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特開2023-138633ハロゲン化オレフィンとハロゲン化コモノマーのコポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138633
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】ハロゲン化オレフィンとハロゲン化コモノマーのコポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 214/00 20060101AFI20230922BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20230922BHJP
   C09J 127/00 20060101ALI20230922BHJP
   C09D 127/00 20060101ALI20230922BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
C08F214/00
C09K3/10 E
C09K3/10 M
C09J127/00
C09D127/00
H01M4/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】27
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023127970
(22)【出願日】2023-08-04
(62)【分割の表示】P 2020517198の分割
【原出願日】2018-09-25
(31)【優先権主張番号】62/563,742
(32)【優先日】2017-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・ビン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】カイピン・リン
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ・アラン・ポルズ
(72)【発明者】
【氏名】クルト・アーサー・ウッド
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ティー・クー
(72)【発明者】
【氏名】ルーシー・クラークソン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ブロッツマン
(57)【要約】
【課題】本発明の一つの目的は、コーティング、フィルム、及びシート用に好適である改善されたポリマー組成物を提供することである。
【解決手段】1種以上のハロゲン化オレフィンと、ハロゲン化アルケニルエーテル、ハロゲン化アルケニルエステル、及びハロゲン化(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上のハロゲン化コモノマーとのコポリマーは、ハロゲンを含まない類似のコポリマーと比較して、コポリマー中のハロゲン(例えば、フッ素)の存在が1つ以上の望ましい特性を付与するので、様々な最終用途において有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1種のハロゲン化オレフィンと、b)ハロゲン化アルケニルエーテル、ハロゲン化アルケニルエステル、及びハロゲン化(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のハロゲン化コモノマーとのコポリマー。
【請求項2】
前記少なくとも1種のハロゲン化オレフィンが、式(1)で表されるハロゲン化オレフィンを含む、請求項1に記載のコポリマー:
CX12=CX34 (1)
式中、前記ハロゲン化オレフィンは、少なくとも1つのハロゲン原子を含み、X1、X2、X3及びX4は個別に、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又は1~8個の炭素原子を有するハロゲン化若しくは非ハロゲン化アルキル基から選択される。
【請求項3】
前記ハロゲン化オレフィンが、少なくとも一つのフッ素原子を含む、請求項2に記載のコポリマー。
【請求項4】
前記ハロゲン化オレフィンは、フッ素原子及び塩素原子からなる群から選択され、かつ前記ハロゲン化オレフィンの炭素-炭素二重結合に関与する少なくとも1つの炭素原子に結合している少なくとも1つのハロゲン原子を含む、請求項2に記載のコポリマー。
【請求項5】
前記少なくとも1種のハロゲン化オレフィンが、CClF=CF2,CH2=CF2,CFH=CH2,CF2=CHF,CF2=CF2,CHF=CHF,CF3CF=CH2,CF2=CHCl,CF3CH=CHF,CClF=CH2,CF2=CF2,CF3CCl=CH2,CF3CH=CHCl,CF3CF=CFH,CF3CH=CF2,CF3CF=CFCF3,CF3CF2CF=CF2,CF3CH=CHCF3,CF2HCH2CF=CH2,CF2HCH2CF=CClH,CF2HCH=CFCH2Cl及びCF3-CF=CF2からなる群から選択されるハロゲン化オレフィンを含む、請求項1記載のコポリマー。
【請求項6】
前記少なくとも1種のコモノマーが、少なくとも1つのフッ素原子から構成される少なくとも1種のハロゲン化アルケニルエーテルを含む、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項7】
前記少なくとも1種のコモノマーが、式(2)で表されるハロゲン化アルケニルエーテルを含む、請求項1に記載のコポリマー:
CX56=CX7-OR1 (2)
式中、前記ハロゲン化アルケニルエーテルは、少なくとも1つのハロゲン原子を含み、X5、X6及びX7は個別に、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又は1~8個の炭素原子を有するハロゲン化若しくは非ハロゲン化アルキル基から選択され、R1は、1~8個の炭素原子を有するハロゲン化又は非ハロゲン化アルキル基であり、任意に少なくとも1つのヒドロキシル基で置換される。
【請求項8】
1が式(3)で表される、請求項7に記載のコポリマー:
abcCld (3)
式中、aは1~8の整数であり、bは0又は1~2a+1の整数であり、cは0又は1~2a+1の整数であり、dは0又は1~2a+1の整数であり、b+c+dは2a+1である。
【請求項9】
c又はdの少なくとも1つが1~2a+1までの整数である、請求項8に記載のコポリマー。
【請求項10】
前記少なくとも1種のコモノマーが、CF3-C(OR1)=CH2,CF3C(OR1)=CFH,CF3C(OR1)=CF2,CF3-CH=CH(OR1),CF3CF=CF(OR1),CF3CF=CH(OR1),CF3CH=CF(OR1),CF(OR1)=CHCl,CF(OR1)=CH2,CF(OR1)=CFCl,CF(OR1)=CFH,CF(OR1)=CCl2,CF2=CF(OR1),CF3C(OR1)=CFCF3,CF3CH=C(OR1)CH3,CF3CH2C(OR1)=CH2,CF3C(OR1)=CHCF3,CF(OR1)=CFCF2CF2H,CF3CF2C(OR1)=CH2,CF3CF2CF(CF3)C(OR1)=CH;CH3CH2CH=CF(OR1);CF3C(OR1)=CFCF2CF3,CF3CF=C(OR1)CF2CF3;(CF32CFC(OR1)=CH2,CF3CF2CF2CF2C(OR1)=CH2,CF3CF2CF2C(OR1)=CFCF3,CF3CF2CF2CF=C(OR1)CF3,F(CF25CF=CF(OR1),C49C(OR1)=CFCF3,C49CF=C(OR1)CF3,F(CF26CF=CF(OR1),F(CF25C(OR1)=CFCF3,及びF(CF25CF=C(OR1)CF3からなる群から選択されるハロゲン化アルケニルエーテルを含み、ここで、R1が1~8個の炭素原子を有するハロゲン化又は非ハロゲン化アルキル基である、請求項1記載のコポリマー。
【請求項11】
前記少なくとも1種のコモノマーが、少なくとも1種のハロゲン化ヒドロキシアルケニルエーテルを含む、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項12】
前記少なくとも1種のハロゲン化ヒドロキシアルケニルエーテルが、式(4)で表されるハロゲン化ヒドロキシアルケニルエーテルを含む、請求項11に記載のコポリマー:
CX89=CX10-O-R2-OH (4)
式中、X8、X9及びX10は個別に、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又は1~8個の炭素原子を有するハロゲン化若しくは非ハロゲン化アルキル基から選択される。ただし、X8、X9又はX10の少なくとも1つがハロゲン化又は非ハロゲン化アルキル基である。R2は、2~13個の炭素原子を有するハロゲン化又は非ハロゲン化アルキル基であり、任意にカルボニル又はエーテル官能基から選択される1種以上の官能基を含み得、置換又は非置換であり得る。
【請求項13】
-R2-OHが、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチル、ヒドロキシヘキシル、ヒドロキシオクチル、ヒドロキシデシル、ヒドロキシラウリル、ヒドロキシシクロブチル、ヒドロキシシクロペンチル、ヒドロキシシクロヘキシル、ポリエチレングリコール残基、ポリプロピレングリコール残基、ポリエチレン/ポリプロピレングリコール残基、グリセロール残基、アルコキシル化グリセロール残基、糖残基、アルコキシル化糖残基、トリメチロールプロパン残基、アルコキシル化トリメチロールプロパン残基、ペンタエリスリトール残基、アルコキシル化ペンタエリスリトール残基、ジペンタエリスリトール残基、アルコキシル化ジペンタエリスリトール残基、アルファグルコシド残基、アルコキシル化アルファグルコシド残基、トリメチロールエタン残基、アルコキシル化トリメチロールエタン残基、糖アルコール残基、アルコキシル化糖アルコール残基、アルカノールアミン残基、及びアルコキシル化アミン残基からなる群から選択される、請求項12に記載のコポリマー。
【請求項14】
前記少なくとも1種のコモノマーが、少なくとも1種のハロゲン化(メタ)アクリレートから構成される、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項15】
前記少なくとも1種のコモノマーが、少なくとも1種のフッ素化(メタ)アクリレートから構成される、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項16】
前記少なくとも1種のコモノマーが、少なくとも1種のハロゲン化アルケニルエステルから構成される、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項17】
前記少なくとも1種のコモノマーが、少なくとも1種のフッ素化アルケニルエステルから構成される、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項18】
ポリスチレン標準を使用したゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される数平均分子量が5000~1,00,000ダルトンである、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項19】
前記コポリマーが、ランダム、交互、グラジエント又はブロックコポリマーである、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項20】
前記コポリマーは、重合形態で、1~99重量%のハロゲン化オレフィン及び99~1重量%のハロゲン化コモノマーから構成される、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項21】
請求項1に記載のコポリマーの製造方法であって、a)少なくとも1種のハロゲン化オレフィンと、b)ハロゲン化アルケニルエーテル、ハロゲン化アルケニルエステル、及びハロゲン化(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させることを含む方法。
【請求項22】
表面を有する基材と、当該基材の表面の少なくとも一部に請求項1に記載のコポリマーから構成されるコーティングとを含む物品。
【請求項23】
請求項1に記載のコポリマー及び少なくとも1種の非水性溶媒を含む、電池電極バインダー。
【請求項24】
電極活物質及び請求項1に記載のコポリマーを含む少なくとも1つの電極を含む電池。
【請求項25】
請求項1に記載のコポリマーと、少なくとも1種のヒドロキシル反応性物質とを反応させることにより得られるポリマー物品であって、前記コポリマーは、1種以上の重合形態のハロゲン化ヒドロキシアルケニルエーテルを含む、物品。
【請求項26】
少なくとも1種の請求項1に記載のコポリマーを含む製造物品であって、コーティング、塗料、接着剤、シーラント、繊維、成形品、フィルム、シート、複合材及びラミネートからなる群から選択される物品。
【請求項27】
コーティング、塗料、接着剤、シーラント、繊維、成形品、フィルム、シート、複合材及びラミネートからなる群から選択される物品を製造するための、請求項1に記載のコポリマーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化オレフィンと、ハロゲン化アルケニルエーテル、ハロゲン化アルケニルエステル及びハロゲン化(メタ)アクリレートなどの1種以上のハロゲン化コモノマーとのコポリマー、当該コポリマーの製造方法並びに当該コポリマーを含む製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン化ポリマー及びコポリマーは、非ハロゲン化の類似ポリマー及びコポリマーと比較して、それらの一般的に優れた耐候性、耐薬品性、及び電気化学的安定性により、長い間商業的に関心が持たれてきた。
【0003】
例としては、フルオロポリマー系のコーティングとフィルムが挙げられ、その優れた特性のために広く使用されている。多くの場合、これらのコーティングとフィルムは、PVDFやPCTFEなどのフルオロオレフィンホモポリマーではなく、2種以上のモノマー(少なくとも1種はフッ素化されている)を含むコポリマーをベースとするものである。このタイプの実例となるコポリマーには、米国特許第5925705号及びPCT出願公開WO98/10000、米国特許第5,093,427号及びPCT出願公開WO98/38242が記載されているようなVF2(二フッ化ビニリデン)のコポリマー、ETFEを含むTFEのコポリマー、及びCTFE又はTFEとビニルエーテル、ビニルエステル、又はアリルエーテル若しくはエステルとのコポリマーが含まれる。コーティング用途では、これらのコポリマーを追加的に非フッ素化共樹脂とブレンドすることができる。例えば、VF2ホモポリマー又はコポリマーと、混和性アクリル樹脂とのブレンドをベースとするコーティングとフィルムは、卓越した屋外耐候性のほか、耐薬品性や成形性など他の特性でよく知られている。
【0004】
コーティングに使用される他のクラスのハロゲン化コポリマーは、CTFE又はTFEと非ハロゲン化ビニルエーテルの交互コポリマーである、いわゆるFEVEコポリマー、及びペンダント側鎖にある程度のフッ素化を含む(メタ)アクリレートモノマーのコポリマーである、いわゆるフルオロアクリルである。FEVEコポリマーは、非常に優れた耐候性、高い光沢、及びさまざまな架橋剤との使いやすさで知られている。フルオロアクリルも一般的に架橋され、落書き防止性と防汚性の特性でよく知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5925705号明細書
【特許文献2】国際公開第98/10000号
【特許文献3】米国特許第5,093,427号明細書
【特許文献4】国際公開第98/38242号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
当技術分野で知られているハロゲン化ポリマー及びコポリマーにもかかわらず、異なる又は改善された特徴及び特性を有する新しいハロゲン化ポリマー及びコポリマーを開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、1種以上のハロゲン化オレフィンと、ハロゲン化アルケニルエーテル、ハロゲン化アルケニルエステル、及びハロゲン化(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上のハロゲン化コモノマーとの共重合によって得られるコポリマーを提供する。したがって、本発明は、重合形態で、少なくとも1種のハロゲン化オレフィンと、ハロゲン化アルケニルエーテル、ハロゲン化アルケニルエステル、及びハロゲン化(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のハロゲン化コモノマーを含むか、本質的にからなり、あるいはからなるコポリマーを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のコポリマーは、重合形態で、少なくとも1種のハロゲン化オレフィンと、ハロゲン化アルケニルエーテル、ハロゲン化アルケニルエステル及びハロゲン化(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のハロゲン化コモノマーとを含み、これらの特定のハロゲン化オレフィン及びハロゲン化コモノマーは、そのようなモノマーの重合により得られるコポリマーに望ましい又は改善された特性を付与するように選択することができる。したがって、本発明の一つの目的は、コーティング、フィルム、及びシート用に好適である改善されたポリマー組成物を提供することである。本発明の別の目的は、改善された機械的及び物理的特性を有するポリマー組成物を提供することである。本発明のさらなる目的は、摩耗、引っかき、浸食、シミ、汚れ及び腐食、ならびに化学物質などによる侵襲に対して非常に耐性があるポリマー組成物を提供することである。本発明のさらなる別の目的は、汚れ、グリース、指紋などを落とすことができる改良されたポリマー組成物を提供することである。本発明のさらなる目的は、改善された耐UV性及び/又は改善された耐候性を有するポリマー組成物を提供することである。本発明の別の目的は、改善された特性を有するポリマー組成物を調製するための方法を提供することである。
【0009】
本発明のコポリマーは、重合形態で、少なくとも1種のハロゲン化オレフィンを含む。適切なハロゲン化オレフィンには、炭素-炭素二重結合(C=C)及び少なくとも1つのハロゲン原子(F、Cl、Br、及び/又はI)を含む有機化合物が含まれる。本明細書で使用する場合、ハロゲン化オレフィンという用語は、エーテル又はエステル基(-C(=O)OR又はO-C(=O)R、Rは有機部分)が炭素-炭素二重結合の炭素原子上で置換されている不飽和化合物(例えば、アルケニルエーテル、アルケニルエステル及び(メタ)アクリレート)を除外する。炭素-炭素二重結合の炭素原子の一方又は両方は、1つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン化オレフィンが3つ以上の炭素原子で構成される場合、炭素-炭素二重結合の一部ではない1つ以上の炭素原子は、1つ以上のハロゲン原子で置換されてもよい。ハロゲン原子は、炭素-炭素二重結合の少なくとも1つの炭素原子及び炭素-炭素二重結合の炭素原子以外の少なくとも1つの炭素原子の両方で置換されていてもよい。ハロゲン化オレフィンは、単一のタイプのハロゲン(例えば、Fのみ)を含み得る。他の実施形態において、ハロゲン化オレフィンは、2種以上の異なるタイプのハロゲン(例えば、F及びClの両方)を含み得る。本発明の特定の実施形態では、ハロゲン化オレフィンは、炭素、ハロゲン、及び任意に水素を含み、それ以外の元素を含まない。ハロゲン化オレフィンは、特性として脂肪族であってもよい(すなわち、ハロゲン化オレフィンは芳香族部分を含まない)。特に好ましいハロゲン化オレフィンは、フッ素を含有するもの、特に、単一又は主要なハロゲンとしてフッ素を含有するもの、例えば、クロロフルオロエチレン(VCF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、フッ化ビニル、二フッ化ビニリデン(VF2)、及び三フッ化ビニリデン(VF3)及びそれらの組み合わせである。
【0010】
ハロゲン化オレフィンは、1つ、2つ、3つ又はそれ以上の臭素、塩素、フッ素又はヨウ素原子などのハロゲン原子又はこれらの組み合わせ(例えば、少なくとも1つのフッ素原子及び少なくとも1つの塩素原子)を含み得る。特定の実施形態では、ハロゲン化オレフィンは、フッ素化オレフィンである。適切なフッ素化オレフィンには、1つ、2つ、3つ又はそれ以上のフッ素(F)原子を含むオレフィンが含まれる。フッ素原子は、炭素-炭素二重結合に関与する炭素原子の一方又は両方で置換されてもよく、及び/又は炭素-炭素二重結合に関与する炭素原子の一方又は両方に結合しているアルキル基などの部分に置換基として存在してもよい。例えば、フッ素化オレフィンは、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フルオロエチル、ジフルオロエチル、トリフルオロエチル、テトラフルオロエチル、ペルフルオロエチル、フルオロプロピル、ジフルオロプロピル、トリフルオロプロピル、テトラフルオロプロピル、ペンタフルオロプロピル、ヘキサフルオロプロピル、ペルフルオロプロピルなどの1種以上のフルオロアルキル(例えば、ペルフルオロアルキル)基及びその類似体を含み得る。ここで、フッ素原子の一部及び/又は水素原子の1つ以上は、他のハロゲン原子(例えば、Cl)で置換されている。フッ素化オレフィンは、フッ素以外の1つ以上のハロゲン原子、特に1つ以上の塩素(Cl)、ヨウ素(I)及び/又は臭素(Br)原子を含み得る。
【0011】
本発明の特定の実施形態において、ハロゲン化オレフィン又はフッ素化オレフィンは、炭素-炭素二重結合に関与する炭素原子上で置換された少なくとも1つの水素原子を含み得る。例えば、フルオロオレフィン、ヒドロフルオロオレフィン、クロロオレフィン、ヒドロクロロオレフィン、クロロフルオロオレフィン、及びヒドロクロロフルオロオレフィンはすべて、本発明のハロゲン化オレフィンコモノマーとして使用することができる。適切なタイプのフッ素化オレフィンには、フルオロエチレン、クロロフルオロエチレン、フルオロプロペン、クロロフルオロプロペン、フルオロブテン、クロロフルオロブテン、フルオロペンテン、クロロフルオロペンテン、フルオロヘキセン、クロロフルオロヘキセンなどが含まれる。本発明の様々な実施形態では、ハロゲン化オレフィンは、2個、3個、4個、5個、6個又はそれ以上の炭素原子、例えば、2~20個の炭素原子、2~8個の炭素原子、2~6個の炭素原子又は2~4個の炭素原子を含む。
【0012】
本発明の特定の態様によれば、ハロゲン化オレフィンは、式(1)による構造を有し得る:
CX12=CX34 (1)
式中、X1、X2、X3及びX4は個別に、水素(H)、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、及びハロゲン化と非ハロゲン化C1~C20のアルキル基からなる群から選択される。ただし、ハロゲン化オレフィンは少なくとも1つのハロゲン原子を含む。
【0013】
本発明において適切に使用できるハロゲン化オレフィンの具体的な代表例には、以下が含まれるが、これらに限定されない。
CFCl=CH2(VCFとも呼ばれる)
CH2=CF2(VDF又はVF2とも呼ばれる)
CFH=CH2
CF2=CHF
CF3CF=CH2
CF2=CF2(TFEとも呼ばれる)
CF2=CHCl
CF3CCl=CH2
CF3CH=CHCl
CF3CF=CFH
CF3CH=CF2
CF3CF=CF2
CF3CH2CF=CH2
CF3CH=CFCH3
CF3CF=CHCF3
CF3CCl=CHCF3
CF2HCH2CF=CH2
CF2HCH2CF=CHCl
CF2HCH=CFCH2Cl
CH2=CHCl
CHCl=CHCl
CH2=CCl2
CF2=CFCl
CF3CCl=CH2
CF3CCl=CClH
CF3CH=CCl2
CF3CF=CCl2
CF3CF=CFCl
CF3CF=CClH
CF3CCl=CFH
CF3CCl=CF2
CF3CCl=CFCl
【0014】
上記のハロゲン化オレフィンのすべての可能な異性体(例えば、E又はZ異性体)を使用することができる。
【0015】
本発明の様々な実施形態において、コポリマーを調製するために使用されるハロゲン化オレフィンは、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも99.9%、又はさらには100%の純度(重量%で計算される)を有し得る。このようなハロゲン化オレフィンを調製及び精製する方法は、当技術分野でよく知られている。さらに、適切なハロゲン化オレフィンは、アーケマグループなどの商業的供給源から入手可能である。
【0016】
本発明のコポリマーはまた、重合形態で、ハロゲン化アルケニルエーテル、ハロゲン化アルケニルエステル及びハロゲン化(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーを含む。好ましい一実施形態では、コモノマーの少なくとも1種は、ヒドロキシ官能基、又はアミン、チオール、カルボン酸など、いくつか他の官能基も含み、例えば補助的な外部架橋剤の使用を通じて、その後の架橋反応の可能性を提供する。そのような補助的な架橋試薬の例は、例えば、米国特許第6680357号に記載されている。これらの官能基はまた、コポリマーの1つ以上の特性を改変するために、重合後に反応され得る。コポリマー中のそのような官能基の存在は、少なくともいくつかのタイプの基材の表面へのその接着を増強することもでき、これは、コポリマーがコーティング組成物の一部として使用される場合に特に重要であり得る。
【0017】
本発明で適切に使用できるハロゲン化アルケニルエーテルは、少なくとも1つのハロゲン(F、Cl、Br及び/又はI)及びアルケニルエーテル部分(炭素-炭素二重結合に関与する炭素上にエーテル基が置換された炭素-炭素二重結合、一般にC=C-ORとして表すことができ、ORはアルコキシ基、アロキシ基などであり、任意にORはヒドロキシル基やエステル基などでさらに官能基化される)から構成される不飽和有機化合物として説明することができる。ハロゲンは、ハロゲン化アルケニルエーテルの炭素原子のいずれかで置換されていてもよい。一実施形態では、炭素-炭素二重結合の炭素原子の少なくとも1つは、少なくとも1つのハロゲンで置換されている。別の実施形態において、炭素-炭素二重結合の炭素原子の少なくとも1つは、過ハロゲン化アルキル基(例えば、過フッ素化アルキル基)であり得る少なくとも1つのハロゲン化アルキル基(例えば、フッ素化アルキル基)によって置換される。さらに別の実施形態では、1つ以上のハロゲンは、-OR基の1つ以上の炭素原子上で置換されてもよい。さらなる実施形態によれば、炭素-炭素二重結合の少なくとも1つの炭素原子は少なくとも1つのハロゲンにより置換され、炭素-炭素二重結合の少なくとも1つの炭素原子は少なくとも1つのハロゲン化アルキル基(例えば、フッ素化アルキル基)により置換され、ハロゲン化アルキル基は、過ハロゲン化アルキル基(例えば、過フッ素化アルキル基)であってもよい。
【0018】
適切なハロゲン化アルケニルエーテルには、構造式(2)に対応する化合物が含まれる:
CX56=CX7-OR1 (2)
式中、ハロゲン化アルケニルエーテルは、少なくとも1つのハロゲン原子を含み(特に、X5、X6又はX7の少なくとも1つはハロゲン又はハロゲン化アルキル基である)、X5、X6及びX7は個別に、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又はハロゲン化若しくは非ハロゲン化アルキル基(例えば、1~8個の炭素原子を有するアルキル基)から選択され、R1は、ハロゲン化又は非ハロゲン化アルキル基であり、任意に少なくとも1つのヒドロキシル基で置換される。
【0019】
本発明の特定の実施形態では、ハロゲン化アルケニルエーテルは、900g/モル未満、800g/モル未満、又は700g/モル未満の分子量を有する。
【0020】
本発明で適切に使用できる例示的なハロゲン化アルケニルエーテルには、以下の化合物が含まれるが、これらに限定されない:
CF3-C(OR1)=CH2
CF3C(OR1)=CFH、
CF3C(OR1)=CF2
CF3-CH=CH(OR1)、
CF3CF=CF(OR1)、
CF3CF=CH(OR1)、
CF3CH=CF(OR1)、
CF(OR1)=CHCl、
CF(OR1)=CH2
CF(OR1)=CFCl、
CF(OR1)=CFH、
CF(OR1)=CCl2
CF2=CF(OR1)、
CF3C(OR1)=CFCF3
CF3CH=C(OR1)CH3
CF3CH2C(OR1)=CH2
CF3C(OR1)=CHCF3
CF(OR1)=CFCF2CF2H、
CF3CF2C(OR1)=CH2
CF3CF2CF(CF3)C(OR1)=CH、
CH3CH2CH=CF(OR1)、
CF3C(OR1)=CFCF2CF3
CF3CF=C(OR1)CF2CF3
(CF32CFC(OR1)=CH2
CF3CF2CF2CF2C(OR1)=CH2
CF3CF2CF2C(OR1)=CFCF3
CF3CF2CF2CF=C(OR1)CF3、
F(CF25CF=CF(OR1)、
49C(OR1)=CFCF3
49CF=C(OR1)CF3
F(CF26CF=CF(OR1)、
F(CF25C(OR1)=CFCF3、及び
F(CF25CF=C(OR1)CF3
ここで、R1は、1~8個の炭素原子を有するハロゲン化又は非ハロゲン化アルキル基である。
【0021】
例えば、R1は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、2-エチルヘキシル、n-オクチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシルなどの直鎖、分岐又は環状のアルキル基であっても良く、過ハロゲン化類似体(例えば、過フッ素化類似体)を含むそれらのハロゲン化類似体であってもよい。
【0022】
本発明のさらなる態様によれば、コポリマーを調製するために使用されるモノマーの1種は、少なくとも1つのヒドロキシ基を含むハロゲン化アルケニルエーテル(本明細書では「ハロゲン化ヒドロキシルアルケニルエーテル」と呼ばれる)であり得る。例えば、式(4)で表されるハロゲン化ヒドロキシアルケニルエーテルを使用することができる:
CX89=CX10-O-R2-OH (4)
式中、X8、X9及びX10は個別に、水素原子、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は1~8個の炭素原子を有するハロゲン化若しくは非ハロゲン化アルキル基から選択される。ただし、X8、X9又はX10の少なくとも1つがハロゲン原子又はハロゲン化アルキル基である。そして、R2は、2~13個の炭素原子を有するハロゲン化又は非ハロゲン化アルキル基であり、任意にカルボニル又はエーテル官能基から選択される1つ以上の官能基を含み得、置換又は非置換であり得る。
【0023】
例えば、部分-R2-OHが、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチル、ヒドロキシヘキシル、ヒドロキシオクチル、ヒドロキシデシル、ヒドロキシオーリル、ヒドロキシシクロブチル、ヒドロキシシクロペンチル、ヒドロキシシクロヘキシル、ポリエチレングリコール残基、ポリプロピレングリコール残基、ポリエチレン/ポリプロピレングリコール残基、グリセロール残基、アルコキシル化グリセロール残基、糖残基、アルコキシル化糖残基、トリメチロールプロパン残基、アルコキシル化トリメチロールプロパン残基、ペンタエリスリトール残基、アルコキシル化ペンタエリスリトール残基、ジペンタエリスリトール残基、アルコキシル化ジペンタエリスリトール残基、アルファグルコシド残基、アルコキシル化アルファグルコシド残基、トリメチロールエタン残基、アルコキシル化トリメチロールエタン残基、糖アルコール残基、アルコキシル化糖アルコール残基、アルカノールアミン残基、及びアルコキシル化アミン残基からなる群から選択され得る。
【0024】
本発明においてコモノマーとして使用するのに適したハロゲン化アルケニルエーテルの合成は、本出願と同時に代理人整理番号IR4328の下で出願された米国仮出願に記載されており、その全開示は、全体として、あらゆる目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。特定のタイプのハロゲン化アルケニルエーテルを調製する方法は、Hongら(A novel and convenient synthesis of (Z)-3,3,3-trifluoropropenyl alkyl ethers and CF3-substituted propyl acetals as versatile CF3-containing building blocks, Chem. Commun., 1996, 57~58頁)及びKomataら(Convenient synthesis of 3,3,3-trifluoropropanoic acid by hydrolytic oxidation of 3,3,3-trifluoropropanal dimethyl acetal, Journal of Fluorine Chemistry 129,(2008, 35~39頁)に開示されている。さらに、フッ素化ジアルケニルエーテルの調製は、米国特許出願公開第2006/0122301号に開示されている。このような合成方法は、本発明での使用に適したハロゲン化アルケニルエーテルを提供するように適合され得る。前述の刊行物の開示は、全体として、あらゆる目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
例えば、ハロゲン化アルケニルエーテルは、アルコールと、炭素-炭素二重結合を含むハロゲン化オレフィンと反応させることを含む方法によって調製されることができ、ここで、ハロゲン化アルケニルエーテルを生成するため、炭素-炭素二重結合の少なくとも1つの炭素は、少なくとも1つのハロゲン又は少なくとも1つのハロアルキル基によって置換される。ハロゲン化オレフィンは、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上のフッ素原子を含んでもよい。過フッ素化アルキル基などのフッ素化アルキル基は、炭素-炭素二重結合の1つの炭素上で置換されてもよい。
【0026】
特定の実施形態によれば、そのような反応で使用されるハロゲン化オレフィンは、式(1)による構造を有し得る:
CX12=CX34 (1)
式中、X1、X2、X3及びX4は個別に、水素(H)、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、及びハロゲン化と非ハロゲン化C1~C20のアルキル基からなる群から選択される。ただし、X1、X2、X3又はX4の少なくとも1つが塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)からなる群から選択されるハロゲン又はアロアルキル基である。他の態様では、X1、X2、X3又はX4の少なくとも1つはClであり、ハロゲン化オレフィンはさらに1つ、2つ、3つ、4つ又はそれ以上のフッ素原子を含む。
【0027】
特定の実施形態では、ハロゲン化オレフィンは、CClF=CH2、CH2=CF2、CFH=CH2、CF2=CHF、CF3CF=CH2、CF2=CF2、CH2=CHCl、CHCl=CHCl、CH2=CCl2、CF2=CFCl、CF2=CHCl、CF3CCl=CH2、CF3CCl=CClH、CF3CH=CCl2、CF3CF=CCl2、CF3CF=CClH、CF3CCl=CFH、CF3CCl=CF2、CF3CCl=CFCl、CF3CF=CFCl、CF3CH=CHCl、CF3CF=CFH、CF3CH=CF2、CF3CF=CF2、CF3CH2CF=CH2、CF3CH=CFCH3、CF3CF=CHCF3、CF3CCl=CHCF3、CF2HCH2CF=CH2、CF2HCH2CF=CHCl及びCF2HCH=CFCH2Clからなる群から選択される。
【0028】
ハロゲン化オレフィンと反応するアルコールは、脂肪族アルコール、例えば脂肪族モノアルコール又は脂肪族ポリアルコールであり得る。反応は、無機塩(例えば、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ金属の炭酸塩)の存在下などの塩基性条件下で行うことができる。反応は、1種以上の有機溶媒(例えば、極性、非プロトン性有機溶媒)から構成される液体媒体などの液体媒体中で実施することができる。相間移動触媒が存在してもよい。アルコールとハロゲン化オレフィンは、約25℃~約200℃又は約50℃~約120℃の温度で、約0.5時間~約24時間反応させることができる。アルコール及びハロゲン化オレフィンは、例えば、(アルコールのモル数)/x:ハロゲン化オレフィンのモル数につき約1:8~約8:1の化学量論比で反応させることができ、ここで、x=アルコール1分子あたりのヒドロキシル基の数である。
【0029】
例えば、トリフルオロプロペニルエーテルは、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-プロプ-1-エン(以下、1233zdと呼ぶ)の存在下で適切なアルコールを塩基と反応させることにより調製することができる。アルコールは、脂肪族アルコール(例えば、脂肪族モノアルコール又は脂肪族ポリアルコール)又は芳香族アルコール(例えば、フェノール化合物)であり得る。
【0030】
本発明の別の態様では、ハロゲン化アルケニルエーテル中のトリフルオロプロペン部分の供給源として、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロプ-1-エンが使用される。
【0031】
上述の方法は、反応物としてハロゲン化オレフィン(例えば、フッ素化オレフィン)を使用する。本明細書で使用する場合、「ハロゲン化オレフィン」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合及び少なくとも1つのハロゲン原子(Cl、F、Br、I)を含む有機化合物を指す。本明細書で使用する場合、「フッ素化オレフィン」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合及び少なくとも1つのフッ素原子(及び任意にフッ素以外の1つ以上のハロゲン原子)を含む有機化合物を指す。
【0032】
ハロゲン化オレフィンは、1つ、2つ、3つ又はそれ以上の臭素、塩素、フッ素又はヨウ素原子などのハロゲン原子又はこれらの組み合わせ(例えば、少なくとも1つのフッ素原子及び少なくとも1つの塩素原子)を含み得る。特定の実施形態では、ハロゲン化オレフィンは、ハロゲン化オレフィンに存在する炭素-炭素二重結合に関与する炭素原子の少なくとも1つにおいて置換された少なくとも1つのハロゲン原子を含む。適切なフッ素化オレフィンには、1つ、2つ、3つ又はそれ以上のフッ素(F)原子を含むオレフィンが含まれる。フッ素原子は、炭素-炭素二重結合に関与する炭素原子の一方又は両方において置換されていてもよく、及び/又は炭素-炭素二重結合に関与する炭素原子の一方又は両方に結合しているアルキル基などの部分に置換基として存在してもよい。例えば、フッ素化オレフィンは、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フルオロエチル、ジフルオロエチル、トリフルオロエチル、テトラフルオロエチル、ペルフルオロエチル、フルオロプロピル、ジフルオロプロピル、トリフルオロプロピル、テトラフルオロプロピル、ペンタフルオロプロピル、ヘキサフルオロプロピル、ペルフルオロプロピルなどのフルオロアルキル(例えば、ペルフルオロアルキル)基、及びこれらの類似体(フッ素原子の一部及び/又は水素原子の1つ以上が他のハロゲン原子(例えば、Cl)で置き換えられたもの)を1つ以上含み得る。フッ素化オレフィンは、フッ素以外の1つ以上のハロゲン原子、特に1つ以上の塩素(Cl)、ヨウ素(I)及び/又は臭素(Br)原子を含み得る。本発明の特定の実施形態において、ハロゲン化オレフィン又はフッ素化オレフィンは、炭素-炭素二重結合に関与する炭素原子において置換された少なくとも1つの塩素原子を含み得る。本発明のさらなる実施形態において、ハロゲン化オレフィン又はフッ素化オレフィンは、炭素-炭素二重結合に関与する炭素原子において置換された少なくとも1つの水素原子を含み得る。例えば、フルオロオレフィン、ヒドロフルオロオレフィン、クロロオレフィン、ヒドロクロロオレフィン、クロロフルオロオレフィン、及びヒドロクロロフルオロオレフィンはすべて、本発明のハロゲン化オレフィン反応物として使用することができる。適切なタイプのフッ素化オレフィンには、フルオロエチレン、クロロフルオロエチレン、フルオロプロペン、クロロフルオロプロペン、フルオロブテン、クロロフルオロブテン、フルオロペンテン、クロロフルオロペンテン、フルオロヘキセン、クロロフルオロヘキセンなどが含まれる。本発明の様々な実施形態では、ハロゲン化オレフィンは、2個、3個、4個、5個、6個又はそれ以上の炭素原子、例えば、2~20個の炭素原子、2~8個の炭素原子、2~6個の炭素原子又は2~4個の炭素原子を含む。
【0033】
特定の態様によれば、ハロゲン化オレフィンは、式(1)による構造を有することができる:
CX12=CX34 (1)
式中、X1、X2、X3及びX4は個別に、水素(H)、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、及びハロゲン化と非ハロゲン化C1~C20のアルキル基からなる群から選択される。ただし、X1、X2、X3及びX4の少なくとも1つがハロゲン(F、Cl、Br、I)又はハロゲン化アルキル基(例えば、トリフルオロメチルなどのフッ素化アルキル基)である。
【0034】
ハロゲン化アルケニルエーテルを調製するのに適したハロゲン化オレフィンの具体的な代表例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:
CClF=CH2
CH2=CF2
CFH=CH2
CF2=CHF
CF3CF=CH2
CF2=CF2
CF2=CHCl
CF3CCl=CH2
CF3CH=CHCl
CF3CF=CFH
CF3CH=CF2
CF3CF=CF2
CF3CH2CF=CH2
CF3CH=CFCH3
CF3CF=CHCF3
CF3CCl=CHCF3
CF2HCH2CF=CH2
CF2HCH2CF=CHCl
CF2HCH=CFCH2Cl
CH2=CHCl
CHCl=CHCl
CH2=CCl2
CF2=CFCl;
CF3CCl=CH2
CF3CCl=CClH
CF3CH=CCl2
CF3CF=CCl2
CF3CF=CFCl
CF3CF=CClH
CF3CCl=CFH
CF3CCl=CF2
CF3CCl=CFCl
【0035】
上記のハロゲン化オレフィンのすべての可能な異性体(例えば、E又はZ異性体)を使用することができる。
【0036】
一実施形態では、クロロ置換トリフルオロプロペニル化合物がハロゲン化オレフィン反応物として使用される。適切なクロロ置換トリフルオロプロペニル化合物には、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-プロプ-1-エン(1233zdとしても知られる)及び2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロプ-1-エンが含まれる。1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-プロプ-1-エンのシス又はトランス異性体(すなわち、トランス-(E)-1233zd又はシス-(Z)-1233zd)のいずれも使用できる。
【0037】
ハロゲン化アルケニルエーテルを調製するために利用されるアルコールは、1つ、2つ、3つ、4つ又はそれ以上のヒドロキシル(-OH)基を含み得る。特定の反応条件下で(例えば、反応が塩基によって触媒又は促進される場合)、アルコールは脱プロトン化又は部分的に脱プロトン化された形で存在する可能性がある(例えば、1つ以上のヒドロキシル基が-O-として存在する可能性がある)。アルコールは、モノマー、オリゴマー又はポリマーであってもよい。アルコール中に存在し得る炭素原子の数に関して特に既知の制限はないが、本発明の様々な実施形態において、ハロゲン化オレフィンと反応するアルコールは、1~40個又は2~20個の炭素原子から構成され得る。
【0038】
「アルコール」という用語は、有機部分上で置換された少なくとも1つのヒドロキシル基(-OH)を有する任意の有機化合物を指す。アルコールの有機部分は限定されず、例えば、任意に置換されたアルキル基、任意に置換されたヘテロアルキル基、任意に置換されたアルキレン基、任意に置換されたヘテロアルキレン基、任意に置換されたアリール基、任意に置換されたヘテロアリール基、任意に置換されたシクロアルキル基、又は任意に置換されたヘテロシクロアルキル基であり得る。
【0039】
本明細書で使用する場合、「アルキル」という用語は、飽和脂肪族炭化水素を含むと定義され、直鎖(線状)及び分岐鎖も含む。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~20個の炭素原子、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有する。アルキル基は、任意に、1つ以上(例えば、1~5つ)の適切な置換基で置換され得る。酸素、硫黄、リン、窒素などのヘテロ原子(第3級アミン部分の形で)がアルキル基に存在してもよく、これにより、ヘテロアルキル基(例えば、1つ以上のエーテル、チオエーテル、又はアミノ結合を含むアルキル基)を提供する。ヘテロアルキル基の具体例には、-CH2CH2N(CH32及び-CH2CH2OCH2CH3が含まれる。
【0040】
本明細書で使用する場合、「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する脂肪族炭化水素を指し、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖及び分岐鎖も含む。いくつかの実施形態では、アルケニル基は、2~20個の炭素原子、2~10個の炭素原子、2~6個の炭素原子、3~6個の炭素原子、又は2~4個の炭素原子を有する。アルケニル基は、任意に、1つ以上(例えば、1~5つ)の適切な置換基で置換され得る。アルケニル基は、純粋なE型、純粋なZ型、又はそれらの任意の混合物として存在し得る。酸素、硫黄、窒素などのヘテロ原子(第3級アミン部分の形で)がアルキレン基に存在してもよく、これにより、ヘテロアルキレン基(例えば、1つ以上のエーテル、チオエーテル、又はアミノ結合を含むアルキレン基)を提供する。
【0041】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」という用語は、飽和又は不飽和、非芳香族、単環式又は多環式(二環式など)の炭化水素環(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルなどの単環、又はスピロ、縮合、又は架橋系を含む二環など)を指す。シクロアルキル基は、3~15個の炭素原子を有し得る。いくつかの実施形態では、シクロアルキルは、任意に、1つ、2つ又はそれ以上の非集積的非芳香族二重結合又は三重結合及び/又は1つから3つのオキソ基を含んでもよい。また、シクロアルキルの定義に含まれるものとして、シクロアルキル環に縮合した1つ以上の芳香環(アリール及びヘテロアリールを含む)を有する部分がある。シクロアルキル基は、任意に、1つ以上(例えば、1~5つ)の適切な置換基で置換され得る。
【0042】
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、共役π電子系を有する全炭素単環式又は縮合環多環式芳香族基を指す。アリール基は、例えば、環中に6、10又は14個の炭素原子を有することができる。フェニル、ナフチル及びアントリルは適切なアリール基の例である。
【0043】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1つの環において、O、S及びNからそれぞれ独立して選択される1つ以上のヘテロ原子環員(環形成原子)を有する単環式又は縮合環多環式芳香族複素環式基を指す。ヘテロアリール基は、1~13個の炭素原子、及びO、S、及びNから選択される1~8個のヘテロ原子を含む、5~14個の環形成原子を有することができる。ヘテロアリール基は、任意に、1つ以上(例えば、1~5つ)の適切な置換基で置換され得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクロアルキル」という用語は、単環式又は多環式(スピロ、縮合、又は架橋系、例えば二環系を含む、互いに縮合した2つ以上の環を含む)、飽和又は不飽和、非芳香族の4~15員環系を指し、1~14個の環形成炭素原子と、それぞれがO、S、及びNから選択される1~10個の環形成ヘテロ原子を含む。ヘテロシクロアルキル基は、任意に、1つ以上(例えば、1~5つ)の適切な置換基で置換され得る。
【0045】
上記の有機部分のいずれかに置換基として存在し得る適切なタイプの基には、以下の1つ以上が含まれる:ハロ(F、Cl、Br、I)、アルキル、アリール、アルコキシ、シアノ(-CN)、カルボキシル(-C(=O)R(Rはアルキル、アリールなどの有機置換基)、カルボン酸(-C(=O)OH)、シクロアルコキシ、アリールオキシ、第三級アミノ、硫酸(-SO3M、Mはアルカリ金属又はアンモニウム)、オキソ、ニトリルなどである。
【0046】
本明細書で使用される場合、「ハロ」又は「ハロゲン」基という用語は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を含むと定義される。
【0047】
本明細書で使用される場合、「アルコキシ」という用語は、-O-アルキル基を指す。 アルコキシ基は、任意に、1つ以上(例えば、1~5つ)の適切な置換基で置換され得る。
【0048】
本明細書で使用される場合、「シクロアルコキシ」又は「シクロアルキルオキシ」という用語は、-O-シクロアルキル基を指す。シクロアルコキシ又はシクロアルキルオキシ基は、任意に、1つ以上(例えば、1~5つ)の適切な置換基で置換され得る。
【0049】
本明細書で使用する場合、「アリールオキシ」という用語は、-O-アリール基を指す。アリールオキシ基の例は、-O-フェニル(すなわち、フェノキシ)である。アリールオキシ基は、任意に、1つ以上(例えば、1~5つ)の適切な置換基で置換され得る。
【0050】
本明細書で使用される場合、「オキソ」という用語は、=Oを指す。オキソが炭素原子上で置換される場合、それらは一緒になってカルボニル部分[-C(=O)-]を形成する。オキソが硫黄原子で置換される場合、それらは一緒になってスルフィニル部分[-S(=O)-]を形成する。2つのオキソ基が硫黄原子で置換されている場合、それらは一緒になってスルホニル部分[-S(=O)2-]を形成する。
【0051】
本明細書で使用される場合、「任意に置換される」という用語は、置換が任意選択であり、したがって非置換及び置換された原子及び部分の両方を含むことを意味する。「置換された」原子又は部分は、(指定された原子又は部分のすべての水素原子が、指定された置換基からの選択で置き換えられるまで)指定された原子又は部分上の任意の水素が、示された置換基からの選択で置き換えることができることを示す。ただし、指定された原子又は部分の通常の原子価を超えず、置換により安定な化合物が得られることとする。例えば、フェニル基(すなわち、-C65)が任意に置換される場合、フェニル環上の最大5個の水素原子を置換基で置き換えることができる。
【0052】
本発明の特定の実施形態では、ハロゲン化オレフィンと反応してハロゲン化アルケニルエーテルを提供するアルコールは、一般構造Q(OH)xに対応し、ここで、Qは置換又は非置換の有機部分(例えば、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール及びそれらの置換変異体)であり、xは1以上の整数である(例えば、1~10、1~5又は1~3)。そのような化合物では、各ヒドロキシル基の酸素原子はQの炭素原子に結合している。
【0053】
本発明の特定の実施形態において、ハロゲン化オレフィンと反応するアルコールは、脂肪族ポリアルコール、すなわち、分子当たり2つ以上のヒドロキシル基(例えば、分子当たり2~6個のヒドロキシル基)を含む脂肪族アルコールであり得、「ポリオール」と称することがある。反応条件(例えば、脂肪族ポリアルコールとハロゲン化オレフィンの化学量論)を制御することにより、すべてのヒドロキシル基が反応するか、又はヒドロキシル基の一部のみが反応する。少なくとも1つのハロゲン化(例えば、フッ素化)アルケニル基だけでなく、さらなる反応(例えば、イソシアネート又はカルボン酸又は無水物などの、ハロゲン化オレフィン以外のヒドロキシル反応性化合物との反応)にまだ利用可能な少なくとも1つのヒドロキシル基、又は水素結合などに参加することができる(それにより生成物の特性を変化させる)少なくとも1つのヒドロキシル基を含むハロゲン化アルケニルエーテル生成物の取得が望まれる場合、部分的に反応した生成物が関心の対象になり得る。適切な脂肪族ポリアルコールの例には、C1~C18の脂肪族ジオール(グリコールを含む)、糖アルコール、グリセロール、トリヒドロキシブタン、トリヒドロキシペンタン、トリヒドロキシヘキサン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール及びそれらのアルコキシル化誘導体(例えば、前述の脂肪族ポリアルコールのいずれかは、脂肪族ポリアルコール1モルあたり1から30モル又はそれ以上のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドと反応している)を含むが、これらに限定されない。
【0054】
ハロゲン化オレフィンとの反応後、アルコールの活性水素の少なくとも1つ(すなわち、1つ以上のヒドロキシル基の水素)がハロゲン化アルケニル(ビニル)基(例えば、-CF=CH2、-CH=CHCF3又は-C(CF3)=CH2)に置き換えられる。他の実施形態(アルコールがポリアルコールである場合)では、ポリアルコールの活性水素のすべてより少ない活性水素がハロゲン化アルケニル基で置換される。このような実施形態では、得られるハロゲン化アルケニルエーテルは、一般構造Q(YH)n-m(Y-Alk)mで表すことができ、Q、Y及びnは上記と同じ意味であり、mは1からn-1の整数であり、Alkはハロゲン化アルケニル基である。
【0055】
理論に拘束される意図はないが、上記の反応は、ハロゲン化オレフィンの二重結合にわたるアルコールのヒドロキシル基の付加によって進行すると考えられる。このような反応は、ハロゲン化アルキル基を形成する(すなわち、ハロゲン化オレフィンは、形成された生成物内に存在するハロゲン化アルキル基に変換される)。典型的には、アルコールの反応したヒドロキシル基の酸素原子は、ハロゲン化オレフィンの炭素-炭素二重結合に関与する炭素のうち、より「ハロゲンヘビー」な炭素原子(すなわち、最も多くの数のハロゲン原子が結合している炭素)に優先的に結合されるようになる。特定の場合において、反応したヒドロキシル基の酸素原子は、炭素-炭素二重結合に関与する各炭素原子に結合するようになるため、異なる生成物の混合物が得られる。アルケニル基は、ハロゲン化アルキル基からのハロゲン化水素の脱離から生じる。このような脱離は、反応媒体の塩基性を増加させることにより促進される場合がある。
【0056】
上記変換は、以下のように一般的に説明することができる。
初期反応:R-OH + ZXC=CZ2 → (R-O-)ZXC-CHZ2
脱離:(R-O-)ZXC-CHZ2 → (R-O-)ZC=CZ2 + HX
R=有機部分(例えば、アルキル、アリール)
X=ハロゲン(例えば、F、Cl)
Z=水素、ハロゲン化又は非ハロゲン化有機部分、ハロゲン
【0057】
アルコールとハロゲン化オレフィンを、出発物質間の所望の程度の反応を達成するのに有効な時間及び温度で互いに接触させ、それにより、所望のハロゲン化アルケニルエーテルが生成される。
【0058】
反応は、任意の適切な方法及び任意の適切な機器、装置又はシステムを使用して実施され得、これは、選択された反応物及び反応条件に応じて異なり得る。例えば、反応は、バッチ、連続、半連続又は多段的又は段階的様式で行うことができる。1種以上の反応物が比較的揮発性である場合(例えば、反応物が所望の反応温度より低いか又はわずかに高い沸点を有する場合)、密閉又は加圧容器内で反応を行うこと、及び/又は(例えば、還流冷却器を使用して)反応混合物から留出する可能性のある任意の揮発性反応物質を収集し、そのような反応物質を反応混合物に戻す手段を提供することが有利である。反応容器は、適切な加熱、冷却及び/又は撹拌/かき混ぜ手段、ならびに材料を導入及び/又は回収するためのラインを備えていてもよい。
【0059】
本発明の一実施形態において、反応は、高圧、すなわち大気圧よりも高い圧力下で行われる。例えば、大気圧力から50バールの圧力を利用することができる。
【0060】
アルコールとハロゲン化オレフィンはちょうどの量で反応させることができる。反応物のうち過剰な1つは、事実上、溶媒として利用され得る。別の実施形態では、溶媒又は溶媒の組み合わせなどの反応媒体を使用して、反応物及び/又は反応生成物を可溶化し、又はそうでなければ分散させることができる。本発明の特定の態様によれば、1種以上の有機溶媒が、反応物と混合して使用される。特に、極性の非プロトン性有機溶媒を利用することができ、例えば、スルホキシド(例えば、DMSO)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、ヘキサメチルリントリアミド(HMPT))、ニトリル(例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル)、スルホラン、エステル(例えば、酢酸エチル)、エーテル(THF)、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、ニトロベンゼン、ニトロメタン、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、炭酸塩(例えば、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(FEC)、シス-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(シス-DFEC)、トランス-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(トランス-DFEC)、4,4-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(gem-DFEC)、4-フルオロメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン(FPC)、4-トリフルオロメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン(TFPC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、トランス-ブチレンカーボネート(t-BC)、ジメチルカーボネート(DMC))など及びそれらの組み合わせである。アルコール及びアミノアルコール(例えば、2-アミノエタノール)などの極性プロトン性溶媒は、例えば、アルコール反応物が極性プロトン性溶媒よりもハロゲン化オレフィンとの反応性が高い場合など、少なくとも特定の反応条件下でも使用できる。本発明では、大気条件下(25℃)で2~190、好ましくは4~120、さらにより好ましくは13~92の比誘電率を有する有機溶媒又は有機溶媒の混合物を使用することができる。水はまた、1種以上の有機溶媒(水と混和性又は非混和性であり得る)と組み合わせて存在し得る。したがって、液体反応媒体は、水と1種以上の有機溶媒との混合物を含むことができる。
【0061】
アルコールとハロゲン化オレフィンとの間の所望の反応を促進するために、塩基性条件下で反応物の接触を行うことが有利であり得る。例えば、1種以上の塩基が反応混合物中に存在し得る。塩基は可溶化形態又は不溶性形態で存在し得る。塩基は、それが標的生成物であるハロゲン化アルケニルエーテルの望ましくない副反応を引き起こすほど強くない限り、弱塩基又は強塩基であり得る。無機塩基、特にアルカリ金属水酸化物(例えば、NaOH、KOH)及びアルカリ金属の炭酸塩(例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム)を使用することができる。有機塩基、特に三級アミン、例えばトリアルキルアミン、ピリジンなども使用することができる。塩基性イオン交換樹脂の使用も可能である。塩基の量は、使用される反応物及び塩基ならびに他の反応条件(温度、溶媒)に応じて望まれ得るように変動し得るが、一実施形態では、使用されるアルコールのモルに対してほぼ等モルである。より高度に塩基性の条件(すなわち、強塩基又は高pHの使用)は、通常、最初に形成されたハロアルキル含有生成物からハロゲン化水素が脱離されることから生じると考えられるアルケニル含有生成物の形成を促進するのに役立つ。
【0062】
任意に、相間移動触媒(phase transfer catalyst、PTC)もまた、又はさらに、ハロゲン化オレフィンとアルコールとの間の所望の反応を促進するために使用され得る。有機化学の分野で知られている任意の適切な相間移動触媒を使用することができ、例えば、アンモニウム化合物(例えば、テトラアルキルアンモニウムのハロゲン化合物又は水酸化物などの第四級アンモニウム化合物)、ホスホニウム化合物、クラウンエーテル、クリプタンド(クリプテートとも呼ばれる)、ポリエチレングリコール(PEG)及びそのエーテルならびに他の有機系錯体形成剤である。相間移動触媒は、水溶性又は有機可溶性であり得る。典型的には、相間移動触媒が塩基と組み合わせて使用される場合、相間移動触媒のモル量は、例えば、塩基のモル量の0.1~5%であり得る。
【0063】
反応温度は、例えば、約室温(25℃)から約200℃まで、例えば、約50℃から約150℃まで、又は約60℃から約120℃まで変化し得る。反応器内の圧力は、大気圧と50バールの間、好ましくは大気圧と20バールの間である。圧力は、溶液の自生圧力であってもよく、又は圧力を上げるために不活性物質、例えば窒素を加えてもよい。通常、反応時間は、約0.5時間から約24時間、例えば、約4時間から約12時間の範囲である。
【0064】
反応物質は一度に一緒にされ、次いで反応されてもよい。あるいは、アルコール及びハロゲン化オレフィンの一方又は両方を、反応混合物に連続的に又は少しずつ又は段階的に加えてもよい。アルコールが2つ以上の活性水素含有官能基を含み、ヒドロキシル基の少なくとも1つが未反応のままである生成物を得ることが望ましい場合、2つの反応物を反応させながらアルコールに徐々にハロゲン化オレフィンを追加し、所望の生成物の生成を助けることが好ましい場合がある。
【0065】
本発明の特定の実施形態では、ほぼ化学量論的な量のアルコール及びハロゲン化オレフィンが使用されるが、他の実施形態では、化学量論的に過剰な1つの反応物質を使用してもよい。
【0066】
例えば、アルコールとハロゲン化オレフィンは、化学量論比で、x=アルコールの1分子あたりのヒドロキシル基の数とする場合、(アルコールのモル数)/x:ハロゲン化オレフィンのモル数が、約1:8~約8:1、約1:7~約7:1、約1:6~約6:1、約1:5~約5:1、約1:4~約4:1、約1:3~約3:1、約1:2~約2:1、又は約1:1.5~約1.5:1、又は約1:1.1~約1.1:1で反応させることができる。
【0067】
アルコールが1分子あたり2つ以上のヒドロキシル基を含み、ハロゲン化オレフィンとの反応後に1分子あたり1つ以上のフリー(未反応)ヒドロキシル基を含み生成物(例えば、ハロゲン化ヒドロキシビニルエーテル)の取得が望ましい場合、すべてのヒドロキシル基がハロゲン化オレフィンと反応したものよりも、このような生成物の生成に有利となるように、ハロゲン化オレフィンに対して化学量論的に過剰のアルコールを使用することが望ましい場合がある。そのような場合、アルコールとハロゲン化オレフィンは、化学量論比で、x=アルコールの1分子あたりのヒドロキシル基の数とする場合、(アルコールのモル数)/x:ハロゲン化オレフィンのモル数が約1:1~約12:1、約1.5:1~約10:1又は約2:1~約8:1で反応させることができる。
【0068】
アルコールとハロゲン化オレフィンとの間の反応が所望の期間(例えば、出発物質の所定の程度の変換まで)行われると、得られた反応混合物は、1つ以上のさらなる処理及び/又は精製工程に供されることができ、これにより、所望のハロゲン化アルケニルエーテルを反応混合物の他の成分(例えば、溶媒、未反応の出発物質、望ましくない副生成物、塩基など)から単離する。有機化学分野で知られている精製技術のいずれか、又はそのような技術の任意の組み合わせを使用することができ、選択される特定の方法は、揮発性、結晶化可能性、溶解度、極性、酸性度/塩基性及び反応混合物の成分他の特性など、さまざまなパラメーターの影響を受ける。適切な単離/精製技術には、蒸留(分留を含む)、抽出、濾過、洗浄、中和、クロマトグラフィー分離、吸着/吸収、イオン交換樹脂による処理、結晶化、再結晶、粉砕、昇華、沈殿、透析、膜分離、濾過、遠心分離、脱色、乾燥など、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。そのような技術を適用することにより、ハロゲン化アルケニルエーテルは、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、又はさらには100%の純度(重量%)で得ることができる。
【0069】
本発明に適切に使用できるハロゲン化アルケニルエステルは、アルケニルエステル部分(-C(O)-OC=C)及び少なくとも1つのハロゲン原子(F、Cl、Br及び/又はI)の両方を含む有機化合物として特徴付けることができる。一実施形態によれば、ハロゲン化アルケニルエステルは、構造R-C(=O)-O-CH=CH2に対応し、式中、Rは、少なくとも1つのハロゲン原子を含む有機部分である。例えば、Rは、C1~C18のハロアルキル基であってよい(そのようなハロゲン化アルケニルエステルは、アルケニルハロアルカノエートとも呼ばれる)。ハロアルキル基は、過ハロゲン化(例えば、過塩素化又は過フッ素化)されていてもよい。あるいは、ハロアルキル基は、部分的にのみハロゲン化されていてもよい。ハロアルキル基は、直鎖(線状)、分岐若しくは環状又はそれらのいくつかの組み合わせ(例えば、ハロゲン化メチル置換シクロヘキシル基)であり得る。非環式R基は、式Cxyzを有し得、式中、xは1~18の整数であり、Hは0又は1~2xまでの整数であり、Xはハロゲン(F、Cl、Br、I、複数のハロゲンが存在する場合は互いに同じ又は異なる)であり、zは1から2x+1までの整数であり、y+xは2x+1に等しい。適切なR基の特定の例には、モノ-、ジ-及びトリフルオロメチル、モノ-、ジ-及びトリクロロメチル、ペルフルオロエチル、ペルクロロエチル、ペルフルオロ-n-プロピル、ペルクロロ-n-プロピルなどが含まれるが、これらに限定されない。適切なハロゲン化アルケニルエステルの例示的で非限定的な例としては、フルオロ酢酸アルケニル、ジフルオロ酢酸アルケニル、トリフルオロ酢酸アルケニル、クロロ酢酸アルケニル、ジクロロ酢酸アルケニル、トリクロロ酢酸アルケニル、2-クロロプロピオン酸アルケニル、n-ペンタフルオロプロピオン酸アルケニル、及びn-ヘプタフルオロ酪酸アルケニルが挙げられる。
【0070】
ハロゲン化(メタ)アクリレートは、本発明のコポリマーを調製する際のコモノマーとしても使用に適している。本明細書で使用する場合、ハロゲン化(メタ)アクリレートという用語は、アクリレート(-O-C(=O)CH=CH2)又はメタクリレート(-OC(=O)C(CH3)=CH2)官能基と、少なくとも1つのハロゲン原子(F、Cl、Br、I)を含む有機化合物を指す。一実施形態では、ハロゲン化(メタ)アクリレートは、単一の(メタ)アクリレート官能基を含む。ハロゲン化(メタ)アクリレートは、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上のハロゲン原子を含んでもよく、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。特定の実施形態では、ハロゲン化(メタ)アクリレート中に存在する唯一のハロゲンはフッ素である。他の実施形態において、ハロゲン化(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリレート官能基に存在する炭素原子以外のすべての炭素原子がハロゲン(例えば、フッ素)のみによって置換され、その炭素原子が水素置換されないように、過ハロゲン化(例えば、過フッ素化)される。ハロゲン化(メタ)アクリレートは、一般構造R1-O-C(=O)CR=CH2に対応し得る。式中、Rは水素又はメチルであり、R1は1つ以上のハロゲン置換基を含む有機部分であり、例えばハロゲン化アルキル基、ハロゲン化シクロアルキル基、ハロゲン化アリール基、又はハロゲン化アラルキル基などである。そのような有機部分は、ハロゲン置換基以外の1つ以上の置換基、例えばアルコキシ、シアノ、ニトロ又はカルボキシレート置換基を含み得る。R1は、過ハロゲン化、特に過フッ素化されていてもよい。
【0071】
適切なフッ素含有アクリレート及びメタクリレートコモノマーには、例えば、以下が含まれる:2-フルオロエチルアクリレート及び2-フルオロエチルメタクリレート;1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-イソ-プロピルアクリレート及び1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-イソ-プロピルメタクリレート;一般構造がCF3(CF2nCH2OC(=O)C(R)=CH2(式中、Rは水素又はメチル、nは典型的に0~12である。)である1,1-ジヒドロペルフルオロアルキルアクリレート及びメタクリレート、例えば2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート及び2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3,-ペンタフルオロプロピルアクリレート及び2,2,3,3,3,-ペンタフルオロプロピルメタクリレート、1H,1H-ヘプタフルオロブチルアクリレート及び1H,1H-ヘプタフルオロブチルメタクリレート、1H,1H,-ペルフルオロペンチルアクリレート及び1H,1,H-ペルフルオロペンチルメタクリレート、1H,1H,-ペルフルオロヘキシルアクリレート及び1H,1,H-ペルフルオロヘキシルメタクリレート、1H,1H,-ペルフルオロオクチルアクリレート及び1H,1,H-ペルフルオロオクチルメタクリレート、1H,1H,-ペルフルオロデシルアクリレート及び1H,1,H-ペルフルオロデシルメタクリレート、1H,1H,-ペルフルオロドデシルアクリレート及び1H,1,H-ペルフルオロドデシルメタクリレート;一般構造がCF3(CF2n’(CH22OCOC(R)=CH2(式中、Rは水素又はメチル、n’は典型的に0~11である。)である1,1,2,2-テトラヒドロペルフルオロアルキルアクリレート及びメタクリレート、例えば3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチルアクリレート及び3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチルメタクリレート、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロヘキシルアクリレート、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロヘキシルメタクリレート、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクチルアクリレート、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクチルメタクリレート、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロデシルアクリレート及び1H,1H,2H,2H-ペルフルオロデシルメタクリレート、及び1H,1H,2H,2H-ペルフルオロドデシルアクリレート及び1H,1H,2H,2H-ペルフルオロドデシルメタクリレート;一般構造がCHF2(CF2n’’(CH22OCOC(R)=CH2(式中、Rは水素又はメチル、n’’は典型的に0~12である。)である1,1,Ω-トリヒドロペルフルオロアルキルアクリレート及びメタクリレート、例えば2,2,3,3-テトラフルオロプロピルアクリレート及び2,2,3,3-テトラフルオロプロピルメタクリレート、1H,1H,5H-ペルフルオロペンチルアクリレート及び1H,1H,5H-ペルフルオロペンチルメタクリレート、1H,1H,7H-ペルフルオロヘプチルアクリレート及び1H,1H,7H-ペルフルオロヘプチルメタクリレート、1H,1H,9H-ペルフルオロノニルアクリレート及び1H,1H,9H-ペルフルオロノニルメタクリレート、1H,1H,11H-ペルフルオロウンデシルアクリレート及び1H,1H,11H-ペルフルオロウンデシルメタクリレート;2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチルアクリレート及び2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチルメタクリレート、ペルフルオロシクロヘキシルメチルアクリレート及びペルフルオロシクロヘキシルメチルメタクリレート、3-(トリフルオロメチル)ベンジルアクリレート及び3-(トリフルオロメチル)ベンジルメタクリレート、ペンタフルオロフェニルアクリレート及びペンタフルオロフェニルメタクリレート;ペンタフルオロベンジルアクリレート及びペンタフルオロベンジルメタクリレート;ペンタフルオロベンジルアクリレート及びペンタフルオロベンジルメタクリレート;並びにこれらの混合物。
【0072】
代理人整理番号IR4328Cの下で同時に提出された米国仮出願に記載されているハロアルキルエーテル(メタ)アクリレート及びハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートも、本発明のハロゲン化(メタ)アクリレートコモノマーとしての使用に適している。前述の米国仮出願の開示は、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0073】
本発明のコポリマーは、ハロゲン化オレフィン及び上記のハロゲン化コモノマー(ハロゲン化アルケニルエーテル、ハロゲン化アルケニルエステル、及び/又はハロゲン化(メタ)アクリレート)に加えて、他のエチレン性不飽和コモノマーも含み得る。そのような他のタイプのエチレン系不飽和コモノマーの例には、エチレン、プロピレン、及びアルファオレフィンなどの非ハロゲン化オレフィン;ヒドロキシブチルアルケニルエーテル又はエチルアルケニルエーテルなどの非ハロゲン化アルケニルエーテル;酢酸アルケニル及びバーサティック酸アルケニルなどの非ハロゲン化アルケニルエステル;アリルエーテル及びエステル;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、及びマレイン酸などの酸官能性アルケニルコモノマー;ならびにそれらの様々なエステル、非ハロゲン化(メタ)アクリレート(例えば、非ハロゲン化C1~C12アルキル(メタ)アクリレート)、及びスチレンなどの芳香族アルケニルコモノマーが含まれる。特定の実施形態では、コポリマーは、ハロゲン化オレフィン及びハロゲン化コモノマー以外のモノマーを含まない(すなわち、ハロゲン化オレフィン及びハロゲン化コモノマーは併せて、コポリマーの100重量%を構成する)。しかし、他の実施形態では、コポリマーは、最大50重量%、最大40重量%、最大30重量%、最大20重量%、最大10重量%、最大5重量%又は最大1重量%の、ハロゲン化オレフィン及びハロゲン化コモノマー以外の1つ以上のモノマーを含む。例えば、コポリマーの0.1~50重量%は、ハロゲン化オレフィン及びハロゲン化コモノマー以外のモノマーから構成されてもよい。
【0074】
本発明のコポリマー中のポリマー主鎖に沿ったコモノマー(ハロゲン化オレフィン及びハロゲン化コモノマー)の配置は、重合の速度論に依存し、いくつかの形態を取り得る。1つの好ましい配置は、ハロゲン化オレフィン及びハロゲン化コモノマーの規則的な交互配置を伴う交互コポリマーの配置である。フッ素化オレフィンとフッ素化コモノマーの交互共重合体は、フリーラジカル、酸化、又は光酸化攻撃に対する優れた耐性が期待されるため、特に好ましく、例えば、外部コーティング、バッテリー構成部品、太陽光発電デバイス、エネルギー貯蔵装置、膜、及び濾過装置で使用される材料として望ましい場合がある。また、官能性ハロゲン化(又は非ハロゲン化)コモノマーを使用する交互コポリマーも好ましく、これにより、後の時点で、例えばコーティングの塗布プロセス中、又はデバイスの製造中に、架橋反応の発生が可能になる。当技術分野でよく知られているように、架橋反応によりコーティング特性を構築することにより、低分子量のコポリマーを使用することができ、良好な耐薬品性及び高い靭性などの特性を維持しながら、より低いコーティング粘度、コーティング光沢などの点で応用の利点をもたらす。
【0075】
コポリマー主鎖に沿ったコモノマーの別の好ましい配置は、ランダムコポリマー(統計コポリマーとも呼ばれ得る)の配置である。ランダムコポリマーの構造は、通常、共重合中に反応する異なるモノマーの反応速度論によって決定される。ランダムコポリマーは、本発明の一実施形態では、線状構造を有してもよいが、他の実施形態では、分岐又はさらには架橋構造を有してもよい。
【0076】
コポリマー主鎖に沿ったコモノマーのさらなる別の好ましい配置は、ブロックコポリマーのそれである。このようなブロックコポリマーは、例えば、ハロゲン化オレフィンの少なくとも1つのブロック及びハロゲン化コモノマーの少なくとも1つのブロックから構成されることができ、構造として直鎖又は分岐(放射状)のどちらでもよい。様々な実施形態では、ブロックコポリマーは、例えば、以下の構造のいずれかを有することができる:A-B;A-B-A;B-A-B;A-B-A-B;又はA-B-A-B-A。ここで、Aは、重合形態のハロゲン化オレフィンのブロック(すなわち、ポリ(ハロゲン化オレフィン)ブロック)であり、Bは、ハロゲン化コモノマーのブロック(すなわち、ポリ(ハロゲン化アルケニルエーテルブロック)、ハロゲン化アルケニルエステルのブロック(すなわち、ポリ(ハロゲン化アルケニルエステルブロック)、又はハロゲン化(メタ)アクリレートのブロック(すなわち、ポリ(ハロゲン化(メタ)アクリレートブロック))である。
【0077】
グラジエントコポリマーもまた、本発明の範囲内であると理解される。
【0078】
コポリマーの特性は、他の要因の中で特定のコモノマー及び重合条件を選択することにより、特定の最終用途に望まれるように、変更及び制御することができる。例えば、コポリマーは、アモルファス、半結晶性又は結晶性;線状、分岐又は架橋;熱可塑性、熱硬化性又はエラストマー性であってよい。
【0079】
本発明の特定の実施形態において、コポリマーは、ポリスチレン標準を使用したゲル浸透クロマトグラフィーにより測定する場合、5000~1,500,000、又は5000~500,000、又は5,000~250,000、又は5000~100,000ダルトン(g/モル)の数平均分子量を有する。使用される重合方法及び他のパラメーターに応じて、コポリマーの多分散性(Mw/Mn)は、例えば1~3又はそれ以上であり得る。
【0080】
好ましい実施形態では、本発明によるコポリマーは、1種以上のハロゲン化オレフィンと、ハロゲン化アルケニルエーテルモノマー、ハロゲン化アルケニルエステルモノマー、及びハロゲン化(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される1種以上のハロゲン化コモノマーとの共重合によって形成される。本発明のコポリマーは、例えば、有機媒体(溶液重合)又は水性媒体(分散及び乳化重合)で調製することができ、これには、モノマーの合計で0.1重量%~80重量%、より好ましくはモノマーの合計で0.5重量%~50重量%、さらにより好ましくはモノマーの合計で1~40重量%が含まれる。
【0081】
重合プロセスは、バッチ、セミバッチ又は連続重合プロセスであり得る。懸濁法又は溶液法も使用できるが、乳化法が好ましい。無溶媒又はバルク重合も実施できる。
【0082】
重合が有機媒体で行われる場合、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N、N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスファミド、テトラメチル尿素、リン酸トリエチル(TEP)、リン酸トリメチル(TMP)、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル及びテトラエチル尿素などの溶媒を含む1種以上の有機溶媒を有機媒体として使用できる。好ましい一実施形態によれば、媒体は、モノマー及び/又はポリマーの溶媒及び/又は分散剤として作用し、そのような処理には、分散、乳化及び溶液重合が含まれる。そのような系における媒体の例は、好ましくは溶液重合のための以下の溶媒を含む:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及び酢酸ブチルなどのエステル;アセトン、メチルエチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン;ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ミネラルスピリットなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、溶剤ナフタなどの芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、tert-ブタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノアルキルエーテルなどのアルコール;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンなどの環状エーテル;HCFC-225、HFC365mfc、HFO1336mzz、HCFC-141bなどのフッ素化溶媒;トランス又はシス1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン又はそれらの混合物、HFE7100及びHFE7200などのヒドロフルオロエーテル、ジメチルスルホキシド、並びにそれらの混合物。
【0083】
重合が超臨界二酸化炭素中で行う場合、二酸化炭素は単独で、又は上記の溶媒と混合して使用することができる。例えば、HCFC-225、HFC365mfc、HFO1336mzz、HCFC-141bなどのフッ素化溶媒;トランス又はシス1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン又はそれらの混合物、HFE7100及びHFE7200などのハイドロフルオロエーテルである。
【0084】
重合が、分散又は乳化重合などの水性媒体中で行われる場合、以下の手順に従うことができる:最初に反応器に脱イオン水及び少なくとも1つの分散剤を添加し、その後脱酸素化(酸素の除去)を行う。水性媒体のpHは2~10であることが好ましく、4~9であることがより好ましく、6~8であることがさらにより好ましい。反応器は、攪拌機及び熱制御手段を備えた加圧重合反応器であり得る。攪拌は一定であってもよく、又は重合の過程でプロセス条件を最適化するために変化させてもよい。反応器が所望の温度に達した後、少なくとも1つのモノマーが反応器に添加されて所定の圧力に達し、次いで適切な重合速度を維持するためにフリーラジカル開始剤が適切な流量で反応器に導入される。ハロゲン化オレフィンとハロゲン化コモノマーの比率は、反応段階の最初、反応段階の途中、及び反応段階の終点で選択することができる。このような選択の目的(最終目標はランダムコポリマーを調製すること)は、成長するコポリマーチェーン内のモノマーの統計的にランダムな分布を促進することにより、形成されるコポリマーのブロック性を最小限に抑えるように、異なるモノマーの分布を制御することである。所望の固体レベルに達した後、モノマーの供給を停止することができる。しかし、開始剤の投入を停止又は継続して、未反応のモノマーを消費することができる。開始剤の投入が停止した後、反応器を冷却し、攪拌を停止することができる。未反応のモノマーは排出することができ、調製されたコポリマーは、排出口を通して、又は他の収集手段によって収集することができる。コポリマーは、オーブン乾燥、スプレー乾燥、剪断又は酸凝固、続いて乾燥などの標準的な方法を使用して分離するか、又はその後の塗布又は使用のために水性媒体中に保持することができる。
【0085】
乳化重合では、適切な界面活性剤又は乳化剤を使用して、安定した分散液を得ることができ、それにより、コポリマーのラテックスが形成される。界面活性剤は、疎水性部分と親水性部分の両方を持つタイプの分子であり、それにより、疎水性分子及び疎水性分子の凝集体を水性系で安定させ及び分散させることができる。本発明による乳化重合では、フッ素化界面活性剤を使用して、コポリマー、特に比較的高分子量を有するコポリマーを形成することができる。本明細書で使用する場合、「フッ素化界面活性剤」という用語は、界面活性剤主鎖が1つ以上のフッ素原子を含むことを意味する。適切なタイプのフッ素化界面活性剤には、例えば、ペルフルオロオクタン酸のアンモニウム塩及びペルフルオロアルキルスルホン酸の塩が含まれる。フッ素化界面活性剤は高価になる傾向があり、米国環境保護庁(EPA)によって課される制限の対象となり得る。これらの理由により、代わりに1つ以上の非フッ素化界面活性剤を使用することが好ましい場合がある。非フッ素化界面活性剤は、界面活性剤の主鎖上にフッ素がない界面活性剤であるが、界面活性剤の末端基が1つ以上のフッ素原子を含むことができる。適切な非フッ素化界面活性剤は、例えば、以下からなる群から選択され得る:
i)以下の式を有する非イオン性ブロックコポリマー
1-[(CH2-CH2-O-)Xm-[(CH2-C(CH3)-O-)Yn-[(CH2-CH2-CH2-CH2-O-)Zk-T2
式中、X、Y、Zは2~200であり、m、n、kは0~5であり、T1及びT2は、水素、ヒドロキシル、カルボキシル、エステル、エーテル又は炭化水素から選択される末端基であり、ポリエチレングリコールアクリレート(PEGA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル(Triton(登録商標)X-100)、ポリプロピレングリコールアクリレート(PPGA)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコールメタクリレート(PEG-MA)、ジメチルポリエチレングリコール(DMPEG)、ポリエチレングリコールブチルエーテル(PEGBE)、ポリプロピレングリコールメタクリレート(PPG-MA)、ポリプロピレングリコールジメタクリレート(PPG-DMA)、及びポリテトラメチレングリコール(PTMG)を含むがこれらに限定されない;
ii)アルキルホスホン酸、ポリビニルホスホン酸、ポリアクリル酸、ポリビニルスルホン酸、及びそれらの塩;
iii)C7~C20の線状1-アルカンスルホネート、C7~C20の線状2-アルカンスルホネート、C7~C20の線状1,2-アルカンジスルホネート、又はそれらの混合物から選択されるアルカンスルホネート;
iv)R-SO4M及びMO4S-R-SO4Mなどのアルキル硫酸塩界面活性剤。ここで、Rは炭化水素基であり、Mはアルカリ金属カチオン又はアンモニウムから選択される一価カチオンである。アルキル硫酸塩界面活性剤の例には、ラウレル硫酸ナトリウム、ラウレル硫酸カリウム、ラウレル硫酸アンモニウム、及びそれらの混合物が含まれる;そして
v)シロキサン系界面活性剤。
【0086】
重合は、例えば、コポリマー固体の重量に対して、1種類のフッ素化若しくは非フッ素化界面活性剤、又はフッ素化界面活性剤のブレンド、又は非フッ素化界面活性剤のブレンド、又は1種以上のフッ素化界面活性剤と非フッ素化界面活性剤のブレンドを、100ppm~2重量パーセント、好ましくは300ppm~1重量パーセントを使用してもよい。重合プロセスにおいて、界面活性剤又は乳化剤は、重合前にすべて前もって添加するか、重合中に連続的に供給するか、重合の前及び途中に分けて供給するか、又は重合が開始してしばらく進行した後に供給することができる。
【0087】
分散又は懸濁重合では、分散剤又は懸濁剤が重合プロセスで使用される。一般に、エチレン性不飽和モノマーの重合プロセスにおいて以前又は従来から使用されている任意の懸濁剤は、それが重合温度で分解しないままである限り、使用することができる。メチルヒドロキシアルキルセルロース又はポリビニルアルコールなどの懸濁剤は、例えば、モノマー投入の重量に対して、0.0001~1.0%の範囲の濃度でプロセスで使用することができる。
【0088】
反応は、無機過酸化物、有機過酸化物、及び酸化剤と還元剤の「レドックス」の組み合わせを含む、エチレン系不飽和モノマーの重合について知られている任意の適切な開始剤の添加によって開始及び維持することができる。典型的な無機過酸化物の例としては、65℃~105℃の温度範囲で有用な活性を有する、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム又は過硫酸アンモニウムが挙げられる。重合に使用できる有機過酸化物には、アルキル、ジアルキル、及びジアシルペルオキシド、ペルオキシジカーボネート、及びペルオキシエステルが含まれる。ジ-t-ブチルペルオキシドはジアルキルペルオキシドの例であり、t-ブチルペルオキシピバレート及びt-アミルペルオキシピバレートはペルオキシエステルの例であり、ジ(n-プロピル)ペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ(sec-ブチル)ペルオキシジカーボネート、及びジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、及びジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネートは、ペルオキシジカーボネートの例である。クロロカーボン系及びフルオロカーボン系のアシルペルオキシドなどのハロゲン化フリーラジカル開始剤も重合に使用することができる。このような開始剤の例には以下が含まれる:トリクロロアセチルペルオキシド、ビス(ペルフルオロ-2-プロポキシプロピオニル)ペルオキシド、[CF3CF2CF2OCF(CF3)COO]2、ペルフルオロプロピオニルペルオキシド、(CF3CF2CF2COO)2、(CF3CF2COO)2、{(CF3CF2CF2)-[CF(CF3)CF2O]m-CF(CF3)-COO}2(m=0~8)、[ClCF2(CF2nCOO]2、及び[HCF2(CF2nCOO]2(n=0~8);ペルフルオロアゾイソプロパン、[(CF32CFN=]2、RfN=NRf(Rfは炭素数1~8の直鎖又は分岐ペルフルオロカーボン基である)などのペルフルオロアルキルアゾ化合物;ヘキサフルオロプロピレン三量体ラジカル、[(CF32CF]2(CF2CF2)C・ラジカルなどの安定した又は障害されたペルフルオロアルカンラジカル;並びにペルフルオロアルカン。「レドックス」システムは、さらに低い温度で機能できる。レドックスシステムの例には、過酸化水素、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、過硫酸塩などの酸化剤の組み合わせが含まれ、還元金属塩などの還元剤もあり(鉄(II)塩が特定の例である)、任意にホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム又はアスコルビン酸などの活性剤と組み合わされる。
【0089】
重合に必要な開始剤の量は、その活性と重合に適用される温度に関係する。使用される開始剤の総量は、一般に、使用される総モノマー重量に対して0.01重量%~5.0重量%である。上記の1種以上の有機開始剤と上記の1種以上の無機ラジカル開始剤の混合物を使用して、望ましい速度で重合を行うことができる。典型的には、反応を開始するために最初に十分な開始剤を添加し、その後、追加の開始剤を任意に添加して、重合を便宜的な又は所望の速度に維持することができる。
【0090】
ハロゲン化オレフィンモノマーと、ハロゲン化アルケニルエーテル、ハロゲン化アルケニルエステル及びハロゲン化(メタ)アクリレートからなる群から選択されるハロゲン化コモノマー、及び任意でそのようなハロゲン化コモノマー以外のコモノマー、開始剤、並びに界面活性剤に加えて、不飽和フルオロモノマーの乳化重合に使用される他の典型的な添加剤を、典型的なレベルで添加してもよい。連鎖移動剤を重合に添加して、コポリマー生成物の分子量を調節することができる。これらは、反応の開始時に単一の部分として重合に添加でき、又は反応を通して漸増的又は連続的に添加することができる。連鎖移動剤の量は、特定の連鎖移動剤の活性、モノマーの性質及び活性、及びコポリマー生成物の所望の分子量に依存するが、モノマーの総重量に対して0.1~2重量%の範囲で反応混合物に加えられるのが典型的である。アルコール、カーボネート、ケトン、エステル、エーテルなどの酸素化化合物は、連鎖移動剤として機能する。エタンやプロパンなどのアルカンも、重合において連鎖移動剤として機能する。ハロカーボン又はヒドロハロカーボンなどのハロゲン含有化合物(例えば、トリクロロフルオロメタン)は、連鎖移動剤として役立ち得る。上記で定義したハロゲン化アルケニルエーテル、ハロゲン化アルケニルエステル又はハロゲン化(メタ)アクリレートコモノマー自体も、連鎖移動剤として機能し得る。水性媒体重合中に存在し得る添加剤には、パラフィン防汚剤、緩衝剤、及び不飽和モノマーが関与する重合に典型的に使用される他の添加剤も含まれるが、これらに限定されない。
【0091】
重合の温度は、使用される開始剤の特性に応じて変化し得るが、典型的には、20~160℃であり、最も好適には35~130℃であり、最も好ましくは50~120℃である。しかし、温度はこの範囲に限定されず、高温又は低温開始剤が使用される場合、より高い又はより低い温度であってもよい。重合の圧力は、反応装置の能力、選択した開始剤システム、及びモノマーの選択に依存するが、典型的には280~20,000kPaである。重合圧力は、好ましくは2,000と11,000kPaとの間であり、最も好ましくは2750~7000kPaである。
【0092】
本発明のコポリマーは、溶媒分散液、溶媒溶液、水性分散液として、あるいは粉末コーティングとして、又は粉末、ペレット、顆粒、シート、フィルム、押出物、ラミネート若しくは成形品の形態で配合することができる。本発明のコポリマーは、そのような配合物の唯一のポリマー成分として使用することができ、又はそれらは、性能特性のさらなる微調整を提供するのに役立つ他のタイプのポリマーとブレンドすることができる。このような配合物には、コーティングでの使用に典型的な添加剤(pH調整剤、共溶媒、凝集剤、可塑剤、UV安定剤、着色剤、染料、フィラー、水溶性樹脂、レオロジー制御添加剤、増粘剤、顔料、顔料エクステンダーを含むが、これらに限定されない)を含んでもよい。それらは、以下の成分として役立ち得る:現場塗布及び工場塗布のコーティングと塗料、タンクライニング、反射防止コーティング、コーキング材、シーラントと接着剤、インクとワニス、セメントとモルタル用の変性樹脂、固結剤、及びシミ:バッテリーセパレーター、バッテリーアノード又はカソード用バインダー;生体適合性が好適である医療機器又はその他の製品;セパレーター、圧電デバイス、エネルギーサージデバイス、バッテリーの容量要素又は絶縁要素、スーパーキャパシター、及びその他の電気エネルギー貯蔵デバイス;光起電装置;絶縁層又はバリア層(例、酸素バリア層);誘電体層;タイ層;接着剤層;導電層;包装用フィルム;並びに膜及び他のろ過装置。本発明のコポリマーを含有する配合物は、耐候性、電気化学的安定性、耐薬品性、防汚性/耐油性、及び/又は疎水性/耐水性の要求がある場合に特に有用である。
【0093】
特に、本発明のコポリマーは、コーティング組成物の成分として、単独で又は他の成分(例えば、フィラー、顔料、可塑剤、安定剤、レベリング剤、接着剤、凝集剤、他のポリマーなど)と組み合わせて使用している。本発明のコポリマーを使用して形成されるコーティングは、低表面エネルギーコーティングであり得る。本発明によるコポリマーで構成されるコーティング組成物は、基材の表面に層として(又は複数の層の形態で)塗布され、それにより基材表面に1つ以上の所望の属性を付与する(例えば、耐候性の向上、強化された外観(光沢など)、強化された汚れ耐性、化学的侵襲、溶剤、腐食、水などに対する強化された保護)。コーティング組成物のコポリマー及び他の成分(存在する場合)の特性及び所望される最終結果に応じて、コーティング組成物の層は、任意の適切な方法で基材表面上に形成され得る。例えば、コポリマーを適切な溶媒又は溶媒の組み合わせに溶解してコーティング組成物を提供することができ、これを次に任意の適切な方法(スプレー、ディッピングなど)を使用して基材表面に塗布して層を形成し、次に(例えば、加熱することにより)乾燥させて、溶媒を除去し、コポリマーからなるコーティングを形成することができる。あるいは、コポリマーは、コポリマーの非溶媒(例えば、水)を含む液体マトリックス中に微粒子の形態で懸濁又は分散され、そして、コーティング組成物を、分散液又は懸濁液として基材表面に塗布され、乾燥されてもよい。粉体塗装又は押し出し塗装技術も利用できる。
【0094】
本発明のコポリマーはまた、シート、フィルムなど、ならびに成形品及び押出品を形成するためのものである。本発明のコポリマーと1種以上の他のポリマー(他のコポリマーを含む)とのブレンド、アロイ及び他の混合物、例えばアクリル樹脂などとのブレンドも調製することができる。コポリマーは、着色剤、安定剤、難燃剤、可塑剤、接着改変剤、加工助剤などを含むがこれらに限定されない、ポリマー技術分野で既知の任意の添加剤と配合することができる。
【0095】
本発明によるコポリマーは、多種多様な用途で使用することができる。例えば、コポリマーは、相溶化剤、発泡剤、界面活性剤、又は低表面エネルギー添加剤として使用でき(シミ防止、防汚、又は粘着防止用途、湿潤若しくはコーティング用途、及び汚れ防止用途)、耐溶剤性又は耐薬品性(コーティング、フィルム、加工部品など)を改善又は強化するために使用でき、撥油性及び撥水性の表面の作製(プラスチック、織物、紙、木、革などの基材の場合)に使用でき、医療機器のコーティングとして、潤滑剤として、電子アプリケーション用の添加剤及びバルク材料として、又は熱可塑性エラストマーとして、耐衝撃性改良剤として、接着剤として使用でき、薬物(又は医薬品)デリバリー用、化粧品用途、及びその他多くの用途に使用できることは当業者に明らかである。
【0096】
本発明によるコポリマーは、ポリマー材料の表面エネルギーを改変するために有用な低表面エネルギーポリマーであり得る。これらのポリマーは、添加量で使用するか、バルク材料として使用できる。バルクポリマーに固有ではない耐汚染性などの特性を付与するために、多種多様なバルクポリマーに添加量を含めることができる。潜在的な用途には、食品用途、織物、コーティング、医薬品、塗料、及び他の多くの業種が含まれる。
【0097】
本発明によって提供されるコポリマー(低表面エネルギーコポリマーを含む)は、コーティング組成物で従来から使用されている熱可塑性及び熱硬化性樹脂のいずれかと組み合わせて使用することができる。もちろん、使用される特定の樹脂は、必要とするコーティング用途に適するように選択されるべきであり、コーティング組成物の他の成分と相溶でなければならない。有用な樹脂の例には、ラテックス、アクリル樹脂、ビニルアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、フェノキシ樹脂などが含まれる。最終コーティング樹脂が熱硬化性コーティングである場合、樹脂成分は、有効量の架橋成分、例えば、従来使用されているメラミン/ホルムアルデヒド樹脂、尿素/ホルムアルデヒド樹脂などの少なくとも1種の架橋剤を含む。1種以上のそのような架橋剤は、熱硬化性樹脂と呼ばれる1種以上の他の樹脂と組み合わせて、例えば熱を加えると、熱硬化性樹脂又は複数の樹脂に架橋を形成し、最終的な所望の熱硬化性表面コーティングを形成するのに有効な量で使用される。
【0098】
さらに、本発明によるコポリマーを疎水性添加剤として利用して、コーティング、繊維及びフィルムに撥水特性を提供する重要な機会が存在する。そのような製品の重要な側面は、それらが溶融加工中に添加され、これによりその後の処理工程を排除できることである。このような疎水性添加剤の最も魅力的な用途は、織物、コーティング、フィルムであり、これらの用途での主要な製品属性は、シミ防止、汚れ防止、撥水機能である。本発明によるコポリマーは、ポリマー製品の表面化学の修飾を必要とする様々な用途で効果的に機能することが期待される。現在、いくつかのフッ素化材料がそのような用途に使用されているが、そのようなフッ素化材料は段階的に廃止されるという大きな規制圧力下にある。
【0099】
特に関心のある分野としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(1)織物、コーティング及び塗料用途における撥水用途において、本発明によるコポリマーは、民用及び商業用のためのステイン防止及び撥水繊維、フィルム、シート、コーティング及び塗料などの製造に使用することができる;(2)特に剥離ライナーを含む自己接着用途、ここで、ライナーは、ラベルストック及びグラフィックアート市場、すなわち、カレンダー加工されたクラフト紙及びポリエチレンコーティング紙、及びフィルムライナー用にコーティングされる;(3)離型剤;(4)フルオロケミカル界面活性剤;(5)印刷可能/塗装可能なポリオレフィン;(6)保護窓処理;(7)落書き防止コーティング;(8)航空機のコーティング;(9)結露防止添加剤;(10)耐摩耗添加剤。
【0100】
本発明の例示的な側面
本発明の様々な例示的で、非限定的な側面は、以下のように要約され得る:
側面1:
a)少なくとも1種のハロゲン化オレフィンと、b)ハロゲン化アルケニルエーテル、ハロゲン化アルケニルエステル、及びハロゲン化(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のハロゲン化コモノマーとのコポリマー。
側面2:
前記少なくとも1種のハロゲン化オレフィンが、式(1)で表されるハロゲン化オレフィンを含む、側面1に記載のコポリマー:
CX12=CX34 (1)
式中、前記ハロゲン化オレフィンは、少なくとも1つのハロゲン原子を含み、X1、X2、X3及びX4は個別に、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又は1~8個の炭素原子を有するハロゲン化若しくは非ハロゲン化アルキル基から選択される。
側面3:
前記ハロゲン化オレフィンが、少なくとも一つのフッ素原子を含む、側面2に記載のコポリマー。
側面4:
前記ハロゲン化オレフィンは、フッ素原子及び塩素原子からなる群から選択され、かつ前記ハロゲン化オレフィンの炭素-炭素二重結合に関与する少なくとも1つの炭素原子に結合している少なくとも1つのハロゲン原子を含む、請求項2に記載のコポリマー。
側面5:
前記少なくとも1種のハロゲン化オレフィンが、CClF=CF2,CH2=CF2,CFH=CH2,CF2=CHF,CF2=CF2,CHF=CHF,CF3CF=CH2,CF2=CHCl,CF3CH=CHF,CClF=CH2,CF2=CF2,CF3CCl=CH2,CF3CH=CHCl,CF3CF=CFH,CF3CH=CF2,CF3CF=CFCF3,CF3CF2CF=CF2,CF3CH=CHCF3,CF2HCH2CF=CH2,CF2HCH2CF=CClH,CF2HCH=CFCH2Cl及びCF3-CF=CF2からなる群から選択されるハロゲン化オレフィンを含む、側面1~4のいずれかに記載のコポリマー。
側面6:
前記少なくとも1種のコモノマーが、少なくとも1つのフッ素原子から構成される少なくとも1種のハロゲン化アルケニルエーテルを含む、側面1~5のいずれかに記載のコポリマー。
側面7:
前記少なくとも1種のコモノマーが、式(2)で表されるハロゲン化アルケニルエーテルを含む、側面1~6のいずれかに記載のコポリマー:
CX56=CX7-OR1 (2)
式中、前記ハロゲン化アルケニルエーテルは、少なくとも1つのハロゲン原子を含み、X5、X6及びX7は個別に、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又は1~8個の炭素原子を有するハロゲン化若しくは非ハロゲン化アルキル基から選択され、R1は、1~8個の炭素原子を有するハロゲン化又は非ハロゲン化アルキル基であり、任意に少なくとも1つのヒドロキシル基で置換される。
側面8:
1が式(3)で表される、側面7に記載のコポリマー:
abcCld (3)
式中、aは1~8の整数であり、bは0又は1~2a+1の整数であり、cは0又は1~2a+1の整数であり、dは0又は1~2a+1の整数であり、b+c+dは2a+1である。
側面9:
c又はdの少なくとも1つが1~2a+1までの整数である、側面8に記載のコポリマー。
側面10:
前記少なくとも1種のコモノマーが、CF3-C(OR1)=CH2,CF3C(OR1)=CFH,CF3C(OR1)=CF2,CF3-CH=CH(OR1),CF3CF=CF(OR1),CF3CF=CH(OR1),CF3CH=CF(OR1),CF(OR1)=CHCl,CF(OR1)=CH2,CF(OR1)=CFCl,CF(OR1)=CFH,CF(OR1)=CCl2,CF2=CF(OR1),CF3C(OR1)=CFCF3,CF3CH=C(OR1)CH3,CF3CH2C(OR1)=CH2,CF3C(OR1)=CHCF3,CF(OR1)=CFCF2CF2H,CF3CF2C(OR1)=CH2,CF3CF2CF(CF3)C(OR1)=CH;CH3CH2CH=CF(OR1);CF3C(OR1)=CFCF2CF3,CF3CF=C(OR1)CF2CF3;(CF32CFC(OR1)=CH2,CF3CF2CF2CF2C(OR1)=CH2,CF3CF2CF2C(OR1)=CFCF3,CF3CF2CF2CF=C(OR1)CF3,F(CF25CF=CF(OR1),C49C(OR1)=CFCF3,C49CF=C(OR1)CF3,F(CF26CF=CF(OR1),F(CF25C(OR1)=CFCF3,及びF(CF25CF=C(OR1)CF3からなる群から選択されるハロゲン化アルケニルエーテルを含み、ここで、R1が1~8個の炭素原子を有するハロゲン化又は非ハロゲン化アルキル基である、側面1~9のいずれか記載のコポリマー。
側面11:
前記少なくとも1種のコモノマーが、少なくとも1種のハロゲン化ヒドロキシアルケニルエーテルを含む、側面1に記載のコポリマー(すなわち、少なくとも1つのコモノマーは、ヒドロキシルで置換されているハロゲン化アルケニルエーテルである)。
側面12:
前記少なくとも1種のハロゲン化ヒドロキシアルケニルエーテルが、式(4)で表されるハロゲン化ヒドロキシアルケニルエーテルを含む、側面11に記載のコポリマー:
CX89=CX10-O-R2-OH (4)
式中、X8、X9及びX10は個別に、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又は1~8個の炭素原子を有するハロゲン化若しくは非ハロゲン化アルキル基から選択される。R2は、2~13個の炭素原子を有するハロゲン化又は非ハロゲン化アルキル基であり、任意にカルボニル又はエーテル官能基から選択される1種以上の官能基を含み得、置換又は非置換であり得る。
側面13:
-R2-OHが、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチル、ヒドロキシヘキシル、ヒドロキシオクチル、ヒドロキシデシル、ヒドロキシラウリル、ヒドロキシシクロブチル、ヒドロキシシクロペンチル、ヒドロキシシクロヘキシル、ポリエチレングリコール残基、ポリプロピレングリコール残基、ポリエチレン/ポリプロピレングリコール残基、グリセロール残基、アルコキシル化グリセロール残基、糖残基、アルコキシル化糖残基、トリメチロールプロパン残基、アルコキシル化トリメチロールプロパン残基、ペンタエリスリトール残基、アルコキシル化ペンタエリスリトール残基、ジペンタエリスリトール残基、アルコキシル化ジペンタエリスリトール残基、アルファグルコシド残基、アルコキシル化アルファグルコシド残基、トリメチロールエタン残基、アルコキシル化トリメチロールエタン残基、糖アルコール残基、アルコキシル化糖アルコール残基、アルカノールアミン残基、及びアルコキシル化アミン残基からなる群から選択される、側面12に記載のコポリマー。
側面14:
前記少なくとも1種のコモノマーが、少なくとも1種のハロゲン化(メタ)アクリレートから構成される、側面1~13のいずれかに記載のコポリマー。
側面15:
前記少なくとも1種のコモノマーが、少なくとも1種のフッ素化(メタ)アクリレートから構成される、側面1~14のいずれかに記載のコポリマー。
側面16:
前記少なくとも1種のコモノマーが、少なくとも1種のハロゲン化アルケニルエステルから構成される、側面1~15のいずれかに記載のコポリマー。
側面17:
前記少なくとも1種のコモノマーが、少なくとも1種のフッ素化アルケニルエステルから構成される、側面1~16のいずれかに記載のコポリマー。
側面18:
ポリスチレン標準を使用したゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される数平均分子量が5000~1,500,000ダルトンである、側面1~17のいずれかに記載のコポリマー。
側面19:
前記コポリマーが、ランダム、交互、グラジエント又はブロックコポリマーである、側面1~18のいずれかに記載のコポリマー。
側面20:
前記コポリマーは、重合形態で、1~99重量%のハロゲン化オレフィン及び99~1重量%のハロゲン化コモノマーから構成される、側面1~19のいずれかに記載のコポリマー。
側面21:
側面1~20に記載のコポリマーの製造方法であって、a)少なくとも1種のハロゲン化オレフィンと、b)ハロゲン化アルケニルエーテル、ハロゲン化アルケニルエステル、及びハロゲン化(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させることを含む方法。
側面22:
表面を有する基材と、当該基材の表面の少なくとも一部に側面1~20のいずれかに記載のコポリマーから構成されるコーティングとを含む物品。
側面23:
側面1~20のいずれかに記載のコポリマー及び少なくとも1種の非水性溶媒を含む、電池電極バインダー。
側面24:
電極活物質及び側面1~20のいずれかに記載のコポリマーを含む少なくとも1つの電極を含む電池。
側面25:
側面1~20のいずれかに記載のコポリマーと、少なくとも1種のヒドロキシル反応性物質とを反応させることにより得られるポリマー物品であって、前記コポリマーは、1種以上の重合形態のハロゲン化ヒドロキシアルケニルエーテルを含む、物品。
側面26:
少なくとも1種の側面1~20のいずれかに記載のコポリマーを含む製造物品であって、コーティング、塗料、接着剤、シーラント、繊維、成形品、フィルム、シート、複合材及びラミネートからなる群から選択される物品。
【0101】
この明細書内では、実施形態は、明快かつ簡潔な明細書を書くことができるように記載されているが、実施形態は、本発明から離れることなく様々に組み合わせたり、分離したりできることが意図され、理解される。例えば、本明細書に記載されているすべての好ましい特徴は、本明細書に記載されている本発明のすべての態様に適用可能であることが理解される。
【0102】
いくつかの実施形態では、本明細書における本発明は、コポリマー、コポリマーの作製方法又はコポリマーを使用するプロセスの基本的かつ新規な特性に実質的に影響しない要素又はプロセスステップを除外するものとして解釈することができる。さらに、いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書で指定されていない任意の要素又はプロセスステップを除外するものと解釈することができる。
【0103】
本発明は、特定の実施形態を参照して本明細書で例示及び説明されているが、本発明は、示された詳細に限定されることを意図していない。むしろ、特許請求の範囲の均等物の余地及び範囲内で、本発明から逸脱することなく、詳細に様々な修正を加えることができる。
【実施例0104】
範疇
計算モデリングを使用して、真空中の二フッ化ビニリデン(VF2)モノマーと一連のフッ素化アルケニルエーテルモノマーのフリーラジカル重合の成長速度を研究し、ポリマー成長の実現可能性を示し、未反応のモノマーの組成とポリマーチェーン構造との関係を予測した。この研究では、開始、終了、又は連鎖移動の反応速度を定量化していなかったため、分子量を推定することはできない。分子量は、使用する溶媒、反応温度、開始剤及びモノマーの濃度、並びに連鎖移動剤の存否と濃度の関数である。理想的には、モデルで実現可能性が確立されたら、真空での予測結果を実験設計と組み合わせて、各ポリマーの生成に必要な反応条件を最適化する必要がある。
【0105】
方法論
表1と表2に示すように、計算では、モノマー添加の各ステップを定量化することにより、未反応のVF2とフッ素化アルケニルエーテルの存在下でのフリーラジカルポリ(二フッ化ビニリデン)PVDF鎖末端の成長速度をマッピングした。PVDF及びフルオロビニルエーテル自体の電子構造が局所化されている場合、反応速度にほとんど影響を与ない前提で、すべての成長反応は成長するPVDFチェーンを単一のモノマー繰り返し単位(n=1)として表して計算コストを削減した。反応速度定数は、プレファクターと反応の活性化エネルギーを含む指数項を組み合わせたアレニウス(Arrhenius)関係に従う。プレファクターは、反応の試行頻度、具体的には、反応物の基底状態の並進、回転、及び振動エネルギーを示す[4、5]。全体として、反応速度は、反応速度定数と、各モノマー及びフリーラジカル鎖末端のモル濃度の積である。反応スキームには、PVDFホモ重合の場合にはまれである、ヘッドヘッド又はテールテールの欠陥は含まれない[7]。すべての計算において、未反応モノマー(CH2)のメチレン末端は、フリーラジカルの鎖末端と反応する。
【0106】
すべての計算は、B3LYP関数と6-31G(d、p)基底関数を設定した密度汎関数理論を使用して、GAMESS[1]で実行された。遷移状態構造は、デフォルトの鞍点最適化ルーチンを使用して最適化され、ノーマルモード分析[6]が実行されて、400cm-1以上の単一の虚部周波数の存在を識別することで遷移状態を確認した。カウンターポイズ補正を適用して、遷移状態の基底関数の重ね合わせエラーを削除し[2、3]、活性化エネルギーを遷移状態と反応物エネルギーの差として計算した。
【0107】
結果と考察
25℃及び100℃での反応速度(VF2を基準)、活性化エネルギー、及びプレファクターを表1及び2に示す。フルオロビニルメチルエーテル(FVME)とVF2の反応性の順序は、初期のフリーラジカルPVDFチェーンの末端がFVMEですばやく成長し、続いてホモポリマー化してFVMEの連続ブロックを形成することを示唆する。未反応のFVMEが完全に消費されると、モデルはVF2の第2の連続ブロックの形成を予測する。FVMEでのフリーラジカルFVMEチェーンの末端の成長は、VF2での成長よりも約4倍の確率であるため、真空中で交互にモノマーを追加して成長する可能性は低い。この研究では、溶媒中の成長の影響は考慮されていないが、溶媒の使用は、反応物質の移動、回転、振動の動きに大きな制限を課すことにより、プレファクターを低下させる。真空でのベースライン計算値を超える反応性の次数に影響を与える溶媒の実験的選択は、ブロック又はランダムコポリマーを操作するために必要になり得る。対照的に、フルオロビニルエチルエーテル(FVEE)とVF2の成長の反応性の順序は、初期のPVDFフリーラジカルチェーンの末端がVF2又はFVEE(それぞれ0.55と0.58の反応率)とほぼ同じように成長することを示唆しているが、FVEEフリーラジカルチェーンの末端はVF2ではFVEEよりも80倍の確率で成長する。これは、両方のモノマーが豊富に供給されている場合、1を超える有意な長さのFVEEブロックが指数関数的にまれになることを示唆している。反応に対するエチル置換の効果は、フルオロビニルエーテルの単独重合の活性化エネルギーを明らかに上昇させ、メチル置換フルオロビニルエーテルがより反応性の高いモノマーであることを示唆している。これは、真空中でのベースラインの反応性が大幅に小さいことを考えると、溶媒の追加がフルオロビニルエチルエーテルの反応性に実質的に影響しない可能性があることも意味する。
【0108】
FVME又はFVEEを含む各成長スキームの反応度の順序に温度の影響は見られなかった。25℃及び100℃での相対反応速度は非常によく似ているが、高温では絶対反応速度が全体で20倍速くなる。これは、温度のみがポリマーチェーンに特定のシーケンスを生成するための反応性の順序に影響を与えない可能性があるが、ポリマーシーケンスの調整には温度制御と溶媒の選択の組み合わせが必要になり得ることを示唆している。
【0109】
フッ素化アルケニルエーテルにおけるアルキル置換の長さの影響は、プロピル基まで顕著であると思われる。プロピルを超えると、反応速度(VF2に比べて)は一定に現れ、追加されたアルキル鎖の長さに影響されない。これは、長いアルキル鎖(例えば、ヒドロキシル、アミン、又はフッ素化基)の末端での追加の官能基化が、反応の順序、及びその後ブロック又は交互にポリマー構造が影響を与えずに操作できることを示唆している。
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
検証:VF2及び1234yf反応性
VF2と1234yfの乳化重合は、83℃、650psiで行われた。同じ2つのモノマーの真空重合の計算が行われ、反応性比が類似していることがわかった。実験結果とシミュレートされた予測の両方で、1234yfはVF2よりも反応性が高いことが示されている。
【0112】
溶媒(トリブロック界面活性剤)との83℃での実験的な反応性:
VF2-VF2/kVF2-yf=0.4
yf-yf/kVF2-yf=2.7
真空中25℃でのシミュレーションされた反応性:
VF2-VF2/kVF2-yf=0.46
yf-yf/kVF2-yf=1.1
【0113】
【表3】
【0114】
参考文献
1. M.W.Schmidt, K.K.Baldridge, J.A.Boatz, S.T.Elbert, M.S.Gordon, J.H.Jensen, S.Koseki, N.Matsunaga, K.A.Nguyen, S.Su, T.L.Windus, M.Dupuis, J.A.Montgomery, J. Comput. Chem., 1993, 14, 1347-1363.
2. S. F. Boys and F. Bernardi, Mol. Phys., 1970, 19, 553-566.
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【外国語明細書】