(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138813
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】包装容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 77/00 20060101AFI20230922BHJP
B65D 30/20 20060101ALI20230922BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B65D77/00 B
B65D30/20 G
B65D65/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130957
(22)【出願日】2023-08-10
(62)【分割の表示】P 2019525496の分割
【原出願日】2018-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2017116293
(32)【優先日】2017-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】菊川 淳二
(72)【発明者】
【氏名】堀田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 愛
(57)【要約】
【課題】安定して自立することが可能な包装容器を提供する。
【解決手段】包装容器1は、少なくとも基材2Aと、バリア層2Bと、シーラント層2Cとがこの順で積層された積層シート2よりなり、この積層シート2は、JIS-P8125に準拠したテーバーこわさ試験機法によって測定した剛度が1.01[mN・m]以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材と、バリア層と、シーラント層とがこの順で積層された積層シートよりなり、
JIS-P8125に準拠したテーバーこわさ試験機法によって測定した前記積層シートの剛度が1.01mN・m以下であることを特徴とする包装容器。
【請求項2】
前記積層シートからなり、前記シーラント層が対向するように配置された正面部及び裏面部と、前記正面部及び裏面部の一端側から前記正面部及び裏面部の内側に折り込まれた底面部と、前記正面部及び裏面部の幅方向の縁を2重に重ねてシールした側面シール部と、前記正面部及び裏面部の幅方向の縁及び前記底面部の幅方向の縁を4重に重ねてシールした底面シール部とを有し、
前記底面部が折り込まれた底折り込み深さの寸法を前記側面部の高さ寸法の10~40%としたことを特徴とする請求項1に記載の包装容器。
【請求項3】
前記底面シール部と前記側面シール部との境界部に、シール幅の40~90%の幅のポイントシールが設けられたことを特徴とする請求項2に記載の包装容器。
【請求項4】
前記底面シール部に、前記底面シール部の下端から前記底折込み深さの5~50%の位置に抜き部が設けられたことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の包装容器。
【請求項5】
前記基材は、坪量が60~140g/m2、厚みが120~220μmの基材であり、
前記シーラント層は、厚みが70μm以上のCPPフィルムであることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の包装容器。
【請求項6】
前記基材は、セルロース含有材料、又は、樹脂及び天然鉱物を含む材料を有することを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の包装容器。
【請求項7】
基材、バリア層及びシーラント層がこの順で積層され、互いに直交する第1の方向及び第2の方向を有する方形状で形成され、かつ前記第1の方向に沿って正面部、底面部の第1部分及び第2部分、並びに裏面部がこの順で区成された積層シートを準備する工程と、
前記シーラント層が互いに向かい合い、かつ前記正面部と前記裏面部、前記底面部の前記第1部分と前記第2部部分とが互いに重なるように前記積層シートを2つに折り曲げる工程と、
前記底面部の前記第1部分と前記第2部分とが重なった状態で前記第1部分及び前記第2部分の前記第2の方向の両側の各々の縁に、前記第1部分及び前記第2部分の各々の一部を除去した抜き部を形成する工程と、
前記第1部分及び前記第2部分の各々の前記抜き部が互いに向かい合い、かつ前記第1部分と前記第2部分とが互いに重なるように前記第1部分及び第2部分を前記正面部と前記裏面部との間に折り込む工程と、
前記正面部及び前記裏面部の前記第2の方向の両側の縁において、前記正面部及び前記裏面部の各々の前記シーラント層同士、前記正面部及び前記底面部の前記第1部分の各々の前記シーラント層同士、前記裏面部及び前記底面部の前記第2部分の各々のシーラント層同士、並びに、前記第1部分及び前記第2部分の各々の前記抜き部を通して前記正面部及び前記裏面部の各々の前記シーラント層同士をシールする工程と、
を備えたことを特徴とする包装容器の製造方法。
【請求項8】
前記正面部及び前記裏面部の前記第2の方向の両側において、前記底面部の前記第1部分と前記第2部分とが互いに重なった状態で前記正面部及び前記第1部分の各々の前記シーラント層同士をシールすると共に、前記裏面部及び前記第2部分の各々の前記シーラント層同士をシールする工程を更に備えたことを特徴とする請求項7に記載の包装容器の製造方法。
【請求項9】
前記正面部及び前記裏面部の前記第2の方向の両側の縁において、前記正面部及び前記裏面部が重なった2重領域と、前記正面部、前記裏面部、前記底面部の前記第1部分及び第2部分が重なった4重領域とに亘って前記シーラント層同士を部分的にシールする工程を更に備えたことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の包装容器の製造方法。
【請求項10】
基材、バリア層及びシーラント層がこの順で積層され、互いに直交する第1の方向及び第2の方向を有する方形状で形成され、かつ前記第1の方向に沿って正面部、底面部の第1部分及び第2部分、並びに裏面部がこの順で区成された積層シートを準備する工程と、
前記シーラント層が互いに向かい合い、かつ前記正面部と前記裏面部、前記底面部の前記第1部分と前記第2部部分とが互いに重なるように前記積層シートを2つに折り曲げる工程と、
前記底面部の前記第1部分と前記第2部分とが重なった状態で前記第1部分及び前記第2部分の前記第2の方向の両側の各々の縁に、前記第1部分及び前記第2部分の各々の一部を除去した抜き部を形成する工程と、
前記第1部分及び前記第2部分の各々の前記抜き部が互いに向かい合い、かつ前記第1部分と前記第2部分とが互いに重なるように前記第1部分及び第2部分を前記正面部と前記裏面部との間に折り込む工程と、
前記正面部及び前記裏面部の前記第2の方向の両側の縁において、前記正面部及び前記裏面部の各々の前記シーラント層同士、前記正面部及び前記底面部の前記第1部分の各々の前記シーラント層同士、前記裏面部及び前記底面部の前記第2部分の各々のシーラント層同士、並びに、前記第1部分及び前記第2部分の各々の前記抜き部を通して前記正面部及び前記裏面部の各々の前記シーラント層同士をシールする工程と、
を備える包装容器の製造方法で製造された包装容器。
【請求項11】
前記正面部及び前記裏面部の前記第2の方向の両側において、前記底面部の前記第1部分と前記第2部分とが互いに重なった状態で前記正面部及び前記第1部分の各々の前記シーラント層同士をシールすると共に、前記裏面部及び前記第2部分の各々の前記シーラント層同士をシールする工程を更に備える請求項10に記載の包装容器の製造方法で製造された包装容器。
【請求項12】
前記正面部及び前記裏面部の前記第2の方向の両側の縁において、前記正面部及び前記裏面部が重なった2重領域と、前記正面部、前記裏面部、前記底面部の前記第1部分及び第2部分が重なった4重領域とに亘って前記シーラント層同士を部分的にシールする工程を更に備える請求項10又は請求項11に記載の包装容器の製造方法で製造された包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装容器及びその製造方法に関し、特に、レトルト食品や飲み物などの飲食物を収容する包装容器及びその製造方法に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長期保存が可能なレディーミール、例えばベビーフードや介護食、カレーや魚などの煮込み料理の包装容器として、従来は、缶詰や瓶詰、そして、アルミニウム箔を各種プラスチックフィルムで挟み込んだ積層シートからなるレトルトパウチが使われてきた。また、近年では、積層シートの基材として電子レンジで調理可能なアルミナやシリカ蒸着フィルムを用いたレトルトパウチも多く流通している(特許文献1参照)。特許文献1の包装袋のようなレトルトパウチを用いれば、環境面において、輸送コスト、廃棄のし易さから、缶・瓶の代替として有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、防災意識の高まりから、災害時の備蓄食として保存容器のまま直接飲食が可能である点も重要な機能となってきた。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1のように、基材としてプラスチックフィルムを用いた場合は、いわゆる腰が弱いことがあり、特に掌の上で安定して自立する包装容器として適用するには改善の余地があった。基材のプラスチックフィルムの厚みを増やして腰を強くすることはできるが、廃棄がし難くなると共に、環境への負荷がより大きくなる。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は安定して自立することが可能な包装容器及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る包装容器は、少なくとも基材と、バリア層と、シーラント層とがこの順で積層された積層シートよりなり、JIS-P8125に準拠したテーバーこわさ試験機法によって測定した剛性(剛度)が1.01mN・m以下である。
【0007】
また、本発明の一態様に係る包装容器の製造方法は、
基材、バリア層及びシーラント層がこの順で積層され、互いに直交する第1の方向及び第2の方向を有する方形状で形成され、かつ第1の方向に沿って正面部、底面部の第1部分及び第2部分、並びに裏面部がこの順で区成された積層シートを準備する工程と、
シーラント層が互いに向かい合い、かつ正面部と裏面部、底面部の第1部分と第2部部分とが互いに重なるように積層シートを2つに折り曲げる工程と、
底面部の第1部分と第2部分とが重なった状態で第1部分及び第2部分の第2の方向の両側の各々の縁に、第1部分及び第2部分の各々の一部を除去した抜き部を形成する工程と、
第1部分及び第2部分の各々の抜き部が互いに向かい合い、かつ第1部分と第2部分とが互いに重なるように第1部分及び第2部分を正面部と裏面部との間に折り込む工程と、
正面部及び裏面部の第2の方向の両側の縁において、正面部及び裏面部の各々のシーラント層同士、正面部及び底面部の第1部分の各々のシーラント層同士、正面部及び底面部の第2部分の各々のシーラント層同士、並びに、第1部分及び第2部分の各々の抜き部を通して正面部及び裏面部の各々のシーラント層同士をシールするシール工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、安定して自立する包装容器及びその製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態1に係る包装容器に用いられた積層シートの断面構造を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る包装容器の正面側を示す正面図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る包装容器の正面とは反対側の裏面側を示す裏面図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係る包装容器の組立方法を示す斜視図である。
【
図5】
図2のII-II線に沿った断面構造を示す断面図である。
【
図6】
図2のIII-III線に沿った断面構造を示す断面図である。
【
図7】本発明の実施形態1に係る包装容器の製造方法を説明するための図である。
【
図8】本発明の実施形態1に係る包装容器の製造方法を説明するための図である。
【
図9】本発明の実施形態2に係る包装容器の正面側を示す正面図である。
【
図10】
図9に示す切り抜き領域を切り抜いた状態を示す正面図である。
【
図11】本発明の実施形態3に係る包装容器の正面側を示す正面図である。
【
図12】
図11に示す切り抜き領域を切り抜いた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る包装容器について説明する。ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、及び構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
以下の実施形態では、一例として、長期保存が可能なレディーミール用途の包装容器について説明する。
【0011】
(実施形態1)
図1~
図4に示すように、本発明の実施形態1に係る包装容器1は、積層シート2を主体に構成されている。
積層シート2は、
図1に示すように、積層シートの剛性(剛度)を高める基材2Aと、酸素や紫外線などの各種バリア性に優れたバリア層2Bと、熱圧着性や密封性などに優れたシーラント層2Cとがこの順で積層された積層構造になっている。この実施形態において、基材2Aとしては、例えば坪量が60~140g/m
2、厚みが120~220μmの紙基材を用いている。また、バリア層2Bとしては、例えば無機化合物を蒸着して成膜された厚みが12μm程度のバリアフィルムを用いている。また、シーラント層2Cとしては、例えば厚みが70μm以上の無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)を用いている。
【0012】
例えば、この積層シート2の酸素透過度(酸素透過率)をMOCON社製 型番:OXTRAN 2/21MLで、30℃、70%RH(相対湿度)において複数の積層シート2を測定したところ、0.01、0.002、0.039、0.014cc/m2/day/atmという値が得られた。この測定方法は、MOCON法(JIS-K7126‐2:2006)に準拠したものである。
また、複数の積層シート2の水蒸気透過度をカップ法で40℃、90%RH(相対湿度)において測定したところ、0.565、0.651、0.929、0.957g/m2/dayという値が得られた。この測定方法はJIS-Z0208:1976に準拠したものである。
【0013】
包装容器1は、1枚の積層シート2を、シーラント層2Cが向かい合うようにして側面視でW字状に折り曲げてなる。すなわち、包装容器1は、
図2及び
図3に示すように、シーラント層2Cが向かい合うように互いに対向配置された正面部21及び裏面部22と、この正面部21及び裏面部22の第1の方向の一端側から他端側に向かって正面部21及び裏面部22の内側に折り込まれた底面部23とを備えている。正面部21及び裏面部22の各々は、同一平面内において、第1の方向(X方向)に高さを有し、第1の方向と直交する第2の方向(Y方向)に幅を有する。この実施形態では、第1の方向であるX方向を高さ方向と呼び、第2の方向であるY方向を幅方向と呼ぶこともある。従って、底面部23は、正面部21及び裏面部22の各々の高さ方向(X方向)において互いに反対側に位置する一端側(一辺側)及び他端側(他辺側)のうちの一端側(一辺側)に設けられている。底面部23は、正面部21及び裏面部22の各々の内側に第1部分23a及び第2部分23bが互いに向かい合うように二つ折りで折り込まれている(
図4(c)参照)。
【0014】
また、包装容器1は、正面部21及び裏面部22の各々の幅方向の縁(以下、縁と単にいうことがある)を2重に重ねてシールした側面シール部24と、正面部21及び裏面部22の縁及び底面部23の幅方向の縁(以下、縁と単にいうことがある)を4重に重ねてシールした底面シール部25とを備えている。なお、
図2及び
図3においては、側面シール部24、底面シール部25、及び後述する補強シール部25aをハッチング表示している。側面シール部24及び底面シール部25は、正面部21及び裏面部22の幅方向(Y方向)において反対側に位置する2つの縁にそれぞれ設けられている。底面シール部25は正面部21及び裏面部22の一端側(一辺側)から他端側(他辺側)に向かって延伸し、側面シール部24は底面シール部25に連結されて底面シール部25から正面部21及び裏面部22の他端側に向かって延伸している。底面部23が折り込まれた底折込み深さの寸法23h、換言すれば底面シール部25の長さは正面部21及び裏面部22の高さ寸法1hの10~40%とすることが好ましい。この範囲より狭い10%未満の場合、開いたときの底面部23が狭くなるため、包装容器1は安定して自立できない。また、この範囲より広い40%を超える場合、折り込まれた底面部23を開くと、底面部23が開ききらないため、包装容器1は安定して自立できない。更に好ましい範囲は、15~25%である。この範囲であれば更に自立性が向上する。
【0015】
また、包装容器1は、底面部23の第1部分23a及び第2部分23bのうちの一方の第1部分23aと正面部21とを2重に重ねてシールした補強シール部25aと、底面部23の第1部分23a及び第2部分23bのうちの他方の第2部分23bと裏面部22とを2重に重ねてシールした補強シール部25bとを備えている。補強シール部25a及び25bの各々は、正面部21及び裏面部22の幅方向において反対側に位置する2つの縁側にそれぞれ設けられている。正面部21及び裏面部22の一方の縁側に設けられた補強シール部25a及び25bは、正面部21及び裏面部22の一端側から一方の底面シール部25に亘って延伸し、一方の底面シール部25と連結されている。正面部21及び裏面部22の他方の縁側に設けられた補強シール部25a及び25bは、正面部21及び裏面部22の一端側から他方の底面シール部25に亘って延伸し、他方の底面シール部25と連結されている。
【0016】
また、包装容器1は、正面部21、裏面部22及び底面部23で囲まれ、正面部21、裏面部22及び底面部23を側面シール部24及び底面シール部25でシールすることによって形成された収容部30を備えている。側面シール部24、底面シール部25、補強シール部25a及び25bは、熱圧着又は超音波溶着などによって形成される。
底面シール部25と側面シール部24との境界部には、シール性を高めるためのポイントシール部26が底面シール部25及び側面シール部24に亘って設けられている。このポイントシール部26は、底面シール部25及び側面シール部24のシール幅に対して40~90%の幅で形成することが好ましい。このポイントシール部26は、正面部21及び裏面部22の幅方向の2つの縁側にそれぞれ設けられている。
【0017】
また、ポイントシール部26は、側面シール部24及び底面シール部25に亘って設けられるX方向の全体長さに対して、底面シール部25に掛かるX方向の長さの割合が10%以上であることが好ましい。10%未満の場合は、強度不足となり、包装容器1を落としたときに収容部30内の飲食物(内容物)が洩れる可能性が高くなる。
なお、熱圧着、超音波溶着でシールを行うと、
図5に示すように、シーラント層2C同士が融着するため、包装容器1の外側表面(積層シート2の基材2A側表面)からはシールした線が明確には見えない。このため、包装容器1の外側表面の意匠性が損なわれない。
【0018】
図2及び
図3に示すように、2つの底面シール部25の各々には、抜き部27が設けられている。底面部23は、
図6に示すように、基材2A同士を張り合わせる必要があり、抜き部27によって、底面シール部25のシーラント層2Cを底面部23側に露出することができる。すなわち、底面シール部25において、底面部23の第1部分23a及び第2部分23bの各々に設けられた抜き部27,27を通して正面部21及び裏面部22の各々のシーラント層2C同士を融着することができる。抜き部27は、底面シール部25の下端から底折込み深さ(寸法23h)の5~50%の位置に設けられていることが好ましい。この範囲より下側にある場合、抜き部の面積を十分に確保できないだけでなく、落下試験において落下の衝撃が集中し、破袋強度が弱くなる。また、この範囲より上側にある場合、シールされていない底面部の下側が、内容物の重みで開いてしまい、安定して自立できない。より好ましい範囲は、5~30%、更に好ましい範囲は10~20%である。この範囲であれば、落下試験での破袋強度と、自立安定性の両方が更に向上する。
【0019】
この実施形態において、抜き部27は底面シール部25の縁から内側に所定の幅を有して切り込まれた幅広スリット(帯状の切欠き領域)で構成されているが、平面形状が円形や楕円などの貫通孔で構成してもよい。
正面部21及び裏面部22の他端側には、収容部30に食品を入れた後、正面部21及び裏面部22を2重に重ねてシールして収容部30を密閉する密閉シール部28が設けられている。また、2つの側面シール部24の少なくとも何れか一方には、レトルト後(加熱処理後)の食品を収容部30から取り出すときに正面部21及び裏面部22の上部側を切り取って収容部の上部側を開放するための切欠き部29が設けられている。
【0020】
このように構成された包装容器1は、
図4(a),(b)に示すように、シート状態において、正面部21、底面部23(第1部分23a、第2部分23b)、及び裏面部22を長手方向にこの順に画成する。次に、第1部分23a、第2部分23bのそれぞれの幅方向(第2の方向)の両端側に底面シール部25,25を設ける。また、正面部21及び裏面部22のそれぞれの幅方向両端側には、側面シール部24及び底面シール部25が設けられる。これらのうち、側面シール部24は、シート状態の包装容器1の長手方向(第1の方向)の両端側に位置するように設けられる。すなわち、シート状態の包装容器1の長手方向に沿って、側面シール部24、底面シール部25、底面シール部25、底面シール部25、底面シール部25、側面シール部24の順で設けられる。
【0021】
底面シール部25の長手方向(第1の方向)の寸法は、シート状態の包装容器1の長手方向(第1の方向)に沿った第1部分23a、第2部分23bの寸法にほぼ等しく設定される。正面部21及び裏面部22に設けられる底面シール部25の長手方向(第1の方向)の寸法は、底面部23に設けられる底面シール部25の長手方向(第1の方向)の寸法にほぼ等しいことが好ましい。
次に、
図4(b)に示すように、第1部分23a,第2部分23bを山折りし、正面部21又は裏面部22と底面部23とを谷折りし、側面視でW字状として正面部21と裏面部22とが対向するようにシート状態の包装容器1を折り曲げる。
【0022】
次に、
図4(c)に示すように、包装容器1の幅方向の一端の側面シール部24,24同士、正面部21又は裏面部22の底面シール部25と底面部23の底面シール部25とを密着させ、例えば、熱圧着又は超音波溶着で固定する。続いて、包装容器1の幅方向の他端の側面シール部24及び底面シール部25も同様に固定することで、
図4(d)に示すような形態の包装容器1が得られる。この包装容器1は、シート状態の包装容器1の長手方向(第1の方向)の両端部を開口部とした収容部30を備えた袋形状をなす。そして、この包装容器1は、
図4(e)に示すように、上記開口部を拡げると共に、第1部分23a,第2部分23bを収容部30内から押圧することで第1部分23a,第2部分23bの大部分が包装容器1を設置する面に接し、包装容器1の自立性を援助する。なお、この包装容器1は、収容部30内に食品を収容した後、例えば、収容部30を減圧のうえ、
図4(a)に示す密閉シール部28,28同士を側面シール部24、底面シール部25と同様に固定して密閉する。
【0023】
包装容器1は、流動性の食品を収容部30に収容しているとき、底面部23を下にして立てた状態で置くと、食品が底面部23側に移動する。そして、食品の移動により収容部30の底面部23側の内圧が高くなり、正面部21及び裏面部22の内側に折り込まれていた底面部23が開いて収容部30の一端側(底面部23側)が膨らむ。これにより、包装容器1は底面部23を下にして自立する。このとき、包装容器1を安定して自立させるためには、基材2Aの厚みを厚くして積層シート2の剛性を高くすることが有用である。しかしながら、積層シート2の剛性が高すぎると、製袋機で底面部23の折込みが困難となる。そこで、本発明者らは製袋機での折込みについて検討した結果、JIS(Japanese Industrial Standards)-P8125:2000に準拠したテーバーこわさ試験機法によって測定したテーバーこわさ(剛度)が1.01mN・m以下の積層シート2であれば製袋機での折込みが可能であることを見出した。したがって、剛度が約1.01mN・m以下の積層シート2であれば製袋機で折込むことが可能となるので、安定して自立する包装容器1を提供することができる。
ここで、剛度とは、一般的に紙のコシといわれるものを指す。また、テーバーこわさ試験機法は荷重試験法の一種である。
【0024】
また、積層シート2は、基材2Aとして紙基材を用いている。紙基材は、廃棄の際にプラスチックの基材と比較して燃焼時のカロリーを大幅に削減することができるため、紙基材を用いた積層シート2からなる包装容器1では環境への負荷がより小さい。
また、包装容器1は、底面部23が正面部21及び裏面部22から正面部21及び裏面部22の内側に折り込まれているため、正面部21及び裏面部22と底面部23とを重ねてシールしたシール部が正面部21及び裏面部22の一端側に存在しない。正面部21及び裏面部22の一端側にシール部が存在する場合、底面部23を下にして包装容器を立てた状態で置くと、包装容器1の底面部23と、例えば電子レンジのターンテーブルとが接する設置面から底面部が底上げされた状態となる。すなわち、底面部23の一部がターンテーブルから離れた(浮いた)状態となる。電子レンジでは、設置面側での加熱力が高いため、設置面から底面部が底上げされた包装容器では食品の加熱に影響する。これに対し、この実施形態1の包装容器1は、正面部21及び裏面部22の一端側にシール部が存在せず、設置面から底面部23が底上げされた状態とはならないので、正面部21及び裏面部22の一端側にシール部が存在する場合と比較して電子レンジでの加熱を効率良く行うことができる。
【0025】
包装容器1は、基材としてセルロース含有シートを用いてもよく、さらに、紙代替として、無機鉱物を主体としたストーンペーパー、例えば、株式会社TBMが開発、製造する、石灰石を主原料とする新素材LIMEXを用いてもよい。
なお、ストーンペーパーとは石灰石と樹脂を使用した素材である。無機鉱物とは石灰石など天然鉱物を指すが、天然鉱物と類似、同じ性質を有する人工物も含む。例えば合成した炭酸カルシウムや合成雲母が挙げられる。
【0026】
また、セルロースを含有する材料とは、紙をはじめ、紙と樹脂を利用したもの、例えば紙に樹脂をコーティングしたものや、樹脂にセルロース繊維をコーティングしたものが挙げられる。セルロース自体も、木材・草などの植物由来に限らず、天然多糖類由来のセルロース様物質(絹を構成する物質、ホヤの生成する物質)、セルロースやセルロース様物質に置換基を導入したり、分子量を小さく(分子長さを短く)したものなどを含む。
上記に使用される樹脂は、熱可塑性樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、PET、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂など)、熱(光)硬化性樹脂(ウレタン、エポキシ、フェノール樹脂など)、水溶性高分子(ポリビニルアルコール、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂で水溶性ディスパージョンとして利用可能なもの)などが挙げられる。
【0027】
ここで、この実施形態1の包装容器1は、積層シート2の基材2Aとして紙基材を用いている。この場合、電子レンジでの加熱が可能である。従来、アルミニウム箔を各種プラスチックフィルムで挟み込んだ積層シートを用いたものが知られているが、これは電子レンジでの加熱が不可である。また、電子レンジでの加熱が可能なアルミナやシリカ蒸着フィルを用いたものが知られているが、このアルミナやシリカ蒸着フィルムは薄いため、腰が弱く、特に掌の上での包装容器の自立性が低い。一方、この実施形態1の包装容器1は、腰が強く、非常時や災害時において、保存容器のまま直接飲食が可能である。
また、この実施形態1の包装容器1は、積層シート2の基材2Aとして紙基材を用いているので、熱処理しても正面部21や裏面部22に描かれた図柄などの変化がない。また、正面部21や裏面部22に名前や文章などを書き込むことが可能である。また、環境にも優しく、過剰な包装も不用である。また、軽量であり、環境面においても、輸送コスト、廃棄のし易さから、缶や瓶の代替として有用である。
【0028】
次に、本発明の実施形態1に係る包装容器1の製造方法について、
図7及び
図8を参照しながら更に説明する。
まず、
図7(a)に示す積層シート2を準備する。この積層シート2は、
図1に示すように、少なくとも、基材2A、バリア層2B、シーラント層2Cがこの順で積層された積層構造になっている。そして、積層シート2は、
図7(a)に示すように、同一平面内において互いに直交する第1の方向であるX方向(高さ方向)及び第2方向であるY方向(幅方向)を有する方形状で形成され、かつX方向に沿って正面部21、底面部23の第1部分23a及び第2部分23b、並びに裏面部22がこの順で区成された構成になっている。
【0029】
次に、
図7(b)に示すように、正面部21と裏面部22、底面部23の第1部分23aと第2部分23bとが互いに重なるように積層シート2を2つに折り曲げる。この積層シート2の折り曲げは、底面部23の第1部分23aと第2部分23bとの間の折り曲げ線を境にして一方の片部と他方の片部の各々のシーラント層2Cが互いに向かい合うように行う。すなわち、2つに折り曲げられた積層シート2は、正面部21及び裏面部22の各々のシーラント層2C同士が向かい合い(
図5参照)、同様に底面部23の第1部分23a及び第2部分23bの各々のシーラント層2C同士が向かい合う。そして、正面部21及び裏面部22の各々の基材2Aが外側に位置し(
図5参照)、同様に底面部23の第1部分23a及び第2部分23bの各々の基材2Aが外側に位置する。
【0030】
次に、
図7(c)に示すように、底面部23の第1部分23aと第2部分23bとが重なった状態で、第1部分23a及び第2部分23bのY方向の両側の各々の縁に、第1部分23a及び第2部分23bの各々の一部を除去した抜き部27を形成する。この抜き部27は、例えば第1部分23a及び第2部分23bを重ね合わせた状態で打ち抜き加工(パンチ加工)を施すことによって形成される。
次に、
図7(d)に示すように、底面部23の第1部分23a及び第2部分23bの各々の抜き部27が互いに向かい合い、かつ第1部分23aと第2部分23bとが互いに重なるように第1部分23a及び第2部分23bを正面部21と裏面部22との間に折り込む。この工程において、底面部23の第1部分23a及び第2部分23bの各々の基材2A側が向かい合う。そして、正面部21及び第1部分23aの各々のシーラント層2C側が向かい合い、裏面部22及び第2部分23bの各々のシーラント層2C側が向かい合う。
【0031】
次に、正面部21及び裏面部22のY方向の両側において、底面部23の第1部分23aと第2部分23bとが互いに重なった状態で正面部21及び第1部分23aの各々のシーラント層2C同士をシールすると共に、裏面部22及び第2部分23bの各々のシーラント層2C同士をシールする。これらのシールは、例えば熱圧着又は超音波溶着による融着によって行う。この工程により、
図8(a)に示すように、正面部21及び第1部分23aの各々のシーラント層2C同士をシールした補強シール部25aが形成されると共に、裏面部22及び第2部分23bの各々のシーラント層2C同士をシールした補強シール部25bが形成される。この補強シール部25aは、正面部21のX方向に伸びる両縁側から、それぞれ正面部21の下端21a(正面部21と底面部23の第1の部分23aとの間の折り曲げ部,
図7(d)参照)に向かって斜め方向に形成される。また、補強シール部25bにおいても、裏面部22のX方向に伸びる両縁側から、それぞれ裏面部22の下端22a(裏面部22と底面部23の第2の部分23bとの間の折り曲げ部,
図7(d)参照)に向かって斜め方向に形成される。
【0032】
次に、正面部21及び裏面部22のY方向の両側の縁において、正面部21及び裏面部22が重なった2重領域と、正面部21、裏面部22、底面部23の第1部分23a及び第2部分23bが重なった4重領域とに亘ってシーラント層2C同士を部分的にシールする。これらのシールは、例えば熱圧着又は超音波溶着による融着によって行う。この工程により、
図8(b)に示すように、2重領域と4重領域とに亘ってシーラント層2C同士をシールしたポイントシール部26が形成される。
【0033】
次に、正面部21及び裏面部22のY方向の両側の縁において、正面部21及び裏面部22の各々のシーラント層2C同士、正面部21及び底面部23の第1部分23aの各々のシーラント層2C同士、裏面部22及び底面部23の第2部分23bの各々のシーラント層2C同士、並びに、第1部分23a及び第2部分23bの各々の抜き部27を通して正面部21及び裏面部22の各々のシーラント層2C同士をシールする。これらのシールは、例えば熱圧着又は超音波溶着による融着によって行う。この工程により、
図8(c)に示すように、正面部21及び裏面部22のY方向の縁を2重に重ねてシーラント層2C同士をシールした側面シール部24が形成されると共に、正面部21、裏面部22、底面部23の第1部分23a及び第2部分23bのY方向の縁を4重に重ねてシーラント層2C同士をシールした底面シール部25が形成される。
【0034】
この後、側面シール部24、底面シール部25、補強シール部25a,25b及びポイントシール部が形成された積層シート2を所定の形状に断裁することにより、
図2及び
図3に示す包装容器1がほぼ完成する。この断裁工程において、側面シール部24に切欠き部29を形成する。
本発明の実施形態1に係る包装容器1の製造方法によれば、安定して自立することが可能な包装容器1を製造することができる。
また、本発明の実施形態1に係る包装容器1の製造方法によれば、側面シール部24、底面シール部25、補強シール部25a,25b及びポイントシール部26において、積層シート2のシーラント層2C同士をシールすることができるので、シール性に優れた包装容器1を製造することができる。
【0035】
なお、この実施形態1では、補強シール部25a,25bを形成する補強シール工程(
図8(a)参照)と、ポイントシール部26を形成するポイントシール工程(
図8(b)参照)と、側面シール部24及び底面シール部25を形成する側面及び底面シール工程(
図8(c)参照)とをこの順で説明したが、これらのシール工程の順序はこれに限定されるものではなく、順不同である。例えば、
図8(a)に示す補強シール工程をS1、
図8(b)に示すポイントシール工程をS2、
図8(c)に示す側面及び底面シール工程をS3としたとき、S1→S3→S2、S2→S1→S3、S2→S3→S1、S3→S1→S2、S3→S2→S1としてもよい。
また、正面部21及び裏面部22のうちの何れか一方に、外部から収容部30内へストローなどの挿入を可能とする挿入部や、密閉された収容部30内の内容物(飲食物)の加熱により収容部30内の圧力が一定以上となったときに収容部30内の蒸気を外部に逃がす蒸気排出部などを設けてもよい。
【0036】
以下に、本実施形態の実施例及び比較例を示す。なお、本実施形態は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1では、積層シート2として以下の材料からなる積層シートを用いて実施形態1と同様の包装容器を作製した。
基材2Aとしては、坪量が70g/m2、厚みが133μmの紙基材を用いた。そして、バリア層2Bとしては無機化合物の蒸着による厚みが12μmのバリアフィルムを用いた。そして、シーラント層2Cとしては、厚さが70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)を用いた。そして、底折込み深さ寸法23hは包装容器1の高さ寸法1hの18%とした。
この実施例1の包装容器は、食品を収容した状態で立てたときに安定して自立した。
【0037】
(実施例2)
実施例2では、積層シート2として以下の材料からなる積層シートを用いて包装容器を作製した。
基材2Aとしては、坪量が80g/m2、厚みが139μmの紙基材を用いた。そして、バリア層2B及びシーラント層2Cとしては、実施例1と同様のフィルムを用いた。そして、底折込み深さの寸法23hは実施例1と同様の寸法とした。
この実施例2の包装容器も、食品を収容した状態で立てたときに安定して自立した。
【0038】
(実施例3)
実施例3では、積層シート2として以下の材料からなる積層シートを用いて包装容器を作製した。
基材2Aとしては、坪量が90g/m2、厚みが146μmの紙基材を用いた。そして、バリア層2B及びシーラント層2Cとしては、実施例1と同様のフィルムを用いた。底折込み深さの寸法23hは実施例1と同様の寸法とした。
この実施例3の包装容器も、食品を収容した状態で立てたときに安定して自立した。
【0039】
(実施例4)
実施例4では、積層シート2として以下の材料からなる積層シートを用いて包装容器を作製した。
基材2Aとしては、坪量が100g/m2、厚みが157μmの紙基材を用いた。そして、バリア層2B及びシーラント層2Cとしては、実施例1と同様のフィルムを用いた。そして、底折込み深さの寸法23hは実施例1と同様の寸法とした。
この実施例4の包装容器も、食品を収容した状態で立てたときに安定して自立した。
【0040】
(実施例5)
実施例5では、積層シート2として以下の材料からなる積層シートを用いて包装容器を作製した。
基材2Aとしては、坪量が110g/m2、厚みが177μmの紙基材を用いた。そして、バリア層2B及びシーラント層2Cとしては、実施例1と同様のフィルムを用いた。そして、底折込み深さの寸法23hは実施例1と同様の寸法とした。
この実施例5の包装容器も、食品を収容した状態で立てたときに安定して自立した。
【0041】
(実施例6)
実施例6では、積層シート2として以下の材料からなる積層シートを用いて包装容器を作製した。
基材2Aとしては、坪量が120g/m2、厚みが193μmの紙基材を用いた。そして、バリア層2B及びシーラント層2Cとしては、実施例1と同様のフィルムを用いた。そして、底折込み深さの寸法23hを実施例1と同様の寸法とした。
この実施例6の包装容器も、食品を収容した状態で立てたときに安定して自立した。
【0042】
(実施例7)
実施例7では、積層シート2として以下の材料からなる積層シートを用いて包装容器を作製した。
基材2Aとしては、坪量が140g/m2、厚みが221μmの紙基材を用いた。そして、バリア層2B及びシーラント層2Cとしては、実施例1と同様のフィルムを用いた。そして、底折込み深さの寸法23hは実施例1と同様の寸法とした。
この実施例7の包装容器も、食品を収容した状態で立てたときに安定して自立した。
【0043】
(実施例8)
実施例8では、積層シート2として以下の材料からなる積層シートを用いて包装容器を作製した。
基材2Aとしては、坪量が80g/m2、厚みが139μmの紙基材を用いた。そして、バリア層2Bとしては実施例1と同様のフィルムを用いた。そして、シーラント層2Cとしては、厚さが30μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)を用いた。そして、底折込み深さの寸法23hは実施例1と同様の寸法とした。
この実施例8の包装容器も、食品を収容した状態で立てたときに安定して自立した。
【0044】
(実施例9)
実施例9では、積層シート2として以下の材料からなる積層シートを用いて包装容器を作製した。
基材2Aとしては、実施例8との同様の紙基材を用いた。そして、バリア層2Bとしては実施例1と同様のフィルムを用いた。そして、シーラント層2Cとしては、厚さが40μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)を用いた。そして、底折込み深さの寸法23hは実施例1と同様の寸法とした。
この実施例9の包装容器も、食品を収容した状態で立てたときに安定して自立した。
【0045】
(実施例10)
実施例10では、積層シート2として以下の材料からなる積層シートを用いて包装容器を作製した。
基材2Aとしては、実施例8と同様の紙基材を用いた。そして、バリア層2Bとしては実施例1と同様のフィルムを用いた。そして、シーラント層2Cとしては、厚さが50μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)を用いた。そして、底折込み深さの寸法23hは実施例1と同様の寸法とした。
この実施例10の包装容器も、食品を収容した状態で立てたときに安定して自立した。
【0046】
(実施例11)
実施例11では、積層シート2として以下の材料からなる積層シートを用いて包装容器を作製した。
基材2Aとしては、実施例8と同様の紙基材を用いた。そして、バリア層2Bとしては実施例1と同様のフィルムを用いた。そして、シーラント層2Cとしては、厚さが60μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)を用いた。そして、底折込み深さの寸法23hを実施例1と同様の寸法とした。
この実施例11の包装容器も、食品を収容した状態で立てたときに安定して自立した。
【0047】
(比較例1)
比較例1では、積層シートとして以下の材料からなる積層シートを用いて包装容器を作製した。
基材2Aとしては、密度が1.35g/cm3(坪量に換算すると20g/m2)、厚みが15μmのプラスチックフィルム基材を用いた。そして、バリア層2Bとしては実施例1と同様のフィルムを用いた。そして、シーラント層2Cとしては、厚さが70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)を用いた。そして、底折込み深さの寸法を実施例1と同様の寸法とした。
【0048】
(評価)
<テーバーこわさ>
実施例1~11及び比較例1において、JIS-P8125:2000に準拠したテーバーこわさ試験機法によって積層シート2のテーバーこわさ(剛度)を測定した。そして、剛度が0.95mN・mよりも小さければ製袋機での折込みが可能と判断して評価を「◎」とし、剛度が0.95mN・m以上1.01mN・m以下であっても製袋機での折込みが可能と判断して評価を「○」とした。なお、実施例1の測定値は0.27、実施例2の測定値は0.34、実施例3の測定値は0.44、実施例4の測定値は0.63、実施例5の測定値は0.66、実施例6の測定値は0.84、実施例7の測定値は1.01、実施例8~11の測定値は何れも1.01mN・m以下、比較例1では、あまりにも腰が弱過ぎて(剛度が低過ぎて)測定不能であった。この評価結果を表1に示す。
【0049】
<シール強度>
実施例1~11及び比較例1において、JIS-Z0238:1998に準拠したヒートシール軟包装袋及び半剛性容器の試験方法によって包装容器の横シール部(側面シール部24及び底面シール部25)でのシール強度を測定した。そして、シール強度が40N/15mm以上であれば合格と判断して評価を「◎」とし、シール強度が23[N/15mm]よりも大きく、40[N/15mm]未満でも合格と判断して評価を「○」とした。この評価結果を表1に示す。なお、食品衛生法ではレトルト後(加熱処理後)でのシール強度が23[N/15mm]超と規定されている。ここで、実施例1の測定値は61.1、実施例2の測定値は54.2、実施例3の測定値は49.5、実施例4の測定値は47.1、実施例5の測定値は48.8、実施例6の測定値は45.7、実施例7の測定値は25.8、実施例8の測定値は30.1、実施例9の測定値は25.4、実施例10,11及び比較例1の測定値は何れも23[N/15mm]超であった。
【0050】
<輸送落下試験>
実施例1~11及び比較例1において、JIS-Z0200:2013の包装貨物に準拠した輸送落下試験(衝撃試験のうち自由落下試験)により、包装容器の落下試験を36袋分実施し、漏れ個数が0であれば評価を「◎」とし、漏れ個数が1~7であれば評価を「○」とした。試験は60cmの高さから落下させて行った。
この評価結果を表1に示す。ここで、実施例1~7の漏れ個数は4個以下、実施例8の漏れ個数は7個、実施例9の漏れ個数は6個、実施例10の漏れ個数は5個、実施例11の漏れ個数は4個、比較例1の漏れ個数は7個以下であった。
【0051】
【0052】
表1から分かるように、実施例1~11の何れにおいても、積層シート2の剛度が1.01[mN・m]以下であることが確認できた。これにより、実施例1~11では、製袋機による積層シート2の折込みが可能となるので、安定して自立する包装容器1を提供することができることも確認できた。
また、シール強度や輸送落下試験の評価結果を考慮すると、基材2Aとして坪量が60~140g/m2、厚みが120~220μmの紙基材と、バリア層2Bと、シーラント層2Cとして厚みが70μm以上のCPPフィルムとをこの順で積層した積層シート2を用いることが好ましいことも確認できた。
なお、上記の実施例と別に、底折込み深さ寸法23hを包装容器1の高さ寸法1hの15%~25%とした包装容器1についても自立性を有することを確認した。
【0053】
(実施例2-1A,実施例2-1B)
実施例2-1A及び実施例2-1Bでは、実施例2の包装容器の底面シール部25に、その下端から5mm(12.5%)の位置に抜き部27を設けた。底面シール部25のX方向の高さ
(実施例2-2A,実施例2-2B)
実施例2-2A及び実施例2-2Bでは、実施例2の包装容器の底面シール部25に、その下端から20mm(50%)の位置に抜き部27を設けた。
(実施例2-3A,実施例2-3B)
実施例2-3A及び実施例2-3Bでは、実施例2の包装容器の底面シール部25に抜き部27を設けていない。
【0054】
(抜き部の位置と破袋試験)
実施例2-1A~2-3Bにおいて、水を300ml入れてシールした包装容器1を5個、水を200ml入れてシールした包装容器1を5個作成した。水を300ml入れた包装容器1を高さ50cmから、水を200ml入れた包装容器1を高さ100cmから、1個の包装容器1につき10回ずつ上記の高さから落下させて、交点部(底面シール部25と補強シール部25a,25bとが交わる部分)、補強シール部25a,25b及び底面部23での破袋状態を評価した。表2ではそれぞれ、交点、Vシール、底と記載した。実施例2-1A,2-2A,2-3Aはレトルト前であり、実施例2-1B,2-2B,2-3Bはレトルト後である。この評価結果を表2に示す。表2には、5個のうち破袋した個数を示した。
【0055】
【0056】
表2から分かるように、実施例2-1A~2-3Bでは、全てが十分な破袋強度を満足することが確認できた。
ここで、日本の食品衛生法では、50cmの高さから2回落袋し、破袋がなきことと規定しており、実施例2-1A~2-3Bは、全てが食品衛生法の規格を満足した(表には記載せず)。この評価方法は、食品衛生法による規定よりも厳しい評価基準である。
しかしながら、抜き部のない実施例2-3A,Bは破袋の数が多く、破袋に対する強度向上の点から、抜き部のある包装容器がより好ましいと考えられる。
【0057】
また、実施例2-1A~2-3Bにより、抜き部27を底面シール部25の下端25cから上方に2~12mmの位置に設けることが好ましいことも確認できた。この抜き部27の2~12mmの位置は、底折込み深さの寸法23h、すなわち底面シール部25のX方向の長さの5~30%に相当する。なお、表2の抜き部位置は、底折込み深さの寸法23hが40mmの場合であり、抜き部位置の5mmは底折込み深さの寸法23hの12.5%に相当する。また、抜き部位置の20mmは底折込み深さの寸法23hの50%に相当する。
【0058】
(実施例2-4)
実施例2-4では、実施例2の包装容器の側面シール部24と底面シール部25との境界部分に、側面シール部24及び底面シール部25のシール幅に対して90%の幅のポイントシール部26を側面シール部24及び底面シール部25に亘って設けた。
(実施例2-5)
実施例2-5では、実施例2の包装容器の側面シール部24と底面シール部25との境界部分に、側面シール部24及び底面シール部25のシール幅に対して60%の幅のポイントシール部26を側面シール部24及び底面シール部25に亘って設けた。
(実施例2-6)
実施例2-6では、実施例2の包装容器の側面シール部24と底面シール部25との境界部分に、側面シール部24及び底面シール部25のシール幅に対して40%の幅のポイントシール部26を側面シール部24及び底面シール部25に亘って設けた。
【0059】
(ポイントシール部の幅と輸送落下試験)
実施例2-4~2-6において、先に述べた実施例1-11及び比較例1と同様に、JIS-Z0200:2013の包装貨物に準拠した輸送落下試験(衝撃試験のうち自由落下試験)により、200mlの水を入れた包装容器の落下試験を42袋分実施し、250mlの水を入れた包装容器の落下試験を36袋分実施し、300mlの水を入れた包装容器を30袋分実施し、漏れた個数を評価した。試験は60cmの高さから落下させて行った。この評価結果を表3に示す。
【0060】
【0061】
表3から分かるように、実施例2-5において水が200mlの場合と水が250mlの場合では液漏れしないことが確認できた。これにより、ポイントシール部26のシール幅は、底面シール部25及び側面シール部24のシール幅に対して、良化する中心値が60%前後であって、良化傾向にある範囲が40~90%であることが分かった。
以上のことから、この実施形態によれば、安定して自立し、かつ信頼性の高い包装容器1を提供することができる。
【0062】
(実施形態2)
本発明の実施形態2に係る包装容器1Aは、上述した実施形態1の包装容器1とほぼ同様の構成になっており、以下の構成が異なっている。
すなちわ、
図9に示すように、実施形態2の包装容器1Aは、正面部21及び裏面部22の各々の密閉シール部28に切り抜き領域31Aを備えている。この切り抜き抜き領域31は、例えばミシン目線で周囲を囲まれており、収容部30に食品を入れて密閉シール部28をシールした後、密閉シール部28から容易に切り抜くことができるようになっている。この実施形態2において、切り抜き領域31Aは、
図10に示すように、切り抜いた後の切り抜き孔32Aを例えば取っ手として使用できるように、幅方向(Y方向)の長さが高さ方向(X方向)の長さよりも長い長尺状になっている。
【0063】
このように、密閉シール部28に長尺状の切り抜き領域31Aを設けておくことにより、切り抜き領域31Aを切り抜いた後の切り抜き孔32Aを取っ手として使用することができると共に、この切り抜き孔32Aを取っ手として持つことにより、電子レンジなどで加熱された加熱状態の包装容器1Aを容易に搬送することができる。
また、切り抜き領域31Aの形状を工夫することにより、密閉シール部28から切り抜いた後の切り抜き領域31Aをスプーンなどの道具として使用することも可能であるため、密閉シール部28を有効に利用することができる。
なお、密閉シール部28に切り抜き領域31Aを設ける場合は、上述した実施形態1の密閉シール部28よりもX方向の幅を広くしてシール強度を高めることが好ましい。
【0064】
(実施形態3)
本発明の実施形態3に係る包装容器1Bは、切り抜き領域の形成箇所を変えたものである。すなわち、
図11に示すように、実施形態3の包装容器1Bは、幅方向(Y方向)において互いに反対側に位置する2つの側面シール部24の各々に切り抜き領域31Bを備えている。この実施形態3においても、切り抜き抜き領域31Bは、例えばミシン目線で周囲を囲まれており、収容部30に食品を入れて密閉シール部28をシールした後、側面シール部24から容易に切り抜くことができるようになっている。また、切り抜き領域31Bは、
図12に示すように、切り抜いた後の切り抜き孔32Bが例えば取っ手として使用できるように、幅方向(Y方向)の長さが高さ方向(X方向)の長さよりも長い長尺状になっている。
【0065】
このように、2つの側面シール部24の各々に長尺状の切り抜き領域31Bを設けておくことにより、切り抜き領域31Bを切り抜いた後の切り抜き孔32Bを取っ手として使用することができると共に、この切り抜き孔32Bを取っ手として使用することにより、電子レンジなどで加熱された加熱状態の包装容器1Bを容易に搬送することができる。
また、切り抜き領域31Bの形状を工夫することにより、密閉シール部28から切り抜いた後の切り抜き領域31Bをスプーンなどの道具として使用することも可能であるため、側面シール部24を有効利用することができる。
【0066】
なお、側面シール部24に切り抜き領域31Bを設ける場合は、上述した実施形態1及び2よりもY方向の幅を広くしてシール強度を高めることが好ましい。
また、この実施形態3では、2つの側面シール部24の各々に切欠き領域31Bを設けた場合について説明したが、2つの側面シール部24の何れか一方に切り抜き領域31Bを備えるようにしてもよい。
なお、上述の実施形態では、レディーミールの包装容器1,1A,1Bについて説明した。しかしながら、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、飲料、食料その他の包装容器に適用することができる。
【0067】
以上、本発明を上記実施形態及び実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
1…包装容器
2…積層シート
2A…基材
2B…バリア層
2C…シーラント層
21…正面部
22…裏面部
23…底面部
23a…第1部分
23b…第2部分
24…側面シール部
25…底面シール部
26…ポイントシール部
27…抜き部
28…密閉シール部
29…切欠き部
30…収容部
31A,31B…切り抜き領域
32A,32B…切り抜き孔