(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138480
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】ゴルフティー
(51)【国際特許分類】
A63B 57/10 20150101AFI20230922BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20230922BHJP
【FI】
A63B57/10
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042703
(22)【出願日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2022043365
(32)【優先日】2022-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 善行
(57)【要約】
【課題】板紙製の環境に配慮されたゴルフティーを提供する。
【解決手段】
板紙製であり、下端部から上方側に向かって左右斜外方向に延在する一対の側縁と、 側縁間中央部において下端部から上方側に向かって延在する縦折り線と、上縁が左右端部において上方側に凸となっている一対の側部凸部と、側縁間中央を挟んで上縁の二点から下方側に向かって漸次拡幅するように延在するハ字型の中央凸部形成折り線と、を有し、
縦折り線及び中央凸部形成折り線で折り曲げられることで、中央凸部と側部凸部とでゴルフボールを受けるボール受部が形成され、かつ、縦折り線を挟んで位置する部分で地中に差し込まれる差込部が形成される、ゴルフティーにより解決される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板紙製であり、
下端部から上方側に向かって左右斜外方向に延在する一対の側縁と、
側縁間中央部において下端部から上方側に向かって延在する縦折り線と、
上縁が左右端部において上方側に凸となっている一対の側部凸部と、
側縁間中央を挟んで上縁の二点から下方側に向かって漸次拡幅するように延在するハ字型の中央凸部形成折り線と、を有し、
前記縦折り線で折り曲げられることで、
両側縁及び一対の側部凸部が近づくように変形されるとともに、中央凸部形成折り線の裂開及び拡開の少なくとも一方がなされて、前記中央凸部形成折り線間が折り曲げられずに残り、
前記中央凸部形成折り線間が折り曲げられずに残ることで形成される中央凸部と、左右に位置する一対の側部凸部とで、ゴルフボールを受けるボール受部が上部に形成され、
かつ、縦折り線を挟んで位置する部分が断面V字型に形成されるか又は折り重ねられて、地中に差し込まれる差込部が、下部に形成される、
ことを特徴とするゴルフティー。
【請求項2】
前記ゴルフティーは、
側縁が左右方向外方に突出する一対の係止片を有し、
縦折り線での折り曲げによって、係止片同士が係合可能となり、係止片同士の係合によって、縦折り線で折り曲げられた状態が維持されるように構成されている、
請求項1記載のゴルフティー。
【請求項3】
前記ゴルフティーは、
上縁が下方側に凹となっている係合凹部と、
中央凸部形成折り線の上端間から上方に突出する突片と、
突片に形成された前記係合凹部に係合する係合凸部と、
中央凸部形成折り線の上端間を繋ぐ横折り線と、を有し、
縦折り線で折り曲げられることで、
係合凹部が近づくように変形されるとともに、中央凸部形成折り線間が折り曲げられずに残り、
横折り線で突片を折り曲げることで、前記横折り線の両端位置に上方に凸となる一対の中央凸部が形成されるとともに、係合凸部が係合凹部に係合可能となり、
前記係合凸部が係合凹部に係合されることで、縦折り線を挟んで位置する部分が断面V字型に形成された状態で維持される、
請求項1記載のゴルフティー。
【請求項4】
前記中央凸部形成折り線より側縁側に、前記縦折り線で折り曲げられることで両側縁及び一対の側部凸部が近づくように変形された際に、対面する一対の係止孔を有し、
かつ、板紙製であり、上縁が左右端部において上方側に凸となっている一対の第二側部凸部と、この第二側部凸部の間に位置する凹溝部と、を有するボール受部形成用の別体部材を有し、
前記縦折り線で折り曲げられて両側縁及び一対の側部凸部が近づくように変形され、一対の係止孔が対面された形態において、前記別体部材の一方の第二側部凸部を両係止孔に挿通し、各係止孔の少なくとも上縁部を前記凹溝部内に位置させるとともに、左右に位置する前記一対の側部凸部よりも左右外方に第二側部凸部が位置するように組み立てられ、
前記中央凸部と、左右に位置する一対の側部凸部と、前記側部凸部より左右外方に位置する第二側部凸部とで、ゴルフボールを受けるボール受部が上部に形成される、
請求項1記載のゴルフティー。
【請求項5】
前記別体部材は、下方側に前記凹溝部と溝底が対向するように設けられた第二凹溝部を有し、各係止孔の下縁部を前記第二凹溝部の溝底に付き合わせて、別体部材が係合される、請求項4記載のゴルフティー。
【請求項6】
縦折り線が、ハーフスリットであり、縦折り線の折り曲げによって裂開及び拡開の少なくとも一方がなされて、両側縁が近づくように変形される、請求項1~5の何れか1項に記載のゴルフティー。
【請求項7】
前記板紙は、厚みが950~1500μmであり、坪量が700~1470g/m2である、請求項1~5の何れか1項に記載のゴルフティー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフティーに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフのプレーで、ゴルフボールをグラウンドから浮かせて打球するためにゴルフティーが用いられることがある。このゴルフティーは、種々の形状があるが、ゴルフボールが置かれる椀状の上部と、地面に突き刺す先端先細の下部を有する形状のものが一般的である。
【0003】
このゴルフティーは、ゴルフクラブによる打球時にティーに衝撃が与えられることにより、上部が破損してグラウンドに飛び散ってしまったり、その際に下部がグラウンドに突き刺さったまま残ったりすることがある。打球時にゴルフティーがグラウンドから抜けて遠くに飛んでしまい、紛失することもある。ゴルフティーでは、このような紛失、破損がよくおこるため、安価で低コストであることが求められる(下記特許文献1参照)。
【0004】
また、従来のゴルフティーは、プラスチック製の物が主体であるため、破損によって飛び散ったり、地中に残ったりするプラスチック片や、紛失によって長期にグラウンドに放置されたプラスチック製のゴルフティーが、環境汚染の原因となることがあった。
【0005】
このため、ゴルフティーにおいて、素材を生分解性のものとする技術が提案されている(下記、特許文献2~6参照)。例えば、特許文献2に記載のゴルフティーは、バイオプラスチックを主原料としてモールド成形したものであり、特許文献3に記載のゴルフティーは、天然素材である紙パルプを水溶性接着剤で成形したものであり、椀状の上部と地面に突き刺す先端先細の下部を有する一般的な形状に成形されている。
【0006】
特許文献4に記載のゴルフティーは、シート状の紙を二つ折にした形状のものであり、特許文献5及び特許文献6に記載のゴルフティーは、シート状の紙を折り曲げて四角柱形状にしたものであり、いずれもシート形状から簡易に組み立てられて、上部にボールが載置されるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許6483783号
【特許文献2】特表2013-512019号公報
【特許文献3】実開平7-18757号公報
【特許文献4】特表2003-509180号公報
【特許文献5】実登3002285号
【特許文献6】実開平03-085066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの特許文献に記載のゴルフティーは、いずれも生分解性の素材を用いることで、環境に配慮されたものとなっている。しかしながら、特許文献2及び特許文献3記載のゴルフティーは、生分解性プラスチックという特殊な素材が必用であったり、製造するためにモールド成形や固化成形が必用であったりするなど、製造コストが高くなりやすい。
【0009】
また、特許文献4、特許文献5及び特許文献6は、グラウンドに載置するものであるため、風で飛ばされてプレーに影響を及ぼすおそれがある。また、組み立て後の形状が立体的で嵩張るため、ポケットに入れて次のラウンドで使用し難く、持ち運びや複数回の使用には不向きであった。
【0010】
近年、マイクロプラスチックによる海洋汚染等の問題が注目され、環境保護の点等から脱プラスチック化が世界的に進んでいる。日本においても、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が成立するなど、脱プラスチック化の気運が高まり、種々の製品等において脱プラスチック化が進められている。
【0011】
このため、プラスチックを用いず、より使用感に優れるゴルフティーの需要がある。そこで、本発明の主たる課題は、使用後に回収することで古紙としてリサイクル可能であり、回収しなくとも生分解性を有することで環境負荷が無く、グラウンドに刺してしっかりと固定することができ、さらに、コンパクトで低コストに製造可能なゴルフティーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決した第一の手段は、
板紙製であり、
下端部から上方側に向かって左右斜外方向に延在する一対の側縁と、
側縁間中央部において下端部から上方側に向かって延在する縦折り線と、
上縁が左右端部において上方側に凸となっている一対の側部凸部と、
側縁間中央を挟んで上縁の二点から下方側に向かって漸次拡幅するように延在するハ字型の中央凸部形成折り線と、を有し、
前記縦折り線で折り曲げられることで、
両側縁及び一対の側部凸部が近づくように変形されるとともに、中央凸部形成折り線の裂開及び拡開の少なくとも一方がなされて、前記中央凸部形成折り線間が折り曲げられずに残り、
前記中央凸部形成折り線間が折り曲げられずに残ることで形成される中央凸部と、左右に位置する一対の側部凸部とで、ゴルフボールを受けるボール受部が上部に形成され、
かつ、縦折り線を挟んで位置する部分が断面V字型に形成されるか又は折り重ねられて、地中に差し込まれる差込部が、下部に形成される、
ことを特徴とするゴルフティーである。
【0013】
第二の手段は、
前記ゴルフティーは、
側縁が左右方向外方に突出する一対の係止片を有し、
縦折り線での折り曲げによって、係止片同士が係合可能となり、係止片同士の係合によって、縦折り線で折り曲げられた状態が維持されるように構成されている、
上記第一の手段に係るゴルフティーである。
【0014】
第三の手段は、
前記ゴルフティーは、
上縁が下方側に凹となっている係合凹部と、
中央凸部形成折り線の上端間から上方に突出する突片と、
突片に形成された前記係合凹部に係合する係合凸部と、
中央凸部形成折り線の上端間を繋ぐ横折り線と、を有し、
縦折り線で折り曲げられることで、
係合凹部が近づくように変形されるとともに、中央凸部形成折り線間が折り曲げられずに残り、
横折り線で突片を折り曲げることで、前記横折り線の両端位置に上方に凸となる一対の中央凸部が形成されるとともに、係合凸部が係合凹部に係合可能となり、
前記係合凸部が係合凹部に係合されることで、縦折り線を挟んで位置する部分が断面V字型に形成された状態で維持される、
上記第一の手段に係るゴルフティーである。
【0015】
第四の手段は、
前記中央凸部形成折り線より側縁側に、前記縦折り線で折り曲げられることで両側縁及び一対の側部凸部が近づくように変形された際に、対面する一対の係止孔を有し、
かつ、板紙製であり、上縁が左右端部において上方側に凸となっている一対の第二側部凸部と、この第二側部凸部の間に位置する凹溝部と、を有するボール受部形成用の別体部材を有し、
前記縦折り線で折り曲げられて両側縁及び一対の側部凸部が近づくように変形され、一対の係止孔が対面された形態において、前記別体部材の一方の第二側部凸部を両係止孔に挿通し、各係止孔の少なくとも上縁部を前記凹溝部内に位置させるとともに、左右に位置する前記一対の側部凸部よりも左右外方に第二側部凸部が位置するように組み立てられ、
前記中央凸部と、左右に位置する一対の側部凸部と、前記側部凸部より左右外方に位置する第二側部凸部とで、ゴルフボールを受けるボール受部が上部に形成される、
上記第一の手段に係るゴルフティーである。
【0016】
第五の手段は、
前記別体部材は、下方側に前記凹溝部と溝底が対向するように設けられた第二凹溝部を有し、各係止孔の下縁部を前記第二凹溝部の溝底に付き合わせて、別体部材が係合される、上記第四の手段に係るゴルフティーである。
【0017】
第六の手段は、
縦折り線が、ハーフスリットであり、縦折り線の折り曲げによって裂開及び拡開の少なくとも一方がなされて、両側縁が近づくように変形される、上記第一~第五の手段に係るゴルフティーである。
【0018】
第七の手段は、
前記板紙は、厚みが950~1500μmであり、坪量が700~1470g/m2である、上記第一~第五の手段に係るゴルフティーである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、古紙としてリサイクル可能であり、また、生分解性を有し、グラウンドに刺してしっかりと固定することができ、さらに、コンパクトで低コストに製造可能なゴルフティーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】第一実施形態のゴルフティーの組み立て後の使用形態を示す図である。
【
図5】第二実施形態のゴルフティーの組み立て後の使用形態を示す図である
【
図7】第三実施形態のゴルフティーの組み立て後の使用形態を示す図である
【
図8】第三実施形態のゴルフティーの他の例の平面図である
【
図10】第四実施形態のゴルフティーの平面図である
【
図11】第四実施形態の別体部材の例を説明する平面図である。
【
図12】第四実施形態のゴルフティーの組み立て後の使用形態を示す図である。
【
図13】参考実施形態のゴルフティーの平面図である。
【
図14】参考実施形態のゴルフティーの組み立て後の使用形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次いで、本発明の実施形態を
図1~
図12を参照しながら以下に詳述する。但し、本発明は、図示の形状やこの実施形態に限定されるわけではない。本発明の範囲において、各部の詳細な形状や位置については、本発明の効果を妨げない範囲で変更可能である。また、本発明及び本明細書における「上」、「下」、「左」及び「右」の語は、観者の位置によって変わるものであり絶対的な位置を示す語ではない。但し、「上」、「下」については、ゴルフティーを一般的な使用方法で使用する際の位置関係と一致する。
【0022】
(第一実施形態)
第一実施形態のゴルフティー1を
図1~
図3を参照しながら説明する。このゴルフティー1は、一枚の薄板状の板紙製であり、折り曲げによる組み立てよって、上部にゴルフボールが載置されるボール受部20と、下部に地面に突き刺される先端先細の差込部10とを有する使用可能な状態となる。差込部10を、例えばティーグラウンドに差し込んで起立状態とし、ボール受部20にゴルフボールを載せて、打球を行うようにして使用する。
【0023】
第一実施形態のゴルフティー1は、特徴的に、下端部から上方側に向かって左右斜外方向に延在する一対の側縁11,11を有し、全体として上部が左右に幅広、下部が先細の略V字形状をなしているとともに、側縁間中央部において下端部から上方側に向かって延在し上端にまで至っていない縦折り線12を有しており、その縦折り線12で折り曲げられるようになっている。但し、ゴルフティー1の全体形状は、必ずしも図示の形態に限定されない。
【0024】
このゴルフティー1は、縦折り線12で、左右の側縁11,11が近づくように折り曲げられて変形される。図示の第一実施形態のゴルフティー1では、この折り曲げによって、縦折り線12を挟んで位置する部分が断面V字型に形成され、地面に突き刺される先端先細の差込部10が形成される。縦折り線12は、必ずしも、ゴルフティー1の下端縁13に至るように形成されていなくてもよいが、好ましくは、図示例のように、下端縁13に至るまで形成されているのが望ましい。下端まで折り曲げやすくなる。
【0025】
縦折り線12は、折り返しや折り曲げを容易に行えるようにするための線であればよく、位置決めのための単なる印刷による線であってもよい。その他に、折筋とも称される罫線、ミシン目、ハーフスリットでもよい。特に好ましくは、ハーフスリットである。ゴルフティーでは、グラウンドに差し込み可能な強度が必用であるため、強度及び厚みのある板紙であるのが望ましい。このような板紙を使用時に適切な位置で容易に折り曲げ、かつ、縦折り線で分断し難いことから、特に、ハーフスリットであるのが望ましい。ハーフスリットでは、ゴルフティー1を使用形態に折り曲げる際に、裂開及び拡開の少なくとも一方が容易になされるため、強度及び厚みのある板紙を簡易に折り曲げることができる。
【0026】
他方、このゴルフティー1には、上縁が左右端部において上方側に凸となっている一対の側部凸部21,21が形成されている。側部凸部21の具体的な形状は限定されない。図示の形態のように頂部が角丸の先端先細の凸形状でもよいし、台形状の凸形状でもよい。このゴルフティー1は、縦折り線12で折り曲げられることで、各側部凸部21,21が近づき、上面視においては、その一対の側部凸部21,21と、縦折り線12の延長線上位置とが三角形をなすように配置される。図示の形態では、側部凸部21,21の頂部の位置が、好ましい形態として、左右両端に位置しているが、必ずしもこの位置にある必要はなく、左右両端位置よりもやや中央側に位置にあってもよい。
【0027】
また、このゴルフティー1は、側部凸部21,21より側縁間中央よりにあってかつ側縁間中央を挟んで上縁の二点から下方側に向かって漸次拡幅するように延在するハ字型の中央凸部形成折り線22,22を有している。中央凸部形成折り線22,22は、直線であっても曲線であってもよい。その下方側端の位置は、縦折り線12の上端位置よりも上方側に位置しているのが望ましい。このゴルフティー1では、この中央凸部形成折り線22,22より上方側の部分は、縦折り線12での折り曲げによる側縁11,11の近づきとともに、中央凸部形成折り線22,22の裂開及び拡開の少なくとも一方がなされて、中央凸部形成折り線22,22でも折り曲げられて近づけられ、その際に中央凸部形成折り線22,22の間が、折り曲げられずに残る。
【0028】
中央凸部形成折り線22,22は、縦折り線12での折り曲げによる側縁11,11の近づきとともに、中央凸部形成折り線22,22の裂開及び拡開の少なくとも一方がなされるものであり、具体例としては、ミシン目、ハーフスリットがあげられる。好ましくは、ハーフスリットである。ゴルフティー1に必要な強度及び厚みのある板紙において、裂開及び拡開の少なくとも一方がなされて、中央凸部形成折り線22,22の間が、折り曲げられずに残るようになりやすい。
【0029】
この第一実施形態のゴルフティー1では、上縁の中央凸部形成折り線22,22の間が上方に凸となる凸形状となっており、その凸形状部分が縦折り線12の折り曲げの際に、折曲がらずに残って中央凸部23を形成する。したがって、この第一実施形態のゴルフティー1は、左右一対の側部凸部21,21と、その間にある中央凸部23とが、上方に凸となっており、この三つの凸部が上面視で三角形をなし、ゴルフボールを三点支持するボール受部20を形成する。
【0030】
第一実施形態のゴルフティー1では、ゴルフボールの支持が好適に行われるように、特に、側部凸部21,21が、左右中央にある縦折り線12に対して線対称位置にあり、さらに、側部凸部21,21及び中央凸部23の頂部位置が、縦折り線12を上下方向とした際における高さ位置が、同じになるように構成されている。縦折り線12の左右位置により形成される差込部をグラウンドに差し込んだ際に、側部凸部21,21及び中央凸部23の高さが同一となりやすく、ゴルフボールをボール受部20にセットした後、転がり落ちるおそれが小さくなり、使いやすいゴルフティー1となる。
【0031】
(第二実施形態)
次いで、第二実施形態のゴルフティー1を
図4~
図5を参照しながら説明する。第一実施形態と同様の構成については、第一実施形態の欄で述べたとおりであり、以下、主には、第二実施形態のゴルフティー1に特有の構成を説明する。
【0032】
第二実施形態のゴルフティー1も、第一実施形態と同様に、上縁が左右端部において上方側に凸となっている一対の側部凸部21,21と、上縁の中央凸部形成折り線22,22の間が上方に凸となっている中央凸部23とを有している。
図4に示される第二実施形態では、
図1に示される第一実施形態でも、側部凸部及び中央凸部の突出長(高さ)が、第一実施形態よりも長くなっている。但し、第一実施形態の欄でも述べたが、側部凸部21及び中央凸部23の形状については限定されるものではない。また、
図4に示す第二実施形態では、好ましい形態として、中央凸部23の側縁下端から連続的に中央凸部形成折り線22,22が形成されている。但し、中央凸部形成折り線22,22は、必ずしも中央凸部の側縁下端から連続的に形成されていなくてもよい。
【0033】
第二実施形態のゴルフティー1は、特徴的に、側縁11,11が左右方向外方に突出する一対の係止片14A,14Bを有し、縦折り線12での折り曲げによって、係止片14A,14Bが係合可能となり、係止片14A,14B同士の係合によって、縦折り線12で折り曲げられた状態が維持されるように構成されている。
【0034】
図示の形態の係止片14A,14Bは、先端に向かうにしたがって先細となる略半楕円形状となっており、特に、一方の係止片14Aの先端の向きが上向き、他方の係止片14Bの先端の向きが下向きとなっているとともに、縦折り線12で折り曲げて、縦折り線12よりも左右の一方側と他方側とを折り重ねた際に、一方の係止片14Aの先端部分と他方の係止片14Bの先端部分とがわずかに重なるように構成されている。そして、そのわずかに重なる位置から、一方の係止片14Aの先端部分を他方の係止片14B側に押し込み、または、他方の係止片14Bの先端部分を一方の係止片14A側に押し込むことで、係止片14A,14Bの先端部分が互い違いに入り込みあって、引っ掛かり合い係止するようになっている。
【0035】
但し、係止片14A,14Bの形状及び係止方法は、上記の形態に限らない。図示はしないが、例えば、四角形状、く字形状、くさび形状、鎌形状、かぎ形状など適宜の凸片形状とすることができる。これらの形状では、一対の各係止片の先端の向きを上下逆にするなどして、先端部分がわずかに重なるようにすることで、互いに引っ掛かり合うようにでき、係止片14A,14B同士を係止させることができる。また、係止の方法に関しても、係止片14A,14Bの互いの対応する位置に溝部やスリットを設けて、溝部同士、スリット同士が互いに嵌り合うことで係止されるように構成してもよい。
【0036】
この第二実施形態のゴルフティー1では、係止片14A,14B同士が係合されるため、縦折り線12で折り曲げられることによって、第一実施形態よりも側縁同士がより近づけられやすく、また、近づけられた側縁11,11の間が意図せず開き難くなる。例えば、グラウンドへ差込部10を差し込んだ際に、地面からの抗力によって、過度に側縁11,11間が開いてしまうおそれが低くなる。また、この第二実施形態のゴルフティー1では、組み立て時に係止片14A,14Bが側方に突出する形状となるため、グラウンドに差し込んだ際に係止片14A,14Bが妨げになって過度に差し込みすぎてしまうおそれが低くなり、適切なボール高さで打球しやすいものとなる。
【0037】
さらに、第二実施形態のゴルフティー1は、少なくとも係合位置で縦折り線12を挟んで位置する部分が、折り重ねられるようになるのが望ましく、特に、
図4に示すように、係合位置から下端までの間で、縦折り線12を挟んで位置する部分が、折り重ねられるようになるのが望ましい。これらの形態とするには、係止片同士の係合位置を調整すればよい。係合位置から下端までの間において、縦折り線12を挟んで位置する部分が折り重ねられている部分が形成されていると、差込部10が薄板状となり、よりグラウンドに差し込みやすくなる。
【0038】
なお、第二実施形態のゴルフティー1においては、上記のように、縦折り線12で折り曲げられることによって、第一実施形態よりも側縁同士がより近づけられるが、そのようにしても、本発明に係るゴルフティー1は、板紙が有するコシと、中央凸部形成折り線22,22の裂開及び拡開の少なくとも一方がなされることで、前記中央凸部形成折り線22,22の間が折り曲げられずに残り、中央凸部23と、左右に位置する一対の側部凸部21,21とが、上面視で、三角形の頂点位置に配置される三点支持のボール受部が形成される。
【0039】
(第三実施形態)
次いで、第三実施形態のゴルフティー1を
図6~
図8を参照しながら説明する。第一実施形態及び第二実施形態と同様の構成については、第一実施形態の欄及び第二実施形態の欄で述べたとおりであり、以下、主には、第三実施形態のゴルフティー1に特有の構成を説明する。
【0040】
第三実施形態のゴルフティー1も、第一実施形態及び第二実施形態と同様に、上縁が左右端部において上方側に凸となっている一対の側部凸部21,21と、上縁の中央凸部形成折り線22,22の間が上方に凸となっている中央凸部23,23とを有している。
【0041】
第三の実施形態のゴルフティー1は、特徴的に、側部凸部21,21と側縁間中央部との間に、上縁が下方側に凹となっている係合凹部24,24が設けられている。さらに、中央凸部形成折り線22,22の上端間から上方に突出する突片25と、中央凸部形成折り線22,22の上端間を繋ぐ横折り線26と、を有しており、この横折り線26で突片25が折り曲げられるようになっている。
【0042】
また、第三の実施形態のゴルフティー1は、突片25の左右両端部に、上方に向かって凸となる係合凸部27,27が形成されており、突片25が横折り線26で折り曲げられることで、縦折り線12での折り曲げにともなって、所定位置にまで近づけられた各係合凹部24,24に対して、係合凸部27,27が係合可能に構成されている。そして、この係合凹部24と係合凸部27の係合によって、縦折り線12を挟んで位置する部分が断面V字型に形成された状態で維持されるように構成されている。係合凹部24と係合凸部27との係合態様は限定されない。縦折り線12での適切な折り曲げ状態から過度の折り曲げ状態、及び、折り曲げ前状態への戻りがないように規制するように係合されるようにするのが望ましい。具体的には、図示の形態のように、縦折り線12で所定の距離にまで近づけられた各係合凹部24,24に、横折り線26で折り曲げられた突片25が、その左右両端部側に位置する係合凸部27,27が引っ掛かるようにして嵌ることで、両側縁部の動きが規制され、縦折り線12での折り曲げ状態が維持されるようにすればよい。
【0043】
また、第三の実施形態のゴルフティー1も、縦折り線12での折り曲げの際に中央凸部形成折り線22,22の間が折り曲げられずに残る点では、第一実施形態及び第二実施形態と同様であるが、第三の実施形態のゴルフティー1は、横折り線26で突片25を折り曲げることで、前記係合凹部24,24と突片25との間に上方に凸となる中央凸部23,23が形成されるようになっている。具体的には、第三の実施形態のゴルフティー1では、上縁が係合凹部24,24と横折り線26との間が上方に凸となるように形成されており、突片25を横折り線26で折り曲げることによって、横折り線26の両端位置に上方に凸となる一対の中央凸部23,23が形成されるように構成されている。したがって、この第三の実施形態のゴルフティー1では、一対の中央凸部23,23と、左右に位置する一対の側部凸部21,21とが、上面視で、四角形の頂点位置に配置される四点支持のボール受部20が形成される。
【0044】
この第三の実施形態のゴルフティー1では、縦折り線12での折り曲げられた左右側縁の位置が固定されるため、例えば、グラウンドへ差込部を差し込んだ際に、地面からの抗力によって、過度に側縁間が開いてしまうおそれが低くなるとともに、過度に側縁間が狭くなってしまうことも防止され、所望のボール受部20を形成しやすくなる。
【0045】
(第四実施形態)
次いで、第四実施形態のゴルフティー1を
図10~
図12を参照しながら説明する。第一実施形態、第二実施形態及び第三の実施形態と同様の構成については、第一実施形態の欄、第二実施形態の欄及び第三実施形態の欄で述べたとおりであり、以下、主には、第四実施形態のゴルフティー1に特有の構成を説明する。
【0046】
第四の実施形態のゴルフティー1は、ボール受部20が別体の部材を組み合わせて構成される。すなわち、第四の実施形態のゴルフティー1は、二つの部材から組み立てられる。この第四実施形態のゴルフティー1は、第一実施形態及び第二実施形態のゴルフティー1と同様に、上縁が左右端部において上方側に凸となっている一対の側部凸部21,21と、上縁の中央凸部形成折り線22,22の間が上方に凸となっている中央凸部23とを有している。
【0047】
第四の実施形態のゴルフティー1は、特徴的に、前記中央凸部形成折り線22,22より側縁側に、前記縦折り線12で折り曲げられることで両側縁11,11及び一対の側部凸部21,21が近づくように変形された際に、対向する一対の係止孔28,28が設けられている。そして、この係止孔28,28に挿通して係合されることで一体化されて、ボール受部20の一部を構成する別体部材30を有している。
【0048】
別体部材30も板紙製のシート材で構成されており、特に
図10に示されるように、上縁が左右端部において上方側に凸となっている一対の第二側部凸部31,31と、この第二側部凸部31,31の間に位置する凹溝部32と、を有している。この別体部材30は、厚みの増加や強度増加のために、例えば、
図11(a)、(b)に示すように、折り線30Lで線対称に配置した同一形状の領域30A,30Bを折り返すことで各領域が積層されて形成される構造としてもよい。
【0049】
第四の実施形態のゴルフティー1は、
図12に示されるように、縦折り線12で折り曲げられて両側縁11,11及び一対の側部凸部21,21が近づくように変形され、一対の係止孔28,28が対面された形態において、前記別体部材30の一方の第二側部凸部31を両係止孔28,28に挿通し、各係止孔28,28の少なくとも上縁部28t,28tを前記凹溝部32内に位置させる。このとき、側部凸部21,21同士は、紙のコシによって左右方向に広がろうとするが、別体部材30の凹溝部32に係止孔28,28の上縁部28t,28tが位置されているため、凹溝部32の溝幅よりも幅広に広がることができず、別体部材30を係合させることができる。
【0050】
そして、この係止による連結時において、左右に位置する前記一対の側部凸部21,21よりも左右外方に第二側部凸部31,31が位置するようにすることで、中央凸部23と、左右に位置する一対の側部凸部21,21と、前記側部凸部21,21より左右外方に位置する第二側部凸部31,31とで、ゴルフボールを受けるボール受部20が上部に形成される。したがって、この第四の実施形態のゴルフティー1では、中央凸部23と、その左右に位置する一対の側部凸部21,21と、一対の第二側部凸部31,31が、上面視で、五角形の頂点位置に配置される五点支持のボール受部20が形成される。
【0051】
さらに、図示の第四実施形態のゴルフティー1は、特に好ましい形態として、
図10、
図11に示されるように、別体部材30の下部に前記凹溝部32の溝底と対面する溝底を有する第二凹溝部33が形成されている。この別体部材30は、各係止孔28,28の下縁部28b,28bを前記第二凹溝部33の溝底33bに付き合わせて、別体部材が係合されるようになっている。この別体部材30は、第二凹溝部33によって側部凸部21,21同士の左右方向への広がりが規制され、別体部材30をより強固に係合させることができる。それとともに、第二凹溝部33の溝底から第二側部凸部31の上縁までの長さの設計によって、第二側部凸部31と、側部凸部21との高さ位置が、適切な位置となるように別体部材30を係合させることができるようになる。
【0052】
この第四の実施形態のゴルフティー1も第三実施形態のゴルフティー1と同様に、縦折り線12での折り曲げられた左右側縁の位置が固定されるため、例えば、グラウンドへ差込部を差し込んだ際に、地面からの抗力によって、過度に側縁間が開いてしまうおそれが低くなる。さらに、第四の実施形態のゴルフティーは、別体部材30の凹溝部32及び第二凹溝部33の溝幅によって、一対の側部凸部21,21の離間距離が調整されるためゴルフボールを受け部に乗せやすいように設計しやすい。
【0053】
以上の第一実施形態から第四実施形態を例に本発明に係るゴルフティー1は、いずれも一枚の板紙から、打ち抜き、カット等によって容易に製造することができる。但し、本発明に係るゴルフティーの形状は、これらの形態に限られない。また、本発明に係るゴルフティー1では、その大きさが限定されない。例えば、
図6及び
図9に示されるように高さが異なるゴルフティーとすることができる。このように高さを異ならしめれば、ボールがセットされる位置が異なるゴルフティーとなる。この場合、例えば、高い位置にボールがセットされるゴルフティーをドライバーでの打球用、低い位置にボールがセットされるゴルフティーをアイアンでの打球用など、ゴルフクラブに応じた使い分けをすることができる。本発明によれば、このような複数種類のゴルフティーを容易に製造することもできる。
【0054】
(板紙について)
さらに、本発明に係るゴルフティーの素材について説明する。本発明に係るゴルフティー1は、縦折り線12での折り曲げと中央凸部形成折り線22とにおいて折り曲げ可能であるとともに、使用時にこれらの線において折り曲げられた略二つ折りの状態で地面に差し込み可能な強度を有する板紙で構成される。このような板紙としては、具体的には、段ボール紙、コートボール紙、複数の紙層が積層されている多層紙が例示できる。
【0055】
さらに本発明に係るゴルフティーの板紙としては、脱プラスチックの観点から、非生分解性の化学繊維を含まない繊維原料を抄紙した板紙であるのが望ましい。もちろんプラスチックを含む合成繊維を含まない天然素材由来の繊維のみから構成される板紙であるのがより望ましい。好適には、パルプ繊維のみからなる板紙が望ましい。また、特に好ましい紙は、三以上の紙層を有する多層紙である。
図9に示すように、多層紙90は、複数の紙層が積層されているため各層の特性を変えることができ、強度を有しつつ折り曲げやすくできる。例えば、耐水性や耐摩耗性に優れるものの硬いが折れ易い傾向の一対の表層91に柔軟な中層92を組み合わせることで、強靭性や耐久性に優れるようになり、強度を有しつつ折り曲げたり、組み立てやすくしたりすることができる。また、各折り線をハーフスリットとした際に表層を含む複数層が完全に切断されないようにすることができ、各折り線における破断の恐れが格段に小さくなるとともに撓りを持たせることができる。なお、多層紙90は、多層抄きによって製造することができる。また、多層紙90は、市販されているものであってよく、例えば、大日製紙株式会社製のエリプラペーパー等が例示できる。この点から、本実施形態のゴルフティーは、板紙が多層紙であって、縦折り線12及び中央凸部形成折り線22をハーフスリットとするのが特に好ましい。
【0056】
本発明に係るゴルフティーの板紙の好適な坪量は、好ましくは700g/m2以上、より好ましくは800g/m2以上、特に好ましくは850g/m2以上である。この坪量の紙であれば、各部の折り曲げによる組み立てをしやすく、しかも十分な剛性及び強度としやすい。坪量の上限値は限定されないが、抄造時にカレンダーロール等で折れジワが発生しやすくなるおそれがあり、この点からは上限値については、1470g/m2以下、より好ましくは1200g/m2以下、特に好ましくは1100g/m2以下である。また、紙厚は、900μm以上1500μm以下が好ましく、950μm以上1,400μm以下がより好ましく、1000μm以上1,350μm以下が特に好ましい。この坪量及び紙厚の範囲であれば、特に打球時の衝撃に対する強度が十分なものとすることができる。坪量は、JIS P 8124(2011)に記載の「紙及び板紙-坪量測定方法」に準拠して測定した値であり、紙厚は、JIS-P8118(2014)に記載の「紙及び板紙-厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した値である。
【0057】
本発明に係るゴルフティーの板紙を構成するパルプ繊維は、必ずしも限定されないが、好ましいパルプ繊維は、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等の針葉樹クラフトパルプ及び、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等広葉樹クラフトパルプである。その他のパルプとして、古紙パルプ、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ、あるいは、ケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的にまたは機械的に製造されたパルプ等の公知の種々のパルプを適宜組合せて使用されていれもよい。強度を発現させやすいことから、針葉樹クラフトパルプ及び広葉樹クラフトパルプが90~100質量%であるのが望ましい。この場合、針葉樹クラフトパルプ及び広葉樹クラフトパルプの配合割合は、5:95~30:70であるのが望ましい。白色度が高い、針葉樹晒クラフトパルプ及び広葉樹晒クラフトパルプを用いると、芝生上で目立ちかつ硬質感のある意匠性を有するゴルフティーとなり、意匠性の点で特に望ましい。
【0058】
本発明に係るゴルフティーの板紙は、JIS P 8113(2006)に準拠して測定された縦方向の引張強度が、70kN/m以上、横方向の引張強度が40kN/m以上であるのが望ましい。この引張強度を有していれば、組み立てやすい。
【0059】
本発明に係るゴルフティーの板紙は、JIS P 8125(2000)に準拠して測定されたテーバー剛度が縦方向で170mN・m以上であり、横方向で70mN・m以上であるのが望ましい。この範囲であれば、組み立てやすい。
【0060】
さらに、本発明に係るゴルフティーの板紙は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.18-1:2000に準拠して測定されるZ軸強度が450kN/m2以上、好ましくは480kN/m2以上であるのが望ましい。トムソン加工等の打ち抜き、カッティングプロッター等のカッティングによって製造しやすい。
【0061】
本発明に係るゴルフティーの板紙は、MMDの値が、表面及び裏面ともに好ましくは10~25であるのが望ましい。表面が滑らかで、地中への差し込み、地中からの引き抜きがしやすいものとなる。MMDの測定は、摩擦感テスター(KES-SE、カトーテック社製)及びその相当機を用いて測定する。なお、摩擦子は、標準付属の直径0.5mmのピアノ線を20本隣接させて構成された、長さ及び幅がともに10mmの接触面を有するものを用いる。
【0062】
本発明に係るゴルフティーの板紙は、特に好ましいは多層紙90とするならば、その層数は、限定されないものの、五~九層とし、中層92の層数を三層以上、特に五層とするのがよい。特に
図9に示す形態は、三層の中層92を有するものとなっている。中層92の総数が三層以上であると、多層紙90の強靭性や耐久性がより発現しやすいとされている。中層92の総数の上限としては、層間強度を維持する観点から、七層以下であることが好ましい。また、三層~七層は、円網多筒式抄き合わせ抄紙機を使用する場合における層間強度を維持しながら操業を行いやすい。
【0063】
なお、板紙を特に好適な多層紙90とする場合、表層91及び中層92の坪量は、上記の全体の坪量の範囲で調整することができ、特に限定されないが、好ましくは、表層91の坪量としては、1層あたり110.0g/m2以上155.0g/m2以下、特には115~150g/m2が好ましい。また、中層92全体の坪量としては、580g/m2以上770g/m2以下、特には600g/m2以上740g/m2以下が好ましい。さらに、多層紙90は、多層紙90全体の坪量に対する一対の表層91,91の合計の坪量の割合が、21.0%以上35.0%以下のものであるのが好ましい。一対の表層91の剛直性が高く、中層92の柔軟性が優れるようになる。よって、折り線位置で折り曲げやすく、折り線以外の位置で折れ曲がり難くなり、強度と組み立て易さに優れるゴルフティーとしやすい。
【0064】
板紙を特に好適な多層紙90とする場合、その多層紙90における各層のパルプ繊維の配合は、表層91は針葉樹クラフトパルプと前記広葉樹クラフトパルプの質量比(%)が0/100以上15/85以下であるのが好ましい。また、この配合の表層91ととともに、中層92は、針葉樹クラフトパルプと前記広葉樹クラフトパルプの質量比(%)を15/85以上35/65以下であるのが好ましい。剛直で高密度化しやすい広葉樹クラフトパルプが多く含有され、表層が高密度で剛直な特性となるとともに、中層が表層よりも柔軟性に富む針葉樹クラフトパルプを多く含有するため、組み立て時の各折り線での折り曲げがしやすく、強度が低下しがたい。
【0065】
また、ゴルフティーは、特に雨天でのプレーが想定されるものであり、また、水分を含む地中への差し込みがなされるものであるため、耐水性に優れる板紙であるのが望ましい。したがって、本発明に係るゴルフティーの板紙は、製紙用添加剤としてサイズ剤及び紙力増強剤の少なくとも一方を添加されているのが望ましい。特に、サイズ剤及び紙力増強剤の少なくとも一方が、外添塗工されているのが望ましい。
【0066】
サイズ剤としては、スチレン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水琥珀酸(ASA)、中性ロジンサイズ剤、ロジンサイズ剤、変性ロジンエマルジョンサイズ剤などが挙げられる。これらの中でもロジンサイズ剤及び変性ロジンエマルジョンサイズ剤が好ましい。ロジンサイズ剤は、特に限定されない。ロジン系の物質は、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等のロジン類をフマル酸、マレイン酸、アクリル酸等のα,β-不飽和カルボン酸あるいはその無水物で変性した強化ロジンや、ロジン類をグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の多価アルコールを反応させて得られるロジンエステルを挙げることができる。また、ロジンサイズ剤には、これらの単独またはその混合物をエマルジョン化したもの、単独でエマルジョン化した後に混合したものも含まれる。さらに、エマルジョン化したものに、サイズ発現性をより向上させるために各種ポリマーを添加したものも含まれる。
【0067】
紙力増強剤としては、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミン系樹脂、アクリル樹脂系、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂など公知の種々のものを使用できる。これらの中でも、両性紙力増強剤を使用することが好ましい。両性ポリアクリルアミドとしては、アクリルアミドとアニオン性モノマー及びカチオン性モノマーの共重合物、アクリルアミドとアニオン性モノマーとの共重合物のマンニッヒ変性物、ホフマン分解物等が挙げられる。特に両性ポリアクリルアミドは、自己定着機能を有しているため、紙間強度を向上させるべく増添したとしても、カチオン過多になることがなく、変性ロジンエマルジョンサイズ剤とともに含むことでこれを安定的に定着させることができる。
【0068】
サイズ剤の添加量としては、固形分で0.5kg/t以上5.0kg/t以下が好ましい。紙力増強剤の添加量としては、固形分で12kg/t以上30kg/t以下が好ましい。なお、「kg/t」はパルプ1tあたりの質量(kg)を示す。サイズ剤の添加量をこの範囲とすると、耐水性が高まる。
【0069】
また、板紙を多層紙90とする場合、その多層紙90は、表層91及び中層92の各層に製紙用添加剤として上記のサイズ剤及び紙力増強剤の少なくとも一方を添加することが好ましい。この場合、表層91のサイズ剤の添加量としては、固形分で0.5kg/t以上5.0kg/t以下が好ましい。また、中層92のサイズ剤の添加量としては、固形分で2.0kg/t以上5.0kg/t以下が好ましい。また、各層の紙力増強剤の添加量としては、固形分で12kg/t以上30kg/t以下が好ましい。
【0070】
さらに、本発明に係るゴルフティーは、シロキサン化合物が含有されているのが望ましい。シロキサン化合物が含有されていると、シロキサン結合によって剛度、強度、耐水性が高まる。シロキサン化合物は、シロキサン結合を有するものであれば、必ずしも限定されない。また、シロキサン化合物は、素材としての板紙に対して、適宜のアルコキシシラン溶液やアルコキシシラン溶液加工品を含侵させた後、加温や加熱して含有させることができる。このようにすると、シロキサン化合物が、パルプ繊維自体に結合したり、パルプ繊維をコーティングしたりする態様で含有されるようになるため望ましい。
【0071】
さらに、本実施形態に係るゴルフティーは、摩擦係数や表面粗さや折り畳み適性を過度に変化させず、ゴルフティーの機能及び本発明の効果を妨げない範囲で、表面保護剤や抗菌剤、抗ウィルス剤を塗布したり、含浸させたりしても良い。また、表面性及び強度をより好ましいものとするため、例えば、ポリビニルアルコールやワックス等を塗布されているのが望ましい。
【0072】
(参考実施形態)
ここで、本実施形態に係るゴルフティー1と同様の板紙で構成でき、使用後に回収することで古紙としてリサイクル可能であり、回収しなくとも生分解性を有することで環境負荷が無く、コンパクトで低コストに製造可能なゴルフティーの参考実施形態のゴルフティー100を
図13及び
図14に開示しつつ説明する。
この参考実施形態のゴルフティー100は、
図13に示すように、並列する第一折り線111及び第二折り線112と、この第一折り線111と第二折り線112との間に位置する切り起こし可能な舌片部113と、舌片部113の先端から延在する第一折り線111及び第二折り線112と並行位置にある第三折り線116とを有し、さらに舌片部113の基端側及び先端側から延在する四つの脚部114,114…とを有している。第一折り線111と第二折り線112と舌片部113の縁は、
図13に示すように一致しているのが望ましい。但し、一致していなくてもよい。また、第一折り線111と第二折り線112と舌片部113の縁を一致させる場合、第三折り線116はなくともよい。
【0073】
この参考実施形態のゴルフティー100は、
図14に示すように、前記第一折り線111、第二折り線112を折り曲げることで、第三折り線116又は第三折り線相当部分が折り曲げられ、その際に脚部114,114…が立設される。さらにこのとき、舌片部113の先端側が脚部114が立設する方向に若干切り起こされるようになり、第一折り線111と第二折り線112との間に通孔115が形成される。さらにこのとき、第三折り線116の舌片部側の端に凸部116tが形成され、通孔115と凸部116tとによってゴルフボールを載せるボール受け部120が形成される。この参考実施形態のゴルフティー100は、極めて簡易に組み立てることができる利点を有する。なお、図示の形態では、脚部114が四つの例であるが、脚部114の数は必ずしも限定されない。
【符号の説明】
【0074】
1,100…ゴルフティー、10…差込部、11…側縁、12…縦折り線、13…下端縁、14A,14B…係止片、20,120…ボール受部、21…側部凸部、22…中央凸部形成折り線、23…中央凸部、24…係合凹部、25…突片、26…横折り線、27…係合凸部、28…係止孔、28t…係止孔上縁部、28b…係止孔下縁部、30…別体部材、30L…折り線、30A,30B…領域、31…第二側部凸部、32…凹溝部、33…第二凹溝部、33b…第二凹部の溝底、111…第一折り線、112…第二折り線、113…舌片部、114…脚部、115…通孔、116…第三折り線。