(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138821
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】アルミニウム形材の補強構造
(51)【国際特許分類】
E06B 3/16 20060101AFI20230922BHJP
E06B 1/18 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
E06B3/16
E06B1/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131154
(22)【出願日】2023-08-10
(62)【分割の表示】P 2021044459の分割
【原出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】寺田 真一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 太河
(57)【要約】
【課題】形材の大きさを抑えつつ、温度変化によって形材及び補強部材の一方の変形が他方の変形に影響を及すことを抑制することができるアルミニウム形材の補強構造を提供する。
【解決手段】アルミニウム形材の補強構造1は、アルミニウム材料によって形成され、内部にホローs1がされた形材10と、形材10と非接合状態でホローs1に配置され、アルミニウム材料とは異なる材料で形成された補強部材20と、を備え、補強部材20は、形材10に荷重が作用する第一方向T1に突っ張るように配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム材料によって形成され、内部にホローがされた形材と、
該形材と非接合状態で該ホローに配置され、前記アルミニウム材料とは異なる材料で形成された補強部材と、を備え、
該補強部材は、前記形材に荷重が作用する第一方向に突っ張るように配置されているアルミニウム形材の補強構造。
【請求項2】
前記補強部材を保持する保持部が前記ホローに設けられている請求項1に記載のアルミニウム形材の補強構造。
【請求項3】
前記保持部は、前記形材に前記第一方向と直交する第二方向に間隔をあけて設けられた一対のリブであり、
前記補強部材は、前記一対のリブに保持されている請求項2に記載のアルミニウム形材の補強構造。
【請求項4】
前記保持部は、前記補強部材における前記第一方向と直交する第二方向の両側に、前記補強部材を挟み込むように設けられたアタッチメントである請求項2に記載のアルミニウム形材の補強構造。
【請求項5】
前記アタッチメントと前記補強部材とは、スポンジ状の両面テープで固定されている請求項4に記載のアルミニウム形材の補強構造。
【請求項6】
前記補強部材は、前記ホローで自立可能である請求項1に記載のアルミニウム形材の補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アルミニウム形材の補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、アルミニウム形材は素材自体の軽量性や易加工性の特徴によって、多くの建材に用いられている。近年増加する大型建材においては、強風や積雪による建材のたわみを抑制する手段として、アルミニウム形材の肉厚を厚くしたり、外径を大きくしたりすることによって形材の断面係数を向上させる方法や、中空内部に鋼材を補強部材として挿入しボルト締結や接着剤接合による補強方法を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
形材の断面係数を向上させる方法では、形材の大型化及び重量化によるデザイン性の低下及び施工性の低下という問題点がある。ボルト締結や接着剤接合による補強方法では、異素材どうしの熱膨張率の差によって、形材や補強部材に歪みが生じたり、接合部分が劣化したりするという問題点がある。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、形材の大きさを抑えつつ、温度変化によって形材及び補強部材の一方の変形が他方の変形に影響を及すことを抑制することができるアルミニウム形材の補強構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るアルミニウム形材の補強構造は、アルミニウム材料によって形成され、内部にホローがされた形材と、該形材と非接合状態で該ホローに配置され、前記アルミニウム材料とは異なる材料で形成された補強部材と、を備え、該補強部材は、前記形材に荷重が作用する第一方向に突っ張るように配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第一実施形態に係るアルミニウム形材の補強構造の断面図。
【
図2】第二実施形態に係るアルミニウム形材の補強構造の断面図。
【
図3】第三実施形態に係るアルミニウム形材の補強構造の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第一実施形態)
以下、第一実施形態に係るアルミニウム形材の補強構造について、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るアルミニウム形材の補強構造1は、形材10と、補強部材20と、を備えている。アルミニウム形材の補強構造1は、例えば建具等の建材に使用される。
【0009】
形材10は、
図1の紙面に直交する方向に延びる長尺部材である。
図1の紙面の上下方向をT1方向(第一方向)とし、紙面の左右方向をT2方向(第二方向)とする。
【0010】
形材10は、アルミニウム材料によって形成されている。形材10は、長手方向に直交する断面視で略矩形の環状に形成されている。形材10の内部には、中空状のホローs1が形成されている。ホローs1は、形材10の長手方向の略全長に形成されている。
【0011】
形材10は、第一板部11と、第二板部12と、第三板部13と、第四板部14と、を有している。
【0012】
第一板部11及び第二板部12は、平板状に形成されている。第一板部11の板面及び第二板部12の板面は、T1方向を向いている。第一板部11と第二板部12とは、T1方向に対向して配置されている。
【0013】
第三板部13及び第四板部14は、第一板部11の端部と第二板部12の端部とを接続している。第三板部13及び第四板部14は、平板状に形成されている。第三板部13の板面及び第四板部14の板面は、T2方向を向いている。第三板部13と第四板部14は、T2方向に対向して配置されている。
【0014】
第一板部11の内面には、T2方向の略中央に第一レール15が設けられている。第一レール15は、第一板部11の長手方向の略全長に設けられている。第一レール15は、一対の第一リブ(保持部)15aを有している。第一リブ15aは、第一板部11から第二板部12側に延びている。一対の第一リブ15aは、T2方向に間隔をあけて配置されている。一対の第一リブ15a間の距離は、後述する補強部材20の板厚と略同一または補強部材20の板厚よりもわずかに長い。
【0015】
第二板部12の内面には、T2方向の略中央に第二レール16が設けられている。第二レール16は、第二板部12の長手方向の略全長に設けられている。第二レール16は、第一レール15とT1方向に対向して配置されている。第二レール16は、一対の第二リブ(保持部)16aを有している。第二リブ16aは、第二板部12から第一板部11側に延びている。一対の第二リブ16aは、T2方向に間隔をあけて配置されている。一対の第二リブ16a間の距離は、後述する補強部材20の板厚と略同一または補強部材20の板厚よりもわずかに長い。
【0016】
補強部材20は、ホローs1に配置されている。補強部材20は、平板状に形成されている。補強部材20の板面は、T2方向を向いている。補強部材20は、形材10の長手方向の略全長に設けられている。補強部材20の形状は平板状に限られず、長手方向に直交する断面視で矩形に形成された角管等で形成され、一対の第一リブ15a及び一対の第二リブ16aの間隔を長くして、その間に配置される構成であってもよい。
【0017】
補強部材20は、形材10を形成するアルミニウム材料とは異なる材料で形成されている。補強部材20は、アルミニウム材料よりも高剛性の材料で形成されている。補強部材20は、例えばCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)や鋼材等で形成されている。
【0018】
補強部材20は、形材10と非接合状態の関係にある。補強部材20は、形材10と接着剤等の化学的接着や、両面テープや、ボルト締結等の機械的締結がされていない。
【0019】
補強部材20の一方の端部20aは、第一レール15に保持され、一対の第一リブ15aに挟み込まれている。補強部材20の他方の端部20aは、第二レール16に保持され、一対の第二リブ16aに挟み込まれている。
【0020】
補強部材20の端部20aは、第一板部11及び第二板部12に当接しているか、または第一板部11及び第二板部12とわずかに隙間をあけて配置されている。
【0021】
形材10には、使用状態でT1方向に外力等の荷重が作用する。建具の横框や横枠において、形材10の長手方向が建具の幅方向を向くように使用する場合には、重力や屋内外方向の空気圧等によって第一方向T1方向に荷重が作用することになる。建具の縦框や縦枠において、形材10の長手方向が上下方向を向くように使用する場合には、障子の開閉や屋内外方向の空気圧等によって第一方向T1方向に荷重が作用することになる。
【0022】
T1方向に荷重が作用した際には、補強部材20の端部20aが第一板部11及び第二板部12に当接して、T1方向に突っ張ることで、第一板部11及び第二板部12のたわみ等の形材10の変形が抑制される。
【0023】
補強部材20を形材10の内部に配置する際には、補強部材20の長手方向の端部から、一対の第一リブ15aの間及び一対の第二リブ16aの間に挿入するだけでよい。
【0024】
このように構成されたアルミニウム形材の補強構造1では、形材10にT1方向に荷重が作用すると、補強部材20がT1方向に突っ張って荷重に対して抗する。補強部材20は形材10のホローに配置されているため、形材10の肉厚等の形材10自体を大きくする必要がなく、形材10の大きさを抑えることができる。
【0025】
アルミニウム形材の補強構造1では、補強部材20は形材10を形成するアルミニウム材料とは異なる材料で形成され、補強部材20と形材10とでは熱膨張率の差がある場合がある。補強部材20は形材10とは接合されていないため、温度変化によって補強部材20及び形材10の一方の変形が他方の変形に影響を及ぼすことが抑制される。
【0026】
アルミニウム形材の補強構造1では、補強部材20を保持する一対の第一リブ15a及び一対の第二リブ16aが形材10のホローs1に設けられている。これによって、補強部材20のガタツキや位置ずれ等が抑制される。
【0027】
アルミニウム形材の補強構造1では、補強部材20は、形材10にT2方向に間隔をあけて設けられた一対の第一リブ15a及び一対の第二リブ16aによって保持されている。これによって、補強部材20のT2方向への移動が規制される。
【0028】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態に係るアルミニウム形材の補強構造について、主に
図2を用いて説明する。下記に示す実施形態の説明において、前述した部材と同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0029】
図2に示すように、アルミニウム形材の補強構造1Aでは、補強部材20は、一対のアタッチメント(保持部)30によって保持されている。アタッチメント30は、形材10のホローs1に配置されている。アタッチメント30は、補強部材20を挟んでT2方向の両側に配置されている。一対のアタッチメント30は、T2方向の中心で対称配置されている。
【0030】
アタッチメント30は、短尺部材である。アタッチメント30は、形材10の長手方向に間隔をあけて複数配置されている。
【0031】
アタッチメント30は、長手方向に直交する断面視で略C字状に形成されている。アタッチメント30は、保持壁部31と、折曲壁部32と、を有している。
【0032】
保持壁部31は、平板状に形成されている。保持壁部31の板面は、T2方向を向いている。保持壁部31は、補強部材20におけるT2方向を向く面20bに沿って配置されている。保持壁部31のT2方向の一方の端部31aは、第一板部11まで達していない。保持壁部31のT2方向の他方の端部31aは、第二板部12まで達していない。
【0033】
折曲壁部32は、保持壁部31のT1方向の両端部31aから補強部材20の面20bから離れる方向に延びている。折曲壁部32の端部32aは、第三板部13及び第四板部14に当接しているか、またはわずかに隙間をあけて配置されている。
【0034】
保持壁部31は、補強部材20にスポンジ状の両面テープ36を用いて接着されている。保持壁部31は、接着剤や、スポンジ状ではない両面テープを用いて補強部材20に接着されていてもよい。補強部材20は、T2方向の両側からアタッチメント30によって挟み込まれている。
【0035】
このように構成されたアルミニウム形材の補強構造1Aでは、形材10にT1方向に荷重が作用すると、補強部材20がT1方向に突っ張って荷重に対して抗する。補強部材20は形材10のホローに配置されているため、形材10の肉厚等の形材10自体を大きくする必要がなく、形材10の大きさを抑えることができる。
【0036】
アルミニウム形材の補強構造1Aでは、補強部材20は形材10を形成するアルミニウム材料とは異なる材料で形成され、補強部材20と形材10とでは熱膨張率の差がある場合がある。補強部材20は形材10とは接合されていないため、温度変化によって補強部材20及び形材10の一方の変形が他方の変形に影響を及ぼすことが抑制される。
【0037】
アルミニウム形材の補強構造1Aでは、補強部材20は、T2方向の両側からアタッチメント30で挟み込まれて保持されている。これによって、補強部材20のT2方向への移動が規制される。アタッチメント30は形材10と別部材とすることができるため、専用形材とする必要がない。
【0038】
アルミニウム形材の補強構造1Aでは、アタッチメント30と補強部材20とは、スポンジ状の両面テープ36で固定されている。これによって、形材10に生じる振動がスポンジ状の両面テープ36で吸収されるため、ガタツキ音を抑制することができる。
【0039】
(第三実施形態)
次に、第三実施形態に係るアルミニウム形材の補強構造について、主に
図3を用いて説明する。
図3に示すように、補強部材20Bは、ホローs1に自立可能に配置されている。補強部材20Bは、形材10の長手方向に直交する断面視で略矩形状に形成されている。補強部材20Bは、形材10の長手方向の略全長に配置されている。
【0040】
補強部材20Bは、第一補強板部21と、第二補強板部22と、第三補強板部23と、第四補強板部24と、を有している。
【0041】
第一補強板部21及び第二補強板部22は、平板状に形成されている。第一補強板部21の板面及び第二補強板部22の板面は、T1方向を向いている。第一補強板部21と第二補強板部22とは、T1方向に対向して配置されている。第一補強板部21は、第一板部11の内面に当接、またはわずかに隙間をあけて配置されている。第二補強板部22は、第二板部12の内面に当接、またはわずかに隙間をあけて配置されている。
【0042】
第三補強板部23及び第四補強板部24は、第一補強板部21の端部と第二補強板部22の端部とを接続している。第三補強板部23及び第四補強板部24は、平板状に形成されている。第三補強板部23の板面及び第四補強板部24の板面は、T2方向を向いている。第三補強板部23と第四補強板部24とは、T2方向に対向して配置されている。第三補強板部23は、第三板部13の内面に当接、またはわずかに隙間をあけて配置されている。第四補強板部24は、第四補強板部24の内面に当接、またはわずかに隙間をあけて配置されている。
【0043】
形材10にT1方向及びT2に荷重が作用すると、補強部材20BがT1方向及びT2方向に突っ張って荷重に対して抗する。
【0044】
このように構成されたアルミニウム形材の補強構造1Bは、形材10にT1方向に荷重が作用すると、補強部材20BがT1方向に突っ張って荷重に対して抗する。補強部材20Bは形材10のホローに配置されているため、形材10の肉厚等の形材10自体を大きくする必要がなく、形材10の大きさを抑えることができる。
【0045】
アルミニウム形材の補強構造1Bでは、補強部材20Bは形材10を形成するアルミニウム材料とは異なる材料で形成され、補強部材20Bと形材10とでは熱膨張率の差がある場合がある。補強部材20Bは形材10とは接合されていないため、温度変化によって補強部材20B及び形材10の一方の変形が他方の変形に影響を及ぼすことが抑制される。
【0046】
アルミニウム形材の補強構造1Bでは、補強部材20B自体が、ホローで自立可能である。ホローに補強部材20Bを配置すれば補強部材20Bが形材10を補強するため、簡易な構成とすることができる。
【0047】
上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0048】
例えば、第一実施形態において、形材10にT1方向及びT2方向の両方向に荷重が作用する場合には、第三板部13及び第四板部14にも第一レール15のようなレールを設けて、補強部材を長手方向に直交する断面視で十字形にしてもよい。
【0049】
第三実施形態において、補強部材20Bは、形材10の長手方向に直交する断面視で略矩形状に形成されていなくてもよい。例えば、補強部材20Bは、形材10の長手方向に直交する断面視で略H状に形成されていてもよい。補強部材20Bは、第三補強板部23及び第四補強板部24を有しておらず、第一補強板部21のT2方向の中間と第二補強板部22のT2方向の中間とを連結する壁部を有する構成であってもよい。補強部材20Bは、形材10の長手方向に直交する断面視で略三角形状に形成されていてもよい。三角形の一辺が第一板部11及び第二板部12のいずれか一方に当接し、三角形の一辺と対向する頂点が第一板部11及び第二板部12の他方に当接する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1、1A,1B…アルミニウム形材の補強構造
10…形材
15a…第一リブ(保持部)
16a…第二リブ(保持部)
20,20B…補強部材
30…アタッチメント(保持部)
36…両面テープ
s1…ホロー
T1方向…第一方向
T2方向…第二方向