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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013847
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 23/02 20060101AFI20230119BHJP
   A43B 23/04 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
A43B23/02 101B
A43B23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118287
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】井内 一憲
(72)【発明者】
【氏名】菊田 潤一
(72)【発明者】
【氏名】青木 寿明
(72)【発明者】
【氏名】大内 薫
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BC03
4F050BC10
4F050HA30
4F050JA17
4F050MA28
(57)【要約】
【課題】フィット性の高さと脱ぎ履きのしやすさとを両立できる靴の提供。
【解決手段】靴底2と、靴底2上に設けられるアッパー3と、を備え、前記アッパー3は、着用者が足を出し入れする開口部Oが形成されるアッパー本体部30と、前記開口部Oに接合され且つ着用者の足を保持する保持部31であって、伸縮性を有する環状の保持部31と、を備え、前記開口部Oの縁部には、前後方向において後端側に位置する第一縁部300と、第一縁部300の前方に位置する第二縁部301と、が含まれ、前記保持部31は、前記第二縁部301に対する可動自由度が前記第一縁部300に対する可動自由度の方が高くなるように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底と、
前記靴底上に設けられるアッパーと、を備え、
前記アッパーは、
着用者が足を出し入れする開口部が形成されるアッパー本体部と、
前記開口部に接合され且つ着用者の足を保持する保持部であって、伸縮性を有する環状の保持部と、を備え、
前記開口部の縁部には、前後方向において後端側に位置する第一縁部と、第一縁部の前方に位置する第二縁部と、が含まれ、
前記保持部は、前記第二縁部に対する可動自由度が前記第一縁部に対する可動自由度の方よりも高くなるように構成される、
靴。
【請求項2】
前記保持部は、前記第一縁部に接合され、且つ前記第二縁部の少なくとも一部に対して非接合となるように構成される、
請求項1に記載の靴。
【請求項3】
前記保持部は、着用者の足首の距骨の前方から脛骨及び腓骨の前方までを覆うように構成される、
請求項1又は請求項2に記載の靴。
【請求項4】
前記保持部の上端部は、着用者の内踝及び外踝を覆う位置、又は内踝の上端及び外踝の上端よりも上方に配置される、
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の靴。
【請求項5】
前記アッパー本体部は、
着用者の足のつま先側を覆う先側被覆部と、
該先側被覆部から後ろ側に延び且つ横幅方向における一方側と他方側とに配置される一対の中側被覆部と、
前記一対の中側被覆部の間に配置される舌部と、を有し、
前記保持部は、前記第一縁部に対して一体的に形成される、
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の靴。
【請求項6】
前記第一縁部には、前記アッパー本体部とは別体で構成されている前記保持部が接合される、
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の靴。
【請求項7】
前記保持部は、前記舌部に接合される、
請求項5に記載の靴。
【請求項8】
前記舌部は、前記先側被覆部に接合される、
請求項7に記載の靴。
【請求項9】
前記舌部は、前記中側被覆部に接合される、
請求項5乃至請求項8の何れか1項に記載の靴。
【請求項10】
前記中側被覆部は、内甲側と外甲側とに配置され、
前記舌部は、内甲側の前記中側被覆部又は外甲側の前記中側被覆部の何れか一方に接合される、
請求項9に記載の靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な靴が提供されている。例えば、特許文献1に開示されている履物製品は、着用者の足の下に配置されるソール構造と、ソール構造上に設けられるニット製のアッパーと、を備えており、アッパーが2層構造になっている。
【0003】
また、アッパーは、ソール構造に固定されているカバー部品と、カバー部品内に配置された状態で固定されるニット部品と、を有する。
【0004】
ニット部品には、着用者が足を入れる空洞が内部に形成される空洞形成部と、空洞形成部と一体的に形成され且つ着用者の足首を全周に亘って覆う環状のカラーとが含まれている。
【0005】
そして、上記構成の履物製品を着用すると、カラーの収縮力によってソール構造が着用者の足に引き寄せられた状態になり、これにより、フィット性が高まるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2015-535443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記従来の履物製品のニット部品は、カラーが全周に亘って空洞形成部とつながっているため、カラーを引っ張っても十分に広がりにくくなっており、着用者が足を通しにくく脱ぎ履きしにくいと感じることがあった。
【0008】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、フィット性の高さと脱ぎ履きのしやすさとを両立できる靴の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の靴は、
靴底と、
前記靴底上に設けられるアッパーと、を備え、
前記アッパーは、
着用者が足を出し入れする開口部が形成されるアッパー本体部と、
前記開口部に接合され且つ着用者の足を保持する保持部であって、伸縮性を有する環状の保持部と、を備え、
前記開口部の縁部には、前後方向において後端側に位置する第一縁部と、第一縁部の前方に位置する第二縁部と、が含まれ、
前記保持部は、前記第二縁部に対する可動自由度が前記第一縁部に対する可動自由度の方よりも高くなるように構成される。
【0010】
上記構成の靴では、保持部の第二縁部に対する可動自由度が第一縁部に対する可動自由度よりも高くなるように構成されているため、保持部全体のうち前方側が伸長させやすくなっている。そのため、上記構成の靴では、着用者が保持部を十分に広げた状態で足を通すことができるため、脱ぎ履きしやすくなっている。
【0011】
また、着用者が靴を着用している状態においては、保持部の前方側が伸長した状態になるため、この保持部の前方側の収縮による引張力によって、保持部の後方側とともに第一縁部や靴底の後端側が保持部の前方側に向かう方向に引っ張られる。これにより、靴底の後端側が着用者の足から離れにくくなり、フィット性が向上する。
【0012】
このように、上記構成の靴は、保持部の前方側の可動自由度と後方側の可動自由度とに差をつけることにより、フィット性の高さと脱ぎ履きのしやすさとを両立できるようにしたものである。
【0013】
本発明の靴において、
前記保持部は、前記第一縁部に接合され、且つ前記第二縁部の少なくとも一部に対して非接合となるように構成される、ようにしてもよい。
【0014】
このようにすれば、第二縁部に対する保持部の可動自由度が第一縁部に対する保持部の可動自由度よりも高まりやすくなるため、脱ぎ履きのしやすさが高まりやすくなる。
【0015】
本発明の靴において、
前記保持部は、着用者の足首の距骨の前方から脛骨及び腓骨の前方までを覆うように構成される、ようにしてもよい。
【0016】
このようにすれば、保持部の収縮による引張力によって靴底の後端側が着用者の足の踵に引き付けられやすくなるため、フィット性が高まりやすくなる。
【0017】
本発明の靴は、
前記保持部の上端部は、着用者の内踝及び外踝を覆う位置、又は内踝の上端及び外踝の上端よりも上方に配置される、ようにしてもよい。
【0018】
上記構成の靴によれば、保持部の上端部を高い位置に引き上げやすくなるため、靴底の後端側が着用者の足の踵に向けて引っ張られやすくなり、これにより、フィット性が高まりやすくなる。
【0019】
本発明の靴において、
前記アッパー本体部は、
着用者の足のつま先側を覆う先側被覆部と、
該先側被覆部から後ろ側に延び且つ横幅方向における一方側と他方側とに配置される一対の中側被覆部と、
前記一対の中側被覆部の間に配置される舌部と、を有し、
前記保持部は、前記第一縁部に対して一体的に形成される、ようにしてもよい。
【0020】
上記構成の靴においても、フィット性の高さと履きやすさを高めやすくなる。
【0021】
本発明の靴において、
前記第一縁部には、前記アッパー本体部とは別体で構成されている前記保持部が接合される、ようにしてもよい。
【0022】
この場合においても、フィット性の高さと履きやすさを高めやすくなる。
【0023】
本発明の靴において、
前記保持部は、前記舌部に接合される、ようにしてもよい。
【0024】
このようにすれば、保持部の収縮による引張力を舌部にも伝えることができるようになるため、フィット性が高まりやすくなる。
【0025】
本発明の靴において、
前記舌部は、前記先側被覆部に接合される、ようにしてもよい。
【0026】
このようにすれば、保持部の収縮による引張力が舌部とともに先側被覆部にも伝えることができるようになるため、フィット性が高まりやすくなる。
【0027】
本発明の靴において、
前記舌部は、前記中側被覆部に接合される、ようにしてもよい。
【0028】
このように、舌部が中側被覆部にも接合されていれば、保持の収縮による引張力が先側被覆部と中側被覆部とにバランスよく伝わるため、フィット性を高めるとともに履き心地を良くすることもできるようになる。
【0029】
本発明の靴において、
前記中側被覆部は、内甲側と外甲側とに配置され、
前記舌部は、内甲側の前記中側被覆部又は外甲側の前記中側被覆部の何れか一方に接合される、ようにしてもよい。
【0030】
このようにする場合においても、保持の収縮による引張力が先側被覆部と中側被覆部とにバランスよく伝わるため、フィット性を高めるとともに履き心地を良くすることもできるようになる。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明の靴は、フィット性の高さと脱ぎ履きのしやすさとを両立できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る靴の構成の平面図である。
図2図2は、同実施形態に係る靴を内踝側から見た側面図である。
図3図3は、同実施形態に係る靴の外踝側から見た側面図である。
図4図4は、同実施形態に係る靴の平面図であって、中側被覆部を展開した状態の平面図である。
図5図5は、同実施形態に係る靴を内踝側から見た部分断面図である。
図6図6は、同実施形態に係る靴を外踝側から見た部分断面図である。
図7図7は、同実施形態に係る靴の装着状態の説明図であって、内側から見た図である。
図8図8は、同実施形態に係る靴の同実施形態に係る靴の装着状態の説明図であって、外側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態にかかる靴について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0034】
本実施形態に係る靴1は、図1に示すように、着用者の足を支持する靴底2(図2参照)と、靴底2上に設けられるアッパー3と、アッパー3を介して着用者の足を靴底2に拘束するための締め具4と、を備えている。
【0035】
なお、本実施形態では、靴1の前後方向を前後方向、靴1の横幅方向を横幅方向、靴1の高さ方向を高さ方向、と称する。また、横幅方向における内側を内踝側、横幅方向における外側を外踝側と称する。
【0036】
靴底2には、図2図3に示すように、前後方向における先端側に位置する前側底部20と、前側底部20の後ろ側に位置する中側底部21と、前後方向における後端側に位置する後側底部22と、を有する。前側底部20は靴底2の先端側を構成し、後側底部22は靴底2の後端側を構成している。
【0037】
前側底部20は着用者のつま先が乗る場所であり、後側底部22は着用者の踵が乗る場所であり、中側底部21は、着用者の足の中央部(前後方向における中央部)が乗る場所である。
【0038】
アッパー3は、図1に示すように、着用者が足を出し入れする開口部Oが形成されるアッパー本体部30と、開口部Oに接合され且つ着用者の足を保持する保持部31であって、伸縮性を有する環状の保持部31と、を有する。
【0039】
アッパー本体部30における開口部Oの縁部には、後端側に位置する第一縁部300と、第一縁部300の前方側に位置する一対の第二縁部301と、が含まれている。一対の第二縁部301は第一縁部300に対して連続しており、また、一方の第二縁部301は内踝側、他方の第二縁部301は外踝側に配置される部分である。
【0040】
なお、第一縁部300と第二縁部301の境目は、例えば、前後方向において、開口部Oの中央部と対応する位置(開口部Oの中央部に対して横幅方向で並ぶ位置)に設定されていればよい。
【0041】
また、本実施形態のアッパー本体部30には、前後方向における前端側に位置する先側被覆部302と、先側被覆部302に対して前後方向における後方側に隣接する一対の中側被覆部であって、横幅方向において互いに離れた位置に配置される一対の中側被覆部303と、一対の中側被覆部303のそれぞれに対して前後方向における後方側で隣接する後側被覆部304(図2図3参照)と、中側被覆部303の内側に重ねて配置される舌部305と、が含まれている。
【0042】
先側被覆部302と、一対の中側被覆部303と、後側被覆部304とは、一体的に形成されている。また、先側被覆部302は着用者の足のつま先側を覆う部分であり、一方の中側被覆部303は着用者の足の内踝側を覆う部分であり、他方の中側被覆部303は着用者の足の外踝側を覆う部分であり、先側被覆部302は着用者の足の踵の周囲を覆う部分である。
【0043】
上述のように、一対の中側被覆部303は、横幅方向において互いの間に間隔を空けた状態で並んでおり、本実施形態では、一対の中側被覆部303の間の領域を締め代領域と称する。また、締め代領域と開口部Oとは互いに連続するように形成されている。
【0044】
保持部31は、第二縁部301に対する保持部31の可動自由度が第一縁部300に対する保持部31の可動自由度よりも高くなるように構成されており、前後方向における前端部側が前後方向における後端部側よりも伸長しやすくなっている。
【0045】
なお、第一縁部300に対する保持部31の可動自由度とは、第一縁部300に対して保持部31を引っ張った場合において、保持部31が第一縁部300に対して相対的に変位する(動く)度合であり、第二縁部301に対する保持部31の可動自由度とは、第二縁部301に対して保持部31を引っ張った場合において、保持部31が第二縁部301に対して相対的に変位する(動く)度合のことである。
【0046】
より具体的に説明すると、保持部31は、後端部側が第一縁部300に接合され、前端部側が一対の第二縁部301に対して非接合となっている(図4図5図6参照)。なお、保持部31と第一縁部300とは縫合されていてもよいし、接着、溶着等の手段によって接合されていてもよい。
【0047】
そのため、保持部31の後端部側は引っ張られた際に第一縁部300に引き留められるが、保持部31の前端部側は引っ張られた際に第二縁部301に引き留められないようになっており、これにより、前端部側が後端部側よりも伸び易くなるように構成されている。
【0048】
締め具4は、ワイヤーや、靴1紐、面ファスナー等のことであり、締め具4を操作することにより、一対の中側被覆部303を引き締めることができるようになっている。
【0049】
本実施形態に係る靴1の構成は、以上の通りである。続いて、靴1の脱ぎ履きの仕方を説明する。
【0050】
靴1を履く場合は、まず、保持部31を足を通しやすいサイズになるまで径方向外側に広げる。例えば、保持部31の横幅方向における一方側と他方側を掴んだ状態で、一方側と他方側とを引き離すように引っ張る。そして、足を保持部31に通してアッパー本体部30内に入れる。
【0051】
上述のように、保持部31の前端部側は、第二縁部301に対しては非接合であるため、保持部31の前端部側は保持部31の後端部側に対して広がりやすくなっており、保持部31に足を通しやすい状態にすることができる。
【0052】
なお、保持部31の上端部が着用者の足首Nの内踝A1及び外踝A2に対応する位置、若しくは内踝A1及び外踝A2よりも上方側に配置されていない場合は、保持部31を上方に引き上げて上端部が内踝A1及び外踝A2と重なる位置、若しくは内踝A1及び外踝A2よりも上方側に配置する(図7図8参照)。なお、図7図8では、足に符号F、足首に符号Nを付している。
【0053】
そして、締め具4を操作して一対の中側被覆部303を引き締めると、着用者の足がアッパー本体部30の中で拘束された状態になる。
【0054】
靴1を脱ぐ場合は、締め具4を操作して足に対する拘束力を緩め、アッパー本体部30と保持部31から足を引き抜く。保持部31から足を引き抜く際においても、保持部31の前端部側が保持部31の後端部側に対して広がりやすくなっているため、保持部31に足を通しやすい状態にすることができる。
【0055】
また、靴1を着用している状態においては、保持部31の前端部側が保持部31の後端部側よりも引き伸ばされた状態になるため、保持部31の後端部側は、保持部31の前端部側に向けて引っ張られた状態になり、アッパー本体部30の後側被覆部304と、靴底2の後側底部22もまた保持部31の前端部側に向けて引っ張られた状態になっている。
【0056】
さらに、保持部31は、後端よりも前端が上方に位置するように傾いた状態になっているため、保持部31の後端部側、アッパー本体部30の後側被覆部304、靴底2の後側底部22は、保持部31の前端部側によって前方且つ上方に向かって引っ張られた状態になっている。
【0057】
着用者が、例えば、歩行動作中に地面を踏み出す動作をとると、つま先は靴底2を踏み込み、且つ踵は靴底2から離れる方向に動こうとするが、上述のように、靴底2の後側底部22は保持部31の前端部側によって前方且つ上方に向かって引っ張られた状態になっているため、着用者の足の踵と靴底2の後側底部22が離れにくくなる(着用者の足の踵の動きに靴底2の後側底部22を追従しやすくなっている)。
【0058】
以上のように、本実施形態に係る靴1によれば、保持部31の第二縁部301に対する可動自由度が第一縁部300に対する可動自由度よりも高くなるように構成されているため、保持部31全体のうち前端部側が伸長しやすくなっている。そのため、上記構成の靴1では、着用者が保持部31を十分に広げた状態で足を通すことができるため、脱ぎ履きしやすくなっている。特に、本実施形態のようなハイカットタイプの靴1である場合は、脱ぎ履きしやすさが顕著に高まる。
【0059】
また、保持部31の後端部側は、第一縁部300に対する可動自由度が低くなっているため、靴1を着用者が着用している状態においては、伸長した保持部31の前端部側によって保持部31の後端部側とともに第一縁部300が前方に向かって引き寄せられ、これにより、靴底2の後側底部22が着用者の足に引き寄せられた状態になる。従って、靴底2の後側底部22が着用者の足から離れにくくなり、フィット性が向上する。
【0060】
このように、本実施形態の靴1は、保持部31の前端部側の可動自由度と後端部側の可動自由度とに差をつけることにより、フィット性の高さと脱ぎ履きのしやすさとを両立できるようにしたものである。
【0061】
また、保持部31は、第二縁部301の少なくとも一部に対しては非接合となるように構成されているため、第二縁部301に対する保持部31の可動自由度が第一縁部300に対する保持部31の可動自由度よりも高まりやすくなり、脱ぎ履きのしやすさも高まりやすくなる。
【0062】
そして、本実施形態の靴1のように、保持部31が着用者の足首の距骨の前方から脛骨及び腓骨の前方までを覆うように構成されていれば、保持部31の収縮による引張力によって靴底2の後側底部22が着用者の足の踵に引き付けられやすくなるため、フィット性が高まりやすくなる。
【0063】
特に、保持部31の上端部が着用者の内踝及び外踝を覆う位置、又は内踝の上端及び外踝の上端よりも上方に配置されるように構成されていれば、保持部31の上端部を高い位置に引き上げやすくなる分、保持部31が靴底2の後側底部22を着用者の足の踵に引き付ける力が高まりやすくなる。
【0064】
さらに、保持部31がアッパー本体部30の後側被覆部304、靴底2の後側底部22だけでなく、アッパー本体部30の他の場所にも引張力を伝えることができるようになっていれば、フィット性をより高めることができるようになる。
【0065】
例えば、本実施形態では、保持部31の前方側が舌部305に接合され、さらに、舌部305が先側被覆部302に接合されているため、保持部31の前方側と舌部305と先側被覆部302とがひとつながりになることによって、保持部31の引張力が靴1の先端側(すなわち、先側被覆部302や、先側底部)まで伝わり易くなっている。
【0066】
また、着用状態においては、先側被覆部302から舌部305の先端、舌部305の後端、保持部31の順番に配置位置が高くなっているため、先側被覆部302を着用者の足(つま先)に引き寄せやすくなっているため、着用者の足のつま先と靴底2とが離れにくくなり、フィット性が高まりやすくなる。
【0067】
なお、本発明に係る靴は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0068】
上記実施形態において、アッパー本体部30には、アッパー本体部30とは別体で構成されている保持部31が接合されていたが、この構成に限定されない。アッパー本体部30と保持部31とは一体物として形成されていてもよい。
【0069】
上記実施形態の第二縁部301は、全体に亘って保持部31が非接合となっていたが、この構成に限定されない。例えば、第二縁部301は、保持部31の第二縁部301に対する可動自由度が第一縁部300に対する可動自由度よりも高くなっていれば、保持部31が部分的に接合されていてもよい(すなわち、第二縁部301には保持部31が接合されている部分と保持部31が接合されていない非接合の部分とが含まれていてもよい)。このように、保持部31は、第二縁部301の少なくとも一部に対して非接合となるように構成されていてもよい。
【0070】
なお、保持部31の第二縁部301に対する可動自由度を第一縁部300に対する可動自由度よりも高くすることができれば、第二縁部301全体に保持部31を接合することも可能である。
【0071】
保持部31が第二縁部301にも接合されている場合、第一縁部300に対する保持部31の可動自由度は、第一縁部300に対して保持部31を引っ張った場合において、保持部31が第一縁部300に対して相対的に伸縮する度合であり、第二縁部301に対する保持部31の可動自由度は、第二縁部301に対して保持部31を引っ張った場合において、保持部31が第二縁部301に対して相対的に伸縮する度合として表すことができる。
【0072】
上記実施形態では、保持部31が舌部305に接合されていたが、この構成に限定されない。例えば、保持部31は舌部305に接合されていなくてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、舌部305が先側被覆部302に接合されていたが、この構成に限定されない。例えば、舌部305は先側被覆部302に接合されていなくてもよい。このようにする場合、舌部305は、例えば、中側被覆部303に接合されていればよい。
【0074】
また、上記実施形態では、舌部305が中側被覆部303には接合されていなかったが、この構成に限定されない。例えば、舌部305は中側被覆部303に接合されていなくてもよい。このようにする場合、舌部305は、一対の中側被覆部303のうち、内踝側に配置されているもの、又は外踝側に配置されているものの一方に接合されていればよい。
【0075】
このようにすれば、保持部31の収縮による引張力が舌部305とともに中側被覆部303にも伝わりやすくなり、フィット性が高まり易くなる。
【0076】
上記実施形態において特に言及しなかったが、靴1は、例えば、スポーツ用の自転車の使用者に適した自転車用の靴1であってもよいし、さらに、別の用途のものであってもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…靴、2…靴底、3…アッパー、4…具、20…前側底部、21…中側底部、22…後側底部、30…アッパー本体部、31…保持部、300…第一縁部、301…第二縁部、302…先側被覆部、303…中側被覆部、304…後側被覆部、305…舌部、O…開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8