(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138590
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】ヒートシンク
(51)【国際特許分類】
H01L 23/40 20060101AFI20230922BHJP
H01L 23/373 20060101ALI20230922BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H01L23/40 Z
H01L23/36 M
H05K7/20 B
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122467
(22)【出願日】2023-07-27
(62)【分割の表示】P 2021053452の分割
【原出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】八月朔日 猛
(72)【発明者】
【氏名】▲杉▼原 光太郎
(57)【要約】
【課題】優れた放熱性を備え、かつ、小型化、特に、厚さ方向に対する小型化が実現されたヒートシンクを提供すること。
【解決手段】本発明のヒートシンク1は、熱伝導性を有する複数の直状繊維21を備え、平面視形状が面状をなす放熱部2と、この放熱部2の一方の面側に形成された繊維固定層3とを有している。そして、直状繊維21は、その基端側を繊維固定層3の厚さ方向に沿って、繊維固定層3に埋入して固定された状態で、放熱部2において、先端側を繊維固定層3と反対側にして立設している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性を有する複数の直状繊維を備え、平面視形状が面状をなす放熱部と、該放熱部の一方の面側に形成された繊維固定層とを有し、
前記直状繊維は、その基端側を前記繊維固定層の厚さ方向に沿って、前記繊維固定層に埋入して固定された状態で、前記放熱部において、先端側を前記繊維固定層と反対側にして立設していることを特徴とするヒートシンク。
【請求項2】
前記直状繊維は、前記放熱部において、前記先端側の前記繊維固定層から突出している部分の長さが70μm以上7000μm以下である請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記直状繊維は、その太さが0.9μm以上20μm以下である請求項1または2に記載のヒートシンク。
【請求項4】
前記繊維固定層の平面視において、前記直状繊維が前記繊維固定層に埋入している領域の密度は、0.05cm2/cm2以上0.7cm2/cm2以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項5】
前記直状繊維は、その熱伝導率が0.2W/m・K以上900W/m・K以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項6】
前記直状繊維は、その熱放射率が0.7以上である請求項1ないし5のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項7】
前記直状繊維は、前記繊維固定層に、静電植毛されたものである請求項1ないし6のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項8】
前記繊維固定層は、前記直状繊維が埋入していない領域における平均厚さが5μm以上100μm以下である請求項1ないし7のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項9】
当該ヒートシンクは、さらに、前記繊維固定層の前記一方の面側に形成され、前記繊維固定層を支持する基材を有する請求項1ないし8のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項10】
前記基材は、その平均厚さが9μm以上200μm以下である請求項9に記載のヒートシンク。
【請求項11】
前記基材は、その熱伝導率が0.2W/m・K以上400W/m・K以下である請求項9または10に記載のヒートシンク。
【請求項12】
当該ヒートシンクは、さらに、前記基材の前記一方の面側に形成された接着層を有する請求項9ないし11のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を備えるパーソナルコンピューターや、各種センサー等の電子部品は、発熱量が大きいため、この発熱した熱を放熱することを目的に、従来、半導体装置に対応して、ヒートシンクが設けられている。
【0003】
このヒートシンクとして、通常、アルミニウム、アルミニウム合金、銅のような金属材料を主材料として構成され、複数の矩形状なすフィンを、矩形状をなす底部から立設させた、断面形状が櫛歯状をなしている構造を有するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、このような金属材料を主材料として構成されるヒートシンクにおいて、優れた放熱効率を実現させるには、厚さ方向(上下方向)に長尺なフィンを、所定の間隔で離間させて、底部に対して立設する必要が生じるため、その大型化、特に、厚さ方向に対する大型化を招くと言う問題があった。
【0005】
また、近年、半導体装置の小型化が求められ、これに伴い、半導体装置に設けられるヒートシンクにも小型化が求められるが、上記の通り、金属材料を主材料として構成されるヒートシンクは、その小型化に適さない。そのため、ヒートシンクを配置させるスペースを確保することができなかったり、仮に確保できたとしても、その確保のために新たなスペースを設ける必要が生じるため、ヒートシンクが形成された半導体装置を備える電子部品の全体としての見栄えが悪くなると言う問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、優れた放熱性を備え、かつ、小型化、特に、厚さ方向に対する小型化が実現されたヒートシンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)~(12)に記載の本発明により達成される。
(1) 熱伝導性を有する複数の直状繊維を備え、平面視形状が面状をなす放熱部と、該放熱部の一方の面側に形成された繊維固定層とを有し、
前記直状繊維は、その基端側を前記繊維固定層の厚さ方向に沿って、前記繊維固定層に埋入して固定された状態で、前記放熱部において、先端側を前記繊維固定層と反対側にして立設していることを特徴とするヒートシンク。
【0009】
(2) 前記直状繊維は、前記放熱部において、前記先端側の前記繊維固定層から突出している部分の長さが70μm以上7000μm以下である上記(1)に記載のヒートシンク。
【0010】
(3) 前記直状繊維は、その太さが0.9μm以上20μm以下である上記(1)または(2)に記載のヒートシンク。
【0011】
(4) 前記繊維固定層の平面視において、前記直状繊維が前記繊維固定層に埋入している領域の密度は、0.05cm2/cm2以上0.7cm2/cm2以下である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のヒートシンク。
【0012】
(5) 前記直状繊維は、その熱伝導率が0.2W/m・K以上900W/m・K以下である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のヒートシンク。
【0013】
(6) 前記直状繊維は、その熱放射率が0.7以上である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のヒートシンク。
【0014】
(7) 前記直状繊維は、前記繊維固定層に、静電植毛されたものである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のヒートシンク。
【0015】
(8) 前記繊維固定層は、前記直状繊維が埋入していない領域における平均厚さが5μm以上100μm以下である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のヒートシンク。
【0016】
(9) 当該ヒートシンクは、さらに、前記繊維固定層の前記一方の面側に形成され、前記繊維固定層を支持する基材を有する上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のヒートシンク。
【0017】
(10) 前記基材は、その平均厚さが9μm以上200μm以下である上記(9)に記載のヒートシンク。
【0018】
(11) 前記基材は、その熱伝導率が0.2W/m・K以上400W/m・K以下である上記(9)または(10)に記載のヒートシンク。
【0019】
(12) 当該ヒートシンクは、さらに、前記基材の前記一方の面側に形成された接着層を有する上記(9)ないし(11)のいずれかに記載のヒートシンク。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ヒートシンクを、優れた放熱性を備え、かつ、小型化、特に、厚さ方向に対する小型化(薄厚化)が図られたものとし得る。そのため、小型化がなされた半導体装置に対応して設けた際に、このヒートシンクを配置させるスペースを容易に確保することができ、ヒートシンクが設けられた半導体装置を備える電子部品の全体としての見栄えを、良好なものとし、さらには、軽量化が図られたものとし得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明のヒートシンクの第1実施形態を示す縦断面図である。
【
図2】
図1に示すヒートシンクを製造する製造方法を説明するための縦断面図である。
【
図3】本発明のヒートシンクの第2実施形態を示す縦断面図である。
【
図4】本発明のヒートシンクの第3実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のヒートシンクについて、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0023】
<ヒートシンク 第1実施形態>
図1は、本発明のヒートシンクの第1実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、
図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、使用する図面(
図1および以下で示す図を含む)は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0024】
ヒートシンク1は、本実施形態では、基材4と、この基材4の上面(一方の面)に積層された繊維固定層3と、この繊維固定層3の上面(基材4と反対側の面)に形成された放熱部2とを有している。そして、このヒートシンク1において、放熱部2は、熱伝導性を有する複数の直状繊維21を備え、直状繊維21は、その基端側を繊維固定層3の厚さ方向(上下方向)に沿って、繊維固定層3に埋入して固定された状態で、放熱部2において、先端側を繊維固定層3と反対側にして立設した構成をなしている。
【0025】
ヒートシンク1をかかる構成をなすものとすることで、ヒートシンク1を、小型化、特に、厚さ方向(上下方向)に対して小型化(薄厚化)が図られたものとし得る。そのため、小型化がなされた半導体装置に対応して、ヒートシンク1を設けた際に、このヒートシンク1を配置させるスペースを容易に確保することができる。したがって、ヒートシンク1が設けられた半導体装置を備える電子部品の全体としての見栄えを、良好なものとし、さらには、軽量化をもなし得る。
【0026】
以下、ヒートシンク1を構成する各部について説明する。
<<基材>>
基材4は、全体形状が平板状、すなわち、平面視形状が面状をなしており、この基材4側から繊維固定層3と放熱部2との順で設けられた、繊維固定層3および放熱部2を支持するものである。
【0027】
この基材4の主材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料や、ソーダガラス、石英ガラスのようなガラス材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
また、基材4は、上記のような主材料の他に、基材4の熱伝導率の向上を図ることを目的に、粒子状をなす熱伝導材を、さらに含むものであってもよい。この熱伝導材としては、特に限定されず、例えば、グラファイトのような炭素系材料、シリカ、アルミナ、窒化ケイ素のようなセラミックス系材料、アルミニウム、銅のような金属系材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組わせて用いることができる。
【0029】
基材4の熱伝導率は、特に限定されないが、0.2W/m・K以上400W/m・K以下程度であるのが好ましく、12W/m・K以上400W/m・K以下程度であるのがより好ましい。これにより、ヒートシンク1が設けられた半導体装置において発熱した熱を、基材4を介して、優れた熱伝導率で放熱部2側に伝導(伝達)することができる。
【0030】
基材4の平均厚さは、特に限定されないが、9μm以上200μm以下程度であるのが好ましく、12μm以上70μm以下程度であるのがより好ましい。これにより、ヒートシンク1の厚さ方向(上下方向)に対する大型化を招くのを的確に防止しつつ、繊維固定層3および放熱部2を確実に支持することができる。
【0031】
<<繊維固定層>>
繊維固定層3は、全体形状が層状をなし、平面視形状が基材4と同様に面状をなしており、直状繊維21の基端側を、その厚さ方向(上下方向)に沿って埋入させた状態で固定することで、直状繊維21を、繊維固定層3の上面側(一方の面側)で固定する機能を有するものである。
【0032】
この繊維固定層3は、後述する静電植毛方法を用いて、繊維固定層3に対して、直状繊維21の基端側を埋入させることで、繊維固定層3により直状繊維21を固定する場合、好ましくは、接着剤を主材料として含有する接着層で構成される。これにより、静電植毛方法を用いて、接着層で構成される繊維固定層3に対して、直状繊維21の基端側を埋入させた後に、接着層を固化または硬化させることで、繊維固定層3により直状繊維21を確実に固定することができる。
【0033】
この接着剤としては、例えば、シリコーン系、ウレタン樹脂系、エポキシ系、ポリオレフィン系、塩素化ポリオレフィン系、アクリル系、シアノアクリレート系、ゴム系、ポリエステル系、ポリイミド系、フェノール系等の接着剤が挙げられる。
【0034】
また、繊維固定層3は、上記のような主材料としての接着剤の他に、繊維固定層3の熱伝導率の向上を図ることを目的に、粒子状をなす熱伝導材を、さらに含むものであってもよい。この熱伝導材としては、基材4で挙げたのと同様のものを用いることができる。
【0035】
この繊維固定層3の熱伝導率は、特に限定されないが、0.2W/m・K以上400W/m・K以下程度であるのが好ましく、0.6W/m・K以上24W/m・K以下程度であるのがより好ましい。これにより、ヒートシンク1が設けられた半導体装置において発熱した熱を、繊維固定層3を介して、優れた熱伝導率で放熱部2側に伝導(伝達)することができる。
【0036】
繊維固定層3の平均厚さ、すなわち、直状繊維21が埋入していない領域における平均厚さは、特に限定されないが、5μm以上100μm以下程度であるのが好ましく、10μm以上70μm以下程度であるのがより好ましい。これにより、繊維固定層3により、直状繊維21を、放熱部2において、先端側を上側(繊維固定層3と反対側)にして確実に立設した状態で固定することができる。
【0037】
なお、上述した基材4および繊維固定層3には、それぞれ、例えば、可塑剤、粘着付与剤、増粘剤、充填剤、老化防止剤、防腐剤、防カビ剤、染料、顔料等の各種添加剤が必要に応じ添加されていてもよい。
【0038】
<<放熱部>>
放熱部2は、繊維固定層3を介して、基材4上に設けられており、半導体装置に対応してヒートシンク1を設けた際に、半導体装置において発熱した熱を、基材4および繊維固定層3を伝達させた後に、この放熱部2において、半導体装置およびヒートシンク1の外側、すなわち、外気に放熱する機能を有するものである。
【0039】
この放熱部2は、本発明では、熱伝導性を有する複数の直状繊維21を備え、平面視形状が面状をなしており、直状繊維21は、熱伝導性を有し、
図1に示すように、その基端側を繊維固定層3の厚さ方向(上下方向)に沿って、繊維固定層3に埋入して固定された状態で、放熱部2において、先端側を上側(繊維固定層3と反対側)にして、厚さ方向に立設した構成をなしている。
【0040】
放熱部2をかかる構成をなすものとすることで、ヒートシンク1の小型化、特に、厚さ方向に対する小型化を実現しつつ、半導体装置およびヒートシンク1の外側すなわち外気と、放熱部2(直状繊維21)との接触面積を、大きく設定することが可能となる。そのため、優れた放熱効率で、半導体装置において発熱した熱を、ヒートシンク1を介して放熱することができる。
【0041】
この直状繊維21としては、特に限定されず、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリアミド繊維(ナイロン6繊維、ナイロン66繊維、ナイロン46繊維、アラミド繊維等)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)繊維、ポリ-p-フェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等)、ポリイミド繊維のようなプラスチック繊維、炭素繊維、バサルト繊維のような無機繊維、綿、麻、羊毛のような天然繊維およびステンレス繊維のような金属繊維等の短繊維が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
このような直状繊維21は、その熱伝導率が0.2W/m・K以上900W/m・K以下であることが好ましく、10W/m・K以上700W/m・K以下であることが好ましい。また、その熱放射率が0.7以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。直状繊維21として、その熱伝導率および熱放射率が前記範囲内であるものを用いることにより、より優れた放熱効率で、半導体装置において発熱した熱を、ヒートシンク1(直状繊維21)を介して放熱することができる。
【0043】
また、直状繊維21は、その導電度が特に限定されるものではないが、絶縁性を重視する用途においては、電気抵抗率100kΩ・m以上であることが好ましい。これにより、ヒートシンク1を半導体装置に対応して設けた際に、放熱部2における絶縁性を確実に確保することができる。また、後述する静電植毛方法を用いて、直状繊維21で構成される放熱部2を確実に形成することができる。
【0044】
以上のような直状繊維21の熱伝導率、熱放射率および導電度を考慮すると、直状繊維21としては、カーボン繊維、アラミド繊維、ナイロン6繊維、ステンレス繊維およびPBO繊維等のうちの少なくとも1種が好ましく、絶縁性を確保する場合はPBO繊維等が好ましく用いられる。
【0045】
この直状繊維21は、放熱部2において、その先端側の繊維固定層3から突出している部分の長さが70μm以上7000μm以下であることが好ましく、150μm以上5000μm以下であることがより好ましい。
【0046】
また直状繊維21は、その太さが0.9μm以上20μm以下であることが好ましく、4μm以上20μm以下であることがより好ましい。
【0047】
さらに、直状繊維21は、前記繊維固定層3から突出している部分の長さをL[μm]とし、前記太さをT[μm]としたとき、アスペクト比(L/T)は、10以上400以下であることが好ましく、20以上100以下であることがより好ましい。
【0048】
また、直状繊維21は、繊維固定層3の平面視において、直状繊維21が繊維固定層3に埋入している領域の密度が0.05cm2/cm2以上0.7cm2/cm2以下であるのが好ましく、0.1cm2/cm2以上0.5cm2/cm2以下であるのがより好ましい。
【0049】
直状繊維21の前記長さL、前記太さT、アスペクト比(L/T)および前記密度を、それぞれ、前記範囲内に設定することで、放熱部2ひいてはヒートシンク1の厚さ方向に対する小型化を確実に実現しつつ、より優れた放熱効率で、半導体装置において発熱した熱を、ヒートシンク1を介して放熱することができる。
【0050】
このような直状繊維21は、繊維固定層3に、静電植毛されたものであることが好ましい。静電植毛によれば、以上のような構成をなしている直状繊維21を、比較的容易に形成することができる。そこで、以下では、放熱部2を備えるヒートシンク1の製造方法として、静電植毛を用いて、直状繊維21で構成される放熱部2を形成して、放熱部2を備えるヒートシンク1を製造する場合を一例として説明する。
【0051】
(ヒートシンク1の製造方法)
図2は、
図1に示すヒートシンクを製造する製造方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、
図2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0052】
以下では、まず、ヒートシンク1の製造方法を説明するのに先立って、ヒートシンク1の製造方法に用いられるヒートシンク製造装置について説明する。
【0053】
図2に示すヒートシンク製造装置100は、電極板110と、対向電極板120と、直流電圧発生器130と、を有している。
【0054】
電極板110は、電圧印加手段としての直流電圧発生器130により、負の電荷に帯電するものである。
【0055】
この電極板110には、対向電極板120側の面(下面)に、保持具115が設けられており、保持具115に、繊維固定層3が形成された基材4を、繊維固定層3を対向電極板120側として、保持(載置)し得るように構成されている。
【0056】
対向電極板120は、電圧印加手段としての直流電圧発生器130により、正の電荷に帯電するものであり、電極板110に対向して配置されている。
【0057】
この対向電極板120には、電極板110側の面(上面)に、放熱部2を形成するための直状繊維21を、載置し得るように構成されている。
なお、電極板110と対向電極板120との正と負とは、逆であってもよい。
【0058】
直流電圧発生器130は、電極板110および対向電極板120に電圧を印加するための電圧印加手段であり、電極板110側が負の電極、対向電極板120側が正の電極となるように、配線を介して電気的に接続されている。
【0059】
以上のようなヒートシンク製造装置100を用いたヒートシンクの製造方法により、ヒートシンク1が製造される。
【0060】
ヒートシンクの製造方法は、固化前または硬化前の繊維固定層3を備える基材4を保持具115に保持するとともに、直状繊維21を対向電極板120に載置する準備工程と、直流電圧発生器130の作動により、電極板110を負の電荷に帯電させ、対向電極板120を正の電荷に帯電させて、直状繊維21を対向電極板120から電極板110に飛翔させることで、直状繊維21を繊維固定層3に植毛させる植毛工程と、直状繊維21が植毛された繊維固定層3を、固化または硬化させることで、繊維固定層3に直状繊維21を固定する固定工程とを有している。
【0061】
以下、ヒートシンク1を製造するための各工程について詳述する。
[A]まず、固化前または硬化前の繊維固定層3を備える基材4を保持具115に保持するとともに、直状繊維21を対向電極板120に載置する(準備工程)。
【0062】
この準備工程では、まず、固化前または硬化前の繊維固定層3(接着層)を備える基材4を用意し、その後、この基材4を、繊維固定層3が対向電極板120側となるように、保持具115に保持する。また、直状繊維21を対向電極板120に載置する。
【0063】
これにより、
図2(a)に示すように、電極板110と対向電極板120との間において、空間を介して、固化前または硬化前の繊維固定層3と、直状繊維21とが対向配置される。
【0064】
[B]次に、直流電圧発生器130の作動により、電極板110を負の電荷に帯電させ、対向電極板120を正の電荷に帯電させて、直状繊維21を対向電極板120から電極板110に飛翔させることで、直状繊維21を繊維固定層3に植毛させる(植毛工程)。
【0065】
この植毛工程は、直流電圧発生器130の作動により、電極板110と対向電極板120との間に電圧を印加して、電極板110を負の電荷に帯電させ、対向電極板120を正の電荷に帯電させて、電極板110と対向電極板120との間に静電界を発生させることにより実施される。
【0066】
この際、対向電極板120に載置された直状繊維21は、対向電極板120が正の電荷に帯電することに起因して、正の電荷に帯電する。この直状繊維21の正の電荷の帯電により、電極板110が負の電荷に帯電しているため、直状繊維21は、電極板110に向かって静電界内を飛翔する。
【0067】
このとき、直状繊維21は、長尺状をなすが、電極板110と対向電極板120との間の空間(静電界)内を、基端側を電極板110側、先端側を対向電極板120側として、上下方向に沿って、飛翔する。
【0068】
そして、電極板110側の保持具115には、固化前または硬化前の繊維固定層3を備える基材4が、繊維固定層3を対向電極板120側として保持されている。そのため、
図2(b)に示すように、対向電極板120側から飛翔してきた直状繊維21が、その基端側の一部を繊維固定層3に突き刺す(埋入させる)ようにして、繊維固定層3の基材4と反対側の面に固定(植毛)される。
【0069】
この直状繊維21の対向電極板120から電極板110に向かった飛翔を、繊維固定層3に対する直状繊維21の植毛密度が予め設定されている密度に到達するまで実施し、その後、直流電圧発生器130の作動を停止する(
図2(c)参照)。
【0070】
[C]次に、直状繊維21が植毛された繊維固定層3を、固化または硬化させることで、繊維固定層3に直状繊維21を固定する(固定工程)。
【0071】
これにより、固化前または硬化前の繊維固定層3が固化または硬化するため、直状繊維21は、その基端側を繊維固定層3の厚さ方向(上下方向)に沿って、繊維固定層3に埋入した状態で固定される。その結果、繊維固定層3の基材4と反対側には、
図2(c)に示すように、直状繊維21の先端側を下側(繊維固定層3と反対側)にして、上下方向に直状繊維21が立設した構成をなしている放熱部2が形成される。
【0072】
この固定工程は、繊維固定層3が、固化型または熱硬化型の接着剤を含む接着層で構成されている場合には、繊維固定層3を加熱することにより実施される。また、繊維固定層3が、光硬化型の接着剤を含む接着層で構成されている場合には、繊維固定層3に光を照射することにより実施される。これら繊維固定層3の固化または硬化により、直状繊維21の基端側を繊維固定層3の厚さ方向(上下方向)に沿って、繊維固定層3に埋入させた状態で、繊維固定層3により直状繊維21が固定される。
以上のような工程を経ることで、ヒートシンク1が製造される。
【0073】
<第2実施形態>
次に、本発明のヒートシンクの第2実施形態について説明する。
図3は、本発明のヒートシンクの第2実施形態を示す縦断面図である。
【0074】
以下、第2実施形態のヒートシンク1について、前記第1実施形態のヒートシンク1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0075】
図3に示すヒートシンク1は、ヒートシンク1が備える層構成が異なる以外は、
図1に示すヒートシンク1と同様である。
【0076】
すなわち、第2実施形態のヒートシンク1は、基材4の下面(繊維固定層3と反対側の面)に接着層5を有している。
【0077】
ヒートシンク1は、通常、接着層を介して、半導体装置に対して接着されるが、本実施形態では、予め、基材4に接着層5が設けられている。そのため、半導体装置に対応して、ヒートシンクを設ける際に、半導体装置とヒートシンクとの間に、接着剤を塗布する工程の簡略化を図ることができる。
【0078】
この接着層5を構成する接着剤としては、繊維固定層3を接着層で構成する場合に挙げたのと、同様のものを用いることができる。
【0079】
このような第2実施形態のヒートシンク1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のヒートシンク1と同様である。
【0080】
<第3実施形態>
次に、本発明のヒートシンクの第3実施形態について説明する。
図4は、本発明のヒートシンクの第3実施形態を示す縦断面図である。
【0081】
以下、第3実施形態のヒートシンク1について、前記第1実施形態のヒートシンク1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0082】
図4に示すヒートシンク1は、ヒートシンク1が備える層構成が異なる以外は、
図1に示すヒートシンク1と同様である。
すなわち、第3実施形態のヒートシンク1は、基材4の形成が省略されている。
【0083】
ヒートシンク1を、基材4の形成が省略されたものとすることで、半導体装置側(繊維固定層3の放熱部2と反対側)から放熱部2への熱伝導率の向上を図ることができる。
【0084】
なお、本実施形態のように、基材4の形成が省略されているヒートシンク1とする場合、繊維固定層3としては、優れた強度および靭性を有するものが選択される。
【0085】
このような第3実施形態のヒートシンク1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のヒートシンク1と同様である。
【0086】
以上、本発明のヒートシンクについて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0087】
例えば、本発明のヒートシンクにおいて、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
【実施例0088】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0089】
1.原材料の準備
まず、実施例のヒートシンク1の製造に用いた原材料を以下に示す。
【0090】
(基材4)
基材4として、平均厚さ70μmの銅箔を用意した。
【0091】
(直状繊維21)
直状繊維21として、平均長さ250μm、太さ10μmのカーボン繊維(NGF社製、「XN-100」)を用意した。
【0092】
(接着剤1)
接着剤1として、アクリル変性シリコーン接着剤(セメダイン社製、「スーパーX AX-038」)を用意した。
【0093】
2.ヒートシンクの製造
[実施例1]
[1]まず、銅箔で構成される基材4上に、接着剤1を塗布することで、未硬化の繊維固定層3(接着層)を厚さ50μmで形成した後に、この繊維固定層3が形成された基材4を、ヒートシンク製造装置100が備える保持具115に保持させた。
【0094】
また、カーボン繊維で構成される直状繊維21を、ヒートシンク製造装置100が備える対向電極板120に載置した。
【0095】
[2]次いで、ヒートシンク製造装置100が備える直流電圧発生器130の作動により、電極板110を負の電荷に帯電させ、対向電極板120を正の電荷に帯電させた。
【0096】
これにより、正の電荷に帯電した直状繊維21を対向電極板120から電極板110に飛翔させることで、直状繊維21の基端側の一部を繊維固定層3に埋入させるようにして、繊維固定層3の基材4と反対側の面に直状繊維21を植毛させた。
【0097】
[3]次いで、直状繊維21が固定された繊維固定層3を、加熱して硬化させることにより、繊維固定層3に直状繊維21を固定した。これにより、繊維固定層3の基材4と反対側の面に、先端側を繊維固定層3と反対側にして立設している直状繊維21を備える放熱部2を形成した。
【0098】
[4]次いで、基材4を、平面視で、縦14mm×横14mmの大きさに裁断することで、基材4が銅箔で構成され、直状繊維21がカーボン繊維で構成された実施例1のヒートシンク1を得た。
【0099】
[比較例1]
平面視形状が縦14mm×横14mmの底部を備え、幅0.68mm×高さ6mmのフィンを7つ備えるアルミヒートシンクを、比較例1のヒートシンクとして用意した。
【0100】
[比較例2]
平面視形状が縦14mm×横14mm×厚さ70μmの銅箔を、比較例2のヒートシンクとして用意した。
【0101】
3.評価
実施例および各比較例のヒートシンクを、以下の方法で評価した。
【0102】
<放熱試験>
実施例および各比較例のヒートシンクを、それぞれ、平面視形状が、ほぼ縦14mm×横14mmの大きさを有するセラミックヒーターに対応して設置した。
【0103】
次いで、実施例および各比較例のヒートシンクが設置されたセラミックヒーターについて、それぞれ、その設定温度を125℃に設定した。そして、セラミックヒーターに対する通電の後、3分後において、実施例および各比較例のヒートシンクが設置されたセラミックヒーターの表面温度を測定した。
【0104】
その結果、実施例1(直状繊維21:カーボン繊維)、比較例1(アルミヒートシンク)および比較例2(銅箔)では、それぞれ、セラミックヒーターの表面温度が、110℃、110℃および125℃であった。
【0105】
以上のように、実施例1のヒートシンク1では、ヒートシンクの小型化、特に、厚さ方向に対する小型化を図りつつ、アルミヒートシンクと同等の優れた放熱性を示す結果が得られた。