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特開2023-138973回転式切削インサート、および軸方向係止部材を有する工具
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  • 特開-回転式切削インサート、および軸方向係止部材を有する工具 図1
  • 特開-回転式切削インサート、および軸方向係止部材を有する工具 図2
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  • 特開-回転式切削インサート、および軸方向係止部材を有する工具 図4
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  • 特開-回転式切削インサート、および軸方向係止部材を有する工具 図6
  • 特開-回転式切削インサート、および軸方向係止部材を有する工具 図7
  • 特開-回転式切削インサート、および軸方向係止部材を有する工具 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138973
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】回転式切削インサート、および軸方向係止部材を有する工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/00 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
B23B51/00 T
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023105775
(22)【出願日】2023-06-28
(62)【分割の表示】P 2020500052の分割
【原出願日】2018-07-04
(31)【優先権主張番号】17180497.4
(32)【優先日】2017-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507226695
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】パベル, ヘレナ
(72)【発明者】
【氏名】エクベック, ヨーアン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】支持体における所定の位置でのインサートのセンタリングに弊害をもたらさない、支持体におけるインサートの軸方向係止を提供する。
【解決手段】インサート10および支持体11が、インサートから径方向外方に延在しかつ支持体の径方向内向きの表面に付けられた凹部32によって受け入れられる相補的に成形された突出部19を介して軸方向に結合される、回転式穿孔工具のための切削インサートおよび穿孔工具組立体。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を切削するための回転式穿孔工具の切削インサート(10)であって、
長手軸(12)に沿って延在するヘッド(14)およびネック(15)であって、前記ヘッドが、軸方向前向きの切削領域(13)を有し、前記ネックが、軸方向後ろ向きの取付け領域(67)を有し、少なくとも前記ネックが、支持体(11)のジョー(28)内に解放可能に取付け可能であることが可能である、ヘッド(14)およびネック(15)
を備え、
前記ヘッドが、前記支持体の対応する軸方向支持表面(25)と当接するために前記ネックから径方向外方に突出している全体的に軸方向後ろ向きの軸方向支持表面(18)を有し、
前記ヘッドが、前記軸から径方向外方に突出している全体的に直径方向に対向したローブ(33)の対によって形成される、切削インサート(10)であって、
少なくとも1つの径方向突出部(19)が、径方向内側表面(34)または前記ヘッドの領域から延在しかつ円周方向において前記ローブ間に位置決めされることを特徴とする、切削インサート(10)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの径方向突出部の少なくとも一部分が、前記切削領域の軸方向最前先端(24)と前記軸方向支持表面の軸方向最後部(55)または縁部との間の前記ヘッドの軸方向長さ(B)未満の前記軸方向における幅(D)を有する、請求項1に記載のインサート。
【請求項3】
前記突出部の少なくとも前記部分の前記幅(D)が、前記ヘッドの前記軸方向長さ(B)の2から30%、2から20%、5から20%、5から15%、または7から15%の範囲内である、請求項2に記載のインサート。
【請求項4】
前記少なくとも1つの径方向突出部が、前記インサートを前記支持体において軸方向に固定するために前記支持体のチャネル(32)内に据えられることが可能な円周方向に延びる長さを有するリブとして形成された全体的に直径方向に対向する少なくとも2つの第1の径方向突出部を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のインサート。
【請求項5】
前記リブのそれぞれの前記ローブ間での円周方向における角度長さ(β)が、2から85°、2から80°、5から80°、5から70°、5から60°、10から60°、20から60°、30から60°、または40から50°の範囲内である、請求項4に記載のインサート。
【請求項6】
前記少なくとも1つの径方向突出部が、前記突出部と前記軸方向前向きの切削領域との間で軸方向に延在する径方向外向きの位置決め表面(34)から径方向外方に延在し、
前記突出部の径方向最外表面(66)の半径(R1)と前記位置決め表面の半径(R2)との商として表わされる前記突出部の径方向奥行が、1.02から1.5、1.025から1.5、1.02から1.4、1.025から1.4、または1.05から1.3の範囲内である、請求項1から5のいずれか一項に記載のインサート。
【請求項7】
前記突出部が、軸方向において、前記軸方向前向きの切削領域よりも前記軸方向支持表面の近くに配置される、請求項1から6のいずれか一項に記載のインサート。
【請求項8】
前記突出部が、前記軸方向において、前記切削領域の軸方向最前先端(24)と前記軸方向支持表面の軸方向最後部(55)または縁部との間の前記ヘッドの前記軸方向長さの軸方向後方30%内に配置される、請求項7に記載のインサート。
【請求項9】
前記ローブ間の円周方向における位置において前記ヘッドの前記径方向内側の表面または領域から径方向外方に突出する少なくとも1つの隆起した出張り(36)をさらに備えて、前記インサートが回転されて前記支持体と係合するときに触知性のスナップクリックを提供する、請求項1から8のいずれか一項に記載のインサート。
【請求項10】
前記インサートの前記ネックが、前記インサートの前記ヘッドの下方の軸方向位置において径方向外方突出部を含まない少なくとも1つの湾曲した径方向外側表面(35)によって画定される部分円筒状である、請求項1から9のいずれか一項に記載のインサート。
【請求項11】
前記支持表面が、各前記表面の径方向外側領域(57)が各前記表面の径方向内側領域(58)に対して軸方向後方に位置するように、前記長手軸に垂直な平面(P)に対して位置合わせされた第1の下り勾配配向部を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載のインサート。
【請求項12】
前記支持表面が、前記第1の下り勾配配向部に追加されかつ前記長手軸に垂直な前記平面に対して円周方向に延在するように位置合わせされた第2の下り勾配配向部を備える、請求項11に記載のインサート。
【請求項13】
前記第2の下り勾配配向部が、前記インサートの回転方向における各前記表面のリード領域(56)または前縁が前記インサートの回転方向における各前記表面の追い側領域(55)または後縁に対して軸方向後方に位置決めされるように延在する、請求項12に記載のインサート。
【請求項14】
金属を切削するための回転式穿孔工具であって、
請求項1から13のいずれか一項に記載のインサートと、
前記長手軸(12)に沿って延在し、かつ、軸方向に延在する少なくとも2つのアーム(22)により軸方向前方端において終端される支持体(11)であって、前記アームが、前記ジョー(28)を画定するように前記軸の周りで離間される、支持体(11)と、を備え、
各アームが、全体的に軸方向前向きの軸方向支持表面(25)を提示する肩(59)を有し、前記インサートが、前記インサートおよび前記支持体の前記軸方向支持表面がそれぞれ互いに当接するように構成されるように、前記アーム間の前記ジョー内に解放可能に取付け可能であり、
前記アームのそれぞれが、前記支持体において前記インサートを軸方向に保持するために、前記インサートの前記少なくとも1つの径方向突出部(19)をそれぞれ受け入れるように構成された凹部(32)を径方向内側表面に備える、回転式穿孔工具。
【請求項15】
前記アームのそれぞれの前記凹部(32)が、円周方向に延びる長さを有しかつ軸方向において各アームの前記肩(59)の位置にまたはその前方に位置決めされて前記インサートの前記リブをそれぞれ受け入れるように構成されたチャネルを備える、
請求項4に従属する場合の請求項14に記載の工具。
【請求項16】
前記インサートの前記ネックを受け入れるための前記支持体の前記ジョーの領域が、部分円筒状であり、かつ、径方向内方の突出部を含まない少なくとも1つの湾曲した径方向内側表面(26)によって画定される、請求項14または15に記載の工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式穿孔工具インサートに関し、また、支持体における応力および疲労を最小限に抑えると同時にインサートの保持を最大限に向上させかつ支持体上で中心に配置されたインサートを維持するようにインサートが支持体に取付け可能である、穿孔工具組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
硬くかつ高価な(超硬合金、セラミック、などのような)材料から形成されたインサートが、より低硬度かつより費用のかからない材料から形成された工具または担体において軸方向および径方向に解放可能に係止される、多構成要素穿孔工具組立体が開発されてきた。インサートは、典型的には摩耗部品と見なされ、かつ、一連の切れ刃および切削表面を典型的に含む軸方向前向きの切削領域を備える。
【0003】
摩耗したときのインサート交換を可能にすると同時に使用時にインサートをしっかりと取り付けるために、インサートからドリル体への軸方向負荷力(axial loading force)およびトルクの伝達の制御および管理が必要とされる。そのような負荷力を適切に伝達する試みにおいて、差込み型の係止接合部が開発されてきた。
【0004】
米国特許第7,625,161号は、ドリルまたは支持体と呼ばれることがある工具シャンクに切削インサートが解放可能に取り付けられる、回転式切削工具組立体を開示している。インサートは、それぞれのヘッドセクションおよびテールセクションを有する物体として形成され、軸方向負荷力は、インサートから軸方向支持表面を介してシャンク内へ伝達される。インサートの軸方向係止を最大限に高める試みにおいて、軸方向支持表面は、穿孔工具の長手軸に垂直に延在する平面に対して下り勾配を付けられた。
【0005】
前述のタイプの既存の穿孔工具組立体は、様々な点で不利である。具体的には、インサートは、下り勾配付き軸方向支持表面を介した力伝達の作用により径方向内方に付勢されてインサートを押圧する差込みアームにより、支持体の軸方向前方ジョー領域において軸方向に係止される。しかし、インサートは、十分にセンタリングされ得ない。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、支持体における所定の位置でのインサートのセンタリングに弊害をもたらさない、支持体におけるインサートの軸方向係止を提供することである。具体的には、例えば被加工物に接触することなく工具が移動されるとき、穿孔作業後に工具が後退されるとき、または振動が発生するであろう場合に、インサートが支持体から分離するのを防止する、支持体における所定の位置でのインサートの軸方向係止を提供することが目的である。
【0007】
明確な目的は、インサート、および、支持体とインサートとの間の負荷力を管理しかつ制御することにより支持体におけるインサートの取付けおよび取外しを容易にする穿孔工具組立体を提供することである。さらなる明確な目的は、支持体においてインサートを軸方向にかつ回転的に係止する強さを損なうことなく、インサートを取り付ける領域における疲労および応力集中を最小限に抑えることにより、支持体の耐用寿命を最大限に延ばすことである。
【0008】
目的は、軸方向前向きの切削領域と支持体の対応する軸方向前向きの支持表面に当接する後ろ向きの軸方向支持表面との間の軸方向位置において径方向外方に延在する少なくとも1つの突出部を有するインサートを提供することによって達成される。突出部を軸方向支持表面と同じ高さにまたはその軸方向前方に位置決めすることにより、インサートの最後部センタリングネック部分の体積、半径、および/または軸方向長さが最大化され得る。
【0009】
そのような構成は、支持体におけるインサートの最大限に高められたセンタリングのために軸方向後方のネック部分を最大化するまたは要望通りに構成するのに有利である。さらに、本発明は、使用時の支持体におけるインサートのセンタリング機能を損なうことなしに確実な軸方向係止を実現するのに有利である。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、金属を切削するための回転式穿孔工具の切削インサートであって、長手軸に沿って延在するヘッドおよびネックであって、ヘッドが、軸方向前向きの切削領域を有し、ネックが、軸方向後ろ向きの取付け領域を有し、少なくともネックが、支持体のジョー内に解放可能に取付け可能であることが可能である、ヘッドおよびネックを備え、ヘッドが、支持体の対応する軸方向支持表面と当接するためにネックから径方向外方に突出している全体的に軸方向後ろ向きの軸方向支持表面を有し、ヘッドが、軸から径方向外方に突出している全体的に直径方向に対向したローブの対によって形成される切削インサートであって、ヘッドにおけるインサートの軸方向位置から延在しかつ円周方向においてローブ間に位置決めされる少なくとも1つの径方向突出部を特徴とする、切削インサートが提供される。
【0011】
示されるように、ヘッドのローブに対応する軸方向位置に突出部を組み込むことは、センタリング機能を提供するために、軸方向後方のネックの機能に悪影響を与えない。さらに、突出部をヘッドのローブ間で円周方向に位置決めすることは、ローブと支持体の差込みアームとの間でのトルク伝達の能力を減少させることなしに所望の軸方向係止を達成するのに有利である。具体的には、ローブのトルク伝達表面の表面領域は、軸方向に係止する突出部による影響または制限を伴わずに所望に応じて構成され得る。
【0012】
場合により、少なくとも1つの径方向突出部の少なくとも一部分は、切削領域の軸方向最前先端と軸方向支持面の軸方向最後部または縁部との間のヘッドの軸方向長さ未満の、軸方向における幅を有する。突出部の少なくとも一部分の幅は、ヘッドの軸方向長さの2から30%、2から20%、5から20%、5から15%、または7から15%の範囲内であることが好ましい。そのような構成は、工具を被加工物から後退させるときの負の軸方向力などの軸方向分離力に耐えることができるのに十分な質量を突出部に与えて、インサートと支持体との間での負荷力の伝達の望ましい制御などのインサートおよび支持体の他の特性および機能を損なうことなしに、支持体におけるインサートの望ましい係止を達成する。
【0013】
少なくとも1つの径方向突出部は、インサートを支持体において軸方向に固定するために支持体のチャネル内に据えられることが可能な円周方向に延びる長さを有するリブとして形成された全体的に直径方向に対向する少なくとも2つの第1の径方向突出部を含むことが、好ましい。リブは、幅(軸方向に延びる)および奥行(径方向に延びる)よりも大きい円周方向に延びる長さを備える。場合により、リブのそれぞれのローブ間での円周方向における角度長さ(angular length)は、2から85°、2から80°、5から80°、5から70°、5から60°、10から60°、20から60°、30から60°、または40から50°の範囲内である。これは、点荷重を避けるために、また、突出部が円周方向に細長くない場合に引き起こされ得る応力集中の規模を縮小するかまたは応力集中を排除するために、軸方向力をリブの長さに沿って分散させるのに好都合である。
【0014】
場合により、少なくとも1つの径方向突出部は、突出部と軸方向前向きの切削領域との間で軸方向に延在する径方向外向きの位置決め表面から径方向に延在し、突出部の径方向最外表面の半径と位置決め表面の半径との商として表わされる突出部の径方向奥行は、1.02から1.5、1.025から1.5、1.02から1.4、1.025から1.4、または1.05から1.3の範囲内である。そのような構成は、軸方向負荷力に耐えることができるのに十分な質量を突出部に与えて、インサートと支持体との間での負荷力の伝達の望ましい制御などのインサートおよび支持体の他の特性および機能を損なうことなしに、支持体におけるインサートの望ましい係止を達成する。
【0015】
場合により、突出部は、軸方向において、軸方向前向きの切削領域よりも軸方向支持表面の近くに配置される。場合により、突出部は、軸方向において、切削領域の軸方向最前先端と軸方向支持表面の軸方向最後部または縁部との間のヘッドの軸方向長さの軸方向後方30%内に配置される。
【0016】
場合により、インサートは、ローブ間の円周方向における位置においてヘッドの径方向内側の表面または領域から径方向外方に突出する少なくとも1つの隆起した出張りをさらに備えて、インサートが回転されて支持体と係合するときに触知性のスナップクリック(tactile snap-click)を提供する。それにより、センタリング表面に干渉していない間にインサートが所定の位置において完全に係合されたときに、オペレータがそのことを確認することができる。第2の径方向突出部は、支持体においてインサートを軸方向に係止することに第2の径方向突出部がほとんどまたは全く影響を持たないように、対応する第1の径方向突出部の奥行よりも明らかに小さい径方向における奥行を備える。
【0017】
第1の(および第2の)径方向突出部は、おおよそ対応する径方向位置においてネックの外向きの表面に位置合わせされたヘッドの径方向内側の表面から延在することが好ましい。具体的には、そこから第1の(および第2の)突出部が延在する表面は、ネック表面の延長部であると、すなわち(長手軸に対して)同じ径方向位置におおよそ位置合わせされていると、見なされ得る。したがって、第1の(および第2の)突出部は、ヘッドのローブの全てまたは大部分の径方向内方に位置決めされる。この相対的な位置決めは、軸方向支持表面およびトルク伝達表面の機能を最大限に高めるのに、具体的にはインサートと支持体との間でのそのような力の伝達を最大限に高めるのに、有益である。したがって、これらの表面およびそれらのそれぞれの構成部分(component portion)は、それらの特定の機能に対して最適化され得る。
【0018】
インサートのネックは、インサートのヘッドの下方の軸方向位置において径方向外方突出部を含まない少なくとも1つの湾曲した径方向外側表面によって画定される部分円筒状であることが、好ましい。この湾曲した表面は、ネックの径方向最外表面であってもよく、また、完全にすなわち全体的に円筒状であってもよい。したがって、インサートは、センタリングを最大限に向上させるように構成され、かつ、効率的な(すなわち、研削を避けるか、研削が必要とされる場合にはそれを著しく容易にする)製造技法および/またはプロセスによって入手可能である。したがって、ネックは、支持体におけるインサートのセンタリングに貢献するように構成される。
【0019】
支持表面は、各前述の表面の径方向外側領域が各前述の表面の径方向内側領域に対して軸方向後方に位置するように、長手軸に垂直な平面に対して位置合わせされた第1の下り勾配配向部(decline orientation)を備えることが好ましい。支持表面は、第1の下り勾配配向部に追加されかつ長手軸に垂直な平面に対して円周方向に延在するように位置合わせされた第2の下り勾配配向部を備えることが、より好ましい。第1および第2の下り勾配配向部は、インサートと工具本体との間の複数の力伝達方向/配向に従って軸方向負荷力を方向付けることおよび吸収することに有利である。具体的には、第1の下り勾配配向部は、力成分を支持体の長手軸に向かって径方向内方に向かわせるのに有利である。それにより、工具本体のアームは、工具本体上へのインサートの過剰な軸方向負荷(圧迫)に起因して径方向に強制的に離されることがない。さらに、差込み接合部における応力および疲労が管理され、具体的には適切に制限される。そのような構成は、インサートの簡便な取付け、また特に摩耗したときのインサートの簡便な取外しを可能にするのに、さらに有利である。第2の下り勾配配向部は、工具本体におけるインサートのセンタリング機能を提供する長手軸の周りでの捻りまたは回転による支持体におけるインサートの取付けを可能にするのに、さらに有益である。
【0020】
さらに、第2の下り勾配配向部により、使用中に切削力によって生じるトルクの一部分が、軸方向支持表面によって得られる。具体的には、接線力のうちのいくらかが、特定の別々のトルク伝達表面に印加されていたであろう力の部分が軸方向下方に向けられるように、代わりに軸方向支持表面に向けられる。これは、工具本体の疲労を軽減することによる好ましい効果を有する。
【0021】
第2の下り勾配配向部は、インサートの回転方向における各前述の表面のリード領域または前縁がインサートの回転方向における各前述の表面の追い側領域または後縁に対して軸方向後方に位置決めされるように延在することが、好ましい。そのような構成は、トルク力の一部分が支持体からインサートへ伝達されかつ切削中にインサートの軸方向後方領域および支持体の軸方向前方領域内へ軸方向下方に向けられるようにするのに有利である。
【0022】
場合により、「下り勾配を付けられ」ている支持表面への言及は、工具の軸に垂直な平面に対してまたインサートの切削先端または縁部に対して第1および第2の傾斜を有する全体的に平面状(すなわち、平坦)である支持表面を意味する。したがって、支持表面は、径方向および円周方向(あるいは、インサートまたは支持体の中心長手軸を中心として有する円の接線の方向とされる)の両方において軸方向前方先端または切れ刃から離れるように傾斜する配向を有する。
【0023】
場合により、インサートの中心長手軸を中心として有する円の接線の方向に沿って、第2の下り勾配配向部が前述の平面から下り勾配を付けられる角度(δ)は、1から50°、1から45°、1から30°、1から20°、2から20°、1から15°、2から15°、またはより好ましくは5から15°の範囲内である。円の接線は、それぞれの支持表面の任意の径方向位置において、各支持表面の径方向内側領域と径方向外側領域(または縁部)との間に延在し得る。場合により、接線は、各支持表面の中間径方向領域において、それぞれの支持表面の径方向内側領域と外側領域(または縁部)との間に位置決めされ得る。記載された範囲よりも大きい角度は、インサートと支持体との間で軸方向負荷力を適切に伝達せず、また、アームを径方向外方に付勢することになる接線方向に向けられる力を生じさせるのに寄与するであろう。
【0024】
場合により、第1の下り勾配配向部が平面から下り勾配を付けられる角度(θ)は、1から50°、1から45°、2から45°、2から30°、5から20°、5から15°、または10から15°の範囲内である。記載された範囲未満の角度は、アームを径方向内方に付勢してインサートを挟持するのにほとんどまたは全く影響を持たず、一方で、記載された範囲を超える配向は、インサート内の応力集中の規模および亀裂伝播の可能性を大きくするであろう。
【0025】
ローブのそれぞれは、支持体の対応するトルク伝達表面と当接接触するための径方向および軸方向に延在するトルク伝達表面を備えることが好ましく、この場合、インサートのトルク伝達表面は、長手軸に垂直に延在する平面において、0から60°、0から50°、0から45°、1から50°、1から45°、1から30°、1から20°、2から20°、または3から15°の範囲内の角度でヘッドの半径に対して配向される。トルク伝達表面のこの相対的な配向は、切削中に引き起こされる径方向力の望ましい伝達を達成すると同時に、トルク力に応じてインサートを挟持するために径方向に保持されたアームを維持する。トルク伝達表面の配向は、回転方向に対して上り勾配または下り勾配を付けられるように、半径に対して正であっても負であってもよい。
【0026】
ヘッドの直径方向に対向するローブのそれぞれは、支持体の対応する径方向外側包絡面と協働するように、例えばその径方向外側包絡面と全体的に整列するように構成された径方向最外包絡面を有することが好ましく、この場合、ローブの少なくともいくつかの表面は、支持体の軸方向に延在する切りくず溝の軸方向前方領域を部分的に画定する。
【0027】
本発明の第2の態様によれば、金属を切削するための回転式穿孔工具であって、本明細書において特許請求されるインサートと、長手軸に沿って延在し、かつ、軸方向に延在する少なくとも2つのアームにより軸方向前端において終端される支持体であって、アームが、ジョーを画定するように軸の周りで離間される、支持体と、を備え、各アームが、全体的に軸方向前向きの軸方向支持表面を提示する肩を有し、インサートが、インサートおよび支持体の軸方向支持表面がそれぞれ互いに当接するように構成されるように、アーム間のジョー内に解放可能に取付け可能であり、アームのそれぞれが、支持体においてインサートを軸方向に保持するためにインサートの少なくとも1つの突出部をそれぞれ受け入れるように構成された凹部を径方向内側表面に備える、回転式穿孔工具が提供される。
【0028】
アームのそれぞれの凹部は、円周方向に延びる長さを有しかつ軸方向において各アームの肩の位置にまたはその前方に位置決めされてインサートのリブをそれぞれ受け入れるように構成されたチャネルを備えることが、好ましい。突出部およびチャネルは、対向する接触表面が軸方向に当接して軸方向前方および後方への移動を防ぐために支持体においてインサートを軸方向に係止することができるように突出部がそれぞれのチャネル内に係合されることを可能にするために、円周方向、軸方向、および径方向において相補的な長さ、幅、および奥行を備える。
【0029】
インサートのネックを受け入れるための支持体のジョーの領域は、部分円筒状であり、かつ、径方向内方の突出部を含まない少なくとも1つの湾曲した径方向内側表面によって画定されることが、好ましい。そのような構成は、インサートのネックの相補的な着座表面を提供して、インサートおよび支持体のセンタリングに寄与する。
【0030】
次に、単なる例として、添付の図面を参照しながら本発明の具体的な実装形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の具体的な実装形態による、一方の軸方向端部において切削インサートを解放可能に取り付ける細長い支持体を有する穿孔工具組立体の斜視図である。
図2図1の支持体の軸方向前方端部での取付けのために位置決めされた切削インサートの分解組立拡大図である。
図3図2のインサートの側面立面図である。
図4図2の図に対してその中心長手軸の周りで90°回転された図3のインサートのさらなる側面図である。
図5図4のインサートの平面図である。
図6図5のインサートのさらなる拡大平面図である。
図7図6のインサートの下面図である。
図8図2の支持体の軸方向前方インサート取付け領域の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1を参照すると、穿孔工具として実現された切削工具が、細長い支持体11を備える。切削インサート10が、支持体11の軸方向前方端部に解放可能に取り付けられる。インサート10は、軸方向最前部の、軸方向前向きの切削領域13、および、軸方向最後部の取付け領域67を備える。取付け領域67および支持体11軸方向前方端部は、使用中のインサート10と支持体11との間での負荷力の伝達の制御および管理を実現するために、以下で詳細に説明されるように、軸方向および径方向の両方で互いに相補的な形状とされる。そのような負荷力には、インサート10および支持体11を貫通して延在する中心長手軸12の周りでの方向Rにおける切削工具の回転の結果として生じるトルクに加えて、軸方向および径方向の力が含まれる。
【0033】
図2を参照すると、インサート10は、全体的に円筒状の中央ネック15に対して径方向に拡張された軸方向前方のヘッド14を備えると見なされてもよく、ヘッドは中央ネック15から延在する。図3および6に詳細に示されるように、ヘッド14は全体的に、軸12およびネック15から径方向外方に突出する、直径方向に対向したローブ33の対によって形成される。前向きの切削領域13は、ローブ33およびインサート10の内側中央部分に広がり、かつ、全体的に、中心の軸方向最前部の切削先端24を有しかつ切削表面に相当する部分円錐形(または、ドーム状)であり、切削先端24からは、一連の切れ刃が径方向外方に延在する。ローブ33のそれぞれは、全体的に軸方向後ろ向きの軸方向支持表面18を提示するように、アンダカットによりそれらの軸方向後方端部において終端される。表面18は、中央ネック15の軸方向前方領域から径方向外方に突出する。各ローブ33は、軸方向に延びる長さと全体的に径方向に延びる幅とを有するトルク伝達表面17をさらに備える。各トルク伝達表面17は、後ろ向きの軸方向支持表面18と前向きの切削領域13との間で軸方向に延在する。さらに、トルク伝達表面17は、ローブ33の径方向周辺部から径方向内方に延在するように位置決めされる。ヘッド14は、径方向外向きの(ローブの径方向外側の領域に形成された)包絡面23を備え、ネック15は、対応する、径方向外向きの全体的に円筒状の(または、わずかに円錐形の)表面35を備える。以下でさらに説明されるように、突出部19が、ヘッド14の軸方向後方部分から径方向外方にまたローブ33のそれぞれの間で円周方向に延在する。したがって、インサート10は、直径方向に対向した2つの径方向突出部19を備える。ネック15は、その軸方向後方端部において、部分円形の平面的なベース表面16によって終端される。
【0034】
細長い支持体11は、直径方向に対向した細長い部材の対を備えると見なされてもよく、この細長い部材の対は、螺旋状の経路に沿って延在し、かつ、回転方向Rに対して軸方向に延在する後縁21aと軸方向に延在する対応する前縁21bとの間に画定される軸方向に延在する螺旋状の切りくず溝20をそれらの間に画定するように、軸12の周りで捻られている。支持体11は、その軸方向前方端部に、互いに直径方向に対向するように軸12の周りで離間された、全体的に参照番号22によって示された保持アームの対を備える。ジョー28が、アーム22間で径方向に画定され、かつ、インサートネック15およびローブ33を解放可能に取り付けるように構成される。具体的には、アーム22の径方向内向きの表面が、ジョー28を画定し、そのような表面は、部分円筒状の表面26を含み、それらの表面26は、ネック15を受け入れて解放可能に取り付けるためのベース空洞65をそれらの間に画定する。アーム22はまた、ヘッド14の(円周方向におけるローブ33間の)径方向内側表面領域に対向した/衝突した位置決めのための、径方向内向きの位置決め表面30(アーム22の軸方向最前端部に向かって位置決めされる)を備える。内向きの表面26および30は、各アーム22の(円周方向における)全幅に沿って軸12の周りで円周方向に延在するチャネル32により、軸方向に分離される。各チャネル32は、図1に示されるように所定の位置に取り付けられたときにインサート10を支持体11において軸方向に係止するために、それぞれの突出部19を受け入れるように適切に寸法決めされる。空洞65は、インサートベース表面16に対向して位置決めされるように構成されたベース表面27を備える。図1に示されるようにインサート10が支持体11において所定の位置に取り付けられると、インサート包絡面23は、支持体11の対応する径方向外向きの包絡面31と全体的に同一平面に位置決めされるように、位置合わせされる。
【0035】
各アーム22は、アームの内向きの表面26と30との間の軸方向接合点におけるチャネル32と同じ位置において軸方向に位置決めされた、参照番号59によって全体的に示された肩を備える。各肩59は、インサート10の軸方向支持表面18と相補的に寸法決めされかつ位置合わせされている、軸方向前向きの軸方向支持表面25を提示する。つまり、(図1に示されるように)支持体11における所定の位置に取り付けられるインサート10によれば、インサートおよび支持体の軸方向支持表面18、25は、互いに当接してインサート10と支持体11との間での軸方向の力の伝達を実現するように構成される。各肩59はまた、軸12の周りでの回転R中に支持体11からインサート10へのトルク力の伝達を実現するためにインサートトルク伝達表面17と相補的であるように寸法決めされかつ位置合わせされている、それぞれのトルク伝達表面29を備える。
【0036】
図2および3を参照すると、ヘッドローブ33は部分的に、ヘッド14およびネック15内へ径方向に陥凹した凹状曲面37により、円周方向において画定されかつ分離される。凹面37は、円周方向において、一方の端部は後縁38aによって画定され、対向する端部は前縁38bによって画定される。インサート10は、直径方向に対向する2つの凹面37(および、対応する縁部38a、38bの対)を備え、これらの凹面37は、ベース表面16と切削領域13との間でインサート10の軸方向高さ全体(またはほぼ全体)に延在し、かつ、支持体11において切りくず溝20の軸方向延長部を形成するように寸法決めおよび配向される。円周方向に置いて、切りくず溝縁部38bは、位置決め表面34の軸方向に延在する1つの縦向き側面を画定し、この縦向き側面は、各ローブ33の追い側端部と切りくず溝凹面37との間で短い円周方向距離にわたって延在する。径方向突出部19は、位置決め表面34の追い側縦向き端部に位置決めされ、さらに、各ローブ33の追い側端部と縁部38bとの間で円周方向に延在する。位置決め表面34の軸方向前方端部が、前向きの切削領域13において終端し、各位置決め表面34は、全体的に部分円筒状であり、かつ、円筒状のネック表面35に類似した半径を(共通の軸12に対して)有する。
【0037】
第2の径方向突出部36が、位置決め表面34の軸方向前方半分から径方向外方に延在する。第2の突出部36は、円周方向において、凹面縁部38bよりも各ローブ33の追い側端部の近くに位置決めされる。さらに、第2の突出部36は、突出部19から軸方向に分離される。図3に示されるように、突出部19は、円周方向に延びる長さと、軸方向に延びる幅と、(位置決め表面34に対して)径方向に延びる奥行とを有するリブ、隆起部、または棚として形成されていると見なされてもよい。対照的に、第2の突出部36は、位置決め表面34の軸方向前方半分におおよそ等しい軸方向に延びる長さを有するとともに、突出部19の(位置決め表面34に対する)対応する径方向奥行の10%または5%未満の径方向奥行を備える。したがって、第2の突出部36は、位置決め表面34から突出する隆起した出張りと見なされ得る。
【0038】
図3および7を参照すると、各ヘッドローブ33は、後ろ向きの軸方向支持表面18によりその軸方向後端部が画定される。平面P(軸12に直角に位置合わせされている)に対する各表面18は、表面18の径方向外側の横向き端部領域57が径方向内側の横向き端部領域58に対して軸方向後方に位置決めされるように角度θの下り勾配が付けられていると見なされ得る。
【0039】
図4および7に示されるように、各軸方向支持表面18は、円周方向および回転方向Rに延在する第2の下り勾配付き配向部を備える。軸方向に直角な平面Pに対して、各表面18は、表面18の進み側縦向き端部領域56が回転方向Rに関して追い側縦向き端部領域55に対して軸方向後方に位置決めされるように、円周方向に下り勾配を付けられる。具体的には、各表面18は、円周方向において角度δだけ平面Pから下り勾配を付けられる。
【0040】
具体的な実装形態によれば、θは、5から15°の範囲内であり、δは、3から15°の範囲内である。図3および4に示されるように、各軸方向支持表面18は、(表面18の)軸方向前方の横向き端部領域58および縦向き端部領域55が突出部19の軸方向後方部にまたはその近くに位置決めされるように、突出部19とおおよそ同じ軸方向位置に配置される。さらに、表面18は、ネック15とヘッド14との間の接合点に位置決めされる。各(横向きおよび縦向きの端部領域57、58、55、および56によって画定された周囲内の)軸方向支持表面18は、全体的に平面状である。
【0041】
図5を参照すると、各ローブトルク伝達表面17は、それぞれのアーム22の対応する支持体トルク伝達表面29によって当接されて本体11からインサート10への回転駆動力の伝達を可能とするように、回転方向Rにおいて各ローブ33の追い側端部に位置決めされる。各トルク伝達表面17、29は、平面状であり、かつ、径方向に延びる対応する幅よりも大きい軸方向に延びる長さを備える。具体的な実装形態によれば、各トルク伝達表面17、29は、全体的に長方形である。各インサートトルク伝達表面17は、平面Pにおいて、ヘッド14の半径Rを横切るように配向される。具体的には、各トルク伝達表面は、半径Rに対して鋭角αで延在し、ここで、具体的な実装形態によるαは、0から60°の範囲内である。さらなる具体的な実装形態によれば、各表面17は、半径Rに対して反対の(負の)鋭角に配向されてもよく、ここで、等価な負角(equivalent negative)αは、-45から0°の範囲内であり得る。したがって、Rに対して、αは-45°から60°に広がり得る。
【0042】
示されるように、突出部19は、第1の進み側縦向き端部40および第2の追い側縦向き端部39を有して、円周方向または回転方向Rに延びる長さを備える。突出部19が円周(回転)方向に延在する角度長さβは、5から60°の範囲内である。具体的な実装形態によれば、進み側縦向き端部40は、位置決め表面34から突出部19の径方向外周を画定する径方向最外表面66への全体的に滑らかな移行部を提供するように、追い側縦向き端部39に対してテーパ付けされる。図6を参照すると、突出部19の径方向奥行は、(最外表面66における)半径R1と(位置決め表面34における)半径R2との間の差において画定され得る。具体的な実装形態によれば、商R2/R1は、1.025から1.5、1.025から1.4、またはより好ましくは1.05から1.3の範囲内であり得る。さらに、突出部19の径方向幅(R1とR2との間の差)は、軸12と包絡面23との間の半径に対応する最大半径Rの10から30%の範囲内であり得る。
【0043】
図4を参照すると、インサート10は、ベース表面16と切削先端24との間で画定される全軸方向長さAと、各軸方向支持表面18の(端部領域55、56間の)中間長さ領域と切削先端24との間で画定されるヘッド軸方向長さBと、ベース表面16と各軸方向支持表面18の中間長さ領域との間で画定されるネック軸方向長さCと、を備える。突出部19は、突出部19が軸方向前方端壁面19aと対応する軸方向後方端壁面19bとの間で延在する軸方向距離である、軸方向における幅Dを備える。具体的な実装形態によれば、D/Aの商は、0.05から0.1の範囲内であり、D/Bの商は、0.05から0.15の範囲内であり、C/Bの商は、0.2から1.0の範囲内である。
【0044】
図8を参照すると、また、図2に関連して詳述されたように、各差込みアーム22は、対応する軸方向支持表面25を備え、この軸方向支持表面25は、径方向内側端部領域45と径方向外側端部領域44との間に画定された対応する径方向幅と一緒に、前方端部領域42と追い側端部領域43との間に円周(回転)方向に延びる長さを有する。各表面25は、インサート10の軸方向支持表面18に関連して詳述されたのと同じ二重の第1および第2の下り勾配付き配向部を備える。具体的には、各軸方向支持表面25は、同じ角度θにより平面Pから軸方向に下り勾配が付けられ、さらに、同じ角度δにより平面Pに対して円周(回転)方向に下り勾配が付けられる。したがって、表面18および25は、実質的にそれらそれぞれの全表面積にわたって完全な接触関係で整列するように構成される。同様に、支持体11におけるトルク伝達表面29のそれぞれは、半径Rに対して同じまたは類似した鋭角αで延在し、ここで、角度αは、Rに対して正または負であり得る。
【0045】
各アーム22の肩59に位置決めされたチャネル32は、突出部19をチャネル32内に収容するために、商R1/R2に類似した対応する径方向奥行を備えることに加えて、突出部19の角度長さβに対応する、円周(回転)方向に延びる長さを備える。したがって、各アーム22の少なくとも一部分は、インサート10を支持体11において軸方向に係止するように、各突出部19と径方向に重なり合う。具体的には、各チャネル32は、対応する縦向き端部32a、32bと、各チャネル32の径方向奥行を画定する、縦方向に延在する側壁51、52の対と、を備える。各突出部19がチャネル32内に配置されると、縦方向に延在する(突出部19)の壁表面19aおよび19bは、チャネル32の対応する縦方向に延在する壁51、52に当接して、順方向(インサートを支持体から分離するように作用する方向)における軸方向係止を実現することができる。さらに、各チャネルは、(各突出部19)の円筒状の径方向最外表面66に対向して位置決めされるように構成された部分円筒状の径方向内方表面53によってさらに画定される。各チャネル縦向き端部32a、32bは、突出部19を導いてチャネル32内に受け入れるために、インサート10が軸12の周りで回転されることを可能にするように「開いて」いる。軸方向最後部のチャネル壁52は、下り勾配付きの表面50(やはり円周方向に延びる長さを有する)に移行し、この表面50は、インサートネック15を収容するように構成された空洞65を画定するために、軸方向後方に移行する。
【0046】
各アーム22の径方向内向きの位置決め表面30は、軸方向末端縁47、49の対および対応する対向した側縁48a、48bの対(円周方向において分離されている)によって画定された、径方向に陥凹したポケット46を備える。各アームポケット46は、それぞれの第2の突出部36を収容するための(軸方向および円周方向における)長さおよび幅を備える。具体的には、インサート10がアーム22間で(ジョー28内で)所定の位置へ回転されるときに、各第2の突出部36は、それぞれのポケット46内に受け入れられるときに(突出部36が側縁48a、48b上を摺動するときに)、対応するスナップクリップ触知性表示を提供する。
【0047】
使用に際して、軸方向支持表面18、25の(それぞれの角度θにおける)第1の下り勾配付き配向部は、アーム22がインサート10をジョー28内の取付け位置において軸方向にかつ回転的に保持するのに十分な度合いでインサートネック15を径方向に押圧するように、軸方向負荷力の一部分を径方向内方に向けるのに有利である。表面18、25の(それぞれの角度δにおける)第2の下り勾配配向部は、インサート10と支持体11との間で伝達されるときのトルクならびに軸方向および径方向に配向された力の方向および大きさを制御しかつ管理するように構成される。具体的には、第2の下り勾配配向部は、さもなければ支持体11の耐用寿命を短縮させるか終結させるであろう保持アーム22における応力集中を防ぐために、径方向内方に向けられる力の大きさを効率的に限定するように適合される。
【0048】
支持体11におけるインサート10の軸方向係止、すなわち軸方向の分離に対する係止は、突出部19およびチャネル32の径方向の重なり合いによってもたらされる。突出部19およびチャネル32をネック15および空洞65の軸方向前方に位置決めすることにより、ネック15の相対的表面積(ならびに、材料の体積および質量)が、支持体11におけるインサート10の軸12に対する「センタリング」を向上させるように最大化され得る。
【0049】
さらに、突出部19の相対的な軸方向位置は、成形技法(正確な機械加工/研削の必要性が排除され得る)またはその後に円筒状表面35の正確な研削が続く鋳造によるインサート10の製造を容易にするのに有利である。具体的には、本発明によれば、さもなければ研削工具の邪魔になり得る突出部またはチャネルが、ネック15の領域には存在しない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-07-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を切削するための回転式穿孔工具の切削インサート(10)であって、
長手軸(12)に沿って延在するヘッド(14)およびネック(15)であって、前記ヘッド(14)が、軸方向前向きの切削領域(13)を有し、前記ネック(15)が、軸方向後ろ向きの取付け領域(67)を有し、少なくとも前記ネック(15)が、支持体(11)のジョー(28)内に解放可能に取付け可能である、ヘッド(14)およびネック(15)を備え、
前記ヘッド(14)が、前記支持体の対応する軸方向支持表面(25)と当接するために前記ネック(15)から径方向外方に突出している全体的に軸方向後ろ向きの軸方向支持表面(18)を有し、
前記ヘッド(14)が、前記長手軸から径方向外方に突出している全体的に直径方向に対向したローブ(33)の対によって形成される、切削インサート(10)であって、
前記ヘッド(14)が、位置決め表面(34)を有し、
前記ネック(15)が、前記切削インサート(10)の前記ヘッド(14)の後方の軸方向位置において径方向突出部(19)を含まない径方向外側表面(35)を有し、
前記位置決め表面(34)は、全体的に部分円筒状であり、かつ湾曲した前記径方向外側表面(35)に類似した半径を有することを特徴とする、切削インサート(10)。
【請求項2】
前記ローブ(33)は部分的に、前記ヘッド(14)および前記ネック(15)内へ径方向に陥凹した凹状曲面(37)により、円周方向において画定され、かつ分離されている、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項3】
少なくとも1つの径方向突出部(19)が、前記位置決め表面(34)または前記ヘッド(14)の領域から延在しかつ円周方向において前記ローブ(33)間に位置決めされている、請求項1または2に記載の切削インサート。
【請求項4】
前記少なくとも1つの径方向突出部(19)は第1の端部(40)および第2の端部(39)を有し、前記第1の端部(40)は、前記第2の端部(39)に対してテーパ付けされている、請求項1から3のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項5】
前記切削インサートの前記ネックが、少なくとも1つの湾曲した径方向外側表面(35)によって画定される部分円筒状である、請求項1から4のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項6】
金属を切削するための回転式穿孔工具であって、
請求項1から5のいずれか一項に記載の切削インサートと、
前記長手軸(12)に沿って延在し、かつ、軸方向に延在する少なくとも2つのアーム(22)により軸方向前方端において終端される支持体(11)であって、前記アームが、前記ジョー(28)を画定するように前記長手軸の周りで離間される、支持体(11)と、を備える、回転式穿孔工具。
【請求項7】
各アームが、全体的に軸方向前向きの軸方向支持表面(25)を提示する肩(59)を有し、前記切削インサートが、前記切削インサートおよび前記支持体の前記軸方向支持表面がそれぞれ互いに当接するように構成されるように、前記アーム間の前記ジョー内に解放可能に取付け可能である、請求項に記載の回転式穿孔工具
【請求項8】
前記アームのそれぞれが、前記支持体において前記切削インサートを軸方向に保持するために、前記切削インサートの前記少なくとも1つの径方向突出部(19)をそれぞれ受け入れるように構成された凹部(32)を内向きの表面(26、30)に備える、請求項6または7に記載の回転式穿孔工具
【外国語明細書】