IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東ソー株式会社の特許一覧

特開2023-138913ペースト加工用塩化ビニル系樹脂及びそれを含むペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138913
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】ペースト加工用塩化ビニル系樹脂及びそれを含むペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 14/06 20060101AFI20230926BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
C08F14/06
C08L27/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037038
(22)【出願日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2022044796
(32)【優先日】2022-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】備後 翔太
(72)【発明者】
【氏名】矢作 祐太
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BD031
4J002BD041
4J002BD051
4J002DE136
4J002DE236
4J002DJ036
4J002EH097
4J002EH127
4J002EH147
4J002EQ018
4J002EV268
4J002EW047
4J002FD016
4J002FD027
4J002FD039
4J002FD328
4J002GH00
4J002GL00
4J002HA08
4J100AC03P
4J100CA01
4J100CA03
4J100DA01
4J100DA16
4J100EA05
4J100EA07
4J100EA09
4J100FA03
4J100FA20
4J100FA34
4J100FA43
4J100JA01
4J100JA67
(57)【要約】
【課題】 本発明は、基材上にコーティングしシートを作成する際にクレーターの形成を抑制し、発泡時には表面平滑性に優れる発泡体を得ることのでき、更にはコーティング刃の裏からの漏れ抑止特性にも優れ、特に壁紙用として優れるペースト加工用塩化ビニル系樹脂及びそれを含むペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 粒子径0.5μmを超えて5μm以下の大粒子群の塩化ビニル系樹脂と0.5μm以下の小粒子群の塩化ビニル系樹脂を含むペースト塩化ビニル系樹脂であって、(1)平均重合度が700~1000、(2)粒子径分布測定における該大粒子群の累積重量頻度が60~90wt%かつ該小粒子群の累積重量頻度が10~40wt%、(3)該大粒子群の分布の最頻径が1.55~1.80μm、該小粒子群の分布の最頻径が0.15~0.45μm、を満足するペースト加工用塩化ビニル系樹脂。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径0.5μmを超えて5μm以下の大粒子群の塩化ビニル系樹脂と0.5μm以下の小粒子群の塩化ビニル系樹脂を含むペースト塩化ビニル系樹脂であって、下記(1)~(3)の特性を満足することを特徴とするペースト加工用塩化ビニル系樹脂。
(1)平均重合度が700~1000。
(2)粒子径分布測定における該大粒子群の累積重量頻度が60~90wt%かつ該小粒子群の累積重量頻度が10~40wt%。
(3)該大粒子群の分布の最頻径が1.55~1.80μm、該小粒子群の分布の最頻径が0.15~0.45μm。
【請求項2】
前記(2)が、(2’)粒子径分布測定における該大粒子群の累積重量頻度が60~80wt%かつ該小粒子群の累積重量頻度が20~40wt%、であることを特徴とする請求項1に記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂。
【請求項3】
更に、(4)該ペースト加工用塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、フタル酸ジイソノニル60重量部、液状安定剤3.0重量部を配合しペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物ゾルとし、粘弾性測定装置にて昇温速度10℃/分で昇温した際の98℃における複素粘度が10000Pa・s以上、であることをも満足することを特徴とする請求項1又は2に記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂。
【請求項4】
更に、(5)嵩比重が0.40~0.60g/cc、であることをも満足することを特徴とする請求項1又は2に記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂。
【請求項5】
前記(2)が、(2’’)粒子径分布測定における該大粒子群の累積重量頻度が80~90wt%かつ該小粒子群の累積重量頻度が10~20wt%、であることを特徴とする請求項1に記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂。
【請求項6】
更に、(4’)該ペースト加工用塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、フタル酸ジイソノニル60重量部、液状安定剤3.0重量部を配合しペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物ゾルとし、粘弾性測定装置にて昇温速度10℃/分で昇温した際の98℃における複素粘度が5000Pa・s以上、であることをも満足することを特徴とする請求項5に記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂。
【請求項7】
更に、(6)該ペースト加工用塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、フタル酸ジイソノニル53重量部、炭酸カルシウム100重量部、酸化チタン10重量部、発泡剤3重量部、希釈剤10重量部、液状安定剤3重量部を配合しペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物ゾルとし、粘弾性測定装置にて測定した際のせん断速度4000sec-1における第一法線応力差が20000Pa以下であることをも満足することを特徴とする請求項5又は6に記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂。
【請求項8】
請求項1又は2のいずれかに記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、可塑剤20~200重量部を含有することを特徴とするペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項9】
ペースト加工用塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、可塑剤20~200重量部、充填剤1~300重量部、発泡剤0.1~30重量部及び安定剤0.1~30重量部を含有するペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物ゾルであることを特徴とする請求項8に記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項10】
請求項5に記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、可塑剤20~200重量部を含有することを特徴とするペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項11】
発泡壁紙用であることを特徴とする請求項8に記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項12】
発泡壁紙用であることを特徴とする請求項10に記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂(以下、ペースト塩ビと略記する場合がある。)及びそれを含むペースト塩ビ組成物に関し、より詳しくは、基材上にコーティングしシートを作成する際にクレーターの形成を抑制し、発泡時には表面平滑性に優れる発泡体を得ることのできるペースト塩ビ組成物ゾル、更にはクレーターの形成を抑制し、かつコーティング刃の裏からの漏れ抑止特性に優れたペースト塩ビ組成物ゾルを与えるペースト塩ビ及びそれを含むペースト塩ビ組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペースト塩ビは、一般的に可塑剤、安定剤、発泡剤等の配合剤と混練することにより、ペースト塩ビ組成物ゾルとして加工に供され、種々の加工法により様々な成形品が得られる。その中でも壁紙、床材、発泡シートのような建築資材はペースト塩ビの主要な用途の一つである。
【0003】
例えば、壁紙はゾルを基材上にコーティングして、加熱乾燥させることで原反を作製し、得られた原反を発泡・エンボスさせることで製造される。この製造方法において、原反を作製する工程で原反上にクレーターが発生し、満足な品質を有する壁紙が得られないという課題がある。
【0004】
このため、クレーターの発生を抑制したペースト塩ビ、それを含むペースト塩ビ組成物ゾルが望まれ、例えば、カレンダー法による、表面クレーターの少ない塩化ビニル樹脂フィルムの製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1-244827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に提案された表面クレーターの少ない塩化ビニル樹脂フィルムの製造方法は、製造設備、その作業法として煩雑なカレンダー法による製造方法であり、より簡略なコーティング法による製造方法についてはなんら考慮のなされていないものであり、より簡易な製造法であるコーティング法にも適用可能なペースト塩ビ、ペースト塩ビ組成物の出現が望まれていた。
【0007】
そこで、本発明は、これら課題を解決し、従来のペースト塩ビでは困難とされていた、基材上にコーティングしシートを作成する際にクレーターの形成を抑制し、発泡時には表面平滑性に優れる発泡体を得ることのできるペースト塩ビ及びそれを含むペースト塩ビ組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、特定の重合度と、特定の粒子径分布とを有するペースト塩ビ及びそれを含むペースト塩ビ組成物が、基材上にコーティングしシートを作成する際にクレーターの形成を抑制し、表面平滑性に優れる発泡体を提供することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、粒子径0.5μmを超えて5μm以下の大粒子群の塩化ビニル系樹脂と0.5μm以下の小粒子群の塩化ビニル系樹脂を含むペースト塩化ビニル系樹脂であって、下記(1)~(3)の特性を満足することを特徴とするペースト加工用塩化ビニル系樹脂に関するものである。
(1)平均重合度が700~1000。
(2)粒子径分布測定における該大粒子群の累積重量頻度が60~90wt%かつ該小粒子群の累積重量頻度が10~40wt%。
(3)該大粒子群の分布の最頻径が1.55~1.80μmであり、該小粒子群の分布の最頻径が0.15~0.45μm。
【0010】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明のペースト塩ビは、粒子径0.5μmを超えて5μm以下の大粒子群の塩化ビニル系樹脂と0.5μm以下の小粒子群の塩化ビニル系樹脂を含むものであり、(1)平均重合度が700~1000のペースト塩ビである。そして、特に、発泡時の表面平滑性に優れるものとなることから、平均重合度が700~900であることが好ましい。ここで、平均重合度が1000を超えるものである場合、発泡時の表面平滑性に劣るものとなる。一方、700未満のものである場合、機械特性、発泡性に劣るものとなる。ここで、平均重合度の測定方法としては、その測定が可能であれば如何なる方法でもよく、例えばJIS K6721のウベローデ粘度計を用いて、溶液粘度測定法により重合度として算出する方法を挙げることができる。
【0012】
本発明のペースト塩ビは、(2)粒子径分布測定における大粒子群の累積重量頻度が60~90wt%かつ小粒子群の累積重量頻度が10~40wt%のペースト塩ビであり、特にコーティングの際にクレーターが形成しにくいものとなることから、(2’)大粒子群の累積重量頻度が60~80wt%かつ小粒子群の累積重量頻度が20~40wt%のものであることが好ましい。ここで、大粒子群の累積重量頻度が60wt%未満のものである場合や小粒子群が40wt%を超えるものである場合、ペースト塩ビ組成物ゾルとした際の粘度の上昇が激しいためハンドリングの点で劣るものとなる。一方、大粒子群の累積重量頻度が90wt%を超えるものである場合や小粒子群が10wt%未満のものである場合、コーティングの際にクレーターが形成しやすいものとなる。なお、本発明における粒子径分布の測定方法としては、粒子径分布の測定が可能であればいかなる方法を用いることも可能であり、例えばペースト塩ビを水に分散し、一次粒子とした後、該一次粒子をディスク遠心式粒度分布測定装置にて測定する方法、重合後の塩化ビニル系樹脂ラテックスをディスク遠心式粒度分布測定装置にて測定する方法、等を挙げることができる。
【0013】
また、更にコーティングの際にクレーターが形成しにくく、コーティング刃の裏からのもれ抑止に優れ、加工性にも優れるものとなることから(2’’)粒子径分布測定における該大粒子群の累積重量頻度が80~90wt%かつ該小粒子群の累積重量頻度が10~20wt%であることが好ましい。
【0014】
本発明のペースト塩ビは、(3)大粒子群の分布の最頻径が1.55~1.80μmであり、小粒子群の分布の最頻径は0.15~0.45μmのペースト塩ビである。ここで、大粒子群の最頻径が1.80μmを超えるものである場合や、小粒子群の最頻径が0.45μmを超えるものである場合、コーティングの際にクレーターが形成しやすいものとなる。一方、大粒子群の最頻径が1.55μm未満のものである場合や、小粒子群の最頻径が0.15μm未満のものである場合、ペースト塩ビ組成物ゾルとした際の粘度の上昇が激しいためハンドリングの点で劣るものとなる。なお、最頻径とは分布におけるピークトップの粒子径を意味するものである。
【0015】
本発明のペースト塩ビは、特にクレーターの発生を抑制したペースト塩ビ、ペースト塩ビ組成物となることから、更に、(4)ペースト塩ビ100重量部に対し、フタル酸ジイソノニル60重量部、液状安定剤3.0重量部を配合しペースト塩ビ組成物ゾルとし、粘弾性測定装置にて昇温速度10℃/分で昇温した際の98℃における複素粘度が10000Pa・s以上、のものであることが好ましい。その際の液状安定剤としては、例えばバリウム系安定剤、カルシウム系安定剤、亜鉛系安定剤に加えカルシウム-亜鉛系やバリウム-亜鉛系等の複合安定剤等を挙げることができ、粘弾性測定装置としては、市販品を用いることができる。
【0016】
また、本発明のペースト塩ビは、ペースト塩ビ自体、又はペースト塩ビ組成物ゾル、ペースト塩ビ組成物を調製する際の取扱い性に優れることから、(5)嵩比重が0.40~0.60g/cc、のものであることが好ましい。なお、嵩比重は、例えば粉体特性総合測定装置(ホソカワミクロン社製、(商品名)パウダテスタPT-X)により測定することができる。
【0017】
また、本発明のペースト塩ビは、更にクレーターの発生を抑制しつつ、刃裏もれ抑止に優れ、加工性にも優れるペースト塩ビ、ペースト塩ビ組成物となることから、(4’)ペースト塩ビ100重量部に対し、フタル酸ジイソノニル60重量部、液状安定剤3.0重量部を配合しペースト塩ビ組成物ゾルとし、粘弾性測定装置にて昇温速度10℃/分で昇温した際の98℃における複素粘度が5000Pa・s以上、のものであることが好ましく、(6)ペースト塩ビ100重量部に対し、フタル酸ジイソノニル53重量部、炭酸カルシウム100重量部、酸化チタン10重量部、発泡剤3重量部、希釈剤10重量部、液状安定剤3重量部を配合しペースト塩ビ組成物ゾルとし、粘弾性測定装置にて測定した際のせん断速度4000sec-1における第一法線応力差が20000Pa以下となるものであることが好ましい。
【0018】
本発明のペースト塩ビを構成する塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル単独重合樹脂、塩化ビニル共重合樹脂を挙げることができ、塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸またはその無水物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル類;マレイン酸エステル、フマル酸エステル、桂皮酸エステル類等の不飽和カルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルアミルエーテル、ビニルフェニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のモノオレフィン類;塩化ビニリデン、スチレン及びその誘導体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができ、これらモノマーは1種類以上で共重合を行ったものでもよい。
【0019】
本発明のペースト塩ビは、重合開始剤、乳化剤、乳化助剤、緩衝剤、連鎖移動剤、高級アルコール、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、塩素化パラフィン等の分散助剤、重合度調整剤等のペースト塩ビを製造する際に一般的に添加される物質等を含有していてもよい。また、ペースト塩ビの製造方法としては、一般的な乳化重合法、ミクロ懸濁重合法、シード乳化重合法、シードミクロ懸濁重合法等の方法を挙げることができ、これら重合法により得られる塩化ビニル系樹脂ラテックスから水分を除去することによりペースト塩ビとして製造することができる。
【0020】
そして、塩化ビニル系樹脂ラテックスから水分を除去する方法としては、例えば、噴霧乾燥、流動層乾燥、通気乾燥、回転乾燥、伝導加熱乾燥による方法等が挙げられ、中でも効率よく水分を除去できることから噴霧乾燥による方法が好ましい。
【0021】
以下に、本発明のペースト塩ビとする際に用いられる塩化ビニル系樹脂ラテックスを得る方法の一例として、シードミクロ懸濁重合法を示す。
【0022】
シードミクロ懸濁重合法とは、i)ミクロ懸濁重合法により油溶性重合開始剤を含む塩化ビニル系樹脂を含有する塩化ビニル系樹脂シードラテックスを得る第一段階、ii)得られたシードラテックスを塩化ビニルモノマー、又は塩化ビニルモノマーとこれと共重合可能なモノマーを、脱イオン水、乳化剤、緩衝剤、必要に応じて高級アルコール等の乳化助剤の存在下で緩やかな攪拌で重合を行い、シードラテックスを肥大化させて塩化ビニル系樹脂ラテックスを得る第二段階からなる重合方法である。
【0023】
ここで、塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマー単量体としては、上記したものを挙げることができる。
【0024】
また、乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸エステルナトリウム、ミリスチル硫酸エステルカリウム等のアルキル硫酸エステル塩類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩類;ラウリン酸アンモニウム、ステアリン酸カリウム等の脂肪酸塩類;ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸エステル塩類等のアニオン系乳化剤:ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のソルビタンエステル類;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリオキシエチレンアルキルエステル類等のノニオン系乳化剤等の従来より知られているものを1種類又は2種類以上用いることができる。
【0025】
必要に応じて用いられる乳化助剤としては、例えば、セチルアルコール、ラウリルアルコール等の高級アルコール;ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸;そのエステル;芳香族炭化水素、高級脂肪酸炭化水素、塩素化パラフィンのようなハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
【0026】
緩衝剤としては、例えば、リン酸一水素アルカリ金属塩、リン酸二水素アルカリ金属塩、フタル酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸-苛性カリウム溶液等が挙げられる。
【0027】
連鎖移動剤としては、例えば、トリクロルエチレン、四塩化炭素などのハロゲン系炭化水素、2-メルカプトエタノール、3-メルカプトプロピオン酸オクチル、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、アセトン、n-ブチルアルデヒドなどのアルデヒド類等が挙げられ、重合度を調整できるものであればいかなるものを用いてもよい。
【0028】
シードミクロ懸濁重合法に用いられる油溶性重合開始剤を含む塩化ビニル系樹脂シードラテックスは、以下のようなミクロ懸濁重合法で調製することが可能である。まず、塩化ビニルモノマー、油溶性重合開始剤、界面活性剤、緩衝剤、高級アルコール、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、塩素化パラフィン等の分散助剤、必要に応じて重合度調整剤を添加してプレミックスし、ホモジナイザーにより均質化処理して油滴の調製を行なう。この際のホモジナイザーとしては、例えば、コロイドミル、振動攪拌機、二段式高圧ポンプ等を用いることができる。そして、均質化処理した液を重合器に送り、緩やかに攪拌しながら重合器内の温度を上げて重合反応を開始し、所定の転化率に達するまで重合を行なうことにより油溶性重合開始剤を含有するシードラテックスを調製することが可能である。
【0029】
油溶性重合開始剤としては、10時間半減期温度30~70℃のジアシルパーオキサイドが好ましく、そのような重合開始剤としては、例えば、イソブチリルパーオキサイド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド等が挙げられる。
【0030】
そして、得られた油溶性重合開始剤を含む塩化ビニル系樹脂シードラテックスをii)の工程にて、塩化ビニル単量体等の存在下で肥大化を行い、重合を行うことにより塩化ビニル系樹脂ラテックスとすることが可能である。
【0031】
本発明のペースト塩ビは、可塑剤、場合によって充填剤、発泡剤等を配合することによりペースト塩ビ組成物、ペースト塩ビ組成物ゾルとして各種用途に用いることができる。その際には優れる特性を有する組成物となることから、ペースト塩ビ100重量部に対し、可塑剤20~200重量部を含有するものであることが好ましい。また、発泡体とする際には、ペースト塩ビ100重量部に対して、可塑剤20~200重量部、充填剤1~300重量部、発泡剤0.1~30重量部、安定剤0.1~30重量部を含有するペースト塩ビ組成物ゾルとすることが好ましい。
【0032】
可塑剤としては、例えば、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOPと略記する場合もある)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジブチル等のフタル酸エステル類;アジピン酸(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソノニル等のアジピン酸エステル類;トリメリット酸トリ(2-エチルヘキシル)、トリメリット酸トリイソデシル、トリメリット酸トリノルマルオクチル等のトリメリット酸エステル類;リン酸トリ(2-エチルヘキシル)、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシレニル等のリン酸エステル類;ジエチレングリコールジベンゾアート、ジプロピレングリコールジベンゾアート等の安息香酸エステル;その他ポリエステル系可塑剤やセバシン酸エステル、マゼライン酸エステル、マレイン酸エステル、エポキシ化植物油等、一般に可塑剤として使用されているものを用いることができる。
【0033】
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、珪藻土、炭酸マグネシウム、酸化チタン等が挙げられる。
【0034】
発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アミド化合物、ホウ水素化ナトリウム等の無機系発泡剤;イソシアネート化合物、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体;セミカルバジド化合物、アジ化合物、ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;トリアゾール化合物等の有機系発泡剤等が挙げられる。そして、必要に応じて上記発泡剤と亜鉛華(酸化亜鉛)等の分解促進剤を併用することも可能である。
【0035】
また、安定剤としては、例えば、エポキシ系安定剤、バリウム系安定剤、カルシウム系安定剤、スズ系安定剤、亜鉛系安定剤等が挙げられる。また、市販のカルシウム-亜鉛系、バリウム-亜鉛系等の複合安定剤を使用することもできる。
【0036】
さらに、ペースト塩ビ組成物とする際には、本発明の目的を超えない範囲でペースト塩ビ組成物に通常添加される添加剤、例えば、酸化防止剤、難燃剤、希釈剤、滑剤、紫外線吸収剤、顔料等の着色剤、界面活性剤、帯電防止剤等を添加してもよく、またそれらの配合量も一般に使用される範囲で差し支えない。
【0037】
本発明のペースト塩ビは、成形加工時のペースト塩ビ組成物ゾルがその取扱い性に優れることからペースト塩ビ組成物として壁紙、床材、発泡シートのような建築資材等に適用可能であり、特に発泡剤を含むペースト塩ビ組成物ゾルによるコーティングシートのクレーター形成が抑制されたものとなることから、表面平滑性、意匠性に優れる発泡壁紙、発泡シートとして適したものとなる。
【発明の効果】
【0038】
本発明のペースト塩ビは、基材上にコーティングしシートを作成する際にクレーターの形成を抑制し、発泡時には表面平滑性に優れる発泡体を得ることが可能であり、その工業的価値は非常に高いものである。
【実施例0039】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
以下に実施例より得られたペースト塩ビ、組成物の評価方法を示す。
【0041】
<平均重合度>
JIS K6721のウベローデ粘度計を用いて、溶液粘度測定法により平均重合度を算出した。
【0042】
<粒子径分布>
ディスク遠心式粒度分布測定装置(日本ルフト株式会社製、(商品名)DC24000UHR)を使用し、粒子径分布を測定した。
【0043】
<嵩比重>
粉体特性総合測定装置(ホソカワミクロン株式会社製、(商品名)パウダテスタPT-X)を使用して測定した。粉体の流動特性と相関し、高い値ほど粉体の流動特性が良好であることを示す。
【0044】
<複素粘度>
ペースト塩ビ100重量部、フタル酸ジイソノニル(株式会社ジェイプラス製)60重量部、液状安定剤(株式会社ADEKA製、(商品名)SC-320)3.0重量部からなるペースト塩ビ組成物ゾルを粘弾性測定装置(アントンパール社製、(商品名)MCR302)を用いて、昇温速度10℃/分で昇温した際の測定温度98℃における複素粘度を測定した。
【0045】
<クレーターの評価方法>
ペースト塩ビ100重量部、フタル酸ジイソノニル(株式会社ジェイプラス製)53重量部、炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製、(商品名)ホワイトンH)100重量部、酸化チタン(テイカ株式会社製、(商品名)JR600A)10重量部、発泡剤(大塚化学株式会社製、(商品名)AZウルトラ1050)3重量部、希釈剤(東燃ゼネラル石油株式会社製、(商品名)Exxsol D40)20重量部、安定剤(株式会社ADEKA製、(商品名)FL-230)3重量部を用い、ディゾルバーを用いて混練し、ペースト塩ビ組成物ゾルを得た。得られたペースト塩ビ組成物ゾルを低温恒温器内にて3℃に冷却した後、予め195℃で5秒加熱した難燃紙上に0.12mmの厚みでコーティングし、195℃で10秒加熱することにより、原反を作製し、その時の原反上のクレーター数を数えた。
【0046】
<表面平滑性の評価方法>
得られた原反を230℃で35秒加熱することにより発泡体を得た。得られた発泡体の表面平滑性を目視で観察することにより評価した。
【0047】
表面平滑性の評価基準を以下に示す。
【0048】
〇:表面が平滑
×:表面が粗い
<低せん断粘度の評価方法>
<クレーターの評価方法>で記載したのと同様の配合でペースト塩ビ組成物ゾルを調整し、B8H型粘度計(東京計器社製)ローターNo.3を用いて、回転数20rpmの条件で低せん断粘度を評価した。ここで、低せん断粘度が700~2500mPa・sの範囲にあるものをハンドリング性に優れるものと判断した。
【0049】
<第一法線応力の評価方法>
ペースト塩ビ100重量部、フタル酸ジイソノニル(株式会社ジェイプラス製)53重量部、炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製、(商品名)ホワイトンH)100重量部、酸化チタン(テイカ株式会社製、(商品名)JR600A)10重量部、発泡剤(大塚化学株式会社製、(商品名)AZウルトラ1050)3重量部、希釈剤(東燃ゼネラル石油株式会社製、(商品名)Exxsol D40)10重量部、安定剤(株式会社ADEKA製、(商品名)FL-230)3重量部を用い、ディゾルバーを用いて混練し、ペースト塩ビ組成物ゾルを得た。得られたペースト塩ビ組成物ゾルを23℃で24時間静置した後、粘弾性測定装置(アントンパール社製、(商品名)MCR302)を用いて、第一法線応力差を測定した。
【0050】
合成例1
1mステンレス製オートクレーブ中に脱イオン水360kg、塩化ビニルモノマー300kg、過酸化ラウロイル5.7kg及び15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液30kgを仕込み、該重合液をホモジナイザーにより3時間循環し均質化処理を行なった後、反応系の温度を45℃に上げて重合を開始した。重合系の圧力が低下した後、未反応塩化ビニルモノマーを回収し、固形分含有率35重量%、平均粒子径0.55μmの油溶性重合開始剤含有塩化ビニル樹脂シードラテックス(a)を得た。
【0051】
合成例2
1mステンレス製オートクレーブ中に脱イオン水360kg、塩化ビニルモノマー300kg、過酸化ラウロイル10kg、15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液30kg及びドデシルメルカプタン1.5kgを仕込み、該重合液をホモジナイザーにより3時間循環し均質化処理を行なった後、反応系の温度を45℃に上げて重合を開始した。重合系の圧力が低下した後、未反応塩化ビニルモノマーを回収し、固形分含有率35重量%、平均粒子径0.60μmの油溶性重合開始剤含有塩化ビニル樹脂シードラテックス(b)を得た。
【0052】
合成例3
1mステンレス製オートクレーブ中に脱イオン水400kg、塩化ビニルモノマー350kg、16重量%ラウリン酸カリウム水溶液2kg及び16重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液5kgを仕込んだ後、反応系の温度を60℃に上げて重合を開始した。重合系の圧力が低下した後、未反応塩化ビニルモノマーを回収し、固形分含有率40重量%、平均粒子径0.15μmであるシードラテックス(c)を得た。
【0053】
実施例1
2.5Lステンレス製オートクレーブ中に脱イオン水610g、塩化ビニルモノマー730g、5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム15.3g、リン酸水素ナトリウム/水酸化カリウム混合液10g、3-メルカプトプロピオン酸-2-エチルヘキシルを0.5g、合成例1により得られた平均粒子径0.55μmのシードラテックス(a)を塩化ビニルモノマー100重量部に対し4.4重量部、合成例3により得られた平均粒子径0.15μmのシードラテックス(c)を塩化ビニルモノマー100重量部に対し10.0重量部仕込み、この反応混合物の温度を66℃に上げて重合を開始した。重合を開始してから重合を終了までの間、塩化ビニルモノマーに対し0.7重量部の5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを連続的に添加した。重合圧が66℃における塩化ビニルモノマーの飽和蒸気圧から0.402MPaまで降下したときに重合を停止し、未反応塩化ビニルモノマーを回収し、塩化ビニル樹脂ラテックスを得た。得られた塩化ビニル樹脂ラテックス中の塩化ビニル樹脂は、粒子径0.5μmを超えて5μm以下の大粒子群の累積重量頻度が70.3wt%、最頻径が1.73μmで、0.5μm以下の小粒子群の累積重量頻度が29.7wt%、最頻径が0.22μmであった。
【0054】
得られた塩化ビニル樹脂ラテックスを回転円盤式のスプレードライヤーを用い、熱風温度110℃、出口温度50℃で噴霧乾燥し、顆粒状のペースト塩ビを得た。得られたペースト塩ビは、平均重合度が790、嵩比重が0.49g/ccであった。また、得られたペースト塩ビを用いてペースト塩ビ組成物ゾル、発泡体を作製し、複素粘度、クレーター数、表面平滑性および低せん断粘度を評価した。複素粘度は16000Pa・s、クレーターは発生せず、発泡体の表面は平滑であり、低せん断粘度は1050mPa・sと良好な値であった。評価結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例2
2.5Lステンレス製オートクレーブ中に脱イオン水610g、塩化ビニルモノマー730g、5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム15.3g、リン酸水素ナトリウム/水酸化カリウム混合液10g、合成例1により得られた平均粒子径0.55μmのシードラテックス(a)を塩化ビニルモノマー100重量部に対し4.4重量部、合成例3により得られた平均粒子径0.15μmのシードラテックス(c)を塩化ビニルモノマー100重量部に対し10.0重量部仕込み、この反応混合物の温度を63.5℃に上げて重合を開始した。重合を開始してから重合を終了までの間、塩化ビニルモノマーに対し0.7重量部の5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを連続的に添加した。重合圧が63.5℃における塩化ビニルモノマーの飽和蒸気圧から0.373MPaまで降下したときに重合を停止し、未反応塩化ビニルモノマーを回収し、塩化ビニル樹脂ラテックスを得た。得られた塩化ビニル樹脂ラテックス中の塩化ビニル樹脂は、粒子径0.5μmを超えて5μm以下の大粒子群の累積重量頻度が72.1wt%、最頻径が1.70μmで、0.5μm以下の小粒子群の累積重量頻度が27.9wt%、最頻径が0.20μmであった。
【0057】
得られた塩化ビニル樹脂ラテックスを回転円盤式のスプレードライヤーを用い、熱風温度110℃、出口温度50℃で噴霧乾燥し、顆粒状のペースト塩ビを得た。得られたペースト塩ビは、平均重合度が850、嵩比重が0.49g/ccであった。また、得られたペースト塩ビを用いてペースト塩ビ組成物ゾル、発泡体を作製し、複素粘度、クレーター数、表面平滑性および低せん断粘度を評価した。複素粘度は18500Pa・s、クレーターは発生せず、発泡体の表面は平滑であり、低せん断粘度は1260mPa・sと良好な値であった。評価結果を表1に示す。
【0058】
実施例3
シードラテックス(a)の添加量を塩化ビニルモノマー100重量部に対し5.3重量部、シードラテックス(c)の添加量を塩化ビニルモノマー100重量部に対し12.0重量部としたこと以外は、実施例1と同様の方法により、塩化ビニル樹脂ラテックス、ペースト塩ビを得た。
【0059】
得られた塩化ビニル樹脂ラテックス中の塩化ビニル樹脂は、粒子径0.5μmを超えて5μm以下の大粒子群の累積重量頻度が62.4wt%、最頻径が1.60μmで、0.5μm以下の小粒子群の累積重量頻度が37.6wt%、最頻径が0.21μmであった。得られたペースト塩ビは、平均重合度が720、嵩比重が0.53g/ccであった。また、得られたペースト塩ビを用いてペースト塩ビ組成物ゾル、発泡体を作製し、複素粘度、クレーター数、表面平滑性および低せん断粘度を評価した。複素粘度は25200Pa・s、クレーターは発生せず、発泡体の表面は平滑であり、低せん断粘度は1800mPa・sと良好な値であった。評価結果を表1に示す。
【0060】
実施例4
シードラテックス(a)の添加量を塩化ビニルモノマー100重量部に対し5.0重量部、シードラテックス(c)の添加量を塩化ビニルモノマー100重量部に対し10.0重量部としたこと以外は、実施例1と同様の方法により、塩化ビニル樹脂ラテックス、ペースト塩ビを得た。
【0061】
得られた塩化ビニル樹脂ラテックス中の塩化ビニル樹脂は、粒子径0.5μmを超えて5μm以下の大粒子群の累積重量頻度が65.2wt%、最頻径が1.64μmで、0.5μm以下の小粒子群の累積重量頻度が34.8wt%、最頻径が0.21μmであった。得られたペースト塩ビは、平均重合度が740、嵩比重が0.52g/ccであった。また、得られたペースト塩ビを用いてペースト塩ビ組成物ゾル、発泡体を作製し、複素粘度、クレーター数、表面平滑性および低せん断粘度を評価した。複素粘度は24000Pa・s、クレーターは発生せず、発泡体の表面は平滑であり、低せん断粘度は1170mPa・sと良好な値であった。評価結果を表1に示す。
【0062】
比較例1
2.5Lステンレス製オートクレーブ中に脱イオン水610g、塩化ビニルモノマー730g、5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム15.3g、リン酸水素ナトリウム/水酸化カリウム混合液10g、合成例1により得られた平均粒子径0.55μmのシードラテックス(a)を塩化ビニルモノマー100重量部に対し4.4重量部、合成例3により得られた平均粒子径0.15μmのシードラテックス(c)を塩化ビニルモノマー100重量部に対し10.0重量部仕込み、0.1重量%硫酸銅を0.7g仕込み、この反応混合物の温度を55℃に上げて重合を開始した。重合中、0.05重量%アスコルビン酸水溶液を、重合温度を維持するように連続的に添加し、重合圧が55℃における塩化ビニルモノマーの飽和蒸気圧から0.471MPaまで降下したときに重合を停止した。なお、重合を開始してから重合終了までの間、塩化ビニルモノマーに対し0.7重量部の5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを連続的に添加した。重合終了後、未反応塩化ビニルモノマーを回収し、塩化ビニル樹脂ラテックスを得た。得られた塩化ビニル樹脂ラテックス中の塩化ビニル樹脂は、粒子径0.5μmを超えて5μm以下の大粒子群の累積重量頻度が69.3wt%、最頻径が1.73μmで、0.5μm以下の小粒子群の累積重量頻度が30.7wt%、最頻径が0.22μmであった。
【0063】
得られた塩化ビニル樹脂ラテックスを回転円盤式のスプレードライヤーを用い、熱風温度110℃、出口温度50℃で噴霧乾燥し、顆粒状のペースト塩ビを得た。得られたペースト塩ビは、平均重合度が1200、嵩比重が0.49g/ccであった。また、得られたペースト塩ビを用いてペースト塩ビ組成物ゾル、発泡体を作製し、複素粘度、クレーター数、表面平滑性および低せん断粘度を評価した。複素粘度は14000Pa・sで、クレーターは発生せず、低せん断粘度は1140mPa・sと良好な値であったが、発泡体の表面は粗く、平滑性が劣るものであった。評価結果を表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
比較例2
シードラテックス(c)の添加量を塩化ビニルモノマー100重量部に対し15.0重量部としたこと以外は、実施例1と同様の方法により、塩化ビニル樹脂ラテックス、ペースト塩ビを得た。
【0066】
得られた塩化ビニル樹脂ラテックス中の塩化ビニル樹脂は、粒子径0.5μmを超えて5μm以下の大粒子群の累積重量頻度が57.5wt%、最頻径が1.72μmで、0.5μm以下の小粒子群の累積重量頻度が42.5wt%、最頻径が0.21μmであった。得られたペースト塩ビは、平均重合度が720、嵩比重が0.54g/ccであった。また、得られたペースト塩ビを用いてペースト塩ビ組成物ゾル、発泡体を作製し、複素粘度、クレーター数、表面平滑性および低せん断粘度を評価した。複素粘度は25900Pa・sで、クレーターは発生せず、発泡体の表面は平滑であったが、低せん断粘度は3500mPa・sであり、粘度が高くハンドリング性に劣るものであった。評価結果を表2に示す。
【0067】
比較例3
シードラテックス(c)の添加量を塩化ビニルモノマー100重量部に対し2.5重量部としたこと以外は、実施例1と同様の方法により、塩化ビニル樹脂ラテックス、ペースト塩ビを得た。
【0068】
得られた塩化ビニル樹脂ラテックス中の塩化ビニル樹脂は、粒子径0.5μmを超えて5μm以下の大粒子群の累積重量頻度が90.9wt%、最頻径が1.70μmで、0.5μm以下の小粒子群の累積重量頻度が9.1wt%、最頻径が0.22μmであった。得られたペースト塩ビは、平均重合度が700、嵩比重が0.48g/ccであった。また、得られたペースト塩ビを用いてペースト塩ビ組成物ゾル、発泡体を作製し、複素粘度、クレーター数、表面平滑性および低せん断粘度を評価した。複素粘度は8500Pa・sで、クレーター数は100個/m以上であり、クレーターが発生しやすいものであった。発泡体の表面はクレーターにより荒れ、平滑性が劣るものであった。評価結果を表2に示す。
【0069】
比較例4
シードラテックス(a)を塩化ビニルモノマー100重量部に対し4.4重量部添加する代わりに、シードラテックス(b)を塩化ビニルモノマー100重量部に対し2.9重量部添加し、シードラテックス(c)の添加量を塩化ビニルモノマー100重量部に対し7.5重量部としたこと以外は、実施例1と同様の方法により、塩化ビニル樹脂ラテックス、ペースト塩ビを得た。
【0070】
得られた塩化ビニル樹脂ラテックス中の塩化ビニル樹脂は、粒子径0.5μmを超えて5μm以下の大粒子群の累積重量頻度が77.0wt%、最頻径が1.84μmで、0.5μm以下の小粒子群の累積重量頻度が23.0wt%、最頻径が0.21μmであった。得られたペースト塩ビは、平均重合度が720、嵩比重が0.5g/ccであった。また、得られたペースト塩ビを用いてペースト塩ビ組成物ゾル、発泡体を作製し、複素粘度、クレーター数、表面平滑性および低せん断粘度を評価した。複素粘度は8800Pa・sで、クレーター数は100個/m以上であり、クレーターが発生しやすいものであった。発泡体の表面はクレーターにより荒れ、平滑性が劣るものであった。評価結果を表2に示す。
【0071】
比較例5
シードラテックス(a)の添加量を塩化ビニルモノマー100重量部に対し6.1重量部、シードラテックス(c)の添加量を塩化ビニルモノマー100重量部に対し15.0重量部としたこと以外は、実施例1と同様の方法により、塩化ビニル樹脂ラテックス、ペースト塩ビを得た。
【0072】
得られた塩化ビニル樹脂ラテックス中の塩化ビニル樹脂は、粒子径0.5μmを超えて5μm以下の大粒子群の累積重量頻度が57.2wt%、最頻径が1.54μmで、0.5μm以下の小粒子群の累積重量頻度が42.8wt%、最頻径が0.21μmであった。得られたペースト塩ビは、平均重合度が720、嵩比重が0.53g/ccであった。また、得られたペースト塩ビを用いてペースト塩ビ組成物ゾル、発泡体を作製し、複素粘度、クレーター数、表面平滑性および低せん断粘度を評価した。低せん断粘度は3200mPa・sであり、粘度が高くハンドリング性に劣るものであった。評価結果を表2に示す。
【0073】
実施例5
シードラテックス(c)の添加量を塩化ビニルモノマー100重量部に対し7.5重量部としたこと以外は、実施例2と同様の方法により、塩化ビニル樹脂ラテックス、ペースト塩ビを得た。
【0074】
得られた塩化ビニル樹脂ラテックス中の塩化ビニル樹脂は、粒子径0.5μmを超えて5μm以下の大粒子群の累積重量頻度が88.2wt%、最頻径が1.70μmで、0.5μm以下の小粒子群の累積重量頻度が11.8wt%、最頻径が0.22μmであった。得られたペースト塩ビは、平均重合度が850、嵩比重が0.50g/ccであった。また、得られたペースト塩ビを用いてペースト塩ビ組成物ゾル、発泡体を作製し、複素粘度、クレーター数、表面平滑性、低せん断粘度および第一法線応力差を評価した。複素粘度は5600Pa・s、クレーターは発生せず、発泡体の表面は平滑であり、低せん断粘度は810mPa・s、第一法線応力差は15000Paと良好な値であった。また、コーティングの際にペースト塩ビ組成物ゾルの刃裏もれは見られなかった。評価結果を表3に示す。
【0075】
【表3】
【0076】
実施例6
シードラテックス(a)の添加量を塩化ビニルモノマー100重量部に対し3.9重量部、シードラテックス(c)の添加量を塩化ビニルモノマー100重量部に対し7.5重量部としたこと以外は、実施例1と同様の方法により、塩化ビニル樹脂ラテックス、ペースト塩ビを得た。
【0077】
得られた塩化ビニル樹脂ラテックス中の塩化ビニル樹脂は、粒子径0.5μmを超えて5μm以下の大粒子群の累積重量頻度が85.4wt%、最頻径が1.73μmで、0.5μm以下の小粒子群の累積重量頻度が14.6wt%、最頻径が0.22μmであった。得られたペースト塩ビは、平均重合度が719、嵩比重が0.49g/ccであった。また、得られたペースト塩ビを用いてペースト塩ビ組成物ゾル、発泡体を作製し、複素粘度、クレーター数、表面平滑性、低せん断粘度および第一法線応力差を評価した。複素粘度は10600Pa・s、クレーターは発生せず、発泡体の表面は平滑であり、低せん断粘度は950mPa・s、第一法線応力差は14300Paと良好な値であった。また、コーティングの際にペースト塩ビ組成物ゾルの刃裏もれは見られなかった。評価結果を表3に示す。
【0078】
実施例7
シードラテックス(a)の添加量を塩化ビニルモノマー100重量部に対し5.0重量部、シードラテックス(c)の添加量を塩化ビニルモノマー100重量部に対し9.0重量部としたこと以外は、実施例1と同様の方法により、塩化ビニル樹脂ラテックス、ペースト塩ビを得た。
【0079】
得られた塩化ビニル樹脂ラテックス中の塩化ビニル樹脂は、粒子径0.5μmを超えて5μm以下の大粒子群の累積重量頻度が81.6wt%、最頻径が1.65μmで、0.5μm以下の小粒子群の累積重量頻度が18.4wt%、最頻径が0.20μmであった。得られたペースト塩ビは、平均重合度が759、嵩比重が0.51g/ccであった。また、得られたペースト塩ビを用いてペースト塩ビ組成物ゾル、発泡体を作製し、複素粘度、クレーター数、表面平滑性、低せん断粘度および第一法線応力差を評価した。複素粘度は13000Pa・s、クレーターは発生せず、発泡体の表面は平滑であり、低せん断粘度は1140mPa・s、第一法線応力差は12300Paと良好な値であった。また、コーティングの際にペースト塩ビ組成物ゾルの刃裏もれは見られなかった。評価結果を表3に示す。
【0080】
実施例8
シードラテックス(a)の添加量を塩化ビニルモノマー100重量部に対し5.3重量部、シードラテックス(c)の添加量を塩化ビニルモノマー100重量部に対し9.0重量部としたこと以外は、実施例1と同様の方法により、塩化ビニル樹脂ラテックス、ペースト塩ビを得た。
【0081】
得られた塩化ビニル樹脂ラテックス中の塩化ビニル樹脂は、粒子径0.5μmを超えて5μm以下の大粒子群の累積重量頻度が83.7wt%、最頻径が1.58μmで、0.5μm以下の小粒子群の累積重量頻度が16.3wt%、最頻径が0.21μmであった。得られたペースト塩ビは、平均重合度が730、嵩比重が0.50g/ccであった。また、得られたペースト塩ビを用いてペースト塩ビ組成物ゾル、発泡体を作製し、複素粘度、クレーター数、表面平滑性、低せん断粘度および第一法線応力差を評価した。複素粘度は12800Pa・s、クレーターは発生せず、発泡体の表面は平滑であり、低せん断粘度は1100mPa・s、第一法線応力差は11200Paと良好な値であった。また、コーティングの際にペースト塩ビ組成物ゾルの刃裏もれは見られなかった。評価結果を表3に示す。
【0082】
比較例6
比較例1により得られたペースト塩ビを用いてペースト塩ビ組成物ゾルを作製し、第一法線応力差を評価した。第一法線応力差は22100Paであり、コーティングの際にペースト塩ビ組成物ゾルの刃裏もれが観察された。評価結果を表4に示す。
【0083】
【表4】
【0084】
比較例7
比較例2により得られたペースト塩ビを用いてペースト塩ビ組成物ゾルを作製し、第一法線応力差を評価した。第一法線応力差は25400Paであり、コーティングの際にペースト塩ビ組成物ゾルの刃裏もれが観察された。評価結果を表4に示す。
【0085】
比較例8
比較例4により得られたペースト塩ビを用いてペースト塩ビ組成物ゾルを作製し、第一法線応力差を評価した。第一法線応力差は20200Paであり、コーティングの際にペースト塩ビ組成物ゾルの刃裏もれが観察された。評価結果を表4に示す。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明のペースト塩ビは、基材上にコーティングしシートを作成する際にクレーターが形成せず、発泡時には表面平滑性に優れる発泡体を得ることが可能で、特に発泡壁紙等の建築資材として優れた特性を有するものであり、その産業上の利用価値は高いものである。