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特開2023-138942装置、方法、プログラム、樹脂組成物の製造方法、ポリイミドフィルムの製造方法、ディスプレイの製造方法、積層体の製造方法、および、フレキシブルデバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138942
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】装置、方法、プログラム、樹脂組成物の製造方法、ポリイミドフィルムの製造方法、ディスプレイの製造方法、積層体の製造方法、および、フレキシブルデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20230926BHJP
   B29C 41/12 20060101ALI20230926BHJP
   B29C 41/36 20060101ALI20230926BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
C08G73/10
B29C41/12
B29C41/36
B32B27/34
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093124
(22)【出願日】2023-06-06
(62)【分割の表示】P 2019117553の分割
【原出願日】2019-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 敏章
(57)【要約】
【課題】試行錯誤により組成を得るのは効率が悪い。
【解決手段】ポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物の組成を示す組成データを取得する組成取得部と、樹脂組成物またはポリイミド樹脂膜の特性を示す特性データを取得する特性取得部と、取得された組成データおよび特性データを含む学習データを用いて、目標とする樹脂組成物またはポリイミド樹脂膜の特性を示す目標特性データを入力したことに応じて推奨する樹脂組成物の組成を示す推奨組成データを出力するモデルの学習処理を実行する学習処理部と、を備える装置が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物の組成を示す組成データを取得する組成取得部と、
前記樹脂組成物の特性または前記ポリイミド樹脂膜の特性を示す特性データを取得する特性取得部と、
取得された前記組成データおよび前記特性データを含む学習データを用いて、目標とする前記樹脂組成物または前記ポリイミド樹脂膜の特性を示す目標特性データを入力したことに応じて推奨する前記樹脂組成物の組成を示す推奨組成データを出力するモデルの学習処理を実行する学習処理部と、
を備える装置。
【請求項2】
ポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物または前記ポリイミド樹脂膜の目標とする特性を示す目標特性データを取得する目標特性取得部と、
前記目標特性データを入力したことに応じて推奨する前記樹脂組成物の組成を示す推奨組成データを出力するモデルに対し、前記目標特性取得部により取得された前記目標特性データを供給する目標特性供給部と、
前記目標特性データを前記モデルに供給したことに応じて前記モデルが出力する前記推奨組成データを取得する推奨組成取得部と、
を備える装置。
【請求項3】
前記樹脂組成物は液状、または、フィルム状である、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記樹脂組成物はフレキシブルデバイス用である、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記樹脂組成物はフレキシブルディスプレイ用である、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記ポリイミド樹脂膜に含まれるポリイミドは、ポリイミド前駆体を含む組成物に加熱イミド化および化学イミド化の少なくとも一方を行ったものであり、
前記ポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの共重合体であり、
前記テトラカルボン酸二無水物は、
ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-シクロヘキセン-1,2ジカルボン酸無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、メチレン-4,4'-ジフタル酸二無水物、1,1-エチリデン-4,4'-ジフタル酸二無水物、2,2-プロピリデン-4,4'-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4'-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4'-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4'-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4'-ジフタル酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)(TAHQ)、チオ-4,4'-ジフタル酸二無水物、スルホニル-4,4'-ジフタル酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、1,4-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、2,2-ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス[4-(3,1-、3,2-、3,3-または3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α'-スピロ-2''-ノルボルナン-5,5'',6,6''-テトラカルボン酸二無水物(CpODA)、および、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一つを含み、
前記ジアミンは、
ジアミノジフェニルスルホン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'-ジアミノビフェニル、3,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジアミノビフェニル、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、m-トリジン、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、3,4'-ジアミノベンゾフェノン、3,3'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、シクロヘキサンジアミン、4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン、および、1,4-ビス(3-アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼンから選択される少なくとも一つを含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記ポリイミド前駆体は、さらにケイ素含有ジアミンとの共重合体であり、
前記ケイ素含有ジアミンは、下記式(2)
【化5】
{式中、複数のR5は二価の炭化水素基を示し、互いに同一または異なっており、複数のR3およびR4の各々は、複数の前記ケイ素含有ジアミンの間でそれぞれ独立に、炭素数1~5の1価の脂肪族炭化水素基、または炭素数6~10の1価の芳香族基を示し、lは1~200の整数を表す。}
である、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記ポリイミド前駆体は、さらにジカルボン酸との共重合体であり、
前記ジカルボン酸は、
イソフタル酸、テレフタル酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、3,4'-ビフェニルジカルボン酸、3,3'-ビフェニルジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4'-スルホニルビス安息香酸、3,4'-スルホニルビス安息香酸、3,3'-スルホニルビス安息香酸、4,4'-オキシビス安息香酸、3,4'-オキシビス安息香酸、3,3'-オキシビス安息香酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)プロパン、2,2'-ジメチル-4,4'-ビフェニルジカルボン酸、3,3'-ジメチル-4,4'-ビフェニルジカルボン酸、2,2'-ジメチル-3,3'-ビフェニルジカルボン酸、9,9-ビス(4-(4-カルボキシフェノキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(3-カルボキシフェノキシ)フェニル)フルオレン、4,4'-ビス(4-カルボキシフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(3-カルボキシフェノキシ)ビフェニル、3,4'-ビス(4-カルボキシフェノキシ)ビフェニル、3,4'-ビス(3-カルボキシフェノキシ)ビフェニル、3,3'-ビス(4-カルボキシフェノキシ)ビフェニル、3,3'-ビス(3―カルボキシフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-p-ターフェニル、4,4'-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-m-ターフェニル、3,4'-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-p-ターフェニル、3,3'-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-p-ターフェニル、3,4'-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-m-ターフェニル、3,3'-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-m-ターフェニル、4,4'-ビス(3-カルボキシフェノキシ)-p-ターフェニル、4,4'-ビス(3-カルボキシフェノキシ)-m-ターフェニル、3,4'-ビス(3-カルボキシフェノキシ)-p-ターフェニル、3,3'-ビス(3-カルボキシフェノキシ)-p-ターフェニル、3,4'-ビス(3-カルボキシフェノキシ)-m-ターフェニル、3,3'-ビス(3-カルボキシフェノキシ)-m-ターフェニル、1,1-シクロブタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4,4'-ベンゾフェノンジカルボン酸、1,3-フェニレン二酢酸、1,4-フェニレン二酢酸、および、5-アミノイソフタル酸誘導体から選択される少なくとも一つを含む、請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
前記樹脂組成物は、さらに添加剤を含み、
前記添加剤は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、カップリング剤、フィラー、染料、顔料、プライマー、難燃材、レベリング剤、剥離剤、および、溶媒から選択される少なくとも一つを含む、
請求項6~8いずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記樹脂組成物の特性は、前記樹脂組成物の粘度、粘度安定性、固形分含有量、パーティクル数、水分量、ならびに、前記樹脂組成物に含まれるポリイミド前駆体またはポリイミドの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)から選択される少なくとも一つであり、
前記ポリイミド樹脂膜の特性は、残留応力、熱分解温度、熱分解量、ガラス転移温度、熱線膨張率、引張伸度、引張強度、ヤング率、膜厚均一性、ピール強度、吸水率、耐薬品性、レーザー照射後剥離性、空隙率、静的耐屈曲性、動的耐屈曲性、硬度、厚さ方向リタデーション(Rth)、面内リタデーション(R0)、面内屈折率(Nx、Ny)、厚さ方向屈折率(Nz)、複屈折(Δn)、Pa、Pb(面内配向度)、YI(黄色度)、HAZE、透過率、および、色度から選択される少なくとも一つである、
請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
ポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物の組成を示す組成データを取得する組成取得段階と、
前記樹脂組成物の特性または前記ポリイミド樹脂膜の特性を示す特性データを取得する特性取得段階と、
取得された前記組成データおよび前記特性データを含む学習データを用いて、目標とする前記樹脂組成物または前記ポリイミド樹脂膜の特性を示す目標特性データを入力したことに応じて推奨する前記樹脂組成物の組成を示す推奨組成データを出力するモデルの学習処理を実行する学習処理段階と、
を備える方法。
【請求項12】
ポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物または前記ポリイミド樹脂膜の目標とする特性を示す目標特性データを取得する目標特性取得段階と、
前記目標特性データを入力したことに応じて推奨する前記樹脂組成物の組成を示す推奨組成データを出力するモデルに対し、前記目標特性取得段階により取得された前記目標特性データを供給する目標特性供給段階と、
前記目標特性データを前記モデルに供給したことに応じて前記モデルが出力する前記推奨組成データを取得する推奨組成取得段階と、
を備える方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法により取得した前記推奨組成データに基づいて、前記樹脂組成物の組成を決定する段階
を備える樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の製造方法により製造された前記樹脂組成物を支持体に塗布する塗布段階と、
前記樹脂組成物を加熱して前記ポリイミド樹脂膜を形成する膜形成段階と、
前記ポリイミド樹脂膜を前記支持体から剥離する剥離段階と、
を備える、ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項15】
前記剥離段階は、前記支持体側から前記ポリイミド樹脂膜にレーザーを照射する照射段階を有する、請求項14に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項16】
請求項13に記載の製造方法により製造された前記樹脂組成物を支持体に塗布する塗布段階と、
前記樹脂組成物を加熱してポリイミド樹脂膜を形成する膜形成段階と、
前記ポリイミド樹脂膜上に素子を形成する段階と、
を備える積層体の製造方法。
【請求項17】
前記素子が形成された前記ポリイミド樹脂膜を前記支持体から剥離する剥離段階をさらに含む、請求項16に記載の積層体の製造方法。
【請求項18】
請求項16または17に記載の製造方法によって積層体を製造する段階を備える、フレキシブルデバイスの製造方法。
【請求項19】
請求項16または17に記載の製造方法によって積層体を製造する段階を備える、ディスプレイの製造方法。
【請求項20】
コンピュータを、
ポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物の組成を示す組成データを取得する組成取得部と、
前記樹脂組成物の特性または前記ポリイミド樹脂膜の特性を示す特性データを取得する特性取得部と、
取得された前記組成データおよび前記特性データを含む学習データを用いて、目標とする前記樹脂組成物または前記ポリイミド樹脂膜の特性を示す目標特性データを入力したことに応じて推奨する前記樹脂組成物の組成を示す推奨組成データを出力するモデルの学習処理を実行する学習処理部
として機能させるプログラム。
【請求項21】
コンピュータを、
ポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物または前記ポリイミド樹脂膜の目標とする特性を示す目標特性データを取得する目標特性取得部と、
前記目標特性データを入力したことに応じて推奨する前記樹脂組成物の組成を示す推奨組成データを出力するモデルに対し、前記目標特性取得部により取得された前記目標特性データを供給する目標特性供給部と、
前記目標特性データを前記モデルに供給したことに応じて前記モデルが出力する前記推奨組成データを取得する推奨組成取得部
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置、方法、プログラム、樹脂組成物の製造方法、ポリイミドフィルムの製造方法、ディスプレイの製造方法、積層体の製造方法、および、フレキシブルデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フレキシブルデバイス用等の、ポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物を製造する場合には、所望の特性を得るために、熟練したオペレータの試行錯誤によって好ましい組成を見出している(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2017-114080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、試行錯誤により組成を得るのは効率が悪い。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、装置が提供される。装置は、ポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物の組成を示す組成データを取得する組成取得部を備えてよい。装置は、樹脂組成物の特性またはポリイミド樹脂膜の特性を示す特性データを取得する特性取得部を備えてよい。装置は、取得された組成データおよび特性データを含む学習データを用いて、目標とする樹脂組成物またはポリイミド樹脂膜の特性を示す目標特性データを入力したことに応じて推奨する樹脂組成物の組成を示す推奨組成データを出力するモデルの学習処理を実行する学習処理部を備えてよい。
【0005】
本発明の第2の態様においては、装置が提供される。装置は、ポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物またはポリイミド樹脂膜の目標とする特性を示す目標特性データを取得する目標特性取得部を備えてよい。装置は、目標特性データを入力したことに応じて推奨する樹脂組成物の組成を示す推奨組成データを出力するモデルに対し、目標特性取得部により取得された目標特性データを供給する目標特性供給部を備えてよい。装置は、目標特性データをモデルに供給したことに応じてモデルが出力する推奨組成データを取得する推奨組成取得部を備えてよい。
【0006】
本発明の第3の態様においては、方法が提供される。方法は、ポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物の組成を示す組成データを取得する組成取得段階を備えてよい。方法は、樹脂組成物の特性またはポリイミド樹脂膜の特性を示す特性データを取得する特性取得段階を備えてよい。方法は、取得された組成データおよび特性データを含む学習データを用いて、目標とする樹脂組成物またはポリイミド樹脂膜の特性を示す目標特性データを入力したことに応じて推奨する樹脂組成物の組成を示す推奨組成データを出力するモデルの学習処理を実行する学習処理段階を備えてよい。
【0007】
本発明の第4の態様においては、方法が提供される。方法は、ポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物またはポリイミド樹脂膜の目標とする特性を示す目標特性データを取得する目標特性取得段階を備えてよい。方法は、目標特性データを入力したことに応じて推奨する樹脂組成物の組成を示す推奨組成データを出力するモデルに対し、目標特性取得段階により取得された目標特性データを供給する目標特性供給段階を備えてよい。方法は、目標特性データをモデルに供給したことに応じてモデルが出力する推奨組成データを取得する推奨組成取得段階を備えてよい。
【0008】
本発明の第5の態様においては、樹脂組成物の製造方法が提供される。製造方法は、第4の態様の方法により取得した推奨組成データに基づいて、樹脂組成物の組成を決定する段階を備えてよい。
【0009】
本発明の第6の態様においては、ポリイミドフィルムの製造方法が提供される。製造方法は、第5の態様の製造方法により製造された樹脂組成物を支持体に塗布する塗布段階を備えてよい。製造方法は、樹脂組成物に含まれるポリイミド前駆体を加熱してポリイミド樹脂膜を形成する膜形成段階を備えてよい。製造方法は、ポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する剥離段階を備えてよい。
【0010】
本発明の第7の態様においては、積層体の製造方法が提供される。製造方法は、第5の態様の製造方法により製造された樹脂組成物を支持体に塗布する塗布段階を備えてよい。製造方法は、樹脂組成物に含まれるポリイミド前駆体を加熱してポリイミド樹脂膜を形成する膜形成段階を備えてよい。製造方法は、ポリイミド樹脂膜上に素子を形成する段階を備えてよい。
【0011】
本発明の第8の態様においては、フレキシブルデバイスの製造方法が提供される。製造方法は、第7の態様の製造方法によって積層体を製造する段階を備えてよい。
【0012】
本発明の第9の態様においては、ディスプレイの製造方法が提供される。製造方法は、第5の態様の製造方法によって積層体を製造する段階を備えてよい。
【0013】
本発明の第10の態様においては、プログラムが提供される。プログラムは、コンピュータを、ポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物の組成を示す組成データを取得する組成取得部として機能させてよい。プログラムは、コンピュータを、樹脂組成物の特性またはポリイミド樹脂膜の特性を示す特性データを取得する特性取得部として機能させてよい。プログラムは、コンピュータを、取得された組成データおよび特性データを含む学習データを用いて、目標とする樹脂組成物またはポリイミド樹脂膜の特性を示す目標特性データを入力したことに応じて推奨する樹脂組成物の組成を示す推奨組成データを出力するモデルの学習処理を実行する学習処理部として機能させてよい。
【0014】
本発明の第11の態様においては、プログラムが提供される。プログラムは、コンピュータを、ポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物またはポリイミド樹脂膜の目標とする特性を示す目標特性データを取得する目標特性取得部として機能させてよい。プログラムは、コンピュータを、目標特性データを入力したことに応じて推奨する樹脂組成物の組成を示す推奨組成データを出力するモデルに対し、目標特性取得部により取得された目標特性データを供給する目標特性供給部として機能させてよい。プログラムは、コンピュータを、目標特性データをモデルに供給したことに応じてモデルが出力する推奨組成データを取得する推奨組成取得部として機能させてよい。
【0015】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係るシステム1を示す。
図2】モデル35の学習方法を示す。
図3】モデル35を用いたポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物の製造方法を示す。
図4】ポリイミドフィルムの製造方法を示す。
図5】積層体の製造方法を示す。
図6】ディスプレイに含まれる積層体を示す図である。
図7】有機ELディスプレイの製造方法を示す。
図8】本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
[1.システム]
図1は、本実施形態に係るシステム1を示す。システム1は、ポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物の製造装置2および学習処理装置3を備える。樹脂組成物は、液状(一例としてワニス状)でもよく、フィルム状でもよい。ポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物は、ポリイミドを含んでもよいし、ポリイミド前駆体を含んでもよいし、ポリイミド前駆体の材料モノマーを含んでもよい。樹脂組成物はフレキシブルデバイス(一例としてフレキシブルディスプレイ)に用いられるものであってよい。
【0019】
[1-1.製造装置]
製造装置2は、樹脂組成物を製造する。例えば、製造装置2は、樹脂組成物の原材料を混合して樹脂組成物の流体とする混合部20と、樹脂組成物の流体から樹脂積層体を生成する生成部21とを有してよい。生成部21は、原材料を濾過するフィルタリング部や、樹脂組成物の流体をベースフィルム上に塗布して樹脂組成物をフィルム状に形成する塗布部、塗布された樹脂組成物上にカバーフィルムを設けて(一例として張り合わせて)積層物を巻き取るローラ部などを有してよい。なお、フィルム状の樹脂組成物は溶媒を含んでいてよい。フィルム状の樹脂組成物が加熱されることでポリイミド樹脂膜(ポリイミドフィルムとも称する)が形成される。ポリイミド樹脂膜に含まれるポリイミドは、ポリイミド前駆体を含む組成物に加熱イミド化および化学イミド化の少なくとも一方が行われたものであってよい。
【0020】
[1-2.学習処理装置]
学習処理装置3は、装置の一例である。学習処理装置3は、モデル35の学習処理を行うものであり、組成取得部32と、特性取得部33と、学習処理部34と、モデル35とを有する。また、学習処理装置3は、モデル35の運用を行うものであり、目標特性取得部36と、目標特性供給部37と、推奨組成取得部38と、制御部39とを有する。
【0021】
[1-2-1.組成取得部]
組成取得部32は、ポリイミド前駆体を含む樹脂組成物の組成を示す組成データを取得する。組成取得部32は、製造装置2によって製造される樹脂組成物の組成データを取得してよい。組成取得部32は、取得した組成データを学習処理部34に供給してよい。
【0022】
[1-2-2.特性取得部]
特性取得部33は、ポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物の特性またはポリイミド樹脂膜の特性(樹脂組成物等の特性とも称する)を示す特性データを取得する。特性取得部33は、製造装置2によって製造された樹脂組成物の特性データを取得してよい。特性取得部33は、取得した特性データを学習処理部34に供給してよい。本実施形態では一例として、特性取得部33は特性データをオペレータから取得する。
【0023】
[1-2-3.学習処理部]
学習処理部34は、入力される学習データを用いてモデル35の学習処理を実行する。学習データは、組成取得部32からの組成データ、および、特性取得部33からの特性データを含んでよい。
【0024】
[1-2-4.モデル]
モデル35は、目標とする樹脂組成物等の特性を示す目標特性データを入力したことに応じて推奨する、ポリイミド前駆体を含む樹脂組成物の組成を示す推奨組成データを出力する。なお、モデル35は、学習処理装置3の外部のサーバに格納されてもよい。
【0025】
[1-2-5.目標特性取得部]
目標特性取得部36は、目標とする樹脂組成物等の特性を示す目標特性データを取得する。本実施形態では一例として、目標特性取得部36は目標特性データをオペレータから取得する。目標特性取得部36は、取得した目標特性データを目標特性供給部37に供給してよい。
【0026】
[1-2-6.目標特性供給部]
目標特性供給部37は、目標特性取得部36からの目標特性データをモデル35に供給する。
【0027】
[1-2-7.推奨組成取得部]
推奨組成取得部38は、目標特性データをモデル35に供給したことに応じてモデル35が出力する推奨組成データを取得する。推奨組成取得部38は、取得した推奨組成データを制御部39に供給してよい。推奨組成取得部38は、推奨組成データを学習処理装置3の外部に出力してもよい。
【0028】
[1-2-8.制御部]
制御部39は、製造装置2に制御条件データを供給することで、当該制御条件データが示す制御条件で製造装置2を動作させる。例えば制御部39は、製造装置2に推奨組成データを供給することで、推奨組成データが示す組成で製造装置2の混合部20に原材料を混合させてポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物を製造させてよい。
【0029】
以上のシステム1によれば、組成データおよび特性データを含む学習データを用いて、目標特性データを入力したことに応じて推奨組成データを出力するモデル35の学習処理が実行される。そして、モデル35に目標特性を入力することで、目標特性の樹脂組成物またはポリイミド樹脂膜を生成するための組成が出力される。従って、熟練した作業者による試行錯誤を必要とせずに、目標特性の樹脂組成物またはポリイミド樹脂膜を作るための組成を得ることができる。
【0030】
[2.組成データ]
組成データで示される組成は、ポリイミド、ポリイミド前駆体、および、ポリイミド前駆体の材料モノマーの少なくとも一つを含む樹脂組成物を生成し得る原材料の有無であってもよいし、原材料に含まれる化合物(例えば一般名で示される原材料に含まれる具体的な化合物の名称または構造式)であってもよい。組成データで示される組成は、原材料に含まれる化合物の含有割合であってもよく、含有割合は0であってもよい。ポリイミド前駆体は、ポリアミド酸やポリアミック酸とも称されてよく、下記一般式(1)の構造であってよい。
【0031】
【化1】
【0032】
なお、式中、nは正の整数である。Rは2価の有機基を示し、nが複数である場合には、全体として共重合体をなすべくそれぞれ独立に2価の有機基を示す。Rは4価の有機基を示し、nが複数である場合には、全体として共重合体をなすべくそれぞれ独立に4価の有機基を示す。
【0033】
ポリイミド前駆体またはポリイミドの重量平均分子量は110,000~250,000であってよい。ポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの共重合体であってよい。
【0034】
テトラカルボン酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-シクロヘキセン-1,2ジカルボン酸無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、メチレン-4,4'-ジフタル酸二無水物、1,1-エチリデン-4,4'-ジフタル酸二無水物、2,2-プロピリデン-4,4'-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4'-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4'-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4'-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4'-ジフタル酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)(TAHQ)、チオ-4,4'-ジフタル酸二無水物、スルホニル-4,4'-ジフタル酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、1,4-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、2,2-ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(例えば、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物など)、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(例えば、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物など)、9,9-ビス[4-(3,1-、3,2-、3,3-または3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α'-スピロ-2''-ノルボルナン-5,5'',6,6''-テトラカルボン酸二無水物(CpODA)、および、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一つを含んでよい。
【0035】
ジアミンは、ジアミノジフェニルスルホン(例えば4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン)、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'-ジアミノビフェニル、3,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジアミノビフェニル、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(別名:4,4'-ジアミノ-2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル)、m-トリジン(別名:4,4'-ジアミノ-2,2'-ジメチルビフェニル)、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、3,4'-ジアミノベンゾフェノン、3,3'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、シクロヘキサンジアミン(例えば、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、およびそれらのcis体、trans体またはcis・trans混合体など)、4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン(例えば、新日本理化株式会社、製品名「ワンダミン」など)、および、1,4-ビス(3-アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼンから選択される少なくとも一つを含んでよい。
【0036】
ポリイミド前駆体は、さらにケイ素含有ジアミンとの共重合体であってもよい。
ケイ素含有ジアミンは、下記の一般式(2)の構造であってよい。
【0037】
【化2】
【0038】
なお、式中、複数のR5は二価の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。複数のR3およびR4の各々は、複数のケイ素含有ジアミンの間でそれぞれ独立に、炭素数1~5の1価の脂肪族炭化水素基、または炭素数6~10の1価の芳香族基を示してよい。lは1~200の整数を表してよい。
【0039】
上記一般式(2)中のR5の好ましい構造は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基等であってよい。また、式(2)中のR3およびR4の好ましい構造は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基等であってよい。
【0040】
上記式(2)で表される化合物の数平均分子量は、得られる硬化物(例えばポリイミドフィルム)と支持体との間に発生する残留応力の低減の観点から、500以上、より好ましくは1,000以上、更に好ましくは2,000以上であってよく、得られる硬化物(例えばポリイミドフィルム)の透明性(特に低HAZE)の観点から、好ましくは12,000以下、より好ましくは10,000以下、更に好ましくは8,000以下であってよい。
【0041】
上記式(2)で表される化合物としては、具体的には、両末端アミン変性メチルフェニルシリコーンオイル(信越化学社製:X22-1660B-3(数平均分子量4400)、X22-9409(数平均分子量1300))、両末端アミノ変性ジメチルシリコーン(信越化学社製:X22-161A(数平均分子量1600)、X22-161B(数平均分子量3000)、KF8012(数平均分子量4400)、東レダウコーニング製:BY16-835U(数平均分子量900)、チッソ社製:サイラプレーンFM3311(数平均分子量1000))等が挙がられる。これらの中で、両末端アミン変性メチルフェニルシリコーンオイルが、耐薬品性向上、Tgの向上の観点から好ましい。
【0042】
ケイ素含有ジアミンの共重合割合は、全ポリイミド前駆体の質量に対して、0.5~30質量%の範囲が好ましく、より好ましくは1.0質量%~25質量%、更に好ましくは1.5質量%~20質量%である。0.5質量%以上である場合、支持体との間に発生する応力の低下効果が良好である。また30質量%以下である場合、得られる硬化物(例えばポリイミドフィルム)の透明性(特に低HAZE)が良好であり、高い全光線透過率の実現およびTgの低下防止の点で好ましい。
【0043】
ポリイミド前駆体は、さらにジカルボン酸との共重合体であってよい。ジカルボン酸は、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、3,4'-ビフェニルジカルボン酸、3,3'-ビフェニルジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4'-スルホニルビス安息香酸、3,4'-スルホニルビス安息香酸、3,3'-スルホニルビス安息香酸、4,4'-オキシビス安息香酸、3,4'-オキシビス安息香酸、3,3'-オキシビス安息香酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)プロパン、2,2'-ジメチル-4,4'-ビフェニルジカルボン酸、3,3'-ジメチル-4,4'-ビフェニルジカルボン酸、2,2'-ジメチル-3,3'-ビフェニルジカルボン酸、9,9-ビス(4-(4-カルボキシフェノキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(3-カルボキシフェノキシ)フェニル)フルオレン、4,4'-ビス(4-カルボキシフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(3-カルボキシフェノキシ)ビフェニル、3,4'-ビス(4-カルボキシフェノキシ)ビフェニル、3,4'-ビス(3-カルボキシフェノキシ)ビフェニル、3,3'-ビス(4-カルボキシフェノキシ)ビフェニル、3,3'-ビス(3―カルボキシフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-p-ターフェニル、4,4'-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-m-ターフェニル、3,4'-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-p-ターフェニル、3,3'-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-p-ターフェニル、3,4'-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-m-ターフェニル、3,3'-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-m-ターフェニル、4,4'-ビス(3-カルボキシフェノキシ)-p-ターフェニル、4,4'-ビス(3-カルボキシフェノキシ)-m-ターフェニル、3,4'-ビス(3-カルボキシフェノキシ)-p-ターフェニル、3,3'-ビス(3-カルボキシフェノキシ)-p-ターフェニル、3,4'-ビス(3-カルボキシフェノキシ)-m-ターフェニル、3,3'-ビス(3-カルボキシフェノキシ)-m-ターフェニル、1,1-シクロブタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4,4'-ベンゾフェノンジカルボン酸、1,3-フェニレン二酢酸、1,4-フェニレン二酢酸等、および、5-アミノイソフタル酸誘導体(一例として国際公開第2005/068535号に記載のもの)から選択される少なくとも一つを含んでよい。
【0044】
ポリイミド前駆体を含む樹脂組成物は、ポリイミド前駆体単独でもよいし、ポリイミド前駆体に加え添加剤を含んでもよい。添加剤は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、カップリング剤、フィラー(無機粒子および/または有機粒子)、染料、顔料、プライマー、難燃材、レベリング剤、剥離剤、および、溶媒から選択される少なくとも一つを含んでよい。
【0045】
カップリング剤はアルコキシシラン化合物であってよい。アルコキシシラン化合物としては、例えば、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラ、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ-アミノプロピルトリブトキシシラン、γ-アミノエチルトリエトキシシラン、γ-アミノエチルトリプロポキシシラン、γ-アミノエチルトリブトキシシラン、γ-アミノブチルトリエトキシシラン、γ-アミノブチルトリメトキシシラン、γ-アミノブチルトリプロポキシシラン、γ-アミノブチルトリブトキシシラン、フェニルシラントリオール、トリメトキシフェニルシラン、トリメトキシ(p-トリル)シラン、ジフェニルシランジオール、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジメトキシジ-p-トリルシラン、トリフェニルシラノール、および、下記構造式のそれぞれで表されるアルコキシシラン化合物等を挙げることができる。アルコキシシラン化合物は、これらから選択される少なくとも1種を含んでよい。
【0046】
【化3】
【0047】
溶媒としては、酸二無水物成分およびジアミン成分、並びに生じたポリイミド前駆体またはポリイミドを溶解することができ、高分子量の重合体が得られる溶媒であれば特に制限はされない。このような溶媒の具体例としては、例えば、非プロトン性溶媒、フェノール系溶媒、エーテルおよびグリコール系溶媒等が挙げられる。
【0048】
これらの具体例としては、非プロトン性溶媒として、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-メチルカプロラクタム、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチル尿素、下記一般式(3)等のアミド系溶媒(但し、式中、R12はメチル基で表されるエクアミドM100(商品名:出光興産社製)、または、R12=n-ブチル基で表されるエクアミドB100(商品名:出光興産社製));γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等のラクトン系溶媒;ヘキサメチルホスホリックアミド、ヘキサメチルホスフィントリアミド等の含リン系アミド系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ピコリン、ピリジン等の3級アミン系溶媒;酢酸(2-メトキシ-1-メチルエチル)等のエステル系溶媒等が挙げられる。
【0049】
【化4】
【0050】
フェノ-ル系溶媒としては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール等が挙げられる。
【0051】
エーテルおよびグリコール系溶媒としては、例えば、1,2-ジメトキシエタン、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン、ビス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]エーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
これらの溶媒は、単独でまたは2種類以上混合して用いてもよい。
【0052】
[3.特性データ]
特性データで示される特性は、ポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物の特性または、当該樹脂組成物を加熱して得られるポリイミド樹脂膜の特性の少なくとも1つを含んでよい。
【0053】
[3-1.樹脂組成物の特性]
ポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物の特性は、樹脂組成物の粘度、粘度安定性、固形分含有量、パーティクル数、水分量、ならびに、樹脂組成物に含まれるポリイミド前駆体またはポリイミドの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)から選択される少なくとも一つであってよい。
粘度は、E型(コーンプレート型)粘度計で測定した樹脂組成物の粘度であってよい。
粘度安定性は、樹脂組成物の初期粘度に対し、一定期間、樹脂組成物を室温で放置したのちの粘度の変化率であってよい。
【0054】
固形分含有量における固形分とは、樹脂組成物中の溶媒以外の全成分であり、液状のモノマー成分も非溶媒成分の質量に含まれる。樹脂組成物が溶媒とポリイミド前駆体のみを含有する場合、ポリイミド前駆体が固形分に該当し、固形分含有量は、ポリイミド前駆体の質量であってもよいし、ポリイミド前駆体に含まれる全てのモノマーの質量の総量であってもよい。固形分含有量は、樹脂組成物をガスクロマトグラフィー分析することにより溶媒の質量を求め、樹脂組成物の質量から溶媒の質量を差し引くことから求めたものであってよい。固形分含有量は、樹脂組成物を加熱し、溶媒を揮発除去し、溶媒の質量を求め、樹脂組成物の質量から溶媒の質量を差し引くことから求めたものであってもよい。
【0055】
パーティクル数は、特定容積の樹脂組成物に含まれる粒径1μm以上の微粒子の個数であってよい。パーティクル数は、パーティクルカウンタにより測定される値であってよい。
水分量は、カールフィッシャー水分計で測定した樹脂組成物に含有される水分量であってよい。
ポリイミド前駆体またはポリイミドの重量平均分子量(Mw)、および、数平均分子量(Mn)は、下記の条件で測定されるものであってよい。
【0056】
溶媒:NMP(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用、測定直前に24.8mmol/Lの臭化リチウム一水和物(和光純薬工業社製、純度99.5%)および63.2mmol/Lのリン酸(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を加えて溶解したもの)
重量平均分子量を算出するための検量線:スタンダードポリスチレン(東ソー社製)を用いて作製したもの
カラム:Shodex KD-806M(昭和電工社製)
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
ポンプ:PU-2080Plus(JASCO社製)
検出器:RI-2031Plus(RI:示差屈折計、JASCO社製)およびUV-2075Plus(UV-VIS:紫外可視吸光計、JASCO社製)
【0057】
[3-2.ポリイミド樹脂膜の特性]
ポリイミド樹脂膜の特性としては、樹脂組成物を加熱して得られるポリイミド樹脂膜(ポリイミドフィルム)の残留応力、熱分解温度、熱分解量、ガラス転移温度、熱線膨張率、引張伸度、引張強度、ヤング率、膜厚均一性、ピール強度、吸水率、耐薬品性、レーザー照射後剥離性、空隙率、静的耐屈曲性、動的耐屈曲性、硬度、厚さ方向リタデーション(Rth)、面内リタデーション(R0)、面内屈折率(Nx、Ny)、厚さ方向屈折率(Nz)、複屈折(Δn)、Pa、Pb(面内配向度)、YI(黄色度)、HAZE、透過率、および、色度から選択される少なくとも一つであってよい。
【0058】
残留応力は、ポリイミドフィルムが上面に形成されたシリコンウェハーの反り量を残留応力測定装置(一例としてテンコール社製、型式名FLX-2320)で測定して得られる、シリコンウェハーと樹脂膜の間に生じた残留応力であってよい。シリコンウェハーは、厚み625μm±25μmの6インチシリコンウェハであってよく、残留応力測定装置によって予め「反り量」が測定されてよい。ポリイミドフィルムは、シリコンウェハー上に樹脂組成物をバーコーターにより塗布し、加熱し、溶媒除去し、その後、縦型キュア炉(光洋リンドバーグ社製、型式名VF-2000B)を用いて400℃において60分間の加熱硬化処理(キュア処理)を施して形成されてよく、硬化後の膜厚が15μmであってよい。残留応力は、空気中で測定してもよいし、窒素雰囲気中で測定してもよい。
【0059】
熱分解温度は、5%質量減少温度であってよい。熱分解温度は、ポリイミド樹脂を窒素中、昇温速度10℃/分の条件で加熱して熱質量分析測定を行い、熱分解温度を測定して得られるものであってよい。
【0060】
熱分解量は、ポリイミドフィルムを窒素中、380℃、1hrの条件で加熱して熱質量分析測定を行って得られる、熱分解された量(割合)であってよい。
【0061】
ガラス転移温度(Tg)は、一例として島津製作所社製の熱分析装置(TMA-50)を用いて25~500℃の温度範囲で、昇温速度5℃/分、荷重5g/mm、引張りモードの測定条件でTMA(Thermomechanical Analysis)測定し、得られた温度-試験片伸び曲線の変曲点から得られるガラス転移温度(Tg)であってよい。
【0062】
熱線膨張率(CTE)は、一例として島津製作所社製の熱分析装置(TMA-50)を用いて25~500℃の温度範囲で、昇温速度5℃/分、荷重5g/mm、引張りモードの測定条件でTMA測定し、ポリイミドフィルムの伸び量から得られる熱膨張率(ppm/K)であってよい。
【0063】
ポリイミドフィルムの引張伸度、引張強度およびヤング率は下記の条件で測定されるものであってよい。
ポリイミドフィルムを短冊状に裁断して試料とし、テンシロンRTA(オリエンテック社製)を用いて、温度23℃、相対湿度50%において測定を行う。引張速度は300mm/分であってよい。試験を開始してから荷重が1Nを通過した点を伸びの原点としてよい。引張伸度は、降伏点伸度、破断点伸度であってよく、引張強度は、降伏点強度、破断点強度であってよい。
【0064】
膜厚均一性は、ポリイミドフィルムの膜厚を、5cm間隔で測定し、算出される標準偏差を基準としたものであってよい。
【0065】
ピール強度は、ガラス基板上にポリイミドフィルムを形成したサンプルを用いJISK6854-1の90度剥離法に従って測定される、ガラス基板とポリイミドフィルムとの剥離強度であってよい。ピール強度は、下記の条件で測定されるものであってよい。
装置名:STA-1225(株式会社エー・アンド・デイ社製)
測定温度:室温
剥離速度:100mm/min
雰囲気:大気
測定サンプル幅:10mm
【0066】
吸水率は、ASTM D570に準じて、ポリイミドフィルムを150℃の温度で30分間乾燥させたときの重量(A)と、その後にポリイミドフィルムを純水に24時間浸漬して取り出したときの重量(B)とを用いて次式で算出される吸水率であってよい。
吸水率(%)=[(B-A)/A]×100
【0067】
耐薬品性は、下記方法で評価されるものであってよい。すなわち、ポリイミドフィルムを、ディスプレイ製造プロセスにおいてポリイミドフィルムが触れる可能性がある薬品に浸漬し(加温してもよい)、水洗後、さらにオーブン中で乾燥させる。この処理前後の膜厚を触針式膜厚測定機(アルファステップ社IQ、KLAテンコール社)で測定し、残膜率(=処理後膜厚/処理前膜厚×100)を算出して耐薬品性とする。
【0068】
レーザー照射後剥離性(レーザーリフトオフ;LLOともいう)は、下記方法で評価されるものであってよい。すなわち、ポリイミドとガラス基板との積層体にエキシマレーザー加工機(波長308nm)を用いてビームサイズ14mm×1.2mm、移動速度6mm/sのレーザーをガラス基板側から照射し、ガラス基板とポリイミドの剥離性を評価する。一例として、カッターで剥離範囲を決め、切り口を環状に1周設けた場合にポリイミドフィルムがガラスから自然剥離した場合は、評価を良好とする。ポリイミドの全面若しくは一部で剥離しない場合や、ポリイミドが変色した場合は評価を不良とする。
【0069】
空隙率は、下記方法で評価されるものであってよい。すなわち、ポリイミドフィルムをエポキシ樹脂に包埋し、ミクロトーム(LEICA EM UC6)を用いて作製した超薄切片を検鏡用試料とする。透過型電子顕微鏡(日立製作所製:S-5500)を用いて、加速電圧30kVにて、SEMおよびSTEMモードにてフィルム断面方向からの観察を行う。STEM画像により観察した空隙構造の状態から、画像処理ソフトを使用して空隙率の平均値を算出する。
【0070】
静的耐屈曲性は、下記方法で評価されるものであってよい。すなわち、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気において下記の条件でポリイミドフィルムの試料を準備し静置する。
【0071】
試料寸法:幅25mm、長さ20mm
試料準備:無荷重で試料を24時間静置
試料静置:試料の長さ方向10mmの位置が屈曲中心となり、屈曲部の曲率半径が1mmとなるように、試料を180度、長さ方向に折り畳み、24時間静置
評価方法:静置後に除荷し、試料の一方の端面をテープで水平面に固定した状態で他方の端面の水平面からの距離、つまりポリイミドフィルムの反り高さ(mm)を計測し、静的耐屈曲性とする。
【0072】
動的耐屈曲性は、JIS-K5600-5-1(1999)に準拠したマンドレルを用いて、温度23℃および-20℃において、下記条件の試験を行い、試験後に変色や、ヒビ、裂け、破断の発生が確認されなかった場合に動的耐屈曲性を良好と評価する。
試料寸法:短辺50mm×長辺100mm
試料設置:長辺方向50mmの位置が折り畳み線(円筒接触部)となるよう設置
円筒寸法:直径2mm
折り畳み回数:100万回
折り畳み速度:1Hz
【0073】
硬度は、JIS-K5600-5-4(1999)に準拠して、温度23℃、湿度65%RH、荷重750gにおいて、下記の装置を用いて測定される、ポリイミドフィルム表面の硬度(鉛筆硬度)であってよい。
【0074】
厚さ方向リタデーション(Rth)、面内リタデーション(R0)、面内屈折率(Nx、Ny)、厚さ方向屈折率(Nz)、および、複屈折(Δn)は、ポリイミドフィルムについて王子計測機器(株)製の位相差等の測定装置「KOBURA 2100ADH」を用いて測定されるものであってよい。なお、Nx、Nyは、面内の直交する2つの屈折率(但しNx>Ny)であり、Nxを遅相軸、Nyを進相軸とも称する。また、Nzは、面に対して厚さ(垂直)方向の屈折率である。厚さ方向リタデーション(Rth)および面内リタデーション(R0)は以下の式にて算出される。但し、式中のdは膜厚、ΔNxyは面内の2つの屈折率の差(Nx-Ny)(複屈折)、ΔNxzは面内の屈折率Nxと厚さ方向の屈折率Nzの差(複屈折)、ΔNyzは面内の屈折率Nyと厚さ方向の屈折率Nzの差(複屈折)である。
R0=(Nx-Ny)×d=ΔNxy×d
Rth=[(Nx+Ny)/2-Nz]×d=[(ΔNxz×d)+(ΔNyz×d)/2
【0075】
Δnは、算出された厚さ方向リタデーション(Rth)の値を用い、以下の式にて算出される。
Δn=[Rth/d(フィルム膜厚)]/1000
【0076】
Pa、Pb(面内配向度)は、近赤外ラマン分光装置(フォトンデザイン社製)を用いて、ポリイミドフィルムの試料断面の表面側から深さ1μmの位置、および裏面側から深さ1μmの位置におけるラマン散乱強度を測定し、下式より算出される面内配向度であってよい。ただし、式中のI平行は試料の面内方向と一致する偏光配置でのラマン散乱強度、I垂直は試料の厚み方向と一致する偏光配置でのラマン散乱強度である。芳香族ポリアミドおよび芳香族ポリイミドにおけるラマン散乱強度は、芳香環のC=C伸縮モードに帰属される1610~1620cm-1におけるラマンバンドを用いてよい。また、面内配向度は、試料の長手方向断面とそれと直交する幅方向断面のそれぞれについて求めた平均値としてよい。
面内配向度=I平行/I垂直
【0077】
なお、測定条件は以下の通りであってよい。
装置:近赤外ラマン分光装置(フォトンデザイン社製)
測定モード:顕微ラマン
対物レンズ:100倍
ビーム径:1μm(中心を厚み方向1μmの位置に合わせる)
クロススリット:1mm
光源:YAGレーザー/1064nm
レーザーパワー:400mW
回折格子:Single300gr/mm
スリット:100μm
検出器:InGaAs(日本ローパ-社製)
【0078】
YI(黄色度)は、日本電色社製の色差計を用い、温度23℃、湿度50%RHにおいて、D65光源を用いてポリイミドフィルムを試料として測定されるものであってよい。複数回測定を行い、その平均値を採用してよい。
【0079】
HAZEは、ポリイミドフィルムを試料として下記の条件で測定されるものであってよい。複数回測定を行い、その平均値を採用してよい。
装置:濁度計NDH5000(日本電色工業社製)
光源:白色LED5V3W(定格)
受光素子:V(λ)フィルタ付Siフォトダイオード
測定光束:φ14mm(入射開口φ25mm)
光学条件:JIS-K7136(2000)に準拠
【0080】
透過率は、ポリイミドフィルムを試料としてSHIMADZU UV-3600分光光度計を用いて測定されるものであってよい。透過率は、複数の波長で測定されてよい。測定波長は308nmや、355nm、400nm、430nmでもよいし、425-525nmや、520-580nm、595-645nmのように幅をもってもよい。
【0081】
色度は、無アルカリガラス(ガラス厚み0.7mm)上に形成されたポリイミドフィルムの、XYZ表色系色度図における透過色度座標を、大塚電子(株)製、顕微分光光度計"MCPD-2000"を用いて測定されるものであってよい。
【0082】
なお、ポリイミドの特性は、樹脂組成物内のポリイミド前駆体の一部または全部が完全にイミド化された場合のポリイミドの特性であってよい。一例として、ポリイミドの特性は、ポリイミド前駆体を含む樹脂組成物に対し、以下のようなイミド化を行った場合の特性であってよい。
【0083】
[3-2-1.イミド化]
イミド化には加熱イミド化と化学イミド化があり、加熱イミド化は、真空または、不活性ガス雰囲気下で行うことが推奨される。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン等が挙げられる。加熱温度は、ポリイミド前駆体の種類、および樹脂組成物中の溶媒の種類に応じて適宜に設定されてよいが、250℃~550℃が好ましく、300~450℃がより好ましい。250℃以上であればイミド化が良好に進行し、550℃以下であれば得られるポリイミドフィルムの透明性の低下、耐熱性の悪化等の不都合を回避できる。加熱時間は、0.1~10時間程度とすることが好ましい。
【0084】
ポリイミド前駆体を溶媒存在下で、脱水縮合剤を用いて化学的にイミド化することにより、ポリイミドを得ることもできる。化学イミド化の際に使用する溶媒としては、ポリイミド前駆体を得る反応時に使用する溶媒と同様のものが挙げられる。
【0085】
脱水縮合剤としては、例えば、N,N-ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N-ジフェニルカルボジイミド等のN,N-2置換カルボジイミド;無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物;塩化チオニル、塩化トシル等の塩化物;アセチルクロライド、アセチルブロマイド、プロピオニルアイオダイド、アセチルフルオライド、プロピオニルクロライド、プロピオニルブロマイド、プロピオニルアイオダイド、プロピオニルフルオライド、イソブチリルクロライド、イソブチリルブロマイド、イソブチリルアイオダイド、イソブチリルフルオライド、n-ブチリルクロライド、n-ブチリルブロマイド、n-ブチリルアイオダイド、n-ブチリルフルオライド、モノ-,ジ-,トリ-クロロアセチルクロライド、モノ-,ジ-,トリ-ブロモアセチルクロライド、モノ-,ジ-,トリ-アイオドアセチルクロライド、モノ-,ジ-,トリ-フルオロアセチルクロライド、無水クロロ酢酸、フェニルホスフォニックジクロライド、チオニルクロライド、チオニルブロマイド、チオニルアイオダイド、チオニルフルオライド等のハロゲン化合物;三塩化リン、亜リン酸トリフェニル、および、ジエチルリン酸シアニド等のリン化合物;等が挙げられる。
【0086】
これらの中で、酸無水物およびハロゲン化合物が好ましく、特に、イミド化反応が効率よく進行し、且つ、イミド化率を制御したポリイミドを得ることができる傾向にある酸無水物がより好ましい。これらの化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率および組合せで用いてもよい。
【0087】
これらの脱水縮合剤の使用量は、ポリイミド前駆体1molに対して、通常0.1mol以上、好ましくは0.2mol以上であり、通常1.0mol以下、好ましくは0.9mol以下である。脱水縮合剤をこの範囲とすることで、イミド化率を制御することができる。
【0088】
化学イミド化反応時のポリイミド前駆体の濃度に特に制限はないが、通常1質量%以上、好ましくは5質量%以上であり、通常70質量%以下、好ましくは40質量%以下である。この範囲とすることで、イミド化率を制御でき、ポリイミドフィルムを容易かつ効率良く生産できる溶液粘度に樹脂組成物を製造することができる傾向にある。
【0089】
化学イミド化反応の温度は特に制限されないが、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、さらに好ましくは20℃以上であり、通常150℃以下、好ましくは130℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。この範囲で行うことで、イミド化反応が効率よく進行し、且つ、イミド化率を制御したポリイミドを得ることができる。さらに、化学イミド化反応以外の副反応が抑制される。
【0090】
反応時の圧力は常圧、加圧または減圧のいずれでもよい。雰囲気は、空気下でも不活性雰囲気下でもよい。
【0091】
[4.動作]
[4-1.モデルの学習処理]
図2は、モデル35の学習方法を示す。システム1は、ステップS11~S15の処理によりモデル35の学習を行う。
【0092】
ステップS11において制御部39は、ポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物を製造装置2に製造させる。ステップS11~S15の処理を複数回行う場合には、制御部39は、各回で樹脂組成物の組成を変化させて製造を行ってよい。
【0093】
ステップS13において組成取得部32および特性取得部33はそれぞれ、ステップS11の処理で製造した樹脂組成物の組成データおよび特性データを取得する。組成取得部32は組成データを、オペレータ、および、製造装置2の少なくとも1つから取得してもよいし、他の外部装置(図示せず)から取得してもよい。特性取得部33は特性データを、オペレータ、および、特性を計測するための計測装置(図示せず)の少なくとも1つから取得してもよいし、他の外部装置(図示せず)から取得してもよい。計測装置は製造装置2の外部に配置されてもよいし、内部に配置されてもよい。特性は樹脂組成物の複数の位置で取得されてよい。なお、ステップS13の処理のうち、組成データの取得処理は、ステップS11の処理前に行われてもよい。
【0094】
ステップS15において学習処理部34は、取得された組成データおよび特性データを含む学習データを用いてモデル35の学習処理を実行する。なお、モデル35は、本実施形態では一例としてリカレント型またはタイムディレイ型などのニューラルネットワークであるが、ランダムフォレスト、勾配ブースティング、ロジスティック回帰、および、サポートベクタマシン(SVM)などを含む他の機械学習アルゴリズムであってもよい。例えば、モデル35は、学習データの各要素に対応するノードを入力層に含み、推奨する組成の各原材料に対応するノードを出力層に含んでよい。学習データの1つの要素に対する入力層のノードは1つでもよいし複数でもよい。入力層および出力層の間には、1または複数のノードを含む中間層(隠れ層)が介在してよい。学習処理部34は、ノード間をつなぐエッジの重み、および、出力ノードのバイアス値を調整することで学習処理を実行してよい。
[4-2.モデルの運用処理]
図3は、モデル35を用いた、ポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物の製造方法を示す。システム1は、ステップS21~S27の処理により樹脂組成物を製造する。
【0095】
ステップS21において目標特性取得部36は、ポリイミドを生成し得る樹脂組成物の目標とする目標特性データを取得する。目標特性データは、少なくとも1つの特性について、当該特性の目標範囲を含んでよい。目標範囲は上限値および下限値の少なくとも一方により規定されてよい。
【0096】
ステップS23において目標特性供給部37は、取得された目標特性データをモデル35に供給する。
【0097】
ステップS25において推奨組成取得部38は、目標特性データをモデル35に供給したことに応じてモデル35が出力する推奨組成データを取得する。推奨組成取得部38は、目標特性データにバギング(ブートストラップアグリゲーティングとも称する)を行って一部の目標特性のみをサンプリングした部分的な目標特性データを複数生成してよい。推奨組成取得部38は、複数の部分的な目標特性データをそれぞれモデル35に供給して推奨組成データを複数取得してよい。推奨組成取得部38は、取得した複数の推奨組成データをまとめることで、目標特性データにおける全ての特性の目標を達成し得る組成を示す推奨組成データと、少なくとも一部の特性についての目標の達成確率との組を取得してよい。目標の達成確率は、全ての特性の達成確率を相乗した値であってよく、一例として、全ての特性の達成確率を、各特性の重み係数で重み付けして相乗した値であってよい。推奨組成取得部38は、特性の目標範囲を含む目標特性データを用いることにより、推奨組成データと、少なくとも1つの特性値の確率分布との組を取得してよい。
【0098】
また、推奨組成取得部38は、遺伝的アルゴリズムを用いてモデル35を繰り返し用いて推奨組成データを取得してよい。例えば、推奨組成取得部38は、目標特性データ(または部分的な目標特性データ)をモデル35に供給して複数の推奨組成データを取得した後、これらの推奨組成データに対して選択、交叉、および突然変異の何れかを行って、次世代の複数の推奨組成データを生成してよい。交叉とは、一例として、2つの推奨組成データの間で少なくとも一部の原材料の含有割合を入れ替えることであってよい。突然変異とは、推奨組成データの少なくとも一部の原材料の含有割合を変更することであってよい。推奨組成取得部38は、生成した次世代の推奨組成データをモデル35に供給して複数の特性データを取得し、モデル35に供給した複数の推奨組成データのうち、全ての特性が目標を満たす推奨組成データを抽出してよい。以降、推奨組成取得部38は、抽出した推奨組成データに選択、交叉、および突然変異の何れかを行って次世代の複数の推奨組成データを生成し、それらの推奨組成データのうち特性データが目標を満たす推奨組成データを抽出する処理を繰り返すことで、目標の達成確率が基準確率を超える推奨組成データを取得してよい。
【0099】
ステップS27において制御部39は、製造装置2に推奨組成データを供給することで、推奨組成データが示す組成で、ポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物を製造させる。制御部39は、推奨組成取得部38から複数の推奨組成データを取得した場合には、これらの推奨組成データを表示し、オペレータによって選択される何れか1つの推奨組成データを製造装置2に供給してよい。この場合、制御部39は、取得した複数の推奨組成データを、目標の達成確率が高い順に表示してよい。また、何れか1つの特性をオペレータが選択した場合には、制御部39は、当該特性の目標の達成確率が高い順に複数の推奨組成データを表示してよい。
【0100】
製造装置2では、学習処理装置1から取得した推奨組成データに基づいて製造対象のポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物の組成を決定し、決定した組成に対応する原材料(成分)を混合して樹脂組成物を製造してよい。一例としてポリイミド、ポリイミド前駆体および/またはポリイミド前駆体の材料ポリマーを含む樹脂組成物の成分には他の成分を溶解する溶媒、または、他の成分を分散させる分散媒が含まれてよく、製造装置2の混合部20は各成分を混合して樹脂組成物を調整してよい。樹脂組成物にポリイミドが含まれる場合には、当該ポリイミドは化学イミド化されたものであってよい。また、製造装置2では、樹脂組成物がポリイミド前駆体またはポリイミドを含む場合、混合された樹脂組成物の流体をベースフィルム上に塗布してよい。製造装置2は、樹脂組成物の塗布後に、その溶媒,分散媒を乾燥により除去してよい。これにより、ベースフィルムと、フィルム状の樹脂組成物との積層体が製造される。製造装置2は、樹脂組成物を保護するためのカバーフィルムを樹脂組成物上に設けて、樹脂積層体を製造してよい。なお、推奨組成データに基づく組成の決定、成分の混合、および積層体の製造の少なくとも1つは製造装置2を用いずにオペレータが行ってもよい。また、樹脂組成物の製造後には上述のステップS1~S15の処理によりモデル35の再学習が行われてもよい。
【0101】
[5.ポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物の使用方法]
[5-1.ポリイミド樹脂膜の製造方法]
図4は、ポリイミド樹脂膜の製造方法を示す。
【0102】
本実施の形態に係るポリイミド樹脂膜(ポリイミドフィルム)の製造方法は、図3を用いて説明した製造方法により製造された樹脂組成物を支持体に塗布する段階(ステップS31。塗布工程とも称する)と、樹脂組成物に含まれるポリイミド前駆体をイミド化または、樹脂組成物に含まれる溶媒を除去して、ポリイミド樹脂膜を形成する段階(ステップS33。膜形成工程とも称する)と、ポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する段階(ステップS35。剥離工程とも称する)と、を含む。なお、樹脂組成物にポリイミド前駆体の材料モノマーが含まれる場合には、ポリイミドフィルムの製造方法は、塗布工程の前に、当該材料モノマーからポリイミド前駆体を生成する段階をさらに含んでもよい。
【0103】
(塗布工程)
塗布工程では、支持体の表面上に樹脂組成物等を塗布する。これにより、支持体上にポリイミド前駆体またはポリイミドを含有する塗膜が形成される。
【0104】
支持体は、後の膜形成工程(加熱工程)の加熱温度における耐熱性を有し、更に、剥離工程における剥離性が良好であれば、特に限定されない。例えば、支持体としては、ガラス(例えば、無アルカリガラス)基板、シリコンウェハー、樹脂基板、金属基板などが用いられる。樹脂基板は、PET(ポリエチレンテレフタレート)、OPP(延伸ポリプロピレン)、ポリエチレングリコールテレフタレート、ポリエチレングリコールナフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、または、ポリフェニレンスルフィド等で形成されてよい。金属基板は、ステンレス、アルミナ、銅、ニッケル等の金属製であってよい。
【0105】
薄膜状のポリイミド成形体を形成する場合には、支持体としては例えば、ガラス基板、シリコンウェハー等が好ましい。厚膜状のフィルム状またはシート状のポリイミド成形体を形成する場合には、支持体としては例えば、PET(ポリエチレンテレフタラート)、OPP(延伸ポリプロピレン)等の基板が好ましい。
【0106】
塗布方法としては、一般には、ドクターブレードナイフコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ロータリーコーター、フローコーター、ダイコーター、バーコーター等の塗布方法を用いてもよいし、スピンコート、スプレイコート、ディップコート等の塗布方法を用いてもよいし、スクリーン印刷およびグラビア印刷等に代表される印刷技術等を用いてもよい。但し、本実施の形態に係る樹脂組成物は、特に、スリットコートでの塗布に有用である。塗布厚は、所望の樹脂フィルムの厚さと樹脂組成物中のポリイミド前駆体等の含有量に応じて適宜調整されるべきものであるが、好ましくは1~1,000μm程度である。塗布工程は、室温の樹脂組成物で行ってもよいし、粘度を下げて作業性をよくする目的で、例えば40~80℃の範囲に加温した樹脂組成物で行ってもよい。
【0107】
(任意の乾燥工程)
塗布工程の後には、樹脂組成物中の有機溶媒を除去する乾燥工程を任意で行ってよい。乾燥工程には、例えば、ホットプレート、箱型乾燥機、コンベヤー型乾燥機等の適宜の装置を利用することができる。乾燥工程は、80~200℃で行うことが好ましく、100~150℃で行うことがより好ましい。乾燥工程の実施時間は、1分~10時間とすることが好ましく、3分~1時間とすることがより好ましい。
【0108】
(膜形成工程)
膜形成工程では、塗膜内に残留した有機溶媒の除去を行うとともに、塗膜内のポリイミド前駆体のイミド化反応(脱水・環化反応とも称する)を進行させ、ポリイミド樹脂膜を得てよい。本実施形態では一例として、ポリイミド前駆体を含む樹脂組成物を加熱することでイミド化が行われるが、イミド化剤を添加することによってイミド化が行われてもよい。この場合には、イミド化剤の添加は塗布工程の前に行われてよい。膜形成工程が加熱によって行われる場合には、例えば、イナートガスオーブン、ホットプレート、箱型乾燥機、コンベヤー型乾燥機、マイクロ波の発生装置などの装置を用いることができる。塗布工程後に乾燥工程を行う場合には、膜形成工程は乾燥工程と同時に行ってもよいし、乾燥工程後に逐次的に行ってもよい。
【0109】
膜形成工程は、空気雰囲気下で行ってもよいが、安全性と、得られるポリイミドフィルムの良好な透明性、低い厚み方向レタデーション(Rth)および低い黄色度(YI)を得る観点から、不活性ガス雰囲気下で行うことが推奨される。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン等が挙げられる。加熱温度は、ポリイミド前駆体の種類、および樹脂組成物中の溶媒の種類に応じて適宜に設定されてよいが、250℃~550℃が好ましく、300~450℃がより好ましい。250℃以上であれば加熱イミド化が良好に進行し、550℃以下であれば得られるポリイミドフィルムの透明性の低下、耐熱性の悪化等の不都合を回避できる。加熱時間は、0.1~10時間程度とすることが好ましい。
【0110】
本実施の形態では、上記の膜形成工程(加熱イミド化)における周囲雰囲気の酸素濃度は、得られるポリイミドフィルムの透明性および黄色度(YI)値の観点から、2,000質量ppm以下が好ましく、100質量ppm以下がより好ましく、10質量ppm以下が更に好ましい。酸素濃度が2,000質量ppm以下の雰囲気中で加熱を行うことにより、得られるポリイミドフィルムの黄色度(YI)値を30以下にすることができる。
【0111】
(剥離工程)
剥離工程では、支持体上のポリイミド樹脂膜を、例えば室温~50℃程度まで冷却した後に、支持体からポリイミド樹脂膜を剥離する。剥離の手法としては、例えば下記の(1)~(4)が挙げられる。
【0112】
(1)上述の工程によりポリイミド樹脂膜および支持体を含む積層体を作製した後、積層体の支持体側からレーザーを照射して、支持体とポリイミド樹脂膜との界面をアブレーション加工することにより、ポリイミド樹脂を剥離する。レーザーの種類としては、固体(YAG)レーザー、ガス(UVエキシマー)レーザー等が挙げられる。波長308nm等のスペクトルを用いることが好ましい。このような手法としては、例えば特表2007-512568号公報や、特表2012‐511173号公報等に記載の手法を用いることができる。
【0113】
(2)塗布工程の前に、予め支持体に剥離層を形成しておき、その後、上述の工程によりポリイミド樹脂膜、剥離層および支持体を含む積層体を得て、剥離層、ひいては支持体からポリイミド樹脂膜を剥離する。剥離層は、パリレン(登録商標、日本パリレン合同会社製)や、酸化タングステンを用いてもよいし、植物油系や、シリコーン系、フッ素系、アルキッド系等の離型剤を用いてもよい。このような手法としては、例えば特開2010-67957号公報や、特開2013-179306号公報等に記載の手法を用いることができる。なお、この(2)の手法と、上述の(1)の手法とを併用して剥離工程を行ってもよい。
【0114】
(3)支持体としてエッチング可能な金属基板を用いて、上述の工程によりポリイミド樹脂膜および支持体を含む積層体を得た後、エッチャントで金属をエッチングすることにより、ポリイミド樹脂フィルムを得る。金属としては、例えば、銅(具体例としては、三井金属鉱業株式会社製の電解銅箔「DFF」)、アルミニウム等を使用することができる。エッチャントとしては、銅に対しては塩化第二鉄等を、アルミニウムに対しては希塩酸等を使用することができる。
【0115】
(4)上述の工程によりポリイミド樹脂膜および支持体を含む積層体を得た後、ポリイミド樹脂膜表面に粘着フィルムを貼り付けて、支持体から粘着フィルムごとポリイミド樹脂膜を分離し、その後粘着フィルムからポリイミド樹脂膜を分離する。
【0116】
これら(1)~(4)の手法の中でも、得られるポリイミド樹脂フィルムの表裏の屈折率差、黄色度(YI)値、および伸度の観点から、(1)または(2)の手法が適切であり、得られるポリイミド樹脂フィルムの表裏の屈折率差の観点から(1)の手法がより適切である。
なお、(3)の手法において支持体として銅を用いた場合は、得られるポリイミド樹脂フィルムの黄色度(YI)値が大きくなり、伸度が小さくなる傾向が見られる。これは、銅イオンの影響であると考えられる。
【0117】
上記の方法によって得られるポリイミドフィルムの厚さは、特に限定されないが、1~200μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは5~100μmである。
【0118】
[5-2.ポリイミドフィルムの用途]
本実施の形態に係るポリイミド前駆体から得られるポリイミドフィルムは、例えば、半導体絶縁膜、TFT-LCD絶縁膜、電極保護膜等として適用できる他、フレキシブルデバイスにおいて、特にTFT基板やカラーフィルター基板、タッチパネル基板、カバーウィンドウとして好適に利用することができる。ここで、本実施の形態に係るポリイミドフィルムを適用可能なフレキシブルデバイスとしては、例えば、フレキシブルディスプレイ用TFTデバイス、フレキシブル太陽電池、フレキシブルタッチパネル、フレキシブル照明、フレキシブルバッテリー、フレキシブルプリント基板、フレキシブルカラーフィルター、スマートフォン向け表面カバーレンズ等を挙げることができる。
【0119】
ポリイミドフィルムを使ったフレキシブル基板上にTFTを形成する工程は、典型的には、150~650℃の広い範囲の温度で実施される。具体的にはアモルファスシリコンを使用したTFTデバイスを作製する場合には、一般的に250℃~350℃のプロセス温度が必要となり、本実施の形態に係るポリイミドフィルムはその温度に耐えるべく、プロセス温度以上のガラス転移温度、熱分解開始温度を有する必要がある。
【0120】
金属酸化物半導体(IGZO等)を使用したTFTデバイスを作製する場合には、一般的に320℃~400℃のプロセス温度が必要となり、本実施の形態に係るポリイミドフィルムはその温度に耐えるべく、TFT作製プロセスの最高温度以上のガラス転移温度、熱分解開始温度を有する必要がある。
【0121】
低温ポリシリコン(LTPS)を使用したTFTデバイスを作製する場合には、一般的に380℃~520℃のプロセス温度が必要となり、本実施の形態に係るポリイミドフィルムはその温度に耐えるべく、TFT作製プロセスの最高温度以上のガラス転移温度、熱分解開始温度を有する必要がある。
【0122】
一般に、ポリイミドフィルムの光学特性(特に、光線透過率、レタデーション特性および黄色度)は高温プロセスにさらされるほどに低下する傾向にある。しかし、本実施の形態に係るポリイミド前駆体から得られるポリイミドは、上述のようなデバイス作製による熱履歴を経ても良好な光学特性を有する。
【0123】
[5-3.デバイスの製造方法]
本実施の形態に係るデバイス(一例としてフレキシブルデバイス)の製造方法は、積層体を製造する段階を含む。積層体は、ポリイミド樹脂膜と、ポリイミド樹脂膜上に形成された素子とを有してよい。積層体は、ポリイミド樹脂膜を支持する支持体をさらに有してよい。積層体における素子としては、フレキシブルデバイスとして上述したもの(フレキシブルディスプレイ用TFTデバイスや、フレキシブル太陽電池など)が挙げられる。支持体は例えばガラス基板であってよい。
【0124】
図5は、積層体の製造方法を示す。 本実施の形態に係る積層体の製造方法は、図3を用いて説明した製造方法により製造された樹脂組成物を支持体に塗布する塗布工程(ステップS41)と、樹脂組成物に含まれるポリイミド前駆体をイミド化してポリイミド樹脂膜を形成する、または、樹脂組成物に含まれる溶媒を揮発、除去してポリイミド樹脂膜を形成する膜形成工程(ステップS43)と、ポリイミド樹脂膜上に素子を形成する素子形成工程(ステップS45)と、を含む。製法方法は、素子が形成されたポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する剥離工程(ステップS47)をさらに含んでよい。なお、ステップS41の塗布工程、ステップS43の膜形成工程、および、ステップS47の剥離工程は、上述のステップS31の塗布工程、ステップS33の膜形成工程、および、ステップS35の剥離工程と同様であってよい。ステップS45の素子形成工程においては、従来より公知の手法により、フレキシブル基板としてのポリイミド樹脂膜の上に素子を形成してよい。
【0125】
[5-3-1.具体例]
続いて、上述の積層体と、その製造方法の具体例について説明する。
【0126】
[5-3-1(1).ディスプレイの構造]
図6は、本実施の形態に係るディスプレイに含まれる積層体25を示す図。積層体25は、トップエミッション型のフレキシブル有機ELディスプレイのうち、ポリイミド樹脂膜201よりも上部側(視認側)の部分であってよい。
【0127】
この積層体25においては、例えば、赤色光を発光する有機EL素子250a、緑色光を発光する有機EL素子250bおよび青色光を発光する有機EL素子250cが1単位としてマトリクス状に配列されており、隔壁(バンク)251により、各有機EL素子の発光領域が画定されている。各有機EL素子250a~250cは、下部電極(陽極)252、正孔輸送層253、発光層254、および、上部電極(陰極)255から構成される。また、積層体25は、ポリイミド樹脂膜201上に窒化ケイ素(SiN)や酸化ケイ素(SiO)からなるCVD複層膜(マルチバリヤーレイヤー)である下部層(ガスバリア層2aとも称する)を備える。ガスバリア層2aと、各有機EL素子250a~250cとの間には、有機EL素子を駆動するためのTFT(Thin Film Transistor)256、コンタクトホール257を備えた層間絶縁膜258、および下部電極259が複数設けられる。各有機EL素子250a~250cは封止基板2bで封入されており、各有機EL素子250a~250cと封止基板2bとの間には中空部261が形成される。
【0128】
[5-3-1(2).ディスプレイの製造方法]
図7は、有機ELディスプレイの製造方法を示す概念図である。有機ELディスプレイの製造方法は、図3を用いて説明した製造方法により製造された樹脂組成物を支持体(一例としてガラス基板200)に塗布する塗布工程と、樹脂組成物に含まれるポリイミド前駆体をイミド化または溶媒を除去してポリイミド樹脂膜201を形成する膜形成工程と、ポリイミド樹脂膜201の上部に素子(一例として有機EL素子250a~250cおよび/またはTFT256)を形成する素子形成工程と、素子が形成されたポリイミド樹脂膜201をガラス基板200から剥離する剥離工程とを含む。ディスプレイの製造方法は、素子形成工程の前にポリイミド樹脂膜201の表面にガスバリア層2aを設けるバリア層形成工程をさらに含んでよい。
【0129】
塗布工程では、ワニス状の樹脂組成物の層、つまりワニス層201aをガラス基板200の上面に設けてよい。これにより、膜形成工程ではワニス層201aがポリイミド樹脂膜201となる。ワニス層201aの厚さは、一例として20μmであってよい。
【0130】
膜形成工程では、一例としてワニス層201aを1時間、400℃に加熱してポリイミド前駆体をイミド化し、ポリイミド樹脂膜201を形成してよい。ポリイミド樹脂膜201の厚さは、一例として10μmであってよい。
【0131】
バリア層形成工程では、ポリイミド樹脂膜201の上部にCVD法やスパッタ法により窒化ケイ素(SiN)と酸化ケイ素(SiO)の複層構造からなるマルチバリアレイヤー(図6中の下部層2a)をガスバリア層2aとして形成してよい。ガスバリア層2aの形成は、一例として350℃の環境下で10分間行われてよい。
【0132】
素子形成工程では、ガスバリア層2aの上部にTFT256を駆動するためのメタル配線層を、フォトレジスト等を使用して作製し、その上部にCVD法を用いてSiO等のアクティブバッファー層を作製し、その上部に金属酸化物半導体(IGZO)や低温ポリシリコン(LTPS)などのTFT256を作製してよい。TFTの作製は、一例として250~380℃の環境下で10分未満で行われてよい。TFT256の作製後には、上述の図6に示すように、感光性アクリル樹脂等でコンタクトホール257を備えた層間絶縁膜258を形成し、スパッタ法等にてITO膜を成膜し、TFT256と対をなすように下部電極259を形成してよい。次に、感光性ポリイミド等で隔壁(バンク)251を形成した後、隔壁で区画された各空間内に、正孔輸送層253、発光層254を形成してよい。また、発光層254および隔壁(バンク)251を覆うように上部電極(陰極)255を形成してよい。その後、ファインメタルマスク等をマスクにして、赤色光を発光する有機EL材料(図6中の、赤色光を発光する有機EL素子250aに対応)、緑色光を発光する有機EL材料(図6中の、緑色光を発光する有機EL素子250bに対応)および青色光を発光する有機EL材料(図6中の、青色光を発光する有機EL素子250cに対応)を公知の方法にて蒸着することで、有機EL素子250a~250cを作製し、封止フィルム等(図6中の封止基板2b)で封止してよい。
【0133】
剥離工程では、ガラス基板200から当該ガラス基板200より上側の部分を公知の手法(一例として上述の(1)~(4)の手法)で剥離してガラス基板200を除去してよい。
【0134】
以上の工程により、トップエミッションタイプの有機ELディスプレイが作製される。但し、作製される有機ELディスプレイはボトムエミッションタイプであってもよい。
【0135】
なお、本実施の形態に係るポリイミドフィルムは、液晶ディスプレイに用いられてもよい。
液晶ディスプレイを製造する場合には、図3を用いて説明した製造方法により製造された樹脂組成物をガラス基板200などの支持体上に塗布してポリイミドフィルムを作製し、有機ELディスプレイでの素子形成工程と同様にして、TFT素子を形成してよい。
【0136】
同様にして、別のガラス基板上に樹脂組成物を塗布してポリイミドフィルムを作製し、公知の方法に従ってカラーレジスト等を使用して、ポリイミドフィルムを備えたカラーフィルターガラス基板(CF基板)を作製してよい。そして、TFT素子を形成した基板(TFT基板とも称する)と、CF基板とのうち一方の基板に、熱硬化性エポキシ樹脂などからなるシール材料を枠状パターンに塗布してよい。枠状パターンは、液晶注入口の部分を欠いた形状であってよく、スクリーン印刷によって形成されてよい。他方の基板には、液晶層の厚さに相当する直径プラスチックまたはシリカからなる球状のスペーサーを散布してよい。次いで、TFT基板とCF基板とを貼り合わせ、シール材料を硬化させ、TFT基板およびCF基板並びにシール材料で囲まれる空間に、減圧法により液晶材料を注入した後、液晶注入口に熱硬化樹脂を塗布し、加熱によって液晶材料を封止することで液晶層を形成してよい。最後に、有機ELディスプレイの場合と同様にして、CF基板のガラス基板と、TFT基板のガラス基板との少なくとも一部を除去することで液晶ディスプレイが作製される。
【0137】
[6.変形例]
なお、上記の実施形態では、学習処理装置3は組成取得部32、特性取得部33および学習処理部34を有することとして説明したが、これらの少なくとも1つを有しないこととしてもよい。この場合には、学習処理装置3はモデル35の学習処理を行わずに、学習済のモデル35を用いて推奨組成データの取得を行ってよい。また、学習処理装置3は目標特性取得部36、目標特性供給部37および推奨組成取得部38を有することとして説明したが、これらの少なくとも1つを有しないこととしてもよい。この場合には、学習処理装置3はモデル35を用いて推奨組成データの取得する処理を行わずに、モデル35の学習処理を行ってよい。また、学習処理装置3は、制御部39およびモデル35を有することとして説明したが、これらの少なくとも1つを有しないこととしてもよい。例えば、制御部39およびモデル35は学習処理装置3の外部装置(一例として製造装置2の制御装置)に具備されてよい。
【0138】
また、本発明の様々な実施形態は、フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階およびセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/またはコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/またはアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/またはディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、および他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0139】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0140】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0141】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0142】
図8は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0143】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、およびディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インタフェース2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230およびキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
【0144】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0145】
通信インタフェース2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD-ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0146】
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
【0147】
プログラムが、DVD-ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0148】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0149】
また、CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0150】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0151】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
【0152】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0153】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0154】
1 システム、2 製造装置、2a 下部基板(ガスバリア層)、2b 封止基板、3 学習処理装置、20 混合部、21 生成部、25 積層体、32 組成取得部、33 特性取得部、34 学習処理部、35 モデル、36 目標特性取得部、37 目標特性供給部、38 推奨組成取得部、39 制御部、200 ガラス基板、201 ポリイミド樹脂膜、201a ワニス層、250a 赤色光を発光する有機EL素子、250b 緑色光を発光する有機EL素子、250c 青色光を発光する有機EL素子、251 隔壁(バンク)、252 下部電極(陽極)、253 正孔輸送層、254 発光層、255 上部電極(陰極)、256 TFT、257 コンタクトホール、258 層間絶縁膜、259 下部電極、261 中空部、2200 コンピュータ、2201 DVD-ROM、2210 ホストコントローラ、2212 CPU、2214 RAM、2216 グラフィックコントローラ、2218 ディスプレイデバイス、2220 入/出力コントローラ、2222 通信インタフェース、2224 ハードディスクドライブ、2226 DVD-ROMドライブ、2230 ROM、2240 入/出力チップ、2242 キーボード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8