(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013896
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】双胴船の後端フィン装置
(51)【国際特許分類】
B63B 39/06 20060101AFI20230119BHJP
B63B 1/12 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
B63B39/06 E
B63B1/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021137542
(22)【出願日】2021-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】504340497
【氏名又は名称】山川造船鉄工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504281514
【氏名又は名称】池田 勉
(72)【発明者】
【氏名】池田 勉
(72)【発明者】
【氏名】篠原 秀嗣
(57)【要約】 (修正有)
【課題】各種の渦流を緩和し、抵抗を減少させ双胴船を推進するために必要な主機馬力を低減できる双胴船の後端フィン装置を提供する。
【解決手段】本願は双胴船において、左右の単胴船のトランソムの底面から後方に突出する後端フィンおよび該後端フィンの下面から下方に突出する整流フィンを夫々設け、更に前記単胴船のトランソムに底面位置から後方に突出する複数の後端フィンおよび夫々の該後端フィンの下面から下方に突出する複数の整流フィンを双胴間に夫々設けたことを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単胴船二つで構成される双胴船において、左右の単胴船の中心線から外側および双胴間側の外板形状に沿った後端フィンをトランソムの底面から後方に突出して夫々設け、且つ前記中心線上で前記後端フィンの底面から下方に突出する整流フィンを夫々設け、更に前記単胴船の中心線上でトランソムと船底との交点位置から後方に突出する複数の後端フィンを双胴間に夫々設け、且つ該複数の後端フィンの底面から下方に突出する整流フィンを夫々設けたことを特徴とする双胴船の後端フィン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は双胴船の省エネ装置の後端フィン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長さの割に幅が狭い細長の単胴船を二つ左右平行に並べて構成する双胴船については異なる単胴船の船型形状や双胴間の幅が異なるなど等多種実用化されているが、本願においては以下に詳述する船型を対象にした双胴船および単胴船の船型について
図1から
図3に沿って以下の通り説明する。
図1は上方から見た満載喫水線LWL面の平面図であり、
図2は
図1のII~II断面矢視図を示し、
図3は
図1のIII~III断面矢視図を拡大して示している。左側の単胴船1と右側の単胴船2は満載喫水線LWLより上方で船首部から船尾部に亘る甲板3によって中心線CL3に対し左右対称にして連結固定されて双胴船が構成されている。また
図1に満載喫水線LWL面の平面形状を示している通り、左側の単胴船1は中心線CL1に対して船首端FE1から船尾端AE1に亘って左右非対称に構成されている。即ち満載喫水線LWL面において左舷側では中心線CL1に対して船首端FE1から後方に向けて幅は曲線状で徐々に広がり中央部のSS5付近で最大幅B1となり、それより後方に向けて幅は曲線状で徐々に狭まり船尾端AE1でトランソム10に連結された通常の船型形状と同様の長手方向の形状4を有している。一方、満載喫水線LWL面における右舷側では中心線CL1に対して右舷側の最大幅B2を左舷側の最大幅B1の半分程度に狭く構成し、且つ船首端FE1から後方に向けて徐々に幅は曲線状で広がり船首垂線FPとSS5の中間位置付近で最大幅B2となり、それより後方に向けてSS5付近まで幅は徐々に曲線状で挟まり、それより後方に向けて幅は徐々に曲線状で広がり、SS5と船尾垂線APの中間位置付近で最大幅B2程度の幅となり、それより後方に向けて幅は徐々に曲線状で狭くなって船尾端AE1でトランソム10に連結されている。このように船首端FE1から船尾端AE1に亘って、右舷側の幅が中心線CL1に対し曲線状の凸凹を繰り返した長手方向の形状5を有していて、中心線CL1に対して左舷側と右舷側の形状が異なって左右非対称に構成されている。同様に右側の単胴船2の満載喫水線LWL面においても上記左側の単胴船1の場合における左舷側と右舷側が互いに入れ替わった形状6および形状7を有した長手方向に同一形状で中心線CL2に対して左右非対称に構成されている。また
図3は左側の単胴船1の船体後半部の中心線CL1の断面形状を表示しているがSS5より後方位置から基線BLより船尾端AE1に向けて略直線状で後ろ上がりにして船底8が設けられてトランソム10に固定されている。右側の単胴船2においても図示されていないが前記と同様の形状で船底9が設けられトランソム11に固定されている。図中でCL1は左側の単胴船1の中心線を、FE1は単胴船1の船首端を、AE1は単胴船1の船尾端を夫々表している。同様にCL2は右側の単胴船2の中心線を、FE2は単胴船2の船首端を、AE2は単胴船2の船尾端を夫々表している。更にCL3は双胴船の中心線を表し、FPは船首垂線を、APは船尾垂線を、SS5は船首垂線FPと船尾垂線APとの中間位置を夫々表している。また左側の単胴船1の左舷側および右側の単胴船2の右舷側を矢印で外側と表示し、それと反対舷側を矢印で双胴間と表示している。尚、本願明細書においては説明の便宜上、上記に沿って左側の単胴船1の左舷側および右側の単胴船2の右舷側を外側と称し、それと反対舷側は双胴間と称することとする。
【特許文献】特許第4365644号
【0003】
上記の双胴船が速度関数のフルード数Fnで0.32以上の高速域の速度で航走しているとき左右の単胴船の後端の後方で渦流が発生されている。更に左右の単胴船の双胴間においても渦流が発生されて、その渦流は双胴間の後方の中心域で合流して渦度の高い渦流となっている。その為に、それら渦流の発生に伴って抵抗が増加して双胴船を推進するに必要な主機馬力が増大されている。尚、船速を表す船速関数のフルード数Fnは下式で表示される。
Fn=Vs/(g・L)0.5、 Vsは船速、gは重力の加速度、Lは船長を表す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の通り双胴船が速度関数のフルード数Fnで0.32以上の高速域の速度で航走しているとき左右の単胴船の後端の後方で渦流が発生されている。更に左右の単胴船の双胴間においても渦流が発生されて、その渦流は双胴間の後方の中心域で合流して渦度の高い渦流となっている。その為に、それら渦流の発生に伴って抵抗が増加して双胴船を推進するに必要な主機馬力が増大されている問題点を有している。
【発明が解決するための手段】
【0005】
本願は上記従来船の問題点に鑑みて提案されたものであり、単胴船二つで構成される双胴船において、左右の単胴船の中心線から外側および双胴間側の外板形状に沿った後端フィンをトランソムの底面から後方に突出して夫々設け、且つ前記中心線上で前記後端フィンの底面から下方に突出する整流フィンを夫々設け、更に前記単胴船の中心線上でトランソムと船底との交点位置から後方に突出する複数の後端フィンを双胴間に夫々設け、且つ該複数の後端フィンの底面から下方に突出する整流フィンを夫々設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記構成の複数の後端フィンおよび整流フィンを装備した双胴船が、船速関数のFnが0.32以上の高速域で航走しているとき、左右の単胴船のトランソムから後方に突出する後端フィンおよび整流フィンの作用で前記左右の単胴船の後端後方で発生される渦流が緩和される。更に双胴間に設けられた複数の後端フィンの作用により双胴間で発生される渦流が緩和され、更に前記複数の後端フィンの底面から下方に突出された夫々の整流フィンの作用で双胴間の後方の中心域で渦流の合流が緩和されて、渦度の高い渦流が緩和される。その為に前記各種の渦流が緩和されたことに相応して抵抗が減少し双胴船を推進するに必要な主機馬力が低減される効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本願の実施例について
図4から
図10に沿って説明する。先ず
図4、
図5、
図6に沿って左側の単胴船1におけるトランソム10に設けられる後端フィン12a,12bおよび整流フィン13について説明する。
図4に示す通り中心線CL1上の船底8とトランソム10の交点A1点から後端フィン12aが後方に突出し、
図5、
図6に示す通り外側での幅方向形状の外板4に沿ってa点からb点間は後方に突出する長さは同一でb点から徐々に短くなりc点で外板4に接合される。同様にして後端フィン12bが双胴間側での幅方向形状の外板5に沿ってa点から徐々に後方に突出する長さは短くなりd点で外板5に接合されている。その際、後端フィン12a、12bは適当な後方への突出長さおよび満載喫水線LWLに対する適当な後下り角度αで設置される。このように後端フィン12aはトランソムの外側の外板形状に沿った形状を有し、後端フィン12bは双胴間側の外板形状に沿った形状を有している。また前記中心線CL1上で前記後端フィン12a、12bが接合する底面から下方に向けて適当なる深さで突出して整流フィン13が設けられている。上記と同様な構成で以て右側の単胴船2においても船底9とトランソム11の交点A2点から外側の外板6および双胴間側の外板7の形状に沿って夫々後端フィン14aおよび後端フィン14bが設けられている。更に前記中心線CL2上で前記後端フィン14aと前記後端フィン14bが接合する底面から下方に突出して整流フィン15が設けられている。次に左右の単胴船1,2間の双胴間に設けられる後端フィンについて
図7~
図10に沿って説明する。左側の単胴船1のトランソム10および右側の単胴船2のトランソム11の後面の中央部にブラケット16,17が夫々
図4、
図7に示す通りの形状で設置され、その上面にビーム18が双胴間に亘って設置されている。
図7および
図8に示す通り該ビーム18から垂れ下がる平板25および平板26の下端に後端フィン19が設けられている。同様な構成で平板27、28の下端に後端フィン20が、平板29、30の下端に後端フィン21が夫々設けられている。そのとき前記後端フィン19、20、21は前縁を
図9および
図10に示すように前記A1点およびA2点の前後方向位置と深さ方向位置に合わせて、長さ方向の適当な長さで以て、更に
図9に示す通り満載喫水線LWLに対する適当な後下り角θで以て後方に突出して設けられている。尚、前記後端フィン19,20,21の前後方向位置や深さ方向位置および後下り角θなどについては単胴船の船型形状や双胴間の間隔など所謂、双胴船の形状の相違によって適当に決められる。次に
図7、
図8および
図9に示す通り左側の単胴船1寄りの前記後端フィン19と略同じ長さで幅方向中央の底面から適当な深さで下方に突出して整流フィン22が設けられている。同様の構成で以て双胴間の前記後端フィン20の底面から整流フィン23が、右側の単胴船2寄りの前記後端フィン21の底面から整流フィン24が夫々設けられている。そのとき、双胴間の前記整流フィン23は双胴船の前記中心線CL3上に設けられ、前記単胴船1,2寄りの前記整流フィン22および前記整流フィン24は適当な角度で以て後開きにして設けられている。尚、上述の通り本実施例においては双胴間に設けられる後端フィンについて3分割した案を示しているが双胴間全域に亘って分割しない後端フィンで前記中心線CL3から左右方向に前後位置をはじめ長さや深さや後下り角などによって変化する形状を有して左右対称に設置し、更に該後端フィンの底面から垂れ下げて設けられる整流フィンについても枚数や相互間隔も適当に構成して下方に突出する深さや後開き角についても適当にして設ける場合もある。
【0008】
上記で詳述したような本願実施例の各種後端フィンおよび各種整流フィンが装備された双胴船において、船速関数のフルード数Fnが0.32以上の高速域で航海しているとき、左右の単胴船1,2のトランソムに設けられた後端フィン12a、12b、14a、14bによる作用と整流フィン13,15による作用の相乗効果で前記左右の単胴船1,2の後方に発生される渦流が緩和される。更に双胴間に設けされた複数後端フィン19,20,21の作用により双胴間で発生される渦流が緩和され、更に前記複数の後端フィン19,20,21の底面に設けられた複数の整流フィン22、23,24の作用により双胴間後方で渦流の合流を緩和する効果の相乗的効果で双胴間後方の渦度の高い渦流が緩和される。上記それらの作用で双胴船後方に発生される全ての渦流が緩和される。その為に抵抗が減少されて、双胴船が航海に要する主機馬力が低減される効果が得られる。
【0009】
本願は上述の通り双胴船を対象にした後端フィン装置として比較的簡素な構成でなる有効な船舶の省エネ装置であるが、その他に船体後半部において二つの船尾船型を有した双船尾船型船など等に対しても同様の効果が得られて有効な船舶の省エネ装置として応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】 双胴船を示す満載喫水線面の平面図である。
【
図2】
図1におけるII―II断面矢視図の拡大図である。
【
図3】
図1におけるIII―III断面矢視図の拡大図である。
【
図4】
図1におけるIV―IV断面矢視図の拡大図である。
【
図5】
図4におけるV―V断面矢視図の拡大図である。
【
図7】
図4におけるVII―VII断面矢視図相当で単胴船1,2と双胴間の図である。
【
図8】
図7におけるVIII―VIII断面矢視図である。
【
図9】
図7におけるIX―IX断面矢視図である。
【符号説明】
【0011】
1 単胴船
2 単胴船
3 甲板
4 単胴船1の外側の外板
5 単胴船1の双胴間側の外板
6 単胴船2の外側の外板
7 単胴船2の双胴間側の外板
8 船底
9 船底
10 トランソム
11 トランソム
CL1 単胴船1の中心線
CL2 単胴船2の中心線
CL3 双胴船の中心線
FE1 単胴船1の船首端
AE1 単胴船1の船尾端
FE2 単胴船2の船首端
AE2 単胴船2の船尾端
B1 中心線CL1と外板4間の最大幅
B2 中心線CL1と外板5間の最大幅
LWL 満載喫水線
AP 船尾垂線
FP 船首垂線
SS5 船首垂線FPと船尾垂線AP間の中間位置
BL 基線
12a 後端フィン
12b 後端フィン
13 整流フィン
14a 後端フィン
14b 後端フィン
15 整流フィン
16 アングル材
17 アングル材
18 ビーム
19 後端フィン
20 後端フィン
21 後端フィン
22 整流フィン
23 整流フィン
24 整流フィン
25 平板
26 平板
27 平板
28 平板
29 平板
30 平板