(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138570
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】工作機械装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/20 20060101AFI20230922BHJP
G05B 19/414 20060101ALI20230922BHJP
G01B 5/012 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B23Q17/20 A
G05B19/414 Q
G05B19/414 R
G01B5/012
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121751
(22)【出願日】2023-07-26
(62)【分割の表示】P 2019538630の分割
【原出願日】2018-01-17
(31)【優先権主張番号】1700879.8
(32)【優先日】2017-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】391002306
【氏名又は名称】レニショウ パブリック リミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン アンソニー スタイルズ
(72)【発明者】
【氏名】ポール アンソニー テイラー
(72)【発明者】
【氏名】デレク マーシャル
(57)【要約】
【課題】工作機械のための改善されたタッチトリガプローブインターフェースを提供する。
【解決手段】工作機械のためのタッチトリガプローブインターフェースであって、前記タッチトリガプローブインターフェースは、タッチトリガプローブからプローブイベント情報を受信するためのプローブ通信部分と、前記工作機械の数値コントローラへプローブイベント情報を出力するための工作機械通信部分とを含む、タッチトリガプローブインターフェースにおいて、前記工作機械通信部分は、タイミングデータおよび前記工作機械の前記数値コントローラからマシン位置情報を受信し、前記マシン位置情報は、デジタルデータパケットの形態で受信され、前記プローブイベント情報を、前記プローブイベントが起こったマシン位置を説明するデジタルデータパケットとして出力するように構成されることを特徴とする、タッチトリガプローブインターフェース。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械のためのタッチトリガプローブインターフェース(118;218)であって、前記タッチトリガプローブインターフェースは、タッチトリガプローブ(104;204)からプローブイベント情報を受信するためのプローブ通信部分と、前記工作機械の数値コントローラ(120;220)へプローブイベント情報を出力するための工作機械通信部分とを含む、タッチトリガプローブインターフェースにおいて、
前記工作機械通信部分は、
タイミングデータ(T1、T2、...Tn;Wt)および前記工作機械の前記数値コントローラからマシン位置情報を受信し、前記マシン位置情報は、デジタルデータパケットの形態で受信され、
前記プローブイベント情報を、前記プローブイベントが起こったマシン位置を説明するデジタルデータパケット(Tp)として出力するように構成されることを特徴とする、タッチトリガプローブインターフェース。
【請求項2】
前記工作機械通信部分は、デジタルデータバスを経由して数値コントローラと通信するように構成されており、前記デジタルデータパケットは、前記デジタルデータバスを経由して前記数値コントローラへ渡される請求項1に記載のインターフェース。
【請求項3】
前記デジタルデータバスは、産業用イーサネット接続である請求項2に記載のインターフェース。
【請求項4】
前記工作機械通信部分は、前記工作機械の前記数値コントローラからタイミングデータを受信するように構成されている請求項2または3に記載のインターフェース。
【請求項5】
受信された前記タイミングデータは、規則的に定義された間隔で前記数値コントローラによって送られる一連のデジタルデータパケットの形態になっている請求項4に記載のインターフェース。
【請求項6】
前記タイミングデータは、前記数値コントローラから受信されるクロックメッセージを含む請求項4に記載のインターフェース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械のための装置に関し、とりわけ、工作機械のための改善されたタッチトリガプローブインターフェースに関する。また、本発明は、そのようなタッチトリガプローブインターフェースを組み込むプロービングシステムおよび工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピューター数値制御(CNC)工作機械は、パーツをカットするために、製造産業において幅広く使用されている。また、そのような工作機械は、セットアップ目的または検査目的のためにパーツまたはツールが測定されることを可能にする測定デバイスを含むことが可能である。タッチトリガプローブ(それは、ときには、デジタルプローブとも呼ばれる)は、1つの公知のタイプの測定デバイスである。とりわけ、ワークピースが測定されることを可能にするために、工作機械のスピンドルの中に突出するスタイラスを有するタッチトリガプローブを装着することが知られている。そのような例では、タッチトリガプローブは、単に、スイッチとして作用し、そのスタイラスの撓みは(たとえば、スタイラス先端部が、オブジェクトの表面と接触する状態へと移動させられるときに)、トリガ信号が発信されることを引き起こす。工作機械は、トリガ信号が発信される瞬間において、マシン座標系(x、y、z)の中のタッチトリガプローブの位置を測定し、それによって、(適切なキャリブレーションによって)オブジェクトの表面の上のポイントの位置が測定されることを可能にする。したがって、タッチトリガプローブは、ワークピースの表面と接触した状態へ、および、ワークピースの表面と接触した状態から、繰り返して駆動され、そのワークピースのポイント毎の位置測定を行うことが可能である。
【0003】
タッチトリガプローブシステムの例が、特許文献1に説明されている。このシステムは、工作機械のスピンドルの中に担持され得るタッチトリガプローブと、工作機械の不動パーツに装着され得る関連のプローブインターフェースとを含む。タッチトリガプローブが「トリガされる」場合には(たとえば、スタイラスがオブジェクトに接触する場合には)、トリガ信号が、ワイヤレス(ラジオ)リンクを経由してプローブインターフェースへ渡される。また、プローブインターフェースは、出力ラインを有しており、出力ラインは、工作機械コントローラのSKIP入力にハードワイヤード接続されている。タッチトリガプローブからトリガ信号を受信すると、プローブインターフェースは、SKIP入力に接続されているその出力ラインの状態を変化させることによって(たとえば、低い電圧から高い電圧へそれを上昇させることによって、または、その逆もまた同様)、コントローラへSKIP信号を発信する。コントローラは、このSKIP信号を受信すると、マシン座標系の中の(たとえば、x、y、z座標の中の)タッチトリガプローブの現在の位置をラッチ(latch)または記録する。
【0004】
上記に説明されているシステムにおいて、さまざまな理由のために、実際のトリガイベント(たとえば、オブジェクトの表面の上のポイントにタッチすることに起因して、スタイラスが物理的に撓むこと)とプローブインターフェースによるSKIP信号の発信との間に時間遅延が存在することとなる。この時間遅延のかなりの割合は、誤トリガを低減させるために、タッチトリガプローブの中で使用されるタイムフィルタリングスキームから生じる可能性がある。または、その理由は、タッチトリガプローブからプローブインターフェースへトリガ情報を送信するために使用されるワイヤレス通信プロトコルは、(たとえば、ロバストネスの理由のために)遅延を必要とするからである。SKIP信号を処理する工作機械コントローラの中のソフトウェアは、キャリブレーション手順の一部として、そのような時間遅延を考慮に入れるために位置オフセットを発生させることとなる。この位置オフセットは、プローブがトリガされたマシン座標位置の中の実際の位置が確立されることを可能にする。この補正プロセスは、時間遅延が一定であることを必要とし、これは、時間遅延の中の任意の変動性が測定誤差を導入することとなるからであるということが留意されるべきである。したがって、今まで、タッチトリガプローブシステムは、可能な限り不変の時間遅延を作り出すように設計されてきた(すなわち、トリガイベントが起こった後に、固定された時間間隔で、SKIP信号が発信されるということを保証するように設計されてきた)。
【0005】
しかし、本発明者らは、上記に説明されている時間遅延を考慮に入れるために使用される位置補正が、常に十分に正確であるわけではないということを見出した。とりわけ、位置補正計算は、時間遅延を位置オフセットへと変換するために、プロービング移動の間の一定のマシン速度を仮定する。しかし、特定の状況では、タッチトリガプローブの速度は、一定ではなく、したがって、位置補正は、不正確であり、それによって、測定誤差の供給源を導入するということが見出された。これは、そうでなければ、サブミクロンの位置決めが可能である非常に正確なマシンについても真実であるということが見出された。工作機械コントローラが、通常は、工作機械スピンドルが命令された時間において命令された場所に常にあることを保証するというよりもむしろ、正しいツール経路を可能な限り正確に辿るようにプログラムされている(すなわち、したがって、それは、オブジェクトを所望の形状にカットすることとなる)ので、これが生じると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/057552号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/065884号パンフレット
【特許文献3】欧州特許第1880163号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、工作機械のためのタッチトリガプローブインターフェースであって、タッチトリガプローブインターフェースは、タッチトリガプローブからプローブイベント情報を受信するためのプローブ通信部分と、工作機械の数値コントローラへプローブイベント情報を出力するための工作機械通信部分とを含む、タッチトリガプローブインターフェースにおいて、工作機械通信部分が、プローブイベント情報をデジタルデータパケットとして出力することを特徴とする、タッチトリガプローブインターフェースが提供される。
【0008】
したがって、本発明は、工作機械と組み合わせて使用されるタッチトリガプローブインターフェースを提供する。プローブインターフェースは、プローブ通信部分を有しており、プローブ通信部分は、たとえば、ワイヤレス通信リンクを経由して、それが関連のタッチトリガプローブからプローブイベント情報を受信することを可能にする。プローブとプローブインターフェースとの間の通信リンクは、特許文献1に説明されているスペクトラム拡散通信システムなどのような、デジタルワイヤレス送信システムを含むことが可能である。また、プローブインターフェースは、関連の工作機械の数値コントローラへプローブイベント情報を出力するための工作機械通信部分を有している。タッチトリガプローブインターフェースによってタッチトリガプローブから数値コントローラへリレーされるプローブイベント情報は、たとえば、タッチトリガプローブがオブジェクトの表面との特定の位置関係へと移動させられることに起因して、トリガイベントが起こったということを示す情報であることが可能である。
【0009】
ここで、タッチトリガプローブは、プローブイベント(たとえば、トリガイベント)が任意の時点において起こったということを示すことができるということに留意することが重要である。プローブイベントが起こった時間は(単にそれが起こったという事実ではなく)、度量衡学の目的のために重要である。タッチトリガプローブの1つの例示的な実施形態では、撓むことができるスタイラスは、電気スイッチに接続されており、また、スタイラスの撓みに起因してスイッチが開放されるときに(それによって、電気回路を開く)、プローブ(トリガ)イベントが起こる。したがって、プローブイベントが起こった時間は、重大な情報であり、それは、そのプローブイベントが分析されることを可能にし、オブジェクトの表面の上のポイントの位置が確立されることを可能にする。したがって、タッチトリガプローブは、測定値に関して定期的にポーリングされ(polled)得るセンサーデバイスではなく、任意の時点において起こり得る(非同期の)プローブイベントを報告するように配置されているデバイスである。これが、本発明の前に、プローブイベントが検出された後の特定の不変の時間にSKIP信号を発生させるプローブインターフェースを提供することが必要であると常に考えられた理由である。これは、SKIP信号を受信すると、工作機械のコントローラがマシン位置データ(すなわち、工作機械の中のタッチトリガプローブの場所を説明している)を記録することを可能にした。これは、また、位置補正を確立することに依存し、プローブイベントと数値コントローラによって処理されるSKIP信号との間の(不変の)遅延を考慮に入れ、マシン位置データをラッチするが、これは、十分に正確であると常に考えられていた。そのような技法(それは、プローブイベントと数値コントローラによるSKIP信号の受信との間の間隔において、工作機械が一定の速度で移動することに依存している)が測定の不正確さを導入する可能性があるということを認識したのは、本発明者らだけである。
【0010】
上記に説明されているように、タッチトリガプローブとプローブインターフェースとの間の通信リンクは、デジタルワイヤレス送信システム(たとえば、スペクトラム拡散ラジオリンク)を含むことが可能である。しかし、先行技術システムとは異なり、本発明のプローブインターフェースの工作機械通信部分は、プローブイベント情報をデジタルデータパケットとして出力する。したがって、プローブイベント情報(たとえばトリガイベント情報)は、たとえば、産業用イーサネットまたはフィールドバス接続などのような、デジタルデータバスを経由して、工作機械の数値コントローラへデジタルで出力される。下記に説明されているように、これは、プローブイベント情報がタイムスタンプ付きのデジタルデータパケットとして送られることを可能にし、タイムスタンプ付きのデジタルデータパケットにおいて、プローブイベントのためのタイムスタンプは、数値コントローラによって知られている時間に関係している。あるいは、それは、プローブイベントが起こった瞬間に関係付けられたマシン位置データを説明するデジタルデータパケットの形態で、プローブイベント情報が数値コントローラへ提供されることを可能にする。したがって、本発明は、数値コントローラの専用のSKIP入力へSKIP信号としてプローブイベント情報を送る先行技術タッチトリガプローブインターフェースに関連付けられる測定精度問題を克服する。また、本発明のプローブインターフェースは、先行技術インターフェースよりも容易にインストールされ得り、また、より多くの情報が数値コントローラへおよび/または数値コントローラから伝送されることを可能にする可能性を有している。
【0011】
完全を期すために、いわゆるスキャニングプローブ(アナログプローブとも呼ばれる)は、また、工作機械の上での使用に関して知られているということが留意されるべきである。タフトリガプローブとは異なり、アナログプローブは、典型的に、(たとえば、スタイラス撓みの)連続的な測定を提供し、それによって、一連の測定値が事前定義された間隔で出力されることを可能にする。特許文献2は、共通のクロックに同期化されている別々のストリームのスキャニングプローブデータおよびマシン位置データを外部コンピューターが受信することを可能にする技法を説明している。次いで、これらのデータストリームは組み合わせられ得るが、これは、リアルタイムで実施されない。しかし、特許文献2の配置は、プローブイベントが任意の時点において起こり得るタッチトリガプローブに関して適切ではない。
【0012】
また、「工作機械」という用語は、旋盤およびマシニングセンターなどのような、マシンを表しており、それらは、主として、材料をカットするために使用されるが、検査またはセットアップ目的のためにワークピースを測定するために、測定プローブシステムを装備していることも可能であるということに留意することが重要である。そのような工作機械は、さまざまなカッティングプログラムおよび検査プログラムを走らせる数値コントローラの制御の下で動作する。したがって、本発明のタッチトリガプローブインターフェースは、測定機能性を追加するために工作機械の数値コントローラにインターフェース接続され得る追加的なコンポーネントである。したがって、マシンズツールは、測定機能だけを提供するために構築されている、検査ロボットまたは座標測定機(CMM)などのような専用の測定マシンとは極めて異なっている。
【0013】
有利には、工作機械通信部分は、デジタルデータバスを経由して数値コントローラと通信するように構成されている。換言すれば、工作機械通信部分は、デジタルバスインターフェースを含む。デジタルデータパケット(すなわち、プローブイベント情報を含有する)は、それによって、デジタルデータバスを経由して数値コントローラへ渡される。デジタルデータバスは、産業用イーサネット接続であることが可能である。デジタルデータバスは、いわゆるリアルタイムまたは高速イーサネット接続であることが可能である。デジタルデータバスは、いわゆるフィールドバスであることが可能である。デジタルデータバスは、特定の国際的に定義された標準(たとえば、イーサネットなど)に準拠することが可能であるが、それは、ビスポーク(製造業者特有の)データバスであることが可能であるということが留意されるべきである。
【0014】
好ましくは、プローブイベント情報を含むそれぞれのデジタルデータパケットは、プローブイベントが起こった時間を示すタイムスタンプを含む。換言すれば、プローブインターフェースによって数値コントローラへ発信されるデジタルメッセージまたはデータパケットは、好ましくは、プローブイベントが起こったということを示すだけでなく、プローブイベントがいつ起こったかということについてのタイミング情報を含む。したがって、タイムスタンプは、マシン軸線の位置に関してプローブイベント(たとえば、トリガイベント)がいつ起こったかということを示している。デジタルデータパケットは、追加的な情報を含むことが可能であり、たとえば、異なるタイプのプローブイベントまたは異なるプローブイベントが互いに区別されることを可能にする。
【0015】
プローブインターフェースは、有利には、数値コントローラからのタイミング情報へのアクセスを有している。このように、タイムスタンプは、数値コントローラに知られているクロックタイムに関係することが可能である。好ましくは、工作機械通信部分は、(たとえば、デジタルデータバスを経由して)工作機械の数値コントローラからタイミングデータを受信するように構成されている。工作機械通信部分は、そのようなデータをさまざまな方式で受信することが可能である。たとえば、受信されたタイミングデータは、既知の間隔で(たとえば、規則的に定義された間隔で)数値コントローラによって送られる一連のデジタルデータパケットの形態になっていることが可能である。あるいは、タイミングデータは、(たとえば、デジタルデータバスを経由して)数値コントローラから受信されるクロックメッセージ(たとえば、一連のクロックメッセージ)を含むことが可能である。たとえば、プローブインターフェースは、工作機械の数値コントローラから、マスタークロックまたは世界時間情報を受信することが可能である。また、タイミング信号は、工作機械の外部にある(たとえば、プローブインターフェースの中に提供されている)マスタークロックから数値コントローラへ渡され得る。
【0016】
好都合には、工作機械通信部分は、デジタルデータパケットの形態のマシン位置情報を受信するように構成されている。換言すれば、工作機械の数値コントローラは、プローブインターフェースの工作機械通信部分へデジタルデータパケットを送ることが可能である。これらのデータパケットは、時間に関して特定の瞬間におけるマシン位置データを説明することが可能である。マシン位置データを説明するデジタルデータパケットは、定義された(たとえば、規則的な)間隔で、数値コントローラによって送られ得る。換言すれば、受信されたマシン位置情報は、好都合には、工作機械の数値コントローラによって出力される一連のマシン位置データ値を含む。プローブインターフェースは、受信されるマシン位置情報を記憶するために、バッファ(たとえば、ローリングバッファ(rolling buffer))を含むことが可能である。たとえば、バッファは、工作機械通信部分によって受信される複数のマシン位置データ値を記憶することが可能である。
【0017】
有利には、プローブ通信部分は、工作機械の位置測定デバイス(たとえば、位置エンコーダ)から直接的にマシン位置データを受信するように構成されている。位置測定デバイスによって獲得される測定値へのそのような直接的なアクセスは有利であるが、そのような配置は、工作機械がそのようなアクセスを可能にするように適当に構成されることを必要とする。しかし、すべての工作機械が、そのようなアクセスを提供することとなるわけではない。
【0018】
プローブインターフェースがマシン位置情報を受信する場合には、それは、そのイベントが起こったマシン位置の観点から、プローブイベントを定義することが可能である。換言すれば、タイムクリティカルな情報は、イベントが起こった時間というよりもむしろ、プローブイベントを定義する位置の形態で、数値コントローラへ提供される。したがって、プローブイベント情報を報告するためにマシン通信部分によって出力されるデジタルデータパケットは、好都合には、プローブイベントが起こったマシン位置を説明することが可能である。したがって、以前に測定されたマシン位置データを記録するためのバッファは、プローブインターフェースおよび/または工作機械の数値コントローラの中に提供され得る(下記に説明されているように)。
【0019】
工作機械通信部分は、(たとえば、デジタルデータバスを経由して)数値コントローラへプローブイベント情報を出力するが、それは、また、追加的な(たとえば、非タイムクリティカルな)データを数値コントローラへ送ることも可能である。たとえば、温度またはプローブステータスデータが、数値コントローラへ渡され得る。
【0020】
タッチトリガプローブは、たとえば、表面との特定の位置関係が到達されたというトリガイベントなど、単一のプローブイベントが起こることをモニタリングすることが可能である。したがって、プローブイベント情報は、タッチトリガプローブがオブジェクトとの事前定義された位置関係に到達したことを示すトリガイベントを含むことが可能である。あるいは、タッチトリガプローブは、複数の異なるプローブイベントのうちのいずれか1つがいつ起こるかということを確立することが可能である。たとえば、異なるプローブイベントは、オブジェクトとの異なる位置関係が得られるときに起こることが可能である。たとえば、より詳細に下記に説明されているように、トリガおよび確認測定プロセスが実装され得る。
【0021】
プローブインターフェースのプローブ通信部分は、任意の公知のタイプのものであることが可能である。それは、タッチトリガプローブへのワイヤード接続を提供することが可能である。有利には、プローブ通信部分は、関連のタッチトリガプローブとのワイヤレス通信のためのワイヤレス通信部分を含む。ワイヤレスリンクは、光学的なリンクであることが可能である。ワイヤレスリンクは、ラジオリンクであることが可能である。
【0022】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様によるタッチトリガプローブインターフェースと、タッチトリガプローブとを含む、タッチトリガプロービングシステムが提供される。タッチトリガプローブは、好ましくは、プローブイベント情報をタッチトリガプローブインターフェースのプローブ通信部分へ送信するための送信部分を有している。したがって、タッチトリガプローブおよびプローブインターフェースのプローブ通信部分は、公知のタイプのものであることが可能である。
【0023】
タッチトリガプローブは、任意のタイプのものであることが可能である。タッチトリガプローブは、非接触タッチトリガプローブであることが可能である。たとえば、タッチトリガプローブは、非接触ツールセッタであることが可能である。タッチトリガプローブは、接触タッチトリガプローブであることが可能である。たとえば、タッチトリガプローブは、撓むことができるスタイラスを含むことが可能である。タッチトリガプローブは、ワークピース測定またはカッティングツール測定のために使用され得る。タッチトリガプローブは、工作機械のスピンドルの中に装着可能であり得る。換言すれば、タッチトリガプローブは、スピンドル装着可能なタッチトリガプローブであることが可能である。タッチトリガプローブは、工作機械のベッドに装着可能であり得る。タッチトリガプローブは、旋盤に装着可能であり得る。
【0024】
本発明の第3の態様によれば、数値コントローラを有する工作機械を含む工作機械システムが提供される。また、本発明の第1の態様によるタッチトリガプローブインターフェースも提供され得る。また、工作機械は、本発明の第2の態様によるタッチトリガプロービングシステムを含むことが可能である。複数のマシン位置データ値を記憶するローリングバッファが提供され得る。有利には、工作機械の数値コントローラは、複数のマシン位置データ値を記憶するローリングバッファを含む。より詳細に下記に説明されているように、これは、プローブインターフェースから受信されたタイムスタンプ付きのプローブイベントメッセージの中に定義された時間において、マシン位置が見出されることを可能にする。
【0025】
また、本明細書で説明されているのは、工作機械のためのタッチトリガプローブインターフェースであって、タッチトリガプローブインターフェースは、タッチトリガプローブからプローブイベント情報を受信するためのプローブ通信部分と、工作機械の数値コントローラへプローブイベント情報を出力するための工作機械通信部分とを含み、出力部分は、タイムスタンプ付きのデジタルデータの形態のプローブイベント情報を出力する、タッチトリガプローブインターフェースである。
【0026】
また、本明細書で説明されているのは、工作機械のためのタッチトリガプローブインターフェースである。プローブインターフェースは、タッチトリガプローブからプローブイベント情報を受信するためのプローブ通信部分を含むことが可能である。プローブインターフェースは、工作機械の数値コントローラへプローブイベント情報を出力するための工作機械通信部分を含むことが可能である。工作機械通信部分は、プローブイベント情報をデジタルデータパケットとして出力することが可能である。工作機械通信部分は、デジタルデータバスを経由してプローブイベント情報を出力することが可能である。プローブインターフェースは、本明細書で説明されている個々の特徴のうちの任意の1つまたは複数を、単独でまたは組み合わせて含むことが可能である。
【0027】
また、本明細書で説明されているのは、タッチトリガプローブインターフェースから工作機械の数値コントローラへプローブイベント情報を通信するための方法である。方法は、プローブインターフェースがプローブイベント情報を数値コントローラへ1つまたは複数のデジタルデータパケットの形態で渡すステップを含む。方法は、本明細書で説明されている装置のいずれか、または、装置の使用のいずれかを含むことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
ここで、本発明が、単なる例として、添付の図面を参照して説明されることとなる。
【
図1】先行技術の工作機械および測定プローブ装置を示す図である。
【
図2】
図1の先行技術システムの中のプローブインターフェースと工作機械のNCとの間の接続をより詳細に示す図である。
【
図3】タイムスタンプ付きのプローブイベント情報が、フィールドバスを経由して工作機械のNCへ出力される、本発明の第1の実施形態を示す図である。
【
図4】
図3のタイムスタンプ付きの情報がどのように作り出され得るかということを示す図である。
【
図5】プローブインターフェースが、産業用イーサネットリンクを経由してNCからクロック信号を受信するように構成されている、第2の実施形態を示す図である。
【
図6】プローブインターフェースが、産業用イーサネットリンクを経由して位置情報を受信する、第3の実施形態を示す図である。
【
図7】プローブインターフェースが、工作機械のドライブ制御バスに直接的に接続されている、第4の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1を参照すると、タッチトリガプローブ4を保持するスピンドル2を有する工作機械1が、概略的に図示されている。
【0030】
工作機械1は、工作機械のワークエリアの中のワークピースホルダー7の上に位置付けされているワークピース6に対してスピンドル2を移動させるためのさまざまなモーター8を含む。マシンのワークエリアの中のスピンドルの場所は、エンコーダ9を使用して公知の様式で正確に測定される。そのようなエンコーダ測定は、マシン座標系(x、y、z)の中の「マシン位置データ」を提供する。工作機械コントロール(x、y、z)の数値コントローラ(NC)20は、工作機械のワークエリアの中のスピンドル2の移動を制御し、また、現在のスピンドル位置を説明する情報(すなわち、マシン位置データ)をさまざまなエンコーダから受信する。また、本明細書で使用されているような数値コントローラという用語は、工作機械の数値制御システムの任意のパーツを意味するということが理解されるべきである。たとえば、それは、プログラマブル論理制御装置(PLC)およびドライブコントローラなどを含むことが可能である。数値コントローラ(NC)、工作機械コントローラ、およびコントローラという用語は、別段の記述がなければ、本明細書において相互交換可能に使用されるということが留意されるべきである。
【0031】
タッチトリガプローブ4は、プローブ本体部10を含み、プローブ本体部10は、標準的な解放可能なシャンクコネクターを使用して、工作機械のスピンドル2に取り付けられている。また、プローブ4は、ワークピース接触用スタイラス12を含み、ワークピース接触用スタイラス12は、ハウジングから突出している。スタイラスボール14が、関連のワークピース6に接触するためにスタイラス12の遠位端部に設けられている。タッチトリガプローブ4は、スタイラスの撓みが所定の閾値を超えるときに、いわゆるトリガ信号を発生させる。プローブ4は、プローブインターフェース18の対応するワイヤレスレシーバ/トランスミッタ部分にトリガ信号を渡すためのワイヤレストランスミッタ/レシーバ部分16を含む。ワイヤレスリンクは、たとえば、RFまたは光学的なものであることが可能である。この実施形態では、特許文献1に説明されているようなスペクトラム拡散ラジオリンクが提供されている。NC20は、エンコーダ9からマシン位置データ(x、y、z)を受信し、また、より詳細に下記に説明されることとなるように、プローブインターフェース18からトリガ信号(SKIP信号とも呼ばれる)を受信するためのSKIP入力ラインを有している。このSKIP入力は、プローブインターフェースがSKIP入力にトリガ信号を発信する瞬間に、マシン座標系の中のスピンドルの位置を説明するマシン位置データ(x、y、z)が記録されることを可能にする。適当なキャリブレーションの後に、これは、ワークピース6などのようなオブジェクトの表面の上の個々のポイントの位置が測定されることを可能にする。完全を期すために、SKIP入力は、数値コントローラの異なるブランドの上で異なる名前を与えられる可能性もあるということも留意されるべきである。
【0032】
図2を参照すると、プローブインターフェースから
図1を参照して説明されているコントローラ20へトリガ信号を渡すための先行技術技法が、より詳細に図示されている。
【0033】
上記に説明されているように、プローブインターフェース18からの出力は、コントローラのSKIP入力30に接続されている。したがって、プローブインターフェース18は、それがタッチトリガプローブ4からトリガ信号を受信するときに、SKIPまたはトリガ信号32をコントローラのSKIP入力30へ出力する。とりわけ、プローブインターフェース18は、コントローラ20のSKIP入力30に印加される電圧レベルを上昇させ、トリガイベントが起こったということを示す。したがって、コントローラ20は、そのSKIP入力30をモニタリングし、また、SKIP信号32に応答して(すなわち、信号ラインの電圧の変化に関連付けられた立ち上りエッジに応答して)、それは、現在のマシン位置データ(x、y、z)を記録し、タッチトリガプローブのさらなる運動を停止させる。
【0034】
上記に述べられているように、プロービングシステム(すなわち、測定プローブおよびプローブインターフェース)は、瞬間的にはSKIP信号を発生させない。トリガイベント(たとえば、スタイラスがオブジェクトと接触する)とSKIP信号の発信との間にいくらかの遅延が常に存在することとなる。遅延が一定である限りにおいて、遅延を考慮に入れるために位置補正を計算することが可能である。しかし、上記に説明されているように、この位置補正は、トリガイベントとSKIP信号の発信との間の時間の期間において、タッチトリガプローブが一定の速度で移動するという仮定に基づいて計算される。実際には、この仮定は常に正しいというわけではないということが見出された。とりわけ、速度の変化は、トリガイベントとSKIP信号の発信との間の期間において起こる可能性がある。これは、位置補正を計算するために一定の速度を仮定する必要に起因して、測定誤差が導入されるということを結果として生じさせるということを見出した。
【0035】
本発明は、SKIP入力を使用することなく、トリガ信号が工作機械のコントローラに通信されるという解決策を実装することによって、上述の問題を軽減する。下記に説明されることとなるように、それぞれのトリガ信号は、その代わりに、プローブインターフェースからコントローラへデジタルデータパケットの形態で渡される。とりわけ、トリガイベント情報は、産業用イーサネット接続(たとえば、フィールドバス)を経由して工作機械のコントローラへデジタルデータとして渡される。下記にも説明されているように、デジタルパケットの中に含有されているトリガイベント情報は、コントローラから受信されるタイミング信号に対してタイムスタンプを付けられ得る。これらのタイムスタンプは、具体的には、プローブインターフェースへ送られる定期的なタイミングメッセージに由来することが可能であり、または、バスを経由したコントローラクロックへのアクセスをプローブインターフェースに与えることによって由来することが可能である。あるいは、プローブインターフェースは、コントローラクロックに対して既知の時間において収集された位置情報を受信することが可能であり、また、トリガイベントが起こる瞬間において実際のマシン位置を確立するために、そのような位置情報を使用することが可能である。これらの技法は、先行技術システムの中に存在する遅延を考慮に入れるために位置補正を決定する必要性を回避し、トリガイベントが起こった実際の位置が確立されることを可能にする。これは、速度変動に起因して先行技術技法の中に起こり得る誤差を除去する。そのうえ、バスを経由してプローブインターフェースをコントローラに接続することは、他の情報(たとえば、非タイムクリティカルな)情報がプローブインターフェースとコントローラとの間で渡されることを可能にする。
【0036】
図3を参照すると、本発明の第1の実施形態が図示されている。とりわけ、
図3に示されている配置は、
図1および
図2に説明されているプローブインターフェースおよびコントローラの先行技術配置を交換している。
【0037】
フィールドバス122を経由してプローブインターフェース118に接続されている数値コントローラ120が設けられている。タッチトリガプローブ104は、特許文献1に説明されているラジオリンクなどのようなワイヤレスラジオリンクを経由して、プローブインターフェース118と通信している。数値コントローラ120は、ネットワークポート126を含む適当なフィールドバスハードウェアを含み、プローブインターフェースがネットワークポート126に接続されている。NC120は、バスマスターであり、プローブインターフェース118は、スレーブデバイスである。また、数値コントローラ120は、ローリングする(rolling)一連のマシン位置データ(すなわち、マシン座標の中のタッチトリガプローブの位置を示すデータ)を記憶するメモリーストアまたはバッファ124を含む。
【0038】
使用時に、NC120は、一連のデジタルメッセージ(T1、T2、...Tn)を、フィールドバスを経由してプローブインターフェース118へ継続的に送る。これらのメッセージは、規則的な時間間隔(T2-T1)において送られ、データリンクの両端部に同期化(タイミング)基準を提供する。換言すれば、プローブインターフェース118は、タイミング情報を提供され、タイミング情報は、NC120によって発生させられたタイミングイベントに対していつイベントが起こったかということをそれが確立することを可能にする。トリガイベントが起こるときには、プローブインターフェース118は、(同期化基準タイミングに対して)タイムスタンプを計算する。トリガイベントが起こったという事実、および、トリガイベントがいつ起こったかということを説明するタイムスタンプが、プローブインターフェース118によって、フィールドバスを経由してNC120へ、デジタルデータパケット(Tp)として送られる。
【0039】
追加的に
図3を参照すると、タイムスタンピング技法が、より詳細に図示されている。とりわけ、NC120によって発信され、プローブインターフェース118によって受信される、タイミングを計られた(timed)メッセージT1およびT2が図示されている。プローブインターフェース118によるこれらのメッセージの受信は、タイミングを計られたメッセージT2に対してトリガイベント(Tp)が起こった時間をプローブインターフェース118が確立することを可能にする。次いで、プローブインターフェース118は、タイミングを計られたメッセージT2に対してトリガイベント(Tp)がいつ起こったかということを説明するタイムスタンプ付きのメッセージを生成させ、NC120へ送ることが可能である。NC120が、そのローカルクロックに対して既知の時間において、タイミングを計られたメッセージT2を発信したので、それは、次いで、そのローカルコントローラクロック時間においてトリガイベント(Tp)がいつ起こったかということを確立することが可能である。
【0040】
NC120は、データを受信し、また、タイムスタンプのおかげで、そのローカル(コントローラ)時間においてトリガイベントがいつ起こったかということを知る。次いで、バッファ124は、トリガイベントが起こった瞬間におけるマシン位置を取得するために尋問され得る。とりわけ、関連の時間期間の周りで収集されたバッファ124の中に記憶されたマシン位置データポイントは、タイムスタンプ値に関係付けられるマシン位置を直線フィット(line fit)および内挿するために使用され得る。これは、タッチトリガプローブのスタイラスによって接触されたオブジェクトの表面の上のポイントの位置が確立されることを可能にする。
【0041】
プローブインターフェース118は、タイムスタンプ付きのトリガイベントメッセージだけをNC120へ送ることが可能であり、それは、たとえば、いつプローブがトリガ状態と未トリガ状態との間で変化するかということを示している。しかし、プローブインターフェース118が追加的な情報を、フィールドバスを経由してNC120へ送ることも可能である。他の情報は、非タイムクリティカルなデータ、たとえば、プローブバッテリーステータス、測定された温度、プローブフィルタセッティング、信頼値などであることが可能である。この追加的なメタデータは、トリガイベントを報告するタイムスタンプ付きのデジタルデータパケットにタグ付けされ得る。また、プローブインターフェース118は、NCからフィールドバスを経由して情報を受信することが可能である。
【0042】
また、プローブインターフェース118は、異なるタイプのタイムクリティカルなプローブイベントデータをNC120へ送るように配置され得る。たとえば、プローブインターフェース118は、関連のタッチトリガプローブから複数の異なるタイプのプローブイベントメッセージを受信するように構成され得る。
【0043】
たとえば、タッチトリガプローブ104が(たとえば、特許文献3に説明されているような)歪みゲージタッチトリガプローブである場合には、それは、2つ以上のタイプのプローブイベント情報をプローブインターフェース118へ送るように構成され得る。たとえば、第1のタイプのトリガイベントを発生させる高感度トリガ閾値が設定され得る(それは、誤トリガの発信を結果として生じさせる可能性がより高い)。また、第2のタイプのトリガイベントを発生させる、より低い感度閾値が設定され得る(それは、度量衡学精度に関してより好適でないが、誤トリガを結果として生じさせる可能性がより低い)。次いで、プローブインターフェース118は、デジタルデータパッケージをNC120へ送ることが可能であり、NC120は、イベントがいつ起こったかということを定義するタイムスタンプとともに起こったトリガイベントのタイプ(たとえば、第1または第2のタイプのトリガイベント)を識別する。これは、NC120が異なるトリガイベント同士の間を区別し、それにしたがって作用することを可能にする。複数の異なるタイプのプローブイベント情報、たとえば、上記に説明されている異なるトリガイベントなどが、このようにNC120へ送られ得る。
【0044】
上記から続いて、確認ベースの測定プロセスを実装することも可能であることとなる。たとえば、信頼性の高いトリガ信号が発生させられ得る前にフィルタが実装されることを必要とする、非常に高感度のタッチトリガプローブおよび工作機械の組み合わせを考える。典型的に、そのようなフィルタは、時間ベースであることとなり(たとえば、8msまたは16msに設定される)、また、トリガ信号が発信される前にこのフィルタ持続期間にわたって、タッチトリガプローブがトリガされたままになることを必要とすることとなる。トリガ信号を発信する前にフィルタ持続期間を待つ代わりに、タッチプローブは、フィルタを適用することなく、起こり得るトリガが最初にいつ検出されるかということを、プローブインターフェース118に知らせることが可能である。これは、第1のプローブイベントと呼ばれ得り、第1のタイムスタンプ付きのメッセージは、NC120へ送られ、この第1のプローブイベントが起こったということを報告することが可能である。
【0045】
次いで、タッチプローブは、また、トリガが信頼性の高いトリガであるとしていつ確認されるかということを、プローブインターフェース118に知らせることが可能である。その理由は、トリガイベントが、また、フィルタの適用の後に作り出されるからである。これは、第2のプローブイベントと呼ばれ得り、第2のタイムスタンプ付きのメッセージが、NC120へ送られ、この第2のプローブイベントが起こったということを報告することが可能である。また、タイムスタンプなしで確認メッセージがNCへ送られることが可能であることとなる。すなわち、最初のトリガイベントがいつ検出されるかということを説明する第1のプローブイベントだけが、タイムスタンプを付けられ得る。したがって、NC120は、第1のプローブイベントに関連付けられるマシン位置データを確立することが可能であるが、第2の(確認)プローブイベントがその後に受信されたかどうかということを測定ポイントに報告するために、このデータを使用するだけである。また、プローブインターフェース118は、随意的に、安全目的(測定目的ではなく)または後方互換性目的のために、NC120のSKIP入力への接続を含むことが可能である。たとえば、プローブインターフェースは、また、工作機械運動がこのポイントにおいて停止されることを保証するためにトリガが純粋に確認されるときに、SKIP信号をコントローラのSKIP入力へ送ることが可能である。これは、プローブイベントがフィールドバスを経由してプローブインターフェース118によって報告されることに応答して、NC120がマシン運動を停止させるようにプログラムされていることに加えて、安全特徴として提供され得る。
【0046】
また、プローブインターフェース118によってNC120へ送られたメッセージに適用されたタイムスタンプは、タッチプローブ104からプローブインターフェースへプローブイベント情報を渡すことに関係付けられる遅延の中の任意の変動を考慮することが可能であるということも留意されるべきである。特許文献1により詳細に説明されているように、ラジオプロトコルは、以前に用いられており、そこでは、コントローラのSKIP入力へのトリガ信号の出力が、一定の時間(たとえば、タッチイベントから10ms)だけ遅延させられ、プロービングシステムからの繰り返し可能な低ジッター応答を保証しながら、ラジオ信号の完全性を保証する。とりわけ、特許文献1は、ラジオプロトコルを説明しており、そこでは、一定の10msの遅延が、プローブからプローブインターフェースへのラジオメッセージの再送信を可能にする。たとえば、第1のラジオ送信が届かない場合には、第2の再送信が行われ(たとえば、2ms後)、また、第2の再送信が失敗した場合には、第3の再送信が起こる(たとえば、2ms後)。ラジオ信号が良好であるケースの大部分において、信号は、プローブインターフェースによって第1の時間に正しく受信され、したがって、このスキームは、不必要な10msの遅延を課す。したがって、このラジオプロトコルは、プローブイベントの時間を計算するときの再送信に起因する任意の遅延を考慮するために、プローブインターフェース118を構成させることによって、本発明とともに使用するように適合され得る。したがって、プローブイベントがNC120に通信される前に、インターフェースが一定の10msの遅延を付与する必要性が回避される。
【0047】
また、非タイムクリティカルな情報が、プローブインターフェース118からNCへ送信され得るということが留意されるべきである。たとえば、温度情報またはプローブステータス情報(たとえば、バッテリー、フィルタ、性能)データ。そのような非タイムクリティカルなイベントが起こるということは、ワイヤレスリンクを経由してプローブインターフェース118へ通信され、次いで、フィールドバスを経由してNC120へデジタルデータパケットとして渡され得る。次いで、NC120は、オペレータを警告し(たとえば、バッテリーを交換する)、および/または、再キャリブレーションルーチンを実施することが可能である。
【0048】
図5を参照すると、
図3および
図4を参照して上記に説明されている技法の変形例が説明されることとなる。産業用イーサネットバス222を経由してプローブインターフェース218に接続されている数値コントローラ220が設けられている。タッチトリガプローブ204は、特許文献1に説明されているラジオリンクなどのようなワイヤレスラジオリンクを経由して、プローブインターフェース218と通信している。数値コントローラ220は、ネットワークポート226を含む適当な産業用イーサネットハードウェアを含み、プローブインターフェース218がネットワークポート226に接続されている。NC220は、バスマスターであり、プローブインターフェース218は、スレーブデバイスである。また、数値コントローラ220は、マスタークロックに対して既知の時間において、ローリングする一連のマシン位置データ(すなわち、マシン座標の中のタッチトリガプローブの位置を示すデータ)を記憶するメモリーストアまたはバッファ224を含む。
【0049】
NC220は、通信バスを含み、通信バスは、バスの上のすべてのデバイスにマスタークロック情報(それは、世界時間(Wt)とも呼ばれ得る)を提供する。したがって、プローブインターフェース218は、このマスタークロックタイミングデータをNC220から受信する。したがって、プローブインターフェース218は、トリガイベントが起こるときに、絶対的な時間値によってイベントにタイムスタンプを付けることが可能である(すなわち、タイムスタンプは、世界時間で定義され得る)。次いで、プローブインターフェースは、タイムスタンプ付きのトリガイベント情報(Tw)を、産業用イーサネットを経由してNC220へ送ることが可能である。タイムスタンプ値の直ぐ周りにおいてバッファ224の中に記憶されたマシン位置データポイントは、次いで、トリガイベントが起こった絶対的な位置を内挿する(または、別の適切な技法を使用して計算する)ために使用され得る。
【0050】
図6を参照すると、本発明のさらなる実施形態が図示されている。フィールドバス322を経由してプローブインターフェース318に接続されている数値コントローラ320が設けられている。タッチトリガプローブ304は、特許文献1に説明されているラジオリンクなどのようなワイヤレスラジオリンクを経由して、プローブインターフェース318と通信している。数値コントローラ320は、ネットワークポート326を含む適当なフィールドバスハードウェアを含み、プローブインターフェース318がネットワークポート326に接続されている。NC320は、バスマスターであり、プローブインターフェース318は、スレーブデバイスである。また、プローブインターフェース318は、NC320からフィールドバス322を経由して受信したローリングする一連のマシン位置データを記憶するメモリーストアまたはローリングバッファ330を含む。
【0051】
使用時に、NC320は、フィールドバス322を経由してプローブインターフェース318へマシン位置データ(P1、P2、P3)の規則的なストリームを送るようにプログラムされている(たとえば、G-コードまたは同様のインストラクションの使用を通して)。プローブインターフェース318は、ローリングバッファ330の中にこのマシン位置データを記憶する。また、プローブインターフェース318がタイムスタンプを付けるか、または、他のものが、そのローカルクロックに対してマシン位置データのそれぞれ受信されたセットを関係付ける。プローブインターフェース318がタッチトリガプローブ304からトリガイベントを受信するときには、このトリガイベントは、また、ローカルクロックに対してタイムスタンプを付けられる。したがって、ローリングバッファ330の中のマシン位置データ、および、トリガイベントは、共通(ローカル)クロックに同期化され、共通(ローカル)クロックは、トリガイベントが起こった時間に、プローブインターフェースがマシン位置データ(Pt)を計算することを可能にする。次いで、プローブ(トリガ)イベントの位置を説明するこのマシン位置データ(Pt)は、プローブインターフェース318によってフィールドバス322を経由してNC320へ送られる。
【0052】
また、NCは、上記に説明されているタスクをさまざまな方式で実施するようにプログラムされ得るということが留意されるべきである。NCは、工作機械製造業者によってまたはユーザー埋め込みコードによってNCの中へ組み込まれているインストラクションを使用して、データのストリームをプローブインターフェースへ出力するように指示され得る。たとえば、ユーザーは、コンパイルサイクルまたは同期作用を使用して、適切なコードを埋め込むことが可能である。したがって、これが行われる正確な方式は、使用されている工作機械の特定のタイプまたは構成に依存することとなる。
【0053】
図7および
図8を参照すると、どのように本発明が工作機械の上に実装され得るかということが説明されることとなり、そこでは、プローブインターフェースがバスを共有しており、バスは、また、工作機械のさまざまなドライブを制御するためにも使用されている。
【0054】
図7は、数値コントローラ420を有する工作機械400を示している。NC420は、産業用イーサネットバス422を経由してプローブインターフェース418に接続されている。タッチトリガプローブ404は、特許文献1に説明されているラジオリンクなどのようなワイヤレスラジオリンクを経由して、プローブインターフェース418と通信している。タッチトリガプローブ404は、使用時に工作機械に装着されることとなり、
図7は、それを別々に示し、単にその構成が説明されることを可能にしているに過ぎないということが留意されるべきである。数値コントローラ420は、ネットワークポート426を含む適当なバスハードウェアを含み、プローブインターフェース418がネットワークポート426に接続されている。NC420は、バスマスターであり、プローブインターフェース418は、スレーブデバイスである。また、プローブインターフェース418は、メモリーストアまたはローリングバッファ430を含む。この実施形態では、産業用イーサネットシステム422が、プローブインターフェース418および場合によっては他の外部デバイスに接続されているだけではなく、工作機械自身のモーター付きドライブ432および位置エンコーダ434にも接続されている。
【0055】
プローブインターフェース418は、すべての通信に関して(単にプローブインターフェースに関するものだけでなく)、バス422をモニタリングするように構成されている。したがって、プローブインターフェースは、ドライブ432およびエンコーダ434に関連付けられたデータのログを取る。プローブイベントが起こるときには(たとえば、シート状態からトリガ状態へ(seated-to-triggered)またはトリガ状態からシート状態へ(triggered-to-seated))、バスによって使用されるクロックポイントT1、T2、または「ティック(ticks)」に対するタイムスタンプが発生させられる。プローブイベントの周りで受信されるドライブデータポイントを使用して、プローブインターフェース418は、そのプローブイベントに関連付けられる生のマシン位置(Pr)を計算する(たとえば、内挿によって)。次いで、この生のマシン位置(Pr)は、バス422を経由してNC420へ渡される。
【0056】
このようにバスを経由して収集された(たとえば、エンコーダ434から直接的に収集された)マシン位置データは、生データと呼ばれるということが留意されるべきである。その理由は、NC420が、典型的に、そのデータの位置精度を増加させるために生データに適用される(たとえば、工作機械キャリブレーションの間に発生させられる)さまざまな補正を記憶しているからである。この実施形態では、プローブインターフェース418は、そのようなキャリブレーションデータへのアクセスを有しておらず、したがって、そのプローブイベントに関連付けられる生のマシン位置(Pr)をNC420へ報告することができるのみである。しかし、NC420は、次いで、生のマシン位置(Pr)に適当な補正を適用し、補正されたマシン位置の値を発生させることが可能である。代替例として、キャリブレーションデータは、NC420によってプローブインターフェース418へ渡され得るか、または、プローブインターフェース418は、別々に計算されるキャリブレーションデータとともにプログラムされ得る。たとえば、生のマシン位置データは、マシンマッピングデータ(たとえば、Renishaw XM60を使用して取得されるものなど)を使用して操作され、バス422を経由してNC420へ送られる絶対的な位置およびこの「現実の」位置を作り出すことが可能である。
【0057】
上記の説明は、単に、本発明が実装され得る方式のいくつかの例を提供しているに過ぎないということが留意されるべきである。とりわけ、任意のタイプのバスまたはデジタルインターフェースは、工作機械コントローラとプローブインターフェースとの間の通信リンクを可能にするために使用され得る。スピンドルに装着されたタッチトリガプローブが示されているが、本発明は、任意のタッチトリガプローブとともに働くこととなる。たとえば、ツールセッティングまたはテーブルに装着されたタッチトリガプローブも使用され得る。タッチトリガプローブは、いわゆる非接触プローブであることも可能である。たとえば、それは、非接触ツールセッタを含むことが可能であり、非接触ツールセッタにおいて、光のビームは、トリガ信号を発生させるために、ツールによって破壊されるかまたは破壊されない。