(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138816
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】空調用薄型レジスタ
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20230922BHJP
F24F 13/15 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B60H1/34 611Z
B60H1/34 611B
F24F13/15 B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131015
(22)【出願日】2023-08-10
(62)【分割の表示】P 2019075433の分割
【原出願日】2019-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】高谷 久士
(72)【発明者】
【氏名】丸田 康博
(72)【発明者】
【氏名】柴田 実
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 弘
(72)【発明者】
【氏名】安積 彰
(57)【要約】
【課題】吹出口から吹き出された空調用空気の温度が周囲の空気の温度に近づくのを抑制する。
【解決手段】空調用空気A1の通風路13を有するリテーナ11における吹出口18は、相対向する一対の短辺部21と、両短辺部21に対し交差した状態で相対向する一対の長辺部とからなる。リテーナ11内には、複数のフィン本体34が互いに長辺部に沿う方向に離間した状態で配置される。リテーナ11は、一対の短辺部21に対して流れ方向の上流側に隣り合う一対の第1対向壁部15を備えている。リテーナ11の内部には、一対の下流フィンが、リテーナ11に対し傾動可能に支持されている。一対の下流フィンは、下流端部の双方が、流れ方向において一対の長辺部と隣り合う位置を取りうるものである。上流フィン群よりも下流側において、一方の第1対向壁部15は、他方の第1対向壁部15に対し、流れ方向における下流側ほど近づくように傾斜している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調用空気の通風路が形成され、かつ同空調用空気の流れ方向における下流端に吹出口を有するリテーナを備え、
前記吹出口は、相対向する一対の短辺部と、両短辺部に対し交差した状態で相対向し、かつそれぞれ各短辺部よりも長い一対の長辺部とからなり、
前記リテーナ内には、前記短辺部及び前記流れ方向に沿って延びる複数のフィンが互いに前記長辺部に沿う方向に離間した状態で配置された空調用薄型レジスタであって、
前記リテーナは、一対の前記短辺部に対して前記流れ方向の上流側に隣り合う一対の対向壁部を備えており、
複数の前記フィンを上流フィン群とするとき、
前記リテーナの内部には、前記上流フィン群よりも前記流れ方向の下流側に位置するとともに一対の前記長辺部よりも前記流れ方向の上流側に位置する一対の下流フィンが、前記リテーナに対し傾動可能に支持されており、
一対の前記下流フィンは、前記流れ方向における下流端部の双方が、前記流れ方向において一対の前記長辺部と隣り合う位置を取りうるものであり、
前記上流フィン群よりも前記流れ方向の下流側において、一方の前記対向壁部は、他方の前記対向壁部に対し、前記流れ方向における下流側ほど近づくように傾斜している、
空調用薄型レジスタ。
【請求項2】
前記上流フィン群の各フィンは、前記短辺部に沿う方向へ延びるフィン軸により前記リテーナに対し傾動可能に支持されており、
複数の前記フィンのうち、前記長辺部に沿う方向の両端のフィンをそれぞれ端フィンとし、各端フィンの隣のフィンを準端フィンとし、両準端フィン間のフィンを中間フィンとし、前記中間フィンが前記通風路の中心軸線に対し平行になる状態を、前記上流フィン群の中立状態とした場合において、
前記中立状態では、一方の前記端フィンが、他方の前記端フィンに対し、前記流れ方向における下流側ほど近づくように傾斜している、
請求項1に記載の空調用薄型レジスタ。
【請求項3】
前記中立状態では、一方の前記準端フィンが、他方の前記準端フィンに対し、前記流れ方向における下流側ほど近づくように傾斜している、
請求項2に記載の空調用薄型レジスタ。
【請求項4】
前記上流フィン群の各フィンは、前記短辺部に沿う方向へ延びるフィン軸により前記リテーナに対し傾動可能に支持されており、
複数の前記フィンのうち、前記長辺部に沿う方向の両端のフィンをそれぞれ端フィンとし、各端フィンの隣のフィンを準端フィンとし、両準端フィン間のフィンを中間フィンとし、前記中間フィンが前記通風路の中心軸線に対し平行になる状態を、前記上流フィン群の中立状態とした場合において、
前記中立状態では、一方の前記端フィンが、他方の前記端フィンに対し、前記流れ方向における下流側ほど遠ざかるように傾斜している、
請求項1に記載の空調用薄型レジスタ。
【請求項5】
前記中立状態では、一方の前記準端フィンが、他方の前記準端フィンに対し、前記流れ方向における下流側ほど遠ざかるように傾斜している、
請求項4に記載の空調用薄型レジスタ。
【請求項6】
前記リテーナは、前記流れ方向における一部に、前記通風路の流路面積が下流側ほど小さくなる縮流部を有しており、
前記流れ方向における前記縮流部の下流端は、同方向における前記上流フィン群の各フィンの下流端と同じ、又は同下流端よりも上流に位置し、
前記流れ方向における前記縮流部の上流端は、同方向における前記上流フィン群の各フィンの上流端よりも上流に位置している、
請求項1~5のいずれか1項に記載の空調用薄型レジスタ。
【請求項7】
前記対向壁部を第1対向壁部とするとき、
前記リテーナは、前記短辺部に沿う方向に相対向する一対の第2対向壁部を備えており、
前記縮流部では、一方の前記第2対向壁部が、他方の前記第2対向壁部に対し、前記流れ方向における下流側ほど近づくように傾斜している、
請求項6に記載の空調用薄型レジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置から送られてくる空調用空気を、長方形状の吹出口から室内に吹き出す空調用薄型レジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のインストルメントパネルには、空調装置から送られてきて吹出口から車室内に吹き出される空調用空気の向きを変更等するための空調用レジスタが組込まれている(例えば、特許文献1参照)。この空調用レジスタの一形態として、意匠性向上等のために、縦方向と横方向とで吹出口の寸法が大きく異なるタイプ(以下「空調用薄型レジスタ」という)が従来から種々考えられている。
【0003】
この空調用薄型レジスタは、一般的な空調用レジスタと同様に、空調用空気の通風路が形成されたリテーナと、複数のフィンとを備える。リテーナは、空調用空気の流れ方向における下流端に吹出口を有する。空調用薄型レジスタにおいては、吹出口は、相対向する一対の短辺部と、両短辺部に対し交差した状態で相対向し、かつそれぞれ各短辺部よりも長い一対の長辺部とからなり、長方形状をなす。リテーナは、長辺部に沿う方向に相対向する一対の第1対向壁部と、短辺部に沿う方向に相対向する一対の第2対向壁部とを備える。複数のフィンは、互いに長辺部に沿う方向に離間した状態でリテーナ内に配置される。各フィンは、短辺部に沿う方向へ延びるフィン軸により、両第2対向壁部に対し傾動可能に支持される。
【0004】
上記構成を有する空調用薄型レジスタでは、空調装置から送られてきた空調用空気は、リテーナに流入すると、フィンに沿って流れ、吹出口から吹き出される。各フィンが、通風路の中心軸線に対し平行な中立状態にされると、空調用空気が中心軸線に沿って吹出口から真っ直ぐ吹き出される。吹出口から吹き出された空調用空気は、周囲の空気を巻き込み(取り込み)ながら流れて、乗員に吹き付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記従来の空調用薄型レジスタでは、フィンが上記中立状態にされて、吹出口から空調用空気が吹き出されると、周囲の空気の影響を受けて、温度が周囲の温度に近づく。例えば、吹出口から冷えた空調用空気が吹き出された場合には、その空調用空気の温度が上昇する。また、吹出口から温かい空調用空気が吹き出された場合には、その空調用空気の温度が下降する。こうした傾向は、吹出口における短辺部が短くなるほど顕著になる。
【0007】
これは、以下のような理由によるものと考えられる。
吹出口から吹き出された空調用空気の上記流れ方向に直交する面での流速の分布を、空調用空気の流速分布とする。この流速分布では、中心部分に近づくに従い流速が速くなる。また、中心部分に近づくに従い温度が、吹出口から吹き出されたときの温度に近づく。
【0008】
空調用空気が吹出口から中心軸線に対し平行な状態で吹き出された場合の流速分布の形状は、長辺部に沿う方向の寸法よりも短辺部に沿う方向の寸法が小さな扁平な形状となる。こうした形状の流速分布を有する空調用空気では、周囲の空気が、短辺部に沿う方向の外方から中心部分に到達しやすい。この中心部分が周囲の空気の温度の影響を受けて、その温度に近づく側へ温度変化を起こしやすい。その結果、従来の空調用薄型レジスタでは、空調用空気が、吹出口から吹き出されたときよりも周囲の空気の温度に近い温度で乗員に吹き付けられるおそれがある。この場合には、空調による快適性が損なわれてしまう。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、吹出口から吹き出された空調用空気の温度が周囲の空気の温度に近づくのを抑制することのできる空調用薄型レジスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する空調用薄型レジスタは、空調用空気の通風路が形成され、かつ同空調用空気の流れ方向における下流端に吹出口を有するリテーナを備え、前記吹出口は、相対向する一対の短辺部と、両短辺部に対し交差した状態で相対向し、かつそれぞれ各短辺部よりも長い一対の長辺部とからなり、前記リテーナ内には、前記短辺部及び前記流れ方向に沿って延びる複数のフィンが互いに前記長辺部に沿う方向に離間した状態で配置されている。前記リテーナは、一対の前記短辺部に対して前記流れ方向の上流側に隣り合う一対の対向壁部を備えており、複数の前記フィンを上流フィン群とするとき、前記リテーナの内部には、前記上流フィン群よりも前記流れ方向の下流側に位置するとともに一対の前記長辺部よりも前記流れ方向の上流側に位置する一対の下流フィンが、前記リテーナに対し傾動可能に支持されており、一対の前記下流フィンは、前記流れ方向における下流端部の双方が、前記流れ方向において一対の前記長辺部と隣り合う位置を取りうるものであり、前記上流フィン群よりも前記流れ方向の下流側において、一方の前記対向壁部は、他方の前記対向壁部に対し、前記流れ方向における下流側ほど近づくように傾斜している。
【0011】
同構成によれば、空調用空気の一部は、一対の対向壁部及び一対の下流フィンに沿って流れた後、吹出口から吹き出される。一対の下流フィンの上記流れ方向における下流端部の双方が、上記流れ方向において一対の長辺部と隣り合う位置にあるとき、仮に、一対の対向壁部が上記流れ方向において平行であると、吹出口から吹き出された空調用空気の流速分布の形状は、吹出口の形状に対応した形状になる。すなわち、流速分布の形状は、長辺部に沿う方向の寸法が短辺部に沿う方向の寸法よりも長い扁平な形状となる。この点、上記構成によれば、上流フィン群よりも上記流れ方向の下流側において、一方の対向壁部が、他方の対向壁部に対し、上記流れ方向における下流側ほど近づくように、すなわち、両対向壁部の間隔が下流側ほど狭まるように、傾斜している。そのため、一対の下流フィンの上記流れ方向における下流端部の双方が、上記流れ方向において一対の長辺部と隣り合う位置にあるとき、各対向壁部に沿って流れて吹出口から吹き出された空調用空気は、同吹出口から下流側に遠ざかるに従い、長辺部に沿う方向に互いに接近する。したがって、上記流速分布の形状は、上記流れ方向における下流側ほど、長辺部に沿う方向の寸法と、短辺部に沿う方向の寸法との差が小さな形状に変化して、円形に近づいていく。こうした形状の流速分布を有する空調用空気では、上記扁平な形状の流速分布を有する空調用空気に比べ、周囲の空気が中心部分に到達しにくい。この中心部分は、周囲の空気の温度の影響を受けにくく温度変化を起こしにくい。このようにして、吹出口から吹き出された空調用空気の温度が周囲の空気の温度に近づくことが抑制される。吹出口から吹き出されたときの温度に近い温度の空調用空気が乗員に吹き付けられ、空調による快適性が向上する。
【0012】
上記空調用薄型レジスタにおいて、前記上流フィン群の各フィンは、前記短辺部に沿う方向へ延びるフィン軸により前記リテーナに対し傾動可能に支持されており、複数の前記フィンのうち、前記長辺部に沿う方向の両端のフィンをそれぞれ端フィンとし、各端フィンの隣のフィンを準端フィンとし、両準端フィン間のフィンを中間フィンとし、前記中間フィンが前記通風路の中心軸線に対し平行になる状態を、前記上流フィン群の中立状態とした場合において、前記中立状態では、一方の前記端フィンが、他方の前記端フィンに対し、前記流れ方向における下流側ほど近づくように傾斜していることが好ましい。
【0013】
同構成によれば、上記中立状態では、一方の端フィンは、他方の端フィンに対し、上記流れ方向における下流側ほど近づくように、すなわち、両端フィンの間隔が下流側ほど狭まるように、傾斜する。通風路において長辺部に沿う方向の両側部分を流れる空調用空気の一部は、上記のように傾斜した両端フィンに沿って流れた後に、吹出口から吹き出される。これらの空調用空気は、吹出口から下流側に遠ざかるに従い、長辺部に沿う方向に互いに接近する。これらの空調用空気の分、吹出口から下流側に遠ざかるに従い互いに接近する空調用空気の量が多くなる。
【0014】
したがって、上記中立状態で、上記のように、一方の端フィンが他方の端フィンに対し傾斜しない場合に比べ、空調用空気の上記流速分布の形状が、より円形に近づく。
上記空調用薄型レジスタにおいて、前記中立状態では、一方の前記準端フィンが、他方の前記準端フィンに対し、前記流れ方向における下流側ほど近づくように傾斜していることが好ましい。
【0015】
同構成によれば、上記中立状態では、一方の準端フィンは、他方の準端フィンに対し、上記流れ方向における下流側ほど近づくように、すなわち、両準端フィンの間隔が下流側ほど狭まるように、傾斜する。通風路において長辺部に沿う方向の両側部分を流れる空調用空気の一部は、上記のように傾斜した両準端フィンに沿って流れた後に、吹出口から吹き出される。これらの空調用空気は、吹出口から下流側に遠ざかるに従い、長辺部に沿う方向に互いに接近する。これらの空調用空気の分、吹出口から下流側に遠ざかるに従い、長辺部に沿う方向に互いに接近する空調用空気の量がさらに多くなる。
【0016】
したがって、上記中立状態で、上記のように、一方の準端フィンが他方の準端フィンに対し傾斜せず、端フィンのみが傾斜する場合に比べ、空調用空気の上記流速分布の形状が、さらに円形に近づく。
【0017】
上記空調用薄型レジスタにおいて、前記上流フィン群の各フィンは、前記短辺部に沿う方向へ延びるフィン軸により前記リテーナに対し傾動可能に支持されており、複数の前記フィンのうち、前記長辺部に沿う方向の両端のフィンをそれぞれ端フィンとし、各端フィンの隣のフィンを準端フィンとし、両準端フィン間のフィンを中間フィンとし、前記中間フィンが前記通風路の中心軸線に対し平行になる状態を、前記上流フィン群の中立状態とした場合において、前記中立状態では、一方の前記端フィンが、他方の前記端フィンに対し、前記流れ方向における下流側ほど遠ざかるように傾斜していることが好ましい。
【0018】
同構成によれば、上記中立状態では、一方の端フィンが、他方の端フィンに対し、上記流れ方向における下流側ほど遠ざかるように、すなわち、両端フィンの間隔が下流側ほど広がるように、傾斜する。通風路において長辺部に沿う方向の両側部分を流れる空調用空気の一部は、上記のように傾斜した両端フィンに沿って流れた後に、両対向壁部に当たって流れ方向を、同対向壁部に沿う方向に変えられる。上記のように流れ方向を変えられた空調用空気の分、各対向壁部に沿って流れて吹出口から吹き出される空調用空気の量が多くなる。これに伴い、吹出口から下流側に遠ざかるに従い、長辺部に沿う方向に互いに接近する空調用空気の量が多くなる。
【0019】
したがって、上記中立状態で、上記のように、一方の端フィンが他方の端フィンに対し傾斜しない場合に比べ、空調用空気の上記流速分布の形状が、円形に近づく。
上記空調用薄型レジスタにおいて、前記中立状態では、一方の前記準端フィンが、他方の前記準端フィンに対し、前記流れ方向における下流側ほど遠ざかるように傾斜していることが好ましい。
【0020】
同構成によれば、上記中立状態では、一方の準端フィンが、他方の準端フィンに対し、上記流れ方向における下流側ほど遠ざかるように、すなわち、両準端フィンの間隔が下流側ほど広がるように、傾斜する。通風路において長辺部に沿う方向の両側部分を流れる空調用空気の一部は、上記のように傾斜した両準端フィンに沿って流れた後に、両対向壁部に当たって流れ方向を、同対向壁部に沿う方向に変えられる。上記のように流れ方向を変えられた空調用空気の分、各対向壁部に沿って流れて吹出口から吹き出される空調用空気の量がさらに多くなる。これに伴い、吹出口から下流側に遠ざかるに従い、長辺部に沿う方向に互いに接近する空調用空気の量がさらに多くなる。
【0021】
したがって、上記中立状態で、上記のように、一方の準端フィンが他方の準端フィンに対し傾斜せず、端フィンのみが傾斜する場合に比べ、空調用空気の上記流速分布の形状が、さらに円形に近づく。
【0022】
上記空調用薄型レジスタにおいて、前記リテーナは、前記流れ方向における一部に、前記通風路の流路面積が下流側ほど小さくなる縮流部を有しており、前記流れ方向における前記縮流部の下流端は、同方向における前記上流フィン群の各フィンの下流端と同じ、又は同下流端よりも上流に位置し、前記流れ方向における前記縮流部の上流端は、同方向における前記上流フィン群の各フィンの上流端よりも上流に位置していることが好ましい。
【0023】
同構成によれば、リテーナ内に流入した空調用空気は、上記のように、通風路の流路面積が下流側ほど小さくなる縮流部を流れることで、流速を速められる。これに伴い、両対向壁部に沿って流れて吹出口から吹き出された空調用空気が、同吹出口から下流側に遠ざかるに従い、長辺部に沿う方向に互いに接近しようとする力が強められる。そのため、空調用空気の上記流速分布の形状は、より円形に近い形状になる。
【0024】
上記空調用薄型レジスタにおいて、前記対向壁部を第1対向壁部とするとき、前記リテーナは、前記短辺部に沿う方向に相対向する一対の第2対向壁部を備えており、前記縮流部では、一方の前記第2対向壁部が、他方の前記第2対向壁部に対し、前記流れ方向における下流側ほど近づくように傾斜していることが好ましい。
【0025】
同構成によれば、一方の第2対向壁部が、上記の条件を満たすように、他方の第2対向壁部に対し傾斜することで、上記流れ方向における下流側ほど通風路の流路面積が小さくなる縮流部がリテーナに形成される。
【発明の効果】
【0026】
上記空調用薄型レジスタによれば、吹出口から吹き出された空調用空気の温度が周囲の空気の温度に近づくのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1実施形態における空調用薄型レジスタの正面図。
【
図2】
図1の2-2線に沿った空調用薄型レジスタの断面図。
【
図3】
図1の3-3線に沿った空調用薄型レジスタの断面図。
【
図4】
図1の4-4線に沿った空調用薄型レジスタの断面図。
【
図5】(a)は、第1実施形態において、吹出口から吹き出された空調用空気の流速分布を示す説明図、(b)は比較例における流速分布を示す説明図。
【
図6】第1実施形態における空調用薄型レジスタの変形例を示す図であり、上記
図2に対応する断面図。
【
図7】第2実施形態の空調用薄型レジスタを示す図であり、上記
図3に対応する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
以下、車両用の空調用薄型レジスタに具体化した第1実施形態について、
図1~
図5を参照して説明する。
【0029】
なお、以下の記載においては、車両の進行方向(前進方向)を前方とし、後進方向を後方とし、高さ方向を上下方向として説明する。また、車幅方向(左右方向)については、車両を後方から見た場合を基準として方向を規定する。
【0030】
車室内において、車両の前席(運転席及び助手席)の前方にはインストルメントパネルが設けられ、その左右方向における中央部、側部等には空調用薄型レジスタが組み込まれている。この空調用薄型レジスタの主な機能は、空調装置から送られてきて、車室内に吹き出される空調用空気の向きを変更すること、同空調用空気の吹出し量を調整すること等である。
【0031】
図1~
図4に示すように、空調用薄型レジスタ10の外殻部分は、リテーナ11によって構成されている。リテーナ11は、空調装置の送風ダクト(図示略)に接続されるものであり、リテーナ本体12及びベゼル17を備えている。
【0032】
リテーナ本体12は、両端が開放された筒状をなしている。リテーナ本体12の内部空間は、空調用空気A1の流路である通風路13を構成している。ここで、空調用空気A1の流れ方向に関し、空調装置に近い側を「上流」、「上流側」等といい、同空調装置から遠い側を「下流」、「下流側」等というものとする。
【0033】
リテーナ本体12の上流側の開放端は、空調装置から送風ダクトを介して送られてきた空調用空気A1の流入口14を構成している。
ベゼル17は、リテーナ11の下流端部を構成する部材である。ベゼル17は、空調用空気A1の吹出口18を有している。ベゼル17の下流側の面であって、吹出口18の周りの部分は、空調用薄型レジスタ10の意匠面を構成している。
【0034】
吹出口18は、相対向する一対の短辺部21と、両短辺部21に対し交差した状態で相対向し、かつそれぞれ各短辺部21よりも長い一対の長辺部22とからなる。第1実施形態では、両短辺部21は、互いに平行に離間した状態で略上下方向へ延びている。両長辺部22は、互いに平行に離間した状態で、両短辺部21に対し直交する方向である左右方向へ延びている。こうした構成の吹出口18は、上下方向よりも左右方向に細長い横長の長方形状をなしている。
【0035】
リテーナ本体12は、長辺部22に沿う方向である左右方向に相対向する一対の第1対向壁部15と、短辺部21に沿う方向である上下方向に相対向する一対の第2対向壁部16とを備えている。
【0036】
リテーナ本体12内には、吹出口18から上流側へ向けて順に、下流フィン群、上流フィン群及びシャットダンパ41が配置されている。
下流フィン群は、吹出口18から吹き出される空調用空気A1の上下方向の向きを変更するためのものであり、一対の下流フィン23とバレル24とからなる。両下流フィン23のそれぞれの主要部は、左右方向及び上記流れ方向に延びる横長の板状をなしている。両下流フィン23は互いに上下方向に離間している。各下流フィン23は、自身の左右両端部に設けられたフィン軸(図示略)において、両第1対向壁部15に対し傾動可能に支持されている。
【0037】
バレル24は、左右方向に離間した状態で配置された円板状の側板部25(
図3参照)と、同方向へ延びて両側板部25間に架け渡された上下一対の主フィン26と、両主フィン26間で同方向へ延びて両側板部25に架け渡された補助フィン27とからなり、両下流フィン23の上流に配置されている。
【0038】
両主フィン26は、上下方向へ互いに離間している。両主フィン26の下流部26bは、互いに平行に離間している。両主フィン26の上流部26aは、上流ほど互いの間隔が拡大するように、下流部26bに対し傾斜している。補助フィン27は、両下流部26b間の中央部分において、両下流部26bに対し平行な状態で配置されている。
【0039】
バレル24は、側板部25毎に設けられた軸28において、両第1対向壁部15に傾動可能に支持されている。
上流フィン群は、吹出口18から吹き出される空調用空気A1の左右方向の向きを変更するためのものである。上流フィン群は、上記補助フィン27よりも上流において、互いに左右方向に離間した状態で配置された複数のフィンからなる。これらのフィンは、左右方向の両端に配置された一対の端フィン31と、両端フィン31間において同端フィン31の隣に位置する一対の準端フィン32と、両準端フィン32間に配置された複数の中間フィン33とからなる。上記両端フィン31、両準端フィン32及び複数の中間フィン33は、互いに同様の構成を有している。両端フィン31、両準端フィン32及び全ての中間フィン33のそれぞれの主要部は、上下方向及び上記流れ方向に延びる板状のフィン本体34によって構成されている。第1実施形態では、フィン本体34として、上下方向の寸法が、同フィン本体34の上流部において、下流部よりも大きいものが用いられている(
図2参照)。フィン本体34の上記上流部では、上下方向の寸法が上記流れ方向に一定である。また、フィン本体34の上記下流部では、上下方向の寸法が上記流れ方向に一定である。
【0040】
全ての中間フィン33におけるフィン本体34は、左右方向には、略等間隔で互いに略平行に離間した状態で配置されている。
両端フィン31、両準端フィン32及び全ての中間フィン33のそれぞれは、フィン本体34の上端部及び下端部に、上下方向に延びるフィン軸35を備えており、これらのフィン軸35において、両第2対向壁部16に傾動可能に支持されている。
【0041】
各上側のフィン軸35は、上側の第2対向壁部16よりも上方へ突出しており、この突出部分からは、アーム36が上流へ向けて延びている。各アーム36の上流端部からは、連結ピン37が上方へ向けて突出している。両端フィン31、両準端フィン32及び全ての中間フィン33のそれぞれにおける連結ピン37は、左右方向に延びる連結ロッド38によって相互に連結されている。両端フィン31、両準端フィン32及び全ての中間フィン33のそれぞれにおけるフィン軸35、アーム36及び連結ピン37と、連結ロッド38とにより、リンク機構LMが構成されている。
【0042】
シャットダンパ41は、吹出口18からの空調用空気A1の吹出し量を調整するためのものであり、通風路13の上流フィン群よりも上流に配置されている。吹き出し量の調整には、通風路13を閉鎖して吹き出しを遮断することも含まれている。シャットダンパ41の主要部は、左右方向及び上記流れ方向に延びる板状をなしている。シャットダンパ41は、左右両側部にそれぞれダンパ軸42(
図3では右方のダンパ軸42のみ図示)を有しており、両ダンパ軸42において両第1対向壁部15に傾動可能に支持されている。
【0043】
上記のようにして、第1実施形態の空調用薄型レジスタ10の基本構造が構成されている。第1実施形態では、空調用薄型レジスタ10がさらに、次の特徴を有している。
特徴1:
図3に示すように、一方の第1対向壁部15の下流端部15aは、他方の第1対向壁部15の下流端部15aに対し、下流側ほど近づくように傾斜している。第1実施形態では、各下流端部15aは、下流側ほど通風路13の中心軸線CLに近づくように、同中心軸線CLに対し傾斜している。従って、両下流端部15a間の間隔D1は下流側ほど狭まる。
【0044】
特徴2:
図3に示すように、上流フィン群における全ての中間フィン33が上記中心軸線CLに対し平行になる状態を、上流フィン群の「中立状態」というものとする。
上記中立状態では、一方の端フィン31が、他方の端フィン31に対し、下流側ほど近づくように傾斜している。第1実施形態では、いずれの端フィン31についても、下流側ほど上記中心軸線CLに近づくように、同中心軸線CLに対し傾斜している。端フィン31が中心軸線CLに対しなす角度は、両端フィン31間で同一である。
【0045】
特徴3:
図3に示すように、上記中立状態では、一方の準端フィン32が、他方の準端フィン32に対し、下流側ほど近づくように傾斜している。第1実施形態では、いずれの準端フィン32についても、下流側ほど上記中心軸線CLに近づくように、同中心軸線CLに対し傾斜している。準端フィン32が中心軸線CLに対しなす角度は、両準端フィン32間で同一である。
【0046】
特徴4:
図2及び
図4に示すように、リテーナ本体12は、上記流れ方向における一部に、流路面積が下流側ほど小さくなる縮流部19を有している。縮流部19では、一方の第2対向壁部16が、他方の第2対向壁部16に対し、下流側ほど近づくように傾斜している。第1実施形態では、各第2対向壁部16は、下流側ほど上記中心軸線CLに近づくように、同中心軸線CLに対し傾斜している。従って、両第2対向壁部16間の間隔D2が下流側ほど狭まり、縮流部19での通風路13の流路面積が、上流端19aにおいて最大となり、下流側ほど徐々に小さくなり、下流端19bにおいて最小となる。
【0047】
なお、
図2に示すように、縮流部19のうち、フィン本体34において上下方向の寸法の大きな上流部が傾動する領域では、両第2対向壁部16が部分的に中心軸線CLに対し平行に形成されている。
【0048】
上記下流端19bは、上記流れ方向については、フィン本体34の下流端と同じ、又は同下流端よりも上流に位置している。また、上記上流端19aは、上記流れ方向については、フィン本体34の上流端よりも上流に位置している。第1実施形態では、上記下流端19bは、中立状態にされた上流フィン群におけるフィン本体34の上流端と下流端との間に位置している。また、上記上流端19aは、流入口14と、中心軸線CLに対し平行にされたシャットダンパ41の上流端との間に位置している。
【0049】
次に、上記のように構成された第1実施形態の作用について説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
前提として、
図2~
図4に示すように、シャットダンパ41が、上記中心軸線CLに対し、平行な状態、すなわち全開状態にされ、上流フィン群が中立状態にされているものとする。さらに、バレル24における両主フィン26の下流部26bと補助フィン27とが上記中心軸線CLに対し平行にされるとともに、両下流フィン23のそれぞれの主要部が上記中心軸線CLに対し平行にされているものとする。
【0050】
上記の状態では、流入口14からリテーナ11内に流入した空調用空気A1は、最初にシャットダンパ41の上側と下側とに分かれて流れる。シャットダンパ41を通過した空調用空気A1は、上流フィン群において隣り合うフィン本体34間や、端フィン31におけるフィン本体34と、これに隣接する第1対向壁部15との間を流れた後に、バレル24内に流入する。
【0051】
空調用空気A1は、バレル24内では、両主フィン26の傾斜した上流部26aに沿って流れることで、両下流部26b間に集められる。そして、空調用空気A1は、下流部26bと補助フィン27との間、及び両下流フィン23間を順に流れた後に、吹出口18から下流側へ真っ直ぐ吹き出される。吹出口18から吹き出された空調用空気A1は、周囲の空気を巻き込み(取り込み)ながら流れて、乗員に吹き付けられる。
【0052】
ところで、リテーナ11内に流入して、
図3に示すように、通風路13における左右両側部分を流れる空調用空気A1の一部は、両第1対向壁部15に沿って流れる。これらの空調用空気A1は、各下流端部15aに沿って流れた後に、吹出口18の左右両側部分から吹き出される。
【0053】
ここで、
図5(a),(b)に示すように、吹出口18から吹き出された空調用空気A1の上記流れ方向に直交する面での流速の分布を、空調用空気A1の流速分布とする。この流速分布では、中心部分に近づくに従い流速が速くなる。また、中心部分に近づくに従い温度が、吹出口18から吹き出されたときの温度に近づく。流速分布の中心部分は、ポテンシャルコアPCとも呼ばれる。ポテンシャルコアPCは、吹出口18から吹き出されたときの温度を保持しようとする層である。
【0054】
また、両下流端部15aが互いに平行に形成された従来の空調用薄型レジスタを比較例とする。この比較例では、空調用空気A1の流速分布の形状は、吹出口18の形状に対応した形状になる。すなわち、流速分布の形状は、
図5(b)に示すように、左右方向の寸法が上下方向の寸法よりも長い扁平な形状となる。
【0055】
しかし、第1実施形態では、
図3に示すように、両下流端部15aがともに中心軸線CLに対し傾斜することで、一方の下流端部15aが他方の下流端部15aに対し、下流側ほど近づくように、すなわち、両下流端部15a間の間隔D1が下流側ほど狭まるように、傾斜している(特徴1)。そのため、各下流端部15aに沿って流れて、吹出口18の左右両側部分から吹き出された空調用空気A1は、同吹出口18から下流側に遠ざかるに従い、左右方向に互いに接近する。
【0056】
従って、上記流速分布の形状は、吹出口18の近傍では、左右方向の寸法が上下方向の寸法よりも長い扁平な形状となる。しかし、上記形状は、下流側ほど、左右方向の寸法と、上下方向の寸法との差が小さな形状に変化して、
図5(a)に示すような円形に近づいていく。こうした形状の流速分布を有する空調用空気A1では、上記扁平な形状の流速分布を有する空調用空気A1(
図5(b)参照)に比べ、周囲の空気が中心部分(ポテンシャルコアPC)に到達しにくい。この中心部分は、周囲の空気の温度の影響を受けにくく温度変化を起こしにくい。このようにして、吹出口18から吹き出された空調用空気A1の温度が周囲の空気の温度に近づくことが抑制される。
【0057】
吹出口18から吹き出されたときの温度に近い温度の空調用空気A1が乗員に吹き付けられる。例えば、夏期等、気温の高い状況下で、吹出口18から冷えた空調用空気A1が吹き出される場合には、その空調用空気A1よりも温度の高い周囲の空気の影響を受けて、同空調用空気A1の温度が上昇する現象が抑制される。吹出口18から吹き出されたときの温度に近い冷えた空調用空気A1が乗員に吹き付けられる。
【0058】
また、冬期等、気温の低い状況下で、吹出口18から温かい空調用空気A1が吹き出される場合には、その空調用空気A1よりも温度の低い周囲の空気の影響を受けて、同空調用空気A1の温度が低くなる現象が抑制される。吹出口18から吹き出されたときの温度に近い温かい空調用空気A1が乗員に吹き付けられる。
【0059】
従って、空調により乗員に快適と感じさせる温度の空調用空気A1をその乗員に吹き付けることができ、空調による快適性の向上を図ることができる。
なお、図示しない操作ノブ等の操作を通じて、上流フィン群におけるいずれかのフィン本体34に対し、左方又は右方へ向かう力が加えられると、そのフィン本体34がフィン軸35を支点として、左右方向のうち、力の加えられた方向へ傾動させられる。この傾動はリンク機構LMを介して、上流フィン群における他のフィン本体34に伝達される。この伝達により、上記他のフィン本体34が、上記力の加えられたフィン本体34に同期して同フィン本体34と同方向へ傾動させられる。上流フィン群における全てのフィン本体34が中心軸線CLに対し傾斜した状態となる。空調用空気A1は、上記のように傾斜したフィン本体34に沿って流れることで、向きを変えられて吹出口18から斜め左方又は斜め右方へ向けて吹き出される。
【0060】
第1実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・
図3に示すように、上記中立状態では、一方の端フィン31は、他方の端フィン31に対し、下流側ほど近づくように、すなわち、両端フィン31の間隔が下流側ほど狭まるように、傾斜する(特徴2)。通風路13における左右両側部分を流れる空調用空気A1の一部は、上記のように傾斜した両端フィン31に沿って流れた後に、吹出口18の左右両側部分から吹き出される。これらの空調用空気A1は、吹出口18から下流側に遠ざかるに従い、左右方向に互いに接近する。これらの空調用空気A1の分、吹出口18から下流側に遠ざかるに従い互いに接近する空調用空気A1の量が多くなる。
【0061】
従って、上記中立状態で、上記のように、一方の端フィン31が他方の端フィン31に対し傾斜しない場合に比べ、空調用空気A1の上記流速分布の形状が、円形に近づく。そのため、この点においても、周囲の空気が流速分布における中心部分に到達するのを抑制し、同中心部分の温度が、周囲の空気の温度の影響を受けるのをより抑制することができる。吹出口18から吹き出されたときの温度により近い温度の空調用空気A1を乗員に吹き付けて、空調による快適性を向上させる効果を高めることができる。
【0062】
・
図3に示すように、上記中立状態では、一方の準端フィン32は、他方の準端フィン32に対し、下流側ほど近づくように、すなわち、両準端フィン32の間隔が下流側ほど狭まるように、傾斜する(特徴3)。通風路13における左右両側部分を流れる空調用空気A1の一部は、上記のように傾斜した両準端フィン32に沿って流れた後に、吹出口18の左右両側部分から吹き出される。これらの空調用空気A1は、吹出口18から下流側に遠ざかるに従い、左右方向に互いに接近する。これらの空調用空気A1が加わることで、吹出口18から下流側に遠ざかるに従い、左右方向に互いに接近する空調用空気A1の量がさらに多くなる。
【0063】
従って、上記中立状態で、上記のように、一方の準端フィン32が他方の準端フィン32に対し傾斜せず、端フィン31のみが傾斜する場合に比べ、空調用空気A1の上記流速分布の形状が、さらに円形に近づく。そのため、この点においても、吹出口18から吹き出されたときの温度により近い温度の空調用空気A1を乗員に吹き付けて、空調による快適性を向上させる効果をさらに高めることができる。
【0064】
・第1実施形態の縮流部19では、
図2及び
図4に示すように、両第2対向壁部16間の間隔D2が下流側ほど狭まるように、両第2対向壁部16が中心軸線CLに対し傾斜している。一方の第2対向壁部16が、他方の第2対向壁部16に対し、下流側ほど近づくように傾斜している(特徴4)。縮流部19での通風路13の流路面積が、上流端19aにおいて最大となり、下流側ほど徐々に小さくなり、下流端19bにおいて最小となっている。
【0065】
そのため、リテーナ11内に流入した空調用空気A1は、上記のように流路面積が下流側ほど小さくなる縮流部19を流れることで、流速を速められる。そして、このように流速の速くなった空調用空気A1のうち、通風路13における左右両側部分を流れるものが、端フィン31及び準端フィン32のそれぞれにおけるフィン本体34に沿って流れ、あるいは、第1対向壁部15の下流端部15aに沿って流れる。上記のように流速の速い空調用空気A1が流れることで、吹出口18の左右両側部分から吹き出された空調用空気A1の、同吹出口18から下流側に遠ざかるに従い、左右方向に互いに接近しようとする力が強められる。空調用空気A1の上記流速分布の形状は、より円形に近い形状になる。そのため、この点においても、吹出口18から吹き出されたときの温度により近い温度の空調用空気A1を乗員に吹き付けて、空調による快適性を向上させる効果を高めることができる。
【0066】
(第2実施形態)
次に、空調用薄型レジスタの第2実施形態について、
図7を参照して説明する。
第2実施形態は、上記特徴2に代えて、次の特徴5を有している。また、上記特徴3に代えて、次の特徴6を有している。
【0067】
特徴5:上記中立状態では、一方の端フィン31が、他方の端フィン31に対し、下流側ほど遠ざかるように傾斜している。第2実施形態では、いずれの端フィン31についても、下流側ほど上記中心軸線CLから遠ざかるように、同中心軸線CLに対し傾斜している。端フィン31が中心軸線CLに対しなす角度は、両端フィン31間で同一である。
【0068】
特徴6:上記中立状態では、一方の準端フィン32が、他方の準端フィン32に対し、下流側ほど遠ざかるように傾斜している。第2実施形態では、いずれの準端フィン32についても、下流側ほど上記中心軸線CLから遠ざかるように、同中心軸線CLに対し傾斜している。準端フィン32が中心軸線CLに対しなす角度は、両準端フィン32間で同一である。
【0069】
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。従って、第2実施形態において第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
そのため、特徴1及び特徴4による作用及び効果については、第2実施形態でも第1実施形態と同様に得られる。
【0070】
また、中立状態では、端フィン31及び準端フィン32が、中心軸線CLに対し、第1実施形態とは反対方向へ傾斜することから、次の作用及び効果が得られる。
上記中立状態では、一方の端フィン31が、他方の端フィン31に対し、下流側ほど遠ざかるように、すなわち、両端フィン31の間隔が下流側ほど広がるように、傾斜する(特徴5)。通風路13における左右両側部分を流れる空調用空気A1の一部は、上記のように傾斜した両端フィン31に沿って流れた後に、上記下流端部15aに当たって流れ方向を、同下流端部15aに沿う方向に変えられる。上記のように流れ方向を変えられた空調用空気A1の分、各下流端部15aに沿って流れて、吹出口18の左右両側部分から吹き出される空調用空気A1の量が多くなる。これに伴い、吹出口18から下流側に遠ざかるに従い、左右方向に互いに接近する空調用空気A1の量が多くなる。
【0071】
従って、上記中立状態で、上記のように、一方の端フィン31が他方の端フィン31に対し傾斜しない場合に比べ、空調用空気A1の上記流速分布の形状が、円形に近づく。そのため、この点においても、周囲の空気が流速分布における中心部分に到達するのを抑制し、同中心部分の温度が、周囲の空気の温度の影響を受けるのをより一層抑制することができる。
【0072】
また、上記中立状態では、一方の準端フィン32が、他方の準端フィン32に対し、下流側ほど遠ざかるように、すなわち、両準端フィン32の間隔が下流側ほど広がるように、傾斜する(特徴6)。通風路13における左右両側部分を流れる空調用空気A1の一部は、上記のように傾斜した両準端フィン32に沿って流れた後に、上記下流端部15aに当たって流れ方向を、同下流端部15aに沿う方向に変えられる。上記のように流れ方向を変えられた空調用空気A1の分、各下流端部15aに沿って流れて吹出口18から吹き出される空調用空気A1の量が多くなる。これに伴い、吹出口18から下流側に遠ざかるに従い、左右方向に互いに接近する空調用空気A1の量が多くなる。
【0073】
従って、上記中立状態で、上記のように、一方の準端フィン32が他方の準端フィン32に対し傾斜せず、端フィン31のみが傾斜する場合に比べ、空調用空気A1の上記流速分布の形状が、さらに円形に近づく。そのため、この点においても、周囲の空気が流速分布における中心部分に到達するのを抑制し、同中心部分の温度が、周囲の空気の温度の影響を受けるのをさらに抑制することができる。
【0074】
このようにして、第2実施形態によると、吹出口18から吹き出されたときの温度により近い温度の空調用空気A1を乗員に吹き付けて、空調による快適性を向上させる効果を高めることができる。
【0075】
第2実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・
図3及び
図7に示すように、上流フィン群が中立状態にされて、端フィン31が中心軸線CLに対し傾斜した場合、端フィン31の上流端と隣の第1対向壁部15との間の間隔を、間隔D3とする。
図7に示す第2実施形態における間隔D3は、
図3に示す第1実施形態における間隔D3よりも広くなる。端フィン31と隣の第1対向壁部15との間に流入する空調用空気A1の量は、第2実施形態の方が第1実施形態よりも多くなる。より多くの空調用空気A1が下流端部15aに当たって、中心軸線CLに向けて流れる。空調用空気A1の上記流速分布の形状を、より円形に近づけることができる。
【0076】
なお、上述した各実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
<吹出口18について>
・吹出口18では、両短辺部21と両長辺部22とが必ずしも直交していなくてもよく、同吹出口18が長方形又は長方形に近い四角形となることを条件に、多少斜めに交差してもよい。
【0077】
<上流フィン群について>
・端フィン31及び準端フィン32の組合せをフィン組合せとすると、このフィン組合せは、上流フィン群における左右両側部に位置する。フィン組合せ毎の端フィン31及び準端フィン32は、上流フィン群が中立状態にされたときに、中心軸線CLとの関係で、次の態様を採るように配置されてもよい。
【0078】
(a)一方のフィン組合せのみにおいて、端フィン31のみが、下流側ほど中心軸線CLに近づくように、又は同中心軸線CLから遠ざかるように、同中心軸線CLに対し傾斜する態様。
【0079】
(b)一方のフィン組合せのみにおいて、端フィン31及び準端フィン32がともに、下流側ほど中心軸線CLに近づくように、又は同中心軸線CLから遠ざかるように、同中心軸線CLに対し傾斜する態様。
【0080】
(c)両方のフィン組合せのそれぞれにおいて、端フィン31のみが、下流側ほど中心軸線CLに近づくように、又は同中心軸線CLから遠ざかるように、同中心軸線CLに対し傾斜する態様。
【0081】
(d)両方のフィン組合せのそれぞれにおいて、端フィン31及び準端フィン32がともに、下流側ほど中心軸線CLに近づくように、又は同中心軸線CLから遠ざかるように、同中心軸線CLに対し傾斜する態様。上述した第1及び第2実施形態が(d)の態様に該当する。
【0082】
・上流フィン群が中立状態にされたときに、両方のフィン組合せにおける端フィン31がともに中心軸線CLに対し傾斜する場合、端フィン31が中心軸線CLに対しなす角度は、両端フィン31間で異なってもよい。
【0083】
・上流フィン群が中立状態にされたときに、両方のフィン組合せにおける準端フィン32がともに中心軸線CLに対し傾斜する場合、準端フィン32が中心軸線CLに対しなす角度は、両準端フィン32間で異なってもよい。
【0084】
・上流フィン群が中立状態にされたときに、同一のフィン組合せにおける端フィン31及び準端フィン32がともに中心軸線CLに対し傾斜する場合、同中心軸線CLに対しなす角度は、端フィン31と準端フィン32とで同一であってもよいし、異なってもよい。
【0085】
・
図6において実線で示すように、上流フィン群におけるフィン本体34として、上下方向の寸法が、上記流れ方向におけるどの箇所でも一定のものが用いられてもよい。
・
図6において二点鎖線で示すように、上流フィン群における各フィン本体34の上縁部が、縮流部19における上側の第2対向壁部16に対応して、下流側ほど低くなるように中心軸線CLに対し傾斜させられてもよい。同様に、各フィン本体34の下縁部が、縮流部19における下側の第2対向壁部16に対応して、下流側ほど高くなるように中心軸線CLに対し傾斜させられてもよい。このようにすることで、上記上縁部と上側の第2対向壁部16との隙間を小さくし、上記下縁部と下側の第2対向壁部16との隙間を小さくすることができる。各フィン本体34が左右方向へ傾動された場合に、空調用空気A1が上記隙間を流れるのを規制し、流れることにより指向性が低下するのを抑制することができる。
【0086】
ただし、上記隙間の大きさが過度に小さいと、各フィン本体34が左右方向へ傾動されたときに、第2対向壁部16と干渉するおそれがある。そこで、上記隙間の大きさは、各フィン本体34が左右方向へ傾動された場合に、同フィン本体34と第2対向壁部16とが干渉しない大きさに設定されることが望ましい。上記指向性の低下を抑制する観点からは、上記隙間の大きさは、各フィン本体34が左右方向へ傾動された場合に、同フィン本体34と第2対向壁部16とが干渉しない最小の大きさに設定されることが望ましい。
【0087】
・両端フィン31、両準端フィン32及び全ての中間フィン33のそれぞれにおけるアーム36の延びる方向が、
図6に示すように、上記第1実施形態とは逆方向、すなわち、下流に向かう方向へ変更されてもよい。この場合、各アーム36の下流端部に連結ピン37が設けられる。
【0088】
・
図2及び
図6におけるフィン本体34の下流端が、上記流れ方向における縮流部19の下流端と同じ位置に変更されてもよい。
・中間フィン33の数が変更されてもよい。この数の取り得る最小値は「1」である。
【0089】
<縮流部19について>
・第2対向壁部16に代えて、又は加えて、両第1対向壁部15間の間隔が下流側ほど狭まるように、一方の第1対向壁部15が、他方の第1対向壁部15に対し、下流側ほど近づくように傾斜させられてもよい。ようにしても、流路面積が下流側ほど小さくなる縮流部19をリテーナ11の一部に形成することができる。
【0090】
・縮流部19の上流端19aが上記各実施形態よりも上流側へ設定されてもよい。最も上流側に設定された場合、上記上流端19aは、流入口14に合致してもよい。
<その他の事項について>
・下流フィン群やシャットダンパ41として、上記各実施形態とは異なる構成を有するものが採用されてもよい。
【0091】
・第1実施形態における空調用薄型レジスタは、下記例外1を除き、上記特徴2~特徴4の少なくとも1つを有しないものであってもよい。
例外1:特徴2を有しない場合には、特徴3を併せて有しないようにする。すなわち、空調用薄型レジスタは、特徴2を有することを前提として特徴3を有する。
【0092】
また、第2実施形態における空調用薄型レジスタは、下記例外2を除き、上記特徴4~特徴6の少なくとも1つを有しないものであってもよい。
例外2:特徴5を有しない場合には、特徴6を併せて有しないようにする。すなわち、空調用薄型レジスタは、特徴5を有することを前提として特徴6を有する。
【0093】
上記いずれの変形例の場合にも、空調用薄型レジスタは上記特徴1を有するため、吹出口18から吹き出される空調用空気A1の温度が周囲の空気の温度に近づくのを抑制する効果が得られる。
【0094】
・上記空調用薄型レジスタは、車室内においてインストルメントパネルとは異なる箇所に設けられるものであってもよい。
・上記空調用薄型レジスタは、空調装置から送られてきて室内に吹き出される空調用空気の向きをフィンによって調整することのできるものであれば、車両に限らず広く適用可能である。
【0095】
・空調用薄型レジスタは、吹出口18が縦長となるように配置されるものであってもよい。この場合、下流フィン23及びバレル24として、それぞれ上下方向に細長いものが用いられる。また、上流フィン群における両端フィン31、両準端フィン32及び中間フィン33としては、それぞれ左右方向及び上記流れ方向へ延びるものが用いられ、これらが互いに上下方向に離間した状態で配置される。
【0096】
(課題を解決するための手段に関する付記)
上記課題を解決するための手段は、上記実施形態及びその変形例から把握できる技術的思想である以下の(付記項1~付記項7)を含む。
【0097】
(付記項1)
空調用空気の通風路が形成され、かつ同空調用空気の流れ方向における下流端に吹出口を有するリテーナを備え、前記吹出口は、相対向する一対の短辺部と、両短辺部に対し交差した状態で相対向し、かつそれぞれ各短辺部よりも長い一対の長辺部とからなり、前記リテーナは、前記長辺部に沿う方向に相対向する一対の第1対向壁部と、前記短辺部に沿う方向に相対向する一対の第2対向壁部とを備え、前記リテーナ内には、複数のフィンが互いに前記長辺部に沿う方向に離間した状態で配置され、各フィンは、前記短辺部及び前記流れ方向に沿って延びる板状のフィン本体を備え、かつ前記短辺部に沿う方向へ延びるフィン軸により前記第2対向壁部に対し傾動可能に支持された空調用薄型レジスタであって、一方の前記第1対向壁部の前記流れ方向における下流端部は、他方の前記第1対向壁部の前記流れ方向における下流端部に対し、同方向における下流側ほど近づくように傾斜している空調用薄型レジスタ。
【0098】
(付記項2)
複数の前記フィンをフィン群とし、前記フィン群における複数の前記フィンのうち、前記長辺部に沿う方向の両端のフィンをそれぞれ端フィンとし、各端フィンの隣のフィンを準端フィンとし、両準端フィン間のフィンを中間フィンとし、前記中間フィンが前記通風路の中心軸線に対し平行になる状態を、前記フィン群の中立状態とした場合において、前記中立状態では、一方の前記端フィンが、他方の前記端フィンに対し、前記流れ方向における下流側ほど近づくように傾斜している付記項1に記載の空調用薄型レジスタ。
【0099】
(付記項3)
前記中立状態では、一方の前記準端フィンが、他方の前記準端フィンに対し、前記流れ方向における下流側ほど近づくように傾斜している付記項2に記載の空調用薄型レジスタ。
【0100】
(付記項4)
複数の前記フィンをフィン群とし、前記フィン群における複数の前記フィンのうち、前記長辺部に沿う方向の両端のフィンをそれぞれ端フィンとし、各端フィンの隣のフィンを準端フィンとし、両準端フィン間のフィンを中間フィンとし、前記中間フィンが前記通風路の中心軸線に対し平行になる状態を、前記フィン群の中立状態とした場合において、前記中立状態では、一方の前記端フィンが、他方の前記端フィンに対し、前記流れ方向における下流側ほど遠ざかるように傾斜している付記項1に記載の空調用薄型レジスタ。
【0101】
(付記項5)
前記中立状態では、一方の前記準端フィンが、他方の前記準端フィンに対し、前記流れ方向における下流側ほど遠ざかるように傾斜している付記項4に記載の空調用薄型レジスタ。
【0102】
(付記項6)
前記リテーナは、前記流れ方向における一部に、前記通風路の流路面積が下流側ほど小さくなる縮流部を有しており、前記流れ方向における前記縮流部の下流端は、同方向における前記フィン本体の下流端と同じ、又は同下流端よりも上流に位置し、前記流れ方向における前記縮流部の上流端は、同方向における前記フィン本体の上流端よりも上流に位置している付記項1~5のいずれか1項に記載の空調用薄型レジスタ。
【0103】
(付記項7)
前記縮流部では、一方の前記第2対向壁部が、他方の前記第2対向壁部に対し、前記流れ方向における下流側ほど近づくように傾斜している付記項6に記載の空調用薄型レジスタ。
【符号の説明】
【0104】
10…空調用薄型レジスタ、11…リテーナ、13…通風路、15…第1対向壁部、15a…下流端部、16…第2対向壁部、18…吹出口、19…縮流部、19a…上流端、19b…下流端、21…短辺部、22…長辺部、31…端フィン、32…準端フィン、33…中間フィン、34…フィン本体、35…フィン軸、A1…空調用空気、CL…中心軸線。