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  • 特開-咬合力測定装置用の保護部材 図1
  • 特開-咬合力測定装置用の保護部材 図2
  • 特開-咬合力測定装置用の保護部材 図3
  • 特開-咬合力測定装置用の保護部材 図4
  • 特開-咬合力測定装置用の保護部材 図5A
  • 特開-咬合力測定装置用の保護部材 図5B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138877
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】咬合力測定装置用の保護部材
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/05 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
A61C19/05 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044778
(22)【出願日】2022-03-21
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小久保 陽太
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052NN07
4C052NN16
(57)【要約】
【課題】口腔に挿入されて歯の咬合力を電気信号として検出する咬合力測定装置1を繰り返し使用するにあたり、センサシート2へ容易に着脱可能な保護部材40を提供する。
【解決手段】保護部材40は被験者の口腔内に挿入されて歯の咬合力を電気信号として検出する感圧部14が設けられた拡幅部12を有するセンサシート2を保護するための可撓性を有する保護部材40であって、センサシート2が挿入される挿入部43の開口端から拡幅部12を収容する収容部44の接続端45にむかって横幅が連続的に小さくされ、かつ収容部44の横幅が接続端45の横幅と同等である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定回路を有する把持部と、前記把持部に装着される面状のセンサシートと、を備える咬合力測定装置に用いられ、前記センサシートが被験者の口腔内に挿入されて歯の咬合力を検出する際に前記センサシートに被せられ、かつ、容易に着脱可能な保護部材であって、
前記センサシートは、
前記口腔内への挿入方向の先端側が面方向に拡幅された拡幅部を有する可撓性の絶縁体シートであって、前記拡幅部において前記被験者の咬合力を電気的に検出するための検出素子を有する感圧部と前記拡幅部の挿入方向の後端側に配置し、前記感圧部に接続され、かつ、前記把持部に装着される端子部とを含む、センサシート本体と、
少なくとも前記感圧部を覆うように積層された形状復元層とを備え、
前記保護部材は、可撓性を有する一組のシートを相互に重ね合わせて周縁部において固着することにより平面状に形成され、かつ、一端に開口部を有する袋状を呈し、
前記開口部を含んで構成され、前記センサシートが挿入される際に挿入口とされる一方、挿入後に前記把持部の一部を覆う挿入部と、
前記挿入部と連接され、少なくとも前記拡幅部が収容される収容部と、
を備え、
前記挿入方向に直交する面方向の幅を横幅として、前記挿入部は、前記開口部における開口端から前記収容部の接続端にむかって前記横幅が連続的に小さくされ、かつ、
前記収容部の前記横幅は、前記収容部における前記接続端の前記横幅と同等に設定されている、保護部材。
【請求項2】
前記挿入方向に直交する方向の断面において、前記保護部材における前記収容部の内周長さは、前記センサシートの前記拡幅部の外周最大長さの101%以上107%以下に設定されている、請求項1に記載の保護部材。
【請求項3】
一組の前記シートは、前記挿入方向の長さが異なり、かつ、前記開口部において、一方のシートの端辺は他方のシートの端辺に対して偏在して配置されている、請求項1または2に記載の保護部材。
【請求項4】
一組の前記シートは、半透明の樹脂材料により成形されている、請求項1から3の何れかに記載の保護部材。
【請求項5】
一組の前記樹脂シートは、ポリオレフィン樹脂を母材として、無機粒子を含んで形成されている、請求項1から4の何れかに記載の保護部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、咬合力測定装置に用いられる保護部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から口腔に差し入れられるシートにおよぼされる咬合力を電気信号として検出されるセンサシートを用いた咬合力測定装置がある。咬合力を測定するときには、被験者の口腔に差し入れられるセンサシートの感圧部を被験者が噛むことで咬合力を検出することができる。
【0003】
特許文献1は、被測定者の口腔内に挿入することで付着する被測定者の唾液等の体液から咬合力センサシートを保護して、咬合力を計測するセンサを繰り返し使用するための保護部材を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-148720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
センサシートを被験者の口腔内に挿入する場合、センサシートへの浸水を防ぎ、かつ口腔内環境に対する耐食性などを確保するためセンサシートに保護部材を取り付ける必要がある。特許文献1には咬合圧センサを侵入させ、可撓性を有する樹脂製の保護袋を有する保護材の記載があるが、保護袋の支持部及び拡幅部は咬合圧センサの前方部よりも幅が狭く、保護袋への咬合圧センサをスムーズに出し入れすることが難しく、よって保護部材の取り換えが非常に煩わしい。
【0006】
ここにおいて、本発明は、センサシートに被せる保護部材において、保護部材内へのセンサシートの着脱が容易となる新たな構造の咬合力測定装置用の保護部材を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0008】
第一態様は、測定回路を有する把持部と、前記把持部に装着される面状のセンサシートと、を備える咬合力測定装置に用いられ、前記センサシートが被験者の口腔内に挿入されて歯の咬合力を検出する際に前記センサシートに被せられ、かつ、容易に着脱可能な保護部材であって、前記センサシートは、前記口腔内への挿入方向の先端側が面方向に拡幅された拡幅部を有する可撓性の絶縁体シートであって、前記拡幅部において前記被験者の咬合力を電気的に検出するための検出素子を有する感圧部と前記拡幅部の挿入方向の後端側に配置し、前記感圧部に接続され、かつ、前記把持部に装着される端子部とを含む、センサシート本体と、
少なくとも前記感圧部を覆うように積層された形状復元層とを備え、前記保護部材は、可撓性を有する一組のシートを相互に重ね合わせて周縁部において固着することにより平面状に形成され、かつ、一端に開口部を有する袋状を呈し、前記開口部を含んで構成され、前記センサシートが挿入される際に挿入口とされる一方、挿入後に前記把持部の一部を覆う挿入部と、前記挿入部と連接され、少なくとも前記拡幅部が収容される収容部と、を備え、前記挿入方向に直交する面方向の幅を横幅として、前記挿入部は、前記開口部における開口端から前記収容部の接続端にむかって前記横幅が連続的に小さくされ、かつ、前記収容部の前記横幅は、前記収容部における前記接続端の前記横幅と同等に設定されている、保護部材である。
【0009】
第二態様は、前記挿入方向に直交する方向の断面において、前記保護部材における前記収容部の内周長さは、前記センサシートの前記拡幅部の外周最大長さの101%以上107%以下に設定されている、第一態様に記載された保護部材である。
【0010】
第三の態様は、一組の前記シートは、前記挿入方向の長さが異なり、かつ、前記開口部において、一方のシートの端辺は他方のシートの端辺に対して偏在して配置されている、第一態様または第二態様に記載された保護部材である。
【0011】
第四の態様は、一組の前記シートは、半透明の樹脂材料により成形されている、第一態様から第三の態様のいずれかに記載された保護部材である。
【0012】
第五の態様は、一組の前記樹脂シートは、ポリオレフィン樹脂を母材として、無機粒子を含んで形成されている、第一態様から第四の態様のいずれかに記載された保護部材である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、柔軟な咬合力のセンサを口腔内に挿入して歯の咬合力を電気信号として検出するに際し、センサシートに被せる保護部材の着脱が容易となり、センサシートの清潔さを保ちながら簡単に咬合力測定装置を再使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一実施形態に係る咬合力測定装置に保護部材を装着した状態を示した全体構成を示す図。
図2】本発明の第一実施形態に係るセンサシートを装着した咬合力測定装置の一例を示す平面図
図3図2におけるIII-III断面の要部を拡大して示す断面図であって、感圧部を示す図
図4】本発明の第一実施形態に係る保護部材の平面図
図5A図1におけるVA-VA断面図
図5B図1におけるVB-VB断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1は咬合力測定装置1の一例を示す。咬合力測定装置1は、センサシート2と、制御装置を備えた把持部3とを備えており、センサシート2は把持部3と接続されている。咬合力測定装置1は、センサシート2によって被験者の上下の歯の噛み合わせによる咬合力を検出する。さらに咬合力測定装置1は図4に示す保護部材40が装着される。保護部材40はセンサシート2によって咬合力を測定する際に、センサシート2に被せられ保護するとともに、センサシート2とともに被験者の口腔内に挿入されるものである。なお、以下の説明では、原則として、センサシート2、把持部3、保護部材40において上下方向とはセンサ厚さ方向であって図1の紙面直交方向を言う。また、前後方向とは測定時における被験者の前後方向となる図1の左右方向を言い、被験者の口腔への挿入方向を前方とする。また、右左方向とは、図1の上下方向を言い、測定時における被験者の略左右方向となる。
【0017】
<センサシート>
図2のとおりセンサシート2は全体として柔軟で薄肉の略一定の厚さで平面的に広がったシート状とされるセンサシート本体10を有している。かかるセンサシート2は、検出対象者の口腔に差し入れ、弓形またはほぼ幅広馬蹄形のような平面状に広がって配置され、後述の接続部よりも左右幅が広い拡幅部12と、該拡幅部12から口腔外へ延び出される接続部16とを、備えている。
接続部16は、拡幅部12の後側から後方に延びだした略短冊形状とされ、前後方向の一方の端部にて拡幅部12につながっていると共に、他方の端部には、把持部3に備える制御装置(以降制御装置と記載の場合は把持部を含む)側の電気回路に接続される端子部18が設けられている。
【0018】
センサシート本体10は平面視において略同形状を有した、第一電極シート29と、第二電極シート31と、誘電体層28と、ガード電極層38とを、互いにシート厚さ方向で重ね合わせて一体化した積層シート構造である。
【0019】
第一電極シート29は、電気絶縁性を有する柔軟なシート状の第一基材50の上面に、感圧部14に対応する領域において、平面視で略長方形とされて、左右方向に長手となるように配されている複数の第一電極30が形成されている。第一電極30は、ゴム材料や合成樹脂材料にカーボンや銀などの導電性材料を混合した導電性塗料などによって形成されており、第一基材50の変形に追従して変形可能な柔軟性を有している。また、第一電極30の幅方向中央を略全長に亘って、第一電極30よりも狭幅な第一導電線34が電気的に接続されている。第一導電線34は導電性塗料などによって第一基材50に積層状態で形成されており、第一電極30と同様の柔軟性を有している。それぞれの第一導電線34はさらに接続部16を後方に延びて接続端子58に接続されている。
【0020】
一方、第二電極シート31は、第一基材50と同様の材料で形成された第二基材52の下面に、感圧部14に対応する領域において、平面視で略長方形とされて、前後方向に長手となるように配されている複数の第二電極32が形成されている。第二電極32は、第一電極30と同様に導電性材料で形成されて、第二基材52の変形に追従して変形可能な柔軟性を有している。また、第二電極32の幅方向中央を略全長に亘って、第二電極32よりも狭幅な第二導電線36が電気的に接続されている。第二導電線36は導電性塗料などによって第二基材52に積層状態で形成されており、第二電極32と同様の柔軟性を有している。それぞれの第二導電線36はさらに接続部16を後方に延びて接続端子58に接続されている。
【0021】
誘電体層28は、ゴムやポリウレタンやポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂の電気絶縁性材料で形成されたシート状とされており、上下方向において弾性的な圧縮変形が許容されている多数の気泡を有する多孔質の弾性体とされており、静電容量を大きく得ることができると共に、上下方向のヤング率が小さくされている。
【0022】
そして、第一電極シート29と第二電極シート31が誘電体層28を挟んで相互に重ね合わされることにより、図2に示すように、感圧部14において第一電極30と第二電極32とが誘電体層28を挟んで交差対向するように配されており、図3に破線で囲んで示したそれら第一電極30と第二電極32の各交差対向部分が検出素子24とされている。
【0023】
第一電極シート29における誘電体層28への重ね合わせ面と反対側の面(下面)には、ガード電極層38が重ね合わされる。ガード電極層38は、第一及び第二基材50,52と同様の材料で形成された柔軟な第三基材66の上面に、第一及び第二電極30,32と同様に導電性材料で形成されて柔軟性を備えており、上下方向の投影において複数の検出素子24の略全体を覆う形状とされているガード電極68が形成された構造を有している。さらに、ガード電極層38にはガード電極68に電気的に接続されていると共に、ガード電極38から後方へ延び出し、第三基材66上に設けられた接地端子72に接続されている接地配線70が設けられている。
【0024】
センサシート本体10の外側には、図3に示すように、形状復元層80が設けられている。形状復元層80は、例えば、シート状の合成樹脂製の弾性発泡体であって、荷重の作用に対して容易に変形すると共に、荷重の除去によって元の形状に速やかに復元する弾性を有している。形状復元層80は平面視において拡幅部12における感圧部14の略全体を覆う形状とされている。本実施形態では、2つの形状復元層80が、センサシート本体10の上下両外側から重ね合わされ、感圧部14よりも外周まで広がって設けられている。
【0025】
<制御装置>
センサシート2は、図1 に示すように、端子部18に設けられた接続端子58、接地端子72にて制御装置3に接続される。なお、接地端子72が制御装置3に接続されることにより、ガード電極68が接地されて、ガード電極68が基準電位に保たれている。
【0026】
さらに、制御装置3は、第一, 第二導電線34,36によって第一, 第二電極30,32と接続されており、第一電極30と第二電極32の間に静電容量測定用の電圧を印加する電源装置と、各検出素子24における静電容量の変化量を検出する検出手段と、検出手段による静電容量の検出結果に基づいて咬合力を算出する咬合力算出手段と、算出した咬合力を表示する表示手段とを、備えていてもよい。また、制御装置3は把持部3を兼ねており、被験者の口腔内にセンサシート2を挿入し咬合力を計測する際に咬合力測定装置1の使用者が把持部3を保持することで容易に操作することができる。
【0027】
<保護部材>
形状復元層80が貼り合わされたセンサシート本体10は、例えば、図1に示すような保護部材40が取り付けられる。保護部材40は、水の通過を防ぐ耐水性や口腔内環境に対する耐食性などを有するとともに口腔内に入れても人体に害がない合成樹脂材料やエラストマ材料などで形成されている。
【0028】
保護部材40は図4に示すように、上下一組の合成樹脂やエラストマ製の可撓性を有したシートを重ね合わせて、外周の前方及び左右両側方の3辺の周縁部41において相互に固着して平面状とし、かつ後端側は溶着されずに開口している開口部42を有する袋状としたものであり、センサシート2の前側から着脱可能に被せられるようになっている。
【0029】
センサシート2を覆うように保護部材40が設けられることによりセンサシート2が口腔内で唾液に直接接触するのを防ぐことができて、検出精度の低下や故障が防止される。しかも、保護部材40で覆われたセンサシート2を被験者の口腔から取り出した後で、保護部材40を新しいものに交換することによって、センサシート2を清潔に保ちながら簡単に咬合力測定装置1を再使用することができる。
【0030】
なお、一組のシートを固着する手段は特に限定されるものではなく、例えば、溶着、融着、粘着テープ、粘着剤等の公知の手段を用いることができる。さらに、熱によって溶着する場合、超音波溶着、加熱加圧溶着、熱風溶着、高周波溶着など種々の溶着手段を採用することができる。
【0031】
さらに保護部材40は、挿入部43と収容部44とを備えている。挿入部43は開口部42を含んで構成され、センサシート2を保護部材40に挿入する際に挿入口とされる。収容部44は保護部材40をセンサシート2へ挿入する際に拡幅部12および接続部16を収容することができる。
【0032】
挿入部43はセンサシート2における拡幅部12の横幅である左右幅よりも広くされ、かつその左右幅が連続的に小さくされ、前端が収容部44の後端である接続端45において収容部44に接続される。接続端45の左右幅はセンサシート2における拡幅部12の左右幅よりも広くされ、収容部44は左右幅を接続端45の左右幅と略同等とし、かつ前方に延びている。開口部42から挿入されたセンサシート2は連続的に寸法が減少する挿入部43に沿って案内され、さらに収容部44の内面に沿って保護部材40の奥へスムーズに挿入することができる。
【0033】
つまり、保護部材40をセンサシート2に被せるときに保護材部材40の挿入部42の幅が比較的広いことでセンサシート2を入れ込みやすくなり、その後保護部材40の奥まで収容部44に沿って挿入することができることから、挿入作業を容易にすることができ、また、センサシート2を保護部材40より取り外すことも容易となる。
【0034】
さらに、保護部材40の前端部分の左右方向中央には、拡幅部12の凹部54と対応する凹部46が設けられていることで、センサシート2を収容した際に拡幅部2を保護部材40における内部所定位置により容易に挿入可能となる。
【0035】
図5Aは咬合力測定装置1に保護部材40を装着した状態において、センサシート2の接続部16と保護部材40の収容部44の左右方向縦断面を示す図1におけるVA-VA断面図である。収容部44がセンサシート2の厚みにより押し広げられてできた内側の空間内に接続部16が内在している。
【0036】
一方、図5Bは咬合力測定装置1に保護部材40を装着した状態において、センサシート2の拡幅部12の左右方向の幅が最大となる部分および保護部材40の左右方向縦断面を示す図1におけるVB-VB断面図である。一組の形状復元層80がシート厚さ方向でセンサシート本体10を挟んで対向配置されているセンサシート2を保護部材40が覆っている。
【0037】
図5Bにおいて拡幅部12の外周最大長さSを破線で示している。拡幅部12の外周最大長さSとは、左右に分かれた形状復元層80それぞれの外面の左右内側端部を繋ぎ、さらに形状復元層80それぞれの外面の左右外側端部とセンサシート本体10の上下面それぞれの端部とを繋いだ線分の長さと、それぞれの形状復元層80の外面の左右幅方向の長さとを合計した長さにセンサシートの厚みを加えた長さである。
【0038】
例えば図5Aに示す保護部材40の収容部44の内周の長さは、拡幅部12の外周最大長さSに対して101%以上107%以下であり、好ましくは、拡幅部12の外周最大長さSに対して103%以上105%以下である。収容部44の内周の長さが、拡幅部12の外周最大長さSに対して当該範囲にあることから、保護部材10にセンサシート2を挿入するときに、センサシート2が保護部材40に引っかかってしまうことによるスムーズな挿入の阻害や、保護部材40がだぶついてしまうことによって発生する皺よる咬合力測定時の噛み心地の低下や測定誤差の発生、場合によっては口側面への接触による被験者への違和感の付与を防ぐことができる。
【0039】
保護部材40は、第一及び第二電極30,32を備える拡幅部12だけでなく、接続部16及び制御装置3の一部まで覆う構造とされている。特に挿入部43を口腔内に挿入しない制御装置3まで覆うことで開口部42から保護部材40の内部に水分が侵入することを防ぐことができる。また、広幅な制御装置3まで覆うことで被験者の口腔内に挿入しているときに保護部材40が不用意に脱落してしまうことも防ぐことができる。保護部材40は制御装置3の全体を覆ってもよい。
【0040】
保護部材40を構成する一組のシートは挿入方向つまりは前後方向の長さが異なっていてもよく、例えば開口部42において一方のシートの端辺が他方のシートの端辺に対して偏在して配置されえる。シート同士が偏在することで開口部42において一方のシートの端辺が他方よりも後方に延びだしている形となり、センサシート2を保護部材40に挿入するにあたり、センサシート2の前端側を延びだした部分に載せるなど沿わせて挿入することで、容易に挿入することが可能となる。また、シートの長さが異なることで一方のシートが制御装置3をしっかりと覆って水分等の侵入を抑えつつ、他方のシートが制御装置3に配置された咬合力算出手段で算出した咬合力を表示する表示手段を回避して覆うことで算出結果表示の視認性を確保することができる。
【0041】
保護部材40は半透明であることが望ましく、例えば半透明なシートで構成されている。本発明において半透明とは保護部材40に挿入されたセンサシート2の少なくとも形状復元層80の表面の色が保護部材40を通して判別に支障をきたすことなく見ることができる状態を言う。センサシート2の挿入時において保護部材40の上面からセンサシート2の挿入状態を視認することでセンサシート2が保護部材40の奥まで十分挿入できているか、またセンサシート2に折り曲がりが発生していないか等を速やかに確認しながら容易に挿入作業ができる。さらに、保護部材40が半透明であることで、例えば保護部材40に挿入されたセンサシート2上に噛み合わせによる凹みやキズが見受けられたときに、それらを視認しづらくすることで被験者に対して不要な不安を与えることを防ぐことができる。保護部材40は半透明であれば有色であってもよく、また部分的に半透明であったり、透明度の濃淡があってもよく、意匠性をもっていてもよい。
【0042】
さらに、保護部材40の少なくとも内面は表面全体が微細な凹凸を有している。内表面が粗面化されていることで保護部材40を構成する一組のシート同士の滑り性を良化することができ、センサシート2を挿入するに際してシート同士の密着を簡単にはがすことができる。また、保護部材40の内面とセンサシート2との接触抵抗を低減することができ、センサシート2を保護部材40内にスムーズに挿入することができる。なお、内表面の一部が凹凸であったり、部位によって凹凸の粗度が異なっていてもよく、表側面にも凹凸が有ってもよい。
【0043】
本実施形態において、一組のシートは樹脂やエラストマを母材として、無機粒子を含んで形成され、無機粒子の一部がシートの表面に露出することによってシートの表面に凹凸を形成してもよいし、無機粒子がシート表面に露出することなく(母材に覆われた状態で)シートの表面に凹凸を形成してもよい。
【0044】
無機粒子は母材100質量部を基準として1.4質量部以下とし、1.1質量部以下の量で含まれてもよい。無機粒子が母材中に存在することで、シートの光沢性をより低下させることができ、さらに表面に凹凸ができることで半透明となる。
【0045】
母材としてはポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル-酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂、アイオノマー樹脂、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂などを用いてもよい。無機粒子としては、例えば食品添加物として使用が認められている二酸化ケイ素を使用することができる。
【0046】
また、シートは、エンボスなどの表面加工により形成することのできる構造化表面を有してもよいし、略平滑な表面を有してもよく、プラズマ処理や薬品処理などの表面改質をしてもよいし、インクジェット印刷、グラビア印刷、静電印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷などの印刷技術を用いることにより低摩擦性を付与したり、半透明にしたり、多様な装飾性をシートに付与することもできる。
【符号の説明】
【0047】
1 咬合力測定装置
2 センサシート
3 制御装置(把持部)
10 センサシート本体
12 拡幅部
14 感圧部
16 接続部
18 端子部
24 検出素子
40 保護部材
41 周縁部
42 開口部
43 挿入部
44 収容部
45 接続端
80 形状復元層
S 外周最大長さ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B