(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013861
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】電子天びん
(51)【国際特許分類】
G01G 21/30 20060101AFI20230119BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20230119BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
G01G21/30
H05K5/02 L
H05K5/03 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118318
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 淳史
(72)【発明者】
【氏名】河合 正幸
【テーマコード(参考)】
4E360
【Fターム(参考)】
4E360AB02
4E360AB62
4E360BA06
4E360BB04
4E360BB23
4E360BB30
4E360BC16
4E360CA01
4E360EA12
4E360EA16
4E360ED02
4E360ED03
4E360GA28
4E360GA47
4E360GB99
4E360GC02
4E360GC08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】扉の開閉機構が備えるモータを容易に交換することができる電子天びんを提供する。
【解決手段】電子天びんのモータユニット16は、モータ161と、モータ161の回転軸に接続された駆動具162と、モータ161の本体に関して固定された係合部1641、1642とを有し、駆動具162が駆動具孔から後部筐体の外に突出するように、且つ、係合部1641、1642が係合部対応孔に対応する位置となるように後部筐体内に配置される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部筐体と、該下部筐体の上面に設けられた計量皿とを備える天びん本体と、
前記計量皿の周囲の空間を覆う前面板、左側面板、右側面板及び上面板を有し、該左側面板、該右側面板又は該上面板に、前後方向に移動可能な扉を有する風防と、
前記空間の後方に配置された、後部前板、前記左側面板に連接される後部左側板、前記右側面板に連接される後部右側板及び前記上面板に連接される後部上板を有する筐体であって、前記空間の後方を該後部前板で覆い、前記扉が設けられた左側面板、右側面板又は上面板に対応する後部左側板、後部右側板又は後部上板に駆動具孔及び係合部対応孔が形成されている後部筐体と、
モータと、該モータの回転軸に接続された駆動具と、該モータの本体に関して固定された係合部とを有するユニットであって、該駆動具が前記駆動具孔から前記後部筐体の外に突出するように、且つ、該係合部が前記係合部対応孔に対応する位置となるように該後部筐体内に配置されるモータユニットと、
前記扉に固定され、前記駆動具により前後方向に駆動される被駆動具と
を備える電子天びん。
【請求項2】
前記モータユニットがさらに前記モータの本体を保持する保持具を有し、
前記係合部が前記保持具に設けられており、
前記後部筐体の内面に、前記係合部と前記係合部対応孔の位置を合わせたときに前記保持具が当接する当接部が設けられている、
請求項1に記載の電子天びん。
【請求項3】
前記モータユニットがさらに前記駆動具の回転位置を検出する回転位置センサを備える、請求項1又は2に記載の電子天びん。
【請求項4】
前記モータユニットがさらに前記被駆動具の位置を検出する位置センサを備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の電子天びん。
【請求項5】
前記後部筐体の一部は、該後部筐体の他の部分よりも前記モータの回転による振動が生じ難い制振部材から成り、
前記係合部対応孔が前記制振部材に設けられている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の電子天びん。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子天びんに関する。
【背景技術】
【0002】
実験室等では、粉体等の被測定物の質量(重量)を測定するために電子天びんが使用されている。このような電子天びんは、測定環境における対流等の影響を防止するため、計量皿を囲む風防を備える。この風防には、開閉可能な扉が設けられている。このような電子天びんを使用する際には、使用者は、まず扉を開放し、電子天びんの計量皿の載置面に被測定物を載置し、扉を閉鎖する。そして、表示部に表示された被測定物の重量値を確認した後、風防の扉を開放し、被測定物を取り出す。
【0003】
従来の電子天びんには使用者が手で風防の扉を開閉するものもあるが、特許文献1及び非特許文献1に記載の電子天びんは、扉を自動で開閉する扉開閉機構を備える。扉開閉機構は一般に、モータと、モータの回転軸に歯車等を介して接続されたピニオンギアと、扉に固定された、ピニオンギアに噛み合うラックギアを有する。使用者が操作ボタンを押下したり、扉に取り付けられた取手に触れる(それをセンサが検知する)等、所定の操作が実行されたとき、モータが動作してピニオンギアが回転し、それによってラックギアが直線移動することにより、扉が開放又は閉鎖される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「エクスプローラーシリーズ セミミクロ天びん」, オーハウスコーポレーション, [2021年6月4日検索], インターネット<URL: https://japan.ohaus.com/ja-JP/ExplorerSemi-MicroBalances-18>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような自動扉を備える電子天びんを長期間使用していると、モータが故障することがある。モータが故障して扉を自動で開閉することができなくなることはユーザにとって不都合であり、修理の緊急性は高い。しかし、電子天びんそのものを工場等に輸送してモータの修理や交換を行うと、修理・交換が完了するまでに時間を要する。そのうえ、輸送時に振動が加わることで電子天びんの秤量機構の品質が低下するおそれがある。
【0007】
一方、電子天びんが使用されている場所に新品のモータを輸送して、ユーザや該ユーザに電子天びんを販売した販売店(代理店)の担当者等がモータの交換作業を行えば、完了までの時間を短縮することができるうえに、電子天びんそのものを輸送する必要がなくなる。しかしながら、モータやピニオンギアは電子天びんの筐体内に収容され、該筐体内には他の機器も収容されている。そのような筐体内で、モータの取り外し及び装着を行ったうえで、モータとピニオンギアとを接続する作業を行うことは、ユーザにとっては容易ではない。また、開発途上国にある代理店では、担当者に十分な教育を施すことができず、複雑な交換作業を担わせることは難しい。そのため、そのような担当者であっても容易に修理できることが求められる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、自動扉を備える電子天びんにおいて、扉の開閉機構が備えるモータを容易に交換することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係る電子天びんは、
下部筐体と、該下部筐体の上面に設けられた計量皿とを備える天びん本体と、
前記計量皿の周囲の空間を覆う前面板、左側面板、右側面板及び上面板を有し、該左側面板、該右側面板又は該上面板に、前後方向に移動可能な扉を有する風防と、
前記空間の後方に配置された、後部前板、前記左側面板に連接される後部左側板、前記右側面板に連接される後部右側板及び前記上面板に連接される後部上板を有する筐体であって、前記空間の後方を該後部前板で覆い、前記扉が設けられた左側面板、右側面板又は上面板に対応する後部左側板、後部右側板又は後部上板に駆動具孔及び係合部対応孔が形成されている後部筐体と、
モータと、該モータの回転軸に接続された駆動具と、該モータの本体に関して固定された係合部とを有するユニットであって、該駆動具が前記駆動具孔から前記後部筐体の外に突出するように、且つ、該係合部が前記係合部対応孔に対応する位置となるように該後部筐体内に配置されるモータユニットと、
前記扉に固定され、前記駆動具により前後方向に駆動される被駆動具と
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電子天びんでは、モータと駆動具(例えばピニオンギア)が一体となったモータユニットを電子天びんの後部筐体に装着している。モータが故障したときには、古いモータを古い駆動具と共にモータユニットごと後部筐体から取り外し、新しいモータと新しい駆動具が一体となった新しいモータユニットごと後部筐体に装着することにより、容易にモータの交換を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る電子天びんの一実施形態の外観を示す斜視図。
【
図2】本実施形態の電子天びんから左側扉、右側扉及び上扉を取り外した状態を示す斜視図。
【
図3】本実施形態の電子天びんから取り外した左側扉、右側扉及び上扉を示す斜視図。
【
図4】後部筐体から後部後板を取り外した状態を示す斜視図。
【
図5】
図2において一点鎖線で囲んだ部分を拡大した斜視図。
【
図6】本実施形態の電子天びんが有するモータユニットを示す斜視図。
【
図7】モータユニットを
図6とは異なる角度から示した斜視図。
【
図8】後部筐体にモータユニットを取り付けた状態を示す斜視図。
【
図9】モータユニットが有する保持具の第2板材と後部筐体が有する後部前板及び後部上板の位置関係を示す縦断面図。
【
図10】側部帯状材の縦断面図(a)及び側面図(b)。
【
図11】モータユニットを電子天びんから取り外す途中、及び電子天びんに取り付ける途中の状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1~
図11を用いて、本発明に係る電子天びんの実施形態を説明する。
【0013】
(1) 本実施形態の電子天びんの構成
本実施形態の電子天びん1は、
図1及び
図2に示すように、天びん本体11と、風防12と、後部筐体13、操作卓14とを備える。ここで
図2は、
図1の状態から、後述の左側扉121、右側扉122及び上扉123を取り外した状態を示している。
【0014】
天びん本体11は、下部筐体111と、下部筐体111の上面に設けられた計量皿112(
図2参照)を有する。下部筐体111内には、秤量機構が設けられている。本実施形態の電子天びん1における秤量機構は従来のものと同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0015】
下部筐体111の上面のうち計量皿112の周囲の空間113の前左端及び前右端にはそれぞれ、左フロントピラー1151及び右フロントピラー1152が立設されている。また、左フロントピラー1151の上端と右フロントピラー1152の上端を結ぶように前枠116が渡されている。さらに、前枠116の左右両端からそれぞれ(次に述べる)後部筐体13に向かって、左側枠1171及び右側枠1172が渡されている。これら前枠116、左側枠1171及び右側枠1172は後部筐体13の後部上板133と一体成形されている(
図2参照)。前枠116、左側枠1171、右側枠1172及び後部上板133の材料には、樹脂やダイキャストを用いることができる。
【0016】
風防12は、計量皿112の周囲の空間113を覆う前面板120、左側扉121、右側扉122及び上扉123を有する。ここで「左」及び「右」はそれぞれ、前面板120側から前記空間113及び計量皿112を見たときの「左」及び「右」をいう。前面板120、左側扉121、右側扉122及び上扉123はいずれも透明な板材(例えばアクリル板)から成る。前面板120は、下部筐体111の上面と前枠116で上下を挟むようにして固定されている。なお、左フロントピラー1151は左側扉121を閉鎖した状態で前面板120と左側扉121の隙間を埋めるために設けられ、右フロントピラー1152は右側扉122を閉鎖した状態で前面板120と右側扉122の隙間を埋めるために設けられている。これら左フロントピラー1151及び右フロントピラー1152は、前面板120の固定や風防12の強度の維持には用いられていない。
【0017】
左側扉121は下部筐体111の上面左端及び左側枠1171の下面に設けられた案内溝に沿って、右側扉122は下部筐体111の上面右端及び右側枠1172の下面に設けられた案内溝に沿って、上扉123は左側枠1171の右側面及び右側枠1172の左側面に設けられた案内溝に沿って、それぞれ前後方向に移動可能である(
図2に、下部筐体111の上面右端に設けられた案内溝114を示し、その他の案内溝は図示を省略する)。空間113は、左側扉121、右側扉122又は上扉123が後方に移動することにより開放される。なお、本実施形態では、前記左側面板の全体が左側扉121により、前記右側面板の全体が右側扉122により、前記上面板の全体が上扉123により、それぞれ構成されている。
【0018】
左側扉121、右側扉122及び上扉123にはそれぞれ、前記空間113の外側に取っ手124が設けられていると共に、取っ手124の裏側(前記空間113の内側)にストッパ125(
図3参照)が設けられている。ストッパ125には雄ネジが設けられており、各扉に設けられた孔を通して取っ手124に設けられた雌ネジに該雄ネジが螺合している。ストッパ125は、各扉を後方に移動させたときに後部筐体13に当接することにより、各扉がそれ以上開放されない(扉が外れない)ようにする役割を有する。後述のモータユニット16の交換を行う際等には、ストッパ125を扉から取り外したうえで、該扉を後方に移動させることにより、扉を電子天びん1から取り外すことができる。
【0019】
後部筐体13は前記空間113の後方に配置された、後部前板130、後部左側板131、後部右側板132、後部上板133、及び後部後板134を有する直方体状の筐体である。後部前板130は前記空間113の後方を覆う役割を有している。後部前板130には、前記空間113内に生じる静電気を除去する除電器15が取り付けられている。後部後板134は後部筐体13の他の板から着脱可能である。
図4に、後部筐体13の他の板から後部後板134を取り外した状態を示す。後部筐体13内には、除電器15の一部、後述のモータユニット16、電源ユニット等の機器が収容されている。なお、
図4にはモータユニット16が2個示されているが、実際にはさらに後部左側板131の裏側にモータユニット16が1個存在(従って、モータユニット16は合計3個存在)する。
【0020】
後部左側板131及び後部右側板132はそれぞれ、金属(アルミダイキャスト)製の金属板部1321と、金属板部1321の上端にネジ1323で固定された樹脂製の制振部材1322とを備える(
図2に一点鎖線で囲んだ部分を拡大した
図5を参照。
図5では後部右側板132に設けた金属板部1321等を示す。)。後部上板133では、左右が金属(アルミ合金、あるいはアルミダイキャストダイキャスト)製の金属板部1331であって、中央に樹脂製の制振部材1332が設けられている(
図2)。
【0021】
このように後部左側板131及び後部右側板132のうちの下寄りの部分に金属板(金属板部1321)を用いる理由は、後部筐体13の剛性を確保すること、及び駆動系で発生した静電気を逃がすことにある。この金属板は比較的薄いため、仮にその上端付近にモータ161(後述)を直接取りつけると、モータ161の振動が金属板に伝わって騒音が発生するおそれがある。
【0022】
制振部材1322、1332は金属板部1321、1331よりも厚いが、樹脂の質量密度が金属(アルミダイキャスト)の質量密度よりも低いため、制振部材1322、1332の厚さを厚くすることによる重量の増加は抑えられている。このように厚い樹脂製の制振部材1322、1332は、金属板部1321、1331よりも、モータ161で発生する振動を伝導し難い。
【0023】
制振部材1322は、1個の駆動具孔171と、駆動具孔171を挟んで前後方向に並ぶ第1係合部対応孔1721及び第2係合部対応孔1722と、それら3個の孔よりも後ろ寄りに設けられた1個のセンサ孔173とを備えている(
図5)。後部右側板132及び後部上板133の制振部材にも同様の1個の駆動具孔、2個の係合部対応孔及び1個のセンサ孔が設けられている。
【0024】
モータユニット16は、後部左側板131、後部右側板132及び後部上板133にそれぞれ1個ずつ取り付けられている。モータユニット16は、
図6及び
図7に示すように、モータ161と、駆動具162と、保持具163と、保持具163に設けられた第1係合部1641及び第2係合部1642と、回転位置センサ165と、位置センサ166を備える。
【0025】
保持具163は第1板材1631と第2板材1632の間に3本の柱材1633(
図6では2本のみ示す)を設け、それら第1板材1631と第2板材1632を互いに離間して平行に配置したものである。第1係合部1641及び第2係合部1642は第2板材1632に設けられた孔の内面に雌ネジを切ったものである。
【0026】
前記第1係合部対応孔1721は縦長の長孔であって、幅は第1係合部1641の孔の径に略等しく、長さは第1係合部1641の孔の径よりも長い。前記第2係合部対応孔1722は、第2係合部1642の孔よりも径が大きい円形の孔である。
【0027】
モータ161はその本体が第1板材1631に固定されている。駆動具162は、本実施形態ではピニオンギアであり、その回転軸が第2板材1632に設けられた孔に回転可能に保持されている。モータ161の回転軸と駆動具162の回転軸は、ベルト1612(
図7参照)を介して接続されている。ベルト1612は第1板材1631と第2板材1632の間に配置されている。
【0028】
回転位置センサ165及び位置センサ166は第2板材1632に固定されている。回転位置センサ165は駆動具162の回転位置を検出するセンサである。位置センサ166は後述の被駆動具(ラックギア)181の位置を検出するセンサである。
【0029】
モータ161、回転位置センサ165及び位置センサ166には、先端にモータユニット側コネクタが設けられたモータユニット側電源ケーブル(図示せず)が接続されている。後部筐体13で電源ユニットから延びる電源ケーブルの先端に設けられた電源側コネクタにモータユニット側コネクタを接続することにより、これらモータ161、回転位置センサ165及び位置センサ166に電力を供給する回路が形成される。
【0030】
モータユニット16は、駆動具162のギアを駆動具孔171から後部筐体13の外に突出させると共に位置センサ166をセンサ孔173から後部筐体13の外に突出させた状態で、後部左側板131の第1係合部対応孔1721第2板材1632の第1係合部1641、及び後部左側板131の第2係合部対応孔1722と第2板材1632の第2係合部1642の位置をそれぞれ合わせ、第1係合部対応孔1721及び第2係合部対応孔1722にそれぞれ挿通した雄ネジ1741、1742を第1係合部1641、第2係合部1642の雌ネジと螺合させることにより、後部左側板131、後部右側板132又は後部上板133に固定されている(
図8に、モータユニット16が後部右側板132に固定されている状態を示す)。
【0031】
このようにモータユニット16が固定されている状態で、第1板材1631及び第2板材1632は板面が上下方向に略平行に向いており、第1板材1631及び第2板材1632の上側端部1635は後部筐体13の後部上板133に当接している(
図9に第2板材1632と後部前板130及び後部上板133の位置関係を示す)。そのため、モータユニット16を後部左側板131に取り付ける際に、第1係合部対応孔1721に挿入した雄ネジ1741を第1係合部1641に仮留めした状態で第1係合部対応孔1721の長孔に沿って案内させながら第2板材1632を上方に移動させ、上側端部1635を後部上板133に当接させることにより、第1係合部対応孔1721と第1係合部1641、及び第2係合部対応孔1722と第2係合部1642の
図9における上下方向の位置を合わせ易くなっている。これに伴い、位置センサ166とセンサ孔173の位置合わせも容易に行うことができる。
【0032】
後部右側板132にはモータユニット16が、後部左側板131に取り付けられているものと左右対称となるように取り付けられている。後部上板133にはモータユニット16が、後部左側板131に取り付けられているものに対して90°回動して駆動具162が上側に配置されるように取り付けられている。
【0033】
左側扉121及び右側扉122の上端にはそれぞれ、前後方向に延びる側部帯状材181(
図1、
図10)が取り付けられている。側部帯状材181のうち後部筐体13側の面には被駆動具1811(
図10)が設けられている。本実施形態では、被駆動具1811は、駆動具(ピニオンギア)162と噛み合うラックギアである。側部帯状材181の上部には、左側枠1171及び右側枠1172の下面に設けられた案内溝に嵌められる突起1812(
図10)が設けられている。
【0034】
上扉123の下面には、前後方向に延びる上部帯状材182(
図1)が取り付けられている。上部帯状材182の下面には、駆動具(ピニオンギア)162と噛み合う被駆動具(ラックギア、図示省略)が設けられている。後部筐体13の後部上板133に設けられた制振部材1332の上面には、前後方向に延びる凹部1333が形成されている。上扉123を前後方向に移動させる際には、上部帯状材182は凹部1333内を前後方向に移動する。
【0035】
操作卓14は天びん本体11の前方に設けられており、表示部141及び操作部142を有する。表示部141には、秤量された試料の重量や各種の操作メニュー等が表示される。操作部142は複数のボタンを有している。そのようなボタンとして、電源のON/OFFボタン、重量の数値を0にリセットするリセットボタン(計量皿112に風袋を載置した状態でリセットボタンを押下することで重量の数値を0にリセットしたうえで、風袋の上に試料を載置することにより、風袋の重量が差し引かれた試料のみの重量の値が得られる)、表示部141に表示する数値の桁数を変更するボタン、印刷ボタン(電子天びん1が印刷機に接続されている状態で該印刷ボタンを押下することにより、重量の値等が印刷される)、各種メニューを表示・切り替えするボタン等がある。
【0036】
また、操作卓14には、左側扉121、右側扉122及び上扉123の開閉を指示する開閉ボタン143が設けられている。これらの扉が閉鎖されている状態で開閉ボタン143を押下すると扉が開放され、これらの扉が開放されている状態で開閉ボタン143を押下すると扉が閉鎖される。本実施形態では、開閉ボタン143は操作卓14の中央よりも左側に1個、右側に1個、合計2個設けられている。これら2つの開閉ボタン143のいずれを押下した場合にも、左側扉121、右側扉122及び上扉123の3つの扉が同時に開放又は閉鎖される。従って、使用者は、2つの開閉ボタン143のいずれかを、空いている方の手で操作すればよい。なお、扉毎に開閉ボタンを設けることで3つの扉を個別に開閉を行うようにしてもよい。
【0037】
本実施形態では、左側扉121、右側扉122及び上扉123は開閉ボタン143の操作により自動で開閉してもよいし、手動で開閉してもよい。これらの扉を使用者が手動で開放したときには、電子天びん1の制御部(図示せず)は、回転位置センサ165及び位置センサ166を用いて開放時の扉の位置を検出し、記憶部(図示せず)が該位置を記憶する。その後、開閉ボタン143の操作によって扉を自動で開放する際には、制御部は、記憶部に記憶された開放時の扉の位置の情報を読み出して、該位置まで扉が移動するようにモータ161を制御する。
【0038】
(2) 本実施形態の電子天びんにおけるモータ故障時の対処
本実施形態の電子天びん1を使用している際にモータ161が故障すると、開閉ボタン143の操作によって扉(左側扉121、右側扉122、上扉123)を自動で開閉することができなくなる。その場合には、以下のように、モータユニット16を交換する作業を行う。この作業は、電子天びん1が使用されている場所で行うことができ、電子天びん1を修理工場に搬送する必要はない。
【0039】
まず、後部筐体13の後部後板134を取り外す(
図4参照)と共に、故障により自動で開閉しなくなった扉(左側扉121、右側扉122、上扉123のいずれか)を取り外す。後部後板134は、後部筐体13の他の板にネジ止めされており、そのネジを取り外すことによって後部後板134を取り外すことができる。扉は、ストッパ125を取り外したうえで後方に引くことにより取り外すことができる。
【0040】
上記のように後部後板134を取り外したことにより、作業者が後部筐体13の後部から後部筐体13内に手を入れて作業を行うことができるようになる。この状態で、交換対象のモータユニット16に接続されたモータユニット側コネクタを電源側コネクタから取り外す。次いで、一方の手で交換対象のモータユニット16を支持しながら、他方の手で雄ネジ1741、1742を取り外す(
図11)。その後、モータユニット16を後部筐体13内の方向に移動させることにより、駆動具162及び位置センサ166をそれぞれ駆動具孔171及びセンサ孔173から抜き取り、モータユニット16全体を後部筐体13の後部から該後部筐体13の外に取り出す(
図5)。
【0041】
次いで、新しいモータユニット16を後部筐体13の後部から後部筐体13内に入れ、第1板材1631の前側端部1634を後部筐体13の後部前板130に当接させる。モータユニット16を後部左側板131又は後部右側板132に取り付ける場合にはさらに、第1板材1631及び第2板材1632の上側端部1635を後部上板133に当接させる。このように新しいモータユニット16の第1板材1631及び第2板材1632を後部筐体13の所定の板に当接させることにより、駆動具162と駆動具孔171の位置、位置センサ166とセンサ孔173の位置、及び第1係合部1641と第1係合部対応孔1721、及び第2係合部1642と第2係合部対応孔1722の位置が一致する。この状態で駆動具162を駆動具孔171から、位置センサ166をセンサ孔173から、それぞれ後部筐体13の外に突出させる。さらに、雄ネジ1741、1742を第1係合部対応孔1721、第2係合部対応孔1722に挿通して第1係合部1641、第2係合部1642の雌ネジと係合させることにより、新しいモータユニット16を後部筐体13に固定する。また、新しいモータユニット16のモータユニット側コネクタと電源側コネクタを接続する。
【0042】
その後、外していた扉を、後部筐体13の後部から案内溝に差し込み、前方に移動させることにより取り付ける。この操作により、駆動具162であるピニオンギアと被駆動具181であるラックギアは自然に噛み合う。最後に、後部筐体13の後部後板134を元の位置に取り付けることにより、一連の交換作業が完了する。
【0043】
以上のように、本実施形態の電子天びん1では、モータ161と駆動具162が一体となったモータユニット16を後部筐体13に装着し、モータ161が故障したときにはモータユニット16ごと後部筐体13から取り外して、新しいモータ161と新しい駆動具162が一体となった新しいモータユニット16ごと後部筐体13に装着する。そのため、モータ161(モータユニット16)の交換作業の際にモータ161と駆動具162の接続作業を行う必要がなく、交換作業が容易になる。
【0044】
(3) 変形例
本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【0045】
例えば、上記実施形態では左側扉121、右側扉122及び上扉123という3つの扉を自動扉としたが、それらのうちの1つ又は2つのみを自動扉とし、その他の2つ又は1つは手動扉や固定された板としてもよい。
【0046】
上記実施形態ではモータ161の回転軸とピニオンギア(駆動具162)の回転軸をベルト1612で接続したが、両者を歯車等の他の回転伝達手段で接続してもよいし、モータ161の回転軸に直接ピニオンギアを取りつけてもよい。
【0047】
上記実施形態では駆動具162にピニオンギアを、被駆動具1811にラックギアを、それぞれ用いたが、ピニオンギアの代わりにゴムローラ(平滑ローラ)を用い、ラックギアの代わりに(ギアの歯が無い)平滑レールを用いてもよい。
【0048】
上記実施形態ではモータユニット16の第1板材1631及び第2板材1632における前側端部1634を後部前板130に、上側端部1635を後部上板133に、それぞれ当接させることにより、第1係合部対応孔1721と第1係合部1641、及び第2係合部対応孔1722と第2係合部1642の位置合わせを行っている。その代わりに、後部筐体13の内面に、後部筐体13とは別体の当接部を設けたり、後部筐体13の内面の一部を突出させた突出部を向け、それら当接部や突出部にモータユニット16の一部が当接したときに係合部対応孔と係合部の位置が合うようにしてもよい。
【0049】
上記実施形態では後部左側板131及び後部右側板132が金属板部1321と制振部材1322から成る(後部上板133も同様)が、後部筐体13の構造を簡素化するために、後部左側板131等を単独の材料から成る板により構成してもよい。
【0050】
上記実施形態では回転位置センサ165及び位置センサ166を設けたが、それらは省略してもよい。
【0051】
[態様]
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0052】
(第1項)
第1項に係る電子天びんは、
下部筐体と、該下部筐体の上面に設けられた計量皿とを備える天びん本体と、
前記計量皿の周囲の空間を覆う前面板、左側面板、右側面板及び上面板を有し、該左側面板、該右側面板又は該上面板に、前後方向に移動可能な扉を有する風防と、
前記空間の後方に配置された、後部前板、前記左側面板に連接される後部左側板、前記右側面板に連接される後部右側板及び前記上面板に連接される後部上板を有する筐体であって、前記空間の後方を該後部前板で覆い、前記扉が設けられた左側面板、右側面板又は上面板に対応する後部左側板、後部右側板又は後部上板に駆動具孔及び係合部対応孔が形成されている後部筐体と、
モータと、該モータの回転軸に接続された駆動具と、該モータの本体に関して固定された係合部とを有するユニットであって、該駆動具が前記駆動具孔から前記後部筐体の外に突出するように、且つ、該係合部が前記係合部対応孔に対応する位置となるように該後部筐体内に配置されるモータユニットと、
前記扉に固定され、前記駆動具により前後方向に駆動される被駆動具と
を備える。
【0053】
第1項に係る電子天びんでは、モータと駆動具が一体となったモータユニットを電子天びんの後部筐体に装着している。モータが故障したときには、古いモータを古い駆動具と共にモータユニットごと後部筐体から取り外し、新しいモータと新しい駆動具が一体となった新しいモータユニットごと後部筐体に装着することにより、容易にモータの交換を行うことができる。
【0054】
駆動具には例えばピニオンギアを用いることができ、その場合には被駆動具にはラックギアを用いることができる。あるいは、駆動具に(ギアの歯が無い)平滑ローラを用い、被駆動具に(ギアの歯が無い)平滑レールを用いてもよい。駆動具はモータの回転軸に直接接続されていてもよいし、ギアやベルト等を介して間接的に接続されていてもよい。
【0055】
(第2項)
第2項に係る電子天びんは、第1項に係る電子天びんにおいて、
前記モータユニットがさらに前記モータの本体を保持する保持具を有し、
前記係合部が前記保持具に設けられており、
前記後部筐体の内面に、前記係合部と前記係合部対応孔の位置を合わせたときに前記保持具が当接する当接部が設けられている。
【0056】
第2項に係る電子天びんによれば、モータユニットを取り付ける際に、保持具を当接部に当接させることにより、係合部と係合部対応孔の位置を容易に合わせることができる。
【0057】
当接部には、後部筐体の内面に取り付けた該後部筐体とは別体の部材や、後部筐体の内面の一部を突出させた突出部を用いることができる。あるいは、係合部対応孔を後部左側板又は後部右側板に設ける場合には後部上板の内面(後部筐体内の面)を当接部とし、係合部対応孔を後部上板に設ける場合には後部左側板の内面又は後部右側板の内面を当接部とすることもできる。
【0058】
(第3項)
第3項に係る電子天びんは、第1項又は第2項に係る電子天びんにおいて、
前記モータユニットがさらに前記駆動具の回転位置を検出する回転位置センサを備える。
【0059】
第3項に係る電子天びんによれば、駆動具の回転位置を回転位置センサで検出することにより、扉の位置を特定することができる。また、回転位置センサがモータユニットに設けられていることにより、駆動具と回転位置センサの位置合わせを行う必要がなく、駆動具及び回転位置センサの取り付けが容易になる。
【0060】
(第4項)
第4項に係る電子天びんは、第1項~第3項のいずれか1項に係る電子天びんにおいて、前記モータユニットがさらに前記被駆動具の位置を検出する位置センサを備える。
【0061】
第4項に係る電子天びんによれば、被駆動具の位置を位置センサで検出することにより、扉の位置を特定することができる。また、位置センサがモータユニットに設けられていることにより、被駆動具と位置センサの位置合わせを行う必要がなく、位置センサの取り付けが容易になる。
【0062】
なお、第3項に係る電子天びんが備える回転位置センサや、第4項に係る電子天びんが備える位置センサは、後部筐体内に設けてもよいし、後部筐体外に設けてもよい。回転位置センサ又は位置センサを後部筐体内に設ける場合には、後部筐体に孔を設けたうえで、該孔を通して、後部筐体外に配置されている駆動具の回転位置又は被駆動具の位置を検出するようにしてもよい。あるいは、回転位置センサを後部筐体内に設ける場合には、駆動具の回転軸のうち後部筐体内に配置されている部分の回転位置を検出するようにしてもよい。回転位置センサ又は/及び位置センサを後部筐体外に設ける場合には、後部筐体に孔を設け、該孔を通して回転位置センサ又は/及び位置センサを後部筐体外に突出させるようにしてもよい。
【0063】
(第5項)
第1項~第4項のいずれか1項に係る電子天びんにおいて、
前記後部筐体の一部は、該後部筐体の他の部分よりも前記モータの回転による振動が生じ難い制振部材から成り、
前記係合部対応孔が前記制振部材に設けられている。
【0064】
扉の開閉時にモータが動作することにより、モータから振動が発生する。この振動が後部筐体、さらには天びん本体に伝導すると、騒音の原因になるうえに、秤量の妨げになる。第5項に係る電子天びんによれば、前記係合部対応孔が制振部材に設けられていることにより、係合部を通してモータの振動が後部筐体の全体や天びん本体に伝導することを抑えることができ、それによって騒音を抑えることができると共に秤量を妨げることを防ぐことができる。
【0065】
例えば、後部筐体の制振部材以外の部分がアルミニウム合金板から成る場合には、制振部材としてプラスチック板を用いることができる。この場合、振動の生じ易さは制振部材及びそれ以外の部分の材質の他に厚さにも依存するため、これらを考慮して制振部材及び後部筐体の制振部材以外の部分の構成を定めればよい。
【符号の説明】
【0066】
1…電子天びん
11…天びん本体
111…下部筐体
112…計量皿
113…計量皿の周囲の空間
114…案内溝
1151…左フロントピラー
1152…右フロントピラー
116…前枠
1171…左側枠
1172…右側枠
12…風防
120…前面板
121…左側扉
122…右側扉
123…上扉
124…取っ手
125…ストッパ
13…後部筐体
130…後部前板
131…後部左側板
132…後部右側板
1321、1331…金属板部
1322、1332…制振部材
1323…ネジ
133…後部上板
1333…凹部
134…後部後板
14…操作卓
141…表示部
142…操作部
143…開閉ボタン
15…除電器
16…モータユニット
161…モータ
162…駆動具
163…保持具
1631…第1板材
1632…第2板材
1633…柱材
1634…前側端部
1635…上側端部
1641…第1係合部
1642…第2係合部
165…回転位置センサ
166…位置センサ
171…駆動具孔
1721…第1係合部対応孔
1722…第2係合部対応孔
173…センサ孔
1741、1742…雄ネジ
181…側部帯状材
1811…被駆動具
1812…突起
182…上部帯状材