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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138923
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】インバータユニット
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20230926BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043751
(22)【出願日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】202241015552
(32)【優先日】2022-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(71)【出願人】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(72)【発明者】
【氏名】マセサン プラビーン
(72)【発明者】
【氏名】ガネサン プラカシュ
(72)【発明者】
【氏名】マリアナムーシー ヴィグネシュワ
(72)【発明者】
【氏名】ラジャ バスカラン
(72)【発明者】
【氏名】リボ エルベ
(72)【発明者】
【氏名】セツリンガム サンギータ
(72)【発明者】
【氏名】メルシエ フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】バラスンダラム サラバナン
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA21
5H770BA05
5H770DA03
5H770PA11
5H770PA42
5H770QA01
5H770QA06
5H770QA08
5H770QA27
5H770QA31
5H770QA33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】不良品率がより少なく構造が簡単で信頼性の高い車両用空調装置のコンプレッサのためのインバータユニットを提供する。
【解決手段】インバータユニット100は、インバータ110及びインバータハウジングを含む。インバータは、少なくとも1つのパワーモジュール112及びプリント回路基板114を含み、電気モータを駆動する。パワーモジュールは、高電圧直流を電気モータを駆動する三相交流に変換し、プリント回路基板上に形成された開口部に受け入れられるリードフレームを含む。プリント回路基板は、その上に取り付けられた複数の電子部品を有し、電気モータを制御する。インバータハウジングは、フロントヘッド121及びカバー122を含み、カバーは、フロントヘッドと共にインバータを受け入れるための筐体を画成している。インバータユニットはさらに、パワーモジュールをプリント回路基板に対して吊り下げて支持する支持要素130を含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータ(200)を駆動するためのインバータ(110)と、インバータハウジング(120)を備えるインバータユニット(100)であって、
前記インバータ(110)は、高電圧(HV)直流(DC)を、前記電気モータ(200)を駆動する三相交流(AC)に変換するための少なくとも1つのパワーモジュール(112)と、プリント回路基板(114)を備え、
前記パワーモジュール(112)は、前記パワーモジュール(112)から発出しているリードフレーム(112a)を備え、
前記プリント回路基板(114)は、その上に取り付けられた複数の電子部品(116)を有して構成され、且つ、前記電気モータ(200)を制御するように適合されており、前記プリント回路基板(114)を貫通して形成された開口部(114a)が、対応するリードフレーム(112a)を受け入れるように適合されており、
前記インバータハウジング(120)は、フロントヘッド(121)及びカバー(122)を含み、前記フロントヘッド(121)は端壁(121a)及び周壁(121b)を備え、前記カバー(122)と前記フロントヘッド(121)とにより、前記インバータ(110)を受け入れるための筐体を画成しており、
複数の支持要素(130)が、プリント回路基板サブアセンブリ(113,113a)を画成するように、前記プリント回路基板(114)に対して吊り下げ構成で前記パワーモジュール(112)を支持するよう適合されていることを特徴とする、インバータユニット(100)。
【請求項2】
前記フロントヘッド(121)の前記端壁(121a)に面する前記プリント回路基板(114)の下側に組み付けられ、前記プリント回路基板サブアセンブリ(113a)を構成する、絶縁材料で形成されたセパレータ要素(118)をさらに備える請求項1に記載のインバータユニット(100)。
【請求項3】
前記セパレータ要素(118)は、前記プリント回路基板(114)の下側に取り付けられる前記電子部品を互いに対して分離するように適合されている、請求項2に記載のインバータユニット(100)。
【請求項4】
前記セパレータ要素(118)が、前記プリント回路基板(114)上に形成され且つ前記リードフレーム(114b)が中を通過できるように適合された開口部(114a)に位置合わせされた、開口部、通路及び切り欠き(118a)の少なくとも1つを備える、請求項2に記載のインバータユニット(100)。
【請求項5】
前記支持要素(130)が、前記セパレータ要素(118)に従属しており、且つ、前記プリント回路基板サブアセンブリ(113a)を前記フロントヘッド(121)内部に配置する際に前記パワーモジュール(112)の前記フロントヘッド(121)内への落下を防止するように適合されている、請求項2に記載のインバータユニット(100)。
【請求項6】
前記支持要素(130)は、前記パワーモジュール(112)から発出し、且つ、前記セパレータ要素(118)に向かって延在して前記セパレータ要素(118)に係合している、請求項2に記載のインバータユニット(100)。
【請求項7】
前記パワーモジュール(112)は、切り欠き(112c)を備え、前記切り欠き(112c)が、前記プリント回路基板サブアセンブリ(113a)の前記パワーモジュール(112)を前記端壁(121a)に取り付けるためのボルト(140)の通過を可能にするために、前記プリント回路基板(114)及び前記セパレータ要素(118)上にそれぞれ形成された第2穴(114c)及び通路(118b)に位置合わせされている、請求項2に記載のインバータユニット(100)。
【請求項8】
前記支持要素(130)が前記プリント回路基板(114)に従属しており、且つ、前記パワーモジュール(112)を前記プリント回路基板(114)に対して吊り下げ構成で支持するよう適合されている、請求項1に記載のインバータユニット(100)。
【請求項9】
前記支持要素(130)が前記パワーモジュール(112)から発出し、且つ、前記プリント回路基板(114)に向かって延在して前記プリント回路基板(114)に係合している、請求項1に記載のインバータユニット(100)。
【請求項10】
前記パワーモジュール(112)は、切り欠き(112c)を備え、前記切り欠き(112c)が、前記プリント回路基板サブアセンブリ(113)の前記パワーモジュール(112)を前記端壁(121a)に取り付けるためのボルト(140)の通過を可能にするために、前記プリント回路基板(114)上に形成された第2穴(114c)に位置合わせされている、請求項1に記載のインバータユニット(100)。
【請求項11】
前記パワーモジュール(112)が、前記支持要素(130)に係合する前記パワーモジュール(112)の周縁の少なくとも一部に沿って断続的又は連続的に配置されたリブ及び溝(112d)のいずれか一方を備える、請求項1~10のいずれかに記載のインバータユニット(100)。
【請求項12】
前記支持要素(130)の少なくとも1つが、前記パワーモジュール(112)を支持するように適合されたフック部(130a)を含む、請求項1~11のいずれかに記載のインバータユニット(100)。
【請求項13】
プリント回路基板(114)及びパワーモジュール(112)を有して構成されたインバータ(110)と、フロントヘッド(121)及びカバー(122)を含むインバータハウジング(120)と、を備えたインバータユニット(100)の組み立て方法(1000)であって、
・前記パワーモジュール(112)から発出しているリードフレーム(112a)を、前記プリント回路基板(114)上に形成された対応する開口部(114a)に挿入して、プリント回路基板サブアセンブリ(113)を形成するステップと、
・前記プリント回路基板サブアセンブリ(113)の前記パワーモジュール(112)が前記プリント回路基板(114)に対してその吊り下げ構成であるように前記プリント回路基板サブアセンブリ(113)を反転させるステップと、
・同時に、前記反転されたプリント回路基板サブアセンブリ(113)の前記パワーモジュール(112)を前記支持要素(130)により支持するステップと、
・前記支持要素(130)により、前記プリント回路基板サブアセンブリ(113)の前記パワーモジュール(112)が前記フロントヘッド(121)の端壁(121a)の上に落下することを防止した状態で、前記反転されたプリント回路基板サブアセンブリ(113)を前記インバータハウジング(120)の前記フロントヘッド(121)の内部に配置する
ステップと、
・前記プリント回路基板サブアセンブリ(113)の前記プリント回路基板を、前記プリント回路基板(114)上に形成された第1穴(114b)を通過するねじ(160)により前記フロントヘッド(121)に組み付けるステップと、
・前記プリント回路基板サブアセンブリ(113)の前記パワーモジュール(112)を前記フロントヘッド(121)の前記端壁(121a)にボルト(140)によりしっかりと取り付けて、前記パワーモジュール(112)を前記端壁(121a)に対して付勢するステップと、
・前記リードフレーム(112a)と前記プリント回路基板(114)との間にはんだ接続を形成するステップと、
・前記フロントヘッド(121)の開放端を閉じるために前記カバー(122)をねじ(150)により前記フロントヘッド(121)の上に取り付けるステップと、
を含む、方法(1000)。
【請求項14】
前記反転されたプリント回路基板サブアセンブリ(113)の前記パワーモジュール(112)を支持するステップが、前記パワーモジュール(112)を前記プリント回路基板(114)に従属している前記支持要素(130)により支持するステップを含む、請求項13に記載の方法(1000)。
【請求項15】
前記パワーモジュール(112)から発出している前記リードフレーム(112a)を、前記PCB(114)上に形成された対応する開口部(114a)内に受け入れる前に、前記フロントヘッド(121)の前記端壁(121a)に面する前記プリント回路基板(114)の下側に絶縁材料のセパレータ要素(118)を組み付けるステップをさらに含む、請求項13に記載の方法(1000)。
【請求項16】
前記反転されたプリント回路基板サブアセンブリ(113a)の前記パワーモジュール(112)を支持する前記ステップが、前記セパレータ要素(118)に従属している前記支持要素(130)により前記パワーモジュール(112)を支持するステップを含む、請求項15に記載の方法(1000)。
【請求項17】
モータ駆動式コンプレッサ(500)であって、
・流体を圧縮するように適合された圧縮ユニット(300)と、
・前記圧縮ユニット(300)を駆動する電気モーター(200)と、
・請求項1~12のいずれかに記載のインバータユニット(100)と、を備え、
且つ、前記電気モーター(200)を駆動するように適合されているモータ駆動式コンプレッサ(500)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータユニットに関し、より具体的には、車両用空調装置のコンプレッサのためのインバータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両の空調システム用のモータ駆動式コンプレッサは、冷媒を圧縮するための圧縮ユニットと、圧縮ユニットを駆動するための電気モータと、インバータユニットとを含む。モータ駆動式コンプレッサは、さらに、圧縮ユニット及び電気モータを収容するためのメインハウジング(コンプレッサハウジングとも称する)と、インバータユニットを収容するための別体のインバータハウジングとを含む。
【0003】
コンプレッサハウジングは、アルミニウムなどの金属製であり、一般的に接地されている。インバータハウジングもまた、アルミニウムなどの金属製である。インバータハウジングは、フロントヘッド及びカバーを含む。フロントヘッドは、端壁と、端壁の周縁から延在してプリント回路基板(PCB)収容空間を画成している周壁と、カバーにより閉鎖可能な開放端とを含む。インバータハウジングは、コンプレッサハウジングと一体的に形成されているか、又は、コンプレッサハウジングに組み付けられた別個のハウジングである。インバータユニットは、プリント回路基板(本文以下、PCBと称する)を有して構成されたインバータとパワーモジュールとを含み、これらの両方がインバータハウジングの内部に受け入れられている。PCB及びパワーモジュールは、メインハウジングに受け入れられた電気モータに機能的に結合され、電気モータを制御的に駆動する。インバータハウジングとメインハウジングとの組立て構成において、PCB収容スペースはメインハウジングの電気モータ受け入れ部に隣接して配置されている。パワーモジュールは、その動作中に熱を発生する。この発熱が、パワーモジュールの重要素子の溶断によりパワーモジュールを損傷させることがあり、パワーモジュールの重要素子の高温下での機械的強度の低下により、パワーモジュールの破損又は故障を生じ得る。このようなパワーモジュールの加熱に起因する問題を防止するために、パワーモジュールから熱を放散させて、パワーモジュールの破損や故障を防止し、パワーモジュールの効率的な性能を確保することが求められている。図1に示されているように、パワーモジュール2は、パワーモジュール2からの放熱のために、インバータハウジングのフロントヘッドの端壁4に対して付勢されている。詳細には、フロントヘッドの端壁4に接触しているメインハウジングのモータ収容空間により受け入れられた冷媒が、端壁4に対して付勢されたパワーモジュール2から熱を運び出し、これにより、パワーモジュール2の加熱を防止できる。
【0004】
再び添付図面の図1を参照すると、インバータハウジングの内部に保持され、且つインバータハウジングの端壁4に取り付けられたパワーモジュール2は、パワーモジュール2のケーシングにモールドされた複数のスイッチング素子を含む。スイッチング素子は、パワーモジュール2のケーシングから突出してPCB1に接続されるリードフレーム3を含み、これにより、直流高圧電力、低圧信号及び交流出力を、PCB1内の対応する部分に供給できる。パワーモジュール2は、フロントヘッドの端壁4に、金属製のボルト6により取り付けられ且つ付勢されている。図1を参照すると、パワーモジュール2は、フロントヘッドの端壁4に対してボルト6により付勢されている。パワーモジュール2のケーシングは、その対向する側部に形成された切り欠き8を含み、この切り欠き8内をボルト6が通過して、フロントヘッドの端壁4に係合する。一般的に、パワーモジュール2は、ボルト6により固定されるときに、位置決めジグ又はピンなどの任意の位置決め手段により拘束されることにより適切な位置に配置される。しかし、パワーモジュール2の位置が位置決め手段により制限されても、位置決め手段とパワーモジュール2との間に不可避のクリアランスがあるため、図2に示されているようにB―B’方向に沿ってずれることがある。さらに、PCB1は、図3に示されているようにパワーモジュール2がフロントヘッド4の端壁4aに固定された後、フロントヘッド4上に取り付けられる。フロントヘッド4上に取り付けられるPCB1の位置も、幾つかの位置決め手段により制限されるが、図2に示されているように、位置決め手段とPCB1との間の不可避のクリアランスにより、A―A’方向に沿ってずれることがある。これらのずれた横方向位置の複合作用のために、十分なクリアランスが、リードフレーム3と、リードフレーム3を受け入れるためにPCB1上に形成された対応する開口部1aとの間に設けられることが要求される。リードフレーム3と、対応する開口部1aとの間のクリアランスが十分でなければ、リードフレーム3が、PCB1上に形成された開口部1aに適切に受け入れられないというリスクがある。
【0005】
リードフレームの寸法を特定の範囲よりも低減できないことを考慮して、開口部1aの寸法が増大されている。これは、リードフレーム3とPCB1上に形成された対応する開口部1aとの間の十分なクリアランスを得るためである。開口部1aを通過するリードフレーム3が、PCB1の他方の側から延出してPCB1にはんだ付けにより固定される。具体的には、はんだパッドが、PCB1上に形成された開口部1aの周囲に配置されてはんだ付け部位を画成し、これが、リードフレーム3とPCB1との間のはんだ接続を容易にしている。しかし、リードフレーム3間のスペースが固定されているため、開口部1a間のスペースが固定されており、また、開口部1aの寸法が大きいことにより、はんだパッド間の間隙が小さくなるため、隣接するはんだ付け部位にはんだブリッジが形成される可能性がある。このはんだブリッジは望ましくないものであり、多くの問題(例えば、リードフレーム3をPCB1にはんだ付けしているときに、隣接するはんだ付け部位のはんだパッド間で短絡する)を生じ得る。短絡は部品の欠陥を生じさせ、これが部品の不良につながり得る。
【0006】
このような、例えばパワーモジュール2及びPCB1の横方向位置の大きいずれに起因するはんだ付け部位でのはんだブリッジ形成などの問題は、インバータユニットの組立順序を変更することにより回避できよう。
【0007】
従って、従来のインバータユニットに関連する欠点、具体的には、隣接するはんだ付け部位でのはんだブリッジの形成に起因する問題、例えば、パワーモジュールから発出しているリードフレームをPCBにはんだ付けしているときの短絡などを回避するインバータユニットが必要とされている。さらに、インバータユニットの組み立て方法であって、インバータユニットの組み立て中の部品の緩みの低減を必要とし、それによりサブアセンブリの要素の離脱の可能性を低減して便利な組立てをもたらす組み立て方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来のインバータユニットに関連する欠点、及び従来のインバータユニットの組立てに関連する問題を回避するインバータユニットを提供することである。この問題とは、具体的には、リードフレームをPCBにはんだ付けする際のはんだブリッジ形成及び短絡の問題であり、これは、PCBをフロントヘッドに組み入れる前にパワーモジュールをフロントヘッドに組み付けることに起因する。
【0009】
本発明の別の目的は、インバータユニットの組み立て中の部品の緩みがより少ない組立順序を含み、それにより、インバータユニットの組み立て中に、インバータユニットのサブアセンブリの要素を一緒に保持することを可能にするインバータユニットを提供することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、迅速且つ便利で、不良品率がより少ない効率的なインバータユニットの組み立て方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、構造が簡単で信頼性の高いインバータユニットを提供することである。
【0012】
本明細書において、幾つかの要素又はパラメータが、第1要素及び第2要素のようにインデックス化され得る。この場合、特に断りのない限り、このインデックス化は、類似しているが同一ではない要素を区別し、名前を付けることのみを意図している。これらの用語は、本発明に反することなく切り替えることができるため、このようなインデックス化から、優先順位の考えを推論すべきではない。さらに、このインデックス化は、本発明の要素の実装又は使用におけるいかなる順序をも示唆するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態によるインバータユニットを開示する。前記インバータユニットは、インバータ及びインバータハウジングを含む。前記インバータは電気モータを駆動し、少なくとも1つのパワーモジュール及びプリント回路基板(本文以下、PCBと称する)を含む。前記パワーモジュールは、高電圧(HV)直流(DC)を、電気モータを駆動する三相交流(AC)に変換する。前記パワーモジュールは、さらに、前記パワーモジュールから発出しているリードフレームを含む。前記PCBは、その上に取り付けられた複数の電子部品を有して構成されて、前記電気モータを制御する。前記PCBは、対応するリードフレームを受け入れるために、前記PCBを通過するように形成された開口部を含む。前記インバータハウジングは、フロントヘッド及びカバーを含む。前記フロントヘッドは端壁及び周壁を含む。前記カバーは、前記フロントヘッドと共に、前記インバータを受け入れるための筐体を画成している。前記インバータユニットは、さらに複数の支持要素を含み、これらの支持要素は、前記パワーモジュールを前記PCBに対して吊り下げ構成で支持してプリント回路基板サブアセンブリを画成するためのものである。
【0014】
さらに、前記インバータユニットは、絶縁材料のセパレータ要素を含み、前記セパレータ要素は、前記フロントヘッドの前記端壁に面する前記PCBの下側に組み付けられて、前記プリント回路基板サブアセンブリを形成する。
【0015】
詳細には、前記セパレータ要素は、前記PCBの下側に取り付けられる電子部品を互いに対して分離する。
【0016】
さらに、前記セパレータ要素は、開口部、通路及び切り欠きの少なくとも1つを含み、これは、前記PCB上に形成され且つ前記リードフレームがその中を通過できるように適合された開口部に位置合わせされている。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、前記支持要素は前記セパレータ要素に従属しており、且つ、前記PCBサブアセンブリを前記フロントヘッド内部に配置する際に前記パワーモジュールの前記フロントヘッド内への落下を防止するように適合されている。
【0018】
或いは、前記支持要素は前記パワーモジュールから発出し、且つ、前記セパレータ要素に向かって延在して前記セパレータ要素に係合している。
【0019】
詳細には、前記パワーモジュールは切り欠きを含み、前記切り欠きは、前記PCBサブアセンブリの前記パワーモジュールを前記端壁に取り付けるためのボルトの通過を可能にするために前記PCB及び前記セパレータ要素上にそれぞれ形成された第2穴及び通路に位置合わせされている。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、前記支持要素は前記PCBに従属している。
【0021】
或いは、前記支持要素は前記パワーモジュールから発出し、且つ、前記PCBに向かって延在して前記PCBに係合する。
【0022】
本発明の別の実施形態によれば、前記パワーモジュールは切り欠きを含み、前記切り欠きは、前記PCBサブアセンブリの前記パワーモジュールを前記端壁に取り付けるためのボルトの通過を可能にするために前記PCB上に形成された第2穴に位置合わせされている。
【0023】
概して、前記パワーモジュールは、前記支持要素に係合する前記パワーモジュールの周縁の少なくとも一部に沿って断続的又は連続的に配置されたリブ及び溝のいずれか一方を含む。
【0024】
好ましくは、前記支持要素の少なくとも1つが、前記パワーモジュールを支持するフック部を含む。
【0025】
また、インバータハウジングの内部に受け入れられるPCB及びパワーモジュールを備えて構成されたインバータを含むインバータユニットの組み立て方法を開示する。前記インバータハウジングは、フロントヘッド及びカバーを含む。前記方法は、前記パワーモジュールから発出しているリードフレームを、前記PCB上に形成された対応する開口部に挿入して、PCBサブアセンブリを形成するステップを含む。その後、前記方法は、前記PCBサブアセンブリを反転させるステップを含み、この反転により、前記PCBサブアセンブリの前記パワーモジュールは、前記PCBに対してその吊り下げ構成になる。前記方法は、同時に、前記反転されたPCBサブアセンブリの前記パワーモジュールを前記支持要素により支持するステップを含む。次いで、前記方法は、前記反転されたPCBサブアセンブリを前記インバータハウジングの前記フロントヘッドの内部に配置するステップを含み、前記支持要素は、前記PCBサブアセンブリの前記パワーモジュールが前記フロントヘッドの端壁の上に落下することを防止する。その後、前記方法は、前記PCBサブアセンブリの前記PCBを、前記PCB上に形成された第1穴を通過するねじにより前記フロントヘッドに組み付けるステップを含む。その後、前記方法は、前記PCBサブアセンブリの前記パワーモジュールを前記フロントヘッドの前記端壁にボルトによりしっかりと取り付けて、前記パワーモジュールを前記端壁に対して付勢するステップを含む。次いで、前記方法は、前記リードフレームと前記PCBとの間にはんだ接続を形成するステップを含む。最後に、前記方法は、前記フロントヘッドの開放端を閉じるためにカバーをねじにより取り付けるステップを含む。
【0026】
より詳細には、前記反転されたPCBサブアセンブリの前記パワーモジュールを支持するステップは、前記パワーモジュールを、前記PCBに従属している前記支持要素により支持するステップを含む。
【0027】
任意選択的に、前記インバータユニットの組み立て方法は、前記パワーモジュールから発出している前記リードフレームを、前記PCB上に形成された対応する開口部内に受け入れる前に、前記フロントヘッドの前記端壁に面する前記PCBの下側に絶縁材料のセパレータ要素を組み付けるステップを含む。
【0028】
さらに、前記方法は、任意選択的に、前記反転されたPCBサブアセンブリの前記パワーモジュールを、前記セパレータ要素に従属している前記支持要素により支持するステップを含む。
【0029】
本発明のその他の特徴、詳細及び利点は、以下の発明の説明から推測できよう。本発明及びその付随する利点の多くのより完全な理解は、添付図面と関連して考慮されるときに、以下の詳細な説明を参照することによってより良好に理解されるため、容易に得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】従来のインバータユニットの場合の、パワーモジュールをフロントヘッドの端壁に取り付け、その後、パワーモジュールとPCBとの間をリードフレームを介して接続するための取り付け配置を概略的に示した図である。
図2図1の従来のインバータユニットのパワーモジュール及びPCBの横方向移動を示す拡大図、及び、隣接するはんだ部位間のはんだブリッジの問題を示す拡大図である。
図3図1の従来のインバータユニットの、PCBをパワーモジュール-フロントヘッドサブアセンブリの上に取り付ける様子を示す分解斜視図である。
図4】本発明の空調システム用のモータ駆動式コンプレッサの概略図である。
図5図4のモータ駆動式コンプレッサのインバータユニットの、パワーモジュール、PCB、セパレータ要素及びボルトアセンブリを示した分解図である。
図6図5のインバータユニットのパワーモジュールの等角図である。
図7図5のインバータユニットのインバータハウジングのフロントヘッドの上にPCBサブアセンブリを取り付ける様子を示した分解斜視図である。
図8図5のインバータユニットのPCBの等角図である。
図9図5のインバータユニットのためのセパレータの等角図である。
図10】パワーモジュールを支持するためにパワーモジュール上に形成されたリブに係合する、支持要素に形成されたフックの図及びその拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明を、車両用空調システムのモータ駆動式コンプレッサのインバータユニットを例にして説明する。しかし、本発明は、サブコンポーネント又はそのサブアセンブリの組み立ての容易さを達成するために、車両及び非車両用途で使用されるあらゆる電子システムにも適用可能である。
【0032】
図4は、本発明の実施形態による車両空調システムのためのモータ駆動式コンプレッサ500の概略図である。モータ駆動式コンプレッサ500は、インバータユニット100、電気モータ200、及び、圧縮ユニット300を含み、圧縮ユニット300は、電気モータ200により駆動されて冷媒を圧縮する。モータ駆動式コンプレッサ500は、さらに、メインハウジング(コンプレッサハウジング210とも称する)と、インバータハウジング120とを含む。インバータハウジング120は、コンプレッサハウジング210と一体的に形成されるか、又は、コンプレッサハウジング210に組み付けられる別個のハウジングである。メインハウジング又はコンプレッサハウジング210は、電気モータ200及び圧縮ユニット300を収容している。インバータハウジング120はインバータ110を収容している。コンプレッサハウジング210はアルミニウム等の金属製であり、一般に、取り付け部(図示せず)を介して車両に接地される。
【0033】
インバータハウジング120は、フロントヘッド121及びカバー122を含む。フロントヘッド121は、端壁121aと、端壁121aの周縁から延在してPCB収容空間を画成している周壁121bと、インバータハウジング120の開放端とを含む。インバータハウジング120はメインハウジング210に接続されており、インバータハウジング120は、コンプレッサハウジング210を介して接地もされている。フロントヘッド121の開放端は、カバー122により閉塞可能である。インバータ110は、メインハウジング210に受け入れられた電気モータ200に機能的に接続されて、電気モータ200を制御的に駆動する。PCB収容空間は、インバータハウジング120がメインハウジング210に組み付けられるときにメインハウジング210の電気モータ受け入れ部に隣接して配置され、インバータ110は、端壁121aを介して設けられた電気接続インターフェースを介して電気モータ200に機能的に接続される。このような構成のPCB収容空間とメインハウジング210の電気モータ受け入れ部とが、互いに隣接して配置される。従って、インバータハウジング120のフロントヘッド121の端壁121aが、冷媒により冷却されたメインハウジング210に接触するため、モータ受け入れ部に受容された冷却流体、具体的には冷媒が端壁121aも冷却できる。
【0034】
添付図面の図5は、一実施形態のインバータユニット100の分解斜視図である。インバータユニット100は、インバータハウジング120と、インバータハウジング120に収容されたインバータ110とにより構成されている。さらに、インバータユニット100は、高電圧(HV)コネクタ230及び低電圧(LV)コネクタ240を含み、これらのコネクタは、インバータハウジング120の端壁121a上に配置されて、車両システムから高圧電力供給及び制御信号を受ける。インバータ110は電気モータ200を駆動する。インバータ110は、少なくとも1つのパワーモジュール112、及び、プリント回路基板(本文以下、PCB114と称する)を含む。パワーモジュール112は、高電圧(HV)直流(DC)を三相交流(AC)に変換し、これが電気モータ200を駆動する。パワーモジュール112は、その動作中に熱を発生し、そして、冷却されることが必要とされる。パワーモジュール112は、ボルト140によりフロントヘッド121の端壁121aに対して付勢されて、これにより、パワーモジュール112は、モータ受け入れ部内の冷媒により冷却されたインバータハウジング120により冷却される。PCB114は、その上に配置された複数の電子部品を含んで、電気モータ200の動作を制御する。
【0035】
図6は、一実施形態のパワーモジュール112の等角図である。パワーモジュール112は、直方体の箱の形状のケーシング112aを含む。ケーシング112aは、非導電性材料、例えば樹脂から形成されている。複数のスイッチング素子がパワーモジュール112のケーシング112aの内部に配置されてケーシング112aにより覆われている。具体的には、スイッチング素子は、樹脂材料により形成されたケーシング112aにモールドされている。スイッチング素子を導電接続する複数のリードフレーム又はピン112bが、矩形構成のケーシング112aの対向する長辺からケーシング112aの外部に延在している。リードフレーム又はピン112bは、銅などの導電性材料から作られている。図6に示されている一実施形態によれば、7本のリードフレーム112bがケーシング112aの第1長辺から延在し、20本のリードフレーム又はピン112bがケーシング112aの第2長辺から延在し、第2長辺は第1長辺の反対側にある。リードフレーム又はピン112bは、パワーモジュール112とPCB114とが互いに平行に配置されるように、PCB114に接続可能であるように直角に折り曲げられている。詳細には、リードフレーム112bの自由端は、PCB114上に形成された開口部114aに受け入れられ、PCB114にはんだ付けされる。車両バッテリからの高電圧電力が、リードフレーム又はピン112bの幾つかを介してスイッチング素子に供給される。さらに、制御信号が、その他のリードフレーム又はピン112bを介してスイッチング素子に供給され、これにより、パワーモジュール112は直流(DC)を交流(AC)に変換される。パワーモジュール112のケーシング112aは、その対向する短辺に形成された切り欠き112cをさらに含む。この切り欠き112cは、フロントヘッド121の端壁121a上にパワーモジュール112を取り付けるためのボルト140を通すためのものである。一般的に、切り欠き112cは、ケーシング112aの短辺の中央に配置される。切り欠き112cは、PCB114及びセパレータ要素118にそれぞれ形成された第2穴114c及び通路118b(PCBサブアセンブリ113、又は、別の実施形態によるPCBサブアセンブリ113aのパワーモジュール112を端壁121aに取り付けるためにボルト140を通過させる)のいずれか一方に位置合わせされている。PCBサブアセンブリ113は、PCB114及びパワーモジュール112により構成されている。一方、PCBサブアセンブリ113aは、PCB114及びパワーモジュール112に加えてセパレータ要素118を含み、具体的には、セパレータ要素118はPCB114の下側に固定される。また、PCBサブアセンブリ113を、PCB-パワーモジュールサブアセンブリ113とも称することができる、一方、別の実施形態によるPCBサブアセンブリ113aを、PCB-セパレータ要素-パワーモジュールサブアセンブリ113aとも称することができる。
【0036】
パワーモジュール112は、さらに、リブ及び/又は溝112d(支持要素130に係合するパワーモジュール112の周縁の少なくとも一部に沿って断続的又は連続的に配置されている)のうちの少なくとも1つを含む。支持要素130の少なくとも1つが、パワーモジュール112を支持するフック部130aを含む。図10は、支持要素130上に形成されたフック130aが、パワーモジュール112上に形成されたリブ又は溝120dと係合して、パワーモジュール112をPCB114に対して吊り下げ構成で支持することを示している。
【0037】
従来のインバータユニットは、パワーモジュールをフロントヘッドの端壁上にボルトにより取り付けた後、PCBをフロントヘッドにねじで取り付けるという組立順序を含む。さらに、このような従来のインバータユニットの構成においては、パワーモジュールがフロントヘッドの端壁上に取り付けられた後、PCB開口部が、パワーモジュールから発出しているリードフレームを受け入れ、そして最後にリードフレームがPCBにはんだ付けされる。一般的に、パワーモジュールは、ボルトで固定されるときに、パワーモジュール用の位置決め手段(例えば位置決めジグ又はピン)により拘束されることで、適切な位置に配置される。フロントヘッド上に取り付けられるPCBの位置も、PCB用のいくつかの位置決め手段により制限される。このような構成では、はんだ付け部位にはんだ付け不良、例えばはんだブリッジ形成が生じる可能性があり、これは、PCBとパワーモジュールとの独立した横方向移動に適応するために設けられた、リードフレームとPCB開口部との間の過剰なクリアランスによるものである。PCBのA-A’方向における無制限の横方向移動は、PCBの位置決め手段とPCBとの間の不可避のクリアランスに起因し、また、PCBをフロントヘッド上に取り付けるためのねじと、PCB上に形成された取り付け穴との間のクリアランスに起因する。パワーモジュールの無制限の横方向移動は、パワーモジュール用の位置決め手段とパワーモジュール自体との間のクリアランスと、ボルトのシャフト部とパワーモジュールの対応する切り欠きの内壁との間のクリアランスとに起因する。はんだ付け不良の問題は、パワーモジュール及びPCBをフロントヘッドに取り付ける前にパワーモジュールをPCB上に仮組みすることにより、PCB上に形成された開口部にパワーモジュールのリードフレームが挿入されれば回避できるかもしれない。しかしそれは不可能であろう。なぜなら、PCBをフロントヘッドに取り付けるためにPCBを反転させるとき、パワーモジュールがPCBから脱落してしまうからである。また、PCBがパワーモジュールを覆ってしまうため、ボルトをねじ込んでパワーモジュールを端壁に固定することはできないであろう。
【0038】
本発明のインバータユニット100は、従来のインバータユニットが抱えていた問題を、組立順序を変更することにより解決する。具体的には、複数の支持要素130はパワーモジュール112をPCB114に対して吊り下げ状態で支持し、それにより、反転されたPCBサブアセンブリ113又は反転されたPCBサブアセンブリ113aをフロントヘッド121内に配置しているときにパワーモジュール112がフロントヘッド121内に落下することを防止する。本発明のインバータ110の場合、パワーモジュール112は、PCB114に対して吊り下げ状態で支持されてPCBサブアセンブリ113を画成する。好ましくは、パワーモジュール112は、図7に示されているように、PCB-セパレータ要素アセンブリ119のセパレータ要素118に対して吊り下げ構成で支持されてPCBサブアセンブリ113aを画成する。その後、反転されたPCBサブアセンブリ113又は反転されたPCBサブアセンブリ113aは、図7に示されているようにボルト140によってPCBサブアセンブリ113又はPCBサブアセンブリ113aのパワーモジュール112を端壁121aに取り付けることにより、フロントヘッド121の端壁121aに組み付けられる。
【0039】
好ましい実施形態によれば、絶縁材料のセパレータ要素118が、フロントヘッド121の端壁121aに面するPCB114の下側に組み付けられる。この組み付けは、PCB-セパレータ要素サブアセンブリ119を画成するためにPCBサブアセンブリ113aがフロントヘッド121の内部に配置されているときに行われる。このような構成において、セパレータ118は、PCB114と端壁121aとの間に配置される。セパレータ要素118は、PCB114上に取り付けられる電子部品を互いに対して分離する。本発明の好ましい実施形態によれば、支持要素130は、セパレータ要素118に従属しており、PCBサブアセンブリ113aがフロントヘッド121の内部に配置されている間、パワーモジュール112をセパレータ要素118に対して吊り下げ構成で支持する。或いは、支持要素130は、パワーモジュール112から発出して、セパレータ要素118に向かって係合するように延在し、これにより、パワーモジュール112をセパレータ要素118に対して吊り下げ構成で支持する。支持要素130のこのような構成は、PCBサブアセンブリ113aをフロントヘッド121の内部に配置しているときにパワーモジュール112がフロントヘッド121の内部に落下することを防止する。このような構成により、パワーモジュール112は、セパレータ要素118を介してPCB114に間接的に支持され、また、パワーモジュール112を端壁121aにボルト140により取り付けているときに、支持要素130を介してPCB114に応力が伝達されることによるPCB114の破損が防止される。セパレータ要素118は、PCB114上に形成された開口部114aに位置合わせされた開口部、通路及び切り欠き118aの少なくとも1つを含む。セパレータ要素118上に形成された開口部、通路及び切り欠き118aは、その中をリードフレーム114bが通過することを可能にする。詳細には、パワーモジュール112から発出しているリードフレーム112bが、セパレータ要素118上に形成された開口部、通路及び切り欠き118aを通過し、その後、PCB114上に形成された開口部114aに受け入れられてPCBサブアセンブリ113aを構成する。別の実施形態によれば、支持要素130は、パワーモジュール112をPCB114に対して吊り下げ構成で支持するように、PCB114に従属している。或いは、支持要素130は、パワーモジュール112から発出し、PCB114に向かって延在し、PCB114と係合してパワーモジュール112をPCB114に対して吊り下げ構成で支持する。支持要素130の少なくとも1つがフック部130aを含み、フック部130aの上にパワーモジュール112が載置される。そしてPCBサブアセンブリ113aが、PCB114の下にパワーモジュール112が配置された状態で、その反転構成でフロントヘッド121の内部に配置される。支持要素130は、一般的に、パワーモジュール112を異なる側から安定的に支持するように配置される。
【0040】
本発明の実施形態によれば、支持要素130は、その最端部にスナップフィット係合要素130aを有して形成されており、これにより、パワーモジュール112はスナップフィット係合要素130aに押し付けられて、スナップフィット係合要素を横断してPCBサブアセンブリ113を画成する。PCBサブアセンブリ113のパワーモジュール112は、PCBサブアセンブリ113又はPCBサブアセンブリ113aが反転され又は逆さに保持されたときに、スナップフィット係合要素130aにより支持されて、PCB114に対するパワーモジュール112の吊り下げ構成を画成する。このような構成では、支持要素130はパワーモジュール112を支持するだけであり、パワーモジュール112を把持も保持もしない。このような構成により、パワーモジュール112を端壁121aに取り付けているときに、支持要素130を介してPCB114に伝達される応力によるPCB114への損傷が防止される。しかし、本発明は、PCB-パワーモジュールサブアセンブリをインバータハウジングに配置する際に、パワーモジュールがフロントヘッドに落下しないようにPCBに対してパワーモジュールを吊り下げ構成で安定して支持できる支持要素であれば、支持要素の特定の構成、個数及び配置、支持要素がPCB又はセパレータ要素から発出しているかどうかに制限されることはない。
【0041】
パワーモジュール112が支持要素130により支持されてPCBサブアセンブリ113を構成するか又はPCBサブアセンブリ113aを構成した後、パワーモジュール112はインバータハウジング120の端壁121a上に取り付けられる。PCB114及びセパレータ要素118はまた、その中に位置決めジグを通すための、それぞれに位置合わせされた開口部114d及び開口部118cを含む。位置決めジグは、パワーモジュール112をフロントヘッド121の端壁121aに対して、パワーモジュール112と端壁121aとの間に配置されたギャップフィラーにより付勢する。これは、パワーモジュール112がボルト140により端壁121a上に取り付けられる際に、それらの間の十分な接触を保証するためである。インバータハウジング120のフロントヘッド121の端壁121aには、ボルト140の対応するねじ部を受け入れてねじ係合を構成するための穴が形成されている。一実施形態において、端壁121aに形成された穴は、その上にねじが形成されていないブラインド穴であり、ボルト140は、ボルト140が配備されるときに穴にねじを形成するセルフタッピングボルトである。或いは、穴はねじ付き穴であり、ボルト140はねじ付き穴にねじ込まれ、パワーモジュール112をインバータハウジング120の端壁121aに対して付勢して、パワーモジュール112と端壁121aとの面接触を改善し、パワーモジュール112からの放熱を強化する。PCBサブアセンブリ113のパワーモジュール112をフロントヘッド121の端壁121a上に取り付けるために、パワーモジュール112上に形成された切欠き112cが、PCB114上に形成された第2穴114cに位置合わせされ、その中をボルト140が通過できるようになっている。PCBサブアセンブリ113aのパワーモジュール112をフロントヘッド121の端壁121a上に取り付けるために、パワーモジュール112上に形成された切欠き112cは、PCB114及びセパレータ要素118上にそれぞれ形成された第2穴114c及び通路118bに位置合わせされて、これらを通ってボルト140が通過できるようになっている。
【0042】
さらに、支持要素130のこのような構成により、パワーモジュール112は、端壁121aに取り付けられる前に、PCB114に対して直接吊り下がってPCBサブアセンブリ113を画成するか、又はセパレータ要素118から吊り下がってPCBサブアセンブリ113aを画成できる。具体的には、パワーモジュール112は、吊り下げ構成で確実に保持されるのであり、PCBサブアセンブリ113又はPCBサブアセンブリ113aがフロントヘッド121に配置されている間にパワーモジュール112がフロントヘッド121に落下する危険性はない。従って、パワーモジュール112がまだ端壁121aに取り付けられていない間に、リードフレーム112bがPCB開口部114a内に受け入れられることができる。特に、リードフレーム112bと開口部114aとの間のクリアランスは、PCB114の無制限の横方向移動によりもはや影響を受けず、過剰なクリアランスの問題、及び、リードフレーム112bと対応する開口部114aとの間の過剰なクリアランスにより生じる問題が回避される。特に、このような構成では、隣接するはんだ部位間のはんだブリッジ形成と、はんだブリッジ形成に起因する短絡の問題が回避される。
【0043】
また、本発明の実施形態によるインバータユニット100を組み立てる方法1000を開示する。インバータユニットは、インバータ(インバータハウジング120の内部に受け入れられたPCB114及びパワーモジュール112を有して構成されている)を含む。インバータハウジング120は、フロントヘッド121及びカバー122を含む。方法1000は、パワーモジュール112から発出しているリードフレーム112aを、PCB114上に形成された対応する開口部114aの内部に挿入して、PCBサブアセンブリ113を形成するステップを含む。その後、方法1000は、PCBサブアセンブリ113のパワーモジュール112がPCB114に対して吊り下げ構成で配置されるようにPCBサブアセンブリ113を反転させるステップを含む。同時に、方法1000は、反転されたPCBサブアセンブリ113のパワーモジュール112を、支持要素130により支持するステップを含む。その後、反転されたPCBサブアセンブリ113をインバータハウジング120のフロントヘッド121の内部に配置し、支持要素130は、パワーモジュール112がフロントヘッド121の端壁121aを越えて落下することを防止する。その後、方法1000は、図8に示されているPCB114上に形成された第1穴114bを通過する、図9に示されているねじ160により、PCBサブアセンブリ113のPCB114をフロントヘッド121に組み付けるステップを含む。PCB114をフロントヘッド121に確実に取り付けるために、PCB114上に形成された複数の取り付け穴114bが存在し得るが、取り付け穴のうち数個だけに符号が付されている。方法1000は、さらに、PCB-サブアセンブリ113のパワーモジュール112をフロントヘッド121の端壁121aに対して付勢するために、PCB-サブアセンブリ113のパワーモジュール112をボルト140により端壁121aにしっかりと取り付けるステップを含む。続いて、方法1000は、リードフレーム112aとPCB114との間にはんだ接続を形成するステップを含む。はんだ接続は、ウェーブはんだ付けである。最後に、方法1000は、フロントヘッド121の開放端を閉じるために、フロントヘッド121の上にねじ150によりカバー122を取り付けるステップを含む。この方法は、さらに、追加のステップ、例えば、PCB114とフロントヘッド121との間の接着接続の形成、接着剤の硬化、パワーモジュール112とフロントヘッド121の端壁121aとの間へのギャップフィラーの吐出、及び、プラズマ処理のようなその他のステップを含む。パワーモジュールを端壁121aに対して押圧する。上記に開示された方法1000の様々なステップは、任意の順序で組み合わせることができ、又は、方法1000若しくは代替方法を採用するために並行して実行されてもよい。さらに、方法1000の個々のステップは、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく変更又は削除されてもよい。
【0044】
反転されたPCBサブアセンブリ113のパワーモジュール112を支持するステップは、PCB114に従属している支持要素130によりパワーモジュール112を支持するステップを含む。
【0045】
方法1000は、パワーモジュール112から発出しているリードフレーム112aを、PCB114上に形成された対応する開口部114a内に受け入れる前に、フロントヘッド121の端壁121aに面するPCB114の下側に、絶縁材料のセパレータ要素118を組み付けるステップを任意選択的に含む。
【0046】
方法1000は、反転されたPCBサブアセンブリ113aのパワーモジュール112を、セパレータ要素118に従属している支持要素130により支持するステップを任意選択的に含む。
【0047】
本発明の実施形態によるモータ駆動式コンプレッサ500も開示する。再び図2を参照すると、モータ駆動式コンプレッサ500は、圧縮ユニット300と、電気モータ200と、インバータユニット100とを含む。圧縮ユニット300は、流体、特には冷媒を、冷媒が空調ループの凝縮器に供給される前に圧縮する。電気モータ200は圧縮ユニット300を駆動する。上記に開示されたインバータユニット100は電気モータ200を駆動する。
【0048】
本発明の多数の修正及び変更が、上記の教示に鑑みて可能であることは明らかである。従って、本発明が、明細書に具体的に記載された以外の方法で実施され得ることが理解されよう。
【符号の説明】
【0049】
100 インバータユニット
110 インバータ
112 パワーモジュール
112a リードフレーム
113、113a プリント回路基板サブアセンブリ
114 プリント回路基板
114a 開口部
116 電子部品
118 セパレータ要素
120 インバータハウジング
121 フロントヘッド
121a 端壁
122 カバー
130 支持要素
130a フック部
140 ボルト
200 電気モータ
300 圧縮ユニット
500 モータ駆動式コンプレッサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10