(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138582
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】血管を処置するための方法および材料
(51)【国際特許分類】
A61L 29/08 20060101AFI20230922BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20230922BHJP
A61L 29/12 20060101ALI20230922BHJP
A61L 29/16 20060101ALI20230922BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230922BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20230922BHJP
A61P 29/02 20060101ALI20230922BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20230922BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230922BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230922BHJP
A61P 9/02 20060101ALI20230922BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20230922BHJP
A61P 1/08 20060101ALI20230922BHJP
A61P 9/06 20060101ALI20230922BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20230922BHJP
A61P 27/10 20060101ALI20230922BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230922BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230922BHJP
A61K 35/50 20150101ALI20230922BHJP
A61P 9/08 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
A61L29/08
A61M25/10 550
A61M25/10 510
A61L29/12
A61L29/16
A61P9/10
A61P25/08
A61P29/02
A61P25/04
A61P17/02
A61P17/00
A61P9/10 103
A61P9/02
A61P25/02
A61P1/08
A61P9/06
A61P25/20
A61P27/10
A61P13/12
A61P25/28
A61K35/50
A61P9/08
A61P9/10 101
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122088
(22)【出願日】2023-07-27
(62)【分割の表示】P 2020520196の分割
【原出願日】2018-06-21
(31)【優先権主張番号】62/523,366
(32)【優先日】2017-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/708,406
(32)【優先日】2017-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519455173
【氏名又は名称】ペトルッチ ゲイリー エム.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ペトルッチ ゲイリー エム.
(57)【要約】
【課題】本書は、1つまたは複数の狭窄血管を有する哺乳動物(例えば、ヒト)を処置するための方法および材料を提供する。例えば、バルーン血管形成術において用い得る羊膜コーティングバルーンが提供される。
【解決手段】哺乳動物における狭窄血管を処置する方法であって、羊膜組織調製物を含むコーティングを含む血管形成術用バルーンを閉塞血管に挿入する工程;および羊膜コーティングバルーンを膨張させて、閉塞血管において血管形成術を実施する工程を含み、狭窄血管が閉塞血管を含み、閉塞血管が拡張される、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
羊膜組織調製物を含むコーティングを含む血管形成術用バルーン
を含む、血管形成術用バルーンカテーテル。
【請求項2】
羊膜組織調製物が生細胞を有する、請求項1記載の血管形成術用バルーンカテーテル。
【請求項3】
羊膜組織調製物が生細胞を欠いている、請求項1記載の血管形成術用バルーンカテーテル。
【請求項4】
羊膜組織調製物が乾燥羊膜組織調製物である、請求項1~3のいずれか一項記載の血管形成術用バルーンカテーテル。
【請求項5】
乾燥羊膜組織調製物が約8パーセント未満の含水率を有する、請求項4記載の血管形成術用バルーンカテーテル。
【請求項6】
乾燥羊膜組織調製物が約0.1μm~約25μmの範囲にわたる粒径を有する、請求項4記載の血管形成術用バルーンカテーテル。
【請求項7】
羊膜組織調製物が唯一の有効成分である、請求項1~6のいずれか一項記載の血管形成術用バルーンカテーテル。
【請求項8】
バルーンが1つまたは複数の治療剤でさらにコーティングされる、請求項1~6のいずれか一項記載の血管形成術用バルーンカテーテル。
【請求項9】
ステントレス血管形成術用バルーンカテーテルである、請求項1記載の血管形成術用バルーンカテーテル。
【請求項10】
以下の工程を含む、哺乳動物における狭窄血管を処置する方法であって、狭窄血管が閉塞血管を含み、狭窄血管に関連する症状が軽減される、方法:
羊膜組織調製物を含むコーティングを含む血管形成術用バルーンを閉塞血管に挿入する工程;および
羊膜コーティングバルーンを膨張させて、閉塞血管において血管形成術を実施する工程。
【請求項11】
狭窄血管が狭窄末梢動脈であり、症状が、腕および/または脚における、跛行、痙攣、刺痛、疼痛、痺れ、創傷、体温低下、および爪の成長不良からなる群より選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
狭窄血管が狭窄冠動脈であり、症状が、脳卒中、心臓発作、胸痛、息切れ、発汗、悪心、めまいまたはもうろう状態、動悸、および不整脈からなる群より選択される、請求項10記載の方法。
【請求項13】
狭窄血管が狭窄頸動脈であり、症状が、脱力感、錯乱、発話困難、めまい、歩行困難、起立困難、視力障害、麻痺、激しい頭痛、および意識喪失からなる群より選択される、請求項10記載の方法。
【請求項14】
狭窄血管が狭窄性腎動脈狭窄であり、症状が、腎血流の減少および慢性腎疾患からなる群より選択される、請求項10記載の方法。
【請求項15】
以下の工程を含む、哺乳動物における狭窄血管を処置する方法であって、狭窄血管が閉塞血管を含み、閉塞血管が拡張される、方法:
羊膜組織調製物を含むコーティングを含む血管形成術用バルーンを閉塞血管に挿入する工程;および
羊膜コーティングバルーンを膨張させて、閉塞血管において血管形成術を実施する工程。
【請求項16】
閉塞血管が約20%~約100%開通するように拡張される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
以下の工程を含む、哺乳動物における狭窄血管を処置する方法であって、狭窄血管が閉塞血管を含み、閉塞血管における閉塞が軽減される、方法:
羊膜組織調製物を含むコーティングを含む血管形成術用バルーンを閉塞血管に挿入する工程;および
羊膜コーティングバルーンを膨張させて、閉塞血管において血管形成術を実施する工程。
【請求項18】
閉塞が約20体積%~約100体積%軽減される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
以下の工程を含む、哺乳動物における狭窄血管を処置する方法であって、狭窄血管が閉塞血管を含み、閉塞血管における血流が増加する、方法:
羊膜組織調製物を含むコーティングを含む血管形成術用バルーンを閉塞血管に挿入する工程;および
羊膜コーティングバルーンを膨張させて、閉塞血管において血管形成術を実施する工程。
【請求項20】
血流が約20%~約100%増加する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
血流が約50cm/sと約250cm/sの間まで増加する、請求項19記載の方法。
【請求項22】
哺乳動物がヒトである、請求項10~21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
羊膜コーティングバルーンを約5気圧(atm)~約35atmの圧力まで膨張させる、請求項10~22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
羊膜コーティングバルーンを約10気圧(atm)未満の圧力まで膨張させる、請求項10~22のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
血管形成術の反跳は約50%未満である、請求項10~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
血管形成術用バルーンが腕または鼠径部における経皮的穿刺を通じて挿入される、請求項10~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
閉塞がアテローム性動脈硬化プラークを含む、請求項10~26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
アテローム性動脈硬化プラークが石灰化アテローム性動脈硬化プラークである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
血管形成術の前に閉塞血管においてアテローム切除術を実施する工程をさらに含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
ステントレスバルーン血管形成術である、請求項10~29のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本願は、2017年6月22日付出願の米国仮特許出願第62/523,366号の恩典を主張する、2017年9月19日付出願の米国特許出願第15/708,406号の優先権を主張し、これらの全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
1.技術分野
本書は1つまたは複数の狭窄血管を有する哺乳動物(例えば、ヒト)を処置するための方法および材料に関する。例えば、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンはバルーン血管形成術において用い得る。
【背景技術】
【0003】
2.背景情報
血管形成術は心疾患および末梢動脈疾患(PAD)を治療するために用いられることが多い。心疾患は男性および女性の両方で第一の死亡原因であり、PADは少なくとも800~1200万人のアメリカ人に影響を及ぼし、有病率は年齢とともに増加する(CDC, Heart Disease Facts. cdc.gov/heartdisease/facts.htmからオンラインで入手可能である)。毎年、米国では100万人を超える患者が血管形成術を受けている(American Heart Association. Heart Disease and Stroke Statistics- 2007 Update. Dallas, TX: American Heart Association; 2007(非特許文献1))が、血管形成術を受けた人々の最大で4分の1が血管形成術を再び受けなければならないか、または心疾患の場合では数年以内にバイパス手術を受けなければならない(Harvard Health Publications, "Angioplasty or bypass surgery?" Harvard Heart Letter April 2008(非特許文献2))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】American Heart Association. Heart Disease and Stroke Statistics- 2007 Update. Dallas, TX: American Heart Association; 2007
【非特許文献2】Harvard Health Publications, "Angioplasty or bypass surgery?" Harvard Heart Letter April 2008
【発明の概要】
【0005】
概要
本書は1つまたは複数の狭窄血管を有する哺乳動物(例えば、ヒト)を処置するための方法および材料を提供する。例えば、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーン(例えば、羊膜組織調製物でコーティングした血管形成術用バルーン)はバルーン血管形成術において使用できる。一部の場合には、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンを用いて、1つまたは複数の狭窄血管を有する哺乳動物を処置し得る。典型的には、血管の反跳(例えば、再狭窄)を減少させるためにバルーン血管形成術後にステントが血管に挿入される。一部の場合には、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンはステントレスバルーン血管形成術(例えば、ステントを埋め込まないバルーン血管形成術)において使用できる。
【0006】
概して、本書の一局面は、羊膜組織調製物を含むコーティングを有する血管形成術用バルーン(例えば、バルーンカテーテルのバルーン)を特徴とする。羊膜組織調製物は生細胞を有してもよいし、羊膜組織調製物は生細胞を欠いていてもよい。羊膜組織調製物は乾燥羊膜組織調製物であり得る。乾燥羊膜組織調製物は約8パーセント未満の含水率を有し得る。乾燥羊膜組織調製物は約0.1μm~約25μmの範囲にわたる粒径を有し得る。羊膜組織調製物は羊膜コーティングバルーンの唯一の有効成分であり得るか、または羊膜コーティングバルーンは1つもしくは複数の治療剤でもコーティングされ得る。血管形成術用バルーンカテーテルはステントレス血管形成術用バルーンカテーテルであり得る。
【0007】
別の局面では、本書は哺乳動物における狭窄血管を処置するための方法を特徴とする。方法は、羊膜組織調製物を含むコーティングを有する血管形成術用バルーンを閉塞血管に挿入する工程、および、羊膜コーティングバルーンを膨張させて、閉塞血管において血管形成術を実施する工程を含み得るか、またはそれら工程から実質的になり得る。一部の場合には、狭窄血管と関連した1つまたは複数の症状が軽減され得る。狭窄血管が末梢動脈である場合、症状は、腕および/または脚における、跛行、痙攣、刺痛、疼痛、痺れ、創傷、体温低下、および/または爪の成長不良であり得る。狭窄血管が狭窄冠動脈である場合、症状は、脳卒中、心臓発作、胸痛、息切れ、発汗、悪心、めまいもしくはもうろう状態、動悸、および/または不整脈であり得る。狭窄血管が狭窄頸動脈である場合、症状は、脱力感、錯乱、発話困難、めまい、歩行困難、起立困難、視力障害、麻痺、激しい頭痛、および/または意識喪失であり得る。狭窄血管が狭窄性腎動脈狭窄である場合、症状は、腎血流の減少および/または慢性腎疾患であり得る。一部の場合には、閉塞血管が拡張される。閉塞血管は約20%から約100%開通するように拡張され得る。一部の場合には、閉塞血管の閉塞が軽減される。閉塞は約20体積%~約100体積%軽減され得る。一部の場合には、閉塞血管の血流が増加し得る。血流は約20%~約100%増加し得る。血流は約50cm/sと約250cm/sの間まで増加し得る。哺乳動物はヒトであり得る。羊膜コーティングバルーンを約5気圧(atm)~約35atmの圧力まで膨張させ得る。羊膜コーティングバルーンを約10atm未満の圧力まで膨張させ得る。血管形成術の反跳は約50%未満であり得る。血管形成術用バルーンは腕または鼠径部における経皮的穿刺を通じて挿入し得る。閉塞はアテローム性動脈硬化プラーク(例えば、石灰化アテローム性動脈硬化プラーク)を含み得る。方法は、閉塞血管においてアテローム切除術を実施する工程(例えば、血管形成術の前に)も含み得る。方法はステントレスバルーン血管形成術であり得る。
【0008】
特に定義した場合を除いて、本明細書において用いられるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって通常は解釈されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様のまたは均等な方法および材料が発明を実施するために用いられ得るが、好適な方法および材料を下に記載している。本明細書において言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献はそれらの全体において参照により組み入れられる。矛盾がある場合には、定義を含めて本明細書が優先される。さらに、材料、方法、および例は単なる例示であり、限定することを意図していない。
【0009】
[本発明1001]
羊膜組織調製物を含むコーティングを含む血管形成術用バルーン
を含む、血管形成術用バルーンカテーテル。
[本発明1002]
羊膜組織調製物が生細胞を有する、本発明1001の血管形成術用バルーンカテーテル。
[本発明1003]
羊膜組織調製物が生細胞を欠いている、本発明1001の血管形成術用バルーンカテーテル。
[本発明1004]
羊膜組織調製物が乾燥羊膜組織調製物である、本発明1001~1003のいずれかの血管形成術用バルーンカテーテル。
[本発明1005]
乾燥羊膜組織調製物が約8パーセント未満の含水率を有する、本発明1004の血管形成術用バルーンカテーテル。
[本発明1006]
乾燥羊膜組織調製物が約0.1μm~約25μmの範囲にわたる粒径を有する、本発明1004の血管形成術用バルーンカテーテル。
[本発明1007]
羊膜組織調製物が唯一の有効成分である、本発明1001~1006のいずれかの血管形成術用バルーンカテーテル。
[本発明1008]
バルーンが1つまたは複数の治療剤でさらにコーティングされる、本発明1001~1006のいずれかの血管形成術用バルーンカテーテル。
[本発明1009]
ステントレス血管形成術用バルーンカテーテルである、本発明1001の血管形成術用バルーンカテーテル。
[本発明1010]
以下の工程を含む、哺乳動物における狭窄血管を処置する方法であって、狭窄血管が閉塞血管を含み、狭窄血管に関連する症状が軽減される、方法:
羊膜組織調製物を含むコーティングを含む血管形成術用バルーンを閉塞血管に挿入する工程;および
羊膜コーティングバルーンを膨張させて、閉塞血管において血管形成術を実施する工程。
[本発明1011]
狭窄血管が狭窄末梢動脈であり、症状が、腕および/または脚における、跛行、痙攣、刺痛、疼痛、痺れ、創傷、体温低下、および爪の成長不良からなる群より選択される、本発明1010の方法。
[本発明1012]
狭窄血管が狭窄冠動脈であり、症状が、脳卒中、心臓発作、胸痛、息切れ、発汗、悪心、めまいまたはもうろう状態、動悸、および不整脈からなる群より選択される、本発明1010の方法。
[本発明1013]
狭窄血管が狭窄頸動脈であり、症状が、脱力感、錯乱、発話困難、めまい、歩行困難、起立困難、視力障害、麻痺、激しい頭痛、および意識喪失からなる群より選択される、本発明1010の方法。
[本発明1014]
狭窄血管が狭窄性腎動脈狭窄であり、症状が、腎血流の減少および慢性腎疾患からなる群より選択される、本発明1010の方法。
[本発明1015]
以下の工程を含む、哺乳動物における狭窄血管を処置する方法であって、狭窄血管が閉塞血管を含み、閉塞血管が拡張される、方法:
羊膜組織調製物を含むコーティングを含む血管形成術用バルーンを閉塞血管に挿入する工程;および
羊膜コーティングバルーンを膨張させて、閉塞血管において血管形成術を実施する工程。
[本発明1016]
閉塞血管が約20%~約100%開通するように拡張される、本発明1015の方法。
[本発明1017]
以下の工程を含む、哺乳動物における狭窄血管を処置する方法であって、狭窄血管が閉塞血管を含み、閉塞血管における閉塞が軽減される、方法:
羊膜組織調製物を含むコーティングを含む血管形成術用バルーンを閉塞血管に挿入する工程;および
羊膜コーティングバルーンを膨張させて、閉塞血管において血管形成術を実施する工程。
[本発明1018]
閉塞が約20体積%~約100体積%軽減される、本発明1017の方法。
[本発明1019]
以下の工程を含む、哺乳動物における狭窄血管を処置する方法であって、狭窄血管が閉塞血管を含み、閉塞血管における血流が増加する、方法:
羊膜組織調製物を含むコーティングを含む血管形成術用バルーンを閉塞血管に挿入する工程;および
羊膜コーティングバルーンを膨張させて、閉塞血管において血管形成術を実施する工程。
[本発明1020]
血流が約20%~約100%増加する、本発明1019の方法。
[本発明1021]
血流が約50cm/sと約250cm/sの間まで増加する、本発明1019の方法。
[本発明1022]
哺乳動物がヒトである、本発明1010~1021のいずれかの方法。
[本発明1023]
羊膜コーティングバルーンを約5気圧(atm)~約35atmの圧力まで膨張させる、本発明1010~1022のいずれかの方法。
[本発明1024]
羊膜コーティングバルーンを約10気圧(atm)未満の圧力まで膨張させる、本発明1010~1022のいずれかの方法。
[本発明1025]
血管形成術の反跳は約50%未満である、本発明1010~1024のいずれかの方法。
[本発明1026]
血管形成術用バルーンが腕または鼠径部における経皮的穿刺を通じて挿入される、本発明1010~1025のいずれかの方法。
[本発明1027]
閉塞がアテローム性動脈硬化プラークを含む、本発明1010~1026のいずれかの方法。
[本発明1028]
アテローム性動脈硬化プラークが石灰化アテローム性動脈硬化プラークである、本発明1027の方法。
[本発明1029]
血管形成術の前に閉塞血管においてアテローム切除術を実施する工程をさらに含む、本発明1028の方法。
[本発明1030]
ステントレスバルーン血管形成術である、本発明1010~1029のいずれかの方法。
発明の1つまたは複数の態様の詳細を添付の図面および下の説明に記す。発明の他の特徴、目的、および利点は説明および図面からならびに添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
本書は、羊膜コーティングバルーン(例えば、羊膜組織調製物でコーティングした血管形成術用バルーン)ならびに羊膜コーティングバルーンを作製しかつ用いるための方法および材料を提供する。例えば、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーン(例えば、羊膜組織調製物でコーティングした血管形成術用バルーン)はバルーン血管形成術において用い得る。一部の場合には、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンを用いて、1つまたは複数の狭窄血管を有する哺乳動物(例えば、ヒト)を処置し得る。例えば、羊膜コーティングバルーンをバルーン血管形成術において用いて、1つまたは複数(例えば、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上)の狭窄血管を有する哺乳動物を処置し得る。一部の場合には、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンをバルーン血管形成術において用いて、狭窄血管に関連する症状を軽減する、狭窄血管を拡張する、狭窄血管から閉塞を軽減もしくは除去する、および/または狭窄血管における血流を増加させることができる。一部の場合には、羊膜コーティングバルーンを有するバルーンカテーテルを用いて、(例えば、狭窄血管における治癒を促進するために)羊膜組織調製物を狭窄血管に送達し得る。
【0011】
本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンは羊膜組織調製物(例えば、ヒト羊膜組織調製物)でコーティングされ得る。一部の場合には、羊膜コーティングバルーンは羊膜組織調製物で完全にコーティングされ得る。一部の場合には、羊膜コーティングバルーンは羊膜組織調製物で部分的にコーティングされ得る。本明細書において用いる「羊膜組織調製物」という用語は、羊膜組織または羊膜材料の調製物を指す。一部の場合には、羊膜組織調製物は、乾燥羊膜組織調製物から調製された液体調製物(例えば、溶液または懸濁液)であり得る。本明細書において用いる「乾燥羊膜組織調製物」という用語は、約8パーセント未満(例えば、約7パーセント未満、約6パーセント未満、約5パーセント未満、約4パーセント未満、約3パーセント未満、約2パーセント未満、または約1パーセント未満)の含水率を有するように乾燥された羊膜組織または羊膜材料の調製物を指す。一部の場合には、乾燥羊膜組織調製物は、約0.1パーセントと約8パーセントの間(例えば、約0.5パーセントと約8パーセントの間、約1パーセントと約8パーセントの間、約0.1パーセントと約5パーセントの間、約0.1パーセントと約4パーセントの間、約0.1パーセントと約3パーセントの間、約0.5パーセントと約5パーセントの間、または約1パーセントと約4パーセントの間)の含水率を有し得る。
【0012】
羊膜組織調製物は、微粒子化、真空乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥、またはそれらの組み合わせなどの任意の適切な技術を用いて乾燥させることができる。一部の場合には、羊膜組織調製物は、他(例えば、米国特許第5,656,498号)で記載されているように乾燥させ得る。乾燥羊膜組織調製物は任意の適切な粒径を有し得る。例えば、乾燥羊膜組織調製物は、約0.1μm~約25μm(例えば、約0.5μm~約25μm、約0.75μm~約25μm、約1μm~約25μm、約0.1μm~約15μm、約0.1μm~約10μm、約0.1μm~約7.5μm、約0.1μm~約5μm、約0.75μm~約7.5μm、または約1μm~約5μm)の範囲にわたる粒径を有し得る。
【0013】
羊膜組織調製物または乾燥羊膜組織調製物は、生細胞、非生細胞、またはそれらの組み合わせを含有し得る。例えば、羊膜組織調製物または乾燥羊膜組織調製物は、生細胞を有する羊膜組織または羊膜材料の調製物であり得る。一部の場合には、羊膜組織調製物は、生細胞を有する羊膜組織または羊膜材料の溶液または懸濁液であり得る。
【0014】
一部の場合には、羊膜組織調製物または乾燥羊膜組織調製物は、羊膜組織調製物または乾燥羊膜組織調製物が生細胞を含まないようにすべての細胞を除去した、死滅させた、または溶解させた、羊膜組織または羊膜材料の調製物であり得る。一部の場合には、羊膜組織調製物または乾燥羊膜組織調製物は、羊膜組織調製物または乾燥羊膜組織調製物が生細胞を含まないように羊膜組織または羊膜材料の細胞を死滅させる、固定する、または溶解させる1つまたは複数の物理的および/または化学的処理に曝された、羊膜組織または羊膜材料の調製物であり得る。例えば、温度(例えば、急速凍結または急速凍結融解)、力および圧力、ならびに/または電気的破壊を用いて羊膜組織または羊膜材料内の細胞を死滅または溶解させて、生細胞を含まない羊膜組織調製物または乾燥羊膜組織調製物を製造し得る。
【0015】
一部の場合には、羊膜組織または羊膜材料を入手した後に、羊膜組織または羊膜材料内のすべての細胞を溶解するように設計された様式でそれらを処理してもよい。これらの場合、得られる材料(例えば、マトリクス材料および溶解細胞からの細胞レムナント)は、生細胞を含まない羊膜組織調製物として用いられ得るか、または生細胞を含まない乾燥羊膜組織調製物を形成するように乾燥され得る。
【0016】
一部の場合には、羊膜組織調製物または乾燥羊膜組織調製物はヒトの羊膜組織から調製することができる。例えば、ヒトの羊膜組織を採取し得、血液を除去してまたは除去せずに細胞生存率を維持するよう処理し得、そして、羊膜組織調製物として用い得るか、または、乾燥羊膜組織調製物を形成するように乾燥させ得る。
【0017】
一部の場合には、ヒト羊膜組織を、羊膜組織調製物として用いる前または乾燥羊膜組織調製物を形成するように乾燥させる前に、血液を除去するために処理することができる。一部の場合には、ヒト羊膜組織は、羊膜組織調製物または乾燥羊膜組織調製物を形成する前に細胞または血液を除去することなく処理され得る。
【0018】
羊膜組織調製物の例は、生細胞を含むヒト羊膜組織調製物を非限定的に含む。一部の場合には、羊膜組織調製物は、MiMedX(登録商標)または組織バンク(例えば、ヒト組織バンク)から入手され得る。
【0019】
一部の場合には、羊膜組織調製物は、1つまたは複数の治療剤(例えば、カルシウム沈着物を処理するために用い得られる治療剤)、1つまたは複数の免疫抑制剤(例えば、グルココルチコイドなどのコルチコステロイド)、1つまたは複数の抗炎症剤(例えば、非ステロイド系抗炎症薬、デキサメタゾンまたは他の種類のグルココルチコイドステロイド)、1つまたは複数の成長因子(例えば、血管内皮成長因子(VEGF)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子-2(FGF2)、または幹細胞因子(SCF))、および/あるいは1つまたは複数の抗菌剤(例えば、カナマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、もしくはゲンタマイシン、または抗真菌剤、などの抗生物質)も含み得る。
【0020】
一部の場合には、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンは、唯一の有効成分としての羊膜組織調製物(例えば、ヒト羊膜組織調製物)でコーティングされ得る。
【0021】
一部の場合には、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンは羊膜組織調製物(例えば、ヒト羊膜組織調製物)および他の治療剤でコーティングされ得る。本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンをコーティングするために用い得る治療剤の例は、免疫抑制薬(例えば、ラパマイシンおよびエベロリムス)および抗増殖薬(例えば、パクリタキセル)を非限定的に含む。
【0022】
本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンを製造するために、任意の適切な方法を用いて羊膜組織調製物をバルーンにコーティングすることができる。例えば、羊膜組織調製物が液体調製物(例えば、溶液または懸濁液)である場合、液体調製物にバルーンを浸漬させるまたはバルーンに液体調製物を噴霧することができる。
【0023】
本書は、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンを用いるための方法も提供する。一部の場合には、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンを用いて、1つまたは複数の狭窄血管を有する哺乳動物(例えば、ヒト)を処置し得る。例えば、羊膜コーティングバルーンは、1つまたは複数の狭窄血管を有する哺乳動物(例えば、ヒト)を処置するために用い得る。一部の場合には、羊膜コーティングバルーンをバルーン血管形成術において用いて、狭窄血管に関連する症状を軽減する、狭窄血管を拡張する、狭窄血管から閉塞を軽減もしくは除去する、および/または狭窄血管における血流を増加させることができる。一部の場合には、羊膜コーティングバルーンをバルーン血管形成術において用いて、(例えば、狭窄血管における治癒を促進しするために)羊膜組織調製物(例えば、本明細書に記載される有効量の羊膜組織調製物)を狭窄血管に送達し得る。本明細書に記載される羊膜組織調製物の有効量は、全身の健康状態、体重、性別、食事、投与の時間および経路、他の薬物、ならびに任意の他の関連性のある臨床的要因などの様々な要因を考慮に入れて、医師によって決定され得る。本明細書において用いるように、本明細書において提供される組成物の「有効量」または「治療有効量」とは、組成物または調製物が送達される対象に対して有益な効果を提供するのに十分な量である。有効量は、1つまたは複数の症状(例えば、狭窄血管に関連する症状)の改善または消失を達成する、狭窄血管を拡張する、狭窄血管から閉塞を軽減または除去する、および/あるいは狭窄血管における血流を増加させるのに有効な量であり得る。
【0024】
一部の場合には、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンは、バルーン血管形成術(例えば、冠動脈形成術、末梢血管形成術、頸動脈形成術、静脈形成術、大腿血管形成術、膝窩血管形成術、および脛骨血管形成術)において用い得る。一部の場合には、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンは、ステントレスバルーン血管形成術(例えば、ステントを埋め込まないバルーン血管形成術)において用い得る。一部の場合には、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンは、ステントを埋め込む工程を含むバルーン血管形成術において用い得る。羊膜コーティングバルーンによる血管形成術がステントを埋め込む工程を含む場合、ステントは血管形成術処置中に埋め込まれ得る。例えば、ステントは、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンを有する同一のバルーンカテーテルに提供され得る。羊膜コーティングバルーンによる血管形成術がステントを埋め込む工程を含む場合、ステントは血管形成術処置後に埋め込まれ得る。例えば、ステントは、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンからは独立して提供され得る。羊膜コーティングバルーンによる血管形成術がステントを埋め込む工程を含む場合、ステントは任意の適切なステントであり得る。ステントは、任意の適切な材料(例えば、金属(ニッケル(例えば、ニッケルチタン)、鉄、マグネシウム、亜鉛、および/またはそれらの合金など)および/またはポリマー(ポリ(L-ラクチド)(PLLA);ポリ-D,L-ラクチド(PDLLA);チロシンポリカーボネート、および/またはポリ(無水物-エステル)-サリチレート)など)で作製され得る。ステントの種類の例は、ベアステント、薬物溶出ステント、生体吸収性ステント、コーティングステント、およびそれらの組み合わせを非限定的に含む。羊膜コーティングバルーンによる血管形成術が薬物溶出ステントを埋め込む工程を含む場合、ステントは任意の適切な薬物(例えば、免疫抑制薬(ラパマイシンおよびエベロリムスなど)および抗増殖薬(パクリタキセルなど))を溶出し得る。羊膜コーティングバルーンによる血管形成術がコーティングステントを埋め込む工程を含む場合、ステントは、本明細書に記載の羊膜調製物でコーティング(例えば、完全にコーティングまたは部分的にコーティング)され得る。
【0025】
本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンを用いる方法は、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンを狭窄血管に挿入する工程、および該羊膜コーティングバルーンを膨張させる工程を含み得る。例えば、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンを約4atm~約35atm(例えば、約4atm~約30atm、約4atm~約25atm、約4atm~約20atm、約4atm~約15atm、約4atm~約10atm、約6atm~約35atm、約8atm~約35atm、約10atm~約35atm、約15atm~約35atm、約20atm~約35atm、約5atm~約30atm、約6atm~約25atm、約8atm~約23atm、または約10atm~約20atm)の圧力まで膨張させることができる。一部の場合には、羊膜コーティングバルーンを低圧(例えば、ステントを埋め込む工程を含むバルーン血管形成術で典型的に用いられるよりも低い圧力)で膨張させることができる。例えば、本明細書において提供される、低い圧力で膨張させる羊膜コーティングバルーンは、約10atm未満(例えば、約9atm未満、約8atm未満、約7atm未満、約6atm未満、または約5atm未満)の圧力まで膨張させることができる。本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンを用いる方法は、羊膜コーティングバルーンをしぼませて除去する工程も含み得る。
【0026】
本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンは、任意の適切な技術を用いて狭窄血管に挿入され得る。例えば、羊膜コーティングバルーンは、腕または鼠経部における経皮的穿刺を通じて挿入され得る。一部の場合には、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンを用いる方法は、ガイドワイヤを用いて、羊膜コーティングバルーンを狭窄血管までガイドする工程を含み得る。一部の場合には、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンを用いる方法は、光学イメージング(例えば、X線、蛍光顕微鏡ガイダンス、および/または放射線不透過性造影剤)を用いて羊膜コーティングバルーンを狭窄血管までガイドする工程を含み得る。
【0027】
一部の場合には、任意の適切な技術を用いて、哺乳動物が1つまたは複数の狭窄血管を有していると特定することができる。哺乳動物が1つまたは複数の狭窄血管を有していると特定するために用いられ得る技術の例は、血管造影法(例えば、冠動脈造影法)、顕微鏡写真撮影法、ストレステスト、超音波検査(例えば、ドップラー超音波検査および血管内超音波検査)、冠動脈石灰化スコア(例えば、CTによる)、頸動脈測定(例えば、超音波による頸動脈内膜中膜複合体厚(IMT)測定)、生理学的測定(例えば、リポタンパク質サブクラス分析、HbAlc、hs-CRP、およびホモシステイン)、および/または核イメージング技術(例えば、PETおよびSPECT)を非限定的に含む。
【0028】
狭窄血管は身体の任意の適切な部位にあり得る。狭窄血管を有し得る身体部位の例は脚、首、心臓、腎臓、大動脈、胸部、および腹部を非限定的に含む。
【0029】
狭窄血管が閉塞血管である場合、閉塞は任意の適切な種類の閉塞であり得る。血管を狭め得る閉塞の例は、石灰化(例えば、動脈などの軟部組織に蓄積しかつ/または結晶化するカルシウム沈着物)およびプラーク(例えば、アテローム性プラークなどのアテローム性動脈硬化プラーク)を非限定的に含む。一部の場合には、プラークは石灰化(例えば、石灰化したプラーク)を含み得る。例えば、狭窄を有するヒトは、頸動脈における石灰化を有し得る。
【0030】
本明細書に記載されるように、1つまたは複数の狭窄血管を有する任意の種類の哺乳動物が処置され得る。本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンで処置され得る哺乳動物の例は、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、サル)、イヌ、ネコ、ウマ、雌ウシ、ブタ、ヒツジ、ウサギ、マウス、およびラットを非限定的に含む。例えば、1つまたは複数の狭窄血管を有するヒトを、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンで処置することができる。
【0031】
1つ以上の狭窄血管を有する哺乳動物(例えば、ヒト)を処置する場合、任意の適切な血管(例えば、動脈または静脈)が狭くなっているおよび/または閉塞している可能性がある。狭窄血管が動脈である場合、該動脈は、末梢動脈(例えば、膝窩動脈などの脚動脈、脛骨動脈(例えば、後または前脛骨動脈)、腓骨動脈、足底動脈(例えば、外側、内側、または深足底動脈)、または足背動脈)、冠動脈(例えば、頸動脈、遠位左主冠動脈(LMCA)、左回旋動脈(LCX)、または左前下行(LAD)動脈)、または腎動脈であり得る。狭窄血管が静脈である場合、該静脈は鎖骨下静脈であり得る。例えば、狭窄頸動脈を有するヒトは、本明細書に記載される血管形成術手法(例えば、ステントレス血管形成術手法)において、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンを用いて処置され得る。
【0032】
一部の場合には、1つまたは複数の狭窄血管を有する哺乳動物(例えば、ヒト)は、1つまたは複数の狭窄血管に関連した状態を有し得る。1つまたは複数の狭窄血管に関連した状態は、任意の適切な状態であり得る。狭窄(例えば、狭くなりかつ/または閉塞した)血管を含み得る状態の例は心疾患、心血管疾患、動脈硬化症(例えば、アテローム性動脈硬化症)、末梢動脈疾患(PAD;例えば、糖尿病に関連したPAD)、腎血管性高血圧、頸動脈疾患、および冠動脈疾患(CAD)を非限定的に含む。例えば、アテローム性動脈硬化症を有するヒトを、本明細書に記載される血管形成術手法(例えば、ステントレス血管形成術手法)において、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンを用いて処置することができる。例えば、CADを有するヒトを、本明細書に記載される血管形成術手法(例えば、ステントレス血管形成術手法)において、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンを用いて処置することができる。
【0033】
一部の場合には、本明細書において提供される方法および材料を用いて、1つまたは複数の狭窄血管に関連する症状を軽減することができる。例えば、羊膜コーティングバルーンを有するバルーンカテーテルを用いて、狭窄血管に関連する1つまたは複数(例えば、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上)の症状を軽減することができる。狭窄に関連する症状は、どの血管が狭窄しているかによって、および狭窄血管がどの臓器に血液を供給しているかによって異なると認識されるであろう。例えば、狭窄冠動脈に関連する症状は、心血管障害(例えば、脳卒中または心臓発作)、胸痛(例えば、狭心症)、息切れ、発汗、悪心、めまいまたはもうろう状態、動悸、および不整脈を非限定的に含み得る。例えば、狭窄頸動脈に関連する症状は、脱力感、錯乱、発話困難、めまい、歩行困難、起立困難、視力障害、麻痺(例えば、顔、腕、および/または脚の)、激しい頭痛、および意識喪失を非限定的に含み得る。例えば、狭窄末梢動脈に関連する症状は、腕および/または脚における、跛行、痙攣、刺痛、疼痛、痺れ、創傷、体温低下、および爪の成長不良を非限定的に含み得る。例えば、狭窄腎動脈に関連する症状は、腎血流の減少および慢性腎疾患を非限定的に含み得る。一部の場合には、羊膜コーティングバルーンを有するバルーンカテーテルを用いて、狭窄血管に関連する1つまたは複数の症状を消失させ得る。例えば、本明細書に記載される血管形成術手法(例えば、ステントレス血管形成術手法)において、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンを用いて、1つまたは複数の狭窄血管を有するヒトを処置して、手および/または足における、跛行、痙攣、刺痛、疼痛、痺れ、創傷、体温低下、および/または爪の成長不良を軽減または消失させ得る。例えば、本明細書に記載される血管形成術手法(例えば、ステントレス血管形成術手法)において、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンを用いて、1つまたは複数の狭窄血管を有するヒトを処置して、胸痛を軽減または消失させ得る。
【0034】
一部の場合には、本明細書において提供される方法および材料を用いて狭窄血管を拡張(例えば、再開通)させることができる。一部の場合には、本明細書にて記載される羊膜コーティングバルーン(例えば、羊膜コーティングバルーンを有するバルーンカテーテル)を狭窄血管内で膨張させて血管を拡張させることができる。例えば、本明細書に記載される血管形成術手法(例えば、ステントレス血管形成術手法)において、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンを用いて、1つまたは複数の狭窄血管を有するヒトを処置して、狭窄血管を拡張させることができる。一部の場合には、本明細書において提供される方法は、閉塞血管を約20%~約100%開通する(例えば、約25%~約95%、約30%~約90%、約50%~約80%、約60%~約75%、約20%~約80%、約20%~約50%、約25%~約50%、約30%~約100%、約40%~約100%、約50%~約100%、または約75%~約100%開通する)ように拡張させる工程を含み得る。例えば、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンを狭窄血管内で膨張させて血管を完全に(例えば、100%)開通させることができる。一部の場合には、本明細書において提供される方法(例えば、血管形成術の後)の反跳は約50%未満(例えば、約45%未満、約40%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、または約5%未満)であり得る。
【0035】
一部の場合には、本明細書において提供される方法および材料を用いて、狭窄血管から閉塞を軽減または除去することができる。一部の場合には、本明細書に記載される羊膜コーティングバルーン(例えば、羊膜コーティングバルーンを有するバルーンカテーテル)を狭窄血管内で膨張させて、狭窄血管から閉塞を軽減または除去することができる。例えば、本明細書に記載される血管形成術手法(例えば、ステントレス血管形成術手法)において、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンを用いて、1つまたは複数の狭窄血管を有するヒトを処置して、狭窄血管から閉塞を軽減または除去することができる。一部の場合には、本明細書において提供される方法は、血管における閉塞の大きさを約20体積%~約100体積%(例えば、約25%~約95%、約30%~約90%、約50%~約80%、約60%~約75%、約20%~約80%、約20%~約50%、約25%~約50%、約30%~約100%、約40%~約100%、約50%~約100%、または約75%~約100体積%)軽減させる工程を含む。例えば、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンを狭窄血管内で膨張させて、血管における閉塞を完全に除去する(例えば、100%軽減させる)ことができる。
【0036】
一部の場合には、本明細書において提供される方法および材料を用いて血管における血流を増加させ得る。一部の場合には、本明細書に記載される羊膜コーティングバルーン(例えば、羊膜コーティングバルーンを有するバルーンカテーテル)を狭窄血管内で膨張させて血管における血流を増加させることができる。例えば、本明細書に記載される血管形成術手法(例えば、ステントレス血管形成術手法)において、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンを用いて、1つまたは複数の狭窄血管を有するヒトを処置して、血管における血流を増加させることができる。一部の場合には、本明細書において提供される方法は、血管における血流を約20%~約100%(例えば、約25%~約95%、約30%~約90%、約50%~約80%、約60%~約75%、約20%~約80%、約20%~約50%、約25%~約50%、約30%~約100%、約40%~約100%、約50%~約100%、または約75%~約100%)増加させる工程を含み得る。一部の場合には、本明細書において提供される方法を用いて、動脈における血流を約50cm/sと約250cm/sの間(例えば、約55cm/sと約250cm/sの間、約60cm/sと約250cm/sの間、約75cm/sと約250cm/sの間、約100cm/sと約250cm/sの間、約50cm/sと約225cm/sの間、約50cm/sと約200cm/sの間、約50cm/sと約175cm/sの間、約50cm/sと約150cm/sの間、約65cm/sと約225cm/sの間、約75cm/sと約200cm/sの間、または約100cm/sと約150cm/sの間)まで増加させることができる。例えば、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンを狭窄動脈内で膨張させて、正常な血流を回復させることができる。
【0037】
一部の場合には、本明細書において提供される方法および材料を用いて、羊膜組織調製物を狭窄血管に送達することができる。一部の場合には、本明細書に記載される羊膜コーティングバルーン(例えば、羊膜コーティングバルーンを有するバルーンカテーテル)を狭窄血管内で膨張させて、狭窄血管から閉塞を軽減または除去することができる。例えば、本明細書に記載される羊膜コーティングバルーン(例えば、羊膜コーティングバルーンを有するバルーンカテーテル)を狭窄血管内で膨張させて、羊膜組織調製物を狭窄血管に送達することができる。一部の場合には、本明細書において提供される方法は、処置されている対象の体重1kgあたり約0.01mg~約10g(例えば、約0.01mg~約10g、約0.1mg~約10g、約1mg~約10g、約10mg~約10g、約100mg~約10g、約1g~約10g、約0.01mg~約5g、約0.01mg~約1g、約0.01mg~約100mg、約10mg~約5g、約100mg~約1g、または約1g~約5g)の羊膜組織から作製された羊膜組織調製物を哺乳動物(例えば、ヒト)に送達する工程を含み得る。
【0038】
(例えば、1つまたは複数の狭窄血管を有する哺乳動物(例えば、ヒト)を処置するために)本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンを用いるための方法は、心疾患(例えば、1つまたは複数の狭窄血管を伴う心疾患)を治療するために用いられる1つまたは複数のさらなる剤/治療法との併用療法として用いられ得る。例えば、狭窄血管を治療するために用いられる併用療法は、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンによる血管形成術と、ベータ遮断剤(例えば、メトプロロール、アテノロール、およびビソプロロール)、アンジオテンシンII受容体遮断剤(例えば、ロサルタン、バルサルタン、およびオルメサルタン)、スタチン(例えば、アトルバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン)、ならびに抗血栓剤(例えば、ヘパリンまたはワルファリンなどの抗凝固剤、およびアスピリンなどの抗血小板薬などの狭窄血管を治療するための1つまたは複数の剤を哺乳動物に投与することと、を含み得る。狭窄血管が石灰化(例えば、石灰化プラーク)を含む場合、本明細書において提供される方法は、石灰化を治療するための1つまたは複数の剤および/または治療法を含み得る。石灰化を治療するために使用できる剤の例はビタミンK(例えば、ビタミンK2)およびビタミンD(例えば、ビタミンKが正常であれば)を非限定的に含む。石灰化を治療するために使用できる治療法の例はアテローム切除術(例えば、眼窩、回転式、レーザー、または方向性アテローム切除術)を非限定的に含む。本明細書に記載される羊膜コーティングバルーンが、狭窄血管を治療するための1つまたは複数の剤/治療法と組み合わせて用いられる場合、狭窄血管を治療するための1つまたは複数の剤/治療法を同時にまたは独立して投与/実施することができる。例えば、本明細書において提供される羊膜コーティングバルーンによる血管形成術を最初に実施して、次に、狭窄血管を治療するための1つまたは複数の剤/治療法を投与することができ、またはその逆も可能である。
【0039】
添付の特許請求の範囲に記載の発明の範囲を限定しない以下の実施例において発明をさらに説明する。
【0040】
他の態様
発明をその詳細な説明と併せて記載したが、先の説明は添付の特許請求の範囲によって規定される発明の範囲を例示することを意図しており限定しないと解釈されたい。他の局面、利点、および変形例は、添付の特許請求の範囲に含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願の明細書に記載される発明。