出器の2θ位置に応じて調整することができ、測定されたX線強度と分解能との間の最適なバランスが達成される。X線検出器の角度スキャン中に、X線コリメータを横方向に平行移動させることによりX線コリメータの取り込み角を変化させることによって、X線コリメータが赤道面内に突出する量を最小にしつつ、取り込み角を簡便に調整しやすくなる。
【0061】
更に、X線コリメータを位置検知型X線検出器と共に使用すれば、測定時間に妥協することなく又は著しい空間的制約を課すことなく、高品質な測定を達成できることを本発明者らは認識した。X線コリメータと位置検知型X線検出器とを組み合わせることにより、時間的に効率の良いX線の態様で、高強度の測定を実現することができる。平板の長さをX線ビーム経路に沿って変化させるために(及び、これによってコリメータの取り込み角を変化させるために)回転することが必要な平行平板型X線コリメータとは対照的に、取り込み角を変えるために横方向に移動するように配置されたX線コリメータは、赤道面内に大きな空間を必要としない。更に、本発明者らは、X線コリメータの横方向位置を変化させることで取り込み角を調整することが、異なる軌道に沿ったX線を同じ開き角により制限することに役立つことができ、これにより、位置検知型X線検出器の異なるチャネルが、同じ取り込み角により制限されたX線を確実に記録することを認識した。
【0062】
図2は、図1のX線コリメータの、コリメータの入射側(ページの左手側)から見た端面図を示す。そのため、図2では、視準方向11はページの平面に延在する。図2に示すように、各コリメータチャネル16は、隣接する一対の平板13が、分離距離dだけ互いから離間することにより規定される。図2では、分離距離はコリメータチャネル16それぞれで同じである。一方、X線コリメータ10の幾つかの実施形態においては、分離距離は積層軸15に沿って変わってもよい。
【0063】
図3は、X線コリメータ10の別の実施形態の端面図を示す。図3のX線コリメータ10は、平板13同士の間の分離距離dが積層軸15に沿って変わること以外は、図1のX線コリメータと同じ構造を有する。幾つかの実施形態において、平板の長さが積層軸に沿って第1方向に増加(又は厳密に増加)する一方で、分離距離dが積層軸に沿って第1方向に減少(又は厳密に減少)してもよい。
【0064】
図1のX線コリメータ10の各平板の長さは、1つの平板から次の平板へ厳密に減少するもの(l>ln+1)として示すが、手前に隣接する平板の長さ以下になる(l≧ln+1)ように積層軸に沿って減少してもよい。X線コリメータは、平板の長さが厳密に減少する1つ又は複数の部分の他に、平板の長さが一定である1つ又は複数の部分を有してもよい。
【0065】
図4は、X線コリメータの別の実施形態の平面図を示す概略図である。図4のX線コリメータ10は、図4に示すように平板の長さが非線形に減少すること以外は、図1のX線コリメータと同じ構造を有する。平板長は、別の非線形関数に従って変わってもよい。例えば、平板長は、正弦関数に従って変わってもよい。
【0066】
平板長と分離距離の両方が積層軸に沿って変わる実施形態では、長さ及び分離距離のそれぞれが積層軸に沿って変わる多数の異なるやり方があることが認められるだろう。必要なのは、X線コリメータの少なくとも一部について、チャネルの取り込み角が積層軸に沿って一方向に減少することだけである。
【0067】
図5は、X線コリメータの取り込み角を回折角と共に変動させることの有効性を示す。図5A及び図5Bは回折スキャンの一部を示す。図5Aは回折スキャンの低角度部分を示すのに対して、図5Bは回折スキャンの高角度部分を示す。
【0068】
図5Aは、(取り込み角が固定された)ソーラ―スリットコリメータを使用して取得される回折スキャン31の低角度部分と、取り込み角が調整可能な平行平板型X線コリメータを使用して取得される回折スキャン33の低角度部分である。ソーラ―スリットコリメータの取り込み角は、(強度の代償として)低角度にて良好な分解能を達成するように選択された。平行平板型X線コリメータの取り込み角は、ソーラ―スリットコリメータの取り込み角と同じである。いずれの場合も、ピーク非対称性は非常に少ない。
【0069】
図5Bは、(低角度スキャンにおいて使用されるものと同じ取り込み角を有する)ソーラ―スリットコリメータを使用する回折スキャン31の高角度部分、及び、取り込み角が調整可能なX線コリメータを使用する回折スキャン33の高角度部分を示す。取り込み角が調整可能なX線コリメータの取り込み角は、回折角と共に増加した。図5Bに示すように、高角度では、固定されたX線コリメータスキャンは、調整可能なX線コリメータスキャンと比較して、強度が比較的低いが、ピーク非対称性のレベルは両方のスキャンで実質的に同じである。このことは、X線コリメータの取り込み角が、高角度での分解能に強い影響を与えないことを示している。
【0070】
図6は、本発明の或る実施形態におけるX線回折分析装置の概略図である。X線回折装置20は、パラフォーカス型ブラッグブレンターノジオメトリにおいてX線回折分析を実行するように配置されている。X線源21が、試料台24により支持された試料22に、発散入射X線ビームを照射する。X線源は、「線源」として入射X線ビームを生成するように構成されている。つまり、X線は陽極上の線から発生するように見える(図6では、この線はページの平面に延在する)。試料22により回折されたX線がX線検出器23にて受信される。
【0071】
使用時において、入射X線ビームと試料との間の角度が、ゴニオメータ(図示せず)により、入射角範囲に亘って調整される。2θ回折スキャンを取得するために、X線検出器23はゴニオメータ軸の周りで、様々な2θ位置へと回転される。ゴニオメータ軸はページの平面に延在する。
【0072】
位置検知型X線検出器23は、1次元(1D)X線検出器であり、ストリップ形検出素子を複数有し、これらの検出素子は、赤道方向に積層されるようにX線検出器全体に延在している。異なる検出素子により測定される強度同士の区別が可能であるという意味において、X線検出器は「位置検知型」である。このことにより、回折スキャンを(例えば0次元X線検出器と比べて)比較的迅速に行うことができる。
【0073】
X線コリメータ25は、試料22と位置検知型X線検出器23との間に配置されている。X線コリメータは、積層され、互いに平行な平板を複数の備え、これらの平板は、(角度2θを変化させるために位置検知型X線検出器23がその周りで回転されるゴニオメータ軸に沿った)軸方向における回折X線の発散を制限するように配置される。X線コリメータ25は、アクチュエータ26に連結されており、アクチュエータは、X線コリメータ25の位置をゴニオメータ軸に沿って(即ち、図6ではページの平面に対して垂直な方向に)調整するように構成されている。
【0074】
X線コリメータ25及び位置検知型X線検出器23は、試料から見て、位置検知型X線検出器23の有効領域の角度幅が平行平板の積層体の角度幅以下になるように配置されている。有効領域の角度幅、及び平行平板の積層体の角度幅は、2θ方向に沿って決められる。更に、平板の積層体の角度長(軸方向における積層体の寸法)は、試料から見て、検出素子の角度長よりも大きい。
【0075】
X線コリメータ25は、回折X線がコリメートされた後に回折X線ビームが位置検知型X線検出器23に到達するように、回折X線ビーム内に位置決めされる。
【0076】
X線回折装置は、コントローラ28を更に備える。コントローラ28は、アクチュエータ26を制御してX線コリメータ25の軸方向位置を調整するように構成されている。コントローラは、X線コリメータ25の位置を、ユーザコマンドに応答して変えるように構成されていてもよい。これの代わりに、コントローラ28は、X線コリメータの軸方向位置を自動的に調整するように構成されていてもよい。例えば、コントローラ28は、X線源21又は試料22又は位置検知型X線検出器23の位置に基づいて、X線コリメータの軸方向位置を調整するように構成されていてもよい。このようにして、X線コリメータ25の取り込み角を2θ角と同期させることができ、2θスキャンにわたる分解能とX線強度との間のバランスを改良しやすくなる。
【0077】
X線コリメータ25の軸方向位置は、2θ角が増加するにつれて、X線コリメータの、試料により視認される部分の取り込み角が確実に増加するように調整されてもよい。例えば、0~50°の間の2θ角では、1つ(又は複数の)比較的低い取り込み角が使用されてもよい。50°より大きい場合は、比較的高い取り込み角が使用されてもよい。
【0078】
前述したように、回折X線ビームの軸方向発散を制限するために、X線コリメータ25を回折ビーム経路内に配置することができる。入射X線ビームの軸方向発散を制限するために、X線コリメータ25を、入射X線ビーム経路内に配置される一次X線コリメータと組み合わせてもよい。幾つかの実施形態においては、一次X線コリメータは、回折X線ビーム経路内の可動絞りX線コリメータ25の他に、入射X線ビーム経路内に、可動絞りX線コリメータ(長さ及び分離距離の少なくとも一方が積層軸に沿って変わる)を有してもよい。幾つかの別の実施形態において、X線コリメータ25は、入射X線ビームに沿って各平板の長さを調整するように回転される可動絞りX線コリメータと組み合わせてもよい。幾つかの別の実施形態においては、X線分析装置は、一次X線コリメータとしてソーラ―スリットコリメータ(固定された取り込み角を有するもの)を備えてもよい。
【0079】
図7は、試料22の波長分散型蛍光X線分析を行うためのX線分析装置を示す。X線分析装置は、X線源21と、試料を支持するための試料台24と、X線コリメータ25と、1次元X線検出器23とを備える。試料22と1次元X線検出器との間には分光結晶29が配置される。
【0080】
1次元X線検出器の角度位置に基づいて、X線コリメータ25の横方向位置を調整し、位置検知型1次元X線検出器の角度位置と共にX線コリメータの取り込み角を変えることができる。
【0081】
図8は、本発明の或る実施形態による方法を示す。
【0082】
本方法は、試料を照射するステップ801と、X線コリメータを初期の軸方向位置に位置決めするステップ802と、試料からのX線を検出するステップ803とを含む。本方法は、X線コリメータを後続の軸方向位置に再位置決めするステップ804を更に含む。
【0083】
或る実施形態において、本方法は、試料にX線を入射角θにて照射するステップ801と、X線コリメータを第1軸方向位置に位置決めするステップ802と、試料からのX線(例えば試料により回折されるX線)を測定角度2θにて検出するステップ803とを含む。更に、本方法は、位置検知型X線検出器の角度を、2θ>2θである2θへ変化させてX線コリメータの軸方向位置を変化させ、X線コリメータの、位置検知型X線検出器により視認される部分の取り込み角を増加させるステップ804を含む。
【0084】
本方法の幾つかの実施形態において、X線コリメータの軸方向位置を変化させるステップは、コリメータを第1軸方向に移動させるステップを含んでもよい。本方法は、X線検出器の角度位置を角度2θから、2θ>2θである角度2θへ変化させてX線コリメータの軸方向位置を変化させるステップを更に含んでもよく、このとき、2θにおけるX線検出器の取り込み角が、X線コリメータの、X線検出器により2θにて視認される部分の取り込み角と等しいものとする。
【0085】
位置検知型X線検出器は、各検出チャネルに関連付けて強度を測定し、測定強度をプロセッサに出力するように構成されてもよい。X線分析装置は、各検出チャネルの測定強度と、その検出チャネルに関連付けられている角度位置とを、関連付けるように構成されているプロセッサを含んでもよい。プロセッサは、スキャン中の異なる時間において異なる検出器チャネルにより取得される強度測定値を組み合わせるように構成されていてもよい。このようにして、スキャンの角度位置に関連付けられた強度は、異なる検出器チャネルにより取得される強度測定値を組み合わせることにより決めることができる。
【0086】
幾つかの実施形態において、X線コリメータの軸方向位置は2θスキャン中に変化する。
【0087】
幾つかの実施形態においては、X線コリメータの軸方向位置は、測定の最中に(例えば多数の2θスキャンの最中に)変化する。例えば、或る実施形態において、本発明によるX線分析の方法は、第1軸方向位置にあるX線コリメータを用いて第1試料を分析するステップと、第1試料を第2試料(第1試料とは異なる材料を含むもの)に交換するステップと、異なる第2軸方向位置にあるX線コリメータを用いて第2試料を分析するステップとを含む。このようにして、X線コリメータの、異なる取り込み角を使用して、第1試料及び第2試料を分析することができる。特に、位置検知型X線検出器は、試料ごとに、異なるピークを測定することができる。分析すべき試料によっては異なる取り込み角を使用するのが適切な場合がある。X線コリメータの位置を調整することにより、試料に応じて取り込み角を簡便に変えることができる。これは、例えば金属試料を測定する際に特に有益な場合がある。
【0088】
概して、位置検知型X線検出器は、多数のストリップ形検出素子を有する1次元X線検出器であってもよい。これの代わりに、位置検知型X線検出器は、検出素子の2次元アレイを含んでもよい。このような実施形態においては、位置検知型X線検出器を1次元X線検出器として動作させてもよい。例えば、軸方向に沿った2Dアレイの画素のストリップをストリップ検出素子としてビニングすることができ、或いは、このように画素をビニングするために、データを2Dスキャンとして収集して処理してもよい。位置検知型X線検出器は、2θスキャンを連続的に又は多数の別々のステップにおいて、実行するように構成されていてもよい。
【0089】
詳細な説明及び特定の実施例は、装置及びシステム及び方法の例示的な実施形態を示す一方で、図説する目的を意図するにすぎず、本発明の範囲を限定することは意図されていないことに留意すべきである。本発明の装置及びシステム及び方法の、前述の及びその他の、特徴、態様、利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び、添付の図面から、より良好に理解されることになる。図は概略的なものにすぎず、縮尺通りに描かれていないことに留意すべきである。図全体を通じて、同じ参照符号を使用して同じ又は類似の部品を示していることに留意すべきである。
【0090】
開示する実施形態の変形例は、請求する発明を実施する際に、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲を検討することによって、当業者により理解され遂行され得る。特許請求の範囲において、「含む」「備える」「有する」という語は、別の素子又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」が複数を除外するものではない。
【0091】
図中の概略図は7つの平板を備えたX線コリメータを描いているが、X線コリメータが任意の数の平板を備えることができることが認められるだろう。
【0092】
平板の長さとは、積層軸に対して垂直な視準軸に沿った、平板の寸法のことである。
【0093】
各平板は、形状が矩形であってもよい。あるいは、複数の平板の1つ又はそれぞれが、矩形でなくてもよい。
【0094】
各平板の長さは、X線コリメータの、少なくとも或る部分の取り込み絞りが積層方向に減少(又は厳密に減少)する場合に限り、任意の仕方で変わってもよい。例えば、各平板の長さは、線形に減少してもよいし、又は、非線形に変わってもよい。例えば非線形に変わる場合は、各平板の長さは、」例え正弦関数に従って変わってもよい。
【0095】
X線コリメータの取り込み絞りが積層方向に減少(又は厳密に減少)する場合に限り、平板の分離距離は、一定であってもよく、又は、任意の仕方で(線形に又は非線形に)変わってもよい。
【0096】
コントローラは、X線回折装置の、別の構成要素と有線又は無線のいずれで通信接続されていてもよい。
【0097】
X線コリメータの各平板は、スペーサにより離間してもよい。スペーサは、X線に対して実質的に透明な材料を含んでもよい。
【0098】
X線検出器はゴニオメータに装着されてもよい。幾つかの実施形態において、(例えば対称走査又は非対称走査をしやすくするために)X線検出器とX線源の両方をゴニオメータに装着してもよい。幾つかの代わりの実施形態では、入射X線ビーム角度を変化させるために、X線検出器をゴニオメータに装着してもよく、試料の位置を変化させてもよい。
【0099】
X線分析装置は、入射X線ビーム経路と回折X線ビーム経路の両方に、調整可能なX線コリメータを含んでもよい。
【0100】
X線分析装置を、ブラッグブレンターノ分析又はWDXRF分析を実行するためのジオメトリにおいて示したが、位置検知型X線検出器をある角度範囲に亘って走査することを含む別のX線分析技術を実行するためにこの装置を別様に配置できることが認められるだろう。例えば、別のX線回折技術は、透過ジオメトリにおける粉末X線回折、デバイシェラー分析、斜入射X線回折(GIXRD)分析、(発散X線ビームの使用を含む)応力分析及びテクスチャ分析を含む。この装置は、X線反射率法(XRR)の実行にも使用することができる。
【0101】
複数のある手段が互いに異なる従属請求項に記載されているということだけで、これらの手段の組み合わせを有利に使用できないということにはならない。
【0102】
コンピュータプログラムは、適当な媒体上に、例えば別のハードウェアと共に又は別のハードウェアの一部として供給される光記憶媒体又は固体媒体上に、記憶/頒布されてもよい。しかし、コンピュータプログラムは、別の形態において、例えばインターネット又はその他の有線若しくは無線電気通信システムを介して頒布されてもよい。
【0103】
特許請求の範囲における任意の参照符号が、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-07-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射X線ビームの発散を制限することによりX線ビームを視準方向にコリメートするX線コリメータであって、
前記X線コリメータは、複数の平板を備え、
前記複数の平板は、互いから離間しており、且つ、積層軸に沿って、積層体として配置され、複数の長尺コリメータチャネルを規定しており、
各長尺コリメータチャネルは、分離距離だけ互いから離間した、隣接する一対の平板により規定されており、
前記X線コリメータは、前記積層軸に沿った発散を制限するように構成されており、
前記複数の平板のそれぞれは、或る長さを有し、
前記複数の平板の前記長さは、前記積層軸に沿って変わっている、
X線コリメータ。
【請求項2】
請求項1に記載のX線コリメータであって、
前記複数の平板の前記長さは、前記積層軸に沿って減少している、
X線コリメータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のX線コリメータであって、
前記X線コリメータの取り込み角が前記積層軸に沿って減少するように、
隣接する平板同士の対の間の前記分離距離は、前記積層体に沿って変わり、且つ、
前記複数の平板の前記長さは、前記積層軸に沿って変わる、
X線コリメータ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のX線コリメータであって、
前記X線コリメータは、第1部分と、第2部分とを有し、
前記第1部分と前記第2部分はそれぞれ、複数のコリメータチャネルを有し、
前記第1部分では、前記取り込み角が前記積層軸に沿って減少し、
前記第2部分では、前記取り込み角が一定である、
X線コリメータ。
【請求項5】
X線分析装置であって、
試料を支持するための試料台と、
前記試料に入射X線ビームを入射角Θにて照射するように配置されたX線源と、
位置検知型X線検出器であって、
回転軸の周りで回転することによりスキャン経路に沿って移動して前記試料からのX線を角度2θにて受信するように配置されており、
X線を受信するための複数の検出チャネルを有する、
位置検知型X線検出器と、
X線の軸方向発散を制限するように配置されているX線コリメータであって、
積層体であり且つ積層軸に沿って互いから離間している複数の平板を有し、
該X線コリメータの取り込み角は、前記積層軸に沿って変わり、
該X線コリメータは、軸方向に平行移動するように構成されている
X線コリメータと
を備える
X線分析装置。
【請求項6】
請求項5に記載のX線分析装置であって、
前記複数の検出チャネルはそれぞれ、検出ストリップを有し、
前記平板の積層体の幅は、前記検出ストリップの長さよりも大きい、
X線分析装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のX線分析装置であって、
隣接する平板同士の間の分離、及び、前記複数の平板の長さ、の少なくとも一方は、前記X線コリメータの前記取り込み角が前記積層軸に沿って減少するように、前記積層軸に沿って変わる、
X線分析装置。
【請求項8】
請求項5に記載のX線分析装置であって、
前記X線コリメータは、請求項1に記載のX線コリメータである、
X線分析装置。
【請求項9】
請求項5又は6に記載のX線分析装置であって、
前記X線コリメータは、前記試料と前記位置検知型X線検出器との間に配置されている、
X線分析装置。
【請求項10】
請求項5又は6に記載のX線分析装置であって、
前記X線コリメータを移動させるように構成されたコントローラを更に備える
X線分析装置。
【請求項11】
請求項5又は6に記載のX線分析装置であって、
前記位置検知型X線検出器の角度位置が変化する間、固定された入射角θで前記試料を照射するか、又は、
可変の入射角θで前記試料を照射し、且つ、前記位置検知型X線検出器の前記角度位置2θを前記入射角に応じて対称的に変わるよう制御するか、又は、
可変の入射角θで前記試料を照射し、且つ、前記位置検知型X線検出器の前記角度位置2θを前記入射角に応じて観測中心で変わるよう制御する
ように構成されている
X線分析装置。
【請求項12】
請求項5又は6に記載のX線分析装置であって、
パラフォーカス型ブラッグブレンターノ反射ジオメトリにおいて、X線回折分析を実行するか、
フォーカス型透過ジオメトリにおいて、X線回折分析を実行するか、
デバイジオメトリにおいて、X線回折分析を実行するか、
斜入射ジオメトリにおいて、X線回折分析を実行するか、
応力分析を実行するか、
テクスチャ分析を実行するか、若しくは、
X線反射率法を実行するように構成されているか、又は、
波長分散型蛍光X線分析を実行するように構成されている
X線分析装置。
【請求項13】
請求項5又は6に記載のX線分析を使用する方法であって、
前記試料にX線を照射するステップと、
前記X線コリメータが第1軸方向位置にある間に、前記試料からのX線を検出するステップと、
前記X線コリメータの軸方向位置を前記第1軸方向位置から第2軸方向位置へ変化させて、前記X線コリメータの前記取り込み角を変化させるステップと
を含む方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、
前記X線コリメータの前記軸方向位置を変化させるステップは、前記X線コリメータの前記取り込み角を増加させ、
前記方法は、
前記検出器がその第1軸方向位置にある間に、前記試料からのX線を測定角度2θにて検出するステップと、
前記位置検知型X線検出器の角度位置を、2θ>2θである角度2θへ変化させるステップと
を更に含む方法。
【請求項15】
請求項10に記載の装置に、請求項13に記載の方法の各ステップを実行させる命令を含むコンピュータプログラム製品。
【外国語明細書】