(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138920
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】治療用2連発パルスの経頭蓋磁気刺激の送達
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20230926BHJP
A61N 2/04 20060101ALI20230926BHJP
A61B 34/20 20160101ALN20230926BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N2/04
A61B34/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023042664
(22)【出願日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】20225247
(32)【優先日】2022-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(71)【出願人】
【識別番号】522101829
【氏名又は名称】ネクスティム オーイーユィ
【氏名又は名称原語表記】Nexstim Oyj
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】ジャルネフェルト グスタフ
【テーマコード(参考)】
4C053
4C106
【Fターム(参考)】
4C053JJ02
4C053JJ03
4C053JJ05
4C053JJ21
4C053JJ34
4C053JJ40
4C106AA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】治療用経頭蓋磁気刺激(TMS)のセッションを送達する方法を提供する。
【解決手段】本方法は、経頭蓋磁気刺激(TMS)のセッション215を定義するステップであって、TMSのセッションは複数のパルストレイン211、213を含み、各パルストレインは少なくとも1つのバーストを含み、各バーストは少なくとも1つの2連発パルス201、202を含む、上記定義するステップと、個人の脳内の選択された領域をTMS装置が標的化するように、TMS装置を脳に対して配置するステップと、TMS装置を使用してTMSのセッションを適用するステップと、を含み、各パルストレインは2~20個のバーストを含み、バースト間隔は80~500msであり、少なくとも1つの2連発パルスのパルス間隔は1~20msであり、パルストレイン間隔は1~60秒である。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用経頭蓋磁気刺激(TMS)のセッションを送達する装置であって、前記装置は、少なくとも1つの処理コアと、コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリと、を含み、前記少なくとも1つのメモリ及び前記コンピュータプログラムコードは、前記少なくとも1つの処理コアとともに、少なくとも、
経頭蓋磁気刺激(TMS)のセッションを定義するステップであって、TMSの前記セッションは複数のパルストレインを含み、各パルストレインは少なくとも1つのバーストを含み、各バーストは少なくとも1つの2連発パルスを含む、前記定義するステップと、
TMSの前記セッションの送達を引き起こすように構成された信号を送信するステップと、
を前記装置に実施させるように構成されており、
各パルストレインは5~20個のバーストを含み、バースト間隔は80~500msであることと、
前記少なくとも1つの2連発パルスのパルス間隔は1~5msであることと、
前記パルストレインの間隔は1~60秒であることと、
を特徴とする装置。
【請求項2】
前記少なくとも8個のパルストレイン、好ましくは10~40個のパルストレイン、より好ましくは20個のパルストレインが、3~15分以内、好ましくは8分以内に送達される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの2連発パルスのパルス間隔は1~5ms、好ましくは1~2.8ms、より好ましくは1.2~1.7msである、請求項1~2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
前記バーストの間隔は100~300ms、好ましくは140~200ms、より好ましくは150~160msである、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
各バーストは複数の2連発パルス(例えば、2~3個の2連発パルス)を含み、前記2連発パルス同士の間隔は10~30ms、好ましくは20msである、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記2連発パルス同士の間隔は前記セッション中に変化し、例えば、個々のバースト中、又はバースト間に変化する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記2連発パルスは3連発パルス又は4連発パルスを包含する、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記2連発パルスは二相の2連発パルスである、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの2連発パルスのパルス間隔はセッション中に変化する、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記パルストレインの間隔はセッション中に変化する、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記セッション中にパルストレイン内のバースト数が変化する、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
各2連発パルスの2番目のパルスの振幅は、1番目のパルスの振幅の50~180%である、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
各2連発パルスの1番目のパルスと2番目のパルスは、振幅が互いに対して変化する、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
バースト内には少なくとも2つの2連発パルスがあり、前記2連発パルスのうちの1つの2連発パルスのパルス間隔が1.4msであり、それ以外の2連発パルスのパルス間隔が1.6msである、請求項1~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
脳活動のリアルタイム表現(例えば、EEG読み取り)を受信するステップを更に実施するようにされる前記装置であって、脳活動の前記リアルタイム表現に少なくともある程度基づいて、少なくとも1つのパルストレイン内の最初のパルス、及び少なくとも幾つかの間隔の少なくともいずれかが選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、経頭蓋磁気刺激(TMS)の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
経頭蓋磁気刺激は、頭蓋を通して頭蓋内空間内に電磁場を送達することを必然的に伴い、送達された電磁場は組織と相互作用し、特に、送達された電磁場は脳組織と相互作用することが可能である。
【0003】
電磁場はパルスの形態で送達されてよい為、一定電磁場ではない。パルスの最大振幅は、送達されるTMSセッションの目的に応じて選択されてよい。同様に、パルスは2連発で送達されてよく、パルスの継続時間は、TMSセッションに求められる結果を増強するように選択されてよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の技術における課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、独立請求項の特徴によって定義される。幾つかの特定実施形態が従属請求項において定義される。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、治療用経頭蓋磁気刺激(TMS)のセッションを送達する方法が提供され、本方法は、経頭蓋磁気刺激(TMS)のセッションを定義するステップであって、TMSのセッションは複数のパルストレインを含み、各パルストレインは少なくとも1つのバーストを含み、各バーストは少なくとも1つの2連発パルスを含む、上記定義するステップと、個人の脳内の選択された領域をTMS装置が標的化するように、TMS装置を脳に対して配置するステップと、TMS装置を使用してTMSのセッションを適用するステップと、を含み、各パルストレインは2~20個のバーストを含み、バースト間隔は80~500msであり、少なくとも1つの2連発パルスのパルス間隔は1~20msであり、パルストレイン間隔は1~60秒である。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、治療用経頭蓋磁気刺激(TMS)のセッションを送達する装置が提供され、本装置は、少なくとも1つの処理コアと、コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリと、を含み、少なくとも1つのメモリ及びコンピュータプログラムコードは、少なくとも1つの処理コアとともに、少なくとも、経頭蓋磁気刺激(TMS)のセッションを定義するステップであって、TMSのセッションは複数のパルストレインを含み、各パルストレインは少なくとも1つのバーストを含み、各バーストは少なくとも1つの2連発パルスを含む、上記定義するステップと、TMSのセッションの送達を引き起こすように構成された信号を送信するステップと、を本装置に実施させるように構成されており、各パルストレインは5~20個のバーストを含み、バースト間隔は80~500msであり、少なくとも1つの2連発パルスのパルス間隔は1~5msであり、パルストレイン間隔は1~60秒である。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、治療用経頭蓋磁気刺激(TMS)のセッションを送達する装置が提供され、経頭蓋磁気刺激(TMS)のセッションを定義する手段であって、TMSのセッションは複数のパルストレインを含み、各パルストレインは少なくとも1つのバーストを含み、各バーストは少なくとも1つの2連発パルスを含む、上記定義する手段と、個人の脳内の選択された領域をTMS装置のフォーカスが標的化するように、TMS装置を脳に対して配置する手段と、TMS装置を使用してTMSのセッションを適用する手段と、を含む装置であって、各パルストレインは5~20個のバーストを含み、バースト間隔は80~500msであり、少なくとも1つの2連発パルスのパルス間隔は1~5msであり、パルストレイン間隔は1~60秒である装置が提供される。
【0009】
本発明の第4又は第5の態様によれば、少なくとも1つのプロセッサで実行されたときに、装置に、少なくとも、本発明の少なくとも1つの実施形態による方法を実施させるコンピュータ可読命令のセット、又は本発明の少なくとも1つの実施形態による方法を実施させるように構成されたコンピュータプログラムを格納している非一時的コンピュータ可読媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の少なくとも幾つかの実施形態によるシステムの一例を示す。
【
図2A】本発明の少なくとも幾つかの実施形態によるパルスシーケンスの一例を示す。
【
図2B】本発明の少なくとも幾つかの実施形態によるパルスシーケンスの一例を示す。
【
図3】本発明の少なくとも幾つかの実施形態をサポートすることが可能な装置の一例を示す。
【
図4】本発明の少なくとも幾つかの実施形態によるイベントのシーケンスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
経頭蓋磁気刺激(TMS)では、刺激の電磁パルスは、TMSのセッションを受ける人物の頭蓋骨を通して脳に印加される。TMSの効果は、パルスをシーケンスとして配列することによって増強可能であることが発見されている。具体的には、パルスは、孤立したパルスとして単発で与えられてよく、或いは、2連発、3連発、又は4連発等のパルスセットとして与えられてよい。更に、2連発ずつを複数並べてバーストとしてよく、そのバーストがパルストレインとして与えられてよい。1つ以上(例えば、2つ以上)のパルストレインのセットがTMSのセッションを形成する。
【0012】
図1は、本発明の少なくとも幾つかの実施形態によるシステムの一例を示す。具体的には、
図1に示したシステムは、本明細書に開示のパルストレインを含むセッションを送達することに使用可能なタイプのシステムである。
図1は、TMSの送達を容易にする装置100を示す。図示のように、装置100では、コントローラ150が、追跡システム130と、TMS刺激装置110が取り付けられた多軸ロボットアーム120とに機能的に接続されるように構成されている。コントローラ150は、人物170に関する解剖学的データを使用するように構成されてよく、この解剖学的データは、その人物の頭蓋及び/又は脳の形状を明確に示すデータである。コントローラは、TMS刺激装置110による刺激の対象として脳内の選択された領域を標的化する為に、人物170の頭部のリアルタイムの位置及び方位に関する情報を追跡システム130から受信し、解剖学的データ、及び頭部のリアルタイムの位置及び方位に関する情報に基づいて、TMS刺激装置110を頭部に対して最適な位置及び方位で保持するように多軸ロボットアーム120を制御するように構成されている。選択された領域は、例えば、脳の表面近くであってよい。
図1に見られるように、最適な位置及び方位は、TMS刺激装置110の表面が皮膚の外面から所定の距離160にあるような位置及び方位である。
【0013】
解剖学的データは、使用される場合に医用画像から抽出されてよく、例えば、磁気共鳴イメージング(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT)、X線、及び超音波の少なくともいずれかの画像から抽出されてよい。そのような医用画像は、個人の頭蓋及び皮膚を表すものとして直接解釈されることが可能な情報を有しうる。別の実施形態では、解剖学的データは、人物170の頭部の外形を反映するだけのものであってよい。追加又は代替として、解剖学的データは、頭蓋内の脳構造に関する情報を有しうる。この情報は、TMS刺激装置110の位置決めをTMSセッションの個々の目的に合わせて行う場合に必要とされることがある。
【0014】
本発明の実施形態との使用では様々な追跡システムが利用可能である。例えば、本発明の特定実施形態による追跡システムが、光学式スキャナ(例えば、ビデオカメラ又は立体ビデオカメラ)を使用して、人物170の頭部に貼り付けられたマーカを追跡するように構成されてよい。そのようなマーカは、解剖学的ランドマークに基づく一貫した場所に貼り付けられてよく、これは、例えば、人物170の頭部のリアルタイムの位置及び方位への解剖学的データのマッピングに一貫性を持たせる為に行われてよい。
【0015】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態では、被験者の頭部及びTMS刺激装置110の少なくとも一方を追跡する為に画像認識を利用する。例えば、TMS刺激装置及び/又は被験者の頭部の画像をキャプチャする為にカメラが利用されてよく、そして画像認識技術により、TMS刺激装置及び/又は被験者の頭部の現在の位置及び方位が抽出可能である。実施形態によっては、画像認識による物体の追跡をよりよく行う為に人工知能(AI)技術又は機械学習技術を利用する。幾つかの実施形態では、画像認識を使用して、患者の頭部の位置及び方位に関するリアルタイム情報を解剖学的データと位置合わせする。
【0016】
図1に示したフットペダル155(又は別の種類のユーザインタフェース入力装置)をオペレータが使用して、装置100を、TMSパルスを投与できる状態、及びTMSパルスを生成できない別の状態に設定することが可能である。具体的には、オペレータがユーザインタフェース装置(例えば、フットペダル155)を使用して入力を行った後にTMSのセッションが開始されてよい。
【0017】
驚くべきことに、TMSセッションの有効性及び/又は影響においては、パルス数よりもパルス間隔又はパルス間隔のシーケンスのほうが影響が大きいことが発見されている。例えば、単発パルスの代わりに2連発パルスを使用したときに影響が顕著に大きくなることが発見されている。2連発パルスの2つのパルスの間隔は、例えば、1~20ミリ秒の範囲で選択されてよい。このように2連発パルスにすると影響が大きくなることには様々な利点がある。例えば、2連発パルスであれば、低強度の刺激を使用して、他のパルス間隔を有する、より高強度の刺激と同等の結果を得ることが可能である。このように低強度であれば、刺激の標的にもよるが、表面筋組織や場合によっては眼に対する望ましくない効果が低減される。これにより、同じ結果を達成しながら、患者の快適さは向上する。
【0018】
2連発パルスの2つのパルスの間隔、即ち、刺激間隔(ISI)は、1~5ms(ミリ秒)、例えば1~2.8m、例えば1.2~1.7ms、例えば1.4~1.5msであってよい。バースト内の2つの2連発パルス同士の間隔は、10~30ms、例えば13~25ms、例えば19~21msであってよい。パルストレイン内の2つのバースト同士の間隔は、80~500ms、例えば100~300ms、例えば250~320msであってよい。具体的には、バースト間隔は、140~200ms又は155~165msであってよい。セッション内の2つのパルストレイン同士の間隔は、4~30秒、例えば6~20秒、例えば7~9秒、例えば8秒であってよい。2連発パルス同士の間隔は、セッション内で様々であってよく、例えば、個々のバースト内で又はバースト間で様々であってよい。又、トレイン同士の間隔もセッション内で様々であってよい。この段落で開示されている各範囲は互いに結合されてよく、それらの結合されたものは全て、本明細書において明示的に開示されている。2連発パルス同士の間隔は、1つの2連発パルスの最初のパルスから次の2連発パルスの最初のパルスまで測定されてよい。
【0019】
ISIが様々であることの一例として、1つのバーストの中に3つの2連発パルスがあって、第1の2連発パルスのパルス間隔が1.4msであって、第2の2連発パルスのパルス間隔が1.7msであって、第3の2連発パルスのパルス間隔が1.2msであってよい。別の例として、第1のバーストに含まれる2連発パルス全てのパルス間隔が1.4msであって、第2のバーストに含まれる複数の2連発パルスのパルス間隔が1.7msであって、第3のバーストの刺激間隔が1.2msであってよい。2連発パルスのパルス間隔を変化させることによって、個人別に最適パルス間隔を決定することが可能である。例えば、特定の日の個人向けに最適パルス間隔を決定することが可能である。別の例として、印加する2連発パルスのパルス間隔を変化させ、そのような各2連発パルスに対する反応を測定する前処理ステップを含むことによって、最適パルス間隔を決定することが可能である。そして、決定された最適パルス間隔を使用して、TMSのセッションを定義することが可能である。2連発パルスのパルス間隔を変化させることにより、セッション中に少なくとも幾つかの2連発パルスを最適間隔で利用することが可能になる。例えば、最適間隔はセッション全体を通して変化することがあり、パルス間隔を変化させることにより、セッション全体を通して少なくとも幾つかの2連発パルスが最適間隔を有することが確実になる。更に、パルス間隔を変化させることにより、脳活動周波数に対する刺激の位相差を促進することが可能になる。別の例として、セッションは、ISIが異なるパルストレインを含んでよい。
【0020】
トレイン間隔を変化させることの一例として、第2のトレインは第1のトレインの4秒後であり、第3のトレインは第2のトレインの12秒後であり、第4のトレインは第3のトレインの20秒後である。
【0021】
バースト内の2連発パルスの数は、例えば、2又は3であってよい。パルストレイン内のバーストの数は、2~20、例えば4~18、例えば9~12であってよい。トレイン当たりのバースト数は、セッション内の各トレインで同じである必要はなく、むしろ、セッションが進行するにつれて減らしたり増やしたりしてよい。具体的には、パルストレインは、3つの2連発パルスからなるバーストを160msのバースト間隔で10~20個含んでよい。代替として、トレインは、2つの2連発パルスからなるバーストを180msのバースト間隔で10~20個含んでよい。
【0022】
セッション当たりのパルストレインの数は、8又は少なくとも8、例えば10~40であってよい。セッションは、例えば、20個のパルストレインを含む場合には、1~8分、又は3~15分続いてよい。
【0023】
バースト当たり3個の2連発パルスが使用される特定のTMSセッションでは、2連発パルス同士の間隔は20~30msであるが、他のセッションでは2連発パルス同士の間隔は10msほどの短さであってよい。特定のTMSセッションの2連発パルス同士の間隔は、使用されるTMSシステムの制限によって決まる。例えば、TMSシステムのエネルギ貯蔵能力又はパワーエレクトロニクス機能が十分でない場合には、2連発パルスが安定的に送達されるまで2連発パルス同士の間隔を長くしてよい。特定の方法では、2連発パルス同士の間隔は、TMSシステムが安定した2連発パルスを送達できない間はばらつき又はロールオフが所定の限界内に収まるように選択される。
【0024】
「2連発パルス」という表現は、本開示では規定された術語として採用している。一般に、2連発パルスは、3連発パルス又は4連発パルスを包含してよく、これらは技術的には個別パルスのセットである。3連発パルス又は4連発パルスでは、パルスが2個だけの2連発パルスの場合と同じパルス間隔(ISI)が使用されてよい。
【0025】
2連発パルスのパルスの振幅は同じでも同じでなくてもよい。同じでない場合の一例として、2連発パルスの第2のパルスの振幅は、第1のパルスの振幅の50~180%であってよい。3連発パルス又は4連発パルスのパルス振幅も同じでなくてよい。例えば、3連発パルス又は4連発パルスの場合、最初のパルスの後の各パルスは、直前のパルスより振幅が大きくてよい。
【0026】
セッションは、二相パルス又は単相パルスを含んでよい。幾つかの実施形態では、セッションは、二相パルス及び単相パルスの両方を含む。各方法は、様々なパルス(例えば、二相パルスや単相パルス等)を使用してよい。少なくとも幾つかの実施形態では、TMSのセッション中に二相パルス及び単相パルスの両方が使用される。
【0027】
幾つかの実施形態では、上述のセッションタイミングは、脳波記録法(EEG)又は他の方法で測定される脳活動及び/又は脳活動周波数に基づいて選択される。例えば、EEGを使用して、パルスを直ちに送達すべきであると判断したり、複数のパルストレインを含む定義されたセッションを直ちに開始すべきであると判断したりすることが可能である。別の可能性として、問題になっているトレイン間隔の途中で、脳活動の測定値に基づいて、そのトレイン間隔を動的に適合させることが可能である。従って、例えば、パルストレインの開始時刻を脳活動に同期させることによって変更することが可能である。脳活動に同期させる為に次のパルストレインの開始を遅らせたり早めたりすることが、公称トレイン間隔に対して最大±3秒の選択された時間調節により行われてよく、それによって、例えば、公称で8秒のトレイン間隔が5秒になったり11秒になったりすることがある。トレインの開始は、脳活動に同期させてよい。即ち、トレインの開始を脳活動に同期させるために遅らせたり早めたりしてよい。これは、場合によっては制限時間以内で行われ、例えば、所定の開始時刻から3秒以内で行われる。例えば、所定のトレイン間隔が8秒であるとすると、前のトレインの5~11秒後にトレインが開始されれば、本方法は脳活動に同期することになる。別の例として、最初のトレインが脳活動と同期することが必要であれば、脳活動が好適な状態であると判断されたらいつでも最初のトレイン、従って、セッションが開始されてよい。例えば、タイミング同期は、EEG信号の所定の属性(例えば、周波数)を監視することによって達成可能であり、それらのパルスのうちの少なくとも1つのパルスの送達は、この所定の属性に対応する又はこれを含む、測定された又はリアルタイムのEEG信号に少なくともある程度基づく。一例として、EEG周波数帯(例えば、ベータ帯(14~30Hz)、アルファ帯(8~13Hz)、シータ帯(4~7Hz)、及びデルタ帯(1~3Hz))内の活動に関してEEG信号が監視されてよく、大脳皮質の覚醒レベルは活動の周波数に対応し、周波数が高いほど覚醒度が高い。このように、刺激のタイミングは、監視されるEEG信号が特定の活動帯内にあることに基づいてよい。別の例として、パルスは、予測される波と同じタイミングで送達されてよく、又は波から外れたタイミングで送達されてよい。
【0028】
幾つかの実施形態では、興奮性周波数探索アルゴリズムを使用して、個人の最適な1つ以上の間隔(例えば、2連発パルスのパルスの最適な間隔、又はバースト内の2連発パルス同士の最適な間隔)を見つける。そのような探索アルゴリズムは、刺激に対する個人の反応を、現在使用されている間隔に対する反応と見なして、最適間隔を決定することが可能である。幾つかの探索アルゴリズムは、バースト内の2連発パルスの数を変化させて、バースト内の2連発パルスの最適な数を決定する。言い換えると、そのような探索アルゴリズムは、セッションのタイミングを変化させたときにそれらのタイミングに人物170がどう反応するかを見極める。これにより、TMSセッションのタイミング間隔パラメータを人物170の脳に適合させることが可能になる。
【0029】
幾つかの実施形態では、全体処理プロトコルが一日に複数回(例えば1~15回)実施される。そのような処理プロトコルは、TMS刺激のセッションを一日に1~15回、週2~7日(例えば、2~7日連続で)実施することを含んでよい。幾つかの処理プロトコル内では、セッションの間隔は20分から5時間であり、これは時には、一日の間に必要とされるセッションの数によりけりである。
【0030】
幾つかの実施形態は、脳内の選択された領域を標的化するステップを含む。そのような領域は、例えば、地図座標又はタライラッハ座標に対応してよい。選択された領域は、機能領域(例えば、個人化された機能領域)に対応してよい。そのような機能領域は、磁気共鳴イメージング(MRI)、機能的磁気共鳴イメージング(fMRI)、静止状態fMRI、rsfMRI、又は他のイメージングモダリティから導出されてよい。幾つかの実施形態は、EEGで定義される位置に基づく。そのような標的位置(即ち、治療標的)は、脳内の所定の位置であってよく、例えば、背外側前頭前皮質(DLPFC)又は地図ベースの治療標的であってよい。少なくとも幾つかの方法は、1つのセッションの間に、又は上述の処理プロトコル全体を通して、複数の領域を標的化する。複数の領域を標的化する幾つかの治療プロトコルは、或る日には或る1つの位置を標的化し、別の日には別の1つの位置を標的化する。これは、例えば、セッションごとに、又はプロトコルの一日ごとに、標的領域の所定リストの中からランダムに選択された領域を標的化することによって行われる。特定の標的領域又は治療標的が解剖学的に定義されてよく、例えば、特定の症状(例えば、うつ病)を治療する為にブロードマン領野BA46が選択される。少なくとも幾つかの治療標的が、うつ病との関係に基づいて選択される。標的には、EEG反応に基づいて選択されるものがあり、これは、例えば、先行の刺激中(例えば、TMSの初期計画段階中又はTMS中)に直接EEG反応、スペクトル変化、EEG位相変化、又はEEGエントロピー変化を引き起こした、境界が明確な領域である。
【0031】
特定の実施形態による、選択された領域を標的化する別の例として、標的領域は、標的領域の、ブロードマン領野BA46との連結性に少なくともある程度基づいて選択されてよい。別の例として、標的化は、背外側前頭前皮質(DLPFC)内の領域(例えばBA46)を最初に選択することによって行われてよく、そのような領域は、DLPFC内の領域と、脳の他の領域(例えば、うつ病の影響を受けている領域)との間の連結性に基づいて選択されてよい。(例えば、うつ病を治療する為の)標的になりうる別の領域として、前帯状皮質膝下部(膝下ACC)がある。膝下ACCは、DLPFC内の、膝下ACCとの連結性がある領域を選択することによって、DLPFC経由で標的化されてよい。膝下ACC内の標的は、例えば、fMRI、rsfMRI、又は他の方法を使用して決定されてよい。
【0032】
皮質筋表現を見つける為に、ナビゲーション経頭蓋磁気刺激(nTMS)が適用されてよい。単発TMSパルス、又は2連発パルス、パルスバンチ、又はパリレントレインが、例えば、ニューロナビゲーションの支援により、運動皮質を標的としてよい。末梢筋からの運動誘発電位(MEP)振幅の測定が実施されてよい。MEPを誘導する為のTMSの有効性は、単発パルスの代わりに促進的な2連発パルスTMS(ppTMS)を使用する場合に高まることが示されている。例えば、安静時運動閾値(rMT)を刺激装置最大出力のパーセンテージとして測定すること、並びに右第一背側骨間筋の皮質表現領域を決定することの為に、刺激間隔(ISI)が1.4ms及び2.8msの二相単発パルスTMS及びppTMSが適用されてよい。それらの表現の範囲、形状、ホットスポット、及び重心(CoG)が計算されてよい。二相ppTMSは、単発パルスの代替として、しかも、皮質促進機構を利用することによって、より低い刺激強度で、皮質手表現をマッピングすることにおいて潜在能力を有する。これにより、運動路興奮性が低い被験者にnTMSをよりよく適用することが可能になるであろう。
【0033】
図2Aは、本発明の少なくとも幾つかの実施形態によるパルスシーケンスの一例を示す。
図2Aには、3つの時間軸20A、20B、及び20Cがある。時間は左から右に向かって進む。軸20A上には1つのバーストが示されており、このバーストは2連発パルス201及び202を含み、これらの2連発パルスは間隔203だけ互いに離れている。この例では、2連発パルス同士の間隔203は20msである。1つの2連発パルス201、203のパルス間のISIは、この例では1.4~1.7msである。従って、各バーストは4個の単体パルスを含む。
【0034】
軸20B上には2つのパルストレイン211及び213が示されており、この例では、各パルストレインは10個のバーストを含み、合計40個の単体パルスを含む。バースト間隔は、この例では180msである。そして軸20C上には、20個のパルストレイン211、213からなるセッション215が示されている。従って、軸20B上の各垂直バーは、2つの単体パルスに相当する。このセッションは、8秒のパルストレイン間隔で送達されてよく、例えば、このセッションは、20×40=800個の単体パルスを含む。従って、軸20C上の各垂直バーは、1つのパルストレイン211、213に相当する。
【0035】
図2Bは、本発明の少なくとも幾つかの実施形態によるパルスシーケンスの一例を示す。
図2Aと同様の番号付けは、
図2Aと同様の構造を表す。ここでは、軸20A上の1つのバーストが3つの2連発パルス204、205、206を含む。2連発パルスの単体パルス間のISIは、
図2Aと同様に1.4~1.7msである。パルス間隔203は、
図2Aと同様に20msである。軸20B上のパルストレイン217、219は、それぞれ10個のバーストを含み、バースト間隔は160msである。従って、軸20B上の各垂直バーは、2つの単体パルスに相当する。
図2Bのパルストレインは、2×3×10=60個の単体パルスを有する。従って、軸20C上の各垂直バーは、1つのパルストレイン217、219に相当する。
【0036】
軸20C上のセッション全体は、この例では、20個のパルストレイン217、219を、8秒のパルストレイン間隔で含む。
図2Bのセッションは、2×3×10×20=1200個の単体パルスを含む。
【0037】
図2Aに示した例の一変形にあるセッションでは、
図2Aに関して上述した例と異なる点として、各パルストレインは20個のバーストを180ms間隔で有し、セッションは30個のトレインを8秒間隔で有する。このセッションは、合計2×2×20×30=2400個の単体パルスを有する。
【0038】
図2Bに示した例の一変形にあるセッションでは、
図2Bに関して上述した例と異なる点として、セッションは60個のトレインを8秒間隔で有する。このセッションは、合計2×3×10×60=3600個の単体パルスを有する。
【0039】
図2A及び2Bに関して本明細書で開示した例、並びに上述したそれらの変形は、例えば、2連発パルスの各パルスが同じ振幅ではない、且つ/又はバースト間隔が変化する、且つ/又は2連発パルス同士の間隔が変化するという特徴と組み合わされてよい。
【0040】
一般に、上述の形式でパルストレインがバーストを含み、バーストが2連発パルスを含むセッションを提供することにより、TMSの利点が増強される。これは、刺激パターンが単調すぎると人間のニューロンが適応してしまい、TMSの効果が減じられるからである。従って、セッション内のパルス間隔をより複雑な形式にすることにより、TMSセッションがより効果的に人物170の脳と結合することが可能になる。
【0041】
図3は、本発明の少なくとも幾つかの実施形態をサポートすることが可能な装置の一例を示す。図示の装置300は、例えば、
図1のコントローラ150を含んでよい。装置300はプロセッサ310を含み、これは、例えば、シングルコアプロセッサ又はマルチコアプロセッサを含んでよい(シングルコアプロセッサは処理コアを1つ含み、マルチコアプロセッサは処理コアを2つ以上含む)。プロセッサ310は、一般に、制御装置を含んでよい。プロセッサ310は、2つ以上のプロセッサを含んでよい。プロセッサ310は制御装置であってよい。処理コアは、例えば、ARMホールディングス(ARM Holdings)が製造したCortex-A8処理コア、又はアドバンストマイクロデバイセズ(Advanced Micro Devices Corporation)が設計したZen処理コアを含んでよい。プロセッサ310は、少なくとも1つのクアルコム(Qualcomm)Snapdragonプロセッサ及び/又はインテル(Intel)Coreプロセッサを含んでよい。プロセッサ310は、少なくとも1つの特定用途向け集積回路(ASIC)を含んでよい。プロセッサ310は、少なくとも1つのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含んでよい。プロセッサ310は、装置300において方法ステップを実施する手段であってよい。プロセッサ310は、少なくともある程度はコンピュータ命令によって、アクションを実施するように構成されてよい。
【0042】
プロセッサは、回路を含んでよく、又は1つ以上の回路として構成されてよく、この1つ以上の回路は、本明細書に記載の実施形態による方法の各フェーズを実施するように構成されている。例えば、本出願で使用している回路という用語は、単にハードウェア回路又はプロセッサ(又は複数のプロセッサ又は処理コア)、又はハードウェア回路又はプロセッサの一部分、及びその(又はそれらの)付随するソフトウェア及び/又はファームウェアの実装を包含する。回路という用語は又、例えば、特定の請求項要素に適用可能であれば、モバイル装置用のベースバンド集積回路又はプロセッサ集積回路、又はサーバ、セルラネットワーク装置、又は他のコンピューティング装置又はネットワーク装置における同様の集積回路も包含する。
【0043】
装置300は、メモリ320を含んでよい。メモリ320は、ランダムアクセスメモリ及び/又は永久メモリを含んでよい。メモリ320は、少なくとも1つのRAMチップを含んでよい。メモリ320は、例えば、ソリッドステートメモリ、磁気メモリ、光学メモリ、及び/又はホログラフィックメモリを含んでよい。メモリ320は、少なくともある程度はプロセッサ310からアクセス可能であってよい。メモリ320は、少なくとも一部分がプロセッサ310に含まれてよい。メモリ320は、情報を記憶する手段であってよい。メモリ320は、プロセッサ310が実行するように構成されているコンピュータ命令を含んでよい。特定のアクションをプロセッサ310に実施させるように構成されたコンピュータ命令がメモリ320に記憶されていて、装置300全体が、メモリ320からのコンピュータ命令を使用するプロセッサ310の指示で動作するように構成されている場合、プロセッサ310及び/又はその少なくとも1つの処理コアは、それらの特定のアクションを実施するように構成されていると見なされてよい。メモリ320は、少なくとも一部分がプロセッサ310に含まれてよい。メモリ320は、少なくとも一部分が装置300の外にあって、装置300からアクセス可能であってよい。
【0044】
装置300は、送信器330を含んでよい。装置300は、受信器340を含んでよい。送信器330及び受信器340は、それぞれ、少なくとも1つのセルラ規格又は非セルラ規格に準拠して情報の送信又は受信を行うように構成されてよい。送信器330は、2つ以上の送信器を含んでよい。受信器340は、2つ以上の受信器を含んでよい。送信器330及び/又は受信器340は、例えば、グローバルシステムフォーモバイルコミュニケーション(GSM)、広帯域符号分割多元接続(WCDMA)(登録商標)、5G、ロングタームエボリューション(LTE)、IS-95、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)、イーサネット、及び/又はマイクロ波アクセスの為の世界規模相互運用性(WiMAX)の各規格に準拠して動作するように構成されてよい。
【0045】
装置300は、ユーザインタフェース(UI)360を含んでよい。UI360は、ディスプレイ、キーボード、タッチスクリーン、(装置300を振動させることによってユーザに合図するように構成された)振動器、スピーカ、及びマイクロホンの少なくともいずれかを含んでよい。ユーザはUI360から装置300を操作することが可能であってよく、それによって、例えば、タイミング間隔やパルストレイン長のようなTMSセッションパラメータを設定することが可能であってよい。
【0046】
プロセッサ310は送信器を備えてよく、送信器は、プロセッサ310からの情報を、装置300の内部のリード線を経由して、装置300に含まれる他の装置に出力するように構成されている。そのような送信器は、シリアルバス送信器を含んでよく、これは、例えば、情報をメモリ320に記憶させる為に、少なくとも1本のリード線を経由してメモリ320に情報を出力するように構成されている。シリアルバスの代替として、送信器は、パラレルバス送信器を含んでよい。同様に、プロセッサ310は受信器を備えてよく、受信器は、装置300に含まれる他の装置からの情報を、装置300の内部のリード線を経由して、プロセッサ310で受信するように構成されている。そのような受信器は、シリアルバス受信器を含んでよく、これは、例えば、プロセッサ310での処理の為に、受信器340から少なくとも1本のリード線を経由して情報を受信するように構成されている。シリアルバスの代替として、受信器は、パラレルバス受信器を含んでよい。
【0047】
装置300は、
図3に示されていない更なる装置を含んでよい。例えば、装置300は、ペダル155、TMS刺激装置110、及び/又は追跡システム130へのインタフェースを含んでよい。幾つかの実施形態では、装置300はTMS刺激装置110を含む。
【0048】
プロセッサ310、メモリ320、送信器330、受信器340、及び/又はUI360は、様々な様式で、装置300の内部のリード線により相互接続されてよい。例えば、上述の装置のそれぞれは、装置同士が情報を交換することを可能にする為に、装置300の内部のマスタバスに個別に接続されてよい。しかしながら、当業者であれば理解されるように、これは一例に過ぎず、本発明の範囲から逸脱しない限り、実施形態に応じて、上述の装置のうちの少なくとも2つを相互接続する様々な方法が選択されてよい。
【0049】
図4は、本発明の少なくとも幾つかの実施形態によるイベントのシーケンスを示すフローチャートである。
【0050】
フェーズ410では、経頭蓋磁気刺激(TMS)のセッションを定義する。TMSのセッションは複数のパルストレインを含み、各パルストレインは少なくとも1つのバーストを含み、各バーストは少なくとも1つの2連発パルスを含む。フェーズ420では、個人の脳内の選択された領域をTMS装置が標的化するように、TMS装置を脳に対して配置する。フェーズ430では、TMS装置を使用してTMSのセッションを適用する。ここで、各パルストレインは2~20個のバーストを含み、バースト間隔は80~500msであり、少なくとも1つの2連発パルスのパルス間隔は1~20msであり、パルストレイン間隔は1~60秒(例えば、30秒未満、又は4~30秒)である。セッションの適用は、例えば、コントローラ150がTMS刺激装置110に信号を送信して、TMS刺激装置110が刺激パルスを送達するように制御することを含んでよい。
【0051】
少なくとも幾つかの実施形態では、TMS装置はユーザが保持する。例えば、TMS装置は、アーム又はスタティックコイルホルダで支持されて、ユーザが所望の位置まで持っていってよい。スタティックコイルホルダは、ロボットでなくてよく、或いは電動部品を含まなくてよい。
【0052】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、以下の条項を提供する。
条項1。
治療用経頭蓋磁気刺激(TMS)のセッションを送達する方法であって、
経頭蓋磁気刺激(TMS)のセッションを定義するステップであって、TMSのセッションは複数のパルストレインを含み、各パルストレインは少なくとも1つのバーストを含み、各バーストは少なくとも1つの2連発パルスを含む、上記定義するステップと、
個人の脳内の選択された領域をTMS装置が標的化するように、TMS装置を脳に対して配置するステップと、
TMS装置を使用してTMSのセッションを適用するステップと、
を含み、
各パルストレインは2~20個のバーストを含み、バースト間隔は80~500msであることと、
少なくとも1つの2連発パルスのパルス間隔は1~20msであることと、
パルストレイン間隔は1~60秒であることと、
を特徴とする方法。
条項2。
少なくとも8個のパルストレイン、好ましくは10~40個のパルストレイン、より好ましくは20個のパルストレインが、3~15分以内、好ましくは8分以内に送達される、条項1に記載の方法。
条項3。
少なくとも1つの2連発パルスのパルス間隔は1~5ms、好ましくは1~2.8ms、より好ましくは1.2~1.7msである、条項1~2のいずれか一項に記載の方法。
条項4。
バースト間隔は100~300ms、好ましくは140~200ms、より好ましくは150~160msである、条項1~3のいずれか一項に記載の方法。
条項5。
各バーストは複数の2連発パルス(例えば、2~3個の2連発パルス)を含み、2連発パルス同士の間隔は10~30ms、好ましくは20msである、条項1~4のいずれか一項に記載の方法。
条項6。
2連発パルス同士の間隔はセッション中に変化し、例えば、個々のバースト中、又はバースト間に変化する、条項5に記載の方法。
条項7。
2連発パルスは3連発パルス又は4連発パルスを包含する、条項1~6のいずれか一項に記載の方法。
条項8。
2連発パルスは二相の2連発パルスである、条項1~7のいずれか一項に記載の方法。
条項9。
少なくとも1つの2連発パルスのパルス間隔はセッション中に変化する、条項1~8のいずれか一項に記載の方法。
条項10。
パルストレイン間隔はセッション中に変化する、条項1~9のいずれか一項に記載の方法。
条項11。
パルストレイン内のバースト数はセッション中に変化する、条項1~10のいずれか一項に記載の方法。
条項12。
各2連発パルスの2番目のパルスの振幅は、1番目のパルスの振幅の50~180%である、条項1~11のいずれか一項に記載の方法。
条項13。
各2連発パルスの1番目のパルスと2番目のパルスは、振幅が互いに対して変化する、条項1~12のいずれか一項に記載の方法。
条項14。
バースト内には少なくとも2つの2連発パルスがあり、それらの2連発パルスのうちの1つの2連発パルスのパルス間隔が1.4msであり、それ以外の2連発パルスのパルス間隔が1.6msである、条項1~13のいずれか一項に記載の方法。
条項15。
脳活動のリアルタイム表現(例えば、EEG読み取り)を受信するステップを更に含み、その、脳活動のリアルタイム表現に少なくともある程度基づいて、少なくとも1つのパルストレイン内の最初のパルス、及び少なくとも幾つかの間隔の少なくともいずれかが選択される、条項1~14のいずれか一項に記載の方法。
条項16。
経頭蓋磁気刺激(TMS)のセッションを定義する手段であって、TMSのセッションは複数のパルストレインを含み、各パルストレインは少なくとも1つのバーストを含み、各バーストは少なくとも1つの2連発パルスを含む、上記定義する手段と、
個人の脳内の選択された領域をTMS装置のフォーカスが標的化するように、TMS装置を脳に対して配置する手段と、
TMS装置を使用してTMSのセッションを適用する手段と、
を含む装置であって、
各パルストレインは5~20個のバーストを含み、バースト間隔は80~500msであることと、
少なくとも1つの2連発パルスのパルス間隔は1~5msであることと、
パルストレイン間隔は1~60秒であることと、
を特徴とする装置。
条項17。
コンピュータ可読命令のセットを格納している非一時的コンピュータ可読媒体であって、この命令セットは、少なくとも1つのプロセッサで実行されたときに、少なくとも、条項1~15の少なくともいずれか一項に記載の方法を装置に実施させる、非一時的コンピュータ可読媒体。
条項18。
条項1~15の少なくともいずれか一項に記載の方法を実施させるように構成されたコンピュータプログラム。
【0053】
当然のことながら、開示された本発明の実施形態は、本明細書で開示された特定の構造、処理手順、又は材料に限定されず、当業者であれば理解されるであろう、その等価物まで拡張される。更に、当然のことながら、本明細書で使用された術語は、特定の実施形態の説明の為にのみ使用されており、限定的であることを意図されていない。
【0054】
本明細書を通しての一実施形態(one embodiment)又は一実施形態(an embodiment)への参照は、その実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書全体の様々な場所での「一実施形態では(in one embodiment)」又は「一実施形態では(in an embodiment)」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を参照しているわけではない。例えば、約(about)又はほぼ(substantially)等の語句を使用して数値が参照された場合は、厳密な数値も開示されている。
【0055】
本明細書で使用されている複数のアイテム、構造要素、組成要素、及び/又は材料は、便宜上、一般的なリストに存在してよい。しかしながら、これらのリストは、リストの各要素が別個且つ固有の要素として個別に識別されるかのように解釈されるべきである。従って、そのようなリストの個々の要素は、反対の意味で示されているのでない限り、それらが一般的なグループに存在することにのみ基づいて、同じリストの他の任意の要素の事実上の等価物として解釈されるべきである。更に、本明細書では、本発明の様々な実施形態及び実施例は、それらの様々な構成要素に関しては代替形態と併せて参照されてよい。当然のことながら、そのような実施形態、実施例、及び代替形態は、互いの事実上の等価物として解釈されるべきではなく、本発明の別個且つ独立の表現と見なされるべきである。
【0056】
更に、記載の特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な様式で組み合わされてよい。ここまでの説明では、本発明の実施形態の十分な理解が得られるように、長さ、幅、形状等の例のような様々な具体的詳細が示されている。しかしながら、当業者であれば理解されるように、本発明は、これらの具体的詳細のうちの1つ以上がなくても、或いは、他の方法、構成要素、材料等でも実施可能である。他の例では、よく知られている構造、材料、又は動作が詳しく図示又は説明されてはいないが、これは、本発明の態様が曖昧にならないようにする為である。
【0057】
上述の各実施例は、本発明の原理を1つ以上の特定用途において例示したものであるが、当業者であれば明らかなように、発明的能力を行使することなく、且つ、本発明の原理及び概念から逸脱しない限り、実施態様の形式、用法、及び細部の様々な変更が行われてよい。従って、本発明は、後述の特許請求項によって限定される場合を除いて限定されないものとする。
【0058】
本文書では「含む(to comprise)」及び「含む(to include)」という動詞は、記載されていない特徴の存在を排除することも必要とすることもない開放的限定(open limitations)として使用されている。従属請求項に記載された特徴は、特に別段に明記されない限りは、相互に自由に組み合わされてよい。更に、当然のことながら、「a」又は「an」、即ち、単数形の使用は、本文書全体を通して複数性を排除しない。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用経頭蓋磁気刺激(TMS)のセッションを送達する装置であって、前記装置は、少なくとも1つの処理コアと、コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリと、を含み、前記少なくとも1つのメモリ及び前記コンピュータプログラムコードは、前記少なくとも1つの処理コアとともに、少なくとも、
経頭蓋磁気刺激(TMS)のセッションを定義するステップであって、TMSの前記セッションは複数のパルストレインを含み、各パルストレインは少なくとも1つのバーストを含み、各バーストは少なくとも1つの2連発パルスを含む、前記定義するステップと、
TMSの前記セッションの送達を引き起こすように構成された信号を送信するステップと、
を前記装置に実施させるように構成されており、
各パルストレインは5~20個のバーストを含み、バースト間隔は80~500msであることと、
前記少なくとも1つの2連発パルスのパルス間隔は1~5msであることと、
前記パルストレインの間隔は1~60秒であることと、
を特徴とする装置。
【請求項2】
前記少なくとも8個のパルストレイン、好ましくは10~40個のパルストレイン、より好ましくは20個のパルストレインが、3~15分以内、好ましくは8分以内に送達される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの2連発パルスのパルス間隔は1~5ms、好ましくは1~2.8ms、より好ましくは1.2~1.7msである、請求項1~2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
前記バーストの間隔は100~300ms、好ましくは140~200ms、より好ましくは150~160msである、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
各バーストは複数の2連発パルス(例えば、2~3個の2連発パルス)を含み、前記2連発パルス同士の間隔は10~30ms、好ましくは20msである、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記2連発パルス同士の間隔は前記セッション中に変化し、例えば、個々のバースト中、又はバースト間に変化する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記2連発パルスは3連発パルス又は4連発パルスを包含する、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記2連発パルスは二相の2連発パルスである、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの2連発パルスのパルス間隔はセッション中に変化する、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記パルストレインの間隔はセッション中に変化する、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記セッション中にパルストレイン内のバースト数が変化する、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
各2連発パルスの2番目のパルスの振幅は、1番目のパルスの振幅の50~180%である、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
各2連発パルスの1番目のパルスと2番目のパルスは、振幅が互いに対して変化する、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
バースト内には少なくとも2つの2連発パルスがあり、前記2連発パルスのうちの1つの2連発パルスのパルス間隔が1.4msであり、それ以外の2連発パルスのパルス間隔が1.6msである、請求項1~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
脳活動のリアルタイム表現(例えば、EEG読み取り)を受信するステップを更に実施するようにされる前記装置であって、脳活動の前記リアルタイム表現に少なくともある程度基づいて、少なくとも1つのパルストレイン内の最初のパルス、及び少なくとも幾つかの間隔の少なくともいずれかが選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
治療用経頭蓋磁気刺激(TMS)のセッションを送達する方法であって、
経頭蓋磁気刺激(TMS)のセッションを定義するステップであって、TMSのセッションは複数のパルストレインを含み、各パルストレインは少なくとも1つのバーストを含み、各バーストは少なくとも1つの2連発パルスを含む、上記定義するステップと、
個人の脳内の選択された領域をTMS装置が標的化するように、TMS装置を脳に対して配置するステップと、
TMS装置を使用してTMSのセッションを適用するステップと、
を含み、
各パルストレインは2~20個のバーストを含み、バースト間隔は80~500msであることと、
少なくとも1つの2連発パルスのパルス間隔は1~20msであることと、
パルストレイン間隔は1~60秒であることと、
を特徴とする方法。
【請求項17】
経頭蓋磁気刺激(TMS)のセッションを定義する手段であって、TMSのセッションは複数のパルストレインを含み、各パルストレインは少なくとも1つのバーストを含み、各バーストは少なくとも1つの2連発パルスを含む、上記定義する手段と、
個人の脳内の選択された領域をTMS装置のフォーカスが標的化するように、TMS装置を脳に対して配置する手段と、
TMS装置を使用してTMSのセッションを適用する手段と、
を含む装置であって、
各パルストレインは5~20個のバーストを含み、バースト間隔は80~500msであることと、
少なくとも1つの2連発パルスのパルス間隔は1~5msであることと、
パルストレイン間隔は1~60秒であることと、
を特徴とする装置。
【請求項18】
請求項16に記載の方法を実施させるように構成されたコンピュータプログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
本文書では「含む(to comprise)」及び「含む(to include)」という動詞は、記載されていない特徴の存在を排除することも必要とすることもない開放的限定(open limitations)として使用されている。従属請求項に記載された特徴は、特に別段に明記されない限りは、相互に自由に組み合わされてよい。更に、当然のことながら、「a」又は「an」、即ち、単数形の使用は、本文書全体を通して複数性を排除しない。
〔付記1〕
治療用経頭蓋磁気刺激(TMS)のセッションを送達する装置であって、前記装置は、少なくとも1つの処理コアと、コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリと、を含み、前記少なくとも1つのメモリ及び前記コンピュータプログラムコードは、前記少なくとも1つの処理コアとともに、少なくとも、
経頭蓋磁気刺激(TMS)のセッションを定義するステップであって、TMSの前記セッションは複数のパルストレインを含み、各パルストレインは少なくとも1つのバーストを含み、各バーストは少なくとも1つの2連発パルスを含む、前記定義するステップと、
TMSの前記セッションの送達を引き起こすように構成された信号を送信するステップと、
を前記装置に実施させるように構成されており、
各パルストレインは5~20個のバーストを含み、バースト間隔は80~500msであることと、
前記少なくとも1つの2連発パルスのパルス間隔は1~5msであることと、
前記パルストレインの間隔は1~60秒であることと、
を特徴とする装置。
〔付記2〕
前記少なくとも8個のパルストレイン、好ましくは10~40個のパルストレイン、より好ましくは20個のパルストレインが、3~15分以内、好ましくは8分以内に送達される、付記1に記載の装置。
〔付記3〕
前記少なくとも1つの2連発パルスのパルス間隔は1~5ms、好ましくは1~2.8ms、より好ましくは1.2~1.7msである、付記1~2のいずれか一項に記載の装置。
〔付記4〕
前記バーストの間隔は100~300ms、好ましくは140~200ms、より好ましくは150~160msである、付記1~3のいずれか一項に記載の装置。
〔付記5〕
各バーストは複数の2連発パルス(例えば、2~3個の2連発パルス)を含み、前記2連発パルス同士の間隔は10~30ms、好ましくは20msである、付記1~4のいずれか一項に記載の装置。
〔付記6〕
前記2連発パルス同士の間隔は前記セッション中に変化し、例えば、個々のバースト中、又はバースト間に変化する、付記5に記載の装置。
〔付記7〕
前記2連発パルスは3連発パルス又は4連発パルスを包含する、付記1~6のいずれか一項に記載の装置。
〔付記8〕
前記2連発パルスは二相の2連発パルスである、付記1~7のいずれか一項に記載の装置。
〔付記9〕
前記少なくとも1つの2連発パルスのパルス間隔はセッション中に変化する、付記1~8のいずれか一項に記載の装置。
〔付記10〕
前記パルストレインの間隔はセッション中に変化する、付記1~9のいずれか一項に記載の装置。
〔付記11〕
前記セッション中にパルストレイン内のバースト数が変化する、付記1~10のいずれか一項に記載の装置。
〔付記12〕
各2連発パルスの2番目のパルスの振幅は、1番目のパルスの振幅の50~180%である、付記1~11のいずれか一項に記載の装置。
〔付記13〕
各2連発パルスの1番目のパルスと2番目のパルスは、振幅が互いに対して変化する、付記1~12のいずれか一項に記載の装置。
〔付記14〕
バースト内には少なくとも2つの2連発パルスがあり、前記2連発パルスのうちの1つの2連発パルスのパルス間隔が1.4msであり、それ以外の2連発パルスのパルス間隔が1.6msである、付記1~13のいずれか一項に記載の装置。
〔付記15〕
脳活動のリアルタイム表現(例えば、EEG読み取り)を受信するステップを更に実施するようにされる前記装置であって、脳活動の前記リアルタイム表現に少なくともある程度基づいて、少なくとも1つのパルストレイン内の最初のパルス、及び少なくとも幾つかの間隔の少なくともいずれかが選択される、付記1~14のいずれか一項に記載の装置。
【外国語明細書】