(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138741
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】ミオシン15プロモーター及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20230922BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230922BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230922BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20230922BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230922BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230922BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230922BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20230922BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20230922BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230922BHJP
A61P 1/08 20060101ALI20230922BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20230922BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230922BHJP
C12N 5/07 20100101ALN20230922BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/12
C12N15/864 100Z
C12P21/02 C
C12N5/10
A61K35/76
A61K35/761
A61K38/17
A61K48/00
A61P1/08
A61P27/16
A61P43/00 101
A61P43/00 107
C12N5/07
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130016
(22)【出願日】2023-08-09
(62)【分割の表示】P 2020560228の分割
【原出願日】2019-04-26
(31)【優先権主張番号】62/663,679
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520299511
【氏名又は名称】デシベル セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】DECIBEL THERAPEUTICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】エリス、キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】パレルモ、アダム
(72)【発明者】
【氏名】シュワンダー、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ホイットン、ジョナサン
(57)【要約】
【課題】感音難聴または前庭機能不全の治療をするために有毛細胞を標的とする新規治療法を提供する。
【解決手段】本開示は、ミオシン15(Myo15)プロモーターの領域を含むポリヌクレオチド、及びそれを含むベクターを提供し、これを用いて、特に有毛細胞において導入遺伝子の発現を促進することができる。本明細書に記載のポリヌクレオチドを、導入遺伝子、例えば、治療用タンパク質をコードする導入遺伝子に作動可能に連結し、それにより、導入遺伝子の有毛細胞特異的発現を促進してもよい。本明細書に記載のポリヌクレオチドを、治療用の導入遺伝子に作動可能に連結し、難聴または前庭機能不全を有するかまたは発症するリスクを有する対象の治療に使用してもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において、有毛細胞(例えば、蝸牛有毛細胞、例えば、内有毛細胞及び外有毛細胞、及び/または前庭有毛細胞)内で導入遺伝子の発現を促進するために使用することができるミオシン15(Myo15)プロモーター領域を含むポリヌクレオチド、ならびにそれを含むベクターを記載する。難聴及び/または前庭機能不全を治療するために有毛細胞内で導入遺伝子の発現を達成するための本発明のポリヌクレオチド及びベクターの使用方法も開示する。
【背景技術】
【0002】
難聴は公衆衛生上の重要な課題であり、学齢期の子供たちの15%近く、及び65歳までに3人に1人が影響を受けると推定されている。最も一般的なタイプの難聴は、感音難聴であり、これは、蝸牛有毛細胞などの内耳の細胞、または内耳から脳に突出する神経経路の欠陥によって引き起こされるタイプの難聴である。感音難聴は多くの場合、後天性であり、音響外傷、疾患または感染症、頭部外傷、耳毒性薬、及び老化を含む、様々な原因がある。内耳の発達及び機能に関与する遺伝子の変異など、感音難聴の遺伝的原因も存在する。常染色体劣性遺伝変異、常染色体優性遺伝変異、及びX連鎖パターン遺伝変異を含む、90種類を超えるそのような遺伝子の変異が同定されている。
【0003】
蝸牛有毛細胞の発達、生存、または完全性を破壊する要因、例えば、遺伝子変異、疾患または感染症、耳毒性薬、頭部外傷、及び老化は、同様に前庭有毛細胞に影響を与える可能性があり、したがって、回転性眩暈、浮動性眩暈、及び平衡失調などの前庭機能不全にも関係している。実際、有毛細胞の発達または機能を破壊する変異を有している患者は、難聴及び前庭機能不全の両方、またはいずれかの障害のみを呈し得る。近年、難聴を治療するための努力は、可能な解決策として遺伝子治療にますます集中してきており;しかしながら、難聴及び前庭機能不全に頻繁に関与している有毛細胞を特異的に標的とするアプローチはほとんど残っていない。感音難聴または前庭機能不全の治療をするために有毛細胞を標的とする新規治療法が必要である。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、特定の細胞型において、有毛細胞の機能または生存を促進または向上させる遺伝子として、目的の遺伝子の発現を促進するための組成物及び方法を提供する。本明細書に記載の組成物及び方法は、内耳の有毛細胞(例えば、蝸牛有毛細胞及び前庭有毛細胞)における導入遺伝子の転写を刺激するポリヌクレオチドに関する。本明細書に記載のポリヌクレオチドを、治療用の導入遺伝子に作動可能に連結してもよく、そして難聴(例えば、感音難聴)及び/または前庭機能不全(例えば、回転性眩暈、浮動性眩暈、または平衡失調)を治療または予防するために患者に投与してもよい。
【0005】
第1の態様では、本発明は、配列番号3及び/または配列番号4の配列を含む、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域と、それに結合する(例えば、作動可能に連結する)配列番号8及び/または配列番号9の配列を含む、配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域を含み、場合により、第1の領域と第2の領域の間に、1~100ヌクレオチド(例えば、1~5、1~10、1~15、1~20、1~25、1~30、1~35、1~40、1~45、1~50、1~60、1~70、1~80、1~90、10~20、10~30、10~40、10~50、10~60、10~70、10~80、10~90、10~100、20~30、20~40、20~50、20~60、20~70、20~80、20~90、または20~100ヌクレオチド)を有するリンカーを含むポリヌクレオチドを提供する。
【0006】
いくつかの実施形態では、第1の領域は、配列番号1の配列を含むか、またはそれからなる。
いくつかの実施形態では、第2の領域は、配列番号2の配列を含むか、またはそれからなる。
【0007】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号13の配列を含むか、またはそれからなる。
別の態様では、本発明は、配列番号8及び/または配列番号9の配列を含む、配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域と、それに結合する(例えば、作動可能に連結する)配列番号3及び/または配列番号4の配列を含む、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域を含み、場合により、第1の領域と第2の領域の間に、1~100ヌクレオチド(例えば、1~5、1~10、1~15、1~20、1~25、1~30、1~35、1~40、1~45、1~50、1~60、1~70、1~80、1~90、10~20、10~30、10~40、10~50、10~60、10~70、10~80、10~90、10~100、20~30、20~40、20~50、20~60、20~70、20~80、20~90、または20~100ヌクレオチド)を有するリンカーを含むポリヌクレオチドを提供する。
【0008】
いくつかの実施形態では、第1の領域は、配列番号2の配列を含むか、またはそれからなる。
いくつかの実施形態では、第2の領域は、配列番号1の配列を含むか、またはそれからなる。
【0009】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号14の配列を含むか、またはそれからなる。
別の態様では、本発明は、配列番号3及び/または配列番号4の配列を含む、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する領域を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0010】
いくつかの実施形態では、この領域は、配列番号1の配列を含むか、またはそれからなる。
別の態様において、本発明は、配列番号8及び/または配列番号9の配列を含む、配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する領域を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0011】
いくつかの実施形態では、この領域は、配列番号2の配列を含むか、またはそれからなる。
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号1の機能部分は、配列番号3の配列を含む。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号1の機能部分は、配列番号4の配列を含む。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号1の機能部分は、配列番号3の配列及び配列番号4の配列を含む。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号1の機能部分は、配列番号5の配列を含む。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号1の機能部分は、配列番号6の配列を含む。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号1の機能部分は、配列番号7の配列を含む。
【0012】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号2の機能部分は、配列番号8の配列を含む。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号2の機能部分は、配列番号9の配列を含む。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号2の機能部分は、配列番号8の配列及び配列番号9の配列を含む。前述の態様のいずれかの実施形態では、配列番号2の機能部分は、配列番号10の配列を含む。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号2の機能部分は、配列番号11の配列を含む。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号2の機能部分は、配列番号12の配列を含む。
【0013】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドを導入遺伝子に作動可能に連結し、有毛細胞に導入する場合、導入遺伝子の発現が誘導される。
別の態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含む核酸ベクターを提供する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドを導入遺伝子に作動可能に連結する。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、治療用タンパク質をコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、哺乳類の有毛細胞における核酸配列由来の治療用タンパク質の有毛細胞特異的発現を指示することができる。いくつかの実施形態では、有毛細胞は蝸牛有毛細胞である。いくつかの実施形態では、蝸牛有毛細胞は内有毛細胞である。いくつかの実施形態では、蝸牛有毛細胞は外有毛細胞である。いくつかの実施形態では、有毛細胞は前庭有毛細胞である。
【0014】
いくつかの実施形態では、治療用タンパク質は、ACTG1、FSCN2、RDX、POU4F3、TRIOBP、TPRN、XIRP2、ATOH1、GFI1、CHRNA9、CIB3、CDH23、PCDH15、KNCN、DFNB59、OTOF、MKRN2OS、LHX3、TMC1、MYO15、MYO7A、MYO6、MYO3A、MYO3B、GRXCR1、PTPRQ、LCE6A、LOXHD1、ART1、ATP2B2、CIB2、CACNA2D4、CABP2、EPS8、EPS8L2、ESPN、ESPNL、PRPH2、STRC、SLC8A2、ZCCHC12、LRTOMT2、LRTOMT1、USH1C、ELFN1、TTC24、DYTN、KCP、CCER2、LRTM2、KCNA10、NT3、CLRN1、CLRN2、SKOR1、TCTEX1D1、FCRLB、SLC17A8、GRXCR2、BDNF、SERPINE3、NHLH1、HSP70、HSP90、ATF6、PERK、IRE1、及びBIPを含む群から選択される。
【0015】
いくつかの実施形態では、核酸ベクターは、プラスミド、コスミド、人工染色体、またはウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、核酸ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、及びレンチウイルスからなる群から選択されるウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、AAVベクターである。いくつかの実施形態では、AAVベクターの血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、rh10、rh39、rh43、rh74、Anc80、Anc80L65、DJ/8、DJ/9、7m8、PHP.B、PHP.eb、及びPHP.Sを含む群から選択される。いくつかの実施形態では、AAVベクターの血清型は、AAV1である。いくつかの実施形態では、AAVベクターの血清型は、AAV9である。いくつかの実施形態では、AAVベクターの血清型は、AAV6である。いくつかの実施形態では、AAVベクターの血清型は、Anc80である。いくつかの実施形態では、AAVベクターの血清型は、Anc80L65である。いくつかの実施形態では、AAVベクターの血清型は、DJ/9である。いくつかの実施形態では、AAVベクターの血清型は7m8である。いくつかの実施形態では、AAVベクターの血清型は、AAV2である。いくつかの実施形態では、AAVベクターの血清型はPHP.Bである。いくつかの実施形態では、AAVベクターの血清型は、AAV8である。
【0016】
別の態様では、本発明は、本発明の核酸ベクターを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
別の態様では、本発明は、哺乳類有毛細胞を本発明の核酸ベクターまたは本発明の組成物と接触させることにより、哺乳類有毛細胞における治療用タンパク質の発現を増加させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、治療用タンパク質の発現を、有毛細胞において特異的に増加させる。
【0017】
いくつかの実施形態では、哺乳類有毛細胞はヒト有毛細胞である。
いくつかの実施形態では、哺乳類有毛細胞は蝸牛有毛細胞である。いくつかの実施形態では、蝸牛有毛細胞は内有毛細胞である。いくつかの実施形態では、蝸牛有毛細胞は外有毛細胞である。
【0018】
いくつかの実施形態では、哺乳類有毛細胞は前庭有毛細胞である。
いくつかの実施形態では、治療用タンパク質の発現を、有毛細胞ではない内耳細胞では実質的に増加させない。
【0019】
別の態様では、本発明は、有効量の本発明の核酸ベクターまたは本発明の組成物を対象に投与することによって、難聴(例えば、感音難聴)を有するか、または発症するリスクを有する対象を治療する方法を提供する。
【0020】
いくつかの実施形態では、難聴は遺伝性難聴である。いくつかの実施形態では、遺伝性難聴は、常染色体優性難聴、常染色体劣性難聴、またはX連鎖性難聴である。
いくつかの実施形態では、難聴は後天性難聴である。いくつかの実施形態では、後天性難聴は、騒音性難聴、加齢性難聴、疾患もしくは感染症関連性難聴、頭部外傷性難聴、または耳毒性薬誘発性難聴である。いくつかの実施形態では、後天性難聴は加齢性難聴である。いくつかの実施形態では、難聴は騒音性難聴である。いくつかの実施形態では、難聴は耳毒性薬誘発性難聴である。
【0021】
別の態様では、本発明は、有効量の本発明の核酸ベクターまたは本発明の組成物を対象に投与することによって、前庭機能不全を有するか、または発症するリスクを有する対象を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、前庭機能不全は、回転性眩暈、浮動性眩暈、または平衡失調である。
【0022】
別の態様では、本発明は、有効量の本発明の核酸ベクターまたは本発明の組成物を対象に投与することによって、それを必要とする対象における有毛細胞の再生を促進する方法を提供する。いくつかの実施形態では、有毛細胞は蝸牛有毛細胞である。いくつかの実施形態では、有毛細胞は前庭有毛細胞である。
【0023】
別の態様では、本発明は、有効量の本発明の核酸ベクターまたは本発明の組成物を対象に投与することによって、耳毒性薬誘発性有毛細胞の損傷または死を予防または軽減する方法を提供する。いくつかの実施形態では、耳毒性薬は、アミノグリコシド(例えば、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、カナマイシン、バンコマイシン、及びアミカシン)、抗腫瘍薬(例えば、プラチナ含有化学療法剤、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチン)、エタクリン酸、フロセミド、サリチル酸塩(例えば、特に高用量でのアスピリン)、及びキニンを含む群から選択される。いくつかの実施形態では、有毛細胞は蝸牛有毛細胞である。いくつかの実施形態では、有毛細胞は前庭有毛細胞である。
【0024】
別の態様では、本発明は、有効量の本発明の核酸ベクターまたは本発明の組成物を対象に投与することによって、耳鳴症を有する対象を治療する方法を提供する。
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、難聴、前庭機能不全、または耳鳴症は、有毛細胞(例えば、蝸牛有毛細胞及び/または前庭有毛細胞)の喪失に関連している。
【0025】
別の態様では、本発明は、有効量の本発明の核酸ベクターまたは本発明の組成物を対象に投与することによって、それを必要とする対象における有毛細胞の損傷または死を予防または軽減する方法を提供する。いくつかの実施形態では、有毛細胞は蝸牛有毛細胞である。いくつかの実施形態では、有毛細胞は前庭有毛細胞である。
【0026】
別の態様では、本発明は、有効量の本発明の核酸ベクターまたは本発明の組成物を対象に投与することによって、それを必要とする対象における有毛細胞の生存率を増加させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、有毛細胞は蝸牛有毛細胞である。いくつかの実施形態では、有毛細胞は前庭有毛細胞である。
【0027】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、有毛細胞は蝸牛有毛細胞である。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、蝸牛有毛細胞は内有毛細胞である。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、蝸牛有毛細胞は外有毛細胞である。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、哺乳類有毛細胞は前庭有毛細胞である。
【0028】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、方法は、核酸ベクターまたは組成物を投与する前に対象の聴力を評価する(例えば、聴力検査、聴性脳幹反応(ABR)、蝸電図検査(ECOG)、または耳音響放射などの標準検査を使用して聴力を評価する)工程をさらに含む。
【0029】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、方法は、核酸ベクターまたは組成物を投与した後の対象の聴力を評価する(例えば、聴力検査、ABR、ECOG、または耳音響放射などの標準検査を使用して聴力を評価する)工程をさらに含む。
【0030】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、方法は、核酸ベクターまたは組成物を投与する前に対象の前庭機能を評価する(例えば、電気眼振図(ENG)もしくはビデオ式眼振図(VNG)、姿勢図検査、回転椅子検査、ECOG、前庭誘発筋電位(VEMP)、または特殊な臨床平衡機能検査などの標準検査を使用して前庭機能を評価する)工程をさらに含む。
【0031】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、方法は、核酸ベクターまたは組成物を投与する前に対象の前庭機能を評価する(例えば、ENGもしくはVNG、姿勢図検査、回転椅子検査、ECOG、VEMP、または特殊な臨床平衡機能検査などの標準検査を使用して前庭機能を評価する)工程をさらに含む。
【0032】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、核酸ベクターまたは組成物を、局所的に投与する(例えば、内耳に、例えば、外リンパまたは内リンパ内に、卵円窓、正円窓、または水平半規管などを介して投与する)。
【0033】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、核酸ベクターまたは組成物を、難聴を予防もしくは軽減するか、前庭機能不全を予防もしくは軽減するか、耳鳴症を予防もしくは軽減するか、難聴の発症を遅延させるか、前庭機能不全の発症を遅延させるか、難聴の進行を遅延させるか、前庭機能不全の進行を遅延させるか、聴力を改善するか、前庭機能を改善するか、有毛細胞機能を改善するか、有毛細胞の損傷を予防もしくは軽減するか、有毛細胞の細胞死を予防もしくは軽減するか、または有毛細胞数を増加させるのに十分な量で投与する。
【0034】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
別の態様では、本発明は、本発明の核酸ベクターまたは本発明の組成物を含むキットを提供する。
【0035】
定義
本明細書中で使用する場合、用語「約」とは、記載する値から10%以内で上回るかまたは下回る値を指す。
【0036】
本明細書中で使用する場合、「投与」とは、任意の有効な経路によって、対象に治療薬(例えば、導入遺伝子に作動可能に連結されたミオシン15(Myo15)プロモーターを含む核酸ベクター)を提供するか、または与えることを指す。例示的な投与経路を、本明細書において以下に記載する。
【0037】
本明細書中で使用する場合、用語「細胞型」とは、遺伝子発現データに基づいて統計的に分離可能な表現型を共有する細胞群を指す。例えば、一般的な細胞型の細胞は、同様の構造的特徴及び/または機能的特徴、例えば、同様の遺伝子活性化パターン及び抗原提示特性を共有している場合がある。一般的な細胞型の細胞には、生物内の一般的な組織(例えば、上皮組織、神経組織、結合組織、または筋肉組織)及び/または一般的な臓器、組織系、血管、または他の構造及び/または領域から分離された細胞が含まれ得る。
【0038】
本明細書中で使用する場合、用語「蝸牛有毛細胞」とは、音の感知に関与する内耳内の特殊な細胞群を指す。蝸牛有毛細胞には、内有毛細胞と外有毛細胞の2種類がある。蝸牛有毛細胞への損傷と蝸牛有毛細胞の機能を破壊する遺伝子変異は、難聴及び聴覚消失に関係している。
【0039】
本明細書中で使用する場合、用語「保存的変異」、「保存的置換」、及び「保存的アミノ酸置換」とは、1つ以上のアミノ酸から、極性、静電荷、及び立体体積などの同様の物理化学的特性を示す1つ以上の異なるアミノ酸への置換を指す。これらの特性を、天然の20種のアミノ酸のそれぞれについて、以下の表1に要約する。
【0040】
【0041】
この表によれば、保存的アミノ酸のファミリーには(i)G、A、V、L及びI;(ii)D及びE;(iii)C、S及びT;(iv)H、K及びR;(v)N及びQ;ならびに(vi)F、Y及びWが含まれる。したがって、保存的変異または置換とは、あるアミノ酸を、同じアミノ酸ファミリーのメンバーで置換する変異または置換である(例えば、ThrをSerに、またはArgをLysに置換)。
【0042】
本明細書中で使用する場合、本明細書に記載の組成物、ベクター構築物、またはウイルスベクターの「有効量」、「治療有効量」、及び「十分な量」という用語は、哺乳類、例えばヒトを含む、それを必要とする対象に投与する場合に、臨床結果を含む有益なまたは望ましい結果をもたらすのに十分な量を指し、したがって、その「有効量」またはその同義語は、それが適用されている状況に依存する。例えば、感音難聴または前庭機能不全の治療に関して、それは、組成物、ベクター構築物、またはウイルスベクターを投与せずに得られる応答と比較して、治療応答を達成するのに十分な組成物、ベクター構築物、またはウイルスベクターの量である。そのような量に対応する本明細書に記載の所与の組成物の量は、所与の薬剤、医薬製剤、投与経路、疾患もしくは障害のタイプ、対象の特性(例えば、年齢、性別、体重)または治療対象の宿主などの様々な要因に応じて変化するが、それにもかかわらず、当業者によって日常的に決定することができる。また、本明細書中で使用する場合、本開示の組成物、ベクター構築物、またはウイルスベクターの「治療有効量」は、対照と比較して、対象において有益なまたは所望の結果をもたらす量である。有効成分を組み合わせて投与する場合、組み合わせの有効量は、個別に投与した場合に有効であったであろう各成分の量を含んでいても、含んでいなくてもよいことに留意されたい。本明細書中で定義するように、本開示の組成物、ベクター構築物、またはウイルスベクターの治療有効量は、当業者であれば、当技術分野で公知の日常的な方法によって容易に決定し得る。投与計画を調整して、最適な治療応答を提供してもよい。
【0043】
本明細書中で使用する場合、用語「内在性」とは、特定の生物(例えば、ヒト)または生物内の特定の場所(例えば、器官、組織、または細胞、例えば、ヒト細胞、例えば、ヒト有毛細胞)に天然に見出される分子(例えば、ポリペプチド、核酸、または補因子)を表す。
【0044】
本明細書中で使用する場合、用語「発現する」とは、以下の事象の1つ以上を指す:(1)DNA配列からのRNAテンプレートの産生(例えば、転写による);(2)RNA転写産物のプロセシング(例えば、スプライシング、編集、5’キャップ形成、及び/または3’末端プロセシング);(3)RNAからポリペプチドまたはタンパク質への翻訳;及び(4)ポリペプチドまたはタンパク質の翻訳後修飾。
【0045】
本明細書中で使用する場合、用語「外来性」とは、特定の生物(例えば、ヒト)または生物内の特定の場所(例えば、器官、組織、または細胞、例えば、ヒト細胞、例えば、ヒト有毛細胞)において、天然には見出されない分子(例えば、ポリペプチド、核酸、または補因子)を表す。外来性物質には、生物またはそこから抽出された培養物に対して、外部供給源から提供される物質が含まれる。
【0046】
本明細書中で使用する場合、用語「有毛細胞特異的発現」とは、主に有毛細胞(例えば、蝸牛毛細胞及び/または前庭有毛細胞)内での、内耳の他の細胞型(例えば、らせん神経節ニューロン、グリア、または他の内耳細胞型)と比較したRNA転写産物またはポリペプチドの産生を指す。導入遺伝子の有毛細胞特異的発現は、任意の標準的な技術(例えば、定量的RT PCR、免疫組織化学、ウェスタンブロット分析、またはプロモーターに作動可能に連結されたレポーター(例えば、GFP)の蛍光測定)を使用して、内耳の様々な細胞型の間で(例えば、有毛細胞対非有毛細胞で)導入遺伝子の発現(例えば、RNAまたはタンパク質の発現)を比較することによって確認することができる。有毛細胞特異的プロモーターは、それが作動可能に連結されている導入遺伝子の発現(例えば、RNAまたはタンパク質の発現)を誘導し、誘導される発現は、有毛細胞において、以下の内耳細胞型のうちの少なくとも3種(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10種、またはそれ以上)に比べて少なくとも50%(例えば、50%、75%、100%、125%、150%、175%、200%以上)大きい:境界細胞、内指節細胞、内柱細胞、外柱細胞、第1列目のダイテルス細胞、第2列目のダイテルス細胞、第3列目のダイテルス細胞、ヘンゼン細胞、クラウディウス細胞、内溝細胞、外溝細胞、らせん隆起細胞、根細胞、歯間細胞、血管条の基底細胞、血管条の中間細胞、血管条の辺縁細胞、らせん神経節ニューロン、シュワン細胞。
【0047】
本明細書中で使用する場合、用語「増加する」及び「減少する」とは、参照と比較して、それぞれ、より多いかまたはより少ない量の、機能、発現、または活性の計量をもたらす調節を指す。例えば、本明細書に記載の方法での組成物の投与に続いて、本明細書に記載の計量マーカー(例えば、導入遺伝子の発現)の量を、対象において、投与前のマーカー量に対して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは98%またはそれ以上、増加または減少させてもよい。一般的に、計量は、投与によって記載の効果が得られる時点、例えば、治療レジメンを開始してから、少なくとも1週間、1か月、3か月、または6か月後に測定する。
【0048】
本明細書中で使用する場合、用語「イントロン」とは、そのヌクレオチド配列が、対応するタンパク質のアミノ酸配列に翻訳されない遺伝子のコード領域内の領域を指す。用語イントロンはまた、遺伝子から転写されたRNAの対応する領域も指す。イントロンはプレmRNAに転写されるが、プロセシング中に除去され、成熟mRNAには含まれない。
【0049】
本明細書中で使用する場合、用語「リンカー」とは、ポリヌクレオチドの2つの異なる領域を接続する一連のヌクレオチドを指す。リンカーは、それが接続するポリヌクレオチドの2つの領域の機能を妨げない。
【0050】
本明細書中で使用する場合、「局所的」または「局所的投与」とは、全身的効果ではなく局所的効果を目的とした身体の特定の部位での投与を意味する。局所投与の例は、対象の皮膚上、吸入、関節内、髄腔内、膣内、硝子体内、子宮内、病変内投与、リンパ節投与、腫瘍内投与、内耳への投与、及び粘膜への投与であり、その場合、投与は、全身的効果ではなく、局所的効果をもたらすことを目的とする。
【0051】
本明細書中で使用する場合、用語「作動可能に連結された」とは、第2の分子に結合することができる第1の分子を指し、その場合、第1の分子が第2の分子の機能に影響を与えるように分子を配置する。用語「作動可能に連結された」とは、2つ以上の構成要素(例えば、プロモーターと別の配列エレメント)を並置し、それにより、両方の構成要素が正常に機能し、少なくとも1つの構成要素が少なくとも1つの他の構成要素に作用する機能を媒介することができるようにすることを含む。2つの分子は、単一の切れ目のない分子の一部であってもよく、そうでなくてもよく、隣接していても、隣接していなくてもよい。例えば、プロモーターが細胞内の目的の転写可能なポリヌクレオチド分子の転写を調節する場合、そのプロモーターは転写可能なポリヌクレオチド分子に作動可能に連結されている。さらなる実施形態では、転写調節エレメントの2つの部分は、一方の部分の転写活性化機能が他方の部分の存在により悪影響を受けないようにそれらが結合している場合、互いに作動可能に連結している。2つの転写調節エレメントは、リンカー核酸(例えば、介在非コード核酸)を介して互いに作動可能に連結してもよく、または介在ヌクレオチドが存在せずに互いに作動可能に連結してもよい。
【0052】
本明細書中で使用する場合、用語「プラスミド」とは、追加のDNAセグメントをライゲートし得る染色体外環状二本鎖DNA分子を指す。プラスミドとは、ベクターのタイプであり、連結している別の核酸を輸送することができる核酸分子である。特定のプラスミドは、それらが導入される宿主細胞において自己複製が可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌プラスミド及びエピソーム性哺乳類プラスミド)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳類ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれることが可能であり、それにより、宿主ゲノムとともに複製される。特定のプラスミドは、それらが作動可能に連結された遺伝子の発現を誘導することができる。
【0053】
本明細書中で使用する場合、本明細書中で互換的に使用される用語「核酸」及び「ポリヌクレオチド」とは、任意の長さのヌクレオシドのポリマー形態を指す。一般的には、ポリヌクレオチドは、ホスホジエステル結合によって結合した、DNAまたはRNAに天然に見出されるヌクレオシド(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、及びデオキシシチジン)から構成される。この用語には、天然の核酸に見出されるかどうかにかかわらず、化学的または生物学的に修飾された塩基、修飾された骨格などを有するヌクレオシドまたはヌクレオシド類似体を含む分子が包含され、そのような分子は特定の用途に好ましい場合がある。本出願がポリヌクレオチドに言及する場合、DNA、RNAの両方と、それぞれの場合における一本鎖及び二本鎖形態の両方(及び各一本鎖分子の相補体)が提供されることが理解される。本明細書中で使用する「ポリヌクレオチド配列」とは、ポリヌクレオチド物質自体及び/または特定の核酸を生化学的に特徴付ける配列情報(すなわち、塩基の略語として使用される一連の文字)を指し得る。本明細書中に提示するポリヌクレオチド配列は、特に明記しない限り、5’から3’の方向で示される。
【0054】
本明細書中で使用する場合、核酸の「相補性」または「相補的」という用語は、その核酸塩基の配向のために、核酸の1つの鎖のヌクレオチド配列が、反対の核酸鎖上の別の配列と水素結合を形成することを意味する。DNAの相補的塩基は、通常、AとT、及びCとGである。RNAでは、通常、CとG、及びUとAである。相補性は、完全または実質的/十分であり得る。2つの核酸間の完全な相補性は、2つの核酸が二重鎖を形成することができることを意味し、その場合、二重鎖のすべての塩基がワトソン-クリックペアリングによって相補的な塩基に結合する。「実質的に」または「十分に」相補的とは、1つの鎖の配列が反対側の鎖の配列に対して完全に及び/または完璧に相補的ではないが、一連のハイブリダイゼーション条件(例えば、塩濃度及び温度)で2つの鎖の塩基間で十分な結合が起こり、安定したハイブリッド複合体を形成することを意味する。そのような条件は、配列と標準的な数学的計算を使用してハイブリダイズした鎖のTm(融解温度)を予測するか、または日常的な方法を使用してTmを経験的に決定することにより予測することができる。Tmは、2つの核酸鎖の間に形成されるハイブリダイゼーション複合体の集団の50%が変性する(すなわち、二本鎖核酸分子の集団のうちの半数が一本鎖に解離する)温度を有する。Tmより低い温度では、ハイブリダイゼーション複合体の形成が有利であり、一方、Tmより高い温度では、ハイブリダイゼーション複合体中の鎖の融解または分離が有利である。核酸のTmは、1M NaCl水溶液中の既知のG+C含量を用いて、例えば、Tm=81.5+0.41(%G+C)を用いて見積もってもよいが、他の既知のTm計算では、核酸の構造特性を考慮する。
【0055】
本明細書中で使用する場合、用語「プロモーター」とは、RNAポリメラーゼが結合するDNA上の認識部位を指す。ポリメラーゼは、導入遺伝子の転写を促進する。
参照ポリヌクレオチド配列または参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性の割合(%)」とは、配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入して、最大の配列同一性の割合を達成した後、参照ポリヌクレオチド配列または参照ポリペプチド配列内の核酸またはアミノ酸と同一である候補配列内の核酸またはアミノ酸の割合と定義される。核酸またはアミノ酸配列同一性の割合を決定することを目的としたアラインメントは、当業者の技術の範囲内にある様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、またはMegalignソフトウェアなどの、公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、達成することができる。当業者であれば、比較している配列の完全長にわたる最大のアラインメントを得るために必要とされる任意のアルゴリズムを含む配列アラインメントのための適切なパラメータを決定することができる。例えば、配列同一性の割合の値は、配列比較コンピュータプログラムBLASTを使用して生成してもよい。一例として、所与の核酸またはアミノ酸配列Aの、所与の核酸またはアミノ酸配列Bに対する、Bとの、またはBに対しての配列同一性の割合(あるいは、所与の核酸またはアミノ酸配列Bに、Bと、またはBに対して特定の配列同一性の割合を有する所与の核酸またはアミノ酸配列Aとして表現することができる)は、以下のように計算される:
100×(分数X/Y)
式中、Xは、AとBとのプログラムのアラインメントにおいて、配列アラインメントプログラム(例えば、BLAST)によって同一の一致としてスコアリングされたヌクレオチドまたはアミノ酸の数であり、Yは、Bの核酸の総数である。核酸またはアミノ酸配列Aの長さが核酸またはアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAの配列同一性の割合は、Aに対するBの配列同一性の割合と等しくないと考えられる。
【0056】
本明細書中で使用する用語「誘導体」とは、対応する完全長の野生型核酸、ペプチド、またはタンパク質と比較して、1つ以上の変異及び/または化学修飾を含む核酸、ペプチド、もしくはタンパク質、またはそのバリアントもしくは類似体を指す。核酸が関与する化学修飾の非限定的な例として、例えば、塩基部分、糖部分、リン酸部分、リン酸-糖骨格、またはそれらの組み合わせへの修飾が挙げられる。
【0057】
本明細書中で使用する場合、用語「医薬組成物」とは、対象に影響を与えるか、または対象に影響を与える可能性のある特定の疾患または病態を予防、治療または制御するために、場合により、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、及び/または担体と組み合わせて、哺乳類、例えばヒトなどの対象に投与する治療薬を含む混合物を指す。
【0058】
本明細書中で使用する場合、用語「薬学的に許容される」とは、過度の毒性、刺激、アレルギー反応及び他の問題となる障害がなく、妥当なベネフィット/リスク比を有し、哺乳類(例えば、ヒト)などの対象の組織との接触に適した化合物、物質、組成物、及び/または剤形を指す。好ましくは、用語「薬学的に許容される」は、哺乳類、より具体的にはヒトで使用するために、連邦または州政府の規制機関によって承認されるか、または米国薬局方または他の一般的に認められた薬局方に記載されていることを意味する。
【0059】
本明細書中で使用する場合、用語「試料」とは、対象から分離された標本(例えば、血液、血液成分(例えば、血清または血漿)、尿、唾液、羊水、脳脊髄液、組織(例えば、胎盤または皮膚)、膵液、絨毛膜絨毛試料、及び細胞)を指す。
【0060】
本明細書中で使用する場合、用語「転写調節エレメント」とは、目的の遺伝子の転写を少なくとも部分的に制御する核酸を指す。転写調節エレメントは、遺伝子転写を制御するか、または制御するのを支援するプロモーター、エンハンサー、及び他の核酸(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含み得る。転写調節エレメントの例は、例えば、Lorence,Recombinant Gene Expression:Reviews and Protocols(Humana Press,New York,NY,2012)に記載されている。
【0061】
本明細書中で使用する場合、用語「形質移入」とは、原核生物または真核生物の宿主細胞への外来性DNAの導入に一般的に使用される任意の多種多様な技術、例えば、電気穿孔法、リポフェクション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラン形質移入法、Nucleofection、スクイーズポレーション、ソノポレーション、光形質移入法、マグネトフェクション、インパレフェクションなどを指す。
【0062】
本明細書中で使用する場合、用語「対象」及び「患者」とは、動物(例えば、ヒトなどの哺乳類)、獣医対象動物(例えば、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタなど)、及び疾患の実験動物モデル(例えば、マウス、ラット)を指す。本明細書に記載の方法に従って治療する対象は、難聴(例えば、感音難聴)または前庭機能不全(例えば、浮動性眩暈、回転性眩暈、または平衡失調)と診断されている対象、またはこれらの病態を発症するリスクを有する対象であり得る。診断は、当技術分野で公知の任意の方法または技術によって実施してもよい。当業者であれば、本開示に従って治療する対象が、標準検査を受けている可能性があるか、または検査を受けていないが疾患もしくは病態に関連する1つ以上のリスク因子の存在に起因するリスクを有する対象として同定されている可能性があることを理解するであろう。
【0063】
本明細書中で使用する場合、用語「形質導入」及び「形質導入する」とは、ベクター構築物またはその一部を細胞に導入する方法を指す。ベクター構築物が、例えば、AAVベクターなどのウイルスベクターに含まれる場合、形質導入とは、細胞のウイルス感染、及びその後のベクター構築物またはその一部の細胞ゲノムへの移入及び組み込みを指す。
【0064】
本明細書中で使用する場合、状態、障害または病態の「治療」及び「治療すること」には:(1)状態、障害もしくは病態に罹患しているか、またはその素因がある可能性があるが、まだ臨床または無症候性の症状を経験するかまたは呈していない対象において、発症する状態、障害または病態の少なくとも1つの臨床または無症候性の症状の発症率及び/または出現可能性を予防、遅延、または低減するか;あるいは(2)状態、障害または病態を阻害する、すなわち、疾患の発症もしくはその再発またはその少なくとも1つの臨床もしくは無症候性の症状の発症を阻止、軽減または遅延させるか;あるいは(3)疾患を軽減する、すなわち、状態、障害もしくは病態、またはその臨床もしくは無症候性の症状の少なくとも1つを退行させることが含まれ得る。治療する対象のベネフィットは、統計的に有意であるか、または少なくとも患者または医師にとって知覚可能である。
【0065】
本明細書中で使用する場合、用語「ベクター」には、核酸ベクター、例えば、プラスミド、コスミド、または人工染色体などのDNAベクター、RNAベクター、ウイルス、または任意の他の適切なレプリコン(例えば、ウイルスベクター)が含まれる。外来性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを原核生物または真核生物の細胞に送達するために、様々なベクターが開発されてきた。そのような発現ベクターの例は、例えば、Gellissen,Production of Recombinant Proteins:Novel Microbial and Eukaryotic Expression Systems(John Wiley & Sons,Marblehead,MA,2006)に記載されている。本明細書に記載の組成物及び方法での使用に適した発現ベクターは、ポリヌクレオチド配列、及び、例えば、タンパク質の発現及び/または哺乳類細胞のゲノムへのこれらのポリヌクレオチド配列の組み込みに使用する追加の配列エレメントを含む。本明細書に記載の導入遺伝子の発現に使用することができる特定のベクターには、遺伝子転写を指示するプロモーター及びエンハンサー領域などの調節配列を含むベクターが含まれる。導入遺伝子の発現のための他の有用なベクターは、導入遺伝子の翻訳速度を増強するか、または遺伝子転写から生じるmRNAの安定性または核外輸送を向上させるポリヌクレオチド配列を含む。これらの配列エレメントには、例えば、発現ベクター上に組み込まれた遺伝子の効率的な転写を指示するために、5’及び3’非翻訳領域ならびにポリアデニル化シグナル部位が含まれる。本明細書に記載の組成物及び方法での使用に適した発現ベクターはまた、そのようなベクターを含む細胞を選択するためのマーカーをコードするポリヌクレオチドを含み得る。適切なマーカーの例として、アンピシリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、またはノーセオスリシンなどの抗生物質に対する耐性をコードする遺伝子が含まれる。
【0066】
本明細書中で使用する場合、用語「前庭有毛細胞」とは、動きの感知に関与し、平衡感覚及び空間的配向に寄与する内耳の特殊な細胞群を指す。前庭有毛細胞は、内耳の三半規管及び耳石に存在する。前庭有毛細胞への損傷及び前庭有毛細胞機能を破壊する遺伝子変異は、回転性眩暈及び平衡失調障害などの前庭機能不全に関係している。
【0067】
本明細書中で使用する場合、用語「野生型」とは、所与の生物における特定の遺伝子について最も出現頻度が高い遺伝子型を指す。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1A】サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下でGFPを発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターで形質導入したマウス蝸牛の一連の蛍光画像である。6~8週齢のC57Bl/6J雄マウスに、AAV-CMV-GFPウイルスを、後半規管を介して注入した。マウスを手術から回復させ、安楽死させ、10日後に10%中性緩衝ホルマリンで灌流した。内耳側頭骨を採取し、8%EDTA中で3日間脱灰した。脱灰した側頭骨から蝸牛を解剖し、共焦点画像解析のためにスライドに取り付けた。ユビキタスプロモーターを使用して、AAV-CMV-GFPは、内有毛細胞、外有毛細胞、らせん神経節ニューロン、間葉細胞、及びグリアを含む蝸牛内の多くの細胞型でGFP発現を誘導した。
【
図1B】Myo15プロモーターの制御下でGFPを発現するAAVベクター(配列番号13)で形質導入したマウス蝸牛の一連の蛍光画像である。6~8週齢のC57Bl/6J雄マウスに、AAV-Myo15-GFPウイルスを、後半規管を介して注入した。マウスを手術から回復させ、安楽死させ、10日後に10%中性緩衝ホルマリンで灌流した。内耳側頭骨を採取し、8%EDTA中で3日間脱灰した。脱灰した側頭骨から蝸牛を解剖し、共焦点画像解析のためにスライドに取り付けた。有毛細胞特異的プロモーターを使用して、AAV-Myo15-GFPは、内有毛細胞及び外有毛細胞でのみ発現を誘導した。
【
図2】Myo15プロモーター(配列番号13、
図2)の制御下でGFPを発現するAAVベクターで形質導入したマウス前庭系の領域(卵形嚢、球形嚢、後部内襞(PC)、前部内襞(AC)、及び水平内襞(HC))の蛍光画像である。6~8週齢のC57Bl/6J雄マウスに、AAV-Myo15-GFPウイルスを、後半規管を介して注入した。マウスを手術から回復させ、安楽死させ、10日後に10%中性緩衝ホルマリンで灌流した。内耳側頭骨を採取し、8%EDTA中で3日間脱灰した。脱灰した側頭骨から前庭器官を解剖し、画像解析のためにスライドに取り付けた。有毛細胞特異的プロモーターを使用して、AAV-Myo15-GFPは、前庭有毛細胞でのみ発現を誘導した(
図2)。
【
図3A】非ヒト霊長類の蝸牛の一連の蛍光画像であり、Myo15プロモーターがGFP発現を非ヒト霊長類の蝸牛の有毛細胞に限定することを示す。
図3Aは、正円窓膜を介してAAV1-CMV-GFPの局所注射を受けた非ヒト霊長類由来の蝸牛の共焦点画像である。注射の28日後に組織を採取した。天然のGFP蛍光を示す。GFPの発現は、臓器全体の様々な種類の細胞型で検出された。
【
図3B】非ヒト霊長類の蝸牛の一連の蛍光画像であり、Myo15プロモーターがGFP発現を非ヒト霊長類の蝸牛の有毛細胞に限定することを示す。
図3Bは、AAV1-Myo15-GFPを注入し、
図3Aの蝸牛と同じ方法で処理した、非ヒト霊長類由来の蝸牛の共焦点画像である。GFPの発現は有毛細胞に限定されていた。
【
図3C】非ヒト霊長類の蝸牛の一連の蛍光画像であり、Myo15プロモーターがGFP発現を非ヒト霊長類の蝸牛の有毛細胞に限定することを示す。
図3Cは、
図3Bに示すボックス領域内の有毛細胞の拡大図である。
【
図4】1.6kbのMyo15プロモーター(配列番号13)が、Tmc1ノックアウト(KO)マウスにおけるAAVマウスTMC1ベクターの生物学的有効性を、ユビキタスCMVプロモーターに比べて増強したことを示すグラフである。Tmc1 KOマウスに対し、生後2日目(P2)に注射し、指定の週齢において聴性脳幹反応(ABR)を評価した。ABR閾値を、ナイーブホモ接合性(白丸と淡灰色の線)及びヘテロ接合性(黒丸と濃灰色の線)Tmc1 KOマウス、ならびにAAV-CMVマウスTMC1(CMV_mTmc1;白丸と濃灰色の線)またはAAV-Myo15-マウスTMC1(PdBx_mTmc1;P23、淡灰色の円を通る淡灰色の線;P28、黒丸と濃灰色の線)を注射したホモ接合性Tmc1 KOマウスの刺激周波数の関数としてプロットした。ABR閾値の回復は、AAV-CMV-マウスTMC1に比べて、AAV-Myo15-マウスTMC1を注射したホモ接合性Tmc1 KOマウスにおいて大幅に改善した。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本明細書において、特に有毛細胞(例えば、蝸牛有毛細胞及び/または前庭有毛細胞)内で導入遺伝子発現を誘導するための組成物及び方法を記載する。本発明は、蝸牛有毛細胞において特異的に導入遺伝子を発現することができるミオシン15(Myo15)プロモーターの領域を含むポリヌクレオチドを特徴とする。本発明はまた、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたこれらのプロモーターを有する核酸ベクターを特徴とする。本明細書に記載の組成物及び方法を使用して、特に蝸牛有毛細胞及び前庭有毛細胞において有毛細胞タンパク質をコードするポリヌクレオチドを発現させることができ、したがって、本明細書に記載の組成物を、対象(例えば、哺乳類対象、例えば、ヒト)に投与して、有毛細胞の機能不全、例えば、難聴または前庭機能不全によって引き起こされる障害を治療することができる。
【0070】
有毛細胞
有毛細胞は、内耳に存在する聴覚系及び前庭系の感覚細胞である。蝸牛有毛細胞は、聴覚系の感覚細胞であり、2つの主要な細胞型:音の感知に関与する内有毛細胞、及び低音を増幅すると考えられている外有毛細胞で構成される。前庭有毛細胞は、内耳の三半規管及び耳石器官に位置し、平衡感覚及び空間的配向に寄与する動きの感覚に関与している。有毛細胞は、細胞の頂端面から突出して有毛細胞の束を形成する不動毛にちなんで名付けられた。不動毛の偏向(例えば、蝸牛有毛細胞の音波によるか、または前庭有毛細胞の回転または線形加速による)により、機械刺激依存性イオンチャネルが開放され、有毛細胞が神経伝達物質を放出して神経を活性化し、それによって機械音または運動シグナルを、脳に伝達可能な電気シグナルに変換することができる。蝸牛有毛細胞は正常な聴力に不可欠であり、蝸牛有毛細胞の損傷及び蝸牛有毛細胞の機能を破壊する遺伝子変異は、難聴及び聴覚消失に関係している。前庭有毛細胞の損傷及び前庭有毛細胞の機能を破壊する遺伝子変異は、平衡失調及び眩暈(例えば、浮動性眩暈)などの前庭機能不全に関係している。近年、難聴及び前庭機能不全を治療するための魅力的な治療アプローチとして遺伝子治療が注目されている;しかしながら、この分野には、遺伝子治療で使用する核酸ベクターを有毛細胞に特異的に標的化する方法が存在しない。
【0071】
ミオシン15
Myo15は、不動毛の発達を調節する、非従来型のアクチンベースの分子モーターである。Myo15に変異を有するマウスは、短い不動毛と重度の難聴及び前庭機能不全を有することが認められており、ヒトオルソログであるMyo15Aに変異があると、非症候性の常染色体劣性難聴であるDFNB3が引き起こされる。Myo15は不動毛に局在することが観察されており、不動毛の発達と維持に不可欠である。局在化のパターンは、Myo15が有毛細胞で特異的に発現している可能性があることを示している。しかしながら、Myo15プロモーターは、これまでのところ、単離され、特徴付けられてはいない。発明者らは、プロモーターの調節エレメントを構成している可能性のある、オーソロガスゲノム配列内の進化的に保存されたブロックを同定し、それらが翻訳開始部位の7200塩基対(bp)を超えて上流に位置することを発見した。このゲノム領域は、遺伝子治療のために目的の導入遺伝子を送達するために、最大パッケージ容量が4.7kbであるアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターと組み合わせて使用するには大きすぎる。
【0072】
本発明は、部分的に、有毛細胞(例えば、蝸牛有毛細胞及び/または前庭有毛細胞)において特異的に導入遺伝子の発現を促進するために使用することができるMyo15翻訳開始部位の上流の領域の発見に基づく。したがって、本明細書に記載の組成物及び方法を使用して、有毛細胞において目的の遺伝子(例えば、有毛細胞の発達、機能、細胞運命の特定、再生、生存、もしくは維持に関与する遺伝子、または難聴もしくは前庭機能不全を有する対象において破壊されている、例えば、変異していることが知られている遺伝子)を発現させて、難聴(例えば、感音難聴)及び/または前庭機能不全(例えば、回転性眩暈、浮動性眩暈、または平衡失調)を有するか、または発症するリスクを有する対象を治療することができる。
【0073】
本明細書に記載の組成物及び方法のポリヌクレオチドは、有毛細胞において特異的に導入遺伝子を発現することができるMyo15遺伝子座の領域由来の核酸配列、またはそのバリアント、例えば、有毛細胞で特異的に導入遺伝子を発現することができるMyo15遺伝子座の領域に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する核酸配列を有する。これらの領域は、Myo15翻訳開始部位の直前の核酸配列と、Myo15翻訳開始部位から5kb以上離れた上流の調節エレメントを含む。本明細書に記載の組成物及び方法のポリヌクレオチドは、場合により、有毛細胞において特異的に導入遺伝子を発現することができるMyo15遺伝子座の領域を作動可能に連結するリンカーを含み得るか、またはMyo15遺伝子座の領域は、介在リンカーなしで直接結合することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、Myo15遺伝子の第1の非コードエキソン(Myo15翻訳開始部位に対して-6755~-7209の核酸であり、その配列を配列番号1に記載する)またはその機能部分もしくは誘導体を含む領域に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域(上流の調節エレメント)と、それに結合した(例えば、作動可能に連結された)Myo15翻訳開始部位の直前の核酸配列(Myo15翻訳開始部位に対して-1~-1157の核酸であり、その配列を配列番号2に記載する)またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域を含む。配列番号1の機能部分は、Myo15翻訳開始部位に対して-7166~-7091の核酸配列(配列番号3に記載)及び/またはMyo15翻訳開始部位に対して-7077~-6983の核酸配列(配列番号4に記載)を有し得る。第1の領域は、配列番号5に記載の介在核酸を伴わずに配列番号4の核酸配列に融合させた配列番号3の核酸配列を含み得るか、または第1の領域は、配列番号6に記載の介在核酸を伴わずに配列番号3の核酸配列に融合させた配列番号4の核酸配列を含み得る。あるいは、第1の領域は、内在性の介在核酸配列(例えば、第1の領域は、配列番号7に記載のように、Myo15翻訳開始部位に対して-7166~-6983の核酸配列を有し得る)または核酸リンカーによって結合された配列番号3及び配列番号4の配列を含み得る。第1の領域が配列番号3及び配列番号4の両方を含むポリヌクレオチドでは、2つの配列は、任意の順序で含まれ得る(例えば、配列番号3を配列番号4に結合して(例えば、先行させて)もよく、または配列番号4を配列番号3に結合して(例えば、先行させて)もよい)。配列番号2の機能部分は、Myo15翻訳開始部位に対して-590~-509の核酸配列(配列番号8に記載)及び/またはMyo15翻訳開始部位に対して-266~-161の核酸配列(配列番号9に記載)を有し得る。第2の領域は、配列番号10に記載の介在核酸を伴わずに配列番号9の核酸配列に融合させた配列番号8の核酸配列を含み得るか、または第2の領域は、配列番号11に記載の介在核酸を伴わずに配列番号8の核酸配列に融合させた配列番号9の核酸配列を含み得る。あるいは、第2の領域は、内在性の介在核酸配列(例えば、第2の領域は、配列番号12に記載するように、Myo15翻訳開始部位に対して-590~-161の核酸配列を有し得る)または核酸リンカーによって結合した配列番号8と配列番号9の配列を含み得る。第2の領域が配列番号8及び配列番号9の両方を含むポリヌクレオチドでは、2つの配列は、任意の順序で含まれ得る(例えば、配列番号8を配列番号9に結合して(例えば、先行させて)もよく、または配列番号9を配列番号8に結合して(例えば、先行させて)もよい)。
【0075】
ポリヌクレオチドの第1の領域と第2の領域は、直接結合することも、核酸リンカーによって結合することもできる。例えば、ポリヌクレオチドは、介在核酸を伴わずに、配列番号2の配列またはその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号8~12のいずれか1つ以上、例えば、配列番号8及び9)に融合させた配列番号1の配列またはその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号3~7のいずれか1つ以上、例えば、配列番号3及び4)を含み得る。例えば、配列番号1と配列番号2の直接融合から生じるポリヌクレオチドの核酸配列を、配列番号13に示す。あるいは、リンカーを使用して、配列番号1の配列またはその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号3~7のいずれか1つ以上、例えば、配列番号3及び4)を、配列番号2の配列またはその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号8~12のいずれか1つ以上、例えば、配列番号8及び9)に結合することができる。
【0076】
本明細書に記載のポリヌクレオチドで使用するための核酸リンカーの長さは、約5kb以下(例えば、約5kb、4.5kb、4kb、3.5kb、3kb、2.5kb、2kb、1.5kb、1kb、900bp、800bp、700bp、600bp、500bp、450bp、400bp、350bp、300bp、250bp、200bp、150bp、100bp、90bp、80bp、70bp、60bp、50bp、40bp、30bp、25bp、20bp、15bp、10bp、5bp、4bp、3bp、2bp、またはそれ以下)であり得る。本明細書に記載のポリヌクレオチドで使用することができる核酸リンカーは、有毛細胞において導入遺伝子の発現を誘導する本発明のポリヌクレオチドの能力を破壊しない。
【0077】
いくつかの実施形態では、配列番号1の配列またはその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号3~7のいずれか1つ以上、例えば、配列番号3及び4)を、配列番号2の配列またはその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号8~12のいずれか1つ以上、例えば、配列番号8及び9)に結合し(例えば、作動可能に連結し)、いくつかの実施形態では、領域の順序を逆にする(例えば、配列番号2の配列またはその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号8~12のいずれか1つ以上、例えば、配列番号8及び9)を、配列番号1の配列またはその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号3~7のいずれか1つ以上、例えば、配列番号3及び4)に結合する(例えば、作動可能に連結する))。例えば、配列番号2と配列番号1の直接融合から生じるポリヌクレオチドの核酸配列を、配列番号14に示す。順序に関係なく、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体の配列と配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体の配列を、上記のように、直接融合または核酸リンカーによって結合することができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、Myo15遺伝子の第1の非コードエキソン(Myo15翻訳開始部位に対して-6755~-7209の核酸であり、その配列を配列番号1に示す)またはその機能部分もしくはその誘導体を含む領域に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する領域を含む。配列番号1の機能部分は、Myo15翻訳開始部位に対して-7166~-7091の核酸配列(配列番号3に記載)及び/またはMyo15翻訳開始部位に対して-7077~-6983の核酸配列(配列番号4に記載)を有し得る。ポリヌクレオチドは、配列番号5に記載の介在核酸を伴わずに配列番号4の核酸配列に融合させた配列番号3の核酸配列を含み得るか、またはポリヌクレオチドは、配列番号6に記載の介在核酸を伴わずに配列番号3の核酸に融合させた配列番号4の核酸配列を含み得る。あるいは、ポリヌクレオチドは、内在性の介在核酸配列(例えば、第1の領域は、配列番号7に記載のように、Myo15翻訳開始部位に対して-7166~-6983の核酸配列を有し得る)または核酸リンカーによって結合された配列番号3及び配列番号4の配列を含み得る。配列番号3及び配列番号4の両方を含むポリヌクレオチドでは、2つの配列は、任意の順序で含まれ得る(例えば、配列番号3を配列番号4に結合して(例えば、先行させて)もよく、または配列番号4を配列番号3に結合して(例えば、先行させて)もよい)。
【0079】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、Myo15翻訳開始部位の直前の上流の核酸配列(Myo15翻訳開始部位に対して-1~-1157の核酸であり、その配列を配列番号2に示す)またはその機能部分もしくはその誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する領域を含む。配列番号2の機能部分は、Myo15翻訳開始部位に対して-590~-509の核酸配列(配列番号8に記載)及び/またはMyo15翻訳開始部位に対して-266~-161の核酸配列(配列番号9に記載)を有し得る。ポリヌクレオチドは、配列番号10に記載の介在核酸を伴わずに配列番号9の核酸配列に融合させた配列番号8の核酸配列を含み得るか、またはポリヌクレオチドは、配列番号11に記載の介在核酸を伴わずに配列番号8の核酸配列に融合させた配列番号9の核酸配列を含み得る。あるいは、ポリヌクレオチドは、内在性の介在核酸配列(例えば、第2の領域は、配列番号12に記載するように、Myo15翻訳開始部位に対して-590~-161の核酸配列を有し得る)または核酸リンカーによって結合した配列番号8と配列番号9の配列を含み得る。配列番号8及び配列番号9の両方を含むポリヌクレオチドでは、2つの配列は、任意の順序で含まれ得る(例えば、配列番号8を配列番号9に結合して(例えば、先行させて)もよく、または配列番号9を配列番号8に結合して(例えば、先行させて)もよい)。
【0080】
前述の核酸配列を以下の表2にまとめる。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
本明細書に記載の組成物及び方法と組み合わせて有用なさらなるポリヌクレオチドとして、表2に示す核酸配列及び表2に示す核酸配列の機能部分または誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する核酸分子が挙げられる。
【0087】
前述のポリヌクレオチドを、核酸ベクターに含め、導入遺伝子に作動可能に連結して、有毛細胞(例えば、蝸牛有毛細胞及び/または前庭有毛細胞)において導入遺伝子を特異的に発現させることができる。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、有毛細胞の機能、有毛細胞の発達、有毛細胞の細胞運命の特定、有毛細胞の再生、有毛細胞の生存、または有毛細胞の維持に関与するタンパク質をコードしているか、あるいは導入遺伝子は、難聴、聴覚消失、聴覚神経障害、耳鳴症、または前庭機能不全(例えば、回転性眩暈、浮動性眩暈、または平衡失調)を有する対象において変異していることが見出されている遺伝子の野生型バージョンである。本明細書に記載の方法に従って、難聴及び/または前庭機能不全の治療のための治療用タンパク質をコードする導入遺伝子に作動可能に連結された前述のポリヌクレオチドの1つ以上(例えば、表2に記載のポリヌクレオチドの1つ以上)を含む組成物を対象に投与することができる。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、アクチンγ1(ACTG1)、ファスシンアクチンバンドリングタンパク質2、レチナール(FSCN2)、ラジキシン(RDX)、POUクラス4ホメオボックス3(POU4F3)、TRIO及びF-アクチン結合タンパク質(TRIOBP)、タペリン(TPRN)、Xinアクチン結合リピート含有2(XIRP2)、Atonal BHLH転写因子1(ATOH1)、成長因子非依存性1転写抑制因子(GFI1)、コリン作動性受容体ニコチンα9サブユニット(CHRNA9)、カルシウム及びインテグリン結合ファミリーメンバー3(CIB3)、カドヘリン23(CDH23)、プロトカドヘリン15(PCDH15)、キノシリン(KNCN)、ペジバキン(DFNB59)、オトフェリン(OTOF)、MKRN2反対鎖(MKRN2OS)、LIMホメオボックスタンパク質3(LHX3)、膜貫通型チャネル様1(TMC1)、ミオシン15(MYO15)、ミオシン7A(MYO7A)、ミオシン6(MYO6)、ミオシンIIIA(MYO3A)、ミオシンIIIB(MYO3B)、グルタレドキシンドメイン含有システインリッチタンパク質1(GRXCR1)、タンパク質チロシンホスファターゼ受容体タイプQ(PTPRQ)、後期角化エンベロープ6A(LCE6A)、リポキシゲナーゼホモロジードメイン含有タンパク質1(LOXHD1)、ADP-リボシルトランスフェラーゼ1(ART1)、ATPアーゼ細胞膜Ca2+輸送体2(ATP2B2)、カルシウム及びインテグリン結合ファミリーメンバー2(CIB2)、カルシウム電位依存性チャネル補助サブユニットα2δ4(CACNA2D4)、カルシウム結合タンパク質2(CABP2)、表皮成長因子受容体経路基質8(EPS8)、EPS8様2(EPS8L2)、エスピン(ESPN)、エスピン様(ESPNL)、ペリフェリン2(PRPH2)、ステレオシリン(STRC)、溶質キャリアファミリー8メンバーA2(SLC8A2)、亜鉛フィンガーCCHCタイプ含有タンパク質12(ZCCHC12)、ロイシンリッチ膜貫通及びO-メチルトランスフェラーゼドメイン含有(LRTOMT2、LRTOMT1)、USH1タンパク質ネットワーク成分ハーモニン(USH1C)、細胞外ロイシンリッチリピート及びフィブロネクチンIII型ドメイン含有1(ELFN1)、テトラトリコペプチドリピートタンパク質24(TTC24)、ジストロテリン(DYTN)、キーリン/コーディン様タンパク質(KCP)、コイルドコイルグルタミン酸リッチタンパク質2(CCER2)、ロイシンリッチリピート及び膜貫通ドメイン含有タンパク質2(LRTM2)、カリウム電位依存性チャネルサブファミリーAメンバー10(KCNA10)、ニューロトロフィン3(NT3)、クラリン1(CLRN1)、クラリン2(CLRN2)、SKIファミリー転写コリプレッサー1(SKOR1)、Tctex1ドメイン含有タンパク質1(TCTEX1D1)、Fc受容体様B(FCRLB)、溶質キャリアファミリー17メンバー8(SLC17A8)、グルタレドキシンドメイン含有システインリッチタンパク質2(GRXCR2)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、セルピンファミリーEメンバー3(SERPINE3)、Nescientヘリックス・ループ・ヘリックス1(NHLH1)、熱ショックタンパク質70(HSP70)、熱ショックタンパク質90(HSP90)、活性化転写因子6(ATF6)、真核生物翻訳開始因子2αキナーゼ3(PERK)、セリン/スレオニンタンパク質キナーゼ/エンドリボヌクレアーゼIRE1(IRE1)、及び結合性免疫グロブリンタンパク質(BIP)からなる群から選択されるタンパク質をコードする。
【0088】
哺乳類細胞における外来性核酸の発現
MYO7A、POU4F3、SLC17A8、及びTMC1などの様々な遺伝子の変異が感音難聴に関連しており、これらの変異の一部、例えば、MYO7Aの変異は前庭機能不全にも関連している。本明細書に記載の組成物及び方法を使用して、特に有毛細胞(例えば、蝸牛有毛細胞及び/または前庭有毛細胞)において、目的のタンパク質をコードする核酸配列に作動可能に連結したMyo15プロモーターを含む核酸ベクター(例えば、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域及び/または配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域、場合により第1の領域と第2の領域を結合するリンカーを含む)を投与することによって、目的の遺伝子(例えば、難聴及び/または前庭機能不全に関与する野生型の遺伝子、または有毛細胞の発達、機能、細胞運命の特定、再生、生存、もしくは維持に関与する遺伝子)によってコードされるタンパク質の発現を誘導または増加させることができる。タンパク質を哺乳類細胞に送達するための、及びタンパク質をコードする遺伝子を哺乳類細胞において安定的に発現させるための幅広い方法が確立されている。
【0089】
本明細書に記載の組成物に関連して発現させることができるタンパク質(例えば、タンパク質をコードする導入遺伝子が、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域及び/または配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域を含むポリヌクレオチドに作動可能に連結されている場合)は、健康な有毛細胞において発現するタンパク質(例えば、蝸牛有毛細胞及び/または前庭有毛細胞、例えば、有毛細胞の発達、機能、再生、細胞運命の特定、生存、もしくは維持に役割を果たすタンパク質、または感音難聴もしくは前庭機能不全を有する対象において欠損しているタンパク質)または他の目的の治療用タンパク質である。本明細書に記載の組成物及び方法を使用して有毛細胞において発現させることができるタンパク質として、ACTG1、FSCN2、RDX、POU4F3、TRIOBP、TPRN、XIRP2、ATOH1、GFI1、CHRNA9、CIB3、CDH23、PCDH15、KNCN、DFNB59、OTOF、MKRN2OS、LHX3、TMC1、MYO15、MYO7A、MYO6、MYO3A、MYO3B、GRXCR1、PTPRQ、LCE6A、LOXHD1、ART1、ATP2B2、CIB2、CACNA2D4、CABP2、EPS8、EPS8L2、ESPN、ESPNL、PRPH2、STRC、SLC8A2、ZCCHC12、LRTOMT2、LRTOMT1、USH1C、ELFN1、TTC24、DYTN、KCP、CCER2、LRTM2、KCNA10、NT3、CLRN1、CLRN2、SKOR1、TCTEX1D1、FCRLB、SLC17A8、GRXCR2、BDNF、SERPINE3、NHLH1、HSP70、HSP90、ATF6、PERK、IRE1、及びBIPが挙げられる。
【0090】
目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチド
哺乳類細胞内で目的のタンパク質を治療上有効な細胞内濃度に到達させるために使用することができる1つのプラットフォームは、目的のタンパク質をコードする遺伝子を安定的に発現させる(例えば、哺乳類細胞の核ゲノムもしくはミトコンドリアゲノムへの組み込みによって、または哺乳類細胞の核におけるエピソーム鎖状体形成によって)ことによる。遺伝子は、対応するタンパク質の一次アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドである。外来性遺伝子を哺乳類細胞に導入するために、遺伝子をベクターに組み込むことができる。ベクターは、形質転換、形質移入、形質導入、直接取り込み、粒子衝撃法、及びリポソームへのベクターのカプセル化を含む様々な方法によって、細胞に導入することができる。細胞を形質移入または形質転換する適切な方法の例として、リン酸カルシウム沈殿、電気穿孔法、マイクロインジェクション、感染、リポフェクション、及び直接取り込みが挙げられる。そのような方法は、例えば、Green,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Fourth Edition(Cold Spring Harbor University Press,New York 2014);及びAusubel,et al.,Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Sons,New York 2015)にさらに詳細に記載されており、それぞれの開示は参照により本明細書に援用される。
【0091】
目的のタンパク質をコードする遺伝子を含むベクターを細胞膜リン脂質に標的化することにより、目的のタンパク質を哺乳類細胞に導入することもできる。例えば、すべての細胞膜リン脂質に親和性を有するウイルスタンパク質であるVSV-Gタンパク質にベクター分子を結合させることにより、ベクターを細胞膜の細胞外表面上のリン脂質に標的化することができる。そのような構築物は、当業者に周知の方法を使用して生成することができる。
【0092】
目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、哺乳類RNAポリメラーゼによって認識され、結合されることは、遺伝子発現にとって重要である。したがって、RNAポリメラーゼを動員し、転写開始部位での転写複合体の集合を促進する転写因子に対して高い親和性を示す配列エレメントを、ポリヌクレオチド内に含めてもよい。そのような配列エレメントとして、例えば、哺乳類プロモーターが挙げられ、その配列は、特定の転写開始因子、そして最終的にはRNAポリメラーゼによって認識され、結合され得る。哺乳類プロモーターの例は、Smith,et al.,Mol.Sys.Biol.,3:73(オンライン公開)に記載されており、その開示は参照により本明細書に援用される。本明細書に記載の方法及び組成物で使用するプロモーターは、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域及び/または配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域を含み、場合により第1の領域と第2の領域の間にリンカーを含むポリヌクレオチドである。
【0093】
目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチドが哺乳類細胞の核DNAに組み込まれると、このポリヌクレオチドの転写を、当技術分野で公知の方法によって誘導することができる。例えば、哺乳類プロモーターへの転写因子及び/またはRNAポリメラーゼの結合を調節し、したがって遺伝子発現を調節する薬剤などの外部化学試薬に哺乳類細胞を曝露することによって、発現を誘導することができる。化学試薬は、例えば、プロモーターに結合したリプレッサータンパク質を除去することによって、哺乳類プロモーターへのRNAポリメラーゼ及び/または転写因子の結合を促進するように機能することができる。あるいは、化学試薬は、RNAポリメラーゼ及び/または転写因子に対する哺乳類プロモーターの親和性を高め、それによりプロモーターの下流に位置する遺伝子の転写速度を化学試薬の存在下で増加させるように機能することができる。上記のメカニズムによってポリヌクレオチド転写を増強する化学試薬の例として、テトラサイクリン及びドキシサイクリンが挙げられる。これらの試薬は市販されており(Life Technologies,Carlsbad,CA)、確立されたプロトコールに従って遺伝子発現を促進するために哺乳類細胞に投与することができる。
【0094】
本明細書に記載の組成物及び方法で使用するためのポリヌクレオチドに含めてもよい他のDNA配列エレメントとして、エンハンサー配列が挙げられる。エンハンサーは、DNAが、転写開始部位での転写因子及びRNAポリメラーゼの結合に有利な三次元配向をとるように、目的の遺伝子を含むポリヌクレオチドの立体構造変化を誘導する別のクラスの調節エレメントを表す。したがって、本明細書に記載の組成物及び方法で使用するためのポリヌクレオチドには、目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチドが含まれ、さらに哺乳類のエンハンサー配列が含まれる。現在、哺乳類遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が知られており、例として、哺乳類のグロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン、及びインスリンをコードする遺伝子のエンハンサーが挙げられる。本明細書に記載の組成物及び方法で使用するためのエンハンサーには、真核細胞に感染することができるウイルスの遺伝物質に由来するエンハンサーも含まれる。例として、複製起点の後半側のSV40エンハンサー(bp100~270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後半側のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。真核生物の遺伝子転写の活性化を誘導するさらなるエンハンサー配列として、CMVエンハンサー及びRSVエンハンサーが挙げられる。エンハンサーは、目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクター内に、例えば、この遺伝子の5’または3’の位置にスプライシングさせてもよい。好ましい配向では、エンハンサーをプロモーターの5’側に配置し、次いでプロモーターを、目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチドに対して5’側に配置する。
【0095】
本明細書に記載のMyo15プロモーターを含む核酸ベクターには、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)を含めてもよい。WPREは、転写レベルで作用し、転写産物の核外輸送を促進することによって、及び/または新生の転写産物のポリアデニル化の効率を高めることによって、細胞内のmRNAの総量を増加させる。ベクターへのWPREの付加は、in vitro及びin vivoの両方で、いくつかの異なるプロモーターからの導入遺伝子発現のレベルの実質的な改善をもたらし得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のMyo15プロモーターを含む核酸ベクターは、レポーター配列を含み、これは、例えば、細胞及び組織(例えば、蝸牛有毛細胞及び/または前庭有毛細胞)において、Myo15プロモーターに作動可能に連結された遺伝子の発現を検証するのに有用であり得る。導入遺伝子において提供し得るレポーター配列として、β-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、及び当技術分野で周知の他のレポーターをコードするDNA配列が挙げられる。レポーター配列は、それらの発現を駆動するMyo15プロモーターなどの調節エレメントに関連付けられる場合、酵素アッセイ、放射線アッセイ、比色アッセイ、蛍光アッセイまたは他の分光アッセイ、蛍光活性化細胞選別アッセイ、ならびに酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び免疫組織化学を含む免疫学的アッセイを含む、従来の手段によって検出可能なシグナルを提供する。例えば、マーカー配列がLacZ遺伝子である場合、シグナルを組み込んだベクターの存在を、β-ガラクトシダーゼ活性のアッセイによって検出する。導入遺伝子が緑色蛍光タンパク質またはルシフェラーゼである場合、シグナルを組み込んだベクターを、ルミノメーターでの色または光の生成によって視覚的に測定してもよい。
【0097】
外来性核酸を標的細胞に送達するための方法
導入遺伝子、例えば、本明細書に記載のMyo15プロモーターに作動可能に連結された導入遺伝子を標的細胞(例えば、哺乳類細胞)に導入するために使用することができる技術は、当技術分野で周知である。例えば、電気穿孔法を使用して、目的の細胞に静電ポテンシャルを印加することにより、哺乳類細胞(例えば、ヒト標的細胞)を透過性にすることができる。このようにして外部電場にさらされたヒト細胞などの哺乳類細胞は、その後、外来性核酸を取り込みやすくなる。哺乳類細胞の電気穿孔法は、例えば、Chu et al.,Nucleic Acids Research 15:1311(1987)に詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に援用される。同様の技術であるNucleofection(商標)は、真核細胞の核への外来性ポリヌクレオチドの取り込みを刺激するために印加する電場を利用する。Nucleofection(商標)及びこの技術を実施するのに有用なプロトコールは、例えば、Distler et al.,Experimental Dermatology 14:315(2005)、及びUS2010/0317114に詳細に記載されており、それぞれの開示は、参照により本明細書に援用される。
【0098】
標的細胞の形質移入に有用なさらなる技術として、スクイーズポレーション法が挙げられる。この技術は、加えられたストレスに応答して形成される膜状の細孔を介した外来性DNAの取り込みを刺激するために、細胞の急速な機械的変形を誘発する。この技術は、ヒト標的細胞などの細胞への核酸の送達にベクターを必要としないという点で有利である。スクイーズポレーションは、例えば、Sharei et al.,Journal of Visualized Experiments 81:e50980 (2013)に詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に援用される。
【0099】
リポフェクションは、標的細胞の形質移入に有用な別の技術である。この方法は、リポソームへの核酸のローディングを含み、この方法は、多くの場合、第四級アミンまたはプロトン化アミンなどの陽イオン性官能基をリポソームの外部に向かって提示する。これにより、細胞膜の陰イオン性によってリポソームと細胞との間の静電相互作用が促進され、最終的に、例えば、リポソームと細胞膜との直接融合または複合体のエンドサイトーシスによって外来性核酸が取り込まれる。リポフェクションは、例えば、米国特許第7,442,386号に詳細に記載されており、その開示は、参照により本明細書に援用される。細胞膜とのイオン相互作用を利用して外来性核酸の取り込みを誘発する同様の技術には、細胞を陽イオン性ポリマー-核酸複合体と接触させることが含まれる。細胞膜との相互作用に有利な正電荷を与えるようにポリヌクレオチドと会合させる例示的な陽イオン性分子として、活性化デンドリマー(例えば、Dennig,Topics in Current Chemistry 228:227(2003)に記載されており、その開示は参照により本明細書に援用される)ポリエチレンイミン、及びジエチルアミノエチル(DEAE)-デキストランが挙げられ、形質移入剤としてのこれらの使用は、例えば、Gulick et al.,Current Protocols in Molecular Biology 40:I:9.2:9.2.1(1997)に詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に援用される。磁気ビーズは、穏やかで効率的な方法で標的細胞を形質移入するために使用することができる別のツールであり、なぜなら、この方法論は、核酸の取り込みを指示するために磁場の印加を利用するためである。この技術は、例えば、US2010/0227406に詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に援用される。
【0100】
標的細胞による外来性核酸の取り込みを誘発するための別の有用なツールは、レーザーフェクションであり、これは光学形質移入法とも呼ばれ、細胞を穏やかに透過性にし、ポリヌクレオチドが細胞膜に浸透できるようにするために、細胞を特定の波長の電磁放射に曝露することを含む技術である。この技術の生物活性は、電気穿孔法に類似しており、いくつかの場合では電気穿孔法よりも優れていることがわかる。
【0101】
インパレフェクションは、遺伝物質を標的細胞に送達するために使用することができる別の技術である。この技術は、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、及びナノワイヤーなどのナノ材料の使用に依存する。針状のナノ構造を、基板の表面に対して垂直に合成する。細胞内送達を目的とした遺伝子を含むDNAを、ナノ構造の表面に付着させる。次いで、これらの針のアレイを備えたチップを細胞または組織に押し付ける。ナノ構造によって刺激された細胞は、送達された遺伝子(複数可)を発現することができる。この技術の実施例は、Shalek et al.,PNAS 107:1870(2010)に記載されており、その開示は参照により本明細書に援用される。
【0102】
マグネトフェクションを使用して標的細胞に核酸を送達することもできる。マグネトフェクションの原理は、核酸を陽イオン性磁性ナノ粒子と会合させることである。磁性ナノ粒子は、完全に生分解性の酸化鉄でできており、用途に応じて異なる特定の独自の陽イオン性分子でコーティングされている。遺伝子ベクター(DNA、siRNA、ウイルスベクターなど)とのそれらの会合は、塩によって誘発されるコロイド凝集及び静電相互作用によって達成される。次いで、磁石によって生成された外部磁場の影響により、磁性粒子が標的細胞上に濃縮される。この技術は、Scherer et al.,Gene Therapy 9:102(2002)に詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に援用される。
【0103】
標的細胞による外来性核酸の取り込みを誘発するための別の有用なツールは、ソノポレーションであり、これは細胞膜の透過性を改変するために音波(通常は超音波周波数)を使用することを含む技術であり、細胞を透過性にし、ポリヌクレオチドが細胞膜に浸透することを可能にする。この技術は、例えば、Rhodes et al.,Methods in Cell Biology 82:309(2007)に詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に援用される。
【0104】
微小胞は、本明細書に記載の方法に従って標的細胞のゲノムを改変するために使用することができる別の潜在的な媒体を表す。例えば、糖タンパク質VSV-Gと、例えば、ヌクレアーゼなどのゲノム修飾タンパク質との共過剰発現によって誘導した微小胞を使用して、タンパク質を細胞に効率的に送達し、その後、内在性ポリヌクレオチド配列の部位特異的切断を触媒し、それにより、遺伝子または調節配列などの目的のポリヌクレオチドを共有結合によって組み込むために細胞のゲノムを調製することができる。真核細胞を遺伝子改変するためのGesicleとも呼ばれるそのような小胞の使用は、例えば、Quinn et al.,Genetic Modification of Target
Cells by Direct Delivery of Active Protein[abstract] In:Methylation changes in early embryonic genes in cancer[abstract],in:Proceedings of the 18th Annual Meeting of the American Society of Gene and Cell Therapy;2015 May 13,Abstract No. 122に詳細に記載されている。
【0105】
外来性核酸を標的細胞に送達するためのベクター
高速の転写及び翻訳を達成することに加えて、哺乳類細胞における外来性遺伝子の安定した発現を、その遺伝子を含むポリヌクレオチドを哺乳類細胞の核ゲノムへ組み込むことによって達成することができる。外来性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを哺乳類細胞の核DNAに送達し、組み込むための様々なベクターが開発されてきた。発現ベクターの例は、例えば、Gellissen,Production of Recombinant Proteins:Novel Microbial and Eukaryotic Expression Systems(John Wiley & Sons,Marblehead,MA,2006)に記載されている。本明細書に記載の組成物及び方法で使用する発現ベクターは、目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列に、及び、例えば、これらの作用物質の発現及び/またはこれらのポリヌクレオチド配列の哺乳類細胞ゲノムへの組み込みに使用する追加の配列エレメントに作動可能に連結されたMyo15プロモーター(例えば、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域及び/または配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域を含み、場合により第1の領域と第2の領域の間にリンカーを含むポリヌクレオチド)を含む。目的のタンパク質をコードする導入遺伝子に作動可能に連結されたMyo15プロモーターを含ませることができるベクターとして、プラスミド(例えば、細胞内で自律的に複製できる環状DNA分子)、コスミド(例えば、pWEベクターまたはsCosベクター)、人工染色体(例えば、ヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、またはP1由来人工染色体(PAC))、及びウイルスベクターが挙げられる。目的のタンパク質の発現に使用することができる特定のベクターとして、遺伝子転写を指示するエンハンサー領域などの調節配列を含むプラスミドが挙げられる。目的のタンパク質発現に有用な他のベクターは、これらの遺伝子の翻訳速度を高めるか、または遺伝子転写から生じるmRNAの安定性もしくは核外輸送を向上させるポリヌクレオチド配列を含む。これらの配列エレメントには、例えば、発現ベクターが保有する遺伝子の効率的な転写を指示するための、5’及び3’非翻訳領域、配列内リボソーム進入部位(IRES)、及びポリアデニル化シグナル部位が含まれる。本明細書に記載の組成物及び方法での使用に適した発現ベクターはまた、そのようなベクターを含む細胞を選択するためのマーカーをコードするポリヌクレオチドを含み得る。適切なマーカーの例として、アンピシリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、またはノーセオスリシンなどの抗生物質に対する耐性をコードする遺伝子が挙げられる。
【0106】
核酸送達用のウイルスベクター
ウイルスゲノムは、目的の遺伝子を標的細胞(例えば、ヒト細胞などの哺乳類細胞)のゲノムに効率的に送達するために使用することができるベクターの豊富な供給源を提供する。ウイルスゲノムは、そのようなゲノム内に含まれるポリヌクレオチドが、通常、普遍形質導入または特殊形質導入によって哺乳類細胞の核ゲノムに組み込まれるため、遺伝子送達のための特に有用なベクターである。これらのプロセスは、天然のウイルス複製サイクルの一部として発生し、遺伝子の組み込みを誘導するためにタンパク質や試薬を追加する必要がない。ウイルスベクターの例として、レトロウイルス(例えば、Retroviridae科ウイルスベクター)、アデノウイルス(例えば、Ad5、Ad26、Ad34、Ad35、及びAd48)、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、マイナス鎖RNAウイルス、例えば、オルソミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルス及び水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹及びセンダイ)、プラス鎖RNAウイルス、例えば、ピコルナウイルス及びアルファウイルス、ならびにアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型及び2型、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス)、及びポックスウイルス(例えば、ワクシニア、変異ワクシニアアンカラ(MVA)、鶏痘及びカナリア痘)を含む二本鎖DNAウイルスが挙げられる。他のウイルスとして、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポーバウイルス、ヘパドナウイルス、ヒトパピローマウイルス、ヒト泡沫状ウイルス、及び肝炎ウイルスが挙げられる。レトロウイルスの例として:トリ白血病肉腫、トリC型ウイルス、哺乳類C型、B型ウイルス、D型ウイルス、オンコレトロウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、アルファレトロウイルス、ガンマレトロウイルス、スプーマウイルスが挙げられる(Coffin,J.M.,Retroviridae:The viruses and their replication,Virology,Third Edition(Lippincott-Raven,Philadelphia,1996))。他の例として、マウス白血病ウイルス、マウス肉腫ウイルス、マウス乳腺腫瘍ウイルス、ウシ白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、ヒヒ内在性ウイルス、テナガザル白血病ウイルス、マソン-ファイザーサルウイルス、サル免疫不全ウイルス、サル肉腫ウイルス、ラウス肉腫ウイルス及びレンチウイルスが挙げられる。ベクターの他の例は、例えば、米国特許第5,801,030号に記載されており、その開示は、それが遺伝子治療で使用するためのウイルスベクターに属するため、参照により本明細書に援用される。
【0107】
核酸送達用のAAVベクター
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法のポリヌクレオチドを、細胞へのそれらの導入を容易にするために、rAAVベクター及び/またはウイルス粒子に組み込む。本明細書に記載の組成物及び方法に有用なrAAVベクターは、(1)本明細書に記載のMyo15プロモーター(例えば、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域及び/または配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域を含み、場合により第1の領域と第2の領域の間にリンカーを含むポリヌクレオチド)、(2)発現させる異種配列、及び(3)異種遺伝子の安定性及び発現を促進するウイルス配列を含む、組換え核酸構築物である。ウイルス配列は、DNAの複製及びウイルス粒子へのパッケージング(例えば、機能的ITR)のためにシスで必要とされるAAVの配列を含み得る。一般的な応用では、導入遺伝子は、有毛細胞の発達、有毛細胞の機能、有毛細胞の再生、有毛細胞の運命の特定、有毛細胞の生存、または有毛細胞の維持を促進することができる治療用タンパク質か、あるいは遺伝性難聴または前庭機能不全の形態を有する対象においては変異している有毛細胞タンパク質の野生型をコードし、これらは、難聴、聴覚消失、または前庭機能不全(例えば、浮動性眩暈、回転性眩暈、または平衡失調)に関連している変異を有する対象の聴力または前庭機能を改善するのに有用であり得る。そのようなrAAVベクターは、マーカーまたはレポーター遺伝子も含み得る。有用なrAAVベクターでは、1つ以上のAAV WT遺伝子の全体または一部が削除されているが、機能的な隣接ITR配列は保持されている。AAV ITRは、特定の応用に適した任意の血清型であり得る。本明細書に記載の方法及び組成物で使用するために、ITRはAAV2 ITRであり得る。rAAVベクターの使用方法は、例えば、Tal et al.,J.Biomed.Sci.7:279(2000)、及びMonahan and Samulski,Gene Delivery 7:24(2000)に記載されており、それらの各開示は、それらが遺伝子送達用のAAVベクターに属するため、参照により本明細書に援用される。
【0108】
細胞へのポリヌクレオチドまたはベクターの導入を容易にするために、本明細書に記載のポリヌクレオチド及びベクター(例えば、目的のタンパク質をコードする導入遺伝子に作動可能に連結されたMyo15プロモーター)をrAAVウイルス粒子に組み込むことができる。AAVのキャプシドタンパク質は、ウイルス粒子の外部の非核酸部分を構成し、AAVキャップ遺伝子によってコードされる。cap遺伝子は、ウイルス粒子の組み立てに必要な3つのウイルスコートタンパク質VP1、VP2、及びVP3をコードする。rAAVウイルス粒子の構築は、例えば、US5,173,414;US5,139,941;US5,863,541;US5,869,305;US6,057,152;及びUS6,376,237;ならびにRabinowitz et al.,J.Virol.76:791(2002)及びBowles et al.,J.Virol.77:423(2003)に記載されており、それらの各開示は、それらが遺伝子送達用のAAVベクターに属するため、参照により本明細書に援用される。
【0109】
本明細書に記載の組成物及び方法と組み合わせて有用なrAAVウイルス粒子として、AAV1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、rh10、rh39、rh43、rh74、Anc80、Anc80L65、DJ/8、DJ/9、7m8、PHP.B、PHP.eb、及びPHP.Sを含む様々なAAV血清型に由来するウイルス粒子が挙げられる。有毛細胞を標的とする場合、AAV1、AAV2、AAV6、AAV9、Anc80、Anc80L65、DJ/9、7m8、及びPHP.Bが特に有用であり得る。網膜の形質導入のために進化させた血清型もまた、本明細書に記載の方法及び組成物において使用してもよい。異なる血清型のAAVベクター及びAAVタンパク質の構築及び使用は、例えば、Chao et al.,Mol.Ther.2:619(2000);Davidson et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:3428 (2000);Xiao et al.,J.Virol.72:2224(1998);Halbert et al.,J.Virol.74:1524(2000);Halbert et al.,J.Virol.75:6615(2001);及びAuricchio et al.,Hum.Molec.Genet.10:3075(2001)に記載されており、それらの各開示は、それらが遺伝子送達用のAAVベクターに属するため、参照により本明細書に援用される。
【0110】
本明細書に記載の組成物及び方法と組み合わせて有用なものは、偽型rAAVベクターである。偽型ベクターには、所与の血清型(例えば、AAV9)のAAVベクターが、所与の血清型以外の血清型(例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8など)に由来するキャプシド遺伝子で偽型化されたものが含まれる。偽型rAAVウイルス粒子の構築及び使用を含む技術は当技術分野で公知であり、例えば、Duan et al.,J.Virol.75:7662(2001);Halbert et al.,J.Virol.74:1524(2000);Zolotukhin et al.,Methods,28:158(2002);及びAuricchio et al.,Hum.Molec.Genet.10:3075(2001)に記載されている。
【0111】
ウイルス粒子のキャプシド内に変異を有するAAVウイルス粒子を使用して、変異していないキャプシドウイルス粒子よりも効果的に特定の細胞型に感染させ得る。例えば、適切なAAV変異体は、AAVを特定の細胞型に標的化することを容易にするためのリガンド挿入変異を有し得る。挿入変異体、アラニンスクリーニング変異体、及びエピトープタグ変異体を含むAAVキャプシド変異体の構築及び特徴決定は、Wu et al.,J.Virol.74:8635(2000)に記載されている。本明細書に記載の方法で使用することができる他のrAAVウイルス粒子として、ウイルスの分子育種によって、及びエキソンシャッフリングによって生成されるキャプシドハイブリッドが挙げられる。例えば、Soong et al.,Nat.Genet.,25:436(2000)及びKolman and Stemmer,Nat.Biotechnol.19:423(2001)を参照のこと。
【0112】
医薬組成物
本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域及び/または配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域を含み、場合により第1の領域と第2の領域の間にリンカーを含むポリヌクレオチド)を、導入遺伝子(例えば、目的のタンパク質をコードする導入遺伝子)に作動可能に連結し、患者、例えば、感音難聴及び/または前庭機能不全に罹患しているヒト患者に投与するためのビヒクルに組み込んでもよい。治療用導入遺伝子に作動可能に連結された本明細書に記載のポリヌクレオチドを含む、ウイルスベクターなどのベクターを含む医薬組成物は、当技術分野で公知の方法を使用して調製することができる。例えば、そのような組成物は、例えば、生理学的に許容される担体、賦形剤または安定剤(Remington:The Science and Practice of Pharmacology 22nd edition,Allen,L.Ed.(2013);参照により本明細書に援用される)を使用して、所望の形態、例えば、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で調製することができる。
【0113】
治療用導入遺伝子に作動可能に連結させた、本明細書に記載のポリヌクレオチドを含む核酸ベクター(例えば、ウイルスベクター)の混合物(例えば、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域及び/または配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域を含み、場合により第1の領域と第2の領域の間にリンカーを含むポリヌクレオチド)を、1つ以上の賦形剤、担体、または希釈剤と適切に混合した水中において調製してもよい。分散液もまた、グリセロール、液状ポリエチレングリコール、及びこれらの混合物中で、及び油中で調製してもよい。これらの製剤は、通常の保存条件及び使用条件下で、微生物の増殖を阻止するための保存剤を含有してもよい。注射用途に好適な医薬形態として、注射可能な無菌溶液または無菌分散液を即時調製するための無菌水溶液または無菌分散液及び無菌粉末が挙げられる(US5,466,468に記載されており、その開示は参照により本明細書に援用される)。任意の場合において、製剤は、無菌であってもよく、容易に注射できる程度の流動性を有していてもよい。製剤は、製造及び保管条件下で安定であってもよく、細菌及び真菌などの微生物の混入作用から保護され得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液状ポリエチレングリコールなど)、その好適な混合物、及び/または植物油を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、また界面活性剤の使用によって、維持され得る。微生物の作用の抑制は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射可能な組成物の吸収の延長は、吸収を遅延させる作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中で使用することによってもたらされ得る。
【0114】
例えば、本明細書に記載の医薬組成物を含む溶液は、必要に応じて適切に緩衝され得、液体希釈剤は、最初に十分な生理食塩水またはグルコースと等張にされる。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内の投与に特に好適である。これに関して、採用することができる無菌水性媒体は、本開示に照らして、当業者に公知である。例えば、1用量を1mlのNaCl等張液中に溶解し、1000mlの皮下注射液に加えるか、または注入予定部位に注射してもよい。治療する対象の状態に応じて、用量にはいくらかの変動が必然的に生じる。内耳への局所投与のために、組成物を、合成外リンパ溶液を含有するように製剤化してもよい。例示的な合成外リンパ溶液は、20~200mM NaCl、1~5mM KCl、0.1~10mM CaCl2、1~10mMグルコース、及び2~50mM HEPESを含有し、pH約6~9及び重量オスモル濃度約300mOsm/kgを有する。いずれにしても、投与を担当する者が個々の対象に適切な用量を決定する。さらに、ヒトへの投与の場合、製剤は、FDA Office of Biologics基準によって要求される無菌性、発熱性、一般的安全性、及び純度の基準を満たしていてもよい。
【0115】
治療方法
本明細書に記載の組成物を、感音難聴及び/または前庭機能不全を有する対象に、例えば、内耳への局所投与(例えば、卵円窓、正円窓、または三半規管(例えば、水平半規管)を介した、外リンパまたは内リンパへの投与、例えば、蝸牛有毛細胞または前庭有毛細胞への投与)、静脈内、非経口、皮内、経皮、筋肉内、鼻腔内、皮下、経皮、気管内、腹腔内、動脈内、血管内、吸入、灌流、洗浄、及び経口投与などの様々な経路によって、投与してもよい。所与の場合における投与に最も適切な経路は、投与する特定の組成物、患者、医薬製剤化方法、投与方法(例えば、投与時間及び投与経路)、患者の年齢、体重、性別、治療する疾患の重症度、患者の食事、及び患者の排泄率に依存する。組成物は、1回、または2回以上(例えば、年1回、年2回、年3回、隔月、または毎月)投与してもよい。
【0116】
本明細書に記載のように治療され得る対象は、感音難聴及び/または前庭機能不全を有するか、または発症するリスクを有する対象(例えば、難聴、前庭機能不全、またはその両方を有するか、または発症するリスクを有する対象)である。本明細書に記載の組成物及び方法を使用して、蝸牛有毛細胞への損傷(例えば、音響外傷、疾患もしくは感染、頭部外傷、耳毒性薬、または加齢に関連する損傷)を有するかまたは発症するリスクを有する対象、前庭有毛細胞への損傷(例えば、疾患もしくは感染、頭部外傷、耳毒性薬、または加齢に関連する損傷)を有するかまたは発症するリスクを有する対象、感音難聴、聴覚消失、またはオーディトリーニューロパチーを有するかまたは発症するリスクを有する対象、前庭機能不全(例えば、浮動性眩暈、回転性眩暈、または平衡失調)を有するかまたは発症するリスクを有する対象、耳鳴症(例えば、耳鳴症単独、または感音難聴もしくは前庭機能不全に関連する耳鳴症)を有する対象、難聴及び/または前庭機能不全に関連する遺伝子変異を有する対象、あるいは遺伝性難聴、聴覚消失、オーディトリーニューロパチー、耳鳴症、または前庭機能不全の家族歴を有する対象を治療することができる。いくつかの実施形態では、対象は、有毛細胞(例えば、蝸牛有毛細胞または前庭有毛細胞)の喪失に関連しているか、またはその結果として生じる難聴及び/または前庭機能不全を有する。本明細書に記載の方法は、本明細書に記載の組成物による治療または投与の前に、難聴または前庭機能不全に関連することが知られている遺伝子の変異について対象をスクリーニングする工程を含み得る。当業者に公知の標準的な方法(例えば、遺伝子検査)を使用して、対象を遺伝子変異についてスクリーニングすることができる。本明細書に記載の方法はまた、本明細書に記載の組成物による治療または投与の前に、対象の聴覚機能及び/または前庭機能を評価する工程を含み得る。聴力検査、聴性脳幹反応(ABR)、蝸電図検査(ECOG)、及び耳音響放射などの標準検査を使用して、聴覚を評価することができる。前庭機能は、Mancini and Horak,Eur J Phys Rehabil Med,46:239(2010)に記載されているような、眼球運動検査(例えば、電気眼振図(ENG)またはビデオ式眼振図(VNG))、姿勢図検査、回転椅子検査、ECOG、前庭誘発筋電位(VEMP)、及び特殊な臨床平衡機能検査などの標準検査を使用して評価してもよい。本明細書に記載の組成物及び方法はまた、難聴及び/または前庭機能不全を発症するリスクを有する患者、例えば、難聴または前庭機能不全の家族歴(例えば、遺伝性難聴または前庭機能不全)を有する患者、難聴または前庭機能不全に関連する遺伝子変異を有し、まだ聴覚障害または前庭機能不全を示していない患者あるいは後天性難聴(例えば、疾患もしくは感染症、頭部外傷、耳毒性薬、または加齢)または前庭機能不全(例えば、音響外傷、疾患もしくは感染症、頭部外傷、耳毒性薬、または加齢)のリスク因子にさらされている患者への予防的治療として投与してもよい。
【0117】
本明細書に記載の組成物及び方法を使用して、対象の有毛細胞の再生(例えば、蝸牛有毛細胞及び/または前庭有毛細胞の再生)を促進または誘導することができる。有毛細胞の再生を促進または誘導する組成物からベネフィットを得る可能性のある対象には、有毛細胞の喪失(例えば、外傷(例えば、音響外傷または頭部外傷)、疾患もしくは感染症、耳毒性薬、または加齢に関連した有毛細胞の喪失)の結果として難聴または前庭機能不全に罹患している対象、及び異常な有毛細胞(例えば、正常な有毛細胞と比較して適切に機能しない有毛細胞)、損傷した有毛細胞(例えば、外傷(例えば、音響外傷または頭部外傷)、疾患もしくは感染症、耳毒性薬、または加齢に関連した有毛細胞の損傷)を有する対象、または遺伝子変異または先天性異常によって有毛細胞数が減少している対象が含まれる。本明細書に記載の組成物及び方法を使用して、有毛細胞の生存を促進または増加させる(例えば、損傷した有毛細胞の生存率を高めるか、損傷した有毛細胞の修復を促進するか、または有毛細胞の喪失(例えば、加齢、大きな音への曝露、疾患もしくは感染、頭部外傷または耳毒性薬による有毛細胞の喪失)のリスクを有する対象の有毛細胞を保存する)こともできる。
【0118】
本明細書に記載の組成物及び方法を使用して、耳毒性薬で治療された対象、または耳毒性薬で現在治療を受けているかもしくは治療を開始する予定の対象において、耳毒性薬誘発性の有毛細胞の損傷または細胞死(例えば、蝸牛有毛細胞及び/または前庭有毛細胞の損傷または細胞死)を予防または軽減することもできる。耳毒性薬は、内耳細胞に対して毒性を有し、感音難聴、前庭機能不全(例えば、回転性眩暈、浮動性眩暈、または平衡失調)、耳鳴症、またはこれらの症状の併発を引き起こし得る。耳毒性が見出されている薬物として、アミノグリコシド系抗生物質(例えば、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、カナマイシン、バンコマイシン、及びアミカシン)、バイオマイシン、抗腫瘍薬(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチンなどのプラチナ含有化学療法剤)、ループ利尿薬(例えば、エタクリン酸及びフロセミド)、サリチル酸塩(例えば、特に高用量のアスピリン)、及びキニンが挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、音響外傷、疾患もしくは感染症、頭部外傷、または加齢に関連する有毛細胞の損傷または細胞死を予防または軽減する。
【0119】
本明細書に記載する、対象を治療するためのMyo15プロモーターに作動可能に連結した導入遺伝子(例えば、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域及び/または配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域を含むポリヌクレオチド)は、健康な有毛細胞において発現するタンパク質(例えば、蝸牛有毛細胞及び/または前庭有毛細胞、例えば、有毛細胞の発達、機能、細胞運命の特定、再生、生存、または維持において役割を果たすタンパク質、または感音難聴及び/または前庭機能不全を有する対象において欠損しているタンパク質)または別の目的の治療用タンパク質をコードする導入遺伝子であり得る。導入遺伝子は、対象の難聴もしくは前庭機能不全の原因(例えば、対象の難聴もしくは前庭機能不全が特定の遺伝子変異に関連している場合、導入遺伝子は、対象においては変異している遺伝子の野生型とすることができ、または対象が有毛細胞の喪失に関連する難聴を有している場合、導入遺伝子は、有毛細胞の再生を促進するタンパク質をコードし得る)、対象の難聴もしくは前庭機能不全の重症度、対象の有毛細胞の健康状態、対象の年齢、対象の難聴もしくは前庭機能不全の家族歴、または他の要因に基づいて選択してもよい。本明細書に記載する、対象の治療のためのMyo15プロモーターに作動可能に連結した導入遺伝子によって発現され得るタンパク質として、ACTG1、FSCN2、RDX、POU4F3、TRIOBP、TPRN、XIRP2、ATOH1、GFI1、CHRNA9、CIB3、CDH23、PCDH15、KNCN、DFNB59、OTOF、MKRN2OS、LHX3、TMC1、MYO15、MYO7A、MYO6、MYO3A、MYO3B、GRXCR1、PTPRQ、LCE6A、LOXHD1、ART1、ATP2B2、CIB2、CACNA2D4、CABP2、EPS8、EPS8L2、ESPN、ESPNL、PRPH2、STRC、SLC8A2、ZCCHC12、LRTOMT2、LRTOMT1、USH1C、ELFN1、TTC24、DYTN、KCP、CCER2、LRTM2、KCNA10、NT3、CLRN1、CLRN2、SKOR1、TCTEX1D1、FCRLB、SLC17A8、GRXCR2、BDNF、SERPINE3、NHLH1、HSP70、HSP90、ATF6、PERK、IRE1、及びBIPが挙げられる。
【0120】
治療は、本明細書に記載のMyo15プロモーターを様々な単位用量で含む核酸ベクター(例えば、AAVウイルスベクター)を含む組成物の投与を含み得る。各単位用量には、通常、所定量の治療用組成物が含まれる。投与する量、ならびに特定の投与経路及び製剤化は、当業者の技術の範囲内である。単位用量は、単回注射として投与する必要はないが、設定された期間にわたる持続注入を含み得る。投与は、内耳(例えば、蝸牛)への損傷を最小限に抑えるために、シリンジポンプを用いて実施して注入速度を制御してもよい。核酸ベクターがAAVベクターである場合(例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、rh10、rh39、rh43、rh74、Anc80、Anc80L65、DJ/8、DJ/9、7m8、PHP.B、PHP.eb、またはPHP.Sベクター)、ウイルスベクターは、例えば、約1×1010ベクターゲノム(VG)~1×1015VG(例えば、1×1010VG、2×1010VG、3×1010VG、4×1010VG、5×1010VG、6×1010VG、7×1010VG、8×1010VG、9×1010VG、1×1011VG、2×1011VG、3×1011VG、4×1011VG、5×1011VG、6×1011VG、7×1011VG、8×1011VG、9×1011VG、1×1012VG、2×1012VG、3×1012VG、4×1012VG、5×1012VG、6×1012VG、7×1012VG、8×1012VG、9×1012VG、1×1013VG、2×1013VG、3×1013VG、4×1013VG、5×1013VG、6×1013VG、7×1013VG、8×1013VG、9×1013VG、1×1014VG、2×1014VG、3×1014VG、4×1014VG、5×1014VG、6×1014VG、7×1014VG、8×1014VG、9×1014VG、1×1015VG)を、1μL~200μL(例えば、1、2、3、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200μL)の用量で患者に投与してもよい。
【0121】
本明細書に記載の組成物を、聴覚を改善するか、前庭機能を改善する(例えば、平衡機能を改善するか、または浮動性眩暈もしくは回転性眩暈を軽減する)か、耳鳴症を軽減するか、導入遺伝子によってコードされる治療用タンパク質の発現を増加させるか、導入遺伝子によってコードされる治療用タンパク質の機能を増加させるか、有毛細胞の損傷を予防または軽減するか、有毛細胞の細胞死(例えば、耳毒性薬誘発性有毛細胞死、加齢性有毛細胞死、または騒音(例えば、音響外傷)関連有毛細胞死)を予防または軽減するか、有毛細胞の発達を促進または増加させるか、有毛細胞の数を増加させる(例えば、有毛細胞の再生を促進または誘導する)か、有毛細胞の生存を増加または促進するか、あるいは有毛細胞の機能を向上させるのに十分な量で投与する。聴力は、標準的な聴力検査(例えば、聴力検査、ABR、蝸電図検査(ECOG)、及び耳音響放射)を使用して評価してもよく、治療前に得られる聴覚測定値に比べて5%以上(例えば、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、200%またはそれ以上)改善し得る。前庭機能は、平衡機能及び回転性眩暈の標準検査(例えば、眼球運動検査(例えば、ENGまたはVNG)、姿勢図検査、回転椅子検査、ECOG、VEMP、及び特殊な臨床平衡機能検査)を使用して評価してもよく、治療前に得られる測定値に比べて5%以上(例えば、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、200%またはそれ以上)改善し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、対象の発話を理解する能力を改善するのに十分な量で投与する。本明細書に記載の組成物はまた、感音難聴及び/または前庭機能不全の発症または進行を遅延または予防するのに十分な量で投与してもよい(例えば、難聴もしくは前庭機能不全に関連する遺伝子変異を有し、難聴もしくは前庭機能不全の家族歴(例えば、遺伝性難聴もしくは前庭機能不全)を有するか、または難聴もしくは前庭機能不全に関連するリスク要因(例えば、耳毒性薬、頭部外傷、音響外傷、または感染症)にさらされているが、難聴もしくは前庭機能不全(例えば、回転性眩暈、浮動性眩暈、または平衡失調)を示していない対象において、あるいは軽度~中程度の難聴または前庭機能不全を示す対象において)。対象に投与する核酸ベクター中のMyo15プロモーターに作動可能に連結された導入遺伝子によってコードされる治療用タンパク質の発現を、免疫組織化学、ウェスタンブロット分析、定量的リアルタイムPCR、またはタンパク質もしくはmRNAを検出するための当技術分野で公知の他の方法を使用して評価してもよく、本明細書に記載の組成物の投与前の発現に比べて5%以上(例えば、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、200%またはそれ以上)増加し得る。有毛細胞数、有毛細胞機能、または対象に投与する核酸ベクターによってコードされる治療用タンパク質の機能を、聴力検査または前庭機能検査に基づいて間接的に評価してもよく、本明細書に記載の組成物の投与前の有毛細胞数、有毛細胞機能、または治療用タンパク質の機能に比べて5%以上(例えば、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、200%またはそれ以上)増加し得る。有毛細胞の損傷または細胞死は、未治療の対象において通常観察される有毛細胞の損傷及び細胞死に比べて5%以上(例えば、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、200%またはそれ以上)低減し得る。これらの効果は、本明細書に記載の組成物の投与後、例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、15週間、20週間、25週間以内、またはそれ以上の間に生じ得る。治療に使用する用量及び投与経路に応じて、組成物を投与してから、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月またはそれ以上後に患者を評価してもよい。評価の結果に応じて、患者に追加の治療を受けさせてもよい。
【0122】
キット
本明細書に記載の組成物を、感音難聴または前庭機能不全の治療に使用するためのキットで提供することができる。組成物は、本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域及び/または配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域を含み、場合により第1の領域と第2の領域の間にリンカーを含むポリヌクレオチド)、そのようなポリヌクレオチドを含む核酸ベクター、及び目的のタンパク質(例えば、難聴及び/または前庭機能不全を治療するために有毛細胞で発現され得るタンパク質)をコードする導入遺伝子に作動可能に連結した本明細書に記載のポリヌクレオチドを含む核酸ベクターを含み得る。核酸ベクターは、AAVウイルスキャプシド(例えば、AAV1、AAV2、AAV6、AAV9、Anc80、Anc80L65、DJ/9、7m8、またはPHP.B)にパッケージングしてもよい。キットには、キットのユーザ、例えば医師に、本明細書に記載の方法を実施するように指示する添付文書をさらに含ませることができる。キットには、場合により、組成物を投与するための注射器または他の器具を含ませてもよい。
【実施例0123】
以下の実施例は、本明細書に記載の組成物及び方法をどのように使用し、製造し、評価し得るかについての説明を当業者に提供するために提示し、純粋に本発明を例示することを意図するものであり、発明者らが自身の発明と見なすものの範囲を限定することを意図しない。
【0124】
実施例1.Myo15プロモーターの生成
最初に、脊椎動物Myo15プロモーターの進化的保存領域をUCSC Genome
Browser(genome.ucsc.edu)を使用して同定した。Myo15翻訳開始部位のすぐ上流の領域(-1~-1157、配列番号1)及びMyo15遺伝子の非コードエキソン1を含む上流領域(-6755~-7209、配列番号2)を、de
novo遺伝子合成により合成し、単一のDNA断片として一緒に接合させた(配列番号13)。トランケートされたMyo15プロモーターの合計サイズは1611bpであるが、ゲノム領域全体では7000bpを上回る。
【0125】
マウス蝸牛のサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターと比較したMyo15プロモーターによる向性(細胞型標的化)ならびに導入遺伝子発現の程度及び期間を評価する実験では、Myo15プロモーターで蝸牛有毛細胞における選択的発現が得られ、CMVプロモーターでは得られなかった。Aequorea coerulescens緑色蛍光タンパク質(AcGFP)の発現を駆動するMyo15を用いてAAV構築物を作成し、CMVを用いた一致する標準的なAAV構築物と比較した遺伝子発現の進行を分析した。新生児マウス、成体マウス、及び蝸牛外植片のex vivoにおいて、マウス蝸牛にウイルスを送達した実験で導入遺伝子の発現を評価した。
【0126】
導入遺伝子の発現を評価するために、6~8週齢のC57Bl/6J雄マウスに、AAV-Myo15-GFPウイルスを、後半規管を介して注入した。マウスを手術から回復させ、安楽死させ、10日後に10%中性緩衝ホルマリンで灌流した。内耳側頭骨を採取し、8%EDTA中で3日間脱灰した。脱灰した側頭骨から蝸牛または前庭系を解剖し、画像解析のためにスライドに取り付けた。ユビキタスプロモーターを使用して、AAV-CMV-GFPは、内有毛細胞、外有毛細胞、らせん神経節ニューロン、間葉細胞、及びグリアを含む蝸牛内の多くの細胞型でGFP発現を誘導した(
図1A)。有毛細胞特異的プロモーターを使用して、AAV-Myo15-GFPは、内有毛細胞及び外有毛細胞でのみ発現を誘導した(
図1B)。前庭系では、AAV-Myo15-GFPは前庭有毛細胞でのみ発現を誘導した(
図2)。
【0127】
実施例2.ミニマルMyo15プロモーターの生成
一連のプロモーターを生成し、蛍光レポーター(例えば、GFP、AcGFP、またはルシフェラーゼ)の上流に配置する。生成されるプロモーターは以下を含む:
1)配列番号3と融合した配列番号2;
2)配列番号4と融合した配列番号2;
3)配列番号3と配列番号4の融合体(例えば、配列番号5、6、または7)と融合した配列番号2;
4)配列番号8と融合した配列番号9(例えば、配列番号10、11、または12)。
5)配列番号1と融合した、配列番号8と配列番号9の融合体(例えば、配列番号10、11または12);
6)配列番号3と融合した、配列番号8と配列番号9の融合体(例えば、配列番号10、11、または12);
7)配列番号4と融合した、配列番号8と配列番号9の融合体(例えば、配列番号10、11、または12);
8)配列番号3と配列番号4の融合体(例えば、配列番号5、6、または7)と融合した、配列番号8と配列番号9の融合体(例えば、配列番号10、11、または12);
9)配列番号3と配列番号4の融合体(例えば、配列番号5、6、または7);
11)配列番号1;及び
12)配列番号2。
【0128】
有毛細胞に形質導入することができるAAV血清型(例えば、AAV1、AAV2、AAV6、AAV9、Anc80、またはAnc80L65)にプロモーター構築物をパッケージングする。
【0129】
ウイルスプロモーター構築物を使用して、器官型蝸牛外植片に感染させる。ウイルスとともに48時間インキュベーションした後、移植片を画像化し、レポーターの蛍光強度を用いて分析し、有毛細胞特異的発現を測定する。
【0130】
実施例3.感音難聴を有する対象へのMyo15プロモーターを含む核酸ベクターを含有する組成物の投与
本明細書に開示する方法に従って、当業者は、患者、例えば、感音難聴を有するヒト患者を治療し、それにより聴力を改善または回復させることができる。この目的のために、当業者は、治療用タンパク質をコードする導入遺伝子に作動可能に連結した、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号3~7のいずれか1つ以上、例えば、配列番号3及び4)に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域及び/または配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号8~12のいずれか1つ以上、例えば、配列番号8及び9)に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域を含み、場合により第1の領域と第2の領域の間にリンカーを含むポリヌクレオチドを有するAAVベクター(例えば、AAV1、AAV2、AAV6、AAV9、Anc80、Anc80L65、DJ/9、7m8、またはPHP.B)を含有する組成物をヒト患者に投与することができる。例えば、治療用タンパク質をコードする導入遺伝子に作動可能に連結したポリヌクレオチドは、配列番号13であってもよい。AAVベクターを含有する組成物を、例えば、内耳への局所投与(例えば、外リンパへの注射)によって患者に投与して、感音難聴を治療してもよい。
【0131】
組成物を患者に投与した後、当業者であれば、導入遺伝子によってコードされる治療用タンパク質の発現、及び治療に応答した患者の改善を様々な方法でモニタリングすることができる。例えば、医師は、組成物の投与後に、聴力検査、ABR、蝸電図検査(ECOG)、及び耳音響放射などの標準検査を実施することにより、患者の聴力をモニタリングすることができる。組成物の投与前の聴力検査結果に比べて、組成物の投与後の1つ以上の検査において、患者の聴力に改善が示されることが見出される場合、患者が治療に対して好ましい応答をしていることを示す。その後の用量を必要に応じて決定し、投与することができる。
【0132】
実施例4.非ヒト霊長類におけるMyo15プロモーターの特異性
Myo15プロモーターの特異性を、非ヒト霊長類で検査した。30マイクロリットルのAAV1-CMV-GFPまたはAAV1-Myo15-GFPを、正円窓膜を通して蝸牛に15μl/分で注射した。AAV注射の4週間後に動物を殺処分し、蝸牛を採取し、表面調製物として処理し、抗体を増強せずに導入遺伝子の発現を調べた。AAV1は高い感染力を有していた。ユビキタスCMVプロモーター下で、GFPは、アカゲザル蝸牛の側壁の有毛細胞、支持細胞、及び線維細胞において発現した(
図3A)。対照的に、1.6kbのMyo15プロモーターは、GFP導入遺伝子の発現を、カニクイザル蝸牛の有毛細胞に制限した(
図3B~3C)。
【0133】
実施例5.Myo15プロモーターは、ユビキタスプロモーターと比較して、Tmc1ノックアウトマウスにおけるAAVマウスTmc1の生物学的有効性を増強する
Tmc1ノックアウト(KO)マウスをイソフルランで麻酔し、毛を刈り取り、ポビドンヨードを皮膚に塗布した。左耳の下で頬の筋肉の上から耳の後ろまで切開した。皮膚を分離し、筋肉を裂き、洗浄して、後半規管を露出させた。ドリルビットを使用して半規管に小さな穴を開け、細い綿棒を用いて骨を乾いた状態に保持した。ポリアミド/ポリエチレンチューブを穴に挿入し、骨膠で密封した。ハミルトンシリンジを備えたマイクロポンプを使用して、1μlのベクター(AAV-CMV1-マウスTMC1またはAAV-Myo15(配列番号13)-マウスTMC1)と0.05μlのトリパンブルーを100nl/分の速度でILスペースに送達した。1μlを送達した後、液体が蝸牛の頂点に到達するように、及び逆流と漏れを防ぐように5分経過させた。チューブを曲げて骨の近くで切断した。筋肉を元の位置に戻し、皮膚を接着した。加熱ランプ下で回復させる前に、マウスに0.01ccのメロキシカムを与えた。痛みまたは感染の徴候について、動物を術後5日間チェックした。術後21日~28日の動物をケタミン及びキシラジンで麻酔し、聴性脳幹反応(ABR)を測定した。
図4に示すように、AAV-CMV-マウスTMC1に比べて、AAV-Myo15-マウスTMC1を注射したホモ接合性Tmc1 KOマウスでは、ABR閾値の回復が大幅に改善した。
【0134】
他の実施形態
本明細書に記載する本発明の様々な改変及び変形が、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。本発明を特定の実施形態に関連して記載したが、請求される本発明は、そのような特定の実施形態に必要以上に限定されるべきではないことを理解すべきである。実際に、当業者には明らかである本発明を実施するために記載する様式の様々な改変は、本発明の範囲内であることが意図される。他の実施形態は、特許請求の範囲に見出される。
(付記)
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
[項目1]
配列番号3及び/または配列番号4の配列を含む、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性を有する第1の領域と、それに作動可能に連結された配列番号8及び/または配列番号9の配列を含む、配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性を有する第2の領域を含み、場合により前記第1の領域と前記第2の領域の間に1~100ヌクレオチドを含むリンカーを有する、ポリヌクレオチド。
[項目2]
前記第1の領域が、配列番号1の配列を含むか、またはそれからなる、項目1に記載のポリヌクレオチド。
[項目3]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号3の配列を含む、項目1に記載のポリヌクレオチド。
[項目4]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号4の配列を含む、項目1に記載のポリヌクレオチド。
[項目5]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号3の配列及び配列番号4の配列を含む、項目1に記載のポリヌクレオチド。
[項目6]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号5の配列を含む、項目5に記載のポリヌクレオチド。
[項目7]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号6の配列を含む、項目5に記載のポリヌクレオチド。
[項目8]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号7の配列を含む、項目5に記載のポリヌクレオチド。
[項目9]
前記第2の領域が、配列番号2の配列を含むか、またはそれからなる、項目1~8のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
[項目10]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号8の配列を含む、項目1~8のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
[項目11]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号9の配列を含む、項目1~8のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
[項目12]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号8の配列及び配列番号9の配列を含む、項目1~8のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
[項目13]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号10の配列を含む、項目12に記載のポリヌクレオチド。
[項目14]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号11の配列を含む、項目12に記載のポリヌクレオチド。
[項目15]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号12の配列を含む、項目12に記載のポリヌクレオチド。
[項目16]
前記ポリヌクレオチドが、配列番号13の配列を含むか、またはそれからなる、項目1に記載のポリヌクレオチド。
[項目17]
配列番号8及び/または配列番号9の配列を含む、配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性を有する第1の領域と、それに作動可能に連結された配列番号3及び/または配列番号4の配列を含む、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性を有する第2の領域を含み、場合により前記第1の領域と前記第2の領域の間に1~100ヌクレオチドを含むリンカーを有する、ポリヌクレオチド。
[項目18]
前記第1の領域が、配列番号2の配列を含むか、またはそれからなる、項目17に記載のポリヌクレオチド。
[項目19]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号8の配列を含む、項目17に記載のポリヌクレオチド。
[項目20]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号9の配列を含む、項目17に記載のポリヌクレオチド。
[項目21]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号8の配列及び配列番号9の配列を含む、項目17に記載のポリヌクレオチド。
[項目22]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号10の配列を含む、項目21に記載のポリヌクレオチド。
[項目23]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号11の配列を含む、項目21に記載のポリヌクレオチド。
[項目24]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号12の配列を含む、項目21に記載のポリヌクレオチド。
[項目25]
前記第2の領域が、配列番号1の配列を含むか、またはそれからなる、項目17~24のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
[項目26]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号3の配列を含む、項目17~24のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
[項目27]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号4の配列を含む、項目17~24のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
[項目28]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号3の配列及び配列番号4の配列を含む、項目17~24のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
[項目29]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号5の配列を含む、項目28に記載のポリヌクレオチド。
[項目30]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号6の配列を含む、項目28に記載のポリヌクレオチド。
[項目31]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号7の配列を含む、項目28に記載のポリヌクレオチド。
[項目32]
前記ポリヌクレオチドが、配列番号14の配列を含むか、またはそれからなる、項目17に記載のポリヌクレオチド。
[項目33]
配列番号3及び/または配列番号4の配列を含む、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性を有する領域を含む、ポリヌクレオチド。
[項目34]
前記領域が、配列番号1の配列を含むか、またはそれからなる、項目33に記載のポリヌクレオチド。
[項目35]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号3の配列を含む、項目33に記載のポリヌクレオチド。
[項目36]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号4の配列を含む、項目33に記載のポリヌクレオチド。
[項目37]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号3の配列及び配列番号4の配列を含む、項目33に記載のポリヌクレオチド。
[項目38]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号5の配列を含む、項目37に記載のポリヌクレオチド。
[項目39]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号6の配列を含む、項目37に記載のポリヌクレオチド。
[項目40]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号7の配列を含む、項目37に記載のポリヌクレオチド。
[項目41]
配列番号8及び/または配列番号9の配列を含む、配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性を有する領域を含む、ポリヌクレオチド。
[項目42]
前記領域が、配列番号2の配列を含むか、またはそれからなる、項目41に記載のポリヌクレオチド。
[項目43]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号8の配列を含む、項目41に記載のポリヌクレオチド。
[項目44]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号9の配列を含む、項目41に記載のポリヌクレオチド。
[項目45]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号8の配列及び配列番号9の配列を含む、項目41に記載のポリヌクレオチド。
[項目46]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号10の配列を含む、項目45に記載のポリヌクレオチド。
[項目47]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号11の配列を含む、項目45に記載のポリヌクレオチド。
[項目48]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号12の配列を含む、項目45に記載のポリヌクレオチド。
[項目49]
前記ポリヌクレオチドが、導入遺伝子に作動可能に連結され、有毛細胞に導入される場合に、導入遺伝子の発現を誘導する、項目1~48のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
[項目50]
項目1~49のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む、核酸ベクター。
[項目51]
前記ポリヌクレオチドが、導入遺伝子に作動可能に連結する、項目50に記載の核酸ベクター。
[項目52]
前記導入遺伝子が、治療用タンパク質をコードする核酸配列を含む、項目51に記載の核酸ベクター。
[項目53]
前記ポリヌクレオチドが、哺乳類有毛細胞において、前記核酸配列由来の前記治療用タンパク質の有毛細胞特異的発現を指示することができる、項目52に記載の核酸ベクター。
[項目54]
前記有毛細胞が蝸牛毛細胞である、項目53に記載の核酸ベクター。
[項目55]
前記蝸牛有毛細胞が、内有毛細胞及び/または外有毛細胞である、項目54に記載の核酸ベクター。
[項目56]
前記有毛細胞が前庭有毛細胞である、項目53に記載の核酸ベクター。
[項目57]
前記治療用タンパク質が、ACTG1、FSCN2、RDX、POU4F3、TRIOBP、TPRN、XIRP2、ATOH1、GFI1、CHRNA9、CIB3、CDH23、PCDH15、KNCN、DFNB59、OTOF、MKRN2OS、LHX3、TMC1、MYO15、MYO7A、MYO6、MYO3A、MYO3B、GRXCR1、PTPRQ、LCE6A、LOXHD1、ART1、ATP2B2、CIB2、CACNA2D4、CABP2、EPS8、EPS8L2、ESPN、ESPNL、PRPH2、STRC、SLC8A2、ZCCHC12、LRTOMT2、LRTOMT1、USH1C、ELFN1、TTC24、DYTN、KCP、CCER2、LRTM2、KCNA10、NT3、CLRN1、CLRN2、SKOR1、TCTEX1D1、FCRLB、SLC17A8、GRXCR2、BDNF、SERPINE3、NHLH1、HSP70、HSP90、ATF6、PERK、IRE1、及びBIPからなる群から選択される、項目52~56のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
[項目58]
前記核酸ベクターが、プラスミド、コスミド、人工染色体、またはウイルスベクターである、項目50~57のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
[項目59]
前記核酸ベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、及びレンチウイルスからなる群から選択されるウイルスベクターである、項目58に記載の核酸ベクター。
[項目60]
前記ウイルスベクターがAAVベクターである、項目59に記載の核酸ベクター。
[項目61]
前記AAVベクターの血清型が、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、rh10、rh39、rh43、rh74、Anc80、Anc80L65、DJ/8、DJ/9、7m8、PHP.B、PHP.eb、及びPHP.Sからなる群から選択される、項目60に記載の核酸ベクター。
[項目62]
項目50~61のいずれか一項に記載の核酸ベクターを含む、組成物。
[項目63]
薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、項目62に記載の組成物。
[項目64]
哺乳類有毛細胞における治療用タンパク質の発現の増加方法であって、前記哺乳類有毛細胞を、項目50~61のいずれか一項に記載の核酸ベクターまたは項目62または63の組成物と接触させることを含む、前記増加方法。
[項目65]
前記治療用タンパク質の発現が、有毛細胞において特異的に増加する、項目64に記載の方法。
[項目66]
前記哺乳類有毛細胞がヒト有毛細胞である、項目64または65に記載の方法。
[項目67]
前記哺乳類有毛細胞が蝸牛有毛細胞である、項目64~66のいずれか一項に記載の方法。
[項目68]
前記蝸牛有毛細胞が内有毛細胞である、項目67に記載の方法。
[項目69]
前記蝸牛有毛細胞が外有毛細胞である、項目67に記載の方法。
[項目70]
前記哺乳類有毛細胞が前庭有毛細胞である、項目64~66のいずれか一項に記載の方法。
[項目71]
前記治療用タンパク質の発現が、有毛細胞ではない内耳細胞において実質的に増加しない、項目64~70のいずれか一項に記載の方法。
[項目72]
難聴を有するかまたは発症するリスクを有する対象の治療方法であって、項目50~61のいずれか一項に記載の核酸ベクターまたは項目62もしくは63に記載の組成物の有効量を前記対象に投与することを含む、前記治療方法。
[項目73]
前記難聴が遺伝性難聴である、項目72に記載の方法。
[項目74]
前記遺伝性難聴が、常染色体優性難聴、常染色体劣性難聴、またはX連鎖性難聴である、項目73に記載の方法。
[項目75]
前記難聴が後天性難聴である、項目72に記載の方法。
[項目76]
前記後天性難聴が、騒音性難聴、加齢性難聴、疾患もしくは感染症関連性難聴、頭部外傷性難聴、または耳毒性薬誘発性難聴である、項目75に記載の方法。
[項目77]
前庭機能不全を有するかまたは発症するリスクを有する対象の治療方法であって、項目50~61のいずれか一項に記載の核酸ベクターまたは項目62もしくは63に記載の組成物の有効量を前記対象に投与することを含む、前記治療方法。
[項目78]
前記前庭機能不全が、回転性眩暈、浮動性眩暈、または平衡失調である、項目77に記載の方法。
[項目79]
それを必要とする対象における有毛細胞の再生の促進方法であって、項目50~61のいずれか一項に記載の核酸ベクターまたは項目62もしくは63に記載の組成物の有効量を前記対象に投与することを含む、前記促進方法。
[項目80]
前記有毛細胞が蝸牛有毛細胞である、項目79に記載の方法。
[項目81]
前記有毛細胞が前庭有毛細胞である、項目79に記載の方法。
[項目82]
耳毒性薬誘発性の有毛細胞の損傷または細胞死の予防または軽減方法であって、項目50~61のいずれか一項に記載の核酸ベクターまたは項目62もしくは63に記載の組成物の有効量を前記対象に投与することを含む、前記予防または軽減方法。
[項目83]
前記耳毒性薬が、アミノグリコシド、抗腫瘍薬、エタクリン酸、フロセミド、サリチル酸塩、及びキニーネからなる群から選択される、項目76または82に記載の方法。
[項目84]
耳鳴症を有する対象の治療方法であって、項目50~61のいずれか一項に記載の核酸ベクターまたは項目62もしくは63に記載の組成物の有効量を前記対象に投与することを含む、前記治療方法。
[項目85]
それを必要とする対象における有毛細胞の損傷または細胞死の予防または軽減方法であって、項目50~61のいずれか一項に記載の核酸ベクターまたは項目62もしくは63に記載の組成物の有効量を前記対象に投与することを含む、前記予防または軽減方法。
[項目86]
それを必要とする対象における有毛細胞の生存率の増加方法であって、項目50~61のいずれか一項に記載の核酸ベクターまたは項目62もしくは63に記載の組成物の有効量を前記対象に投与することを含む、前記増加方法。
[項目87]
前記核酸ベクターまたは組成物を投与する前に、前記対象の聴力を評価することをさらに含む、項目72~76、79、80、及び82~86のいずれか一項に記載の方法。
[項目88]
前記核酸ベクターまたは組成物を投与した後に、前記対象の聴力を評価することをさらに含む、項目72~76、79、80、及び82~87のいずれか一項に記載の方法。
[項目89]
前記核酸ベクターまたは組成物を投与する前に、前記対象の前庭機能を評価することをさらに含む、項目77~79及び81~88のいずれか一項に記載の方法。
[項目90]
前記核酸ベクターまたは組成物を投与する前に、前記対象の前庭機能を評価することをさらに含む、項目77~79、81~89のいずれか一項に記載の方法。
[項目91]
前記核酸ベクターまたは組成物を局所的に投与する、項目72~90のいずれか一項に記載の方法。
[項目92]
前記核酸ベクターまたは組成物を、難聴を予防もしくは軽減するか、前庭機能不全を予防もしくは軽減するか、耳鳴症を予防もしくは軽減するか、難聴の発症を遅延させるか、前庭機能不全の発症を遅延させるか、難聴の進行を遅延させるか、前庭機能不全の進行を遅延させるか、聴力を改善するか、前庭機能を改善するか、有毛細胞機能を改善するか、有毛細胞の損傷を予防もしくは軽減するか、有毛細胞の細胞死を予防もしくは軽減するか、または有毛細胞数を増加させるのに十分な量で投与する、項目72~91のいずれか一項に記載の方法。
[項目93]
前記対象がヒトである、項目72~92のいずれか一項に記載の方法。
[項目94]
項目50~61のいずれか一項に記載の核酸ベクターまたは項目62もしくは63に記載の組成物を含む、キット。