(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138812
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】キメラ抗原受容体(CAR)並びにその製造及び使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20230922BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230922BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230922BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230922BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20230922BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20230922BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20230922BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230922BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20230922BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20230922BHJP
C12N 15/24 20060101ALN20230922BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20230922BHJP
C12N 15/86 20060101ALN20230922BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
A61K35/17
A61P35/00
A61P37/06
C07K16/00
C07K19/00
C07K14/705
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N5/0783
C12N15/24
C12N15/54
C12N15/86 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023130951
(22)【出願日】2023-08-10
(62)【分割の表示】P 2022074648の分割
【原出願日】2015-04-23
(31)【優先権主張番号】61/983,103
(32)【優先日】2014-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/983,298
(32)【優先日】2014-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス ジェイ.エヌ. クーパー
(72)【発明者】
【氏名】ヒラリー ギボンズ カルソー
(72)【発明者】
【氏名】サイモン オリバレス
(72)【発明者】
【氏名】ソニー アン
(57)【要約】
【課題】疾患細胞を特異的に標的としつつ、正常組織への副作用を低下させる新しいCAR T細胞療法を提供する。
【解決手段】第1の実施形態では、ある抗原を標的とし、その抗原に対するKdが約5nM~約500nMである発現CARを含む、トランスジェニック細胞(例えば、単離されたトランスジェニック細胞)を提供する。さらなる実施形態では、ある抗原を標的とする発現CARを含むトランスジェニックT細胞であって、該T細胞が抗原に多価結合した時にのみ有意な細胞傷害活性を示すトランスジェニックT細胞を提供する。ある態様では、実施形態の単離細胞は、T細胞またはT細胞前駆細胞である。さらに別の態様では、細胞はヒト細胞などの哺乳類細胞である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年4月23日に提出された米国仮出願第61/983,103号、及び2014年4月23日に提出された米国仮出願第61/983,298号の優先権の利益を主張し、その記載内容全体を参照により本明細書に組み込む。配列表の組込み
【0002】
2015年4月23日に作成した、11KB(Microsoft Windows(登録商標)で測定)ある名称「UTFC.P1238WOST25.txt」というファイルに含まれる配列表を、本明細書とともに電子形式で提出し、これを参照により本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0003】
1.技術分野
本発明は、一般に、医学、免疫学、細胞生物学、及び分子生物学の分野に関する。特定の態様では、発明の技術分野は免疫療法に関する。より詳細には、本明細書に記載する実施形態は、キメラ抗原受容体(CAR)と、標的抗原を高発現している細胞を特異的に標的にすることができるCAR発現T細胞とに関する。
【0004】
2.関連技術の記載
臨床グレードT細胞の効力は、遺伝子治療と免疫療法とを併用して、(i)腫瘍関連抗原(TAA)の認識、(ii)注入後の持続性、(iii)腫瘍部位への移行能力、及び(iv)腫瘍微小環境内でのエフェクター機能の再利用能に優れた効力を有する生物由来製品を人工的に作り出すことにより改善することができる。こうした遺伝子治療と免疫療法との併用により、T細胞の特異性をB細胞系抗原に誘導することができ、そのため、B細胞性悪性腫瘍が進行している患者は、そのような腫瘍特異的T細胞の注入により恩恵を受ける(Jena et al.,2010;Till et al.,2008;Porter et al.,2011;Brentjens et al.,2011;Cooper et al.,2012;Kalos et al.,2011;Kochenderfer et al.,2010;Kochenderfer et al.,2012;Brentjens et al.,2013)。ヒト用途に人工的にT細胞の遺伝子を操作する方法のほとんどでは、キメラ抗原受容体(CAR)を安定して発現させるためにレトロウイルス及びレンチウイルスが使用されている(Jena et al.,2010;Ertl et al.,2011;Kohn et al.,2011)。この方法は、現行の医薬品の製造及び品質管理に関する基準(cGMP)に適合しているものの、臨床グレードの組換え型ウイルスの製造及び出荷は限られた数しかない製造施設に依存するため高額になり得る。
【0005】
CAR T細胞に基づいた治療法の欠点は、標的抗原が正常な非疾患組織にも発現している場合、標的外作用の可能性があることである。したがって、疾患細胞を特異的に標的としつつ、正常組織への副作用を低下させる新しいCAR T細胞療法が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【特許文献1】Jena et al.,2010
【特許文献2】Till et al.,2008
【特許文献3】Porter et al.,2011
【特許文献4】Brentjens et al.,2011
【特許文献5】Cooper et al.,2012
【特許文献6】Kalos et al.,2011
【特許文献7】Kochenderfer et al.,2010
【特許文献8】Kochenderfer et al.,2012
【特許文献9】Brentjens et al.,2013
【特許文献10】Ertl et al.,2011
【特許文献11】Kohn et al.,2011
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に記載する特定の実施形態は、抗原を過剰発現する細胞を標的とするためにキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を使用することができるという知見に基づいている。したがって、いくつかの態様では、CAR T細胞の細胞傷害活性を、抗原の発現レベルが高い意図する標的細胞(例えば、癌細胞)にのみ集中させる一方で、抗原発現レベルの低い細胞に対する細胞傷害作用を最小限に抑えることができる。特に、中間レベルの標的親和性を有するCARを使用することによって、抗原を高レベルで発現する細胞に対して選択的に細胞傷害性であるCAR T細胞を作製できることがわかった。観察されたかかる作用は、何か特定の機序に拘束されることなく、CAR T細胞による多価抗原への結合で細胞ターゲティングが促進されてよい。別法または追加方法で、標的以外への細胞傷害性を抑えるために、選択CAR T細胞でCARの発現レベルを調節してよい。
【0008】
したがって、第1の実施形態では、ある抗原を標的とし、その抗原に対するKdが約5nM~約500nMである発現CARを含む、トランスジェニック細胞(例えば、単離されたトランスジェニック細胞)を提供する。さらなる実施形態では、ある抗原を標的とする発現CARを含むトランスジェニックT細胞であって、該T細胞が抗原に多価結合した時にのみ有意な細胞傷害活性を示すトランスジェニックT細胞を提供する。ある態様では、実施形態の単離細胞は、T細胞またはT細胞前駆細胞である。さらに別の態様では、細胞はヒト細胞などの哺乳類細胞である。
【0009】
さらなる実施形態では、(a)(i)T細胞がある抗原を多価結合して初めて生じる細胞傷害活性、及び/または(ii)該抗原に対するKdが約5nM~約500nMであるCARを有する、該抗原に結合する発現CARを含むCAR T細胞を選択すること、並びに(b)前記の選択CAR T細胞の有効量を被検体に投与して、該抗原を高発現している細胞を選択的に標的にするT細胞応答を与えることを含む、被検体における抗原発現細胞を選択的に標的にする方法を提供する。したがって、特定の態様では、実施形態の方法は、疾患細胞上での抗原の高レベル発現に関連した疾患を治療する方法であるとさらに定義される。例えば、実施形態の方法を、癌または自己免疫疾患などの高増殖性疾患の治療、またはウイルス感染、細菌感染または寄生虫感染などの感染症治療のために使用してよい。
【0010】
さらに別の実施形態では、(a)(i)T細胞がある抗原を多価結合して初めて生じる細胞傷害活性、及び/または(ii)該抗原に対するKdが約5nM~約500nMであるCARを有する、該抗原に結合する発現CARを含むCAR T細胞を選択すること、並びに(b)該抗原を異なるレベルで発現している細胞を含む混合細胞集団と、前記の選択CAR T細胞とを接触させて抗原を高発現している細胞を選択的に標的とさせることを含む、混合細胞集団内で抗原発現細胞を選択的に標的にする方法を提供する。例えば、特定の態様では、混合細胞集団は、抗原を発現する非癌細胞と、抗原を高発現している癌細胞とを含む。いくつかの態様では、抗原の高レベルとは、CAR T細胞の標的となる細胞において少なくとも約0.5、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約75、約100、約200、約300、約400、約500、約600、約700、約800、約900または約1,000倍高い発現レベルを意味し得る。
【0011】
さらなる実施形態では、(a)(i)ある抗原に対する親和性が異なる(該抗原に対して異なるオン・オフ率を有する)CAR及び/または(ii)異なるレベルで細胞に発現している(すなわち、細胞表面に異なるレベルで存在する)CARを含む、該抗原に結合するCARを発現している複数のCAR T細胞を得ること、(b)該抗原を発現している対照細胞と、該抗原を高レベルで発現している標的細胞とで、細胞の細胞傷害活性を評価すること、並びに(c)標的細胞に対して選択的な細胞傷害性のあるCAR T細胞を選択することを含む、CAR T細胞を選択する方法を提供する。さらなる態様では、実施形態の方法は、選択されたCAR T細胞または選択されたT細胞の集団を増殖させること、及び/またはバンク化することをさらに含む。さらに別の態様では、実施形態の方法は、実施形態の選択CAR T細胞を有効量用いて被検体を治療することを含む。特定の態様では、複数のCAR T細胞の取得には、抗原に結合するCARを発現しているCAR T細胞のライブラリーの作製を含むことができる。例えば、CAR T細胞ライブラリーは、CAR内にランダムまたは人工的に操作した点変異を含んでよい(例えば、これにより、CARの親和性またはオン・オフ率を調節する)。さらなる態様では、CAR
T細胞のライブラリーは、CARに異なる発現レベルを与える種々のプロモーターエレメントの制御下でCARを発現している細胞を含む。
【0012】
さらに別の実施形態では、EGFR抗原を標的とした発現CARを含むトランスジェニック細胞(例えば、単離されたトランスジェニック細胞)を提供し、かかるCARは、Nimotuzumab(ニモツズマブ)のCDR配列(例えば、配列番号1及び配列番号2を参照のこと)またはセツキシマブのCDR配列(例えば、配列番号3及び配列番号4を参照のこと)を有する。いくつかの態様では、実施形態の細胞は、配列番号1及び配列番号2のCDRまたは抗原結合部分を有する発現CAR配列を含むヒトT細胞である。さらなる態様では、実施形態の細胞は、配列番号3及び配列番号4のCDRまたは抗原結合部分を有する発現CAR配列を含むヒトT細胞である。
【0013】
実施形態の態様は、CARが結合する抗原に関する。いくつかの態様では、抗原は、癌細胞、自己免疫細胞、またはウイルス、細菌若しくは寄生虫により感染している細胞において増加している抗原である。特定の態様では、抗原は、CD19、CD20、ROR1、CD22、癌胎児性抗原、αフェトプロテイン、CA-125、5T4、MUC-1、上皮腫瘍抗原、前立腺特異抗原、黒色腫関連抗原、変異p53、変異ras、HER2/Neu、葉酸結合タンパク質、HIV-1の外被糖タンパク質gp120、HIV-1の外被糖タンパク質gp41、GD2、CD123、CD33、CD138、CD23、CD30、CD56、c-Met、メソテリン、GD3、HERV-K、IL-11Rα、カッパ鎖、ラムダ鎖、CSPG4、ERBB2、EGFRvIIIまたはVEGFR2である。ある特定の態様では、抗原は、GP240、5T4、HER1、CD-33、CD-38、VEGFR-1、VEGFR-2、CEA、FGFR3、IGFBP2、IGF-1R、BAFF-R、TACI、APRIL、Fn14、ERBB2またはERBB3である。いくつかのさらなる態様では、抗原は、EGFR、ERBB2またはERBB3などの増殖因子受容体である。
【0014】
特定の実施形態の態様は、抗原に結合し、かつ、抗原に対するKdが約2nM~約500nMである、選択されたCAR(またはCARを含む選択された細胞)に関する。例えば、いくつかの態様では、CARは、抗原に対するKdが2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20nMまたはそれ以上である。さらに別の態様では、CARは、抗原に対するKdが約5nM~約450,400,350、300,250,200,150,100、または50nMである。さらに別の態様では、CARは、抗原に対するKdが約5nM~500nM、5nM~200nM、5nM~100nM、または5nM~50nMである。本発明において「CARのKd」という場合、CAR形成に使用されるモノクローナル抗体について測定したKdを意味してよい。
【0015】
いくつかの態様では、実施形態の選択されたCARは、CAR分子1つあたり2つ、3つ、4つまたはそれ以上の抗原分子に結合することができる。いくつかの態様では、選択されたCARの抗原結合ドメインの各々は、抗原に対するKdが2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20nMまたはそれ以上である。さらに別の態様では、選択されたCARの抗原結合ドメインの各々は、抗原に対するKdが約5nMから約450,400,350、300,250,200,150,100、または50nMの間である。さらに別の態様では、選択されたCARの抗原結合ドメインの各々は、抗原に対するKdが約5nM~500nM、5nM~200nM、5nM~100nM、または5nM~50nMである。
【0016】
実施形態のいくつかの態様では、実施形態にしたがって使用するための選択されたCARは、EGFRに結合するCARである。例えば、CARは、Nimotuzumab(ニモツズマブ)のCDR配列を含むことができる。例えば、いくつかの態様では、実施形態のCARは、Nimotuzumab(ニモツズマブ)の6つのCDR(配列番号5~10として提供)すべてを含む。いくつかの態様では、CARは、配列番号1及び配列番号2の抗原結合部分を含む。いくつかの態様では、CARは、配列番号1及び/または配列番号2に少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一な配列を含む。さらに別の態様では、実施形態にしたがって使用するためのCARは、Nimotuzumab(ニモツズマブ)のCDR配列を含まない。
【0017】
さらなる実施形態では、選択されたCAR、及び少なくとも、発現させた膜結合型IL-15のような発現させた第2の導入遺伝子を含む単離細胞を提供する。例えば、いくつかの態様では、膜結合型IL-15は、IL-15とIL-15Rαとの融合タンパク質を含む。場合によっては、そのような第2の導入遺伝子は、RNAまたはDNAによってコードされる(例えば、染色体外ベクターまたはエピソーマルベクター)。特定の態様では、細胞は、細胞のゲノムに組み込まれた膜結合型IL-15をコードするDNAを含む(例えば、トランスポゾンの反復配列が隣接するコードDNA)。特定の態様では、実施形態の細胞(例えば、膜結合型サイトカインを発現しているヒトCAR T細胞)を使用して、疾患細胞が高レベルの抗原を発現している疾患に罹患した被検体を治療する(または被検体の免疫応答を起こさせる)ことができる。
【0018】
いくつかの態様では、実施形態の方法は、選択されたCAR及び場合によってはトランスポザーゼをコードするDNA(またはRNA)をT細胞にトランスフェクトすることに関する。細胞にトランスフェクトする方法は当技術分野において周知であるが、特定の態様では、電気穿孔法またはウイルスを用いた形質導入などの高効率のトランスフェクション法を使用する。例えば、nucleofection(核内直接導入)装置を使用して核酸を細胞内に導入してよい。しかし、好ましくは、トランスフェクション工程では、処置被検体に遺伝毒性を発生させる、及び/またはウイルス配列含有細胞に対する免疫応答をもたらし得る、ウイルスを用いての細胞の感染または形質導入を使用しない。
【0019】
特定の実施形態の態様は、選択されたCARをコードする発現ベクターを細胞にトランスフェクトすることに関する。広範囲なCAR用発現ベクターは当技術分野で公知であり、本明細書でさらに詳述する。例えば、いくつかの態様では、CARの発現ベクターは、プラスミド、線状発現ベクターまたはエピソームなどのDNA発現ベクターである。特定の態様では、ベクターはさらなる配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、ポリAシグナル、及び/または1つまたはそれ以上のイントロンといったCAR発現を促す配列を含む。好ましい態様では、トランスポザーゼが存在することによりトランスフェクトされた細胞のゲノムにコード配列が組み込まれるよう、CARコード配列にトランスポゾン配列が隣接している。
【0020】
上記で詳述したように、特定の態様では、トランスフェクトされた細胞のゲノムにCARコード配列が組み込まれやすくするトランスポザーゼを細胞にさらにトランスフェクトする。いくつかの態様では、トランスポザーゼはDNA発現ベクターとして提供される。ただし、好ましい態様では、トランスポザーゼは、トランスジェニック細胞内でトランスポザーゼの長期発現が生じないように、発現可能なRNAまたはタンパク質として提供される。どのようなトランスポザーゼ系でも実施形態に従ってを使用してよい。しかし、いくつかの態様では、トランスポザーゼはサケ科のTc1様トランスポザーゼ(SB)である。例えば、かかるトランスポザーゼは、「Sleeping beauty(スリーピングビューティー)」トランスポザーゼであり得、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,489,458号を参照されたい。
【0021】
さらに別の態様では、実施形態の選択されたCAR T細胞は、T細胞増殖を刺激する膜結合型サイトカインを発現させるための発現ベクターをさらに含む。特に、そのようなサイトカインを含んでいる選択されたCAR T細胞は、抗原提示細胞とのエキソビボ培養をほとんどまたは全くしなくても、かかるサイトカインの発現で模倣されているため増殖することができる。同様に、そのようなCAR T細胞は、CARによって認識される抗原が大量に存在しない場合(例えば、寛解した癌患者または微小残存病変を有する患者の場合と同様)でも生体内で増殖することができる。いくつかの態様では、CAR T細胞は、Cγサイトカインを発現させるためのDNAまたはRNAの発現ベクター及びサイトカインを表面で発現させるためのエレメント(例えば、膜貫通ドメイン)を含む。例えば、かかるCAR細胞は、IL-7、IL-15またはIL-21の膜結合型を含むことができる。いくつかの態様では、サイトカインコード配列をサイトカインの受容体と融合させてサイトカインを膜に繋ぎ留める(tether)。例えば、細胞は、IL-15-IL-15Rα融合タンパク質を発現させるためのベクターを含むことができる。さらに別の態様では、膜結合型Cγサイトカインをコードするベクターは、CAR細胞のゲノムに組み込まれたベクターまたは染色体外のベクター(例えば、及びエピソーマルベクター)といったDNA発現ベクターである。さらに別の態様では、CAR細胞でのサイトカインの発現(また、それによるCAR細胞の増殖)が、プロモーター活性の誘導または抑制により制御され得るよう、膜結合型Cγサイトカインの発現は誘導性プロモーター(例えば、薬物誘導性プロモーター)の制御下にある。
【0022】
実施形態の態様は、選択されたCARを発現させるためのT細胞またはT細胞前駆細胞を得ることに関する。いくつかの態様では、細胞を第三者、例えば組織バンクから得る。さらなる態様では、T細胞またはT細胞前駆細胞を含む患者由来細胞試料を使用する。例えば、ある場合には、かかる試料は臍帯血試料、末梢血試料(例えば、単核球分画)または被検体から得た多能性細胞を含む試料である。いくつかの態様では、被検体から得た試料を培養して人工多能性幹(iPS)細胞を樹立し、これらの細胞を使用してT細胞を作製することができる。細胞試料を被検体から直接培養してもよいし、または使用前に凍結保存してもよい。いくつかの態様では、細胞試料の取得には細胞試料の採取を含む。別の態様では、試料を第三者から得る。さらに別の態様では、被検体から得た試料を処理して試料のT細胞またはT細胞前駆細胞を精製または濃縮することができる。例えば、試料を、勾配精製、細胞培養選択及び/または細胞選別(例えば、蛍光活性化細胞選別法(FACS)によるもの)に供することができる。
【0023】
いくつかの態様では、実施形態の方法は、抗原提示細胞(APC)の取得、作製または使用をさらに含む。例えば、いくつかの態様では、抗原提示細胞は、対象抗原を発現する樹状細胞または対象抗原が搭載されている樹状細胞といった樹状細胞を含む。さらなる態様では、抗原提示細胞は、対象抗原を提示する人工抗原提示細胞を含むことができる。例えば、人工抗原提示細胞は、不活性化された(例えば、照射された)人工抗原提示細胞(aAPC)であり得る。そのようなaAPCの作製方法は、当該技術分野で公知であり、本明細書でさらに詳述される。
【0024】
したがって、いくつかの態様では、CAR細胞集団を増幅させるために、実施形態のトランスジェニックCAR細胞と、抗原提示細胞(例えば、不活性化aAPC)とを限られた期間エキソビボで共培養する。CAR細胞と抗原提示細胞の共培養工程は、例えばインターロイキン-21(IL-21)及び/またはインターロイキン-2(IL-2)を含む培地で実施可能である。いくつかの態様では、CAR細胞とAPCとの比を約10:1~約1:10、約3:1~約1:5、または約1:1~約1:3にして共培養を実施する。例えば、CAR細胞とAPCの共培養は約1:1、約1:2または約1:3の比であり得る。
【0025】
いくつかの態様では、選択されたCAR細胞を培養するためのAPCは、CAR細胞の増殖を高めるため、特定のポリペプチドを発現するよう人工的に作られる。例えば、APCは、該APC表面上に発現する(i)CARが標的とする、トランスジェニックCAR細胞上に発現する抗原、(ii)CD64、(ii)CD86、(iii)CD137L、及び/または(v)膜結合型IL-15を含むことができる。いくつかの態様では、APCは、APC表面に発現するCAR結合抗体またはその断片を含む(例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際PCT特許公開WO/2014/190273を参照されたい)。好ましくは、本方法で使用するAPCに、感染性物質についての試験及びそれらがないことの確認、並びに/またはそれらが不活性かつ非増殖性であることの試験及び確認を行う。
【0026】
APC増幅では培養内のCAR細胞の数または濃度を増大させることができるが、この方法は労力を要し高額である。さらに、いくつかの態様では、治療を必要としている被検体は、できるだけ短期間のうちに再度トランスジェニックCAR細胞の注入を受けなければならない。したがって、いくつかの態様では、選択されたCAR細胞のエキソビボ培養は14日以内、7日以内または3日以内である。例えば、エキソビボ培養(例えば、APC存在下での培養)は、トランスジェニックCAR細胞の細胞数倍加1未満で実施可能である。さらに別の態様では、APCの存在下でトランスジェニック細胞をエキソビボ培養しない。
【0027】
さらに別の態様では、実施形態の方法は、ある集団への細胞の投与または接触の前に(例えば、細胞のトランスフェクション後または細胞のエキソビボ増幅後)、細胞集団の選択CAR発現T細胞を濃縮させる工程を含む。例えば、濃縮工程は、例えばCARが結合した抗原またはCAR結合抗体を使用することによる、細胞選別(例えば、蛍光活性化細胞分類(FACS)によるもの)を含むことができる。さらに別の態様では、濃縮工程は、非T細胞除去またはCAR発現を欠く細胞の除去を含む。例えば、CD56+細胞は培養集団から除去され得る。さらに別の態様では、細胞を被検体に投与する場合にCAR細胞の試料を保存する(または培養のまま維持する)。例えば、試料を後程の増幅または分析用に凍結保存してよい。
【0028】
特定の態様では、内在性T細胞受容体及び/または内在性HLAを発現させるために実施形態のトランスジェニックCAR細胞を不活性化させる。例えば、T細胞を人工的に操作して内在性のα/βのT細胞受容体(TCR)の発現を消失させることができる。具体的な実施形態では、CAR+T細胞に遺伝子組換えを行いTCRの発現を排除する。いくつかの態様では、CARを発現しているT細胞内に内在性T細胞受容体の破壊がある。例えば、場合によっては、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)またはCRISPR/Cas9システムを使用して内在性TCR(例えば、α/βまたはγ/δTCR)を欠失または不活性化させる。特定の態様では、例えばジンクフィンガーヌクレアーゼを使用して、CARを発現しているT細胞のT細胞受容体αβ鎖をノックアウトする。
【0029】
本明細書でさらに詳述されるように、実施形態のCAR細胞を使用して広範な疾患及び病態を治療することができる。本質的に、ある特定の抗原の高発現が生じているいかなる疾患でも、CAR細胞にかかる抗原を標的にさせることにより治療可能である。例えば、自己免疫疾患、感染、及び癌を、実施形態の方法及び/または組成物を用いて治療できる。これらには、原発性、転移性、再発性、療法感受性、療法不応性の癌(例えば、化学療法不応の癌)のような癌が含まれる。かかる癌は、血液、肺、脳、結腸、前立腺、乳房、肝臓、腎臓、胃、子宮頚部、卵巣、精巣、下垂体、食道、脾臓、皮膚、骨、及びその他(例えば、B細胞リンパ腫または黒色腫)の癌であり得る。特定の態様では、実施形態の方法は、びまん性内在性橋膠腫などの神経膠腫を治療する方法としてさらに定義される。癌治療の場合、CAR細胞は、典型的にはEGFRのような癌細胞抗原(腫瘍関連抗原(TAA)としても知られる)を標的とする。
【0030】
各種腫瘍抗原(例えば、CD19、ROR1、CD56、EGFR、CD123、c-met、GD2)に対するCAR+T細胞を製造するために(例えば、臨床試験用に)、実施形態の諸工程を使用することができる。この技術を使用して樹立したCAR+T細胞を使用して、白血病(AML、ALL、CML)、感染症及び/または固形腫瘍に罹患した患者を治療することができる。例えば、実施形態の方法を使用して細胞増殖性疾患、真菌感染症、ウイルス感染症、細菌感染症または寄生虫感染症を治療することができる。標的となり得る病原体には、限定されることなく、Plasmodium、trypanosome、Aspergillus、Candida、HSV、RSV、EBV、CMV、JCウイルス、BKウイルス、またはエボラといった病原体が挙げられる。実施形態のCAR細胞の標的となり得る抗原のさらなる例には、限定されることなく、CD19、CD20、癌胎児性抗原、αフェトプロテイン、CA-125、5T4、MUC-1、上皮腫瘍抗原、黒色腫関連抗原、変異p53、変異ras、HER2/Neu、ERBB2、葉酸結合タンパク質、HIV-1の外被糖タンパク質gp120、HIV-1の外被糖タンパク質gp41、GD2、CD123、CD23、CD30、CD56、c-Met、メソテリン、GD3、HERV-K、IL-11Rα、カッパ鎖、ラムダ鎖、CSPG4、ERBB2、EGFRvIII、またはVEGFR2が挙げられる。特定の態様では、実施形態の方法は、CD19またはHERV-Kを発現している細胞を標的にすることに関する。例えば、HERV-Kを標的とするCAR細胞は、モノクローナル抗体6H5のscFv配列を含むCARを含むことができる。さらに別の態様では、実施形態のCARを、IL-2、IL-7、IL-15、IL-21などのサイトカインまたはその組み合わせと結合または融合させることができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、CARを発現しているT細胞またはT細胞前駆細胞(例えば、標的抗原の発現レベルが高い細胞を選択的に死滅させるCAR発現T細胞)の集団から得た細胞を有効量被検体に提供する工程を含む、疾患に罹患した個体の治療方法を提供する。いくつかの態様では、細胞は1回以上(例えば、2回、3回、4回、5回またはそれ以上の回数)個体に投与され得る。さらなる態様では、細胞を少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日またはそれ以上の間隔を開けて固体に投与する。具体的な実施形態では、固体は癌、例えば、リンパ腫、白血病、非ホジキンリンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、またはB細胞関連自己免疫疾患に罹患している。
【0032】
さらなる実施形態では、EGFRに標的化した発現CARを含む単離されたトランスジェニック細胞(例えば、T細胞またはT細胞前駆細胞)を提供する。例えば、かかるCARは、Nimotuzumab(ニモツズマブ)のCDR配列を含むことができる。例えば、いくつかの態様では、実施形態の細胞は、Nimotuzumab(ニモツズマブ)の6つのCDR(配列番号5~10として提供)すべてを含むCARを含む。いくつかの態様では、CARは、配列番号1及び配列番号2の抗原結合部分を含む。さらなる態様では、CARは、配列番号1及び/または配列番号2に少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一な配列を含む。さらに別の態様では、実施形態の細胞は、Nimotuzumab(ニモツズマブ)のCDR配列を含まないCARを含む。いくつかの態様では、実施形態の単離されたトランスジェニック細胞を含む医薬組成物を提供する。さらなる関連実施形態では、EGFRに標的化した発現CARを含み、かつ配列番号5~10のCDR配列を含むトランスジェニックヒトT細胞の有効量をEGFR陽性の癌に罹患している被検体に投与することを含む、該被検体の治療方法を提供する。
【0033】
さらなる実施形態では、セツキシマブのCDR配列を含む発現CARを含む単離されたトランスジェニック細胞(例えば、T細胞またはT細胞前駆細胞)を提供する。例えば、いくつかの態様では、実施形態の細胞は、セツキシマブ(配列番号11~16として提供)の6つのCDRすべてを含むCARを含む。いくつかの態様では、CARは、配列番号3及び配列番号4の抗原結合部分を含む。さらなる態様では、CARは、配列番号3及び/または配列番号4に少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一な配列を含む。さらに別の態様では、実施形態の細胞は、セツキシマブのCDR配列を含まないCARを含む。いくつかの態様では、実施形態の単離されたトランスジェニック細胞を含む医薬組成物を提供する。さらなる関連実施形態では、EGFRに標的化した発現CARを含み、かつ配列番号11~16のCDR配列を含むトランスジェニックヒトT細胞の有効量をEGFR陽性の癌に罹患している被検体に投与することを含む、該被検体の治療方法を提供する。
【0034】
本明細書及び請求の範囲で使用する場合、「a」または「an」は、1つまたはそれ以上を意味してよい。本明細書及び請求の範囲において、語「comprising(を含む)」と併用する場合、語「a」または「an」は1つまたは1つ以上を意味してよい。本明細書及び請求の範囲で使用する場合、「another(別の)」または「a further(さらなる)」は、少なくとも第2またはそれ以上を意味してよい。
【0035】
本明細書及び請求の範囲で使用する場合、用語「about(約)」は、数値測定に使用の方法、デバイスの本質的な誤差変動、または試験の被検体間に存在する数値変動が含まれる一数値を示すために使用される。
【0036】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。しかしながら、この詳細な説明から本発明の趣旨および範囲内での多種多様な変更及び修正が当業者に明らかとなることから、詳細な説明及び具体的実施例はあくまでも例示のために記載されることを理解されるべきである。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
ある抗原を標的とする発現キメラT細胞受容体(CAR)を含む単離されたトランスジェニック細胞であって、前記CARは、前記抗原に対するKdが約5nM~約500nMである、前記単離されたトランスジェニック細胞。
(項目2)
細胞がヒト細胞である、項目1に記載の単離細胞。
(項目3)
抗原がCD19、CD20、ROR1、CD22癌胎児性抗原、αフェトプロテイン、CA-125、5T4、MUC-1、上皮腫瘍抗原、前立腺特異抗原、黒色腫関連抗原、変異p53、変異ras、HER2/Neu、葉酸結合タンパク質、HIV-1の外被糖タンパク質gp120、HIV-1の外被糖タンパク質gp41、GD2、CD123、CD33、CD138、CD23、CD30、CD56、c-Met、メソテリン、GD3、HERV-K、IL-11Rα、カッパ鎖、ラムダ鎖、CSPG4、ERBB2、EGFRvIII、VEGFR2、HER2-HER3の組み合わせまたはHER1-HER2の組み合わせである、項目1に記載の単離細胞。
(項目4)
抗原がGP240、5T4、HER1、CD-33、CD-38、VEGFR-1、VEGFR-2、CEA、FGFR3、IGFBP2、IGF-1R、BAFF-R、TACI、APRIL、Fn14、ERBB2またはERBB3である、項目3に記載の単離細胞。
(項目5)
抗原が増殖因子受容体である、項目1に記載の単離細胞。
(項目6)
抗原がEGFR、ERBB2またはERBB3である、項目5に記載の単離細胞。
(項目7)
CARが、抗原に対するKdが6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20nMまたはそれ以上である、項目1に記載の単離細胞。
(項目8)
CARが、抗原に対するKdが約5nMから約450,400,350、300,250,200,150,100、または50nMの間である、項目1に記載の単離細胞。
(項目9)
CARが、抗原に対するKdが約5nM~50nMである、項目1に記載の単離細胞。(項目10)
抗原がEGFRである、項目1に記載の単離細胞。
(項目11)
CARが、配列番号5~10のCDR配列を含む、項目1に記載の単離細胞。
(項目12)
CARが、配列番号1及び配列番号2の抗原結合部分を含む、項目1に記載の単離細胞。
(項目13)
前記CARをコードするDNAが細胞のゲノムに組み込まれている、項目1に記載の単離細胞。
(項目14)
前記CARをコードするDNAがトランスポゾン反復配列に隣接する、項目1に記載の単離細胞。
(項目15)
項目1~14のいずれか一項に記載の単離細胞を薬理学的に許容される担体内に含む、医薬組成物。
(項目16)
項目1~14のいずれか一項に記載の細胞を約1x103~1x108個含む、項目15に記載の医薬の組成物。
(項目17)
項目1に記載のトランスジェニック細胞を有効量ヒト被検者に投与することを含む、
疾患に罹患しているヒト被検者へのT細胞応答提供方法。
(項目18)
ある抗原を標的とする発現キメラT細胞受容体(CAR)を含む単離されたトランスジェニック細胞であって、前記CARがセツキシマブのCDR配列を含む,前記単離されたトランスジェニック細胞。
(項目19)
CARが配列番号3及び配列番号4の抗原結合部分を含む、項目18に記載の細胞。
(項目20)
(a)抗原に結合するCARを発現している複数のCAR T細胞を得、ここで、前記複数の細胞は、
(i)前記抗原に対する親和性の異なるCAR、または
(ii)前記細胞に異なるレベルで発現するCARを含み、
(b)前記抗原を発現している対照細胞上及び該対照細胞よりも高レベルの抗原を発現している標的細胞上で前記細胞の細胞傷害活性を評価し、かつ
(c)標的細胞に対して選択的に細胞傷害性であるCAR T細胞を選択することを含む、CAR T細胞の選択方法。
(項目21)
CAR T細胞の作製及び増幅集団のために選択されたCAR T細胞を培養することをさらに含む、項目20に記載の方法。
(項目22)
EGFRに対して標的化した発現キメラT細胞受容体(CAR)を含む単離されたトランスジェニックヒトT細胞であって、前記CARは、Nimotuzumab(ニモツズマブ)のCDR配列を含み、ここで、VL CDR1はRSSQNIVHSNGNTYLD(配列番号5)を含み、VL CDR2はKVSNRFS(配列番号6)を含み、VL
CDR3はFQYSHVPWT(配列番号7)を含み、VH CDR1はNYYIY(配列番号8)を含み、VH CDR2はGINPTSGGSNFNEKFKT(配列番号9)を含み、かつVH CDR3はQGLWFDSDGRGFDF(配列番号10)を含み、前記T細胞は、EGFRを発現している癌細胞に対する細胞傷害性を示す、前記単離されたトランスジェニックヒトT細胞。
(項目23)
項目22に記載の単離されたトランスジェニックヒトT細胞を含む医薬組成物。
(項目24)
項目22に記載のトランスジェニックヒトT細胞をEGFR陽性の癌に罹患している被検体に有効量投与することを含む、該被検体の治療方法。
(項目25)
EGFRに対して標的化した発現キメラT細胞受容体(CAR)を含む単離されたトランスジェニックヒトT細胞であって、前記CARは、セツキシマブのCDR配列を含み、ここで、VL CDR1はRASQSIGTNIH(配列番号11)を含み、VL CDR2はASEIS(配列番号12)を含み、VL CDR3はQQNNNWPTT(配列番号13)を含み、VH CDR1はNYGVH(配列番号14)を含み、VH CDR2はVIWSGGNTDYNTPFTS(配列番号15)を含み、かつVH CDR3はALTYYDYEFAY(配列番号16)を含み、前記T細胞は、EGFRを発現している癌細胞に対する細胞傷害性示す,前記単離されたトランスジェニックヒトT細胞。
(項目26)
項目25に記載の単離されたトランスジェニックヒトT細胞を含む医薬組成物。
(項目27)
項目25に記載のトランスジェニックヒトT細胞をEGFR陽性の癌に罹患している被検体に有効量投与することを含む、該被検体の治療方法。
(項目28)
(a)抗原に結合する発現CARを含むキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を培養し、ここで前記CAR T細胞は、
(i)該T細胞が抗原を多価結合した時に限定された細胞傷害活性、または
(ii)前記抗原に対するKdが約5nM~約500nMであるCARを有し、かつ
(b)前記抗原を高発現している細胞を選択的に標的にするT細胞応答を与えるために、前記培養CAR T細胞の有効量をそれを必要とする被検体に投与することを含む、前記被検体における抗原発現細胞への選択的な標的方法。
(項目29)
(a)抗原に結合する発現CARを含むキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を選択し、ここで前記CAR T細胞は、
(i)T細胞が抗原を多価結合した時に限定された細胞傷害活性、または
(ii)抗原に対するKdが約5nM~約500nMであるCARを有し、かつ
(b)前記抗原を高発現している細胞を選択的に標的にするT細胞応答を与えるために、前記選択CAR T細胞の有効量をそれを必要とする被検体に投与することを含む、前記被検体における抗原発現細胞への選択的な標的方法。
(項目30)
抗原を高発現する癌細胞を選択的に標的とするT細胞応答を提供するために、前記抗原に結合する発現CARを含むキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を有効量含む組成物を投与することを含み、前記CAR T細胞は、
(i)T細胞が抗原を多価結合した時に限定された細胞傷害活性、または
(ii)抗原に対するKdが約5nM~約500nMであるCARを有する、それを必要としている被検体の癌の治療方法。
(項目31)
抗原がCD19、CD20、ROR1、CD22癌胎児性抗原、αフェトプロテイン、CA-125、5T4、MUC-1、上皮腫瘍抗原、前立腺特異抗原、黒色腫関連抗原、変異p53、変異ras、HER2/Neu、葉酸結合タンパク質、HIV-1の外被糖タンパク質gp120、HIV-1の外被糖タンパク質gp41、GD2、CD123、CD33、CD138、CD23、CD30、CD56、c-Met、メソテリン、GD3、HERV-K、IL-11Rα、カッパ鎖、ラムダ鎖、CSPG4、ERBB2、EGFRvIII、VEGFR2、HER2-HER3の組み合わせまたはHER1-HER2の組み合わせである、項目28~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
抗原がGP240、5T4、HER1、CD-33、CD-38、VEGFR-1、VEGFR-2、CEA、FGFR3、IGFBP2、IGF-1R、BAFF-R、TACI、APRIL、Fn14、ERBB2またはERBB3である、項目30に記載の方法。
(項目33)
抗原が増殖因子受容体である、項目28~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
抗原がEGFR、ERBB2またはERBB3である、項目33に記載の方法。
(項目35)
抗原を発現している細胞が、該抗原を発現する非癌細胞及び該抗原を高発現している癌細胞を含む、項目28または29のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
CARが、抗原に対するKdが6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20nMまたはそれ以上である、項目28~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
CARが、抗原に対するKdが約5nMから約450,400,350、300,250,200,150,100、または50nMまでの間である、項目28~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
CARが、抗原に対するKdが約5nM~50nMである、項目28~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
抗原がEGFRである、項目28~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
CARが、Nimotuzumab(ニモツズマブ)のCDR配列を含む、項目39に記載の方法。
(項目41)
CARが、配列番号1及び配列番号2の抗原結合部分を含む、項目40に記載の方法。(項目42)
選択または培養されたCAR T細胞が、内在性T細胞受容体及び/または内在性HLAの発現について不活性化される、項目28~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
選択または培養されたCAR T細胞が、膜結合型Cγサイトカインをコードする発現させた核酸をさらに含む、項目28~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
膜結合型Cγサイトカインが膜結合型のIL-7、IL-15またはIL-21である、項目43に記載の方法。
(項目45)
膜結合型CγサイトカインがIL-15-IL-15Rα融合タンパク質である、項目43に記載の方法。
(項目46)
選択または培養されたCAR T細胞が、前記CARをコードする組み込まれたDNAを含む、項目28~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
選択または培養されたCAR T細胞が、前記CARをコードする外因性のmRNAを含む、項目28~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記CARをコードする組み込まれたDNAがトランスポゾン反復配列に隣接する、項目46に記載の方法。
(項目49)
CAR T細胞の選択または培養が、T細胞またはT細胞前駆細胞に、抗原に対するKdが約5nM~約500nMである選択CARをコードするDNAをトランスフェクトすることをさらに含む、項目28~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
細胞に、トランスポゾン反復配列に隣接する前記選択または培養されたCARをコードするDNAと、前記選択または培養されたCARをコードする前記DNAを前記細胞のゲノムに組み込むために効果的なトランスポザーゼとをトランスフェクトすることをさらに含む、項目49に記載の方法。
(項目51)
トランスポザーゼが、mRNAとして提供される、項目50に記載の方法。
(項目52)
トランスポザーゼが、ポリペプチドまたは発現可能なRNAとして提供される、項目50に記載の方法。
(項目53)
トランスポザーゼがサケ科のTc1様トランスポザーゼ(SB)である、項目50に記載の方法。
(項目54)
CAR T細胞の培養または選択が、抗原提示細胞の存在下でCAR T細胞を培養することを含む、項目28に記載の方法。
(項目55)
抗原提示細胞が樹状細胞を含む、項目28に記載の方法。
(項目56)
抗原提示細胞が、CAR T細胞の増幅を刺激する人工抗原提示細胞(aAPC)を含む、項目28に記載の方法。
(項目57)
aAPCがトランスジェニックK562細胞である、項目56に記載の方法。
(項目58)
aAPCが、該aAPCの表面に発現させた、(i)前記トランスジェニックCAR細胞上に発現させた前記CARに標的にされる抗原、(ii)CD64、(ii)CD86、(iii)CD137L、及び/または(v)膜結合型IL-15を含む、項目56に記載の方法。
(項目59)
aAPCが、該aAPCの表面に発現させたCAR結合抗体またはその断片を含む、項目56に記載の方法。
(項目60)
aAPCが、T細胞を活性化するまたは共刺激するさらなる分子を含む、項目56に記載の方法。
(項目61)
さらなる分子が膜結合型Cγサイトカインを含む、項目60に記載の方法。
(項目62)
抗原提示細胞を不活性化させる、項目54に記載の方法。
(項目63)
抗原提示細胞が照射される、項目62に記載の方法。
(項目64)
抗原提示細胞を、感染性物質について試験し、また、感染性物質を含まないことを確認した、項目54に記載の方法。
(項目65)
抗原提示細胞存在下でのCAR T細胞培養が、IL-21及び/またはIL-2を含む培地で前記トランスジェニックCAR細胞を培養することを含む、項目54に記載の方法。
(項目66)
抗原提示細胞存在下でのCAR T細胞培養が、前記細胞を約10:1~約1:10(CAR T細胞:抗原提示細胞)の比で培養することを含む、項目54に記載の方法。
(項目67)
トランスジェニック細胞の培養が7、14、21、28、35または42日以内の期間である、項目28に記載の方法。
(項目68)
T細胞またはT細胞前駆細胞を細胞バンクから入手する、項目49に記載の方法。
(項目69)
T細胞またはT細胞前駆細胞を被検体試料から得る、項目49に記載の方法。
(項目70)
試料が単核球画分である、項目69に記載の方法。
(項目71)
試料が凍結保存試料である、項目69に記載の方法。
(項目72)
試料が臍帯血由来である、項目69に記載の方法。
(項目73)
試料が被検体由来の末梢血試料である、項目69に記載の方法。
(項目74)
試料がT細胞の亜集団である、項目69に記載の方法。
(項目75)
T細胞またはT細胞前駆細胞のトランスフェクションが、選択されたCARをコードするDNAを前記細胞に電気穿孔することを含む、項目49に記載の方法。
(項目76)
T細胞またはT細胞前駆細胞のトランスフェクションが、前記選択されたCARをコードするウイルスベクターを用いて前記細胞に形質導入することを含む、項目49に記載の方法。
(項目77)
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞の選択または培養が、前記投与前にCAR T細胞を精製または濃縮することをさらに含む、項目28~30のいずれか一項に記載の方法。(項目78)
濃縮が蛍光活性化細胞分類(FACS)を含む、項目77に記載の方法。
(項目79)
濃縮が、選択されたCAR T細胞について選別することを含む、項目77に記載の方法。
(項目80)
濃縮が、選択されたCAR T細胞について常磁性ビーズ上で選別することを含む、項目77に記載の方法。
(項目81)
CAR発現細胞についての選別がCAR結合抗体の使用を含む、項目79に記載の方法。
(項目82)
濃縮が、CD56+細胞の除去を含む、項目77に記載の方法。
(項目83)
前記投与前に前記CAR T細胞試料を凍結保存することをさらに含む、項目28~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目84)
被検体が細胞増殖性疾患に罹患している、項目28に記載の方法。
(項目85)
細胞増殖性疾患が自己免疫疾患であり、ここで、前記CARは、自己免疫細胞に高レベルで発現している抗原に結合する、項目84に記載の方法。
(項目86)
細胞増殖性疾患が癌である、項目84に記載の方法。
(項目87)
被検体がそれまでに抗癌治療を受けたことがある、項目30に記載の方法。
(項目88)
被検体が寛解期にある、項目87に記載の方法。
(項目89)
被検体が、癌の症状はないが検出可能な癌細胞を含む、項目87に記載の方法。
(項目90)
癌が神経膠腫である、項目86に記載の方法。
(項目91)
神経膠腫がびまん性内在性橋膠腫である、項目90に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】抗CD3搭載人工抗原提示細胞を用いたヒト初代T細胞の細胞数増幅。(A)抗CD3(OKT3)を発現させるためK562の表現型のクローン4を搭載し、100グレイまで照射しフローサイトメトリーで測定した。(B)低密度のOKT3搭載aAPC(T細胞:aAPC=10:1)または高密度のOKT3搭載K562(T細胞:aAPC=1:2)を用いた刺激後のCD3
+T細胞の細胞数増幅。刺激サイクル後の倍増幅を刺激サイクル前の総T細胞数にかけて計算した推定細胞数。データは平均±SDとして表される、n=6、
****p<0.0001、両側ANOVA(テューキー(Tukey)の多重比較検定)。
【
図2】低密度aAPCで増幅したT細胞はCD8
+T細胞を高比率で含有する。(A)2回の刺激サイクル後にフローサイトメトリーで測定したところ、低密度aAPCと共に増幅させたT細胞(T細胞:aAPC=10:1)は、高密度aAPCと共に増幅させたT細胞(T細胞:aAPC=1:2)よりも、有意に多いCD8
+T細胞及び有意に少ないCD4
+T細胞を含有する。データは平均として表される、n=6、
***p<0.001、
****p<0.0001、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。(B)低密度aAPCで増幅させたT細胞及び高密度aAPCで増幅させたT細胞のCD4/CD8比における差は、低密度aAPCで増幅させた場合にCD4
+T細胞の倍増幅(fold expansion)が低いことによるものである。データは平均±SDとして表される、n=6、
****p<0.0001、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。(C)低密度aAPCで増幅させたT細胞及び高密度aAPCで増幅させたT細胞のCD4/CD8比の差は、細胞生存率の差によるものではない。細胞の生存率は、アネキシンV
negPI
neg細胞を生細胞とみなす刺激サイクルを2回行った後の、アネキシンV及びPI染色のフローサイトメトリーにより測定した。データは平均±SDとして表される(n=3)。(D)CD4
+T細胞は、高密度aAPCで刺激した場合より低密度aAPCで刺激した場合の方が増殖は少なかった。2回の刺激サイクル後、細胞増殖マーカーKi-67を細胞内フローサイトメトリーにより測定した。別々の3ドナーから得た代表的ヒストグラムを示す。
【
図3】低密度または高密度aAPCで刺激したT細胞における差次的遺伝子発現。2サイクルの刺激の後に、mRNA種の多重デジタルプロファイリング(multiplexed digital profiling)で測定した場合の、低密度aAPCまたは高密度aAPCで刺激されたCD4
+T細胞とCD8
+T細胞の差次的遺伝子発現。有意な上方制御または下方制御を受けた転写を、2/3ドナーの転写レベルの倍差1.5超及びp<0.01により決定した。データは倍差のヒートマップにより表される、n=3。
【
図4】低密度aAPCで増幅させたT細胞の方がセントラルメモリー表現型のT細胞が多い。(A)低密度または高密度aAPCで増幅させたT細胞のメモリーのマーカーについて、刺激2サイクルの後、CCR7及びCD45RAについてフローサイトメトリーで測定し解析した。ゲーティングしたCD4
+及びCD8
+T細胞集団の細胞集団を以下のとおり定義した:エフェクターメモリー=CCR7
negCD45RA
neg、セントラルメモリー=CCR7
+CD45RA
neg、ナイーブ=CCR7
+CD45RA
+、エフェクターメモリーRA=CCR7
negCD45RA
+。データは平均±SDとして表される(n=3)、
*p<0.05、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。(B)T細胞のグランザイム及びパーフォリンの細胞内染色について、CD4
+及びCD8
+でゲーティングしたT細胞集団で2回の刺激サイクルの後、フローサイトメトリーにより測定した。データは平均±SDとして表される(n=3)、
*p<0.05、
***p<0.001、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。(C)PMA/イオノマイシン刺激後のサイトカイン産生について、CD4
+及びCD8
+でゲーティングしたT細胞集団で2サイクルの刺激の後、T細胞の細胞内サイトカイン染色を行いフローサイトメトリーにより測定した。データは平均±SDとして表される(n=3)、
*p<0.05、
***p<0.001、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。
【
図5】aAPCでT細胞数増幅後のTCR Vαの多様性。低密度または高密度aAPCで増幅させたT細胞のTCR Vαの多様性について、mRNA種のデジタル多重プロファイリング(digital multiplexed profiling)により測定し、各TCR Vαの相対存在量を、総TCR Vα転写量のパーセントとして計算した。データは平均±SDとして表される(n=3)。
【
図6】aAPCでT細胞数増幅後のTCR Vβの多様性。低密度または高密度aAPCで増幅させたT細胞のTCR Vβの多様性を選別したCD4
+T細胞及びCD8
+T細胞においてmRNA種のデジタル多重プロファイリング(digital multiplexed profiling)により測定し、各TCR Vαの相対存在量を、総TCR Vα転写量のパーセントとして計算した。データは平均±SDとして表される(n=3)。
【
図7】aAPCで細胞数増幅後のCDR3配列の多様性。TCR Vβ鎖のCDR3配列を、ImmunoSEQプラットフォームでのハイスループット・シーケンス(high-throughput sequences)により決定した。細胞数増幅前の固有配列それぞれの数を、低密度aAPC(T細胞:aAPC=10:1)または高密度(T細胞:aAPC=1:2)aAPCで細胞数増幅した後の同一配列の数に対してプロットした。データを線形回帰にあてはめ、傾きを測定した。別個の2ドナーの代表的データ。
【
図8】aAPCで細胞数を増幅させたT細胞へのRNAの移入の最適化。(A)aAPCで増幅後にさまざまなプログラムで電気穿孔したT細胞のGFP RNA発現及び生存率。GFPの蛍光強度中央値をフローサイトメトリーにより測定した。生存率をPI染色及びフローサイトメトリーにより測定した。別個の2ドナーの代表的データ。(B)1サイクル、2サイクルまたは3サイクルの刺激の後、aAPC低密度(T細胞:aAPC=10:1)で増幅させたT細胞のGFP RNA発現及び生存率。GFPを発現しているT細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーにより測定した。生存率をPI染色及びフローサイトメトリーにより測定した。別個の2ドナーの代表的データ。(C)さまざまなプログラムを用いた電気穿孔法の後、aAPC1細胞に対しT細胞10細胞のaAPC密度での刺激を2サイクル行ったT細胞のGFP RNA発現及び生存率。GFPを発現しているT細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーにより測定した。生存率をPI染色及びフローサイトメトリーにより測定した。別個の2ドナーの代表的データ。(D)aAPC1細胞に対しT細胞10細胞のaAPC密度での刺激を2サイクル、CD4
+及びCD8
+でゲーティングしたT細胞で、RNAを用いないmock電気穿孔、及びRNAを用いた電気穿孔をそれぞれ行った後に、フローサイトメトリーで測定したメモリーマーカーCCR7及びCD45RAの発現。データは平均±SDとして表される(n=3)。
【
図9】DNA及びRNA修飾によるCAR発現の概略。(A)SBトランスポゾン/トランスポザーゼを用いた電気穿孔法によるT細胞のDNA修飾。正常ドナーのPBMCにCAR含有SBトランスポゾン及びSB11トランスポザーゼで電気穿孔を行い、T細胞の一部に安定なCAR発現を生じさせる。IL-21(30ng/mL)及びIL-2(50U/mL)の存在下、γ照射された抗原を発現しているaAPCで刺激することによりCAR
+T細胞が経時的に選別されていき、5サイクルの刺激の後CAR
+T細胞は結果的に85%を超える。次いで、CAR介在性機能についてT細胞を評価する。(B)RNA電気泳動転写によるT細胞の修飾。正常ドナーのPBMCを、γ照射した抗CD3(OKT3)搭載K562クローン4aAPCで刺激する。第2の刺激から3~5日後、T細胞をRNAと共に電気穿孔し、RNA電気泳動転写後24時間のCAR
+T細胞は95%を超える。次いで、CAR介在性機能についてT細胞を評価する。
【
図10】DNA及びRNAの修飾を受けたCetux-CAR
+T細胞の表現型。(A)CD4
+及びCD8
+でゲーティングしたT細胞集団における、CARのIgG領域についてフローサイトメトリーを行って測定した、RNA修飾T細胞及びDNA修飾T細胞のCAR発現の蛍光強度中央値。データは平均±SDとして表される(n=8)。(B)CAR
+でゲーティングしたT細胞における、CD4及びCD8についてフローサイトメトリーを行って測定した、RNA修飾T細胞及びDNA修飾T細胞のCD4
+及びCD8
+T細胞集団の割合。データは平均±SDとして表される(n=8)。(C)フローサイトメトリーにより測定した、CD4
+及びCD8
+でゲーティングしたT細胞集団におけるメモリーマーカーCCR7及びCD45RAの発現。メモリー集団を以下のとおり定義した:エフェクターメモリー=CCR7
negCD45RA
neg、セントラルメモリー=CCR7
+CD45RA
neg、ナイーブ=CCR7
+CD45RA
+、エフェクターメモリーRA=CCR7
negCD45RA
+。データは平均±SDとして表される(n=3)、
****p<0.0001、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。(D)CD4
+及びCD8
+でゲーティングしたT細胞集団でフローサイトメトリーにより測定した、抑制受容体PD-1及び細胞老化マーカーCD57の発現。データは平均±SDとして表される(n=3)、
**p<0.01、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。(E)CD4
+及びCD8
+でゲーティングしたT細胞集団に細胞内サイトカイン染色を行いフローサイトメトリーにより測定した、グランザイムB及びパーフォリンの発現。データは平均±SDとして表される(n=3)。
【
図11】DNA修飾CAR
+T細胞は、RNA修飾CAR
+T細胞より多くのサイトカインを産生し、わずかに高い細胞傷害性を表す。(A)CD8
+でゲーティングしたT細胞において、DNA修飾CAR
+T細胞(5サイクルの刺激後)及びRNA修飾CAR
+T細胞(RNA移入から24時間後)のサイトカイン産生について、標的またはPMA/イオノマイシンと共に4時間インキュベーションした後に細胞内染色及びフローサイトメトリーを行い測定した。データは平均±SDとして表される(n=3)、
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、
****p<0.0001、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。(B)DNA修飾CAR
+-T細胞(5サイクルの刺激後)及びRNA修飾CAR
+-T細胞(RNA移入から24時間後)の特異的細胞傷害性について、標準的4時間クロム遊離アッセイにより測定した。データは平均±SDとして表される(n=3)、
*p<0.05、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。(C)エフェクター:標的=10:1の比でCARの蛍光強度中央値に対してプロットした、RNA修飾CAR
+T細胞によるA431の特異的細胞傷害性。データに線形回帰をあてはめたところ、傾きは、傾き=0.0237±0.030となり、傾き0との有意差なく、p=0.4798であった。
【
図12】T細胞のRNA修飾によるCetux-CARの一過性発現。(A)T細胞にサイトカインまたは刺激を全く加えずに、CARのIgG部分についてフローサイトメトリーを行いCAR発現を毎日測定した。別個の3ドナーの代表的データ。(B)RNAの移入から24時間後にIL-2(50U/mL)及びIL-21(30ng/mL)を付加してから、CARのIgG部分についてフローサイトメトリーを行ってCAR発現を毎日測定した。別個の3ドナーの代表的データ。(C)RNAの移入から24時間後にtEGFR
+EL4細胞を付加してから、CARのIgG部分についてフローサイトメトリーを行ってCARの発現を毎日測定した。別個の3ドナーの代表的データ。
【
図13】RNA修飾によるCetux-CARの一過性発現により、サイトカイン産生及びEGFR発現細胞に対する細胞傷害性が低下する。(A)DNA修飾CD8
+T細胞及びRNA修飾CD8
+T細胞において、標的細胞またはPMA/イオノマイシンとの4時間のインキュベーション後のRNA移入から24時間後及び120時間後に細胞内染色及びフローサイトメトリーで測定したIFN-γ産生。データは平均±SDとして表される(n=3)、
*p<0.05、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。(B)RNA移入から24時間後及び120時間後に標準的クロム遊離アッセイで測定したDNA修飾T細胞及びRNA修飾T細胞の特異的細胞傷害性。データは平均±SDとして表される(n=3)、
*p<0.05、
**p<0.01、
****p<0.0001、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。(C)エフェクターと標的との比10:1の標準的クロム遊離アッセイで測定した、RNA移入後24時間からRNA移入後120時間までの、DNA修飾T細胞及びRNA修飾T細胞の特異的細胞傷害性の変化。データは平均±SDとして表される(n=3)、
*p<0.05、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。
【
図14】Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞の細胞数増幅。(A)フローサイトメトリーで測定したγ照射tEGFR
+K562クローン27の表現型。(B)Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞の細胞数増幅。各刺激サイクルに先立ち、CD3
+CAR
+T細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーにより測定した。刺激サイクル後の倍増幅(fold expansion)と刺激を与えられたCAR
+T細胞数とを乗算して推定細胞数を計算した。データは平均±SDとして表される(n=7)。(C)CAR電気穿孔から24時間後、及び増幅から28日後、CARのIgG部分についてフローサイトメトリーを行いCD3
+T細胞のCAR発現を測定した。データは平均として表される(n=7)。(D)増幅から28日後、CARのIgG部分についてフローサイトメトリーを行いCAR発現の蛍光強度中央値を測定した。データは平均±SDとして表される(n=7)。
【
図15】Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞は、表現型が類似している。(A)ゲーティングしたCD3
+CAR
+細胞でフローサイトメトリーにより測定した、増幅から28日後の総T細胞集団におけるCD4及びCD8T細胞の割合。データは平均±SDとして表される(n=7)。(B、C)ゲーティングしたCD4
+及びCD8
+ T細胞集団でフローサイトメトリーにより測定した、T細胞増幅28日後のT細胞メモリー及び分化マーカーの発現。データは平均±SDとして表される(n=4)。
【
図16】Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞は、親和性とは独立したCAR誘発を介して同等に活性化される。(A)EGFR遮断モノクローナル抗体存在下におけるEGFR
+A431に応答したIFN-γの産生。CAR
+T細胞を、抗EGFR遮断抗体またはアイソタイプ・コントロールを用いてA431と共培養し、IFN-γ産生を細胞内フローサイトメトリーにより測定した。産生パーセントを、ゲーティングしたCD8
+T細胞におけるIFN-γの平均蛍光強度として計算し、遮断していないCD8
+T細胞と比べた。データは平均±SDとして表される(n=3)、
***p<0.001、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。(B)抗原陰性細胞株と比べた、EL4細胞でのtEGFR(パネル・上)発現及びCAR-L(パネル・下)発現の代表的ヒストグラム。EGFR発現量(density)を定量フローサイトメトリーで測定した。(C)CD19
+、tEGFR
+、またはCARL
+EL4細胞との共培養後に細胞内染色及びフローサイトメトリーにより測定した、ゲーティングしたCD8
+CAR
+T細胞によるIFN-γの産生。データは平均±SDとして表される(n=4)、
**p<0.01、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。(D)CD19
+、EGFR
+、またはCARL
+EL4細胞との共培養の30分後、phosflowサイトメトリーで測定した、ゲーティングしたCD8
+CAR
+T細胞のp38及びErk1/2のリン酸化。データは平均±SDとして表される(n=2)、
*p<0.05、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。(E)標準的4時間クロム遊離アッセイにより測定したCD19
+、EGFR
+及びCARL
+EL4細胞の特異的溶解。データは平均±SDとして表される(n=4)、
****p<0.0001、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。(F)長時間共培養におけるEL4細胞に対するT細胞の相対的割合。種交差反応性のない抗体を用い、ヒト及びマウスそれぞれのCD3についてフローサイトメトリーで測定した、EL4細胞に対するT細胞含有共培養物の割合。データは平均±SDとして表される(n=4)、
**p<0.01、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。
【
図17】Nimo CAR T細胞の活性化及び機能的応答はEGFR発現の密度に影響される。A)フローサイトメトリーで測定した、A431、T98G、LN18、U87及びNALM-6細胞株でのEGFR発現の代表的ヒストグラム。定量フローサイトメトリーで測定した細胞あたりの分子数。複製3試料の代表的データ。B)CD8
+細胞にゲートをかけた細胞内フローサイトメトリーで測定した、A431、T98G、LN18、U87及びNALM-6細胞株との共培養に応答した、CD8
+CAR
+T細胞によるIFN-γの産生。データは平均±SDとして表される(n=4)、
***p<0.001、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。C)標準的4時間クロム遊離アッセイで測定した、CAR
+T細胞によるA431、T98G、LN18、U87及びNALM-6の特異的溶解。データは平均±SDとして表される(n=4)、
****p<0.0001、
**p<0.01、
*p<0.05、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。
【
図18】Nimo-CAR
+T細胞の機能の活性化は、EGFR発現密度と直接的かつ正の相関を示す。(A)U87由来の腫瘍細胞株4系列(U87、U87low、U87med、及びU87high)でフローサイトメトリーにより測定したEGFR発現の代表的ヒストグラム。定量フローサイトメトリーで測定した細胞あたりの分子数。三連の実験の代表的データ。(B)U87またはU87highとの5分、45分、及び120分の共培養後にphosflowサイトメトリーで測定した、ゲーティングしたCD8
+T細胞におけるErk1/2及びp38のリン酸化。データは平均蛍光強度±SDとして表される(n=2)。(C)ゲーティングしたCD8
+T細胞において、EGFRレベルを漸増したU87細胞株との45分の共培養後にphosflowサイトメトリーで測定した、Erk1/2及びp38MAPキナーゼファミリーメンバーのリン酸化。データは平均蛍光強度±SDとして表される(n=4)、
****p<0.0001、
***p<0.001、
**p<0.01、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。(D)細胞内染色及びフローサイトメトリーで測定した、EGFRレベルを漸増したU87細胞株との共培養に応答して、ゲーティングしたCD8
+CAR
+T細胞による産生されたIFN-γ及びTNF-α。データは平均±SDとして表される(n=4)、
****p<0.0001、
***p<0.001、
**p<0.01、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。(E)標準的4時間クロム遊離アッセイで測定した、CAR
+T細胞による、EGFRレベルを漸増したU87細胞株の特異的溶解。データは平均±SDとして表される(n=5)、
****p<0.0001、
**p<0.01、
*p<0.05、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。
【
図19】相互作用時間を延長してもEGFR低密度に応答したNimo-CAR
+T細胞の機能が回復・(問題を)解消するすることはない。(A)CD8
+ゲーティングした細胞において、種々のインキュベーション時間の後にU87またはU87highで刺激後に、細胞内染色及びフローサイトメトリーによりIFN-γ産生を測定した。データは平均±SDとして表される(n=3)。(B)Cetux-CAR
+またはNimo-CAR
+T細胞との共培養後に残ったU87及びU87highの細胞量。U87細胞株とCAR
+T細胞とを、エフェクター:ターゲット比1:5で3連で共培養した。懸濁T細胞を接着標的細胞から分離し、接着画分をトリパンブルー色素排除法で計数した。生存パーセントを、[共培養後の回収細胞数]/[T細胞を含めない細胞数]
*100として計算した。データは平均±SDとして表される(n=3)、
***p<0.001、両側ANOVA(テューキーの事後検定)
【
図20】T細胞表面のCAR密度を高めても、低密度EGFRに対するNimo-CAR
+T細胞の感受性は回復・(問題を)解消されない。A)SB系を介したRNA移入及び従来のDNA電気穿孔法により修飾されたT細胞におけるCAR発現の代表的ヒストグラム。2つの独立した実験の代表的データ。B)RNA電気泳動転写によりCARを過剰発現しているT細胞における、低抗原密度及び高抗原密度に応答したIFN-γの産生。U87またはU87high標的細胞で刺激後、CD8
+ゲーティングした細胞の細胞内フローサイトメトリーによりIFN-γ産生を測定した。データは平均±SDとして表される(n=2)。
【
図21】Nimo-CAR
+T細胞では、正常な腎上皮細胞の基礎EGFRレベルに応答した活性はCetux-CAR
+T細胞より少ない。(A)フローサイトメトリーで測定したHRCE上のEGFR発現の代表的ヒストグラム。定量フローサイトメトリーで測定した細胞あたりの分子数。複製3試料の代表的データ。(B)細胞内染色及びCD8
+細胞にゲーティングしたフローサイトメトリーで測定した、HRCEとの共培養に応答してCD8
+CAR
+T細胞により産生されたIFN-γ及びTNF-α。データは平均±SDとして表される(n=4)、
**p<0.01、
*p<0.05、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。(C)標準的4時間クロム遊離アッセイで測定したCAR
+T細胞によるHRCEの特異的溶解。データは平均±SDとして表される(n=3)、
****p<0.0001、
***p<0.001、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。
【
図22】刺激後、Cetux-CAR
+T細胞はNimo-CAR
+T細胞ほど増殖しないが、AICDに対する高い傾向は示さない。(A)CD8
+細胞にゲーティングしたKi-67についての細胞内フローサイトメトリーで測定した、U87またはU87highでの刺激後のCD8
+CAR
+T細胞の増殖。データは平均蛍光強度±SDとして表される(n=4)、
**p<0.01、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。(B)CD8
+細胞にゲーティングしたアネキシンV及び7-AADについてのフローサイトメトリーで測定した、U87またはU87highで刺激後のT細胞の生存率。アネキシンV
neg7-AAD
negパーセントにより測定した生細胞パーセント。データは平均±SDとして表される(n=4)、
***p<0.001、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。
【
図23】Cetux-CAR
+T細胞は、CARの優れた下方制御を示す。(A)CARのIgG部分についてのフローサイトメトリーで測定した、U87またはU87highとの共培養(E:T=1:5)中のCARの表面発現。[共培養中の%CAR
+]/[未刺激培養中の%CAR
+]×100として計算した残存CARパーセント。データは平均±SDとして表される(n=3)、
**p<0.01。
*p<0.05、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。(B)CD8
+でゲーティングしたT細胞において、U87またはU87highとの24時間の共培養後にフローサイトメトリーにより測定した、細胞内及び表面のCAR発現の代表的ヒストグラム。別個の3ドナーの代表的データ。(C)CARのFc部分についてのフローサイトメトリーで測定した、EGFR
+EL4またはCAR-L
+EL4との共培養(E:T=1:1)中のCARの表面発現。[共培養中の%CAR
+]/[未刺激培養中の%CAR
+]×100として計算した残存CARパーセント。データは平均として表される(n=2)、
*p<0.05、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。
【
図24】Cetux-CAR
+T細胞は抗原での再惹起に対する応答は低い。U87またはU87highと共に24時間インキュベーションの後、CAR
+T細胞をU87またはU87highで再惹起し、CAR
+T細胞のIFN-γ産生を、細胞内染色及びCD8
+細胞にゲーティングしたフローサイトメトリーで測定した。データは平均±SDとして表される(n=3)、
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05、両側ANOVA(テューキーの事後検定)。
【
図25】動物モデル及び処置スケジュールの概略。(A)ガイドスクリュー留置の概略。右前頭葉の、冠状縫合から1-mm、及び矢状縫合から2.5mmの場所にガイドスクリュー挿入用に1mmの穴をドリルで開ける。(B)処置スケジュールのタイムライン。ガイドスクリューをマウスの右前頭葉内に移植し、14日以上置いてから腫瘍注入を行い、その日を試験第0日とする。T細胞処置開始の1日前に腫瘍をBLIで撮像した。CAR
+T細胞を、ガイドスクリューを介して頭蓋内に週1回3週間投与した。マウスに能動的処置を行っている間はT細胞処置の前後に、その後の残りの実験期間中は毎週、腫瘍増殖をBLIにより評価した。
【
図26】T細胞処置に先立つU87med及びCAR
+ T細胞表現型の生着。(A)腫瘍注入から4日後、D-ルシフェリン注射及び10分間インキュベーションを行ってから腫瘍をBLIで撮像した。(B)4日目のBLIフラックス測定値で決定した相対腫瘍量が均等に配分されるようマウスを3群に分けた。(C)4サイクルの刺激で増幅されたCetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞を、CAR発現及びCD4/CD8比についてフローサイトメトリーで評価した。
【
図27】Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞は頭蓋内U87med異種移植片の増殖を阻害する。(A)連続BLIにより腫瘍の相対的な大きさを評価した。(B)腫瘍の連続BLIにより評価した相対的腫瘍増殖。バックグラウンドの発光(グレーの陰影)は、腫瘍がないマウスのBLIとした。18日目、両側ANOVA(サイダック(登録商標)(Sidak)の多重比較検定)で、未処置マウスとCetux-CAR
+T細胞(n=7、p<0.01)処置マウス(n=7)との間、及び未処置(n=7)とNimo-CAR
+T細胞(n=7、p<0.05)処置との間のBLIに有意な差がある。
【
図28】Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞の処置を受けた頭蓋内U87med異種移植片担持マウスの生存期間。(A)T細胞処置7日以内の独立した2つの実験に由来する頭蓋内U87med-ffLuc-mKate異種移植片のあるマウスの生存期間。マンテル・コックス・ログランク(Mantel-Cox log-rank)検定により測定した(p=0.0006)、未処置マウス(14/14生存)に対するCetux-CAR
+T細胞処置マウス(8/14生存)の生存期間の有意な低下。(B)未処置、Cetux-CAR+T細胞処置またはNimo-CAR
+T細胞処置を受けた頭蓋内U87med-ffLuc-mKate異種移植片のあるマウスの生存期間。マンテル・コックス・ログランク検定により測定した(p=0.0269)、Nimo-CAR
+T細胞処置群の有意な生存延長。
【
図29】T細胞処置に先立つU87及びCAR
+ T細胞表現型の生着。(A)腫瘍注入から4日後、D-ルシフェリン注射及び10分間インキュベーションを行ってから腫瘍をBLIで撮像した。(B)4日目のBLIフラックス測定値で決定した相対腫瘍量が均等に配分されるようマウスを3群に分けた。(C)4サイクルの刺激で増幅されたCetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞を、CAR発現及びCD4/CD8比についてフローサイトメトリーで評価した。
【
図30】頭蓋内U87異種移植片の増殖をCetux-CAR
+は阻害するが、Nimo-CAR
+T細胞はしない。(A)連続BLIにより腫瘍の相対的な大きさを評価した。(B)腫瘍の連続BLIにより評価した相対的腫瘍増殖。25日目、両側ANOVA(サイダック(登録商標)の事後検定)による、未処置マウスとCetux-CAR
+T細胞(n=6、p<0.01)処置マウス(n=6)間に見られるBLIでの有意差。
【
図31】Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞の処置を受けた頭蓋内U87異種移植片担持マウスの生存期間。未処置、Cetux-CAR
+T細胞処置またはNimo-CAR
+T細胞処置を受けた頭蓋内U87-ffLuc-mKate異種移植片のあるマウスの生存期間。マンテル・コックス・ログランク検定により測定した(p=0.0150)、Cetux-CAR
+T細胞処置群の有意な生存延長。
【
図32】CAR
+T細胞治療用の抗原レパトアを安全に増幅させるための戦略の概要。戦略は3つのカテゴリーに大別される。すなわち、(i)薬物誘導性自殺または一過性のCAR発現により、CAR発現を制限する、(ii)発現を低酸素領域に制限するか、またはホーミング受容体を共発現させることにより、CARを腫瘍部位に対して標的化させる、及び(iii)腫瘍認識に抗原が2つ必要にさせるためのシグナル分断、正常組織への活性化を防ぐための抑制性CARの発現、または高い抗原密度により条件付きで活性化されたCARの発現により、CAR活性化を制限するという戦略である。
【
図33】構築プラスミドのベクターマップ。(A)セツキシマブ由来CARトランスポゾン。以下のとおり注釈を付す。HEF-1α/p:ヒト伸長因子-1αプロモーター;BGH:ウシ成長ホルモンのポリアデニル化配列;IR/DR:逆向き反復配列/順方向反復配列;ColE1:E.coliの最小複製起点;Kan/R:カナマイシン耐性用遺伝子;Kan/p:カナマイシン耐性遺伝子プロモーター。(B)Nimotuzumab(ニモツズマブ)由来CARトランスポゾン。以下のとおり注釈を付す。HEF-1α/p:ヒト伸長因子-1αプロモーター;BGH:ウシ成長ホルモンのポリアデニル化配列;IR/DR:逆向き反復配列/順方向反復配列;ColE1:E.coliの最小複製起点;Kan/R:カナマイシン耐性用遺伝子;Kan/p:カナマイシン耐性遺伝子プロモーター.(C)セツキシマブ由来CAR/pGEM-A64プラスミド。以下のとおり注釈を付す。amp/R:アンピシリン耐性遺伝子、SpeI:直鎖化用の制限部位。(D)Nimotuzumab(ニモツズマブ)由来CAR/pGEM-A64プラスミド。以下のとおり注釈を付す。amp/R:アンピシリン耐性遺伝子、SpeI:直鎖化用の制限部位。(E)tEGFR-F2A-Neoトランスポゾン。以下のとおり注釈を付す。HEF-1α/p:ヒト伸長因子-1αプロモーター;BGH:ウシ成長ホルモンのポリアデニル化配列;F2A:自己分解型ペプチドF2A;Neo/r:ネオマイシン耐性用遺伝子;IR/DR:逆向き反復配列/順方向反復配列;ColE1:E.coliの最小複製起点;Kan/R:カナマイシン耐性用遺伝子;Kan/p:カナマイシン耐性遺伝子プロモーター。(F)CAR-Lトランスポゾン。以下のとおり注釈を付す。HEF-1α/p:ヒト伸長因子-1αプロモーター;Zeocin R:ゼオマイシン耐性用遺伝子;BGH:ウシ成長ホルモンのポリアデニル化配列;IR/DR:逆向き反復配列/順方向反復配列;ColE1:E.coliの最小複製起点;Kan/R:カナマイシン耐性用遺伝子;Kan/p:カナマイシン耐性遺伝子プロモーター。
【
図34】pLVU3G-effLuc-T2A-mKateS158Aのベクターマップ。注釈は以下のとおりである。B1:ゲートウェイのドナー部位B1;effLuc:増強型(enhanced)ホタルルシフェラーゼ;T2A:T2Aリボソームスキップ部位;mKateS158A:増強型(enhanced)mKate赤色蛍光タンパク質;B2:ゲートウェイのドナー部位B2、HBV PRE:B型肝炎翻訳後制御エレメント;HIV SIN LTR:HIV自己不活性化、長末端反復配列;ampR:アンピシリン耐性;LTR:長い末端反復配列;HIV cPPT:HIVセントラルポリプリン配列。
【
図35】MFIと定量フローサイトメトリーのABCとを関係付ける標準曲線。飽和量の抗EGFR-PEと共にインキュベーションした後、抗体結合能が既知の微粒子ビーズ標準試料をフローサイトメーターで得た。既知の抗体結合能を、フローサイトメトリーによって得た測定平均蛍光強度に対してプロットし、標準曲線を作成した。
【発明を実施するための形態】
【0038】
I.実施形態の態様
A.RNA修飾によるEGFR特異的CARの一過性発現
正常な組織に発現する抗原に対して向けられる、CAR T細胞療法による長期のon-target(標的上)、off-tissue(標的組織外)毒性の可能性を抑えるために、RNA移入によるCARの一過性発現が提案されてきた。RNA移入前のT細胞の細胞数増幅は、患者への注入に必要とされる臨床上関連のあるT細胞数を得るのに魅力的である。本発明者らは、抗原特異性とは無関係に、抗CD3抗体であるOKT3を搭載したaAPCでの共培養によるT細胞数増幅を検討した。培養T細胞に対する抗原提示細胞(例えば、aAPC)の比を変えたところ、得られたT細胞集団の表現型が変わった。低密度のaAPC(T細胞:aAPC=10:1)で増幅させたT細胞は、高密度aAPCと共に増幅させたT細胞と比べて、CD8+T細胞の割合の増加、セントラルメモリー表現型T細胞の存在の増加、IFN-γ及びTNF-αの産生低下とIL-2の産生増加、及び増幅後のTCR多様性のクローン性喪失の大幅な減少と関連していた。低密度aAPCで増幅させたT細胞は、電気泳動転写後、RNA転写産物の高発現及びT細胞生存率の改善を示し、高密度aAPCで増幅させたT細胞よりもRNA電気泳動転写に対し敏感に反応する。
【0039】
T細胞増幅にaAPCを使用することの潜在的な有益性は、接着分子LFA-3及びICAM-1の発現という点でT細胞との安定な相互作用を形成できることである(Suhoski et al.,2007;Paulos et al.,2008)。その上、aAPCを比較的容易に修飾して共刺激分子の所望のアレイを発現させることができる。したがって、T細胞数増殖用のaAPCは、T細胞増幅用の共刺激分子の多様な組み合わせを評価して養子T細胞療法のための至適なT細胞表現型を達成するためのプラットフォームを提供する。本発明者らは、aAPCの修飾に加え、培養T細胞中のaAPC密度が、得られたT細胞集団の表現型に及ぼす影響を記載した。CD8+T細胞、すなわち細胞傷害性T細胞は、抗腫瘍免疫療法のための理想的なT細胞集団として考えられることが多いが、エビデンスによると、CD8+T細胞は、至適な抗腫瘍応答及びメモリー形成を達成するために生体内でCD4+T細胞のヘルプを必要とすることが示唆されている(Kamphorts et al.,2013;Bourgeois et al.,2002;Sun et al.,20013)。しかしながら、CD4+T細胞とCD8+T細胞の理想比率は明らかになっていない(Muranski et al.,2009)。養子免疫療法のために増幅培養でのaAPC密度を変えてT細胞のCD4/CD8比を偏らせることにより、それらが患者から単離されたTILであるのか、または遺伝子組換えT細胞であるのかという諸問題は臨床試験で取り組まれて良い。最後に、培養中のaAPCの密度を低くしたところ、高いaAPC密度で増幅させたT細胞よりもセントラルメモリー表現型(CCR7+CD45RAneg)T細胞が多かった。セントラルメモリー表現型T細胞が持続性に優れていることによる恩恵は、腫瘍抗原に一時的に誘導されるだけのRNA修飾T細胞までは及ばない場合があるが、T細胞の持続によりT細胞療法の抗腫瘍作用が改善されることが示されている(Kowolik et al.,2006;Robbins et al.,2004;Stephan et al.,2007;Wu et al.,2013)。したがって、安定に遺伝子組換えされたT細胞またはTILをセントラルメモリー表現型に再プログラムして優れた持続性を得るために、低密度aAPCを用いたエキソビボ増幅を使用してよい。
【0040】
エキソビボで増幅させたT細胞でのRNA修飾によるCAR発現は、非ウイルス性DNA修飾及びCARの抗原認識を介したT細胞増幅によるCAR発現よりも多様であることがわかった。CARが異なる密度で発現しても、標的を特異的に溶解させるT細胞の能力に影響はなかったが、これまでの報告にあるように(Weijtens et al.,2000)、ある特定の閾値以下で、CARが低発現であれば標的の特異的溶解に負の影響があるであろうという考えは妥当である。RNA用量で導入遺伝子の発現レベルが決まるようにする、T細胞のRNA修飾による調節可能CAR発現の記載もある(Rabinovich et al.,2006;Yoon et al.,2009;Barrett et al.,2011)。本研究でのT細胞のRNA修飾は同量のRNAを使用して実施されたものであるため、CAR発現の多様性はRNA用量の変更によるものとはならない。その代わり、電気泳動転写後のCAR発現強度の違いは、ドナー間の多様性によるものと考えられる。現在記載のある、RNA移入前のT細胞増幅のためのプロトコルは、RNA取り込みに対する特定ドナー由来T細胞の感受性改変において役割を果たしていてよく、また、電気泳動転写のRNA量の増量により、これらのドナーでのCAR発現が高まってよい。比較的大量のRNA移入によりCARを高発現させることで、CAR発現及びCAR介在性活性が長期間にわたり延長され得る(Barrett et al.,2011)。RNA移入によるCARの長期発現は、特に、T細胞の刺激でCAR発現の消失が促進されるようであることから、抗腫瘍活性にとって有益となり得る。しかし、CAR発現を延長することで正常組織抗原に応答したT細胞活性も高まる場合もあり、CAR発現を最適化して、抗腫瘍活性を最大にする一方で正常組織への毒性を低下させるための発現至適持続時間を決定する必要がある。
【0041】
T細胞のRNA修飾を行っても、RNAの電気泳動転写前にエキソビボ増幅T細胞で見られたエフェクターメモリーT細胞とセントラルメモリーT細胞との割合に変化はなく、これまでの報告と同様であった(Schaft et al.,2006)。唯一、比較的低aAPC密度で増幅させたT細胞(T細胞:aAPC=10:1)だけは、さまざまな電気穿孔法条件でも有意な毒性はなく、RNA転写産物を効率的に取り込むことができた。このT細胞集団は、また、IFN-γとTNF-α、細胞傷害性エフェクター分子のグランザイムBとパーフォリンの産生が低下したセントラルメモリー表現型(CCR7+CD45RAneg)を有するT細胞をかなりの割合で示した。結果として、DNA修飾T細胞よりもセントラルメモリー表現型T細胞をかなり多く含有したRNA修飾T細胞は、EGFR発現細胞に応答したIFN-γ及びTNF-αの産生が低く、また、低エフェクター:ターゲット比でわずかに劣る特異的溶解性を示した。したがって、RNA修飾用の前駆T細胞集団は、RNA移入後のCAR介在性T細胞機能に大きく影響し、RNA修飾されたT細胞のサイトカイン産生が低く、特異的溶解がわずかに劣るということは、T細胞の細胞傷害力が長続きしないインビボモデルでは抗腫瘍効果が低いという解釈をしてよく、また、セントラルメモリーT細胞集団の優れた持続性も有益とはならない場合がある。T細胞とaAPCとを1:2で増幅させたT細胞のRNA修飾は、DNA修飾CAR+T細胞と同様の、より大きな割合でエフェクターメモリー表現型T細胞を示し、結果として、より多量のIFN-γ及びTNF-αの産生能を示すものが望ましい。RNA移入前にサイトカインを加えることによって生存率が改善されてよく、さらに電気穿孔プログラムを行ってこれらのT細胞に効率的にRNAを移入させてよい。
【0042】
RNAの移入を介してT細胞に導入したCetux-CARは一過性の発現をし、また、サイトカインIL-2及びIL-21の追加並びにEGFR発現細胞株の追加を介した抗原刺激などのT細胞への刺激により発現の消失が促進された。CAR発現の消失に伴い、RNA修飾T細胞は、腫瘍細胞及び正常ヒト腎細胞などのEGFR発現細胞株に対する細胞傷害性の低下を示した。RNA修飾T細胞の使用に対する一つの懸念は、これらの細胞は本質的に経時的な腫瘍標的能が低いために、安定的に修飾されたT細胞より抗腫瘍効果が低くなるだろうということである。RNA移入によりメソテリン特異的CARを発現するよう修飾したT細胞を中皮腫マウスモデルの処置のために複数回注射したところ、隔週の腫瘍内注射では腫瘍増殖コントロールを示したが、処置中止後、腫瘍の再発を示した(Zhao et al.,2010)。播種性白血病マウスモデルのインビボ処置から、CD19に特異的なRNA修飾CAR+T細胞は単回注射後は抗腫瘍活性を有するが、CARの分解にしたがいある期間が経過すると、しばしば腫瘍が再発することが示された(Barrett et al.,2011)。対照的に、メソテリン特異的CARを安定発現しているT細胞の腫瘍内単回注射により、優れた抗腫瘍活性が仲介され、ほとんどのマウスを治癒することができた。RNA修飾T細胞の用量の最適化から、後続注入の前に残存CARnegT細胞を排除するためのシクロホスファミドと加重分割投与レジメンとを組み合わせた方が疾病負荷コントロールがより効果的であり、抗腫瘍効果は安定的修飾したT細胞と同様であることが示された(Barrett et al.,2013)。したがって、投与レジメンの最適化により、RNA修飾T細胞の抗腫瘍活性を改善することができる。
【0043】
B.CAR+T細胞はEGFR密度に基づいて正常細胞から悪性細胞を区別できる
Cetux-CAR+T細胞は正常組織抗原を認識することができるため、on-target、off-tissue毒性をもたらし得ると考えられる。したがって、本発明者らは、on-target、off-tissue毒性をCARの一過性発現により制御する方法として、RNA種としてのCARの発現を検討した。CAR発現は一過性であり、CARの分解後は正常組織のEGFRに対する細胞傷害の可能性は低くはなるが、CARがかなり分解されないうちに正常組織EGFRの認識と同時の速やかなT細胞エフェクター機能の可能性は認められなかった。さらに、CAR発現を制限することにより、CARの分解後はT細胞はEGFR発現腫瘍に非応答となり、このアプローチによる抗腫瘍活性持続の可能性は低くなる。以上のことから、正常組織の存在下でCAR活性を制御し、抗腫瘍活性を損なうことなく有害なon-target、off-tissue毒性を制限する機序について検討した。
【0044】
内因性T細胞活性化は、TCRの親和性にも、またMHCを介して提示されるペプチドの密度にも依存する(Hemmer et al.,1998;Viola et al.,1996;Gottschalk et al.,2012;Gottschalk
2010)。T細胞は、エフェクター機能の誘導に必要とされる特定の閾値を超える、TCRを介した累積シグナルにより活性化される(Hemmer et al.,1998;Rosette et al.,2001;Viola et al.,1996)。親和性の高いTCRの場合、T細胞応答の誘発には比較的低い抗原密度で十分である。しかし、親和性が低いTCRでは、同様のエフェクターT細胞応答を達成するために、より高い抗原密度を必要とした(Gottschalk et al.,2012)。多くの腫瘍はTAAを過剰発現し、その密度は正常組織での発現よりも高い(Barker et al.,2001;Lacunza et al.,2010;Hirsch et al.,2009)。神経膠腫におけるEGFRの増幅と過剰発現にはこの関係が顕著に見られ、EGFRは神経膠腫において正常組織よりも過剰に発現しており、また、過剰発現と腫瘍の悪性度は相関し、例えばグレードIVの膠芽腫は最も高密度のEGFRを発現する(Smith et al.,2001;Hu et al.,2013;Galanis et al.,1998)。したがって、本発明者らは、EGFR特異的CAR修飾T細胞が、EGFR密度に基づいて正常細胞から悪性細胞を区別することができるかどうかについて、CARの結合親和性を低くして検討した。
【0045】
抗原特異性を与えるCetux-CAR部分は、モノクローナル抗体セツキシマブのscFv部分に由来し、高親和性を特徴とする(Kd=1.9x10-9)(Talavera et al.,2009)。したがって、本発明者らは、モノクローナル抗体Nimotuzumab(ニモツズマブ)由来のCARを作製した。これは、セツキシマブと高度に重複するエピトープを共有し、解離定数(Kd=2.1x10-8)が10倍低く、会合速度が59倍低いことを特徴とする(Talavera et al.,2009;Garrido et al.,2011;Adams et al.,Zuckier et al.,2000)。会合速度を遅くし、それにより全体的な親和性を低下させることで、EGFRを二価でなければ認識しなくなり、これはEGFRが高密度で発現しないと起こらない。したがって、Nimotuzumab(ニモツズマブ)由来のCARであれば、T細胞に、EGFR発現密度に基づいて正常組織から悪性組織を区別させることができ得る。
【0046】
最近の臨床で成功を収めているCLL及びALLにおいて、CD19-CAR+T細胞療法に対して完全な腫瘍応答があった患者の持続的なB細胞無形成が確認されているが、この毒性は、CD19が系統が制限された抗原であるため許容範囲とみなされ、また進行したリンパ腫の場合にはB細胞無形成は許容毒性とみなされる(Grupp et al.,2013;Porter et al.,2011)。CAR修飾T細胞を用いてHER2及びCAIXを標的にする臨床試験での重篤な有害事象から、系統及び腫瘍が制限された抗原以外にも安全に標的にできる抗原の範囲を広げるため、正常組織での抗原発現に対するCAR T細胞活性を制御する必要性が浮き彫りになっている(Lamers et al.,2013;Morgan et al.,2010)。異常に発現したTAAは、膠芽腫でのEGFR発現のように、正常組織よりも腫瘍で過剰発現することが多い(Smith et al.,2001;Hu et al.,2013;Galanis et al.,1998)。本発明者らは、正常組織に対して応答する可能性を最小に抑えるため、低い抗原密度に対する応答能が低く、一方で、高い抗原密度に応答する適切なエフェクター機能を維持した、EGFRに特異的なCARを開発した。これは、セツキシマブと高度に重複するエピトープを有するがセツキシマブに比して結合動態が低いモノクローナル抗体であるnimotuzumab(ニモツズマブ)に由来するEGFR特異的CARを作製することにより達成された(Talavera et al.,2009;Garrido et al.,2011)。Cetux-CAR+T細胞は、低密度及び高密度のEGFRを標的にすることができたが、Nimo-CAR+T細胞は抗原密度に合わせてT細胞活性を調節することができ、応答は標的細胞上に発現するEGFR密度に依存した。Nimo-CAR+T細胞は、腫瘍細胞及び正常腎細胞上のEGFR低密度に応答してCetux-CAR+T細胞より低い活性を示すが、EGFR高密度に応答して特異性及び機能を同等に誘導することができた。CARの親和性は抗原惹起後の増殖に影響を及ぼし、抗原惹起後のNimo-CAR+T細胞と比較すると、Cetux-CAR+T細胞は増殖低下を示したが、活性化誘導細胞死(AICD)の傾向増大は示さなかった。その上、CAR親和性は、抗原と相互作用した後のT細胞表面からのCARの下方制御に影響を与える。Cetux-CARは、EGFR高密度との相互作用後、Nimo-CARよりも短時間でかつ長期の細胞表面からの下方制御を示した。Cetux-CAR+T細胞は抗原との再惹起に応答する能力が低下していたが、それは、CARが下方制御された結果または潜在的にCetux-CAR+T細胞の機能疲弊の結果であった可能性がある(James et al.,2010;Lim et al.,2002)。
【0047】
T細胞機能を最も良く予測する内在性のTCR結合に関する生化学的パラメータをめぐってかなりの議論がなされ、そこから、scFvのCAR機能への影響を明らかにする際に厄介となる諸問題が生じてくる。TCR結合動態は、解離定数Kdが、解離(koff)速度と会合速度(kon)との比に等しい、式
【数1】
で表され得る(14)。解離定数(Kd)及び解離速度(koff)はいずれも、TCRがpepMHCを認識した後のT細胞機能の重要な決定因子であることが報告されているが、これら2つのパラメータは強く相関していることが多く、そのため、それぞれがT細胞機能に及ぼす影響を切り離すことは困難である(Kersh et al.,1998;McKeithan T.W. 1995;Nauerth et al.,2013)。T細胞誘発の動態校正モデルは、koffがT細胞機能に影響を与え、十分に長い滞留時間がないとT細胞のシグナル伝達及び活性化が誘発されないというものである。これは修正されて至適滞留時間の枠が含まれ、ここでは、滞留時間が長ければ、単一pepMHC複合体が複数TCRを連続誘発させる能力が低下し、T細胞活性化に不利になる場合がある、(Kalergis et al.,2001)。しかし、これらのモデルは、滞留時間が非常に短い相互作用でも機能的T細胞応答を発生させることができるという報告と矛盾する(Govern et al.,2010;Tian et al.,2007;Aleksic et al.,2010;Gottschalk et al.,2012)。Kd値とkoff値との間の高度の相関を減少させ、kon値の動的範囲を拡大させることで、これまでのデータセットのバイアスを小さくすることを目指した最近の解析により、T細胞誘発のT細胞閉じ込め(confinement)モデルに包含される、T細胞活性化に対するkonの寄与における重要な役割が明らかになった。そこでは、T細胞機能は、会合速度、解離速度、並びにTCR及びpepMHCに関連する膜におけるTCR及びpepMHCの拡散という3つの間の数学的関係から求めた、T細胞閉じ込め(confinement)の持続時間と直接相関している(Tain et al.,2007;Aleksic et al.,2010)。興味深いことに、konが低下すると、TCR及びpepMHCは、再結合前にそれぞれの関連する膜に拡散することができ、そのため、相互作用の持続時間がkoff値まで下がる。対照的に、konが高くなると、TCRは短時間で再結合して滞留時間を延長させることができ、相互作用及び得られるT細胞機能の持続時間はKdにより最も良く予測される。T細胞の機能的結合活性を制御するTCR親和性コンポーネントの役割を定義するために現在行われているこの議論は、他の機能指標よりも優れた機能指標として、生化学的結合パラメータ1つに依存する普遍的モデルに対して警告を発する。その代わり、会合速度と解離速度の組み合わせ、並びに、標的細胞の膜を介して自由に移動する抗原の密度が機能的応答を定義すると考えられる。
【0048】
内在性TCR応答は一般に、モノクローナル抗体の結合性よりもはるかに低い親和性として表現され、これを使用してCAR特異性を導く(Stone et al.,2009)。しかし、TCR結合親和性を測定するために使用されるSPR技術は、典型的には三次元で実施され、T細胞と抗原提示細胞との生理的な相互作用を再現するものではなく、そこでは両結合パートナーは自身のそれぞれの膜内に拘束され、細胞間隙及び適切な分子方向が制限されるために結合する確率が高くなる(Huppa et al.,2010)。2DでのTCR結合動態測定値から、TCRの結合は、高い会合速度及び低い解離速度を特徴とする3D測定値から示唆されるものよりも親和性が高いことが示唆される(Huang et al.,2010;Robert et al.,2012)。しかし、他のリガンド/受容体ペア、例えばICAM-1またはLFA-1の結合動態では、3Dアッセイまたは2Dアッセイでの親和性測定値に差は認められなかった。興味深いことに、細胞骨格の重合を除去すると、2Dでの測定値が3Dでの測定値まで下がり、このことは、抗原に対するT細胞結合を増強させる際の細胞及び細胞骨格の動的プロセスの役割を強調している(Robert et al.,2012)。細胞骨格相互作用または結合親和性増強作用がCARにおいて同様に生じるかについては現在のところ不明であり、したがって、CARのscFvドメインの結合親和性について立てた仮説を、3Dアッセイでのモノクローナル抗体の親和性測定値からそのまま仮説として立てることが可能かどうかは明らかでない。さらに、T細胞結合の全体的な結合活性の増強には、MHCへの共受容体の結合並びにT細胞活性化前後のT細胞表面でのTCRナノクラスター及びミクロクラスターの形成といったいくつかの因子が寄与する(Holler et al.,2003;Schamel et al.,2005;Schamel et al.,2013;Kumar et al.,2011;Yokosuka et al.,2010)。CARはT細胞表面にオリゴマーとして発現できるように思われるが、CARが内在性T細胞シグナル伝達複合体とどこまで関与しているのかは不明である。CD3-ζのみを介してシグナル伝達を行う第1世代CARに関する報告では、CAR依存性T細胞活性化を達成するためには内因性CD3-ζと会合する必要があることが示されているが、膜貫通CD28並びに細胞内CD28及びCD3-ζを介してシグナル伝達する第2世代CARでは、内在性TCR-CD3複合体がT細胞表面から拘束されている場合にはCAR依存性活性化能に差は見られない(Bridgeman et al.,2010;Torikai et al.,2012)。したがって、CARと内在性TCRシグナル伝達機構との会合は、CARの立体配置に依存し得る。
【0049】
CAR設計においてscFv親和性の役割に取り組んだ具体的研究は少なく、解離定数Kdの寄与ということに集中している。ROR1特異的CARを用いた最近の研究では、kon高値かつkoff低値の双方により得た6倍低いKd、すなわちより高い親和性での比較を行っており、親和性の高いROR-1特異的CARは、AICDの傾向を高めることなく、サイトカインの産生及び特異的溶解などインビトロでのT細胞機能を増強させることが示された(Hudecek et al.,2013)。その上、高親和性ROR-1特異的CAR+T細胞はインビボでの優れた抗腫瘍活性を仲介した。同様に、Cetux-CAR+T細胞の高い親和性でAICDの傾向が高まることはなく、EGFR低密度に応答して、サイトカインの産生及び特異的溶解などのT細胞機能が増強された。しかしながら、Kd値の範囲が広い親和性成熟HER2特異的モノクローナル抗体のパネルに由来する一連のCARに関する先の研究では、親和性に閾値があることが見出され、それ以下ではCAR依存性T細胞活性化が低下した。ただし、この閾値より上の値では、親和性を高めていってもHER2のさまざまなレベルに応答したT細胞の活性化が改善されることはなかった(Chmielewski et al.,2004)。対照的に、本研究では、高親和性CARと低親和性CARとで異なる、抗原密度に基づいた標的指向能を同定した。親和性が高いCetux-CAR+T細胞は、Nimo-CAR+T細胞に比して、低いEGFR密度に応答したサイトカイン産生及び特異的溶解の増大と関連していた。一方、Nimo-CARはCetux-CARに対して親和性が低く、Nimo-CARのKd値は、親和性閾値を上回り、先の研究がエフェクター機能を有すると予測した範囲内であった。内在性TCRの研究と同様、これらの結果は、CARの親和性を記載する際は解離定数だけの記載をするべきではないことを示しており、CAR設計では、個々の解離速度と会合速度との関係を考慮に入れなければいけないことを支持している。
【0050】
親和性が及ぼすCAR機能への影響について研究間で見られる矛盾は、解離定数Kdを構成する生化学的パラメータkoff及びkonの関係が異なっていることにより説明され得る。HER2特異的CARは、kon値との相関が最小の、主にkoffが異なる広範囲なKd値を示した抗体から得られた(Chmielewski et al.,2004)。したがって、高親和性相互作用により会合速度は上昇しなかったが、抗原との相互作用持続時間は延長された。対照的に、ROR-1特異的CARの高親和性及びCetux-CARの高親和性はいずれも結合の会合速度上昇の影響を受けた。ROR-1特異的CARを得るために使用した高親和性モノクローナル抗体は、高親和性は高い会合速度と長い相互作用持続時間の両方により特徴付けられるというような、kon高値及びkoff低値の双方の寄与により、6倍低いKdを有した(Hudecek et al.,2013)。セツキシマブのKdとNimotuzumab(ニモツズマブ)のKdの間にある10倍の差は、主に、セツキシマブのkonを59倍高くしkoffを5.3倍高くしたことの影響を受けており、セツキシマブが、Nimotuzumab(ニモツズマブ)と比して会合速度が大幅に増強はされるが、ほとんどの高親和性相互作用とは対照的に相互作用持続時間が短くなるようにされている(Talavera et al.,2009)。したがって、CAR設計においてscFvドメインの解離速度ではなくむしろ会合速度の改変が、T細胞機能に対する影響がより大きくなり得る。
【0051】
これまでの研究で、T細胞活性化には、それを下回るとT細胞活性化が抑止される最小CAR密度が必要であることが確立されてきた(James et al.,2010)。しかし、CARが低密度で発現している場合、抗原発現を十分高くすることによりこの必要性を減らし、CAR依存性T細胞活性化を達成できる(James et al.,2010)。CARの発現密度、抗原密度並びにCAR親和性及びCAR+T細胞機能に対する影響がどのように相互作用するかについて、高親和性及び低親和性のHER特異的CARを使用した研究で評価した。この研究では、低い抗原密度に応答した、CAR密度が低いT細胞のT細胞機能低下は、T細胞が親和性の高いHER2特異的CARを発現した場合に明らかとなるにすぎないことが報告された(Turatti et al.,2007)。しかし、CARが高密度で発現した場合、CAR介在性の細胞傷害性は親和性または抗原密度とは無関係であった。著者らは、低密度HER2に対して高親和性CARが低密度で発現した場合に高親和性CARの反応が低いのは、連続誘発が誘導されなかった結果であると考えた。CARは内在性TCRとして連続的に誘発しないことが報告されているが(James et al.,2010)、これがCAR特異的であること、また、異なる膜貫通領域、エンドドメイン、及びscFv親和性が連続的に誘発する能力に影響を与え得ることは考えられ得る。本発明者らは、低い抗原密度に対する初期応答でのCetux-CAR+T細胞の欠陥を何らみとめなかったが、EGFR+aAPCへの反復刺激を介して淘汰されたCAR発現レベルにより至適CAR密度が選択され、最適下限レベルのCARを発現しているT細胞は増幅に失敗し、そのためレパトアから脱落する場合がある。対照的に、本願の知見から、親和性が低いNimo-CAR+T細胞は、抗原低発現に対して低い感受性を示すが、Nimo-CARの密度を高めても低発現抗原に対するNimo-CAR+T細胞の感受性は回復・(問題を)解消しなかったため、異なる機序で制御されている可能性が高いことが示唆される。
【0052】
低密度でのCARの発現により抗原への感受性を抑えることができるが、これは、生体内で高抗原密度を選択的に標的とする最適戦略とは考えられず、その主な理由として、低密度で発現したCARがどのレベルの抗原にも低い感受性を示し、そのために抗腫瘍活性が低くなる可能性があることが挙げられる(James et al.,2010;Weijtens et al.,2000)。さらに、CARはT細胞表面から一定数のCAR/抗原で下方制御する(James et al.,2010)。したがって、低密度でCARを発現しているT細胞は、T細胞活性化を達成するための最小密度を下回る密度で下方制御を受けやすくなる。
【0053】
本研究では、Cetux-CARよりも結合の会合速度が低いことから低親和性であると予測されたNimo-CARは、EGFR発現密度と直接相関したT細胞活性化及びEGFR密度が低い正常腎細胞に応答した低活性を仲介した。その上、Nimo-CAR+T細胞は、Cetux-CAR+T細胞に比して、増殖が増強されCAR下方制御が低かった。Nimo-CAR+T細胞に膠芽腫上のEGFRを標的とさせることは、on-target、off-tissue毒性の可能性を抑えつつ、抗腫瘍活性を仲介する可能性を秘めている。
【0054】
C.頭蓋内神経膠腫モデルにおけるCetux-CAR+T細胞及びNimo-CAR+T細胞のインビボ抗腫瘍効果
膠芽腫など腫瘍によっては正常組織での発現よりもEGFRが高密度で過剰発現するので、結合親和性を低下させるためにCARのscFvドメインを改変することにより、EGFR高密度の存在下ではT細胞を選択的に活性化するが、EGFR低密度の存在下ではT細胞活性を抑制できるであろうという仮説を立てた。Cetux-CAR及びNimo-CARは、それぞれに異なる親和性及び結合動態でEGFR上の重複エピトープに結合し、Cetux-CARの方が5.3倍低い解離定数を有する、すなわち高親和性であり、59倍高い会合速度を特徴とするようにする。インビトロ研究では、Cetux-CARは、外因性サイトカインの非存在下では抗原に応答した増殖が低下していたこと、EGFRを結合するCARのscFvドメイン及びEGFRの密度に依存してCARの下方制御が増強されていたこと、及び抗原を用いた再惹起に応答したサイトカイン産生が低下していたことも示された。
【0055】
頭蓋内神経膠腫異種移植の処置におけるCetux-CAR+T細胞及びNimo-CAR+T細胞の有効性評価では、Cetux-CAR+T細胞及びNimo-CAR+T細胞はいずれもEGFRを中程度の密度で発現しているU87medに対する抗腫瘍活性を仲介できるが、Cetux-CAR+T細胞のみが内因的にEGFR密度が低いU87に対する抗腫瘍活性を示したことが実証され、これによりインビトロで得た結論が支持された。
【0056】
いくつかの研究では、高親和性TCRの相互作用は優れたインビボ活性をもたらし得ることが示されている、(Nauerth et al.,2013;Zhong et al.,2013)が、インビボでの有効性が常にインビトロでのT細胞活性に反映されているわけではないことが示されている(Chervin et al.,2013;Janicki et al.,2008)。インビトロで効力の高い高親和性T細胞はインビボでの応答が減弱していることが示されており、シグナル伝達、増幅及びT細胞介在性機能の低下を特徴とする(Corse et al.,2010)。同様に、低親和性相互作用では、インビボでのT細胞増幅が抑制されており、その結果、免疫応答の各段階においてT細胞がほとんど存在しないことが示されている(Zehn et al.,2009)。抗腫瘍効果におけるTCR親和性の役割を評価するモデルでは、高親和性TCR相互作用により抗腫瘍機能が低下し、腫瘍内の存在の減少及び細胞溶解機能の低下を特徴とすることが示されている、(Chervin et al.,2013;Engels et al.,2012;Janicki et al.,2008)。したがって、中程度の親和性を有するT細胞の方が、高親和性T細胞より腫瘍増殖をより良く制御し得ることが示唆されている(Corse et al.,2010;Janicki et al.,2008)。これらの所見にインビトロの所見、すなわち、Cetux-CAR+T細胞は外因性サイトカイン非存在下で刺激した場合に増殖能が低いこと、抗原と会合後はCAR下方制御が増強していること、及び抗原との再惹起に対する応答能が低いことを合わせると、Cetux-CAR+T細胞はインビボでの抗腫瘍効果は低い場合がある。本発明者らは、Nimo-CAR+T細胞に比して抗腫瘍効果が低下しているという所見は得なかったが、腫瘍内注射後のCAR+細胞の運命は追跡しなかったため、生体内での増幅の相違は評価しなかった。抗腫瘍活性評価時に、CAR+T細胞が腫瘍にホーミングするそれぞれの異なる能力の交絡変数を回避するためにCAR+T細胞の腫瘍内注射を選択したが、Cetux-CAR+T細胞が腫瘍周辺に滞留したことにより腫瘍浸潤が抑制された可能性はある。
【0057】
Nimo-CAR
+T細胞処置では、未処置マウスと比べ、U87上のEGFR低密度、すなわち正常な腎上皮細胞で測定したEGFR密度より約2倍高い密度に応答した腫瘍量の有意な減少またはマウス生存期間の有意な改善はなかった(
図18及び
図21)。対照的に、Cetux-CAR
+T細胞は、EGFR低密度のマウス6匹中3匹で腫瘍コントロール及び生存期間延長を示した。Nimo-CAR
+T細胞処置により、EGFR密度が非常に低い正常組織に対する細胞傷害可能性を低下させていた可能性もあるが、それらには低密度のEGFRを発現している腫瘍エスケープバリアントの可能性もある。しかし、膠芽腫内での実質的な不均一性のため、所与の患者の体内で単一の標的がすべての腫瘍細胞上に発現するとは考えにくい(Little et al.,2012;Szerlip et al.,2012)。HER2特異的CAR
+T細胞を用いた実験的膠芽腫モデルの処置では、HER2null腫瘍細胞のエスケープも示された(Ahmed et al.,2010;Hegde et al.,2013)。患者の腫瘍のプロファイリングにより、所与の腫瘍で最大数の細胞を標的にする抗原の組み合わせを同定することができ、CAR
+T細胞に複数抗原を標的とさせることで、単一特異性CAR
+T細胞の治療の治療有効性が改善されることが示されている(Hegde et al.,2013)。EGFR密度が均一なU87を用いたインビボ実験では、患者の腫瘍内の抗原不均一性は再現されないため、Cetux-CAR
+T細胞またはNimo-CAR
+T細胞と、特異性の異なるCAR
+T細胞とを組み合わせた評価は、インビボの腫瘍不均一性をより良く再現し得る患者由来の膠芽腫検体に対して実施することができる(Ahmed et al.,2010)。
【0058】
意外にも、Cetux-CAR
+T細胞は、T細胞処置の7日以内に有意な毒性を示し、マウス14匹中6匹がT細胞を注射してから7日以内に死亡した。これまで、EGFR特異的CARでは、腫瘍を担持していないマウスにT細胞を注入してから48時間後の肝酵素測定による、検出可能なインビボ毒性は報告されていなかった(Zhou et al.,2013)。このCARはマウス抗体由来であったため、EGFR特異的CARは正常組織のマウスEGFRを認識しないと考えられる。その上、抗原非存在下での毒性測定では、腫瘍に抗原を発現している患者におけるCAR
+ T細胞の生理学的活性化が再現されない。それは、これらの細胞こそが腫瘍溶解に応答して活性化し、増殖してサイトカインを産生することになるからであり、これらのすべてが測定可能な毒性に寄与し得ると考えられる(Barrett et al.,2014)。実際、本研究では、抗原低発現腫瘍を担持するマウスまたは腫瘍のないマウスをCetux-CAR
+T細胞で処置したところ、検出可能な毒性を生じなかったが(
図4)、これは、観察されたT細胞毒性に対してインビボのT細胞活性化が担う役割を強調している。
【0059】
セツキシマブはマウスのEGFRを認識しないため、on-target、off-tissue毒性がCetux-CAR+T細胞関連の毒性の原因とは考えにくい(Mutsaers et al.,2009)。このモデルにおけるCetux-CARを介した毒性について考えられる機序には、Cetux-CARの抗原特異性を低下させる、クラスタリング、免疫シナプス形成またはT細胞の細胞骨格との会合による、T細胞活性化または増強したと見られる結合活性から生じるサイトカイン関連毒性が挙げられ、これは、CD8共受容体の結合が高親和性TCRの結合活性増強に寄与して特異性の消失をもたらすという記載にあるとおりである(Stone et al.,2013)。
【0060】
以上をまとめると、Nimo-CAR+T細胞は、頭蓋内同所性異種移植モデルにおいて、高親和性Cetux-CAR+T細胞に匹敵する抗腫瘍活性及び生存期間改善を示し、Cetux-CAR+T細胞に伴うT細胞関連毒性を生じない。対照的に、Cetux-CAR+T細胞は、EGFR密度が低い腫瘍に対して抗腫瘍活性を示すが、Nimo-CAR+T細胞は示さない。これらの知見は、Nimo-CAR+T細胞は、EGFR低密度に応答した活性が低いというインビトロ所見と一致する。
【0061】
D.CAR
+T細胞療法のための抗原レパトアの安全な増幅
CAR
+T細胞の安全性達成のために開発された方法は、主に、(i)CAR
+T細胞を腫瘍組織に拘束する、(ii)CAR発現/T細胞持続性を制限する、及び(iii)CAR介在性のT細胞活性化を腫瘍に拘束する、という3つの戦略に大別することができる(
図32)。CCR2、CCR4及びCXCR2などホーミング分子をCARと共にT細胞に共発現させて腫瘍部位にホーミングさせるという、CAR
+T細胞を腫瘍部位に隔離するための記載がある(Peng et al.,2010;Moon et al.,2011;Di Stasi et al.,2009)。CAR
+T細胞は、ホーミング受容体を持たないCAR
+T細胞に比べて腫瘍組織において富んでいるが、ホーミング受容体を発現しているCAR
+T細胞のうち、腫瘍に効率的にホーミングをせず、そのために正常組織を標的にするのが何割なのかは不明である。同様に、腫瘍により分泌されるケモカインが、組織の損傷と治癒の過程で正常組織からも分泌され得る。したがって、これらの治療法に他の治療法、例えば手術、化学療法及び放射線照射を併用すると、治療中、特別な損傷のない正常組織にT細胞を引き付ける危険性が考えられる。多くの腫瘍に共通する低酸素条件中に選択的に発現するCARの開発は、CARを酸素依存的分解ドメインに融合させて酸素正常状態におけるCARの発現及び組織標的能を制限することにより達成されている(Chan et al.,2005)。低酸素状態から酸素正常状態へ移動するT細胞のCAR分解には、数分から数時間かかる場合があるため、CARが分解される前にon-target、off-tissue毒性が起こり得ることは可能である。さらに、多くの腫瘍の中心部は低酸素になっているが、血管に富んだ腫瘍周辺領域にはCARを分解するのに十分な濃度の酸素があり、周辺領域をCAR介在性T細胞活性から保護している(Vartanian et al.,2014)。
【0062】
CAR+T細胞の存在を時間的に制限する戦略には、一過性RNA種としてCARを発現させるといったT細胞の自殺遺伝子組換え、及びiCaspase9自殺スイッチの導入が挙げられ、iCaspase9自殺スイッチは二量体化誘導化合物(chemical inducer of dimerization:CID)により特異的に活性化されてT細胞を死亡させるものである(Zhao et al.,2010;DiStassi et al.,2011;Budde et al.,2013;Barrett et al.,2011;Barrett et al.,2013)。どちらの方法も浸透率が高く、薬物送達によるアポトーシス誘導後またはRNA導入遺伝子発現が経時的に消失した後、ほぼ完全にCAR+T細胞を抑止する。両戦略ともCAR+T細胞を永久に排除するため、正常組織は保護されるが腫瘍に対する治療有効性も制限される。これらの戦略の制約の一つは、CARの減少またはT細胞消失以前に、正常細胞に対する強力な活性が存在し、毒性の短期的制限がないことである。T細胞療法に由来する重篤な有害事象は、臨床症状発症から急速に進行し得るため、CAR+ T細胞注入の瞬間から正常組織を保護するための戦略を持つことが望ましい(Grupp et al.,2013;Porter et al.,2011)。
【0063】
二重特異的な相補的CARは、シグナル伝達ドメインを解離させ、2種の特異性を有する2つのキメラ受容体を発現させることにより、腫瘍上に限定して相互に発現させた2つの抗原の共発現に応答して選択的活性化を達成した。この方法では、ある特異性をCD3ζに融合させて第1世代CARを発現させ、また、別の相補的特異性を共刺激エンドドメインに融合させて(キメラ共刺激受容体(CCR)と呼ばれる)、抗原の共発現によりCAR及びCCRが同時に会合しないと完全な活性化及びT細胞機能が達成されないようにする(Wilkie et al.,2014;Lanitis et al.,2013;Kloss et al.,2013)。このアプローチは、乳癌のHER2とMUC1、前立腺癌のPSMAとPSCA、及び卵巣癌治療のメソテリン及びα-葉酸受容体に対して誘導された特異性を有する、種々のCARとCCRペアを用いて導かれた。初期の研究では、T細胞の活性化及び溶解機能は、CCRの活性化がない場合に、第1世代CARの発現を介して単一の標的発現抗原に対して起こり得ることが示されている。この細胞傷害性は第2世代CARで観察されたものよりは低いが、単一抗原を発現している正常組織をCARが標的にするという残存リスクが依然として少しある(Wilkie et
al.,2014;Lanitis et al.,2013)。この制約を克服するための一戦略は、最適下限の親和性を有する第1世代CARを開発し、単一抗原によって活性化された場合にかろうじてT細胞が機能し、また、CCRが連結しないと毒性が救済されないようにすることである(Kloss et al.,2013)。しかし、この戦略は、腫瘍抗原に対するT細胞の感受性を鈍化させることで機能する。この方法では、単一抗原発現組織が認識され標的となることを防ぎ、これにより、正常組織の毒性を潜在的に低下させるが、抗腫瘍活性も低下させる。さらに、効率的なT細胞活性化及び腫瘍除去のためには2つの抗原を発現させる必要があり、このため、CARを活性化できる腫瘍量が減り、腫瘍エスケープバリアントが発生する可能性が増す。
【0064】
正常組織にしか見られない抗原に対する特異性、及び腫瘍上ではないPD-1シグナル伝達エンドドメインを融合させた抑制性CAR(iCAR)は、正常組織抗原の結合に応答してT細胞介在性の殺滅及びサイトカイン産生を有意に抑制できる(Fedorov et al.,2013)。印象的なことに、iCARのT細胞機能抑制は可逆的であり、その後、腫瘍抗原に遭遇すると、T細胞は機能的に産生的な応答をすることができる。この戦略の成功は、CAR、iCAR及び両抗原の化学量論に左右される。したがって、CAR/腫瘍抗原の圧倒的発現の存在下でiCAR発現または抗原が不十分な場合は、正常組織毒性が起こり得ると予測することが妥当である。この戦略を成功に導くためには、この化学量論的パラメータを各抗原セットごとに評価し厳しく管理する必要がある。
【0065】
本明細書に記載するのは、正常組織の低密度EGFRに応答したCAR+T細胞活性化を弱める一方、腫瘍組織上のEGFR高密度に応答したT細胞の細胞傷害性を仲介するため、CAR設計に使用するscFvの親和性に基づいて腫瘍部位に対するT細胞活性化を制御する方法である。この方法の利点は、(i)正常組織の毒性低下が、腫瘍に応答した活性減弱と関連していないこと、及び(ii)T細胞の活性化/抑制に複数抗原の認識を必要としないことであるが、それには、発現の化学量論及び関連受容体への結合を厳しく管理しなければならない。その上、T細胞活性化に複数抗原を必要とするため、効率的に標的にされるであろう腫瘍の割合がさらに少なくなる。T細胞のon-target、off-tissueな組織毒性を拘束する方法はどれも互いに排他的ではなく、複数の戦略を組み合わせることで正常組織の破壊回避が改善され得る。
【0066】
E.臨床的意義
膠芽腫患者は、癌免疫療法にとって、EGFRに対して特異的なT細胞の安全性初期評価に理想的な患者集団となり得る。EGFRは膠芽腫に罹患した患者の40~50%に過剰発現している(Parsons et al.,2008;Hu et al.,2013)。また、正常脳組織におけるEGFRの発現は報告されていない(Yano et
al.,2003)。EGFRは正常上皮表面に広く分布しているため、腫瘍切除後にT細胞を腔内送達することにより、抗腫瘍能を最大限にしつつ、CNS外の上皮表面と相互作用する可能性を最小化できる。膠芽腫患者での初期安全性評価の後は、EGFR特異的CAR+T細胞療法を、乳房、卵巣、肺、頭頸部、結腸直腸、及び腎の細胞癌腫など他のEGFR発現悪性腫瘍まで広げることが可能であり得る(Hynes et al.,2005)。
【0067】
T細胞のRNAを修飾してCARを一過性発現させた場合、存在するCAR+T細胞が少ないことにより抗腫瘍効果が低くなる場合があるが、RNA修飾T細胞を複数回、特に加重初回投与量で注入を行うことにより、これらの潜在的な制限を克服することができ、これは先に、RNA移入で修飾したCD19 CAR+T細胞を用いて進行白血病マウスモデルで示されたとおりである(Barrett et al.,2013)。RNA発現により移入されたメソテリン特異的CARを用いた臨床試験では、CAR部分に対して特異的なIgE抗体反応がCARの反復注入に応答して生じることに起因するアナフィラキシーが起こる可能性が示されたが、IgG抗体からIgE抗体へのアイソタイプスイッチを回避するために、CAR+T細胞の注入間隔を10日以内とし、治療を21日のコースをかけて完了させる投与方法が提案されており、現在検討が進められている(Maus
et al.,2013)。これらの課題があるにもかかわらず、CARを発現させるためのRNA修飾には臨床応用における多くの魅力的な利点がある。第一に、T細胞のRNA修飾では導入遺伝子のゲノム組込みがなく、そのため、規制上の承認を得るための煩雑な工程が少なくなる可能性があり、これにより、CAR+T細胞療法の前臨床開発期間が短縮され得る。さらに、CAR修飾T細胞をRNAの移入によって作製するほうが、Sleeping Beautyトランスポゾン/トランスポザーゼ系を使用するDNA修飾よりもはるかに速く、T細胞のDNA修飾の場合に要するエキソビボ培養時間の約半分の時間で90%を超えるCAR+T細胞が得られる。規制上の承認プロセスの速さとエキソビボ製造時間を改善することにより、臨床への新しいCAR+T細胞療法をいち早く手に入れ、これらの療法を臨床応用のために微調整する際、改善された有効性を取り次ぐ、bench-to-bedside(研究現場から臨床現場へ)及びその逆のコミュニケーション時間を早めることができると考えられる。
【0068】
また、RNA修飾は、患者において広く発現したEGFRのような正常組織抗原に特異的な一過性修飾T細胞を試験し、CAR構造の安全性プロファイルを決定してから、永久的組込みを行ったCARの評価をさらなる安全対策として行うためのプラットフォームも提供し得る。Cetux-CARは、EGFR低密度に応答してT細胞活性化及び溶解活性を示すことから、T細胞のDNA修飾を行ってCetux-CARを永久的に発現させることは、正常組織の毒性リスクが高いため、現実的な臨床戦略ではないと考えられる。しかし、RNA導入で修飾したNimo-CAR+T細胞の最初の臨床評価から、Nimo-CAR+T細胞の能力は、正常組織毒性を仲介するが、長期の正常組織毒性に関する懸念を解消するためにCARの一過性発現という安全面での特徴をさらに備えていると決定され得る。
【0069】
Nimo-CAR+T細胞は低密度EGFRに対する細胞傷害性を仲介する能力が低いため、正常組織毒性を抑制するよう機能するが、低密度EGFRを発現する腫瘍に対する有効性も抑制され、低密度でEGFRを発現している腫瘍エスケープバリアントが増殖してしまう可能性が増す。対照的に、あらゆるレベルのEGFR発現に対して特異的溶解活性のあるCetux-CAR+T細胞は、EGFRを低発現している腫瘍エスケープバリアントが増殖するリスクを減少させるが、強力な毒性の代償としてEGFR発現が低い正常組織に対しても増殖を抑制する。さらに、Cetux-CAR+T細胞は、中等度の密度のEGFRを発現している頭蓋内U87の処置で示されたように、EGFRを発現している正常組織を標的にすることとは無関係に、ある程度のT細胞関連毒性を仲介すると思われ、これはおそらくサイトカイン産生の増強または局所炎症の誘導によるものと思われる。Cetux-CAR+T細胞とNimo-CAR+T細胞の関係は、遺伝子組換えT細胞療法の安全性と有効性の間で達成されるべきバランスというものを強調している。毒性リスクは増すが優れた腫瘍コントロールの可能性を秘めたCetux-CAR+T細胞、または毒性リスクは低いが腫瘍エスケープバリアント発生の可能性が高いNimo-CAR+T細胞のうち、どちらの戦略がより良い臨床転帰をもたらし得るのかという選択に簡単な答えはない。このバランスに対処するために考えられる臨床戦略の一つは、EGFRを高発現している腫瘍バリアントを安定してコントロールするためDNAで修飾したNimo-CAR+T細胞を注入することと、EGFRを低発現している腫瘍細胞を除去するためRNAで修飾したCetux-CAR+T細胞を複数注入することとを組み合わせることであり得る。
【0070】
II.定義
本明細書で使用する用語「chimeric antigen receptors(CAR)(キメラ抗原受容体)」は、例えば、人工のT細胞受容体、キメラT細胞受容体、またはキメラ免疫受容体を意味してよく、人工の特異性を特定の免疫エフェクター細胞に移植する遺伝子工学的に操作した受容体を包含する。CARを使用してモノクローナル抗体の特異性をT細胞に付与し、これにより、多数の特異的T細胞を、例えば養子細胞療法で使用するために作製して良い。具体的な実施形態では、CARは、例えば、細胞の特異性を腫瘍関連抗原へ導く。いくつかの実施形態では、CARは、細胞内活性化領域、膜貫通ドメイン、及び腫瘍関連抗原結合領域を含む細胞外ドメインを含む。特定の態様では、CARは、CD3-ゼータ膜貫通ドメインに融合させた、モノクローナル抗体由来の単鎖可変断片(scFv)と、エンドドメインとの融合体を含む。他のCAR設計の特異性は、受容体のリガンド(例えば、ペプチド類)由来またはデクチンのようなパターン認識受容体由来であってよい。いくつかの実施形態では、B細胞系分子CD19に対して特異的なCARを使用してT細胞の特異性を誘導することにより悪性B細胞を標的にすることができる。ある実施形態では、抗原認識ドメインの間隔(spacing)を変更して活性化誘導型細胞死を抑制することができる。ある実施形態では、CARは、CD3-ゼータ、FcR、CD27、CD28、CD137、DAP10、及び/またはOX40のようなさらなる共刺激シグナル伝達用ドメインを含むことができる。いくつかの実施形態では、共刺激分子、画像診断(例えば、ポジトロン断層撮影)用レポーター遺伝子、プロドラッグ、ホーミング受容体、ケモカイン、ケモカイン受容体、サイトカイン、及びサイトカイン受容体などが加えられた時に条件付きでT細胞を排除する分子をCARと共に共発現させることができる。
【0071】
本明細書で使用する用語「T-cell受容体(TCR)(T細胞受容体)」は、アルファ(α)鎖とベータ(β)鎖からなるヘテロ二量体で構成されるT細胞上のタンパク質受容体を指すが、細胞の中にはTCRがガンマ鎖及びデルタ鎖(γ/δ)からなるものもある。いくつかの実施形態では、TCRは、TCRを含め、どの細胞上ででも修飾されてよく、これには例えば、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、及びガンマ・デルタT細胞などが挙げられる。
【0072】
本発明で使用する場合、用語「antigen(抗原)」とは、抗体またはT細胞受容体が結合することのできる分子である。
抗原は、一般に、液性免疫応答及び/または細胞性免疫応答を誘導してBリンパ球及び/またはTリンパ球の産生をもたらすために使われる。
【0073】
用語「tumor-associated antigen(腫瘍関連抗原)」及び「cancer cell antigen(癌細胞抗原)」は、本明細書では互換的に使用される。いずれの場合も、各用語は、癌細胞により特異的または選択的に発現したタンパク質、糖タンパク質または炭水化物を指す。
【0074】
本明細書で、被検体の治療または被検体の細胞を選択的に標的にすることに言及して語句「in need thereof(それを必要とする)」という場合、標的抗原(または高レベルの標的抗原)を発現している細胞の選択的殺滅の恩恵を受けると考えられる疾患状態にある被検体を指す。いくつかの態様では、疾患状態は、被検体において非癌性細胞と比べて標的抗原を高レベルで発現する癌であってよい。例えば、癌は、被検体において非癌性細胞と比べて高レベルのEGFRを発現する神経膠腫であり得る。
【0075】
本明細書で、CAR T細胞、またはCAR T細胞を含む医薬組成物に関連して語句「effective amount(有効量)」を使用する場合、被検体への投与時に、CARが結合した標的抗原を発現する(または高発現する)細胞を死滅させるのに十分なCAR T細胞量を指す。
【0076】
III.キメラ抗原受容体
本明細書に記載する実施形態では、抗原特異的キメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドをコードする核酸の作製及び同定を行う。いくつかの実施形態では、免疫原性を低下させるためにCARをヒト化する(hCAR)。
【0077】
いくつかの実施形態では、CARは、1つまたはそれ以上の抗原間で共有する空間で構成されるエピトープを認識し得る。デクチン-1などのパターン認識受容体を使用して炭水化物抗原に対する特異性を導いてよい。ある実施形態では、結合領域は、モノクローナル抗体の相補性決定領域、モノクローナル抗体の可変領域、及び/またはその抗原結合断片を含んでよい。いくつかの実施形態では、結合領域はscFvである。別の実施形態では、CARの結合領域において、受容体または細胞標的に結合するペプチド(例えば、サイトカイン)を可能性として含める、またはscFv領域の代わりに用いてよい。したがって、いくつかの実施形態では、複数scFv領域及び/または他の標的タンパク質をコードするベクター複数からCARを作製して良い。相補性決定領域(CDR)は、抗原受容体(例えば、免疫グロブリン及びT細胞受容体)タンパク質の可変ドメインに見られる短いアミノ酸配列であり、ある抗原に相補的(complement)であるため、その特定の抗原に対して自身の特異性を持った受容体を提供する。抗原受容体の各ポリペプチド鎖は3つのCDR(CDR1、CDR2、及びCDR3)を含有する。抗原受容体は典型的に2本のポリペプチド鎖で構成されるため、抗原と接触できる各抗原受容体には6つのCDRがあり、すなわち重鎖及び軽鎖それぞれにCDRが3つずつ含有されている。免疫グロブリン及びT細胞受容体の選択性に関連した配列変異の大半は、一般にCDRにおいて見られるため、これらの領域は超可変ドメインと呼ばれることがある。これらの中でも、CDR3はVJ(重鎖及びTCRαβ鎖の場合はVDJ)領域の組換えによりコードされるので最も大きな可変性を示す。
【0078】
実施形態により作製されるCARコード核酸は、ヒト患者の細胞免疫療法を向上させるため、1つまたはそれ以上のヒト遺伝子または遺伝子断片を含んでよい。いくつかの実施形態では、完全長CAR cDNAまたはコード領域を本明細書に記載する方法を介して作製して良い。抗原結合領域または抗原結合ドメインは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,109,304号に記載のような、特定のヒトモノクローナル抗体に由来する単鎖可変断片(scFv)のVH鎖及びVL鎖の断片を含んでよい。いくつかの実施形態では、scFvは、ヒト抗原特異的抗体の抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、scFv領域は、ヒト細胞で発現させるためにヒトコドン使用について最適化された配列によりコードされる抗原特異的scFvである。
【0079】
CARの抗原結合性ドメインの構成は、ダイアボディまたは多量体などの多量体であってよい。多量体は、軽鎖及び重鎖の可変部分をダイアボディと呼ばれるような形態に交差対形成(cross pairing)させることで形成できる。CARのヒンジ部分は、実施形態によっては短縮または除外して良い(すなわち、抗原結合ドメイン、膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達ドメインのみを含むCARを作製する)。ヒンジの多重性を、例えば表1に示すような本願実施形態と共に使用してよい。いくつかの実施形態では、ヒンジ領域は、第1のシステイン残基を維持して、またはプロリン残基またはセリン残基による置換で変異させて、または第1のシステイン残基までを切断されて有してよい。Fc部分をscFvから欠失させて抗原結合性領域として使用し実施形態のCARを作製して良い。いくつかの実施形態では、抗原結合性領域は、Fcドメインのうち1つ、例えば、ヒト免疫グロブリンのCH2またはCH3ドメインいずれかのみをコードして良い。また、2量体化及びオリゴマー化を改善するために修飾されたヒト免疫グロブリンのヒンジ、CH2、及びCH3領域を含めても良い。いくつかの実施形態では、ヒンジ部分は、8~14アミノ酸のペプチド(例えば、12アミノ酸のペプチド)、CD8αの部分、またはIgG4のFcを含むかまたは構成要素として良い。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインを、CD8アルファなどのオリゴマー形成を促進するドメインを使用して細胞表面から吊して良い。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインを、モノクローナル抗体(mAb)クローン2D3が認識するドメインを使用して細胞表面から吊して良い(mAbクローン2D3は、例えば、Singh et al.,2008に記載がある)。
【0080】
CARのエンドドメインまたは細胞内シグナル伝達ドメインは、一般に、CARを含む免疫細胞の正常なエフェクター機能のうち少なくとも1つの活性化を生じさせるかまたは促進することができる。例えば、エンドドメインは、例えば、サイトカイン分泌を含む細胞溶解活性またはヘルパー活性といったT細胞のエフェクター機能を促進して良い。ナイーブ細胞、メモリー細胞、またはメモリーT細胞のエフェクター機能には、抗原依存性の増殖が含まれて良い。用語「intracellular signaling domain(細胞内シグナル伝達ドメイン)」または「endodomain(エンドドメイン)」とは、エフェクター機能シグナルの伝達及び/または特殊な機能を果たすよう細胞の誘導をできるCARの部分を指す。細胞内シグナル伝達ドメイン全体をCARに含めて良いが、場合によっては、エンドドメインの切断部分を含めて良い。一般に、エンドドメインには、細胞内でエフェクター機能シグナルを伝達する能力を保持している切断型エンドドメインが含まれる。
【0081】
いくつかの実施形態では、エンドドメインは、T細胞受容体のゼータ鎖またはその任意のホモログ(例えば、エータ、デルタ、ガンマ、またはイプシロン)、MB1鎖、B29、Fc RIII、Fc RI、並びに、CD3ζ及びCD28、CD27、4-1BB、DAP-10、OX40、及びその組み合わせのようなシグナル伝達分子の組み合わせ、並びに、同様の他の分子及び断片を含む。活性化タンパク質ファミリーの他のメンバーの細胞内シグナル伝達部分、例えばFcγRIII及びFcεRIを使用できる。これらの膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインの代替え例は、例えば、Gross Et al.(1992)、Stancovski Et al.(1993)、Moritz Et
al.(1994)、Hwu Et al.(1995)、Weijtens Et al.(1996)、及びHekele Et al.(1996)に見ることができ、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、エンドドメインは、ヒトCD3ζ細胞内ドメインを含んでよい。
【0082】
抗原特異的細胞外ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインは、好ましくは膜貫通ドメインにより結合される。CARに含まれ得る膜貫通ドメインには、例えば、ヒトIgG4のFcヒンジ及びFc領域、ヒトCD4膜貫通ドメイン、ヒトCD28膜貫通ドメイン、膜貫通型ヒトCD3ζドメイン、またはシステイン変異ヒトCD3ζドメイン、または、例えばCD16とCD8及びエリスロポエチン受容体といったヒト膜貫通型シグナル伝達タンパク質に由来する膜貫通ドメインが挙げられる。膜貫通ドメイン例を例えば表1に記載する。
【0083】
いくつかの実施形態では、エンドドメインは、例えば、修飾CD28細胞内シグナル伝達ドメイン、またはCD28、CD27、OX-40(CD134)、DAP10、若しくは4-1BB(CD137)共刺激受容体といった共刺激受容体をコードする配列を含む。いくつかの実施形態では、CD3ζにより開始された一次シグナル、ヒト共刺激受容体により発せられる追加シグナルをCAR内に含めて形質転換されたT細胞をさらに有効に活性化させて良く、これにより、生体内での持続性及び養子免疫療法の治療成功の改善につながり得る。表1に記載のように、エンドドメインまたは細胞内受容体シグナル伝達ドメインは、CD3のゼータ鎖を単独で、または、例えば、CD28、CD27、DAP10、CD137、OX40、CD2、4-1BBといったFcγRIII共刺激シグナル伝達ドメインと組み合わせて含んでよい。いくつかの実施形態では、エンドドメインは、TCRゼータ鎖、CD28、CD27、OX40/CD134、4-1BB/CD137、FcεRIγ、ICOS/CD278、IL-2Rベータ/CD122、IL-2Rアルファ/CD132、DAP10、DAP12、及びCD40のうち1つまたはそれ以上の一部または全部を含む。いくつかの実施形態では、1、2、3、4またはそれ以上の細胞質ドメインをエンドドメインに含めて良い。例えば、いくつかのCARでは、少なくとも2つまたは3つのシグナル伝達ドメインをともに融合させると、相加効果または相乗効果をもたらすことができることが観察されている。
【0084】
いくつかの態様では、CARをコードするDNA配列を含め、単離された核酸セグメント及び発現カセットを作製して良い。多種多様なベクターデータを使用して良い。いくつかの好ましい実施形態では、ベクターにより、CARをコードするDNAをT細胞などの免疫に送達することが可能になり得る。CAR発現は、例えば、MNDU3プロモーター、CMVプロモーター、EF1αプロモーター、またはユビキチンプロモーターといった真核生物の調節されたプロモーターの制御下にあってよい。また、ベクターには、他に理由がない限り、インビトロでのその操作を容易にするために選択可能なマーカーを含有させて良い。いくつかの実施形態では、CARを、DNA鋳型から転写されたインビトロでのmRNAから発現させることができる。
【0085】
キメラ抗原受容体分子は組換え型であり、それらが持つ抗原結合能及びそれらの細胞質尾部に存在する免疫受容体活性化モチーフ(ITAM’s)を介した活性化シグナル伝達能により区別される。抗原結合性部分(例えば、単鎖抗体(scFv)から作製)を用いた受容体構成体には「普遍的(universal)」であるというさらなる利点があり、標的細胞表面の天然抗原にHLA非依存的に結合できる。例えば、scFv構成体を、CD3複合体のゼータ鎖(ζ)、Fc受容体ガンマ鎖、及びチロシンキナーゼskyの細胞内部分についてコードする配列に融合させて良い(Eshhar et al.,1993;Fitzer-Attas et al.,1998)。CTLによる腫瘍の認識及び溶解など、誘導されたT細胞エフェクター機構についてマウス及びヒトのいくつかの抗原-scFv:ζ系で記録されている(Eshhar et al.,1997;Altenschmidt et al.,1997;Brocker et al.,1998)。
【0086】
抗原結合領域は、例えば、ヒト由来または非ヒト由来のscFvであって良い。マウスのモノクローナル抗体などの非ヒト抗原結合領域の使用で考えられる問題として、ヒトエフェクター機能が低いこと、及び腫瘍塊への侵入能が低いことが挙げられる。さらに、非ヒトモノクローナル抗体は、ヒト宿主によって外来タンパク質として認識され得るため、こうした外来性抗体の反復注射により免疫応答誘導がもたらされ、有害な過敏反応を引き起こすことが考えられる。マウス系モノクローナル抗体では、この作用は、ヒト抗マウス抗体(HAMA)反応と呼ばれている。いくつかの実施形態では、ヒト抗体またはscFv配列をCARに含めることにより、一部のマウス抗体に比してHAMA反応をほとんど、または全く起こさないという結果になり得る。同様に、ヒト配列をCARに含めることにより、それを使用して、レシピエント内に存在する、HLAに基づいて合成抗原を認識し得る内在性T細胞による免疫介在性の認識または排除のリスクを低下させるかまたは回避し得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、CARは、a)細胞内シグナル伝達ドメイン、b)膜貫通ドメイン、c)ヒンジ領域、及びd)抗原結合領域を含む細胞外ドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメイン及び膜貫通ドメインはエンドドメインと共に単一ベクターによりコードされ、該単一ベクターは、ヒンジ領域をコードするベクター及び抗原結合領域をコードするベクターで(例えば、トランスポゾン指向相同組換えを介して)融合され得る。その他の実施形態では、細胞内のシグナル伝達領域及び膜貫通領域は、融合されている2つの別々のベクターによりコードされてよい(例えば、トランスポゾン指向相同組換えを介して)。
【0088】
いくつかの実施形態では、CARの抗原特異的部分は、抗原結合領域を含む細胞外ドメインとも言われ、腫瘍関連抗原を選択的に標的にする。腫瘍関連抗原は、腫瘍細胞の細胞表面に発現していればどの種類の抗原であってもよい。実施形態により作製されたCARが標的とし得る腫瘍関連抗原の例には、例えば、CD19、CD20、癌胎児性抗原、αフェトプロテイン、CA-125、MUC-1、CD56、EGFR、c-Met、AKT、Her2、Her3、上皮腫瘍抗原、黒色腫関連抗原、変異p53、変異ras、デクチン-1等が挙げられる。いくつかの実施形態では、CARの抗原特異的部分はscFvである。腫瘍を標的とするscFvの例を表1に記載する。いくつかの実施形態では、CARを膜結合型サイトカインと共発現させて、例えば、腫瘍関連抗原の量が少ない場合の持続性を改善して良い。例えば、CARは、膜結合型IL-15と共発現させることができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、細胞内の腫瘍関連抗原、例えば、HA-1、サバイビン、WT1、及びp53などは、CARで標的となり得る。これは、HLAにおいて、細胞内の腫瘍関連抗原から記述されたプロセシングされたペプチドを認識する、普遍的なT細胞に発現させたCARによって達成され得る。さらに、HLAにおいて、普遍的なT細胞に遺伝子組換えを行い、プロセシングされた細胞内腫瘍関連抗原を認識するT細胞受容体ペアリング(pairing)を発現させて良い。
【0090】
実施形態にしたがって使用するための標的抗原のさらなる例には、限定されることなく、CD19、CD20、ROR1、CD22癌胎児性抗原、αフェトプロテイン、CA-125、5T4、MUC-1、上皮腫瘍抗原、前立腺特異抗原、黒色腫関連抗原、変異p53、変異ras、HER2/Neu、葉酸結合タンパク質、HIV-1の外被糖タンパク質gp120、HIV-1の外被糖タンパク質gp41、GD2、CD123、CD33、CD138、CD23、CD30、CD56、c-Met、メソテリン、GD3、HERV-K、IL-11Rα、カッパ鎖、ラムダ鎖、CSPG4、ERBB2、EGFRvIII、VEGFR2、GP240、CD-33、CD-38、VEGFR-1、VEGFR-2、CEA、FGFR3、IGFBP2、IGF-1R、BAFF-R、TACI、APRIL、Fn14、ERBB2またはERBB35T4、MUC-1、及びEGFRが挙げられる。ある特定の態様では、実施形態の選択されたCARは、配列番号1~2の記載にあるような、Nimotuzumab(ニモツズマブ)のCDRまたは抗原結合部分を含む。例えば、CARは、VL CDR1 RSSQNIVHSNGNTYLD(配列番号5);VL CDR2 KVSNRFS(配列番号6);VL CDR3 FQYSHVPWT(配列番号7);VH CDR1 NYYIY(配列番号8);VH CDR2 GINPTSGGSNFNEKFKT(配列番号9)及びVH CDR3 QGLWFDSDGRGFDF(配列番号10)を含むことができ、例えば、参照により本明細書に組み込まれるMateo et al.,1997を参照にされたい。さらに特定の態様では、実施形態のCARは、配列番号3~4の記載にあるような、セツキシマブのCDRまたは抗原結合部分を含む。例えば、CARは、VL CDR1 RASQSIGTNIH(配列番号11);VL CDR2 ASEIS(配列番号12);VL CDR3 QQNNNWPTT(配列番号13);VH CDR1 NYGVH(配列番号14);VH CDR2 VIWSGGNTDYNTPFTS(配列番号15)及びVH
CDR3 ALTYYDYEFAY(配列番号16)を含むことができ、例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際(PCT)特許公開番号WO2012100346を参照にされたい。
【0091】
上記で考察したように、いくつかの態様では、選択されたCARは抗原に結合し、抗原に対するKdが約2nM~約500nMであり、その場合、かかる選択されたCARを含むT細胞は、抗原を発現している標的細胞(例えば、癌細胞)に対し細胞傷害性を示す。例えば、いくつかの態様では、CARは、抗原に対するKdが2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20nMまたはそれ以上であり、かかる選択されたCARを含むT細胞は、抗原を発現している標的細胞に対し細胞傷害性を示す。さらに別の態様では、CARは、抗原に対するKdが約5nMと、約450,400,350、300,250,200,150,100、または50nMとの間である。さらに別の態様では、CARは、抗原に対するKdが約5nM~500nM、5nM~200nM、5nM~100nM、または5nM~50nMであり、かかる選択されたCARを含むT細胞は、抗原を発現している標的細胞に対し細胞傷害性を示す。
【0092】
いくつかの態様では、実施形態の選択されたCARは、CAR分子1つあたり2つ、3つ、4つまたはそれ以上の抗原分子に結合することができ、かかる選択されたCARを含むT細胞は、抗原を発現している標的細胞(例えば、癌細胞)に対し細胞傷害性を示す。いくつかの態様では、選択されたCARの抗原結合ドメインの各々は、抗原に対するKdが2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20nMまたはそれ以上であり、かかる選択されたCARを含むT細胞は、抗原を発現している標的細胞に対し細胞傷害性を示す。さらに別の態様では、選択されたCARの抗原結合ドメインの各々は、抗原に対するKdが約5nMと、約450,400,350、300,250,200,150,100、または50nMとの間であり、かかる選択されたCARを含むT細胞は、抗原を発現している標的細胞に対し細胞傷害性を示す。さらに別の態様では、選択されたCARの抗原結合ドメインの各々は、抗原に対するKdが約5nM~500nM、5nM~200nM、5nM~100nM、または5nM~50nMであり、かかる選択されたCARを含むT細胞は、抗原を発現している標的細胞に対し細胞傷害性を示す。
【0093】
CARに認識される病原体は、本質的にどの種類の病原体であっても良いが、いくつかの実施形態では病原体は真菌、細菌、またはウイルスである。例示的なウイルス性病原体には、Adenoviridae、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、RSウイルス(RSV)、JCウイルス、BKウイルス、HSV、HHVファミリーのウイルス、Picornaviridae、Herpesviridae、Hepadnaviridae、Flaviviridae、Retroviridae、Orthomyxoviridae、Paramyxoviridae、Papovaviridae、Polyomavirus、Rhabdoviridae、及びTogaviridae、ファミリーのものが挙げられる。例示的な病原性ウイルスは天然痘、インフルエンザ、流行性耳下腺炎、麻疹、水痘、エボラ、及び風疹を引き起こす。例示的な病原の真菌類には、Candida, Aspergillus, Cryptococcus, Histoplasma, Pneumocystis、及びStachybotrysが挙げられる。例示的な病原性細菌には、Streptococcus, Pseudomonas, Shigella, Campylobacter, Staphylococcus, Helicobacter, E. coli,
Rickettsia, Bacillus, Bordetella, Chlamydia, Spirochetes、及びSalmonellaが挙げられる。いくつかの実施形態では、病原体受容体デクチン-1を使用して、Aspergillusなどの真菌類の細胞壁上の炭水化物構造を認識するCARが作製され得る。別の実施形態では、ウイルス性決定因子(例えば、CMV及びエボラからの糖タンパク質)を認識する抗体に基づいてCARを作製して、ウイルス性の感染及び病理を阻止することができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、裸のDNAまたはCARをコードする好適なベクターを、被検体のT細胞(例えば、癌または他の疾患に罹患したヒト患者から得られたT細胞)内に導入することができる。裸のDNAを用いた電気穿孔法で安定的にT細胞にトランスフェクトする方法は、当技術分野で公知である。例えば、米国特許第6,410,319号を参照されたい。裸のDNAとは、一般に、発現用プラスミドベクター内に適切な発現方向で含まれる実施形態のキメラ受容体をコードするDNAを指す。いくつかの実施形態では、裸のDNAの使用により、CARを発現しているT細胞を実施形態の方法で作製するのに要する時間が短縮され得る。
【0095】
別法として、T細胞にキメラ構成体を導入するためにウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、またはレンチウイルスベクター)を使用できる。一般に、被検体由来のT細胞へのトランスフェクトに使用される、CARをコードするベクターは、一般に、被検体のT細胞内では非複製であるべきである。多数のウイルス系のベクターが知られており、その場合、細胞内に維持されるウイルスコピー数は、細胞の生存率を維持するのに十分少ない数である。実例となるベクターには、pFB-neoベクター(STRATAGENE(登録商標))並びに、HIV、SV40、EBV、HSV、またはBPV系のベクターが含まれる。
【0096】
トランスフェクトまたは形質導入されたT細胞が、所望のレベルで所望の制御性を備えた表面膜タンパク質としてCARを発現できることが確立されたら、キメラ受容体が宿主細胞で機能して所望のシグナルを誘導するかどうかを決定できる。続いて、被検体の抗腫瘍応答を活性化させるため、形質導入された細胞を被検体に再移入または投与する。投与しやすいよう、形質導入された細胞を、適切な、好ましくは薬理学的に許容される担体または希釈剤を用いて、生体内への投与に適切な医薬組成物またはインプラントに製造してよい。そのような組成物またはインプラントの製造手段は、当該技術分野で記載がある(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,
16th Ed.,Mack, ed.(1980)を参照されたい)。適切な場合、CARを発現している形質導入されたT細胞は、半固形または液体形態の調製物、例えばカプセル、溶液、注射、吸入、またはエアロゾルに、それぞれの投与経路にあった通常の方法で製剤化可能である。当技術分野で公知の手段を使用して、組成物が標的組織若しくは器官に達するまでは放出及び吸収を予防若しくは最小化する、または組成物の徐放性を確実にすることができる。一般に、キメラ受容体を発現している細胞の効力を失わせない薬理学的に許容される形態の使用が好ましい。したがって、形質導入された細胞を、ハンクスの平衡塩溶液のような平衡塩溶液または通常の生理食塩水を含有する医薬組成物にすることが望ましい。
【0097】
IV.実施形態に関する方法及び組成物
特定の態様では、本明細書に記載する実施形態には、hCARをコードするDNA構成体を含有する発現ベクターをT細胞にトランスフェクトし、その後、任意選択で、抗原陽性細胞、組換え型抗原、または受容体に対する抗体で細胞を刺激して細胞を増幅させることを含む、抗原特異的誘導型T細胞の作製及び/または増幅方法が含まれる。
【0098】
別の態様では、電気穿孔法、またはウイルスを用いない他の遺伝子導入法(非限定的に音響穿孔法など)により、裸のDNAを用いてT細胞に安定的にトランスフェクト及び誘導を行う方法を提供する。ほとんどの研究者は、T細胞に異種遺伝子を運ぶためにウイルスベクターを使用してきた。裸のDNAの使用により、誘導型T細胞の作製に要する時間を短縮できる。「Naked DNA(裸のDNA)」とは、発現カセットまたはベクター内に適切な発現方向で含有されたキメラT細胞受容体(cTCR)をコードするDNAを意味する。実施形態の電気穿孔法では、表面にキメラTCR(cTCR)を発現し担持する安定なトランスフェクタントを作製する。
【0099】
特定の態様では、T細胞は、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)、G-CSFで刺激後に採取したPBMC、骨髄、または臍帯血に由来するT細胞のような初代ヒトT細胞である。条件は、mRNA及びDNA及び電気穿孔法の使用を含む。トランスフェクション後、細胞を直ちに注入しても、または保存しても良い。特定の態様では、トランスフェクション後、細胞に遺伝子を導入してから約1、2、3、4、5日またはそれ以上の日数以内に細胞をバルク集団としてエキソビボで数日、数週間、または数か月増殖させてよい。さらなる態様では、トランスフェクション後、トランスフェクタントをクローニングし、組み込まれた、またはエピソームに維持された発現カセット若しくはプラスミドが1つ存在し、キメラ受容体が発現しているクローンをエキソビボで増幅させる。増幅用に選択されたクローンは、CD19を発現している標的細胞を、特異的に認識し溶解させる能力を示す。組換え型T細胞をIL-2、または一般的なガンマ鎖(例えば、IL-7、IL-12、IL-15、IL-21など)を結合する他のサイトカインで刺激して増幅させて良い。組換え型T細胞を人工抗原提示細胞で刺激して増幅させて良い。組換え型T細胞を、人工抗原提示細胞上で、または、T細胞表面のCD3と架橋するOKT3のような抗体を用いて増幅させて良い。組換え型T細胞のサブセットは、人工抗原提示細胞上で、またはT細胞表面のCD52を結合するCampathのような抗体を用いて欠失させて良い。さらなる態様では、遺伝子が組換えられた細胞を凍結保存して良い。
【0100】
注入後のT細胞増殖(生存)は、(i)CARに対して特異的なプライマーを使用したq-PCR、(ii)CARに対して特異的な抗体を使用したフローサイトメトリー、及び/または(iii)可溶性TAAにより評価されうる。
【0101】
本明細書に記載の実施形態は、B細胞を含むB細胞性悪性腫瘍または障害を標的にすることにも関し、誘導型免疫T細胞を使用してCD19特異的細胞表面エピトープを用いる。B細胞はT細胞に免疫刺激抗原を提示する細胞として機能し得ることから、悪性B細胞は誘導型T細胞の優れた標的である。ヒトまたをヒト化CARを担持するドナー由来CD19特異的T細胞を用いた養子療法の抗腫瘍活性を支持する前臨床研究には、(i)CD19+標的殺滅の誘導、(ii)CD19+標的/刺激細胞とのインキュベーション後のサイトカインの分泌/発現の誘導、及び(iii)CD19+標的/刺激細胞とのインキュベーション後の持続的増幅が含まれる。
【0102】
ある実施形態では、CAR細胞を、それを必要とする固体、例えば癌または感染症に罹患している固体に送達する。その後、細胞は、固体の免疫系を高め癌または病原性のそれぞれの細胞を攻撃する。場合によっては、固体は1またはそれ以上の用量の抗原特異的CAR T細胞を与えられる。固体に2またはそれ以上の用量の抗原特異的CAR T細胞が与えられる場合、次の投与までの期間を十分に設けて固体における増殖を可能にするべきであり、具体的な実施形態では、投与間隔をl、2、3、4、5、6、7日、またはそれ以上の日数あけるべきである。
【0103】
キメラ抗原受容体と機能を欠くTCRの双方を含めるために修飾する同種T細胞の供給源はどの種類であってもよいが、具体的な実施形態では、細胞を、例えば、臍帯血バンク、末梢血バンク、ヒト胚幹細胞バンク、または人工多能性幹細胞バンクから入手する。治療効果がある好適用量は、例えば、1回あたり少なくとも105または約105~約1010細胞を、好ましくは一連の投与サイクルで行うものと考えられる。例示的な投与レジメンは、1サイクルを1週間をとする4サイクルの用量漸増投与であり、第0日に少なくとも約105細胞で開始し、例えば固体内用量漸増スキーム開始の数週間で目標用量の約1010細胞まで徐々に増量する。好適な投与方法には、静脈内注射、皮下注射、腔内(例えばリザーバアクセスデバイス)注射、腹腔内注射、及び腫瘍塊への直接注射が挙げられる。
【0104】
実施形態の医薬組成物は、単独で、または癌治療に有用な十分に確立された他の薬剤と組み合わせて使用できる。実施形態の医薬組成物は、単独で送達しても、または他の薬剤と組み合わせて送達しても、さまざまな経路を介して哺乳類、特にヒトの身体のさまざまな部位へ送達されて特定の効果を達成可能である。投与には1つ以上の経路を使用できるが、特定の経路により、別の経路よりも速やかで有効な反応が得られ得ることを当業者は認識するであろう。
【0105】
実施形態の組成物は、各投与単位、例えば注射が、所定量の組成物を含有する単位剤形にして単独または他の活性剤との適切な組み合わせで提供され得る。単位剤形という用語は本発明で使用する場合、ヒト及び動物被検体への単位用量として好適な物理的な個別単位を指し、各単位に、所定量の実施形態組成物が単独または他の活性剤と組み合わせて、所望の効果を得るために十分な計算された量で、適切とされる場合に薬理学的に許容される希釈剤、担体、またはビヒクルと共に含有されるものを指す。実施形態の新規な単位剤形の仕様は、特定の被検体における医薬組成物に関連した特定の薬力学に依存する。
【0106】
望ましくは、長期の特異的抗腫瘍応答が確立され、かかる処置を行わなかった場合よりも腫瘍サイズを縮小させるかまたは腫瘍の増殖若しくは再増殖を排除するよう、有効量または十分な数の単離された形質導入T細胞を組成物内に存在させ、被検体に導入する。望ましくは、被検体に再移入された形質導入T細胞の量は、同じ条件で形質導入T細胞を存在させない場合と比較し、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、または100%の腫瘍サイズ低下をもたらす。
【0107】
したがって、投与される形質導入T細胞の量には、投与経路を考慮するべきであり、所望の治療応答を達成するため十分な数の形質導入T細胞が導入されるようにするべきである。さらに、本明細書に記載の組成物に含まれる各活性剤の量(例えば、接触対象細胞あたりの量または特定の体重あたりの量)は各種用途により異なり得る。一般に、形質導入T細胞の濃度は、望ましくは、少なくとも約1×106~約1×109の形質導入T細胞、よりさらに望ましくは、約1×107~約5×108の形質導入T細胞を治療される被検体に提供するのに十分な濃度であるべきであるが、上回る量、例えば5×108細胞より多い量でも、または下回る量、例えば1×107細胞未満でも、任意の好適な量の使用が可能である。投与スケジュールは、十分に確立された細胞ベースの治療に基づき得るが(例えば、Topalian及びRosenberg(1987年);米国特許第4,690,915号を参照されたい)、または代替的な持続注入法を使用できる。
【0108】
これらの値は、実施形態の方法を最適化する上で医師が利用する形質導入T細胞の範囲についての一般的指標を提供する。本明細書におけるそのような範囲の引用は、特定の用途において妥当である場合があるため、それより多い量または少ない量の成分の使用を何ら除外するものではない。例えば、実際の用量及びスケジュールは、組成物を他の医薬組成物と組み合わせて投与するかどうかによって、またはCARを発現している細胞の個体差(例えば、標的抗原に対するCAR結合親和性)に応じて異なり得る。当業者は、特定の状況の要件に従い、必要ないかなる調整でも容易に行うことができる。
【0109】
V.抗原提示細胞
いくつかの場合には、APCは、CARを用いる治療組成物及び細胞療法製品の調製に有用である。実施形態にしたがって使用するためのAPCには、樹状細胞、マクロファージ及び人工抗原提示細胞が挙げられるがこれらに限定されない。抗原提示系の調製及び使用に関する一般指針については、例えば、米国特許第6,225,042号、6,355,479号、6,362,001号及び6,790,662号;米国特許出願公開第2009/0017000号及び2009/0004142号、かつ国際公開公報番号WO2007/103009を参照されたい)。
【0110】
APCを使用してCARを発現しているT細胞を増殖させて良い。腫瘍抗原との遭遇の間、抗原提示細胞からT細胞に送られたシグナルは、T細胞プログラミング及び以降の細胞の治療有効性に影響し得る。これに刺激を受け、T細胞に与えられるシグナルに対する至適なコントロールを可能にする、人工抗原提示細胞開発への取組みがなされた(Turtle et al.,2010)。対象とする抗体または抗原に加え、APC系に少なくとも1つの外来性補助分子も含めてよい。補助分子の好適な数及び組み合わせは、どのようなものを使用しても良い。補助分子は、共刺激分子及び接着分子などの補助分子から選択され得る。例示的な共刺激分子には、CD70及びB7.1(B7またはCD80とも呼ばれる)が挙げられ、T細胞表面のCD28及び/またはCTLA-4分子に結合し、これにより、例えば、T細胞増幅、Th1分化、短期T細胞生存、及びインターロイキン(IL)-2などのサイトカイン分泌に影響を与え得る(Kim et al.,2004を参照にされたい)。接着分子には、例えば、細胞と細胞または細胞とマトリックスの接触を促進する、セレクチンなどの炭水化物結合糖タンパク質、インテグリンなど膜貫通結合糖タンパク質、カドヘリンなどのカルシウム依存性タンパク質、及び細胞間接着分子(ICAM)などの1回膜貫通型免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリータンパク質が挙げられる。例示的な接着分子には、LFA-3及びICAM-1などのICAMが挙げられる。共刺激分子及び接着分子などの例示的な補助分子の選択、クローニング、調製、及び発現に有用な技術、方法、及び試薬は、例えば、米国特許第6,225,042号、6,355,479号、及び6,362,001号に例示されている。
【0111】
aAPCにするべく選択される細胞は、好ましくは、細胞内の抗原処理、細胞内のペプチド輸送、及び/または細胞内のMHCクラスI若しくはクラスII分子-ペプチド負荷を欠損している、または変温性である(すなわち、温度変化に対する感受性が哺乳類の細胞株より低い)、または欠損及び変温の両特性を有する。好ましくは、aAPCにするべく選択される細胞は、少なくとも1つの対応する内在性細胞(例えば、内在性のMHCクラスI若しくはクラスII分子及び/または上記のような内在性補助分子)を、細胞内に導入される外因性のMHCクラスI若しくはクラスII分子及び補助分子成分に発現させる能力も欠失している。さらに、aAPCは、好ましくは、aAPC作製のための修飾を行う前に細胞が獲得していた欠損及び変温特性を保持している。例示的なaAPCは、昆虫細胞株のような抗原処理関連トランスポーター(TAP)を欠損している細胞株から構成されるかまたは由来する。例示的な変温昆虫細胞株は、Schneider2細胞株のようなショウジョウバエ細胞株(例えば、Schneider, J.m 1972)である。Schneider2細胞の調製、増殖、及び培養の実例となる方法は、米国特許第6,225,042号、6,355,479号、及び6,362,001号に記載がある。
【0112】
APCは、凍結-解凍サイクルに供してよい。例えば、APCは、急速に凍結が起きるよう、好適なAPC含有容器を適切量の液体窒素、固体二酸化炭素(ドライアイス)、または類似の低温物質と接触させることにより凍結させて良い。その後、APCを低温物質から外して環境室温条件に曝露するか、または微温の水浴若しくは温かい手で温める方法で解凍時間の短縮を促す解凍しやすい方法のいずれかで凍結APCを解凍する。さらに、APCは、凍結して長期間保存して後で解凍して良い。凍結APCは、解凍した後、その後の使用のために凍結乾燥しても良い。ジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリエチレングリコール(PEG)、及び他の防腐剤のように凍結-解凍手順に有害な影響を与える可能性のある防腐剤は、凍結-解凍サイクルを受けるAPC含有培地から有利に除かれ得るか、または、例えば本質的にそのような防腐剤を欠いている培地にAPCを移して、本質的に除去される。
【0113】
その他の実施形態では、異種核酸及びaAPC内在性核酸を架橋により不活性化し、不活性化後は細胞の増殖、核酸の複製または発現が本質的に起こらないようにして良い。例えば、aAPCを、外因性MHC及び補助分子の発現、そのような分子のaAPC表面上での提示、及び提示されたMHC分子の選択されたペプチド(類)での負荷に続く時点で不活性化して良い。したがって、そのような不活性化され選択されたペプチドを負荷したaAPCは、本質的に増幅または複製不能となり、選択されたペプチドの提示機能を保持して良い。架橋により、実質的にaAPCの抗原提示細胞機能を損なうことなく、細菌及びウイルスなどの汚染微生物が本質的にないaAPCを得ることができる。したがって、架橋を使用して、aAPCの重要APC機能を維持し、一方で、aAPCを使用して作製された細胞療法製品の安全性に関する懸念を解消する一助とすることができる。架橋及びaAPCに関する方法については、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20090017000号を参照にされたい。
【0114】
VI.キット
本明細書に記載の組成物はいずれもキットに含まれて良い。いくつかの実施形態では、同種CAR T細胞はキットで提供され、このキットには、細胞を増幅させるために好適な試薬、培地、抗原提示細胞(例えば、aAPC)、成長因子、抗体(例えば、CAR T細胞の選別または特徴付けのため)及び/またはCAR若しくはトランスポザーゼをコードするプラスミドも含まれ得る。
【0115】
非限定的な例には、キメラ受容体発現構成体、キメラ受容体発現構成体を作製するための1つまたはそれ以上の試薬、発現構成体のトランスフェクション用の細胞、及び/または発現構成体のトランスフェクション用同種細胞を得るための1つ若しくはそれ以上の器具(そのような器具は、シリンジ、ピペット、鉗子、及び/またはそのような医療用に承認された任意の装置)がある。
【0116】
いくつかの実施形態では、内在性TCRα/βの発現を排除するための発現構成体、かかる構成体を作製するための1つまたはそれ以上の試薬、及び/またはCAR+T細胞がキット内に提供される。いくつかの実施形態では、そこに、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(複数可)をコードする発現構成体が含まれる。
【0117】
いくつかの態様では、キットは、細胞の電気穿孔用の試薬または器具類を含む。
【0118】
キットは、1つ若しくはそれ以上の好適に分注された実施形態組成物または実施形態組成物を作製するための試薬を含んでよい。キットの構成要素は、水性媒体中に包装するかまたは凍結乾燥形態にして包装してよい。キットの容器手段には、少なくとも1個のバイアル、試験管、フラスコ、瓶、シリンジ、または他の容器手段が含まれて良く、その中に一成分を置き、好ましくは、好適に分注して良い。キット内に1つ以上の成分がある場合、キットには一般に、第2、第3、またはさらなる他の容器も含まれることになるので、その中にさらなる成分を別々に置いて良い。しかし、さまざまな組み合わせの成分がバイアルに含まれて良い。実施形態のキットには、典型的には、キメラ受容体構成体を収容する手段及び市販用の他の任意の密閉(close confinement)試薬容器が含まれることになる。そのような容器には、例えば、中に所望のバイアルを保持する射出成形またはブロー成形したプラスチック製容器が含まれ得る。
【0119】
VII.実施例
以下の具体的及び非限定的な実施例は、単なる例示として解釈されるべきであり、本願開示を何ら制限するものではない。さらなる詳述がなくても、当業者は、本明細書の記載に基づいて本願開示を最大限に利用できると考えられる。本明細書で引用したすべての刊行物は参照することにより本明細書にその全体が組み込まれる。URLまたはそのような他の識別子若しくはアドレスに言及する場合、そのような識別子は変更されることがあり、またインターネット上の特定の情報は入れ替わることがあるが、インターネットで検索すれば同等情報を見出すことができることが理解される。それら言及することは、そのような情報が入手可能であり、公に普及していることを証明する。
【実施例0120】
実施例1-材料及び方法
プラスミド
【0121】
セツキシマブ由来CARトランスポゾン。セツキシマブ由来のCARは以下のとおり構成される:ヒトGMCSFR2シグナルペプチド由来シグナルペプチド(アミノ酸1~22;NP_758452.1)、セツキシマブの可変軽鎖(PDB:1YY9_C)whitlowリンカー(AAE37780.1)、セツキシマブの可変重鎖(PDB:1YY9_D)、ヒトIgG4(アミノ酸161~389、AAG00912.1)、ヒトCD28膜貫通ドメイン及びシグナル伝達ドメイン(アミノ酸153~220、NP_006130)、及びヒトCD3-ζ細胞内ドメイン(アミノ酸52から164まで、NP_932170.1)。GMCSFR2の配列、可変軽鎖、whitlowリンカー、可変重鎖及び部分的IgG4をGeneART(Regensburg、ドイツ)によりヒトコドンに最適化して0700310/pMKとして作製した。これまでに記載のある、ヒト伸長因子1-アルファ(HEF1α)プロモーターの制御下のCD19CD28mZ(CoOp)/pSBSOをSBトランスポゾンの骨格として選択した。0700310/pMK及びこれまでに記載のあるCD19CD28mZ/pSBSO(93、94)を制限酵素NheI及びXmnIで二重消化させた。アガロースゲル電気泳動によりCARインサート及びトランスポゾン骨格をそれぞれ、1.3kb及び5.2kbのDNA断片として同定し、その際、0.8%アガロースゲル中を150ボルトで45分間移動させ、臭化エチジウムで染色して紫外光曝露下で視覚化させて行った。バンドを切断して精製し(Qiaquick Gel Extractionキット、Qiagen、カリフォルニア州バレンシア)、その後、T4 DNAリガーゼ(Promega、ウィスコンシン州マディソン)を使用してインサートと骨格のモル比3:1でライゲーションを行った。化学的にコンピテントな細菌TOP10(Invitrogen、ニューヨーク州グランドアイランド)に熱ショック形質転換を行い、カナマイシン含有寒天プレートで37℃にて12~16時間培養して選抜を行い、トランスポゾン骨格に陽性の細菌クローンを同定した。6個のクローンを選択し、選抜用カナマイシン含有TB培地で37℃、8時間のmini-cultureに供した。MiniPrepキット(Qiagen)でmini-cultureからDNAを調製し、その後、分析用に制限酵素で消化させ、アガロースゲル電気泳動で断片サイズを分析し、CetuxCD28mZ(CoOp)/pSBSOに陽性のクローンを同定した(
図33A)。陽性クローンを選抜用抗生物質カナマイシンを含むTB培地の大型培養に1:1000で植菌し、振盪器で対数期の増殖が達成されるまで37℃、16時間培養した。EndoFree Maxi Prepキット(Qiagen)を使用して細菌からDNAを単離した。DNAの分光光度分析によりOD260/280読取り値1.8~2.0が確認された。
【0122】
Nimotuzumab(ニモツズマブ)由来CARトランスポゾン。Nimotuzumab(ニモツズマブ)由来のCARは以下のとおり構成される:ヒトGMCSFR2シグナルペプチド由来シグナルペプチド(アミノ酸1~19、NP_001155003.1)、nimotuzumab(ニモツズマブ)の可変軽鎖(PDB:3GKW_L)whitlowリンカー(GenBank:AAE37780.1)、Nimotuzumab(ニモツズマブ)の可変重鎖(PDB:3GKW_H)、ヒトIgG4(アミノ酸161~389、AAG00912.1)、ヒトCD28膜貫通ドメイン及びシグナル伝達ドメイン(アミノ酸153~220、NP_006130)、及びヒトCD3-ζ細胞内ドメイン(アミノ酸52から164まで、NP_932170.1)。GMCSFR2の配列、可変軽鎖、whitlowリンカー、可変重鎖及び部分的IgG4をGeneARTによりヒトコドンに最適化し、0841503/pMKとして作製した。08541503/pMK及びこれまでに記載のあるCD19CD28mZ/pSBSO(Singh et al.,2013;Singh et al.,2008)を制限酵素NheI及びXmnIで二重消化させ、ライゲーション、形質転換、大規模増幅及びプラスミドNimoCD28mZ(CoOp)/pSBSO(
図33B)の精製を上記のように実施した。
【0123】
SB11トランスポザーゼ。CMVプロモーター(Kan-CMV-SB11)制御下の高活性SB11トランスポザーゼをこれまでの記載にあるように(Singh et al.,2008;Davies et al.,2010)使用した。
【0124】
pGEM/GFP/A64。後に64のA-T塩基対及びSpeI部位が続くT7プロモーター制御下GFPを使用してGFP RNAのインビトロ転写を行った。pGEM/GFP/A64のクローニングはこれまでに記載がある(Boczkowski et al.,2000)。
【0125】
セツキシマブ由来のCAR/pGEM-A64。セツキシマブ由来のCARを、CetuxCD28mZ(CoOp)/pSBSO及びCD19CD28mZ(CoOp)/pSBSO-MCSをNheI及びXmnIで二重消化させることにより、中間ベクターであるpSBSO-MCSにクローニングした。Cetux-CARインサート及びpSBSO-MCS骨格を、電気泳動後アガロースゲルから抽出し、CetuxCD28mZ(CoOp)/pSBSO作製時の記載にあるようにライゲーション、形質転換、及び大規模増幅を行って単離した。CetuxCD28mZ(CoOp)をpGEM/GFP/A64プラスミドにクローニングし、64ヌクレオチド長の人工ポリAテールを有するRNAのインビトロ転写のためにCetux-CARをT7プロモーターの制御下に置いた。CetuxCD28mZ(CoOp)/pSBSO-MCSをNheI及びEcoRVを用いて37℃で消化させ、pGEM/GFP/A64をXbaIで37℃にて、次いでSmaIで25℃にて順次消化させた。消化を受けたCetux-CARインサート及びpGEM/A64骨格を、0.8%アガロースゲル中を150ボルトで45分間移動させる電気泳動により分離し、臭化エチジウム染色及びUV光曝露により視覚化した。断片をゲルから切断してQiaquick Gel Extraction(Qiagen)で精製してから、T4 DNAリガーゼ(Promega)を用いてインサートとベクターのモル比3:1にてライゲーションを行い、16℃で一晩インキュベートした。化学的にコンピテントな細菌Dam-/-C2925(Invitrogen)を熱ショックにより形質転換し、pGEM/A64骨格を含有するクローンを選択するためにアンピシリン含有寒天上で37℃にて一晩培養した。小規模DNA増幅用に8個のクローンを選択した、選抜用抗生物質アンピシリンを含むTB培地に植菌し、振盪器で37℃にて8時間培養した。MiniPrepキット(Qiagen)を使用してDNAの精製を実施し、分析用に制限酵素で消化させてから電気泳動を行い、ライゲーション産物CetuxCD28mZ/pGEM-A64(
図33C)が正確に発現されているクローンを決定した。陽性クローンを選択し、アンピシリン含有TBに1:1000で植菌した。37℃で18時間培養した後、EndoFree Plasmid Purificationキット(Qiagen)を使用してDNAを精製した。分光測光法により、OD260/280比が1.8~2.0の高品質DNAが確認された。
【0126】
Nimotuzumab(ニモツズマブ)由来のCAR/pGEM-A64。
NimoCD28mZ(CoOp)/pSBSOをNheIで37℃にて、またSfiIで50℃にて順次消化させ、pGEM/GFP/A64をXbaIで37℃にて、またSfiIで50℃にて順次消化させた。NimoCD28mZ(CoOp)をpGEM/GFP/A64プラスミドにクローニングし、64ヌクレオチド長の人工ポリAテールを有するRNAのインビトロ転写のためにNimo-CARをT7プロモーターの制御下に置いた。消化されたNimo-CARインサート及びpGEM/A64骨格を、0.8%アガロースゲル中を150ボルトで45分間移動させる電気泳動により分離し、臭化エチジウム染色及びUV光曝露により視覚化した。断片をゲルから切断して、Qiaquick
Gel Extractions(Qiagen)で精製し、T4 DNAリガーゼ(Promega)を用いてインサートとベクターのモル比3:1にてライゲーションを行い、16℃で一晩インキュベートした。化学的にコンピテントな細菌Dam-/-C2925(Invitrogen)を熱ショックにより形質転換し、pGEM/A64骨格を含有するクローンを選択するためにアンピシリン含有寒天上で37℃にて一晩培養した。小規模DNA増幅用に8個のクローンを選択した、選抜用抗生物質アンピシリンを含むTB培地に植菌し、振盪器で37℃にて8時間培養した。MiniPrepキット(Qiagen)を使用してDNAの精製を実施し、分析用に制限酵素で消化させてから電気泳動を行い、ライゲーション産物NimoCD28mZ/pGEM-A64(
図33D)が正確に発現されているクローンを決定した。陽性クローンを選択し、アンピシリン含有TBに1:1000で植菌した。37℃で18時間培養した後、EndoFree Plasmid Purificationキット(Qiagen)を使用してDNAを精製した。分光測光法により、OD260/280比が1.8~2.0の高品質DNAが確認された。
【0127】
切断型EGFRトランスポゾン。自己分解型ペプチド配列F2Aを介してネオマイシン耐性用遺伝子に連結して、切断型EGFRをSBトランスポゾンにクローニングした。細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインのみを含有する、コドンが最適化されたヒトEGFR(アクセッションNP_005219.2)の切断型0909312 ErbB1/pMK-RQをGeneArt(Regensburg、ドイツ)により合成した。ErbB1/pMK-RQをNheI及びSmaIで37℃にて消化させ、また、tCD19-F2A-Neo/pSBSOは、NheIで37℃にて消化させた後、精製工程を間にはさんでNruIで37℃にて順次消化させた(Qiaquick Gel Extractionキット、Qiagen)。tEGFRインサート及びF2A-Neo/pSBSO骨格を、0.8%アガロースゲル、150ボルト、45分間移動のゲル電気泳動により分離した。予測サイズのバンドを単離し(Qiaquick Gel Extractionキット、Qiagen)、T4 DNAリガーゼ(Promega)を用いて一晩16℃にてライゲーションを行った。化学的にコンピテントな細胞TOP10(Invitrogen)をライゲーション産物を用いて熱ショックで形質転換させ、カナマイシン含有寒天上で一晩培養した。カナマイシン含有TBでの8時間培養による小規模DNA増幅用に5個のクローンを植菌した。Mini Prepキット(Qiagen)でDNAを精製し、次いで分析用制限酵素で消化させることにより、tErbB1-F2A-Neo/pSBSOに陽性のクローンを同定した(
図33E)。陽性クローンを大規模DNA増幅用に1:1000で培養に植菌し、振盪器で37℃にて16時間培養した。EndoFree Plasmid Purificationキット(Qiagen)を使用して対数期の増殖にある細菌からのDNAを精製し、分光測光法でOD260/280読取り値1.8~2.0のDNA純度を確認した。
【0128】
CAR-Lトランスポゾン。これまでに記載のある2D3ハイブリドーマ(94)を使用してCAR-LのscFv配列を導いた。手短に言えば、RNeasy Mini Kit(Qiagen)により製造者の指示にしたがってRNAをハイブリドーマから抽出した。Superscript III First Strandキット(Invitrogen)による逆転写でcDNAライブラリーを作製した。FR1領域についての縮重プライマーを使用したPCRでマウスの可変重鎖及び可変軽鎖を増幅させ、次いで、それらをTOPO TAベクター内にライゲーションさせた。CAR-Lを、コドンが最適化された配列として以下のとおり構築した。ヒトGMCSFRシグナルペプチド(アミノ酸1~22;NP_758452.1)の後に、2D3由来scFvをヒトCD8α細胞外ドメイン(アミノ酸136~182;NP_001759.3)に融合させ、ヒトCD28(アミノ酸56~123;NP_001230006.1)の膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを配し、ヒトCD3ζ細胞内ドメイン(アミノ酸.48~163;NP_000725.1)で終結させた。CAR-Lタンパク質をGeneArtで合成し、その後、切断して自己-切断可能な2Aペプチドをゼオマイシン(zeomycin)耐性遺伝子に融合させてSBトランスポゾン内にライゲーションさせ、CAR-l-2A-Zeoとした(
図33F)(Rushworth et al.,2014)。
【0129】
細胞株:増殖及び修飾
【0130】
すべての細胞株は、特に断りのない限り、10%熱非働化したウシ胎児血清(FBS)(HyClone、ThermoScientific)及び2mM Glutamax-100(Gibco、Life Technologies)を添加した完全培地ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Life Technologies、ニューヨーク州グランドアイランド)に5%CO2、湿度95%及び37℃に維持された。接着細胞株を通常の方法で70~80%コンフルエントな状態まで培養し、その後、0.05%トリプシン-EDTA(Gibco)で剥離させてから1:10で継代する。AmpF_STR Identifierキット(Applied Biosystems、カタログ番号4322288)を製造者の指示にしたがって使用し、STR DNA指紋法で細胞株の同一性を確認した。STRプロファイルを、公知のATCC指紋(ATCC.org)、及びCell Line Integrated Molecular Authenticationデータベース(CLIMA)バージョン0.1.200808(ワールドワイドウェブbioinformatics.istge.it/clima/)(Nucleic Acids Research37:D925-D932PMCID:PMC2686526)と比較した。STRプロファイルは、公知のDNA指紋と一致した。
【0131】
OKT3搭載K562クローン4。K562クローン4は、ペンシルバニア大学M.D.であるCarl June氏から贈与されたものであり、先に記載がある(Suhoski et al.,2007;Paulos et al.,2008)。クローン4は、tCD19、CD86、CD137L、CD64及びIL15-GFP融合膜タンパク質を発現させるために修飾され、PACT下の前臨床研究及び臨床研究用のワーキングセルバンクとして製造されている。K562クローン4は、CD64高親和性Fc受容体への結合により、抗CD3抗体OKT3を発現するよう作成可能である。OKT3をK562クローン4に搭載するため、X-VIVO無血清培地(Lonza、ドイツ、ケルン)に1×20% N-アセチルシステインを1x106細胞/mLの密度で加え、細胞を一晩培養した。この工程によりFc受容体がきれいになり、OKT3を至適に結合できる。翌日、細胞を洗浄し、1×20% N-アセチルシステインを加えたX-VIVO培地に1x106細胞/mLで再懸濁させ、100Gyで照射した。細胞を洗浄してPBSに1x106細胞/mLで再懸濁させOKT3(eBioscience、カリフォルニア州サンディエゴ)を濃度1mg/mLで加え、ローラー上で4℃にて30分間インキュベートした。細胞を再洗浄して染色し、共刺激分子及びOKT3の発現をフローサイトメトリーにより確認し、凍結保存した。
【0132】
tEGFR+K562クローン27。K562クローン27はK562クローン9由来であり、ペンシルバニア大学M.D.であるCarl June氏から贈与された。これまでに記載があるように(Suhoski et al.,2007;Paulos et al.,2008)K562クローン9をレンチウイルスで形質導入し、tCD19、CD86、CD137L、及びCD64を発現させた。クローン27は、膜に繋留(tether)されたIL15-IL15Rα融合タンパク質(Hurton, L. V.、2014)を安定的に発現させるため、クローン9をSBトランスフェクションを介して修飾し、限界希釈法でクローニングされたものであり、フローサイトメトリーによりすべての導入遺伝子の発現が確認された。K562クローン27を、切断型EGFRを発現するよう、tErbB1-F2A-Neo/pSBSOのSBトランスフェクションにより修飾した。EGFRを発現しているK562クローン27を、PE標識したEGFR特異的抗体(BD Biosciences、カリフォルニア州カールスバッド、カタログ番号555997)及び抗PEビーズ(Miltenyi Biotec、カリフォルニア州オーバーン)と共にインキュベートし、その後、磁性カラム(Miltenyi Biotec)に流し非標識細胞から分離した。磁気で選択した後、EGFR高発現を維持するため、1mg/mLのG418(Invivogen、カリフォルニア州サンディエゴ)の存在下でtEGFR+K562クローン27を培養した。
【0133】
EL4、CD19+EL4、tEGFR+EL4、及びCAR-L+EL4。EL4をATCCから入手し、tCD19-F2A-Neo、tEGFR-F2A-NeoまたはCAR-l-F2A-Neoを発現するよう、SB非ウイルス性遺伝子組換えにより修飾した。Amaxa Nucelofector(Lonza)及び初代マウスT細胞キット(Lonza)を製造者の指示にしたがって使用し、EL4に電気穿孔を行った。手短に言えば、2x106EL4細胞を90xgにて10分間の遠心分離にかけ、3μgトランスポゾン(tCD19-F2A-Neo、tEGFR-F2A-Neo、またはCAR-l-2A-Zeo)及び2ug SB11トランスポザーゼを含む100uL初代マウスT細胞緩衝液に再懸濁させ、AmaxaプログラムX-001を使用して電気穿孔を行った。電気穿孔の後、細胞を直ちに、予め温めた、キット(Lonza)と共に提供された初代マウスT細胞補足培地に移した。翌日、1mg/mLのG418を加え、導入遺伝子を発現するよう修飾されたEL4細胞を選択した。修飾後7日目にフローサイトメトリーで発現を確認した。
【0134】
U87、U87low、U87med、及びU87high。U87(正式にはU87MG)をATCC(バージニア州マナサス)から得た。EGFRを過剰発現させるため、Amaxa Nucleofector及び細胞株NucleofectorキットT(Lonza、カタログ番号VACA-1002)を製造者の指示にしたがって使用し、tErbB1-F2A-Neo/pSBSO及びSB11を用いた電気穿孔法によりU87low及びU87medを作製した。手短に言えば、U87細胞を80%コンフルエントな状態まで培養し、その後、0.05%トリプシン-EDTA(Gibco)で剥離させて回収し、トリパンブルー色素排除法を使用して細胞自動カウント装置(Cellometer、Auto T4 Cell Counter、Nexcelcom、マサチューセッツ州ローレンス)で計数した。3μgのtErbB1-F2A-Neo/pSBSOトランスポゾン及び2μgのSB11トランスポザーゼを存在させた細胞株キットT電気穿孔緩衝液100μLに1x106のU87細胞を懸濁させ、キュベットに移してプログラムU-029で電気穿孔を行った。電気穿孔後、細胞は直ちに6ウェルプレートに移され、DMEM完全培地に回収される。翌日、導入遺伝子発現を選択するため、0.35mg/mLのG418(Invivogen)を加えた。少なくとも1x106細胞まで増殖させた後、フローサイトメトリーを実施しEGFR発現を評価した。電気穿孔を行ったU87細胞は、非修飾U87に対してわずかに高いEGFR発現上昇を示し、これらをU87lowとした。U87med細胞を作製するため、Lipofectamine2000(Invitrogen)を製造者の指示にしたがって使用して、tErbB1-F2A-Neo及びSB11をリポフェクタミンでU87細胞に移入した。翌日、ネオマイシン耐性について選抜する培養を行うため、0.35mg/mLのG418を加えた。細胞を相当数まで増殖させた後、フローサイトメトリーにより、ピークが2つある集団であることがわかり、U87細胞に対し、互いに排他的に、EGFR過剰発現がわずかであるかまたは高かった。細胞を抗EGFR-PEで染色し、最高ピークの上位50%についてFACSで選別した。細胞が70%コンフルエントな状態を越えない場合は慎重にサブクローニングし、細胞がEGFR発現を維持していることを確認するため、通常のようにフローサイトメトリー分析を実施した。U87highは、wtEGFRを過剰発現するU87-172b細胞であるが、その細胞を、Oliver Bolger、Ph.D.の
ご厚意により贈与された。
【0135】
U87-ffLuc-mKate及びU87med-ffLuc-mKate。U87及びU87med細胞にffLuc-mKate導入遺伝子(
図34)を発現させるため、これまでに記載のあるプロトコル(Turkman et al.,2011)と同様にレンチウイルスで形質導入を行った。手短に言えば、293-METRパッケージング細胞に、Lipofectamine2000(Invitrogen)の存在下で製造者の指示にしたがって、pcMVR8.2、VSV-G及びpLVU3GeffLuc-T2AmKates158Aをトランスフェクトした。48時間後、ウイルス様粒子(VLP)を回収し、100kDa NMWLフィルター(Millipore、マサチューセッツ州ビレリカ)で濃縮した。U87及びU87medを導入するため、細胞を70~80%コンフルエントな状態になるまで6ウェルプレートにプレーティングし、その後、ffLucmKate VLPを、8μg/mLポリブレンと共に加えた。プレートを1800rpmにて1.5時間の遠心分離にかけてから、6時間インキュベートした。インキュベーションの後、上清を除去した。形質導入から24時間後、細胞はコンフルエントな状態に達し、それを継代培養して、ffLuc-mKateを中程度のレベルで発現している細胞についてFACSで選別した。
【0136】
ヒト腎皮質上皮細胞(HRCE)。健常固体の腎臓近位尿細管及び腎臓遠位尿細管から採取したという記載のあるHRCEをLonzaより入手し、組換え型ヒト上皮増殖因子(rhEGFR)、エピネフリン、インスリン、トリヨードサイロニン、ヒドロコルチゾン、トランスフェリン、10%熱非働化FBS(HyClone)、及び2mM Glutamax-100(Gibco)を添加した完全Renal Growth Media(Lonza、カタログ番号CC-3190)で培養した。HRCEはインビトロで寿命があるため、すべての評価は、集団倍加回数が10未満の細胞で実施された。細胞を70~80%コンフルエントな状態まで培養し、その後、0.05%トリプシン-EDTA(Gibco)で剥離させ、新鮮な完全Renal Growth Mediaで1:5にて継代した。
【0137】
NALM-6、T98G、LN18及びA431。NALM-6、T98G、LN18、及びA431をすべてATCCから入手し、細胞株の記載のとおり培養した。
【0138】
T細胞の修飾及び培養。末梢血単核細胞をGulf Coast Regional Blood Bankの健常ドナーから入手し、Ficoll-Paque(GE Healthcare、ウィスコンシン州ミルウォーキー)で単離し、凍結保存した。全T細胞培養を、完全RPMI-1640(HyClone)に10%FBS(HyClone)及び2mM Glutamax(Gibco)を添加して維持した。
【0139】
SBトランスポゾン/トランスポザーゼでの電気穿孔。これまでに記載があるように(Singh et al.,2008)SB電気穿孔法を実施した。PBMCを電気穿孔の当日に解凍し、サイトカイン不含培地完全RPMI-1640に1x106細胞/mLの密度で2時間静置した。静置期間後、細胞を200xgにて8分間の遠心分離にかけ、その後、培地に再懸濁させ、細胞自動カウント装置(Cellometer、Auto T4 Cell Counter、Nexcelcom)を使用しトリパンブルー色素排除法で計数した。PBMCを再び遠心分離にかけ、2x108/mLでヒトT細胞電気穿孔緩衝液(Lonza、カタログ番号VPA-1002)に再懸濁させ、その後、100μLの細胞懸濁液を15μgトランスポゾン(Cetux-またはNimo-CARいずれか)及び5μg SB11トランスポザーゼと混合して電気穿孔キュベットに移し、Amaxa Nucleofector(Lonza)で未刺激ヒトT細胞用のプログラムU-014を使用して電気穿孔を行った。電気穿孔の後、細胞を直ちに、20%熱非働化FBS(HyClone)及び2mM Glutamax-100(Gibco)を添加したフェノール不含RPMIに移し、一晩かけて回収した。翌日、細胞を、CD3及びFc(CAR発現を測定するため)についてフローサイトメトリーで分析し、トランスポゾンの一過性発現を測定した。
【0140】
CAR+T細胞の刺激及び培養。電気穿孔から24時間後、細胞を、100Gy照射EGFR+K562クローン27人工抗原提示細胞(aAPC)をT細胞CAR+:aAPC=2:1の比で用いて刺激した。T細胞を、フローサイトメトリーでCAR発現を評価した後7~9日おきに再刺激した。培養期間全体を通して、T細胞培養に30ng/mLのIL-21(Peprotech、ニュージャージー州ロッキー・ヒル)を2~3日おきに加えた。50U/mLでの第2の刺激サイクル後、2~3日おきに培養にIL-2(アルデロイキン(Aldeleukin)、Novartis、スイス)を加えた。14日目、培養を、NK細胞(培養中、CD3negCD56+細胞として指定)の存在について評価した。NK細胞が細胞集団の10%を超えて示された場合、NK細胞をCD56特異的磁気ビーズ(Miltenyi Biotec)で標識し、LSカラム(Miltenyi Biotec)で選別することにより、NK細胞除去を実施した。CAR+T細胞含有陰性フロースルーのフローサイトメトリーにより、NK細胞亜集団が培養から首尾良く除去されていることを確認した。通常は刺激5サイクルの後である、CARがCD3+T細胞の85%を超えて発現した場合に培養を機能について評価した。
【0141】
RNAインビトロ転写。CetuxCD28mZ/pGEM-A64、NimoCD28mZ/pGEM-A64、またはGFP/pGEM-A64を、RNAインビトロ転写用の直鎖状鋳型を得るため、SpeIを用いて37℃で4時間消化させた。0.8%アガロースゲルでのアガロースゲル電気泳動及び単一バンドの存在により、鋳型が完全に直鎖化されたことを確認し、残存消化物をQiaQuick PCR Purification(Qiagen)で精製してから小容量で溶出させ濃度0.5μg/μLを達成した。T7 mMACHINE mMESSAGE Ultra(Ambion、Life Technologies、カタログ番号AM1345)を製造者のプロトコルにしたがって使用してインビトロ転写反応を実施し、37℃で2時間インキュベートした。mRNAの転写後、DNA鋳型1μgあたり1ユニットの供給されたTurbo DNAseを付加してDNA鋳型を分解させ、さらに30分、37℃でインキュベートした。RNeasy Miniキット(Qiagen)を使用して転写されたRNAを精製した。濃度及び純度(OD260/280値=2.0~2.2)を分光測光法により測定し、単回解凍用に分注して-80℃で凍結した。RNA産物の品質は、1xMOPSランニング緩衝液中、ホルムアルデヒド含有アガロースゲル(1%アガロース、10%10×MOPSランニング緩衝液、6.7%ホルムアルデヒド)で75ボルト、80分間のゲル電気泳動を行い、単一の直鎖化バンドの視覚化により評価を行った。
【0142】
ポリクローナルT細胞増幅。抗原とは無関係のT細胞数増幅は、CD3との架橋を介して増幅性刺激を送るOKT3を搭載した100Gy照射K562クローン4を用いて培養することにより達成した。7~10日おきに、T細胞:aAPCの密度を10:1または1:2にしてaAPCを加え、50U/mL IL-2を2~3日おきに加えた。培養全体を通して、T細胞密度を0.5~2x106細胞/mLに維持するために培地交換を実施した。
【0143】
T細胞へのRNA電気泳動転写。RNA移入3~5日前に上記のように100Gy照射OKT3搭載K562クローン4を用いて共培養することによりT細胞に刺激を与える。電気泳動転写前にT細胞を回収し、細胞自動カウント装置(Cellometer、Auto T4 Cell Counter、Nexcelcom)を使用してトリパンブルー色素排除法で計数した。細胞調製中、RNAを-80℃フリーザーから取り出し、氷上で解凍した。T細胞を90xgにて10分間の遠心分離にかけ、細胞ペレットを破壊せずに確実に完全除去するよう、上清を慎重に吸引した。T細胞をP3初代細胞4D-Nucleofector緩衝液(Lonza、カタログ番号V4XP-3032)に懸濁させて濃度を1x108/mLとし、各T細胞懸濁液20μLを3μgのインビトロ転写したRNAと混合し、その後、Nucleofectorキュベットストリップ(Lonza、カタログ番号V4XP-3032)に移した。細胞に、Amaxa 4D Nucleofector(Lonza)でプログラムDQ-115を使用して電気穿孔を行い、その後、キュベットに15分を最高に静置した。静置期間の後、2mM Glutamax-100(Gibco)及び20%熱非働化FBS(HyClone)を添加した温かい回収培地、フェノール不含RPMI1640(HyClone)をキュベットに加え、細胞を回収培地含有6ウェルプレートに穏やかに移してから組織培養インキュベーターに移した。4時間後、50U/mL IL-2及び30ng/mL IL-21をT細胞に加えた。RNAの移入から4~24時間後、T細胞をFcに対するフローサイトメトリーでCAR発現について分析した。全ての機能解析は、RNA移入後24時間目に行った。
【0144】
免疫染色及びフローサイトメトリー
【0145】
獲得及び分析。フローサイトメトリーデータは、FACS Calibur(BD Biosciences、カリフォルニア州サンノゼ)で収集し、CellQuestソフトウェア(バージョン3.3、BD Biosciences)を使用して得た。FlowJoソフトウェア(バージョンx.0.6、TreeStar、オレゴン州アシュランド)を使用してフローサイトメトリーデータ解析を実施した。
【0146】
表面免疫染色及び抗体。最高1x106細胞の免疫染色を、以下の色素を以下の希釈度(特に明記しない限り)で結合させたモノクローナル抗体を用いて実施した:フルオレセイン(FITC、1:25)、フィコエリスリン(PE、1:40)、cyanine色素に結合させたペリジニンクロロフィルタンパク質(PerCPCy5.5、1:25)、アロフィコシアニン(APC、1:40)、AlexaFluor488(1:20)、AlexaFluor647(1:20)。特に明記しない限り、抗体はすべてBD Biosciencesから購入した。抗体は、以下に対して特異的なものを使用した:CD3(クローンSK7)、CD4(クローンRPA-T4、CD8(クローンSK1)、CD19(HIB19)、CD27(クローンL128)、CD28(クローンL293)、CD45RA(クローンHI100)、CD45RO(クローンHI100)、CD56(クローンB159)、CD62L(クローンDREG-56)、CCR7(クローンGD43H7、Biolegend(サンディエゴ)、CARとPerCPCy5.5を1:45で希釈)、EGFR(クローンEGFR.1、PE希釈1:13.3)、Fc(CAR検出用、クローンHI10104、Invitrogen)、IL15(クローン34559、R&D Systems(ミネソタ州ミネアポリス)、PE希釈1:20)、マウスF(ab’)2(K562に担持させたOKT3検出用、Jackson Immunoresearch(ペンシルベニア州ウェストグローブ)、カタログ番号115-116-072、PE希釈1:100)、TNF-α(クローンmAb11、PE希釈1:40)及びIFN-γ(クローン27、APC希釈1:66.7)、pErk1/2(クローン20A、AlexaFluor647)、pp38(クローン36/p38、PE)及びKi-67(クローンB56、FITC、1:20、BD Biosciences)。表面分子をFACS緩衝液(PBS、2%FBS、0.5%アジ化ナトリウム)中で30分、暗所にて4℃で染色した。
【0147】
定量フローサイトメトリー。Quantum Simply Cellularポリスチレンビーズ(Bangs Laboratories、インディアナ州フィッシャーズ)を使用して定量フローサイトメトリーを実施した。抗マウスIgG量が増加している、既知の抗体結合能(ABC)を有する4集団、及びブランク集団1つ、計5集団のビーズが提供される。EGFR-PE(BD Biosciences、カタログ番号555997)を標的細胞の免疫染色と同調的に飽和濃度(希釈度1:3、製造者の推奨に従う)でビーズと共にインキュベートした。微粒子に対するEGFR-PE結合のMFIを使用して標準曲線を作成し、それに、QuickCal Data Analysis Program(バージョン2.3、Bangs Laboratories)を使用して線形回帰をあてはめた(
図35)。標的細胞に対するEGFR-PE結合のMFI測定値を、バックグランドの自家蛍光を引いて線形回帰に適用し、細胞あたりの発現EGFR分子数の平均を得た。
【0148】
細胞内サイトカインの染色及びフローサイトメトリー。T細胞を、標的細胞と比1:1で4~6時間、4000x希釈GolgiStop(BD Biosciences)の存在下で共培養した。未刺激T細胞を陰性対照として使用し、1000x希釈したPMA/イオノマイシン及びブレフェルジンA(BD Biosciences)を含有する、Leukocyte Activation Cocktailで処理したT細胞を陽性対照として使用した。EGFR特異的モノクローナル抗体(クローンLA1、Millipore)を使用してCARとEGFRとの相互作用を遮断した。細胞内サイトカインの染色は、Cytofix/Cytoperm緩衝液(BD Biosciences)中で20分間、暗所にて4℃で固定/膜透過化を行うことにより表面免疫染色をした後、1×Perm/Wash Buffer(BD Biosciences)中で30分間、暗所にて4℃で細胞内サイトカインの染色を実施した。使用した抗体は、TNF-α(BD Biosciences、クローンmAb11、PE希釈1:40)及びIFN-γ(BD Biosciences、クローン27、APC希釈1:66.7)であった。細胞内サイトカイン染色の後、FACS Caliburで試料が得られるまで、細胞を0.5%パラホルムアルデヒド(CytoFix、BD Biosciences)を用いて固定させた。
【0149】
フローサイトメトリーでリン酸化を測定する。T細胞は、特に明記しない限り標的細胞と比1:1で45分間共培養した。活性化後、T細胞を300xgにて5分間の遠心分離にかけ、上清を捨てた。予め37℃まで温めた、20容量の1×PhosFlow Lyse/Fix緩衝液(BD Biosciences)を加えてT細胞を溶解させて固定し、37℃で10分間インキュベートした。遠心分離の後、ボルテックスで撹拌しながら氷冷PhosFlow Perm III Buffer(BD Biosciences)を加えてT細胞の透過処理を行い、氷上、暗所にて20分間インキュベートする。インキュベーション後、FACS緩衝液で細胞を洗浄し、100μL染色溶液に再懸濁させた。染色溶液は、CD4(クローンSK3、FITC)、CD8(クローンSK1、PerCPCy5.5)、pErk1/2(クローン20A、AlexaFluor647)、pp38(クローン36/p38、PE)に対する抗体、及びFACS緩衝液で構成され、いずれも同比率で存在させたもので、それを20分間、暗所にて室温でインキュベートした。細胞を0.5%パラホルムアルデヒドで固定し、24時間以内にフローサイトメトリーで分析した。
【0150】
生存率用染色。細胞生存率を測定するため、アネキシンV(BD Biosciences)及び7-AAD(BD Biosciences)用の染色を使用し、1×Annexin Binding緩衝液中、CD4またはCD8に対する染色を用いて、20分間、暗所、室温で実施した。生存細胞のパーセンテージを、CD4またはCD8でゲーティングしたT細胞集団における%アネキシンVneg7-AADnegとして測定した。
【0151】
細胞増殖マーカーKi-67の染色。増幅マーカーKi-67を細胞内フローサイトメトリーにより測定した。T細胞を、接着標的細胞と比1:5で36時間共培養し、次いで、上清を除去し、300xgで遠心分離にかけてT細胞を培養から回収した。その後、T細胞をボルテックスで高速撹拌しながら氷冷70%エタノールを滴加して、固定及び透過処理を行った。その後、T細胞を、-20℃で2~24時間保存してから染色した。細胞は、Ki-67(クローンB56、FITC、1:20、BD Biosciences)、CD4(クローンRPA-T4、及びCD8(クローンSK1)、100μL FACs緩衝液中で30分間暗所にて室温で染色し、その後直ちにフローサイトメトリーで分析した。
【0152】
T細胞機能解析
【0153】
CAR下方制御。CAR+T細胞及び標的を回収して細胞自動カウント装置(Cellometer、Auto T4 Cell Counter、Nexcelcom)を使用しトリパンブルー色素排除法で計数した後、1:1の比で12ウェルプレートに混合し、各測定時点で個々のウェルを回収してT細胞上のCARの表面発現を測定した。下方制御の陰性対照は未刺激でプレーティングしたT細胞であった。CD3、CD4及びCD8発現によるT細胞の染色及びFcによるCARの共染色をフローサイトメーターで分析した。CARの下方制御パーセントを、[刺激後のCAR発現]/[未刺激CAR発現]×100として計算した。
【0154】
二次活性化及びサイトカイン産生。CAR+T細胞及び接着標的を回収し、細胞自動カウント装置(Cellometer、Auto T4 Cell Counter、Nexcelcom)を使用してトリパンブルー色素排除法で計数した後、比1:1で12ウェルプレートに混合した。共培養の24時間後、上清を除去して接着細胞をPBSで洗浄することによりT細胞を培養から回収した。T細胞を300xgにて5分間遠心にかけた後、培地に再懸濁させ、細胞自動カウント装置(Cellometer、Auto T4
Cell Counter、Nexcelcom)を使用しトリパンブルー色素排除法で計数した。T細胞を、1:1の比で用いた標的で刺激し、細胞内サイトカイン産生分析を上記のように行った。
【0155】
長期細胞傷害性アッセイ。アッセイ開始の前日、接着細胞U87及びU87highを回収、計数し、完全DMEMの6ウェルプレートの各ウェルに40,000標的細胞をプレーティングし、組織培養インキュベーター内で一晩インキュベートした。アッセイ当日、CAR+T細胞を回収してトリパンブルー色素排除法で計数し、エフェクター:ターゲット比1:5でプレーティングした標的細胞に加えた。陰性対照ウェルにはT細胞を加えなかった。各アッセイ時点で、上清を廃棄してウェルをPBSで洗浄することによりT細胞を除去した。接着細胞を0.05%トリプシン-EDTA(Gibco)によりウェルから剥離させた。顕微鏡検査を実施し、細胞がウェルから完全に剥離していることを目視で確認した。回収した細胞を遠心にかけて100μLの培地に再懸濁させ、その後、血球計数器を使用してトリパンブルー色素排除法で計数した。生存細胞パーセントを、[T細胞共培養後の細胞数]/[T細胞共培養なしの細胞数]×100として計算した。
【0156】
クロム遊離アッセイ。特異的細胞傷害性を、これまでに記載があるように(Singh
et al.,2008)標準的4時間クロム遊離アッセイで評価した。標的細胞を回収し、細胞自動カウント装置(Cellometer、Auto T4 Cell Counter)を使用してトリパンブルー色素排除法で計数した。250,000以上の細胞を分注した後、300xgにて5分間遠心分離にかけ、上清を廃棄した。次に、0.1μCiの51Crを各標的に加え、組織培養インキュベーター内で1~1.5時間、37℃でインキュベートした。ウェルあたり100,000T細胞を3連でプレーティングし、1:2の比で段階希釈して最終的なエフェクター:ターゲット(E:T)比20:1、10:1、5:1、2.5:1及び1.25:1を96ウェルV字底プレート(Corning、ニューヨーク州コーニング)に得、組織培養インキュベーター内に置いた。培地のみをウェルに入れ、最小クロム遊離対照とした。クロミウム標識の後、標的を10mL
PBSで3回洗浄し、その後、最終濃度125,000細胞/mLで再懸濁させ、完全に混合し、T細胞を含む列、最小遊離の列、及び最大遊離の列のすべてを含め、各列に100μLを加えた。プレートを300xgにて3分間遠心分離にかけた。遠心分離の後、100μLの0.1% Triton X-100(Sigma-Aldrich、ミズーリ州セントルイス)を最大遊離列に加え、プレートを組織培養インキュベーター内に4時間置いた。インキュベーション後、続いて、細胞ペレットを破壊させずに上清50μLを慎重に除去してプレートを回収し、LumaPlate-96(Perkin-Elmer、マサチューセッツ州ウォルサム)に移して一晩乾燥させた。翌日、プレートをTop-Seal(Perkin-Elmer)で密封し、TopCount NXT(Perkin-Elmer)でシンチレーションを測定した。特異的溶解パーセントを、[(51Cr遊離-最小)/(最大-最小)]×100として計算し、最大値及び最小値は各三連測定の平均とした。
【0157】
ハイスループット遺伝子発現及びCDR3配列決定
【0158】
mRNA転写産物のダイレクトイメージングによる遺伝子発現解析。mRNA分子のダイレクトイメージング及び定量をこれまでに記載があるように(319~322)実施した。増幅前後の細胞を、CD4及びCD8発現についてそれぞれ、CD4及びCD8の磁性ビーズ(Miltenyi Biotec)と共にインキュベートしてポジティブ選別し、LSカラムで選別した。CD4及びCD8の別個の集団の純度をフローサイトメトリーを使用して確認した。1x106T細胞を165μLのRLT Buffer(Qiagen)に溶解させ、-80℃で単回解凍用に分注して凍結した。RNA溶解液を解凍し、多重標的特異的なカラーコード化されたレポータープローブ及びビオチン化した捕捉プローブと65℃で12時間でハイブリダイズさせた。対象とするリンパ球特異的mRNA転写産物を同定し、RefSeqアクセッションから作製した2つのCodeSetsを使用してレポータープローブと捕捉プローブのペア、Lymphocyte CodeSet、及びTCRのVα及びVβ CodeSetを作製した。Lymphocyte CodeSetは以下の遺伝子用プローブを含有した: ABCB1;ABCG2;ACTB;ADAM19;AGER;AHNAK;AIF1;AIM2;AIMP2;AKIP1;AKT1;ALDH1A1;ANXA1;ANXA2P2;APAF1;ARG1;ARRB2;ATF3;ATM;ATP2B4;AXIN2;B2M;B3GAT1;BACH2;BAD;BAG1;BATF;BAX;BCL10;BCL11B;BCL2;BCL2L1;BCL2L1;BCL2L11;BCL2L11;BCL6;BCL6B;BHLHE41;BID;BIRC2;BLK;BMI1;BNIP3;BTLA;C21orf33;CA2;CA9;CARD9;CASP1;CAT;CBLB;CCBP2;CCL3;CCL4;CCL5;CCNB1;CCND1;CCR1;CCR2;CCR4;CCR5;CCR6;CCR7;CD160;CD19;CD19R-scfv;CD19RCD28;CD2;CD20-scfv ルツキシマブ(rutuximab);CD226;CD244;CD247;CD27;CD274;CD276;CD28;CD300A;CD38;CD3D;CD3E;CD4;CD40LG;CD44;CD45R-scfv;CD47;CD56R-scfv;CD58;CD63;CD69;CD7;CD80;CD86;CD8A;CDH1;CDK2;CDK4;CDKN1A;CDKN1B;CDKN2A;CDKN2C;CEBPA;CFLAR;CFLAR;CHPT1;CIITA;CITED2;CLIC1;CLNK;c-MET-scfv;CREB1;CREM;CRIP1;CRLF2;CSAD;CSF2;CSNK2A1;CTGF;CTLA4;CTNNA1;CTNNB1;CTNNBL1;CTSC;CTSD;CX3CL1;CX3CR1;CXCL10;CXCL12;CXCL9;CXCR1;CXCR3;CXCR4;DAPL1;DEC1;DECTIN-1R;DGKA;DOCK5;DOK2;DPP4;DUSP16;EGFR-scfv(NIMO CAR);EGLN1;EGLN3;EIF1;ELF4;ELOF1;ENTPD1;EOMES;EPHA2;EPHA4;EPHB2;ETV6;FADD;FAM129A;FANCC;FAS;FASLG;FCGR3B;FGL2;FLT1;FLT3LG;FOS;FOXO1;FOXO3;FOXP1;FOXP3;FYN;FZD1;G6PD;GABPA;GADD45A;GADD45B;GAL3ST4;GAS2;GATA2;GATA3;gBAD-1R-scfv;GEMIN2;GFI1;GLIPR1;GLO1;GNLY;GSK3B;GZMA;GZMB;GZMH;HCST;HDAC1;HDAC2;HER2-scfv;HERV-K 6H5-scfv;HLA-A;HMGB2;HOPX;HOXA10;HOXA9;HOXB3;HOXB4;HPRT1;HRH1;HRH2;ヒト CD19R-scfv;ICOS;ICOSLG;ID2;ID3;IDO1;IFNA1;IFNG;IFNGR1;IGF1R;IKZF1;IKZF2;IL10;IL10RA;IL12A;IL12B;IL12RB1;IL12RB2;IL13;IL15;IL15RA;IL17A;IL17F;IL17RA;IL18;IL18R1;IL18RAP;IL1A;IL1B;IL2;IL21R;IL22;IL23A;IL23R;IL27;IL2RA;IL2RB;IL2RG;IL4;IL4R;IL5;IL6;IL6R;IL7R;IL9;IRF1;IRF2;IRF4;ITCH;ITGA1;ITGA4;ITGA5;ITGAL;ITGAM;ITGAX;ITGB1;ITGB7;ITK;JAK1;JAK2;JAK3;JUN;JUNB;KIR2DL1;KIR2DL2;KIR2DL3;KIR2DL4;KIR2DL5A;KIR2DS1;KIR2DS2;KIR2DS3;KIR2DS4;KIR2DS5;KIR3DL1;KIR3DL2;KIR3DL3;KIR3DS1;KIT;KLF10;KLF2;KLF4;KLF6;KLF7;KLRAP1;KLRB1;KLRC1;KLRC2;KLRC3;KLRC4;KLRD1;KLRF1;KLRG1;KLRK1;LAG3;LAIR1;LAT;LAT2;LCK;LDHA;LEF1;LGALS1;LGALS3;LIFR;LILRB1;LOC282997;LRP5;LRP6;LRRC32;LTA;LTBR;LYN;MAD1L1;MAP2K1;MAPK14;MAPK3;MAPK8;MBD2;MCL1;MIF;MMP14;MPL;MTOR;MXD1;MYB;MYC;MYO6;NANOG;NBEA;NCAM1;NCL;NCR1;NCR2;NCR3;NCRNA00185;NEIL1;NEIL2;NFAT5;NFATC1;NFATC2;NFATC3;NFKB1;NOS2;NOTCH1;NR3C1;NR4A1;NREP;NRIP1;NRP1;NT5E;OAZ1;OPTN;P2RX7;PAX5;PDCD1;PDCD1LG2;PDE3A;PDE4A;PDE7A;PDK1;PDXK;PECAM1;PHACTR2;PHC1;POLR1B;POLR2A;POP5;POU5F1;PPARA;PPP2R1A;PRDM1;PRF1;PRKAA2;PRKCQ;PROM1;PTGER2;PTK2;PTPN11;PTPN4;PTPN6;PTPRK;RAB31;RAC1;RAC2;RAF1;RAP1GAP2;RARA;RBPMS;RHOA;RNF125;RORA;RORC;RPL27;RPS13;RUNX1;RUNX2;RUNX3;S100A4;S100A6;SATB1;SCML1;SCML2;SEL1L;SELL;SELPLG;SERPINE2;SH2B3;SH2D2A;SIT1;SKAP1;SKAP2;SLA2;SLAMF1;SLAMF7;SLC2A1;SMAD3;SMAD4;SNAI1;SOCS1;SOCS3;SOD1;SOX13;SOX2;SOX4;SOX5;SPI1;SPN;SPRY2;STAT1;STAT3;STAT4;STAT5A;STAT5B;STAT6;STMN1;SYK;TAL1;TBP;TBX21;TBXA2R;TCF12;TCF3;TCF7;TDGF1;TDO2;TEK;TERF1;TERT;TF;TFRC;TGFA;TGFB1;TGFB2;TGFBR1;チミジンキナーゼ;TIE1;TLR2;TLR8;TNF;TNFRSF14;TNFRSF18;TNFRSF1B;TNFRSF4;TNFRSF9;TNFSF10;TNFSF11;TNFSF14;TOX;TP53;TRAF1;TRAF2;TRAF3;TSC22D3;TSLP;TXK;TYK2;TYROBP;UBASH3A;VAX2;VEGFA;WEE1;XBP1;XBP1;YY1AP1;ZAP70;ZBTB16;ZC2HC1A;ZEB2;ZNF516。TCR Vα及びVβ CodeSetは以下の遺伝子用プローブを含有した:TRAV1-1;TRAV1-2;TRAV2;TRAV3;TRAV4;TRAV5;TRAV6;TRAV7;TRAV8-1;TRAV8-2;TRAV8-3;TRAV8-6;TRAV9-1;TRAV9-2;TRAV10;TRAV11;TRAV12-1;TRAV12-2;TRAV12-3;TRAV13-1;TRAV13-2;TRAV14;TRAV16;TRAV17;TRAV18;TRAV19;TRAV20;TRAV21;TRAV22;TRAV23;TRAV24;TRAV25;TRAV26-1;TRAV26-2;TRAV27;TRAV29;TRAV30;TRAV34;TRAV35;TRAV36;TRAV38-1;TRAV38-2;TRAV39;TRAV40;TRAV41;TRBV2;TRBV3-1;TRBV4-1;TRBV4-2;TRBV4-3;TRBV5-1;TRBV5-4;TRBV5-5;TRBV5-6;TRBV5-8;TRBV6-1;TRBV6-2;TRBV6-4;TRBV6-5;TRBV6-6;TRBV6-8;TRBV6-9;TRBV7-2;TRBV7-3;TRBV7-4;TRBV7-6;TRBV7-7;TRBV7-8;TRBV7-9;TRBV9;TRBV10-1;TRBV10-2;TRBV10-3;TRBV11-1;TRBV11-2;TRBV11-3;TRBV12-3;TRBV12-5;TRBV13;TRBV14;TRBV15;TRBV16;TRBV18;TRBV19;TRBV20-1;TRBV24-1;TRBV25-1;TRBV27;TRBV28;TRBV29-1;TRBV30。ハイブリダイゼーションの後、nCounter Prep(NanoString Technologies、ワシントン州シアトル)で試料を処理し、nCounter Digital Analyzer(NanoString Technologies)で分析した。RNA発現レベルが広い範囲にわたる参照遺伝子としてACTB、G6PD、OA21、POLR1B、RPL27、RPS13、及びTBPが同定され、これらをデータの正規化に使用した。陽性遺伝子、陰性遺伝子、及びハウスキーピング遺伝子に対する正規化をnCounter RCC Collector(バージョン1.6.0、NanoString Technologies)を使用して行った。デジタル遺伝子発現プロファイリング用に開発された統計的検定を使用して、試料ペア間での遺伝子の差次的発現を測定した(O’Connor et al.,2012;Audic et al.,1997)。正規化後、Lymphocyte CodeSetの有意に差次的な遺伝子発現を、これまでに記載があるように(O’Connor et al.,2012)、少なくとも2/3ペアにおけるp<0.01と1.5倍を超える倍率変化との組み合わせにより同定した。差次的RNA転写産物について正規化した値のヒートマップ化は、階層的クラスタリング及びTreeViewソフトウェア、バージョン1.1(Eisen et al.,1998)によって実施した。正規化後、TCR Vα及びVβのパーセンテージを、これまでに記載があるように(Zhang et al.,2012)計算データから導いた。
【0159】
ハイスループットCDR3ディープシークエンシング。TCRβ CDR3領域を増幅させ、1x106T細胞(Qiagen DNeasy Blood and Tissue Kit、Qiagen)から抽出したDNAで配列決定を行い、これまでに記載があるように(Robins et al.,2009)、ImmunoSEQプラットフォーム(Adaptive Technologies、ワシントン州シアトル)で実施した。
【0160】
頭蓋内神経膠腫異種移植マウスモデルにおけるT細胞のインビボ評価
【0161】
すべての動物実験は、動物に関する承認されているプロトコルACUF11-11-13131に従った、MDアンダーソンがんセンター(MD Anderson Cancer Center)の動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee:IACUC)からの指針及び規制のもとに行われた。使用したマウスはすべて7~8週齢の雌NOD.Cg-PrkdcscidIL2Rγtm1Wjl/Sz系統(NSG)(Jackson Laboratory、メイン州バーハーバー)であった。
【0162】
ガイドスクリューの移植。週齢7~8週のマウスを、ケタミン/キシラジンカクテル(10mg/mLケタミン、0.5mg/mLキシラジン)を用量0.1mL/10gで用いて麻酔した。これまでに記載があるように(Lal et al.,2000)ガイドスクリューの移植を実施した。刺激に反応しなくなったら、剃毛し、ポビドンヨード(ポリビニルピロリドンとヨウ素の複合体)消毒液で処置して頭部の手術区画を準備した。外科的無菌手法を用いて、頭蓋の正中下方に1cm切開した。1mmドリルビット(DH#60、Plastics One、バージニア州ロアノーク)を使用し、ドリル(DH-0、Plastics One)に安定圧力をかけて円を描くよう1mm広げ開口部を作った。中央に0.50mmの開口部と、直径1.57mmの軸とを有するガイドスクリュー(Plastics One、カタログ番号C212SG)をドリル部位にねじ回し(SD-80、Plastics One)を使用して挿入した。切開部位を縫合し、マウスに、術後の鎮痛薬として0.01mg/mLブプレノルフィンを用量0.1mL/10グラムで投与した。運動能が完全に回復するまでマウスを低電力の熱源に載せ手術から回復させた。
【0163】
U87-ffLucm-KateまたはU87med-ffLuc-mKate腫瘍細胞の移植。これまでに記載があるように(Lal et al.,2000)、頭蓋内腫瘍が確立されるまで2~3週間マウスをガイドスクリュー移植から回復させた。Cell
Dissociation 緩衝液、酵素不含、PBS(Gibco)と共に室温で10分インキュベーションした後、U87-ffLuc-mKateまたはU87med-ffLuc-mKateを組織培養容器から剥離させた。細胞を血球計数器を使用してトリパンブルー色素排除法で計数し、200xgにて8分遠心分離した。遠心分離の後、細胞を滅菌PBSに再懸濁させ、最終濃度50,000細胞/μLとした。マウスをイソフルラン(2-クロロ-2-(ジフルオロメトキシ)-1,1,1-トリフルオロエタン)で麻酔し、上記のように切開準備をした。マウス手術を準備している間に、26ゲージ、10μLの針先が鈍型のハミルトンシリンジ(Hamilton Company、ネバダ州リノ、カタログ番号80300)にシリンジ末端から2.5mmの場所にプラスチック製ガードを取り付け、250,000細胞を含有した細胞懸濁液5μLを充填してシリンジを準備した。切開部位を開いた後、シリンジをガイドスクリュー開口部に挿入し、ゆっくりと一定圧力をかけて細胞を注入した。注入完了後、さらに30秒シリンジを所定の位置に保持し、頭蓋内圧力を分散させた後、ゆっくりと抜き取った。切開を縫合し、マウスをイソフルラン曝露から外した。移植日を試験第0日とする。1日目及び4日目、前述のように、腫瘍を非侵襲的生物発光イメージングで画像診断し、腫瘍が首尾良く生着しているか確認した。その後、マウスを、相対的腫瘍フラックスが均等に分配されるよう3群に分け、次いで、Cetux-CAR+T細胞処置、Nimo-CAR+T細胞処置及び未処置の各群に無作為に割り付けた。
【0164】
U87-ffLuc-mKateまたはU87med-ffLuc-mKateの非侵襲的生物発光イメージング。頭蓋内神経膠腫を非侵襲的かつ連続的に撮像し、相対的腫瘍量の尺度として使用した。D-ルシフェリンカリウム塩(Caliper Life Sciences、Perkin-Elmer)215μgを皮下注射してから10分後、Xenogen Spectrum(Caliper Life Sciences、Perkin-Elmer)及びLiving Image software(バージョン2.50、Caliper Life Sciences、Perkin-Elmer)を使用して腫瘍フラックス(光子/秒/cm2/ステラジアン)を測定した。マウスの全頭蓋領域を含め、対象とする直線状領域の腫瘍フラックスを測定した。
【0165】
頭蓋内に確立されたU87-ffLuc-mKateまたはU87med-ffLuc-mKate神経膠腫へのCAR+T細胞の送達。腫瘍確立の5日目に頭蓋内神経膠腫異種移植片の処置を始め、週1回、計3回のT細胞注射を継続した。フローサイトメトリーにより、3回の刺激サイクルが完了したCAR+T細胞は85%超がCARを発現していることが確認され、その後、生存細胞を細胞自動カウント装置(Cellometer、Auto T4 Cell Counter、Nexcelcom)を使用してトリパンブルー色素排除法で計数した。CAR+T細胞を300xgにて5分間遠心にかけ、濃度0.6x106/μLで滅菌PBSに再懸濁させた。上記のように、マウスに頭蓋切開の準備をし、イソフルランに曝露して麻酔をかけた。マウスを準備している間、26ゲージ、10μLの針先が鈍型のハミルトンシリンジ(Hamilton Company、カタログ番号80300)に、シリンジ末端から2.5mmの場所にプラスチック製ガードを取り付け、3x106T細胞を含有した細胞懸濁液5μLを充填してシリンジを準備した。シリンジをガイドスクリューに挿入し、頭蓋内へ2.5mm伸長させ、ゆっくりと一定圧力をかけて注入した。シリンジが空になった後、所定の位置にさらに30秒保持して頭蓋内圧力を分散させた。注射の後、切開を縫合して閉じマウスをイソフルランへの曝露から外した。
【0166】
マウス生存期間の評価。マウスが、体重減少の進行(体容量の25%超)、急速な体重減少(48時間以内の体容量10%超の減少)若しくは後肢麻痺、または以下の病的臨床症状、すなわち、運動失調、円背位、不規則呼吸、曝露腫瘍の潰瘍化、若しくは直径1.5cmを超える触知可能な腫瘍のうち任意の2つを示した場合は、屠殺した。
【0167】
統計学
【0168】
統計解析はすべてGraphPad Prism、バージョン6.03で実施した。インビトロ細胞培養実験の統計解析は、フローサイトメトリーによるサイトカイン産生、生存率、増幅、及び表面表現型についての分析、細胞増幅動態、長期細胞傷害性、並びにクロム遊離アッセイを含め、すべて、多重比較用のドナー一致両側ANOVA及びテューキーの事後検定により行った。機能と抗原密度との相関は、線形傾向について事後検定を行う片側ANOVAにより実施した。腫瘍インビボ生物発光イメージングの解析は、多重比較用の反復測定両側ANOVA及びサイダック(登録商標)の事後検定を使用して実施した。動物生存データの統計解析は、ログランク(マンテル・コックス(Mantel-Cox))検定により実施した。所見の有意性を以下のとおり定義した:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【0169】
実施例2-抗CD3を搭載した人工抗原提示細胞によるT細胞の細胞数増幅
DNAの組込みにより達成された安定なCAR発現を介した抗原依存性の刺激を使用して、CAR
+T細胞数を臨床上実現可能な数まで増幅させることができる。RNA移入を介したCAR発現の一過性という性質には、CARのRNA移入を行う前にT細胞数を増幅させて臨床上実現可能な数を達成する必要がある。aAPCが抗原とは無関係にT細胞数を増幅させる能力を測定するため、高親和性Fc受容体CD64を安定して発現させることにより抗CD3(OKT3)をK562に搭載した(
図1A)。K562は、さらなるT細胞共刺激のためのCD86、41BB-L、及び膜結合型IL-15も発現した。T細胞増幅を刺激するための共培養におけるaAPC密度の影響を測定するため、健常ヒトドナー由来の末梢血単核細胞(PBMC)と、γ照射したaAPCとをIL-2の存在下で共培養し、その際、T細胞:aAPC=10:1(10:1)の低密度、またはT細胞:aAPC=1:2(1:2)の高密度で行った。9日後、T細胞を再度aAPCで刺激した。aAPC添加2サイクルの後、T細胞は、aAPCで10:1及び1:2で刺激した場合に細胞数が増幅されたが、aAPC高密度(1:2)のT細胞では、統計的に優れた細胞数増幅が達成された(10:1=1083±420倍増幅(fold expansion)、1:2=1891±376倍増幅(fold expansion)、平均±S.D.、n=6)(p<0.0001)(
図1B)。
【0170】
aAPC低密度で増幅させたT細胞は、それより多いaAPCで増幅させたT細胞より高い割合でCD8
+T細胞を含んでいた(10:1=53.9±11.6%CD8、1:2=28.1±16.2%CD8、平均±S.D.、n=6)(p<0.001)(
図2A)。CD8
+T細胞は、いずれの比のaAPC刺激でも同様のT細胞倍増幅(fold
expansion)を示したが、CD4
+T細胞は、少ないaAPCで刺激した場合に倍増幅(fold expansion)が劣っていた(10:1=369±227CD4
+倍増幅(fold expansion)、1:2=1267±447CD4
+倍増幅(fold expansion)、平均±S.D.、n=6)(p<0.0001)(
図2B)。倍増幅(fold expansion)低下が、少ないaAPCを用いた培養でCD4
+Tの細胞死が増加したことによるものなのかどうかを決定するため、CD4
+T細胞及びCD8
+T細胞をアネキシンV及びヨウ化プロピジウム(PI)で染色し、細胞生存率を測定するためフローサイトメトリーで分析した。aAPCの刺激が低密度であっても高密度であっても、CD4
+またはCD8
+T細胞の生存細胞割合に差はなかった(
図2C)。CD4
+T細胞の倍増幅(fold expansion)低下が、増殖率低下によるものなのかどうかを決定するため、aAPCでの刺激から9日後、細胞内のKi-67発現についてT細胞を染色し、フローサイトメトリーで分析した。CD8
+T細胞は、aAPC刺激が低密度でも高密度でも同様の増殖を示したが、CD4
+T細胞は、低密度aAPCで刺激した場合、高密度aAPCの場合よりも増殖低下を示した(
図2D)。これらのデータから、低密度aAPCを用いたT細胞の刺激では、高密度aAPCで刺激したT細胞よりT細胞増幅総数が少なくなることが示され、これは、低密度aAPCに応答したCD4
+T細胞増殖が低いためにCD8
+T細胞の割合が増加することで特徴付けられる。
【0171】
実施例3-低密度aAPCで増幅させたT細胞は、高密度aAPCで増幅させたT細胞よりもさらにメモリー様の表現型を示す
低密度または高密度のaAPCで増幅させることがT細胞表現型に影響するかどうかを決定するため、mRNA転写産物パネル(Lymphocyte特異的CodeSet)の発現を、nCounter解析(Nanostring Technologies、ワシントン州シアトル)を使用して多重デジタルプロファイリングで解析した。有意に差次的な遺伝子発現を、低密度(10:1T細胞:aAPC)または高密度(1:2T細胞:aAPC)aAPCで増幅させた、選別されたCD4
+またはCD8
+T細胞で、p<0.01及び1.5倍を超える倍率変化により決定した。高密度aAPCと共に増幅させたCD4
+及びCD8
+T細胞は、T細胞活性化に関連した遺伝子発現、例えば、CD4
+T細胞のCD38及びグランザイムA並びにCD8
+T細胞のCD38及びNCAM-1の発現増加を示した(
図3)。対照的に、低密度aAPCと共に増幅させたCD4
+T細胞及びCD8
+T細胞は、Wntシグナル伝達経路転写因子Lef1及びTcf7、CCR7、CD28、並びにIL7Rαなどの、セントラルメモリーまたはナイーブT細胞に関連した遺伝子発現増加を示した(Gattinoni et al.,2009;Gattinoni et al.,2012)。
【0172】
低密度または高密度aAPCで増幅させたT細胞の差次的表現型をさらに評価するため、T細胞を表現型マーカーについてフローサイトメトリーで分析し、また、CCR7及びCD45RAの共発現によりサブセット評価を行い、そこでは、CCR7
+CD45RA
+はナイーブ表現型を指し、CCR7
+CD45RA
negはセントラルメモリー表現型を指し、CCR7
negCD45RA
negはエフェクターメモリーを指し、かつCCR7
negCD45RA
+はCD45RA
+エフェクターメモリー表現型を指す(Geginat et al.,2003)。低密度aAPCと共に増幅させたCD4
+T細胞は、有意に少ないエフェクターメモリー表現型のT細胞を含有していたが(10:1=61.9±9.1%、1:2=92.1±3.9%、平均±S.D.、n=3)(p<0.05)、セントラルメモリー表現型のT細胞を多く含有していた(10:1=36.5±9.4%、1:2=13.6±2.4%、平均±S.D.、n=3)(p<0.05)(
図4A)。同様に、低密度aAPCと共に増幅させたCD8
+T細胞は、有意に少ないエフェクターメモリー表現型のT細胞を含有していたが(10:1=66.1±12.5%、1:2=89.1±1.7%、平均±S.D.、n=3)(p<0.05)、より多くセントラルメモリー表現型を含有していた(10:1=32.3±11.7%、1:2=6.5±2.8%、平均±S.D.、n=3)(p<0.05)。低密度aAPCで刺激された有意に少ないCD4
+T細胞はグランザイムBを産生し(p<0.001)、低密度aAPCで刺激された少ないCD8
+T細胞はグランザイムB(p<0.05)またはパーフォリン(p<0.001)を産生する(
図4B)。PMA/イオノマイシンで刺激を与えた場合、低密度aAPC及び高密度aAPCで増幅させたCD4
+T細胞では、IFN-γ、TNF-α、及びIL-2の同等な産生が示されたが、低密度aAPCで刺激されたCD8
+T細胞は、IFN-γ(p<0.001)及びTNF-α(p<0.05)の産生は有意に少ないが、より多いIL-2産生(p<0.05)を示した(
図4C)。まとめると、これらのデータから、低密度aAPCで増幅させたT細胞は、高密度aAPCで増幅させたT細胞と比較して、セントラルメモリー表現型T細胞を高い割合で含有し、エフェクター分子のグランザイムB及びパーフォリンの低産生、並びにエフェクターサイトカインのIFN-γ及びTNF-αの低産生のを含むことが示唆される。
【0173】
実施例4-T細胞の細胞数増幅がもたらすTCRαβ多様性の最小変化
低密度aAPC及び高密度aAPCでの増幅前後に、多重デジタルプロファイリングnCounter解析(Nanostring Technologies、ワシントン州シアトル)を使用して、TCRα及びTCRβの多様性のプロファイリングを行い、各TCRα鎖及びTCRβ鎖の相対存在量を総T細胞集団のパーセンテージとして計算した。CD4
+T細胞及びCD8
+T細胞は、低密度aAPC及び高密度aAPCでエキソビボ増幅させた後、TCRα及びTCRβの多様な対立遺伝子を発現したが、このことは、増幅で得られた集団が、オリゴクローン性のTCRα及びTCRβレパトアを維持したことを示す(
図5及び
図6)。エキソビボの増幅がT細胞のクローン組成に変化をもたらすのかどうかを決定するため、低密度及び高密度のaAPCでの増幅前後のT細胞のTCRβ鎖におけるCDR3領域のハイスループット配列決定をImmunoSEQプラットフォーム(Adaptive TCR Technologies、ワシントン州シアトル)を使用して実施した。増幅前後の個々のCDR3配列の相対的カウントをプロットし、線形回帰と合わせた。増幅前後のCDR3配列の数が同一であれば、線形回帰の傾きは1.0になると予測される。低密度aAPCと共に増幅させたT細胞では、線形回帰の傾きは0.75±0.001であり、高密度aAPCと共に増幅させたT細胞では線形回帰の傾きは0.29±0.003であった(
図7)。このことは、低密度aAPCと共に増幅させたT細胞集団は、高密度aAPCと共に増幅させたT細胞よりも、投入T細胞集団からのCDR3配列を多く維持することを指す。要約すると、T細胞をエキソビボで増幅させると、低密度aAPC及び高密度aAPCで増幅させた場合にオリゴクローン性のT細胞集団となるが、低密度aAPCと共に増幅させたT細胞は、増幅後のクローン性喪失が少ない場合がある。
【0174】
実施例5-aAPCで細胞数を増幅させたT細胞へのRNA移入
低密度aAPC及び高密度aAPCで刺激されたT細胞が電気泳動転写によってRNAを受け入れる能力を決定するため、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするインビトロ転写されたRNAを、多様な電気穿孔プログラムを使用するAmaxa Nucleofector4Dトランスフェクション装置(Lonza、ドイツ、ケルン)を使用して電気泳動転写させ、そこには、aAPC刺激から4日後の刺激T細胞用に製造者が推奨するプログラムであるEO-115プログラムが含まれていた。GFPの平均蛍光強度(MFI)とPI染色により測定したT細胞の生存率とをプロットしたところ、RNA移入後のGFP発現とT細胞生存率は逆相関することがわかった。低密度aAPCで刺激したT細胞と比較すると、高密度aAPCで刺激したT細胞は、どの被験電気穿孔プログラムに対しても応答して、RNA移入によるGFP低発現及び低生存率の両方を示した(
図8A)。その結果、以降のすべての実験では低密度aAPCで刺激したT細胞(T細胞:aAPC=10:1)を使用した。注入用に臨床上関連するT細胞数を達成するためにはRNA移入前にT細胞数を増幅させることが望ましいので、9日おきにaAPCを繰り返し付加して複数回の刺激を受けたT細胞が電気泳動転写によるRNA転写産物を受け入れる能力を評価した。各回の刺激を重ねるごとに、RNA電気泳動転写後のGFP発現は低下していった(
図8B、左パネル)。しかし、2回の刺激後、T細胞は、1回の刺激を受けたT細胞または3回の刺激を受けたT細胞と比べて、電気泳動転写後の生存率改善を示した(
図8B、右パネル)。したがって、RNA転写産物の移入をさらに最適化するために、T細胞:aAPC=10:1での刺激を2回行う刺激プロトコルを選択した。RNAはDNAよりも細胞に対する毒性が少なく、多くの細胞型に容易に移入されるので(165)、製造者推奨のT細胞刺激用電気穿孔プログラムEO-115の強度を下げることにより、T細胞生存率を低下させることなくRNA移入の有効性を改善できるであろうと考えた。GFPを発現している細胞の割合と、PI染色で測定した生存率とをプロットすることにより、電気穿孔後24時間のGFP発現が約100%であり、かつT細胞生存率が電気穿孔されないT細胞と同様であったプログラムは、プログラムDQ-115であることを特定した(
図8C)。RNA電気泳動転写によってT細胞表現型が変わるかどうかを決定するため、最適化したプロトコルで電気穿孔した後、T細胞表現型を評価した。電気穿孔にRNA転写産物を用いても用いなくても、その後のT細胞表現型において変化は検出されなかった(
図8D)。以上のことから、T細胞生存率を低下させることなくRNA転写産物を高発現させたaAPCとの共培養を介して細胞数を増幅させたT細胞にRNAを移入するためのプラットフォームを作製した。
【0175】
実施例6-DNAまたはRNA移入で修飾したT細胞のCAR発現及び表現型
RNA修飾及びDNA修飾により製造した各CAR
+T細胞のCAR発現及び機能を比較するため、EGFR特異的CARを、臨床上利用可能な抗EGFRモノクローナル抗体セツキシマブのscFvから作製した。セツキシマブのscFvを、IgG4ヒンジ領域、CD28の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメイン、並びにCD3-ζの細胞質ドメインと融合させて第2世代CARを形成し、これをCetux-CARとし、DNAに永久的に組込むためにSleeping Beautyトランスポゾンに発現させ、同様に、RNA転写産物のインビトロ転写用にpGEM/A64ベクター内のT7プロモーター下に発現させた。T細胞のRNA修飾は、インビトロ転写されたCetux-CARを、OKT3搭載K562 aAPCで2回刺激したT細胞に、第2の刺激から4日後に電気泳動転写を行うことにより達成した(
図9A)。電気泳動転写の24時間後、CAR発現を評価した。DNAを安定的に組込むため、SBトランスポゾンに発現したCetux-CARを、SB11トランスポザーゼを有するヒト初代T細胞に電気穿孔した。SB11トランスポザーゼは、トランスポゾンからCARを切り出し逆TAリピートで宿主T細胞ゲノム内に挿入するカット・アンド・ペースト型酵素である。γ照射したEGFR
+K562 aAPCで繰り返し刺激したところ、CARを発現しているT細胞が時間と共に選択的に増幅され、7日おきにaAPC付加を繰り返すサイクルを5サイクル行ってから28日後、T細胞をCAR発現について評価した(
図9B)。CARのIgG4ヒンジ領域についてのフローサイトメトリーで測定した、RNA修飾及びDNA修飾による各Cetux-CARのCD4
+及びCD8
+での発現は、有意差はなかった(p>0.05)が、RNA修飾の方が発現強度のばらつきが大きかった(
図10A)。Cetux-CAR発現T細胞のうち、CD4
+T細胞及びCD8
+T細胞の割合はRNA修飾T細胞とDNA修飾T細胞との間で統計的差はなかったが、DNA修飾T細胞中に存在するCD4
+T細胞及びCD8
+T細胞の割合の方が、RNA修飾CAR
+T細胞中のそれよりもばらつきが大きかった(
図10B)。
【0176】
RNA修飾またはDNA修飾によりCetux-CARを発現しているT細胞集団の表現型を比較するため、表現型マーカーをフローサイトメトリーで分析した。RNA修飾をしたCD4
+CAR
+T細胞では、DNA修飾をしたCD4
+CAR
+T細胞よりもセントラルメモリー表現型T細胞が有意に多かった(CCR7
+CD45RA
neg)(DNA修飾=6.6±1.9%、RNA修飾=49.6±3.0%、平均±S.D.、n=3)(p<0.0001)が、エフェクターメモリー表現型T細胞は有意に少なかった(CCR7
negCD45RA
neg)(DNA修飾=89.8±2.6%、RNA修飾=48.1±3.3%、平均±S.D.、n=3)(p<0.0001)(
図10C)。同様に、RNA修飾CD8
+CAR
+T細胞では、DNA修飾CD8
+CAR
+T細胞よりもセントラルメモリー表現型T細胞が有意に多かった(DNA修飾=10.4±4.9%、RNA修飾=32.8±4.2%、平均±S.D.、n=3)(p<0.001)が、エフェクターメモリー表現型T細胞は有意に少なかった(DNA修飾=83.5±5.4%、RNA修飾=51.1±6.6%、平均±S.D.、n=3)(p>0.0001)。また、RNAで修飾したCD4
+Cetux-CAR
+T細胞は、CD4
+Cetux-CAR
+T細胞よりも抑制受容体であるプログラム死受容体1(PD-1)の有意に高い発現を示した(p<0.01)が、T細胞老化マーカーであるCD57の発現は同様に低かった(
図10D)。CD8
+Cetux-CAR
+T細胞はPD-1及びCD57を低レベルで発現し、RNA修飾CAR
+T細胞とDNA修飾CAR
+T細胞との間に感知されるほどの差はなかった。最後に、細胞傷害性分子のパーフォリン及びグランザイムBの発現は、Cetux-CARのDNA修飾またはRNA移入による修飾を行ったいずれのCD4
+T細胞及びCD8
+T細胞においも同様であった(
図10E)。要約すると、CAR
+T細胞のRNA修飾もDNA修飾も、同様のCAR発現レベルをもたらしたが、RNA移入の方がCAR発現の強度のばらつきが高かった。RNA修飾T細胞は、DNA修飾T細胞よりも、多くのセントラルメモリー表現型のCD4
+T細胞及びCD8
+T細胞を発現し、少ないエフェクターメモリー表現型のCD4
+T細胞及びCD8
+T細胞を発現し、また、CD4
+CAR
+T細胞上の抑制受容体PD-1の発現が高かった。
【0177】
実施例7-DNA修飾CAR
+T細胞は、RNA修飾CAR
+T細胞より多くサイトカインを産生し、わずかに高い細胞傷害性を示す
RNA修飾またはDNA修飾したCAR
+T細胞のサイトカイン産生について、マウスT細胞性リンパ腫細胞株EL4を修飾して切断型EGFRを発現するようにしたtEGFR
+EL4、またはマウスT細胞性リンパ腫細胞株EL4を修飾して関連性のない抗原CD19を発現するようにしたもの、並びに、ヒト膠芽腫細胞株のU87、T98G、LN18及びヒト類表皮癌細胞株A431などのEGFR
+細胞株に応答させて評価した。RNA移入により修飾したCD8
+CAR
+T細胞では、各EGFR発現細胞株に応答してIFN-γを産生した細胞は少なかった(
図11A、左パネル)。抗原とは無関係のPMA/イオノマイシンによる刺激に応答してIFN-γを産生したRNA修飾T細胞が少ないことから、IFN-γ低産生は、抗原に対するCARの感受性が低いためではなく、むしろRNA修飾によりCARを発現しているT細胞のサイトカイン産生能が低いためであると考えられる。DNA修飾CAR
+T細胞は、T細胞を刺激しなかった場合にバックグランドのIFN-γ産生も高かったことに注目した。同様に、RNA修飾CD8
+CAR
+T細胞では、DNA修飾CD8
+CAR
+T細胞よりも、T98G、LN18、A431からのEGFR特異的な刺激及びPMA/イオノマイシンからの抗原とは無関係な刺激に応答してTNF-αを産生した細胞は少なかった(
図11A、右パネル)。
【0178】
RNA修飾CAR
+T細胞は、DNA修飾CAR
+T細胞よりもサイトカイン産生能が低かったことから、RNA修飾T細胞及びDNA修飾T細胞の細胞傷害性を比較し、DNA修飾CAR
+T細胞と比べたRNA修飾CAR
+T細胞の細胞傷害の可能性を決定した。CD19
+EL4細胞に対する応答では、RNA修飾CAR
+T細胞及びDNA修飾CAR
+T細胞は、エフェクターとターゲットの比が高い場合でも(E:T=20:1)バックグランドの殺滅レベルは低く、RNA修飾CAR
+T細胞は、DNA修飾CAR
+T細胞よりも有意に高いバックグランドでの溶解を示した(p<0.05)(
図11B)。同様に、RNA修飾CAR
+T細胞及びDNA修飾CAR
+T細胞は、B細胞リンパ腫細胞株NALM-6に対して低い同等レベルのバックグランドでの溶解を示した。tEGFR
+EL4及びA431に対する応答では、RNA修飾またはDNA修飾をしたCAR
+T細胞に仲介された細胞傷害性において、感知されるほどの差はなかった。神経膠腫細胞株U87、T98G、及びLN18の3株に対する応答では、DNA修飾CAR
+T細胞は、エフェクター:ターゲット比が低い時に限り検出された、RNA修飾CAR
+T細胞よりわずかに高い細胞傷害性を示した。RNA修飾T細胞は、DNA修飾T細胞よりもドナー間でCAR発現にばらつきがあるため、CAR発現の蛍光強度中央値で測定したCAR発現のA431特異的溶解に対する影響を評価した。CAR発現の蛍光強度中央値をA431特異的溶解に対してプロットしたところ、関係の線形回帰からゼロとは有意に異ならない傾きが得られ、そのため、CAR発現と特異的溶解との間に検出された有意な傾向は示されなかった(傾き=0.0237±0.030、p=0.4798)(
図11C)。要約すると、これらの知見から、DNA修飾CAR
+T細胞は、RNA修飾CAR
+T細胞よりエフェクターサイトカインのIFN-γ及びTNF-αの産生が有意に高く、低いエフェクター:ターゲット比で存在する場合にわずかに高い細胞傷害性を示すこと、及びRNA修飾CAR
+T細胞におけるCAR発現のばらつきは標的特異的溶解性に有意に影響しないことが示唆される。
【0179】
実施例8-T細胞のRNA修飾によるCetux-CARの一過性発現
RNA移入によるCAR発現の安定性を測定するため、CARを発現するようRNA移入によりT細胞を修飾し、フローサイトメトリーでCAR発現を経時的に測定した。RNA移入後、T細胞上のCetux-CARの発現は経時的に減少し、電気泳動転写の96時間後、CARは低レベルで発現していた(
図12A)。RNA転写産物は、T細胞増殖中に娘細胞の間で分割されるので、T細胞増殖の刺激によりRNA修飾により発現したCARの消失が促進されるはずである。サイトカイン刺激がCARの発現レベルに与える影響を測定するため、RNAの移入から24時間後、外因性のIL-2及びIL-21をRNA修飾CAR
+T細胞培養に加え、CAR発現をフローサイトメトリーで監視した。IL-1及びIL-21でのCAR
+T細胞の刺激により、CAR発現の消失が促進された(
図12B)。72時間後、RNA修飾T細胞上のCAR発現は低く、移入から96時間後には、T細胞はもはやCARを検出可能レベルで発現していなかった。RNA移入から24時間後にtEGFR
+EL4でRNA修飾CAR
+T細胞を刺激したところ、CAR発現の消失がより一層促進された(
図12C)。tEGFR
+EL4を加える前は、RNA修飾CAR
+T細胞においてCARが高レベルで検出されたが、tEGFR
+EL4付加から24時間後(RNA移入から48時間後)、CAR発現は低かった。まとめると、これらのデータは、RNAの移入によるCAR発現は一過性であり、RNAの移入から120時間後までは低レベルで検出可能であるが、サイトカインまたは抗原認識を介してT細胞が刺激されるとCAR発現の消失が促進されることを指している。
【0180】
実施例9-RNA修飾によるCetux-CARの一過性発現はサイトカイン産生及びEGFR発現細胞に対する細胞傷害性を抑制する
RNA移入によりCetux-CARを発現するよう修飾したT細胞の活性を、RNAの移入から24時間後及び120時間後に測定し、EGFR発現細胞に応答したT細胞の活性に及ぼすCAR発現消失の影響を決定した。RNA修飾T細胞は、RNA移入から24時間後及び120時間後の評価では、PMA/イオノマイシン刺激によるIFN-γ産生は同等であることを示したが、RNAの移入から24時間後にT細胞がtEGFR
+EL4に応答して産生したIFN-γは、RNAの移入から120時間後には抑止されていた(24時間=14.2±2.5%、120時間=1.1±0.03%、平均±S.D.、n=3)(p=0.012)(
図13A)。対照的に、DNA修飾CAR
+T細胞では、tEGFR
+EL4に応答したIFN-γの産生はいずれの測定時点においても同等であった(24時間=40.3±9.6%、120時間=48.6±10.0%、平均±S.D.、n=3)(p=0.490)。同様に、EGFRを発現する、類表皮癌細胞株A431及びヒト正常腎臓上皮細胞(HRCE)に対する特異的細胞傷害性を測定した。RNA修飾CAR
+T細胞及びDNA修飾CAR
+T細胞は、同等のA431特異的溶解性、及びHRCEに対する同様の細胞傷害性を示し、高いエフェクター:ターゲット比では統計的に同等であった(20:1及び10:1、p>0.05)(
図13B)。他の細胞株での所見と同様に、DNA修飾CAR
+T細胞は、RNA修飾CAR
+T細胞よりもわずかに高いHRCE特異的溶解性を低いエフェクター:ターゲット比において仲介した(5:1、p<0.05;2.5:1、p<0.01、1.25:1、p<0.05)。しかし、RNAの移入から120時間後、RNA修飾T細胞のCAR発現は抑止され、DNA修飾T細胞はどの被験エフェクター:ターゲット比においてもA431及びHRCEに応答して有意に高い特異的溶解性を仲介した(A431、全エフェクター:ターゲット比、p<0.0001;HRCE、全エフェクター:ターゲット比、p<0.0001)。DNA修飾T細胞は、各測定時点でのHRCE特異的溶解性に変化を示さなかったが(エフェクター:ターゲット比=10:1、24時間=45.5±8.0%、120時間=51.6±7.8%、p>0.05、n=3)、RNA修飾T細胞は、RNA移入から120時間後までにはHRCE特異的溶解性を有意に低下させた(エフェクター:ターゲット比=10:1、24時間=39.5±5.9%、120時間=19.8±10.2%、平均±S.D.、n=3)(
図13C)。これらのデータは、EGFRを発現している標的に応答した、DNA修飾ではなくRNA修飾をしたT細胞の活性は、CAR発現の消失により低下することを示している。
【0181】
実施例10-Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞は表現型が類似する
Nimo-CARという名称のNimotuzumab(ニモツズマブ)由来の第2世代CARをSleeping Beautyトランスポゾンに作製し、その際、Nimotuzumab(ニモツズマブ)のscFvと、IgG4ヒンジ領域、CD28膜貫通ドメイン並びにCD28及びCD3ζの細胞内ドメインとを融合させ、Cetux-CARと同一構成で作製した。Cetux-CAR及びNimo-CARを、SB11トランスポザーゼを有する各トランスポゾンを末梢血単核細胞(PBMC)内に電気穿孔することにより、初代ヒトT細胞に発現させた。Cetux-CARまたはNimo-CARを安定的に組み込んだT細胞は、γ照射tEGFR
+K562人工抗原提示細胞(aAPC)を用いた週1回の繰り返し刺激により選択的に増殖した(
図14A)。いずれのCARも、aAPCを用いた28日間の共培養で約1000倍のCAR
+T細胞増幅を仲介し、T細胞のほぼすべてがCARを発現した(Cetux-CAR=90.8±6.2%、Nimo-CAR=90.6±6.1%;平均±SD、n=7)(
図14B及び14C)。Cetux-CAR及びNimo-CAR
+のT細胞が発現しているCARの割合は28日間の細胞数増幅後において統計的に同様であった(p=0.92、両側スチューデントt検定)。蛍光強度中央値で表されるCAR発現の密度をフローサイトメトリーで測定したところ、Cetux-CAR
+及びNimo-CAR
+の各T細胞集団間で統計的に同様であった(Cetux-CAR=118.5±25.0A.U.、Nimo-CAR=112.6±21.2A.U.;平均±SD、n=7)(p=0.74)(
図14D)。
【0182】
CAR scFvがT細胞機能に与える影響を決定するために、Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞の電気穿孔及び増殖を行い、表現型が同様のT細胞集団にした。各ドナーでCD4
+T細胞及びCD8
+T細胞の比にばらつきがあったが(表1)、Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞間でCD4/CD8比に統計的差はなかった(p=0.44、両側スチューデントt検定)(
図15A)。分化マーカーCD45RO、CD45RA、CD28、CD27、CCR7及びCD62Lの発現は統計的に有意ではなく(p>0.05)、これは不均一なT細胞集団であることを指している(
図18B)。同様に、老化マーカーCD57及びKLRG1並びに抑制受容体プログラム死受容体1(PD-1)は低量であり、Cetux-CAR
+及びNimo-CAR
+各T細胞集団間で有意差がないことがわかった(p>0.05)(
図15C)。全体として、これらの知見は、Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞間には、電気穿孔及び増殖後に、CAR発現を含めた表現型に検出可能な相違はなく、そのまま比較が可能であることを示している。
【表1】
Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞における増幅から28日後のCD4及びCD8の発現をフローサイトメトリーにより測定した。独立した7ドナーからのデータ。
【0183】
実施例11-Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞はCAR依存性T細胞活性化能が同等である
Cetux-CAR及びNimo-CARがEGFRでの刺激に応答して機能することを確認するため、CAR
+T細胞をA431類表皮癌細胞株とインキュベートした。A431類表皮癌細胞株は、EGFRを約1x10
6EGFR分子/細胞という高いレベルで発現することが報告されている(Garrido et al.,2011)。Cetux-及びNimo-CAR
+T細胞は、A431との共培養中にIFN-γを産生したが、EGFRに対する結合を遮断する抗EGFRモノクローナル抗体の存在下では産生が低下した(
図16A)。Cetux-CAR及びNimo-CARが同等にT細胞を活性化できることを確認するため、scFvドメインとは無関係に両方のCARによって認識され得る標的を作製した。標的作製は、CARのIgG4領域に対して特異的な活性化抗体(CAR-L)のscFv領域をマウス不死化T細胞株EL4上に発現させることによって達成した(Rushworth et al.,2014)。CAR-L
+EL4によるT細胞の活性化と、tEGFRを発現しているEL4細胞株によるT細胞の活性化とを比較した。定量フローサイトメトリーを実施してEL4上のtEGFR発現密度を測定した。この方法では、蛍光抗体で標識した既知の抗体結合能を有する微粒子からの蛍光の強度をフローサイトメトリーにより測定し、既知の抗体結合能と平均蛍光強度(MFI)との間の直線関係を定義する標準曲線を導くために使用する。標準曲線はその後、同一の蛍光抗体で標識した未知試料の平均蛍光強度から平均抗原発現密度を導くために使用できる。tEGFR
+EL4は、tEGFRを約45,000分子/細胞という比較的低密度で発現した(
図16B)。Cetux-CAR
+及びNimo-CAR
+ CD8
+T細胞は、CAR-L
+EL4に応答して統計的に同量のIFN-γを示し、このことはCAR依存性活性化能が同等であることを示している(p>0.05)(
図16C)。Cetux-CAR
+T細胞はEGFR
+に応答してIFN-γを産生したが、Nimo-CAR
+T細胞より顕著なIFN-γ産生はなかったことから(
図16C)、低抗原密度に応答したT細胞活性化に対する、CARのscFvの親和性による影響の場合と一致している。サイトカイン産生の測定に加え、CD8
+T細胞を、T細胞活性化の下流の分子、Erk1/2及びp38のリン酸化について分析した。CAR-L
+EL4に応答したリン酸化はErk1/2(p>0.05)またはp38(p>0.05)で、Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞間に統計的差はかなった(
図16D)。Cetux-CAR
+T細胞は、tEGFR
+EL4に応答してErk1/2及びp38のリン酸化を示したが、Nimo-CAR
+T細胞ではどちらの分子にも認め得るほどのリン酸化は起こらなかった。同様に、Cetux-CAR及びNimo-CARはいずれもCAR-L
+EL4に対して同等の特異的溶解性を示した(エフェクター:ターゲット比=10:1、Cetux-CAR=64.5±6.7%、Nimo-CAR=57.5±12.9%、平均±SD、n=4)(p>0.05)。Cetux-CAR
+T細胞は、非特異的標的CD19
+EL4の場合に比べて、tEGFR
+EL4に応答した特異的溶解性を有意に示したが(tEGFR
+EL4=57.5±9.4%、tCD19
+EL4=17.3±13.0、平均±SD、n=4)(p<0.0001)、Nimo-CAR
+T細胞によるtEGFR
+EL4の有意な溶解はなかった(tEGFR
+EL4=21.2±16.9%、CD19
+EL4=12.3±13.0、平均±SD、n=4)(p>0.05)(
図16E)。内在性の低親和性T細胞の応答には、エフェクター機能を達成するために抗原との長い相互作用を必要とする場合があるため(Rosette et al.,2001)、CAR
+T細胞がtEGFR
+細胞及びCAR-L
+EL4細胞の増殖を制御する能力を、T細胞とEL4とを1:1の比で混合してEL4細胞に対するT細胞の割合を長期共培養にわたって評価することにより評価した。Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞は、5日後の共培養中のCAR-L
+EL4細胞の割合は低かったことで実証されるように、CAR-L
+EL4の増殖を同等に制御した(p>0.05)(
図16F)。Cetux-CAR
+T細胞はtEGFR
+EL4の増殖を制御し、5日後の共培養中のtEGFR
+EL4は10%未満であった。Nimo-CAR
+T細胞のtEGFR
+EL4細胞増殖制御能は弱く、5日後の共培養中のtEGFR
+EL4は80%を占め、Cetux-CAR
+T細胞で共培養した場合より有意に高かった(p<0.01)。したがって、tEGFR
+EL4上の低密度tEGFRに対するNimo-CAR
+T細胞の低応答は、活性化のための時間が不十分だったためではないと考えられる。要約すると、これらのデータは、Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞は、EGFRに対する機能的特異性を有し、CAR依存的、scFv非依存的刺激によって同等に活性化され得ることを実証している。Cetux-CAR
+T細胞は、tEGFR
+EL4上の低密度tEGFRに応答して特異的に活性化することができたが、このEGFR発現密度は、Nimo-CAR
+T細胞を活性化させて、サイトカイン産生、下流分子Erk1/2及びp38リン酸化、または特異的溶解の開始をもたらすには十分ではなかった。
【0184】
実施例12-Nimo-CAR
+T細胞の活性化及び機能的応答は標的細胞上のEGFR発現密度に影響される
Cetux-CAR
+及びNimo-CAR
+T細胞の活性化にEGFR発現密度が及ぼす影響を調べるため、ある範囲のEGFR発現密度の細胞株、すなわち、NALM-6、U87、LN18、T98G、及びA431に対するT細胞機能を比較した。最初に、定量フローサイトメトリーによりEGFR発現密度を評価した(
図17A)。B細胞白血病細胞株であるNALM-6はEGFRを発現しなかった。ヒト膠芽腫細胞株であるU87は、EGFRを低密度で(約30,000分子/細胞)発現した。ヒト膠芽腫細胞株であるLN18及びT98Gは、EGFRを中程度の密度(それぞれ、約160,000及び約205,000分子/細胞)で発現し、A431ではEGFRの高密度(約780,000分子/細胞)発現が見られ、これまでの報告と同様であった(Garrido et al.,2011)。Cetux-CAR
+及びNimo-CAR
+ CD8
+T細胞は、EGFR高密度のA431(p>0.05)及びEGFR中密度のLN18(p>.05)に応答して、統計的に同様のIFN-γ産生を示した。しかし、Nimo-CAR
+T細胞は、Cetux-CAR
+T細胞よりも、EGFR中密度のT98G(p<0.001)及びEGFR低密度のU87(p<0.001)に応答してIFN-γ低産生を示した(
図17B)。同様に、Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞は、統計的に同等な溶解性をA431細胞(エフェクター:ターゲット比=5:1、p>0.05)及びT98G細胞(エフェクター:ターゲット比=5:1、p>0.05)について示したが、Nimo-CAR
+T細胞は、いくらか低いLN18細胞特異的溶解能(エフェクター:ターゲット比=5:1、p<0.05)及び低いU87細胞特異的溶解能(エフェクター:ターゲット比=5:1、p<0.01)を示した(
図17C)。これらのデータは、Nimo-CAR
+T細胞の活性化はEGFR発現密度の影響を受けることを支持している。しかし、細胞株が異なると、T細胞活性化の傾向及びT細胞を介した溶解性に対する感受性が異なり得ることから、細胞バックグランドが異なる状況においてEGFR密度に対して機能評価を行うことは理想的ではない。
【0185】
実施例13-Nimo-CAR
+T細胞の機能の活性化は、EGFR発現密度と直接的かつ正の相関を示す
EGFR発現密度が同系細胞のバックグランドに及ぼす影響を決定するため、密度の異なるEGFRを発現している一連のU87細胞株を作製し、非修飾親U87(EGFR分子約30,000個/細胞)、U87low(EGFR分子130,000個/細胞)、U87med(EGFR分子340,000個/細胞)、及びU87high(EGFR分子630,000個/細胞)とした(
図18A)。scFv依存的CAR刺激を行った後のErk1/2及びp38のリン酸化を比較するため、U87及びU87highの刺激後に、Nimo-CAR
+T細胞及びCetux-CAR
+T細胞間でリン酸化動態に相違がないことを確認した。どちらのCD8
+CAR
+T細胞も、相互作用45分後にErk1/2及びp38のリン酸化ピークを示し、相互作用120分後までにリン酸化が低下し始めた(
図18B)。Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞間でリン酸化動態に目立った違いはかなったので、以降の実験では、以降のどの実験の場合も相互作用から45分後のErk1/2及びp38のリン酸化を評価した。Cetux-CAR
+ CD8
+T細胞は、U87の4細胞株すべてに対する応答においてErk1/2及びp38をリン酸化し、EGFR発現密度との相関を示さなかった(線形傾向について事後検定を行う片側ANOVA;Erk1/2、p=0.88;p38、p=0.09)(
図18C)。対照的に、Nimo-CAR
+ CD8
+T細胞によるErk1/2及びp38のリン酸化は、EGFR発現密度と直接相関した(線形傾向について事後検定を行う片側ANOVA、Erk1/2、p=0.0030及びp38 p=0.0044)。Nimo-CAR
+T細胞は、U87high上のEGFR高密度に応答した場合でもCetux-CAR
+T細胞よりも有意に少ないErk1/2及びp38のリン酸化pfを示した(Erk1/2、p<0.0001;p38、p<0.01)。同様に、Cetux-CAR
+ CD8
+T細胞は、U87、U87low、U87med及びU87highに応答してIFN-γ及びTNF-αを産生し、産生とEGFR発現密度とは相関していなかった(線形傾向について事後検定を行う片側ANOVA;IFN-γ、p=0.5703及びTNF-α、p=0.6189)(
図18D)。対照的に、Nimo-CAR
+ CD8
+T細胞は、EGFR発現密度と直接相関してIFN-γ及びTNF-αを産生した(線形傾向について事後検定を行う片側ANOVA;IFN-γ、p=0.0124及びTNF-α、p=0.0006)。Cetux-CAR
+ CD8
+T細胞は、Nimo-CAR
+ CD8
+T細胞よりも有意に多いサイトカインを、U87(IFN-γ、p<0.0001;TNFα、p<0.01)またはU87low(IFN-γ、p<0.001;TNFα、p<0.01)での刺激に応答して産生したが、Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞は、統計的に同様のサイトカイン産生を、U87med(IFN-γ、p>0.05;TNFα、p>0.05)またはU87high(IFN-γ、p>0.05;TNFα、p>0.05)での刺激に応答して示した。同様に、Cetux-CAR
+T細胞は、Nimo-CAR
+T細胞よりも有意に高い溶解性をU87(エフェクター:ターゲット比=10:1、p<0.0001)及びU87low(エフェクター:ターゲット比=10:1、p<0.05)について示したが、統計的に同様の特異的溶解性をU87med(エフェクター:ターゲット比=10:1、p>0.05)及びU87high(エフェクター:ターゲット比=10:1、p>0.05)について示した(
図18E)。要約すると、これらのデータは、Nimo-CAR
+T細胞の活性化が標的上のEGFR発現密度と直接相関していることを示す。結果として、Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞は、EGFR高密度に対する応答では同等なT細胞活性化を示すが、Nimo-CAR
+T細胞は、EGFR低密度に対する応答で有意に低い活性化を示す。
【0186】
内在性の低親和性T細胞の応答には、エフェクター機能を獲得するために抗原との長い相互作用を必要とする場合があることから(Rosette et al.,2001)、Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞間で観察されたT細胞活性における相違が、内在性T細胞と同様に長い相互作用をNimo-CAR
+T細胞が要するためではないことを確認した。CAR
+T細胞と標的との相互作用を延長してもサイトカイン産生は実質的に増加せず、また、Cetux-CAR
+及びNimo-CAR
+のCD8
+T細胞間でのサイトカイン産生関係は変わらなかった(
図19A)。同様に、Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞がU87及びU87highの増殖を経時的に制御する能力を評価したところ、Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞は、U87highについて統計的に同様の増殖制御能を示し、CAR
+T細胞非存在下で増殖させた対照群と比べて細胞数を80%減少させることがわかった(p>0.05)。Cetux-CAR
+T細胞は、内因的にEGFR発現が低いU87の増殖を制御し、CAR
+T細胞非存在下で増殖させた対照群と比べて細胞数を40%減少させた。しかし、Nimo-CAR
+T細胞は、有意に少ないU87増殖制御を示し、細胞数の明らかな減少は見られなかった(p<0.001)(
図19B)。これらのデータは、U87上の低EGFRに応答したNimo-CAR
+T細胞活性は、T細胞と標的との相互作用時間を延長しても改善されないことから、Nimo-CAR
+T細胞の活性低下は、T細胞活性化に長い相互作用を必要とするためではないと考えられることを示している。
【0187】
CAR依存性T細胞活性化には最小密度を超えるCAR発現が必要であり、CAR発現の密度を増加させると、抗原に対するCARの感受性に影響を与えることが示されている(Weijtens et al.,2000;Turatti et al.,2007)。したがって、Nimo-CARを高密度で発現させることによってEGFR低密度の認識が改善されるかどうかを決定するため、Cetux-CAR及びNimo-CARをヒト初代T細胞に過剰発現させる試みがなされた。電気穿孔トランスフェクションでのDNA負荷は、細胞に対するDNAの毒性のため制限されるが、RNAの移入は相対的に非毒性であり、送達されるCAR RNA転写産物の増量により過剰発現させやすい。したがって、Cetux-CAR及びNimo-CARをRNA種としてインビトロ転写し、ヒト初代T細胞に電気泳動転写した。RNAの移入により、ドナーが一致するDNA修飾T細胞と比較してCAR発現が2~5倍増加した(
図20A)。CARを過剰発現させても、U87上のEGFR低密度に対するNimo-CAR
+T細胞の感受性が高まることはなく、Cetux-CAR及びNimo-CARともに、U87highに応答した同様のサイトカイン産生を示した(
図20B)。このことは、Nimo-CAR
+T細胞上のCAR密度を増加させてもEGFR低密度に対する感受性は高くならないことを指している。
【0188】
実施例14-Nimo-CAR
+T細胞は、正常な腎上皮細胞の基礎EGFRレベルに対する応答では低活性である
Nimo-CAR
+T細胞が、正常細胞の低い基礎EGFRレベルに対する応答において低活性であるかどうかを決定するため、正常なヒト腎皮質上皮細胞(HRCE)に対する応答においてNimo-CAR
+T細胞の活性を評価した。HRCEは、細胞あたり約15,000個のEGFR分子を発現し、U87などの腫瘍細胞株での発現よりも低い(
図21A)。Cetux-CAR
+T細胞は、HRCEに応答してIFN-γ及びTNF-αを産生したが、Nimo-CAR
+T細胞は、HRCEに対する応答において有意に少ないIFN-γまたはTNF-αを産生した(IFN-γ、p<0.05;TNF-α、p<0.01)(
図21B)。実際、Nimo-CAR
+T細胞は、未刺激のバックグランドの産生を超える有意なIFN-γまたはTNF-αの産生を示さなかった(IFN-γ、p>0.05;TNF-α、p>0.05)。Nimo-CAR
+T細胞は、Cetux-CAR
+T細胞がHRCEに応答して示した特異的溶解の50%未満を示し(Cetux-CAR=81.1±4.5%、Nimo-CAR=30.4±16.7%、平均±SD、n=3)、有意に低かった(エフェクター:ターゲット比=10:1、p<0.001)(
図21C)。これらの知見は、Nimo-CAR
+T細胞は、EGFR密度が非常に低い細胞に対する応答ではT細胞機能が低いことを示す。
【0189】
実施例15-Cetux-CAR
+T細胞は、刺激後にNimo-CAR
+T細胞ほどは増殖しないが、AICDの傾向は高くない
結合親和性及び抗原密度の影響を受ける、内在性TCRシグナルの強度は、抗原性刺激に応答してT細胞の増幅に影響を与え得る(Gottschalk et al.,2012;Gottschalk et al.,2010)。抗原で刺激した後のCetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞の増殖反応を評価するため、外因性サイトカイン非存在下でU87またはU87highと共培養してから2日後の、Ki-67の細胞内発現をフローサイトメトリーで測定した。U87上のEGFR低密度に応答して、Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞は、統計的に同様の増殖を示した(p>0.05)(
図22A)。U87highに応答して、Nimo-CAR
+T細胞は、Cetux-CAR
+よりも、増殖増加を示し(p<0.01)、Cetux-CAR
+は、U87及びU87highに応答した統計的差を何ら示さなかった(p>0.05)。
【0190】
CARの親和性または抗原密度によりCAR
+T細胞がAICDに入る傾向が高くなるかどうかを決定するため、Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞を外因性サイトカイン非存在下でU87またはU87highと共培養し、T細胞生存率をアネキシンV及び7-AAD染色により評価した。U87に対する応答では、Cetux-CAR
+Tは、未刺激のCetux-CAR
+T細胞と比べると生存率の低下を示したが、Nimo-CAR
+T細胞は生存率における目立った変化を示さなかった(
図22B)。U87highに対する応答では、Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞は、未刺激のCAR
+T細胞と比べると、統計的に同様の生存率低下を示した(p>0.05)。U87highで刺激したCetux-CAR
+T細胞は、U87で刺激したCetux-CAR
+T細胞と比べると、生存率における何ら統計的差を示さなかったことが注目された(p>0.05)。これらのデータは、抗原密度は、Nimo-CAR
+T細胞に対してはAICD誘導に影響を及ぼすが、Cetux-CAR
+T細胞に対しては影響はなく、このことはNimo-CAR活性が抗原密度に依存するという先のデータを支持していることを示唆している。しかしながら、Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞を活性化させ得る高い抗原密度に対する応答において、CARのscFvドメインの親和性はAICD誘導に影響しないようである。
【0191】
実施例16-Cetux-CAR
+T細胞はCARの下方制御増強を示す
内在性TCRは、抗原との相互作用に続いて下方制御され得、その下方制御の程度はTCR結合の強さに影響される(Cai et al.,1997)。同様に、CARは、抗原との相互作用に続いて下方制御され得るが、親和性がCAR下方制御に与える影響は不明である(James et al.,2008;James et al.,2010)。したがって、Cetux-CAR
+T細胞が抗原誘導性下方制御の傾向が高いかどうかを決定する試みがなされた。これを達成するため、Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞をU87またはU87highと共培養し、未刺激対照群に対するCAR発現を監視した。U87上のEGFR低密度に対する応答では、相互作用の12時間後のCetux-CAR発現は、Nimo-CARの場合よりも有意に低かった(Cetux-CAR=68.0±27.8%、Nimo-CAR=126.5±34.9%、平均±SD、n=3)(p<0.05)(
図23A、左パネル)。低密度EGFRとの相互作用から48時間までには、Cetux-CARはT細胞表面に戻り、Cetux-CAR及びNimo-CARは、統計的に同様の割合のT細胞において発現していた(Cetux-CAR=95.5±40.7、Nimo-CAR=94.4±11.8%、平均±SD、n=3)(p>0.05)。U87high上のEGFR高密度に対する応答では、Cetux-CARの発現は、Nimo-CARよりも有意に低下しており、Nimo-CARは、相互作用の12時間後、目立った下方制御をまったく示さなかった(Cetux-CAR=37.4±11.5%、Nimo-CAR=124.4±15.3%、平均±SD、n=3)(p<0.01)(12時間、p<0.01;24時間、p<0.01;48時間、p<0.05)(
図23A、右パネル)。しかし、EGFR低密度での刺激とは対照的に、相互作用の48時間後、Cetux-CARは表面発現を回復せず、Nimo-CAR発現より統計的に低いままであった(Cetux-CAR=42.6±5.9%、Nimo-CAR=95.7±11.6%、平均±SD、n=3)(p<0.05)。Cetux-CARがT細胞表面からは少なくなった場合でも、Cetux-CAR及びNimo-CARはいずれも刺激後の細胞内で検出され、このことは、CAR発現の低下はCARのインターナリゼーションによるものであり、遺伝子非組換えT細胞が増殖したためではないことを意味している、(
図23B)。CAR-L
+EL4によるCAR依存性、scFv非依存的刺激に対する応答では、Cetux-CAR及びNimo-CARは、約20%という弱い統計的に同様な下方制御を示した(
図23C)。先の結果と同様、Cetux-CARはtEGFR
+EL4に応答してわずかな下方制御を示したが、Nimo-CARは、目立った下方制御を何ら示さなかった。要約すると、これらのデータから、Cetux-CARはNimo-CARよりも急速かつ持続的な下方制御を示し、Nimo-CARはCARのscFvドメインと抗原との相互作用及び抗原密度に依存することがわかる。
【0192】
実施例17-Cetux-CAR
+T細胞は抗原での再惹起に対する応答が低い
内在性CD8
+T細胞応答における先行刺激の強度は、抗原で再惹起した際のT細胞応答と相関し得る(Lim et al.,2002)。したがって、Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞が抗原再惹起に応答する能力を評価した。CAR
+T細胞を、U87またはU87highと24時間共培養した後、IFN-γの産生を評価するため回収してU87またはU87highで再惹起した。U87及びU87highでの初回惹起後、Cetux-CAR
+T細胞は、U87及びU87highいずれの再惹起に対する応答においてもIFN-γ産生は低かった(
図24)。しかし、U87またはU87highでの初回惹起後、Nimo-CAR
+T細胞は、U87及びU87highとの再惹起に応答してIFN-γ産生を保持した。結果として、Nimo-CAR
+T細胞は、U87に応答して統計的に同様のIFN-γ産生を示し(p>0.05)、U87highでの再惹起に応答して統計的に多いIFN-γを示した(U87での初回惹起、p<0.001;U87highでの初回惹起p<0.01)。これは、初回惹起に応答したIFN-γ産生とは対照的である。初回惹起では、Nimo-CAR
+T細胞は、U87に応答して少ないIFN-γを産生し(p<0.05)、U87highに応答して統計的に同様のIFN-γ産生を示す(p>0.05)。したがって、Nimo-CAR
+T細胞は抗原を認識して応答する能力を保持するが、Cetux-CAR
+T細胞は、その後の抗原との遭遇に対する応答能が低く、これは、少なくとも部分的には、CARの下方制御によるものと考えられ、初回抗原曝露後にCetux-CAR
+T細胞の機能疲弊の傾向が高いことを指し得る。
【0193】
実施例18-NSGマウスにおいてU87細胞を使用した頭蓋内神経膠腫モデルの確立
Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞の抗腫瘍効果を生体内で評価するため、生物発光(BLI)による相対的腫瘍量の非侵襲的連続画像診断用に、ホタルルシフェラーゼ(ffLuc)レポーターを発現するよう修飾されたU87細胞の頭蓋内神経膠腫異種移植片を作製した。腫瘍及びT細胞の正確な座標への誘導注入には、これまでに記載のあるガイドスクリュー法を採用した(Lal et al.,2000)。ガイドスクリューをNOD/Scid/IL2Rg-/-(NSG)マウスの頭蓋の右前頭葉に移植し、マウスを2週間回復させた(
図25A)。T細胞処置によるガイドスクリュー移植からのタイムライン及びBLIによる相対的腫瘍量評価を
図25Bに示す。内因的にEGFR発現が低いまたはtEGFRの強制的発現により中程度のEGFRを発現しているU87細胞250,000個を、ガイドスクリューの中心を通って2.5mmの深さに注入した。腫瘍量を評価するため、T細胞処置に先立ちマウスの画像診断を行い、マウスを、腫瘍量が均等に分けられるようにして、未処置マウス、Cetux-CAR
+T細胞処置マウス、またはNimo-CAR
+T細胞処置マウスの3群に層別化した。腫瘍注入から5日後、初回投与量4x10
6T細胞をガイドスクリューの中心を通して注入した。それ以降のT細胞用量を、ガイドスクリューを通して週1回計3用量のT細胞を投与した。各T細胞処置から6日後のBLI測定値を、相対的腫瘍量評価に使用した。処置に続き、マウスをエンドポイント決定基準について評価し、これには、24時間で体容量の5%を超える急速な体重減少、体容量の25%以上の体重減少の進行、または、運動失調、努力性呼吸、及び後肢麻痺などの病気を示す明らかな臨床徴候が含まれた。エンドポイント決定基準が満たされ、動物の死が差し迫っていることが示唆された場合はマウスを屠殺し、未処置マウスと比べたCetux-CAR
+T細胞処置マウス及びNimo-CAR
+T細胞処置マウスの生存期間を評価した。
【0194】
実施例19-Nimo-CAR
+T細胞はEGFR密度が中程度の異種移植片増殖をCetux-CAR
+T細胞同様に阻害するが、T細胞関連毒性はない
U87med注射から4日後、腫瘍量を評価するためマウスをBLIで撮像した(
図26A)。相対的腫瘍量が均等に分けられるようマウスを3群に分け、その後、未処置、Cetux-CAR
+T細胞、またはNimo-CAR
+T細胞の3つの処置を無作為に割り付けた(
図26B)。CARの発現並びにCD8
+T細胞及びCD4
+T細胞の比を決定するため、3回の刺激を受け、EGFR
+aAPC上で細胞数を増幅させたCAR
+T細胞を、T細胞処置当日、フローサイトメトリーにより表現型を解析した(
図26C)。CAR発現は、Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞間で同様であった(それぞれ92%及び85%)。Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞は、ともにCD4
+T細胞及びCD8
+T細胞の混合物を含有していたが、Cetux-CAR
+T細胞は、Nimo-CAR
+T細胞よりも約20%少ないCD8
+T細胞を含有していた(それぞれ31.8%及び51.2%)。BLIによるアッセイでは、Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞はどちらも腫瘍増殖を抑制できた(18日目;Cetux-CAR、p<0.01及びNimo-CAR、p<0.05)(
図27A、B)。Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞間の腫瘍増殖制御能に差はかなった(p>0.05)。BLIで評価した腫瘍量低下は、腫瘍注射後100日経過時点で、Cetux-CAR
+T細胞で処置したマウス7匹中3匹、及びNimo-CAR
+T細胞で処置したマウス7匹中4匹において明らかであり、この時、処置を受けなかったマウスは全匹疾患の犠牲になっていた。
【0195】
Cetux-CAR
+T細胞処置マウスは有意な毒性を示し、2つの独立した実験で、マウス14匹中6匹がT細胞処置7日以内に死亡した(p=0.0006)(
図28A)。全体として、Cetux-CAR
+T細胞による処置では、未処置マウスと比較して生存期間は統計的に改善せず、T細胞処置の直後の早期死亡によるものと考えられる(未治療群の生存期間の中央値=88日、Cetux-CAR群の生存期間の中央値=105日、p=0.19)(
図28B)。興味深いことに、生存曲線は、変曲点を描き、それより前ではCetux-CAR
+T細胞処置による生存期間は未処置マウスより低く、変曲点の後では初期 T細胞毒性で生き残ったマウスの生存期間改善を示している。初期T細胞関連毒性で生き残ったマウスに限って考えると、Cetux-CAR
+T細胞は未処置マウスと比べ、マウス4匹中3匹で改善している(p=0.0065)。対照的に、Nimo-CAR
+T細胞は、効果的な腫瘍退縮を仲介し、マウス7匹中4匹において何らの注目される毒性もなく生存期間を延長させる(未処置の生存期間の中央値=88日、Nimo-CARの生存期間の中央値=158日、p=0.0269)。これらの結果は、Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞は、抗原密度が中程度の腫瘍の増殖制御において有効であるが、Cetux-CAR
+T細胞は、T細胞処置の直後に顕著な毒性が現われることを示している。
【0196】
実施例20-Cetux-CAR
+T細胞はEGFR低密度の異種移植片の増殖を阻害するが、Nimo-CAR
+T細胞は増殖を阻害しない
マウスにU87を注入し、その4日後、相対的腫瘍量をBLIにより評価した(
図29A)。相対的腫瘍量を均等に3群に分け、未処置、Cetux-CAR
+T細胞処置、またはNimo-CAR
+T細胞処置に無作為に割り付けた(
図29B)。CARの発現並びにCD8
+T細胞及びCD4
+T細胞の比を決定するため、3回の刺激を受け、EGFR
+aAPC上で細胞数を増幅させたCAR
+T細胞を、T細胞処置当日、フローサイトメトリーにより表現型を解析した(
図29C)。CAR発現は、Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞間で同様であった(それぞれ92%及び85%)。Cetux-CAR
+T細胞及びNimo-CAR
+T細胞は、ともにCD4
+T細胞及びCD8
+T細胞の混合物を含有していたが、Cetux-CAR
+T細胞は、Nimo-CAR
+T細胞よりも約20%少ないCD8
+T細胞を含有していた(それぞれ31.8%及び51.2%)。
【0197】
マウスにT細胞処置を施し、これまでに記載があるようにBLIで腫瘍を評価した(
図25B)。Cetux-CAR
+T細胞で処置したマウスは、未処置マウスよりも腫瘍量を有意に低下させた(25日目、p<0.01)(
図30A及び30B)。対照的に、Nimo-CAR
+T細胞による処置では、未処置マウスと比較して有意な腫瘍量の減少はなかった(Nimo-CAR、p>0.05)。Cetux-CAR
+T細胞で処置したマウスの腫瘍量減少は一過性であったが、T細胞処置を中止すると、腫瘍増殖が再開した。
【0198】
Cetux-CAR
+T細胞処置では、未処置マウスに比べ、マウス6匹中3匹で生存期間が有意に延長された(未処置の生存期間の中央値=38.5日、Cetux-CARの生存期間の中央値=53日、p=0.0150)(
図31)。対照的に、Nimo-CAR
+T細胞による処置では、生存期間は有意に改善しなかった(未処置の生存期間の中央値38.5日、Nimo-CARの生存期間の中央値46日、p=0.0969)。これらのデータは、Cetux CAR T細胞は、低い抗原密度に対して有効であるが、Nimo-CAR
+T細胞は低密度のEGFR発現を効率的に認識しないことを示している。
***
参考文献
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