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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138474
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】包装材
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20230922BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20230922BHJP
   H01M 50/129 20210101ALI20230922BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20230922BHJP
【FI】
B65D65/40 D
H01M50/105
H01M50/129
H01M50/119
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042232
(22)【出願日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2022041607
(32)【優先日】2022-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023016587
(32)【優先日】2023-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】川北 圭太郎
【テーマコード(参考)】
3E086
5H011
【Fターム(参考)】
3E086AA21
3E086AD05
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BB63
3E086BB90
3E086CA01
3E086CA28
3E086CA31
3E086DA08
5H011AA01
5H011AA09
5H011AA14
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD01
5H011DD13
5H011FF02
5H011KK00
5H011KK02
5H011KK05
5H011KK07
(57)【要約】
【課題】成形性、着色性および強度に優れた包装材を提供する。
【解決手段】本発明は、基材層51の内側に積層された金属箔層52と、金属箔層52の内側に積層されたシーラント層53とを含み、金属箔層52および基材層51間に着色接着剤層61が設けられた包装材を対象とする。着色接着剤層61は、着色顔料を含有する。基材層51は、TDの熱水収縮率およびMDの熱水収縮率が共に2.0%~5.0%であり、TDの熱水収縮率およびMDの熱水収縮率間の差が1.5%以下であり、TDの弾性率およびMDの弾性率が共に1.5GPa~3GPaであり、TDの破断強度およびMDの破断強度のうち少なくともいずれか一方が320MPa以上である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性樹脂製の基材層の内側に積層された金属箔層と、前記金属箔層の内側に積層された熱可塑性樹脂製のシーラント層とを含み、前記金属箔層および前記基材層間に着色接着剤層が設けられた包装材であって、
前記着色接着剤層は、着色顔料を含有し、
前記基材層は、TDの熱水収縮率およびMDの熱水収縮率が共に2.0%~5.0%であり、
前記基材層は、TDの熱水収縮率およびMDの熱水収縮率間の差が1.5%以下であり、
前記基材層は、TDの弾性率およびMDの弾性率が共に1.5GPa~3GPaであり、
前記基材層は、TDの破断強度およびMDの破断強度のうち少なくともいずれか一方が320MPa以上であることを特徴とする包装材。
【請求項2】
前記着色接着剤層は、前記着色顔料と接着剤とを含む着色接着剤組成物からなり、
前記着色接着剤組成物は固形成分に対して、前記着色顔料を2質量%以上5質量%未満含み、
前記着色接着剤層は、5g/m2~10g/m2の前記着色接着剤組成物が塗布されている請求項1に記載の包装材。
【請求項3】
前記着色接着剤層は、主剤としてのポリエステル樹脂と、硬化剤としての多官能イソシアネート化合物とによる二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂を含み、
前記主剤としてのポリエステル樹脂は、数平均分子量(Mn)が8,000~25,000、重量平均分子量(Mw)が15,000~50,000であり、これらの比率(Mw/Mn)が1.3~2.5であり、
硬化剤としての多官能イソシアネート化合物は、50モル%以上の芳香族系イソシアネートを含み、
前記基材層が、数平均分子量15,000~30,000のポリアミドフィルムによって構成されている請求項1または2に記載の包装材。
【請求項4】
前記二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂において、主剤としての前記ポリエステル樹脂がジカルボン酸およびジアルコールを原料とし、
前記ジカルボン酸は、メチレン鎖のメチレン数が偶数の脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸とを含み、これらの合計量に対する芳香族ジカルボン酸の含有率が40モル%~80モル%である請求項3に記載の包装材。
【請求項5】
前記二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂の硬化膜は、JIS K7162に準拠する引張試験によるヤング率が70MPa~400MPaである請求項3に記載の包装材。
【請求項6】
前記金属箔層はその少なくとも一方の面に化成皮膜を有している請求項1または2に記載の包装材。
【請求項7】
前記基材層の外面にマットコート層が設けられている請求項1または2に記載の包装材。
【請求項8】
請求項1または2に記載の包装材に、深絞り成形または張り出し成形による成形部が形成されていることを特徴とする包装容器。
【請求項9】
請求項1に記載の包装材および請求項8に記載の包装容器によって構成されていること
を特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【請求項10】
蓄電デバイス本体と、
請求項9に記載の外装材とを備え、
前記蓄電デバイス本体部が、前記外装材で外装されていることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項11】
蓄電デバイス本体と、
請求項1または2に記載の包装材によって構成されている蓄電デバイス用外装材とを備え、
前記蓄電デバイス本体部が、前記外装材で外装されていることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項12】
蓄電デバイス本体と、
請求項8に記載の包装容器によって構成されている蓄電デバイス用外装材とを備え、
前記蓄電デバイス本体部が、前記外装材で外装されていることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばノートパソコン、携帯電話用、車載型(移動型)または定置型の二次電池(リチウムイオン二次電池)等の電池(蓄電デバイス)における外装材としての包装材の他、食品用や医薬品用の包装材、包装容器および蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の電池は、装着対象の電気機器等の機器の外観と色彩を統一させるために、着色することを要求されることが多くなってきている。特に、重厚感、高級感を付与するために、機器を黒色とすることが多く、この場合、電池も黒色にすることが多くなってきている。
【0003】
この種の機器の包装材としては金属箔の両面に樹脂層を積層した積層体を使用するのが一般的であり、電池を黒色等に着色する場合には、包装材に使用されている樹脂層を着色する手段、基材層の下に印刷層を設ける手段、基材層と金属層との間の接着剤層を着色する手段、基材層が複数層で構成されている場合は層間の接着剤層を着色する手段等の手段がある。
【0004】
例えば、電池用外装材の基材層(樹脂層)、接着剤層、金属箔層のいずれかの層に識別標識を含んだ層を設けるものがあり、基材層下面側に設けた印刷層や、基材層下面側に設けた接着剤層を着色し、包装材全体を着色するものがある(特許文献1、2参照)。
【0005】
また、電池用外装材の放熱促進のために金属箔層と外層フィルムとの間に黒体材料層を有するものがある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開 WO 2011/016506 A1号公報
【特許文献2】特開2011-054563号公報
【特許文献3】特開2011-096552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、上述した包装材を黒色に着色する場合はカーボンブラック等の顔料を含む印刷インキによる印刷層を設けることが一般的である。
【0008】
しかしながら、電池を黒色に着色するために、電池用外装材を構成する外側樹脂層の内面にカーボンブラックを顔料として含む印刷層を設けた場合には次のような課題があった。
【0009】
すなわち、上記黒色包装材を深絞り成形や張り出し成形により成形体としての成形容器(成形ケース)の形状に成形する際に、カーボンブラック含有印刷層が部分的に割れて剥離してしまい、下地層(黒色ではない)が露出して視認されることにより、均一な黒着色が損なわれるという課題があった。
【0010】
このような印刷層の部分的剥離は、電極や電解液を封入した後の黒色包装材のシール時や、黒色包装材で包装された電池が高温多湿等のやや苛酷な環境下で使用された時にも発生する。
【0011】
また、カーボンブラックを用いた黒色包装材に限らず、他の顔料で着色した包装材においても同様の問題が発生し、良好な着色性を得ることが困難であった。
【0012】
一方、近年においては、リチウムイオン二次電池等の電池は高容量化が進んできており、電池外装材としての包装材には良好な成形性、耐熱性、耐湿熱性などの特性がさらに要求されるようになってきており、電池外装材の外面側の耐熱性樹脂層(基材層)には、成形時の外力を効率良く分散させることができ、十分な強度を維持することも切望されている。
【0013】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、成形性、着色性および強度に優れた包装材、およびその包装材を用いた包装容器、蓄電デバイス用外装材および蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0015】
[1]耐熱性樹脂製の基材層の内側に積層された金属箔層と、前記金属箔層の内側に積層された熱可塑性樹脂製のシーラント層とを含み、前記金属箔層および前記基材層間に着色接着剤層が設けられた包装材であって、
前記着色接着剤層は、着色顔料を含有し、
前記基材層は、TDの熱水収縮率およびMDの熱水収縮率が共に2.0%~5.0%であり、
前記基材層は、TDの熱水収縮率およびMDの熱水収縮率間の差が1.5%以下であり、
前記基材層は、TDの弾性率およびMDの弾性率が共に1.5GPa~3GPaであり、
前記基材層は、TDの破断強度およびMDの破断強度のうち少なくともいずれか一方が320MPa以上であることを特徴とする包装材。
【0016】
[2]前記着色接着剤層は、前記着色顔料と接着剤とを含む着色接着剤組成物からなり、
前記着色接着剤組成物は固形成分に対して、前記着色顔料を2質量%以上5質量%未満含み、
前記着色接着剤層は、5g/m2~10g/m2の前記着色接着剤組成物が塗布されている前項1に記載の包装材。
【0017】
[3]前記着色接着剤層は、主剤としてのポリエステル樹脂と、硬化剤としての多官能イソシアネート化合物とによる二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂を含み、
前記主剤としてのポリエステル樹脂は、数平均分子量(Mn)が8,000~25,000、重量平均分子量(Mw)が15,000~50,000であり、これらの比率(Mw/Mn)が1.3~2.5であり、
硬化剤としての多官能イソシアネート化合物は、50モル%以上の芳香族系イソシアネートを含み、
前記基材層が、数平均分子量15,000~30,000のポリアミドフィルムによって構成されている前項1または2に記載の包装材。
【0018】
[4]前記二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂において、主剤としての前記ポリエステル樹脂がジカルボン酸およびジアルコールを原料とし、
前記ジカルボン酸は、メチレン鎖のメチレン数が偶数の脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジ
カルボン酸とを含み、これらの合計量に対する芳香族ジカルボン酸の含有率が40モル%~80モル%である前項3に記載の包装材。
【0019】
[5]前記二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂の硬化膜は、JIS K7162に準拠する引張試験によるヤング率が70MPa~400MPaである前項3または4に記載の包装材。
【0020】
[6]前記金属箔層はその少なくとも一方の面に化成皮膜を有している前項1~5のいずれか1項に記載の包装材。
【0021】
[7]前記基材層の外面にマットコート層が設けられている前項1~6のいずれか1項に記載の包装材。
【0022】
[8]前項1~7のいずれか1項に記載の包装材に、深絞り成形または張り出し成形による成形部が形成されていることを特徴とする包装容器。
【0023】
[9]前項1~7のいずれか1項に記載の包装材および/または前項8に記載の包装容器によって構成されていることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【0024】
[10]蓄電デバイス本体と、
前項9に記載の外装材とを備え、
前記蓄電デバイス本体部が、前記外装材で外装されていることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の効果】
【0025】
発明[1]の包装材によれば、着色接着剤層が顔料を含有しているため、良好な着色性を得ることができる。さらに基材層のTDおよびMD間の熱水収縮率、弾性率、破断強度を所定範囲に特定しているため、外圧からの作用を効率良く分散させることができ、十分な強度および優れた成形性を得ることができる。このため例えばシャープな形状で深い成形が可能となり、成形時およびシール時において、または高温多湿の過酷な環境下での使用時においても、着色接着剤層が部分的に割れて剥離するような不具合を防止することができる。
【0026】
発明[2]の包装材によれば、着色接着剤層としての着色接着組成物の塗布量、着色接着剤組成物中の着色顔料の濃度(含有率)を所定範囲に特定しているため、全体として均一な着色性を得ることができる。さらに着色顔料の含有に起因する着色接着剤層の脆弱化を防止でき、基材層および金属箔層間の密着性を十分に維持できるため、深絞り成形、張り出し成形を行う際に良好な成形性を得ることができる。その上さらに、成形後に高温高湿度環境に放置されても基材層が剥離して外観を損なうことがなく、その結果、着色顔料含有により影響する評価試験、中でも最も過酷な環境試験である温水水没試験においても、基材層が剥離することがなく、基材層の接着性をより一層向上させることができる。
【0027】
発明[3]の包装材によれば、着色接着剤層は、特定の二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂を含むため、適度な強度および伸び、優れた耐熱性を得ることができるとともに、着色接着剤層の主剤であるポリエステル樹脂は、所定の分子量分布に調整しているため、接着剤塗布適性にも優れている。さらに基材層としてのポリアミドフィルムは、所定の分子量分布に調整しているため、基材層としてのフィルムが破れ難く、良好な突き刺し耐性も得ることができる。
【0028】
発明[4]の包装材によれば、着色接着剤層に含まれる二液硬化型ポリエステルウレタ
ン樹脂において、主剤としてのポリエステル樹脂を特定の組成によって構成しているため、より一層密着性に優れ、基材層および金属箔層間の剥離をより確実に防止することができる。
【0029】
発明[5]の包装材によれば、着色接着剤層に含まれる二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂の硬化膜におけるヤング率を調整しているため、適度な柔軟性と塗膜強度を維持できて、基材層および金属箔層間の剥離をより一層確実に防止することができる。
【0030】
発明[6]の包装材によれば、金属箔層の表面に化成皮膜を設けているため、金属箔層の腐食を防止できて、包装材全体の耐食性を向上させることができる。
【0031】
発明[7]の包装材によれば、基材層の表面にマットコート層を設けているため、成形性および耐久性をより一層向上させることができるとともに、マットコート層の存在によって、包装材の外観品質が向上し、包装材同士の密着等の不具合を防止できて、包装製品の取り扱い等を容易に行うことができる。
【0032】
発明[8]の包装容器によれば、上記発明の包装材を利用するものであるため、上記と同様の効果を得ることができる。
【0033】
発明[9]の蓄電デバイス用外装材によれば、上記発明の包装材および包装容器を利用するものであるため、上記と同様の効果を得ることができる。
【0034】
発明[10]の蓄電デバイスによれば、上記発明の外装材を利用するものであるため、上記と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1はこの発明の実施形態である蓄電デバイスを示す側面断面図である。
図2図2は実施形態の蓄電デバイスを分解して示す斜視図である。
図3図3は実施形態の蓄電デバイス用外装材を模式的に示す概略断面図である。
図4図4は樹脂フィルムのけるMDおよびTDを説明するための模式図である。
図5図5は二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂接着剤の硬化膜のS-S曲線図 である。
図6図6はこの発明の実施例に用いられた包装材サンプルの成形品を示す斜視図 である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1この発明の実施形態である蓄電デバイスを示す側面断面図、図2は実施形態の蓄電デバイスを分解して示す斜視図である。
【0037】
両図に示すように、本実施形態の蓄電デバイスは、ケーシング11と、ケーシング11の内部に収容される電気化学素子等の蓄電デバイス本体10とを備えている。
【0038】
ケーシング11は、外装材1によって形成される平面視矩形状のトレイ部材(包装容器)2と、外装材(包装材)1によって形成される平面視矩形状のカバー部材3とによって構成されている。
【0039】
トレイ部材2は、外装材1を深絞り成形等の手法を用いて成形した成形品によって構成されている。トレイ部材2は、外周縁部を除く中間領域全域が下方に凹陥形成されて、平面視矩形状の凹陥部21が形成されるとともに、凹陥部21の開口縁部外周に外方突出状のフランジ部22が一体に形成されている。
【0040】
またカバー部材3は、シート状に形成された外装材1によって構成されている。カバー部材3は、外周縁部がトレイ部材2のフランジ部22に対応するフランジ部32として構成されている。
【0041】
トレイ部材2およびカバー部材3としての外装材1は、柔軟性および可撓性を有するラミネートシートないしフィルムである外包ラミネートによって構成されている。
【0042】
また蓄電デバイス本体10は、特に限定されるものではないが、電池本体、キャパシタ本体、コンデンサ本体等を例示することができる。蓄電デバイス本体10は、トレイ部材2の凹陥部21に対応する形状に形成されている。
【0043】
そして蓄電デバイス本体10が、凹陥部21内に収容された状態で、トレイ部材2に凹陥部21を被覆するようにカバー部材3が配置されて、トレイ部材2およびカバー部材3のフランジ部22,32同士が熱融着されることにより、本実施形態の蓄電デバイスが形成されている。
【0044】
なお図示は省略するが、タブリードの一端(内端)が蓄電デバイス本体10に接続されるとともに、他端(外端)が蓄電デバイスの外部に引き出された状態に配置されており、そのタブリードを介して蓄電デバイス本体10に対し電気の出し入れを行えるようになっている。
【0045】
図3は本実施形態において外装材1を構成する外包ラミネート材の基本構造を模式的に示す概略断面図である。同図に示すように本実施形態において用いられる外装材(ラミネート材)1は、基材層(耐熱性樹脂層)51と、基材層51の一面(内面)に、着色接着剤層または外側接着剤層としての第1接着剤層61を介して接着される金属箔層(バリア層)52と、金属箔層52の一面(内面)に、内側接着剤層としての第2接着剤層62を介して接着されるシーラント層(熱融着性樹脂層)53とを備えている。なお金属箔層52の両面には、化成被膜63,63が形成されるとともに、基材層51の外面には、マットコート層50が積層されている。
【0046】
本実施形態において基材層51は、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられ、これらの延伸フィルムが用いられる。中でも、成形性および強度の点で、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムまたは二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いるのが好ましい。
【0047】
また、ポリアミドフィルムとしては、6ナイロンフィルム、6,6ナイロンフィルム、MXDナイロンフィルム等が挙げられる。
【0048】
基材層51は、単層で形成されていても良いし、複層で形成されていても良い。複層で形成する場合にはPETフィルム/ポリアミドフィルムからなる複層構造を例示することができる。
【0049】
基材層51として用いられる延伸フィルムの下面、つまり第1接着剤層61との貼り合せ面には、接着剤61との接着強度向上させることを目的として、濡れ性を付与する易接着処理を施すことが望ましい。
【0050】
易接着処理については様々な提案がなされており例えば以下のような処理を挙げることができる。
【0051】
基材層51としての延伸フィルムの少なくとも一面を、コロナ処理、プラズマ処理、フレームプラズマ処理、電子線照射、紫外線照射などにより表面を酸化処理するとともに、濡れ性を向上させる。
【0052】
また次のような易接着処理剤層を形成することにより濡れ性を付与する方法もある。例えば、基材層用の延伸フィルムの表面に、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタアクリル酸エステル樹脂およびポリエチレンイミン樹脂からなる群より選択される1種または2種以上の樹脂の水性エマルジョン(水系エマルジョン)を塗布して乾燥させることによって易接着処理剤層を形成することができる。塗布量(形成量)としては固形成分において0.01g/m2~0.5g/m2程度が好ましい。
【0053】
塗布方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、スプレーコート法、グラビアロールコート法、リバースロールコート法、リップコート法等を挙げることができる。
【0054】
ここで蓄電デバイス(電池)の高容量化、安全性向上の要求から、蓄電デバイス用外装材の基材層51には、さらなる高成形性、突き刺し耐性が望まれているが、本発明者による研究によると、後者の性能(突き刺し耐性)を向上させるためには、ポリエステルフィルムよりも、ポリアミドフィルムの方が適しており、さらに好ましくは、以下の物性(1)~(5)を満足するポリアミドフィルムを用いることで、良好な成形性と突き刺し耐性が得られることを究明した。
【0055】
(1)基材層51は、TDの熱水収縮率およびMDの熱水収縮率を共に2.0%~5.0%に調整する必要があり、好ましくは2.5%~4.5%に調整するのが良い。
【0056】
ここで図4に示すように「MD」とは、樹脂フィルムFの成形方向(樹脂の流れ方向)を言い、「TD」とは、MDに対し直交する方向を言う。さらに熱水収縮率とは、フィルム(測定対象物)を100℃の熱水中に5分間浸漬した際の浸漬前後における収縮方向(延伸方向)の寸法変化率である。例えば熱水浸漬前の収縮方向(MDまたはTD)の寸法を「X」とし、熱水浸漬後の収縮方向(MDまたはTD)の寸法を「Y」としたとき、収縮方向(MDまたはTD)の熱水収縮率(%)は、{(X-Y)/X}×100の関係式で求められる。なお本発明において、ポリアミドフィルムの特性値を示す「熱水収縮率」としては、熱水収縮率の平均値(平均熱水収縮率)を採用するのが好ましい。本発明において平均熱水収縮率とは、測定対象となるシート(フィルム)の一方向に対し、両端部2点の熱水収縮率と中央部1点の熱水収縮率との3点の熱水収縮率の平均値である。もっとも本発明において蓄電デバイス本体10の大きさによっては、ポリアミドフィルムの特性値を示す「熱水収縮率」として、平均値ではない、ある特定の箇所で測定された熱水収縮率(基準位置の熱水吸収率)を採用することも可能である。
【0057】
(2)基材層51のMDの熱水収縮率およびTDの熱水収縮率間の差が1.5%以下に調整する必要があり、好ましくは1.2%以下に調整するのが良い。具体的には、MDの平均熱水収縮率を「MDz」、TDの熱水収縮率を「TDz」としたとき、|MDz-TDz|≦1.5%の関係式を成立させる必要があり、好ましくは|MDz-TDz|≦1.2%以下に調整するのが良い。
【0058】
(3)基材層51のMDの弾性率およびTDの弾性率を共に1.5GPa~3GPaに調整する必要があり、好ましくは2.0GPa~2.5GPaに調整するのが良い。
【0059】
(4)基材層51におけるTDの破断強度およびMDの破断強度のうち少なくともいず
れか一方を320MPa以上に調整する必要があり、好ましくは400MPa以下に調整するのが良い。
【0060】
(5)基材層51を構成するポリアミドフィルムとしてのナイロンの数平均分子量を15,000~30,000に調整するのが良く、より好ましくは20,000~25,000に調整するのが良い。
【0061】
ここで本実施形態においてTDおよびMDの熱水収縮率が2.0%以上であるため、適度な柔軟性を備え、基材層51として、良好な成形性を確保することができる。また5.0%以下であるため、基材層51として、過度の柔軟性を回避できて、所望の強度を維持することができる。
【0062】
さらに本実施形態において、TDおよびMDの熱水収縮率の差が上記の特定範囲内に調整されているため、外圧からの力を効率良く分散させることが可能となり、基材層51として、所望の強度を確実に維持することができる。
【0063】
さらにTDおよびMDの弾性率が上記の特定範囲内に調整されているため、基材層51として、適度な柔軟性と強度をより確実に維持することができる。
【0064】
さらにTDおよびMDの破断強度が上記の特定範囲内に調整されているため、基材層51として、所望の強度をより一層確実に得ることができる。
【0065】
このように基材層51に上記の特性を備えたポリアミドフィルムを採用することによって、成形性が良く、十分な突き刺し耐性に優れた外装材1を得ることができる。
【0066】
また基材層51としてのナイロンの数平均分子量が15,000以上の場合、基材層51が破れ難くなり、さらに分子量が30,000以下の場合、基材層51の柔軟性を維持できて、割れ難くなる。
【0067】
また本実施形態においては、基材層51としてのポリアミドフィルムの相対粘度を2.9~3.1に調整するのが好ましい。すなわち相対粘度が上記特定の範囲に調整されている場合には、基材層51として強度と柔軟性をより効果的に付与でき、外装材1として成形性が良く、突き刺し耐性が高いものを確実に得ることができる。
【0068】
ここで本実施形態においては、外装材1の突き刺し強度は、22N~30Nの範囲が好適であり、より好ましくは24N~30Nであり、より一層好ましくは26N~30Nである。
【0069】
また本実施形態においては、基材層51としての(ポリアミドフィルム)の厚さを9μm~50μmに調整するのが良く、より好ましくは12μm~30μmに調整するのが良い。
【0070】
ここで本実施形態のポリアミドフィルムにおける熱水収縮率の分布について説明する。まず正方形のポリアミドフィルムにおいて、縦方向(MD)の両辺および中心線の3箇所での熱水収縮率をMDの3点の定点熱水収縮率とし、横方向(TD)の両辺および中心線の3箇所での熱水収縮率をTDの3点の定点熱水収縮率としたとき、MDの3点の定点熱水吸収率とTDの3点の定点熱水吸収率との計6点の定点熱水収縮率のうち、最大の定点熱水収縮率と、最小の定点熱水収縮率との差が2.5以下に調整されたフィルムを用いるのが好ましい。
【0071】
なお上記MDの3点の定点熱水収縮率の平均値がMDの平均熱水収縮率に相当し、上記TDの3点の熱水収縮率の平均値がTDの平均熱水収縮率に相当する。
【0072】
ここで図4の破線で示す3つの領域は、ポリアミドフィルム(基材層51)のうちすべて同じサイズの正方形の領域であり、この正方形の領域が上記の熱水収縮率の分布条件を満足する場合には、基材層51の全域にわたって柔軟性の偏りが抑制されるため、外部応力が加わったとしても基材層51全体に分散されて破れ難くなり、強度を確実に向上させることができる。
【0073】
本実施形態において、基材層51は、ポリアミドフィルムによって形成するものであるが、既述した通りその基材層51に他の層を積層しても良い。
【0074】
なお基材層51は、シーラント層53を構成する全ての樹脂に対し10℃以上融点が高い樹脂を採用するのが良く、より好ましくは20℃以上高い樹脂を採用するのが良い。すなわちこの構成を採用する場合には、シーラント層53を熱融着する際に、基材層51に対し熱による悪影響を回避することができる。
【0075】
本実施形態において第1接着剤層(着色接着剤層)61は、金属箔層52と基材層61との接合を担うとともに外装材1の外面側に色(無彩色を含む)を付与する層であり、着色顔料と特定の接着剤(接着剤成分)とを含む着色接着剤組成物によって構成されている。
【0076】
着色顔料としては、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、縮合多環系顔料、無機系顔料等を好適に使用することができる。また、黒色顔料としてはカーボンブラックを推奨できる。
【0077】
着色顔料としては平均粒径が0.1μm~5μmのものを使用することが好ましく、特に好ましい平均粒径は0.5~2.5μmである。
【0078】
顔料分散に際しては顔料分散機を用いることで顔料分散することが好ましく、顔料分散に際しては界面活性剤等の顔料分散剤を使用することもできる。
【0079】
第1接着剤層61の接着剤成分は、主剤としてのポリエステル樹脂と、硬化剤としての多官能イソシアネート化合物とによる二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂を含む接着剤によって構成されている。本発明においては、上記二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂の主剤であるポリエステル樹脂の分子量を規定するとともに、硬化剤である多官能イソシアネート化合物の種類を規定することによって、接着強度および成形性を高めて、外装材1の成形時に深い成形を行った時の層間剥離を抑制することができる。
【0080】
主剤としての上記ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸およびジアルコールを原料とする共重合体であり、好ましい材料および組成は以下のとおりである。
【0081】
前記ジカルボン酸として脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸の両方を用いることが好ましい。また、脂肪族ジカルボン酸のメチレン鎖のメチレン数の奇偶は樹脂の結晶性に影響を及ぼす因子であり、偶数のメチレンを有するジカルボン酸は結晶性の高い硬い樹脂を生成するので偶数のメチレンを有する脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましい。メチレン数が偶数の脂肪族ジカルボン酸として、コハク酸(メチレン数2)、アジピン酸(メチレン数4)、スベリン酸(メチレン数6)、セバシン酸(メチレン数8)を例示することができる。
【0082】
芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸を例示することができる。
【0083】
また、脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸の合計量に対する芳香族ジカルボン酸の含有率を40モル%~80モル%の範囲とすることにより、換言すると、脂肪族ジカルボン酸の含有率を20モル%~60モル%の範囲にとどめることにより、接着強度が高くかつ成形性の良い樹脂を生成し、成形品の側壁の高いケースへの成形が可能であり、かつ金属箔層52と基材層51との間の層間剥離を抑制できる外装材(包装材)1となる。
【0084】
ここで、芳香族ジカルボン酸の含有率が40モル%未満では膜物性が低下して凝集剥離が発生し易くなるので、層間剥離が発生するおそれがある。
【0085】
一方、芳香族ジカルボン酸の含有率が80モル%を超えると樹脂が硬くなって密着性能が低下する傾向がある。特に好ましい芳香族ジカルボン酸の含有率は50モル%~70モル%である。
【0086】
接着剤成分の主剤としての上記ポリエステル樹脂におけるジアルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールを例示することができる。
【0087】
上記ポリエステル樹脂の分子量において、数平均分子量(Mn)を8,000~25,000、重量平均分子量(Mw)を15,000~50,000の範囲にそれぞれ規定し、さらにこれらの比率(Mw/Mn)を1.3~2.5とするのが好ましい。数平均分子量(Mn)が8,000以上であり、重量平均分子量(Mw)が15,000以上である場合には、適性な塗膜強度と耐熱性を得ることができ、数平均分子量(Mn)が25,000以下であり、重量平均分子量(Mw)が50,000以下であることで硬くなり過ぎずに適性な塗膜伸びを得ることができる。
【0088】
また、これの比率(Mw/Mn)が1.3~2.5であることで適性な分子量分布となり、接着剤塗布適性(分布が広い)と、性能(分布が狭い)とのバランスを保つことができる。
【0089】
上記ポリエステル樹脂において特に好ましい数平均分子量(Mn)は10,000~23,000であり、特に好ましい重量平均分子量(Mw)は20,000~40,000であり、特に好ましい(Mw/Mn)は1.5~2.3である。
【0090】
さらに上記ポリエステル樹脂の分子量は、多官能性であるイソシアネートで鎖伸長することで調整することができる。すなわち、主剤中のポリエステル成分をNCOで連結すると末端が水酸基のポリマーが生成され、イソシアネート基とポリエステルの水酸基との当量比の調整によりポリエステル樹脂の分子量を調整することができる。本発明においては、これらの当量比(OH/NCO)が1.01~10となるように連結したものを用いることが好ましい。また、他の分子量調整方法として、ジカルボン酸とジアルコールの縮重合反応の反応条件(ジカルボン酸とジアルコールの配合モル比の調整)の変更を挙げることができる。
【0091】
さらに本実施形態においては、接着剤成分における主剤の添加剤としてエポキシ系樹脂やアクリル系樹脂を添加しても良い。
【0092】
接着剤成分の上記硬化剤である多官能イソシアネート化合物としては、芳香族系、脂肪族系、脂環族系の各種イソシアネート化合物を使用することができる。具体的には、脂肪族系のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、芳香族系のトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等のジイソシアネートの1種類又は2種類以上からの多官能イソシアネート変性体を例示することができる。
【0093】
変性手段としては、水、グリセリン、トリメチロールプロパン等の多官能活性水素化合物とのアダクト体の他に、イソシアヌレート化、カルボジイミド化、ポリメリック化等の多量化反応による多官能イソシアネート変性体を例示でき、これらの中から1種または2種以上を混合して用いることもできる。しかしながら、硬化後の接着強度を増大させて基材層51の剥離防止効果を得るために、芳香族系イソシアネート化合物を50モル%以上含有しているのが好ましい。より好ましい芳香族系イソシアネート化合物の含有率は70モル%以上である。
【0094】
接着剤成分の上記二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂において、主剤と硬化剤との配合割合はポリオール水酸基(-OH)1モルに対してイソシアネート官能基(-NCO)2モル~25モルの割合で配合されていることが好ましい。これらのモル比(-NCO)/(-OH)が2未満でイソシアネート官能基(-NCO)が少なくなると、十分な硬化反応が行われずに適性な塗膜強度および耐熱性が得られなくなるおそれがある。一方、(-NCO)/(-OH)が25を超えてイソシアネート官能基(-NCO)が多くなると、ポリオール以外の官能基との反応が進み過ぎて塗膜が硬くなりすぎて適性な伸びが得られなくなるおそれがある。特に好ましいポリオール水酸基とイソシアネート官能基のモル比(-NCO)/(-OH)は5~20である。
【0095】
上記二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂は、反応後の硬化膜が以下の物性を有していることが好ましい。
【0096】
上記硬化膜は、密閉用包装材の良好な成形性と層間の接合強度とを確保するために、引張試験(JIS K7162)によるヤング率が70MPa~400MPaであることが好ましい。特に好ましいヤング率は100MPa~300MPaである。
【0097】
また破断強度が20MPa~70MPaであり、破断伸びが50%~400%であることが好ましい。特に好ましい破断強度は30MPa~50MPaであり、特に好ましい破断伸びは100%~300%である。
【0098】
さらに、引張応力-歪み曲線(S-S曲線)が破断前に強度低下を示さないことが好ましい。図5はS-S曲線の3つのパターンを示している。引張応力に対してパターンAは歪み量が小さくパターンBは歪み量が大きいがいずれも引張応力の増加に伴って歪み量が増加しており、破断前の強度低下は見られない。一方、パターンCは歪み量の増加の過程で引張応力が低下しており、破断前に強度低下を示している。本発明においては、二液硬化型接着剤の硬化膜がS-S曲線において強度低下がないことが好ましい。さらに好ましくは、S-S曲線において強度が急激に変化する屈曲点がないことが好ましい。
【0099】
上記二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂を含む接着剤は、ポリエステル樹脂の原料であるジカルボン酸およびジアルコールを縮重合し、必要とすればさらに多官能性であるイソシアネートで鎖伸長し、溶媒およびウレタン化反応触媒、接着力向上の為のカップリング剤やエポキシ樹脂、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を混合して流動状のポリエステル樹脂溶液とし、これに硬化剤である多官能イソシアネー
ト化合物あるいはさらに溶媒を配合して低粘度流動状物として調製する。
【0100】
第1接着剤層61を構成する上記着色接着剤組成物における成分の好ましい条件(1)(2)は以下のとおりである。なお、以下に記載する含有率には溶媒を含まない固形成分の割合である。
【0101】
(1)着色顔料とポリエステル樹脂(二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂の主剤)の合計量に対する着色顔料の好ましい含有率は2質量%以上5重量%未満である。
【0102】
(2)第1接着剤層61としての着色接着剤組成物の塗布量が5g/m2~10g/m2ある。
【0103】
上記(1)(2)を基に、第1接着剤層61に含まれる着色顔料の含有量は、0.1g/m2以上、0.5g/m2未満の範囲となるが、この着色顔料は、その含有量が0.25g/m2未満の場合、遮蔽性効果、視覚効果が不足し、意匠性の点で問題となる場合があり、好ましくない。また着色顔料の含有量が、0.45g/m2を超えると、視覚効果の向上はほとんど無くなり、むしろ後述する温水水没試験での剥離が発生しやすくなる場合がある。よって、本願の第1接着剤層61に含まれる着色顔料の有効な含有量範囲は、0.25g/m2~0.45g/m2の範囲であり、より好ましい着色顔料の含有量は、0.25g/m2~0.35g/m2の範囲である。
【0104】
上記の着色顔料の含有率(濃度)範囲は、電池包材成形後に、最も厳しい環境試験として、45℃温水水没試験を実施される場合は必須の条件であり、着色顔料の含有量が0.45g/m2を超えると、第1接着剤層61が硬く、脆くなり、金属箔層52に対する接着力が低下し温水水没試験で基材層(耐熱性樹脂層)51が剥離する原因となる。
【0105】
ただし、電池包材成形後の一般的な環境試験(70℃×90%RHの高温高湿保存試験)では、着色顔料の含有量が、0.5g/m2未満であれば、保存試験中に基材層(耐熱性樹脂層)51が剥離することは無く、使用可能である。
【0106】
なお着色顔料の含有量が、0.5g/m2以上の場合には高温高湿保存試験中に基材層51の剥離が発生する可能性が高まる。
【0107】
第1接着剤層(着色接着剤組成物)61の塗布量が、5g/m2未満の場合、着色顔料の含有量が少なくなり、既述した通り金属箔層を隠蔽する効果が小さくなり、さらに金属光沢が視認されて重厚感が損なわれるおそれがある。
【0108】
また、第1接着剤層61の塗布量が10g/m2を超えると加工性が著しく悪くなり、コストアップにつながる。着色接着剤組成物の好ましい塗布量は6g/m2~10g/m2である。
【0109】
上述したとおり第1接着剤層61の接着剤成分の物性は反応後の硬化膜の引っ張り試験によるヤング率は70MPa~400MPaである。この接着剤成分に対して、着色顔料を含有率2質量%以上5質量%未満で含有させると、この着色顔料を含有した接着剤塗膜の弾性率は450MPa~650MPaの範囲となる。
【0110】
上述したとおり基材層51の熱水収縮率はTDおよびMD共に2.0%~5.0%である。
【0111】
基材層51の熱水収縮率2.0%~5.0%に対し、着色顔料を含有した接着剤塗膜の
弾性率は450MPa~650MPaであると、成形後の高温環境や高温多湿環境における基材層51の熱収縮(収縮率)に追随できる。このため、基材層51と第1接着剤層61との間の剥離(デラミ)の発生を抑制することができる。
【0112】
着色接着剤組成物は、着色顔料および上述した方法で調製した二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂を含む接着剤(溶媒、各種添加剤を含む)を所定割合で配合して調製される。
【0113】
また金属箔層52と基材層51との貼り合わせ方法は限定されないが、ドライラミネートと呼ばれる方法を推奨できる。具体的には、金属箔層52の上面(外面)または基材層51の下面(内面)、あるいはこれらの両方の面に調製した上記着色接着剤組成物を塗布し、溶媒を蒸発させて乾燥皮膜とした後に金属箔層52と基材層51を貼り合わせる。その後さらに二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂の硬化条件に従って硬化させる。これにより、金属箔層52と基材層51とが第1接着剤層61を介して接合される。なお、着色接着剤組成物の塗布手法はグラビアコート法、リバースロールコート法、リップロールコート法等を例示することができる。
【0114】
本実施形態において金属箔層52は、酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性の役割を担うものである。
【0115】
金属箔層52としては、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔等が挙げられ、アルミニウム箔が一般的に用いられる。
【0116】
金属箔層52としてはアルミニウム箔を好適に用いることができる。特に0.7質量%~1.7質量%のFeを含有するAl-Fe系合金箔は優れた強度と展延性を有し、良好な成形性を得られるので好ましい。
【0117】
金属箔層52の厚さは、20μm~100μmに設定するのが良く、より好ましくは25μm~60μmに設定するのが良い。すなわち厚さが20μm以上であることで金属箔を製造する際の圧延時のピンホール発生を防止できるとともに、100μm以下であることで張り出し成形時や絞り成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。
【0118】
本発明の外装材(包装材)においては、金属箔層52の表面に耐食性の高い化成皮膜63を形成することにより、金属箔層52における耐食性の向上を図ることができる。そして、このような化成処理が施されていることによって内容物(電池の電解質等)による金属箔表面の腐食を十分に防止できる。
【0119】
化成処理としては、クロメート処理や、ジルコニウム化合物を用いたノンクロム型化成処理等がある。
【0120】
例えば、クロメート処理の場合は、脱脂処理を行った金属箔の表面に下記1)~3)のいずれかの混合物の水溶液を塗工した後に乾燥させる。
【0121】
1)リン酸と、クロム酸と、フッ化物の金属塩およびフッ化物の非金属塩のうちの少なくとも一方との混合物
2)リン酸と、アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂およびフェノール系樹脂のうちのいずれかと、クロム酸およびクロム(III)塩のうちの少なくとも一方との混合物
3)リン酸と、アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂、フェノール系樹脂のうちのいずれかと、クロム酸およびクロム(III)塩のうちの少なくとも一方と、フッ化物の金属塩
およびフッ化物の非金属塩のうちの少なくとも一方との混合物
化成皮膜63のクロム付着量は、0.1mg/m2~50mg/m2に設定するのが良く、より好ましくは2mg/m2~20mg/m2に設定するのが良い。
【0122】
なお、化成皮膜63は、金属箔層52のどちらか一方の面に施す場合も含まれている。
【0123】
シーラント層(熱融着性樹脂層、熱可塑性樹脂層)53は、リチウムイオン二次電池等で用いられる腐食性の強い電解液などに対しても優れた耐薬品性を具備させるとともに、外装材1にヒートシール性を付与する役割を担うものである。
【0124】
シーラント層53としては、熱融着性樹脂未延伸フィルム層であるのが好ましい。この熱融着性樹脂未延伸フィルムとしては、耐薬品性およびヒートシール性の点で、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変性物およびアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱融着性樹脂からなる未延伸フィルムにより構成されるのが好ましい。
【0125】
シーラント層53の厚さは20μm~80μmに設定するのが良く、より好ましくは25μm~50μmに設定するのが良い。すなわちこの厚さを20μm以上とすることでピンホールの発生を十分に防止できるとともに、80μm以下に設定することで樹脂使用量を低減できてコスト低減を図ることができる。
【0126】
なおシーラント層53は、単層であってもよいし、複層であってもよい。複層とする場合には、ブロックポリプロピレンフィルムの両面にランダムポリプロピレンフィルムを積層した三層フィルムを例示することができる。
【0127】
第2接着剤層(非着色接着剤層)62としては、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、エラストマー系接着剤、フッ素系接着剤、酸変性ポリプロピレン接着剤等により形成された接着剤層を例示することができる。
【0128】
中でも、アクリル系接着剤、ポリオレフィン系接着剤を用いるのが好ましく、この場合には、外装材1の耐電解液性および水蒸気バリア性を向上させることができる。
【0129】
金属箔層52とシーラント層53との貼り合わせ方法は限定されないが、上述した金属箔層52と基材層51との貼り合わせと同様に、第2接着剤層62を構成する接着剤を塗布して乾燥させた後に貼り合わせるドライラミネート法を例示することができる。
【0130】
マットコート層50は基材層51の外面に積層され、外装材1の表面に良好な滑り性を付与して成形性を向上させる層である。
【0131】
マットコート層50は、バインダー樹脂と固体微粒子(ワックス、樹脂ビーズ、無機微粒子)を含む。上記ワックスの平均粒径は5μm~20μmであり、前記樹脂ビーズの平均粒径は1μm~10μmであり、上記無機微粒子の平均粒径は1μm~10μmであり、各固体微粒子がそれぞれ1質量%~20質量%含有されおり、マットコート層に含まれるワックス、樹脂ビーズ、無機微粒子等の固体微粒子の合計含有率が30質量%以上、50質量%以下であるのが好ましい。
【0132】
上記バインダー樹脂としては、主剤ポリオールと硬化剤多官能イソシアネートによる樹脂が好ましく、アクリルポリオール樹脂、ウレタンポリオール樹脂、ポリオレフィンポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、フェノキシ系樹脂、テトラフルオロオレフィ
ンとカルボン酸ビニルエステルの共重合体、テトラフルオロオレフィンとアルキルビニルエーテルの共重合体から選ばれた少なくとも1種が例示される。
【0133】
バインダー樹脂としては、耐熱性、耐薬品性に優れる点で、テトラフルオロエチレンをベースにしたフッ素系樹脂を用いるのが好ましい。
【0134】
上記ワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス等から選ばれた少なくとも1種を例示することができる。
【0135】
このワックスとしては、平均粒径が5μm~20μmのものを用いるのが良く、より好ましくは6μm~18μmのものを用いるのが良い。ワックスの含有量は1質量%~10質量%に設定するのが良く、より好ましくは2質量%~8質量%に設定するのが良い。
【0136】
また上記樹脂ビーズとしては、アクリル樹脂ビーズ、ウレタン樹脂ビーズ、ポリエチレン樹脂ビーズ、ポリスチレン樹脂ビーズ、シリコーン樹脂ビーズ、フッ素樹脂ビーズ等から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。樹脂ビーズとしては、平均粒径が1μm~10μmのものを使用するのが良く、より好ましくは2μm~8μmのものを使用するのが良い。さらに樹脂ビーズの含有量は1質量%~20質量%に設定するのが良く、より好ましくは3質量%~17質量%に設定するのが良い。
【0137】
上記前記無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、カオリン、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム等から選ばれた少なくとも1種を例示することができる。無機微粒子としては、平均粒径が1μm~10μmのものを使用するのが良く、より好ましくは1μm~5μmのものを使用するのが良い。さらに無機微粒子の含有量は、20質量%~40質量%に設定するのが良く、より好ましくは25質量%~35質量%に設定するのが良い。
【0138】
マットコート層50の形成方法は、上述した固体微粒子と耐熱性樹脂とを含むマットコート組成物を基材層51の表面に塗布して硬化させることにより行う。
【0139】
マットコート層50は、厚さを0.5μm~5μmに設定するのが良く、より好ましくは1μm~3μmに設定するのが良い。すなわちマットコート層50が薄過ぎる場合には、滑り性向上の効果が少なくなり、厚過ぎる場合には、コストアップとなり、好ましくない。
【0140】
マットコート層50の表面のグロス値は、JIS Z8741に基づく60°反射角測定値で1%~15%に設定されるのが好ましい。このグロス値は、BYK社製のグロス測定器「micro-TRI-gloss-s」によって入射角60°で測定して得ることができる。
【0141】
マットコート層50を形成する工程の時期は限定されないが、金属箔層52に第1接着剤層61を介して基材層51を貼り合わせる工程に続いて行うことが好ましい。なお基材層51に無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルムを貼り合わせて、マットコート層50を形成するようにしても良い。
【0142】
なお、上記実施形態においては、本発明の密閉用包装材を、電池等の蓄電デバイス用の外装材として利用する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明の包装材は、食品や医薬品等の収容物を密封、密閉するための包装材として用いることも可能である。
【0143】
また上記実施形態においては、カバー部材3として、シート状の外装材(包装材)1を使用する場合について説明したが、それだけに限られず、本発明においては、カバー部材3に成形加工を施すようにしても良い。例えばカバー部材を、中央部が上方に凹陥形成(膨出形成)された断面ハット状の成形品によって構成し、そのハット状のカバー部材を、上記のようなトレイ部材にその上方から覆うように外周縁部を接合一体化するようにしても良い。さらに本発明においては、成形されていない2枚のシート状の外装材(包装材)1を蓄電デバイス本体を挟み込むように重ね合わせて、その外周縁部を熱融着することによって、ケーシングを形成するようにしても良い。
【0144】
また上記実施形態においては、ケーシングを形成するのに、2枚の外装材(外包ラミネート材)を用いる場合を例に挙げて説明しているが、それだけに限られず、本発明において、ケーシングを形成する外装材の枚数は限定されず、1枚であっても、3枚以上であっても良い。
【0145】
また言うまでもなく、本発明の包装材においては、好適要件としてのマットコート層50、化成被膜層63等を必ずしも設ける必要はない。
【実施例0146】
次に、本発明の要旨を含む実施例およびその効果を導出するための比較例について説明する。言うまでもなく、本発明は以下の実施例のものに限定されるものではない。
【0147】
以下の実施例1~8および比較例1~5において、図3に示した積層構造の外装材(包装材)を作製した。表1に示すように実施例および比較例においては、基材層としてのポリアミドフィルムと、第1接着剤層(着色用接着剤層)との構成が異なるのみで、その他の構成は共通である。
【0148】
【表1】
【0149】
<実施例1>
金属箔層として、厚さ35μmのJIS H4160 A8079からなるアルミニウム箔を準備した。さらにこのアルミニウム箔の両面には、ポリアクリル酸、三価クロム化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布し、150℃で乾燥を行って化成皮膜を形成した。この化成皮膜によるクロム付着量は10mg/m2である。
【0150】
基材層として、厚さ15~25μmの二軸延伸ナイロンフィルムを準備した。このフィルムにおける第1接着剤層との貼り合わせ面(下面)には、コロナ処理を施した。
【0151】
基材層としての二軸延伸ナイロンフィルムは、TD熱水収縮率が2.7%、MD熱水収縮率が2.0%、TDおよびMD間の熱水収縮率の差(TD-MD)が0.7%であり、TD弾性率が1.7GPa、MD弾性率が2.7GPaであり、TD破断強度が361MPa、MD破断強度が280MPaであり、ポリアミドの数平均分子量が25,000である。
【0152】
第1接着剤層を構成する着色接着剤組成物は、接着剤成分として二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂を用い、着色顔料としてカーボンブラックを用いて以下の方法で調製した。
【0153】
まず、二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂の主剤であるポリエステル樹脂(ポリエステルポリオール)を作製する。この主剤は、ネオペンチルグリコール30モル部、エチレングリコール30モル部、1,6-ヘキサンジオール40モル部を80℃で溶融し、攪拌しながら脂肪族ジカルボン酸であるアジピン酸(メチレン数4)30モル部、芳香族ジカルボン酸であるイソフタル酸70モル部を210℃で20時間縮重合反応させてポリエステルポリオールを得た。このポリエステルポリオールは、数平均分子量(Mn)12,000、重量平均分子量(Mw)20,500、これらの比率(Mw/Mn)1.7である。さらに、このポリエステルポリオール40質量部に酢酸エチル60質量部を加えて流動状のポリエステルポリオール樹脂溶液とした。また、水酸基価は2.2mgKOH/g(溶液値)であった。
【0154】
次に、上記のポリエステルポリオール樹脂溶液100質量部、酢酸エチル64.4質量部に平均粒子径1.0μmの所要量のカーボンブラックを配合し、顔料分散機を使用しカーボンブラック顔料を分散して、着色顔料入り主剤を得た。そして、上記着色顔料入り主剤100質量部に対して、硬化剤として芳香族イソシアネート化合物であるトリレンジイソシアネート(TDI)(芳香族系)とトリメチロールプロパンとのアダクト体(NCO%13.0%、固形分75%)7.1質量部を配合し、さらに酢酸エチルを34.1質量部配合して良く撹拌することによって着色接着剤組成物を得た。この着色接着剤組成物において、イソシアネート官能基(-NCO)とポリエステルポリオール水酸基(-OH)のモル比(-NCO)/(-OH)は10である。表1に示すようにこの着色接着剤組成物における顔料の含有濃度は、3.9質量%である。
【0155】
上記二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂接着剤の硬化膜、すなわち、第1接着剤層の組成から着色顔料を除外した組成の硬化膜を作製して物性を評価した。具体的には二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂接着剤を、非接着性の未処理PPフィルムに乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布し、溶媒を乾燥させた後、残存イソシアネートが5%以下になるまで60℃でエージングを行って硬化させた。硬化膜を未処理PPフィルムから剥離し、15mm幅に切断したものを試験片とした。
【0156】
作製した試験片を標点距離50mm、引張速度100mm/minの条件で引張試験を行い、ヤング率、破断強度および破断伸びを測定したところ、ヤング率が400MPa、
破断強度が30MPa、破断伸びが18%であった。また、この引張試験におけるS-S曲線を求めたところ、そのパターンは図5に示したパターンAであった。
【0157】
また、上記着色接着剤組成物による硬化膜(着色接着剤硬化膜)を作製して物性を評価した。具体的には着色接着剤組成物を、非接着性の未処理PPフィルムに乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布し、溶媒を乾燥させた後、残存イソシアネートが5%以下になるまで60℃でエージングを行って硬化させた。この硬化膜を未処理PPフィルムから剥離し、15mm幅に切断したものを試験片とした。
【0158】
作製した試験片を標点距離50mm、引張速度100mm/minの条件で引張試験を行い、ヤング率、破断強度および破断伸びを測定したところ、ヤング率が540MPa、破断強度が33MPa、破断伸びが41%であった。
【0159】
一方、第2接着剤層としてポリアクリル接着剤を準備し、シーラント層として厚さ30μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを準備した。
【0160】
またマットコート層として、耐熱性樹脂としてフルオロエチレンビニルエステルを70質量部と、無機微粒子として硫酸バリウム10質量部、粉状シリカ10質量部、ワックスとしてポリテトラフルオロエチレンワックス5質量部、樹脂ビーズとしてポリエチレン樹脂ビーズ5資料部とを混合してマットコート層用組成物を準備した。
【0161】
両面に化成被膜を形成した上記金属箔層用のアルミニウム箔の一方の面(外面)に、所定量の上記着色接着剤組成物を塗布して乾燥させて第1接着剤層を形成した。着色接着剤組成物の塗布量、数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、Mw/Mnおよびカーボンブラックの含有量(塗布量)は表1に示す通りである。そして上記第1接着剤層上に上記基材層用のフィルムを貼り合わせて基材層を積層した。
【0162】
次いで、金属箔層の他方の面(下面)に、第2接着剤層としての上記ポリアクリル接着剤を塗布し、その外面にシーラント層としての上記ポリプロピレンフィルムを貼り合わせた。
【0163】
さらに基材層の外面に、上記マットコート層用組成物を乾燥後の厚みが2μmとなるように塗布した。
【0164】
こうして貼り合わせた積層体を40℃環境下で5日間放置エージングすることによって、実施例1の装材(蓄電デバイス用外装材)を得た。
【0165】
<実施例2~8および比較例1~5>
表1に示すように基材層において、厚さ、熱水収縮率、弾性率、破断強度および数平均分子量を調整し、第1接着剤層において、顔料濃度(カーボンブラック濃度)、着色接着剤組成物塗布量、顔料塗布量(含有量)、数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、Mw/Mnを調整し、それ以外は上記実施例1と同様にして、実施例2~8および比較例1~5の包装材を得た。
【0166】
ただし実施例6の包装材サンプルにおいては、ポリアミドフィルム(基材層)のコロナ処理面に、ウレタン樹脂による易接着処理剤層(0.2g/m2)を設けた。
【0167】
<評価試験>
(1)隠蔽性(遮蔽性)の評価
実施例および比較例の各包装材を、基材層側(外面側)から目視観察して、金属箔層の
隠蔽性を確認した。そして遮蔽性が有るものを「〇」、遮蔽性がないものを「×」と評価した。こうして得られた評価結果を表2に示す。
【0168】
【表2】
【0169】
(2)成形性の評価
パンチ形状:33mm×54mm、パンチのコーナーR:2mm、パンチ肩R:1.3mm、ダイス形状のダイス肩R:1mmの金型を設置した株式会社アマダ製のプレス機を準備した。
【0170】
そして実施例および比較例の各包装材を、100mm×125mmのブランク形状にサンプリングし、各サンプルに対し、上記プレス機を用いて、深絞り成形を行って成形品サンプルを作製した。
【0171】
この深絞り成形によって得られた各成形品におけるコーナー部のピンホールおよび割れの有無を確認し、ピンホールおよび割れが発生しない「最大成形深さ(mm)」を調べ、下記判定基準に基づいて評価した。なお、評価するに際してクラックやピンホールの有無は、暗室にて光透過法で調べた。以下に説明する評価基準の「◎」「○」「×」のうち、「◎」「〇」が合格、「×」が不合格である。その結果を表2に示す。
【0172】
◎:成形深さ6mm以上でクラックやピンホール無し
〇:成形深さ5mm以上、6mm未満でクラックやピンホール無し
×:成形深さ5mm未満でクラックやピンホール有り
(3)基材層の剥離に関する評価
実施例および比較例の各包装材を所定サイズにサンプリングして、上記と同様に各サンプルに対し深絞り成形を行って、図6に示すように33mm×54mm×4.5mmの凹
陥部(凸部)21を有し、かつ凸部外周にフラットなフランジ部22を有する成形品としての成形ケース(上下反転のトレイ状部材)2を作製した。さらにその成形品2の凸部の天壁(天面)25を押し潰すように凹変形させた後、以下の高温高湿試験と、温水水没試験を行い、試験後の基材層の剥離の有無を目視観察した。
【0173】
高温高湿試験では、天面25を潰した成形品2を温度70℃、湿度90%の雰囲気中に2週間保管して、基材層の剥離の有無を確認した。また、温水水没試験では、潰した成形品2を45℃の温水中に水没させて2週間保管した。
【0174】
両試験ともに、各実施例毎におよび各比較例毎に30個ずつ成形品2を目視観察し、基材層が金属箔層から剥離した成形品2の数に基づいて以下の基準で評価した。なお以下の評価基準の「◎」「○」「△」「×」のうち、「◎」「〇」「△」が合格、「×」が不合格である。その結果を表2に示す。
【0175】
◎:剥離したものが30個中0個である
○:剥離したものが30個中1個または2個
△:剥離したものが30個中、3個~5個である
×:剥離したものが30個中6個~30個である
(4)加工性の評価
実施例および比較例の各包装材を作製するに際して、第1接着剤層(着色接着剤組成物)を塗布した後の乾燥時間を測定した。この際、実施例5の乾燥時間を基準時間とし、乾燥時間が基準時間よりも15%以上遅いものを「×:不合格」、それ以外を「〇:合格」と評価した。その結果を表2に示す。
【0176】
(5)突き刺し強度の測定(突き刺し耐性の評価)
突き刺し強さ(突き刺し強度)は、JIS(日本産業規格) Z1707:2019に準拠して測定した。突き刺し強さ試験は、次の手順(5-1)~(5-3)によって測定したものである。
【0177】
(5-1)各実施例および各比較例の包装材から得られた試験片をジグで固定し、直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針を試験速度50±5mm/minで突き刺し、針が貫通するまでの最大力(N)を測定する。
【0178】
(5-2)試験片の数は、各実施例および各比較例においてそれぞれ5個以上とし、試験片 の全幅にわたって平均するように採取する。
【0179】
(5-3)試験結果がフィルムのいずれかの面から貫通するかに依存する場合は、それぞれの面について実施する。報告数値は,小数点以下1桁とする。
【0180】
<総合評価>
以上の評価結果から明らかなように、本発明に関連した実施例の包装材(外装材)は、遮蔽性、成形性、耐剥離性、加工性および突き刺し耐性のいずれにも優れた評価が得られた。これに対し本発明の要旨を逸脱する比較例の包装材は、実施例の包装材と比較して、いずれかの評価に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0181】
この発明の包装材は、例えばノートパソコン、携帯電話用、車載型(移動型)または定置型の二次電池(リチウムイオン二次電池)等の電池(蓄電デバイス)における外装材として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0182】
1:外装材(包装材)
10:蓄電デバイス本体
11:ケーシング
2:トレイ部材(包装材、外装材、包装容器)
3:カバー部材(包装材、外装材)
51:基材層
52:金属箔層
53:シーラント層
61:第1接着剤層(着色接着剤層)
63:化成被膜
MD:直交方向
TD:成形方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6