(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138796
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】シリンダー錠
(51)【国際特許分類】
E05B 9/08 20060101AFI20230922BHJP
E05B 17/00 20060101ALI20230922BHJP
E05B 15/10 20060101ALI20230922BHJP
E05B 15/02 20060101ALI20230922BHJP
E05B 35/14 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
E05B9/08 A
E05B17/00 D
E05B15/10 A
E05B15/02 M
E05B35/14
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130724
(22)【出願日】2023-08-10
(62)【分割の表示】P 2020090608の分割
【原出願日】2020-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】三橋 隆史
(57)【要約】
【課題】同じ仕様のシリンダー錠を種々の仕様の箱錠に適用できるようにしたシリンダー錠を提供すること。
【解決手段】シリンダー錠本体部3と、シリンダー錠本体部3の一端側に設けられ、鍵が挿入される鍵挿入部5と、複数の仕様の箱錠のそれぞれに対応する複数種類の変位伝達部材13と、シリンダー錠本体部3の他端側に設けられ、変位伝達部材13を取り付け可能な変位伝達部材取付部310と、を備え、変位伝達部材取付部310は、複数種類の各々の変位伝達部材13を着脱自在に取り付け可能であり、シリンダー錠本体部3には、鍵挿入部5に連なる鍵穴29を有し、鍵穴29は、シリンダー錠本体部3の軸方向の長さが異なる複数のシリンダー錠のいずれにも適合するように形成され、シリンダー錠本体部3の軸方向の長さが異なる複数のシリンダー錠1のいずれにも1つの共通の鍵で施錠および解錠が可能なシリンダー錠1。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変位伝達部材を介して箱錠の施錠および解錠が可能なシリンダー錠であって、
シリンダー錠本体部と、
前記シリンダー錠本体部の一端側に設けられ、鍵が挿入される鍵挿入部と、
複数の仕様の前記箱錠のそれぞれに対応する複数種類の前記変位伝達部材と、
前記シリンダー錠本体部の他端側に設けられ、前記変位伝達部材を取り付け可能な変位伝達部材取付部と、を備え、
前記変位伝達部材取付部は、前記複数種類の各々の変位伝達部材を着脱自在に取り付け可能であり、
前記シリンダー錠本体部には、前記鍵挿入部に連なる鍵穴を有し、前記鍵穴は、前記シリンダー錠本体部の軸方向の長さが異なる複数のシリンダー錠のいずれにも適合するように形成され、前記シリンダー錠本体部の軸方向の長さが異なる複数のシリンダー錠のいずれにも1つの共通の前記鍵で施錠および解錠が可能である、
シリンダー錠。
【請求項2】
前記シリンダー錠本体部の前記一端側に設けられ、シリンダーカバーを取り付け可能なシリンダーカバー取付部をさらに備え、
前記シリンダーカバー取付部は、複数の仕様のシリンダーカバーを着脱自在に取り付け可能である、請求項1に記載のシリンダー錠。
【請求項3】
前記シリンダー錠本体部の中心と前記変位伝達部材の中心とが同軸である、請求項1又は2に記載のシリンダー錠。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のシリンダー錠を複数備えるシリンダー錠セットであって、
前記複数のシリンダー錠は、いずれも前記他端側の内部構造は同一である一方で前記シリンダー錠本体部の軸方向の長さが異なるものであり、
前記シリンダー錠本体部の軸方向の長さが異なる前記複数のシリンダー錠のいずれにも対応可能な単一種の前記鍵を備える、シリンダー錠セット。
【請求項5】
シリンダー錠本体部の一端側と他端部側のうち前記一端側に鍵が挿入される鍵挿入部が設けられたシリンダー錠を複数備えるシリンダー錠セットであって、
複数の前記シリンダー錠は、いずれも前記他端側の内部構造は同一であり、かつ前記一端側の内部構造は異なり、前記シリンダー錠本体部の軸方向の長さが同一であり、
前記シリンダー錠本体部の軸方向の長さが同一の前記複数のシリンダー錠のいずれにも対応可能な単一種の鍵を備える、シリンダー錠セット。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のシリンダー錠を備えるドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シリンダー錠に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、シリンダー錠は、扉の戸先内部などに設けられる一つの仕様の箱錠に対して一対一の対応関係持つ仕様のものが適用される。これに対し、仮設又は既設の箱錠に対して、原シリンダー錠のみを、取付型式の異なる他のシリンダー錠に付け換え可能にしたシリンダー錠付換え装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の装置では、箱錠を環状のアダプターを含む交換用組立体を持つ構造にして、原シリンダー錠とは仕様の異なる他のシリンダー錠を既設の箱錠に適合させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の交換用組立体を持つ箱錠は、同じ仕様の箱錠に対して、原シリンダー錠とは仕様の異なるシリンダー錠を適用しようとする場合には便利である。しかしながら、上述とは逆の場合、即ち、同じ仕様のシリンダー錠を種々の仕様の箱錠に適用しようとする場合には特許文献1の技術では対処できない。
【0005】
本開示は、上記のような状況に鑑みてなされたものであり、同じ仕様のシリンダー錠を種々の仕様の箱錠に適用できるようにしたシリンダー錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
変位伝達部材を介して箱錠の施錠および解錠が可能なシリンダー錠であって、シリンダー錠本体部と、前記シリンダー錠本体部の一端側に設けられ、鍵が挿入される鍵挿入部と、複数の仕様の前記箱錠のそれぞれに対応する複数種類の前記変位伝達部材と、前記シリンダー錠本体部の他端側に設けられ、前記変位伝達部材を取り付け可能な変位伝達部材取付部と、を備え、前記変位伝達部材取付部は、前記複数種類の各々の変位伝達部材を着脱自在に取り付け可能であり、前記シリンダー錠本体部には、前記鍵挿入部に連なる鍵穴を有し、前記鍵穴は、前記シリンダー錠本体部の軸方向の長さが異なる複数のシリンダー錠のいずれにも適合するように形成され、前記シリンダー錠本体部の軸方向の長さが異なる複数のシリンダー錠のいずれにも1つの共通の前記鍵で施錠および解錠が可能である、シリンダー錠である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一つの形態におけるシリンダー錠と箱錠との対応関係を表す概念図である。
【
図2】本開示の一例におけるシリンダー錠とテールピースおよびシリンダーカバーとの組み合わせを示す図である。
【
図3】本開示の他の例におけるシリンダー錠とテールピースおよびシリンダーカバーとの組み合わせを示す図である。
【
図4】本開示の他の例におけるシリンダー錠とテールピースおよびシリンダーカバーとの組み合わせを示す図である。
【
図5】本開示の他の例におけるシリンダー錠とテールピースおよびシリンダーカバーとの組み合わせを示す図である。
【
図6】本開示の他の例におけるシリンダー錠とテールピースおよびシリンダーカバーとの組み合わせを示す図である。
【
図7】本開示の他の例におけるシリンダー錠とテールピースおよびシリンダーカバーとの組み合わせを示す図である。
【
図8】本開示の他の例におけるシリンダー錠とテールピースおよびシリンダーカバーとの組み合わせを示す図である。
【
図9】本開示の他の例におけるシリンダー錠とテールピースおよびシリンダーカバーとの組み合わせを示す図である。
【
図10】本開示の他の例におけるシリンダー錠とテールピースおよびシリンダーカバーとの組み合わせを示す図である。
【
図11】本開示の他の例におけるシリンダー錠とテールピースおよびシリンダーカバーとの組み合わせを示す図である。
【
図12】本開示の他の例におけるシリンダー錠とテールピースおよびシリンダーカバーとの組み合わせを示す図である。
【
図13】本開示の他の例におけるシリンダー錠とテールピースおよびシリンダーカバーとの組み合わせを示す図である。
【
図14】本開示の一例におけるシリンダー錠に対応する箱錠の側面斜視図である。
【
図15】本開示の一例におけるシリンダー錠を背面側から見た斜視図である。
【
図16】本開示の一例におけるシリンダー錠の分解図である。
【
図17】本開示のシリンダー錠本体部の一例を示す図である。
【
図18】本開示のシリンダー錠本体部の他の例を示す図である。
【
図19】本開示のシリンダー錠本体部の他の例を示す図である。
【
図20】本開示のシリンダー錠本体部の他の例を示す図である。
【
図21】共通プラットフォームを用いたシリンダー錠本体部の一例を示す縦断面図である。
【
図22】共通プラットフォームを用いたシリンダー錠本体部の他の例を示す縦断面図である。
【
図23】共通プラットフォームを用いたシリンダー錠本体部の他の例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本開示の一つの形態における、例えば扉に取り付けられるシリンダー錠とこの扉の戸先内に設けられる箱錠との対応関係を表す概念図である。
図1において、左側にシリンダー錠1が示され、右側にシリンダー錠1が適用される箱錠2が示されている。
図1では、シリンダー錠1は、シリンダー錠本体部3の前端側4に鍵挿入部5を有している。この鍵挿入部5から、シリンダー錠1に適合する鍵が挿入される。また、シリンダー錠本体部3の前端側4の周囲に環状のシリンダーカバー6が施されている。
【0009】
一方、箱錠2については、錠箱7の左側面が描かれている。錠箱7の前面側(
図1では左側)にフロント裏板8が設けられ、フロント裏板8に重なるようにしてフロント板9が設けられている。錠箱7の左側面下部後方には図示しないデッドボルトのガイドピンを進退方向(
図1では左右方向)に案内するガイド孔10が設けられている。
【0010】
錠箱7の左側面におけるガイド孔10の上方に位置して、シリンダー錠本体部3の後述する変位伝達部材である板状のテールピースが嵌合する嵌合穴11が形成された「ダルマ」とも通称されるデッドボルト用の駆動部材12が設けられている。駆動部材12は変形扇形等その仕様に応じた形状の板状部材を主体的に有して構成される。
図1の場合は、駆動部材12のうちの錠箱7に形成された穴から若干突出した円柱状部分の頭部のみが視認される。駆動部材12は嵌合穴11に嵌合したテールピースの回動により回動変位し、この回動変位によって所定の変位伝達機構を介してデッドボルトが進退方向に動く。デッドボルトが進出位置にあるとき箱錠2は施錠状態にあり、デッドボルトが後退位置にあるとき箱錠2は解錠状態にある。一般的には、シリンダー錠は、扉の戸先内部などに設けられる一つの仕様の箱錠に対して一対一の対応関係持つ仕様のものが適用される。これに対し、本開示のシリンダー錠1(詳細にはシリンダー錠本体部3)は適切なテールピースを選択的に適用することにより、所定の複数の仕様の箱錠と組み合わせて用いることができる。
【0011】
図2から
図13は、本開示のシリンダー錠1のシリンダー錠本体部3に対し、所定の複数の仕様の箱錠それぞれに対応する各変位伝達部材13としてのテールピースを選択的に取り付け、シリンダーカバー6についても所定の複数の仕様のものを選択的に適用した様子を示す図である。シリンダー錠本体部3にはテールピースを選択的に取り付けるための変位伝達部材取付部310が鍵後端部16に設けられている。またシリンダー錠本体部3にはシリンダーカバー6を選択的に取り付けるためのシリンダーカバー取付部320が鍵挿入部5側に設けられている。
図2から
図13では、テールピース13については、仮称にてa型からd型、即ち、13aから13dの4通り、シリンダーカバー6については、仮称にてa型からc型、即ち、6aから6cの3通りを、同じシリンダー錠本体部3に適用する場合を示している。ここに、各テールピース13は板状の駆動片14およびこれと一体の接続片15とを有する。テールピース13は、その接続片15がシリンダー錠本体部の後端側の鍵後端部16に取り付けられる。鍵後端部16にはテールピース13の接続片15を取り付ける面部或いはスリット等の変位伝達部材取付部310が構成されている。
【0012】
図2の例では、シリンダー錠本体部3に対しa型のテールピース13aとa型のシリンダーカバー6aを適用している。シリンダー錠本体部3の前端側4に設けられた鍵挿入部5とは反対側の後端側に備えられた鍵後端部16にテールピース13aが取り付けられている。詳細には、鍵後端部16にテールピース13aの接続片15aが着脱可能に接続される。これによりシリンダー錠1が合鍵によって解錠されてシリンダー錠本体部3(後述する内筒)が回転操作されると、その回転変位がテールピース13aの駆動片14aを通して、対応する箱錠2の駆動部材12に伝達される。a型のテールピース13aはその駆動片14aの幅および軸方向の長さが標準的なものである。従って、最も標準的な箱錠に適合する。
【0013】
図3の例では、シリンダー錠本体部3に対し
図2の例におけるa型のテールピース13aに替えてb型のテールピース13bを適用する。一方、シリンダーカバーについては
図2と同じシリンダーカバー6aを適用している。
図3の例においても
図2の例と同様に作用するが、b型のテールピース13bはa型のテールピース13aよりも駆動片14aの幅が狭く軸方向の長さが長い。従って、厚み寸法が大きいドアの戸先に設けられ比較的操作トルクの小さいタイプの箱錠に適合する。
【0014】
図4の例では、シリンダー錠本体部3に対し
図2の例におけるa型のテールピース13aに替えてc型のテールピース13cを適用する。一方、シリンダーカバーについては
図2と同じシリンダーカバー6aを適用している。
図4の例においても
図2の例と同様に作用するが、c型のテールピース13cはa型のテールピース13aよりも駆動片14cの幅が広く軸方向の長さが短い。従って、厚み寸法が小さいドアの戸先に設けられ比較的操作トルクの大きいタイプの箱錠に適合する。
【0015】
図5の例では、シリンダー錠本体部3に対し
図2の例におけるa型のテールピース13aに替えてd型のテールピース13dを適用する。一方、シリンダーカバーについては
図2と同じシリンダーカバー6aを適用している。
図5の例においても
図2の例と同様に作用するが、d型のテールピース13dはa型のテールピース13aよりも駆動片14dの幅が広く軸方向の長さが短い。但し、駆動片14dの軸方向の長さは
図4の例におけるよりも長い。従って、厚み寸法が相対的に小さいものの
図4の例を適用するものよりは厚みのあるドアの戸先に設けられ比較的操作トルクの大きいタイプの箱錠に適合する。
【0016】
上述のように、
図2から
図5の4通りの例では、テールピース13についてa型からd型の4通りのもの(13aから13d)から選択的に一つを適用しつつ、シリンダーカバーについては同じシリンダーカバー6aを適用した。従って、
図2から
図5の例は、ドアの厚み寸法や箱錠の操作トルクに関しては、それぞれ対応する条件に応じつつ、ドアの外見やドアを含む周囲との調和といった意匠上の観点からはa型のシリンダーカバー6aが相応しい場合に良く適合する。
【0017】
次に、
図6から
図9の4通りの例は、テールピース13について
図2から
図5の例におけると同様に、a型からd型の4通りのもの(13aから13d)から選択的に一つを適用しつつ、シリンダーカバーについては同じシリンダーカバー6bを適用している。従って、
図6から
図9の例は、ドアの厚み寸法や箱錠の操作トルクに関しては、
図2から
図5の例におけると同様に、それぞれ対応する条件に応じつつ、ドアの外見やドアを含む周囲との調和といった意匠上の観点からはb型のシリンダーカバー6bが相応しい場合に良く適合する。
【0018】
図10から
図13の4通りの例は、テールピース13について
図2から
図5の例におけると同様に、a型からd型の4通りのもの(13aから13d)から選択的に一つを適用しつつ、シリンダーカバーについては同じシリンダーカバー6cを適用している。従って、
図10から
図12の例は、ドアの厚み寸法や箱錠の操作トルクに関しては、
図2から
図5の例におけると同様に、それぞれ対応する条件に応じつつ、ドアの外見やドアを含む周囲との調和といった意匠上の観点からはc型のシリンダーカバー6cが相応しい場合に良く適合する。
【0019】
図14は、本開示のシリンダー錠1に対応する箱錠の側面斜視図である。
図14において、
図1との対応部は同一の符号により示している。箱錠2の錠箱7にはその前面側(デッドボルトが突出する側)にフロント裏板8が一体的に設けられている。フロント裏板8下部にデッドボルト進退穴17が形成されている。図示しないデッドボルトのガイドピンがガイド孔10に案内されてデッドボルトが進退する。
図14の例では、「ダルマ」とも通称されるデッドボルト用の駆動部材は全体が錠箱7の内部に配されている。
【0020】
図14の視座では、錠箱7の内部に配された駆動部材は視認されないが、説明の便宜上、この駆動部材に符合12aを割り当て、以降、駆動部材12aと称する。錠箱7の側面上部後方には挿通穴18が形成されている。挿通穴18は、シリンダー錠本体部3に取り付けられたテールピース13の駆動片14を錠箱7内に挿通させるための穴である。挿通穴18を通して錠箱7内に挿通されたの駆動片14が駆動部材12aに形成された嵌合穴に嵌合する。これにより、テールピース13の回動が駆動部材12aに伝達され、所定の変位伝達機構を介してデッドボルトが進退方向に動く。デッドボルトの進出位置で箱錠2は施錠状態になり、デッドボルトが後退すると箱錠2は解錠状態になる。
【0021】
図14の例では、挿通穴18は、正面視で、中心角が略90度の2つの扇形が中心を共通にして連なり、一方の扇形の一方の半径と他方の扇形の他方の半径とが直線状に並んだ形状をなしている。これにより、挿通穴18の直線状に並んだ上記2つの扇形の該当する2つの半径に沿うようにテールピース13の板状の駆動片14を挿通させたときに、駆動片14の略90度の回動が許容される。なお、挿通穴18の正面視で左右には上記2つの扇形の中心に対して対称となる位置に2つのボルト孔19a、19bが設けられている。また、ボルト孔19aより上方位置に正面視で左右に整列した2つの係合孔20a、20bが形成され、同様に、ボルト孔19aより下方位置に正面視で左右に整列した2つの係合孔20c、20dが形成されている。
【0022】
図15は、本開示の一例におけるシリンダー錠1を背面側から見た斜視図である。上述の
図14における係合孔20a、20b、20c、20dに、この順に対応して係合する係合爪21a、21b、21c、21dが設けられた係止板22がシリンダー錠本体部3の後方端側に配されている。係止板22には
図14の錠箱7のボルト孔19a、19bにこの順に対応するボルト挿通孔23a、23bが形成されている。係止板22の中央には、テールピース13の駆動片14を挿通させる挿通穴24が形成されている。なお、
図15では、シリンダー錠本体部3はこれを取り付けるための筒状部材25内に同軸状に収容されており直接には視認されない。
【0023】
図16は、本開示の一例におけるシリンダー錠1の分解図である。
図16はシリンダー錠1を上方から見込む視座で見たものである。
図16において上述の
図15との対応部には同一の符号を附している。矢線Aは鍵(合鍵)の挿入方向を示している。テールピース13は
図2~
図13のテールピース13における接続片15の一態様である板状の接続部26でシリンダー錠本体部3の鍵後端部16に接続されている。この接続は、例えば、鍵後端部16に設けられているスリット部に板状の接続部26が強固に嵌り込む形態をとり得る。
【0024】
本開示のシリンダー錠は、変位伝達部材であるテールピースを、所定の複数の仕様の箱錠それぞれに対応するもののうちから何れか適合するものを選択的に用いることによって目的とする箱錠2に適合させることができる。一方、シリンダー錠自体も、種々の仕様の態様をとることができる。次に本開示のシリンダー錠の本体部の種々の例について説明する。
【0025】
図17から
図20は、本開示のシリンダー錠本体部の種々の例を示す図である。
図17から
図20においては、同種の部位を示す符号として同じ整数を対応付け、それら整数の末尾に、各例を区分するためのアルファベットの文字を附している。説明の便宜上、符号の整数部により
図17から
図20の共通事項について説明する。
【0026】
図17から
図20において、シリンダー錠本体部3は、固定された外筒27と、外筒27内に同軸状に配され、解錠時には外筒27との相対回転が許容される内筒28を有する。内筒28の中心軸に沿って鍵挿入部5に連なる鍵穴29が形成されている。外筒27と内筒28には両者に共通の仮想中心軸から放射方向に連なって、外筒27側に外筒ピン孔30が、内筒28側に内筒ピン孔31が形成されている。外筒ピン孔30と内筒ピン孔31とは略同径で、ロック状態のときには同軸状に連なった貫通孔32をなしている。外筒ピン孔30の、外筒27に関する外周側に、付勢バネ33が配置される。また、外筒ピン孔30の、外筒27に関する内周側に、カウンターピン34が外筒ピン孔30内で摺動自在に挿入される。内筒ピン孔31内にタンブラー35が摺動自在に挿入される。鍵穴29には鍵(合鍵)36が通される。本開示の鍵36は、
図17から
図20における全ての態様のシリンダー錠本体部3(3a,3b,3c,3d)について共通のものである。換言すれば、鍵穴29は共通の鍵36に適合するように形成されている。鍵36は摘み部37の先に所定形状のブレード38が伸びた構成を有している。ブレード38には、図示が省略されたキーコードが大小の刻みや窪みによって形成されている。
【0027】
図17から
図20のシリンダー錠本体部3(3a,3b,3c,3d)は、タンブラー35(35a,35b,35c,35d)の数を異にしている。即ち、タンブラー35(35a,35b,35c,35d)の数に応じて、外筒ピン孔30(30a,30b,30c,30d)、内筒ピン孔31(31a,31b,31c,31d)、カウンターピン34(34a,34b,34c,34d)の数を異にしている。これに伴い、
図17から
図20のシリンダー錠本体部3(3a,3b,3c,3d)は、軸方向の寸法を異にしている。従って、
図17から
図20のようなシリンダー錠本体部3(3a,3b,3c,3d)を選択的に適用して、厚み寸法の異なる種々のドアに適合する箱錠を構成することが可能になる。
【0028】
具体的には、
図17のシリンダー錠本体部3aでは、タンブラー35a(外筒ピン孔30a、内筒ピン孔31a)を軸方向に6つ持つ。
図17のようなシリンダー錠本体部3aは、玄関ドアなど、防犯に関する条件が相対的に厳しい箇所での使途に適する。
【0029】
図18のシリンダー錠本体部3bでは、タンブラー35b(外筒ピン孔30b、内筒ピン孔31b)を軸方向に5つ持つ。
図18のようなシリンダー錠本体部3bは、勝手口ドアやテラスドアなど、防犯に関する条件が
図17のものが適用される箇所に次いで厳しい箇所での使途に適する。
【0030】
図19のシリンダー錠本体部3cでは、タンブラー35b(外筒ピン孔30c、内筒ピン孔31c)を軸方向に3つ持つ。
図19のようなシリンダー錠本体部3cは、門扉やインテリアドアなど、防犯に関する条件が
図18のものが適用される箇所に次いで厳しい箇所での使途に適する。
【0031】
図20のシリンダー錠本体部3dでは、タンブラー35b(外筒ピン孔30d、内筒ピン孔31d)を軸方向に3つ持つ。
図20のようなシリンダー錠本体部3dは、小窓のクレセントや宅配ボックスなど、防犯に関する条件が相対的には余り厳しくない箇所での使途に適する。
【0032】
上述の通り、本開示の鍵36は、
図17から
図20における全ての態様のシリンダー錠本体部3(3a,3b,3c,3d)について共通のものである。これは、
図17から
図20の各態様のシリンダー錠本体部3a,3b,3c,3dにおけるタンブラー35a,35b,35c,35dが、鍵穴29(29a,29b,29c,29d)の奥側(鍵36の先端側)から鍵挿入部5側(鍵36の摘み部37側)に向かって、タンブラー35a,35b,35c,35dが存在する区間については、同じキーコードに対応するように配置されているからである。
【0033】
図17のように、タンブラー35aが軸方向に6つ並んだタイプのシリンダー錠本体部3aについては、鍵36の長手方向の全てのキーコードが有効に機能して施錠・解錠の操作が行われる。また、
図18のように、タンブラー35bが軸方向に5つ並んだタイプのシリンダー錠本体部3bについては、鍵36の長手方向の全てのキーコードのうちの先端側のタンブラー35bの5つ分の区間が有効に機能して施錠・解錠の操作が行われる。同様に、
図19のシリンダー錠本体部3cついては、鍵36の長手方向の全てのキーコードのうちの先端側のタンブラー35cの4つ分の区間が有効に機能し、
図20のシリンダー錠本体部3dついては、鍵36の長手方向の全てのキーコードのうちの先端側のタンブラー35dの3つ分の区間が有効に機能して施錠・解錠の回動操作が行われる。この回動操作が許容されるのは、鍵36のブレード38に形成されているキーコードと対応する全てのタンブラーとが合致することにより、タンブラー35とカウンターピン34との全ての接触部位が外筒27と内筒28の境目に相当する仮想面であるシェアラインに整列しているときに限られる。
【0034】
図17から
図20における複数のシリンダー錠本体部(3a,3b,3c,3d)をセットとして扱うことが考えられる。即ち、シリンダー錠本体部(3a,3b,3c,3d)を複数備えるシリンダー錠セット(
図17-
図20)であって、複数のシリンダー錠は、いずれも他端側16の内部構造は同一である一方でシリンダー錠本体部3の軸方向の長さが異なるものであり、シリンダー錠本体部3の軸方向の長さが異なる複数のシリンダー錠のいずれにも対応可能な単一種の鍵36を備える、シリンダー錠セットである。
【0035】
図21から
図23は、共通プラットフォームを用いたシリンダー錠本体部の一例を示す縦断面図である。
図21は
図17のシリンダー錠本体部と同様のものであり、
図17におけるよりもやや詳細に描かれている。
図21から
図23において、
図17との対応部には同一の符号を附している。
図21から
図23において、共通プラットフォームとは、外筒27aと内筒28aである。外筒27aは軸方向に所定間隔をおいて6つの外筒ピン孔30aを有する。また、内筒28aは各外筒ピン孔30aに対応する6つの内筒ピン孔31aを有する。
【0036】
図21のシリンダー錠本体部は、共通プラットフォームである外筒27aおよび内筒28aの6つの全ての外筒ピン孔30aおよび内筒ピン孔31aに付勢バネ33a、カウンターピン34aおよびタンブラー35aが配されて、鍵違い数の極めて多い高級鍵が構成される。
【0037】
図22のシリンダー錠本体部は、共通プラットフォームである外筒27aおよび内筒28aの6つの外筒ピン孔30aおよび内筒ピン孔31aのうち鍵挿入部5に近いそれらの孔には付勢バネ33a、カウンターピン34aおよびタンブラー35aが配されず、外筒第1ブランク孔301および内筒第1ブランク孔311とされている。このため、
図22のシリンダー錠本体部は鍵違い数が
図21のものより少なく、部品点数も少ない中級鍵が構成される。
図22のシリンダー錠本体部は謂わば普及品である。
【0038】
図23のシリンダー錠本体部は、
図22のシリンダー錠本体部における外筒第1ブランク孔301および内筒第1ブランク孔311に加えて、これらと軸方向に隣接するようにして外筒第2ブランク孔302および内筒第2ブランク孔312が設定されている。このため、
図23のシリンダー錠本体部は鍵違い数が
図22のものより更に少なく、部品点数も更に少なく価格が低廉な鍵が構成される。
図23のシリンダー錠本体部は謂わば廉価版である。
【0039】
以上に説明した本開示の一実施形態について、その作用効果を次の通り要約する。
(1)本開示の一実施形態は、変位伝達部材13を介して箱錠の施錠および解錠が可能なシリンダー錠1であって、シリンダー錠本体部3と、シリンダー錠本体部3の一端側に設けられ、鍵が挿入される鍵挿入部5と、複数の仕様の箱錠のそれぞれに対応する複数種類の変位伝達部材13(13a,13b,13c,13d)と、シリンダー錠本体部3の他端側に設けられ、変位伝達部材13を取り付け可能な変位伝達部材取付部310と、を備え、変位伝達部材取付部310は、複数種類の各々の変位伝達部材13を着脱自在に取り付け可能であり、シリンダー錠本体部3には、鍵挿入部5に連なる鍵穴29を有し、鍵穴29は、シリンダー錠本体部3の軸方向の長さが異なる複数のシリンダー錠1のいずれにも適合するように形成され、シリンダー錠本体部3の軸方向の長さが異なる複数のシリンダー錠1のいずれにも1つの共通の鍵で施錠および解錠が可能である、
シリンダー錠である。
【0040】
上記(1)の実施形態では、所定の複数の仕様の箱錠2それぞれに対応する各変位伝達部材13(13a,13b,13c,13d)のうちの何れかの変位伝達部材13を選択的に鍵後端部16に取り付けることによって、所定の複数の仕様の箱錠2の何れに対しても同じシリンダー錠本体部3を適用することができる。このため、箱錠を取り付けたドアが新築の建物であるかリフォームの建物であるかによらず、多種の箱錠に対して共通のシリンダー錠本体部を適用することができる。また、メンテナンス用部品としても共通のシリンダー錠本体部3と複数種類の変位伝達部材13を用意しておくだけでよい。この場合、シリンダー錠本体部3と複数種類の変位伝達部材13とがセットで流通する仕組みを構築しておけば、このセットを用意している工務店等は種々ある箱錠のシリンダー錠交換の要請にも変位伝達部材13を選んで即応できる。さらにまた、鍵穴29は、シリンダー錠本体部3の軸方向の長さが異なる複数のシリンダー錠1のいずれにも適合するように形成される。このため、シリンダー錠本体部3の軸方向の長さが異なる複数のシリンダー錠1のいずれにも1つの共通の鍵で施錠および解錠が可能である。
【0041】
(2)上記(1)のシリンダー錠において、シリンダー錠本体部3の一端側に設けられ、シリンダーカバー6を取り付け可能なシリンダーカバー取付部320をさらに備え、シリンダーカバー取付部320は、複数の仕様のシリンダーカバーを着脱自在に取り付け可能であることは好ましい。
【0042】
上記(2)の実施形態では、上記(1)のシリンダー錠において、特に、ドアの外見やドアを含む周囲との調和といった意匠上の観点から最も相応しいシリンダーカバーを適用可能である。
【0043】
(3)上記(1)または(2)のシリンダー錠において、シリンダー錠本体部3の中心と変位伝達部材13の中心とが同軸であることは好ましい。
【0044】
上記(3)の実施形態では、上記(1)または(2)のシリンダー錠において、特に、シリンダー錠本体部3の中心と変位伝達部材13の中心とが同軸であるため、構造が簡素化される。
【0045】
(4)上記(1)または(2)のシリンダー錠1を複数備えるシリンダー錠セット(
図17-
図20)であって、複数のシリンダー錠は、いずれも他端側16の内部構造は同一である一方でシリンダー錠本体部3の軸方向の長さが異なるものであり、シリンダー錠本体部3の軸方向の長さが異なる複数のシリンダー錠のいずれにも対応可能な単一種の鍵36を備える、シリンダー錠セットであることは好ましい。
【0046】
上記(4)の実施形態では、シリンダー錠セット(
図17-
図20)を準部することで使途の異なる場所に適合させることが可能になり、且つ、シリンダー錠セットに該当するいずれのシリンダー錠本体部3についても単一種の鍵36で施錠・解錠を行うことができる。即ち、単一種の鍵36で異なる場所に設けたシリンダー錠の施錠・解錠を行うことができる。
【0047】
(5)シリンダー錠本体部3の一端側(前端側4)と他端部側(鍵後端部16)のうち一端側4に鍵が挿入される鍵挿入部5が設けられたシリンダー錠1を複数備えるシリンダー錠セット(
図21-
図23)であって、複数のシリンダー錠1は、いずれも他端側16の内部構造は同一であり、かつ一端側4の内部構造は異なり、シリンダー錠本体部3の軸方向の長さが同一であり、シリンダー錠本体部3の軸方向の長さが同一の複数のシリンダー錠1のいずれにも対応可能な単一種の鍵を備える、シリンダー錠セット。
【0048】
上記(5)の実施形態におけるシリンダー錠セットでは、複数のシリンダー錠1は、いずれもシリンダー錠本体部3の他端側16の内部構造は同一であり、かつ、一端側4の内部構造は異なり、シリンダー錠本体部3の軸方向の長さが同一であって、シリンダー錠本体部3の軸方向の長さが同一の複数のシリンダー錠1のいずれにも対応可能な単一種の鍵を備える。このため、複数のシリンダー錠セットは、適合する鍵の種類に関して標準化が図られ得る。
【0049】
(6)上記(1)または(2)の実施形態におけるシリンダー錠1を備えるドア。
【0050】
上記(6)の実施形態におけるドアでは、シリンダー錠1が種々の仕様の箱錠に適合するため、製品の標準化が図られ、低コストで品質に優れたドアが提供され得る。
【0051】
尚、箱錠に対しシリンダー錠側から当該箱錠の施錠および解錠のための変位を伝達する変位伝達部材については、テールピースに限られず種々の形態を採ることができる。例えば、シリンダー錠本体部の内筒の回転をベルトとプーリーによる変位伝達機構で箱錠側に伝達する形態、或いは、内筒の回転を歯車を介して箱錠側に伝達する形態等々である。
【符号の説明】
【0052】
1…シリンダー錠 2…箱錠 3…シリンダー錠本体部 4…前端側(一端側) 5…鍵挿入部 6,6a,6b,6c…シリンダーカバー 7…錠箱 8…フロント裏板 9…フロント板 10…ガイド孔 11…嵌合穴 12…駆動部材 13,13a,13b,13c,13d…テールピース(変位伝達部材) 14,14a,14b,14c,14d…駆動片 15,15a,15b,15c,15d…接続片 16…鍵後端部(他端側) 17…デッドボルト進退穴 18…挿通穴 19a,19b…ボルト孔 20a,20b,20c,20d…係合孔 21a,21b,21c,21d…係合爪 22…係止板 23a,23b…ボルト挿通孔 24…挿通穴 25…筒状部材 26…接続部 27,27a,27b,27c,27d…外筒 28,28a,28b,28c,28d…内筒 29,29a,29b,29c,29d…鍵穴 30,30a,30b,30c,30d…外筒ピン孔 31,31a,31b,31c,31d…内筒ピン孔 32,32a,32b,32c,32d…貫通孔 33,33a,33b,33c,33d…付勢バネ 34,34a,34b,34c,34d…カウンターピン 35,35a,35b,35c,35d…タンブラー 36…鍵(合鍵) 37…摘み部 38…ブレード 301…外筒第1ブランク孔 302…外筒第2ブランク孔 310…変位伝達部材取付部 311…内筒第1ブランク孔 312…内筒第2ブランク孔 320…シリンダーカバー取付部