(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138485
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】3C-SICに基づいてJBS又はMPS等の電子装置を製造する方法及び3C-SIC電子装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/329 20060101AFI20230922BHJP
H01L 29/872 20060101ALI20230922BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H01L29/86 301P
H01L29/86 301D
H01L29/86 301M
H01L29/86 301E
H01L29/91 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042935
(22)【出願日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】102022000005363
(32)【優先日】2022-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】591002692
【氏名又は名称】エスティーマイクロエレクトロニクス エス.アール.エル.
【氏名又は名称原語表記】STMicroelectronics S.r.l.
(74)【代理人】
【識別番号】100076185
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 正明
(72)【発明者】
【氏名】シモーネ ラスクーナ
(72)【発明者】
【氏名】ファブリヅィオ ロッカフォルテ
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエレ ベッロッキ
(72)【発明者】
【氏名】マリレナ ヴィヴォーナ
(57)【要約】
【課題】 従来技術の欠点を解消するような、3C-SiC内に少なくとも部分的に形成された電子装置及び該3C-SiC電子装置を製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 電子装置(50;80)を製造する方法が、第1導電型(N)を有している4H-SiCの固体本体(3,2)の正面側(2a)に該第1導電型(N)とは反対の第2導電型(P)を有している少なくとも1個の注入領域(9’)を形成するステップ、該正面側(2a)上に3C-SiC層(52)を形成するステップ、及び該3C-SiC層(52)内に該注入領域(9’)に到達するまで該3C-SiC層(52)の厚さ全体を介して延在するオーミックコンタクト領域(54;84)を形成するステップ、を包含している。該3C-SiC層上にシリコン層(56)が存在することが可能であり、この場合は、該オーミックコンタクトは該シリコン層をも貫通して延在する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子装置(50;80)を製造する方法において、
第1導電型(N)を有している4H-SiCの固体本体(3,2)の正面側(2a)に、該第1導電型(N)とは反対の第2導電型(P)を有している少なくとも1個の注入領域(9’)を形成するステップ、
該固体本体(3,2)の該正面側(2a)の少なくとも一部を少なくとも該4H-SiC物質の溶融温度までレーザービームを介して加熱するステップ、
該固体本体(3,2)とコンタクトしている3C-SiC層(52)と、該3C-SiC層(52)上のシリコン層(56)と、該シリコン層(56)上のカーボンリッチ層(58)とを重畳して包含する積層体を形成するために該固体本体(3,2)の該溶融部分の冷却及び結晶化を可能とさせるステップ、
前記積層体を介して該注入領域(9’)へ到達するオーミックコンタクト領域(84;104)を形成するステップ、及び
該カーボンリッチ層(58)上方で且つそれと直接コンタクトする導電性物質の第1電気的端子(8)を形成するステップ、
を包含している方法。
【請求項2】
該第1電気的端子(8)を形成する前記ステップが、該カーボンリッチ層(58)及び該オーミックコンタクト領域(84;104)の上方で且つ直接コンタクトして金属製物質を付着させることを包含している請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該第1電気的端子(8)を形成することが、該第1電気的端子(8)と該カーボンリッチ層(58)との間にショットキーダイオード(57;87)を形成すると共に、同時的に、該第1電気的端子(8)と該オーミックコンタクト領域(54;84)との間に接合バリアダイオード(59;89)を形成することを包含している請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
該第1電気的端子(8)が前記接合バリアダイオード及び前記ショットキーダイードとに共通であり、本方法が、該固体本体の正面側(2a)とは反対側の裏面側(3b)に前記接合バリアダイオード及び前記ショットキーダイオードに共通の第2電気的端子(7)を形成するステップを更に包含している請求項3に記載の方法。
【請求項5】
該注入領域(9’)に対して横方向に延在している該カーボンリッチ層(58)の選択部分を除去して下側のシリコン層(56)の夫々の部分を露出させるステップ、
該シリコン層(56)の露出された部分の酸化ステップを実施して酸化した部分(56’)を形成するステップ、
該シリコン層(56)の該酸化した部分の上方で且つそれとコンタクトしてメタリゼーションを形成するステップ、
を更に包含している請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該シリコン層(56)の前記酸化した部分(56’)及び前記メタリゼーションが該電子装置のゲート端子を形成する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
該固体本体(3,2)の該正面側(2a)に第2導電型(P)を有している付加的な注入領域(9’)を形成するステップを更に包含しており、
前記付加的な注入領域(9’)が該注入領域(9’)から或る距離に延在しており、
該カーボンリッチ層(58)の前記選択部分が該注入領域(9’)と該付加的な注入領域(9’)との間あり、
該注入領域(9’)と該付加的な注入領域(9’)との間の一方が導電性ソース領域を収容しており、且つ該注入領域(9’)と該付加的な注入領域(9’)との間の他方が該電子装置の導電性ドレイン領域を収容している請求項5に記載の方法。
【請求項8】
電子装置(80;100)において、
第1導電型(N)を有している4H-SiCの固体本体(3,2)、
該第1導電型(N)とは反対の第2導電型(P)を有しており該固体本体(3,2)の正面側(2a)に延在している少なくとも1個の注入領域(9’)、
該正面側(2a)上の3C-SiC層(52)、
該3C-SiC層(52)上のシリコン層(56)、
該シリコン層(56)上のカーボンリッチ層(58)、
該注入領域(9’)に到達するまで該3C-SiC層(52)と、該シリコン層(56)と、該カーボンリッチ層(58)との厚さ全体を貫通するオーミックコンタクト領域(84;104)、及び
該カーボンリッチ層(58)の上方で且つそれとコンタクトしている導電性物質の第1電気的端子(8)、
を有している装置。
【請求項9】
該固体本体(3,2)が4H-SiCであり、且つ該カーボンリッチ層(58)がグラファイトからなるか、又はグラファイト又は一つ又はそれ以上のグラファイト層を包含している請求項8項に記載の装置。
【請求項10】
該第1電気的端子(8)が、該カーボンリッチ層(58)と共にショットキーダイオード(87)を且つ該オーミックコンタクト領域(84)と共に接合バリアダイオード(89)を形成する請求項8又は9に記載の装置。
【請求項11】
該第1電気的端子(8)が前記接合バリアダイオード及び前記ショットキーダイオードに共通であり、
本装置が、該固体本体の該正面側(2a)とは反対側の裏面側(3b)に、前記接合バリアダイオード及び前記ショットキーダイオードに共通の第2電気的端子(7)を有している請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記電子装置(80)が、合体型PiNショットキー(MPS)装置、接合バリアショットキー(JBS)装置、MOSFET、IGBT、JFET、DMOSの内のいずれか一つである請求項8又は9に記載の装置。
【請求項13】
電子装置(100)において、
第1導電型(N)を有している4H-SiCの固体本体(3,2)、
該固体本体(3,2)の正面側(2a)に延在しており該第1導電型とは反対の第2導電型(P)を有しており且つソース端子を包含している第1注入領域(9’)、
該第1注入領域(9’)から或る距離において該固体本体(3,2)の該正面側(2a)において延在しており該第2導電型を有しており且つドレイン端子を包含している第2注入領域(9’)、
該正面側(2a)上の3C-SiC層(52)、
該第1及び第2注入領域(9’)の間で該3C-SiC層(52)上のシリコン酸化物のゲート誘電体、及び
該ゲート誘電体上方で且つそれと直接コンタクトしている金属物質の電気的ゲート端子(8)、
を有している装置。
【請求項14】
電子装置(50;80)を製造する方法において、
第1導電型(N)を有している4H-SiCの固体本体(3,2)の正面側(2a)に該第1導電型(N)とは反対の第2導電型(P)を有している少なくとも1個の注入領域(9’)を形成するステップ、
該正面側(2a)上に3C-SiC層(52)を形成するステップ、及び
該注入領域(9’)に到達するまで該3C-SiC層(52)の厚さ全体を介して延在するオーミックコンタクト領域(54;84)を該3C-SiC層(32)に形成するステップ、
を包含しており、
該3C-SiC層(52)を形成することが、
少なくとも該4H-SiC物質の溶融温度にまで該固体本体(3,2)の該正面側(2a)の少なくとも一部をレーザービームで加熱すること、及び
該固体本体(3,2)の該溶融部分の冷却及び結晶化を可能として、該固体本体(3,2)とコンタクトしている3C-SiC層(52)と、該3C-SiC層(52)上のシリコン層(56)と、該シリコン層(56)上のカーボンリッチ層(58)とを包含する重畳した層からなる積層体を形成する、
ことを包含しており、
本方法が、更に、
該カーボンリッチ層(58)を酸化するステップ及び該酸化したカーボンリッチ層(58)をエッチングするその後のステップを実施すること、又は
該カーボンリッチ層(58)を選択的に除去するためのエッチングを実施すること、
の内の一つを包含している該カーボンリッチ層(58)を完全に除去するステップを有している方法。
【請求項15】
該3C-SiC層(52)を露出させるために前記シリコン層(56)も完全に除去するステップを更に有している請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも、部分的に3C-SiCに形成した電子装置及び3C-SiC電子装置を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既知のように、ワイドバンドギャップを有している、特に1.1eVよりも大きなバンドギャップのエネルギ値Egと、低オン状態抵抗(Ronと、熱伝導度の高い値と、高い動作周波数と、電荷キャリアの高い飽和速度とを有している半導体物質は、特にパワー適用例用のダイオード又はトランジスタ等の電子部品を製造するために理想的である。前記特性を有しており且つ電子部品を製造するために使用されることが意図されている物質は、シリコンカーバイド(SiC)である。シリコンカーバイドは、ポリタイプとも呼称される異なる結晶形態がある。最も一般的なポリタイプは、立方晶系ポリタイプ(ポリタイプ3C-SiC)、六方晶系ポリタイプ(ポリタイプ4H-SiCおよび6H-SiC)、及び菱面体晶系ポリタイプ(ポリタイプ15R-SiC)である。
【0003】
シリコン基板上に設けられる同様の装置と比較して、シリコンカーバイド基板上に設けられる電子装置は、導通における低い出力抵抗、低いリーク電流、高い動作温度、及び高い動作周波数等の多数の利点を有している。特に、SiCショットキーダイオードは、一層高いスイッチング性能を示しており、SiC電子装置を特に高周波数適用例に好適なものとしている。現在の適用例では、電気的特性及び装置の長期信頼性の条件を課している。
【0004】
他のポリタイプと比較して製造が一層容易であるために、4H-SiCが基板として一般的に使用されている。しかしながら、4H-SiCのバンドギャップは、3C-SiC(2.3eV)又はシリコン(1.12eV)の対応するバンドギャップと比較して一層大きく(3.2eV)、3C-SiC又はシリコンと比較して4H-SiCを幾つかの電子的適用例に対して魅力がないものとさせている。例えば、ショットキーバリアダイオードの場合には、ショットキーバリアハイト(SBH)値を制御することの可能性は、エネルギ消費を減少させ且つ導通損失を最小化させるために重要な側面である。そのために、金属/3C-SiC又は金属/Siコンタクトの実現は、金属/4H-SiCコンタクトのSBH値と比較して一層低いSBH値とさせ、一層効率的なショットキーダイオードを製造することを可能としている。
【0005】
更に、SiCのブレークダウン電圧も、シリコンのものよりも一層大きい。それは、SiCの臨界的電界がシリコンのものよりも約10倍一層大きいという事実に起因している。一般的に、4H-SiCの基板(バルク)上に装置を製造することに関連する更なる利点は、ブレークダウン電圧における利点を維持することであるが、例えば、ショットキーコンタクトの障壁高さにおける減少を達成するためには、その表面上に一層低いバンドギャップを有する物質(例えば、シリコン又は3C-SiC)を有することである。即ち、逆バイアスにおける利点を維持し且つ順方向バイアスにおける電圧降下を最適化させることが望ましい。
【0006】
図1は、参照番号1を付した接合バリアショットキー(JBS)装置、又は、同様に、合体型PNショットキー(MPS)ダイオードをX,Y,Z軸からなるカーテシアン(3軸)参照系における横断面図で示している。
図1の装置は、必ずしも既知の技術ではなく、以後、一般性を失うこと無しに、JBS装置1を参照することとする。
【0007】
JBS装置1は、第1ドーパント濃度(例えば、1×1019び1×1022子数/cm3間)と、例えば2mΩ・cm及び40mΩ・cmの間の固有抵抗と、表面3bと反対側の表面3aと、50μm及び350μmの間でより特定的には160μm及び200μmの間で例えば180μmに等しい厚さとを有しているN型にドープされている4H-SiCの基板3;該第1ドーパント濃度よりも一層低い第2ドーパント濃度(例えば、1×1014び1×1016子数/cm3間)で該基板3の表面3a上を延在しており5及び15μmの間の厚さを有しているN型4H-SiCのドリフト層(エピタキシャル成長されている)2;該基板3の表面3b上を延在しているオーミックコンタクト領域6(例えば、ニッケルシリサイド);該オーミックコンタクト領域6上を延在している例えばTi/NiV/Ag又はTi/NiV/Auからなるカソードメタリゼーション7;該ドリフト層2の上部表面2a上を延在している例えばTi/AlSiCu又はNi/AlSiCuからなるアノードメタリゼーション8;該アノードメタリゼーション8を保護するために該アノードメタリゼーション8上のパッシベーション層19;該ドリフト層2の該上部表面2aに面しており且つ各々がP型の夫々の注入領域9’とオーミックコンタクト9”とを包含している該ドリフト層2内の複数個の接合バリア(JB)要素9;及び該JB要素9を取り囲んでいる(設計仕様に依存して完全に又は部分的に)特にP型注入領域である端部終端領域又は保護リング10(オプション)を包含している。
【0008】
ショットキーダイオード12は、ドリフト層2とアノードメタリゼーション8との間の界面に形成されている。特に、ショットキー(半導体-金属)接合は、アノードメタリゼーション8の夫々の部分と直接電気的コンタクトをしているドリフト層2の部分によって形成される。
【0009】
JB要素9及びショットキーダイオード12を包含しているJBS装置1の領域(即ち、保護リング10内に閉じ込められている領域)はJBS装置1の活性区域4である。
【0010】
図2A及び2Bを参照すると、
図1のJBS装置1の製造ステップが、ドリフト層2内に、例えばボロン又はアルミニウム等の第2導電型(P)を有するドーピング種のマスク型注入のステップを提供している(
図2A)。該注入は、
図2Aにおいて矢印18で示している。該注入に対してマスク11が使用されるが、それは、特に、シリコン酸化物又はTEOSのハードマスクである。1例示的実施例においては、該注入ステップは、注入エネルギが10keVと400keVとの間であってドーズが1×10
12子数/cm
21×10
15子数/cm
2の間での第2導電型を有しているドーピング種の1つ又はそれ以上の注入を包含している。
【0011】
従って、注入領域9’と端部終端領域10とが形成される。注入領域9’及び端部終端領域10は、表面から測定した場合に0.2μm及び1μmの間の深さを有している。
【0012】
次いで、
図2Bを参照すると、マスク11を除去し、且つ
図2Aのステップにおいて注入したドーピング種を活性化させるために熱アニーリングステップを実施する。その熱アニーリングステップは、例えば、1600℃よりも一層高い温度(例えば、1700及び1900℃の間で、幾つかの場合には、それよりも一層高い)にある炉中において実施される。
【0013】
図3A-3Cを参照すると、次いで、オーミックコンタクト9”を形成するための更なるステップが実施される。
図3Aを参照すると、注入領域9’以外のドリフト層2の(及び、存在している場合には、端部終端領域10の)表面領域を被覆するためにシリコン酸化物又はTEOSの付着マスク13を形成する。即ち、マスク13は、注入領域9’において(及び、オプションとして、端部終端領域10の少なくとも1部分において)貫通開口13aを有している。次いで、
図3Bを参照すると、該マスク13上及び該貫通開口13a内においてニッケル付着を実施する(
図3Bにおける金属層14)。そのように付着されたニッケルは、該貫通開口13aを介して、注入領域9’及び端部終端領域10に到達し且つコンタクトする。
【0014】
図3Cを参照すると、高温(1分乃至120分の時間期間に対して700℃及び1200℃の間)においてのその後の熱アニーリングが、該貫通開口13aにおいてドリフト層2のシリコンカーバイド(4H-SiC)と付着されたニッケルとの間の化学反応によって、ニッケルシリサイドのオーミックコンタクト9”が形成されることを可能とさせる。実際に、その付着されたニッケルは、それがドリフト層2の表面物質とコンタクトしている箇所において反応して、Ni
2i(即ち、オーミックコンタクト)を形成する。その後、マスク13上に延在している金属を除去し且つマスク13を除去するステップが実施される。
【0015】
該オーミックコンタクトを形成した後に、この方法は、オーミックコンタクト9”と直接電気的コンタクトをしてドリフト層2の上部表面2a上に例えばTi/AlSiCu又はNi/AlSiCuのアノードメタリゼーション8を(例えば、付着によって)形成する。次いで、パッシベーション層19がアノードメタリゼーション8上に形成されて該アノードメタリゼーションを保護する。その結果、夫々のショットキーダイオード12が、注入領域9’の横方向でドリフト層2とアノードメタリゼーション8との間の界面に形成される。特に、ショットキー(半導体-金属)接合が、JB要素9の間で、アノードメタリゼーション8の夫々の部分と直接電気的コンタクトをしているドリフト層2の部分によって形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的とするところは、従来技術の欠点を解消するような、3C-SiC内に少なくとも部分的に形成された電子装置及び該3C-SiC電子装置を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、電子装置を製造する方法及びそにより提供される電子装置が特許請求の範囲に記載される如くに提供される。
【0018】
本発明をより良く理解するために、添付の図面を参照して、純粋に非制限的な例によって、その好適実施例について以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の目的ではない実施例に基づくJBS又はMPS装置の断面図。
【
図2A】本発明の目的ではない実施例に基づく
図1の装置を製造する中間ステップを示した断面図。
【
図2B】本発明の目的ではない実施例に基づく
図1の装置を製造する中間ステップを示した断面図。
【
図3A】本発明の目的ではない実施例に基づく
図2A及び2Bのステップの後に
図1の装置のオーミックコンタクトを形成するためのステップを示した断面図。
【
図3B】本発明の目的ではない実施例に基づく
図2A及び2Bのステップの後に
図1の装置のオーミックコンタクトを形成するためのステップを示した断面図。
【
図3C】本発明の目的ではない実施例に基づく
図2A及び2Bのステップの後に
図1の装置のオーミックコンタクトを形成するためのステップを示した断面図。
【
図4】本発明の1実施例に基づくJBS又はMPS装置を示した断面図。
【
図5A】本発明の1実施例に基づく
図4の装置を製造する中間ステップを示した断面図。
【
図5B】本発明の1実施例に基づく
図4の装置を製造する中間ステップを示した断面図。
【
図6A】
図5A及び5Bの実施例の代替例としての本発明の更なる実施例に基づく
図4の装置を製造する中間ステップを示した断面図。
【
図6B】
図5A及び5Bの実施例の代替例としての本発明の更なる実施例に基づく
図4の装置を製造する中間ステップを示した断面図。
【
図6C】
図5A及び5Bの実施例の代替例としての本発明の更なる実施例に基づく
図4の装置を製造する中間ステップを示した断面図。
【
図6D】
図5A及び5Bの実施例の代替例としての本発明の更なる実施例に基づく
図4の装置を製造する中間ステップを示した断面図。
【
図7】本発明の更なる実施例に基づくJBS又はMPS装置を示した断面図。
【
図8A】本発明の1実施例に基づく
図1の装置を製造する中間ステップを示した断面図。
【
図8B】本発明の1実施例に基づく
図1の装置を製造する中間ステップを示した断面図。
【
図8C】本発明の1実施例に基づく
図1の装置を製造する中間ステップを示した断面図。
【
図9】本発明の別の実施例に基づくJBS装置を示した断面図
【
図10A】本発明の別の実施例に基づく
図9の装置を製造する中間ステップを示した断面図。
【
図10B】本発明の別の実施例に基づく
図9の装置を製造する中間ステップを示した断面図。
【
図10C】本発明の別の実施例に基づく
図9の装置を製造する中間ステップを示した断面図。
【
図10D】本発明の別の実施例に基づく
図9の装置を製造する中間ステップを示した断面図。
【
図11】本発明の更なる別の実施例に基づくトランジスタのゲート端子を有する装置を示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図4は、本発明の1実施例に基づくJBS装置50を、
図1のX,Y,Z軸からなるカーテシアン(3軸)参照系における横断面で、示している。
図4の描画は同様にMPS装置(ダイオード)に関するものである(以後、一般性を喪失すること無しに専らJBS装置について言及する)。
【0021】
図1のJBS装置1と共通の要素には同じ参照番号を付してあり、更なる説明は割愛する。
【0022】
JBS装置50は、第1ドーパント濃度を有するN型4H-SiCの基板3;第2ドーパント濃度を有しているN型4H-SiCの(エピタキシャル)ドリフト層2;表面2a上の立方晶系シリコンカーバイド(3C-SiC)層52;該3C-SiC層52上を延在している例えばTi/AlSiCu又はNi/AlSiCuのアノードメタリゼーション8;該アノードメタリゼーション8上のパッシベーション層19;該3C-SiC層52との界面においてドリフト層2の上部表面2aに面しており該ドリフト層2内の複数個の注入領域9’;夫々の注入領域9’において該3C-SiC層を介して延在しており且つそれらと共に夫々のJB要素59を形成している複数個のオーミックコンタクト54;該JB要素9を完全に又は部分的に取り囲んでいる、特にP型注入領域である、端部終端領域又は保護リング10(オプション);該基板3の表面3b上を延在しているオーミックコンタクト領域又は層6(例えば、ニッケルシリサイド);該オーミックコンタクト領域6上を延在している例えばTi/NiV/Ag又はTi/NiV/Auのカソードメタリゼーション7;を包含している。
【0023】
一つ又はそれ以上のショットキーダイオード57が、注入領域9’の横で3C-SiC層52及びアノードメタリゼーション8の間の界面において延在している。特に、一つ又はそれ以上のショットキー(半導体-金属)接合が、アノードメタリゼーション8の夫々の部分と直接電気的コンタクトしている3C-SiC層52の夫々の部分によって形成されている。
【0024】
JB要素59及びショットキーダイオード57を包含しているJBS装置50の領域(即ち、存在する場合に、保護リング10によって閉じ込められる領域)が、JBS装置50の活性区域4である。
【0025】
図5A及び5Bは、本発明の1実施例に基づくJBS装置50を製造する中間ステップを、
図2A-2B,3A-3C,及び4のX,Y,Z軸からなるカーテシアン(3軸)参照系における横断面で示している。
【0026】
特に、
図2A及び2Bのステップ(ここでは更なる説明は割愛する)を実施した後に、
図5Aに示したように、ドリフト層2の表面2a上に立方晶系シリコンカーバイド(3C-SiC)層52を形成(例えば、成長)させるステップを実施する。
【0027】
4H-SiC基板/層上の3C-SiCの成長はそれ自身既知である。この目的のための方法は蒸気-液体-固体(VLS)メカニズムとして知られており、例えば、Soueidan M. et al.「6H-SiC(0001)上に3C-SiC単一ドメイン層を成長させる蒸気-液体-固体メカニズム(A Vapor-Liquid-Solid Mechanism for Growing 3C-SiC Single-Domain Layers on 6H-SiC(0001))」、アドバンスト・ファンクショナル・マテリアルズ、16巻、975-979頁、2006年5月2日、に記載されている。
【0028】
別の方法は、昇華エピタキシー(SE)として知られており、例えば、Valdas Jokubavicius et al.「オフ配向4H-SiC基板上の3C-SiCの横方向拡大成長メカニズム(Lateral Enlargment Growth Mechanism of 3C-SiC on Off-Oriented 4H-SiC Substrates)」、クリスタルグロースアンドデザイン、2014 14(12)、6514-652、に記載されている。
【0029】
別の方法は、Rositsa Yakimova et al.「六方晶系ポリタイプ上の3C-SiCの成長、欠陥、及びドーピング(Growth、Defects and Doping of 3C-SiC on Hexagonal Polytypes)」、ECSジャーナル・オブ・ソリッドステート・サイエンス・アンド・テクノロジー、6巻、10番、741頁、2017年11月から知られている。
【0030】
次いで、
図5Bを参照すると、本方法は、
図5Bの実施例に対して適合された
図3A-3Cを参照して既に説明したプロセスを利用して、オーミックコンタクト54を形成するステップで進行する。特に、この場合に、マスク13が3C-SiC層52上に形成され、且つ貫通開口13aが3C-SiC層52に到達するまで延在する。従って、金属層14が3C-SiC層52に到達するまで延在する。
【0031】
該オーミックコンタクトの形成は、開口13a内にニッケルを付着させることが関与する。そのように付着されたニッケルは3C-SiC層52に到達し且つコンタクトする。その後の高温熱処理(1分乃至120分の時間期間の間700℃と1200℃との間)が、開口13aにおいて付着したニッケルとシリコンカーバイド(3C-SiC)との間の化学反応によるニッケルシリサイドオーミックコンタクト54の形成を可能とさせる。
【0032】
代替的に、注入領域9’においてドリフト層2まで延在する開口13aを形成することが可能である。この場合においての該オーミックコンタクトの形成は、注入領域9’に到達するまで開口13a内にニッケルを付着させることが関与する。
【0033】
図5Bのステップの後に、本方法は、オーミックコンタクト54と直接電気的にコンタクトして3C-SiC層52上に、例えばTi/AlSiCu又はNi/AlSiCuのアノードメタリゼーション8を形成する(例えば、付着により)ステップで進行する。次いで、パッシベーション層19をアノードメタリゼーション8上に形成してそれを保護する。その結果、オーミックコンタクト57の横で、3C-SiC層52とアノードメタリゼーション8との間の界面に夫々のショットキーダイオード57が形成される。
【0034】
図6A-6Dは、3C-SiC層52を形成するための更なる方法を示している。
【0035】
この場合には、例えば、Choi, I.、Jeong, H.、Shin, H. et al.「シリコンカーバイドのレーザー誘起型相分離(Laser-induced phase separation of silicon carbide)」、ネイチャーコミュニケーションズ 7,13562(2016)に記載されているように、ドリフト層2の4H-SiC物質の溶融及び再固化(結晶化)によって、ドリフト層2の表面2a上に立方晶系シリコンカーバイド(3C-SiC)層52を形成するステップが発生する場合がある。
【0036】
図6Aに例示したように、このプロセスは、4H-SiCのドリフト層2上3C-SiC層52と、該3C-SiC層52上のシリコン層56と、該シリコン層56上のカーボンリッチ層58(例えば、グラファイトからなるか又はグラファイトを包含しているか又はグラファイト層(複数)を包含している)とを包含する積層体60を形成することとなる。1実施例において、該3C-SiC層52は10及び200nmの間の厚さを有しており、且つ該シリコン層56は5及び100nmの間の厚さを有しており、且つ該カーボンリッチ層は5及び100nmの間の厚さを有している。
【0037】
このプロセスは、上部表面2aにおいてドリフト層2の一部の結晶変化を発生させるので、積層体60を形成した後に、ドリフト層2は減少された厚さを有することとなる。本発明者等が検証したところでは、この溶融及び結晶化ステップは、電気的又は機能的観点から、注入領域9’を損傷することはない。
【0038】
3C-SiC層52及びシリコン層56は、4H-SiCのドリフト層2と実質的に同一のドーピングを有している。何故ならば、該溶融及び結晶化ステップはドリフト層2内に既に存在しているドーパントのドーズの修正を生じることはないからである。
【0039】
ドリフト層2の4H-SiC物質の溶融は、特に、レーザーを介して実施されるが、その形態及び動作パラメータは以下の通りである。
【0040】
240及び700nmの間の波長で、特に308nm;
20nsと500nsとの間のパルス期間で、特に160ns;
パルス数は1及び16の間で、特に4;
エネルギ密度は1.6及び4J/cm2間で、特に2.6J/cm2上部表面2aのレベルで考察);及び
温度は1400℃と2600℃との間で、特に2200℃(表面2aの)レベルで考察)。
【0041】
正面側2aのレベルにおいてのビーム102のスポットの面積は、例えば、0.7及び1.5cm2間である。
【0042】
溶融ステップの後に、溶融されている部分の結晶化が、200及び600nsの間の時間で1600及び2600℃の間の温度で発生する。従って、前述した積層体60が形成される。
【0043】
次いで、
図6Bを参照すると、カーボンリッチ層58及びその下側のシリコン層56の酸化ステップを実施して、夫々の酸化した層を形成する。このステップは、ウエハを800℃の温度にある炉内に60分間挿入することによって実施する。このことは、カーボンリッチ層58とシリコン層56の両方の酸化を促進させる。本発明者等が知得したところでは、3C-SiC層52の、及び基板3及びエピタキシャル層2の4H-SiC物質の対応する酸化は観察されなかった。
【0044】
次いで、
図6Cを参照すると、その後の、例えばBOE(緩衝酸化エッチャント)などの適宜のウエットエッチング溶液中の浸漬が、
図6Bのステップにおける酸化された層の完全な除去を可能とし、3C-SiC層52を露出させる。該エッチング化学溶液は、該酸化された層56,58の物質を選択的に除去するので、該エッチングは、下側の3C-SiC層52を除去すること無しに、これらの酸化された層を完全に除去されるまで進行する。
【0045】
次いで、
図6Dを参照すると、既に
図5Bを参照して説明した(即ち、既に説明した適宜の修正を伴って
図3A-3Cのプロセスに従って)ことに従って、注入領域9’において(及び、存在する場合には、保護リング10において)3C-SiC層52を介してオーミックコンタクト54が形成される。
【0046】
本発明者等が検証したところでは、適切な形態とされたレーザー源を使用することによって、ドリフト層2の表面部分を溶融させる(上述したように、3C-SiC層52を形成する目的のために)と共に、同時的に、注入領域9’のドーピング種を活性化させることが可能である。関連するレーザー形態パラメータは以下の通りである。
【0047】
2.4J/cm2上のエネルギ密度(上部表面2aのレベルで考察);
1及び16の間で、例えば4に等しいパルス数;
20及び500nsの間で、例えば160nsに等しい各パルスの時間期間;及び
240及び700の間で、例えば308nmに等しい照射放射の波長。
【0048】
この実施例においては、
図2Bを参照して説明した炉内でのドーパントの活性化のステップを省略することが可能である。
【0049】
図6Dのステップの後に、本方法は、オーミックコンタクト54と直接電気的コンタクトをして、3C-SiC層52上に、例えばTi/AlSiCu又はNi/AlSiCuのアノードメタリゼーション8を形成(例えば、付着によって)するステップで進行する。次いで、アノードメタリゼーション8の上にパッシベーション層19を形成して、該アノードメタリゼーション8を保護する。その結果、オーミックコンタクト57の横方向で、3C-SiC層52とアノードメタリゼーション8との間の界面において夫々のショットキーダイオード57が形成される。
【0050】
図7は、本発明の1実施例に基づくJBS装置80を、
図1及び
図4のX.Y.Z軸からなるカーテシアン(3軸)参照系における横断面図で示している。
【0051】
図1のJBS装置1又は
図4のJBS装置50と共通の要素には同一の参照番号を付してあり、それらの説明は割愛する。
【0052】
JBS装置80は、第1ドーパント濃度を有しているN型4H-SiCの基板3;第2ドーパント濃度を有しているN型4H-SiCの(エピタキシャル)ドリフト層2;表面2a上の立方晶系シリコンカーバイド(3C-SiC)層52;該3C-SiC層52上のシリコン層56;該シリコン層56上を延在している例えばTi/AlSiCu又はNi/AlSiCuのアノードメタリゼーション8;該アノードメタリゼーション8上のパッシベーション層19;該3C-SiC層52との界面において該ドリフト層2の上部表面2aに面しており該ドリフト層2内の複数個の注入領域9’;夫々の注入領域9’において該3C-SiC層52を介して且つ該シリコン層56を介して延在しており且つ該後者と共に夫々のJB要素89を形成している複数個のオーミックコンタクト84;該JB要素9を完全に又は部分的に取り囲んでいる特にP型注入領域である端部終端領域又は保護リング10(オプション);該基板3の表面3b上を延在している(例えば、ニッケルシリサイドの)オーミックコンタクト領域又は層6;該オーミックコンタクト領域6上を延在している例えばTi/NiV/Ag又はTi/NiV/Auのカソードメタリゼーション7;を包含している。
【0053】
一つ又はそれ以上のショットキーダイオード87が、該注入領域9’の横方向で、シリコン層56とアノードメタリゼーション8との間の界面において延在している。特に、一つ又はそれ以上のショットキー(半導体-金属)接合が、アノードメタリゼーション8の夫々の部分と直接電気的コンタクトしているシリコン層56の夫々の部分によって形成されている。
【0054】
JB要素89及びショットキーダイオード87を包含するJBS装置80の領域(即ち、存在する場合に、保護リング10内に閉じ込められる領域)がJBS装置80の活性区域4である。
【0055】
図8A―8Cは、本発明の1実施例に基づくJBS装置80を製造する中間ステップをX,Y,Z軸からなるカーテシアン(3軸)参照系における横断面図で示している。
【0056】
この場合に、立方晶系シリコンカーバイド(3C-SiC)層52及びシリコン層56を形成するステップは、
図5A-5Dを参照して既に説明したように、ドリフト層2の4H-SiC物質の溶融及び再固化(結晶化)によって発生する。
【0057】
図8A(
図5Aに対応する)に示したように、最初に、このプロセスは、
図6Aについて既に説明したものと同じ積層体、即ち4H-SiCのドリフト層2上の3C-SiC層52と、該3C-SiC52上のシリコン層56と、該シリコン層56上のカーボンリッチ(例えば、グラファイトからなるか又はグラファイトを包含しているか又はグラファイト層(複数)を包含している)層58とを包含している積層体、を形成する。
【0058】
次いで、
図8Bを参照すると、下側のシリコン層56は除去しないがカーボンリッチ層58を選択的に除去するステップを実行する。このステップは、例えば、酸素環境中においてのプラスマエッチングプロセスによって実施される。グラファイトを選択的に除去するためのその他の化学物質又は方法を使用することが可能である。
【0059】
次いで、
図8Cを参照すると、注入領域9’において(及び、存在する場合には、保護リング10において)シリコン層56及び3C-SiC層52を介してオーミックコンタクト84が形成される。そのために、
図3A-3Cを参照して既に説明したプロセスをここで説明した場合に適合すべく適宜修正して使用する。特に、この場合には、マスク13がシリコン層56上に形成され且つ貫通開口13aがシリコン層56に到達するまで延在する。従って、金属層14はシリコン層56に到達するまで延在する。
【0060】
該オーミックコンタクトの形成は、開口13a内にニッケルを付着させることが関与する。その後の高温熱処理(1分乃至120分の時間期間の間700℃及び1200℃の間)が、開口13aにおいて付着したニッケルと層52におけるシリコンとの間の化学反応によってニッケルシリサイドからなるオーミックコンタクト84を形成することを可能とする。
【0061】
本発明者等が検証したところでは、適切な形態とされたレーザー源を使用することによって、ドリフト層2の表面部分を溶融させる(上述した如く、3C-SiC層52及びシリコン層56を形成する目的のために)と共に、同時的に、注入領域9’のドーピング種を活性化させることが可能である。その場合に関連するレーザー形態パラメータは以下の通りである。
【0062】
2.4J/cm2上のエネルギ密度(上部表面2aのレベルにおいて考察);
1及び16の間で例えば4に等しいパルス数;
20及び500nsの間で例えば160nsに等しい各パルスの時間期間;
240及び700の間で例えば308nmに等しい射出放射の波長。
【0063】
この実施例においては、
図2Bを参照して説明した炉中におけるドーパントの活性化ステップは省略することが可能な場合がある。
【0064】
図8Cのステップの後に、本方法は、オーミックコンタクト84と直接電気的コンタクトをして、シリコン層56上に、例えばTi/AlSiCu又はNi/AlSiCuのアノードメタリゼーション8を形成(例えば、付着によって)するステップで進行する。次いで、アノードメタリゼーション8の上にパッシベーション層19を形成して該アノードメタリゼーションを保護する。その結果、オーミックコンタクト84の横方向に、シリコン層56とアノードメタリゼーション8との間の界面に夫々のショットキーダイオード87が形成される。
【0065】
図9は、本発明の更なる実施例に基づく電子装置(特に、JBS)装置100を、
図7のカーテシアン(3軸)X,Y,Z参照系において横断面で示している。
【0066】
図7における装置80と共通の要素には同一の参照番号を付してあり、詳細な説明は割愛する。
【0067】
JBS装置100は、第1ドーパント濃度を有しているN型4H-SiCの基板3;第2ドーパント濃度を有しているN型4H-SiCのドリフト(エピタキシャル)層2;表面2a上の立方晶系シリコンカーバイド(3C-SiC)層52;3C-SiC層52上のシリコン層56;シリコン層56上のカーボンリッチ層58;カーボンリッチ層58上を延在している例えばTi/AlSiCu又はNi/AlSiCuのアノードメタリゼーション8;アノードメタリゼーション8上のパッシベーション層19;3C-SiC層52との界面においてドリフト層2の上部表面2aに面してドリフト層2における複数個の注入領域9’;夫々の注入領域9’において3C-SiC層52とシリコン層56とカーボンリッチ層58とを介して延在しており且つ該注入領域9’と共に夫々のJB要素89を形成している複数個のオーミックコンタクト104;JB要素89を完全に又は部分的に取り囲んでおり特にP型注入領域である端部終端領域又は保護リング10(オプション);基板3の表面3b上に延在しているオーミックコンタクト領域又は層6(例えば、ニッケルシリサイドからなる);オーミックコンタクト領域6上を延在している例えばTi/NiV/Ag又はTi/NiV/Auのカソードメタリゼーション7;を包含している。
【0068】
一つ又はそれ以上のショットキーダイオード87が、注入領域9’の横方向でカーボンリッチ層58とアノードメタリゼーション8との間の界面に延在している。特に、一つ又はそれ以上のショットキー(半導体-金属)接合が、アノードメタリゼーション8の夫々の部分と直接電気的コンタクトしているカーボンリッチ層58の部分とによって形成される。注意すべきことであるが、3C-SiC層52及びシリコン層56及びカーボンリッチ層58は、ドリフト層2から形成されるのでドリフト層2のドーピング(N型)を有しており、従ってそれらは導電性である。
【0069】
JB要素89及びショットキーダイオード87を包含するJBS装置100の領域(即ち、存在する場合に、保護リング10内に閉じ込められる領域)が、JBS装置100の活性区域4である。
【0070】
本発明者等が検証したところでは、メタリゼーション8とシリコン層56とへの間にカーボンリッチ層58が存在することは、メタリゼーション8からシリコン層56へ且つシリコン層56から3C-SiC層52へ、従ってドリフト層2へ、金属イオン又は金属汚染物が拡散することを防止する機能を有している。
【0071】
図10A乃至10Dは、本発明の1実施例に基づいてJBS装置100を製造する中間ステップを軸X,Y,Zのカーテシアン(3軸)参照系における横断面図で示している。
【0072】
この場合には、立方晶系シリコンカーバイド(3C-SiC)層52,シリコン層56,及びカーボンリッチ層58を形成するステップは、
図5A-5D及び
図8Aを参照して上に説明したように、ドリフト層2の4H-SiC物質の溶融及び再固化(結晶化)によって発生する。
【0073】
図10A(これは
図5A及び
図8Aに対応する)に例示したように、最初に、このプロセスは、4H-SiCドリフト層2の上の3C-SiC層52と、該3C-SiC層52の上のシリコン層56と、該シリコン層56の上のカーボンリッチ層58(例えば、グラファイトからなるか又はグラファイトを包含するか又はグラファイト層(複数)を包含している)とを包含している前述した積層体(「スタック」)を形成することとなる。
【0074】
次いで、
図10Bを参照すると、カーボンリッチ層58と、シリコン層56と、3C-SiC層52とを横断して、注入領域9’において(及び、存在する場合には、保護リング10において)、オーミックコンタクト104が形成される。このために、
図3A-3Cを参照して既に説明したプロセスを使用するが、その場合に本実施例に対してそれを適合させるべく適宜修正する。特に、本実施例においては、マスク13がカーボンリッチ層58上に形成され、且つ貫通開口13aが延在してカーボンリッチ層58を露出させる。
【0075】
該オーミックコンタクトの形成は、貫通開口13a内へのニッケル付着が関与する。
図10Cを参照すると、その後の高温熱処理(1分乃至120分の時間期間の間700℃及び1200℃の間)が、層58内に存在するシリコンと付着したニッケルと間の化学反応によってニッケルシリサイドオーミックコンタクトを形成することを可能とする。
【0076】
代替的に、貫通開口13aはシリコン層56に到達するまでカーボンリッチ層58を介して延在し、代替的には、貫通開口13aは3C-SiC層52に到達するまでカーボンリッチ層58とシリコン層56とを介して延在し、代替的には、貫通開口13aはドリフト層2における注入領域9’に到達するまでカーボンリッチ層58とシリコン層56と3C-SiC層52とを介して延在する。これらすべての可能性のある実施例において、貫通開口13a内に付着されたニッケルは、高温熱処理(1分乃至120分の時間期間に対して700℃及び1200℃の間)に従って、層56,52,2(夫々の実施例に依存して)内に存在するシリコンと付着したニッケルとの間の化学反応によってニッケルシリサイドのオーミックコンタクト104を形成する。
【0077】
本発明者等が検証したところでは、適切な形態とさせたレーザー源を使用することによって、ドリフト層2の表面部分を溶融する(上述した如くに、3C-SiC層52と、シリコン層56と、カーボンリッチ層58とを形成する目的のために)と共に、同時的に、注入領域9’のドーパント種を活性化させることが可能である。その場合の関連するレーザー形態パラメータは以下の通りである。
【0078】
2.4J/cm2以上のエネルギ密度(上部表面2aのレベルで考察);
1及び16の間で例えば4であるパルス数;
20及び500nsの間で例えば160nsの各パルスの時間期間;
240及び700nmの間で例えば308nmの射出放射の波長。
【0079】
この実施例においては、
図2Bを参照して説明した炉ドーパント活性化ステップを省略することが可能である。
【0080】
図10Bにおけるステップの後に、例えばTi/AlSiCu又はNi/AlSiCuからなるアノードメタリゼーション8を形成(例えば、付着によって)するステップを実施し、アノードメタリゼーション8がカーボンリッチ層58上で且つオーミックコンタクト104と直接電気的コンタクトをして形成される。次いで、パッシベーション層19がアノードメタリゼーション8上に形成されてアノードメタリゼーション8を保護する。その結果、オーミックコンタクト104の横方向でカーボンリッチ層58とアノードメタリゼーション8との間の界面に夫々のショットキーダイオード87が形成される。その結果、
図9の装置100が得られる。
【0081】
図11に示した更なる実施例によれば、3C-SiC層52と、シリコン層56と、カーボンリッチ層58とからなる積層体の形成を、トランジスタ(例えば、MOSFET)のゲート端子を形成するために使用することが可能である。
【0082】
そのためには、3C-SiC層52と、シリコン層56と、カーボンリッチ層58とからなる積層体を形成した後に、ゲート端子を形成すべき電子装置の少なくとも選択的領域
からカーボンリッチ層58を除去するステップを実施する。例えば、カーボンリッチ層58を2個の注入領域9’の間の区域から除去して、下側のシリコン層56を露出させる。次いで、そのように露出されたシリコン層56の一部を酸化させるステップを実施して、シリコン酸化物(SiO
2を形成する。
図11に示した部分56’がそれである。
【0083】
シリコン層56の該酸化された部分56’がゲート酸化物の機能を有している。その酸化した部分56’は、平面XY上の平面図においては、2個の注入領域9’の間に延在しており、オプションとして、該2個の注入領域9’の一部と部分的に重畳する。
【0084】
従って、金属層が該酸化された部分56’上に形成されて、ゲートメタリゼーション110の機能を有している。
【0085】
該MOSFETのソース領域及びドレイン領域は、P型注入領域9’内にN型注入を行うことによってそれ自身当業者には自明の態様で形成することが可能である。
【0086】
本開示に基づいて提供されている本発明の特徴を検査することから、本発明によって与えられる利点は明らかである。
【0087】
特に、前に説明したように、JB要素及びショットキーコンタクトの形成のための3C-SiC又はシリコン(夫々の実施例において)の減少されたバンドギャップ値から得られる利点と結合して、4H-SiC基板の利点を完全に享受することが可能である。
【0088】
以上、本発明の具体的実施の態様について詳細に説明したが、本発明はこれらの具体的実施に態様に制限されるべきものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱すること無しに、種々の変形及び修正を行うことが可能であることは勿論である。
【0089】
例えば、
図6A及び8Aを参照して説明した4H-SiCを溶融するステップは、注入領域9’が存在しない場合にも実施することが可能である。この場合には、エピタキシャル層2は注入領域9’を収容するものではなく、注入領域9’は、
i)シリコン層56及びカーボン層58を除去するステップの後(即ち、夫々の実施例に対して、
図6Cのステップの直後)に、又は
ii)カーボンリッチ層58を除去するステップの後(即ち、夫々の実施例に対して、
図8Bのステップの直後)に、
形成される。
【0090】
更に、本発明は、3C-SiCJBS装置の製造に制限されるべきものではなく、例えば、MOSFET(特に、垂直チャンネルMOSFET)、IGBT、JFET、DMOS、合体型PN-ショットキー(MPS)ダイオード、等の一般的な電子装置におけるオーミックコンタクトの形成に敷衍する。3C-SiC層内に垂直MOSFETのチャンネルを形成すること(4H-SiC等のその他のSiCポリタイプにおける代わりに)は、3C-SiCと4H-SiCの間の異なる電子移動度に起因して、装置の出力抵抗に関して著しい利点をもたらす。