(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138984
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】VEGF-Aポリペプチドをコードする改変RNAを送達するための脂質ナノ粒子
(51)【国際特許分類】
C12N 15/19 20060101AFI20230926BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230926BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230926BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20230926BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20230926BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20230926BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230926BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230926BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230926BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230926BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20230926BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20230926BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20230926BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230926BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230926BHJP
B82Y 5/00 20110101ALI20230926BHJP
【FI】
C12N15/19
A61K9/14 ZNA
A61K47/18
A61K47/24
A61K47/28
A61K47/44
A61K48/00
A61P3/10
A61P9/00
A61P17/02
A61K9/127
A61K9/51
A61K31/7105
A61P43/00 105
A61K47/10
B82Y5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】52
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107089
(22)【出願日】2023-06-29
(62)【分割の表示】P 2020524225の分割
【原出願日】2018-10-31
(31)【優先権主張番号】62/579,671
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513084469
【氏名又は名称】モデルナティエックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ModernaTX,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】ハンソン,ケニー・ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ベネナート,ケリー
(72)【発明者】
【氏名】ボグベリ,マリア
(72)【発明者】
【氏名】ポルソン,アンニカ
(72)【発明者】
【氏名】フリッチェ-ダニエルソン,レジーナ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】脂質成分とVEGF-Aポリペプチドをコードする改変RNAとを含むナノ粒子、および対象における創傷治癒を向上させるための、脂質成分とVEGF-Aポリペプチドをコードする改変RNAとを含むナノ粒子の使用を提供する。
【解決手段】(i)構造
を有する化合物を含む脂質成分と、(ii)特定の配列のVEGF-Aポリペプチドをコードする、特定の配列群のいずれか1つを含む改変RNAとを含むナノ粒子とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)構造
【化1】
を有する化合物を含む脂質成分と、
(ii)配列番号2のVEGF-Aポリペプチドをコードする、配列番号1及び3~5のいずれか1つを含む改変RNAと
を含むナノ粒子。
【請求項2】
前記脂質成分が、リン脂質、構造脂質、及び/又はPEG脂質をさらに含む、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
前記リン脂質が、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、l,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0 Diether PC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミサクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME 16.0 PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、スフィンゴミエリン、及びそれらの混合物からなる群から選択される;及び/又は
前記構造脂質が、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンプエステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、ウルソール酸、α-トコフェロール、及びそれらの混合物からなる群から選択される;及び/又は
前記PEG脂質が、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール、及びそれらの混合物からなる群から選択される、
請求項2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
前記脂質成分が、DSPCであるリン脂質、コレステロールである構造脂質、及び/又
はPEG-DMGであるPEG脂質をさらに含む、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項5】
前記N:P比が、約2:1から約30:1である、請求項1~4のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項6】
前記N:P比が、約5.67:1である、請求項5に記載のナノ粒子。
【請求項7】
前記N:P比が、約3:1である、請求項5に記載のナノ粒子。
【請求項8】
前記脂質成分と前記改変RNAのwt/wt比が、約10:1から約100:1である、請求項1~4のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項9】
前記脂質成分と前記改変RNAのwt/wt比が、約20:1である、請求項8に記載のナノ粒子。
【請求項10】
前記脂質成分と前記改変RNAのwt/wt比が、約10:1である、請求項8に記載のナノ粒子。
【請求項11】
約50nmから100nmの平均直径を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項12】
(a)(i)構造
【化2】
を有する化合物を含む脂質成分と、(ii)配列番号2のVEGF-Aポリペプチドをコードする、配列番号1及び3~5のいずれか1つを含む改変RNAとを含む少なくとも1種のナノ粒子;と
(b)薬学的に許容し得る賦形剤と
を含む医薬組成物。
【請求項13】
前記脂質成分が、リン脂質、構造脂質、及び/又はPEG脂質をさらに含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記リン脂質が、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、l,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0 Diether PC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミサクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-
グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME 16.0 PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、スフィンゴミエリン、及びそれらの混合物からなる群から選択される;
前記構造脂質が、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンプエステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、ウルソール酸、α-トコフェロール、及びそれらの混合物からなる群から選択される;及び/又は
前記PEG脂質が、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール、及びそれらの混合物からなる群から選択される、
請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記脂質成分が、DSPCであるリン脂質、コレステロールである構造脂質、及び/又はPEG-DMGであるPEG脂質をさらに含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記N:P比が、約2:1から約30:1である、請求項12~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記N:P比が、約5.67:1である、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記N:P比が、約3:1である、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記脂質成分と前記改変RNAのwt/wt比が、約10:1から約100:1である、請求項12~18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記脂質成分と前記改変RNAのwt/wt比が、約20:1である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記脂質成分と前記改変RNAのwt/wt比が、約10:1である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記ナノ粒子が、約50nmから100nmの平均直径を有する、請求項12~21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
哺乳類組織又は対象に投与された場合に、最大約450pg/ml(血漿)又はpg/mg(組織)の、配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの観察される最大の血漿及び/又は組織濃度Cmaxをもたらす、請求項12~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
哺乳類組織又は対象に投与された場合に、最大約5,500pg*h/ml(血漿)又はpg*h/mg(組織)の、配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの血漿及び/又は組織の曲線下総面積AUC0-tをもたらす、請求項12~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
哺乳類組織又は対象に投与された場合に、8時間以内の約400pg/mg(組織)超の配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの産生をもたらす、請求項12~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
哺乳類組織又は対象に投与された場合に、最大6日間の約1pg/mg(組織)超の配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの産生をもたらす、請求項12~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記薬学的に許容し得る賦形剤が、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘又は乳化剤、保存剤、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、及びそれらの混合物から選択される、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項28】
対象における創傷治癒を促進する及び/又は向上させるための方法であって、有効量の請求項1~11のいずれか一項に記載のナノ粒子又は請求項12~27のいずれか一項に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む方法。
【請求項29】
前記ナノ粒子の脂質成分が、リン脂質、構造脂質、及びPEG脂質をさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記リン脂質が、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、l,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0 Diether PC)、1-オレオイル-2コレステリルヘミサクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME 16.0 PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、スフィンゴミエリン、及びそれらの混合物からなる群から選択される;
前記構造脂質が、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンプエステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、ウルソール酸、α-トコフェロール、及びそれらの混合物からなる群から選択される;及び/又は
前記PEG脂質が、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール、及びそれらの混合物からなる群から選択される、
請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記脂質成分が、DSPCであるリン脂質、コレステロールである構造脂質、及び/又はPEG-DMGであるPEG脂質をさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記ナノ粒子のN:P比が、約2:1から約30:1である、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記ナノ粒子のN:P比が、約5.67:1である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ナノ粒子のN:P比が、約3:1である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記脂質成分と前記改変RNAのwt/wt比が、約10:1から約100:1である、請求項28~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記脂質成分と前記改変RNAのwt/wt比が、約20:1である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記脂質成分と前記改変RNAのwt/wt比が、約10:1である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記ナノ粒子が、約70nmから約80nmの平均直径を有する、請求項28~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記ナノ粒子が、約72nmの平均直径を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記投与が、最大約450pg/ml(血漿)又はpg/mg(組織)の、配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの観察される最大の血漿及び/又は組織濃度Cmaxをもたらす、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記投与が、最大約5,500pg*h/ml(血漿)又はpg*h/mg(組織)の、配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの血漿及び/又は組織の曲線下総面積AUC0-tをもたらす、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記投与が、8時間以内の約400pg/mg(組織)超の配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの産生をもたらす、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記投与が、最大6日間の約1pg/mg(組織)超の配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの産生をもたらす、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記ナノ粒子又は前記医薬組成物が、皮内投与される、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記改変RNAの濃度が、約0.01mg/kgから約10mg/kgである、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記投与が、クエン酸生理食塩水緩衝液中の改変RNAの投与と比較した場合に、約5から約100倍の配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの産生の増大をもたらす、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記対象が、糖尿病を患っている、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記創傷が、手術創、熱傷、擦過傷、皮膚生検部位、慢性創傷、損傷(例えば、外傷性損傷の創傷)、移植創、糖尿病性創傷、糖尿病性潰瘍(例えば、糖尿病性足部潰瘍)、褥瘡、床ずれ、及びそれらの組み合わせである、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記医薬組成物が、薬学的に許容し得る賦形剤、好ましくは、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘又は乳化剤、保存剤、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、及びそれらの混合物を含む、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
哺乳類組織又は対象における血管新生を誘導するための方法であって、有効量の、請求項1~11のいずれか一項に記載のナノ粒子又は請求項12~27のいずれか一項に記載の医薬組成物を、前記哺乳類組織又は対象に投与することを含む方法。
【請求項51】
哺乳類組織又は対象における血管形成を誘導するための方法であって、有効量の、請求項1~11のいずれか一項に記載のナノ粒子又は請求項12~27のいずれか一項に記載の医薬組成物を、前記哺乳類組織又は対象に投与することを含む方法。
【請求項52】
哺乳類組織又は対象における毛細血管及び/又は細動脈密度を増大させるための方法であって、有効量の、請求項1~11のいずれか一項に記載のナノ粒子又は請求項12~27のいずれか一項に記載の医薬組成物を、前記哺乳類組織又は対象に投与することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.関連出願の相互参照
本出願は、その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる、2017年10月31日に出願された米国仮特許出願第62/579,671号明細書に対する優先権を主張する。
【0002】
2.配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出されており、且つ、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、配列表を含有する。2018年10月31日に作成された前記ASCIIコピーは、09963_0092-00304_SL.txtという名称であり、サイズは11,396バイトである。
【0003】
3.分野
本開示は、脂質成分とVEGF-Aポリペプチドをコードする改変RNAとを含むナノ粒子に関する。本開示の態様は、さらに、対象における創傷治癒を向上させるための、脂質成分とVEGF-Aポリペプチドをコードする改変RNAとを含むナノ粒子の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
4.背景
血管内皮増殖因子A(VEGF-A)経路は、損傷を受けた組織の血行再建、血管透過性を向上させること及び新しい血管の形成(血管形成)を含めた創傷治癒過程における中心的役割を果たす。対象における創傷治癒を向上させることなどの治療効果の可能性のためにVEGF-A経路を増強するための薬剤を与えることは、難しいままである。
【0005】
標的組織におけるVEGF-Aタンパク質を増大させるための臨床的に扱いやすい手法を可能にするための、多くの多様な方法が試みられている。しかし、これらの手法はそれぞれ、重大な欠点を有する。例えば、全身的VEGF-Aタンパク質送達は、重大な低血圧をもたらす可能性があり、且つVEGF-Aは急速に分解される。ウイルスカプセル化及びネイキッドVEGF-A DNAプラスミドは、タンパク質発現の時間的制御が限定的であり、且つインビボ発現の効率は、非常に様々且つ非用量依存性であり得る。結果として、これらの制約が、治療薬としてVEGF-Aレベルを増強する適用可能性を制限している。
【0006】
別の最近の発展は、VEGF-Aタンパク質をコードする治療用RNAを送達することである。しかし、天然のRNAの細胞への送達は、こうしたRNA分子の相対的不安定性及び低細胞透過性に起因して、難しい可能性がある。また、天然のRNAは、免疫活性化を誘発する可能性があり(例えば、Kaczmarek et al.,“Advances in the delivery of RNA therapeutics:from concept to clinical reality,”Genome Med.,2017,9:60を参照のこと)、これによって、VEGF-Aタンパク質を標的組織に送達するための天然のRNAの使用が制限される。
【0007】
したがって、VEGF-Aタンパク質をコードするRNAの有効且つ安全な送達を可能にする組成物の必要性が、依然として存在する。さらに、対象における創傷治癒を向上させることなどの治療効果の可能性のためにVEGF-A経路を増強するための代替方法の
必要性が、依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
5.概要
本開示は、脂質成分とVEGF-Aポリペプチドをコードする改変RNAとを含むナノ粒子に関する。本開示の態様は、さらに、対象における創傷治癒を向上させるための、脂質成分とVEGF-Aポリペプチドをコードする改変RNAとを含むナノ粒子の使用に関する。
【0009】
本開示のある種の実施態様を、以下の段落にまとめて示す。このリストは、例示的に過ぎず、この開示によって提供される実施態様のすべてを網羅しない。
【0010】
実施形態1.(i)構造
【化1】
を有する化合物を含む脂質成分と、
(ii)配列番号2のVEGF-Aポリペプチドをコードする、配列番号1及び3~5のいずれか1つを含む改変RNAと
を含むナノ粒子。
【0011】
実施形態2.脂質成分が、リン脂質、構造脂質(structural lipid)、及び/又はPEG脂質をさらに含む、実施形態1のナノ粒子。
【0012】
実施形態3.リン脂質が、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、l,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0 Diether PC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミサクシノイル(cholesterylhemisuccinoyl)-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME 16.0 PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホ
スホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、スフィンゴミエリン、及びそれらの混合物からなる群から選択される;
構造脂質が、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンプエステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、ウルソール酸、α-トコフェロール、及びそれらの混合物からなる群から選択される;及び/又はPEG脂質が、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール、及びそれらの混合物からなる群から選択される、
実施形態2のナノ粒子。
【0013】
実施形態4.脂質成分が、DSPCであるリン脂質、コレステロールである構造脂質、及び/又はPEG-DMGであるPEG脂質をさらに含む、実施形態1のナノ粒子。
【0014】
実施形態5.N:P比が、約2:1から約30:1である、実施形態1~4のいずれか1つに記載のナノ粒子。
【0015】
実施形態6.N:P比が、約5.67:1である、実施形態5のナノ粒子。
【0016】
実施形態7.N:P比が、約3:1である、実施形態5のナノ粒子。
【0017】
実施形態8.脂質成分と改変RNAのwt/wt比が、約10:1から約100:1である、実施形態1~4のいずれか1つに記載のナノ粒子。
【0018】
実施形態9.脂質成分と改変RNAのwt/wt比が、約20:1である、実施形態8のナノ粒子。
【0019】
実施形態10.脂質成分と改変RNAのwt/wt比が、約10:1である、実施形態8のナノ粒子。
【0020】
実施形態11.約50nmから100nmの平均直径を有する、実施形態1~4のいずれか1つに記載のナノ粒子。
【0021】
実施形態12.(a)(i)構造
【化2】
を有する化合物を含む脂質成分と、(ii)配列番号2のVEGF-Aポリペプチドをコードする、配列番号1及び3~5のいずれか1つを含む改変RNAとを含む少なくとも1種のナノ粒子;と
(b)薬学的に許容し得る賦形剤と
を含む医薬組成物。
【0022】
実施形態13.脂質成分が、リン脂質、構造脂質、及び/又はPEG脂質をさらに含む、実施形態12の医薬組成物。
【0023】
実施形態14.リン脂質が、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、l,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0 Diether PC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミサクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME 16.0 PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、スフィンゴミエリン、及びそれらの混合物からなる群から選択される;
構造脂質が、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンプエステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、ウルソール酸、α-トコフェロール、及びそれらの混合物からなる群から選択される;及び/又はPEG脂質が、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール、及びそれらの混合物からなる群から選択される、
実施形態13の医薬組成物。
【0024】
実施形態15.脂質成分が、DSPCであるリン脂質、コレステロールである構造脂質、及び/又はPEG-DMGであるPEG脂質をさらに含む、実施形態12の医薬組成物。
【0025】
実施形態16.N:P比が、約2:1から約30:1である、実施形態12~15のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0026】
実施形態17.N:P比が、約5.67:1である、実施形態16の医薬組成物。
【0027】
実施形態18.N:P比が、約3:1である、実施形態16の医薬組成物。
【0028】
実施形態19.脂質成分と改変RNAのwt/wt比が、約10:1から約100:1である、実施形態12~18のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0029】
実施形態20.脂質成分と改変RNAのwt/wt比が、約20:1である、実施形態19の医薬組成物。
【0030】
実施形態21.脂質成分と改変RNAのwt/wt比が、約10:1である、実施形態19の医薬組成物。
【0031】
実施形態22.ナノ粒子が、約50nmから100nmの平均直径を有する、実施形態12~21のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0032】
実施形態23.哺乳類組織又は対象に投与された場合に、最大約450pg/ml(血漿)又はpg/mg(組織)の、配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの観察される最大の血漿及び/又は組織濃度Cmaxをもたらす、実施形態12~22のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0033】
実施形態24.哺乳類組織又は対象に投与された場合に、最大約5,500pg*h/ml(血漿)又はpg*h/mg(組織)の、配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの血漿及び/又は組織の曲線下総面積AUC0-tをもたらす、実施形態12~22のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0034】
実施形態25.哺乳類組織又は対象に投与された場合に、8時間以内の約400pg/mg(組織)超の配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの産生をもたらす、実施形態12~22のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0035】
実施形態26.哺乳類組織又は対象に投与された場合に、最大6日間の約1pg/mg(組織)超の配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの産生をもたらす、実施形態12~22のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0036】
実施形態27.薬学的に許容し得る賦形剤が、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘又は乳化剤、保存剤、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、及びそれらの混合物から選択される、実施形態12の医薬組成物。
【0037】
実施形態28.対象における創傷治癒を促進する及び/又は向上させるための方法であって、有効量の実施形態1~11のいずれか1つに記載のナノ粒子又は実施形態12~27のいずれか1つに記載の医薬組成物を対象に投与することを含む方法。
【0038】
実施形態29.ナノ粒子の脂質成分が、リン脂質、構造脂質、及びPEG脂質をさらに含む、実施形態28の方法。
【0039】
実施形態30.リン脂質が、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、l,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0 Diether PC)、1-オレオイル-2コレステリルヘミサクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME 16.0 PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1
,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、スフィンゴミエリン、及びそれらの混合物からなる群から選択される;
構造脂質が、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンプエステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、ウルソール酸、α-トコフェロール、及びそれらの混合物からなる群から選択される;及び/又はPEG脂質が、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール、及びそれらの混合物からなる群から選択される、
実施形態29の方法。
【0040】
実施形態31.脂質成分が、DSPCであるリン脂質、コレステロールである構造脂質、及び/又はPEG-DMGであるPEG脂質をさらに含む、実施形態28の方法。
【0041】
実施形態32.ナノ粒子のN:P比が、約2:1から約30:1である、実施形態28~31のいずれか1つに記載の方法。
【0042】
実施形態33.ナノ粒子のN:P比が、約5.67:1である、実施形態32の方法。
【0043】
実施形態34.ナノ粒子のN:P比が、約3:1である、実施形態32の方法。
【0044】
実施形態35.脂質成分と改変RNAのwt/wt比が、約10:1から約100:1である、実施形態28~34のいずれか1つに記載の方法。
【0045】
実施形態36.脂質成分と改変RNAのwt/wt比が、約20:1である、実施形態35の方法。
【0046】
実施形態37.脂質成分と改変RNAのwt/wt比が、約10:1である、実施形態35の方法。
【0047】
実施形態38.ナノ粒子が、約70nmから約80nmの平均直径を有する、実施形態28~37のいずれか1つに記載の方法。
【0048】
実施形態39.ナノ粒子が、約72nmの平均直径を有する、実施形態38の方法。
【0049】
実施形態40.投与が、最大約450pg/ml(血漿)又はpg/mg(組織)の、配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの観察される最大の血漿及び/又は組織濃度Cmaxをもたらす、実施形態28~39のいずれか1つに記載の方法。
【0050】
実施形態41.投与が、最大約5,500pg*h/ml(血漿)又はpg*h/mg(組織)の、配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの血漿及び/又は組織の曲線下総面積AUC0-tをもたらす、実施形態28~39のいずれか1つに記載の方法。
【0051】
実施形態42.投与が、8時間以内の約400pg/mg(組織)超の配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの産生をもたらす、実施形態28~39のいずれか1つに記載の方法。
【0052】
実施形態43.投与が、最大6日間の約1pg/mg(組織)超の配列番号2のVEG
F-Aポリペプチドの産生をもたらす、実施形態28~39のいずれか1つに記載の方法。
【0053】
実施形態44.ナノ粒子又は医薬組成物が、皮内投与される、実施形態28~39のいずれか1つに記載の方法。
【0054】
実施形態45.改変RNAの濃度が、約0.01mg/kgから約10mg/kgである、実施形態28~39のいずれか1つに記載の方法。
【0055】
実施形態46.投与が、クエン酸生理食塩水緩衝液中の改変RNAの投与と比較した場合に、約5から約100倍の配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの産生の増大をもたらす、実施形態28~39のいずれか1つに記載の方法。
【0056】
実施形態47.対象が、糖尿病を患っている、実施形態28~39のいずれか1つに記載の方法。
【0057】
実施形態48.創傷が、手術創、熱傷、擦過傷(abrasive wound)、皮膚生検部位、慢性創傷、損傷(例えば、外傷性損傷の創傷)、移植創、糖尿病性創傷、糖尿病性潰瘍(例えば、糖尿病性足部潰瘍)、褥瘡、床ずれ、及びそれらの組み合わせである、実施形態28~39のいずれか1つに記載の方法。
【0058】
実施形態49.医薬組成物が、薬学的に許容し得る賦形剤、好ましくは、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘又は乳化剤、保存剤、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、及びそれらの混合物を含む、実施形態28~39のいずれか1つに記載の方法。
【0059】
実施形態50.哺乳類組織又は対象における血管新生を誘導するための方法であって、有効量の、実施形態1~11のいずれか1つに記載のナノ粒子又は実施形態12~27のいずれか1つに記載の医薬組成物を、哺乳類組織又は対象に投与することを含む方法。
【0060】
実施形態51.哺乳類組織又は対象における血管形成を誘導するための方法であって、有効量の、実施形態1~11のいずれか1つに記載のナノ粒子又は実施形態12~27のいずれか1つに記載の医薬組成物を、哺乳類組織又は対象に投与することを含む方法。
【0061】
実施形態52.哺乳類組織又は対象における毛細血管及び/又は細動脈密度を増大させるための方法であって、有効量の、実施形態1~11のいずれか1つに記載のナノ粒子又は実施形態12~27のいずれか1つに記載の医薬組成物を、哺乳類組織又は対象に投与することを含む方法。
【0062】
6.図面の説明
当分野の技術者は、以下に記載される図面が、例示目的にすぎないことを理解するであろう。これらの図面は、本発明の教示の範囲を制限することを決して意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】実施例で使用される脂質化合物(化合物A)を示す。
【
図2】改変されたVEGF-A RNA構築物の構造の図(
図2A)及び典型的なVEGF-A改変RNAの配列(配列番号1、
図2B)。
【
図3】それぞれ、クエン酸生理食塩水中に配合された100μg VEGF-A改変RNA(三角形、破線)及び脂質ナノ粒子(LNP)中に配合された3μg VEGF-A改変RNA(円、実線)の皮内注射の144時間後までの時間の関数としての、皮膚生検材料中のヒトVEGF-Aタンパク質含有量。線は、各時点での中央値を表す。
【
図4】それぞれ、クエン酸生理食塩水中に配合された100μg VEGF-A改変RNA(三角形、破線)及びLNP中に配合された3μg VEGF-A改変RNA(円、実線)の皮内注射の48時間後までの時間の関数としての、皮膚生検材料中のヒトVEGF-Aタンパク質含有量。線は、各時点での中央値を表す。
【
図5】次の組成物:(1)1μg VEGF-A改変RNAを含む脂質ナノ粒子組成物(n=6)、(2)3μg VEGF-A改変RNA(n=6)を含む脂質ナノ粒子組成物、(3)3μg 非翻訳性VEGF-A RNAを含む脂質ナノ粒子組成物(n=6)、及び(4)100μg VEGF-A改変RNAを含むクエン酸生理食塩水組成物(n=7)の皮内注射の後の創傷治癒(パーセント)。
【
図6】次の組成物:(1)3μg VEGF-A改変RNAを含む脂質ナノ粒子組成物(n=5)、(2)3μg 非翻訳性VEGF-A改変RNAを含む脂質ナノ粒子組成物(n=5)、及び(3)いずれの改変RNAも含まないクエン酸生理食塩水組成物(n=5)の皮内注射の後の創傷治癒(パーセント)。
【
図7】次の組成物:(1)3μg VEGF-A改変RNAを含む脂質ナノ粒子組成物(n=6)、(2)いずれの改変RNAも含まない脂質ナノ粒子組成物(n=5)、(3)3μg GFP改変RNAを含む脂質ナノ粒子組成物(n=6)、及び(4)いずれの改変RNAも含まないクエン酸生理食塩水組成物(n=6)の皮内注射の後の創傷治癒(パーセント)。
【
図8】次の組成物:(1)3μg 非翻訳性VEGF-A改変RNAを含む脂質ナノ粒子組成物(n=7)、(2)100μg VEGF-A改変RNAを含むクエン酸生理食塩水組成物(n=7)、(3)100μg 非翻訳性VEGF-A改変RNAを含むクエン酸生理食塩水組成物(n=7)、及び(4)いずれの改変RNAも含まないクエン酸生理食塩水組成物(n=7)の皮内注射の後の創傷治癒(パーセント)。
【発明を実施するための形態】
【0064】
7.詳細な説明
本開示にて言及したすべての参考文献の全体を、参照によって本明細書に組み込む。
【0065】
前述の説明及び付随する図面において与えられる教示の利益を有する、本明細書で説明する本開示の多くの改変及び他の実施態様は、これらの開示が属する分野の技術者に思い浮かぶであろう。したがって、本開示は、開示される具体的実施態様に限定されるべきではないこと、また、改変及び他の実施態様が、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図されることが理解されよう。本明細書では特定の用語が用いられるが、これらは、一般的且つ説明的な意味でのみ使用され、限定の目的では使用されない。
【0066】
単位、接頭辞、及び記号は、それらのSI承認形で表示することができる。別に示されない限り、それぞれ、核酸は、5’から3’方向に左から右に書かれ;アミノ酸配列は、アミノからカルボキシ方向に左から右に書かれる。数値範囲には、範囲を定義する数字が含まれる。本明細書の値の範囲の記述は、単に、範囲内にあるそれぞれ別の値を個々に言及する簡便表記方法としての役割を果たすことを意図するに過ぎない。本明細書において別に示されない限り、それぞれ個々の値は、あたかもそれが本明細書に個々に列挙されるかのように本明細書に組み込まれる。アミノ酸は、本明細書では、その一般に知られている3文字記号によって、又はIUPAC-IUB生化学命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)によって推奨されている1文字記号によって称することができる。ヌクレオチドも同様に、その一般に受け入れられている1文字コードによって称することができる。
【0067】
7.1.定義
別に具体的に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、
本開示が属する分野の技術者によって普通に理解されるのと同じ意味を有する。別に言及しない限り、本明細書で用いられる又は企図される技術は、当分野の技術者に周知の標準の方法論である。本開示の実施は、別に示されない限り、当分野の技術内である、微生物学、組織培養、分子生物学、化学、生化学、及び組換えDNA技術の従来の技術を用いることとなる。材料、方法、及び例は、例示に過ぎず、限定ではない。以下のものは、例示の目的で示され、本開示の範囲を限定することを意図しない。
【0068】
いくつかの実施態様では、本明細書(それに特許請求の範囲全体が組み込まれる)に記述する数値パラメータは、概数であり、特定の実施態様によって得られることが求められる所望される特性に応じて変動し得る。いくつかの実施態様では、数値パラメータは、報告された有効桁数に照らして、また、通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。本開示の広範にわたるいくつかの実施態様を記述する数値範囲及びパラメータは概数であるが、具体的な例において記述される数値は、可能な限り正確に報告される。本開示のいくつかの実施態様において示される数値は、そのそれぞれの試験測定において見られる標準偏差に必然的に起因する、いくらかの誤差を含有する可能性がある。本明細書の値の範囲の記述は、単に、範囲内にあるそれぞれ別の値を個々に言及する簡便表記方法としての役割を果たすことを意図するに過ぎない。本明細書において別に示されない限り、それぞれ個々の値は、あたかもそれが本明細書に個々に列挙されるかのように本明細書に組み込まれる。
【0069】
便宜のために、本出願全体(明細書、実施例、及び添付の特許請求の範囲を含む)において用いられるある種の用語を、ここに集める。別に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、本開示が属する分野の技術者によって普通に理解されるのと同じ意味を有する。
【0070】
いくつかの実施形態では、本開示のある種の実施形態を説明及び主張するために使用される成分、特性、例えば分子量、反応条件、及び結果などの量を表す数は、場合によっては、用語「約」によって修飾されるものと理解するべきである。当業者は、それが修飾する値に照らして、用語「約」の意味を理解するであろう。いくつかの実施形態では、用語「約」は、ある値が、その値を決定するために用いられている装置又は方法に対する平均値の標準偏差を含むことを示すために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書(それに特許請求の範囲全体が組み込まれる)に記述する数値パラメータは、概数であり、これは、特定の実施形態によって得られることが求められる所望される特性に応じて変動し得る。いくつかの実施形態では、数値パラメータは、報告された有効桁数に照らして、また、通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。本開示の広範にわたるいくつかの実施形態を記述する数値範囲及びパラメータは概数であるが、具体的な例において記述される数値は、可能な限り正確に報告される。本開示のいくつかの実施形態において示される数値は、そのそれぞれの試験測定において見られる標準偏差に必然的に起因する、いくらかの誤差を含有する可能性がある。
【0071】
本明細書で使用する場合、用語「投与すること」は、所望される部位又は組織位置でのナノ粒子及び/又は組成物の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法又は経路による、ナノ粒子、及び/又は少なくとも1つのナノ粒子を含む医薬組成物の、哺乳類組織又は対象への配置を指す。いくつかの実施形態では、脂質成分と改変RNAとを含むナノ粒子は、皮内経路を介して投与することができる。いくつかの実施形態では、改変RNAによって発現される少なくとも1部分のタンパク質は、皮内経路を介して、所望される標的組織又は標的細胞位置に位置される。
【0072】
用語「医薬組成物」は、治療的に活性な構成成分と、当技術分野で通常である薬学的に許容し得る担体又は賦形剤などの担体又は賦形剤とを含有する混合物を指す。例えば、本
明細書で使用される医薬組成物は、通常、少なくとも1種の脂質成分、本開示に記載の改変RNA、及び適切な賦形剤を含む。
【0073】
用語「化合物」には、表された構造のすべての同位体及び異性体が含まれる。同位体は、原子番号は同じだが核内の異なる中性子数に起因して質量数が異なる原子を指す。例えば、水素の同位体には、トリチウム及び重水素が含まれる。さらに、本開示の化合物、塩、又は複合体は、溶媒又は水分子と組み合わせて調製して、通例の方法によって溶媒和物及び水和物を形成することができる。「異性体」は、化合物の、あらゆる幾何異性体、互変異性体、双性イオン、立体異性体、鏡像異性体、又はジアステレオマーを意味する。化合物は、1つ以上のキラル中心及び/又は二重結合を含むことができ、したがって、二重結合異性体又はジアステレオマーなどの立体異性体として存在することができる。本開示は、立体異性体的に(stereomerically)純粋な形態及び鏡像異性体及び立体異性体混合物、例えばラセミ体を含めた、本明細書に記載した化合物の、ありとあらゆる異性体を包含する。化合物の鏡像異性体及び立体異性体(stereomeric)混合物、及びこれらをその構成要素の鏡像異性体又は立体異性体に分割する手段は、当技術分野で周知である。
【0074】
用語「含む」、「有する」、及び「含まれる」は、制約のない連結動詞である。これらの動詞の1つ以上のあらゆる形態又は時制、例えば、「含む(三人称単数現在形)」、「含むこと」、「有する(三人称単数現在形)」、「有すること」、「含まれる(三人称単数現在形)」、及び「~を含めて」なども、制約がない。例えば、1つ以上のステップ「を含む(三人称単数現在形)」、「を有する(三人称単数現在形)」、又は「が含まれる(三人称単数現在形)」いずれかの方法は、それらの1つ以上のステップのみを有することに限定されず、他の列挙していないステップも包含することができる。同様に、1つ以上の特徴「を含む(三人称単数現在形)」、「を有する(三人称単数現在形)」、又は「が含まれる(三人称単数現在形)」いずれかの組成物は、それらの1つ以上の特徴のみを有することに限定されず、他の列挙していない特徴も包含することができる。ある種の実施態様に関して提供される、ありとあらゆる例、又は例示的な言葉(例えば「などの」)の使用は、本明細書では、本開示を、単に、より明らかにするためのものであり、別に主張される本開示の範囲に対する制限を与えない。本明細書中の言葉は、本開示の実施に不可欠であるものとしてのいずれかの主張されていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0075】
用語「本質的に~からなる」は、主張される発明の「基本の及び新規の特性に実質的に影響を与えない」追加の材料又はステップの存在を可能にする。
【0076】
用語「からなる」は、実施態様の説明において列挙されていないあらゆる要素を除外する、本明細書に記載した通りの組成物、方法、及びそのそれぞれの構成要素を指す。
【0077】
用語「送達すること」は、実体を目的部位に提供することを意味する。例えば、治療薬を対象に送達することは、改変RNAを含む少なくとも1種のナノ粒子を含む医薬組成物を、(例えば皮内経路によって)対象に投与することを含むことができる。少なくとも1種のナノ粒子を含む医薬組成物の、哺乳類組織又は対象への投与は、1つ以上の細胞を医薬組成物と接触させることを含むことができる。
【0078】
用語「疾患」又は「障害」は、本明細書では互換的に使用され、体の又はいくつかの器官の状態の、いずれかの変化、機能の実行の中断又は妨害、及び/又は悩んでいる人又は人と接触するものに、不快、機能障害、苦痛、又はさらには死亡などの症状が起こることを指す。疾患又は障害はまた、不健康(distemper)、病的状態(ailing)、慢性的な軽い病気(ailment)、慢性病(malady)、不調(sickn
ess)、疾病(illness)、愁訴(complaint)、体調不良(indisposition)、又は病気(affection)に関連し得る。
【0079】
用語「有効量」は、本明細書で使用する場合、疾患又は障害の少なくとも1つ以上の症状を軽減させるのに、又は所望される効果を提供するのに十分な、治療薬(例えば改変RNA)又は医薬組成物の量を指す。例えば、これは、創傷治癒と関連する症状又は臨床マーカーの治療的に有意な低下をもたらす量であり得る。
【0080】
本明細書で使用する場合、核酸配列の「発現」は、以下の事象のうちの1つ以上を指す:(1)DNA配列からの(例えば転写による)RNA鋳型の産生;(2)RNA転写物のプロセシング(例えば、スプライシング、編集、5’キャップ形成、及び/又は3’末端プロセシングによる);(3)RNAのポリペプチド又はタンパク質への翻訳;及び(4)ポリペプチド又はタンパク質の翻訳後修飾。
【0081】
本明細書で使用する場合、用語「脂質成分」は、1種以上の脂質を含むナノ粒子の構成成分である。例えば、脂質成分は、1種以上のカチオン性の/イオン化可能な脂質、PEG化された脂質、構造脂質、又は他の脂質(リン脂質など)を含むことができる。一実施形態では、脂質成分は、化合物Aを含む(
図1)。
【0082】
本明細書で使用する場合、用語「改変RNA」は、アデノシン(A)((2R,3R,4S,5R)-2-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-3,4-ジオール)、グアノシン(G)(2-アミノ-9-[3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]-3H-プリン-6-オン)、シチジン(C)(4-アミノ-1-[3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル]ピリミジン-2-オン)、及びウリジン(U)(1-[(3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2,4-ジオン)と比較して、又は、RNA分子内のAMP、GMP、CMP、及びUMPと比較して、1つ、2つ、又は2つよりも多いヌクレオシド改変を含有するRNA分子、又はその部分を指す。ヌクレオシド改変の非限定的な例は、本明細書内の他の場所に提供される。主張される特定のRNAのヌクレオチド配列が、天然に存在するRNA分子の配列と他の点で同一である場合、改変RNAは、天然の対応物中に存在するものとは異なる少なくとも1つの改変を有するRNA分子であると理解されよう。相違は、ヌクレオシド/ヌクレオチドに対する化学変化、又は配列内のその変化の位置であり得る。一実施態様では、改変RNAは、改変されたメッセンジャーRNA(又は「改変されたmRNA」)である。いくつかの実施形態では、改変RNAには、改変されてN1-メチル-シュードUMPが形成される少なくとも1つのUMPが含まれる。いくつかの実施形態では、すべてのUMPが、N1-メチル-シュードUMPによって置き換えられている。
【0083】
本明細書で使用する場合、「ナノ粒子」は、1種以上の脂質と1種以上の治療薬とを含む粒子である。ナノ粒子は、典型的には、およそ数マイクロメートル又はそれよりも小さいサイズであり、脂質二重層を含むことができる。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、動的光散乱によって測定される場合に、約50nmから約100nm、例えば約60nmから約90nm、70nmから80nmの平均直径(例えば流体力学的直径)を有する(NIST Special Publication 1200-6,“Measuring the Size of Nanoparticles in Aqueous
Media Using Batch Mode Dynamic Light Scattering”を参照のこと)。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、約71nm、72nm、73nm、74nm、75nm、76nm、77nm、78nm、79nm、80nm、81nm、82nm、83nm、84nm、85nm、86nm、87nm
、88nm、89nm、又は90nmの平均流体力学的直径を有する。いくつかの実施形態では、治療薬は、改変RNAである。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、
図1に示す通りの化合物Aと、改変RNAとを含む。
【0084】
本明細書で使用する場合、「多分散指数(polydispersion index)(pDI)」は、ナノ粒子状試料中のナノ粒子径の分布の尺度である(NIST Special Publication 1200-6,“Measuring the Size of Nanoparticles in Aqueous Media Using Batch Mode Dynamic Light Scattering”を参照のこと)。いくつかの実施形態では、多分散性指数(polydispersity index)は、約0.10から約0.20、例えば、約0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、又は0.20である。
【0085】
本明細書で使用する場合、「N:P比」は、例えば脂質成分と改変RNAとを含むナノ粒子における、脂質中の(生理学的pH範囲で)イオン化可能な窒素原子と、RNA中のリン酸基とのモル比である。
【0086】
本明細書で使用する場合、用語「核酸」には、その最も広い意味では、ホスホジエステル結合を介して連結されたヌクレオチドのポリマーを含む、あらゆる化合物及び/又は物質が含まれる。これらのポリマーは、しばしば、サイズに応じてオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドと称される。用語「ポリヌクレオチド配列」及び「ヌクレオチド配列」はまた、本明細書では互換的に使用される。
【0087】
本明細書で使用する場合、「PEG脂質」又は「PEG化された脂質」は、ポリエチレングリコール成分を含む脂質を指す。
【0088】
語句「薬学的に許容し得る」は、本明細書では、妥当なベネフィット/リスク比に相応する、過剰な毒性、刺激性、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を伴わない、ヒト及び動物の組織と接触する使用に適した、適切な医学的判断の範囲内である、化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指すために用いられる。薬物承認機関(例えば、EMA、US-FDA)は、ガイドラインを提供し、薬学的に許容し得る化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を承認する。例は、薬局方に列挙される。
【0089】
語句「薬学的に許容し得る賦形剤」は、本明細書では、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘又は乳化剤、保存剤、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、及びそれらの混合物から選択される、薬学的に許容し得る材料を指すために用いられる。いくつかの実施態様では、溶媒は、水性溶媒である。
【0090】
本明細書で使用する場合、「リン脂質」は、リン酸部分と、不飽和脂肪酸鎖などの1つ以上の炭素鎖とを含む脂質である。リン脂質は、1つ以上の多重(例えば、二重又は三重)結合(例えば、1つ以上の不飽和)を含むことができる。特定のリン脂質は、膜への融合を容易にすることができる。例えば、カチオン性のリン脂質は、膜(例えば、細胞膜又は細胞内膜)の負の電荷を持つ1つ以上のリン脂質と相互作用することができる。膜へのリン脂質の融合は、脂質含有組成物の1つ以上の要素を膜に通過させて、例えば、1つ以上の要素の細胞への送達を可能にすることができる。
【0091】
本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」は、ほとんどの場合ペプチド結合によって共に連結される、アミノ酸残基(天然又は非天然)のポリマーを意味する。この用語は、本明細書で使用する場合、あらゆるサイズ、構造、又は機能のタンパク質、ポリペプチド
、及びペプチドを意味する。ポリペプチドは、単一分子でもあり得るし、二量体、三量体、又は四量体などの多分子複合体でもあり得る。これらは、抗体又はインスリンなどの単鎖又は多連鎖ポリペプチドを含むこともでき、また、会合又は連結され得る。最も一般的には、多連鎖ポリペプチド中に、ジスルフィド結合が見られる。用語ポリペプチドは、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工の化学的類似体である、アミノ酸ポリマーにも適用することができる。
【0092】
本明細書で使用する場合、「タンパク質」は、本質的に20種のアミノ酸のいずれかからなるポリマーである。「ポリペプチド」は、多くの場合、比較的大きいポリペプチドに関して使用され、「ペプチド」は、多くの場合、小さいポリペプチドに関して使用されるが、これらの用語の使用法は、当技術分野で重なり合っており、また、多様である。用語「ペプチド」、「タンパク質」、及び「ポリペプチド」は、本明細書では、時として互換的に使用される。
【0093】
用語「対象」は、本明細書に記載した方法及び組成物を用いた、予防的治療を含めた治療が提供される動物、例えばヒトを指す。ヒト対象などの特定の動物に対して特異的である状態又は疾患状態の治療については、用語「対象」は、その特定の動物を指す。
【0094】
用語「組織」は、ある種の特別な機能を共に実施する、同様に特化された細胞の群又は層を指す。
【0095】
本明細書で使用する場合、用語「治療する」、「治療」、又は「治療すること」は、疾患若しくは又は障害又はその少なくとも1つの認識可能な症状の回復又は消失を指す。いくつかの実施形態では、「治療」又は「治療すること」は、必ずしも患者によって認識可能とは限らない少なくとも1つの測定可能な物理的パラメータの回復又は消失を指す。
【0096】
本開示が、本明細書に記載した特定の方法論、プロトコル、及び試薬などに限定されず、したがって変わり得ることを理解するべきである。本明細書で使用される用語法は、特定の実施態様を説明する目的のためだけであり、本開示の範囲を限定することを意図せず、本開示は、もっぱら特許請求の範囲によって定義される。
【0097】
7.2.脂質成分
ナノ粒子は、化合物A(
図1)を含む脂質成分を含む。追加の化合物は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第2017/049245 A2号パンフレットに開示されている(例えば、国際公開第2017/049245 A2号パンフレット中の化合物1-147を参照のこと)。脂質成分は、リン脂質、構造脂質、及び/又はPEG脂質などの様々な他の脂質も含むことができる。
【0098】
リン脂質
ナノ粒子の脂質成分は、1種以上の(多価)不飽和脂質などの、1種以上のリン脂質を含むことができる。リン脂質は、1つ以上の脂質二重層に構築することができる。一般に、リン脂質は、リン脂質部分と1つ以上の脂肪酸部分とを含むことができる。
【0099】
これらの組成物及び方法において有用なリン脂質は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、l,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2
-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0 Diether PC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミサクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME 16.0 PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、及びスフィンゴミエリンからなる、非限定的な群から選択することができる。いくつかの実施形態では、脂質成分は、DSPCを含む。いくつかの実施形態では、脂質成分は、DOPEを含む。いくつかの実施形態では、脂質成分は、DSPCとDOPEの両方を含む。
【0100】
構造脂質
ナノ粒子の脂質成分は、1種以上の構造脂質を含むことができる。構造脂質は、限定はされないが、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンプエステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、トマチン、ウルソール酸、α-トコフェロール、及びそれらの混合物から選択することができる。いくつかの実施形態では、構造脂質は、コレステロールである。いくつかの実施形態では、構造脂質は、コレステロール及び副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン、デキサメタゾン、プレドニゾン、及びヒドロコルチゾンなど)、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、脂質成分は、コレステロールを含む。
【0101】
PEG脂質
ナノ粒子の脂質成分は、1種以上のPEG又はPEG修飾脂質を含むことができる。こうした脂質は、代わりにPEG化された脂質と称することもできる。PEG脂質は、ポリエチレングリコールで修飾された脂質である。PEG脂質は、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール、及びそれらの混合物からなる、非限定的な群から選択することができる。例えば、PEG脂質は、PEG-c-DOMG、PEG-DMG(1,2-ジミリストイル-OT-グリセロールメトキシポリエチレングリコール(Avanti Polar Lipids,Alabaster,ALから入手可能))、PEG-DLPE、PEG-DMPE、PEG-DPPC、又はPEG-DSPE脂質であり得る。いくつかの実施形態では、脂質成分は、PEG-DMGを含む。
【0102】
7.3.VEGF-Aポリペプチドをコードする改変RNA
インビトロ、インビボ、インサイチュ、又はエクスビボにかかわらず、核酸、例えばリボ核酸(RNA)を、細胞に送達すること、例えば核酸の細胞内翻訳及びコードされた対象となるポリペプチドの産生を引き起こすことができることは、治療法、診断法、試薬の分野において、また、生物検定にとって非常に興味深い。
【0103】
天然に存在するRNAは、4種の基本のリボヌクレオチド:ATP、CTP、UTP、及びGTPから合成されるが、転写後に改変されたヌクレオチドも含有する可能性がある。さらに、RNA内には、およそ100種の異なるヌクレオシド改変が特定されている(
Rozenski,J,Crain,P,and McCloskey,J.,The RNA Modification Database:1999 update,Nucl Acids Res,(1999)27:196-197)。
【0104】
本開示によれば、これらのRNAは、当分野の他のRNA分子の(例えば、投与時の自然免疫応答及び急速分解を活性化する)欠点を回避するためのものとして改変されることが好ましい。したがって、これらのポリヌクレオチドは、改変RNAと呼ばれる。いくつかの実施態様では、改変RNAは、対象への投与時の自然免疫応答を回避する。いくつかの実施態様では、改変RNAの半減期は、非改変RNAと比較して延長される。
【0105】
好ましい実施態様では、RNA分子は、メッセンジャーRNA(mRNA)である。本明細書で使用する場合、用語「メッセンジャーRNA」(mRNA)は、対象となるポリペプチドをコードする、また、インビトロ、インビボ、インサイチュ、又はエクスビボで、翻訳されて、コードされた対象となるポリペプチドを産生する能力がある、あらゆるポリヌクレオチドを指す。
【0106】
図2Aに表す通り、従来、mRNA分子の基本構成要素には、少なくとも、翻訳領域、5’非翻訳領域(UTR)、3’非翻訳領域(UTR)、5’キャップ、及びポリA鎖が含まれる。この野生型モジュール構造の構築に関して、本開示は、モジュール構造化を維持するが、ポリヌクレオチドに有用な特性(いくつかの実施態様では、ポリヌクレオチドが導入される細胞の自然免疫応答の実質的誘発の欠如が含まれる)を付与する1つ以上の構造的及び/又は化学的改変若しくは変更を含む、ポリヌクレオチド又は一次RNA構築物を提供することによって、従来のmRNA分子の機能性の範囲を拡大する。
【0107】
改変RNAは、例えば糖、核酸塩基(例えば、ピリミジン核酸塩基の原子を、任意に置換されたアミノ、任意に置換されたチオール、任意に置換されたアルキル(例えば、メチル若しくはエチル)、又はハロ(例えば、クロロ若しくはフルオロ)と置き換える又は置換することによるものなどの、核酸塩基の1つ以上の改変)、又はヌクレオシド間結合(例えば、ホスホジエステル骨格に対する1つ以上の改変)に対するものなどの、標準のRNAヌクレオチド鎖と比較した場合の、いずれかの有用な改変を含むことができる。改変RNAは、他の薬剤(例えば、RNAi誘発剤、RNAi剤、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、触媒活性DNA、tRNA、三重らせん形成を誘導するRNA、アプタマー、ベクターなどを任意に含むことができる。
【0108】
非限定的な例としては、いくつかの実施態様では、改変RNAには、例えば、改変されてN1-メチル-シュードUMPが形成される、少なくとも1つのウリジン一リン酸(UMP)が含まれ得る。いくつかの実施態様では、N1-メチル-シュードUMPは、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99.9%、及び100%という、配列中のUMPの割合で、UMPの代わりに存在する。いくつかの実施態様では、すべてのUMPが、N1-メチル-シュードUMPによって置き換えられている。
【0109】
いくつかの実施態様では、改変RNAは、5’ジグアノシンキャップなどの5’キャップに対する改変を含む。いくつかの実施態様では、改変RNAは、翻訳領域に対する改変を含む。いくつかの実施態様では、改変RNAは、5’UTRに対する改変を含む。いくつかの実施態様では、改変RNAは、3’UTRに対する改変を含む。いくつかの実施態様では、改変RNAは、ポリA鎖に対する改変を含む。いくつかの実施態様では、改変RNAは、翻訳領域、5’キャップ、5’UTR、3’UTR、又はポリA鎖に対する改変のいずれかの組み合わせを含む。いくつかの実施態様では、改変RNAは、アルカリホス
ファターゼで任意に処理することができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、改変RNAは、一般に創傷治癒の調節において中心的役割を果たす、血管内皮増殖因子(VEGF)ポリペプチド、すなわちVEGFタンパク質の大きなファミリーのいずれか1つをコードする。VEGFの役割には、一酸化窒素(NO)シグナル伝達、発生上及び出生後の血管形成、腫瘍血管形成、動脈形成、内皮複製、及び多能性心血管前駆細胞のための細胞運命スイッチの活性化も含まれる。
【0111】
ある特定のVEGF遺伝子について、1以上のバリアント又はアイソフォームが存在し得ることが、当分野の技術者によって理解されよう。本開示によるVEGF-Aポリペプチドの非限定的な例を、表1に列挙する。表1に開示する配列が、隣接領域の可能性を含むことが、当分野の技術者によって理解されよう。これらは、オープンリーディングフレームの5’(上流)又は3’(下流)のいずれかに対して各ヌクレオチド配列内にコードされる。オープンリーディングフレームは、ヌクレオチド参照配列を教示することによって明確且つ具体的に開示される。1つ以上の利用可能なデータベース又はアルゴリズムを利用することによって、5’及び3’隣接領域をさらに特徴付けることも可能である。データベースは、NCBI配列の隣接領域に含まれる特徴に注釈を施しており、これらは、当技術分野で利用可能である。
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
VEGF-Aポリペプチド、例えばヒトVEGF-AポリペプチドをコードするRNA分子が、表1に列挙したVEGF-A mRNAアイソフォームにしたがって設計できることが、当分野の技術者によって理解されよう。当業者は、一般に、残りのVEGFファミリーメンバーの複数のアイソフォームを熟知している。
【0116】
一実施態様では、本開示は、VEGF-Aポリペプチド(例えば配列番号2)をコードする改変RNAを提供する。いくつかの実施態様では、改変RNAは、VEGF-Aポリペプチドをコードし、ここでは、改変RNAは、配列番号1及び3~5のいずれか一つを含む。いくつかの実施態様では、改変RNAは、5’キャップ、5’UTR、3’UTR、ポリA鎖、又はこれらのいずれかの組み合わせをさらに含む。いくつかの実施態様では、5’キャップ、5’UTR、3’UTR、ポリA鎖、又はこれらのいずれかの組み合わせは、1以上の改変されたヌクレオチドを含むことができる。
【0117】
いくつかの実施態様では、VEGF-Aポリペプチドをコードする改変RNAは、配列番号1である、
図2Bに表す通りの構造を有することができる。いくつかの実施形態では、VEGF-Aポリペプチドをコードする改変RNAは、配列番号3~5のいずれか1つの配列を有することができる。
【0118】
7.4.脂質成分と改変RNAとを含む組成物
いくつかの実施形態は、脂質成分と改変RNAとを含むナノ粒子に関する。
【0119】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子の脂質成分は、化合物A(
図1)を含むことができる。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の脂質成分は、本明細書に開示した通りのリン脂質、構造脂質、及び/又はPEG脂質をさらに含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、ナノ粒子の脂質成分は、DSPC、コレステロール、PEG-DMG、及びそれらの混合物を含むことができる。
【0120】
脂質成分の要素は、特定の比率で提供することができる。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の脂質成分は、化合物A、リン脂質、構造脂質、及びPEG脂質を含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の脂質成分は、総モル%が100%を超えないという条件で、約30モル%から約60モル%の化合物A、約0モル%から約30モル%のリン脂質、約18.5モル%から約48.5モル%の構造脂質、及び約0モル%から約10モル%のP
EG脂質を含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の脂質成分は、約35モル%から約55モル%の化合物A、約5モル%から約25モル%のリン脂質、約30モル%から約40モル%の構造脂質、及び約0モル%から約10モル%のPEG脂質を含む。いくつかの実施形態では、脂質成分は、約50モル%の化合物A、約10モル%のリン脂質、約38.5モル%の構造脂質、及び約1.5モル%のPEG脂質を含む。いくつかの実施形態では、リン脂質は、DOPEであり得る。いくつかの実施形態では、構造脂質は、コレステロールであり得る。いくつかの実施形態では、PEG脂質は、PEG-DMGであり得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子の改変RNA成分は、本明細書に開示した通りのVEGF-Aポリペプチド(例えば配列番号2)をコードする改変RNAを含むことができる。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の改変RNA成分は、配列番号1及び3~5のいずれか1つを含む改変RNAを含むことができる。いくつかの実施形態では、改変RNAは、5’キャップ、5’UTR、3’UTR、ポリA鎖、又はこれらのいずれかの組み合わせをさらに含む。いくつかの実施形態では、5’キャップ、5’UTR、3’UTR、ポリA鎖、又はこれらのいずれかの組み合わせは、1つ以上の改変されたヌクレオチドを含むことができる。
【0122】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子中の脂質成分と改変RNAの相対量は、変動し得る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子中の脂質成分と改変RNAのwt/wt比は、約5:1から約100:1、例えば5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、及び100:1であり得る。例えば、脂質成分と改変RNAのwt/wt比は、約10:1から約40:1であり得る。いくつかの実施形態では、wt/wt比は、約20:1である。いくつかの実施形態では、wt/wt比は、約10:1である。
【0123】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子中の脂質成分と改変RNAの相対量は、特定のN:P比によって提供することができる。組成物のN:P比は、1つ以上の脂質中の窒素原子と、RNA中のリン酸基の数とのモル比を指す。一般に、より小さいN:P比が好ましい。いくつかの実施形態では、N:P比は、約2:1から約30:1、例えば2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、12:1、14:1、16:1、18:1、20:1、22:1、24:1、26:1、28:1、又は30:1であり得る。いくつかの実施形態では、N:P比は、約2:1から約8:1であり得る。例えば、N:P比は、約3.0:1、約3.5:1、約4.0:1、約4.5:1、約5.0:1、約5.5:1、約5.67:1、約6.0:1、約6.5:1、又は約7.0:1であり得る。いくつかの実施形態では、N:P比は、約3:1であり得る。いくつかの実施形態では、N:P比は、約5.67:1であり得る。
【0124】
脂質ナノ粒子は、当技術分野で周知の方法を使用して調製することができる(例えば、Belliveau et al.,“Microfluidic synthesis
of highly potent limit-size lipid nanoparticles for in vivo delivery of siRNA,”Mol.Ther.Nucleic Acids,2012,1(8):e37;Zhigaltsev et al.,Bottom-up design and synthesis of limit size lipid nanoparticle systems with aqueous and triglyceride cores using millisecond microfluidic mixing,”Langmuir,2012,28(7):3633-3640を参照のこと)。
【0125】
いくつかの実施態様では、ナノ粒子は、薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含むことができ、これには、本明細書で使用する場合、限定はされないが、所望される特定の剤形に適合された、ありとあらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、又は他の液体ビヒクル、分散又は懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘又は乳化剤、保存剤などが含まれる。賦形剤はまた、限定はされないが、ポリマー、コア-シェルナノ粒子、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、ナノ粒子模倣物、及びそれらの組み合わせを含むことができる。医薬組成物を製剤化するための種々の賦形剤、及びその組成物を調製するための技術は、当技術分野で公知である(Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Edition,Edited by Allen,Loyd V.,Jr,Pharmaceutical Pressを参照のこと;その内容全体を参照によって本明細書に組み込む)。従来の賦形剤媒体の使用は、いずれかの従来の賦形剤媒体が、いずれかの望ましくない生物学的影響をもたらす又は別の方式で医薬組成物のいずれかの他の成分と有害な方式で相互作用することによって物質又はその誘導体と適合しない可能性がある場合を除いて、本開示の範囲内であると考えることができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、薬学的に有効な量の脂質成分及び改変RNAを含むことができ、ここでは、組成物は、薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む。いくつかの実施態様では、薬学的に許容し得る賦形剤は、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘又は乳化剤、保存剤、コア-シェルナノ粒子、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、及びそれらの混合物から選択される。いくつかの実施態様では、溶媒は、水性溶媒である。いくつかの実施態様では、溶媒は、非水性溶媒である。
【0127】
本開示はまた、本明細書に開示した通りの脂質成分と改変RNAとを含む1種以上の脂質ナノ粒子と、薬学的に許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書に開示した通りの複数の脂質ナノ粒子と、薬学的に許容し得る賦形剤とを含む。いくつかの実施態様では、薬学的に許容し得る賦形剤は、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘又は乳化剤、保存剤、コア-シェルナノ粒子、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、及びそれらの混合物から選択される。いくつかの実施態様では、溶媒は、水性溶媒である。いくつかの実施形態では、溶媒は、非水性溶媒である。
【0128】
7.5.対象における創傷治癒を向上させること
VEGF-A経路は、損傷を受けた組織の血行再建、血管透過性を向上させること、及び新しい血管の形成を含めた創傷治癒過程における中心的役割を果たす。不完全な創傷治癒過程に起因する疾患を患う対象を治療することが、本開示の目標である。
【0129】
いくつかの実施形態では、本開示によるナノ粒子は、血管構造に影響を与える疾患を患う対象に投与される。血管構造は、最も一般的には、穿通性の外傷、熱傷、又は手術によって損傷される。糖尿病は、創傷治癒の多数の要素を損ない、糖尿病性の創傷治癒を有する患者は一般に、血管機能障害が原因で、血流が変化している。したがって、糖尿病性潰瘍を含めた皮膚潰瘍を有する患者は、通常、創傷治癒の低下又は遅延を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示した通りのナノ粒子は、糖尿病を患う対象に投与される。本開示の文脈では、創傷は、手術創、熱傷、擦過傷、皮膚生検部位、慢性創傷、損傷(例えば、外傷性損傷の創傷)、移植創、糖尿病性創傷、糖尿病性潰瘍(例えば、糖尿病性足部潰瘍)、褥瘡、床ずれ、及びそれらの組み合わせであり得る。
【0130】
いくつかの実施形態では、脂質成分と改変RNA(例えば、配列番号1、配列番号3、
配列番号4、又は配列番号5)とを含むナノ粒子は、哺乳類組織又は対象における創傷治癒を向上させるために使用することができる。
【0131】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示した通りのナノ粒子は、哺乳類組織又は対象における血管新生を誘導するために使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示した通りのナノ粒子は、哺乳類組織又は対象における血管形成を誘導するために使用することができる。
【0132】
さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に開示した通りのナノ粒子は、外傷又は手術による血管損傷を治療するために使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示した通りのナノ粒子は、皮膚移植及び組織移植を必要とする疾患を治療するために使用することができる。
【0133】
本開示の他の態様は、それを必要とする対象へのナノ粒子の投与に関する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示した通りのナノ粒子は、哺乳類組織又は対象における創傷治癒を向上させるために、皮内経路を介して投与される。
【0134】
ある種の実施形態では、本明細書に開示した通りのナノ粒子は、所望される治療効果を得るために、1日あたり対象の体重あたり、約0.0001mg/kgから約100mg/kg、約0.001mg/kgから約0.05mg/kg、約0.005mg/kgから約0.05mg/kg、約0.001mg/kgから約0.005mg/kg、約0.05mg/kgから約0.5mg/kg、約0.01mg/kgから約50mg/kg、約0.1mg/kgから約40mg/kg、約0.5mg/kgから約30mg/kg、約0.01mg/kgから約10mg/kg、約0.1mg/kgから約10mg/kg、又は約1mg/kgから約25mg/kgの改変RNAを送達するのに十分な投薬量レベルで、1日1回以上投与することができる。
【0135】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示した通りのナノ粒子は、単回投与で対象に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示した通りのナノ粒子は、固定投薬量での複数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回、又はそれ以上の)投与で、対象に投与される。この段落内のそれぞれの実施態様では、「複数回投与」は、互いに、短い(1~5分)、中程度の(6~30分)、又は長い(30分よりも長い、数時間、さらには数日)時間間隔だけ離すことができる。
【0136】
ナノ粒子は、疾患、障害、及び/又は状態を治療するのに有効な、いずれかの投薬量の投与を使用して、対象に投与することができる。必要とされる厳密な投薬量は、対象の人種、年齢、及び全身状態、疾患の重症度、個別の製剤、その投与様式、その活性様式などに応じて、対象ごとに変わることとなる。しかし、組成物の1日の総使用量は、正確な医学的判断の範囲内で主治医によって決定することができることが理解されよう。いずれかの特定の患者にとっての、薬学的に有効な具体的な投与レベルは、疾患の重症度、用いられる具体的な組成物、患者の年齢、体重、全身の健康、性別、及び食事、投与時刻、投与経路、治療の期間、並びに医療分野で周知の同様の因子を含めた、様々な要因に応じて決まることとなる。
【0137】
請求項リスト中の請求項はすべて、追加的実施形態として、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
国際出願時の特許請求の範囲に記載された発明
〔項1〕
(i)構造
【化1a】
を有する化合物を含む脂質成分と、
(ii)配列番号2のVEGF-Aポリペプチドをコードする、配列番号1及び3~5のいずれか1つを含む改変RNAと
を含むナノ粒子。
〔項2〕
前記脂質成分が、リン脂質、構造脂質、及び/又はPEG脂質をさらに含む、請求項1に記載のナノ粒子。
〔項3〕
前記リン脂質が、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、l,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0 Diether PC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミサクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME 16.0 PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、スフィンゴミエリン、及びそれらの混合物からなる群から選択される;及び/又は
前記構造脂質が、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンプエステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、ウルソール酸、α-トコフェロール、及びそれらの混合物からなる群から選択される;及び/又は
前記PEG脂質が、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール、及びそれらの混合物からなる群から選択される、
請求項2に記載のナノ粒子。
〔項4〕
前記脂質成分が、DSPCであるリン脂質、コレステロールである構造脂質、及び/又はPEG-DMGであるPEG脂質をさらに含む、請求項1に記載のナノ粒子。
〔項5〕
前記N:P比が、約2:1から約30:1である、請求項1~4のいずれか一項に記載のナノ粒子。
〔項6〕
前記N:P比が、約5.67:1である、請求項5に記載のナノ粒子。
〔項7〕
前記N:P比が、約3:1である、請求項5に記載のナノ粒子。
〔項8〕
前記脂質成分と前記改変RNAのwt/wt比が、約10:1から約100:1である、請求項1~4のいずれか一項に記載のナノ粒子。
〔項9〕
前記脂質成分と前記改変RNAのwt/wt比が、約20:1である、請求項8に記載のナノ粒子。
〔項10〕
前記脂質成分と前記改変RNAのwt/wt比が、約10:1である、請求項8に記載のナノ粒子。
〔項11〕
約50nmから100nmの平均直径を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のナノ粒子。
〔項12〕
(a)(i)構造
【化2a】
を有する化合物を含む脂質成分と、(ii)配列番号2のVEGF-Aポリペプチドをコードする、配列番号1及び3~5のいずれか1つを含む改変RNAとを含む少なくとも1種のナノ粒子;と
(b)薬学的に許容し得る賦形剤と
を含む医薬組成物。
〔項13〕
前記脂質成分が、リン脂質、構造脂質、及び/又はPEG脂質をさらに含む、請求項12に記載の医薬組成物。
〔項14〕
前記リン脂質が、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、l,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0 Diether PC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミサクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME 16.0 PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、スフィンゴミエリン、及びそれらの混合物からなる群から選択される;
前記構造脂質が、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンプエステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、ウルソール酸、α-トコフェロール、及びそれらの混合物からなる群から選択される;及び/又は
前記PEG脂質が、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール、及びそれらの混合物からなる群から選択される、
請求項13に記載の医薬組成物。
〔項15〕
前記脂質成分が、DSPCであるリン脂質、コレステロールである構造脂質、及び/又はPEG-DMGであるPEG脂質をさらに含む、請求項12に記載の医薬組成物。
〔項16〕
前記N:P比が、約2:1から約30:1である、請求項12~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
〔項17〕
前記N:P比が、約5.67:1である、請求項16に記載の医薬組成物。
〔項18〕
前記N:P比が、約3:1である、請求項16に記載の医薬組成物。
〔項19〕
前記脂質成分と前記改変RNAのwt/wt比が、約10:1から約100:1である、請求項12~18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
〔項20〕
前記脂質成分と前記改変RNAのwt/wt比が、約20:1である、請求項19に記載の医薬組成物。
〔項21〕
前記脂質成分と前記改変RNAのwt/wt比が、約10:1である、請求項19に記載の医薬組成物。
〔項22〕
前記ナノ粒子が、約50nmから100nmの平均直径を有する、請求項12~21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
〔項23〕
哺乳類組織又は対象に投与された場合に、最大約450pg/ml(血漿)又はpg/mg(組織)の、配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの観察される最大の血漿及び/又は組織濃度C
maxをもたらす、請求項12~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
〔項24〕
哺乳類組織又は対象に投与された場合に、最大約5,500pg*h/ml(血漿)又はpg*h/mg(組織)の、配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの血漿及び/又は組織の曲線下総面積AUC
0-tをもたらす、請求項12~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
〔項25〕
哺乳類組織又は対象に投与された場合に、8時間以内の約400pg/mg(組織)超の配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの産生をもたらす、請求項12~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
〔項26〕
哺乳類組織又は対象に投与された場合に、最大6日間の約1pg/mg(組織)超の配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの産生をもたらす、請求項12~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
〔項27〕
前記薬学的に許容し得る賦形剤が、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘又は乳化剤、保存剤、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、及びそれらの混合物から選択される、請求項12に記載の医薬組成物。
〔項28〕
対象における創傷治癒を促進する及び/又は向上させるための方法であって、有効量の請求項1~11のいずれか一項に記載のナノ粒子又は請求項12~27のいずれか一項に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む方法。
〔項29〕
前記ナノ粒子の脂質成分が、リン脂質、構造脂質、及びPEG脂質をさらに含む、請求項28に記載の方法。
〔項30〕
前記リン脂質が、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、l,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0 Diether PC)、1-オレオイル-2コレステリルヘミサクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME 16.0 PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、スフィンゴミエリン、及びそれらの混合物からなる群から選択される;
前記構造脂質が、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンプエステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、ウルソール酸、α-トコフェロール、及びそれらの混合物からなる群から選択される;及び/又は
前記PEG脂質が、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール、及びそれらの混合物からなる群から選択される、
請求項29に記載の方法。
〔項31〕
前記脂質成分が、DSPCであるリン脂質、コレステロールである構造脂質、及び/又はPEG-DMGであるPEG脂質をさらに含む、請求項28に記載の方法。
〔項32〕
前記ナノ粒子のN:P比が、約2:1から約30:1である、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
〔項33〕
前記ナノ粒子のN:P比が、約5.67:1である、請求項32に記載の方法。
〔項34〕
前記ナノ粒子のN:P比が、約3:1である、請求項32に記載の方法。
〔項35〕
前記脂質成分と前記改変RNAのwt/wt比が、約10:1から約100:1である、請求項28~34のいずれか一項に記載の方法。
〔項36〕
前記脂質成分と前記改変RNAのwt/wt比が、約20:1である、請求項35に記載の方法。
〔項37〕
前記脂質成分と前記改変RNAのwt/wt比が、約10:1である、請求項35に記載の方法。
〔項38〕
前記ナノ粒子が、約70nmから約80nmの平均直径を有する、請求項28~37のいずれか一項に記載の方法。
〔項39〕
前記ナノ粒子が、約72nmの平均直径を有する、請求項38に記載の方法。
〔項40〕
前記投与が、最大約450pg/ml(血漿)又はpg/mg(組織)の、配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの観察される最大の血漿及び/又は組織濃度C
maxをもたらす、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
〔項41〕
前記投与が、最大約5,500pg*h/ml(血漿)又はpg*h/mg(組織)の、配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの血漿及び/又は組織の曲線下総面積AUC
0-tをもたらす、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
〔項42〕
前記投与が、8時間以内の約400pg/mg(組織)超の配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの産生をもたらす、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
〔項43〕
前記投与が、最大6日間の約1pg/mg(組織)超の配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの産生をもたらす、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
〔項44〕
前記ナノ粒子又は前記医薬組成物が、皮内投与される、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
〔項45〕
前記改変RNAの濃度が、約0.01mg/kgから約10mg/kgである、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
〔項46〕
前記投与が、クエン酸生理食塩水緩衝液中の改変RNAの投与と比較した場合に、約5から約100倍の配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの産生の増大をもたらす、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
〔項47〕
前記対象が、糖尿病を患っている、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
〔項48〕
前記創傷が、手術創、熱傷、擦過傷、皮膚生検部位、慢性創傷、損傷(例えば、外傷性損傷の創傷)、移植創、糖尿病性創傷、糖尿病性潰瘍(例えば、糖尿病性足部潰瘍)、褥瘡、床ずれ、及びそれらの組み合わせである、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
〔項49〕
前記医薬組成物が、薬学的に許容し得る賦形剤、好ましくは、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘又は乳化剤、保存剤、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、及びそれらの混合物を含む、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
〔項50〕
哺乳類組織又は対象における血管新生を誘導するための方法であって、有効量の、請求項1~11のいずれか一項に記載のナノ粒子又は請求項12~27のいずれか一項に記載の医薬組成物を、前記哺乳類組織又は対象に投与することを含む方法。
〔項51〕
哺乳類組織又は対象における血管形成を誘導するための方法であって、有効量の、請求項1~11のいずれか一項に記載のナノ粒子又は請求項12~27のいずれか一項に記載の医薬組成物を、前記哺乳類組織又は対象に投与することを含む方法。
〔項52〕
哺乳類組織又は対象における毛細血管及び/又は細動脈密度を増大させるための方法であって、有効量の、請求項1~11のいずれか一項に記載のナノ粒子又は請求項12~27のいずれか一項に記載の医薬組成物を、前記哺乳類組織又は対象に投与することを含む方法。
【実施例0138】
8.実施例
8.1.実施例1
ナノ粒子及びクエン酸生理食塩水組成物の調製
脂質及び改変RNA:化合物A、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC、Avanti Polar Lipids)、コレステロール(Sigma)、及びポリエチレングリコール修飾脂質(NOF CorporationのmPEG2000-DMG)から、エタノール中の脂質のストック溶液を調製した。これらの脂質は、12.5mMの総脂質濃度となるように、エタノール99.5%に混合した。その組成は、50:10:38.5:1.5%モルの比の化合物A、DSPC、コレステロール、DMG-PEGであった。VEGF-A改変RNA(例えば、配列番号1、配列番号3、配列番号4、又は配列番号5)を解凍し、最終配合物における5.67又は3の電荷比(N:P)に相当する濃度の酢酸ナトリウム緩衝液及びHyClone水で6.25mMに希釈した。希釈後の最終配合物は、次の通りであった。
【0139】
【0140】
【0141】
脂質ナノ粒子(LNP)組成物:LNP組成物は、脂質を含有するエタノール溶液と、VEGF-A改変RNAの水溶液とを、マイクロ流体デバイス上で素早く混合し、それに続いてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中での透析を行うことによって調製した。簡単に言うと、VEGF-A改変RNA溶液と脂質溶液を、シリンジポンプによって制御される2つのシリンジを使用して、水とエタノール3:1の体積比及び12~14mL/分の流速で、マイクロ流体混合デバイスに注入した。LNP組成物を、10KDカットオフを有する膜を使用して一晩、PBS緩衝液に対して透析することによって、エタノールを除去した。LNP組成物を、30KDカットオフを有する遠心分離フィルターデバイスを使用することによって濃縮し、粒径(72nm)、VEGF-A改変RNA濃度(0.35mg/mL)、多分散性指数(0.14)、及び封入(94%)によって特徴付けた。LNP組成物を、PBS及び濾過滅菌を用いて、0.33mg/mLの最終濃度に希釈した。LNP組成物は、冷蔵保管した。
【0142】
クエン酸生理食塩水組成物:クエン酸生理食塩水組成物は、解凍したVEGF-A改変RNA溶液を、HyClone水及び濃縮した緩衝液で希釈して、pH6.5の10mM
クエン酸ナトリウム及び130mM 塩化ナトリウムの最終組成物とすることによって調製した。
【0143】
8.2.実施例2
マウスにおけるヒトVEGF-A改変RNAの皮内注射後のヒトVEGF-Aタンパク質の評価
VEGF-A改変RNAと化合物Aを含む、ナノ粒子及びクエン酸生理食塩水組成物は、実施例1と同様に調製した。この実施例では、VEGF-A改変RNAは、配列番号3の配列を有していた。
【0144】
雄のdb/dbマウス(C57BL/6J,BKS.Cg-m+/+Leprdb/BomTac Homozygous,Taconic Denmark)を、イソフルランで麻酔した。これらのマウスは、II型糖尿病の樹立されたモデルであり、野生型マウスと比較した場合に創傷治癒障害を有する。マウスの背中を剃毛し、残った毛を脱毛クリームを用いて除去した。クエン酸生理食塩水中に配合されたVEGF-A改変RNA(100μg)又はLNP(実施例1参照)中に配合されたVEGF-A改変RNA(3μg)を、0.785mm2の円領域内に、4本の別の注射(各10μL、総体積40μL)として皮内注射した。皮内注射後のあらかじめ決定した時点で、マウスを麻酔し、注射を受けた皮膚領域を採取し、液体窒素中で瞬間凍結し、80℃で保管した。すべての試料を、ヒトVEGF-Aタンパク質について分析した。
【0145】
クエン酸生理食塩水中に配合された100μg VEGF-A改変RNAを注射されたdb/dbマウスからの試料を、注射の6、24、48、72、及び144時間後に採取した。LNP中に配合された3μg VEGF-A改変RNAを注射されたdb/dbマウスからの試料を、注射の3、6、24、48、72、144時間後に採取した。
【0146】
マウス皮膚におけるヒトVEGF-Aタンパク質の定量化
ヒトVEGF-Aタンパク質含有量の分析のための皮膚試料を調製するために、ホスファターゼ阻害剤I及びIIとプロテアーゼ阻害剤とを含有するTris溶解緩衝液(Meso Scale Discovery(MSD),Rockville,MD,USA)を、凍結された組織生検材料に添加し、ホモジナイゼーションまでおよそ20℃で凍結した。次いで、ステンレス鋼ビーズ(3mm)を添加し、Precellysホモジナイザー装置を使用して試料をホモジナイズした。ホモジネートを遠心し、上清を分析まで80℃で保管した。
【0147】
ヒトVEGF-A濃度は、電気化学発光検出を用いるサンドイッチ免疫測定法を使用して決定した。MSD(登録商標)96ウェルMULTI-ARRAY(登録商標)ヒトVEGF-Aアッセイキット(Mesoscale,Rockville,Maryland)を使用して、組織ホモジネート中のVEGF-A濃度を測定した。このアッセイは、ヒトVEGF-Aタンパク質のみを検出するので、改変RNAから発現されるVEGF-Aのみを定量するのに役立つ。このアッセイは、キット指示書の通りに実施した。スタンダードを、MSD希釈剤で段階希釈した。高い濃度を有する試料を、標準曲線内に適合させるために分析前にMSD希釈剤で希釈し、プレートをMeso Scale DiscoveryのSector Imager 6000で読み取った。
【0148】
結果
図3及び4は、それぞれ、クエン酸生理食塩水(100μg)及びLNP(3μg)中に配合されたVEGF-A改変RNAの皮内注射後の、ヒトVEGF-Aタンパク質産生
の時間プロフィール及び大きさをまとめて示す。それぞれ6及び3時間以内に、効率的なタンパク質産生が存在していた(
図4)。特に、LNP組成物は、8時間以内に、約400pg/mgを超えるVEGF-Aタンパク質の産生をもたらした(
図4)。さらに、LNP組成物は、6日までに、約1pg/mgを超えるVEGF-Aタンパク質の産生をもたらした(
図3)。VEGF-Aタンパク質の産生は、VEGF-A改変RNAが、LNP中に配合された場合に、クエン酸生理食塩水中に配合された場合と比較して、実質的に増大した(
図3及び4)。
【0149】
表2は、クエン酸生理食塩水(100μg)及びLNP(3μg)中に配合されたVEGF-A改変RNAの皮内注射後に得られた薬物動態パラメータをまとめて示す。LNP中に配合されたVEGF-A改変RNAについては、用量がクエン酸生理食塩水中に配合されたVEGF-A改変RNAのわずか3%であるという事実にもかかわらず、Cmaxが13.7倍上昇していた。曲線下総面積、AUC0-tは、クエン酸生理食塩水中に配合された100μg VEGF-A改変RNAと比較して、LNP中に配合された3μg
VEGF-A改変RNAで6.6倍上昇していた。
【0150】
【0151】
8.3.実施例3
ヒトVEGF-A改変RNAの皮内注射後の創傷治癒に対する効果
材料及び方法
VEGF-A改変RNAと化合物Aとを含む、ナノ粒子及びクエン酸生理食塩水組成物を、実施例1と同様に調製した。この実施例では、VEGF-A改変RNAは、配列番号4の配列を有していた。さらに、非翻訳性VEGF-A改変RNA(配列番号6)を使用して、図面に示した通りのある種のナノ粒子又はクエン酸生理食塩水組成物を配合した。
【0152】
Jackson Lab USAからの雄の12週齢のdb/dbマウス(B6.BKS(D)-Leprdb/J)を、4時間の絶食後に、血糖について分析し、次いで、治療群に無作為に割り付けた。マウスをイソフルランで麻酔した。各マウスの背面を電気バリカンで剃毛し、それに続いて脱毛剤を用い、あらゆる残った毛を除去した。皮膚を、descutan及びエタノールですすいだ。10mm生検パンチを用いる傷によって、各マウスの背中に十分な厚さの創傷を作り、次いで、滅菌条件下で切り取り、テガダーム(Tegaderm)絆創膏で覆った。創傷形成後の第3日に、テガダーム(Tegaderm)絆創膏を取り除いた。ナノ粒子又はクエン酸生理食塩水組成物を、4本の別の注射(各10μL、総体積40μL)として、創傷の端に近い位置に皮内注射した。次いで、創傷を、新たなテガダーム(Tegaderm)絆創膏で覆った。観察期間中、マウスは、創傷治癒の妨害を避けるために、分けておいた。
【0153】
固定距離で且つ間接照明を用いて撮影されたデジタル写真の時系列(すなわち、創傷形成後の第17日まで3日/4日ごと)から、創傷治癒を決定した。創傷面積は、画像解析ソフトウェアImage Jを使用して創傷の縁をなぞることによって決定し、次いで、投薬の直前の、創傷形成後の第3日でのベースライン面積に対する面積(パーセント)として算出した。
【0154】
対応のない両側t検定を用いて統計学的評価を行い、p値<0.05は有意であるとみなされた。
【0155】
結果
図5に示した通り、第7日に、1μg又は3μg VEGF-A改変RNAを含む脂質ナノ粒子組成物は、3μg 非翻訳性VEGF-Aを含む脂質ナノ粒子組成物並びに100μg VEGF-A改変RNAを含むクエン酸生理食塩水組成物と比較した場合に、創傷治癒を有意に向上させた。さらに、第10日に、1μg又は3μg VEGF-A改変RNAを含む脂質ナノ粒子組成物は、3μg 非翻訳性VEGF-A改変RNAを含む脂質ナノ粒子組成物と比較した場合に、創傷治癒を有意に向上させた。第10日に、1μg又は3μg VEGF-A改変RNAを含む脂質ナノ粒子組成物と、100μg VEGF-A改変RNAを含むクエン酸生理食塩水組成物との間に、有意差は存在しなかった。
【0156】
図6に示した別の実験では、第7日に、3μg VEGF-A改変RNAを含む脂質ナノ粒子組成物は、3μg 非翻訳性VEGF-A改変RNAを含む脂質ナノ粒子組成物並びにいかなる改変RNAも含まないクエン酸生理食塩水組成物と比較した場合に、創傷治癒を有意に向上させた。さらに、第10日に、3μg VEGF-A改変RNAを含む脂質ナノ粒子組成物は、3μg 非翻訳性VEGF-A改変RNAを含む脂質ナノ粒子組成物と比較した場合に、創傷治癒を有意に向上させた。
【0157】
図7は、別の創傷治癒実験を示す。第7日に、3μg VEGF-A改変RNAを含む脂質ナノ粒子組成物は、3μg GFP改変RNAを含む脂質ナノ粒子組成物、いかなる改変RNAも含まない脂質ナノ粒子組成物、又はいかなる改変RNAも含まないクエン酸生理食塩水組成物と比較した場合に、創傷治癒を有意に向上させた。さらに、第10日に、3μg VEGF-A改変RNAを含む脂質ナノ粒子組成物は、3μg GFP改変RNAを含む脂質ナノ粒子組成物と比較した場合に、創傷治癒を有意に向上させた。
【0158】
図8に示した通り、第7日又は第10日に、次の4つの組成物:(1)3μg 非翻訳性VEGF-A改変RNAを含む脂質ナノ粒子組成物、(2)100μg VEGF-A改変RNAを含むクエン酸生理食塩水組成物、(3)100μg 非翻訳性VEGF-A改変RNAを含むクエン酸生理食塩水組成物、及び(4)いかなる改変RNAも含まないクエン酸生理食塩水組成物の皮内注射後の創傷治癒に有意差は存在しなかった。
【0159】
9.配列
9.1.配列番号1:VEGF-Aをコードする改変RNA
【化3】
ここでは:
A、C、G、及びU=それぞれAMP、CMP、GMP、及びN1-メチル-シュードUMP
Me=メチル
p=無機リン酸塩
【0160】
9.2.配列番号2:ヒトVEGF-AアイソフォームVEGF-165のアミノ酸配列
【化4】
【0161】
9.3.配列番号3:VEGF-Aをコードする改変RNA
【化5】
ここでは:
A、C、G、及びU=それぞれAMP、CMP、GMP、及びN1-メチル-シュードUMP
Me=メチル
p=無機リン酸塩
【0162】
9.4.配列番号4:VEGF-A(VEGF-01-012)をコードする改変RNA
【化6】
ここでは:
A、C、G、及びU=それぞれAMP、CMP、GMP、及びN1-メチル-シュードUMP
p=無機リン酸塩
【0163】
9.5.配列番号5:VEGF-Aをコードする改変RNA
【化7】
ここでは:
A、C、G、及びU=それぞれAMP、CMP、GMP、及びN1-メチル-シュードUMP
p=無機リン酸塩
【0164】
9.6.配列番号6:非翻訳性VEGF-A改変RNA
【化8】
ここでは:
A、C、G、及びU=それぞれAMP、CMP、GMP、及びN1-メチル-シュードUMP
p=無機リン酸塩