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特開2023-138867筋ジストロフィーを処置するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138867
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】筋ジストロフィーを処置するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7088 20060101AFI20230922BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230922BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230922BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230922BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20230922BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20230922BHJP
【FI】
A61K31/7088
A61P21/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K47/04
C12N15/113 Z ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023131995
(22)【出願日】2023-08-14
(62)【分割の表示】P 2020511299の分割
【原出願日】2018-08-31
(31)【優先権主張番号】62/553,094
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/565,824
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/725,129
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501237039
【氏名又は名称】サレプタ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】エドワード エム. ケイ
(57)【要約】
【課題】筋ジストロフィーを処置するための方法の提供。
【解決手段】本開示は、特に、筋ジストロフィーを処置するための改善された組成物及び方法を提供する。例えば、本開示は、有効量のゴロディルセンを投与することによって、エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有するデュシェンヌ型筋ジストロフィー患者を処置するための方法を提供する。本開示は、少なくとも部分的に、エクソン53スキッピングアンチセンスオリゴヌクレオチドであるゴロディルセン(golodirsen)による処置によって、患者のジストロフィンタンパク質がベースラインを超えて著しく増大されたことを示す臨床的証拠に基づく。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、患者の筋ジストロフィーを処置するための改善された方法に関する。また、ヒトジストロフィン遺伝子におけるエクソン53スキッピングを促進するのに適した組成物も提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
様々な遺伝性疾患において、遺伝子の最終的な発現に対する突然変異の効果は、スプライシングプロセスの間に標的エクソンのスキッピングプロセスを介して調節することができる。正常機能性タンパク質がその中の突然変異のために早期に終結する場合、アンチセンス技術によっていくつかの機能性タンパク質の産生を回復させるための手段が、スプライシングプロセスの間の介入によって可能であることが示されており、そして疾患を引き起こす突然変異に関連するエクソンをいくつかの遺伝子から特異的に欠失させることができれば、天然タンパク質と同様の生物学的特性を有するか、又はエクソンに関連する突然変異によって引き起こされる疾患を改善するのに十分な生物活性を有する短縮タンパク質産物が時折産生され得る(例えば、Sierakowska,Sambade et al.1996;Wilton,Lloyd et al.1999;van Deutekom,Bremmer-Bout et al.2001;Lu,Mann et al.2003;Aartsma-Rus,Janson et al.2004を参照)。
【0003】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、タンパク質ジストロフィンの発現の欠陥によって引き起こされる。ジストロフィンは棒状の細胞質タンパク質であり、細胞膜を介して筋線維の細胞骨格と周囲の細胞外マトリックスとを接続するタンパク質複合体の極めて重要な部分である。ジストロフィンは筋線維内で重要な構造的役割を果たし、細胞外マトリックス及び細胞骨格を接続する。N末端領域はアクチンに結合するが、C末端はジストロフィン糖タンパク質複合体(DGC)の一部であり、筋細胞膜に及ぶ。mdxマウスのジストロフィン欠損筋線維は、収縮で誘発される筋細胞膜破裂に対して増大された感受性を提示することが示されている(Petrof et al.1993;Cirak
et al.2012を参照)。
【0004】
上記タンパク質をコードする遺伝子は、DNAの2百万を超えるヌクレオチドにわたって広がる79のエクソンを含有する。エクソンのリーディングフレームを変化させるか、或いは終止コドンを導入するか、或いは全アウトオブフレームエクソンの除去、又は1つ若しくは複数のエクソンの重複を特徴とする、任意のエクソン突然変異は、機能性ジストロフィンの産生を妨害して、DMDをもたらす可能性を有する。
【0005】
疾患発症は、出生時にクレアチンキナーゼレベルの上昇で実証することができ、生後1年以内に著しい運動障害がみられる可能性がある。7歳又は8歳までに、ほとんどのDMD患者は歩行が次第に困難になり、床から立ち上がる、及び階段を上る能力を失っていき、10歳~14歳までに大多数は車椅子に依存する。DMDは一律に致死的であり、罹患者は、通常、10代後半又は20代前半に呼吸不全及び/又は心不全が原因で死亡する。DMDの連続的な進行は疾患の全ての段階で治療的介入を可能にするが、処置は現在のところグルココルチコイドに限られており、これは、体重増加、行動変化、思春期変化、骨粗鬆症、クッシング様顔貌、成長阻害、及び白内障を含む多数の副作用に関連する。結果的に、この疾患の根本原因を処置するためのより良好な治療法を開発することが不可欠である。
【0006】
筋ジストロフィーのより低重症度の形態であるベッカー型筋ジストロフィー(BMD)は、突然変異、通常は1つ又は複数のエクソンの欠失が、全ジストロフィン転写物に沿って正しいリーディングフレームをもたらし、その結果、mRNAのタンパク質への翻訳が早期に終結しない場合に起こることが分かっている。突然変異したジストロフィンプレmRNAのプロセシングにおける上流及び下流のエクソンの連結によって遺伝子の正しいリーディングフレームが維持されれば、その結果は、いくらかの活性を保持する短い内部欠失を有するタンパク質をコードするmRNAであり、ベッカー表現型が生じる。
【0007】
長年、ジストロフィンタンパク質のリーディングフレームを変化させないエクソンの欠失はBMD表現型を引き起こし得るが、フレームシフトを生じるエクソン欠失はDMDを引き起こし得ることが知られている(Monaco,Bertelson et al.1988)。一般に、リーディングフレームを変化させ、したがって適切なタンパク質翻訳を妨害する点突然変異及びエクソン欠失を含むジストロフィン突然変異は、DMDをもたらす。また、一部のBMD及びDMD患者が、複数のエクソンをカバーするエクソン欠失を有することにも注意すべきである。
【0008】
DMDの処置のためのスプライススイッチングオリゴヌクレオチド(SSO)の安全性及び効力を試験する最近の臨床治験は、スプライソソームの立体的遮断によってプレmRNAの選択的スプライシングを誘発するためのSSO技術に基づいている(Cirak et al.,2011;Goemans et al.,2011;Kinali et al.,2009;van Deutekom et al.,2007)。しかしながら、これらの成功にもかかわらず、DMDの処置に利用可能な薬理学的な選択肢は限られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、患者においてジストロフィンを産生するため、並びにDMD及びBMDなどの筋ジストロフィーを処置するために、改善された組成物及び方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要旨
本開示は、少なくとも部分的に、エクソン53スキッピングアンチセンスオリゴヌクレオチドであるゴロディルセン(golodirsen)による処置によって、患者のジストロフィンタンパク質がベースラインを超えて著しく増大されたことを示す臨床的証拠に基づく。さらに、エクソンスキッピングと、新規のジストロフィンタンパク質との間の正の相関関係が観察された。
【0011】
したがって、いくつかの態様では、本開示は、エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有する、それを必要としている患者において、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を処置するための方法であって、ある用量のゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む方法を提供する。
【0012】
いくつかの態様では、本開示は、エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有する、それを必要としているデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者において、mRNAリーディングフレームを回復させてエクソンスキッピングを誘発するための方法であって、ある用量のゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む方法を提供する。
【0013】
いくつかの態様では、本開示は、エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有する、それを必要としているデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者において、ジストロフィン産生を増大させるための方法であって、ある用量のゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む方法を提供する。
【0014】
いくつかの態様では、用量は、患者の体重当たり、4mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、又は50mg/kgの投与量で投与される。
【0015】
いくつかの態様では、用量は単一用量として投与される。いくつかの態様では、用量は週1回投与される。いくつかの態様では、用量は静脈内に投与される。いくつかの態様では、用量は点滴により静脈内に投与される。いくつかの態様では、用量は35~60分間にわたって点滴により静脈内に投与される。いくつかの態様では、用量は皮下注射により静脈内に投与される。
【0016】
いくつかの態様では、患者は40歳まで、30歳まで、又は21歳までである。いくつかの態様では、患者は1歳~21歳である。いくつかの態様では、患者は5歳~21歳である。いくつかの態様では、患者は6歳~15歳である。
【0017】
いくつかの態様では、本開示は前述又は関連の態様のいずれかに従う方法を提供し、ここで、患者は、エクソン3~52、4~52、5~52、6~52、9~52、10~52、11~52、13~52、14~52、15~52、16~52、17~52、19~52、21~52、23~52、24~52、25~52、26~52、27~52、28~52、29~52、30~52、31~52、32~52、33~52、34~52、35~52、36~52、37~52、38~52、39~52、40~52、41~52、43~52、42~52、45~52、47~52、48~52、49~52、50~52、54~58、54~61、54~63、54~64、54~66、54~76、54~77、及びエクソン52を含む群から選択されるDMD遺伝子の突然変異を有する。
【0018】
いくつかの態様では、本開示は前述又は関連の態様のいずれかに従う方法を提供し、ここで、患者は、ゴロディルセンを慢性的に投与される。いくつかの態様では、患者は、少なくとも48週間ゴロディルセンを投与される、いくつかの態様では、患者は、1年を超えて、2年を超えて、3年を超えて、4年を超えて、5年を超えて、10年を超えて、20年を超えて、又は30年を超えてゴロディルセンを投与される。
【0019】
いくつかの態様では、本開示は前述又は関連の態様のいずれかに従う方法を提供し、ここで、患者は、ゴロディルセンの投与の前に少なくとも6か月間、副腎皮質ステロイドを安定して投与されている。いくつかの態様では、患者は、ゴロディルセンの投与の前に少なくとも6か月間、副腎皮質ステロイドを安定して投与されており、ゴロディルセンの投与の間も副腎皮質ステロイドが続けられる。
【0020】
いくつかの態様では、本開示は前述又は関連の態様のいずれかに従う方法を提供し、ここで、ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩は医薬組成物として製剤化される。いくつかの態様では、ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩は、50mg/mLの濃度を有する医薬組成物として製剤化される。いくつかの態様では、ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩は50mg/mLの濃度を有する医薬組成物として製剤化され、100mg/2mLの剤形で提示される。いくつかの態様では、ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩は50mg/mLの濃度を有する医薬組成物として製剤化され、500mg/2mLの剤形で提示される。いくつかの態様では、剤形は使い捨てバイアル中に含有される。
【0021】
いくつかの態様では、ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩は、ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物として製剤化される。いくつかの態様では、薬学的に許容される担体はリン酸緩衝溶液である。
【0022】
いくつかの態様では、本開示は前述又は関連の態様のいずれかに従う方法を提供し、ここで、エクソンスキッピングは、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって測定される。
【0023】
いくつかの態様では、本開示は前述又は関連の態様のいずれかに従う方法を提供し、本方法は、患者のジストロフィン産生を増大させる。いくつかの態様では、ジストロフィン産生は、ウエスタンブロット分析によって測定される。いくつかの態様では、ジストロフィン産生は、免疫組織化学(IHC)によって測定される。
【0024】
いくつかの態様では、本開示は前述又は関連の態様のいずれかに従う方法を提供し、本方法は、ゴロディルセンを投与する前に、患者がエクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有することを確認することをさらに含む。
【0025】
いくつかの態様では、本開示は、それを必要としている患者において、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の処置に使用するためのゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩を提供し、患者は、エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有し、ここで、処置は、30mg/kgの単回静脈内用量のエテプリルセンを患者に週1回投与することを含む。
【0026】
いくつかの態様では、本開示は、それを必要としているデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者において、mRNAリーディングフレームを回復させてエクソンスキッピングを誘発するのに使用するためのゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩を提供し、患者は、エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有し、ここで、処置は、30mg/kgの単回静脈内用量のエテプリルセンを患者に週1回投与することを含む。
【0027】
いくつかの態様では、本開示は、それを必要としているデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者において、ジストロフィン産生を増大させるのに使用するためのゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩を提供し、患者は、エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有し、ここで、処置は、30mg/kgの単回静脈内用量のエテプリルセンを患者に週1回投与することを含む。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有する、それを必要としている患者において、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を処置するための方法であって、ある用量のゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩を前記患者に投与することを含む方法。
(項目2)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり4mgの投与量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり10mgの投与量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり20mgの投与量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり30mgの投与量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり40mgの投与量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり50mgの投与量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記用量が単一用量として投与される、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記用量が週1回投与される、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記用量が静脈内に投与される、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記用量が点滴により静脈内に投与される、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記用量が35~60分間にわたって点滴により静脈内に投与される、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記用量が皮下注射により静脈内に投与される、項目8に記載の方法。
(項目14)
前記患者が40歳までである、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記患者が30歳までである、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記患者が21歳までである、項目1~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記患者が1歳~21歳である、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記患者が5歳~21歳である、項目1~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記患者が6歳~15歳である、項目1~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記患者が、エクソン3~52、4~52、5~52、6~52、9~52、10~52、11~52、13~52、14~52、15~52、16~52、17~52、19~52、21~52、23~52、24~52、25~52、26~52、27~52、28~52、29~52、30~52、31~52、32~52、33~52、34~52、35~52、36~52、37~52、38~52、39~52、40~52、41~52、43~52、42~52、45~52、47~52、48~52、49~52、50~52、54~58、54~61、54~63、54~64、54~66、54~76、54~77、及びエクソン52からなる群から選択されるDMD遺伝子の突然変異を有する、項目1~19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記患者がゴロディルセンを慢性的に投与される、項目1~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記患者が少なくとも48週間ゴロディルセンを投与される、項目1~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記患者が1年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記患者が2年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記患者が3年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記患者が4年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記患者が5年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記患者が10年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記患者が20年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記患者が30年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記患者が、ゴロディルセンの投与の前に少なくとも6か月間、副腎皮質ステロイドを安定して投与されている、項目1~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記患者が、ゴロディルセンの投与の前に少なくとも6か月間、副腎皮質ステロイドを安定して投与されており、ゴロディルセンの投与の間も副腎皮質ステロイドが続けられる、項目1~31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が医薬組成物として製剤化される、項目1~32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が医薬組成物として製剤化される、項目1~33のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が、50mg/mLの濃度を有する医薬組成物として製剤化される、項目1~34のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が50mg/mLの濃度を有する医薬組成物として製剤化され、100mg/2mLの剤形で提示される、項目33に記載の方法。
(項目37)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が50mg/mLの濃度を有しており、500mg/2mLの剤形で提示される、項目33に記載の方法。
(項目38)
前記剤形が使い捨てバイアル中に含有される、項目35又は36に記載の方法。
(項目39)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が、ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物として製剤化される、項目33~37のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記薬学的に許容される担体がリン酸緩衝溶液である、項目38に記載の方法。
(項目41)
エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有する、それを必要としているデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者において、エクソンスキッピングを誘発するために、mRNAリーディングフレームを回復させる方法であって、ある用量のゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩を前記患者に投与することを含む方法。
(項目42)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり4mgの投与量で投与される、項目40に記載の方法。
(項目43)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり10mgの投与量で投与される、項目40に記載の方法。
(項目44)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり20mgの投与量で投与される、項目40に記載の方法。
(項目45)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり30mgの投与量で投与される、項目40に記載の方法。
(項目46)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり40mgの投与量で投与される、項目40に記載の方法。
(項目47)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり50mgの投与量で投与される、項目40に記載の方法。
(項目48)
前記用量が単一用量として投与される、項目40~46のいずれか一項に記載の方法。(項目49)
前記用量が週1回投与される、項目40~47のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
前記用量が静脈内に投与される、項目40~48のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記用量が点滴により静脈内に投与される、項目49に記載の方法。
(項目52)
前記用量が35~60分間にわたって点滴により静脈内に投与される、項目50に記載の方法。
(項目53)
前記用量が皮下注射により静脈内に投与される、項目47に記載の方法。
(項目54)
前記患者が40歳までである、項目1~53のいずれか一項に記載の方法。
(項目55)
前記患者が30歳までである、項目1~54のいずれか一項に記載の方法。
(項目56)
前記患者が21歳までである、項目1~55のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
前記患者が1歳~21歳である、項目1~56のいずれか一項に記載の方法。
(項目58)
前記患者が5歳~21歳である、項目1~57のいずれか一項に記載の方法。
(項目59)
前記患者が6歳~15歳である、項目1~58のいずれか一項に記載の方法。
(項目60)
前記患者が、エクソン3~52、4~52、5~52、6~52、9~52、10~52、11~52、13~52、14~52、15~52、16~52、17~52、19~52、21~52、23~52、24~52、25~52、26~52、27~52、28~52、29~52、30~52、31~52、32~52、33~52、34~52、35~52、36~52、37~52、38~52、39~52、40~52、41~52、43~52、42~52、45~52、47~52、48~52、49~52、50~52、54~58、54~61、54~63、54~64、54~66、54~76、54~77、及びエクソン52からなる群から選択されるDMD遺伝子の突然変異を有する、項目1~59のいずれか一項に記載の方法。
(項目61)
前記患者がゴロディルセンを慢性的に投与される、項目1~60のいずれか一項に記載の方法。
(項目62)
前記患者が少なくとも48週間ゴロディルセンを投与される、項目1~61のいずれか一項に記載の方法。
(項目63)
前記患者が1年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~62のいずれか一項に記載の方法。
(項目64)
前記患者が2年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~63のいずれか一項に記載の方法。
(項目65)
前記患者が3年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~64のいずれか一項に記載の方法。
(項目66)
前記患者が4年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~65のいずれか一項に記載の方法。
(項目67)
前記患者が5年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~66のいずれか一項に記載の方法。
(項目68)
前記患者が10年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~67のいずれか一項に記載の方法。
(項目69)
前記患者が20年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~68のいずれか一項に記載の方法。
(項目70)
前記患者が30年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~69のいずれか一項に記載の方法。
(項目71)
前記患者が、ゴロディルセンの投与の前に少なくとも6か月間、副腎皮質ステロイドを安定して投与されている、項目1~70のいずれか一項に記載の方法。
(項目72)
前記患者が、ゴロディルセンの投与の前に少なくとも6か月間、副腎皮質ステロイドを安定して投与されており、ゴロディルセンの投与の間も副腎皮質ステロイドが続けられる、項目1~71のいずれか一項に記載の方法。
(項目73)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が医薬組成物として製剤化される、項目1~72のいずれか一項に記載の方法。
(項目74)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が医薬組成物として製剤化される、項目1~73のいずれか一項に記載の方法。
(項目75)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が、50mg/mLの濃度を有する医薬組成物として製剤化される、項目1~74のいずれか一項に記載の方法。
(項目76)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が50mg/mLの濃度を有する医薬組成物として製剤化され、100mg/2mLの剤形で提示される、項目72に記載の方法。
(項目77)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が50mg/mLの濃度を有しており、500mg/2mLの剤形で提示される、項目72に記載の方法。
(項目78)
前記剤形が使い捨てバイアル中に含有される、項目74又は75に記載の方法。
(項目79)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が、ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物として製剤化される、項目72~76のいずれか一項に記載の方法。
(項目80)
前記薬学的に許容される担体がリン酸緩衝溶液である、項目77に記載の方法。
(項目81)
エクソンスキッピングが逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって測定される、項目40~78のいずれか一項に記載の方法。
(項目82)
前記方法が、前記患者のジストロフィン産生を増大させる、項目1~79のいずれか一項に記載の方法。
(項目83)
前記ジストロフィン産生がウエスタンブロット分析によって測定される、項目80に記載の方法。
(項目84)
前記ジストロフィン産生が免疫組織化学(IHC)によって測定される、項目80に記載の方法。
(項目85)
エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有する、それを必要としているデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者において、ジストロフィン産生を増大させるための方法であって、ある用量のゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩を前記患者に投与することを含む方法。
(項目86)
前記用量が体重1kg当たり4mgの投与量で投与される、項目80に記載の方法。
(項目87)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり10mgの投与量で投与される、項目80に記載の方法。
(項目88)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり20mgの投与量で投与される、項目80に記載の方法。
(項目89)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり30mgの投与量で投与される、項目80に記載の方法。
(項目90)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり40mgの投与量で投与される、項目80に記載の方法。
(項目91)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり50mgの投与量で投与される、項目80に記載の方法。
(項目92)
前記用量が単一用量として投与される、項目80~86のいずれか一項に記載の方法。
(項目93)
前記用量が週1回投与される、項目80~87のいずれか一項に記載の方法。
(項目94)
前記用量が静脈内に投与される、項目80~88のいずれか一項に記載の方法。
(項目95)
前記用量が点滴により静脈内に投与される、項目89に記載の方法。
(項目96)
前記用量が35~60分間にわたって点滴により静脈内に投与される、項目90に記載の方法。
(項目97)
前記用量が皮下注射により静脈内に投与される、項目89に記載の方法。
(項目98)
前記患者が40歳までである、項目1~97のいずれか一項に記載の方法。
(項目99)
前記患者が30歳までである、項目1~98のいずれか一項に記載の方法。
(項目100)
前記患者が21歳までである、項目1~99のいずれか一項に記載の方法。
(項目101)
前記患者が1歳~21歳である、項目1~100のいずれか一項に記載の方法。
(項目102)
前記患者が5歳~21歳である、項目1~101のいずれか一項に記載の方法。
(項目103)
前記患者が6歳~15歳である、項目1~102のいずれか一項に記載の方法。
(項目104)
前記患者が、エクソン3~52、4~52、5~52、6~52、9~52、10~52、11~52、13~52、14~52、15~52、16~52、17~52、19~52、21~52、23~52、24~52、25~52、26~52、27~52、28~52、29~52、30~52、31~52、32~52、33~52、34~52、35~52、36~52、37~52、38~52、39~52、40~52、41~52、43~52、42~52、45~52、47~52、48~52、49~52、50~52、54~58、54~61、54~63、54~64、54~66、54~76、54~77、及びエクソン52からなる群から選択されるDMD遺伝子の突然変異を有する、項目1~103のいずれか一項に記載の方法。
(項目105)
前記患者がゴロディルセンを慢性的に投与される、項目1~104のいずれか一項に記載の方法。
(項目106)
前記患者が少なくとも48週間ゴロディルセンを投与される、項目1~105のいずれか一項に記載の方法。
(項目107)
前記患者が1年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~106のいずれか一項に記載の方法。
(項目108)
前記患者が2年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~107のいずれか一項に記載の方法。
(項目109)
前記患者が3年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~108のいずれか一項に記載の方法。
(項目110)
前記患者が4年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~109のいずれか一項に記載の方法。
(項目111)
前記患者が5年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~110のいずれか一項に記載の方法。
(項目112)
前記患者が10年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~111のいずれか一項に記載の方法。
(項目113)
前記患者が20年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~112のいずれか一項に記載の方法。
(項目114)
前記患者が30年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~113のいずれか一項に記載の方法。
(項目115)
前記患者が、ゴロディルセンの投与の前に少なくとも6か月間、副腎皮質ステロイドを安定して投与されている、項目1~114のいずれか一項に記載の方法。
(項目116)
前記患者が、ゴロディルセンの投与の前に少なくとも6か月間、副腎皮質ステロイドを安定して投与されており、ゴロディルセンの投与の間も副腎皮質ステロイドが続けられる、項目1~115のいずれか一項に記載の方法。
(項目117)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が医薬組成物として製剤化される、項目1~116のいずれか一項に記載の方法。
(項目118)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が医薬組成物として製剤化される、項目1~117のいずれか一項に記載の方法。
(項目119)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が、50mg/mLの濃度を有する医薬組成物として製剤化される、項目1~118のいずれか一項に記載の方法。
(項目120)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が50mg/mLの濃度を有する医薬組成物として製剤化され、100mg/2mLの剤形で提示される、項目113に記載の方法。
(項目121)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が50mg/mLの濃度を有しており、500mg/2mLの剤形で提示される、項目113に記載の方法。
(項目122)
前記剤形が使い捨てバイアル中に含有される、項目112又は113に記載の方法。
(項目123)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が、ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物として製剤化される、項目111~116のいずれか一項に記載の方法。
(項目124)
前記薬学的に許容される担体がリン酸緩衝溶液である、項目117に記載の方法。
(項目125)
前記ジストロフィン産生がウエスタンブロット分析によって測定される、項目80~118のいずれか一項に記載の方法。
(項目126)
前記ジストロフィン産生が免疫組織化学(IHC)によって測定される、項目80~118のいずれか一項に記載の方法。
(項目127)
ゴロディルセンを投与する前に、前記患者がエクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有することを確認することをさらに含む、項目1~126のいずれか一項に記載の方法。
(項目128)
それを必要としている患者において、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の処置に使用するためのゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩であって、前記患者が、エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有し、前記処置が、30mg/kgの単回静脈内用量のエテプリルセンを前記患者に週1回投与することを含む、ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩。
(項目129)
それを必要としているデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者において、mRNAリーディングフレームを回復させてエクソンスキッピングを誘発するのに使用するためのゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩であって、前記患者が、エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有し、前記処置が、30mg/kgの単回静脈内用量のエテプリルセンを前記患者に週1回投与することを含む、ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩。
(項目130)
それを必要としているデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者において、ジストロフィン産生を増大させるのに使用するためのゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩であって、前記患者が、エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有し、前記処置が、30mg/kgの単回静脈内用量のエテプリルセンを前記患者に週1回投与することを含む、ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】DMD患者の試験設計におけるSRP-4053の第I/II相試験のフローチャートの概要である。
【
図2】上記試験の25人の患者のそれぞれについて、RT-PCRデータ(ベースライン及びSRP-4053処置の48週間後)を示す。
【
図3】上記試験の25人の患者のそれぞれについて、ウエスタンブロットデータ(ベースライン及びSRP-4053処置の48週間後)を示す。
【
図4A】全筋線維を示すためにラミニンについて染色された、ベースライン及びオントリートメント(on-treatment)における単一の患者(実施例1)からの筋生検の蛍光免疫染色を示す。
【
図4B】ジストロフィンについて染色された、
図4Aからの筋生検のセクション(1~3)の蛍光免疫染色を示す。
【
図5A】全筋線維を示すためにラミニンについて染色された、ベースライン及びオントリートメントにおける単一の患者(実施例2)からの筋生検の蛍光免疫染色を示す。
【
図5B】ジストロフィンについて染色された、
図5Aからの筋生検のセクション(1~3)の蛍光免疫染色を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
本開示の実施形態は、ヒトジストロフィン遺伝子においてエクソン53スキッピングを誘発するように特別に設計されたアンチセンスオリゴヌクレオチドであるゴロディルセンを投与することによって、DMDなどの筋ジストロフィーを処置するための方法に関する。ジストロフィンは筋機能において極めて重要な役割を果たし、種々の筋肉関連疾患は、この遺伝子の突然変異型を特徴とする。したがって、特定の実施形態では、本明細書に記載される方法は、DMDにおいて見出される突然変異したジストロフィン遺伝子などの突然変異型ヒトジストロフィン遺伝子においてエクソン53スキッピングを誘発するために使用され得る。
【0030】
したがって、本開示は、患者においてエクソン53スキッピングを誘発することによって、DMDなどの筋ジストロフィーを処置するための方法に関する。さらに、本開示は、DMD患者においてmRNAリーディングフレームを回復させてエクソンスキッピングを誘発するための方法に関する。また本開示は、DMD患者においてジストロフィン産生を増大させるための方法にも関する。
【0031】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の実施又は試験において本明細書に記載されるものと同様又は同等の任意の方法及び材料を使用することができるが、好ましい方法及び材料が記載される。本発明の目的のために、次の用語は以下で定義される。
【0032】
I.定義
「約」とは、基準の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量又は長さに対して30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1%ほど変動する、数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量又は長さを意味する。
【0033】
対象又は患者に関して本明細書で使用される「エクソン53スキッピングに適している」は、ジストロフィン遺伝子のエクソン53のスキッピングがなければリーディングフレームのフレームがずれ、それによりプレmRNAの翻訳が妨害され、対象又は患者がジストロフィンを産生することができなくなる、ジストロフィン遺伝子の1つ又は複数の突然変異を有する対象及び患者を含むことが意図される。ジストロフィン遺伝子の以下のエクソンの突然変異の非限定的な例はエクソン53スキッピングに適しており、例えば、エクソン3~52、4~52、5~52、6~52、9~52、10~52、11~52、13~52、14~52、15~52、16~52、17~52、19~52、21~52、23~52、24~52、25~52、26~52、27~52、28~52、29~52、30~52、31~52、32~52、33~52、34~52、35~52、36~52、37~52、38~52、39~52、40~52、41~52、43~52、42~52、45~52、47~52、48~52、49~52、50~52、54~58、54~61、54~63、54~64、54~66、54~76、54~77、又はエクソン52の欠失が含まれる。エクソンスキッピングに適しているジストロフィン遺伝子の突然変異を患者が有するかどうかの決定は、十分に当業者の範囲内である(例えば、Aartsma-Rus et al.(2009)Hum Mutat.30:293-299、Gurvich et al.,Hum Mutat.2009;30(4)633-640、及びFletcher et al.(2010)Molecular Therapy 18(6)1218-1223を参照)。
【0034】
「アンチセンスオリゴマー」及び「アンチセンス化合物」及び「アンチセンスオリゴヌクレオチド」及び「オリゴマー」及び「オリゴヌクレオチド」という用語は本開示では互換的に使用され、サブユニット間結合によって連結された一連の環状サブユニットを指し、各環状サブユニットは、(i)リボース糖又はその誘導体と、(ii)塩基対形成部分の順序がワトソン・クリック塩基対合によって核酸(通常、RNA)内の標的配列に相補的な塩基配列を形成して、標的配列内に核酸:オリゴマーヘテロ二本鎖を形成するように、それに結合した塩基対形成部分とからなる。特定の実施形態では、オリゴマーはPMOである。他の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは2’-O-メチルホスホロチオアートである。他の実施形態では、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、又は2’-O,4’-C-エチレン架橋核酸(ENA)などの架橋核酸(BNA)である。
【0035】
「相補的」及び「相補性」という用語は、ワトソン・クリック塩基対形成の法則によって互いに関連する2つ以上のオリゴマー(すなわち、それぞれが核酸塩基配列を含む)を指す。例えば、核酸塩基配列「T-G-A(5’→3’)」は、核酸塩基配列「A-C-T(3’→5’)」に対して相補的である。相補性は「部分的」でもよく、この場合、所与の核酸塩基配列の全部よりも少ない核酸塩基が塩基対合の規則にしたがって他の核酸塩基配列とマッチする。例えば、いくつかの実施形態では、所与の核酸塩基配列と他の核酸塩基配列との間の相補性は、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%又は約95%であり得る。或いは、例を続けるために、所与の核酸塩基配列と他の核酸塩基配列との間に、「完全」又は「完璧」な(100%の)相補性が存在してもよい。核酸塩基配列間の相補性の度合いは、配列間のハイブリダイゼーションの効率及び強度に対して著しい効果を有する。
【0036】
「ジストロフィン」は棒状の細胞質タンパク質であり、細胞膜を介して筋線維の細胞骨格と周囲の細胞外マトリックスとを接続するタンパク質複合体の極めて重要な部分である。ジストロフィンは複数の機能ドメインを含有する。例えば、ジストロフィンは、アミノ酸14~240付近にアクチン結合ドメインを含有し、アミノ酸253~3040付近に中央ロッドドメインを含有する。この大きい中央ドメインは、約109のアミノ酸の24のスペクトリン様三重らせんエレメントによって形成され、これは、アルファ-アクチニン及びスペクトリンとの相同性を有する。リピートは、通常、ヒンジ領域とも呼ばれる4つのプロリンに富んだ非リピートセグメントによって中断される。リピート15及び16は、ジストロフィンのタンパク質分解性切断のための主要部位を提供すると思われる18アミノ酸のストレッチによって分離されている。大部分のリピート間の配列同一性は、10~25%の範囲である。1つのリピートは、3つのアルファ-ヘリックス:1、2及び3を含有する。アルファ-ヘリックス1及び3はそれぞれ7つのヘリックスターンによって形成され、恐らく、疎水性界面を介してコイルドコイルとして相互作用する。アルファ-ヘリックス2はより複雑な構造を有し、グリシン又はプロリン残基により分離された4つ及び3つのヘリックスターンのセグメントによって形成される。各リピートは、通常アルファ-ヘリックス2の最初の部分におけるアミノ酸47と48との間のイントロンにより中断された2つのエクソンによってコードされる。他のイントロンは、リピート内の異なる位置において見出され、通常、ヘリックス-3にわたって点在する。またジストロフィンは、ほぼアミノ酸3080~3360に、粘菌(ディクチオステリウム・ディスコイデウム(Dictyostelium discoideum))アルファ-アクチニンのC末端ドメインとの相同性を示す、システインに富んだセグメント(すなわち、280のアミノ酸中の15のシステイン)を含む、システインに富んだドメインも含有する。カルボキシ末端ドメインは、ほぼアミノ酸3361~3685にある。
【0037】
ジストロフィンのアミノ末端はF-アクチンに結合し、カルボキシ末端は筋細胞膜においてジストロフィン関連タンパク質複合体(DAPC)に結合する。DAPCは、ジストログリカン、サルコグリカン、インテグリン及びカベオリンを含み、これらの成分のいずれかにおける突然変異は、常染色体によって遺伝する筋ジストロフィーを引き起こす。ジストロフィンが存在しないときにDAPCは不安定化しており、これは、メンバータンパク質のレベルの減少をもたらし、次には、進行性の線維損傷及び膜漏出を引き起こす。デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)及びベッカー型筋ジストロフィー(BMD)などの筋ジストロフィーの種々の形態において、筋細胞は、主として、不正確なスプライシングをもたらす遺伝子配列の突然変異のために、変化した機能的に欠陥のある形態のジストロフィンを産生するか、又はジストロフィンを全く産生しない。欠陥のあるジストロフィンタンパク質の優勢な発現、又はジストロフィン若しくはジストロフィン様タンパク質の完全な欠乏は、上記のように、筋変性の急速な進行をもたらす。これに関して、「欠陥のある」ジストロフィンタンパク質は、当該技術分野において知られているようにDMD又はBMDを有する特定の対象において産生されるジストロフィンの形態によって、又は検出可能なジストロフィンが存在しないことによって特徴付けることができる。
【0038】
「エクソン」は、タンパク質をコードする画定されたセクション、又はプレプロセシングされた(pre-processed)(又は前駆体)RNAのいずれかの部分がスプライシングによって除去された後に成熟形態のRNA分子において表される核酸配列を指す。成熟RNA分子は、メッセンジャーRNA(mRNA)、又はrRNA又はtRNAなどの非コードRNAの機能形態であり得る。ヒトジストロフィン遺伝子は、約79のエクソンを有する。
【0039】
「イントロン」は、タンパク質に翻訳されない核酸領域(遺伝子内)を指す。イントロンは、前駆体mRNA(プレmRNA)に翻訳され、続いて成熟RNAの形成の間にスプライシングにより除去される非コードセクションである。
【0040】
「有効量」又は「治療的に有効な量」は、単一用量として、又は一連の用量の一部として哺乳類対象に投与され、所望の治療効果を生じさせるのに有効なアンチセンスオリゴマー(例えば、ゴロディルセンを含む)などの治療化合物の量を指す。アンチセンスオリゴマーの場合、この効果は、選択された標的配列の翻訳又は天然のスプライス-プロセシングの阻害、又はエクソンスキッピングにより、ジストロフィンの産生を増大させることによってもたらすことができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、有効量は、対象を処置するためにある期間にわたって少なくとも約4mg/kg、少なくとも10mg/kg又は少なくとも20mg/kgのアンチセンスオリゴマー又はアンチセンスオリゴマーを含む組成物である。いくつかの実施形態では、対象においてジストロフィン陽性線維の数を増大させるために、有効量は、少なくとも約4mg/kg、少なくとも10mg/kg又は少なくとも20mg/kgのアンチセンスオリゴマー又はアンチセンスオリゴマーを含む組成物である。種々の実施形態では、有効量は、少なくとも約4mg/kg、少なくとも10mg/kg~約20mg/kg、20mg/kg~約30mg/kg、約25mg/kg~約30mg/kg、又は約30mg/kg~約50mg/kgである。いくつかの実施形態では、有効量は約30mg/kg又は約50mg/kgである。
【0042】
種々の実施形態では、対象におけるジストロフィンの産生を増大させるために、有効量は、少なくとも約4mg/kg、少なくとも10mg/kg又は少なくとも20mg/kgのアンチセンスオリゴマー又はアンチセンスオリゴマーを含む組成物である。種々の実施形態では、有効量は、少なくとも約4mg/kg、少なくとも10mg/kg~約20mg/kg、20mg/kg~約30mg/kg、約25mg/kg~約30mg/kg、又は約30mg/kg~約50mg/kgである。いくつかの実施形態では、有効量は約30mg/kg又は約50mg/kgである。
【0043】
特定の実施形態では、例えば6MWTにおける患者の歩行距離を、健康な同等者に対して20%の欠乏から安定化、維持又は改善させるために、有効量は、少なくとも約4mg/kg、少なくとも10mg/kg又は少なくとも20mg/kgのアンチセンスオリゴマー又はアンチセンスオリゴマーを含む組成物である。種々の実施形態では、有効量は、少なくとも約4mg/kg、少なくとも10mg/kg~約20mg/kg、20mg/kg~約30mg/kg、約25mg/kg~約30mg/kg、又は約30mg/kg~約50mg/kgである。いくつかの実施形態では、有効量は約30mg/kg又は約50mg/kgである。
【0044】
特定の実施形態では、有効量は、少なくとも24週間、少なくとも36週間、又は少なくとも48週間にわたって少なくとも約4mg/kg、10mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、又は約30mg/kg~約50mg/kgであり、それにより、対象においてジストロフィン陽性線維の数が増大される。特定の実施形態では、対象におけるジストロフィン陽性線維の増大は、正常の少なくとも20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%である。いくつかの実施形態では、処置は、患者においてジストロフィン陽性線維の数を正常の20~60%、又は30~50%まで増大させる。
【0045】
特定の実施形態では、例えば6MWTにおける患者の歩行距離を、健康な同等者に対して20%の欠乏から安定化又は改善させるために、有効量は、少なくとも24週間、少なくとも36週間、又は少なくとも48週間にわたって少なくとも約4mg/kg、少なくとも約10mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、又は約30mg/kg~約50mg/kgである。
【0046】
種々の実施形態では、有効量は、少なくとも24週間、少なくとも36週間、又は少なくとも48週間にわたって少なくとも約4mg/kg、少なくとも約10mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、又は約30mg/kg~約50mg/kgであり、それにより患者においてジストロフィン産生が増大される。いくつかの実施形態では、増大したジストロフィン産生は、健康な同等者に対して、約0.1%、0.2% 0.3% 0.5%、0.7%、0.9%、1%、1.01%、1.5%、2%、2.01%、2.5%、3%、3.01%、3.5%、4%、4.01%、4.5%、5%、5.01%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、15%、15.5%、16%、16.5%、17%、17.5%、18%、18.5%、19%、19.5%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、40%、45%、50%、55%、又は60%である。特定の実施形態では、ジストロフィン産生の増大は、健康な同等者に対して、約0.1%~0.5%、0.5%~0.9%、0.8%~1%、0.9%~1.2%、0.9%~1.0%、0.9%~1.01%、1%~1.01%、1%~1.5%、1.5%~2%、1.9%~2.0%、1.9%~2.01%、2%~2.01%、2%~2.5%、2.5%~3%、2.9%~3.0%、2.9%~3.01%、2%~3.01%、3%~3.5%、3.5%~4%、4%~4.5%、4.5%~5%、5%~6%、6%~7%、7%~8%、8%~9%、9%~10%、1%~2%、1%~3%、1%~5%、2%~4%、2%~5%、4%~6%、5%~8%、8%~10%、1%~5%、2%~6%、3%~7%、4%~8%、5%~10%、10%~12%、12%~15%、15%~20%、17%~20%、20%~22%、20%~25%、25%~30%、又は30%~35%であり得る。
【0047】
「増強する」若しくは「増強すること」又は「増大させる」若しくは「増大させること」又は「刺激する」若しくは「刺激すること」とは一般的に、1つ若しくは複数のアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、ゴロディルセンを含む)又はその医薬組成物が、アンチセンスオリゴヌクレオチドがない場合に、又は対照化合物によって引き起こされる反応と比較して、細胞又は対象においてより大きい生理応答(すなわち、下流の効果)を生じさせるか、又は引き起こす能力を指す。測定可能な生理応答は、当該技術分野における理解及び本明細書の記載から明らかな反応の中でも特に、筋組織における機能形態のジストロフィンタンパク質の発現(又は産生)の増大又はジストロフィン関連の生物活性の増大を含み得る。また筋機能の約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%の増大又は改善を含む、筋機能の増大も測定することができる。筋線維の約1%、2%、5%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%におけるジストロフィン発現の増大を含む、機能性ジストロフィンを発現する筋線維の割合を測定することもできる。例えば、線維の25~30%がジストロフィンを発現すれば、約40%の筋機能の改善が生じ得ることが示されている(例えば、DelloRusso et al,Proc Natl Acad Sci USA 99:12979-12984,2002を参照)。いくつかの実施形態では、増大したジストロフィン産生は、健康な同等者に対して、約0.1%、0.2% 0.3% 0.5%、0.7%、0.9%、1%、1.01%、1.5%、2%、2.01%、2.5%、3%、3.01%、3.5%、4%、4.01%、4.5%、5%、5.01%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、15%、15.5%、16%、16.5%、17%、17.5%、18%、18.5%、19%、19.5%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、40%、45%、50%、55%、又は60%である。特定の実施形態では、ジストロフィン産生の増大は、健康な同等者に対して、約0.1%~0.5%、0.5%~0.9%、0.8%~1%、0.9%~1.2%、0.9%~1.0%、0.9%~1.01%、1%~1.01%、1%~1.5%、1.5%~2%、1.9%~2.0%、1.9%~2.01%、2%~2.01%、2%~2.5%、2.5%~3%、2.9%~3.0%、2.9%~3.01%、2%~3.01%、3%~3.5%、3.5%~4%、4%~4.5%、4.5%~5%、5%~6%、6%~7%、7%~8%、8%~9%、9%~10%、1%~2%、1%~3%、1%~5%、2%~4%、2%~5%、4%~6%、5%~8%、8%~10%、1%~5%、2%~6%、3%~7%、4%~8%、5%~10%、10%~12%、12%~15%、15%~20%、17%~20%、20%~22%、20%~25%、25%~30%、又は30%~35%であり得る。本明細書で使用される場合、「増大したジストロフィン産生」、「ジストロフィンの産生の増大」などは、対象におけるジストロフィン、ジストロフィン様タンパク質、又は機能性ジストロフィンタンパク質の少なくとも1つの産生の増大を指す。
【0048】
「増大された」又は「増強された」量は、通常、「統計的に有意な」量であり、アンチセンスオリゴヌクレオチドがない(薬剤が存在しない)場合に、又は対照化合物によってもたらされる量の1.1倍、1.2倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍又はそれ以上(例えば、500倍、1000倍)(全ての整数及びその間の1を超える小数点、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8などを含む)の増大を含み得る。
【0049】
「低減する」又は「阻害する」という用語は、一般的に、本発明の1つ又は複数のアンチセンス化合物が、診断の技術分野における通例の技術にしたがって測定したときに、本明細書に記載される疾患又は状態の症状などの、関連する生理応答又は細胞応答を「減少させる」能力に関し得る。関連する生理応答又は細胞応答(インビボ又はインビトロ)は当業者には明らかであり、筋ジストロフィーの症状若しくは病態の低減、又はDMD若しくはBMDを有する個体において発現される変化した形態のジストロフィンなどの欠陥のある形態のジストロフィンの発現の低減を含み得る。応答の「減少」は、アンチセンス化合物がない場合に、又は対照組成物によってもたらされる応答と比較して統計的に有意でよく、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%(その間の全ての整数を含む)の減少を含み得る。
【0050】
本明細書で使用される場合、「機能」及び「機能性の」などの用語は、生物学的、酵素的、又は治療的機能を指す。
【0051】
「機能性」ジストロフィンタンパク質は一般に、通常、DMD又はBMDを有する特定の対象に存在する変化した形態又は「欠陥のある」形態のジストロフィンタンパク質と比較して、本来なら筋ジストロフィーの特徴である、筋組織の進行性の分解を低減するのに十分な生物活性を有するジストロフィンタンパク質を指す。特定の実施形態では、機能性ジストロフィンタンパク質は、当技術分野における通例の技術にしたがって測定したときに、野生型ジストロフィンの約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%(その間の全ての整数を含む)のインビトロ又はインビボ生物活性を有し得る。一例として、インビトロでの筋肉培養物におけるジストロフィン関連の活性は、筋管サイズ、筋原線維の組織化(又は破壊)、収縮活性、及びアセチルコリン受容体の自発的なクラスター形成にしたがって測定することができる(例えば、Brown et al.,Journal of Cell Science.112:209-216,1999を参照)。また動物モデルは疾患の病態形成を研究するための価値ある資源であり、ジストロフィン関連の活性を試験するための手段を提供する。DMD研究のために最も広範に使用される動物モデルの2つは、mdxマウス及びゴールデンレトリーバ筋ジストロフィー(GRMD)イヌであり、これらは両方共ジストロフィン陰性である(例えば、Collins & Morgan,Int J Exp Pathol 84:165-172,2003を参照)。これら及び他の動物モデルを使用して、種々のジストロフィンタンパク質の機能活性を測定することができる。特定の本開示のエクソンスキッピングアンチセンスオリゴヌクレオチドによって産生される形態などのジストロフィンの切断型も含まれる。
【0052】
「モルホリノ」、「モルホリノオリゴマー」又は「PMO」という用語は、Summerton,J.,et al.,Antisense & Nucleic Acid Drug Development,7:187-195(1997)の
図2に記載されるように、以下の一般構造:
【化1】
を有するホスホロジアミダートモルホリノオリゴマーを指す。本明細書に記載されるモルホリノは、上記の一般構造の全ての立体異性体(及びこれらの混合物)及び立体配置を包含することが意図される。モルホリノオリゴマーの合成、構造、及び結合特徴は、米国特許第5,698,685号明細書、同第5,217,866号明細書、同第5,142,047号明細書、同第5,034,506号明細書、同第5,166,315号明細書、同第5,521,063号明細書、同第5,506,337号明細書、同第8,076,476号明細書、及び同第8,299,206号明細書において詳述されており、これらは全て参照によって本明細書中に援用される。特定の実施形態では、モルホリノはオリゴマーの5’端部又は3’端部において「テール」部分とコンジュゲートされて、その安定性及び/又は溶解性が増大される。例示的なテールには、
【化2】
が含まれる。
【0053】
そのコード名「SRP-4053」でも知られている「ゴロディルセン」は、塩基配列5’-GTTGCCTCCGGTTCTGAAGGTGTTC-3’(配列番号1)を有するPMOである。ゴロディルセンは、CAS登録番号1422959-91-8で登録されている。化学名は、all-P-ambo-[P,2’,3’-トリデオキシ-P-(ジメチルアミノ)-2’,3’-イミノ-2’,3’-セコ](2’a→5’)(G-T-T-G-C-C-T-C-C-G-G-T-T-C-T-G-A-A-G-G-T-G-T-T-C)5’-[4-({2-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}カルボニル)-N,N-ジメチルピペラジン-1-ホスホンアミダート]を含む。ゴロディルセンは、以下の構造を有する:
【化3】
して以下の化学構造によっても表される:
【化4】
【化5】
【0054】
明確にするために、例えば上記のゴロディルセンの構造を含む本開示の構造は、5’から3’に続くものであり、構造全体をコンパクトな形態で示す便宜上、「中断A」及び「中断B」と表示される種々の図の中断が含まれている。当業者により理解されるように、例えば「中断A」の表示はそれぞれ、これらの点において構造の図が連続することを示す。当業者は、上記の構造の「中断B」の各場合についても同じことが当てはまることを理解する。しかしながら、図の中断はどれも上記の構造の実際の不連続を示すことは意図されず、当業者もそれらが実際の不連続を意味するものと理解しない。
【0055】
本明細書で使用される場合、構造式内で使用される1組の括弧は、括弧内の構造特徴が繰り返されることを示す。いくつかの実施形態では、使用される括弧は「[」及び「]」であり得るが、特定の実施形態では、反復される構造特徴を示すために使用される括弧は「(」及び「)」であり得る。いくつかの実施形態では、括弧内の構造特徴の反復回数は、例えば、2、3、4、5、6、7などの、括弧の外側に示される数である。種々の実施形態では、括弧内の構造特徴の反復回数は、「Z」などの括弧の外側に示される変数によって示される。
【0056】
本明細書で使用される場合、直線状の結合又は曲がりくねった結合の構造式においてキラル炭素又はキラルリン原子に対して描かれる結合は、キラル炭素又はリンの立体化学が定義されておらず、全ての形態のキラル中心を含むことが意図されることを示す。このような図の例は以下に示される:
【化6】
【0057】
本明細書で使用される「非経口投与」及び「非経口的に投与される」という語句は、経腸及び局所投与以外の、通常は注射による投与形態を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、角皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内及び胸骨内への注射及び点滴が含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
「薬学的に許容される」という語句は、物質又は組成物が、製剤を構成する他の成分、及び/又はそれにより処置される対象と、化学的及び/又は毒物学的に適合性でなければならないことを意味する。
【0059】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という語句は、任意のタイプの無毒性で不活性の固体、半固体又は液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料又は製剤助剤を意味する。薬学的に許容される担体としての役割を果たすことができる材料のいくつかの例は、糖、例えば、ラクトース、グルコース及びスクロース;デンプン、例えば、コーンスターチ及びジャガイモデンプン;セルロース及びその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えば、ココアバター及び坐薬ワックス;油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油;グリコール、例えば、プロピレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張生理食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール、及びリン酸緩衝溶液、並びに、他の無毒性の適合性潤滑剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムであり、製剤者の判断にしたがって、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味料及び香料、保存料及び抗酸化剤を組成物中に存在させることもできる。
【0060】
ジストロフィン合成又は産生の「回復」という用語は、一般に、本明細書に記載されるアンチセンスオリゴマーにより処置した後の、筋ジストロフィー患者における切断型のジストロフィンを含むジストロフィンタンパク質の産生を指す。いくつかの実施形態では、処置は、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%(その間の全ての整数を含む)の、患者のジストロフィン産生の増大をもたらす。いくつかの実施形態では、処置は、対象において、ジストロフィン陽性線維の数を正常の少なくとも20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%又は約95%~100%までを増大させる。他の実施形態では、処置は、対象において、ジストロフィン陽性線維の数を正常の約20%~約60%、又は約30%~約50%まで増大させる。処置後の患者におけるジストロフィン陽性線維の割合は、既知の技術を用いる筋生検によって決定することができる。例えば、筋生検は、患者の上腕二頭筋などの適切な筋肉から採取され得る。
【0061】
陽性ジストロフィン線維の割合の分析は、処置の前及び/又は処置の後、又は処置期間を通じて複数の時点で実施され得る。いくつかの実施形態では、処置後の生検は、処置前の生検とは反対側の筋肉から採取される。処置前及び処置後のジストロフィン発現の研究は、ジストロフィンのための任意の適切なアッセイを用いて実施され得る。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体などのジストロフィンのマーカーである抗体を用いて、筋生検からの組織切片において、免疫組織化学的検出が実施される。例えば、高感受性のジストロフィンのマーカーであるMANDYS106抗体を使用することができる。任意の適切な二次抗体が使用され得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、ジストロフィン陽性線維パーセントは、陽性線維の数を計数した線維の総数で割ることによって計算される。正常な筋肉サンプルは、100%のジストロフィン陽性線維を有する。したがって、ジストロフィン陽性線維パーセントは、正常の割合として表すことができる。処置後の筋肉中のジストロフィン陽性線維を計数する際に、処置前の筋肉及び復帰変異体線維中の微量レベルのジストロフィンの存在に対して照らし合わせるために、各患者からの処置前の筋肉の切片を用いてベースラインを設定することができる。これは、その患者の処置後の筋肉の切片においてジストロフィン陽性線維を計数するための閾値として使用され得る。他の実施形態では、Bioquant画像解析ソフトウェア(Bioquant Image Analysis Corporation,Nashville,TN)を用いて、ジストロフィンの定量のために抗体染色組織切片を使用することもできる。全ジストロフィン蛍光シグナル強度は、正常の割合として報告され得る。さらに、モノクローナル又はポリクローナル抗ジストロフィン抗体によるウエスタンブロット分析を使用して、ジストロフィン陽性線維の割合を決定することができる。例えば、Novacastraからの抗ジストロフィン抗体NCL-Dys1が使用され得る。ジストロフィン陽性線維の割合は、サルコグリカン複合体(β、γ)及び/又はニューロンNOSの成分の発現を決定することによって分析することもできる。
【0063】
いくつかの実施形態では、ゴロディルセンなどの本開示のアンチセンスオリゴマーによる処置は、DMD患者において処置をしない場合に予想され得る進行性の呼吸筋機能障害及び/又は呼吸筋不全を減速又は低下させる。いくつかの実施形態では、本開示のアンチセンスオリゴマーによる処置は、処置をしない場合に予想され得る人工呼吸補助の必要性を低減又は除去し得る。いくつかの実施形態では、疾患の経過を追跡するための呼吸機能の測定、及び潜在的な治療的介入の評価には、最大吸気圧(MIP)、最大呼気圧(MEP)及び努力肺活量(FVC)が含まれる。MIP及びMEPはそれぞれ、人が吸息及び呼息の間に生じさせることができる圧力のレベルを測定し、呼吸筋力の高感度尺度である。MIPは、横隔膜の筋力低下の尺度である。
【0064】
いくつかの実施形態では、MEPは、MIP及びFVCを含む他の肺機能検査の変化の前に低下し得る。特定の実施形態では、MEPは、呼吸機能障害の早期指標であり得る。特定の実施形態では、FVCは、最大吸気後の強制呼息の間に排出される空気の総体積を測定するために使用され得る。DMD患者では、FVCは、10代前半までは身体的成長に伴って増大する。しかしながら、疾患進行により成長が遅くなるか、又は阻止されて、筋力低下が進行すると、肺活量は下降期に入り、10~12歳以降は1年に約8~8.5パーセントの平均速度で低下する。特定の実施形態では、予測MIPパーセント(体重で調整したMIP)、予測MEPパーセント(年齢で調整したMEP)及び予測FVCパーセント(年齢及び伸長で調整したFVC)は、支持的な分析である。
【0065】
本明細書で使用される「対象」又は「患者」は、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドで処置することができる症状を示すか又はその症状を示すリスクがある任意の動物、例えば、DMD若しくはBMD又はこれらの状態に関連する症状のいずれか(例えば、筋線維の喪失)を有するか、或いは有するリスクがある対象を含む。適切な対象(患者)には、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、又はモルモット)、家畜、及び飼育動物又はペット(例えば、ネコ又はイヌ)が含まれる。非ヒト霊長類、そして好ましくは、ヒト患者が含まれる。また、エクソン53スキッピングに適しているジストロフィン遺伝子の突然変異を有する対象においてジストロフィンを産生させる方法も含まれる。
【0066】
本明細書で使用される「小児患者」は、1歳~21歳(両端を含む)の患者である。
【0067】
本明細書で使用される「全身性投与」、「全身に投与される」、「末梢投与」及び「末梢に投与される」という語句は、中枢神経系内への直接的な投与ではなく、患者の身体に入り、したがって、代謝及び他の同様のプロセスを受けるような化合物、薬物又は他の材料の投与、例えば、皮下投与を意味する。
【0068】
本明細書で使用される「慢性投与」は、連続的で規則的な長期間の治療的投与、すなわち、実質的に中断することのない定期的投与を指す。例えば、患者において筋ジストロフィーを処置するために、少なくとも数週間又は数か月又は数年にわたって毎日である。例えば、患者において筋ジストロフィーを処置するために、少なくとも数か月又は数年にわたって毎週(例えば、少なくとも6週間にわたって毎週、少なくとも12週間にわたって毎週、少なくとも24週間にわたって毎週、少なくとも48週間にわたって毎週、少なくとも72週間にわたって毎週、少なくとも96週間にわたって毎週、少なくとも120週間にわたって毎週、少なくとも144週間にわたって毎週、少なくとも168週間にわたって毎週、少なくとも180週間にわたって毎週、少なくとも192週間にわたって毎週、少なくとも216週間にわたって毎週、又は少なくとも240週間にわたって毎週)である。
【0069】
本明細書で使用される「定期的投与」は、投与の間に間隔のある投与を指す。例えば、定期的投与は、繰り返され得る固定間隔(例えば、毎週、毎月)での投与を含む。
【0070】
本明細書で使用される「プラセボ」は、治療効果を有さず、対照として使用され得る物質を指す。
【0071】
本明細書で使用される「プラセボ対照」は、併用療法、アンチセンスオリゴヌクレオチド、非ステロイド系抗炎症化合物、及び/又は別の医薬組成物ではなくプラセボを受ける対象又は患者を指す。プラセボ対照は、対象又は患者と同じ突然変異状態、同様の年齢、同様の歩く能力を有することができ、且つ、或いは、同じ併用薬(ステロイドなどを含む)を受けることができる。
【0072】
「標的配列」、「塩基配列」、又は「核酸塩基配列」という語句は、標的プレmRNA中のヌクレオチドの配列と相補的なオリゴマーの核酸塩基の配列を指す。本開示のいくつかの実施形態では、標的プレmRNA中のヌクレオチドの配列は、H53A(+36+60)として指定されるジストロフィンのプレmRNA中のエクソン53アニーリング部位である。
【0073】
対象(例えば、ヒトなどの哺乳類)又は細胞の「処置」は、対象又は細胞の自然経過を変化させるための試みにおいて使用される任意のタイプの介入である。処置はオリゴマー又はその医薬組成物の投与を含むが、これらに限定されず、予防的に、又は病的事象の開始若しくは病原体との接触に続いて実施され得る。処置は、特定の形態の筋ジストロフィーのような、ジストロフィンタンパク質に関する疾患又は状態の症状又は病態に対して任意の望ましい効果を含み、例えば、処置中の疾患又は状態の1つ又は複数の測定可能なマーカーにおける最小限の変化又は改善を含み得る。また、処置中の疾患若しくは状態の進行速度の低減、その疾患若しくは状態の発症の遅延、又はその発症の重症度の低下を目的とすることができる「予防的」処置も含まれる。「処置」又は「予防」は、必ずしも、疾患若しくは状態又はそれに関連する症状の完全な根絶、治癒、又は防止を示さない。
【0074】
いくつかの実施形態では、本開示のアンチセンスオリゴマーによる処置は、処置をしない場合に予想され得る、又は処置をしない場合に予想され得るジストロフィン産生を増大させ、疾患進行を遅延させ、歩行運動の喪失を減速又は低下させ、筋肉の炎症を低減し、筋損傷を低減し、筋機能を改善し、肺機能の喪失を低減し、及び/又は筋再生を増強する。いくつかの実施形態では、処置は疾患進行を維持、遅延又は減速させる。いくつかの実施形態では、処置は歩行運動を維持するか、又は歩行運動の喪失を低減する。いくつかの実施形態では、処置は肺機能を維持するか、又は肺機能の喪失を低減する。いくつかの実施形態では、処置は、例えば6分間歩行試験(6MWT)により測定したときに、患者の安定歩行距離を維持するか、又は増大させる。いくつかの実施形態では、処置は、10メートル歩行/走行時間(すなわち、10メートル歩行/走行試験)を維持又は短縮する。いくつかの実施形態では、処置は、仰臥位から立ち上がる時間(すなわち、立ち上がり時間試験)を維持又は短縮する。いくつかの実施形態では、処置は、4段の標準階段を上る時間(すなわち、4段上り試験)を維持又は短縮する。いくつかの実施形態では、処置は、例えばMRI(例えば、脚筋のMRI)で測定したときに、患者の筋肉の炎症を維持又は低減する。いくつかの実施形態では、MRIはT2及び/又は脂肪画分を測定して、筋変性を特定する。MRIは、炎症、浮腫、筋損傷及び脂肪浸潤に起因する、筋肉の構造及び組成の変化を特定することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、本開示のアンチセンスオリゴマーによる処置はジストロフィン産生を増大させる。いくつかの実施形態では、増大したジストロフィン産生は、健康な同等者に対して、約0.1%、0.2% 0.3% 0.5%、0.7%、0.9%、1%、1.01%、1.5%、2%、2.01%、2.5%、3%、3.01%、3.5%、4%、4.01%、4.5%、5%、5.01%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、15%、15.5%、16%、16.5%、17%、17.5%、18%、18.5%、19%、19.5%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、40%、45%、50%、55%、又は60%である。特定の実施形態では、ジストロフィン産生の増大は、健康な同等者に対して、約0.1%~0.5%、0.5%~0.9%、0.8%~1%、0.9%~1.2%、0.9%~1.0%、0.9%~1.01%、1%~1.01%、1%~1.5%、1.5%~2%、1.9%~2.0%、1.9%~2.01%、2%~2.01%、2%~2.5%、2.5%~3%、2.9%~3.0%、2.9%~3.01%、2%~3.01%、3%~3.5%、3.5%~4%、4%~4.5%、4.5%~5%、5%~6%、6%~7%、7%~8%、8%~9%、9%~10%、1%~2%、1%~3%、1%~5%、2%~4%、2%~5%、4%~6%、5%~8%、8%~10%、1%~5%、2%~6%、3%~7%、4%~8%、5%~10%、10%~12%、12%~15%、15%~20%、17%~20%、20%~22%、20%~25%、25%~30%、又は30%~35%であり得る。
【0076】
特定の実施形態では、本開示のアンチセンスオリゴマーによる処置は、ジストロフィン産生を増大させ、処置をしない場合に予想され得る歩行運動の喪失を減速又は低下させる。例えば、処置は、対象の歩行能力を安定化、維持、改善又は増大させ得る(例えば、歩行運動の安定化)。いくつかの実施形態では、処置は、例えば、McDonald,et
al.(Muscle Nerve,2010;42:966-74、参照によって本明細書中に援用される)により記載された6分間歩行試験(6MWT)により測定したときに、患者の安定歩行距離を維持又は増大させる。6分間歩行距離(6MWD)の変化は、絶対値、変化率、又は予測値%の変化として表され得る。いくつかの実施形態では、処置は、6MWTにおける対象の安定歩行距離を、健康な同等者に対して20%の欠乏から維持又は改善する。6MWTにおけるDMD患者の能力は、健康な同等者の通常の能力に対して、予測値%を計算することにより決定することができる。例えば、予測6MWD%は、男性の場合、以下の式:196.72+(39.81×年齢)-(1.36×年齢2)+(132.28×身長(メートル))を用いて計算することができる。女性の場合、予測6MWD%は、以下の式:188.61+(51.50×年齢)-(1.86×年齢2)+(86.10×身長(メートル))を用いて計算することができる(Henricson et al.PLoS Curr.,2012,バージョン2、参照によって本明細書中に援用される)。
【0077】
いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーによる処置は、ベースラインから3、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30又は50メートル(その間の全ての整数を含む)を超えて、患者の安定歩行距離を増大させる。いくつかの実施形態では、増大したジストロフィン産生は、健康な同等者に対して、約0.1%、0.2% 0.3% 0.5%、0.7%、0.9%、1%、1.01%、1.5%、2%、2.01%、2.5%、3%、3.01%、3.5%、4%、4.01%、4.5%、5%、5.01%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、15%、15.5%、16%、16.5%、17%、17.5%、18%、18.5%、19%、19.5%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、40%、45%、50%、55%、又は60%である。特定の実施形態では、ジストロフィン産生の増大は、健康な同等者に対して、約0.1%~0.5%、0.5%~0.9%、0.8%~1%、0.9%~1.2%、0.9%~1.0%、0.9%~1.01%、1%~1.01%、1%~1.5%、1.5%~2%、1.9%~2.0%、1.9%~2.01%、2%~2.01%、2%~2.5%、2.5%~3%、2.9%~3.0%、2.9%~3.01%、2%~3.01%、3%~3.5%、3.5%~4%、4%~4.5%、4.5%~5%、5%~6%、6%~7%、7%~8%、8%~9%、9%~10%、1%~2%、1%~3%、1%~5%、2%~4%、2%~5%、4%~6%、5%~8%、8%~10%、1%~5%、2%~6%、3%~7%、4%~8%、5%~10%、10%~12%、12%~15%、15%~20%、17%~20%、20%~22%、20%~25%、25%~30%、又は30%~35%であり得る。
【0078】
DMD患者の筋機能の喪失は、正常な小児期の成長及び発育を背景にして起こり得る。実際に、進行性筋機能障害にもかかわらず、DMDを有する低年齢の小児は約1年間にわたって6MWT中に歩行距離の増大を示し得る。いくつかの実施形態では、DMD患者からの6MWDは、典型的に発育している対照群、並びに年齢及び性別が一致する対象からの既存の標準データと比較される。いくつかの実施形態では、正常な成長及び発育は、標準データに適合された年齢及び身長に基づいた式を用いて説明することができる。このような式を使用して、DMDを有する対象において6MWDを予測パーセント(予測%)値に変換することができる。特定の実施形態では、予測6MWD%データの分析は正常な成長及び発育を説明するための方法を表し、低年齢(例えば、7歳以下)での機能の増大が、DMD患者の能力の改善ではなく安定を表すことを示し得る(Henricson et al.PLoS Curr.,2012,バージョン2、参照によって本明細書中に援用される)。
【0079】
異なるアンチセンス分子を区別するために、アンチセンス分子の命名法が提唱及び公開された(Mann et al.,(2002)J Gen Med 4,644-654を参照)。この命名法は、以下に示されるように、全て同じ標的領域に向けられたわずかに異なるいくつかのアンチセンス分子を試験する際に意味を持つ:
H#A/D(x:y)。
【0080】
最初の文字は、種(例えば、H:ヒト、M:マウス、C:イヌ)を指定する。「#」は、標的ジストロフィンエクソンの番号を指定する。「A/D」はそれぞれ、エクソンの最初及び最後におけるアクセプタースプライス部位又はドナースプライス部位を示す。(x
y)はアニーリング座標を表し、ここで、「-」又は「+」はそれぞれ、イントロン配列又はエクソン配列を示す。例えば、A(-6+18)は、標的エクソンに先行するイントロンの最後の6塩基及び標的エクソンの最初の18塩基を示し得る。最も近いスプライス部位はアクセプターであり得るので、これらの座標は「A」が前に記載され得る。ドナースプライス部位におけるアニーリング座標の記載はD(+2-18)であり得るが、ここで、最後の2個のエクソン塩基及び最初の18個のイントロン塩基はアンチセンス分子のアニーリング部位に対応する。A(+65+85)で表され得る完全なエクソンアニーリング座標は、そのエクソンの開始から65番目と85番目のヌクレオチドの間の部位である。
【0081】
II.アンチセンスオリゴヌクレオチド
エクソン53のスキッピングをもたらすためにジストロフィン遺伝子のプレmRNAを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、本開示の方法にしたがって使用される。
【0082】
このようなアンチセンスオリゴヌクレオチドは、mRNAの翻訳を遮断又は阻害するように、或いは天然のプレmRNAスプライスプロセシングを阻害するように設計することができ、ハイブリダイズする標的配列に「向けられる」又は「対して標的化される」と言うことができる。標的配列は、通常、mRNAのAUG開始コドン、翻訳抑制オリゴマー、又はプレプロセシングされたmRNAのスプライス部位、スプライス抑制オリゴマー(SSO)を含む領域である。スプライス部位の標的配列は、プレプロセシングされたmRNA内の正常なスプライスアクセプタージャンクションの1~約25塩基対下流にその5’端部を有するmRNA配列を含み得る。いくつかの実施形態では、標的配列は、スプライス部位を含むか、又はエクソンコード配列内に完全に含有されるか、又はスプライスアクセプター部位若しくはドナー部位にまたがる、プレプロセシングされたmRNAの任意の領域であり得る。オリゴマーはより一般的には、上記のような方法で標的の核酸に対して標的化される場合、タンパク質、ウィルス、又は細菌などの生物学的に関連する標的に「対して標的化される」と言われる。
【0083】
特定の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ジストロフィンプレmRNAのエクソン53標的領域に特異的にハイブリダイズし、エクソン53スキッピングを誘発する。特定の実施形態では、ジストロフィンプレmRNAのエクソン53標的領域にハイブリダイズしてエクソン53スキッピングを誘発するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー(PMO)である。
【0084】
特定の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドはゴロディルセンである。
【0085】
ゴロディルセンは、ホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー(PMO)と呼ばれる明確な種類の新規の合成アンチセンスRNA治療薬に属し、これは、天然の核酸構造の再設計である。ゴロディルセンは、ジストロフィンプレmRNAのエクソン53標的領域にハイブリダイズするPMOであり、エクソン53スキッピングを誘発する。ゴロディルセンは、上記で引用した参考文献において、そして付加的に国際特許出願第PCT/US17/40318号(その全体は、参照によって本明細書中に明示的に援用される)において詳述される方法を用いて、段階的な固相合成によって調製することができる。
【0086】
PMOは、インビボの非臨床的観察に基づいて潜在的な臨床的利点を提供する。PMOは、インビボでの安定性を保証するために、ヌクレアーゼによる酵素分解から保護する修飾をRNAの糖環に組み込む。PMOは、一つには6員合成モルホリノ環の使用により、天然の核酸及び他のアンチセンスオリゴヌクレオチドの種類とは区別され、6員合成モルホリノ環は、RNA、DNA及び多数の他の合成アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドにおいて見出される5員リボフラノシル環を置換する。
【0087】
PMOに特異的な無電荷ホスホロジアミダート結合は、潜在的に、タンパク質への低減されたオフターゲット結合を付与すると考えられる。PMOは、他の臨床段階の合成アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドで使用される負電荷を持つホスホロチオアート結合の代わりに、各モルホリノ環を連結する無電荷ホスホロジアミダート結合を有する。
【0088】
DMD遺伝子のアウトオブフレーム突然変異によって生じるDMDの処置に対する潜在的な治療的アプローチは、インフレーム突然変異によって生じるBMDとして知られているより軽症な形態のジストロフィン異常症によって示唆される。アウトオブフレーム突然変異をインフレーム突然変異に変換する能力は、仮説上は、mRNAリーディングフレームを保存することができ、内部で短縮されているが機能性のジストロフィンタンパク質を生じさせる。ゴロディルセンは、これを達成するように設計された。
【0089】
ゴロディルセンはジストロフィンプレmRNAを標的として、エクソン53のスキッピングを誘発し、したがってエクソン53は、スプライスされた成熟mRNA転写物から排除又はスキップされる。エクソン53をスキップすることにより、破壊されたリーディングフレームはインフレーム突然変異に回復される。DMDは種々の遺伝子サブタイプから構成されるが、ゴロディルセンは、ジストロフィンプレmRNAのエクソン53をスキップするように特別に設計された。エクソン53のスキッピングに適したDMD突然変異は、エクソン53に近接するエクソンの欠失(すなわち、エクソン52又はエクソン54の欠失を含む)を含み、DMD患者のサブグループ(8%)を構成する。
【0090】
ゴロディルセンの25の核酸塩基の配列は、ジストロフィンプレmRNAのエクソン53内の特異的な標的配列に相補的であるように設計される。ゴロディルセンの各モルホリノ環は、DNA中に見出される4つの複素環核酸塩基(アデニン、シトシン、グアニン、及びチミン)の1つに連結される。
【0091】
ゴロディルセンと標的プレmRNA配列とのハイブリダイゼーションはプレmRNAスプライシング複合体の形成を妨げ、成熟mRNAからエクソン53を欠失させる。ゴロディルセンの構造及び立体配座は、相補的配列に対する配列特異的塩基対合を可能にする。例えば、ジストロフィンプレmRNAのエクソン51をスキップするように設計されたPMOであるエテプリルセンは、ジストロフィンプレmRNAのエクソン51に含有される相補的配列に対する配列特異的塩基対合を可能にする。
【0092】
エクソンスキッピングを用いたジストロフィンリーディングフレームの回復
79のエクソンを全て含有する正常なジストロフィンmRNAは、正常なジストロフィンタンパク質を生じ得る。
【0093】
ジストロフィン遺伝子からエクソン全体が失われたジストロフィンmRNAは、通常、DMDをもたらす。
【0094】
別のエクソンスキッピングPMOであるエテプリルセンは、エクソン51をスキップして、mRNAリーディングフレームを回復させる。エクソン49は完全なコドンで終わり、エクソン52はコドンの最初のヌクレオチドで始まるので、エクソンスキッピングによるエクソン51の欠失はリーディングフレームを回復させ、インタクトなジストログリカン結合部位を有する、内部で短縮されたジストロフィンタンパク質の産生がもたらされる。
【0095】
ジストロフィンmRNAオープンリーディングフレームを回復させるためにエクソンスキッピングを用いるDMD表現型の改善の実行可能性は、非臨床試験により支持される。DMDのジストロフィー動物モデルにおける多数の試験により、エクソンスキッピングによるジストロフィンの回復が筋力及び筋機能の確実な改善をもたらすことが示されている(Sharp 2011;Yokota 2009;Wu 2008;Wu 2011;Barton-Davis 1999;Goyenvalle 2004;Gregorevic 2006;Yue 2006;Welch 2007;Kawano 2008;Reay 2008;van Putten 2012)。このことの説得力のある例は、エクソンスキッピング(PMOを用いる)治療後のジストロフィンレベルを同じ組織内の筋機能と比較した研究に由来する。ジストロフィーmdxマウスでは、マウス特異的PMOで処置した前脛骨(TA)筋は、応力誘発性(stress-inducing)収縮の後にその最大荷重容量(maximum force capacity)の約75%を維持したが、未処置の反対側のTA筋は、その最大荷重容量の約25%しか維持しなかった(p<0.05)(Sharp 2011)。別の研究では、3匹のジストロフィーCXMDイヌ(2~5月齢)に、5~7週間にわたって週1回、又は22週間にわたって2週間に1回、その遺伝子突然変異に特異的なPMOを用いたエクソンスキッピング治療を受けさせた。エクソンスキッピング治療の後、3匹のイヌは全て、全身に及ぶ広範な骨格筋のジストロフィン発現を実証し、そしてベースラインに対して歩行運動(15m走行試験)が維持又は改善された。対照的に、未処置の同月齢のCXMDイヌは、研究を通して、歩行運動の顕著な低下を示した(Yokota 2009)。
【0096】
PMOは、mdxマウスと、全ヒトDMD転写物を発現するヒト化DMD(hDMD)マウスモデルとの両方において、等モル濃度でホスホロチオアートよりも高いエクソンスキッピング活性を有することが示された(Heemskirk 2009)。正常ヒト骨格筋細胞、又はエクソン51スキッピングに適している様々な突然変異を有するDMD患者からの筋細胞において、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)及びウエスタンブロット(WB)を用いたインビトロでの実験により、エクソン51スキッピングの強力な誘発剤としてエテプリルセン(PMO)が同定された。エテプリルセン誘発性のエクソン51スキッピングは、hDMDマウスモデルにおいてインビボで確認されている(Arechavala-Gomeza 2007)。
【0097】
ジストロフィンプレmRNAのエクソン53標的領域に特異的にハイブリダイズして、エクソン53スキッピングを誘発するアンチセンスオリゴヌクレオチドの効果を分析するための臨床結果には、ジストロフィン陽性線維パーセント(PDPF)のベースラインからの増大、6分間歩行試験(6MWT)、歩行運動の喪失(LOA)、North Star Ambulatory Assessment(NSAA)、肺機能検査(PFT)、外部支援なしに立ち上がる能力(仰臥位から)、新規のジストロフィン産生及び他の機能尺度が含まれる。
【0098】
ゴロディルセンは臨床試験において試験された。
【0099】
試験4053-101
試験4053-101は、DMD患者におけるSRP-4053(ゴロディルセン)の第I/II相試験である。この試験は、エクソン53スキッピングに適しているデュシェンヌ型筋ジストロフィー患者におけるSRP-4053の2パート、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、用量漸増の安全性、耐容性、及び薬物動態試験(パート1)、並びにその後の非盲検の効力及び安全性評価(パート2)である。主要評価項目には、有害事象の発生[時間枠:約12週間(パート1)]、6分間歩行試験(6MWT)のベースラインからの変化[時間枠:144週間(パート2)]、及びジストロフィン陽性線維の割合[時間枠:48週間(パート2)]が含まれる。副次評価項目には、血漿中の薬物濃度[時間枠:約12週間(パート1)]、予測最大吸気圧(MIP)%、予測最大呼気圧(MEP)%[時間枠:144週間(パート2)]が含まれる。この試験のさらなる詳細は、www.clinicaltrials.gov(NCT02310906)において見出される。
【0100】
III.製剤及び投与様式
特定の実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるようなアンチセンスオリゴヌクレオチドの治療的送達に適した製剤又は医薬組成物を提供する。したがって、特定の実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドの1つ又は複数を治療的に有効な量で含み、1つ又は複数の薬学的に許容される担体(添加剤)及び/又は希釈剤と一緒に製剤化された、薬学的に許容される組成物を提供する。本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは単独で投与されることが可能であるが、化合物を医薬製剤(組成物)として投与するのが好ましい。
【0101】
核酸分子の送達のための方法は、例えば、Akhtar et al.,1992,Trends Cell Bio.,2:139;及びDelivery Strategies for Antisense Oligonucleotide Therapeutics,Akhtar編;Sullivan et al.,PCT国際公開第94/02595号パンフレットに記載されている。これら及び他のプロトコルは、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む実質的に任意の核酸分子を送達するために利用することができる。
【0102】
以下に詳述されるように、本開示の医薬組成物は、特に、以下のものに適合するものを含む、固体又は液体形態での投与のために製剤化され得る:(1)経口投与、例えば、水薬(水溶液若しくは非水溶液又は懸濁液)、錠剤、例えば、頬側、舌下、及び全身の吸収を標的とするもの、ボーラス、粉末、顆粒、舌に塗布するためのペースト;(2)非経口投与、例えば、無菌溶液若しくは懸濁液、又は持続放出製剤としての、例えば、皮下、筋肉内、静脈内又は硬膜外注射による投与;(3)局所適用、例えば、クリーム、軟膏、又は制御放出パッチ若しくはスプレーとしての、皮膚への適用;(4)腟内又は直腸内、例えば、ペッサリー、クリーム又はフォームとしての適用;(5)舌下;(6)眼内;(7)経皮;或いは(8)経鼻。
【0103】
薬学的に許容される担体としての役割を果たすことができる材料のいくつかの例としては、(1)糖、例えば、ラクトース、グルコース及びスクロース;(2)デンプン、例えば、コーンスターチ及びジャガイモデンプン;(3)セルロース及びその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤、例えば、ココアバター及び坐薬ワックス;(9)油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油;(10)グリコール、例えば、プロピレングリコール;(11)ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレグリコール;(12)エステル、例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張生理食塩水;(18)リンゲル溶液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝溶液;(21)ポリエステル、ポリカーボネート及び/又はポリ酸無水物;並びに(22)医薬製剤中で使用される他の無毒性の適合性物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む製剤に適した薬剤の追加の非限定的な例としては、種々の組織への薬物の侵入を増強することができる、PEGコンジュゲート核酸、リン脂質コンジュゲート核酸、親油性部分を含有する核酸、ホスホロチオアート、P糖タンパク質阻害剤(Pluronic P85など);生分解性ポリマー、例えば、埋込み後の持続放出送達のためのポリ(DL-ラクチド-コグリコリド)ミクロスフェア(Emerich,D F et al.,1999,Cell Transplant,8、47-58)Alkermes,Inc.Cambridge,Mass.;及び血液脳関門を横断して薬物を送達することができ、ニューロンの取り込み機構を変更することができる負荷ナノ粒子、例えば、ポリブチルシアノアクリラートで作られたもの(Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry,23,941-949,1999)が挙げられる。
【0105】
本開示は、ポリ(エチレングリコール)脂質を含有する表面修飾リポソーム(PEG修飾された分枝状及び非分枝状若しくはその組合せ、又は長期循環リポソーム又はステルスリポソーム)を含む組成物の使用も特徴とする。本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、共有結合した種々の分子量のPEG分子を含むこともできる。これらの製剤は、標的組織における薬物の蓄積を増大させるための方法を提供する。この種類の薬物担体は、オプソニン化及び単核食細胞系(MPS又はRES)による除去に抵抗し、それにより、カプセル化薬物のより長い血液循環時間、及び増強された組織曝露が可能になる(Lasic et al.Chem.Rev.1995,95,2601-2627;Ishiwata et al.,Chem.Pharm.Bull.1995,43,1005-1011)。このようなリポソームは、恐らく、血管新生した標的組織における血管外漏出及び捕獲によって、腫瘍中に選択的に蓄積することが示されている(Lasic et al.,Science 1995,267,1275-1276;Oku et al.,1995,Biochim.Biophys.Acta,1238,86-90)。長期循環リポソームは、特に、MPSの組織に蓄積することが知られている従来のカチオン性リポソームと比べて、DNA及びRNAの薬物動態及び薬力学を増強する(Liu et al.,J.Biol.Chem.1995,42,24864-24870;Choi et al.,PCT国際公開第96/10391号パンフレット;Ansell et al.,PCT国際公開第96/10390号パンフレット;Holland et al.,PCT国際公開第96/10392号パンフレット)。また長期循環リポソームは、肝臓及び脾臓などの代謝的に攻撃的なMPS組織における蓄積を回避するその能力に基づいて、カチオン性リポソームと比べてより大きい程度まで、薬物をヌクレアーゼ分解から保護する可能性もある。
【0106】
さらなる実施形態では、本開示は、米国特許第6,692,911号明細書、同第7,163,695号明細書及び同第7,070,807号明細書に記載されるような送達のために調製されたアンチセンスオリゴヌクレオチド医薬組成物を含む。これに関して、一実施形態では、本開示は、リジン及びヒスチジン(HK)のコポリマーを含む組成物(米国特許第7,163,695号明細書、同第7,070,807号明細書、及び同第6,692,911号明細書に記載される)中において、単独で又はPEG(例えば、分枝状若しくは非分枝状PEG又は両方の混合物)と組み合わせて、PEG及び標的部分と組み合わせて、又は上記のいずれかを架橋剤と組み合わせて、本開示のオリゴマーを提供する。特定の実施形態では、本開示は、グルコン酸修飾ポリヒスチジン又はグルコニル化ポリヒスチジン/トランスフェリン-ポリリジンを含む医薬組成物中のアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。当業者は、His及びLysに類似した特性を有するアミノ酸が組成物中で置換され得ることも認識するであろう。
【0107】
本明細書に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドの特定の実施形態はアミノ又はアルキルアミノなどの塩基性官能基を含有することができ、したがって、薬学的に許容される酸と共に薬学的に許容される塩を形成することができる。これに関して、「薬学的に許容される塩」という用語は、本開示の化合物の比較的無毒性の無機酸及び有機酸付加塩を指す。これらの塩は、投与ビヒクル又は剤形の製造過程においてその場で調製することもできるし、或いは精製した遊離塩基形態の本開示の化合物を適切な有機酸又は無機酸と別個に反応させ、このようにして形成された塩をその後の精製の間に単離することによって調製することもできる。代表的な塩には、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩(napthylate)、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、及びラウリルスルホン酸塩などが含まれる(例えば、Berge et al.(1977)”Pharmaceutical
Salts”,J.Pharm.Sci.66:1-19を参照)。
【0108】
本アンチセンスオリゴヌクレオチドの薬学的に許容される塩には、例えば無毒性の有機酸又は無機酸から得られる、化合物の従来の無毒性塩又は第4級アンモニウム塩が含まれる。例えば、このような従来の無毒性塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から誘導された塩と、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イソチオン酸などの有機酸から調製された塩とが含まれる。
【0109】
特定の実施形態では、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ又は複数の酸性官能基を含有することができ、したがって、薬学的に許容される塩基と共に薬学的に許容される塩を形成することができる。これらの例では、「薬学的に許容される塩」という用語は、本開示の化合物の比較的無毒性の無機塩基及び有機塩基付加塩を指す。これらの塩も同様に、投与ビヒクル又は剤形の製造過程においてその場で調製することもできるし、或いは精製した遊離酸形態の本開示の化合物を、適切な塩基、例えば、薬学的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩若しくは重炭酸塩と、アンモニアと、又は薬学的に許容される有機第1級、第2級若しくは第3級アミンと別個に反応させることもできる。代表的なアルカリ塩又はアルカリ土類塩には、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、及びアルミニウム塩などが含まれる。塩基付加塩の形成に有用な代表的な有機アミンには、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが含まれる(例えば、上記のBerge et al.を参照)。
【0110】
ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳化剤及び潤滑剤、並びに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味料及び香料、保存料及び抗酸化剤が組成物中に存在し得る。
【0111】
薬学的に許容される抗酸化剤の例としては、(1)水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど;及び(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などが挙げられる。
【0112】
本開示の製剤は、経口、経鼻、局所(頬側及び舌下を含む)、直腸、膣及び/又は非経口投与に適した製剤を含む。製剤は単位剤形で提供されるのが便利であり、薬学分野において周知である任意の方法によって調製することができる。単一の剤形を生じるために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、処置される宿主、特定の投与様式によって異なる。単一の剤形を生じるために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、一般的に、治療効果をもたらす化合物の量となる。一般的に、100パーセントのうち、この量は、約0.1パーセント~約99パーセント、好ましくは約5パーセント~約70パーセント、最も好ましくは約10パーセント~約30パーセントの活性成分の範囲となる。
【0113】
特定の実施形態では、本開示の製剤は、シクロデキストリン、セルロース、リポソーム、ミセル形成剤、例えば、胆汁酸、及び高分子担体、例えば、ポリエステル及びポリ酸無水物から選択される賦形剤と、本開示のオリゴマーとを含む。特定の実施形態では、上述の製剤は、本開示のオリゴマーを経口的に生体利用可能にする。
【0114】
これらの製剤又は医薬組成物を調製する方法は、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドと、担体及び任意選択的に1つ又は複数の補助成分とを関連させるステップを含む。一般的に、製剤は、本開示の化合物と、液体担体、若しくは微粉化した固体担体、又はその両方とを均一且つ密接に関連させ、次に必要であれば、生成物を成形することによって調製される。
【0115】
経口投与に適した本開示の製剤は、カプセル、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ(風味付けされた基剤、通常は、スクロース及びアカシア又はトラガカントを用いる)、粉末、顆粒の形態で、又は水性若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液として、又は水中油若しくは油中水液体エマルションとして、又はエリキシル若しくはシロップとして、又は香錠(不活性基剤、例えば、ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアを用いる)として、及び/又はマウスウォッシュなどとしての形態でよく、これらはそれぞれ、所定量の本開示の化合物を活性成分として含有する。本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ボーラス、舐剤又はペーストとして投与されてもよい。
【0116】
経口投与のための本開示の固体剤形(カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉末、顆粒、トローチ(trouches)など)において、活性成分は、クエン酸ナトリウム若しくはリン酸二カルシウムなどの1つ又は複数の薬学的に許容される担体、及び/又は以下のうちいずれかのものと混合され得る:(1)充填剤又は増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及び/又はケイ酸;(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及び/又はアカシアなど;(3)保湿剤、例えば、グリセロール;(4)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウム;(5)溶解遅延剤、例えば、パラフィン;(6)吸収促進剤、例えば、第4級アンモニウム化合物、並びに界面活性剤、例えば、ポロキサマー及びラウリル硫酸ナトリウム;(7)湿潤剤、例えば、セチルアルコール、モノステアリン酸グリセロール、及び非イオン性界面活性剤など;(8)吸収剤、例えば、カオリン及びベントナイトクレイ;(9)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸、及びこれらの混合物;(10)着色剤;並びに(11)制御放出剤、例えば、クロスポビドン又はエチルセルロース。カプセル、錠剤及び丸剤の場合、医薬組成物は、緩衝剤も含み得る。同様のタイプの固体医薬組成物は、ラクトース又は乳糖のような賦形剤、及び高分子量ポリエチレングリコールなどを用いて、ソフト及びハード殻ゼラチンカプセル中の充填剤として使用されてもよい。
【0117】
錠剤は、任意選択的に1つ又は複数の補助成分と共に、圧縮又は成形によって製造され得る。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存料、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム又は架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤又は分散剤を用いて調製され得る。成形錠剤は、適切な機械において不活性液体希釈剤で湿潤させた粉末化合物の混合物を成形することによって製造され得る。
【0118】
本開示の医薬組成物の錠剤及び他の固体剤形、例えば、糖衣錠、カプセル、丸剤及び顆粒は、任意選択的に、割線が付けられてもよいし、或いはコーティング及び殻、例えば、製薬分野で周知の腸溶コーティング及び他のコーティングを用いて調製されてもよい。これらは、例えば、所望の放出プロファイルを提供するために様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソーム及び/又はミクロスフェアを用いて、その中の活性成分の遅延又は制御放出を提供するように製剤化されてもよい。これらは、急速放出のために製剤化されてもよく、例えば、凍結乾燥されてもよい。これらは、例えば、細菌保持フィルターによるろ過によって、或いは使用の直前に滅菌水、又は何らかの他の無菌注射用媒体中に溶解させることができる無菌の固体医薬組成物の形態の滅菌剤を取り込むことによって滅菌され得る。またこれらの医薬組成物は、任意選択的に乳白剤を含有していてもよく、活性成分を胃腸管の特定の部分においてのみ又はその部分で優先的に、任意選択的に遅延様式で、放出する組成を有していてもよい。使用可能な包埋組成物の例としては、高分子物質及びワックスが挙げられる。活性成分は、適切な場合には上記の賦形剤の1つ又は複数を含む、マイクロカプセル化形態であり得る。
【0119】
本開示の化合物の経口投与のための液体剤形には、薬学的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルが含まれる。活性成分に加えて、液体剤形は、当該技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤、可溶化剤及び乳化剤、例えば、水又は他の溶媒など、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにこれらの混合物を含有し得る。
【0120】
不活性希釈剤に加えて、経口医薬組成物は、補助剤、例えば、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、甘味剤、香味料、着色剤、香料及び保存料を含むこともできる。
【0121】
懸濁液は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカント、並びにこれらの混合物としての懸濁化剤を含有し得る。
【0122】
直腸又は膣内投与のための製剤は坐薬として提供されてもよく、これは、1つ又は複数の本開示の化合物と、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、坐薬ワックス又はサリチラートを含む1つ又は複数の適切な非刺激性の賦形剤又は担体とを混合することにより調製することができ、そして室温で固体であるが、体温では液体であり、したがって、直腸又は膣腔内で融解して活性化合物を放出することになる。
【0123】
本明細書で提供されるオリゴマーの局所又は経皮投与のための製剤又は剤形には、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ及び吸入剤が含まれる。活性アンチセンスオリゴヌクレオチドは、薬学的に許容される担体、及び必要とされ得る任意の保存料、緩衝剤、又は噴射剤と無菌条件下で混合され得る。軟膏、ペースト、クリーム及びゲルは、本開示の活性化合物に加えて、賦形剤、例えば、動物及び植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク及び酸化亜鉛、又はこれらの混合物を含有し得る。
【0124】
粉末及びスプレーは、本開示のオリゴマーに加えて、賦形剤、例えば、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム及びポリアミド粉末、又はこれらの物質の混合物を含有することができる。スプレーは、付加的に、通例の噴射剤、例えば、クロロフルオロ炭化水素並びにブタン及びプロパンなどの揮発性非置換炭化水素を含有することができる。
【0125】
経皮パッチは、本開示のオリゴマーの身体への制御送達を提供するというさらなる利点を有する。このような剤形は、オリゴマーを適切な媒体中に溶解又は分散させることによって製造することができる。また吸収増強剤を使用して、皮膚を通過する薬剤の流動を増大させることもできる。このような流動の速度は、当該技術分野で知られている方法の中でも特に、速度制御膜を提供するか、又は薬剤をポリマーマトリックス又はゲル中に分散させることによって制御することができる。
【0126】
非経口投与に適した医薬組成物は、1つ又は複数の本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、1つ又は複数の薬学的に許容される無菌等張水溶液若しくは非水溶液、分散液、懸濁液又はエマルション、或いは使用の直前に無菌注射用溶液又は分散液中に再構成され得る無菌粉末と組み合わせて含むことができ、これらは、糖、アルコール、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、意図されるレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質、又は懸濁化剤若しくは増粘剤を含有し得る。本開示の医薬組成物中で使用され得る適切な水性及び非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びこれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、並びにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散液の場合には必要とされる粒径の維持により、そして界面活性剤の使用により維持することができる。
【0127】
またこれらの医薬組成物は、保存料、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などの補助剤を含有していてもよい。本アンチセンスオリゴヌクレオチドに対する微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを包含させることによって保証され得る。また等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを組成物中に包含させることが望ましいこともある。加えて、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を包含させることにより、注射用医薬品形態の長期にわたる吸収がもたらされ得る。
【0128】
場合により、薬物の効果を長くするために、皮下又は筋肉内注射からの薬物の吸収を遅くすることが望ましい。これは、当該技術分野で知られている方法の中でも特に、水溶性が乏しい結晶性材料又は非晶質材料の液体懸濁液の使用によって達成され得る。次に、薬物の吸収の速度はその溶解速度に依存し、次には、結晶サイズ及び結晶形態に依存し得る。或いは、非経口投与される薬物形態の遅延吸収は、薬物を油ビヒクル中に溶解又は懸濁させることによって達成される。
【0129】
注射用デポー形態は、ポリ乳酸-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中で本アンチセンスオリゴヌクレオチドのマイクロカプセルマトリックスを形成することによって製造することができる。オリゴマー対ポリマー比、及び使用される特定のポリマーの性質に応じて、オリゴマー放出速度は制御され得る。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(酸無水物)が挙げられる。またデポー注射用製剤は、身体組織と適合性のリポソーム又はマイクロエマルション内に薬物を捕捉することによって調製されてもよい。
【0130】
本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドを医薬品としてヒト及び動物に投与する場合、それ自体で、又は例えば0.1~99%(より好ましくは、10~30%)の活性成分を薬学的に許容される担体と組み合わせて含有する医薬組成物として、与えることができる。
【0131】
上記のように、本開示の製剤又は調製物は、経口的、非経口的、局所的、又は経直腸的に与えられてもよい。これらは、通常、各投与経路に適した形態で与えられる。例えば、これらは、錠剤又はカプセル形態で、注射、吸入、目薬、軟膏、坐薬などにより、注射、点滴又は吸入による投与で;ローション又は軟膏により局所的に;及び坐薬により直腸で投与される。
【0132】
選択される投与経路に関わらず、適切な水和形態で使用され得る本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチド、及び/又は本開示の医薬組成物は、当業者に知られている従来の方法によって、薬学的に許容される剤形に製剤化され得る。本開示の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、患者に対して許容されない毒性を伴うことなく、特定の患者、組成物、及び投与様式にとって所望の治療応答を達成するのに有効な活性成分の量を得るように変化され得る。
【0133】
選択される投与量レベルは、使用される本開示の特定のオリゴマー又はそのエステル、塩若しくはアミドの活性、投与経路、投与の時間、使用される特定のオリゴマーの排泄又は代謝速度、吸収の速度及び程度、処置の期間、使用される特定のオリゴマーと組み合わせて使用される他の薬物、化合物及び/又は材料、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康及び過去の病歴、並びに医学分野で周知の同様の因子を含む様々な因子に依存し得る。
【0134】
当該技術分野において通常の技能を有する医師又は獣医は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定及び処方することができる。例えば、医師又は獣医は、医薬組成物中で使用される本開示の化合物の用量を、所望の治療効果を達成するために必要とされるレベルよりも低いレベルで開始して、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることができる。一般に、本開示の化合物の適切な1日の用量は、治療効果を生じるために有効な最小用量である化合物の量となる。このような有効用量は、一般に、上記の因子に依存し得る。一般に、本開示の化合物の患者に対する経口、静脈内、脳室内及び皮下用量は、示される効果のために使用される場合、1日に体重1キログラム当たり約0.0001~約100mgの範囲となる。
【0135】
いくつかの実施形態では、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、通常、約4~160mg/kg、10~160mg/kg、又は20~160mg/kgの用量で投与される。場合により、160mg/kgよりも多い用量が必要とされることもある。いくつかの実施形態では、例えばi.v.投与などの非経口用量は、約0.5mg~160mg/kgである。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約4mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、17mg/kg、20mg/kg、21mg/kg、25mg/kg、26mg/kg、27mg/kg、28mg/kg、29mg/kg、30mg/kg、31mg/kg、32mg/kg、33mg/kg、34mg/kg、35mg/kg、36mg/kg、37mg/kg、38mg/kg、39mg/kg、40mg/kg、41mg/kg、42mg/kg、43mg/kg、44mg/kg、45mg/kg、46mg/kg、47mg/kg、48mg/kg、49mg/kg 50mg/kg、51mg/kg、52mg/kg、53mg/kg、54mg/kg、55mg/kg、56mg/kg、57mg/kg、58mg/kg、59mg/kg、60mg/kg、65mg/kg、70mg/kg、75mg/kg、80mg/kg、85mg/kg、90mg/kg、95mg/kg、100mg/kg、105mg/kg、110mg/kg、115mg/kg、120mg/kg、125mg/kg、130mg/kg、135mg/kg、140mg/kg、145mg/kg、150mg/kg、155mg/kg、160mg/kg(その間の全ての整数を含む)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、オリゴマーは30mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、オリゴマーは40mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、オリゴマーは60mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、オリゴマーは80mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、オリゴマーは160mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、オリゴマーは50mg/kgで投与される。
【0136】
所望により、活性化合物の有効な1日の用量は、任意選択的に単位剤形で、1日の間に適切な間隔を置いて投与される2、3、4、5、6又はそれ以上のサブ用量として投与され得る。特定の状況では、機能性ジストロフィンタンパク質の所望の発現を維持するために、必要に応じて、投薬は、1日当たり1回の投与である。特定の実施形態では、投薬は、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、7日毎、8日毎、9日毎、10日毎、11日毎、12日毎、13日毎、14日毎、又は1週間毎、2週間毎、3週間毎、4週間毎、5週間毎、6週間毎、7週間毎、8週間毎、9週間毎、10週間毎、11週間毎、12週間毎、又は1か月毎、2か月毎、3か月毎、4か月毎、5か月毎、6か月毎、7か月毎、8か月毎、9か月毎、10か月毎、11か月毎、12か月毎に、1回又は複数回の投与である。特定の実施形態では、投薬は、毎週1回の1回の投与である。特定の実施形態では、投薬は、2週間に1回の1回又は複数回の投与である。いくつかの実施形態では、投薬は、2週間に1回の1回の投与である。種々の実施形態では、投薬は、毎月の1回又は複数回の投与である。特定の実施形態では、投薬は、毎月の1回の投与である。
【0137】
種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎週4mg/kgで投与される。種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎週10mg/kgで投与される。種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎週20mg/kgで投与される。種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎週30mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎週40mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎週60mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎週80mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎週100mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎週160mg/kgで投与される。本明細書で使用される場合、毎週は、当該技術分野で認められる週1回という意味を有すると理解される。
【0138】
種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、隔週に4mg/kgで投与される。種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、隔週に10mg/kgで投与される。種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、隔週に20mg/kgで投与される。種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、隔週に30mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、隔週に40mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、隔週に60mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、隔週に80mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、隔週に100mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、隔週に160mg/kgで投与される。本明細書で使用される場合、隔週は、当該技術分野で認められる2週間に1回という意味を有すると理解される。
【0139】
種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3週間毎に4mg/kgで投与される。種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3週間毎に10mg/kgで投与される。種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3週間毎に20mg/kgで投与される。種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3週間毎に30mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3週間毎に40mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3週間毎に60mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3週間毎に80mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3週間毎に100mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3週間毎に160mg/kgで投与される。本明細書で使用される場合、3週間毎は、当該技術分野で認められる3週間に1回という意味を有すると理解される。
【0140】
種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎月4mg/kgで投与される。種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎月10mg/kgで投与される。種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎月20mg/kgで投与される。種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎月30mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎月40mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎月60mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎月80mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎月100mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎月160mg/kgで投与される。本明細書で使用される場合、毎月は、当該技術分野で認められる月1回という意味を有すると理解される。
【0141】
当該技術分野で理解され得るように、毎週、隔週、3週間毎、又は毎月の投与は、1回若しくは複数回の投与又は上記のようなサブ用量でよい。
【0142】
核酸分子は、リポソーム中のカプセル化、イオン導入法、又はヒドロゲル、シクロデキストリン、生分解性ナノカプセル、及び生体接着ミクロスフェアなどの本明細書に記載され、そして当該技術分野で知られている他のビヒクルへの組込みを含むがこれらに限定されない、当業者に知られている様々な方法によって細胞に投与することができる。特定の実施形態では、マイクロエマルション化技術用いて、親油性(水に不溶性)医薬品のバイオアベイラビリティを改善し得る。例としては、Trimetrine(Dordunoo,S.K.,et al.,Drug Development and Industrial Pharmacy,17(12),1685-1713,1991)及びREV 5901(Sheen,P.C.,et al.,J Pharm Sci 80(7),712-714,1991)が挙げられる。いくつかの利益の中で特に、マイクロエマルション化は、吸収を循環系の代わりにリンパ系に対して優先的に方向付け、それにより肝臓を迂回し、肝胆道循環中の化合物の破壊を防止することによって、バイオアベイラビリティの増強を提供する。
【0143】
本開示の1つの態様では、製剤は、本明細書で提供されるオリゴマーと、少なくとも1つの両親媒性担体とから形成されるミセルを含有し、ここで、ミセルは、約100nm未満の平均直径を有する。より好ましい実施形態では、約50nm未満の平均直径を有するミセルが提供され、さらにより好ましい実施形態では、約30nm未満、又はさらに約20nm未満の平均直径を有するミセルが提供される。
【0144】
全ての適切な両親媒性担体が企図されるが、現在好ましい担体は一般的に、一般に安全と認められる(GRAS)状態を有し、本開示の化合物を可溶すると共に、その後の段階で溶液が複合水相(例えば、ヒト胃腸管において見出されるものなど)と接触するときにそれをマイクロエマルション化することができるものである。通常、これらの要件を満たす両親媒性成分は2~20のHLB(親水性対親油性バランス)値を有し、その構造は、C-6~C-20の範囲の直鎖脂肪族ラジカルを含有する。例としては、ポリエチレン-グリコール化脂肪グリセリド及びポリエチレングリコールがある。
【0145】
両親媒性担体の例としては、飽和及び単不飽和ポリエチレングリコール化脂肪酸グリセリド、例えば、完全又は部分的に水素化された種々の植物油から得られるものが挙げられる。このような油は、有利には、トリ-、ジ-、及びモノ-脂肪酸グリセリド、並びに対応する脂肪酸のジ-及びモノ-ポリエチレングリコールエステルで構成されることができ、特に好ましい脂肪酸組成物は、カプリン酸4~10%、カプリン酸3~9%、ラウリン酸40~50%、ミリスチン酸14~24%、パルミチン酸4~14%及びステアリン酸5~15%を含む。別の有用な種類の両親媒性担体には、飽和又は単不飽和脂肪酸との部分エステル化ソルビタン及び/又はソルビトール(SPAN(登録商標)シリーズ)、又は対応するエトキシル化類似体(TWEEN(登録商標)シリーズ)が含まれる。
【0146】
Gelucireシリーズ、Labrafil、Labrasol、又はLauroglycol(全て、Gattefosse Corporation,Saint Priest,Franceにより製造及び流通される)、PEG-モノ-オレアート、PEG-ジ-オレアート、PEG-モノ-ラウラート及びジ-ラウラート、レシチン、ポリソルベート80など(米国及び世界のいくつかの会社により製造及び流通される)を含む市販の両親媒性担体は特に有用であり得る。
【0147】
特定の実施形態では、本開示の医薬組成物を適切な宿主細胞に導入するために、送達は、リポソーム、ナノカプセル、微粒子、ミクロスフェア、脂質粒子、ベシクルなどの使用により行うことができる。特に、本開示の医薬組成物は、脂質粒子、リポソーム、ベシクル、ナノスフェア、ナノ粒子などのいずれかにカプセル化された送達のために製剤化され得る。このような送達ビヒクルの製剤化及び使用は、既知の従来の技術を用いて実行することができる。
【0148】
本開示における使用に適した親水性ポリマーは、容易に水溶性であり、ベシクル形成脂質と共有結合し、且つ毒性効果を伴うことなくインビボで耐容性を示す(すなわち、生体適合性である)ものである。適切なポリマーには、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸(ポリラクチドとも呼ばれる)、ポリグリコール酸(ポリグリコリドとも呼ばれる)、ポリ乳酸-ポリグリコール酸コポリマー、及びポリビニルアルコールが含まれる。特定の実施形態では、ポリマーは、約100若しくは120ダルトンから約5,000若しくは10,000ダルトンまで、又は約300ダルトンから~約5,000ダルトンまでの分子量を有する。他の実施形態では、ポリマーは、約100~約5,000ダルトンの分子量を有する、又は約300~約5,000ダルトンの分子量を有するポリエチレングリコールである。特定の実施形態では、ポリマーは、750ダルトンのポリエチレングリコール(PEG(750))である。またポリマーはその中のモノマーの数によっても定義することができ、本開示の好ましい実施形態は少なくとも約3つのモノマーのポリマー、例えば、3つのモノマーからなるPEGポリマー(約150ダルトン)を使用する。
【0149】
本開示での使用に適し得る他の親水性ポリマーには、ポリビニルピロリドン、ポリメトキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、及びヒドロキシメチルセルロース又はヒドロキシエチルセルロースなどの誘導体化セルロースが含まれる。
【0150】
特定の実施形態では、本開示の製剤は、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、アクリル酸及びメタクリル酸エステルのポリマー、ポリビニルポリマー、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン及びそのコポリマー、セルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、乳酸及びグリコール酸のポリマー、ポリ酸無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリ(酪酸(butic acid))、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン)、多糖、タンパク質、ポリヒアルロン酸、ポリシアノアクリラート、並びにこれらのブレンド、混合物、又はコポリマーからなる群から選択される生体適合性ポリマーを含む。
【0151】
シクロデキストリンは、6個、7個又は8個のグルコース単位からなる環状オリゴ糖であり、それぞれ、ギリシャ文字α、β、又はγで指定される。グルコース単位は、α-1,4-グルコシド結合によって連結される。糖単位のいす形配座の結果、第2級ヒドロキシル基(C-2、C-3にある)は全て環の一方の側に位置し、C-6の第1級ヒドロキシル基は全て他方の側に位置する。結果として、外面が親水性であり、シクロデキストリンは水溶性になる。対照的に、シクロデキストリンの空洞は、C-3及びC-5原子の水素、及びエーテル様酸素によって覆われているために疎水性である。これらのマトリックスにより、例えば17α-エストラジオールなどのステロイド化合物を含む様々な比較的疎水性の化合物との複合体形成が可能になる(例えば、van Uden et al.Plant Cell Tiss.Org.Cult.38:1-3-113(1994)を参照)。複合体形成は、ファンデルワールス相互作用及び水素結合形成によって生じる。シクロデキストリンの化学的性質の概説については、Wenz,Agnew.Chem.Int.Ed.Engl.,33:803-822(1994)を参照されたい。
【0152】
シクロデキストリン誘導体の物理化学的特性は、その種類及び置換度に強く依存する。例えば、これらの水中での溶解性は、不溶性(例えば、トリアセチル-ベータ-シクロデキストリン)から、147%可溶性(w/v)(G-2-ベータ-シクロデキストリン)までの範囲である。さらに、これらは、多数の有機溶媒に可溶性である。シクロデキストリンの特性は、その溶解性を増大又は低下させることにより、種々の製剤成分の溶解性の制御を可能にする。
【0153】
多数のシクロデキストリン及びその調製方法が記載されている。例えば、Parmeter(I),et al.(米国特許第3,453,259号明細書)及びGramera,et al.(米国特許第3,459,731号明細書)は、電気的に中性のシクロデキストリンを記載した。他の誘導体には、カチオン特性を有するシクロデキストリン[Parmeter(II)、米国特許第3,453,257号明細書]、不溶性架橋シクロデキストリン(Solms,米国特許第3,420,788号明細書)、及びアニオン特性を有するシクロデキストリン[Parmeter(III),米国特許第3,426,011号明細書]が含まれる。アニオン特性を有するシクロデキストリン誘導体の中には、カルボン酸、亜リン酸、亜ホスフィン酸、ホスホン酸、リン酸、チオホスホン酸、チオスルフィン酸、及びスルホン酸が親シクロデキストリンに付加されたものがある[上記のParmeter(III)を参照]。さらに、Stella,et al.(米国特許第5,134,127号明細書)によって、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン誘導体が記載されている。
【0154】
リポソームは、水性内部区画を包囲する少なくとも1つの脂質二重層膜からなる。リポソームは、膜のタイプ及びサイズによって特徴付けることができる。小さい単層ベシクル(SUV)は単一の膜を有し、通常、直径が0.02~0.05μmの範囲であり;大きい単層ベシクル(LUV)は通常0.05μmよりも大きい。オリゴラメラ(oligolamellar)の大きいベシクル及び多重層ベシクルは、通常は同心円状の複数の膜層を有し、通常、0.1μmよりも大きい。いくつかの非同心円状の膜を有するリポソーム、すなわち、より大きいベシクル内にいくつかのより小さいベシクルが含有されたものは、多胞性ベシクルと呼ばれる。
【0155】
本開示の1つの態様は、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有するリポソームを含む製剤に関し、ここで、リポソーム膜は、積載容量が増大されたリポソームを提供するように配合される。代替的に又は付加的に、本開示の化合物はリポソームのリポソーム二重層内に含有されてもよいし、又はリポソーム二重層上に吸着されてもよい。本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは脂質界面活性剤により凝集され、リポソームの内部空間に支持され得る;これらの場合、リポソーム膜は、活性剤-界面活性剤凝集体の破壊効果に抵抗するように配合される。
【0156】
本開示の一実施形態によると、リポソームの脂質二重層は、PEG鎖が脂質二重層の内側表面からリポソームでカプセル化された内部空間内に伸長し、そして脂質二重層の外部から周囲環境に伸長するように、ポリエチレングリコール(PEG)で誘導体化された脂質を含有する。
【0157】
本開示のリポソーム内に含有される活性剤は、可溶化形態である。界面活性剤及び活性剤の凝集体(例えば、目的の活性剤を含有するエマルション又はミセルなど)は、本開示に従うリポソームの内部空間内に捕捉され得る。界面活性剤は活性剤を分散及び可溶化する作用をし、様々な鎖長(例えば、約C14~約C20)の生体適合性リゾホスファチジルコリン(LPG)を含むがこれらに限定されない、任意の適切な脂肪族、脂環式又は芳香族界面活性剤から選択され得る。またPEG-脂質などのポリマー誘導体化脂質はミセル/膜融合を阻害する作用をし、ポリマーの界面活性剤分子への添加は界面活性剤のCMCを低下させ、ミセル形成に役立つので、ポリマー誘導体化脂質はミセル形成のために使用され得る。好ましいのは、マイクロモル範囲内のCMOを有する界面活性剤であり;より高いCMCの界面活性剤を用いて、本開示のリポソーム内に捕捉されたミセルを調製してもよい。
【0158】
本開示に従うリポソームは、当該技術分野で知られている様々な技術のいずれかによって調製され得る。例えば、米国特許第4,235,871号明細書;PCT国際公開第96/14057号パンフレット;New RRC,Liposomes:A practical approach,IRL Press,Oxford(1990),Pages 33-104頁;Lasic DD,Liposomes from physics to applications,Elsevier Science Publishers BV,Amsterdam,1993を参照されたい。例えば、本開示のリポソームは、リポソーム中に所望される誘導体化脂質の最終モルパーセントに相当する脂質濃度で、親水性ポリマーで誘導体化された脂質を予め形成したリポソーム内に拡散させることによって、例えば、予め形成したリポソームを、脂質グラフトポリマーからなるミセルに曝露することによって調製され得る。親水性ポリマーを含有するリポソームは、当該技術分野で知られているように、均質化、脂質領域水和、又は押出技術によって形成することもできる。
【0159】
別の例示的な製剤化手順では、活性剤はまず音波処理により、疎水性分子を容易に可溶化させるリゾホスファチジルコリン又は他の低CMC界面活性剤(ポリマーグラフト脂質を含む)中に分散される。次に、得られた活性剤のミセル懸濁液を用いて、適切なモルパーセントのポリマーグラフト脂質又はコレステロールを含有する乾燥脂質サンプルを再水和させる。次に、当該技術分野で知られている押出技術を用いて、脂質及び活性剤懸濁液はリポソームに形成され、得られたリポソームは、標準的なカラム分離により、非カプセル化溶液から分離される。
【0160】
本開示の1つの態様では、リポソームは、選択されたサイズ範囲の実質的に均一なサイズを有するように調製される。1つの効果的なサイジング方法は、選択された均一の細孔径を有する一連のポリカーボネート膜を通してリポソームの水性懸濁液を押し出すことを含み;膜の細孔径は、その膜による押出によって生じるリポソームの最大サイズにほぼ相当する。例えば、米国特許第4,737,323号明細書(1988年4月12日)を参照されたい。特定の実施形態では、DharmaFECT(登録商標)及びリポフェクタミン(Lipofectamin)(登録商標)などの試薬を用いて、ポリヌクレオチド又はタンパク質を細胞内に導入することができる。
【0161】
本開示の製剤の放出特性は、カプセル化材料、カプセル化薬物の濃度、及び放出調整剤の存在に依存する。例えば、胃内のように低いpHのみで、又は腸内のようにより高いpHのみで放出するpH感受性コーティングを用いて、放出は、例えば、pH依存性であるように操作することができる。腸溶コーティングを使用して、胃を通過するまで放出を起こさせないことができる。多数のコーティング又は様々な材料内にカプセル化されたシアナミドの混合物を使用して、最初に胃内での放出、その後に腸内での放出を得ることができる。水の取込み又はカプセルからの拡散による薬物の放出を増大させることができる塩又は細孔形成剤を包含させることによって、放出を操作することもできる。薬物の溶解性を変更する賦形剤も、放出速度を制御するために使用することができる。マトリックスの分解又はマトリックスからの放出を増強する薬剤も取り込むことができる。これらは化合物に応じて、薬物に添加することも、別個の相として(すなわち、微粒子として)添加することも、又はポリマー相中に共溶解させることもできる。ほとんどの場合、その量は、0.1~30パーセント(w/wポリマー)にすべきである。分解増強剤のタイプには、硫酸アンモニウム及び塩化アンモニウムなどの無機塩、クエン酸、安息香酸、及びアスコルビン酸などの有機酸、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、及び水酸化亜鉛などの無機塩基、及び硫酸プロタミン、スペルミン、コリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンなどの有機塩基、並びにTween(登録商標)及びPluronic(登録商標)などの界面活性剤が含まれる。マトリックスに微細構造を加える細孔形成剤(すなわち、無機塩及び糖などの水溶性化合物)は、微粒子として添加される。その範囲は、通常、1~30パーセント(w/wポリマー)である。
【0162】
取込みは、粒子の腸内の滞留時間を変更することによって操作することもできる。これは、例えば、粘膜接着性ポリマーで粒子をコーティングするか、又は粘膜接着性ポリマーをカプセル化材料として選択することによって達成することができる。例としては、遊離カルボキシル基を有する大部分のポリマー、例えば、キトサン、セルロース、特にポリアクリラート(本明細書で使用される場合、ポリアクリラートは、アクリラート基、並びにシアノアクリラート及びメタクリラートなどの修飾アクリラート基を含むポリマーを指す)が挙げられる。
【0163】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、外科若しくは医療デバイス又はインプラント内に含有されるように製剤化されるか、或いは外科若しくは医療デバイス又はインプラントによって放出されるように適合され得る。特定の態様では、インプラントは、アンチセンスオリゴヌクレオチドでコーティングされてもよいし、或いは他の方法で、アンチセンスオリゴヌクレオチドにより処理されてもよい。例えば、ヒドロゲル、又は他のポリマー、例えば、生体適合性及び/又は生分解性ポリマーは、インプラントを本開示の医薬組成物でコーティングするために使用され得る(すなわち、組成物は、ヒドロゲル又は他のポリマーを用いることにより、医療デバイスと共に使用するように適合され得る)。医療デバイスを薬剤でコーティングするためのポリマー及びコポリマーは当該技術分野においてよく知られている。インプラントの例としては、ステント、薬剤溶出ステント、縫合糸、人工器官、血管カテーテル、透析カテーテル、血管移植片、人工心臓弁、心臓ペースメーカー、植込み型除細動器、IVニードル、骨の設置及び形成のためのデバイス、例えば、ピン、スクリュー、プレート、及び他のデバイス、並びに創傷治癒のための人工組織マトリックスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0164】
本明細書に提供される方法に加えて、本開示に従って使用するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、他の医薬品から類推して、人間医学又は獣医学で使用するのに便利な任意の方法で投与するために製剤化され得る。アンチセンスアンチセンスオリゴヌクレオチド及びその対応する製剤は、単独で、又は筋ジストロフィーの処置における他の治療戦略、例えば、筋芽細胞移植、幹細胞療法、アミノグリコシド抗生物質の投与、プロテアソーム阻害剤、及びアップレギュレーション療法(例えば、ジストロフィンの常染色体パラログであるユートロフィンの上方制御)と組み合わせて投与され得る。
【0165】
いくつかの実施形態では、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与の前に、同時に、又は後に、付加的な治療薬が投与され得る。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ステロイド及び/又は抗生物質と組み合わせて投与され得る。特定の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、バックグランドのステロイド理論(theory)(例えば、間欠的又は慢性的/連続的なバックグランドのステロイド療法)を受けている患者に投与される。例えば、いくつかの実施形態では、患者は、アンチセンスオリゴマーの投与の前に副腎皮質ステロイドで処置されており、継続してステロイド療法を受ける。いくつかの実施形態では、ステロイドはグルココルチコイド又はプレドニゾンである。
【0166】
当業者は、任意の特定の動物及び状態に対して最適な投与経路及び任意の投与量を容易に決定することができるので、記載される投与経路は単なる参考であることが意図される。機能性の新しい遺伝子材料をインビトロ及びインビボの両方で細胞内に導入するために多数のアプローチが試みられている(Friedmann(1989)Science,244:1275-1280)。これらのアプローチには、発現させる遺伝子の改変レトロウイルスへの組込み(Friedmann(1989)上記;Rosenberg(1991)Cancer Research 51(18),suppl.:5074S-5079S);非レトロウィルスベクター(例えば、アデノ随伴ウイルスベクター)への組込み(Rosenfeld,et al.(1992)Cell,68:143-155;Rosenfeld,et al.(1991)Science,252:431-434);又は異種プロモーター-エンハンサーエレメントと連結した導入遺伝子のリポソームによる送達(Friedmann(1989),上記;Brigham,et al.(1989)Am.J.Med.Sci.,298:278-281;Nabel,et al.(1990)Science,249:1285-1288;Hazinski,et al.(1991)Am.J.Resp.Cell Molec.Biol.,4:206-209;及びWang and Huang(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),84:7851-7855);リガンド特異的なカチオンベースの輸送系への結合((Wu and Wu(1988)J.Biol.Chem.,263:14621-14624)又はネイキッドDNA発現ベクターの使用(Nabel et al.(1990),上記);Wolff et al.(1990)Science,247:1465-1468)が含まれる。導入遺伝子の組織への直接注入は、局所的発現のみを引き起こす(Rosenfeld(1992)上記);Rosenfeld et al.(1991)上記;Brigham et al.(1989)上記;Nabel(1990)上記;及びHazinski et al.(1991)上記)。Brigham et al.group(Am.J.Med.Sci.(1989)298:278-281及びClinical Research(1991)39(abstract))は、DNAリポソーム複合体の静脈内又は気管内投与の後、インビボでのマウスの肺のみのトランスフェクションを報告している。ヒト遺伝子療法手順の総説の一例は、Anderson,Science(1992)256:808-813である。
【0167】
さらなる実施形態では、その全体が参照によって本明細書中に援用されるHan et
al.,Nat.Comms.7,10981(2016)において提供されるように、本開示の医薬組成物は付加的に炭水化物を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、5%のヘキソース炭水化物を含み得る。例えば、本開示の医薬組成物は、5%のグルコース、5%のフルクトース、又は5%のマンノースを含み得る。特定の実施形態では、本開示の医薬組成物は、2.5%のグルコース及び2.5%のフルクトースを含み得る。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、5体積%の量で存在するアラビノース、5体積%の量で存在するグルコース、5体積%の量で存在するソルビトール、5体積%の量で存在するガラクトース、5体積%の量で存在するフルクトース、5体積%の量で存在するキシリトール、5体積%の量で存在するマンノース、それぞれ2.5体積%の量で存在するグルコース及びフルクトースの組合せ、及び5.7体積%の量で存在するグルコース、2.86体積%の量で存在するフルクトース、並びに1.4体積%の量で存在するキシリトールの組合せから選択される炭水化物を含み得る。
【0168】
IV.キット
本開示は、遺伝性疾患(例えば、DMD)を有する患者の処置のためのキットも提供し、このキットは、少なくとも、適切な容器に包装されたアンチセンス分子(例えば、ゴロディルセン)を、その使用説明書と共に含む。またキットは、緩衝剤、安定剤などの周辺試薬も含有し得る。当業者は、上記の方法の適用が、多数の他の疾患の処置での使用に適したアンチセンス分子を同定するために広範な適用を有することを認識すべきである。
【実施例0169】
全ての実施例は、SRP-4053の安全性及び効力を試験する以下の進行中のファースト・イン・ヒューマン臨床治験から得られる。本明細書で報告される結果は、本試験のパート2の間の48週目に得られたものである。
【0170】
DMD患者におけるSRP-4053の第I/II相試験
ClinicalTrials.gov識別子:NCT02310906
これは、エクソン53スキッピングに適している欠失を有するデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者においてSRP-4053の安全性、耐容性、効力、及び薬物動態を評価するためのファースト・イン・ヒューマンの多用量2パート試験である。
試験の種類:介入
試験設計:割付け: 無作為化
介入モデル: 並行群間
マスキング: 四重(参加者、ケア提供者、研究者、結果査定者)
主目的:処置
公式タイトル:エクソン53スキッピングに適しているデュシェンヌ型筋ジストロフィー患者におけるSRP-4053の2パート、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、用量漸増、安全性、耐容性、及び薬物動態試験(パート1)、並びにその後の非盲検の効力及び安全性評価(パート2)
【0171】
材料及び方法
試験薬物
原薬のゴロディルセン(a/k/a SRP-4053)は、本明細書に記載される化学構造を有するPMOであり、Sarepta Therapeutics,Incにより供給された。ゴロディルセン薬物製品は、使い捨てバイアル内で供給される無菌等張リン酸緩衝水溶液として、50mg/mLの濃度で製剤化した。臨床環境におけるIV点滴による投与の前に、通常の生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム注入)により薬物製品を希釈した。
【0172】
患者:適格性
適格患者は、エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子のアウトオブフレーム欠失を有する6~15歳であった。
選択基準:
・ 遺伝子型で確認されたDMDと診断。
・ インタクトな右側及び左側の二頭筋又は別の上腕筋肉群。
・ 安定した肺機能及び心機能。
・ 6MWT、North Star Ambulatory Assessment、及び試験プロトコルで規定される起立(Gowers)試験における最低限の能力。
・ 少なくとも6か月間にわたって副腎皮質ステロイドを安定して投与されていること。
除外基準:
・ 実験的薬剤BMN-195(SMT C1100)又はPRO053による過去の処置。
・ 治験登録前の12週間以内の任意の他の実験的処置を用いた現在又は過去の処置。
・ 最近3か月以内の大手術。
・ 他の臨床的に重大な病気の存在
・ 最近3か月以内の理学療法体制の大きな変化。
その他の選択基準及び除外基準も適用され得る。
【0173】
試験設計
試験設計の概要は
図1及び直下の表に示される。
【0174】
【0175】
詳細な説明:
パート1:エクソン53スキッピングに適している欠失を有する遺伝子型で確認されたDMD患者における4用量レベルのSRP-4053の安全性、耐容性及び薬物動態を評価するための、無作為化、プラセボ対照、用量漸増である。
【0176】
スクリーニング/ベースライン:
エクソン53スクリーニングに適している、確認された突然変異を有するDMD患者は、適格性を保証するために4週~6週間のスクリーニング期間に参加した。処理前の脚の筋肉MRI及び筋肉MRS(MRS能力を有する選択された部位で)を実施し、皮膚生検及び筋生検を得た。機能試験(6分間歩行試験[6MWT]、North Star Ambulatory Assessment[NSAA]、及び他の機能尺度)を実施し、潜在的な疾患関連バイオマーカーのための血液サンプルを採取した。肺機能検査(PFT)、心エコー図(ECHO)、及びECGもスクリーニングの間に実施した。
【0177】
用量漸増:
患者を無作為化(2:1)して、SRP-4053又はプラセボを受けさせた。患者は、プラセボ又はSRP-4053の毎週のIV点滴を、それぞれ少なくとも2週間の増大する用量レベルにおいて受けた:1~2週目は4mg/kg/週;3~4週目は10mg/kg/週;5~6週目は20mg/kg/週;及び7週目からは30mg/kg/週。最後の患者が2回目の30mg/kgの用量を受けた後、パート2における投薬を開始する前に、独立DMCによりパート1の累積安全性データを審査した。DMCはパート1からの安全性データを審査し、試験の非盲検セグメント(パート2)において週1回30mg/kgのIV点滴に進むことが推奨された。
【0178】
パート2:エクソン53スキッピングに適していない欠失を有する未処置対照のDMD患者と比較して、エクソン53スキッピングに適している欠失を有する新たに登録されたDMD患者と共にパート1からの患者におけるSRP-4053の非盲検評価である。
【0179】
パート2は、エクソン53スキッピングに適していない突然変異を有するDMD患者の未処置の同時対照群と比較して、患者における週1回のSRP-4053の30mg/kgのIV点滴の安全性及び効力についての144週間の非盲検評価である。
【0180】
スクリーニング/ベースライン:
パート1(SRP-4053及びプラセボの両方)からの患者にパート2を継続させた。処置群の患者が全部で25人である非盲検SRP-4053処置のために、エクソン53スキッピングに適している欠失を有する新しいDMD患者を登録した。未処置対照群としての役割を果たすために、エクソン53スキッピングに適していない欠失を有するがそれ以外は適格性基準を満たす24人までのDMD患者もパート2で登録した。新しいパート2患者全員の適格性は、4~6週間のスクリーニング期間中に確認される。
【0181】
144週間の非盲検処置:
パート2において、処置群の全ての患者は、144週間にわたって週1回の30mg/kgのSRP-4053をIV点滴で受ける。新しいパート2の処置患者はベースラインの皮膚生検及び筋生検を受け、全ての処置患者は、パート2の48週目に2回目の筋生検を受けなければならない。また患者は、12~24週間毎に機能試験(パート1について上記した通り)及びPFTも受け、ECGを取る。有害事象及び併用薬物療法を、試験期間にわたって継続的にモニターし、収集する。試験適格性を確認した後、未処置対照群の患者は、身体検査及び実験的評価のスケジュールの省略、並びにPKサンプリング又は生検がないことを除いて、パート2の処置患者と同じ試験手順を受ける。
主要評価項目:
・ 有害事象の発生[時間枠:約12週間(パート1)]
・ 臨床検査異常(血液学、化学、凝固、尿検査)の発生[時間枠:約12週間(パート1)]
・ バイタルサイン及び身体検査の異常の発生[時間枠:約12週間(パート1)]
・ ECG及びECHOにおける異常の発生[時間枠:約12週間(パート1)]
・ 6分間歩行試験(6MWT)のベースラインからの変化[時間枠:ベースライン~144週目(パート2)]
・ ウエスタンブロットにより決定されるジストロフィンタンパク質レベル[時間枠:ベースライン~48週目(パート2)]
副次評価項目:
・ 血漿中の薬物濃度[時間枠:約12週間(パート1)]
・ 肺機能検査[時間枠:ベースライン~144週目(パート2)]
最大呼気圧(MEP)%、最大吸気圧(MIP)%
・ IHCにより決定されるジストロフィン陽性線維の割合[時間枠:ベースライン~48週目(パート2)]
・ エクソン53スキッピング[時間枠:ベースライン~48週目(パート2)]
他の評価項目:
・ 有害事象の発生[時間枠:144週間(パート2)]
・ 臨床検査異常の発生(血液学、化学、凝固、尿検査)[時間枠:144週間(パート2)]
・ バイタルサイン及び身体検査における異常の発生[時間枠:144週間(パート2)]
・ ECG及びECHOにおける異常の発生[時間枠:144週間(パート2)]
・ 免疫原性[時間枠:144週間(パート2)]
【0182】
実施例1:生化学的効力の評価
静脈内点滴により毎週投与される30mg/kgのSRP-4053の安全性、耐容性及びジストロフィン産生を評価するマルチサイトのファースト・イン・ヒューマン治験(ClinicalTrials.gov識別子:NCT02310906)に参加している25人の患者から、ベースライン及びオントリートメントにおける上腕二頭筋のペアの筋生検を得た。各手術について、2つの筋肉片:Aブロック及びBブロックを切除した。全てのアッセイに対してA及びBブロックを別々に分析した。
【0183】
筋生検は、ジストロフィンタンパク質量(ウエスタンブロット、主要生物学的エンドポイント)及びエクソンスキッピング(RT-PCR)を評価するために最適化された方法により検査した。新規の自動画像解析(MuscleMapTM)は免疫組織化学を使用して、ジストロフィンの局在化(平均線維強度)を評価した。
【0184】
ウエスタンブロット分析について:A及びBブロックを2通りのゲルで実行した=4回検査平均
【0185】
RT-PCR分析について:A及びBブロックを4通りで実行した=8回検査平均
【0186】
IHC分析について:A及びBブロックをレベル1及び2で実行した=4回検査平均
【0187】
ベースライン特徴:
ゴロディルセン処置コホートにおける25人の患者のベースライン特徴は、表1に要約される。エクソン53スキッピングに適している5つの異なる遺伝子型(45~52;48~52;49~52;50~52;及び52における突然変異欠失)を表した。17人の患者は、最初に試験のパート1でプラセボを受けた後にSRP-4053処置に変更されたか、或いはSRP-4053処置のために試験のパート2で登録された。8人の患者は、試験のパート1及びパート2でSRP-4053を受けた。全部で25人の患者がSRP-4053を受けた。
【0188】
【0189】
エクソンスキッピングの決定:
RT-PCR分析:
試験設計毎にベースライン及び48週間の時点でRT-PCRによりエクソンスキッピングを測定した。RT-PCR分析のために、製造業者のプロトコルに従ってTrizol試薬キットを用いて、RNAを細胞から単離した。NanoDropを用いて、RNAの濃度及び純度を決定した。表2に従う突然変異ペアの順方向プライマー及び逆方向プライマーを用いるRT-PCRによりエクソン53スキッピングを測定した。
【0190】
【0191】
スキップ及び非スキップ産物は、表3に従うアンプリコンサイズをもたらした。
【0192】
【0193】
RNAにRT-PCRを行った後、ゲルキャピラリー電気泳動を使用するLabChip GXを用いてサンプルを分析した。以下の式を用いてエクソンスキッピングパーセントを計算した:(スキップバンドの曲線下面積)/(スキップバンド及び非スキップバンドの曲線下面積の合計)×100。
【0194】
RT-PCR結果の概要は表4に示される。少なくとも48回の毎週のSRP-4053の投与を受けた25人の患者は全て、エクソンスキッピングのベースラインレベルを超える増大を示した(p<0.001)。
【0195】
【0196】
図2は、エクソンスキッピングのベースラインレベルを超える増大があることの決定を導く試験における25人の患者のそれぞれのRT-PCRデータ(ベースライン及びSRP-4053処置の48週間後)を示す(p<0.001)。
【0197】
ジストロフィン産生の決定:ウエスタンブロット分析
ウエスタンブロット分析のために、均質化緩衝液(4%のSDS、4Mの尿素、125mMのtris-HCl(pH6.8))を用いて、133μLの緩衝液中に直径約5mmの9~18×20μmの組織切片の比率で組織を均質化した。対応するライセートを集め、製造業者の説明書に従ってRC DC Protein Assay Kit(BioRad Cat.500-0122)を用いてタンパク質の定量化を行った。均質化緩衝液を用いて、BSA標準曲線の範囲内に入るように組織抽出物サンプルを1:10に希釈した。28μlのサンプルが、40μgのタンパク質、1X最終濃度のNuPAGE LDS Sample Buffer(Life Technologies Cat.NP0008,Carlsbad,California,USA)、及び1X最終濃度のNuPAGE Reducing Agent(10x)(Life Technologies Cat.NP0004)を含有するように、サンプルを調製した。タンパク質サンプルを105℃5分間で加熱した後、サンプルを遠心分離し、上清を、1レーン当たり40μgの総タンパク質負荷で、NuPAGE Novex 12ウェル、1mm、ミニ3~8%ポリアクリルアミドのトリス-アセタートゲル(Life Technologies Cat.EA0375)にロードした。色素の前面がゲルから外れるまでゲルを室温150ボルトで実行した。得られたタンパク質ゲルを、NuPAGE移動緩衝液(Life Technologies NP006-1)、10%のメタノール及び0.1%のNuPAGE抗酸化剤(Life Technologies NP0005)を用いて室温30ボルトで75分間、PVDF膜(Life Technologies
Cat.LC2007)に移動させた。
【0198】
タンパク質が移動したら、PVDF膜をTTBS緩衝液(1XTBS(Amresco
Cat.J640-4L)、0.1%(v/v)tween(登録商標)-20)中に浸した。膜を遮断緩衝液(TTBS中5%(w/v)の脱脂粉乳(Lab Scientific Cat.M0841))に移し、優しく揺らしながら4℃で一晩浸漬させた。遮断した後、遮断緩衝液を用いて1:20に希釈したDYS1(Leica Cat.NCL-DYS1)中室温で60分間、又は遮断緩衝液を用いて1:100,000に希釈した抗-α-アクチニン抗体(Sigma-Aldrich Cat.NA931V)中室温で20分間のいずれかで、膜をインキュベートした後、6回洗浄した(それぞれTTBSで5分間)。遮断緩衝液を用いて、西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされた抗マウスIgG(GE Healthcare Cat.NA931V)を1:40,000で希釈し、45分間(DYS1)又は15分間(α-アクチニン)膜に添加した後、再度6回洗浄した。ECL Prime Western Detection Kit(GE Healthcare Cat.RPN2232)を用いて、フィルムをゲルに曝露し、それに応じて現像した。現像したフィルムを、ImageQuant TL
Plusソフトウェア(バージョン8.1)を用いてスキャン及び分析し、Graphpadソフトウェアを用いて直線回帰分析を実施した。
【0199】
各ウエスタンブロットゲルは、4%、2%、1%、0.5%、0.25%の最終正常対照に対して、正常組織から抽出され、DMD組織抽出物に添加された総タンパク質を用いて作製された5点ジストロフィン標準曲線を含む(例えば、
図5A及び
図5Bを参照)。標準曲線サンプルを上記のように処理した。ジストロフィンバンド強度をゲル標準曲線と比較することにより、ジストロフィンタンパク質レベルを正常対照ジストロフィンレベルのパーセント(NC%)として決定した。
【0200】
ウエスタンブロットで測定したときの正常ジストロフィンタンパク質の平均%は、ベースラインの0.09%から、オントリートメントの1.02%まで増大し(範囲0.09~4.3%)、ベースラインからの平均変化が+0.93%であることが示された(p<0.001)。
【0201】
ウエスタンブロット結果の概要は表5に示される。患者は、ウエスタンブロットで測定したときにジストロフィンタンパク質のベースラインを超える統計的に有意な増大を実証した。
【0202】
【0203】
図3は、ジストロフィンタンパク質のベースラインを超える統計的に有意な増大があることの決定を導く試験における25人の患者のそれぞれのウエスタンブロットデータ(ベースライン及びSRP-4053処置の48週間後)を示す。
【0204】
エクソンスキッピングと、新規のジストロフィンタンパク質との間の正の相関関係が観察された(Spearman-r=0.500、p=0.011)。
【0205】
平均線維強度の分析は、新規のジストロフィンのベースラインを上回る統計的に有意な増大(p<0.001)と、ジストロフィンが正確に筋細胞膜に局在化されたこととを実証した(
図4A~
図5B)。
【0206】
エクソンスキッピング及び筋細胞膜ジストロフィン局在化が全患者において観察された。
【0207】
IHCの陽性ジストロフィン線維パーセントの概要は表6に示される。全ての患者は、IHCで測定したときに陽性ジストロフィン線維パーセントのベースラインを超える統計的に有意な増大を実証した。
【0208】
【0209】
表5及び表6並びに
図4A~
図5Bにおいて見られるように、ウエスタンブロットデータはPDPF及び強度と相関し、SRP-4053により処置から得られるDMD患者におけるジストロフィン産生が示される。
【0210】
本明細書で引用される全ての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願がそれぞれ参照によって援用されることを具体的に且つ個々に示したかのように、参照によって本明細書中に援用される。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-08-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年8月31日出願の米国特許出願第62/553,094号、2017年9月29日出願の米国仮出願第62/565,824号及び2018年8月30日出願の米国仮出願第62/725,129号の利益を主張する。上記で参照される出願の全教示内容がそれらの全内容の参照により組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、患者の筋ジストロフィーを処置するための改善された方法に関する。また、ヒトジストロフィン遺伝子におけるエクソン53スキッピングを促進するのに適した組成物も提供する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
様々な遺伝性疾患において、遺伝子の最終的な発現に対する突然変異の効果は、スプライシングプロセスの間に標的エクソンのスキッピングプロセスを介して調節することができる。正常機能性タンパク質がその中の突然変異のために早期に終結する場合、アンチセンス技術によっていくつかの機能性タンパク質の産生を回復させるための手段が、スプライシングプロセスの間の介入によって可能であることが示されており、そして疾患を引き起こす突然変異に関連するエクソンをいくつかの遺伝子から特異的に欠失させることができれば、天然タンパク質と同様の生物学的特性を有するか、又はエクソンに関連する突然変異によって引き起こされる疾患を改善するのに十分な生物活性を有する短縮タンパク質産物が時折産生され得る(例えば、Sierakowska,Sambade et al.1996;Wilton,Lloyd et al.1999;van Deutekom,Bremmer-Bout et al.2001;Lu,Mann et al.2003;Aartsma-Rus,Janson et al.2004を参照)。
【0004】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、タンパク質ジストロフィンの発現の欠陥によって引き起こされる。ジストロフィンは棒状の細胞質タンパク質であり、細胞膜を介して筋線維の細胞骨格と周囲の細胞外マトリックスとを接続するタンパク質複合体の極めて重要な部分である。ジストロフィンは筋線維内で重要な構造的役割を果たし、細胞外マトリックス及び細胞骨格を接続する。N末端領域はアクチンに結合するが、C末端はジストロフィン糖タンパク質複合体(DGC)の一部であり、筋細胞膜に及ぶ。mdxマウスのジストロフィン欠損筋線維は、収縮で誘発される筋細胞膜破裂に対して増大された感受性を提示することが示されている(Petrof et al.1993;Cirak
et al.2012を参照)。
【0005】
上記タンパク質をコードする遺伝子は、DNAの2百万を超えるヌクレオチドにわたって広がる79のエクソンを含有する。エクソンのリーディングフレームを変化させるか、或いは終止コドンを導入するか、或いは全アウトオブフレームエクソンの除去、又は1つ若しくは複数のエクソンの重複を特徴とする、任意のエクソン突然変異は、機能性ジストロフィンの産生を妨害して、DMDをもたらす可能性を有する。
【0006】
疾患発症は、出生時にクレアチンキナーゼレベルの上昇で実証することができ、生後1年以内に著しい運動障害がみられる可能性がある。7歳又は8歳までに、ほとんどのDMD患者は歩行が次第に困難になり、床から立ち上がる、及び階段を上る能力を失っていき、10歳~14歳までに大多数は車椅子に依存する。DMDは一律に致死的であり、罹患者は、通常、10代後半又は20代前半に呼吸不全及び/又は心不全が原因で死亡する。DMDの連続的な進行は疾患の全ての段階で治療的介入を可能にするが、処置は現在のところグルココルチコイドに限られており、これは、体重増加、行動変化、思春期変化、骨粗鬆症、クッシング様顔貌、成長阻害、及び白内障を含む多数の副作用に関連する。結果的に、この疾患の根本原因を処置するためのより良好な治療法を開発することが不可欠である。
【0007】
筋ジストロフィーのより低重症度の形態であるベッカー型筋ジストロフィー(BMD)は、突然変異、通常は1つ又は複数のエクソンの欠失が、全ジストロフィン転写物に沿って正しいリーディングフレームをもたらし、その結果、mRNAのタンパク質への翻訳が早期に終結しない場合に起こることが分かっている。突然変異したジストロフィンプレmRNAのプロセシングにおける上流及び下流のエクソンの連結によって遺伝子の正しいリーディングフレームが維持されれば、その結果は、いくらかの活性を保持する短い内部欠失を有するタンパク質をコードするmRNAであり、ベッカー表現型が生じる。
【0008】
長年、ジストロフィンタンパク質のリーディングフレームを変化させないエクソンの欠失はBMD表現型を引き起こし得るが、フレームシフトを生じるエクソン欠失はDMDを引き起こし得ることが知られている(Monaco,Bertelson et al.1988)。一般に、リーディングフレームを変化させ、したがって適切なタンパク質翻訳を妨害する点突然変異及びエクソン欠失を含むジストロフィン突然変異は、DMDをもたらす。また、一部のBMD及びDMD患者が、複数のエクソンをカバーするエクソン欠失を有することにも注意すべきである。
【0009】
DMDの処置のためのスプライススイッチングオリゴヌクレオチド(SSO)の安全性及び効力を試験する最近の臨床治験は、スプライソソームの立体的遮断によってプレmRNAの選択的スプライシングを誘発するためのSSO技術に基づいている(Cirak et al.,2011;Goemans et al.,2011;Kinali et al.,2009;van Deutekom et al.,2007)。しかしながら、これらの成功にもかかわらず、DMDの処置に利用可能な薬理学的な選択肢は限られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、患者においてジストロフィンを産生するため、並びにDMD及びBMDなどの筋ジストロフィーを処置するために、改善された組成物及び方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の要旨
本開示は、少なくとも部分的に、エクソン53スキッピングアンチセンスオリゴヌクレオチドであるゴロディルセン(golodirsen)による処置によって、患者のジストロフィンタンパク質がベースラインを超えて著しく増大されたことを示す臨床的証拠に基づく。さらに、エクソンスキッピングと、新規のジストロフィンタンパク質との間の正の相関関係が観察された。
【0012】
したがって、いくつかの態様では、本開示は、エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有する、それを必要としている患者において、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を処置するための方法であって、ある用量のゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む方法を提供する。
【0013】
いくつかの態様では、本開示は、エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有する、それを必要としているデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者において、mRNAリーディングフレームを回復させてエクソンスキッピングを誘発するための方法であって、ある用量のゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む方法を提供する。
【0014】
いくつかの態様では、本開示は、エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有する、それを必要としているデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者において、ジストロフィン産生を増大させるための方法であって、ある用量のゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む方法を提供する。
【0015】
いくつかの態様では、用量は、患者の体重当たり、4mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、又は50mg/kgの投与量で投与される。
【0016】
いくつかの態様では、用量は単一用量として投与される。いくつかの態様では、用量は週1回投与される。いくつかの態様では、用量は静脈内に投与される。いくつかの態様では、用量は点滴により静脈内に投与される。いくつかの態様では、用量は35~60分間にわたって点滴により静脈内に投与される。いくつかの態様では、用量は皮下注射により静脈内に投与される。
【0017】
いくつかの態様では、患者は40歳まで、30歳まで、又は21歳までである。いくつかの態様では、患者は1歳~21歳である。いくつかの態様では、患者は5歳~21歳である。いくつかの態様では、患者は6歳~15歳である。
【0018】
いくつかの態様では、本開示は前述又は関連の態様のいずれかに従う方法を提供し、ここで、患者は、エクソン3~52、4~52、5~52、6~52、9~52、10~52、11~52、13~52、14~52、15~52、16~52、17~52、19~52、21~52、23~52、24~52、25~52、26~52、27~52、28~52、29~52、30~52、31~52、32~52、33~52、34~52、35~52、36~52、37~52、38~52、39~52、40~52、41~52、43~52、42~52、45~52、47~52、48~52、49~52、50~52、54~58、54~61、54~63、54~64、54~66、54~76、54~77、及びエクソン52を含む群から選択されるDMD遺伝子の突然変異を有する。
【0019】
いくつかの態様では、本開示は前述又は関連の態様のいずれかに従う方法を提供し、ここで、患者は、ゴロディルセンを慢性的に投与される。いくつかの態様では、患者は、少なくとも48週間ゴロディルセンを投与される、いくつかの態様では、患者は、1年を超えて、2年を超えて、3年を超えて、4年を超えて、5年を超えて、10年を超えて、20年を超えて、又は30年を超えてゴロディルセンを投与される。
【0020】
いくつかの態様では、本開示は前述又は関連の態様のいずれかに従う方法を提供し、ここで、患者は、ゴロディルセンの投与の前に少なくとも6か月間、副腎皮質ステロイドを安定して投与されている。いくつかの態様では、患者は、ゴロディルセンの投与の前に少なくとも6か月間、副腎皮質ステロイドを安定して投与されており、ゴロディルセンの投与の間も副腎皮質ステロイドが続けられる。
【0021】
いくつかの態様では、本開示は前述又は関連の態様のいずれかに従う方法を提供し、ここで、ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩は医薬組成物として製剤化される。いくつかの態様では、ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩は、50mg/mLの濃度を有する医薬組成物として製剤化される。いくつかの態様では、ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩は50mg/mLの濃度を有する医薬組成物として製剤化され、100mg/2mLの剤形で提示される。いくつかの態様では、ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩は50mg/mLの濃度を有する医薬組成物として製剤化され、500mg/2mLの剤形で提示される。いくつかの態様では、剤形は使い捨てバイアル中に含有される。
【0022】
いくつかの態様では、ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩は、ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物として製剤化される。いくつかの態様では、薬学的に許容される担体はリン酸緩衝溶液である。
【0023】
いくつかの態様では、本開示は前述又は関連の態様のいずれかに従う方法を提供し、ここで、エクソンスキッピングは、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって測定される。
【0024】
いくつかの態様では、本開示は前述又は関連の態様のいずれかに従う方法を提供し、本方法は、患者のジストロフィン産生を増大させる。いくつかの態様では、ジストロフィン産生は、ウエスタンブロット分析によって測定される。いくつかの態様では、ジストロフィン産生は、免疫組織化学(IHC)によって測定される。
【0025】
いくつかの態様では、本開示は前述又は関連の態様のいずれかに従う方法を提供し、本方法は、ゴロディルセンを投与する前に、患者がエクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有することを確認することをさらに含む。
【0026】
いくつかの態様では、本開示は、それを必要としている患者において、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の処置に使用するためのゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩を提供し、患者は、エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有し、ここで、処置は、30mg/kgの単回静脈内用量のエテプリルセンを患者に週1回投与することを含む。
【0027】
いくつかの態様では、本開示は、それを必要としているデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者において、mRNAリーディングフレームを回復させてエクソンスキッピングを誘発するのに使用するためのゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩を提供し、患者は、エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有し、ここで、処置は、30mg/kgの単回静脈内用量のエテプリルセンを患者に週1回投与することを含む。
【0028】
いくつかの態様では、本開示は、それを必要としているデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者において、ジストロフィン産生を増大させるのに使用するためのゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩を提供し、患者は、エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有し、ここで、処置は、30mg/kgの単回静脈内用量のエテプリルセンを患者に週1回投与することを含む。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有する、それを必要としている患者において、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を処置するための方法であって、ある用量のゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩を前記患者に投与することを含む方法。
(項目2)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり4mgの投与量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり10mgの投与量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり20mgの投与量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり30mgの投与量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり40mgの投与量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり50mgの投与量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記用量が単一用量として投与される、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記用量が週1回投与される、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記用量が静脈内に投与される、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記用量が点滴により静脈内に投与される、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記用量が35~60分間にわたって点滴により静脈内に投与される、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記用量が皮下注射により静脈内に投与される、項目8に記載の方法。
(項目14)
前記患者が40歳までである、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記患者が30歳までである、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記患者が21歳までである、項目1~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記患者が1歳~21歳である、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記患者が5歳~21歳である、項目1~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記患者が6歳~15歳である、項目1~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記患者が、エクソン3~52、4~52、5~52、6~52、9~52、10~52、11~52、13~52、14~52、15~52、16~52、17~52、19~52、21~52、23~52、24~52、25~52、26~52、27~52、28~52、29~52、30~52、31~52、32~52、33~52、34~52、35~52、36~52、37~52、38~52、39~52、40~52、41~52、43~52、42~52、45~52、47~52、48~52、49~52、50~52、54~58、54~61、54~63、54~64、54~66、54~76、54~77、及びエクソン52からなる群から選択されるDMD遺伝子の突然変異を有する、項目1~19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記患者がゴロディルセンを慢性的に投与される、項目1~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記患者が少なくとも48週間ゴロディルセンを投与される、項目1~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記患者が1年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記患者が2年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記患者が3年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記患者が4年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記患者が5年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記患者が10年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記患者が20年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記患者が30年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記患者が、ゴロディルセンの投与の前に少なくとも6か月間、副腎皮質ステロイドを安定して投与されている、項目1~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記患者が、ゴロディルセンの投与の前に少なくとも6か月間、副腎皮質ステロイドを安定して投与されており、ゴロディルセンの投与の間も副腎皮質ステロイドが続けられる、項目1~31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が医薬組成物として製剤化される、項目1~32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が医薬組成物として製剤化される、項目1~33のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が、50mg/mLの濃度を有する医薬組成物として製剤化される、項目1~34のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が50mg/mLの濃度を有する医薬組成物として製剤化され、100mg/2mLの剤形で提示される、項目33に記載の方法。
(項目37)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が50mg/mLの濃度を有しており、500mg/2mLの剤形で提示される、項目33に記載の方法。
(項目38)
前記剤形が使い捨てバイアル中に含有される、項目35又は36に記載の方法。
(項目39)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が、ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物として製剤化される、項目33~37のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記薬学的に許容される担体がリン酸緩衝溶液である、項目38に記載の方法。
(項目41)
エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有する、それを必要としているデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者において、エクソンスキッピングを誘発するために、mRNAリーディングフレームを回復させる方法であって、ある用量のゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩を前記患者に投与することを含む方法。
(項目42)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり4mgの投与量で投与される、項目40に記載の方法。
(項目43)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり10mgの投与量で投与される、項目40に記載の方法。
(項目44)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり20mgの投与量で投与される、項目40に記載の方法。
(項目45)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり30mgの投与量で投与される、項目40に記載の方法。
(項目46)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり40mgの投与量で投与される、項目40に記載の方法。
(項目47)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり50mgの投与量で投与される、項目40に記載の方法。
(項目48)
前記用量が単一用量として投与される、項目40~46のいずれか一項に記載の方法。(項目49)
前記用量が週1回投与される、項目40~47のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
前記用量が静脈内に投与される、項目40~48のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記用量が点滴により静脈内に投与される、項目49に記載の方法。
(項目52)
前記用量が35~60分間にわたって点滴により静脈内に投与される、項目50に記載の方法。
(項目53)
前記用量が皮下注射により静脈内に投与される、項目47に記載の方法。
(項目54)
前記患者が40歳までである、項目1~53のいずれか一項に記載の方法。
(項目55)
前記患者が30歳までである、項目1~54のいずれか一項に記載の方法。
(項目56)
前記患者が21歳までである、項目1~55のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
前記患者が1歳~21歳である、項目1~56のいずれか一項に記載の方法。
(項目58)
前記患者が5歳~21歳である、項目1~57のいずれか一項に記載の方法。
(項目59)
前記患者が6歳~15歳である、項目1~58のいずれか一項に記載の方法。
(項目60)
前記患者が、エクソン3~52、4~52、5~52、6~52、9~52、10~52、11~52、13~52、14~52、15~52、16~52、17~52、19~52、21~52、23~52、24~52、25~52、26~52、27~52、28~52、29~52、30~52、31~52、32~52、33~52、34~52、35~52、36~52、37~52、38~52、39~52、40~52、41~52、43~52、42~52、45~52、47~52、48~52、49~52、50~52、54~58、54~61、54~63、54~64、54~66、54~76、54~77、及びエクソン52からなる群から選択されるDMD遺伝子の突然変異を有する、項目1~59のいずれか一項に記載の方法。
(項目61)
前記患者がゴロディルセンを慢性的に投与される、項目1~60のいずれか一項に記載の方法。
(項目62)
前記患者が少なくとも48週間ゴロディルセンを投与される、項目1~61のいずれか一項に記載の方法。
(項目63)
前記患者が1年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~62のいずれか一項に記載の方法。
(項目64)
前記患者が2年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~63のいずれか一項に記載の方法。
(項目65)
前記患者が3年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~64のいずれか一項に記載の方法。
(項目66)
前記患者が4年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~65のいずれか一項に記載の方法。
(項目67)
前記患者が5年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~66のいずれか一項に記載の方法。
(項目68)
前記患者が10年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~67のいずれか一項に記載の方法。
(項目69)
前記患者が20年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~68のいずれか一項に記載の方法。
(項目70)
前記患者が30年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~69のいずれか一項に記載の方法。
(項目71)
前記患者が、ゴロディルセンの投与の前に少なくとも6か月間、副腎皮質ステロイドを安定して投与されている、項目1~70のいずれか一項に記載の方法。
(項目72)
前記患者が、ゴロディルセンの投与の前に少なくとも6か月間、副腎皮質ステロイドを安定して投与されており、ゴロディルセンの投与の間も副腎皮質ステロイドが続けられる、項目1~71のいずれか一項に記載の方法。
(項目73)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が医薬組成物として製剤化される、項目1~72のいずれか一項に記載の方法。
(項目74)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が医薬組成物として製剤化される、項目1~73のいずれか一項に記載の方法。
(項目75)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が、50mg/mLの濃度を有する医薬組成物として製剤化される、項目1~74のいずれか一項に記載の方法。
(項目76)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が50mg/mLの濃度を有する医薬組成物として製剤化され、100mg/2mLの剤形で提示される、項目72に記載の方法。
(項目77)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が50mg/mLの濃度を有しており、500mg/2mLの剤形で提示される、項目72に記載の方法。
(項目78)
前記剤形が使い捨てバイアル中に含有される、項目74又は75に記載の方法。
(項目79)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が、ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物として製剤化される、項目72~76のいずれか一項に記載の方法。
(項目80)
前記薬学的に許容される担体がリン酸緩衝溶液である、項目77に記載の方法。
(項目81)
エクソンスキッピングが逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって測定される、項目40~78のいずれか一項に記載の方法。
(項目82)
前記方法が、前記患者のジストロフィン産生を増大させる、項目1~79のいずれか一項に記載の方法。
(項目83)
前記ジストロフィン産生がウエスタンブロット分析によって測定される、項目80に記載の方法。
(項目84)
前記ジストロフィン産生が免疫組織化学(IHC)によって測定される、項目80に記載の方法。
(項目85)
エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有する、それを必要としているデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者において、ジストロフィン産生を増大させるための方法であって、ある用量のゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩を前記患者に投与することを含む方法。
(項目86)
前記用量が体重1kg当たり4mgの投与量で投与される、項目80に記載の方法。
(項目87)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり10mgの投与量で投与される、項目80に記載の方法。
(項目88)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり20mgの投与量で投与される、項目80に記載の方法。
(項目89)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり30mgの投与量で投与される、項目80に記載の方法。
(項目90)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり40mgの投与量で投与される、項目80に記載の方法。
(項目91)
前記用量が前記患者の体重1kg当たり50mgの投与量で投与される、項目80に記載の方法。
(項目92)
前記用量が単一用量として投与される、項目80~86のいずれか一項に記載の方法。
(項目93)
前記用量が週1回投与される、項目80~87のいずれか一項に記載の方法。
(項目94)
前記用量が静脈内に投与される、項目80~88のいずれか一項に記載の方法。
(項目95)
前記用量が点滴により静脈内に投与される、項目89に記載の方法。
(項目96)
前記用量が35~60分間にわたって点滴により静脈内に投与される、項目90に記載の方法。
(項目97)
前記用量が皮下注射により静脈内に投与される、項目89に記載の方法。
(項目98)
前記患者が40歳までである、項目1~97のいずれか一項に記載の方法。
(項目99)
前記患者が30歳までである、項目1~98のいずれか一項に記載の方法。
(項目100)
前記患者が21歳までである、項目1~99のいずれか一項に記載の方法。
(項目101)
前記患者が1歳~21歳である、項目1~100のいずれか一項に記載の方法。
(項目102)
前記患者が5歳~21歳である、項目1~101のいずれか一項に記載の方法。
(項目103)
前記患者が6歳~15歳である、項目1~102のいずれか一項に記載の方法。
(項目104)
前記患者が、エクソン3~52、4~52、5~52、6~52、9~52、10~52、11~52、13~52、14~52、15~52、16~52、17~52、19~52、21~52、23~52、24~52、25~52、26~52、27~52、28~52、29~52、30~52、31~52、32~52、33~52、34~52、35~52、36~52、37~52、38~52、39~52、40~52、41~52、43~52、42~52、45~52、47~52、48~52、49~52、50~52、54~58、54~61、54~63、54~64、54~66、54~76、54~77、及びエクソン52からなる群から選択されるDMD遺伝子の突然変異を有する、項目1~103のいずれか一項に記載の方法。
(項目105)
前記患者がゴロディルセンを慢性的に投与される、項目1~104のいずれか一項に記載の方法。
(項目106)
前記患者が少なくとも48週間ゴロディルセンを投与される、項目1~105のいずれか一項に記載の方法。
(項目107)
前記患者が1年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~106のいずれか一項に記載の方法。
(項目108)
前記患者が2年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~107のいずれか一項に記載の方法。
(項目109)
前記患者が3年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~108のいずれか一項に記載の方法。
(項目110)
前記患者が4年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~109のいずれか一項に記載の方法。
(項目111)
前記患者が5年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~110のいずれか一項に記載の方法。
(項目112)
前記患者が10年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~111のいずれか一項に記載の方法。
(項目113)
前記患者が20年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~112のいずれか一項に記載の方法。
(項目114)
前記患者が30年を超えてゴロディルセンを投与される、項目1~113のいずれか一項に記載の方法。
(項目115)
前記患者が、ゴロディルセンの投与の前に少なくとも6か月間、副腎皮質ステロイドを安定して投与されている、項目1~114のいずれか一項に記載の方法。
(項目116)
前記患者が、ゴロディルセンの投与の前に少なくとも6か月間、副腎皮質ステロイドを安定して投与されており、ゴロディルセンの投与の間も副腎皮質ステロイドが続けられる、項目1~115のいずれか一項に記載の方法。
(項目117)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が医薬組成物として製剤化される、項目1~116のいずれか一項に記載の方法。
(項目118)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が医薬組成物として製剤化される、項目1~117のいずれか一項に記載の方法。
(項目119)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が、50mg/mLの濃度を有する医薬組成物として製剤化される、項目1~118のいずれか一項に記載の方法。
(項目120)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が50mg/mLの濃度を有する医薬組成物として製剤化され、100mg/2mLの剤形で提示される、項目113に記載の方法。
(項目121)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が50mg/mLの濃度を有しており、500mg/2mLの剤形で提示される、項目113に記載の方法。
(項目122)
前記剤形が使い捨てバイアル中に含有される、項目112又は113に記載の方法。
(項目123)
ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩が、ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物として製剤化される、項目111~116のいずれか一項に記載の方法。
(項目124)
前記薬学的に許容される担体がリン酸緩衝溶液である、項目117に記載の方法。
(項目125)
前記ジストロフィン産生がウエスタンブロット分析によって測定される、項目80~118のいずれか一項に記載の方法。
(項目126)
前記ジストロフィン産生が免疫組織化学(IHC)によって測定される、項目80~118のいずれか一項に記載の方法。
(項目127)
ゴロディルセンを投与する前に、前記患者がエクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有することを確認することをさらに含む、項目1~126のいずれか一項に記載の方法。
(項目128)
それを必要としている患者において、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の処置に使用するためのゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩であって、前記患者が、エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有し、前記処置が、30mg/kgの単回静脈内用量のエテプリルセンを前記患者に週1回投与することを含む、ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩。
(項目129)
それを必要としているデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者において、mRNAリーディングフレームを回復させてエクソンスキッピングを誘発するのに使用するためのゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩であって、前記患者が、エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有し、前記処置が、30mg/kgの単回静脈内用量のエテプリルセンを前記患者に週1回投与することを含む、ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩。
(項目130)
それを必要としているデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者において、ジストロフィン産生を増大させるのに使用するためのゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩であって、前記患者が、エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子の突然変異を有し、前記処置が、30mg/kgの単回静脈内用量のエテプリルセンを前記患者に週1回投与することを含む、ゴロディルセン又はその薬学的に許容される塩。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】DMD患者の試験設計におけるSRP-4053の第I/II相試験のフローチャートの概要である。
【
図2】上記試験の25人の患者のそれぞれについて、RT-PCRデータ(ベースライン及びSRP-4053処置の48週間後)を示す。
【
図3】上記試験の25人の患者のそれぞれについて、ウエスタンブロットデータ(ベースライン及びSRP-4053処置の48週間後)を示す。
【
図4A】全筋線維を示すためにラミニンについて染色された、ベースライン及びオントリートメント(on-treatment)における単一の患者(実施例1)からの筋生検の蛍光免疫染色を示す。
【
図4B】ジストロフィンについて染色された、
図4Aからの筋生検のセクション(1~3)の蛍光免疫染色を示す。
【
図5A】全筋線維を示すためにラミニンについて染色された、ベースライン及びオントリートメントにおける単一の患者(実施例2)からの筋生検の蛍光免疫染色を示す。
【
図5B】ジストロフィンについて染色された、
図5Aからの筋生検のセクション(1~3)の蛍光免疫染色を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
本開示の実施形態は、ヒトジストロフィン遺伝子においてエクソン53スキッピングを誘発するように特別に設計されたアンチセンスオリゴヌクレオチドであるゴロディルセンを投与することによって、DMDなどの筋ジストロフィーを処置するための方法に関する。ジストロフィンは筋機能において極めて重要な役割を果たし、種々の筋肉関連疾患は、この遺伝子の突然変異型を特徴とする。したがって、特定の実施形態では、本明細書に記載される方法は、DMDにおいて見出される突然変異したジストロフィン遺伝子などの突然変異型ヒトジストロフィン遺伝子においてエクソン53スキッピングを誘発するために使用され得る。
【0031】
したがって、本開示は、患者においてエクソン53スキッピングを誘発することによって、DMDなどの筋ジストロフィーを処置するための方法に関する。さらに、本開示は、DMD患者においてmRNAリーディングフレームを回復させてエクソンスキッピングを誘発するための方法に関する。また本開示は、DMD患者においてジストロフィン産生を増大させるための方法にも関する。
【0032】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の実施又は試験において本明細書に記載されるものと同様又は同等の任意の方法及び材料を使用することができるが、好ましい方法及び材料が記載される。本発明の目的のために、次の用語は以下で定義される。
【0033】
I.定義
「約」とは、基準の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量又は長さに対して30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1%ほど変動する、数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量又は長さを意味する。
【0034】
対象又は患者に関して本明細書で使用される「エクソン53スキッピングに適している」は、ジストロフィン遺伝子のエクソン53のスキッピングがなければリーディングフレームのフレームがずれ、それによりプレmRNAの翻訳が妨害され、対象又は患者がジストロフィンを産生することができなくなる、ジストロフィン遺伝子の1つ又は複数の突然変異を有する対象及び患者を含むことが意図される。ジストロフィン遺伝子の以下のエクソンの突然変異の非限定的な例はエクソン53スキッピングに適しており、例えば、エクソン3~52、4~52、5~52、6~52、9~52、10~52、11~52、13~52、14~52、15~52、16~52、17~52、19~52、21~52、23~52、24~52、25~52、26~52、27~52、28~52、29~52、30~52、31~52、32~52、33~52、34~52、35~52、36~52、37~52、38~52、39~52、40~52、41~52、43~52、42~52、45~52、47~52、48~52、49~52、50~52、54~58、54~61、54~63、54~64、54~66、54~76、54~77、又はエクソン52の欠失が含まれる。エクソンスキッピングに適しているジストロフィン遺伝子の突然変異を患者が有するかどうかの決定は、十分に当業者の範囲内である(例えば、Aartsma-Rus et al.(2009)Hum Mutat.30:293-299、Gurvich et al.,Hum Mutat.2009;30(4)633-640、及びFletcher et al.(2010)Molecular Therapy 18(6)1218-1223を参照)。
【0035】
「アンチセンスオリゴマー」及び「アンチセンス化合物」及び「アンチセンスオリゴヌクレオチド」及び「オリゴマー」及び「オリゴヌクレオチド」という用語は本開示では互換的に使用され、サブユニット間結合によって連結された一連の環状サブユニットを指し、各環状サブユニットは、(i)リボース糖又はその誘導体と、(ii)塩基対形成部分の順序がワトソン・クリック塩基対合によって核酸(通常、RNA)内の標的配列に相補的な塩基配列を形成して、標的配列内に核酸:オリゴマーヘテロ二本鎖を形成するように、それに結合した塩基対形成部分とからなる。特定の実施形態では、オリゴマーはPMOである。他の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは2’-O-メチルホスホロチオアートである。他の実施形態では、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、又は2’-O,4’-C-エチレン架橋核酸(ENA)などの架橋核酸(BNA)である。
【0036】
「相補的」及び「相補性」という用語は、ワトソン・クリック塩基対形成の法則によって互いに関連する2つ以上のオリゴマー(すなわち、それぞれが核酸塩基配列を含む)を指す。例えば、核酸塩基配列「T-G-A(5’→3’)」は、核酸塩基配列「A-C-T(3’→5’)」に対して相補的である。相補性は「部分的」でもよく、この場合、所与の核酸塩基配列の全部よりも少ない核酸塩基が塩基対合の規則にしたがって他の核酸塩基配列とマッチする。例えば、いくつかの実施形態では、所与の核酸塩基配列と他の核酸塩基配列との間の相補性は、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%又は約95%であり得る。或いは、例を続けるために、所与の核酸塩基配列と他の核酸塩基配列との間に、「完全」又は「完璧」な(100%の)相補性が存在してもよい。核酸塩基配列間の相補性の度合いは、配列間のハイブリダイゼーションの効率及び強度に対して著しい効果を有する。
【0037】
「ジストロフィン」は棒状の細胞質タンパク質であり、細胞膜を介して筋線維の細胞骨格と周囲の細胞外マトリックスとを接続するタンパク質複合体の極めて重要な部分である。ジストロフィンは複数の機能ドメインを含有する。例えば、ジストロフィンは、アミノ酸14~240付近にアクチン結合ドメインを含有し、アミノ酸253~3040付近に中央ロッドドメインを含有する。この大きい中央ドメインは、約109のアミノ酸の24のスペクトリン様三重らせんエレメントによって形成され、これは、アルファ-アクチニン及びスペクトリンとの相同性を有する。リピートは、通常、ヒンジ領域とも呼ばれる4つのプロリンに富んだ非リピートセグメントによって中断される。リピート15及び16は、ジストロフィンのタンパク質分解性切断のための主要部位を提供すると思われる18アミノ酸のストレッチによって分離されている。大部分のリピート間の配列同一性は、10~25%の範囲である。1つのリピートは、3つのアルファ-ヘリックス:1、2及び3を含有する。アルファ-ヘリックス1及び3はそれぞれ7つのヘリックスターンによって形成され、恐らく、疎水性界面を介してコイルドコイルとして相互作用する。アルファ-ヘリックス2はより複雑な構造を有し、グリシン又はプロリン残基により分離された4つ及び3つのヘリックスターンのセグメントによって形成される。各リピートは、通常アルファ-ヘリックス2の最初の部分におけるアミノ酸47と48との間のイントロンにより中断された2つのエクソンによってコードされる。他のイントロンは、リピート内の異なる位置において見出され、通常、ヘリックス-3にわたって点在する。またジストロフィンは、ほぼアミノ酸3080~3360に、粘菌(ディクチオステリウム・ディスコイデウム(Dictyostelium discoideum))アルファ-アクチニンのC末端ドメインとの相同性を示す、システインに富んだセグメント(すなわち、280のアミノ酸中の15のシステイン)を含む、システインに富んだドメインも含有する。カルボキシ末端ドメインは、ほぼアミノ酸3361~3685にある。
【0038】
ジストロフィンのアミノ末端はF-アクチンに結合し、カルボキシ末端は筋細胞膜においてジストロフィン関連タンパク質複合体(DAPC)に結合する。DAPCは、ジストログリカン、サルコグリカン、インテグリン及びカベオリンを含み、これらの成分のいずれかにおける突然変異は、常染色体によって遺伝する筋ジストロフィーを引き起こす。ジストロフィンが存在しないときにDAPCは不安定化しており、これは、メンバータンパク質のレベルの減少をもたらし、次には、進行性の線維損傷及び膜漏出を引き起こす。デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)及びベッカー型筋ジストロフィー(BMD)などの筋ジストロフィーの種々の形態において、筋細胞は、主として、不正確なスプライシングをもたらす遺伝子配列の突然変異のために、変化した機能的に欠陥のある形態のジストロフィンを産生するか、又はジストロフィンを全く産生しない。欠陥のあるジストロフィンタンパク質の優勢な発現、又はジストロフィン若しくはジストロフィン様タンパク質の完全な欠乏は、上記のように、筋変性の急速な進行をもたらす。これに関して、「欠陥のある」ジストロフィンタンパク質は、当該技術分野において知られているようにDMD又はBMDを有する特定の対象において産生されるジストロフィンの形態によって、又は検出可能なジストロフィンが存在しないことによって特徴付けることができる。
【0039】
「エクソン」は、タンパク質をコードする画定されたセクション、又はプレプロセシングされた(pre-processed)(又は前駆体)RNAのいずれかの部分がスプライシングによって除去された後に成熟形態のRNA分子において表される核酸配列を指す。成熟RNA分子は、メッセンジャーRNA(mRNA)、又はrRNA又はtRNAなどの非コードRNAの機能形態であり得る。ヒトジストロフィン遺伝子は、約79のエクソンを有する。
【0040】
「イントロン」は、タンパク質に翻訳されない核酸領域(遺伝子内)を指す。イントロンは、前駆体mRNA(プレmRNA)に翻訳され、続いて成熟RNAの形成の間にスプライシングにより除去される非コードセクションである。
【0041】
「有効量」又は「治療的に有効な量」は、単一用量として、又は一連の用量の一部として哺乳類対象に投与され、所望の治療効果を生じさせるのに有効なアンチセンスオリゴマー(例えば、ゴロディルセンを含む)などの治療化合物の量を指す。アンチセンスオリゴマーの場合、この効果は、選択された標的配列の翻訳又は天然のスプライス-プロセシングの阻害、又はエクソンスキッピングにより、ジストロフィンの産生を増大させることによってもたらすことができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、有効量は、対象を処置するためにある期間にわたって少なくとも約4mg/kg、少なくとも10mg/kg又は少なくとも20mg/kgのアンチセンスオリゴマー又はアンチセンスオリゴマーを含む組成物である。いくつかの実施形態では、対象においてジストロフィン陽性線維の数を増大させるために、有効量は、少なくとも約4mg/kg、少なくとも10mg/kg又は少なくとも20mg/kgのアンチセンスオリゴマー又はアンチセンスオリゴマーを含む組成物である。種々の実施形態では、有効量は、少なくとも約4mg/kg、少なくとも10mg/kg~約20mg/kg、20mg/kg~約30mg/kg、約25mg/kg~約30mg/kg、又は約30mg/kg~約50mg/kgである。いくつかの実施形態では、有効量は約30mg/kg又は約50mg/kgである。
【0043】
種々の実施形態では、対象におけるジストロフィンの産生を増大させるために、有効量は、少なくとも約4mg/kg、少なくとも10mg/kg又は少なくとも20mg/kgのアンチセンスオリゴマー又はアンチセンスオリゴマーを含む組成物である。種々の実施形態では、有効量は、少なくとも約4mg/kg、少なくとも10mg/kg~約20mg/kg、20mg/kg~約30mg/kg、約25mg/kg~約30mg/kg、又は約30mg/kg~約50mg/kgである。いくつかの実施形態では、有効量は約30mg/kg又は約50mg/kgである。
【0044】
特定の実施形態では、例えば6MWTにおける患者の歩行距離を、健康な同等者に対して20%の欠乏から安定化、維持又は改善させるために、有効量は、少なくとも約4mg/kg、少なくとも10mg/kg又は少なくとも20mg/kgのアンチセンスオリゴマー又はアンチセンスオリゴマーを含む組成物である。種々の実施形態では、有効量は、少なくとも約4mg/kg、少なくとも10mg/kg~約20mg/kg、20mg/kg~約30mg/kg、約25mg/kg~約30mg/kg、又は約30mg/kg~約50mg/kgである。いくつかの実施形態では、有効量は約30mg/kg又は約50mg/kgである。
【0045】
特定の実施形態では、有効量は、少なくとも24週間、少なくとも36週間、又は少なくとも48週間にわたって少なくとも約4mg/kg、10mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、又は約30mg/kg~約50mg/kgであり、それにより、対象においてジストロフィン陽性線維の数が増大される。特定の実施形態では、対象におけるジストロフィン陽性線維の増大は、正常の少なくとも20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%である。いくつかの実施形態では、処置は、患者においてジストロフィン陽性線維の数を正常の20~60%、又は30~50%まで増大させる。
【0046】
特定の実施形態では、例えば6MWTにおける患者の歩行距離を、健康な同等者に対して20%の欠乏から安定化又は改善させるために、有効量は、少なくとも24週間、少なくとも36週間、又は少なくとも48週間にわたって少なくとも約4mg/kg、少なくとも約10mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、又は約30mg/kg~約50mg/kgである。
【0047】
種々の実施形態では、有効量は、少なくとも24週間、少なくとも36週間、又は少なくとも48週間にわたって少なくとも約4mg/kg、少なくとも約10mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、又は約30mg/kg~約50mg/kgであり、それにより患者においてジストロフィン産生が増大される。いくつかの実施形態では、増大したジストロフィン産生は、健康な同等者に対して、約0.1%、0.2% 0.3% 0.5%、0.7%、0.9%、1%、1.01%、1.5%、2%、2.01%、2.5%、3%、3.01%、3.5%、4%、4.01%、4.5%、5%、5.01%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、15%、15.5%、16%、16.5%、17%、17.5%、18%、18.5%、19%、19.5%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、40%、45%、50%、55%、又は60%である。特定の実施形態では、ジストロフィン産生の増大は、健康な同等者に対して、約0.1%~0.5%、0.5%~0.9%、0.8%~1%、0.9%~1.2%、0.9%~1.0%、0.9%~1.01%、1%~1.01%、1%~1.5%、1.5%~2%、1.9%~2.0%、1.9%~2.01%、2%~2.01%、2%~2.5%、2.5%~3%、2.9%~3.0%、2.9%~3.01%、2%~3.01%、3%~3.5%、3.5%~4%、4%~4.5%、4.5%~5%、5%~6%、6%~7%、7%~8%、8%~9%、9%~10%、1%~2%、1%~3%、1%~5%、2%~4%、2%~5%、4%~6%、5%~8%、8%~10%、1%~5%、2%~6%、3%~7%、4%~8%、5%~10%、10%~12%、12%~15%、15%~20%、17%~20%、20%~22%、20%~25%、25%~30%、又は30%~35%であり得る。
【0048】
「増強する」若しくは「増強すること」又は「増大させる」若しくは「増大させること」又は「刺激する」若しくは「刺激すること」とは一般的に、1つ若しくは複数のアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、ゴロディルセンを含む)又はその医薬組成物が、アンチセンスオリゴヌクレオチドがない場合に、又は対照化合物によって引き起こされる反応と比較して、細胞又は対象においてより大きい生理応答(すなわち、下流の効果)を生じさせるか、又は引き起こす能力を指す。測定可能な生理応答は、当該技術分野における理解及び本明細書の記載から明らかな反応の中でも特に、筋組織における機能形態のジストロフィンタンパク質の発現(又は産生)の増大又はジストロフィン関連の生物活性の増大を含み得る。また筋機能の約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%の増大又は改善を含む、筋機能の増大も測定することができる。筋線維の約1%、2%、5%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%におけるジストロフィン発現の増大を含む、機能性ジストロフィンを発現する筋線維の割合を測定することもできる。例えば、線維の25~30%がジストロフィンを発現すれば、約40%の筋機能の改善が生じ得ることが示されている(例えば、DelloRusso et al,Proc Natl Acad Sci USA 99:12979-12984,2002を参照)。いくつかの実施形態では、増大したジストロフィン産生は、健康な同等者に対して、約0.1%、0.2% 0.3% 0.5%、0.7%、0.9%、1%、1.01%、1.5%、2%、2.01%、2.5%、3%、3.01%、3.5%、4%、4.01%、4.5%、5%、5.01%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、15%、15.5%、16%、16.5%、17%、17.5%、18%、18.5%、19%、19.5%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、40%、45%、50%、55%、又は60%である。特定の実施形態では、ジストロフィン産生の増大は、健康な同等者に対して、約0.1%~0.5%、0.5%~0.9%、0.8%~1%、0.9%~1.2%、0.9%~1.0%、0.9%~1.01%、1%~1.01%、1%~1.5%、1.5%~2%、1.9%~2.0%、1.9%~2.01%、2%~2.01%、2%~2.5%、2.5%~3%、2.9%~3.0%、2.9%~3.01%、2%~3.01%、3%~3.5%、3.5%~4%、4%~4.5%、4.5%~5%、5%~6%、6%~7%、7%~8%、8%~9%、9%~10%、1%~2%、1%~3%、1%~5%、2%~4%、2%~5%、4%~6%、5%~8%、8%~10%、1%~5%、2%~6%、3%~7%、4%~8%、5%~10%、10%~12%、12%~15%、15%~20%、17%~20%、20%~22%、20%~25%、25%~30%、又は30%~35%であり得る。本明細書で使用される場合、「増大したジストロフィン産生」、「ジストロフィンの産生の増大」などは、対象におけるジストロフィン、ジストロフィン様タンパク質、又は機能性ジストロフィンタンパク質の少なくとも1つの産生の増大を指す。
【0049】
「増大された」又は「増強された」量は、通常、「統計的に有意な」量であり、アンチセンスオリゴヌクレオチドがない(薬剤が存在しない)場合に、又は対照化合物によってもたらされる量の1.1倍、1.2倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍又はそれ以上(例えば、500倍、1000倍)(全ての整数及びその間の1を超える小数点、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8などを含む)の増大を含み得る。
【0050】
「低減する」又は「阻害する」という用語は、一般的に、本発明の1つ又は複数のアンチセンス化合物が、診断の技術分野における通例の技術にしたがって測定したときに、本明細書に記載される疾患又は状態の症状などの、関連する生理応答又は細胞応答を「減少させる」能力に関し得る。関連する生理応答又は細胞応答(インビボ又はインビトロ)は当業者には明らかであり、筋ジストロフィーの症状若しくは病態の低減、又はDMD若しくはBMDを有する個体において発現される変化した形態のジストロフィンなどの欠陥のある形態のジストロフィンの発現の低減を含み得る。応答の「減少」は、アンチセンス化合物がない場合に、又は対照組成物によってもたらされる応答と比較して統計的に有意でよく、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%(その間の全ての整数を含む)の減少を含み得る。
【0051】
本明細書で使用される場合、「機能」及び「機能性の」などの用語は、生物学的、酵素的、又は治療的機能を指す。
【0052】
「機能性」ジストロフィンタンパク質は一般に、通常、DMD又はBMDを有する特定の対象に存在する変化した形態又は「欠陥のある」形態のジストロフィンタンパク質と比較して、本来なら筋ジストロフィーの特徴である、筋組織の進行性の分解を低減するのに十分な生物活性を有するジストロフィンタンパク質を指す。特定の実施形態では、機能性ジストロフィンタンパク質は、当技術分野における通例の技術にしたがって測定したときに、野生型ジストロフィンの約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%(その間の全ての整数を含む)のインビトロ又はインビボ生物活性を有し得る。一例として、インビトロでの筋肉培養物におけるジストロフィン関連の活性は、筋管サイズ、筋原線維の組織化(又は破壊)、収縮活性、及びアセチルコリン受容体の自発的なクラスター形成にしたがって測定することができる(例えば、Brown et al.,Journal of Cell Science.112:209-216,1999を参照)。また動物モデルは疾患の病態形成を研究するための価値ある資源であり、ジストロフィン関連の活性を試験するための手段を提供する。DMD研究のために最も広範に使用される動物モデルの2つは、mdxマウス及びゴールデンレトリーバ筋ジストロフィー(GRMD)イヌであり、これらは両方共ジストロフィン陰性である(例えば、Collins & Morgan,Int J Exp Pathol 84:165-172,2003を参照)。これら及び他の動物モデルを使用して、種々のジストロフィンタンパク質の機能活性を測定することができる。特定の本開示のエクソンスキッピングアンチセンスオリゴヌクレオチドによって産生される形態などのジストロフィンの切断型も含まれる。
【0053】
「モルホリノ」、「モルホリノオリゴマー」又は「PMO」という用語は、Summerton,J.,et al.,Antisense & Nucleic Acid Drug Development,7:187-195(1997)の
図2に記載されるように、以下の一般構造:
【化1】
を有するホスホロジアミダートモルホリノオリゴマーを指す。本明細書に記載されるモルホリノは、上記の一般構造の全ての立体異性体(及びこれらの混合物)及び立体配置を包含することが意図される。モルホリノオリゴマーの合成、構造、及び結合特徴は、米国特許第5,698,685号明細書、同第5,217,866号明細書、同第5,142,047号明細書、同第5,034,506号明細書、同第5,166,315号明細書、同第5,521,063号明細書、同第5,506,337号明細書、同第8,076,476号明細書、及び同第8,299,206号明細書において詳述されており、これらは全て参照によって本明細書中に援用される。特定の実施形態では、モルホリノはオリゴマーの5’端部又は3’端部において「テール」部分とコンジュゲートされて、その安定性及び/又は溶解性が増大される。例示的なテールには、
【化2】
が含まれる。
【0054】
そのコード名「SRP-4053」でも知られている「ゴロディルセン」は、塩基配列5’-GTTGCCTCCGGTTCTGAAGGTGTTC-3’(配列番号1)を有するPMOである。ゴロディルセンは、CAS登録番号1422959-91-8で登録されている。化学名は、all-P-ambo-[P,2’,3’-トリデオキシ-P-(ジメチルアミノ)-2’,3’-イミノ-2’,3’-セコ](2’a→5’)(G-T-T-G-C-C-T-C-C-G-G-T-T-C-T-G-A-A-G-G-T-G-T-T-C)5’-[4-({2-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}カルボニル)-N,N-ジメチルピペラジン-1-ホスホンアミダート]を含む。ゴロディルセンは、以下の構造を有する:
【化3】
して以下の化学構造によっても表される:
【化4】
【化5】
【0055】
明確にするために、例えば上記のゴロディルセンの構造を含む本開示の構造は、5’から3’に続くものであり、構造全体をコンパクトな形態で示す便宜上、「中断A」及び「中断B」と表示される種々の図の中断が含まれている。当業者により理解されるように、例えば「中断A」の表示はそれぞれ、これらの点において構造の図が連続することを示す。当業者は、上記の構造の「中断B」の各場合についても同じことが当てはまることを理解する。しかしながら、図の中断はどれも上記の構造の実際の不連続を示すことは意図されず、当業者もそれらが実際の不連続を意味するものと理解しない。
【0056】
本明細書で使用される場合、構造式内で使用される1組の括弧は、括弧内の構造特徴が繰り返されることを示す。いくつかの実施形態では、使用される括弧は「[」及び「]」であり得るが、特定の実施形態では、反復される構造特徴を示すために使用される括弧は「(」及び「)」であり得る。いくつかの実施形態では、括弧内の構造特徴の反復回数は、例えば、2、3、4、5、6、7などの、括弧の外側に示される数である。種々の実施形態では、括弧内の構造特徴の反復回数は、「Z」などの括弧の外側に示される変数によって示される。
【0057】
本明細書で使用される場合、直線状の結合又は曲がりくねった結合の構造式においてキラル炭素又はキラルリン原子に対して描かれる結合は、キラル炭素又はリンの立体化学が定義されておらず、全ての形態のキラル中心を含むことが意図されることを示す。このような図の例は以下に示される:
【化6】
【0058】
本明細書で使用される「非経口投与」及び「非経口的に投与される」という語句は、経腸及び局所投与以外の、通常は注射による投与形態を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、角皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内及び胸骨内への注射及び点滴が含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
「薬学的に許容される」という語句は、物質又は組成物が、製剤を構成する他の成分、及び/又はそれにより処置される対象と、化学的及び/又は毒物学的に適合性でなければならないことを意味する。
【0060】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という語句は、任意のタイプの無毒性で不活性の固体、半固体又は液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料又は製剤助剤を意味する。薬学的に許容される担体としての役割を果たすことができる材料のいくつかの例は、糖、例えば、ラクトース、グルコース及びスクロース;デンプン、例えば、コーンスターチ及びジャガイモデンプン;セルロース及びその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えば、ココアバター及び坐薬ワックス;油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油;グリコール、例えば、プロピレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張生理食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール、及びリン酸緩衝溶液、並びに、他の無毒性の適合性潤滑剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムであり、製剤者の判断にしたがって、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味料及び香料、保存料及び抗酸化剤を組成物中に存在させることもできる。
【0061】
ジストロフィン合成又は産生の「回復」という用語は、一般に、本明細書に記載されるアンチセンスオリゴマーにより処置した後の、筋ジストロフィー患者における切断型のジストロフィンを含むジストロフィンタンパク質の産生を指す。いくつかの実施形態では、処置は、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%(その間の全ての整数を含む)の、患者のジストロフィン産生の増大をもたらす。いくつかの実施形態では、処置は、対象において、ジストロフィン陽性線維の数を正常の少なくとも20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%又は約95%~100%までを増大させる。他の実施形態では、処置は、対象において、ジストロフィン陽性線維の数を正常の約20%~約60%、又は約30%~約50%まで増大させる。処置後の患者におけるジストロフィン陽性線維の割合は、既知の技術を用いる筋生検によって決定することができる。例えば、筋生検は、患者の上腕二頭筋などの適切な筋肉から採取され得る。
【0062】
陽性ジストロフィン線維の割合の分析は、処置の前及び/又は処置の後、又は処置期間を通じて複数の時点で実施され得る。いくつかの実施形態では、処置後の生検は、処置前の生検とは反対側の筋肉から採取される。処置前及び処置後のジストロフィン発現の研究は、ジストロフィンのための任意の適切なアッセイを用いて実施され得る。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体などのジストロフィンのマーカーである抗体を用いて、筋生検からの組織切片において、免疫組織化学的検出が実施される。例えば、高感受性のジストロフィンのマーカーであるMANDYS106抗体を使用することができる。任意の適切な二次抗体が使用され得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、ジストロフィン陽性線維パーセントは、陽性線維の数を計数した線維の総数で割ることによって計算される。正常な筋肉サンプルは、100%のジストロフィン陽性線維を有する。したがって、ジストロフィン陽性線維パーセントは、正常の割合として表すことができる。処置後の筋肉中のジストロフィン陽性線維を計数する際に、処置前の筋肉及び復帰変異体線維中の微量レベルのジストロフィンの存在に対して照らし合わせるために、各患者からの処置前の筋肉の切片を用いてベースラインを設定することができる。これは、その患者の処置後の筋肉の切片においてジストロフィン陽性線維を計数するための閾値として使用され得る。他の実施形態では、Bioquant画像解析ソフトウェア(Bioquant Image Analysis Corporation,Nashville,TN)を用いて、ジストロフィンの定量のために抗体染色組織切片を使用することもできる。全ジストロフィン蛍光シグナル強度は、正常の割合として報告され得る。さらに、モノクローナル又はポリクローナル抗ジストロフィン抗体によるウエスタンブロット分析を使用して、ジストロフィン陽性線維の割合を決定することができる。例えば、Novacastraからの抗ジストロフィン抗体NCL-Dys1が使用され得る。ジストロフィン陽性線維の割合は、サルコグリカン複合体(β、γ)及び/又はニューロンNOSの成分の発現を決定することによって分析することもできる。
【0064】
いくつかの実施形態では、ゴロディルセンなどの本開示のアンチセンスオリゴマーによる処置は、DMD患者において処置をしない場合に予想され得る進行性の呼吸筋機能障害及び/又は呼吸筋不全を減速又は低下させる。いくつかの実施形態では、本開示のアンチセンスオリゴマーによる処置は、処置をしない場合に予想され得る人工呼吸補助の必要性を低減又は除去し得る。いくつかの実施形態では、疾患の経過を追跡するための呼吸機能の測定、及び潜在的な治療的介入の評価には、最大吸気圧(MIP)、最大呼気圧(MEP)及び努力肺活量(FVC)が含まれる。MIP及びMEPはそれぞれ、人が吸息及び呼息の間に生じさせることができる圧力のレベルを測定し、呼吸筋力の高感度尺度である。MIPは、横隔膜の筋力低下の尺度である。
【0065】
いくつかの実施形態では、MEPは、MIP及びFVCを含む他の肺機能検査の変化の前に低下し得る。特定の実施形態では、MEPは、呼吸機能障害の早期指標であり得る。特定の実施形態では、FVCは、最大吸気後の強制呼息の間に排出される空気の総体積を測定するために使用され得る。DMD患者では、FVCは、10代前半までは身体的成長に伴って増大する。しかしながら、疾患進行により成長が遅くなるか、又は阻止されて、筋力低下が進行すると、肺活量は下降期に入り、10~12歳以降は1年に約8~8.5パーセントの平均速度で低下する。特定の実施形態では、予測MIPパーセント(体重で調整したMIP)、予測MEPパーセント(年齢で調整したMEP)及び予測FVCパーセント(年齢及び伸長で調整したFVC)は、支持的な分析である。
【0066】
本明細書で使用される「対象」又は「患者」は、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドで処置することができる症状を示すか又はその症状を示すリスクがある任意の動物、例えば、DMD若しくはBMD又はこれらの状態に関連する症状のいずれか(例えば、筋線維の喪失)を有するか、或いは有するリスクがある対象を含む。適切な対象(患者)には、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、又はモルモット)、家畜、及び飼育動物又はペット(例えば、ネコ又はイヌ)が含まれる。非ヒト霊長類、そして好ましくは、ヒト患者が含まれる。また、エクソン53スキッピングに適しているジストロフィン遺伝子の突然変異を有する対象においてジストロフィンを産生させる方法も含まれる。
【0067】
本明細書で使用される「小児患者」は、1歳~21歳(両端を含む)の患者である。
【0068】
本明細書で使用される「全身性投与」、「全身に投与される」、「末梢投与」及び「末梢に投与される」という語句は、中枢神経系内への直接的な投与ではなく、患者の身体に入り、したがって、代謝及び他の同様のプロセスを受けるような化合物、薬物又は他の材料の投与、例えば、皮下投与を意味する。
【0069】
本明細書で使用される「慢性投与」は、連続的で規則的な長期間の治療的投与、すなわち、実質的に中断することのない定期的投与を指す。例えば、患者において筋ジストロフィーを処置するために、少なくとも数週間又は数か月又は数年にわたって毎日である。例えば、患者において筋ジストロフィーを処置するために、少なくとも数か月又は数年にわたって毎週(例えば、少なくとも6週間にわたって毎週、少なくとも12週間にわたって毎週、少なくとも24週間にわたって毎週、少なくとも48週間にわたって毎週、少なくとも72週間にわたって毎週、少なくとも96週間にわたって毎週、少なくとも120週間にわたって毎週、少なくとも144週間にわたって毎週、少なくとも168週間にわたって毎週、少なくとも180週間にわたって毎週、少なくとも192週間にわたって毎週、少なくとも216週間にわたって毎週、又は少なくとも240週間にわたって毎週)である。
【0070】
本明細書で使用される「定期的投与」は、投与の間に間隔のある投与を指す。例えば、定期的投与は、繰り返され得る固定間隔(例えば、毎週、毎月)での投与を含む。
【0071】
本明細書で使用される「プラセボ」は、治療効果を有さず、対照として使用され得る物質を指す。
【0072】
本明細書で使用される「プラセボ対照」は、併用療法、アンチセンスオリゴヌクレオチド、非ステロイド系抗炎症化合物、及び/又は別の医薬組成物ではなくプラセボを受ける対象又は患者を指す。プラセボ対照は、対象又は患者と同じ突然変異状態、同様の年齢、同様の歩く能力を有することができ、且つ、或いは、同じ併用薬(ステロイドなどを含む)を受けることができる。
【0073】
「標的配列」、「塩基配列」、又は「核酸塩基配列」という語句は、標的プレmRNA中のヌクレオチドの配列と相補的なオリゴマーの核酸塩基の配列を指す。本開示のいくつかの実施形態では、標的プレmRNA中のヌクレオチドの配列は、H53A(+36+60)として指定されるジストロフィンのプレmRNA中のエクソン53アニーリング部位である。
【0074】
対象(例えば、ヒトなどの哺乳類)又は細胞の「処置」は、対象又は細胞の自然経過を変化させるための試みにおいて使用される任意のタイプの介入である。処置はオリゴマー又はその医薬組成物の投与を含むが、これらに限定されず、予防的に、又は病的事象の開始若しくは病原体との接触に続いて実施され得る。処置は、特定の形態の筋ジストロフィーのような、ジストロフィンタンパク質に関する疾患又は状態の症状又は病態に対して任意の望ましい効果を含み、例えば、処置中の疾患又は状態の1つ又は複数の測定可能なマーカーにおける最小限の変化又は改善を含み得る。また、処置中の疾患若しくは状態の進行速度の低減、その疾患若しくは状態の発症の遅延、又はその発症の重症度の低下を目的とすることができる「予防的」処置も含まれる。「処置」又は「予防」は、必ずしも、疾患若しくは状態又はそれに関連する症状の完全な根絶、治癒、又は防止を示さない。
【0075】
いくつかの実施形態では、本開示のアンチセンスオリゴマーによる処置は、処置をしない場合に予想され得る、又は処置をしない場合に予想され得るジストロフィン産生を増大させ、疾患進行を遅延させ、歩行運動の喪失を減速又は低下させ、筋肉の炎症を低減し、筋損傷を低減し、筋機能を改善し、肺機能の喪失を低減し、及び/又は筋再生を増強する。いくつかの実施形態では、処置は疾患進行を維持、遅延又は減速させる。いくつかの実施形態では、処置は歩行運動を維持するか、又は歩行運動の喪失を低減する。いくつかの実施形態では、処置は肺機能を維持するか、又は肺機能の喪失を低減する。いくつかの実施形態では、処置は、例えば6分間歩行試験(6MWT)により測定したときに、患者の安定歩行距離を維持するか、又は増大させる。いくつかの実施形態では、処置は、10メートル歩行/走行時間(すなわち、10メートル歩行/走行試験)を維持又は短縮する。いくつかの実施形態では、処置は、仰臥位から立ち上がる時間(すなわち、立ち上がり時間試験)を維持又は短縮する。いくつかの実施形態では、処置は、4段の標準階段を上る時間(すなわち、4段上り試験)を維持又は短縮する。いくつかの実施形態では、処置は、例えばMRI(例えば、脚筋のMRI)で測定したときに、患者の筋肉の炎症を維持又は低減する。いくつかの実施形態では、MRIはT2及び/又は脂肪画分を測定して、筋変性を特定する。MRIは、炎症、浮腫、筋損傷及び脂肪浸潤に起因する、筋肉の構造及び組成の変化を特定することができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、本開示のアンチセンスオリゴマーによる処置はジストロフィン産生を増大させる。いくつかの実施形態では、増大したジストロフィン産生は、健康な同等者に対して、約0.1%、0.2% 0.3% 0.5%、0.7%、0.9%、1%、1.01%、1.5%、2%、2.01%、2.5%、3%、3.01%、3.5%、4%、4.01%、4.5%、5%、5.01%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、15%、15.5%、16%、16.5%、17%、17.5%、18%、18.5%、19%、19.5%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、40%、45%、50%、55%、又は60%である。特定の実施形態では、ジストロフィン産生の増大は、健康な同等者に対して、約0.1%~0.5%、0.5%~0.9%、0.8%~1%、0.9%~1.2%、0.9%~1.0%、0.9%~1.01%、1%~1.01%、1%~1.5%、1.5%~2%、1.9%~2.0%、1.9%~2.01%、2%~2.01%、2%~2.5%、2.5%~3%、2.9%~3.0%、2.9%~3.01%、2%~3.01%、3%~3.5%、3.5%~4%、4%~4.5%、4.5%~5%、5%~6%、6%~7%、7%~8%、8%~9%、9%~10%、1%~2%、1%~3%、1%~5%、2%~4%、2%~5%、4%~6%、5%~8%、8%~10%、1%~5%、2%~6%、3%~7%、4%~8%、5%~10%、10%~12%、12%~15%、15%~20%、17%~20%、20%~22%、20%~25%、25%~30%、又は30%~35%であり得る。
【0077】
特定の実施形態では、本開示のアンチセンスオリゴマーによる処置は、ジストロフィン産生を増大させ、処置をしない場合に予想され得る歩行運動の喪失を減速又は低下させる。例えば、処置は、対象の歩行能力を安定化、維持、改善又は増大させ得る(例えば、歩行運動の安定化)。いくつかの実施形態では、処置は、例えば、McDonald,et
al.(Muscle Nerve,2010;42:966-74、参照によって本明細書中に援用される)により記載された6分間歩行試験(6MWT)により測定したときに、患者の安定歩行距離を維持又は増大させる。6分間歩行距離(6MWD)の変化は、絶対値、変化率、又は予測値%の変化として表され得る。いくつかの実施形態では、処置は、6MWTにおける対象の安定歩行距離を、健康な同等者に対して20%の欠乏から維持又は改善する。6MWTにおけるDMD患者の能力は、健康な同等者の通常の能力に対して、予測値%を計算することにより決定することができる。例えば、予測6MWD%は、男性の場合、以下の式:196.72+(39.81×年齢)-(1.36×年齢2)+(132.28×身長(メートル))を用いて計算することができる。女性の場合、予測6MWD%は、以下の式:188.61+(51.50×年齢)-(1.86×年齢2)+(86.10×身長(メートル))を用いて計算することができる(Henricson et al.PLoS Curr.,2012,バージョン2、参照によって本明細書中に援用される)。
【0078】
いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーによる処置は、ベースラインから3、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30又は50メートル(その間の全ての整数を含む)を超えて、患者の安定歩行距離を増大させる。いくつかの実施形態では、増大したジストロフィン産生は、健康な同等者に対して、約0.1%、0.2% 0.3% 0.5%、0.7%、0.9%、1%、1.01%、1.5%、2%、2.01%、2.5%、3%、3.01%、3.5%、4%、4.01%、4.5%、5%、5.01%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、15%、15.5%、16%、16.5%、17%、17.5%、18%、18.5%、19%、19.5%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、40%、45%、50%、55%、又は60%である。特定の実施形態では、ジストロフィン産生の増大は、健康な同等者に対して、約0.1%~0.5%、0.5%~0.9%、0.8%~1%、0.9%~1.2%、0.9%~1.0%、0.9%~1.01%、1%~1.01%、1%~1.5%、1.5%~2%、1.9%~2.0%、1.9%~2.01%、2%~2.01%、2%~2.5%、2.5%~3%、2.9%~3.0%、2.9%~3.01%、2%~3.01%、3%~3.5%、3.5%~4%、4%~4.5%、4.5%~5%、5%~6%、6%~7%、7%~8%、8%~9%、9%~10%、1%~2%、1%~3%、1%~5%、2%~4%、2%~5%、4%~6%、5%~8%、8%~10%、1%~5%、2%~6%、3%~7%、4%~8%、5%~10%、10%~12%、12%~15%、15%~20%、17%~20%、20%~22%、20%~25%、25%~30%、又は30%~35%であり得る。
【0079】
DMD患者の筋機能の喪失は、正常な小児期の成長及び発育を背景にして起こり得る。実際に、進行性筋機能障害にもかかわらず、DMDを有する低年齢の小児は約1年間にわたって6MWT中に歩行距離の増大を示し得る。いくつかの実施形態では、DMD患者からの6MWDは、典型的に発育している対照群、並びに年齢及び性別が一致する対象からの既存の標準データと比較される。いくつかの実施形態では、正常な成長及び発育は、標準データに適合された年齢及び身長に基づいた式を用いて説明することができる。このような式を使用して、DMDを有する対象において6MWDを予測パーセント(予測%)値に変換することができる。特定の実施形態では、予測6MWD%データの分析は正常な成長及び発育を説明するための方法を表し、低年齢(例えば、7歳以下)での機能の増大が、DMD患者の能力の改善ではなく安定を表すことを示し得る(Henricson et al.PLoS Curr.,2012,バージョン2、参照によって本明細書中に援用される)。
【0080】
異なるアンチセンス分子を区別するために、アンチセンス分子の命名法が提唱及び公開された(Mann et al.,(2002)J Gen Med 4,644-654を参照)。この命名法は、以下に示されるように、全て同じ標的領域に向けられたわずかに異なるいくつかのアンチセンス分子を試験する際に意味を持つ:
H#A/D(x:y)。
【0081】
最初の文字は、種(例えば、H:ヒト、M:マウス、C:イヌ)を指定する。「#」は、標的ジストロフィンエクソンの番号を指定する。「A/D」はそれぞれ、エクソンの最初及び最後におけるアクセプタースプライス部位又はドナースプライス部位を示す。(x
y)はアニーリング座標を表し、ここで、「-」又は「+」はそれぞれ、イントロン配列又はエクソン配列を示す。例えば、A(-6+18)は、標的エクソンに先行するイントロンの最後の6塩基及び標的エクソンの最初の18塩基を示し得る。最も近いスプライス部位はアクセプターであり得るので、これらの座標は「A」が前に記載され得る。ドナースプライス部位におけるアニーリング座標の記載はD(+2-18)であり得るが、ここで、最後の2個のエクソン塩基及び最初の18個のイントロン塩基はアンチセンス分子のアニーリング部位に対応する。A(+65+85)で表され得る完全なエクソンアニーリング座標は、そのエクソンの開始から65番目と85番目のヌクレオチドの間の部位である。
【0082】
II.アンチセンスオリゴヌクレオチド
エクソン53のスキッピングをもたらすためにジストロフィン遺伝子のプレmRNAを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、本開示の方法にしたがって使用される。
【0083】
このようなアンチセンスオリゴヌクレオチドは、mRNAの翻訳を遮断又は阻害するように、或いは天然のプレmRNAスプライスプロセシングを阻害するように設計することができ、ハイブリダイズする標的配列に「向けられる」又は「対して標的化される」と言うことができる。標的配列は、通常、mRNAのAUG開始コドン、翻訳抑制オリゴマー、又はプレプロセシングされたmRNAのスプライス部位、スプライス抑制オリゴマー(SSO)を含む領域である。スプライス部位の標的配列は、プレプロセシングされたmRNA内の正常なスプライスアクセプタージャンクションの1~約25塩基対下流にその5’端部を有するmRNA配列を含み得る。いくつかの実施形態では、標的配列は、スプライス部位を含むか、又はエクソンコード配列内に完全に含有されるか、又はスプライスアクセプター部位若しくはドナー部位にまたがる、プレプロセシングされたmRNAの任意の領域であり得る。オリゴマーはより一般的には、上記のような方法で標的の核酸に対して標的化される場合、タンパク質、ウィルス、又は細菌などの生物学的に関連する標的に「対して標的化される」と言われる。
【0084】
特定の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ジストロフィンプレmRNAのエクソン53標的領域に特異的にハイブリダイズし、エクソン53スキッピングを誘発する。特定の実施形態では、ジストロフィンプレmRNAのエクソン53標的領域にハイブリダイズしてエクソン53スキッピングを誘発するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー(PMO)である。
【0085】
特定の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドはゴロディルセンである。
【0086】
ゴロディルセンは、ホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー(PMO)と呼ばれる明確な種類の新規の合成アンチセンスRNA治療薬に属し、これは、天然の核酸構造の再設計である。ゴロディルセンは、ジストロフィンプレmRNAのエクソン53標的領域にハイブリダイズするPMOであり、エクソン53スキッピングを誘発する。ゴロディルセンは、上記で引用した参考文献において、そして付加的に国際特許出願第PCT/US17/40318号(その全体は、参照によって本明細書中に明示的に援用される)において詳述される方法を用いて、段階的な固相合成によって調製することができる。
【0087】
PMOは、インビボの非臨床的観察に基づいて潜在的な臨床的利点を提供する。PMOは、インビボでの安定性を保証するために、ヌクレアーゼによる酵素分解から保護する修飾をRNAの糖環に組み込む。PMOは、一つには6員合成モルホリノ環の使用により、天然の核酸及び他のアンチセンスオリゴヌクレオチドの種類とは区別され、6員合成モルホリノ環は、RNA、DNA及び多数の他の合成アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドにおいて見出される5員リボフラノシル環を置換する。
【0088】
PMOに特異的な無電荷ホスホロジアミダート結合は、潜在的に、タンパク質への低減されたオフターゲット結合を付与すると考えられる。PMOは、他の臨床段階の合成アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドで使用される負電荷を持つホスホロチオアート結合の代わりに、各モルホリノ環を連結する無電荷ホスホロジアミダート結合を有する。
【0089】
DMD遺伝子のアウトオブフレーム突然変異によって生じるDMDの処置に対する潜在的な治療的アプローチは、インフレーム突然変異によって生じるBMDとして知られているより軽症な形態のジストロフィン異常症によって示唆される。アウトオブフレーム突然変異をインフレーム突然変異に変換する能力は、仮説上は、mRNAリーディングフレームを保存することができ、内部で短縮されているが機能性のジストロフィンタンパク質を生じさせる。ゴロディルセンは、これを達成するように設計された。
【0090】
ゴロディルセンはジストロフィンプレmRNAを標的として、エクソン53のスキッピングを誘発し、したがってエクソン53は、スプライスされた成熟mRNA転写物から排除又はスキップされる。エクソン53をスキップすることにより、破壊されたリーディングフレームはインフレーム突然変異に回復される。DMDは種々の遺伝子サブタイプから構成されるが、ゴロディルセンは、ジストロフィンプレmRNAのエクソン53をスキップするように特別に設計された。エクソン53のスキッピングに適したDMD突然変異は、エクソン53に近接するエクソンの欠失(すなわち、エクソン52又はエクソン54の欠失を含む)を含み、DMD患者のサブグループ(8%)を構成する。
【0091】
ゴロディルセンの25の核酸塩基の配列は、ジストロフィンプレmRNAのエクソン53内の特異的な標的配列に相補的であるように設計される。ゴロディルセンの各モルホリノ環は、DNA中に見出される4つの複素環核酸塩基(アデニン、シトシン、グアニン、及びチミン)の1つに連結される。
【0092】
ゴロディルセンと標的プレmRNA配列とのハイブリダイゼーションはプレmRNAスプライシング複合体の形成を妨げ、成熟mRNAからエクソン53を欠失させる。ゴロディルセンの構造及び立体配座は、相補的配列に対する配列特異的塩基対合を可能にする。例えば、ジストロフィンプレmRNAのエクソン51をスキップするように設計されたPMOであるエテプリルセンは、ジストロフィンプレmRNAのエクソン51に含有される相補的配列に対する配列特異的塩基対合を可能にする。
【0093】
エクソンスキッピングを用いたジストロフィンリーディングフレームの回復
79のエクソンを全て含有する正常なジストロフィンmRNAは、正常なジストロフィンタンパク質を生じ得る。
【0094】
ジストロフィン遺伝子からエクソン全体が失われたジストロフィンmRNAは、通常、DMDをもたらす。
【0095】
別のエクソンスキッピングPMOであるエテプリルセンは、エクソン51をスキップして、mRNAリーディングフレームを回復させる。エクソン49は完全なコドンで終わり、エクソン52はコドンの最初のヌクレオチドで始まるので、エクソンスキッピングによるエクソン51の欠失はリーディングフレームを回復させ、インタクトなジストログリカン結合部位を有する、内部で短縮されたジストロフィンタンパク質の産生がもたらされる。
【0096】
ジストロフィンmRNAオープンリーディングフレームを回復させるためにエクソンスキッピングを用いるDMD表現型の改善の実行可能性は、非臨床試験により支持される。DMDのジストロフィー動物モデルにおける多数の試験により、エクソンスキッピングによるジストロフィンの回復が筋力及び筋機能の確実な改善をもたらすことが示されている(Sharp 2011;Yokota 2009;Wu 2008;Wu 2011;Barton-Davis 1999;Goyenvalle 2004;Gregorevic 2006;Yue 2006;Welch 2007;Kawano 2008;Reay 2008;van Putten 2012)。このことの説得力のある例は、エクソンスキッピング(PMOを用いる)治療後のジストロフィンレベルを同じ組織内の筋機能と比較した研究に由来する。ジストロフィーmdxマウスでは、マウス特異的PMOで処置した前脛骨(TA)筋は、応力誘発性(stress-inducing)収縮の後にその最大荷重容量(maximum force capacity)の約75%を維持したが、未処置の反対側のTA筋は、その最大荷重容量の約25%しか維持しなかった(p<0.05)(Sharp 2011)。別の研究では、3匹のジストロフィーCXMDイヌ(2~5月齢)に、5~7週間にわたって週1回、又は22週間にわたって2週間に1回、その遺伝子突然変異に特異的なPMOを用いたエクソンスキッピング治療を受けさせた。エクソンスキッピング治療の後、3匹のイヌは全て、全身に及ぶ広範な骨格筋のジストロフィン発現を実証し、そしてベースラインに対して歩行運動(15m走行試験)が維持又は改善された。対照的に、未処置の同月齢のCXMDイヌは、研究を通して、歩行運動の顕著な低下を示した(Yokota 2009)。
【0097】
PMOは、mdxマウスと、全ヒトDMD転写物を発現するヒト化DMD(hDMD)マウスモデルとの両方において、等モル濃度でホスホロチオアートよりも高いエクソンスキッピング活性を有することが示された(Heemskirk 2009)。正常ヒト骨格筋細胞、又はエクソン51スキッピングに適している様々な突然変異を有するDMD患者からの筋細胞において、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)及びウエスタンブロット(WB)を用いたインビトロでの実験により、エクソン51スキッピングの強力な誘発剤としてエテプリルセン(PMO)が同定された。エテプリルセン誘発性のエクソン51スキッピングは、hDMDマウスモデルにおいてインビボで確認されている(Arechavala-Gomeza 2007)。
【0098】
ジストロフィンプレmRNAのエクソン53標的領域に特異的にハイブリダイズして、エクソン53スキッピングを誘発するアンチセンスオリゴヌクレオチドの効果を分析するための臨床結果には、ジストロフィン陽性線維パーセント(PDPF)のベースラインからの増大、6分間歩行試験(6MWT)、歩行運動の喪失(LOA)、North Star Ambulatory Assessment(NSAA)、肺機能検査(PFT)、外部支援なしに立ち上がる能力(仰臥位から)、新規のジストロフィン産生及び他の機能尺度が含まれる。
【0099】
ゴロディルセンは臨床試験において試験された。
【0100】
試験4053-101
試験4053-101は、DMD患者におけるSRP-4053(ゴロディルセン)の第I/II相試験である。この試験は、エクソン53スキッピングに適しているデュシェンヌ型筋ジストロフィー患者におけるSRP-4053の2パート、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、用量漸増の安全性、耐容性、及び薬物動態試験(パート1)、並びにその後の非盲検の効力及び安全性評価(パート2)である。主要評価項目には、有害事象の発生[時間枠:約12週間(パート1)]、6分間歩行試験(6MWT)のベースラインからの変化[時間枠:144週間(パート2)]、及びジストロフィン陽性線維の割合[時間枠:48週間(パート2)]が含まれる。副次評価項目には、血漿中の薬物濃度[時間枠:約12週間(パート1)]、予測最大吸気圧(MIP)%、予測最大呼気圧(MEP)%[時間枠:144週間(パート2)]が含まれる。この試験のさらなる詳細は、www.clinicaltrials.gov(NCT02310906)において見出される。
【0101】
III.製剤及び投与様式
特定の実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるようなアンチセンスオリゴヌクレオチドの治療的送達に適した製剤又は医薬組成物を提供する。したがって、特定の実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドの1つ又は複数を治療的に有効な量で含み、1つ又は複数の薬学的に許容される担体(添加剤)及び/又は希釈剤と一緒に製剤化された、薬学的に許容される組成物を提供する。本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは単独で投与されることが可能であるが、化合物を医薬製剤(組成物)として投与するのが好ましい。
【0102】
核酸分子の送達のための方法は、例えば、Akhtar et al.,1992,Trends Cell Bio.,2:139;及びDelivery Strategies for Antisense Oligonucleotide Therapeutics,Akhtar編;Sullivan et al.,PCT国際公開第94/02595号パンフレットに記載されている。これら及び他のプロトコルは、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む実質的に任意の核酸分子を送達するために利用することができる。
【0103】
以下に詳述されるように、本開示の医薬組成物は、特に、以下のものに適合するものを含む、固体又は液体形態での投与のために製剤化され得る:(1)経口投与、例えば、水薬(水溶液若しくは非水溶液又は懸濁液)、錠剤、例えば、頬側、舌下、及び全身の吸収を標的とするもの、ボーラス、粉末、顆粒、舌に塗布するためのペースト;(2)非経口投与、例えば、無菌溶液若しくは懸濁液、又は持続放出製剤としての、例えば、皮下、筋肉内、静脈内又は硬膜外注射による投与;(3)局所適用、例えば、クリーム、軟膏、又は制御放出パッチ若しくはスプレーとしての、皮膚への適用;(4)腟内又は直腸内、例えば、ペッサリー、クリーム又はフォームとしての適用;(5)舌下;(6)眼内;(7)経皮;或いは(8)経鼻。
【0104】
薬学的に許容される担体としての役割を果たすことができる材料のいくつかの例としては、(1)糖、例えば、ラクトース、グルコース及びスクロース;(2)デンプン、例えば、コーンスターチ及びジャガイモデンプン;(3)セルロース及びその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤、例えば、ココアバター及び坐薬ワックス;(9)油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油;(10)グリコール、例えば、プロピレングリコール;(11)ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレグリコール;(12)エステル、例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張生理食塩水;(18)リンゲル溶液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝溶液;(21)ポリエステル、ポリカーボネート及び/又はポリ酸無水物;並びに(22)医薬製剤中で使用される他の無毒性の適合性物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む製剤に適した薬剤の追加の非限定的な例としては、種々の組織への薬物の侵入を増強することができる、PEGコンジュゲート核酸、リン脂質コンジュゲート核酸、親油性部分を含有する核酸、ホスホロチオアート、P糖タンパク質阻害剤(Pluronic P85など);生分解性ポリマー、例えば、埋込み後の持続放出送達のためのポリ(DL-ラクチド-コグリコリド)ミクロスフェア(Emerich,D F et al.,1999,Cell Transplant,8、47-58)Alkermes,Inc.Cambridge,Mass.;及び血液脳関門を横断して薬物を送達することができ、ニューロンの取り込み機構を変更することができる負荷ナノ粒子、例えば、ポリブチルシアノアクリラートで作られたもの(Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry,23,941-949,1999)が挙げられる。
【0106】
本開示は、ポリ(エチレングリコール)脂質を含有する表面修飾リポソーム(PEG修飾された分枝状及び非分枝状若しくはその組合せ、又は長期循環リポソーム又はステルスリポソーム)を含む組成物の使用も特徴とする。本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、共有結合した種々の分子量のPEG分子を含むこともできる。これらの製剤は、標的組織における薬物の蓄積を増大させるための方法を提供する。この種類の薬物担体は、オプソニン化及び単核食細胞系(MPS又はRES)による除去に抵抗し、それにより、カプセル化薬物のより長い血液循環時間、及び増強された組織曝露が可能になる(Lasic et al.Chem.Rev.1995,95,2601-2627;Ishiwata et al.,Chem.Pharm.Bull.1995,43,1005-1011)。このようなリポソームは、恐らく、血管新生した標的組織における血管外漏出及び捕獲によって、腫瘍中に選択的に蓄積することが示されている(Lasic et al.,Science 1995,267,1275-1276;Oku et al.,1995,Biochim.Biophys.Acta,1238,86-90)。長期循環リポソームは、特に、MPSの組織に蓄積することが知られている従来のカチオン性リポソームと比べて、DNA及びRNAの薬物動態及び薬力学を増強する(Liu et al.,J.Biol.Chem.1995,42,24864-24870;Choi et al.,PCT国際公開第96/10391号パンフレット;Ansell et al.,PCT国際公開第96/10390号パンフレット;Holland et al.,PCT国際公開第96/10392号パンフレット)。また長期循環リポソームは、肝臓及び脾臓などの代謝的に攻撃的なMPS組織における蓄積を回避するその能力に基づいて、カチオン性リポソームと比べてより大きい程度まで、薬物をヌクレアーゼ分解から保護する可能性もある。
【0107】
さらなる実施形態では、本開示は、米国特許第6,692,911号明細書、同第7,163,695号明細書及び同第7,070,807号明細書に記載されるような送達のために調製されたアンチセンスオリゴヌクレオチド医薬組成物を含む。これに関して、一実施形態では、本開示は、リジン及びヒスチジン(HK)のコポリマーを含む組成物(米国特許第7,163,695号明細書、同第7,070,807号明細書、及び同第6,692,911号明細書に記載される)中において、単独で又はPEG(例えば、分枝状若しくは非分枝状PEG又は両方の混合物)と組み合わせて、PEG及び標的部分と組み合わせて、又は上記のいずれかを架橋剤と組み合わせて、本開示のオリゴマーを提供する。特定の実施形態では、本開示は、グルコン酸修飾ポリヒスチジン又はグルコニル化ポリヒスチジン/トランスフェリン-ポリリジンを含む医薬組成物中のアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。当業者は、His及びLysに類似した特性を有するアミノ酸が組成物中で置換され得ることも認識するであろう。
【0108】
本明細書に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドの特定の実施形態はアミノ又はアルキルアミノなどの塩基性官能基を含有することができ、したがって、薬学的に許容される酸と共に薬学的に許容される塩を形成することができる。これに関して、「薬学的に許容される塩」という用語は、本開示の化合物の比較的無毒性の無機酸及び有機酸付加塩を指す。これらの塩は、投与ビヒクル又は剤形の製造過程においてその場で調製することもできるし、或いは精製した遊離塩基形態の本開示の化合物を適切な有機酸又は無機酸と別個に反応させ、このようにして形成された塩をその後の精製の間に単離することによって調製することもできる。代表的な塩には、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩(napthylate)、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、及びラウリルスルホン酸塩などが含まれる(例えば、Berge et al.(1977)”Pharmaceutical
Salts”,J.Pharm.Sci.66:1-19を参照)。
【0109】
本アンチセンスオリゴヌクレオチドの薬学的に許容される塩には、例えば無毒性の有機酸又は無機酸から得られる、化合物の従来の無毒性塩又は第4級アンモニウム塩が含まれる。例えば、このような従来の無毒性塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から誘導された塩と、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イソチオン酸などの有機酸から調製された塩とが含まれる。
【0110】
特定の実施形態では、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ又は複数の酸性官能基を含有することができ、したがって、薬学的に許容される塩基と共に薬学的に許容される塩を形成することができる。これらの例では、「薬学的に許容される塩」という用語は、本開示の化合物の比較的無毒性の無機塩基及び有機塩基付加塩を指す。これらの塩も同様に、投与ビヒクル又は剤形の製造過程においてその場で調製することもできるし、或いは精製した遊離酸形態の本開示の化合物を、適切な塩基、例えば、薬学的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩若しくは重炭酸塩と、アンモニアと、又は薬学的に許容される有機第1級、第2級若しくは第3級アミンと別個に反応させることもできる。代表的なアルカリ塩又はアルカリ土類塩には、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、及びアルミニウム塩などが含まれる。塩基付加塩の形成に有用な代表的な有機アミンには、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが含まれる(例えば、上記のBerge et al.を参照)。
【0111】
ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳化剤及び潤滑剤、並びに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味料及び香料、保存料及び抗酸化剤が組成物中に存在し得る。
【0112】
薬学的に許容される抗酸化剤の例としては、(1)水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど;及び(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などが挙げられる。
【0113】
本開示の製剤は、経口、経鼻、局所(頬側及び舌下を含む)、直腸、膣及び/又は非経口投与に適した製剤を含む。製剤は単位剤形で提供されるのが便利であり、薬学分野において周知である任意の方法によって調製することができる。単一の剤形を生じるために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、処置される宿主、特定の投与様式によって異なる。単一の剤形を生じるために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、一般的に、治療効果をもたらす化合物の量となる。一般的に、100パーセントのうち、この量は、約0.1パーセント~約99パーセント、好ましくは約5パーセント~約70パーセント、最も好ましくは約10パーセント~約30パーセントの活性成分の範囲となる。
【0114】
特定の実施形態では、本開示の製剤は、シクロデキストリン、セルロース、リポソーム、ミセル形成剤、例えば、胆汁酸、及び高分子担体、例えば、ポリエステル及びポリ酸無水物から選択される賦形剤と、本開示のオリゴマーとを含む。特定の実施形態では、上述の製剤は、本開示のオリゴマーを経口的に生体利用可能にする。
【0115】
これらの製剤又は医薬組成物を調製する方法は、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドと、担体及び任意選択的に1つ又は複数の補助成分とを関連させるステップを含む。一般的に、製剤は、本開示の化合物と、液体担体、若しくは微粉化した固体担体、又はその両方とを均一且つ密接に関連させ、次に必要であれば、生成物を成形することによって調製される。
【0116】
経口投与に適した本開示の製剤は、カプセル、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ(風味付けされた基剤、通常は、スクロース及びアカシア又はトラガカントを用いる)、粉末、顆粒の形態で、又は水性若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液として、又は水中油若しくは油中水液体エマルションとして、又はエリキシル若しくはシロップとして、又は香錠(不活性基剤、例えば、ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアを用いる)として、及び/又はマウスウォッシュなどとしての形態でよく、これらはそれぞれ、所定量の本開示の化合物を活性成分として含有する。本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ボーラス、舐剤又はペーストとして投与されてもよい。
【0117】
経口投与のための本開示の固体剤形(カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉末、顆粒、トローチ(trouches)など)において、活性成分は、クエン酸ナトリウム若しくはリン酸二カルシウムなどの1つ又は複数の薬学的に許容される担体、及び/又は以下のうちいずれかのものと混合され得る:(1)充填剤又は増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及び/又はケイ酸;(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及び/又はアカシアなど;(3)保湿剤、例えば、グリセロール;(4)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウム;(5)溶解遅延剤、例えば、パラフィン;(6)吸収促進剤、例えば、第4級アンモニウム化合物、並びに界面活性剤、例えば、ポロキサマー及びラウリル硫酸ナトリウム;(7)湿潤剤、例えば、セチルアルコール、モノステアリン酸グリセロール、及び非イオン性界面活性剤など;(8)吸収剤、例えば、カオリン及びベントナイトクレイ;(9)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸、及びこれらの混合物;(10)着色剤;並びに(11)制御放出剤、例えば、クロスポビドン又はエチルセルロース。カプセル、錠剤及び丸剤の場合、医薬組成物は、緩衝剤も含み得る。同様のタイプの固体医薬組成物は、ラクトース又は乳糖のような賦形剤、及び高分子量ポリエチレングリコールなどを用いて、ソフト及びハード殻ゼラチンカプセル中の充填剤として使用されてもよい。
【0118】
錠剤は、任意選択的に1つ又は複数の補助成分と共に、圧縮又は成形によって製造され得る。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存料、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム又は架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤又は分散剤を用いて調製され得る。成形錠剤は、適切な機械において不活性液体希釈剤で湿潤させた粉末化合物の混合物を成形することによって製造され得る。
【0119】
本開示の医薬組成物の錠剤及び他の固体剤形、例えば、糖衣錠、カプセル、丸剤及び顆粒は、任意選択的に、割線が付けられてもよいし、或いはコーティング及び殻、例えば、製薬分野で周知の腸溶コーティング及び他のコーティングを用いて調製されてもよい。これらは、例えば、所望の放出プロファイルを提供するために様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソーム及び/又はミクロスフェアを用いて、その中の活性成分の遅延又は制御放出を提供するように製剤化されてもよい。これらは、急速放出のために製剤化されてもよく、例えば、凍結乾燥されてもよい。これらは、例えば、細菌保持フィルターによるろ過によって、或いは使用の直前に滅菌水、又は何らかの他の無菌注射用媒体中に溶解させることができる無菌の固体医薬組成物の形態の滅菌剤を取り込むことによって滅菌され得る。またこれらの医薬組成物は、任意選択的に乳白剤を含有していてもよく、活性成分を胃腸管の特定の部分においてのみ又はその部分で優先的に、任意選択的に遅延様式で、放出する組成を有していてもよい。使用可能な包埋組成物の例としては、高分子物質及びワックスが挙げられる。活性成分は、適切な場合には上記の賦形剤の1つ又は複数を含む、マイクロカプセル化形態であり得る。
【0120】
本開示の化合物の経口投与のための液体剤形には、薬学的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルが含まれる。活性成分に加えて、液体剤形は、当該技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤、可溶化剤及び乳化剤、例えば、水又は他の溶媒など、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにこれらの混合物を含有し得る。
【0121】
不活性希釈剤に加えて、経口医薬組成物は、補助剤、例えば、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、甘味剤、香味料、着色剤、香料及び保存料を含むこともできる。
【0122】
懸濁液は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカント、並びにこれらの混合物としての懸濁化剤を含有し得る。
【0123】
直腸又は膣内投与のための製剤は坐薬として提供されてもよく、これは、1つ又は複数の本開示の化合物と、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、坐薬ワックス又はサリチラートを含む1つ又は複数の適切な非刺激性の賦形剤又は担体とを混合することにより調製することができ、そして室温で固体であるが、体温では液体であり、したがって、直腸又は膣腔内で融解して活性化合物を放出することになる。
【0124】
本明細書で提供されるオリゴマーの局所又は経皮投与のための製剤又は剤形には、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ及び吸入剤が含まれる。活性アンチセンスオリゴヌクレオチドは、薬学的に許容される担体、及び必要とされ得る任意の保存料、緩衝剤、又は噴射剤と無菌条件下で混合され得る。軟膏、ペースト、クリーム及びゲルは、本開示の活性化合物に加えて、賦形剤、例えば、動物及び植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク及び酸化亜鉛、又はこれらの混合物を含有し得る。
【0125】
粉末及びスプレーは、本開示のオリゴマーに加えて、賦形剤、例えば、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム及びポリアミド粉末、又はこれらの物質の混合物を含有することができる。スプレーは、付加的に、通例の噴射剤、例えば、クロロフルオロ炭化水素並びにブタン及びプロパンなどの揮発性非置換炭化水素を含有することができる。
【0126】
経皮パッチは、本開示のオリゴマーの身体への制御送達を提供するというさらなる利点を有する。このような剤形は、オリゴマーを適切な媒体中に溶解又は分散させることによって製造することができる。また吸収増強剤を使用して、皮膚を通過する薬剤の流動を増大させることもできる。このような流動の速度は、当該技術分野で知られている方法の中でも特に、速度制御膜を提供するか、又は薬剤をポリマーマトリックス又はゲル中に分散させることによって制御することができる。
【0127】
非経口投与に適した医薬組成物は、1つ又は複数の本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、1つ又は複数の薬学的に許容される無菌等張水溶液若しくは非水溶液、分散液、懸濁液又はエマルション、或いは使用の直前に無菌注射用溶液又は分散液中に再構成され得る無菌粉末と組み合わせて含むことができ、これらは、糖、アルコール、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、意図されるレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質、又は懸濁化剤若しくは増粘剤を含有し得る。本開示の医薬組成物中で使用され得る適切な水性及び非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びこれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、並びにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散液の場合には必要とされる粒径の維持により、そして界面活性剤の使用により維持することができる。
【0128】
またこれらの医薬組成物は、保存料、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などの補助剤を含有していてもよい。本アンチセンスオリゴヌクレオチドに対する微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを包含させることによって保証され得る。また等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを組成物中に包含させることが望ましいこともある。加えて、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を包含させることにより、注射用医薬品形態の長期にわたる吸収がもたらされ得る。
【0129】
場合により、薬物の効果を長くするために、皮下又は筋肉内注射からの薬物の吸収を遅くすることが望ましい。これは、当該技術分野で知られている方法の中でも特に、水溶性が乏しい結晶性材料又は非晶質材料の液体懸濁液の使用によって達成され得る。次に、薬物の吸収の速度はその溶解速度に依存し、次には、結晶サイズ及び結晶形態に依存し得る。或いは、非経口投与される薬物形態の遅延吸収は、薬物を油ビヒクル中に溶解又は懸濁させることによって達成される。
【0130】
注射用デポー形態は、ポリ乳酸-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中で本アンチセンスオリゴヌクレオチドのマイクロカプセルマトリックスを形成することによって製造することができる。オリゴマー対ポリマー比、及び使用される特定のポリマーの性質に応じて、オリゴマー放出速度は制御され得る。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(酸無水物)が挙げられる。またデポー注射用製剤は、身体組織と適合性のリポソーム又はマイクロエマルション内に薬物を捕捉することによって調製されてもよい。
【0131】
本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドを医薬品としてヒト及び動物に投与する場合、それ自体で、又は例えば0.1~99%(より好ましくは、10~30%)の活性成分を薬学的に許容される担体と組み合わせて含有する医薬組成物として、与えることができる。
【0132】
上記のように、本開示の製剤又は調製物は、経口的、非経口的、局所的、又は経直腸的に与えられてもよい。これらは、通常、各投与経路に適した形態で与えられる。例えば、これらは、錠剤又はカプセル形態で、注射、吸入、目薬、軟膏、坐薬などにより、注射、点滴又は吸入による投与で;ローション又は軟膏により局所的に;及び坐薬により直腸で投与される。
【0133】
選択される投与経路に関わらず、適切な水和形態で使用され得る本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチド、及び/又は本開示の医薬組成物は、当業者に知られている従来の方法によって、薬学的に許容される剤形に製剤化され得る。本開示の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、患者に対して許容されない毒性を伴うことなく、特定の患者、組成物、及び投与様式にとって所望の治療応答を達成するのに有効な活性成分の量を得るように変化され得る。
【0134】
選択される投与量レベルは、使用される本開示の特定のオリゴマー又はそのエステル、塩若しくはアミドの活性、投与経路、投与の時間、使用される特定のオリゴマーの排泄又は代謝速度、吸収の速度及び程度、処置の期間、使用される特定のオリゴマーと組み合わせて使用される他の薬物、化合物及び/又は材料、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康及び過去の病歴、並びに医学分野で周知の同様の因子を含む様々な因子に依存し得る。
【0135】
当該技術分野において通常の技能を有する医師又は獣医は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定及び処方することができる。例えば、医師又は獣医は、医薬組成物中で使用される本開示の化合物の用量を、所望の治療効果を達成するために必要とされるレベルよりも低いレベルで開始して、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることができる。一般に、本開示の化合物の適切な1日の用量は、治療効果を生じるために有効な最小用量である化合物の量となる。このような有効用量は、一般に、上記の因子に依存し得る。一般に、本開示の化合物の患者に対する経口、静脈内、脳室内及び皮下用量は、示される効果のために使用される場合、1日に体重1キログラム当たり約0.0001~約100mgの範囲となる。
【0136】
いくつかの実施形態では、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、通常、約4~160mg/kg、10~160mg/kg、又は20~160mg/kgの用量で投与される。場合により、160mg/kgよりも多い用量が必要とされることもある。いくつかの実施形態では、例えばi.v.投与などの非経口用量は、約0.5mg~160mg/kgである。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約4mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、17mg/kg、20mg/kg、21mg/kg、25mg/kg、26mg/kg、27mg/kg、28mg/kg、29mg/kg、30mg/kg、31mg/kg、32mg/kg、33mg/kg、34mg/kg、35mg/kg、36mg/kg、37mg/kg、38mg/kg、39mg/kg、40mg/kg、41mg/kg、42mg/kg、43mg/kg、44mg/kg、45mg/kg、46mg/kg、47mg/kg、48mg/kg、49mg/kg 50mg/kg、51mg/kg、52mg/kg、53mg/kg、54mg/kg、55mg/kg、56mg/kg、57mg/kg、58mg/kg、59mg/kg、60mg/kg、65mg/kg、70mg/kg、75mg/kg、80mg/kg、85mg/kg、90mg/kg、95mg/kg、100mg/kg、105mg/kg、110mg/kg、115mg/kg、120mg/kg、125mg/kg、130mg/kg、135mg/kg、140mg/kg、145mg/kg、150mg/kg、155mg/kg、160mg/kg(その間の全ての整数を含む)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、オリゴマーは30mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、オリゴマーは40mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、オリゴマーは60mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、オリゴマーは80mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、オリゴマーは160mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、オリゴマーは50mg/kgで投与される。
【0137】
所望により、活性化合物の有効な1日の用量は、任意選択的に単位剤形で、1日の間に適切な間隔を置いて投与される2、3、4、5、6又はそれ以上のサブ用量として投与され得る。特定の状況では、機能性ジストロフィンタンパク質の所望の発現を維持するために、必要に応じて、投薬は、1日当たり1回の投与である。特定の実施形態では、投薬は、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、7日毎、8日毎、9日毎、10日毎、11日毎、12日毎、13日毎、14日毎、又は1週間毎、2週間毎、3週間毎、4週間毎、5週間毎、6週間毎、7週間毎、8週間毎、9週間毎、10週間毎、11週間毎、12週間毎、又は1か月毎、2か月毎、3か月毎、4か月毎、5か月毎、6か月毎、7か月毎、8か月毎、9か月毎、10か月毎、11か月毎、12か月毎に、1回又は複数回の投与である。特定の実施形態では、投薬は、毎週1回の1回の投与である。特定の実施形態では、投薬は、2週間に1回の1回又は複数回の投与である。いくつかの実施形態では、投薬は、2週間に1回の1回の投与である。種々の実施形態では、投薬は、毎月の1回又は複数回の投与である。特定の実施形態では、投薬は、毎月の1回の投与である。
【0138】
種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎週4mg/kgで投与される。種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎週10mg/kgで投与される。種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎週20mg/kgで投与される。種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎週30mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎週40mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎週60mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎週80mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎週100mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎週160mg/kgで投与される。本明細書で使用される場合、毎週は、当該技術分野で認められる週1回という意味を有すると理解される。
【0139】
種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、隔週に4mg/kgで投与される。種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、隔週に10mg/kgで投与される。種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、隔週に20mg/kgで投与される。種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、隔週に30mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、隔週に40mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、隔週に60mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、隔週に80mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、隔週に100mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、隔週に160mg/kgで投与される。本明細書で使用される場合、隔週は、当該技術分野で認められる2週間に1回という意味を有すると理解される。
【0140】
種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3週間毎に4mg/kgで投与される。種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3週間毎に10mg/kgで投与される。種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3週間毎に20mg/kgで投与される。種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3週間毎に30mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3週間毎に40mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3週間毎に60mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3週間毎に80mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3週間毎に100mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3週間毎に160mg/kgで投与される。本明細書で使用される場合、3週間毎は、当該技術分野で認められる3週間に1回という意味を有すると理解される。
【0141】
種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎月4mg/kgで投与される。種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎月10mg/kgで投与される。種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎月20mg/kgで投与される。種々の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎月30mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎月40mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎月60mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎月80mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎月100mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎月160mg/kgで投与される。本明細書で使用される場合、毎月は、当該技術分野で認められる月1回という意味を有すると理解される。
【0142】
当該技術分野で理解され得るように、毎週、隔週、3週間毎、又は毎月の投与は、1回若しくは複数回の投与又は上記のようなサブ用量でよい。
【0143】
核酸分子は、リポソーム中のカプセル化、イオン導入法、又はヒドロゲル、シクロデキストリン、生分解性ナノカプセル、及び生体接着ミクロスフェアなどの本明細書に記載され、そして当該技術分野で知られている他のビヒクルへの組込みを含むがこれらに限定されない、当業者に知られている様々な方法によって細胞に投与することができる。特定の実施形態では、マイクロエマルション化技術用いて、親油性(水に不溶性)医薬品のバイオアベイラビリティを改善し得る。例としては、Trimetrine(Dordunoo,S.K.,et al.,Drug Development and Industrial Pharmacy,17(12),1685-1713,1991)及びREV 5901(Sheen,P.C.,et al.,J Pharm Sci 80(7),712-714,1991)が挙げられる。いくつかの利益の中で特に、マイクロエマルション化は、吸収を循環系の代わりにリンパ系に対して優先的に方向付け、それにより肝臓を迂回し、肝胆道循環中の化合物の破壊を防止することによって、バイオアベイラビリティの増強を提供する。
【0144】
本開示の1つの態様では、製剤は、本明細書で提供されるオリゴマーと、少なくとも1つの両親媒性担体とから形成されるミセルを含有し、ここで、ミセルは、約100nm未満の平均直径を有する。より好ましい実施形態では、約50nm未満の平均直径を有するミセルが提供され、さらにより好ましい実施形態では、約30nm未満、又はさらに約20nm未満の平均直径を有するミセルが提供される。
【0145】
全ての適切な両親媒性担体が企図されるが、現在好ましい担体は一般的に、一般に安全と認められる(GRAS)状態を有し、本開示の化合物を可溶すると共に、その後の段階で溶液が複合水相(例えば、ヒト胃腸管において見出されるものなど)と接触するときにそれをマイクロエマルション化することができるものである。通常、これらの要件を満たす両親媒性成分は2~20のHLB(親水性対親油性バランス)値を有し、その構造は、C-6~C-20の範囲の直鎖脂肪族ラジカルを含有する。例としては、ポリエチレン-グリコール化脂肪グリセリド及びポリエチレングリコールがある。
【0146】
両親媒性担体の例としては、飽和及び単不飽和ポリエチレングリコール化脂肪酸グリセリド、例えば、完全又は部分的に水素化された種々の植物油から得られるものが挙げられる。このような油は、有利には、トリ-、ジ-、及びモノ-脂肪酸グリセリド、並びに対応する脂肪酸のジ-及びモノ-ポリエチレングリコールエステルで構成されることができ、特に好ましい脂肪酸組成物は、カプリン酸4~10%、カプリン酸3~9%、ラウリン酸40~50%、ミリスチン酸14~24%、パルミチン酸4~14%及びステアリン酸5~15%を含む。別の有用な種類の両親媒性担体には、飽和又は単不飽和脂肪酸との部分エステル化ソルビタン及び/又はソルビトール(SPAN(登録商標)シリーズ)、又は対応するエトキシル化類似体(TWEEN(登録商標)シリーズ)が含まれる。
【0147】
Gelucireシリーズ、Labrafil、Labrasol、又はLauroglycol(全て、Gattefosse Corporation,Saint Priest,Franceにより製造及び流通される)、PEG-モノ-オレアート、PEG-ジ-オレアート、PEG-モノ-ラウラート及びジ-ラウラート、レシチン、ポリソルベート80など(米国及び世界のいくつかの会社により製造及び流通される)を含む市販の両親媒性担体は特に有用であり得る。
【0148】
特定の実施形態では、本開示の医薬組成物を適切な宿主細胞に導入するために、送達は、リポソーム、ナノカプセル、微粒子、ミクロスフェア、脂質粒子、ベシクルなどの使用により行うことができる。特に、本開示の医薬組成物は、脂質粒子、リポソーム、ベシクル、ナノスフェア、ナノ粒子などのいずれかにカプセル化された送達のために製剤化され得る。このような送達ビヒクルの製剤化及び使用は、既知の従来の技術を用いて実行することができる。
【0149】
本開示における使用に適した親水性ポリマーは、容易に水溶性であり、ベシクル形成脂質と共有結合し、且つ毒性効果を伴うことなくインビボで耐容性を示す(すなわち、生体適合性である)ものである。適切なポリマーには、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸(ポリラクチドとも呼ばれる)、ポリグリコール酸(ポリグリコリドとも呼ばれる)、ポリ乳酸-ポリグリコール酸コポリマー、及びポリビニルアルコールが含まれる。特定の実施形態では、ポリマーは、約100若しくは120ダルトンから約5,000若しくは10,000ダルトンまで、又は約300ダルトンから~約5,000ダルトンまでの分子量を有する。他の実施形態では、ポリマーは、約100~約5,000ダルトンの分子量を有する、又は約300~約5,000ダルトンの分子量を有するポリエチレングリコールである。特定の実施形態では、ポリマーは、750ダルトンのポリエチレングリコール(PEG(750))である。またポリマーはその中のモノマーの数によっても定義することができ、本開示の好ましい実施形態は少なくとも約3つのモノマーのポリマー、例えば、3つのモノマーからなるPEGポリマー(約150ダルトン)を使用する。
【0150】
本開示での使用に適し得る他の親水性ポリマーには、ポリビニルピロリドン、ポリメトキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、及びヒドロキシメチルセルロース又はヒドロキシエチルセルロースなどの誘導体化セルロースが含まれる。
【0151】
特定の実施形態では、本開示の製剤は、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、アクリル酸及びメタクリル酸エステルのポリマー、ポリビニルポリマー、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン及びそのコポリマー、セルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、乳酸及びグリコール酸のポリマー、ポリ酸無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリ(酪酸(butic acid))、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン)、多糖、タンパク質、ポリヒアルロン酸、ポリシアノアクリラート、並びにこれらのブレンド、混合物、又はコポリマーからなる群から選択される生体適合性ポリマーを含む。
【0152】
シクロデキストリンは、6個、7個又は8個のグルコース単位からなる環状オリゴ糖であり、それぞれ、ギリシャ文字α、β、又はγで指定される。グルコース単位は、α-1,4-グルコシド結合によって連結される。糖単位のいす形配座の結果、第2級ヒドロキシル基(C-2、C-3にある)は全て環の一方の側に位置し、C-6の第1級ヒドロキシル基は全て他方の側に位置する。結果として、外面が親水性であり、シクロデキストリンは水溶性になる。対照的に、シクロデキストリンの空洞は、C-3及びC-5原子の水素、及びエーテル様酸素によって覆われているために疎水性である。これらのマトリックスにより、例えば17α-エストラジオールなどのステロイド化合物を含む様々な比較的疎水性の化合物との複合体形成が可能になる(例えば、van Uden et al.Plant Cell Tiss.Org.Cult.38:1-3-113(1994)を参照)。複合体形成は、ファンデルワールス相互作用及び水素結合形成によって生じる。シクロデキストリンの化学的性質の概説については、Wenz,Agnew.Chem.Int.Ed.Engl.,33:803-822(1994)を参照されたい。
【0153】
シクロデキストリン誘導体の物理化学的特性は、その種類及び置換度に強く依存する。例えば、これらの水中での溶解性は、不溶性(例えば、トリアセチル-ベータ-シクロデキストリン)から、147%可溶性(w/v)(G-2-ベータ-シクロデキストリン)までの範囲である。さらに、これらは、多数の有機溶媒に可溶性である。シクロデキストリンの特性は、その溶解性を増大又は低下させることにより、種々の製剤成分の溶解性の制御を可能にする。
【0154】
多数のシクロデキストリン及びその調製方法が記載されている。例えば、Parmeter(I),et al.(米国特許第3,453,259号明細書)及びGramera,et al.(米国特許第3,459,731号明細書)は、電気的に中性のシクロデキストリンを記載した。他の誘導体には、カチオン特性を有するシクロデキストリン[Parmeter(II)、米国特許第3,453,257号明細書]、不溶性架橋シクロデキストリン(Solms,米国特許第3,420,788号明細書)、及びアニオン特性を有するシクロデキストリン[Parmeter(III),米国特許第3,426,011号明細書]が含まれる。アニオン特性を有するシクロデキストリン誘導体の中には、カルボン酸、亜リン酸、亜ホスフィン酸、ホスホン酸、リン酸、チオホスホン酸、チオスルフィン酸、及びスルホン酸が親シクロデキストリンに付加されたものがある[上記のParmeter(III)を参照]。さらに、Stella,et al.(米国特許第5,134,127号明細書)によって、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン誘導体が記載されている。
【0155】
リポソームは、水性内部区画を包囲する少なくとも1つの脂質二重層膜からなる。リポソームは、膜のタイプ及びサイズによって特徴付けることができる。小さい単層ベシクル(SUV)は単一の膜を有し、通常、直径が0.02~0.05μmの範囲であり;大きい単層ベシクル(LUV)は通常0.05μmよりも大きい。オリゴラメラ(oligolamellar)の大きいベシクル及び多重層ベシクルは、通常は同心円状の複数の膜層を有し、通常、0.1μmよりも大きい。いくつかの非同心円状の膜を有するリポソーム、すなわち、より大きいベシクル内にいくつかのより小さいベシクルが含有されたものは、多胞性ベシクルと呼ばれる。
【0156】
本開示の1つの態様は、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有するリポソームを含む製剤に関し、ここで、リポソーム膜は、積載容量が増大されたリポソームを提供するように配合される。代替的に又は付加的に、本開示の化合物はリポソームのリポソーム二重層内に含有されてもよいし、又はリポソーム二重層上に吸着されてもよい。本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは脂質界面活性剤により凝集され、リポソームの内部空間に支持され得る;これらの場合、リポソーム膜は、活性剤-界面活性剤凝集体の破壊効果に抵抗するように配合される。
【0157】
本開示の一実施形態によると、リポソームの脂質二重層は、PEG鎖が脂質二重層の内側表面からリポソームでカプセル化された内部空間内に伸長し、そして脂質二重層の外部から周囲環境に伸長するように、ポリエチレングリコール(PEG)で誘導体化された脂質を含有する。
【0158】
本開示のリポソーム内に含有される活性剤は、可溶化形態である。界面活性剤及び活性剤の凝集体(例えば、目的の活性剤を含有するエマルション又はミセルなど)は、本開示に従うリポソームの内部空間内に捕捉され得る。界面活性剤は活性剤を分散及び可溶化する作用をし、様々な鎖長(例えば、約C14~約C20)の生体適合性リゾホスファチジルコリン(LPG)を含むがこれらに限定されない、任意の適切な脂肪族、脂環式又は芳香族界面活性剤から選択され得る。またPEG-脂質などのポリマー誘導体化脂質はミセル/膜融合を阻害する作用をし、ポリマーの界面活性剤分子への添加は界面活性剤のCMCを低下させ、ミセル形成に役立つので、ポリマー誘導体化脂質はミセル形成のために使用され得る。好ましいのは、マイクロモル範囲内のCMOを有する界面活性剤であり;より高いCMCの界面活性剤を用いて、本開示のリポソーム内に捕捉されたミセルを調製してもよい。
【0159】
本開示に従うリポソームは、当該技術分野で知られている様々な技術のいずれかによって調製され得る。例えば、米国特許第4,235,871号明細書;PCT国際公開第96/14057号パンフレット;New RRC,Liposomes:A practical approach,IRL Press,Oxford(1990),Pages 33-104頁;Lasic DD,Liposomes from physics to applications,Elsevier Science Publishers BV,Amsterdam,1993を参照されたい。例えば、本開示のリポソームは、リポソーム中に所望される誘導体化脂質の最終モルパーセントに相当する脂質濃度で、親水性ポリマーで誘導体化された脂質を予め形成したリポソーム内に拡散させることによって、例えば、予め形成したリポソームを、脂質グラフトポリマーからなるミセルに曝露することによって調製され得る。親水性ポリマーを含有するリポソームは、当該技術分野で知られているように、均質化、脂質領域水和、又は押出技術によって形成することもできる。
【0160】
別の例示的な製剤化手順では、活性剤はまず音波処理により、疎水性分子を容易に可溶化させるリゾホスファチジルコリン又は他の低CMC界面活性剤(ポリマーグラフト脂質を含む)中に分散される。次に、得られた活性剤のミセル懸濁液を用いて、適切なモルパーセントのポリマーグラフト脂質又はコレステロールを含有する乾燥脂質サンプルを再水和させる。次に、当該技術分野で知られている押出技術を用いて、脂質及び活性剤懸濁液はリポソームに形成され、得られたリポソームは、標準的なカラム分離により、非カプセル化溶液から分離される。
【0161】
本開示の1つの態様では、リポソームは、選択されたサイズ範囲の実質的に均一なサイズを有するように調製される。1つの効果的なサイジング方法は、選択された均一の細孔径を有する一連のポリカーボネート膜を通してリポソームの水性懸濁液を押し出すことを含み;膜の細孔径は、その膜による押出によって生じるリポソームの最大サイズにほぼ相当する。例えば、米国特許第4,737,323号明細書(1988年4月12日)を参照されたい。特定の実施形態では、DharmaFECT(登録商標)及びリポフェクタミン(Lipofectamin)(登録商標)などの試薬を用いて、ポリヌクレオチド又はタンパク質を細胞内に導入することができる。
【0162】
本開示の製剤の放出特性は、カプセル化材料、カプセル化薬物の濃度、及び放出調整剤の存在に依存する。例えば、胃内のように低いpHのみで、又は腸内のようにより高いpHのみで放出するpH感受性コーティングを用いて、放出は、例えば、pH依存性であるように操作することができる。腸溶コーティングを使用して、胃を通過するまで放出を起こさせないことができる。多数のコーティング又は様々な材料内にカプセル化されたシアナミドの混合物を使用して、最初に胃内での放出、その後に腸内での放出を得ることができる。水の取込み又はカプセルからの拡散による薬物の放出を増大させることができる塩又は細孔形成剤を包含させることによって、放出を操作することもできる。薬物の溶解性を変更する賦形剤も、放出速度を制御するために使用することができる。マトリックスの分解又はマトリックスからの放出を増強する薬剤も取り込むことができる。これらは化合物に応じて、薬物に添加することも、別個の相として(すなわち、微粒子として)添加することも、又はポリマー相中に共溶解させることもできる。ほとんどの場合、その量は、0.1~30パーセント(w/wポリマー)にすべきである。分解増強剤のタイプには、硫酸アンモニウム及び塩化アンモニウムなどの無機塩、クエン酸、安息香酸、及びアスコルビン酸などの有機酸、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、及び水酸化亜鉛などの無機塩基、及び硫酸プロタミン、スペルミン、コリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンなどの有機塩基、並びにTween(登録商標)及びPluronic(登録商標)などの界面活性剤が含まれる。マトリックスに微細構造を加える細孔形成剤(すなわち、無機塩及び糖などの水溶性化合物)は、微粒子として添加される。その範囲は、通常、1~30パーセント(w/wポリマー)である。
【0163】
取込みは、粒子の腸内の滞留時間を変更することによって操作することもできる。これは、例えば、粘膜接着性ポリマーで粒子をコーティングするか、又は粘膜接着性ポリマーをカプセル化材料として選択することによって達成することができる。例としては、遊離カルボキシル基を有する大部分のポリマー、例えば、キトサン、セルロース、特にポリアクリラート(本明細書で使用される場合、ポリアクリラートは、アクリラート基、並びにシアノアクリラート及びメタクリラートなどの修飾アクリラート基を含むポリマーを指す)が挙げられる。
【0164】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、外科若しくは医療デバイス又はインプラント内に含有されるように製剤化されるか、或いは外科若しくは医療デバイス又はインプラントによって放出されるように適合され得る。特定の態様では、インプラントは、アンチセンスオリゴヌクレオチドでコーティングされてもよいし、或いは他の方法で、アンチセンスオリゴヌクレオチドにより処理されてもよい。例えば、ヒドロゲル、又は他のポリマー、例えば、生体適合性及び/又は生分解性ポリマーは、インプラントを本開示の医薬組成物でコーティングするために使用され得る(すなわち、組成物は、ヒドロゲル又は他のポリマーを用いることにより、医療デバイスと共に使用するように適合され得る)。医療デバイスを薬剤でコーティングするためのポリマー及びコポリマーは当該技術分野においてよく知られている。インプラントの例としては、ステント、薬剤溶出ステント、縫合糸、人工器官、血管カテーテル、透析カテーテル、血管移植片、人工心臓弁、心臓ペースメーカー、植込み型除細動器、IVニードル、骨の設置及び形成のためのデバイス、例えば、ピン、スクリュー、プレート、及び他のデバイス、並びに創傷治癒のための人工組織マトリックスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0165】
本明細書に提供される方法に加えて、本開示に従って使用するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、他の医薬品から類推して、人間医学又は獣医学で使用するのに便利な任意の方法で投与するために製剤化され得る。アンチセンスアンチセンスオリゴヌクレオチド及びその対応する製剤は、単独で、又は筋ジストロフィーの処置における他の治療戦略、例えば、筋芽細胞移植、幹細胞療法、アミノグリコシド抗生物質の投与、プロテアソーム阻害剤、及びアップレギュレーション療法(例えば、ジストロフィンの常染色体パラログであるユートロフィンの上方制御)と組み合わせて投与され得る。
【0166】
いくつかの実施形態では、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与の前に、同時に、又は後に、付加的な治療薬が投与され得る。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ステロイド及び/又は抗生物質と組み合わせて投与され得る。特定の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、バックグランドのステロイド理論(theory)(例えば、間欠的又は慢性的/連続的なバックグランドのステロイド療法)を受けている患者に投与される。例えば、いくつかの実施形態では、患者は、アンチセンスオリゴマーの投与の前に副腎皮質ステロイドで処置されており、継続してステロイド療法を受ける。いくつかの実施形態では、ステロイドはグルココルチコイド又はプレドニゾンである。
【0167】
当業者は、任意の特定の動物及び状態に対して最適な投与経路及び任意の投与量を容易に決定することができるので、記載される投与経路は単なる参考であることが意図される。機能性の新しい遺伝子材料をインビトロ及びインビボの両方で細胞内に導入するために多数のアプローチが試みられている(Friedmann(1989)Science,244:1275-1280)。これらのアプローチには、発現させる遺伝子の改変レトロウイルスへの組込み(Friedmann(1989)上記;Rosenberg(1991)Cancer Research 51(18),suppl.:5074S-5079S);非レトロウィルスベクター(例えば、アデノ随伴ウイルスベクター)への組込み(Rosenfeld,et al.(1992)Cell,68:143-155;Rosenfeld,et al.(1991)Science,252:431-434);又は異種プロモーター-エンハンサーエレメントと連結した導入遺伝子のリポソームによる送達(Friedmann(1989),上記;Brigham,et al.(1989)Am.J.Med.Sci.,298:278-281;Nabel,et al.(1990)Science,249:1285-1288;Hazinski,et al.(1991)Am.J.Resp.Cell Molec.Biol.,4:206-209;及びWang and Huang(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),84:7851-7855);リガンド特異的なカチオンベースの輸送系への結合((Wu and Wu(1988)J.Biol.Chem.,263:14621-14624)又はネイキッドDNA発現ベクターの使用(Nabel et al.(1990),上記);Wolff et al.(1990)Science,247:1465-1468)が含まれる。導入遺伝子の組織への直接注入は、局所的発現のみを引き起こす(Rosenfeld(1992)上記);Rosenfeld et al.(1991)上記;Brigham et al.(1989)上記;Nabel(1990)上記;及びHazinski et al.(1991)上記)。Brigham et al.group(Am.J.Med.Sci.(1989)298:278-281及びClinical Research(1991)39(abstract))は、DNAリポソーム複合体の静脈内又は気管内投与の後、インビボでのマウスの肺のみのトランスフェクションを報告している。ヒト遺伝子療法手順の総説の一例は、Anderson,Science(1992)256:808-813である。
【0168】
さらなる実施形態では、その全体が参照によって本明細書中に援用されるHan et
al.,Nat.Comms.7,10981(2016)において提供されるように、本開示の医薬組成物は付加的に炭水化物を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、5%のヘキソース炭水化物を含み得る。例えば、本開示の医薬組成物は、5%のグルコース、5%のフルクトース、又は5%のマンノースを含み得る。特定の実施形態では、本開示の医薬組成物は、2.5%のグルコース及び2.5%のフルクトースを含み得る。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、5体積%の量で存在するアラビノース、5体積%の量で存在するグルコース、5体積%の量で存在するソルビトール、5体積%の量で存在するガラクトース、5体積%の量で存在するフルクトース、5体積%の量で存在するキシリトール、5体積%の量で存在するマンノース、それぞれ2.5体積%の量で存在するグルコース及びフルクトースの組合せ、及び5.7体積%の量で存在するグルコース、2.86体積%の量で存在するフルクトース、並びに1.4体積%の量で存在するキシリトールの組合せから選択される炭水化物を含み得る。
【0169】
IV.キット
本開示は、遺伝性疾患(例えば、DMD)を有する患者の処置のためのキットも提供し、このキットは、少なくとも、適切な容器に包装されたアンチセンス分子(例えば、ゴロディルセン)を、その使用説明書と共に含む。またキットは、緩衝剤、安定剤などの周辺試薬も含有し得る。当業者は、上記の方法の適用が、多数の他の疾患の処置での使用に適したアンチセンス分子を同定するために広範な適用を有することを認識すべきである。
【実施例0170】
全ての実施例は、SRP-4053の安全性及び効力を試験する以下の進行中のファースト・イン・ヒューマン臨床治験から得られる。本明細書で報告される結果は、本試験のパート2の間の48週目に得られたものである。
【0171】
DMD患者におけるSRP-4053の第I/II相試験
ClinicalTrials.gov識別子:NCT02310906
これは、エクソン53スキッピングに適している欠失を有するデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者においてSRP-4053の安全性、耐容性、効力、及び薬物動態を評価するためのファースト・イン・ヒューマンの多用量2パート試験である。
試験の種類:介入
試験設計:割付け: 無作為化
介入モデル: 並行群間
マスキング: 四重(参加者、ケア提供者、研究者、結果査定者)
主目的:処置
公式タイトル:エクソン53スキッピングに適しているデュシェンヌ型筋ジストロフィー患者におけるSRP-4053の2パート、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、用量漸増、安全性、耐容性、及び薬物動態試験(パート1)、並びにその後の非盲検の効力及び安全性評価(パート2)
【0172】
材料及び方法
試験薬物
原薬のゴロディルセン(a/k/a SRP-4053)は、本明細書に記載される化学構造を有するPMOであり、Sarepta Therapeutics,Incにより供給された。ゴロディルセン薬物製品は、使い捨てバイアル内で供給される無菌等張リン酸緩衝水溶液として、50mg/mLの濃度で製剤化した。臨床環境におけるIV点滴による投与の前に、通常の生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム注入)により薬物製品を希釈した。
【0173】
患者:適格性
適格患者は、エクソン53スキッピングに適しているDMD遺伝子のアウトオブフレーム欠失を有する6~15歳であった。
選択基準:
・ 遺伝子型で確認されたDMDと診断。
・ インタクトな右側及び左側の二頭筋又は別の上腕筋肉群。
・ 安定した肺機能及び心機能。
・ 6MWT、North Star Ambulatory Assessment、及び試験プロトコルで規定される起立(Gowers)試験における最低限の能力。
・ 少なくとも6か月間にわたって副腎皮質ステロイドを安定して投与されていること。
除外基準:
・ 実験的薬剤BMN-195(SMT C1100)又はPRO053による過去の処置。
・ 治験登録前の12週間以内の任意の他の実験的処置を用いた現在又は過去の処置。
・ 最近3か月以内の大手術。
・ 他の臨床的に重大な病気の存在
・ 最近3か月以内の理学療法体制の大きな変化。
その他の選択基準及び除外基準も適用され得る。
【0174】
試験設計
試験設計の概要は
図1及び直下の表に示される。
【0175】
【0176】
詳細な説明:
パート1:エクソン53スキッピングに適している欠失を有する遺伝子型で確認されたDMD患者における4用量レベルのSRP-4053の安全性、耐容性及び薬物動態を評価するための、無作為化、プラセボ対照、用量漸増である。
【0177】
スクリーニング/ベースライン:
エクソン53スクリーニングに適している、確認された突然変異を有するDMD患者は、適格性を保証するために4週~6週間のスクリーニング期間に参加した。処理前の脚の筋肉MRI及び筋肉MRS(MRS能力を有する選択された部位で)を実施し、皮膚生検及び筋生検を得た。機能試験(6分間歩行試験[6MWT]、North Star Ambulatory Assessment[NSAA]、及び他の機能尺度)を実施し、潜在的な疾患関連バイオマーカーのための血液サンプルを採取した。肺機能検査(PFT)、心エコー図(ECHO)、及びECGもスクリーニングの間に実施した。
【0178】
用量漸増:
患者を無作為化(2:1)して、SRP-4053又はプラセボを受けさせた。患者は、プラセボ又はSRP-4053の毎週のIV点滴を、それぞれ少なくとも2週間の増大する用量レベルにおいて受けた:1~2週目は4mg/kg/週;3~4週目は10mg/kg/週;5~6週目は20mg/kg/週;及び7週目からは30mg/kg/週。最後の患者が2回目の30mg/kgの用量を受けた後、パート2における投薬を開始する前に、独立DMCによりパート1の累積安全性データを審査した。DMCはパート1からの安全性データを審査し、試験の非盲検セグメント(パート2)において週1回30mg/kgのIV点滴に進むことが推奨された。
【0179】
パート2:エクソン53スキッピングに適していない欠失を有する未処置対照のDMD患者と比較して、エクソン53スキッピングに適している欠失を有する新たに登録されたDMD患者と共にパート1からの患者におけるSRP-4053の非盲検評価である。
【0180】
パート2は、エクソン53スキッピングに適していない突然変異を有するDMD患者の未処置の同時対照群と比較して、患者における週1回のSRP-4053の30mg/kgのIV点滴の安全性及び効力についての144週間の非盲検評価である。
【0181】
スクリーニング/ベースライン:
パート1(SRP-4053及びプラセボの両方)からの患者にパート2を継続させた。処置群の患者が全部で25人である非盲検SRP-4053処置のために、エクソン53スキッピングに適している欠失を有する新しいDMD患者を登録した。未処置対照群としての役割を果たすために、エクソン53スキッピングに適していない欠失を有するがそれ以外は適格性基準を満たす24人までのDMD患者もパート2で登録した。新しいパート2患者全員の適格性は、4~6週間のスクリーニング期間中に確認される。
【0182】
144週間の非盲検処置:
パート2において、処置群の全ての患者は、144週間にわたって週1回の30mg/kgのSRP-4053をIV点滴で受ける。新しいパート2の処置患者はベースラインの皮膚生検及び筋生検を受け、全ての処置患者は、パート2の48週目に2回目の筋生検を受けなければならない。また患者は、12~24週間毎に機能試験(パート1について上記した通り)及びPFTも受け、ECGを取る。有害事象及び併用薬物療法を、試験期間にわたって継続的にモニターし、収集する。試験適格性を確認した後、未処置対照群の患者は、身体検査及び実験的評価のスケジュールの省略、並びにPKサンプリング又は生検がないことを除いて、パート2の処置患者と同じ試験手順を受ける。
主要評価項目:
・ 有害事象の発生[時間枠:約12週間(パート1)]
・ 臨床検査異常(血液学、化学、凝固、尿検査)の発生[時間枠:約12週間(パート1)]
・ バイタルサイン及び身体検査の異常の発生[時間枠:約12週間(パート1)]
・ ECG及びECHOにおける異常の発生[時間枠:約12週間(パート1)]
・ 6分間歩行試験(6MWT)のベースラインからの変化[時間枠:ベースライン~144週目(パート2)]
・ ウエスタンブロットにより決定されるジストロフィンタンパク質レベル[時間枠:ベースライン~48週目(パート2)]
副次評価項目:
・ 血漿中の薬物濃度[時間枠:約12週間(パート1)]
・ 肺機能検査[時間枠:ベースライン~144週目(パート2)]
最大呼気圧(MEP)%、最大吸気圧(MIP)%
・ IHCにより決定されるジストロフィン陽性線維の割合[時間枠:ベースライン~48週目(パート2)]
・ エクソン53スキッピング[時間枠:ベースライン~48週目(パート2)]
他の評価項目:
・ 有害事象の発生[時間枠:144週間(パート2)]
・ 臨床検査異常の発生(血液学、化学、凝固、尿検査)[時間枠:144週間(パート2)]
・ バイタルサイン及び身体検査における異常の発生[時間枠:144週間(パート2)]
・ ECG及びECHOにおける異常の発生[時間枠:144週間(パート2)]
・ 免疫原性[時間枠:144週間(パート2)]
【0183】
実施例1:生化学的効力の評価
静脈内点滴により毎週投与される30mg/kgのSRP-4053の安全性、耐容性及びジストロフィン産生を評価するマルチサイトのファースト・イン・ヒューマン治験(ClinicalTrials.gov識別子:NCT02310906)に参加している25人の患者から、ベースライン及びオントリートメントにおける上腕二頭筋のペアの筋生検を得た。各手術について、2つの筋肉片:Aブロック及びBブロックを切除した。全てのアッセイに対してA及びBブロックを別々に分析した。
【0184】
筋生検は、ジストロフィンタンパク質量(ウエスタンブロット、主要生物学的エンドポイント)及びエクソンスキッピング(RT-PCR)を評価するために最適化された方法により検査した。新規の自動画像解析(MuscleMapTM)は免疫組織化学を使用して、ジストロフィンの局在化(平均線維強度)を評価した。
【0185】
ウエスタンブロット分析について:A及びBブロックを2通りのゲルで実行した=4回検査平均
【0186】
RT-PCR分析について:A及びBブロックを4通りで実行した=8回検査平均
【0187】
IHC分析について:A及びBブロックをレベル1及び2で実行した=4回検査平均
【0188】
ベースライン特徴:
ゴロディルセン処置コホートにおける25人の患者のベースライン特徴は、表1に要約される。エクソン53スキッピングに適している5つの異なる遺伝子型(45~52;48~52;49~52;50~52;及び52における突然変異欠失)を表した。17人の患者は、最初に試験のパート1でプラセボを受けた後にSRP-4053処置に変更されたか、或いはSRP-4053処置のために試験のパート2で登録された。8人の患者は、試験のパート1及びパート2でSRP-4053を受けた。全部で25人の患者がSRP-4053を受けた。
【0189】
【0190】
エクソンスキッピングの決定:
RT-PCR分析:
試験設計毎にベースライン及び48週間の時点でRT-PCRによりエクソンスキッピングを測定した。RT-PCR分析のために、製造業者のプロトコルに従ってTrizol試薬キットを用いて、RNAを細胞から単離した。NanoDropを用いて、RNAの濃度及び純度を決定した。表2に従う突然変異ペアの順方向プライマー及び逆方向プライマーを用いるRT-PCRによりエクソン53スキッピングを測定した。
【0191】
【0192】
スキップ及び非スキップ産物は、表3に従うアンプリコンサイズをもたらした。
【0193】
【0194】
RNAにRT-PCRを行った後、ゲルキャピラリー電気泳動を使用するLabChip GXを用いてサンプルを分析した。以下の式を用いてエクソンスキッピングパーセントを計算した:(スキップバンドの曲線下面積)/(スキップバンド及び非スキップバンドの曲線下面積の合計)×100。
【0195】
RT-PCR結果の概要は表4に示される。少なくとも48回の毎週のSRP-4053の投与を受けた25人の患者は全て、エクソンスキッピングのベースラインレベルを超える増大を示した(p<0.001)。
【0196】
【0197】
図2は、エクソンスキッピングのベースラインレベルを超える増大があることの決定を導く試験における25人の患者のそれぞれのRT-PCRデータ(ベースライン及びSRP-4053処置の48週間後)を示す(p<0.001)。
【0198】
ジストロフィン産生の決定:ウエスタンブロット分析
ウエスタンブロット分析のために、均質化緩衝液(4%のSDS、4Mの尿素、125mMのtris-HCl(pH6.8))を用いて、133μLの緩衝液中に直径約5mmの9~18×20μmの組織切片の比率で組織を均質化した。対応するライセートを集め、製造業者の説明書に従ってRC DC Protein Assay Kit(BioRad Cat.500-0122)を用いてタンパク質の定量化を行った。均質化緩衝液を用いて、BSA標準曲線の範囲内に入るように組織抽出物サンプルを1:10に希釈した。28μlのサンプルが、40μgのタンパク質、1X最終濃度のNuPAGE LDS Sample Buffer(Life Technologies Cat.NP0008,Carlsbad,California,USA)、及び1X最終濃度のNuPAGE Reducing Agent(10x)(Life Technologies Cat.NP0004)を含有するように、サンプルを調製した。タンパク質サンプルを105℃5分間で加熱した後、サンプルを遠心分離し、上清を、1レーン当たり40μgの総タンパク質負荷で、NuPAGE Novex 12ウェル、1mm、ミニ3~8%ポリアクリルアミドのトリス-アセタートゲル(Life Technologies Cat.EA0375)にロードした。色素の前面がゲルから外れるまでゲルを室温150ボルトで実行した。得られたタンパク質ゲルを、NuPAGE移動緩衝液(Life Technologies NP006-1)、10%のメタノール及び0.1%のNuPAGE抗酸化剤(Life Technologies NP0005)を用いて室温30ボルトで75分間、PVDF膜(Life Technologies
Cat.LC2007)に移動させた。
【0199】
タンパク質が移動したら、PVDF膜をTTBS緩衝液(1XTBS(Amresco
Cat.J640-4L)、0.1%(v/v)tween(登録商標)-20)中に浸した。膜を遮断緩衝液(TTBS中5%(w/v)の脱脂粉乳(Lab Scientific Cat.M0841))に移し、優しく揺らしながら4℃で一晩浸漬させた。遮断した後、遮断緩衝液を用いて1:20に希釈したDYS1(Leica Cat.NCL-DYS1)中室温で60分間、又は遮断緩衝液を用いて1:100,000に希釈した抗-α-アクチニン抗体(Sigma-Aldrich Cat.NA931V)中室温で20分間のいずれかで、膜をインキュベートした後、6回洗浄した(それぞれTTBSで5分間)。遮断緩衝液を用いて、西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされた抗マウスIgG(GE Healthcare Cat.NA931V)を1:40,000で希釈し、45分間(DYS1)又は15分間(α-アクチニン)膜に添加した後、再度6回洗浄した。ECL Prime Western Detection Kit(GE Healthcare Cat.RPN2232)を用いて、フィルムをゲルに曝露し、それに応じて現像した。現像したフィルムを、ImageQuant TL
Plusソフトウェア(バージョン8.1)を用いてスキャン及び分析し、Graphpadソフトウェアを用いて直線回帰分析を実施した。
【0200】
各ウエスタンブロットゲルは、4%、2%、1%、0.5%、0.25%の最終正常対照に対して、正常組織から抽出され、DMD組織抽出物に添加された総タンパク質を用いて作製された5点ジストロフィン標準曲線を含む(例えば、
図5A及び
図5Bを参照)。標準曲線サンプルを上記のように処理した。ジストロフィンバンド強度をゲル標準曲線と比較することにより、ジストロフィンタンパク質レベルを正常対照ジストロフィンレベルのパーセント(NC%)として決定した。
【0201】
ウエスタンブロットで測定したときの正常ジストロフィンタンパク質の平均%は、ベースラインの0.09%から、オントリートメントの1.02%まで増大し(範囲0.09~4.3%)、ベースラインからの平均変化が+0.93%であることが示された(p<0.001)。
【0202】
ウエスタンブロット結果の概要は表5に示される。患者は、ウエスタンブロットで測定したときにジストロフィンタンパク質のベースラインを超える統計的に有意な増大を実証した。
【0203】
【0204】
図3は、ジストロフィンタンパク質のベースラインを超える統計的に有意な増大があることの決定を導く試験における25人の患者のそれぞれのウエスタンブロットデータ(ベースライン及びSRP-4053処置の48週間後)を示す。
【0205】
エクソンスキッピングと、新規のジストロフィンタンパク質との間の正の相関関係が観察された(Spearman-r=0.500、p=0.011)。
【0206】
平均線維強度の分析は、新規のジストロフィンのベースラインを上回る統計的に有意な増大(p<0.001)と、ジストロフィンが正確に筋細胞膜に局在化されたこととを実証した(
図4A~
図5B)。
【0207】
エクソンスキッピング及び筋細胞膜ジストロフィン局在化が全患者において観察された。
【0208】
IHCの陽性ジストロフィン線維パーセントの概要は表6に示される。全ての患者は、IHCで測定したときに陽性ジストロフィン線維パーセントのベースラインを超える統計的に有意な増大を実証した。
【0209】
【0210】
表5及び表6並びに
図4A~
図5Bにおいて見られるように、ウエスタンブロットデータはPDPF及び強度と相関し、SRP-4053により処置から得られるDMD患者におけるジストロフィン産生が示される。
【0211】
本明細書で引用される全ての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願がそれぞれ参照によって援用されることを具体的に且つ個々に示したかのように、参照によって本明細書中に援用される。