(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138638
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】通信装置、通信方法並びに通信用プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20230922BHJP
G08G 1/01 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G08G1/09 H
G08G1/01 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128311
(22)【出願日】2023-08-07
(62)【分割の表示】P 2021183572の分割
【原出願日】2016-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 和幸
(72)【発明者】
【氏名】柴▲崎▼ 裕昭
(57)【要約】
【課題】自動運転用の地物IDの車両間の授受に際してのデータ量の削減することが可能な通信装置を提供する。
【解決手段】各々が車両間の通信可能範囲より広く且つ通信可能範囲に対応した数の地図ブロックを含む地図ブロック群内において各地図ブロックを識別するブロックIDが各地図ブロックに付与され、各地図ブロック内の測位用マーカを地図ブロック内で識別する地物IDが測位用マーカに付与された地図データを取得し、その地物IDと、当該地物IDにより識別される測位用マーカが含まれる地図ブロックのブロックIDと、を含む装置位置データを生成して他の車両に送信する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が移動体間の通信可能範囲より広く且つ当該通信可能範囲に対応した数の部分地図を含む部分地図群内において当該各部分地図を識別する部分地
図IDが各前記部分地図に付与され、各前記部分地図内の地物を当該部分地図内で識別する地物IDが当該地物に付与された地図の地図情報を取得する取得手段と、
前記地物IDと、当該地物IDにより識別される前記地物が含まれる前記部分地図の前記部分地
図IDと、を含む地物情報を生成して前記移動体に送信する生成送信手段と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、通信装置、通信方法並びに通信用プログラム及びデータ構造の技術分野に属する。より詳細には、外部との通信が可能な通信装置及び当該通信装置において実行される通信方法並びに当該通信装置において用いられる通信用プログラムの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば車両等の移動体間での無線通信による情報の授受を伴った、当該移動体の自動運転に関する研究開発が盛んに行われている。この自動運転では一般に、移動体の周辺にある地物(施設や信号機等)に関する情報を収集することが必要とされる。このような自動運転に関連する技術を開示した先行技術文献としては、例えば下記特許文献1が挙げられる。
【0003】
このとき下記特許文献1に開示されている技術は、車両とサーバ装置との間の通信量の削減を目的とし、地図更新を行うことを課題とする先行技術である。そして特許文献1に開示されている技術では、メッシュ状の地図がメッシュID番号と共に地図データに格納され、地図データ量の削減を行う構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている技術では、上述したような自動運転用の地物に関する情報の収集については、開示も示唆もない。一方、上記地物に関する情報を収集する際には、その収集の対象となった地物を識別するための地物IDを用いる必要がある。しかしながら、当該収集の対象となる上記地物は、例えば全国レベルとなると無数に存在し、それぞれを識別するために各地物に対して固有の地物IDを付与しようとすると、地物自体の数の多さに起因して、地物ID自体としてデータ量(例えばデータとしての桁数又はビット数)が増大し、よって移動体間通信で授受されるデータ量としても膨大となってしまうという問題点がある。
【0006】
そこで本願は、上記の問題点に鑑みて為されたもので、その課題の一例は、自動運転用の地物IDの車両間の授受に際してのデータ量の削減が可能な通信装置及び当該通信装置において実行される通信方法、並びに当該通信装置において用いられる通信用プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、各々が移動体間の通信可能範囲より広く且つ当該通信可能範囲に対応した数の部分地図を含む部分地図群内において当該各部分地図を識別する部分地
図IDが各前記部分地図に付与され、各前記部分地図内の地物を当該部分地図内で識別する地物IDが当該地物に付与された地図の地図情報を取得する取得手段と、前記地物IDと、当該地物IDにより識別される前記地物が含まれる前記部分地図の前記部分地
図IDと、を含む地物情報を生成して前記移動体に送信する生成送信手段と、を備える。
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項9に記載の発明は、取得手段と、生成送信手段と、を備える通信装置において実行される通信方法において、各々が移動体間の通信可能範囲より広く且つ当該通信可能範囲に対応した数の部分地図を含む部分地図群内において当該各部分地図を識別する部分地
図IDが各前記部分地図に付与され、各前記部分地図内の地物を当該部分地図内で識別する地物IDが当該地物に付与された地図の地図情報を前記取得手段により取得する取得工程と、前記地物IDと、当該地物IDにより識別される前記地物が含まれる前記部分地図の前記部分地
図IDと、を含む地物情報を前記生成送信手段により生成して前記移動体に送信する生成送信工程と、を含む。
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項10に記載の発明は、コンピュータを、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の通信装置として機能させる。
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項11に記載の発明は、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の通信装置の前記取得手段によって取得され、前記移動体間の通信に供される前記地図情報のデータ構造であって、当該地図情報に対応する前記地図が複数の前記部分地図群に分割されており、各前記部分地図群にそれぞれ相当する部分地図群データが、当該各部分地図群において各前記部分地図を識別する前記部分地
図IDを含んでおり、各前記部分地図にそれぞれ相当する部分地図データが、当該部分地図に相当する領域内のある前記地物を当該部分地図内で識別する地物IDを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る通信装置の概要構成を示すブロック図である。
【
図2】実施例に係る自動運転システムの概要構成を示すブロック図である。
【
図3】実施例に係る自動運転装置の概要構成を示すブロック図である。
【
図4】実施例に係る地図データベースの内容等を例示する図であり、(a)は実施例に係る測位用マーカの位置等を例示する図であり、(b)は当該地図データベースを例示する図である。
【
図5】実施例に係る通信処理を示すフローチャートであり、(a)は実施例に係る送信処理を示すフローチャートであり、(b)は実施例に係る位置関係検出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本願を実施するための形態について、
図1を用いて説明する。なお
図1は、実施形態に係る通信装置の概要構成を示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、実施形態に係る通信装置Sは、取得手段1と、外部の移動体Mと通信可能とされた生成送信手段2と、を備えて構成されている。
【0014】
この構成において取得手段1は、各々が移動体間の通信可能範囲より広く且つ当該通信可能範囲に対応した数の部分地図を含む部分地図群内において当該各部分地図を識別する部分地
図IDが各部分地図に付与され、上記各部分地図内の地物を当該部分地図内で識別する地物IDが当該地物に付与された地図の地図情報を取得する。
【0015】
これにより生成送信手段2は、上記地物IDと、当該地物IDにより識別される地物が含まれる部分地図の上記部分地
図IDと、を含む地物情報を生成して移動体Mに送信する。
【0016】
以上説明したように、実施形態に係る通信装置Sの動作によれば、部分地図群内において各部分地図を識別する部分地
図IDが各部分地図に付与され、部分地図内の地物を部分地図内で識別する地物IDが地物に付与された地図の地図情報を用いて、地物IDと、当該地物IDにより識別される地物が含まれる部分地図の部分地
図IDと、を含む地物情報を生成して移動体に送信する。よって、他の地物と識別するための相互に異なる地物IDが全ての地物に対してそれぞれ付与された地図を用いる場合に比して、地物それぞれを識別し且つ地物情報としてのデータ量を削減しつつ、当該地物情報を移動体間で授受させることができる。
【実施例0017】
次に、上述した実施形態に対応する具体的な実施例について、
図2乃至
図5を用いて説明する。なお、
図2は実施例に係る自動運転システムの概要構成を示すブロック図であり、
図3は実施例に係る自動運転装置の概要構成を示すブロック図である。また、
図4は実施例に係る地図データベースの内容等を例示する図であり、
図5は実施例に係る通信処理を示すフローチャートである。このとき
図3では、
図1に示した実施形態に係る通信装置Sにおける各構成部材に対応する実施例の構成部材それぞれについて、当該通信装置Sにおける各構成部材と同一の部材番号を用いている。
【0018】
以下に説明する実施例は、複数の車両にそれぞれ搭載されており且つ実施例に係る自動運転装置を用いて、各車両間の無線通信により必要なデータの授受を当該車両間で行いつつ、それぞれの車両において自動運転を行う自動運転システムに実施形態を適用した場合の実施例である。
【0019】
図2に示すように、実施例に係る自動運転システムSSは、自動運転装置A1、自動運転装置A2、…、自動運転装置An(nは自然数)がそれぞれ搭載されている車両M1、車両M2、…、車両Mn間で無線通信により必要なデータの授受を行いつつ、各自動運転装置A1、自動運転装置A2、…、自動運転装置Anにより、車両M1、車両M2、…、車両Mnの自動運転の制御を行う。
【0020】
なお、実施例に係る自動運転装置A1、自動運転装置A2、…、自動運転装置Anの構成は基本的に同一である。そして以下の説明において、自動運転装置A1、自動運転装置A2、…、自動運転装置Anに共通の事項について説明する場合、これらを纏めて「自動運転装置A」と称する。また以下の説明において、車両M1、車両M2、…、車両Mnに共通の事項について説明する場合、これらを纏めて「車両M」と称する。この車両Mが実施形態に係る移動体Mの一例に相当する。
【0021】
次に、具体的に
図3に示すように、実施例に係る各車両Mに各々搭載されている自動運転装置Aのそれぞれは、CPU、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等からなる自動運転制御部1と、インターフェース2と、超音波センサ、レーダーセンサ又は画像センサ等であるセンサ10と、HDD(Hard Disc Drive)又はSSD(Solid State Drive)等からなる記録部11と、タッチパネル、操作ボタン又はリモコン等からなる操作部12と、液晶ディスプレイ等からなるディスプレイ13と、により構成されている。なお上記自動運転制御部1は、上記CPU等を構成するロジック回路等によりハードウェア的に構成されていてもよいし、後述する実施例に係る通信処理を示すフローチャートに相当するプログラムを当該CPUで読み出して実行することにより、ソフトウェア的に実現されるものであってもよい。また上記の構成において、上記自動運転制御部1が実施形態に係る取得手段1の一例に相当し、インターフェース2が実施形態に係る生成送信手段2の一例に相当する。また、
図3において破線で示すように、上記自動運転制御部1及び上記インターフェース2により、実施形態に係る通信装置Sの一例が構成されている。
【0022】
この自動運転装置Aの構成においてセンサ10は、自動運転制御部1の制御の下、自動運転装置Aが搭載されている車両Mが移動している道路脇等にあり且つ予め指定(設定)されている地物に対する、当該自動運転装置Aの相対位置を検出する。このとき検出される相対位置は、例えば、当該地物と当該自動運転装置Aとの距離や当該自動運転装置Aから見た当該地物の方位、又は、それらの間の高低差により表される相対位置である。
【0023】
ここで実施例に係る上記地物とは、例えば、上記道路脇又は道路の上部或いは道路内にある特徴的な施設(建物)や交通標識、目立つ植栽、又は看板等であって、基本的に固定設置されており、且つ上記相対位置を検出する際の基準と成り得るとして予め設定されている地物をいう。これらの地物については、予め正確な位置が計測されており、車両Mが使用する地図データ等に、それぞれの地物の位置情報が格納されている。なお以下の説明において、実施例に係る上記相対位置を検出するための地物を「測位用マーカ」と称する。このときセンサ10及び自動運転制御部1は、ミリ波等の電波又は超音波の送信、画像の撮像、或いはパルス状に発光/照射されるレーザが上記地物に反射等することで得られる散乱光を測定することによる検出等の方法により、測位用マーカに対する上記相対位置を検出し、その検出結果を例えば一時的に上記RAMに記憶する。なおセンサ10及び自動運転制御部1は、上記相対位置に、測位用マーカに対する鉛直方向の位置(換言すれば、地表からの高さ)をも含ませて検出する。その後自動運転制御部1は、当該自動運転制御部1を含む自動運転装置A又は車両Mを他の自動運転装置A又は車両Mから識別するための装置識別データと、上記相対位置の検出に用いた測位用マーカを他の測位用マーカから識別するための地物ID(即ち測位用マーカID)及び当該検出の時刻等と、を、当該相対位置の検出結果に付し、自動運転装置Aの装置位置データとして、インターフェース2を介して他の自動運転装置Aに送信する。このときインターフェース2は、自動運転制御部1の制御の下、上記装置位置データを、その時点で受信可能な他の自動運転装置Aに送信する。なお以下の説明において、上記他の自動運転装置Aを、自動運転制御部1を含む自動運転装置Aに対して単に「自動運転装置Ax」と称する。
【0024】
次に、上記記録部11に記録されている地図データベースMDBの構成について説明する。このとき、地図データベースMDBの説明に合わせて、実施例に係る相対位置の検出に用いられる地物である上記測位用マーカ、及び当該相対位置の検出結果に付して送信される上記地物ID等についても説明する。
【0025】
先ず、実施例に係る上記測位用マーカは、
図4(a)に例示するように、車両Mが移動する道路R1乃至道路R3の脇又は当該道路内或いは道路R1等の上方に、測位用マーカO1乃至測位用マーカO14等として予め設定されている。なお以下の説明において、
図4(a)に例示する測位用マーカO1乃至測位用マーカO14に共通の事項を説明する場合、単に「測位用マーカO」と称する。そして地図データベースMDBには、自動運転装置Aが搭載されている車両Mの案内に用いられる地図データが記録されている。これに加えて地図データベースMDBには、
図4(b)に例示するように、各測位用マーカOを識別するための地物IDに関連付けて、各測位用マーカOの地図上の位置を示す位置データ(緯度/経度のデータ等)と、各測位用マーカOの高度を示す高度データ(単位はメートル)と、その測位用マーカOの属性を示す属性データと、が記録されている。
【0026】
ここで
図4(a)に破線で例示するように、実施例に係る地図データにおいては、地図が複数の地図ブロックBa、地図ブロックBb、…、地図ブロックBiに分割されている。なお以下の説明において、地図ブロックBa、地図ブロックBb、…、地図ブロックBiに共通の事項について説明する場合、これらを纏めて単に「地図ブロックB」と称する。このとき各地図ブロックBの形状は、例えば正方形等の矩形とされている。また各地図ブロックBの一辺(矩形の場合は短辺)の長さは、当該地図ブロックBに相当する領域(地理的な領域)での自動運転装置A間における通信可能範囲に相当する距離よりも長く設定される。なお、当該通信可能範囲に相当する距離を、以下、適宜「通信可能距離」と称する。そして、地図ブロックBの形状が正方形である場合の一辺の長さは、例えば1キロメートルである。また、地図ブロックBが正方形である場合の一辺の長さは、当該地図ブロックBに相当する領域によって異なる。即ち当該一辺の長さは、例えば通信の障害となる建物等が多い市街地であって上記通信可能距離が短い場合は、それに合わせて上記1キロメートルよりも短く設定されており、また例えば通信の障害となる建物等が少ない郊外であって上記通信可能距離が長い場合は、それに合わせて上記1キロメートルよりも長く設定されている。
【0027】
更に実施例に係る地図データにおいては、複数の地図ブロックBにより一の地図ブロック群が形成されている。
図4(a)に例示する場合は、縦三つ×横三つの合計九つの地図ブロックB(地図ブロックBa乃至地図ブロックBi)により一の地図ブロック群BG(
図4(a)一点鎖線参照)が形成されている。そして各地図ブロックBに対しては、それが含まれている地図ブロック群BGにおいて他の地図ブロックBから識別可能なブロックIDが予め付与されている。即ち実施例に係る地図データにおいては、「一の地図ブロック群BGの中の各地図ブロックBについて、いずれの地図ブロックBについても、その地図ブロックBを中心として当該地図ブロックBを含む九つの地図ブロックBそれぞれのブロックIDが互いにユニークである(相互に異なっている)」という条件を満たした上で、他の地図ブロック群BG内の地図ブロックBのブロックIDとの重複が認められている。
【0028】
具体的に、例えば
図4(a)中央の地図ブロック群BGに相隣接する他の各地図ブロック群BG内の各地図ブロックBに対しては、それぞれ、
図4(a)中央の地図ブロック群BGにおいて同じ位置の地図ブロックBと同一のブロックIDが付与されている。即ち、例えば
図4(a)中央の地図ブロック群BGに対して東側に相隣接する地図ブロック群BGの北西端にある地図ブロックBaのブロックIDは、
図4(a)中央の地図ブロック群BGの北西端にある地図ブロックBaのブロックIDと同一とされている。また同様に、当該東側に相隣接する地図ブロック群BGの南東端にある地図ブロックBiのブロックIDは、
図4(a)中央の地図ブロック群BGの南東端にある地図ブロックBiのブロックIDと同一とされている。
【0029】
更に例えば
図4(a)中央の地図ブロック群BGに対して西側に相隣接する地図ブロック群BGの北東端にある地図ブロックBcのブロックIDは、
図4(a)中央の地図ブロック群BGの北東端にある地図ブロックBcのブロックIDと同一とされている。更に同様に、当該西側に相隣接する地図ブロック群BGの南東端にある地図ブロックBiのブロックIDは、
図4(a)中央の地図ブロック群BGの南東端にある地図ブロックBiのブロックIDと同一とされている。
【0030】
また例えば
図4(a)中央の地図ブロック群BGに対して北側に相隣接する地図ブロック群BGの南西端にある地図ブロックBgのブロックIDは、
図4(a)中央の地図ブロック群BGの南西端にある地図ブロックBgのブロックIDと同一とされている。また同様に、当該北側に相隣接する地図ブロック群BGの南東端にある地図ブロックBiのブロックIDは、
図4(a)中央の地図ブロック群BGの南東端にある地図ブロックBiのブロックIDと同一とされている。
【0031】
そして各地図ブロックBGにおいてブロックIDの付与に関する上記規則が共通している場合には、
図4(a)中央に例示する地図ブロック群BG以外の他の地図ブロック群BGに含まれている地図ブロックBに付与されているブロックIDが、
図4(a)中央に例示する地図ブロック群BGに付与されているブロックIDのいずれかと同一とすることができる。また、地図ブロック群BG(又はその一辺)を構成する地図ブロックBの数は、
図4(a)中央に例示する九つ(又は三つ)以上で、例えば上記通信可能距離に対応して車両M間の通信におけるブロックID及び地物IDを用いた測位用マーカOの相互識別が可能な数であれば、任意に設定し得る。
【0032】
一方、各地図ブロックBに相当する領域には測位用マーカOが存在する場合があるが、この場合に実施例に係る地図データでは、一つの地図ブロックBに相当する領域内の測位用マーカOに対して、当該領域内の他の測位用マーカOから識別可能な地物IDが予め付与されている。このとき、一の地図ブロックB以外の他の地図ブロックBに相当する領域内の測位用マーカOに付与されている地物IDが、当該一の地図ブロックBに相当する領域内の測位用マーカOに付与されている地物IDのいずれかと同一になってもよい。
【0033】
次に
図4(b)に示す例では、測位用マーカO1乃至測位用マーカO14の各々に対して、それが存在する領域に対応するブロックIDと、当該測位用マーカO自体を識別するための地物IDと、がそれぞれ関連付けられている。例えば、
図4(a)に例示する地図ブロックBa乃至地図ブロックBiに対してそれぞれブロックID「a」乃至ブロックID「i」が付与されているとする。そして例えば、
図4(a)に例示する地図ブロックBaに相当する領域には測位用マーカO5及び測位用マーカO6があるが、当該測位用マーカO5については地物ID「1」が付与されており、また当該測位用マーカO6については地物ID「2」が付与されている。また、
図4(a)に例示する地図ブロックBbに相当する領域には測位用マーカO7のみがあるが、当該測位用マーカO7については地物ID「1」が付与されている。更に
図4(a)に例示する地図ブロックBcに相当する領域には測位用マーカO11及び測位用マーカO12があるが、当該測位用マーカO11については地物ID「1」が付与されており、また当該測位用マーカO12については地物ID「2」が付与されている。更にまた
図4(a)に例示する地図ブロックBdに相当する領域には測位用マーカO2及び測位用マーカO4があるが、当該測位用マーカO2については地物ID「1」が付与されており、また当該測位用マーカO4については地物ID「2」が付与されている。また
図4(a)に例示する地図ブロックBeに相当する領域には測位用マーカO10のみがあり、地図ブロックBfに相当する領域には測位用マーカO14のみがあるが、当該測位用マーカO10及び測位用マーカO14については共に地物ID「1」が付与されている。更に
図4(a)に例示する地図ブロックBgに相当する領域には測位用マーカO1及び測位用マーカO3があるが、当該測位用マーカO1については地物ID「1」が付与されており、また当該測位用マーカO3については地物ID「2」が付与されている。更にまた
図4(a)に例示する地図ブロックBhに相当する領域には測位用マーカO8のみがあるが、当該測位用マーカO8については地物ID「1」が付与されている。最後に
図4(a)に例示する地図ブロックBiに相当する領域には測位用マーカO13及び測位用マーカO9があるが、当該測位用マーカO13については地物ID「1」が付与されており、また当該測位用マーカO14については地物ID「2」が付与されている。このように実施例に係る地図データにおいては、一の地図ブロック群BG内においては、地図ブロックBごとに異なるブロックIDが付与されているため、たとえ隣接する地図ブロックB内の測位用マーカOに同じ地物IDが付与されていても、ブロックIDとの組み合わせにより、通信可能範囲内にある自動運転装置Aにおいて各測位用マーカOを個別に識別することができる。また
図4(a)に例示するように、各地図ブロック群BG間において、各地図ブロック群BG内における位置が同じ地図ブロックBに対して相互に同一のブロックIDが付与されているので、自動運転装置Aの通信可能範囲が二つの地図ブロック群BGに跨がっている場合でも、ブロックIDと地物IDとの組み合わせを用いることで各測位用マーカOを個別錦別することができる。
【0034】
一方、各測位用マーカOに対応する上記属性データには、例えば、その測位用マーカOとしての地物の形状や色、或いは模様等を示す情報が、地物としての名称等を示す情報等と共に含まれている。この属性データは、センサ10による相対位置の検出において、それが関連付けられている測位用マーカOを、測位用マーカOではない地物又は他の測位用マーカOから識別するためのデータである。
【0035】
そしてセンサ10及び自動運転制御部1は、属性データを参照して測位用マーカOを識別しつつ、自動運転制御部1が備えられた自動運転装置Aの当該測位用マーカOに対する相対位置を検出する。この相対位置は、例えば、自動運転制御部1が備えられた自動運転装置Aと当該測位用マーカOとの距離、自動運転装置Aの位置から見た当該測位用マーカOの方向と自動運転装置Aが搭載されている車両Mの移動方向とのなす角度、及び自動運転装置Aの位置から見た当該測位用マーカOの仰角として、高度データを参照しつつ鉛直方向の位置を含めて検出される。
【0036】
これらにより自動運転制御部1は、上記装置識別データと、上記ブロックID及び地物IDの組み合わせと、を、当該測位用マーカOに対する相対位置の検出結果に付し、自動運転装置Aの装置位置データとして、インターフェース2を介して、その時点で受信可能な自動運転装置Axに送信する。このとき自動運転制御部1は、例えば測位用マーカO1に対する相対位置の検出結果を含む装置位置データを送信する場合、当該測位用マーカO1を他の測位用マーカOから識別するための上記ブロックID及び地物IDの組み合わせとして、
図4(b)に例示するブロックID「g」及び地物ID「1」の組み合わせを地図データベースMDBから読み出して当該相対位置の検出結果に付与し、当該装置位置データを生成する。
【0037】
一方インターフェース2は、自動運転装置Axが送信した上記装置位置データを、自動運転制御部1の制御の元に受信する。そして自動運転制御部1は、受信した自動運転装置Axの上記装置位置データと、当該自動運転制御部1自体がセンサ10を用いて検出した上記相対位置と、に基づいて、上記自動運転装置Axと、当該自動運転装置Aと、の間の位置関係を検出する。このとき自動運転装置Axから受信した上記装置位置データが例えば測位用マーカO4に対する相対位置の検出結果を含む装置位置データであった場合、当該装置位置データには、当該測位用マーカO4を他の測位用マーカOから識別するための上記ブロックID及び地物IDの組み合わせとして、
図4(b)に例示するブロックID「d」及び地物ID「2」の組み合わせが当該相対位置の検出結果に付与されて含まれている。
【0038】
その後自動運転制御部1は、検出された位置関係に基づき、例えば、上記自動運転装置Axが搭載されている車両Mxに対して当該自動運転装置Aが搭載されている車両Mを追随させるといった自動運転を制御する。
【0039】
次に、自動運転制御部1及びセンサ10を中心として実行される実施例に係る通信処理について、具体的に
図3乃至
図5を用いて説明する。なお、実施例に係る通信処理は、自動運転装置Aによる自動運転制御処理の一環として、例えば予め設定されたタイミングにおいて、又は定期的に、自動運転制御処理の図示しないメインルーチンに対する例えば割込処理として実行される処理である。また実施例に係る通信処理は、
図5(a)にフローチャートを示す送信処理と、
図5(b)にフローチャートを示す位置検出処理と、により構成されており、それぞれの処理が例えば上記割込処理として実行される。
【0040】
先ず、対応するフローチャートを
図5(a)に示す実施例に係る送信処理が開始されると、自動運転制御部1は初めに、当該自動運転制御部1が備えられた自動運転装置Aのいずれかの測位用マーカOに対する相対位置を検出するタイミングが到来したか否かを監視する(ステップS1)。ステップS1の監視において、当該相対位置を検出するタイミングが到来しない場合(ステップS1:NO)、自動運転制御部1は後述するステップS4に移行する。一方ステップS1の監視において、当該相対位置を検出するタイミングが到来した場合(ステップS1:YES)、自動運転制御部1は、センサ10を使用して上記距離、上記角度及び上記仰角からなる上記相対位置を検出する(ステップS2)。その後自動運転制御部1は、当該検出された相対位置を示す相対位置データに対して、当該自動運転制御部1を含む自動運転装置Aを自動運転装置Axから識別するための上記装置識別データと、上記相対位置の検出に用いた測位用マーカを識別するためのブロックID及び地物IDの組み合わせと、を付して、その時点で受信可能な自動運転装置Axに送信する(ステップS3)。
【0041】
その後自動運転制御部1は、例えば自動運転装置Aの電源がオフとされたこと等により、実施例に係る送信処理を終了するか否かを判定し(ステップS4)、当該送信処理を終了する場合は(ステップS4:YES)、そのまま送信処理を終了して例えば元の上記メインルーチンに移行する。一方ステップS4の判定において、引き続き実施例に係る送信処理を継続する場合(ステップS4:NO)、自動運転制御部1は、上記ステップS1に戻って上述してきた処理を繰り返す。
【0042】
次に、対応するフローチャートを
図5(b)に示す実施例に係る位置検出処理が開始されると、自動運転制御部1は初めに、自動運転装置Ax(他の自動運転装置A)のいずれかから、その自動運転装置Axの上記装置位置データを受信したか否かを監視する(ステップS10)。この装置位置データには、相対位置の検出に用いられた測位用マーカOを識別するための上記ブロックID及び地物IDの組み合わせが、当該相対位置の検出結果に付与されて含まれている。ステップS10の監視において、当該装置位置データを自動運転装置Axから受信していない場合(ステップS10:NO)、自動運転制御部1は後述するステップS13に移行する。一方ステップS10の監視において、当該装置位置データを自動運転装置Axから受信した場合(ステップS10:YES)、自動運転制御部1は、当該新たに受信した装置位置データと、当該自動運転制御部1自体がセンサ10を用いて検出した上記相対位置と、に基づいて、上記自動運転装置Axと、当該自動運転装置Aと、の間の位置関係を検出する(ステップS11)。
【0043】
ここで上記ステップS11において、新たに自動運転装置Axから受信した装置位置データに含まれる測位用マーカOを識別するためのブロックID及び地物IDの組み合わせと、当該自動運転制御部1自体において相対位置の検出に用いられた測位用マーカOを識別するためのブロックID及び地物IDの組み合わせと、が同一である場合がある。これは例えば、
図4(a)に例示される車両M3と車両M2とが同一の測位用マーカO14に対する相対位置を検出している場合である。この場合には、自動運転装置Axが搭載されている車両Mxと自動運転装置Aが搭載されている車両Mとの間の距離が比較的近い等の理由により、当該同一のブロックID及び地物IDの組み合わせにより識別される位置の測位用マーカOに対する自動運転装置Ax及び自動運転装置Aそれぞれの相対位置が取得できていることになる。そこで自動運転制御部1は、当該同一のブロックID及び地物IDの組み合わせにより識別される測位用マーカOの位置を示す位置データを上記地図データベースMDBから読み出し、その位置データと、当該同一のブロックID及び地物IDの組み合わせにより識別される位置の測位用マーカOに対する各相対位置と、に基づき、いわゆる三角法等を用いて、自動運転装置Axと自動運転装置Aとの間の位置関係を検出する。
【0044】
これに対して、新たに自動運転装置Axから受信した装置位置データに含まれる測位用マーカOを識別するためのブロックID及び地物IDの組み合わせと、当該自動運転制御部1自体において相対位置の検出に用いられた測位用マーカOを識別するためのブロックID及び地物IDの組み合わせと、が異なる場合もある。これは例えば、
図4(a)に例示される車両M3が測位用マーカO8に対する相対位置を検出し、車両M2が測位用マーカO12に対する相対位置を検出している場合である。この場合には、自動運転装置Axが搭載されている車両Mxと自動運転装置Aが搭載されている車両Mとの間の距離が遠い等の理由により、異なる位置の各測位用マーカOに対する自動運転装置Ax及び自動運転装置A各々の相対位置がそれぞれ取得できていることになる。そこで自動運転制御部1は、当該異なる位置の各測位用マーカOの位置をそれぞれ示す位置データを上記地図データベースMDBから読み出し、当該各位置データにより示される各測位用マーカOの位置関係と、当該異なる位置の測位用マーカOに対する自動運転装置Ax及び自動運転装置Aそれぞれの相対位置と、に基づき、三角法等を複数組み合わせて用いて、自動運転装置Axと自動運転装置Aとの間の位置関係を検出する。
【0045】
その後自動運転制御部1は、検出された位置関係を用いた種々の自動運転制御を行う(ステップS12)。
【0046】
次に自動運転制御部1は、例えば自動運転装置Aの電源がオフとされたこと等により、実施例に係る位置検出処理を終了するか否かを判定し(ステップS13)、当該位置検出処理を終了する場合は(ステップS13:YES)、そのまま位置検出処理を終了して例えば元の上記メインルーチンに移行する。一方ステップS13の判定において、引き続き実施例に係る送信処理を継続する場合(ステップS13:NO)、自動運転制御部1は、上記ステップS10に戻って上述してきた処理を繰り返す。
【0047】
以上説明したように、実施例に係る通信処理によれば、地図ブロック群BG内において各地図ブロックBを識別するブロックIDが各地図ブロックBに付与され、地図ブロックB内の測位用マーカOをその地図ブロックB内で識別する地物IDが測位用マーカOに付与された地図データを用いて、地物IDと、当該地物IDにより識別される測位用マーカOが含まれる地図ブロックBのブロックIDと、を含む地物情報を生成して他の自動運転装置Aに送信する。よって、他の測位用マーカOと識別するための相互に異なる地物IDが全ての測位用マーカOに対してそれぞれ付与された地図データを用いる場合に比して、測位用マーカOそれぞれを識別し且つ装置位置データとしてのデータ量を削減しつつ、当該装置位置データを自動運転装置A間で授受させることができる。
【0048】
また、複数の地図ブロック群BG間において、各地図ブロック群BG内における位置が同じ地図ブロックBに対して相互に同一のブロックIDが付与されているので、ブロックIDの数を必要最小限とすることができ、装置位置データとしてのデータ量を有効に削減できる。
【0049】
更に、自動運転装置Axから送信された装置位置データに含まれるブロックID及び地物IDを当該装置位置データから抽出し、それらブロックID及び地物IDを用いて測位用マーカOに関する処理を行うので、装置位置データとしてのデータ量の削減による処理負荷の低減を図ることができる。
【0050】
更にまた、ブロックID及び地物IDを用いて、受信した装置位置データの生成に用いられた測位用マーカOを識別するので、正確に当該測位用マーカOを識別することができる。
【0051】
また、通信可能距離に対応して地図ブロック群BGに含まれる地図ブロックBの数が、車両M間の通信におけるブロックID及び地物IDを用いた測位用マーカOの相互識別が可能な数とされているので、確実に測位用マーカOを識別して必要な処理を行うことができる。
【0052】
更に、地図ブロックBの形状が矩形であり、その矩形の短辺の長さが通信可能距離より長く、当該短辺方向に少なくとも三以上の地図ブロックBが含まれて地図ブロック群が形成されているので、通信可能距離との関係で混同することなく測位用マーカOを識別して必要な処理を実行することができる。
【0053】
更にまた、各地図ブロックBの形状が正方形であり、その正方形の一辺の長さが車両M間の通信可能距離より長く、当該一辺方向に三個、当該一辺に直行する正方形の辺の方向の三個の合計九個の地図ブロックBが並べられて地図ブロック群BGが形成される場合(
図4(a)参照)は、通信可能距離との関係で、混同することなく且つ効率的に測位用マーカOを識別して必要な処理を実行することができる。
【0054】
[変形例]
次に、実施形態に係る複数の変形例について説明する。
【0055】
先ず第1変形例として、一の地図ブロックBに相当する地図上の領域の大きさを、その領域での自動運転装置A間における通信可能距離よりも大きしつつ、その領域にある測位用マーカOの数に応じて決定してもよい。この場合には、正確に測位用マーカOを識別して必要な処理を実行することができることになる。
【0056】
また第2変形例として、上述した実施例では、移動体としての車両Mに搭載されている自動運転装置A間の位置関係を検出する場合に実施形態を適用したが、これ以外に、移動体としての二輪車、自転車又は人と共に移動する装置間の位置関係を検出する場合に実施形態を適用してもよい。また、車両間で授受されるデータは、上記装置位置データの他に、測位用マーカO以外の地物に関する情報であってもよい。
【0057】
更に第3変形例として、
図5にそれぞれ示したフローチャートに相当するプログラムを、光ディスク又はハードディスク等の記録媒体に記録しておき、或いはインターネット等のネットワークを介して取得しておき、これを汎用のマイクロコンピュータ等に読み出して実行することにより、当該マイクロコンピュータ等を実施例に係る自動運転制御部1として機能させることも可能である。