(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138833
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】電子決済システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/12 20230101AFI20230922BHJP
G06Q 10/06 20230101ALI20230922BHJP
G06Q 20/08 20120101ALI20230922BHJP
【FI】
G06Q40/12 420
G06Q10/06
G06Q20/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131394
(22)【出願日】2023-08-10
(62)【分割の表示】P 2021025330の分割
【原出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】321003371
【氏名又は名称】LINE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕介
(72)【発明者】
【氏名】林 謙吾
(72)【発明者】
【氏名】依田 莉小
(57)【要約】
【課題】この発明は、電子決済システムに関し、給与の支払い予定がある場合に、給与が現実に支払われる前から消費者に商品の購入を促すことを目的とする。
【解決手段】給与支払い者が管理する管理者端末12から提供される勤務情報(2)に基づいて、労務の提供者であるユーザに対する貸し付け可能額(6)を設定する。貸し付け可能額(6)をユーザ端末(14-1)に表示させる。貸し付け可能額以下の借り入れ金額の申し出(7)をユーザ端末(14-1)から受け付ける。申し出を受けて、借り入れ金額をユーザの口座に振り込む(8、9)。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給与支払い者が管理する管理者端末と、労務の提供者であるユーザが管理するユーザ端末とに、ネットワークを介して接続可能な電子決済システムであって、
一つまたは複数のプロセッサユニットと、
前記プロセッサユニットが実行するプログラムを記憶したメモリとを備え、
前記プロセッサユニットは、
前記管理者端末から提供される勤務情報に基づいて前記ユーザに対する貸し付け可能額を設定する処理と、
前記貸し付け可能額を前記ユーザ端末に表示させる処理と、
前記貸し付け可能額以下の借り入れ金額の申し出を前記ユーザ端末から受け付ける処理と、
前記申し出を受けて、前記借り入れ金額を前記ユーザの口座に振り込む処理と、
を実行する電子決済システム。
【請求項2】
前記勤務情報は、前記ユーザに支払う給与の情報を含み、
前記プロセッサユニットは、
前記借り入れ金額に対する返済条件を設定する処理と、
前記返済条件に基づいて、給与支給日における返済額を設定する処理と、
前記給与支給日に、前記ユーザの口座に前記給与を振り込む処理と、
前記給与の振り込みを受けて、前記返済額を引き落とす処理と、
を更に実行する請求項1に記載の電子決済システム。
【請求項3】
前記勤務情報は、完了した未払い労務の情報を含み、
前記貸し付け可能額は、前記完了した未払い労務の対価から、借り入れ済みの総額を減じた確定債権額に基づいて設定される請求項1または2に記載の電子決済システム。
【請求項4】
前記勤務情報は、給与支給日までの未完の労務の情報を更に含み、
前記貸し付け可能額は、前記確定債権額と、前記未完の労務の対価に相当する未確定債権額とに基づいて設定される請求項3に記載の電子決済システム。
【請求項5】
前記勤務情報は、前記ユーザの勤務評定の情報を含み、
前記貸し付け可能額は、前記勤務評定に基づいて設定される請求項1乃至3の何れか1項に記載の電子決済システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、電子決済システムに係り、特に、給与の支払いに用いるうえで好適な電子決済システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電子マネーを用いた電子決済方法が開示されている。ここに開示された電子決済方法によれば、決済に用いられる電子マネーの残価が、経時的に減価される。このような決済方法によれば、電子マネーを早く消費したいという消費者の心理を刺激することで、活発な個人消費を誘導することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2004/036471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子決済の方法は、給与の支払いに利用することが考えられる。上記従来の電子決済方法は、ユーザが現に所有している電子マネーを経時的に減価することで消費の促進を図る。この方法を給与の支払いに利用した場合、給与が現実に支払われて減価の対象が現実に発生するまでは、消費者の購買意欲を刺激することができない。
【0005】
この開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、給与の支払い予定がある場合に、給与が現実に支払われる前から消費者に商品の購入を促すことのできる電子決済システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、上記の目的を達成するため、給与支払い者が管理する管理者端末と、労務の提供者であるユーザが管理するユーザ端末とに、ネットワークを介して接続可能な電子決済システムであって、
一つまたは複数のプロセッサユニットと、
前記プロセッサユニットが実行するプログラムを記憶したメモリとを備え、
前記プロセッサユニットは、
前記管理者端末から提供される勤務情報に基づいて前記ユーザに対する貸し付け可能額を設定する処理と、
前記貸し付け可能額を前記ユーザ端末に表示させる処理と、
前記貸し付け可能額以下の借り入れ金額の申し出を前記ユーザ端末から受け付ける処理と、
前記申し出を受けて、前記借り入れ金額を前記ユーザの口座に振り込む処理と、
を実行することが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本開示の第1の態様によれば、給与の支払い予定がある場合に、給与が現実に支払われる前から消費者に商品の購入を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施の形態1の電子決済システムを含むネットワークの構成例を示す図である。
【
図2】
図1に示す雇用関係仲介サーバの構成を説明するための図である。
【
図3】本開示の実施の形態1において雇用関係の成立に関して実行される処理の流れを説明するための図である。
【
図4】本開示の実施の形態1において就労に対する給与が支払われるまでの基本の流れを説明するための図である。
【
図5】本開示の実施の形態1においてユーザ端末に表示される画像の一例を示す図である。
【
図6】本開示の実施の形態1における特徴的な処理の流れを説明するための図である。
【
図7】本開示の実施の形態1の電子決済システムで用い得る第2の決済パターンを説明するための図である。
【
図8】本開示の実施の形態1の電子決済システムで用い得る第3の決済パターンを説明するための図である。
【
図9】本開示の実施の形態2において借り入れ金が振り込まれるまでの流れを説明するための図である。
【
図10】本開示の実施の形態3における広告サーバの特徴を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
図1は、本開示の実施の形態1の電子決済システムを含むネットワーク10の構成を示す。本実施形態のネットワーク10には、管理者端末12が含まれている。管理者端末12は、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、或いはタブレット端末のような汎用装置で実現することができる。管理者端末12は、労務の提供を求めると共にその労務に対する対価を支払う管理者によって管理されている。
【0010】
ネットワーク10には、ユーザ端末14-1~14-nが含まれている。以下、個々のユーザ端末を区別する必要がない場合は、符号14を用いて、それらをユーザ端末14と称する。ユーザ端末14も、管理者端末12と同様に、スマートフォン等の汎用装置で実現することができる。ユーザ端末14は、労務の対価として給与を求めるユーザにより管理されている。
【0011】
ネットワーク10には、Payサーバ16が含まれている。Payサーバ16は、個々のユーザが持つ電子マネーの口座を管理するサーバである。Payサーバ16は、外部から提供される指令に応じて、それらの口座への入金の処理、並びにそれらの口座からの出金の処理を実施する。Payサーバ16は、汎用のコンピュータを構成するハードウェアにより実現されている。
【0012】
ネットワーク10には、また、サービス提供サーバ18が含まれている。サービス提供サーバ18は、音楽、映像、ゲーム等のデジタルコンテンツの配信サービスを管理するサーバである。サービス提供サーバ18は、外部からの指令を受けて、或いはサービスに対する料金の支払いを受けて、ユーザが購入したサービスをユーザ端末14に提供することができる。サービス提供サーバ18は、汎用のコンピュータを構成するハードウェアにより実現されている。
【0013】
ネットワーク10には、更に、雇用関係仲介サーバ20が含まれている。雇用関係仲介サーバ20は、労務を求める管理者と、給与を求めるユーザとの間でのマッチングサービスや労務管理の代行サービス等を提供するサーバである。本実施形態において、雇用関係仲介サーバ20は、給与の支払いを決済する電子決済システムの主要部分を構成する。
【0014】
図2は、雇用関係仲介サーバ20の構成を説明するための図である。雇用関係仲介サーバ20は、Payサーバ16およびサービス提供サーバ18と同様に、汎用のコンピュータを構成するハードウェアにより実現されている。
【0015】
雇用関係仲介サーバ20は、より具体的には、
図2に示すように、その内部に、広告サーバ22を備えている。広告サーバ22は、プロセッサユニット(以下「CPU」とする)24、メモリ26および通信インターフェース(以下「I/F」とする)28を備えている。広告サーバは、そのメモリ26に格納されている、または外部から提供される広告用の情報を参照して、ユーザ端末14に対して各種の広告を表示させることができる。この機能は、CPU24が、メモリ26に格納されているプログラムに沿って処理を進めることで実現される。
【0016】
雇用関係仲介サーバ20は、また、勤怠管理サーバ30を備えている。勤怠管理サーバ30は、CPU32、メモリ34およびI/F36を備えている。勤怠管理サーバ30は、管理者端末12から提供されるユーザ毎の勤務情報を受け取り、その情報を必要な形式で格納しておくことができる。勤務情報には、現時点で完了している労務の情報に加えて、今後の勤務予定の情報が含まれている。上記の機能は、CPU32が、メモリ34に格納されているプログラムに沿って処理を進めることで実現される。
【0017】
雇用関係仲介サーバ20は、更に、給与管理サーバ38を備えている。給与管理サーバ38は、CPU40、メモリ42およびI/F44を備えている。給与管理サーバ38は、勤怠管理サーバ30が格納した勤務情報に基づいて、ユーザ毎に予定給与の額を計算して、その額をユーザ端末14に表示させることができる。予定給与の額は、例えば、現在までに完了している労務に対する対価、つまりユーザにとっての確定債権の額とすることができる。また、予定給与の額は、今後予定されている勤務が完遂されることを前提とした給与、つまり未確定債権の額を含む給与の額としてもよい。更には、それら二つの額を予定給与の額としてユーザ端末14に表示させることとしてもよい。上記の機能は、CPU40が、メモリ42に格納されているプログラムに沿って処理を進めることで実現される。
【0018】
尚、本実施形態では、雇用関係仲介サーバ20の機能を上記の通り三つのサーバに分散させて、それらのサーバ夫々にCPUとメモリを与えることとしているが、その構成はこれに限定されるものではない。雇用関係仲介サーバ20は、単一或いは複数のCPUと単一或いは複数のメモリを用いて実現することが可能であり、CPUおよびメモリの数は必要に応じて適宜設定することができる。
【0019】
[実施の形態1の基本動作]
図3は、本実施形態において雇用関係の成立に関して実行される処理の流れを説明するための図である。
図3は、具体的には、以下の処理が時系列で実行される様子を示している。
【0020】
(1)管理者端末12から雇用関係仲介サーバ20に求人情報が提供される。
この求人情報には、勤務地、勤務時間、職務内容、給与、応募資格等の情報が含まれている。
【0021】
(2)求人情報を受けた雇用関係仲介サーバ20は、その求人情報を含む求人広告をユーザ端末14に送信する。送信先のユーザ端末14は、予め送信希望を受けている端末だけに限定してもよい。或いは、過去の送信に対して解除の要求を受けていない端末を含めて送信先としてもよい。
【0022】
(3)求人広告を受信したユーザ端末14のうち、ユーザ端末14-1のユーザが、雇用関係仲介サーバ20に対して応募の意思を返信している。この応募を受けて、雇用関係仲介サーバ20は、応募者が応募資格を満たしているか否かを判断する。その結果、条件が満たされている場合は、管理者端末12とユーザ端末14-1の双方に、雇用関係の成立を連絡する。尚、本開示における「雇用関係」は、労務に対して対価を支払う関係一般を指しており、例えば、業務委託の関係も含むものとする。
【0023】
(4)雇用関係が成立すると、管理者端末12から雇用関係仲介サーバ20に対して、給与預託の指令が送信される。本実施形態では、決められた給与支給日に、管理者からユーザに給与が支払われるのを原則としている。上記の指令により、雇用関係仲介サーバ20は、次回の給与支給日にユーザに支払うべき給与の預託に必要な処理を完了させる。このような預託の制度によれば、ユーザは、給与不払いを回避できるというメリットを享受することができる。一方、管理者は、優良な雇用先としての印象を与えられるというメリットを得ることができる。
【0024】
図4は、雇用関係の成立後、就労に対して給与が支払われるまでの基本の流れを説明するための図である。
図4は、具体的には、以下の処理が時系列で実行される様子を示している。
【0025】
(1)ユーザ端末14-1を持つユーザが、成立した雇用関係に基づく業務に労務を提供する。
【0026】
(2)管理者が、管理者端末12を用いてユーザの勤務情報を雇用関係仲介サーバ20に提供する。勤務情報には、例えば、給与支給日、給与支給日までの勤務予定、雇用関係の終了時期、日々の就労の開始および終了に関する承認、ユーザの勤務態度および勤務評定などを含めることができる。
【0027】
(3)雇用関係仲介サーバ20が、受け取った勤務情報に基づいて予定給与の額を計算し、その額をユーザ端末14-1に提供する。具体的には、雇用関係仲介サーバ20は、日々の就労の開始および終了に関する承認の履歴に基づいて、完了した未払いの労務の対価を計算し、その結果を確定債権に基づく予定給与の額とする。また、次回の給与支給日までに予定されている未完の労務に対する対価を含む額を未確定債権を含む予定給与の額とする。この処理が実行されることにより、ユーザは、就労に対する対価の価額をいつでも簡単に確認することができる。
【0028】
(4)雇用関係仲介サーバ20は、給与支給日以前に、給与支給日における給与の振り込みを、Payサーバ16に依頼する。
【0029】
(5)Payサーバ16は、上記の依頼に応じて、給与支給日に、ユーザ端末14-1に対して、電子マネーによる給与の振り込みを行う。より具体的には、ユーザ端末14-1を所有するユーザが、給与の振り込み口座として指定している電子マネーの口座に対して、電子マネーにより給与の額を振り込む。以上の処理により、給与の支払いに関する通常の決済が完了する。
【0030】
[実施の形態1の特徴的動作]
図5は、本実施形態において、成立した雇用関係の当事者が持つユーザ端末14-1に表示される特徴的な画像を示す。
図5の左側に示す画像50には、次回の給与支給日の月次、つまり「〇年〇月」の表示と共に、「予定給与」の「額」が表示される。ここでは、予定給与の額として「25000円」が例示されている。この額は、画像50の表示時点で完了した未払い労務の対価、つまりユーザにとっての確定債権の額であるものとする。
【0031】
画像50には、上記の表示に加えて、商品の広告が表示される。具体的には、「こちらのサービスはいかがでしょうか」との案内と共に、「××MUSIC 聞き放題1年:6000円」の広告52が表示されている。この広告52は、雇用関係仲介サーバ20の広告サーバ22が、アクセス可能な商品広告の情報と、予定給与の額とに基づいて決定した広告である。具体的には、本実施形態では、広告サーバ22は、代金が予定給与に収まる商品をピックアップして広告52の対象とする。
【0032】
画像50によれば、商品の購入に足る入金の予定があることと共に、魅力的な商品の広告52をユーザに認識させることができる。このような認識を持つと、その商品に対するユーザの購入心理を刺激することができる。
【0033】
ユーザは、広告52をクリックすることで、商品の購入意思があることを雇用関係仲介サーバ20に伝えることができる。そして、広告52がクリックされると、ユーザ端末14-1には、
図5の右側に示す画像54が表れる。
【0034】
画像54は、支払い方法の選択肢を提供する画像である。
図5に示す例では、画像54に、「Pay残高で購入」の選択肢と「予定給与で購入」の選択肢とが提供されている。本実施形態では、ユーザが電子マネーの口座を持っていることを前提としている。「Pay残高」は、その口座に残っている電子マネーの額を意味する。
【0035】
ユーザは、「Pay残高で購入」をクリックすることで、その口座から商品の代金を支払う意図をネットワーク10に送信することができる。この場合、雇用関係仲介サーバ20は、Payサーバ16に代金の引き落としを依頼すると共に、サービス提供サーバ18にサービスの提供開始を依頼する。その後、Payサーバ16とサービス提供サーバ18との間で代金の支払いが確認されると、ユーザがサービスを利用できる状態となる。
【0036】
ユーザは、画像54において「予定給与で購入」をクリックすることにより、〇年〇月に支給される予定給与で商品を購入する意図をネットワーク10に送信することができる。本実施形態では、この場合、予定給与により支払い能力が担保されていることから、ユーザによる商品の購入を認める。これにより、ユーザは、仮に商品の購入に足るPay残高を保有していない場合でも、給与支給日を待つことなく即座に商品を購入することができる。
【0037】
図6は、「予定給与で購入」の選択肢がクリックされた場合の処理の流れを説明するための図である。
図6に示す(1)就労、(2)勤務情報、(3)予定給与の処理については、
図4に示す基本動作の場合と同様である。
図6は、これらの処理に続いて、以下の処理が時系列で実行されることを示している。
【0038】
(4)雇用関係仲介サーバ20からユーザ端末14-1に、予定給与の情報と共に商品の広告が提供される。尚、本実施形態では、予定給与と商品の広告を一つの画像50の中に同時に表示することとしている。しかしながら、それらの表示は、異なる画像で別々に表示することとしてもよい。
【0039】
(5)ユーザが「予定給与で購入」の選択肢をクリックして、商品購入の指令を発する。この場合、商品購入の意思は、雇用関係仲介サーバ20の給与管理サーバ38に伝達される。
【0040】
(6)雇用関係仲介サーバ20は、上記(5)による商品購入の指令を受けると、Payサーバ16に対して、サービス提供者への商品代金の振り込み予約を行う。具体的には、給与支給日に、ユーザの電子マネー口座に給与が振り込まれたら、即座に商品代金を引き落とすことをPayサーバ16に予約する。この際、雇用関係仲介サーバ20は、商品の代金が予定給与以下であること、また、一部が既に商品購入に充てられている場合はその代金を減額した額以下であることを確認する。そして、代金が弁済可能な額を超えている場合は、ユーザ端末14-1に購入不可のメッセージを返すこととしてもよい。
【0041】
(7)続いて、雇用関係仲介サーバ20は、サービス提供サーバ18に、即時のサービス提供を依頼する。
【0042】
(8)これを受けて、サービス提供サーバ18は、ユーザ端末14-1に対するサービスの提供を即座に開始する。これにより、ユーザは、商品購入の意思を示した後、速やかにサービスの提供を受けることができる。つまり、本実施形態によれば、ユーザは、商品の購入に必要な残高を保有していない場合でも、給与の支払い予定があれば、その給与で事後的に代金を支払うことを予約して、即座に商品を購入することができる。このため、本実施形態によれば、給与の支払い予定がある場合に、給与が現実に支払われる前から消費者に商品の購入を促すことができる
【0043】
(9)Payサーバ16は、給与支給日に、上記(6)の予約に従って商品代金の引き落としを実行する。引き落としの完了がサービス提供サーバ18に連絡されることで、商品の購入に関わる決済が完了する。
【0044】
(10)ユーザ端末14-1を所有するユーザの口座には、予定給与の全額が一旦支払われるが、その後即座に商品代金が引き落とされる。このため、ユーザが、商品代金を誤って使い込んでしまうという事態を未然に防ぐことができる。また、サービス提供者には、代金の不払いを回避できるというメリットを供与することができる。
【0045】
[実施の形態1の変形例]
[第2の決済パターン]
図7は、本実施形態の電子決済システムで用い得る第2の決済パターンの流れを示す。尚、
図7において、
図6に示す処理と同様の処理については、共通する番号を付してその説明を省略または簡略する。
【0046】
第2の決済パターンでは、ユーザ端末14-1で「予定給与で購入」がクリックされると、つまり(5)の処理が実行されると、以後、時系列で以下の処理が実行される。
【0047】
(6-1)雇用関係仲介サーバ20は、Payサーバ16に、ユーザの電子マネー口座への商品代金の振り込みを依頼する。この際、雇用関係仲介サーバ20は、商品の代金が予定給与以下であることを確認し、代金が弁済可能な額を超えている場合は、ユーザ端末14-1に購入不可のメッセージを返すこととしてもよい。
【0048】
(6-2)上記の依頼を受けると、Payサーバ16は、ユーザ端末14-1を所有するユーザの口座に、商品代金と同額の電子マネーを振り込む。これにより、当初のPay残高によらず、ユーザのPay残高は商品代金以上の額となる。
【0049】
(6-3)次に、ユーザ端末14-1から雇用関係仲介サーバ20に、Pay残高での支払いが伝達される。この伝達は、Payサーバ16からの振り込みが完了した後、自動的に行われてもよく、また、ユーザの確認処理を待って行われてもよい。
【0050】
(6-4)上記の伝達を受けた雇用関係仲介サーバ20は、Payサーバ16に対して、サービス提供者への代金の支払いを依頼する。
【0051】
(6-5)Payサーバ16は、上記の依頼を受けて、代金の引き落としに関する処理を実行し、その完了をサービス提供サーバ18に連絡する。
【0052】
(7)雇用関係仲介サーバ20は、上記(6-4)の処理と併せて、サービス提供サーバ18にサービス提供の開始を依頼する。
【0053】
(8)サービス提供サーバ18は、その依頼を受け、かつ、代金の支払いが確認できたら、即座にサービスの提供を開始する。
【0054】
(10)給料日には、予定給与の全額がユーザ口座に一旦振り込まれ、その後即座に、立て替えていた商品代金が引き落とされる。このため、上述した第2の決済パターンでも、実施の形態1の場合と同様に、ユーザの誤認による使い込み、並びにサービス提供者への代金不払いを回避することができる。
【0055】
[第3の決済パターン]
図8は、本実施形態の電子決済システムで用い得る第3の決済パターンの流れを示す。
図8において、
図6に示す決済パターンでの処理と同様の処理については、共通の番号を付してその説明を省略または簡略する。
【0056】
第3の決済パターンでは、ユーザ端末14-1で、(5)「予定給与で購入」が実行された後、時系列で以下の処理が実行される。
【0057】
(6-1)雇用関係仲介サーバ20は、予定給与から商品代金を減額する。以後、減額後の額を予定給与とする。ユーザ端末14-1には、減額後の予定給与の情報が提供される。
【0058】
(7)雇用関係仲介サーバ20は、上記(6-1)の処理と併せて、サービス提供サーバ18にサービス提供の開始を依頼する。
【0059】
(7-1)サービス提供サーバは、給与支払い代行者、つまり雇用関係仲介サーバ20に、サービス料金の支払いを請求する。
【0060】
(8)サービス提供サーバ18は、サービス開始の依頼を受け、かつ、代金の支払いが確認できたら、即座にサービスの提供を開始する。
【0061】
(10)給料日には、減額後の予定給与がユーザ口座に振り込まれる。以上の処理によれば、実施の形態1、或いは第2の決済パターンの場合と同様に、ユーザの誤認による使い込み、並びにサービス提供者への代金不払いを回避することができる。
【0062】
[その他の変形例]
ところで、上述した実施の形態1では、ユーザ端末14-1に表示する画像50に、予定給与を表示することとしている。ユーザが、給与支給日に先立って予定給与で商品を購入した場合、この画像50には、商品の購入に用いた金額を減額した金額を表示することとしてもよい。これにより、ユーザが、自由に処分できる実際の金額を把握するのを容易にすることができる。更には、減額前の金額と減額後の金額を併せて表示してもよい。この場合、ユーザは、減額後の金額だけでなく、給与として支払われる正規の額を容易に確認することができる。
【0063】
また、上述した実施の形態1では、商品の広告52がクリックされた場合に、「Pay残高で購入」と「予定給与で購入」の二つが選択肢としてユーザに提供されている。しかしながら、購入時の手順はこれに限定されるものではなく、それらの選択肢は排除してもよい。この場合、雇用関係仲介サーバ20は、ユーザにより広告52がクリックされた後、以下の処理を実行することが望ましい。
【0064】
(1)Payサーバに、時系列で以下の三つの処理を実行することを依頼する。
(1-1)ユーザのPay残高が商品の代金となるように、ユーザの口座に電子マネーを振り込む。
(1-2)上記の振り込みの完了後に、その口座から商品代金を引き落とす。
(1-3)上記の引き落としの完了をサービス提供サーバ18に連絡する。
(2)サービス提供サーバ18に、ユーザ端末14-1へのサービスの開始を依頼する。
【0065】
また、上述した実施の形態1では、画像50に、完了した未払いの労務の対価を予定給与として表示し、その額の範囲で商品の購入を認めることとしている。しかしながら、予定給与は、未確定債権の額を含む額とし、次回の給与支給日に支払いが予定されている給与の範囲で商品の購入を認めることとしてもよい。
【0066】
また、上述した実施の形態1では、ユーザに提供する商品を、デジタルコンテンツのサービスに限定しているが、本開示はこれに限定されるものではない。ユーザに提供する商品は物品であってもよい。この場合、サービス提供サーバ18は、通信販売業者が管理するものであってもよい。
【0067】
また、上述した実施の形態1では、ユーザ端末14-1に、代金が、予定給与の額、或いは既に購入した商品の代金を減額した後の予定給与の額を超えない商品の広告を表示することとしている。しかしながら、ユーザは、予定給与とは別に十分なPay残高を保有している場合があるため、予定給与等を考慮することなく、広告の対象を選別することとしてもよい。
【0068】
また、上述した実施の形態1では、雇用関係仲介サーバ20が管理する画像50の中に広告52を表示することとしているが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば、ユーザ端末14が、何らかのメッセンジャーサービスを利用している場合には、そのメッセンジャーサービスの画面内に広告を掲載することとしてもよい。
【0069】
また、上述した実施の形態1では、一度の決済で代金の支払いが完了するタイプの商品を対象としているが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば、定期的な決済が必要となるサブスクリプションタイプの商品を、取り扱いの対象としてもよい。サブスクリプションタイプの商品は、クレジットカードでの決済が求められることが多い。本開示のシステムによれば、クレジットカードを所有していないユーザが、サブスクリプションタイプの商品を利用するのを容易にすることができる。
【0070】
また、上述した実施の形態1では、ユーザの消費心理を刺激する観点から、給与支給日を待たずに、購入後即座に商品利用が可能となる運用としている。しかしながら、本開示の運用はこれに限定されるものではない。例えば、商品の利用は、購入時点ではなく給与支給日から可能となることとし、商品価格を早期割り引きとすることで、給与支給日前の購入をユーザに促すこととしてもよい。
【0071】
また、上述した実施の形態1では、雇用関係仲介サーバ20を運用する者と、サービス提供サーバ18を運用する者が同一であるか否かを明示していないが、両者は同一であっても異なっていてもよい。
【0072】
実施の形態2.
次に、
図1乃至
図4と共に
図9を参照して、本開示の実施の形態2について説明する。本実施形態の電子決済システムは、実施の形態1の場合と同様に、
図1および
図2に示すハードウェア構成により実現することができる。また、このシステムは、
図3および
図4に示す流れに沿って、雇用のマッチングと給与の支払いを行う点で実施の形態1の場合と同様である。本実施形態の電子決済システムは、給与の支払いに加えて、予定給与等を担保とするユーザへの電子マネーの貸し付けを行う点に特徴を有している。
【0073】
図9は、本実施形態において、予定給与を担保とするユーザへの貸し付けが行われるまでの流れを説明するための図である。
図9は、具体的には、(1)ユーザの就労、(2)管理者端末12からの勤務情報の提供に続いて、以下の処理が時系列で実行される様子を示している。尚、
図9において、
図4に示す処理と同様の処理については、その説明を省略または簡略する。
【0074】
(6)雇用関係仲介サーバ20は、ユーザ端末14-1に、貸し付け情報を提供する。貸し付け情報には、貸し付け可能額と、貸し付け金利が含まれる。貸し付け可能額は、完了した未払いの労務の対価、つまり確定債権に基づく予定給与を上限とすることができる。また、貸し付け可能額は、次回の給与支給日までに予定されている未完の労務に対する対価を含む予定給与に基づいて設定してもよい。また、貸し付け可能額および金利には、勤務情報に含まれる勤務態度や勤務評定、更には勤続期間等に基づく優遇措置を反映させてもよい。また、雇用関係仲介サーバ20がアクセス可能なユーザの信用に関わるスコアを、その優遇措置に反映させることとしてもよい。優遇措置が反映された貸し付け可能額は、未確定債権を含む予定給与の額を超えるものであってもよい。
【0075】
(7)ユーザは、借り入れを受けたい場合は、ユーザ端末14-1を用いて借り入れを申請する。借り入れの申請は、貸し付け情報に含まれる返済条件に従う旨の宣誓、並びに借り入れ希望額を含む。
【0076】
(8)雇用関係仲介サーバ20は、ユーザからの借り入れの申請が貸し付けの条件を満たしている場合は、Payサーバ16に対して、貸し付け希望額の振り込みを依頼する。この際、Payサーバ16には、特定の返済日までに履行されるべき返済の額が同時に伝えられる。
【0077】
(9)上記の依頼を受けたPayサーバ16は、ユーザ端末14-1が所有するユーザの口座に貸し付け希望額を入金する。以後、Payサーバ16は、給与支給日に、ユーザの口座に給与が振り込まれたら、その後即座に返済額の引き落としを行う。
【0078】
以上の処理によれば、予定給与額を参照した電子マネーの貸し付けをユーザに提供することができる。貸し付けを受けたユーザは、給与支給日に先立って、借入金による経済活動を行うことができる。このため、本実施形態の電子決済システムによれば、実施の形態1の場合と同様に、給与の支払い予定があるユーザの消費心理を、給与が現実に支払われる前から刺激することができる。
【0079】
ところで、上述した実施の形態2では、未確定債権を含む予定給与の額を超える貸し付けを認めることとしている。ここでは、貸し付けの媒体が電子マネーに限定されているが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば、実施の形態1における商品の提供を本実施形態に組み合わせて、借り入れによる高価商品の購入をユーザに可能ならしめてもよい。
【0080】
実施の形態3.
次に、
図1乃至
図4および
図9、並びに
図10を参照して、本開示の実施の形態3について説明する。本実施形態の電子決済システムは、実施の形態2の場合と同様に、
図1および
図2に示すハードウェア構成により実現することができる。また、このシステムは、
図3、
図4および
図9に示す流れに沿って、雇用のマッチング、給与の支払い、および電子マネーの貸し付けを行う点で実施の形態2の場合と同様である。本実施形態の電子決済システムは、ユーザの借り入れの状態に応じて、ユーザに適した求人情報をユーザ端末14に提供する点に特徴を有している。
【0081】
図10は、本実施形態において雇用関係仲介サーバ20が備える広告サーバ22の構成を、機能的に表したブロック図である。
図10に示す構成は、CPU24がメモリ26に格納されているプログラムに沿って処理を進めることにより実現される(
図2参照)。
【0082】
図10に示すように、広告サーバ22は、借金情報格納部60を備えている。借金情報格納部60には、雇用マッチングのサービスに登録しているユーザ夫々の借り入れ金に関する情報が格納されている。借金情報格納部60は、メモリ26の一部に設けられているが、広告サーバ22がアクセス可能な外部のメモリに設けられていてもよい。
【0083】
広告サーバ22は、求人情報格納部62を備えている。求人情報格納部62には、労務の提供を欲する様々な管理者から提供された様々な求人情報が格納されている。求人情報格納部62は、メモリ26の一部に設けられているが、広告サーバ22がアクセス可能な外部のメモリに設けられていてもよい。
【0084】
広告サーバ22は、更に、マッチング処理部64を備えている。マッチング処理部64は、借金情報格納部60および求人情報格納部62の夫々から、情報を読み出すことができる。また、マッチング処理部64は、I/F28を介してユーザ端末14と情報のやり取りをすることができる。
【0085】
マッチング処理部64では、定期的に、以下の処理が時系列で繰り返される。
(1)借金情報格納部60から、特定のユーザ(以下、「対象ユーザ」とする)の借り入れ情報を読み出す。借り入れ情報には、借り入れ金の額、滞納の有無、返済の態度、返済日などが含まれる。借り入れ情報には、対象ユーザのスキル等、業務の適正を判断するのに有用な情報が含まれていてもよい。
【0086】
(2)借り入れ情報に基づいて、対象ユーザの借り入れ金返済に適した求人条件が設定される。具体的には、時給や日給等の給与の条件、満たせる募集条件、および満たせない応募条件などが設定される。
【0087】
(3)上記(2)の処理で設定された求人条件に基づいて、求人情報格納部62の情報が検索される。その結果、設定条件に適合する求人情報がマッチング処理部64に提供される。
【0088】
(4)上記(3)で提供された求人情報の広告が、I/F28を介して対象ユーザのユーザ端末14に提供される。以後、対象ユーザを変えて、上記(1)~(4)の処理が繰り返される。
【0089】
以上の処理によれば、多額の借り入れ金を抱えているユーザには、高額の給与が見込める仕事を紹介することができる。また、借り入れ額がさほど多くないユーザ、或いは借り入れ金の無いユーザには、給与の制限を外して、例えば、個々のユーザの嗜好に合った仕事を紹介することができる。このように、本実施形態の電子決済システムによれば、借り入れ金の状態を考慮することで、ユーザのニーズに適合した適切な仕事を効率的に紹介することができる。また、返済日の情報を用いて広告を提供すれば、返済日に間に合うように給与を受け取れる仕事を選び出すのが容易になるというメリットをユーザに提供することができる。
【0090】
ところで、上述した実施の形態3では、広告サーバ22が、ユーザに対してプッシュ通知の手法で求人広告を提供することとしているが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば、ユーザからの求めに応じて、そのユーザに適した求人広告をユーザ端末14に提供することとしてもよい。また、各制御の時系列や順番はあくまで一例であり、矛盾が生じない範囲においてそれらは前後してもよいし、また、同時に実行されてもよい。
【0091】
尚、上述した実施の形態1乃至3、並びにそれらの変形例は、本開示の一態様を夫々例示したものであり、それらの実施形態および変形例は、矛盾しない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0092】
12 管理者端末
14、14-1 ユーザ端末
16 Payサーバ16
18 サービス提供サーバ
20 雇用関係仲介サーバ
22 広告サーバ
24、32、40 プロセッサユニット(CPU)
26、34、42 メモリ
30 勤怠管理サーバ
38 給与管理サーバ
50、54 画像
52 広告