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  • 特開-段差乗り越え用車いす 図1
  • 特開-段差乗り越え用車いす 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138887
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】段差乗り越え用車いす
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/06 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
A61G5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044791
(22)【出願日】2022-03-21
(71)【出願人】
【識別番号】520134038
【氏名又は名称】株式会社ケアマート
(74)【代理人】
【識別番号】100212255
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 将之
(72)【発明者】
【氏名】清水 義生
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、車いすを押す介助者の段差乗越えの負担が低減されると共に利用者の安全も確保された、段差乗り越え補助機構を備えた車いすを提供することである。
【解決手段】本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究の結果、車いすのハンドルが後方にあるほうが、通常の車いすと比較して極めて小さな力で段差乗越えが可能であることを見出した。しかし、通常のハンドルよりも長いハンドルでは、収納する場合や、狭い廊下や扉をくぐる場合など、様々な場面で却って不便になるという新たな課題が生じたため、さらに研究の結果、車いすのハンドルの根本部分を車いすのフレームに直接取り付けるのではなく、車いすのフレームに回動可能に取り付けられているハンドル支柱の上端に取り付けることによって、必要があるときのみ車いすのハンドルを後方に動かすことができることを見出した。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車いすのフレームに前後方向に回動可能に取り付けられているハンドル支柱の上端にハンドルが取り付けられていることを特徴とする、車いす。
【請求項2】
支柱固定機構をさらに備えていることを特徴とする、請求項1の車いす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢、疾患または負傷等により歩行機能に不自由を有する者の補助用の器具である車いすにおいて、段差の乗り越えをより容易にする機構を備えた車いすに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車いすにおいて、段差を乗り越える際には、介助者が後輪を支点にしてハンドルを押し下げて前輪を浮かせて段差の上に前輪を乗せ、次いで前輪を支点にしてハンドルを持ち上げて後輪を浮かせて段差の上の後輪を乗せるという作業が必要である。かかる作業の負担は相当なものであり、この負担を軽減しようとする種々の試みがなされてきた。例えば特許文献1(特開2016-203956号公報、株式会社ウェルファン)は、車いすの前輪として利用可能な、上下移動可能な段差移動盤を備えた段差乗り越えキャスタを提供する。また、特許文献2(特開2013-74951号公報、株式会社システック)は、前輪を前後に動かすことができるようにワイヤーでハンドルと前輪支柱とが連結された機構を備える車いすを提供する。
【0003】
さらには車いすにおいて、搭乗者の負担を軽減すべくリクライニング機能を設け、その際に下がるハンドル位置を調節するためにハンドルを伸縮可能とすることもまた、研究されている(特許文献3 特開2012-135420号公報、株式会社松永製作所)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-203956号公報
【特許文献2】特開2013-74951号公報
【特許文献3】特開2012-135420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の段差乗り越えキャスタにおいては、乗り越えられる段差の高さが段差移動盤の高さまでに限られることや、前輪が段差を乗り越えたあと後輪もまた段差を乗り越えなければならないがその際に必要な力は通常の車いすとなんら変わりがない。また、上記特許文献2の車いすにおいて、乗り越えられる段差の高さが持ち上がった前輪の高さまでに限られ、さらには、後輪の問題については特許文献1と同じく解決されていない。上記特許文献3の車いすでは、リクライニングを倒した状態で段差を乗り越えるために前輪を持ち上げると、利用者の頭が大きく後ろに引かれて車いすが転倒する恐れがある。
【0006】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、車いすを押す介助者の段差乗越えの負担が低減されると共に利用者の安全も確保された、段差乗り越え補助機構を備えた車いすを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究の結果、車いすのハンドルが後方にあるほうが、通常の車いすと比較して極めて小さな力で段差乗越えが可能であることを見出した。しかし、通常のハンドルよりも長いハンドルでは、収納する場合や、狭い廊下や扉をくぐる場合など、様々な場面で却って不便になるという新たな課題が生じたため、さらに研究の結果、車いすのハンドルの根本部分を車いすのフレームに直接取り付けるのではなく、車いすのフレームに回動可能に取り付けられているハンドル支柱の上端にハンドルを取り付けることによって、必要があるときのみ車いすのハンドルを後方に動かすことができることを見出した。
【0008】
したがって、本発明は、段差乗越えが容易な車いすであって、車いすのフレームに前後方向に回動可能に取り付けられているハンドル支柱の上端にハンドルが取り付けられていることを特徴とする、車いすを提供する(以下、本発明の車いす)。
【0009】
本発明の車いすにおいて、ハンドル支柱は、その下端側においてフレームに前後方向に回動可能に、例えばフレームに左右方向に貫通した軸受けを設け、かつ、ハンドル支柱の下端部に軸を設けて前記軸受けに前記軸を挿通することによって、連結される。回動可能なハンドル支柱の上端側には車いすのハンドルを取り付けるが、この際にハンドルの高さは通常の車いすと同様であることが好ましい。
【0010】
本発明の車いすにおいて、ハンドル支柱が回動可能にフレームに取り付けられていることによって、ハンドル位置が車いすのフレーム、とりわけ背もたれ部分とは無関係に変更できる。
【0011】
本発明の車いすにおいて、ハンドルは、通常の車いすと同様に、ブレーキ機構が備わっていてもよい。また、ハンドル部分のみの長さや形状は、通常の車いすにおいて採用し得るどのようなものであってもよい。
【0012】
本発明の車いすにおいて、車いすのフレームに対して前後に回動可能にハンドル支柱を取り付けることによって、ハンドルの折り畳みが可能である。好ましい態様において、所定の位置でハンドルを固定するために、ハンドル支柱を固定できるよう支柱固定機構をさらに備えていてもよい。かかる支柱固定機構は、例えば、回動部分をロック式にしてもよいし、支柱の中ごろに端部が連結され他方の端部に抜け止めの突起が設けられた固定軸と、当該軸が挿通されるとともにフレームに回動可能に取り付けられた軸受けの組合せからなる固定具であってもよい。ロック式の回動部分は、例えば、回動部分に回動を止めることができる留め具を設け、当該留め具がワイヤー等でハンドル部分に設けた操作手段、例えばレバーと連結していることによって、達成可能である。
【0013】
本発明の車いすにおいて、介助者の身長などの体格に適合させるため、ハンドル支柱はさらに、ハンドルの高さ調節可能であることが好ましい。ハンドルの高さ調節は、例えば、支柱を伸縮自在なものとすることで可能となり、かかる機構は例えば支柱が軸と軸受けとなって、軸には突起を、軸受けには当該突起を嵌挿可能な穴を備えた機構であってよい。
【発明の効果】
【0014】
かかる本発明の車いすは、通常の車いすのハンドルよりも後方にハンドルを倒すことが可能であり、より小さな介助者の負担によって段差の乗り越えが可能である。すなわち、通常のハンドル位置で段差乗り越えをする場合よりも、後方にハンドルを倒して段差乗り越えをするほうが、力点であるハンドルの握持部が支点である後輪(前輪乗り越えの場合)よりも遠方にあり、前輪により大きな力を作用させることができる。あるいは、力点であるハンドルの握持部が前輪(後輪乗り越えの場合)よりも遠方にあることとなり、テコの原理によって後輪により大きな作用を生じさせることができる。ハンドルの位置を後方にするほどこの必要な力は小さくなるのであるが、ハンドルを後ろに倒しすぎれば廊下や扉などの狭い場所での取り回しの低下を招き、また、折りたたんだ際に車いすのフレームからはみ出してしまうようではたとえ折りたたんでも非使用時の収納スペースを取ってしまうことになるので、本発明の車いすのハンドル支柱の長さはこれらの問題が生じない範囲に収めることが好ましい。さらには、介助者の力の負担軽減だけであればハンドルの延伸部材を用意すればよいと単純に考えるかもしれないが、そのような部材をいちいち持ち運んだりはめ込んだりする作業は煩雑で実用的ではないという問題にも、回動可能にハンドル支柱を取り付けることで対処できている。また、本発明の車いすでは背もたれの部分は前後に稼働できないことを前提にしているので、利用者の体重が後輪よりも後側にかかって転倒してしまう危険を回避している。このような転倒はリクライニングなどによって利用者の態勢が後ろにあればあるほど危険である。さらにまた、より好ましい態様において、本発明の車いすのハンドル支柱の高さが調節可能であることによって、より介助者が力を入れやすい高さにハンドルを設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第一の態様における本発明の車いすの左側面図である。ハンドル支柱が展開されている。
図2】第一の態様における本発明の車いすの左側面図である。ハンドル支柱が折りたたまれている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の車いすを具体化した実施例を詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に限定されることはなく、適宜設計変更が可能である。また、本明細書を通じて、上下左右前後は進行方向を前とし、車輪側を下として説明するが、あくまで説明の便宜のための相対的な区別に過ぎない。以下では本発明の車いすの左側面図を用いて説明するが、右側は左右対称とすればよく、説明を省略する。
【0017】
第一の態様における本発明の車いす(1)は、図1に示す通り、前輪(11)、後輪(12)、座面(13)、ハンドル(14)およびそれらを保持するフレーム(15)を備え、当該ハンドル(14)の根本部分が、前記フレーム(15)に対して前後に回動可能に取り付けられたハンドル支柱(21)の先端に固着されている。前記フレーム(15)の背もたれ部分の下側にはハンドル支柱(21)を取り付けるための軸受け(16)が設けられており、当該軸受け(16)に挿通するための軸(22)がハンドル支柱(21)下端部に設けられている。かかる軸と軸受けによって、本発明のハンドル支柱(21)は前記フレーム(15)に対して前後に回動可能である。ハンドル支柱(21)の高さは、ハンドル支柱を折りたたんだ場合に通常のハンドルの高さとなるものである。ハンドル支柱(21)の中ごろには固定具(23)が取り付けられており、当該固定具(23)は一方の端がハンドル支柱(21)の中ごろに連結され他方の端部に抜け止めの突起が設けられた固定軸(24)と、当該軸(24)が挿通されるとともにフレームに回動可能に取り付けられた軸受け(25)の組合せからなる。かかる固定軸(24)が軸受け(25)に対して段階的にスライドすることで、ハンドル支柱(21)の角度を固定できる。
【0018】
図2に示す通り、ハンドル支柱(21)は回動させて折りたたむことができる。図1と2を比較すれば明確であるが、ハンドル支柱(21)を回動させてもハンドル位置が前後するだけで、車いす(1)のフレーム(15)、とりわけ背もたれ部分は変形しない。

【符号の説明】
【0019】
1 車いす
11 前輪
12 後輪
13 座面
14 ハンドル
15 フレーム
16 ハンドル支柱軸受け
21 ハンドル支柱
22 ハンドル支柱軸
23 固定具
24 固定軸
25 固定軸受け



図1
図2