(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138619
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】固体電解質およびそれを用いた電池
(51)【国際特許分類】
H01B 1/10 20060101AFI20230922BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20230922BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230922BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20230922BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H01B1/10
H01M10/0562
H01M4/62 Z
H01M10/0585
H01B1/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125930
(22)【出願日】2023-08-02
(62)【分割の表示】P 2020556697の分割
【原出願日】2019-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2018215486
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100143236
【弁理士】
【氏名又は名称】間中 恵子
(72)【発明者】
【氏名】古賀 英一
(57)【要約】
【課題】例えば電池に用いられた場合に高エネルギー密度の二次電池を実現する、高いイオン伝導度を有する固体電解質を提供する。
【解決手段】本開示による固体電解質1000は、第1固体電解質材料で構成された第1粒子101と、第2固体電解質材料で構成された第2粒子102と、を含む。第1固体電解質材料は、第2固体電解質材料よりも高い導電率を有する。第2固体電解質材料は、第2固体電解質材料よりも低いヤング率を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質であって、
第1固体電解質材料で構成された第1粒子、および
第2固体電解質材料で構成された第2粒子、
を含み、
前記第1固体電解質材料は、前記第2固体電解質材料よりも高いイオン伝導度を有し、
前記第2固体電解質材料は、前記第1固体電解質材料よりも低いヤング率を有し、
前記第1固体電解質材料および前記第2固体電解質材料からなる群より選択される少なくとも1つは、硫化物およびハロゲン化物からなる群より選択される少なくとも1つを含む、
固体電解質。
【請求項2】
請求項1に記載の固体電解質であって、
前記第1固体電解質材料および前記第2固体電解質材料からなる群より選択される少なくとも1つは、硫化物を含む、
固体電解質。
【請求項3】
請求項1に記載の固体電解質であって、
前記第1固体電解質材料および前記第2固体電解質材料からなる群より選択される少なくとも1つは、ハロゲン化物を含む、
固体電解質。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の固体電解質であって、
前記第2固体電解質材料は、ガラス電解質を含む、
固体電解質。
【請求項5】
電池であって、
正極、
負極、および
前記正極および前記負極の間に設けられた電解質層、
を備え、
前記正極、前記負極、および前記電解質層からなる群より選択される少なくとも1つは、請求項1から4のいずれか一項に記載の固体電解質を含む、
電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体電解質およびそれを用いた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、アルジロダイト結晶構造を有するリチウム硫化物を含有する全固体電池を開示している。特許文献2は、硫化物系のガラス体および結晶体が混合された固体電解質を有している全固体電池を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0293946号明細書
【特許文献2】特開2011-154900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、高いイオン伝導度を有する固体電解質を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示による固体電解質は、
第1固体電解質材料で構成された第1粒子、および
第2固体電解質材料で構成された第2粒子、
を含み、
前記第1固体電解質材料は、前記第2固体電解質材料よりも高いイオン伝導度を有し、かつ前記第2固体電解質材料は、前記第1固体電解質材料よりも低いヤング率を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示は、高いイオン伝導度を有する固体電解質を提供する。当該固体電解質を具備する電池は、高いエネルギー密度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施の形態1における固体電解質1000の模式図を示す。
【
図2】
図2は、実施の形態2における電池2000の断面図を示す。
【
図3】
図3は、実施の形態2の変形例における電池3000の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施の形態が、図面を参照しながら説明される。
【0009】
(実施の形態1)
実施の形態1における固体電解質は、それぞれ第1固体電解質材料および第2固体電解質材料で構成された第1粒子および第2粒子を含む。第1固体電解質材料は、第2固体電解質材料よりも高いイオン伝導度を有する。第2固体電解質材料は、第1固体電解質材料よりも低いヤング率を有する。
【0010】
実施の形態1においては、構造欠陥を生じさせることなく、高いイオン伝導度を有する固体電解質が高密度に形成されている。実施の形態1による固体電解質は、高い実効イオン伝導度を有する。実施の形態1による固体電解質を具備する電池は、高エネルギー密度を有する。本明細書において、固体電解質の実効イオン伝導度とは、固体電解質が実際に
使用されるときのイオン伝導度を意味する。一例として、実効イオン伝導度は、電池に含まれる固体電解質のイオン伝導度を意味する。
【0011】
一般的に、高いヤング率および高いイオン伝導度を有する固体電解質の粒子に高い圧力が印加される場合、圧力および密度分布による応力が原因となって、粒子間にデラミネーションが発生しやすい。これに対し、実施の形態1における固体電解質では、デラミネーションの発生が抑制される。したがって、実施の形態1における固体電解質は、高いイオン伝導度(例えば、高い実効イオン伝導度)を有する。さらに、実施の形態1における固体電解質を用いる電池は、高いエネルギー密度を有する。
【0012】
一般的に、圧粉体から構成される固体電解質のイオン伝導度は、固体電解質が金型に入れられている高圧力状態で測定される。しかし、一般的に、固体電解質を具備する電池は、高圧力状態から開放されている。
【0013】
固体電解質が圧力から開放されると(例えば、大気圧下に固体電解質が置かれると)、圧力分布の不均一性およびスプリングバックの応力が原因で、デラミネーションのような構造欠陥が固体電解質に生じる。その結果、高圧力状態で測定された固体電解質のイオン伝導度は、大気圧下で測定された固体電解質のイオン伝導度とは大きく異なり得ることに留意せよ。
【0014】
実施の形態1における固体電解質は、第3固体電解質材料によって構成された粒界層をさらに含んでもよい。実施の形態1の固体電解質が粒界層を含む場合、この粒界層は、第1粒子の粒径および第2粒子の粒径よりも小さい厚みを有してもよい。第3固体電解質材料のヤング率は、第2固体電解質材料のヤング率以下であってもよい。第3固体電解質材料のヤング率は、第2固体電解質材料のヤング率よりも低くてもよい。実施の形態1における固体電解質がこのような粒界層をさらに含む場合、デラミネーションの発生がさらに抑制される。
【0015】
図1は、実施の形態1における固体電解質1000の模式図を示す。以下、
図1を参照しながら、実施の形態1における固体電解質が説明される。
【0016】
固体電解質1000は、第1粒子101、第2粒子102、および粒界層103を含む。固体電解質1000は、粒界層103を含まなくてもよい。
【0017】
第1粒子101は、第1固体電解質材料で構成されている。第2粒子102は、第2固体電解質材料で構成されている。第1固体電解質材料は、第2固体電解質材料よりも高いイオン伝導度を有する。第2固体電解質材料は、第1固体電解質材料よりも低いヤング率を有する。
【0018】
粒界層103が、第1粒子101および第2粒子102の間に存在していてもよい。
【0019】
粒界層103は、互いに隣接する2つの第1粒子101の間に存在していてもよい。同様に、粒界層103は、互いに隣接する2つの第2粒子102の間に存在していてもよい。
【0020】
粒界層103は、第3固体電解質材料から構成されている。
【0021】
第1粒子101は、第2粒子102および粒界層103を介して、互いに接合している。第2粒子102は、第1粒子101よりも低いヤング率を有する。粒界層103も、第1粒子101よりも低いヤング率を有することが望ましい。第3固体電解質材料のヤング
率は、第2固体電解質材料のヤング率以下であることが望ましい。
【0022】
粒界層103が上記のように存在することにより、粒子に高圧を印加されながら粒子を高密度化されることによって固体電解質1000が形成された場合でも、デラミネーションのような構造欠陥が発生することが抑制される。その結果、高い実効イオン伝導度を有する固体電解質が得られる。粒界層103がデラミネーションのような構造欠陥の発生を抑制するメカニズムは、後に詳細に説明される。
【0023】
(固体電解質1000を製造する方法)
以下、固体電解質1000を製造する方法の一例が説明される。
【0024】
まず、第1粒子101の粉末が第2粒子102の粉末と混合され、混合粉末を得る。
【0025】
後述される実施例において実証されているように、第2粒子102の粉末は、粒界層103の形成のための成分を含有していてもよい。一例として、第2粒子102の粉末は、リチウム硫化物およびリン硫化物を含有する硫化物を含有するガラス粉末である。当該ガラス粉末は、結晶質成分および非晶質成分を含有する。第2粒子102および粒界層103は、それぞれ、結晶質成分および非晶質成分から構成される。
【0026】
次に、混合粉末が加圧かつ成形されて、固体電解質100を得る。以下、このような製造方法は、「圧粉プロセス」と呼ばれる。
【0027】
第2粒子102は、第1粒子101よりも低いヤング率を有するので、第2粒子102は第1粒子101よりも容易に変形する。従って、加圧時に、第2粒子102が第1粒子101の間に存在する空隙の形状に適合するように第2粒子102が変形する。その結果、第2粒子102が当該空隙に充填される。このようにして、緻密な固体電解質1000が得られる。
【0028】
さらに、第1粒子101間に存在する空隙に第2粒子102が充填されていることにより、固体電解質1000に存在する空隙が小さくなる。これにより、イオン伝導度が高められる。
【0029】
第1粒子101および第2粒子102を区別せずに本明細書において用いられる用語「粒子」は、第1粒子101および第2粒子102を意味する。2つの互いに隣接する粒子の間に存在する空隙には、粒界層103が充填されている。従って、各粒子の表面は粒界層103に接している。粒界層103は、2つの互いに隣接する粒子の間の電気的接合性を向上する。言い換えれば、粒界層103が存在しない場合、粒子の表面の一部は、隣接する粒子の表面に直接的に接する接触部分を有するだけでなく、他の粒子の表面に接しない非接触部分も有する。当該空隙に粒界層103が充填されている場合、非接触部分に粒界層103が接する。従って、非接触部分は、粒界層103を介して間接的に他の粒子の表面に接する。このようにして、粒界層103は、2つの互いに隣接する粒子の間の電気的接合性を向上する。第1粒子101、第2粒子102、および粒界層103は、いずれも固体電解質材料から構成されることに留意せよ。
【0030】
このように、固体電解質1000では、微細構造が形成されている。微細構造では、高いヤング率を有する硬い第1粒子101の間に存在する空隙が第2粒子102によって充填されるように、柔らかい第2粒子102が第1粒子101の間に存在する。
【0031】
第1粒子101の間に存在する空隙が粒界層103によって充填されるように、粒界層103が第1粒子101の間に存在してもよい。同様に、第2粒子102の間に存在する
空隙が粒界層103によって充填されるように、粒界層103が第2粒子102の間に存在してもよい。
【0032】
ストレスが圧力解放後のスプリングバックおよび圧力分布の不均一性によって発生するが、当該ストレスは、イオン伝導性を有するソフトな組織構造(すなわち、第2粒子102および粒界層103で構成される組織構造)により吸収される。このようにして、高圧下で粒子を高密度化することによって固体電解質1000が形成された場合でも、固体電解質1000においてデラミネーションのような構造欠陥が発生することが抑制される。その結果、高いイオン伝導性、高い密度、および高い実効イオン伝導度を有する固体電解質1000が形成される。さらに、このような高い実効イオン伝導度を有する固体電解質1000を具備する電池は、高いエネルギー密度を有する。繰り返しになるが、微細構造は、粒界層103を含んでいなくてもよい。
【0033】
上述のとおり、第1粒子101、第2粒子102、および粒界層103は、固体電解質材料で構成されている。粒界層103の厚みは、第1粒子101のサイズおよび第2粒子102のサイズよりも小さい。一例として、粒界層103の厚みは、第1粒子101の粒径の10分の1以下であり、かつ、第2粒子102の粒径の10分の1以下である。粒界層103は、例えば、2ナノメートル以上30ナノメートル以下の厚みを有し得る。
【0034】
第3固体電解質材料は、第1固体電解質材料および第2固体電解質材料よりも低いイオン伝導度を有していてもよい。上記の通り、第3固体電解質材料は非常に薄いので、第3固体電解質材料は固体電解質1000全体のイオン伝導度に大きな影響を与えない。
【0035】
第1粒子101、第2粒子102、および粒界層103のために用いられる固体電解質材料の例は、電池のために用いられる公知の固体電解質材料である。言うまでもないが、LiイオンまたはMgイオンのような金属イオンが固体電解質材料の内部を伝導する。
【0036】
固体電解質材料の例は、硫化物、酸化物、およびハロゲン化物である。
【0037】
硫化物の例は、Li2S-P2S5、Li2S-SiS2、Li2S-B2S3、Li2S-G
eS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-Li3PO4、Li2S-Ge2S2、Li2S-GeS2-P2S5、またはLi2S-GeS2-ZnSである。
【0038】
ハロゲン化物は、例えば、Li、M’、およびX’からなる化合物である。M’は、Li以外の金属元素および半金属元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素である。X’は、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも1種の元素である。「金属元素」は、周期表第1族から第12族中に含まれる全ての元素(ただし、水素を除く)、および、周期表第13族から第16族中に含まれる全ての元素(ただし、B、Si、Ge、As、Sb、Te、C、N、P、O、S、およびSeを除く)を表す。「半金属元素」は、B、Si、Ge、As、Sb、およびTeを表す。例えば、M’は、Y(=イットリウム)を含んでもよい。Yを含むハロゲン化物の例は、Li3YCl6またはLi3YBr6である。
【0039】
酸化物の例は、Li-Al-(Ge、Ti)-P-O系材料、またはLi7La3Zr2
O12のようなガーネット材料を主として含有する酸化物である。
【0040】
さらに、固体電解質材料として、リチウム含有金属酸化物、リチウム含有金属窒化物、リン酸リチウム(すなわち、Li3PO4)、またはリチウム含有遷移金属酸化物も用いられうる。
【0041】
リチウム含有金属酸化物の例は、Li2-SiO2またはLi2-SiO2-P2O5である。
【0042】
リチウム含有金属窒化物の例は、LIPONと称されるLi2.9PO3.3N0.46である。
【0043】
リチウム含有遷移金属酸化物の例は、リチウムチタン酸化物である。
【0044】
第1粒子101および第2粒子102のために用いられる固体電解質材料は、上記の固体電解質材料から、上記のように説明されたヤング率およびイオン伝導度を有するように選択される。
【0045】
粒界層103のために用いられる固体電解質材料もまた、上記の固体電解質材料から、上記のように説明されたヤング率およびイオン伝導度を有するように選択されてもよい。
【0046】
固体電解質1000は、固体電解質材料だけでなく、バインダーを含有してもよい。バインダーの例は、ポリエチレンオキシドまたはポリフッ化ビニリデンである。
【0047】
固体電解質1000のイオン伝導度を高めるために、第1固体電解質材料は、硫化物、酸化物、およびハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも一つを含んでもよい。
【0048】
固体電解質1000のイオン伝導度を高めるために、第1固体電解質材料は、アルジロダイト型硫化物を含んでいてもよい。アルジロダイト型硫化物は、本質的に高いイオン伝導性を有する。
【0049】
アルジロダイト型硫化物の例は、アルジロダイト結晶構造を有し、かつ組成式LiαPSβClγ(ここで、5.5≦α≦6.5、4.5≦β≦5.5、および0.5≦γ≦1.5)で表される硫化物である。
【0050】
組成式LiαPSβClγで表されるアルジロダイト型硫化物の組成の例は、Li6P
S5Clである。Li6PS5Clは、圧粉体の状態において、本質的に高いイオン伝導度
を有する。Li6PS5Clは、室温(例えば、摂氏25度)で金型内で圧力が印加された状態において、例えば、2mS/cm以上3mS/cm以下のイオン伝導度を有し得る。Li6PS5Clは、およそ0.2GPaのヤング率を有する。第1固体電解質材料がLi6PS5Clを含むことにより、固体電解質1000のイオン伝導度を高めることができる。
【0051】
固体電解質1000のイオン伝導度を高めるために、第2固体電解質材料は、硫化物、酸化物、およびハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも一つを含んでもよい。
【0052】
固体電解質1000のイオン伝導度を高めるために、第2固体電解質材料は、LPS系硫化物を含んでいてもよい。LPS系硫化物とは、リチウム硫化物およびリン硫化物を含む硫化物を意味する。
【0053】
LPS系硫化物に含まれるリチウム硫化物の例は、LipS(ここで、1.5≦p≦2
.5)である。LPS系硫化物に含まれるリン硫化物の例は、PqS5(ここで、1.5≦p≦2.5)である。すなわち、LPS系硫化物は、LipS-PqS5であってもよい。
固体電解質1000のイオン伝導度を高めるために、一例として、LipS-PqS5は、
Li2S-P2S5であってもよい。
【0054】
固体電解質1000のイオン伝導度を高めるために、第2固体電解質材料は、三斜晶系
結晶を主成分として含有するガラス系硫化物を含んでもよい。
【0055】
第2固体電解質材料は、三斜晶系結晶を主成分として含有するLPS系硫化物のガラス電解質であってもよい。ガラス電解質の例は、Li2S-P2S5(Li2S:P2S5=70:30(モル比))である。Li2S-P2S5(Li2S:P2S5=70:30(モル比))は、圧粉体の状態において、室温(例えば摂氏25度)で、およそ0.7mS/cmのイオン伝導性、およびおよそ0.09GPaのヤング率を有する。第1固体電解質材料としてLi6PS5Clが用いられる場合、Li2S-P2S5(Li2S:P2S5=70:30(モル比))は適切な第2固体電解質材料として使用され得る。
【0056】
粒界層103は、互いに隣接する第1粒子101および第2粒子102の間、互いに隣接する2つの第1粒子101の間、および互いに隣接する2つの第2粒子102の間で粒子を互いに接合する接合層として機能する。固体電解質1000が圧粉プロセスで形成される場合、第3固体電解質材料のヤング率は、第2粒子102のヤング率以下である。第3固体電解質材料は、第1粒子101および第2粒子102よりも小さい粒子サイズを有し得る。
【0057】
第3固体電解質材料は、第2固体電解質材料よりも低い結晶性を有していてもよい。第3固体電解質材料は、第2固体電解質材料よりも低い結晶性を有する場合、粒界層103が、粒子を接合する接合層としてより効果的に機能する。このようにして、高圧下で粒子を高密度化することにより固体電解質1000が形成される場合でも、デラミネーションのような構造欠陥が発生することが抑制される。その結果、高い実効イオン伝導度を有する固体電解質が得られる。
【0058】
第3固体電解質材料は、非晶質であってもよい。第3固体電解質材料が非晶質である場合、粒界層103が、粒子を接合する接合層としてより効果的に機能する。このようにして、高圧下で粒子を高密度化することにより固体電解質1000が形成される場合でも、デラミネーションのような構造欠陥が発生することが抑制される。その結果、高い実効イオン伝導度を有する固体電解質が得られる。
【0059】
第3固体電解質材料は、第2固体電解質材料と同じ材料群に属していてもよい。第3固体電解質材料が第2固体電解質材料と同じ材料群に属する場合、粒子の接合および熱膨張の観点から、安定な構造を有する固体電解質1000が得られる。さらに、第2粒子102の熱膨張率が粒界層103の熱膨張率と実質的に等しいので、熱衝撃および熱サイクルに対して高い耐久性を有する固体電解質1000が得られる。
【0060】
第3固体電解質材料の例は、(i)非晶質のLPS系ガラス、または(ii)第2粒子102よりも小さい結晶性および第2粒子102よりも小さい粒子径を有するLPS系ガラスである。
【0061】
LPS系ガラスのようなガラス電解質のヤング率およびイオン伝導度は、熱処理の温度または履歴によって変化する。従って、熱処理条件の調整によってガラス電解質の結晶性が適切に制御され、第1~第3固体電解質材料として用いられる。固体電解質材料の粉末の結晶性は、X線回折のプロファイルおよび半値幅を用いて評価されることができる。
【0062】
第1粒子101および第2粒子102の大きさは、粒界層103の厚み(通常、数十ナノメートル以下)よりも大きい。第1粒子101および第2粒子102は、およそ0.1マイクロメートル以上10マイクロメートル以下の平均粒子径を有していてもよい。平均粒子径とは、レーザー回折粒度分布測定機によって測定された体積粒度分布から評価されたD50(累積50%粒子径)の値を意味する。
【0063】
実施の形態1における固体電解質1000の微細構造は、高分解能透過電子顕微鏡(以下、「TEM」という)によって観察され得る。TEMを用いて、第1粒子101、第2粒子102、および粒界層103の格子像のような微細構造内の結晶が観察される。
【0064】
一般的に、同一または類似の化学組成物においては、結晶性の増加に伴って、ヤング率は増加し、かつ、イオン伝導度が高くなる。
【0065】
エネルギー分散型X線分析(以下、「EDS」という)または電子線マイクロアナライザー(以下、EPMA)を用いて、第1粒子101、第2粒子102、および粒界層103の元素を分析することが可能である。
【0066】
マイクロプローバシステムのような直接的なプローブ測定を用いて、実施の形態1における固体電解質1000の微細構造内の粒子を評価することが可能である。粒子の表面のイオン伝導度も同様に評価することが可能である。
【0067】
実施の形態1における固体電解質1000における粒子の硬さ(すなわち、ヤング率)は、TEMを用いて観察された微細構造内の粒子の形状の変形の様子から評価される。例えば、変形していない粒子、圧力により変形した粒子、および圧力によって形状を維持できずに粒界層103を形成している材料の順でヤング率の大小関係が決定される。このようにして、粒子のヤング率の相対関係が決定される。
【0068】
第1粒子101および第2粒子102のヤング率の大小関係は、上述のとおり、TEMを用いた微細構造観察によって特定される。同様に、粒界層103のヤング率と第1粒子101および第2粒子102のヤング率との大小関係もまた、TEMを用いた微細構造観察によって特定される。
【0069】
TEMを用いた微細構造観察によってヤング率の大小関係を特定することが困難である場合、または、粒子および粒界層103のヤング率の値を求める必要がある場合は、以下の代替方法を使用することが可能である。
【0070】
本質的なヤング率を測定するためには、構造欠陥を有しない試料を用いることが必要とされる。構造欠陥がない部位を試料として選別するか、あるいは試料を加工して構造欠陥がない試料を得て、次いで、当該試料のヤング率が測定される。これに代えて、例えば、数十マイクロメートル程度の大きさを有し、かつ構造欠陥を有さない粒子を単独で試料として用いて、当該粒子のヤング率が測定される。
【0071】
プローブを押し込んだときの圧力に対する変位特性から相対的関係を比較することもできる。
【0072】
粒子の相対的な柔らかさは、金型内で粒子に圧力を印加したときの、当該圧力に対する変位の比率(すなわち、圧縮率)からも見積もることができる。
【0073】
第2粒子102は、第1粒子101の粒子径よりも小さい粒子径を有していてもよい。第2粒子102が第1粒子101の粒子径よりも小さい粒子径を有している場合には、第2粒子102が変形しやすい。従って、互いに隣接する2つの第1粒子101の間に存在する空隙が容易に第2粒子102によって充填される。その結果、固体電解質1000のイオン伝導度が高められる。
【0074】
粒界層103は、例えば、10ナノメートル以下の厚みを有してもよい。粒界層103
が10ナノメートル以下の厚みを有する場合、通常のセラミックスで形成される微細構造の場合と同様に、粒子の接合強度が高レベルで安定化する。これにより、粒子のデラミネーションの発生がさらに抑制され、高いイオン伝導度を有する固体電解質1000を得ることができる。
【0075】
固体電解質1000のイオン伝導度を高めるために、以下の数式が充足されていてもよい。
0.05≦(vp2+vgb)/(vp1+vp2+vgb)≦0.7
ここで、
vp1、vp2、およびvgbは、それぞれ、第1粒子101の体積、第2粒子102の体積、および、粒界層103の体積である。
【0076】
固体電解質1000のイオン伝導度を高めるために、(vp2+vgb)/(vp1+vp2+vgb)の値は、0.05以上0.50以下であってもよい。
【0077】
固体電解質1000のイオン伝導度を高めるために、(vp2+vgb)/(vp1+vp2+vgb)の値は、0.05以上0.30以下であってもよい。
【0078】
固体電解質1000のイオン伝導度を高めるために、(vgb)/(vp2+vgb)の値は、0.05以上0.15以下であってもよい。
【0079】
以下、実施の形態1における固体電解質の製造方法の例が詳細に説明される。
【0080】
まず、第2粒子102および粒界層103が互いに同一の材料群から構成される場合(すなわち、第2固体電解質材料および第3固体電解質材料が互いに同じ材料群に属する場合)における製造方法が説明される。
【0081】
第1固体電解質材料の粉末および柔らかい固体電解質材料の粉末の混合物が加圧されて、第2粒子102および粒界層103を含む微細構造を含む固体電解質を得る。柔らかい固体電解質材料は、第1固体電解質材料よりも低いヤング率を有する。さらに、柔らかい固体電解質材料の粉末は、その結晶性に分布を有する。結晶性の分布は後述される。
【0082】
結晶性に分布を有する固体電解質材料(すなわち、柔らかい固体電解質材料)は、最終的に、それぞれ第2粒子102および粒界層103を構成する第2固体電解質材料および第3固体電解質材料になる。
【0083】
結晶性に分布を有する柔らかい固体電解質材料の粉末は、低い結晶性を有する粉末成分および余剰成分に大別される。
【0084】
低い結晶性を有する粉末成分は、第1粒子101の粒子表面に加圧の初期段階で行き渡って粒子を接合する。このようにして、粒界層103が低い結晶性を有する粉末成分から形成される。
【0085】
余剰成分は、粒界層103を形成しない。余剰成分は、最終的に、微細構造内でイオン伝導度を有しながら第2粒子102を構成する。
【0086】
この方法では、構造欠陥の発生が抑制され、かつ高いイオン伝導度を有する固体電解質1000が安定して形成される。
【0087】
第2粒子102が粒界層103と同一の材料群から構成されている場合、生産性が向上
し、さらに、第2粒子102および粒界層103の接合および熱膨張の観点から、固体電解質の構造が安定化しやすい。この場合、第1粒子101は第2粒子102よりも高い結晶性を有し、かつ第2粒子102は、粒界層103と同じまたは高い結晶性を有する。一般的に、結晶性の増加に伴ってイオン伝導度もより向上するので、第1粒子101は第2粒子よりも高いイオン伝導度を有し、かつ第2粒子102は粒界層103と同じまたは高いイオン伝導度を有する。
【0088】
第2粒子の熱膨張率は粒界層103の熱膨張率と実質的に同じあるので、熱衝撃および熱サイクルに対して高い耐久性を有する固体電解質1000が得られる。
【0089】
第2粒子102および粒界層103が互いに同一の材料群から構成される場合であっても、第1固体電解質材料の粉末、第2固体電解質材料の粉末、および第3固体電解質材料の粉末の混合物が準備され、次いで、混合物が加圧されて固体電解質1000を得てもよい。
【0090】
次に、第2粒子102および粒界層103が互いに異なる材料から形成されている場合における製造方法が説明される。
【0091】
第1固体電解質材料の粉末、第2固体電解質材料の粉末、および第3固体電解質材料の粉末の混合物が準備され、次いで混合物が加圧されて固体電解質1000が得られる。
【0092】
第2粒子102および粒界層103からなる群から選択される少なくとも1つを第1粒子101の表面にコーティングすることによって得られた複合粒子を用いて、固体電解質1000が形成されてもよい。
【0093】
コーティングの状態は、SEMを用いた観察結果に基づいてまたはBET法によって観察された比表面積の変化に基づいて複合化の程度を見積もることにより確認可能である。
【0094】
(実施の形態2)
実施の形態2における蓄電デバイスには、実施の形態1における固体電解質が使用されている。実施の形態2において、実施の形態1において説明された事項は適宜省略される。
【0095】
実施の形態2における電池は、正極と、負極と、正極および負極の間に設けられた電解質層とを備える。正極、負極、および電解質層からなる群より選択される少なくとも1つが、実施の形態1による固体電解質を含む。
【0096】
図2は、実施の形態2における電池2000の断面図を示す。
図2に示すように、実施の形態2に係る電池2000は、正極201、負極203、および電解質層202を備えている。正極201は、正極活物質粒子204および実施の形態1における固体電解質1000を含む。電解質層202は、正極201および負極203の間に配置されている。正極201および負極203の両者に電解質層202が接している。電解質層202は、実施の形態1における固体電解質1000を含む。負極203は、負極活物質粒子205および実施の形態1における固体電解質1000を含む。電池2000は、例えば、全固体リチウム二次電池である。実施の形態2における電池2000は、実施の形態1で説明された固体電解質1000を含むため、高いエネルギー密度を有する。実施の形態1における固体電解質1000ではデラミネーションの発生が抑制されているので、電解質層202の薄層化が可能となる。したがって、実施の形態1における固体電解質1000が電解質層202に用いられる場合は、電池のエネルギー密度はさらに向上する。
【0097】
実施の形態2において、正極201、負極203及び電解質層202のそれぞれが固体
電解質1000を含んでもよい。電解質層202が実施の形態1における固体電解質1000を含んでいてもよい。正極201、負極203、および電解質層202の中で、電解質層202が最も多量に電解質材料を含むので、実施の形態1における固体電解質1000を電解質層202に用いることによって、効率的にエネルギー密度が向上する。正極201、負極203、および電解質層202からなる群より選ばれる少なくとも1つに固体電解質1000が含まれている限り、電池は高いエネルギー密度を有する。正極201、負極203、および電解質層202のそれぞれは、実施の形態1における固体電解質1000以外の他の固体電解質を含んでいてもよい。
【0098】
正極201は、正極活物質、すなわち、金属イオンを吸蔵および放出可能な材料を含有する。金属イオンの例は、リチウムイオンである。正極201は、例えば、正極活物質(例えば、正極活物質粒子204)を含む。正極201は、固体電解質1000を含んでいてもよい。
【0099】
正極活物質の例は、リチウムを含有する遷移金属酸化物、リチウムを含有しない遷移金属酸化物、遷移金属フッ化物、ポリアニオン材料、フッ素化ポリアニオン材料、遷移金属硫化物、遷移金属オキシフッ化物、遷移金属オキシ硫化物、または遷移金属オキシ窒化物である。正極活物質として、リチウム含有遷移金属酸化物を用いた場合には、電池2000の製造コストを下げることができるとともに、電池2000の平均放電電圧を高めることができる。
【0100】
正極活物質として、Li(NiCoAl)O2及びLiCoO2から選ばれる少なくとも1つが正極201に含まれていてもよい。これらの遷移金属酸化物は、電池2000のエネルギー密度を高めるために用いられ得る。
【0101】
正極201において、正極活物質粒子204の体積vc1および固体電解質1000の体積vc2の合計に対する正極活物質粒子204の体積vc1の比率は、例えば、30%以上95%以下である。言い換えれば、数式(vc1/(vc1+vc2))により表される体積比は、0.3以上0.95以下であってもよい。正極活物質粒子204の体積vc1および固体電解質1000の体積vc2の合計に対する固体電解質1000の体積vc2の比率は、例えば、5%以上70%以下である。言い換えれば、数式(vc2/(vc1+vc2))により表される体積比は、0.05以上0.70以下であってもよい。正極活物質粒子204の量及び固体電解質1000の量が適切に調整されることにより、電池2000のエネルギー密度が十分に確保され、電池2000を高出力で動作させることができる。
【0102】
正極201は、10マイクロメートル以上500マイクロメートル以下の厚みを有していてもよい。正極201の厚さが適切に調整されることにより、電池2000のエネルギー密度を十分に確保できるとともに、電池2000を高出力で動作させることができる。
【0103】
上述されたように、電解質層202は、実施の形態1における固体電解質1000を含有していてもよい。電解質層202は、実施の形態1における固体電解質1000だけでなく、実施の形態1における固体電解質以外の固体電解質をも含有していてもよい。
【0104】
以下、実施の形態1における固体電解質1000は、第1固体電解質と呼ばれる。実施の形態1における固体電解質以外の固体電解質は、第2固体電解質と呼ばれる。
【0105】
電解質層202が、第1固体電解質だけでなく第2固体電解質をも含有する場合、第1固体電解質および第2固体電解質は、電解質層202に均一に分散していてもよい。第2固体電解質は、第1固体電解質とは異なる組成を有していてもよい。第2固体電解質は、
第1固体電解質とは異なる構造を有していてもよい。
【0106】
電解質層202は、1マイクロメートル以上500マイクロメートル以下の厚みを有していてもよい。電解質層202の厚さが適切に調整されている場合、正極201および負極203の短絡を確実に防止できるとともに、電池2000を高出力で動作させることができる。
【0107】
負極203は、負極活物質、すなわち、金属イオンを吸蔵および放出可能な材料を含有する。金属イオンの例は、リチウムイオンである。負極203は、例えば、負極活物質(例えば、負極活物質粒子205)を含む。負極203は、固体電解質1000を含んでいてもよい。
【0108】
負極活物質の例は、金属材料、炭素材料、酸化物、窒化物、錫化合物、または珪素化合物である。金属材料は、単体の金属であってもよく、合金であってもよい。金属材料の例は、リチウム金属またはリチウム合金である。炭素材料の例は、天然黒鉛、コークス、黒鉛化途上炭素、炭素繊維、球状炭素、人造黒鉛、または非晶質炭素である。容量密度の観点から、珪素(すなわち、Si)、錫(すなわち、Sn)、珪素化合物、及び錫化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つが負極活物質として好適に使用されうる。
【0109】
負極203において、負極活物質粒子205の体積va1および固体電解質1000の体積va2の合計に対する負極活物質粒子205の体積va1の比率は、例えば、30%以上95%以下である。言い換えれば、数式(va1/(va1+va2))により表される体積比は、0.3以上0.95以下であってもよい。負極活物質粒子105の体積va1および固体電解質100の体積va2の合計に対する固体電解質1000の体積va2の比率は、例えば、5%以上70%以下である。言い換えれば、数式(va2/(va1+va2))により表される体積比は、0.05以上0.70以下であってもよい。負極活物質粒子205の量及び固体電解質1000の量が適切に調整されることにより、電池2000のエネルギー密度が十分に確保され、電池2000を高出力で動作させることができる。
【0110】
負極203は、10マイクロメートル以上500マイクロメートル以下の厚みを有していてもよい。負極203の厚さが適切に調整されることにより、電池2000のエネルギー密度を十分に確保できるとともに、電池2000を高出力で動作させることができる。
【0111】
第2固体電解質は、硫化物固体電解質であってもよい。硫化物固体電解質は、正極201、負極203、および電解質層202に含有され得る。硫化物固体電解質材料の例は、Li2S-P2S5、Li2S-SiS2、Li2S-B2S3、Li2S-GeS2、Li3.25Ge0.25P0.75S4、またはLi10GeP2S12である。硫化物固体電解質材料に、LiX(Xは、F、Cl、Br、またはIである)、Li2O、MOq、またはLipMOq(Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、In、Fe、又はZnであり、pは自然数であり、かつqは自然数である)が添加されてもよい。硫化物固体電解質材料は、固体電解質1000のイオン伝導性を向上させる。
【0112】
第2固体電解質は、酸化物固体電解質であってもよい。酸化物固体電解質は、正極201、負極203、および電解質層202に含有され得る。酸化物固体電解質材料は、固体電解質1000のイオン伝導性を向上させる。
【0113】
酸化物固体電解質の例は、
(i) LiTi2(PO4)3またはその元素置換体のようなNASICON型固体電解
質、
(ii) (LaLi)TiO3系のペロブスカイト型固体電解質、
(iii) Li14ZnGe4O16、Li4SiO4、LiGeO4またはそれらの元素置換体のようなLISICON型固体電解質、
(iv) Li7La3Zr2O12またはその元素置換体のようなガーネット型固体電解質
、
(v) Li3NまたはそのH置換体、または
(vi) Li3PO4またはそのN置換体
である。
【0114】
第2固体電解質は、ハロゲン化物固体電解質であってもよい。ハロゲン化物固体電解質は、正極201、負極203、および電解質層202に含有され得る。ハロゲン化物固体電解質材料は、固体電解質1000のイオン伝導性を向上させる。
【0115】
ハロゲン化物固体電解質の例は、Li2MgX’4、Li2FeX’4、Li(Al,Ga,In)X’4、Li3(Al,Ga,In)X’6、LiOX’、またはLiX’である
。ここで、X’は、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも1種の元素である。当該ハロゲン化物固体電解質の例は、Li3InBr6、Li3InCl6、Li2FeCl4、Li2CrCl4、Li3OCl、またはLiIである。
【0116】
第2固体電解質は、錯体水素化物固体電解質であってもよい。錯体水素化物固体電解質は、正極201、負極203、および電解質層202に含有され得る。錯体水素化物固体電解質材料は、固体電解質1000のイオン伝導性を向上させる。
【0117】
錯体水素化物固体電解質の例は、LiBH4-LiIまたはLiBH4-P2S5である。
【0118】
第2固体電解質は、有機ポリマー固体電解質であってもよい。有機ポリマー固体電解質は、正極201、負極203、および電解質層202に含有され得る。有機ポリマー固体電解質材料は、固体電解質1000のイオン伝導性を向上させる。
【0119】
有機ポリマー固体電解質の例は、高分子化合物およびリチウム塩の化合物である。高分子化合物は、エチレンオキシド構造を有していてもよい。エチレンオキシド構造を有する高分子化合物は、リチウム塩を多く含有することができるので、イオン伝導度をさらに高めることができる。リチウム塩の例は、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAs
F6、LiSO3CF3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)(SO2C4F9)、またはLiC(SO2CF3)3である。これらから選択される1種のリチウム塩が単独で使用されてもよい。あるいは、これらから選択される2種以上のリチウム塩の混合物が使用されてもよい。
【0120】
正極201、負極203、および電解質層202から選ばれる少なくとも1つには、リチウムイオンの授受を容易にし、電池2000の出力特性を向上する目的で、非水電解液、ゲル電解質、又はイオン液体が含まれていてもよい。
【0121】
非水電解液は、非水溶媒および当該非水溶媒に溶けたリチウム塩を含む。
【0122】
非水溶媒の例は、環状炭酸エステル溶媒、鎖状炭酸エステル溶媒、環状エーテル溶媒、鎖状エーテル溶媒、環状エステル溶媒、鎖状エステル溶媒、またはフッ素溶媒である。
【0123】
環状炭酸エステル溶媒の例は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、またはブチレンカーボネートである。
【0124】
鎖状炭酸エステル溶媒の例は、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、またはジエチルカーボネートである。
【0125】
環状エーテル溶媒の例は、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、または1,3-ジオキソランである。
【0126】
鎖状エーテル溶媒の例は、1,2-ジメトキシエタンまたは1,2-ジエトキシエタンである。
【0127】
環状エステル溶媒の例は、γ-ブチロラクトンである。
【0128】
鎖状エステル溶媒の例、酢酸メチルである。
【0129】
フッ素溶媒の例は、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピオン酸メチル、フルオロベンゼン、フルオロエチルメチルカーボネート、またはフルオロジメチレンカーボネートである。
【0130】
これらから選択される1種の非水溶媒が単独で使用されてもよいし、これらから選ばれる2種以上の非水溶媒の混合物が使用されてもよい。
【0131】
リチウム塩の例は、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiSO3C
F3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)(SO2
C4F9)、またはLiC(SO2CF3)3である。
【0132】
これらから選ばれる1種のリチウム塩が単独で使用されてもよいし、これらから選ばれる2種以上のリチウム塩の混合物が使用されてもよい。
【0133】
リチウム塩は、0.5mol/リットル以上2mol/リットル以下の濃度を有していてもよい。
【0134】
ゲル電解質の例は、非水電解液が含浸したポリマー材料である。ポリマー材料の例は、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルニトリル、ポリフッ化ビニリデン、またはポリメチルメタクリレートである。ポリマー材料の他の例は、エチレンオキシド結合を有するポリマーである。
【0135】
イオン液体に含まれるカチオンの例は、
(i) テトラアルキルアンモニウムのような脂肪族鎖状第4級アンモニウム塩のカチオン、
(ii) テトラアルキルホスホニウムのような脂肪族鎖状第4級ホスホニウム塩のカチオン、
(iii) ピロリジニウム、モルホリニウム、イミダゾリニウム、テトラヒドロピリミジニウム、ピペラジニウム、またはピペリジニウムのような脂肪族環状アンモニウム、または
(iv) ピリジニウムまたはイミダゾリウムのような窒素含有ヘテロ環芳香族カチオンである。
【0136】
イオン液体を構成するアニオンの例は、PF6
-、BF4
-、SbF6
-、AsF6
-、SO3
CF3
-、N(SO2CF3)2
-、N(SO2C2F5)2
-、N(SO2CF3)(SO2C4F9)-、またはC(SO2CF3)3
-である。
【0137】
イオン液体はリチウム塩を含有していてもよい。
【0138】
正極201、負極203、および電解質層202から選ばれる少なくとも1つには、粒子同士の密着性を向上させる目的で、結着剤が含まれてもよい。
【0139】
結着剤の例は、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、またはカルボキシメチルセルロースである。
【0140】
共重合体もまた、結着剤として用いられ得る。このような結着剤の例は、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、およびアクリル酸及びヘキサジエンからなる群から選ばれる2種以上の材料の共重合体である。
【0141】
上記の材料から選ばれる2種以上の混合物を結着剤として使用してもよい。
【0142】
正極201及び負極203から選ばれる少なくとも1つには、電子導電性を高める目的で、導電助剤が含まれていてもよい。
【0143】
導電助剤の例は、
(i) 天然黒鉛または人造黒鉛のようなグラファイト、
(ii) アセチレンブラックまたはケッチェンブラックのようなカーボンブラック、
(iii) 炭素繊維または金属繊維のような導電性繊維、
(iv) フッ化カーボン、
(v) アルミニウム粉末のような金属粉末、
(vi) 酸化亜鉛ウィスカーまたはチタン酸カリウムウィスカーのような導電性ウィスカー、
(vii) 酸化チタンのような導電性金属酸化物、または
(viii) ポリアニリン、ポリピロール、またはポリチオフェンのような導電性高分子化合物
である。
【0144】
導電助剤の形状は限定されない。導電助剤の形状の例は、針状、鱗片状、球状、又は楕円球状である。導電助剤は、粒子であってもよい。
【0145】
正極活物質粒子204及び負極活物質粒子205は、表面抵抗を低減する目的で、被覆材料によって被覆されていてもよい。正極活物質粒子204の表面の一部のみが被覆材料によって被覆されていてもよい。あるいは、正極活物質粒子204の表面の全部が被覆材料によって被覆されていてもよい。同様に、負極活物質粒子205の表面の一部のみが被覆材料によって被覆されていてもよい。あるいは、負極活物質粒子205の表面の全部が被覆材料によって被覆されていてもよい。
【0146】
被覆材料の例は、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、ハロゲン化物固体電解質、高分子固体電解質、または錯体水素化物固体電解質のような固体電解質である。被覆材料は
、酸化物固体電解質であってもよい。酸化物固体電解質は、優れた高電位安定性を有する。酸化物固体電解質を被覆材料に用いることによって、電池2000の充放電効率が向上する。
【0147】
被覆材料として使用できる酸化物固体電解質の例は、
(i) LiNbO3のようなLi-Nb-O化合物、
(ii) LiBO2またはLi3BO3のようなLi-B-O化合物、
(iii) LiAlO2のようなLi-Al-O化合物、
(iv) Li4SiO4のようなLi-Si-O化合物、
(v) Li2SO4、
(vi) Li4Ti5O12のようなLi-Ti-O化合物、
(vii) Li2ZrO3のようなLi-Zr-O化合物、
(viii) Li2MoO3のようなLi-Mo-O化合物、
(ix) LiV2O5のようなLi-V-O化合物、または
(x) Li2WO4のようなLi-W-O化合物
である。
【0148】
図3は、実施の形態2の変形例における電池3000の断面図を示す。
図3に示すように、電池3000は、正極活物質層301および集電体303を含む正極と、負極活物質層302および集電体303を含む負極と、正極および負極の間に設けられた電解質層304とを備える。正極では、集電体303上に正極活物質層301が配置されている。負極では、集電体303上に負極活物質層302が配置されている。電解質層304は、実施の形態1における固体電解質を含む。
【0149】
正極活物質層301は、上述された正極活物質を含む。負極活物質層302は、上述された負極活物質を含む。集電体303が導電性を有する限り、集電体303の材料は限定されない。一例として、集電体303は、銅箔のような金属薄膜から構成される。
【0150】
電池3000も、電池2000と同様に、実施の形態1における固体電解質を含むので、高いエネルギー密度を有する。
【0151】
(実施例)
(固体電解質)
本実施例においては、
図1に示された固体電解質1000が製造された。
【0152】
第1固体電解質材料として、アルジロダイト型硫化物が用いられた。具体的には、アルジロダイト構造を有する硫化物系固体電解質Li6PS5Clの粉末(Ampcera社製)が用いられた。
【0153】
第2固体電解質材料および第3固体電解質材料を含む材料として、Li2S-P2S5(
Li2S:P2S5=70:30(モル比))のガラス粉末が用いられた。以下、当該ガラ
ス粉末は、「LPS系ガラス粉末」という。
【0154】
LPS系ガラス粉末は、摂氏200度でアニールされた。アニールされたLPS系ガラス粉末は、三斜晶系結晶を主成分として含有していた。アニールされたLPS系ガラス粉末は、結晶体から非晶質体までの広い結晶性分布を有していた。アニールされたLPS系ガラス粉末は、5マイクロメートルの平均粒子径を有していた。
【0155】
アニールされたLPS系ガラス粉末は、8マイクロメートルの最大開口を有するマイクロメッシュを具備する超音波振動ふるいを用いて分級された。マイクロメッシュを通過し
たLPS系ガラス粉末の、LPS系ガラス粉末全体に対する体積比は、およそ0.1であった。マイクロメッシュを通過したLPS系ガラス粉末は、ネッキングが進んでいない粒子を多く含んでいた。
【0156】
マイクロメッシュを通過したLPS系ガラス粉末は、X線回析に供された。当該X線回析パターンにおいて明瞭なピークは観察されなかったため、マイクロメッシュを通過したLPS系ガラス粉末は、焼結および結晶化が進行していない粒子を多く含んでいると判定された。すなわち、マイクロメッシュを通過した粉末は、粒界層103の材料として用いられ得ると判定された。
【0157】
分級の結果から、おおよそ、結晶成分として第2粒子102の成分が90体積%を有し、かつ非晶質成分としての粒界層103の成分が10体積%を有すると判定された。
【0158】
アルジロダイト構造を有する硫化物系固体電解質Li6PS5Clの粉末およびアニールされたLPS系ガラス粉末の重量が、表1および表2に示される割合を有するように測定された。次いで、これらの粉末は、メノウ乳鉢内で、乾燥条件下で約30分間十分に互いに混合されて、これらの粉末が均一に分散された混合粉末を得た。
【0159】
次いで、混合粉末は金型に入れられた。一軸プレスを用いて摂氏120度の温度で10分間、800MPaの圧力を混合粉末に印加して、円盤状の圧粉体試料からなる固体電解質を得た。固体電解質は金型から取り出された。このようにして、固体電解質が得られた。
【0160】
次に、得られた固体電解質の実効イオン伝導度が、以下のように測定された。実施形態において述べられているように、高圧力状態で測定された固体電解質のイオン伝導度は、大気圧下で測定された固体電解質のイオン伝導度とは大きく異なり得る。以下のように、実施例においては、電池に含まれる固体電解質のイオン伝導度が、実効イオン伝導度として測定された。
【0161】
固体電解質の上面および下面に、それぞれ、第1インジウム箔および第2インジウム箔が置かれた。第1インジウム箔および第2インジウム箔は、50マイクロメートルの厚みを有していた。次いで、第1インジウム箔および第2インジウム箔を介して固体電解質の上面および下面の間に圧力が加えられた。このようにして、固体電解質の上面および下面に、それぞれ、第1インジウム箔および第2インジウム箔が接着された。最後に、固体電解質は圧力から解放された。このようにして、第1インジウム箔、固体電解質、および第2インジウム箔を具備する電池が得られた。
【0162】
その後、電池は、25℃±1℃に維持された恒温槽に入れられた。
【0163】
恒温槽内部の雰囲気は、大気雰囲気であった。恒温槽内部の圧力は、大気圧であった。
【0164】
電池は恒温槽に入れられたまま、110Hzから10MHzまでの測定周波数で固体電解質のインピーダンスが、第1インジウム箔および第2インジウム箔を介して、インピーダンス測定システム(ソーラートロン社製、商品名:12608W)を用いて測定され、電池に含まれる固体電解質の実効イオン伝導度が算出された。
【0165】
試料1~試料7による固体電解質の実効イオン伝導度は、表1および表2に示されている。
【0166】
(二次電池)
以下、二次電池の製造方法が説明される。本実施例においては、
図3に示された二次電池3000が製造された。
【0167】
まず、正極ペースト、負極ペースト、および電解質ペーストが調製された。
【0168】
(正極ペースト)
正極ペーストは、固体電解質材料および正極活物質を含有した。
固体電解質材料は、アルジロダイト型の硫化物系固体電解質Li6PS5Clの結晶化ガラス粉末であった。当該結晶化ガラス粉末は、2マイクロメートルの平均粒子径を有していた。硫化物系固体電解質Li6PS5Clは、およそ2mS/cm~3mS/cmのイオン伝導度を有していた。
【0169】
正極活物質は、化学式LiNi0.8Co0.15Al0.05O2により表される層状構造LiNiCoAl複合酸化物の粉末であった。層状構造LiNiCoAl複合酸化物は、およそ5マイクロメートルの平均粒子径を有していた。
【0170】
正極ペーストは以下のように調製された。
【0171】
固体電解質材料および正極活物質が互いに混合され、次いで均一に分散されて混合物を得た。次いで、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(以下、「SEBS」という)およびテトラリンが混合物に添加され、次いで、自転-公転ミキサーを用いて、回転速度1600rpmで約20分間、室温(すなわち、およそ摂氏25度)で混合物は十分に撹拌され、正極ペーストを得た。SEBSおよびテトラリンは、それぞれ、有機バインダーおよび溶剤として用いられた。
【0172】
(負極ペースト)
負極ペーストもまた、固体電解質材料および負極活物質を含有していた。
【0173】
正極ペーストの場合と同様、固体電解質材料は、アルジロダイト型の硫化物系固体電解質Li6PS5Clの結晶化ガラス粉末であった。当該結晶化ガラス粉末は、2マイクロメートルの平均粒子径を有していた。
【0174】
負極活物質は、およそ10マイクロメートルの平均粒子径を有する天然黒鉛粉末であった。
【0175】
負極ペーストは、正極ペーストの場合と同様に調製された。
【0176】
(電解質ペースト)
試料1~試料7による固体電解質にSEBSおよびテトラリンを添加して、次いで、自転-公転ミキサーを用いて、回転速度1600rpmで約20分間、室温(すなわち、およそ摂氏25度)で混合物は十分に撹拌され、電解質ペーストを得た。SEBSおよびテトラリンは、それぞれ、有機バインダーおよび溶剤として用いられた。
【0177】
スクリーン印刷法により、正極ペーストが、およそ20マイクロメートルの厚みを有する銅箔に塗布された。塗布された正極ペーストは、およそ摂氏100度で1時間、真空下で乾燥され、正極活物質層301を銅箔の上に形成した。銅箔は、集電体303として機能した。正極活物質層301は、およそ60マイクロメートルの厚みを有していた。
【0178】
次に、電解質ペーストが、メタルマスクとスキージを用いて、正極活物質層301上に塗布された。塗布された電解質ペーストは、およそ100マイクロメートルの厚みを有し
ていた。次いで、電解質ペーストは、約100℃で1時間、真空下で乾燥された。このようにして、電解質層304が表面に形成された正極を得た。
【0179】
電解質層304の表面を、光学顕微鏡を用いて50倍の倍率で観察した。その結果、電解質層304の表面には、割れが観察されなかった。
【0180】
電解質層304が形成された銅箔は、電解質層304の内部に構造欠陥を生じさせる原因となる衝撃および変形を電解質層304に与えないように注意深く取り扱われた。
【0181】
スクリーン印刷法により、負極ペーストが、およそ20マイクロメートルの厚みを有する銅箔に塗布された。塗布された負極ペーストは、約100℃で1時間、真空下で乾燥され、負極活物質層302を銅箔の上に形成した。銅箔は、集電体303として機能した。負極活物質層302は、およそ80マイクロメートルの厚みを有していた。
【0182】
次いで、正極の場合と同様に、電解質層304が表面に形成された負極を得た。負極の電解質層304の表面にも、割れは観察されなかった。
【0183】
次に、正極の電解質層304の表面が負極の電解質層304の表面に接するように、正極および負極が積層された。このようにして、積層体を得た。積層体の上面および下面に弾性体シートが積層された。これらの弾性体シートは、いずれも、5×106Pa程度の
弾性率および70マイクロメートルの厚みを有していた。次いで、積層体は、金型に収められた。積層体を金型内で圧力800MPaにて50℃に加温しながら、100秒間、積層体を加圧した。積層体を金型から抜きだし、次いで、積層体にダメージを与えないように2枚の弾性体シートが丁寧に取り除かれた。このようにして、直方体の形状を有する二次電池が得られた。
【0184】
二次電池の集電体303(すなわち、銅箔)の表面に、リード端子をAg系の高導電性接着剤で接合して、端子電極を取り付けた。
【0185】
二次電池の充放電特性(すなわち、充電容量、放電容量、および充放電効率)が評価された。言い換えれば、室温(すなわち、およそ摂氏25度)にて、0.05Cで、初回測定における充電容量、放電容量、および充放電効率が測定された。
【0186】
さらに、二次電池の断面が観察された。具体的には、トムソン刃を用いて二次電池を切断し、二次電池の中央部の断面を露出させた。露出された断面全体が50倍の倍率で光学顕微鏡を用いて観察され、二次電池の内部構造がデラミネーションのような構造欠陥を有するかどうかを判定した。各試料において、5つの二次電池が断面観察のために用いられた。これらの結果が、表1および表2に示される。表1および表2に含まれる「構造欠陥」の欄には、5個の二次電池において、断面に構造欠陥が観察された二次電池の数が分子として示されている。いうまでもないが、分母は5である。
【0187】
【0188】
【0189】
試料2~試料6を、試料1および試料7と比較すると明らかなように、第1粒子成分(すなわち、アルジロダイト型の硫化物)にLPS系ガラス粉末を含有させることにより、構造欠陥がなく、かつ1.98mS/cm以上の高い実効イオン伝導度を有する電池を得られる。
【0190】
当該電池は構造欠陥を有しないので、加圧時に生じるデラミネーションの発生が抑制されていると本発明者らは考えている。LPS系ガラス粉末は、第2粒子102および粒界層103(第2粒子102:粒界層103=90体積%:10体積%)を構成していることに留意せよ。
【0191】
試料2~試料6による二次電池は、200mAh/gを超える充電容量を有する。さらに、試料2~試料6による二次電池は、試料1および試料7による二次電池より高い充放電効率(すなわち、およそ80%以上の充放電効率)を有する。
【0192】
このように、試料2~試料6による二次電池は、200mAh/gを超える充電容量および80%以上の充放電効率を有していた。
【0193】
試料2~3の結果からだけでなく、試料4~試料6の結果からも明らかなように、LPS系ガラス粉末が30%以上の体積比を有する場合でも、二次電池は1.98mS/cm以上の高いイオン伝導度を有し、かつ構造欠陥を有していなかった。
【0194】
試料2~試料4を試料5~試料6と比較すると明らかなように、LPS系ガラス粉末が50%未満の(望ましくは5%以上50%未満、より望ましくは5%以上30%以下)体積比を有する場合、二次電池は、およそ4mS/cm以上の高いイオン伝導度を有する。
【0195】
一方、試料7の結果から明らかなように、固体電解質がLPS系ガラス粉末を含有するがアルジロダイト型の硫化物を含有しない場合には、構造欠陥は発生しないが、固体電解質は、低い実効イオン伝導度および低い充放電効率を有する。これは、試料7による二次電池は、アルジロダイト型の硫化物を含まないからである。アルジロダイト型の硫化物はイオン伝導経路として機能することに留意せよ。
【0196】
試料1の結果から明らかなように、固体電解質がアルジロダイト型の硫化物を含有するがLPS系ガラス粉末を含有しない場合には、固体電解質は、低い実効イオン伝導度および低い充放電効率を有する。これは、試料1による二次電池は、LPS系ガラス粉末を含有しないからである。
【0197】
本開示の固体電解質は、二次電池のために用いられ得る。当該二次電池は、電子機器または自動車のために使用され得る。
【0198】
1000 固体電解質
101 第1粒子
102 第2粒子
103 粒界層
2000 二次電池
201 正極
202 電解質層
203 負極
204 正極活物質粒子
205 負極活物質粒子
3000 二次電池
301 正極活物質層
302 負極活物質層
303 集電体
304 電解質層