(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138465
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】顕微鏡サンプルの一部を抽出する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 1/28 20060101AFI20230922BHJP
G02B 21/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G01N1/28 J
G02B21/00
G01N1/28 G
G01N1/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023041604
(22)【出願日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】22162609
(32)【優先日】2022-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
【住所又は居所原語表記】Ernst-Leitz-Strasse 17-37, D-35578 Wetzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ファルク シュラウドラフ
【テーマコード(参考)】
2G052
2H052
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052AB16
2G052BA02
2G052BA15
2G052DA07
2G052EC17
2G052FD20
2G052GA28
2G052GA29
2G052GA32
2G052HA12
2G052HC02
2G052HC04
2G052HC32
2G052HC42
2G052JA06
2G052JA09
2G052JA11
2G052JA23
2H052AA13
2H052AF01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】顕微鏡サンプルの一部を抽出する方法に関する。
【解決手段】プロセス済み顕微鏡サンプルを得るために、顕微鏡サンプルに液体被覆を塗布するステップと、イメージングシステムを使用して、上記プロセス済み顕微鏡サンプル(252.3)の部分(258.2)について、少なくとも1つのマーカ(282)を生成するステップ(210)と、被覆されていない顕微鏡サンプル(252.4)を得るために、プロセス済み顕微鏡サンプル(252.3)から上記液体被覆の少なくとも部分を除去するステップ(212)と、抽出部分(258.3)を得るために、少なくとも1つのマーカに基づき、被覆されていない顕微鏡サンプル(252.4)の部分(258.2)を抽出するステップ(216)と、を有する方法。
【選択図】
図2b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、前記方法は、
プロセス済み顕微鏡サンプル(252.3)を得るために、顕微鏡サンプル(152,252.1,252.2)に液体被覆(272)を塗布するステップ(204)と、
イメージングシステム(110)を使用して、前記プロセス済み顕微鏡サンプル(152,252.3)の部分(258.2)について、少なくとも1つのマーカ(282)を生成するステップ(210)と、
被覆されていない顕微鏡サンプル(252.4)を得るために、前記プロセス済み顕微鏡サンプル(152,252.3)から前記液体被覆(272)の少なくとも部分を除去するステップ(212)と、
抽出部分(258.3)を得るために、少なくとも1つの前記マーカに基づき、前記被覆されていない顕微鏡サンプル(152,252.4)の一部(258.2)を抽出するステップ(216)と、
を有する方法。
【請求項2】
前記プロセス済み顕微鏡サンプル(152,252.3)の前記部分についての少なくとも1つの前記マーカ(282)を生成するステップ(210)は、
前記イメージングシステム(110)を使用して、前記プロセス済み顕微鏡サンプル(152,252.3)を視覚化すること(206)と、
視覚化した前記プロセス済み顕微鏡サンプル(152,252.3)に基づいて、少なくとも1つの前記マーカ(282)を特定することと、
を有するか、または、これらに基づいている、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの前記マーカ(282)は、前記被覆されていない顕微鏡サンプル(152,252.4)の前記部分(258.2)の抽出のために後で使用するために、デジタル的に生成され、格納される、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記被覆されていない顕微鏡サンプル(152,252.4)の前記部分(258.2)は、レーザマイクロダイセクションを用いて抽出される、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記イメージングシステム(110)を有するシステム(100)であって、レーザマイクロダイセクションを実行するように構成されているシステム(100)を使用し、前記被覆されていない顕微鏡サンプル(152,252.4)の前記部分(258.2)は、レーザマイクロダイセクションを用いて抽出される、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記被覆されていない顕微鏡サンプル(152,252.4)の前記部分(258.2)は、ニードルを使用して前記被覆されていない顕微鏡サンプル(152,252.4)を切ることと、前記被覆されていない顕微鏡サンプル(152,252.4)に緩衝液を塗布することと、のうちの1つを用いて抽出される、
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記液体被覆(272)は、ポリスチレンおよびキシレンを有する、
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記液体被覆(272)の少なくとも前記部分は、キシレンを用いて、前記プロセス済み顕微鏡サンプル(152,252.3)からを除去される、
請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記抽出部分(258.3)は、500μm未満の最大直径を有するか、または、
前記抽出部分(258.3)は、次のうちの1つ、すなわち、個別の生体細胞、複数の個別の細胞から成る細胞集団、生体細胞のオルガネラ、生体細胞の部分、細胞埋込みマトリックスのうちの1つである、
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記顕微鏡サンプル(152,252.1)は、スライド(150)に配置され、
前記スライド(150,250)は、ガラススライドに膜(254)が配置されたガラススライド(256)またはフレームスライド内に膜が配置されたフレームスライドを有し、
前記顕微鏡サンプル(152,252.1)は、前記膜(254)に配置される、
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記液体被覆(272)が前記顕微鏡サンプル(152,252.1)に塗布される前に、前記顕微鏡サンプル(152,252.1)は、処理され(202)、前記プロセス済み顕微鏡サンプル(252.3)を得る、
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、前記液体被覆(272)の少なくとも前記部分が前記プロセス済み顕微鏡サンプル(152,252.3)から除去される前に、少なくとも1つの参照マーカ(280.1,280.2)を生成するステップ(208)をさらに有し、
前記方法は、前記液体被覆(272)の少なくとも前記部分が前記プロセス済み顕微鏡サンプル(152,252.3)から除去された後、前記被覆されていない顕微鏡サンプル(152,252.4)の前記部分(258.2)を抽出するために、少なくとも1つの前記参照マーカ(280.1,280.2)と、少なくとも1つ前記マーカ(282)と、を相関付けるステップをさらに有する、
請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
イメージングシステム(110)を有するシステム(100,300)であって、前記システム(100,300)は、
前記イメージングシステム(110,310)を使用して、液体被覆(272)が塗布された顕微鏡サンプル(152,252)であるプロセス済み顕微鏡サンプル(152,252.3)の部分(258.2)について、少なくとも1つのマーカ(282)を生成し、
被覆されていない顕微鏡サンプル(252.4)を得るために、前記プロセス済み顕微鏡サンプル(152,252.3)から前記液体被覆(272)の少なくとも一部を除去し、
少なくとも1つの前記マーカ(282)に基づいて、前記被覆されていない顕微鏡サンプル(152,252.4)の前記部分(258.2)を抽出する、
ように構成されている、システム(100,300)。
【請求項14】
前記システム(100,300)は、ユーザーインタフェース(142,242)を描画するようにさらに構成されており、前記システム(100)は、
前記イメージングシステム(110)を使用して、前記ユーザーインタフェース(142,242)に前記プロセス済み顕微鏡サンプル(152,252.3)を視覚化し、
前記ユーザーインタフェース(142,242)から、少なくとも1つの前記マーカ(282)に関連する入力データを受け取り、
前記入力データに基づいて、前記プロセス済み顕微鏡サンプル(152,252.3)の前記部分(258.2)について、少なくとも1つの前記マーカ(282)を生成する、
ようにさらに構成されている、
請求項13記載のシステム(100,300)。
【請求項15】
前記システム(100,300)は、前記顕微鏡サンプル(152,252.1,252.2)に前記液体被覆(272)を塗布するようにさらに構成されている、
請求項13または14記載のシステム(100,300)。
【請求項16】
前記システム(100,300)は、レーザマイクロダイセクションを実行するようにさらに構成されており、前記被覆されていない顕微鏡サンプル(152,252.4)の前記部分(258.2)は、レーザマイクロダイセクションを用いて抽出される、
請求項13から15までのいずれか1項記載のシステム(100,300)。
【請求項17】
コンピュータプログラムがプロセッサ上で動作する場合に、次のステップ、すなわち、
少なくとも1つの参照マーカ(280.1,280.2)と、少なくとも1つのマーカ(282)と、を相関付けるステップであって、少なくとも1つの前記マーカ(282)は、プロセス済み顕微鏡サンプル(152,252.3)の部分(258.2)について生成されており、前記プロセス済み顕微鏡サンプル(152,252.3)は、液体被覆(272)が塗布された顕微鏡サンプル(152,252)であるステップと、
被覆されていない顕微鏡サンプル(152,252.4)から前記部分(258.2)を抽出するようにシステム(100,300)を制御するステップであって、前記被覆されていない顕微鏡サンプル(152,252.4)は、前記液体被覆が除去されている前記プロセス済み顕微鏡サンプル(152,252.3)であるステップと、
を実行するためのプログラムコードを備えたコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は実質的に、顕微鏡サンプルの一部を抽出する方法と、対応するシステムと、コンピュータプログラムと、に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザマイクロダイセクションは、顕微鏡サンプルを視覚化し、レーザを使用して顕微鏡サンプルの一部を切り取り(抽出)、例えば、後続の分子生物学的プロセスにそのような抽出部分を利用できるようにする技術である。このために、サンプルは、膜ベーススライドに配置され、後の検査対象のサンプルにおける生体分子を損傷しないように優しく染色され、視覚化され、抽出(切取り)のためにマーキングされることが可能である。対応するワークフローを有するこのようなマイクロダイセクションは、例えば、米国特許第10533931号明細書に記載されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
上述の状況を考慮すると、顕微鏡サンプルの一部の抽出における改善が必要である。本発明の実施形態によると、独立請求項の特徴を有する方法、システムおよびコンピュータプログラムが提案される。別の有利な発展形態は、従属請求項および後続の説明の対象を形成する。
【0004】
本発明の1つの実施形態は、顕微鏡サンプルの一部を抽出する方法に関する。本方法は、以下、すなわち、プロセス済み顕微鏡サンプルを得るために、顕微鏡サンプルに液体被覆を塗布することを有する。1つの実施形態では、上記顕微鏡サンプルに上記液体被覆を塗布する前に、上記顕微鏡サンプルを処理、例えば染色することができる。1つの実施形態では、スライドに上記顕微鏡サンプルを配置する。上記スライドは、ステージに配置可能である。さらに、顕微鏡のようなイメージングシステムを使用して、上記プロセス済み顕微鏡サンプルの一部について、少なくとも1つのマーカ(または抽出マーカ)を生成する。このようなマーカは好ましくは、1つもしくは複数の個別のマーカ(点のようなもの)であってもよいかまたはこれを有してよく、または1つもしくは複数の形状、線、円、楕円、十字、数字等などであってもよいかまたはこれを有していてもよい。このような形状は、例えば、どこで切るべきかを示すことができる。さらに、被覆されていない顕微鏡サンプルを得るために、プロセス済み顕微鏡サンプルから、上記液体被覆の少なくとも一部を除去する。使用する特定のワークフローに応じて、例えば、顕微鏡サンプルをステージから除去し、その後、そこに再配置することができる。さらに、抽出部分を得るために、少なくとも1つのマーカに基づき、被覆されていない顕微鏡サンプルの部分を抽出する。抽出とは特に、顕微鏡サンプルから部分を物理的に抽出することをいい、抽出部分は、例えば、落下、射出、付着によって、例えば、容器内にまた容器上に転送可能であることに注意されたい。
【0005】
顕微鏡サンプルに液体被覆を塗布することにより、特に、上記イメージングシステムを用いた視覚化が改善されることに起因してマーカの生成が改善される。液体被覆の塗布とは特に、液体が顕微鏡サンプルを覆い、かつ/または顕微鏡サンプルに浸透するように顕微鏡サンプルの表面に液体を塗布することをいう。液体被覆の液体は特に、サンプルによって反射または放出される光に対してプラスの作用を有する。したがって、これにより、顕微鏡サンプルの視覚化が、ゆえにマーカの生成と顕微鏡サンプルの部分の抽出とが改善される。
【0006】
このような液体被覆(または液体被覆スリップ)は、本発明の1つの実施形態では、ポリスチレンおよびキシレンを有する。例えば、ポリスチレンおよびキシレンは、2つの成分が同じ量を有する混合物で供給可能である。このような混合物は、容易に塗布可能であり、このような混合物により、視覚化プロセスが十分に改善される。例えば、特に少量の別の成分が含まれていてよい。
【0007】
しかしながら、このような液体被覆は、抽出部分の後続のプロセスにマイナスの影響を与える得ることが判明した。このような抽出部分から液体被覆を除去することが困難であり、時間を浪費することがわかっている。特に、(極めて)小さな部分については、液体被覆を除去するために部分を扱うことさえできないことがある。今や、発明者によって認識されたのは、マーカを生成した後かつ顕微鏡サンプルから一部を抽出する前に、プロセス済み顕微鏡サンプルから少なくとも部分的に液体被覆を除去することにより、このような困難が克服されることである。切断されていない(したがってより大きい)サンプルから、このような液体被覆を取り出すことは格段に容易である。本発明の1つの実施形態では、(除去剤として)キシレンを用いて、上記プロセス済み顕微鏡サンプルから上記液体被覆を除去する。例えば、液体被覆を洗い流すために、プロセス済み顕微鏡サンプルにキシレンを塗布することができるか、またはキシレンが充填された容器に、プロセス済み顕微鏡サンプルを入れることができる。
【0008】
本発明の1つの実施形態では、プロセス済み顕微鏡サンプルの上記部分についての少なくとも1つの上記マーカの生成は、次を有するか、または次に基づいている、すなわち、上記イメージングシステムを使用して、プロセス済み顕微鏡サンプルを視覚化することと、視覚化したプロセス済み顕微鏡サンプルに基づいて、少なくとも1つの上記マーカを決定することと、を有するか、またはこれらに基づいている。これにより、例えば、ユーザーによる監視が可能になる。また、ユーザーは、視覚化した顕微鏡サンプルを考慮して、少なくとも1つのマーカを生成するために入力を行うことができる。
【0009】
本発明の別の実施形態によると、上記プロセス済み顕微鏡サンプルの上記部分の抽出に後で使用するために、少なくとも1つの上記マーカをデジタル的に生成して格納する。これにより、例えば、液体被覆が除去される間、別のタスクのためにイメージングシステムを使用することができる。
【0010】
本発明の別の実施形態によると、レーザマイクロダイセクションを用いて、被覆されていない顕微鏡サンプルの上記部分を抽出する。レーザマイクロダイセクションは、顕微鏡サンプルの極めて小さな部分であっても、高速かつ正確な抽出(切取り)ができるようにする技術である。
【0011】
1つの実施形態では、上記イメージングシステムを有するシステムを使用することができ、上記システムは、レーザマイクロダイセクションを実行するように構成されている。このようなシステムは、イメージング用の典型的な顕微鏡を有しかつさらにレーザマイクロダイセクションを実行するように構成されている顕微鏡システムであってよい。このような複合システムにより、高速かつ効率的な作業が可能になる。このような複合システムにより、特定の利点が提供されるが、2つの異なるまたは別体のシステム、顕微鏡のようなイメージングシステムとレーザマイクロダイセクションシステムとを使用できることに注意されたい。これにより、例えば、対応するタスク、イメージング(マーカの生成を含む)と、レーザマイクロダイセクションと、のためにそれぞれ指定されているシステムを使用することができる。
【0012】
本発明の別の実施形態によると、次のうちの1つを用いて、被覆されていない顕微鏡サンプルの上記部分を抽出する。すなわち、ニードルを使用して、被覆されていない顕微鏡サンプルを切ることと、被覆されていない顕微鏡サンプルに緩衝液を塗布することと、により、被覆されていない顕微鏡サンプルの上記部分を抽出する。テンプレートを使用して緩衝剤(または緩衝液)を塗布することにより、プロセスをさらに簡素化することができる。このような技術は、レーザマイクロダイセクションとは異なるが、例えば、特定のニーズまたは特定の顕微鏡サンプルに応じて、レーザマイクロダイセクションの代わりに(またはそれに加えて)使用可能である。ニードルを使用する技術は好ましくは、自動実行される。レーザマイクロダイセクションと同様に、これらの択一的な技術には別体のシステムが使用可能である。
【0013】
本発明の別の実施形態によると、上記抽出部分は、500μm未満の最大直径を有する。また、このような直径は、300μm未満または100μm未満であってよい。択一的には、上記抽出部分は、次のうちの1つ、すなわち、個別の生体細胞、複数の個別の細胞から成る細胞集団、生体細胞のオルガネラ、生体細胞の一部、細胞埋込みマトリックスのうちの1つである。オルガネラまたは生体細胞の部分は、例えば、核、またはミトコンドリアもしくは細胞の封入体等の別の特定の構造を有していてよい。細胞埋込みマトリックスは特に、例えば、細胞外マトリックス、コラーゲン、結合組織である。細胞、オルガネラまたはその部分のサイズも、直径が500μm未満であってよいことに注意されたい。いずれの場合にも、顕微鏡サンプルから抽出されるこのような小部分の扱いは困難であり、ゆえに、抽出前に液体被覆を提案したように除去することは、特に有利である。
【0014】
信頼性および検証のために、サンプルを有しない同じサイズの純粋な膜を、同じスライドにおける同じ液体で覆い、その後、下流プロセスのためにネガティブコントロールとして使用することができる。これにより、後に下流分析の結果を変化させ得る、液体被覆および/または除去剤によって起こり得る汚染を検出することができる。
【0015】
本発明の別の実施形態によると、本方法はさらに、プロセス済み顕微鏡サンプルから上記液体被覆の少なくとも上記部分を除去する前に、少なくとも1つの参照マーカを生成することを有する。このような参照マーカは、プロセス済み顕微鏡サンプルにおいて、またはサンプルが配置されている上記スライドにおいて生成可能である。2つ以上の参照マーカの場合、それぞれのサンプルおよびスライドにおいて1つまたは複数のマーカを生成することもできる。上記方法はさらに、プロセス済み顕微鏡サンプルから上記液体被覆の少なくとも上記部分を除去した(またはすでに除去された)後に、次を有する。すなわち、被覆されていない顕微鏡サンプルの上記部分を抽出するために、少なくとも1つの上記参照マーカと少なくとも1つの上記マーカとを相関付けることを有する。このようにして、例えば、液体被覆を除去するために、被覆されていない顕微鏡サンプルがステージから除去された場合であっても、または、抽出のために、被覆されていない顕微鏡サンプルが、抽出のために、イメージングシステムとは別体で設けられている別のシステムに移動される場合も、(抽出)マーカと、被覆されていない顕微鏡サンプルと、を容易かつ適切に関連付けることができる。
【0016】
本発明の別の実施形態は、イメージングシステムを有するシステムに関する。上記システムは、次のように構成されている。すなわち、上記イメージングシステムを使用して、プロセス済み顕微鏡サンプルの一部について、少なくとも1つのマーカを生成するように構成されており、ここで、プロセス済み顕微鏡サンプルは、それに液体被覆が塗布された顕微鏡サンプルである。1つの実施の形態にでは、システムは、上記顕微鏡サンプルに上記液体被覆を(自動的に)塗布するようにも構成されている。さらに、システムは、被覆されていない顕微鏡サンプルを得るために、また少なくとも1つの上記マーカに基づき、被覆されていない顕微鏡サンプルの一部を(物理的に)抽出するために、上記プロセス済み顕微鏡サンプルから上記液体被覆の少なくとも部分を除去するように構成されている。このようなシステムは、例えば、顕微鏡を備えかつステージから、例えばキシレンを有する容器内に顕微鏡サンプルを転送してステージに戻すことができるデバイスを備えた顕微鏡システムであってよい。
【0017】
本発明の別の実施形態によると、システムはさらに、ユーザーインタフェースを描画するように構成されており、上記システムはさらに、次のように構成されている。すなわち、上記イメージングシステムを使用して、前記ユーザーインタフェースに上記プロセス済み顕微鏡サンプルを視覚化し、上記ユーザーインタフェースから、少なくとも1つの上記マークに関連する入力データを受け取り、少なくとも1つの上記マーカに関連する入力データを受け取り、また上記入力データに基づいて、プロセス済み顕微鏡サンプルの上記部分について、少なくとも1つの上記マーカを生成するように構成されている。
【0018】
本発明の別の実施形態によると、システムはさらに、レーザマイクロダイセクションを実行するように構成されており、ここでは、被覆されていない顕微鏡サンプルの上記部分は、レーザマイクロダイセクションを用いて抽出される。ゆえに、レーザを使用する前に被覆が除去されるため、レーザ切断ができない液体被覆であっても使用可能である。
【0019】
システムの利点および別の実施形態に関しては、本明細書において相応に当てはまる、方法の説明を参照されたい。
【0020】
本発明の別の実施形態は、コンピュータプログラムがプロセッサ上で動作する場合に、次のステップ、すなわち、少なくとも1つの参照マーカと少なくとも1つのマーカとを相関付けるステップと、好ましくはレーザマイクロダイセクションを用いて、被覆されていない顕微鏡サンプルから、上記部分を抽出するようにシステムを制御するステップと、を実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムに関する。少なくとも1つの上記マーカは、上述のように除去される、プロセス済み顕微鏡サンプルの一部について生成されている。プロセス済み顕微鏡サンプルは、液体被覆が塗布された顕微鏡サンプルである。被覆されていない顕微鏡サンプルは、液体被覆がそこから除去された顕微鏡サンプルである。これにより、マーカを生成した後かつ顕微鏡サンプルの部分を抽出する前に、顕微鏡サンプルから液体被覆を除去することができる。
【0021】
本発明の別の利点および実施形態は、説明および添付の図面から明らかになろう。
【0022】
前述の特徴および以下でさらに説明される特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、それぞれ示した組み合わせだけでなく、別の組み合わせにおいて、または単独でも使用可能であることに注意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の1つの実施形態による方法を実施するために使用可能なイメージングシステムを備えたシステムを示す概略図である。
【
図2a】本発明の1つの実施形態による方法の概略図である。
【
図2b】本発明の1つの実施形態による方法の概略図である。
【
図3】本発明の1つの実施形態による方法を実施するために使用可能なイメージングシステムを備えた別のシステムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1には、イメージングシステム110を有するシステム100が略示されている。1つの実施形態では、イメージングシステム110は顕微鏡であってよく、ゆえにシステム100は顕微鏡システムであってよい。システム100は、本発明の1つの実施形態による方法を実施するために使用可能である。最初に、システム100をより詳細に説明する。
図2aおよび
図2bに関して、また
図1のシステム100にも関連して、本方法を説明する。
【0025】
イメージングシステム110は、顕微鏡サンプル152を視覚化するために使用可能である。1つの実施形態では、イメージングシステム110は、照明光ビーム114を生成するための照明光学系112(例えば光源を有する)を有し、照明光ビーム114は、反射器116を介して対物レンズ118に、次いで顕微鏡サンプル152に配向される。顕微鏡サンプル152から反射される光は、イメージング光ビーム122として、対物レンズ118と、反射器116と、別の反射器120と、を介して検出器124に配向される。イメージングシステム110はさらに、ユーザーが顕微鏡サンプルを検査するための接眼レンズ126を有していてよい。
【0026】
図1に示した入射照明の代わりに、透過光照明を使用してもよいことに注意されたい。後者の場合、照明光ビームは、サンプル152の下方からサンプルを照明することになる。
【0027】
1つの実施形態では、イメージングシステム110はさらに、ステージ(または顕微鏡ステージ)130を有する。顕微鏡サンプル152は、スライド150に配置可能であり、(顕微鏡サンプル152が上に配置されている)スライド150は、顕微鏡サンプル152を視覚化できるようにステージ130に配置可能である。1つの実施形態では、上記スライドは、ガラススライドにまたはその上に膜が配置されたガラススライド、またはフレームスライド内に膜が配置された(例えば、金属製またはプラスチック製の)フレームスライドを有する。次いで、上記顕微鏡サンプル152を上記膜の上に配置する。
【0028】
1つの実施形態では、システム100はさらにコントローラまたはコンピュータ140を有する。システム100はまた、例えば、ディスプレイ144、キーボード146およびコンピュータマウス148を有していてもよい。システム100は、例示的にディスプレイ144上に示されているユーザーインタフェースまたはグラフィカルユーザーインタフェース142を描画または提供するように構成可能である。このようにして、検出器124によって取得された顕微鏡サンプル152からの画像をコントローラ140において受け取って、ユーザーに対し、ユーザーインタフェース142またはディスプレイ144を介して表示することができる。
【0029】
このようなシステム100によって、例えば、ユーザーインタフェース142におけるユーザーに対して顕微鏡サンプル152を視覚化することができる。次いで、ユーザーインタフェース142を用いて、ユーザーは、顕微鏡サンプル152についてのマーカおよび/または参照マーカを生成するために、システム100に対する入力を生成することもでき、このマーカおよび/または参照マーカにしたがい、顕微鏡サンプル152を後で抽出することができる。
【0030】
1つの実施形態では、システム100はさらに、レーザマイクロダイセクションを実行するように構成されている。この場合、システム100、(または特にそのイメージングシステム110)は、レーザ132を有することができ、このレーザ132は、反射器116を介して対物レンズ118に、次いで顕微鏡サンプル152に配向されるレーザビーム134を生成することができる。例えば、顕微鏡サンプル152の一部を抽出することを目的として、そのまわりの所望の経路に沿ってレーザビーム134を配向するために、反射器116内にまたは別の適切な位置にスキャニングミラー136が含まれていてよい。コントローラ140は、例えば、レーザ132を制御するためにも使用可能である。
【0031】
1つの実施形態では、容器138は、例えばステージ130内またはステージ130に設けられている。このようにして、一部が、顕微鏡サンプルから抽出され、下方に落下する。これには、膜を有するフレームスライドが必要となり得ることに注意されたい。特定の種類のレーザマイクロダイセクション装置に応じて(とにかくレーザマイクロダイセクションが使用される場合)、別の種類の容器および/または容器の別の位置が使用されることがある。
図1に示した実施例は、説明だけを目的としている。
【0032】
システム100は、本発明の1つの実施形態による方法を実施するために使用可能な、例示的なシステムであることに注意されたい。別のシステムまたはイメージングシステムも同様に使用可能である。特に、イメージングおよびレーザマイクロダイセクションを可能にする複合システムを使用する必要はない。イメージングシステムとは別体で設けられているレーザマイクロダイセクション用のシステムも使用可能である。また、レーザマイクロダイセクションとは別の抽出方法も使用可能である。
【0033】
図2aおよび
図2bには、ワークフローを用いて、本発明の1つの実施形態による方法が略示されている。ステップは、
図2aから始まり、
図2bに続くことに注意されたい。
【0034】
ステップ200では、スライド250を準備する。スライド250は、1つの実施形態では、上(または中)に配置された膜254を有するガラススライドまたはフレームスライド256を有する。スライド250は、例えば、
図1のスライド150に対応してよい。さらに、膜254に顕微鏡サンプル252.1を配置する。顕微鏡サンプル252.1は、例えば、
図1の顕微鏡サンプル152に対応してよい。ガラススライドの代わりに、膜が中に配置されるフレームスライドが、前述のように使用されてもよいことに注意されたい。このようなフレームスライドは、例えば、鋼またはアルミニウム等の金属等から作製されていてよい。このようなフレームスライドはまた、例えば、プラスチックから作製されてもよい。
【0035】
顕微鏡サンプル252.1は、例えば、顕微鏡サンプルにおいて特に重要であり得る2つの部分258.1および258.2を有する。例えば、ユーザーは、さらなる分析のために、顕微鏡サンプル252.1からこれらの一方または両方を(物理的に)抽出したいことがある。これらの部分258.1,258.2は、例えば、細胞または核のようなオルガネラであってよい。
【0036】
ステップ202では、顕微鏡サンプルを処理し、例えば、染色する。このことは染色材料または染色液262が満たされた容器260を用いて示されている。例えばピペット264を用いて顕微鏡サンプルにこのような染色液262を塗布することができる。例えば、このような染色液は、
図2aにおいてステップ202について示したように、部分258.1,258.2の色を変化させるが、顕微鏡サンプルの残りの部分の色を変化させない。
【0037】
処理または染色した後、処理済み顕微鏡サンプル252.2が得られる。スライドまたは膜に顕微鏡サンプルを配置する前に処理を行ってもよいことに注意されたい。さらに、自動化されたプロセスにおいて、かつ複数の顕微鏡サンプルについて(染色のような)処理を行うことができることに注意されたい。特定の処理装置または染色装置が使用可能である。
図2aにおいてステップ202について
図2aに示した状況は、説明だけを目的としている。さらに、同じ顕微鏡サンプルについて、複数の処理ステップおよび/または異なる処理ステップを行ってよいことに注意されたい。
【0038】
ステップ204では、プロセス済み顕微鏡サンプル252.3を得るために、(処理済み)顕微鏡サンプルに液体被覆を塗布する。このことは、液体被覆または液体272を充填した容器270によって示されている。このような液体272で顕微鏡サンプルを被覆するために、例えばピペット274を用いて顕微鏡サンプルにこのような液体272を塗布することができる。液体被覆の塗布は、スライドまたは膜に顕微鏡サンプルを配置する前に行われてもよいことに注意されたい。これに関して、ステップ202は、必須のステップではないが、多くの場合、例えば、染色によって顕微鏡サンプルの特定の部分を示すために使用されることにも注意されたい。
【0039】
さらに、液体被覆の塗布は、自動化されたプロセスにおいて、かつ顕微鏡サンプルについて行われてもよいことに注意されたい。特定の塗布装置またはデバイスが使用可能である。このような塗布装置またはデバイスは、1つの実施形態では、例えば、
図1に示したシステム100の一部であってもよいし、システム100に組み込まれていてもよい。
図2aにおいてステップ204について示した状況は、説明だけを目的としている。
【0040】
このような液体被覆または液体272(液体被覆スリップとも称される)は、1つの実施形態では、ポリスチレンおよびキシレンを有する。例えば、ポリスチレンおよびキシレンは、2つの成分が同じかまたはほぼ同じ量(または割合)を有する混合物で供給可能である。別の成分も、特に少量で含まれていてもよい。例えば、2つの割合の合計が100%以下でなければならないことを考慮すれば、ポリスチレンは、30%~70%の割合で供給可能であり、キシレンも30%~70%の割合で供給可能である(別の成分が存在していてよい)。比は理想的には、約50%対50%である。別の1つの実施形態では、液体被覆または液体被覆材料272は、25%の水および75%のエタノールまたは100%までのより多いエタノール量の比で、水および/またはエタノールを有していてもよい。エタノールの代わりに、水、ポリスチレン、キシレン、アセトン等の別の液体が使用されてよい。
【0041】
ステップ206では、プロセス済み顕微鏡サンプル252.3を視覚化する。これは、イメージングシステム、例えば、
図1に示した顕微鏡を使用することによって実行可能である。特に、プロセス済み顕微鏡サンプル252.3を有するスライド250は、
図1に示したステージ130のようなステージに配置可能である。液体被覆を塗布する前に、顕微鏡サンプルと共にスライド250をステージに配置してもよいことに注意されたい。これは、液体被覆をどのように塗布するかという正確な仕方に依存し得る。
【0042】
プロセス済み顕微鏡サンプル252.3を視覚化することは、例えば、プロセス済み顕微鏡サンプル252.3の画像(特に、リアルタイムまたはライブ画像)を取得することと、それをユーザーインタフェース242のディスプレイに表示または提示することと、を有していてよい。
図2aに示したユーザーインタフェース242は、例えば、
図1のユーザーインタフェース142に対応していてよい。このようにして、後で説明するように、ユーザーは、抽出のためにマーカを作成または生成する箇所を決定することができる。
【0043】
ステップ208では、少なくとも1つの参照マーカを生成する。
図2aに示した実施例では、一方ではスライド250の左上に、他方ではスライド250の右下に2つの参照マーカ280.1および280.2を生成する。例えば、このような参照マーカは、
図1に示されているように、システム100のレーザを用い、参照マーカ280.1および280.2が示されている位置において、スライド250の膜254を切ることによって生成可能である。このような参照マーカは、(抽出)マーカと顕微鏡サンプルとをより良好に、またはより正確に関連付けるために使用可能である(このことについては後で説明する)。これは、後続のステップの1つについてステージからスライド250を除去しなければならない場合に、ステージにおけるスライド250の再配置が必要であるケースにおいて特に重要である。
【0044】
(抽出)マーカと顕微鏡サンプルとの関連付けは一般的に、このような参照マーカがなくても可能であることに注意されたい。したがって、ステップ208は、選択的なステップである。ステップ208は、ステップ206の前に行ってもよいことにも注意されたい。
【0045】
ステップ210では、少なくとも1つのマーカまたは抽出マーカ282を生成する。1つの実施形態では、これは、
図2bにおいてステップ210について右側に示したように、視覚化したプロセス済み顕微鏡サンプル252.3に基づいている。ゆえに、プロセス済み顕微鏡サンプル252.3を視覚化するステップ206は、ステップ210の一部またはサブステップとみなすことができる。
【0046】
図示した実施例では、顕微鏡サンプルの部分258.2を抽出する。ゆえに、例えば、所定の距離で部分258.2を取り囲むマーカ282を生成する。図示した実施例では、マーカ282は線である。しかしながら、別のタイプのマーカ、例えば、複数の点および/または線もしくは別の形状等のいくつかの部分が譲許可能である。複数の部分を抽出する場合、マーカとして複数の線を生成することもできる。このようなマーカは特に、(レーザマイクロダイセクションの場合)抽出すべき部分の周りで、レーザビームをガイドしなければならない箇所を示そうとするものである。このようなマーカは特に、抽出すべき部分からのマーカの距離に対してレーザビームの幅を考慮するように生成されるべきである。すなわち、レーザは、切り取るべき部分に当たるべきでなく、その部分の隣でのみ膜を切るべきである。
【0047】
このようなマーカの生成は、ユーザーインタフェース242を使用して実行可能である。例えば、ユーザーは、ユーザーインタフェース242またはそのディスプレイにおいて、視覚化したプロセス済み顕微鏡サンプル252.3を見ることができ、ユーザーインタフェース242またはそのコンピュータマウスを使用して、(マーカとして)線を描くことができる。このようなマーカを生成することは、ユーザーからの何らかの入力を必ずしも必要としないことに注意されたい。このようなプロセスは、例えば、染色部分の輪郭を見つける画像解析を用いて、自動化されて実行可能でもある。
【0048】
いずれの場合も、顕微鏡サンプルに塗布された液体被覆により、ユーザーが見ることができるかまたは画像解析処理が使用可能な、顕微鏡サンプルの画像が改善される。見え方がこのように改善される理由は、例えば、顕微鏡サンプルに塗布される液体により、発光および/またはサンプルによる反射にプラスに作用するためである。
【0049】
1つの実施形態では、ステップ210において参照マーカと(抽出)マーカとの相対座標を特定することもできる。これらの相対座標は、後で、参照マーカと(抽出)マーカとを相関付けるために使用可能である。
【0050】
実践的にはマーカ282は、一般に顕微鏡サンプルまたはスライド自体において見えることはなく、ユーザーインタフェースにおいてのみ見えることに注意されたい。
図2bにおいてステップ210の左側に示したマーカ282は、例示だけを目的としている。むしろ、マーカまたは抽出マーカ282はデジタル的に生成可能である。一旦、マーカ282を生成してしまえば、プロセス済み顕微鏡サンプルの上記部分の抽出に後で使用するために、このマーカ282を格納することができる。例えば、
図1に示したコントローラもしくはコンピュータ140またはその記憶装置にマーカを格納することができる。
【0051】
ステップ212では、被覆されていない顕微鏡サンプル252.4を得るために、プロセス済み顕微鏡サンプルから液体被覆を除去する。このような液体被覆は、例えば、プロセス済み顕微鏡サンプルに別の液体(除去剤)を塗布することによって除去可能である。このことは、液体また除去液体292が充填された容器290によって示されている。このような液体292は、例えばピペット294も用いて、顕微鏡サンプルに塗布可能である。別の好ましい仕方は、このような液体に、プロセス済み顕微鏡サンプルを浸すことである。例えば、容器290内の液体292にプロセス済み顕微鏡サンプルを浸してよい。このステップは、スライド250に配置されたプロセス済み顕微鏡サンプル252.3と共にスライド250をステージから除去することを有していてよい。
【0052】
1つの実施形態では、上記液体292は、キシレンであるか、またはキシレンを有する。特定の時間、例えば20秒または30秒にわたって、プロセス済み顕微鏡サンプルをキシレンに浸すことにより、顕微鏡サンプルから液体被覆を除去することができる。顕微鏡サンプルから残りの全てのキシレンを除去するために、付加的なステップを実行してよい。これを達成することを目的として、キシレンを迅速に気化させるためにサンプルの加温または加熱を行うことができ、室温においてもキシレンは同様に気化する。サンプルを乾燥させるためにシリカゲルのような乾燥剤を使用することも同様に適切なアプローチである。しかしながら一般的には、残存するキシレンは、顕微鏡サンプルまたはその抽出部分の、PCRベースの方法による核酸の引き続きの検査に悪影響を及ぼすことはない。
【0053】
さらに、液体被覆の除去は、自動化された処理において、かつ/または複数の顕微鏡サンプルについて行われてよいことに注意されたい。特定の除去装置またはデバイスが使用可能である。このような除去装置またはデバイスは、1つの実施形態では、例えば、
図1に示したシステム100の一部であってもよいし、システム100に組み込まれていてもよい。ステップ212によって示した状況は、例示だけを目的としている。
【0054】
ステップ214では、被覆されていない顕微鏡サンプルと共にスライド250をステージにおいて再配置することができる。前に格納されたマーカ282は、(例えば、
図1のプロセッサまたはコントローラ140上で動作するプログラムに)ロード可能であり、例えば、同様にユーザーインタフェース242を介して表示可能である。参照マーカ280.1,280.2が使用可能であり、マーカ282と相関付けることが可能であり、これは、例えば、ステップ210において特定した相対座標に基づいていてよい。
【0055】
このような参照マーカ280.1,280.2は特に、前に定めたのとまったく同様に、部分258.2に対して正確な位置にマーカ282を配置するために使用可能である。これに関し、顕微鏡サンプルおよびその抽出すべき部分に対して、参照マーカの位置が変化しなかったことに注意されたい。
【0056】
参照マーカと(抽出)マーカとの相関付けは、例えば、前述のように、
図1のプロセッサまたはコントローラ140上で動作するプログラム内で実行可能である。
【0057】
液体被覆を除去するために、顕微鏡サンプルと共にスライド250をステージから除去する必要があった場合、ステップ214が省略可能であることに注意されたい。さらに、上述のようにマーカを生成するため、また部分を抽出するために別体のシステムが使用される場合には、別のシステムの別のステージに、被覆されていない顕微鏡サンプル252.4と共にスライド250を配置できることにも注意されたい。このような場合、前に格納したマーカ282は、抽出のためにこのような別のシステムに転送可能である。また、参照マーカと(抽出)マーカとの相対座標も(ステップ210において)特定した後に格納可能であり、次いで同様に転送可能である。
【0058】
ステップ216では、被覆されていない顕微鏡サンプル252.4から、被覆されていない顕微鏡サンプル252.4の部分258.2を(物理的に)抽出する。これをマーカ282に基づいて行う。このようにして、抽出部分258.3が得られ、これはさらに検査または処理可能である。
図2bに示した実施形態では、レーザマイクロダイセクションによって抽出を実行する。このような場合、マーカ282(線であってよい)に追従し、ひいては顕微鏡サンプルから部分258.2を切り取るように、(
図1のレーザビーム134に対応し得る)レーザビーム234を制御することができる。
【0059】
レーザマイクロダイセクションに使用される特定の種類のシステムに応じて、例えば、分解または抽出した部分252.3を(
図1について述べたように)収集容器内に落下させるか、または別の方法で容器内に搬送することができる。
【0060】
前述のように、スライド250は、例えば、その上に配置された膜を備えたガラススライドを有していてよい。このようなガラススライドについては、膜はガラスに沈降し、次いでガラスに粘着可能である。例えば、(例えば、液体被覆からの、または液体被覆を除去するために使用される液体からの)液体は、膜とガラスとの間で、膜における孔を通して得ることができ、膜は、毛管力によってガラスに付着可能である。このことは特に、非接触レーザマイクロダイセクション(LMD)システムに有効である。このような孔は、上述した参照マーカを生成することによって生じさせることができる。
【0061】
膜のこのような粘着は、例えば、抽出部分がスライドから落下しなくなるか、または射出されなくなる可能性がある。これは、例えば、小さな分解領域(すなわち、切り取られた部分、例えば、1~40μmの直径を有する部分)の中心に、デフォーカスされた1つまたは複数のレーザパルスを供給することによって克服可能である。逆に、これは、もはや参照マーカに対して膜をシフトさせることができなくなる一因となり得る。対応するデフォーカスしたレーザパルスは、収集を容易にするためセンタリング可能である。
【0062】
図3には、イメージングシステム310を有するシステム300が略示されている。システム300は
図1のシステム100に対応し、イメージングシステム310は
図1のイメージングシステム110に対応する。それゆえ、
図1と同じ参照符号が使用されている。説明については、
図1を参照されたい。
【0063】
システム300とシステム100との違いは、例えば、噴霧することによって顕微鏡サンプル152に液体を塗布するように構成されているパイプ302が設けられていることである。特に、このような液体は、液体被覆用の液体(例えば、
図2aの液体272)であってよい。付加的にまたは択一的には、このような液体は、液体被覆を除去するための液体(例えば、
図2bの液体292)であってよい。また、別の(付加的な)パイプも液体の除去に使用可能である。コントローラ140は、このような液体を顕微鏡サンプル152に塗布するために、このようなパイプ302を制御するように構成可能である。このようにして、システム300は、顕微鏡サンプルに液体被覆を塗布するように、かつ/または顕微鏡サンプルから液体被覆を除去するように構成されている。
【0064】
システム300は例示だけを目的としており、液体被覆を塗布し、かつ/または除去するよう構成されたシステムの別の構成を使用することができることに注意されたい。例えば、このようなシステムは、ステージからスライドを除去し、液体に浸し、ステージにおいてスライドを再配置するように構成されたロボットを有していてよい。
【0065】
本明細書で使用されるように、用語「および/または(かつ/または)」は、関連する記載項目のうちの1つまたは複数の項目のあらゆる全ての組み合わせを含んでおり、「/」として略記されることがある。
【0066】
いくつかの態様を装置の文脈において説明してきたが、これらの態様が、対応する方法の説明も表していることが明らかであり、ここではブロックまたは装置がステップまたはステップの特徴に対応している。同様に、ステップの文脈において説明された態様は、対応する装置の対応するブロックまたは項目または特徴の説明も表している。
【0067】
いくつかの実施形態は、
図1から
図3のうちの1つまたは複数の図に関連して説明されたようなシステムを含んでいる顕微鏡に関する。択一的に、顕微鏡は、
図1から
図4のうちの1つまたは複数の図に関連して説明されたようなシステムの部分であってもよい、または
図1から
図4のうちの1つまたは複数の図に関連して説明されたようなシステムに接続されていてもよい。
図3は本明細書に記載された方法を実施するように構成されたシステム300の概略図を示している。システム300は、顕微鏡310とコンピュータシステム140とを含んでいる。イメージングシステムまたは顕微鏡310は、撮像するように構成されており、かつコンピュータシステム140に接続されている。コンピュータシステム140は、本明細書に記載された方法の少なくとも一部を実施するように構成されている。コンピュータシステム140は、機械学習アルゴリズムを実行するように構成されていてもよい。コンピュータシステム140と、イメージングシステムまたは顕微鏡310と、は別個の存在物であってもよいが、1つの共通のハウジング内に一体化されていてもよい。コンピュータシステム140は、イメージングシステムまたは顕微鏡310の中央処理システムの部分であってもよく、かつ/またはコンピュータシステム140は、イメージングシステムまたは顕微鏡310のセンサ、アクター、カメラまたは照明ユニット等の、イメージングシステムまたは顕微鏡310の従属部品の一部であってもよい。
【0068】
コンピュータシステム140は、1つまたは複数のプロセッサおよび1つまたは複数のストレージデバイスを備えるローカルコンピュータデバイス(例えば、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、タブレットコンピュータまたは携帯電話)であってもよく、または分散コンピュータシステム(例えば、ローカルクライアントおよび/または1つまたは複数のリモートサーバファームおよび/またはデータセンター等の様々な場所に分散されている1つまたは複数のプロセッサおよび1つまたは複数のストレージデバイスを備えるクラウドコンピューティングシステム)であってもよい。コンピュータシステム140は、任意の回路または回路の組み合わせを含んでいてもよい。1つの実施形態では、コンピュータシステム140は、任意の種類のものとすることができる、1つまたは複数のプロセッサを含んでいてもよい。本明細書で使用されるように、プロセッサは、例えば、顕微鏡または顕微鏡部品(例えばカメラ)のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、複合命令セットコンピューティング(CISC)マイクロプロセッサ、縮小命令セットコンピューティング(RISC)マイクロプロセッサ、超長命令語(VLIW)マイクロプロセッサ、グラフィックプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、マルチコアプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または任意の他の種類のプロセッサまたは処理回路等のあらゆる種類の計算回路を意図していてもよいが、これらに限定されない。コンピュータシステム140に含まれ得る他の種類の回路は、カスタム回路、特定用途向け集積回路(ASIC)等であってもよく、例えばこれは、携帯電話、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、双方向無線機および類似の電子システム等の無線装置において使用される1つまたは複数の回路(通信回路等)等である。コンピュータシステム140は、ランダムアクセスメモリ(RAM)の形態のメインメモリ等の特定の用途に適した1つまたは複数の記憶素子を含み得る1つまたは複数のストレージデバイス、1つまたは複数のハードドライブおよび/またはコンパクトディスク(CD)、フラッシュメモリカード、デジタルビデオディスク(DVD)等のリムーバブルメディアを扱う1つまたは複数のドライブ等を含んでいてもよい。コンピュータシステム140はディスプレイ装置、1つまたは複数のスピーカーおよびキーボードおよび/またはマウス、トラックボール、タッチスクリーン、音声認識装置を含み得るコントローラ、またはシステムのユーザーがコンピュータシステム140に情報を入力すること、およびコンピュータシステム140から情報を受け取ることを可能にする任意の他の装置も含んでいてもよい。
【0069】
ステップの一部または全部は、例えば、プロセッサ、マイクロプロセッサ、プログラマブルコンピュータまたは電子回路等のハードウェア装置(またはハードウェア装置を使用すること)によって実行されてもよい。いくつかの実施形態では、極めて重要なステップのいずれか1つまたは複数が、そのような装置によって実行されてもよい。
【0070】
一定の実装要件に応じて、本発明の実施形態は、ハードウェアまたはソフトウェアで実装され得る。この実装は、非一過性の記録媒体によって実行可能であり、非一過性の記録媒体は、各方法を実施するために、プログラマブルコンピュータシステムと協働する(または協働することが可能である)、電子的に読取可能な制御信号が格納されている、デジタル記録媒体等であり、これは例えば、フロッピーディスク、DVD、ブルーレイ、CD、ROM、PROMおよびEPROM、EEPROMまたはFLASHメモリである。したがって、デジタル記録媒体は、コンピュータ読取可能であってもよい。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法が実施されるように、プログラマブルコンピュータシステムと協働することができる、電子的に読取可能な制御信号を有するデータ担体を含んでいる。
【0072】
一般的に、本発明の実施形態は、プログラムコードを備えるコンピュータプログラム製品として実装可能であり、このプログラムコードは、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で実行されるときにいずれかの方法を実施するように作動する。このプログラムコードは、例えば、機械可読担体に格納されていてもよい。
【0073】
別の実施形態は、機械可読担体に格納されている、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを含んでいる。
【0074】
したがって、換言すれば、本発明の実施形態は、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。
【0075】
したがって、本発明の別の実施形態は、プロセッサによって実行されるときに本明細書に記載のいずれかの方法を実施するために、格納されているコンピュータプログラムを含んでいる記録媒体(またはデータ担体またはコンピュータ読取可能な媒体)である。データ担体、デジタル記録媒体または被記録媒体は、典型的に、有形である、かつ/または非一過性である。本発明の別の実施形態は、プロセッサと記録媒体を含んでいる、本明細書に記載されたような装置である。
【0076】
したがって、本発明の別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを表すデータストリームまたは信号シーケンスである。データストリームまたは信号シーケンスは例えば、データ通信接続、例えばインターネットを介して転送されるように構成されていてもよい。
【0077】
別の実施形態は、処理手段、例えば、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するように構成または適合されているコンピュータまたはプログラマブルロジックデバイスを含んでいる。
【0078】
別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するために、インストールされたコンピュータプログラムを有しているコンピュータを含んでいる。
【0079】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを(例えば、電子的にまたは光学的に)受信機に転送するように構成されている装置またはシステムを含んでいる。受信機は、例えば、コンピュータ、モバイル機器、記憶装置等であってもよい。装置またはシステムは、例えば、コンピュータプログラムを受信機に転送するために、ファイルサーバを含んでいてもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、プログラマブルロジックデバイス(例えばフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)が、本明細書に記載された方法の機能の一部または全部を実行するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイは、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためにマイクロプロセッサと協働してもよい。一般的に、有利には、任意のハードウェア装置によって方法が実施される。
【符号の説明】
【0081】
100,300 システム
110,310 イメージングシステム
112 照明光学系
114 照明光ビーム
116 反射器
118 対物レンズ
120 反射器
122 イメージング光ビーム
124 検出器
126 接眼レンズ
130 ステージ
132 レーザ
134,234 レーザビーム
136 スキャニングミラー
138 容器
140 コントローラ
142,242 ユーザーインタフェース
144 ディスプレイ
146 キーボード
148 コンピュータマウス
150,250 スライド
152,252.1 顕微鏡サンプル
200~216 ステップ
252.2 処理済み顕微鏡サンプル
252.3 プロセス済み顕微鏡サンプル
252.4 被覆されていない顕微鏡サンプル
254 膜
256 ガラススライド
258.1,258.2 顕微鏡サンプルの部分
258.3 抽出部分
260 容器
262 染色液
264 ピペット
270 容器
272 液体被覆
274 ピペット
280.1,280.2 参照マーカ
282 マーカ
269 容器
292 除去液体
294 ピペット
302 パイプ
【外国語明細書】