(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138995
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】歯の漂白方法及び歯の漂白用デバイス
(51)【国際特許分類】
A61K 8/20 20060101AFI20230926BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20230926BHJP
A61K 8/23 20060101ALI20230926BHJP
A61C 19/06 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
A61K8/20
A61Q11/00
A61K8/23
A61C19/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108275
(22)【出願日】2023-06-30
(62)【分割の表示】P 2019113806の分割
【原出願日】2019-06-19
(71)【出願人】
【識別番号】502124248
【氏名又は名称】リジェンティス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100107799
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 希子
(72)【発明者】
【氏名】柴 肇一
(72)【発明者】
【氏名】川添 祐美
(72)【発明者】
【氏名】野口 直樹
(57)【要約】 (修正有)
【課題】歯を脱灰することなく、高効率で、安全且つ容易に歯のホワイトニングを実施できる歯の漂白方法と、その方法の実施に適する歯の漂白用デバイスを提供する。
【解決手段】防水性のカバー材と透湿・防水性材を備える外部部材、外部部材の内部の閉鎖空間内に存在する亜塩素酸(塩)を含む漂白剤前駆体(I)、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)、及び漂白剤前駆体(I)と酸性化剤(II)との接触防止用部材を備え、漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)は、それらの少なくとも一方が水性液体の形態であり、又は、両者が固体であり且つ外部部材の内部の閉鎖空間内には漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)とは接触しない形態で水性液体が存在し、デバイス使用時には、閉鎖空間内で漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体を調製できる構造を有する歯の漂白用デバイスで、歯の漂白を行う。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水性のカバー材及び透湿・防水性材を備える外部部材、外部部材の内部の閉鎖空間内
に存在する亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物
質を含む酸性化剤(II)、並びに漂白剤前駆体(I)と酸性化剤(II)との接触防止
用部材を備える歯の漂白用デバイスであって、漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)
は、それらの少なくとも一方が水性液体(d)の形態であるか、又は、漂白剤前駆体(I
)と酸性化剤(II)の両者が固体であり且つ外部部材の内部の閉鎖空間内には漂白剤前
駆体(I)及び酸性化剤(II)とは接触しない形態で、亜塩素酸、亜塩素酸塩、その水
溶液が酸性を示す物質及び二酸化塩素のいずれかと反応する物質を含まない水性液体(e
)が存在しており、漂白剤前駆体(I)が水性液体(d)の形態である場合、その水性液
体のpH(25℃)は9乃至14であり、デバイス使用時には、閉鎖空間内で漂白剤前駆
体(I)及び酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(a)を調製できる構造を有するこ
とを特徴とする、歯の漂白用デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の歯の漂白用デバイスであって、防水性の隔壁の一方の面上であってそ
の一部に防水性のカバー材(r)の外周部が接着することによって画された第一室、及び
、当該防水性の隔壁の同一の面上であって他の一部に他の防水性のカバー材(s)の外周
部が接着することによって画された第二室を備え、第一室と第二室は、カバー材(r),
(s)の隔壁への接着部位を介して隣接しており、第一室及び第二室のいずれか一方には
、亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)であってそのpH(2
5℃)が9乃至14であるものが収容されており、他方には、その水溶液が酸性を示す物
質を含む酸性化剤(II)の水性液体(g)が収容されており、前記隔壁はカバー材(r
),(s)の存在しない側に開口する切欠きを有し、当該切欠きは液体吸収・保持性の部
材で被覆されており、前記隔壁のカバー材(r),(s)の存在しない側には透湿・防水
性材が接着されており且つ液体吸収・保持性の部材の表面は透湿・防水性材によって被覆
されており、その結果、液体吸収・保持性の部材を収容する第三室が形成されており、第
一室及び第二室は、前記隔壁が前記切欠きの個所で破断されると各々開口を生じ、漂白剤
前駆体(I)の水性液体(f)と酸性化剤(II)の水性液体(g)とが同時に放出され
る構造となっていることを特徴とする、デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の歯の漂白用デバイスであって、防水性のカバー材、及び、カバー材の
末端部に接続し、カバー材と共にその内部に閉鎖空間を形成している透湿・防水性材を備
える外部部材、並びに、外部部材の内部の閉鎖空間内に、その内部に亜塩素酸又はその塩
を含む漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)であってそのpH(25℃)が9乃至14で
あるものを収容している防水性の第一収容部材、その内部にその水溶液が酸性を示す物質
を含む酸性化剤(II)の水性液体(g)を収容している防水性の第二収容部材、第一収
容部材破損用部材及び第二収容部材破損用部材を備え、第一収容部材破損用部材及び第二
収容部材破損用部材は、それぞれ第一収容部材及び第二収容部材を破損できる位置に存在
することを特徴とする、デバイス。
【請求項4】
請求項1に記載の歯の漂白用デバイスであって、防水性のカバー材、及び、カバー材の
末端部に接続し、カバー材と共にその内部に閉鎖空間を形成している透湿・防水性材を備
える外部部材、並びに、外部部材の内部の閉鎖空間内に、その内部に亜塩素酸又はその塩
を含む漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)であってそのpH(25℃)が9乃至14で
あるものを収容している防水性の第一収容部材、固体の、その水溶液が酸性を示す物質を
含む酸性化剤(II´)、及び第一収容部材破損用部材を備え、第一収容部材破損用部材
は第一収容部材を破損できる位置に存在することを特徴とする、デバイス。
【請求項5】
請求項1に記載の歯の漂白用デバイスであって、防水性のカバー材、及び、カバー材の
末端部に接続し、カバー材と共にその内部に閉鎖空間を形成している透湿・防水性材を備
える外部部材、並びに、外部部材の内部の閉鎖空間内に、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤
前駆体(I´)、その内部にその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)の水性
液体(g)を収容している防水性の第二収容部材、及び第二収容部材破損用部材を備え、
第二収容部材破損用部材は第二収容部材を破損できる位置に存在することを特徴とする、
デバイス。
【請求項6】
請求項1に記載の歯の漂白用デバイスであって、防水性のカバー材、及び、カバー材の
末端部に接続し、カバー材と共にその内部に閉鎖空間を形成している透湿・防水性材を備
える外部部材、並びに、外部部材の内部の閉鎖空間内に、その内部に亜塩素酸、亜塩素酸
塩、その水溶液が酸性を示す物質及び二酸化塩素のいずれかと反応する物質を含まない水
性液体(e)を収容している防水性の第三収容部材、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆
体(I´)、固体の、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II´)、漂白剤前
駆体(I´)と酸性化剤(II´)との接触防止用部材、及び第三収容部材破損用部材を
備え、接触防止用部材は、水性液体(e)透過性であるか又は水溶性であり、第三収容部
材破損用部材は第三収容部材を破損できる位置に存在することを特徴とする、デバイス。
【請求項7】
閉鎖空間内部に透水性基板が存在し、破損用部材は透水性基板上に形成されている、請
求項3乃至6のいずれか一項に記載の歯の漂白用デバイス。
【請求項8】
請求項1に記載の歯の漂白用デバイスであって、防水性のカバー材(x)及びカバー材
(x)の末端部に接続した防水性の隔壁によって画された第一室、並びに、当該隔壁、当
該隔壁の末端部であってカバー材(x)が存在しない側の末端部にその一方の末端部が接
続した防水性のカバー材(y)、及びカバー材(y)の他方の末端部に接続した透湿・防
水性材によって画された第二室を備え、第一室及び第二室のいずれか一方には、亜塩素酸
又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)が収容されており、他方には、その水溶液が酸性を
示す物質を含む酸性化剤(II)が収容されており、漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(
II)の少なくとも一方は水性液体(d)の形態で存在しており、漂白剤前駆体(I)が
水性液体(d)の形態である場合、その水性液体のpH(25℃)は9乃至14であり、
前記隔壁は破断され得ることを特徴とする、デバイス。
【請求項9】
請求項1に記載の歯の漂白用デバイスであって、防水性のカバー材(z)及びカバー材
(z)の末端部に接続した防水性の隔壁によって画された第一室、並びに、当該隔壁、及
び当該隔壁の末端部であってカバー材(z)が存在しない側の末端部に接続した透湿・防
水性材によって画された第二室を備え、第一室及び第二室のいずれか一方には、亜塩素酸
又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)が収容されており、他方には、その水溶液が酸性を
示す物質を含む酸性化剤(II)が収容されており、漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(
II)の少なくとも一方は水性液体(d)の形態で存在しており、漂白剤前駆体(I)が
水性液体(d)の形態である場合、その水性液体のpH(25℃)は9乃至14であり、
前記隔壁は破断され得ることを特徴とする、デバイス。
【請求項10】
第一室には漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)が存在し且つ第二室には固体の酸性化
剤(II´)が存在するか、第一室には酸性化剤(II)の水性液体(g)が存在し且つ
第二室には固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I´)が存在するか、第一室には漂白
剤前駆体(I)の水性液体(f)が存在し且つ第二室には酸性化剤(II)の水性液体(
g)が存在するか、又は第一室には酸性化剤(II)の水性液体(g)が存在し且つ第二
室には漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)が存在する、請求項8又は9に記載の歯の漂白用デバイス。
【請求項11】
第二室において、固体の酸性化剤(II´)又は固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体
(I´)が液体吸収・保持性の部材に保持されている、請求項9に記載の歯の漂白用デ
バイス。
【請求項12】
透湿・防水性材の外表面上に二酸化塩素トラップ部材を備える、請求項1乃至11のい
ずれか一項に記載の歯の漂白用デバイス。
【請求項13】
二酸化塩素トラップ部材の外表面上にポリマー製フィルム又はシートを備える、請求項
12に記載の歯の漂白用デバイス。
【請求項14】
二酸化塩素トラップ部材の、透湿・防水性材に対向する側の反対側の面上であってその
外周部上に、及び/又は、二酸化塩素トラップ部材の外側に、二酸化塩素トラップ層を備
える、請求項12又は13に記載の歯の漂白用デバイス。
【請求項15】
二酸化塩素トラップ層が活性炭を備える、請求項14に記載の歯の漂白用デバイス。
【請求項16】
請求項1に記載の歯の漂白用デバイス調製用の歯の漂白用キットであって、防水性材料
製のデュアル・シリンジと、そのデュアル・シリンジの一端部に結合される二酸化塩素発
生・漂白用部材とを備え、デュアル・シリンジは、並列に配された第一及び第二のストリ
ームと、各々がそれらのストリームの一端からストリーム内部に挿入されている、先端に
ガスケットを有する二本のピストンと、それらのストリームの他端を閉じている封止材と
を備え、封止材は着脱可能であり、第一及び第二のストリームの一方には亜塩素酸又はそ
の塩を含む漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)であってそのpH(25℃)が9乃至1
4であるものが、他方にはその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)の水性液
体(g)が存在し、二酸化塩素発生・漂白用部材は、中空構造であり、その一端は、前記
封止材を除去したデュアル・シリンジの第一及び第二のストリームの他端に着脱可能であ
り、且つその他端は透湿・防水性材で閉鎖されている、歯の漂白用キット。
【請求項17】
請求項1に記載の歯の漂白用デバイス調製用の歯の漂白用キットであって、中空容器と
、その中空容器の一端部に螺合される回転移動部材とを含み、中空容器の外部部材は、円
柱形で中空の防水性カバー材、カバー材の一端を閉じている防水性の封止材、及びカバー
材の他端を閉じている透湿・防水性材を備え、中空容器の内部であって封止材の存在する
側の端部にめねじ部を有し、めねじ部と他端との間には防水性の隔壁を備え、中空容器の
内部は前記隔壁によって直列状に並んだ二室に分かれており、二室の一方には亜塩素酸又
はその塩を含む漂白剤前駆体(I)が、他方にはその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性
化剤(II)が存在し、漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)の少なくとも一方は水
性液体(d)の形態であり、漂白剤前駆体(I)が水性液体(d)の形態である場合、そ
の水性液体のpH(25℃)は9乃至14であり、回転移動部材は、おねじ部を有し、中
空容器の一端の封止材を除去するか又はそれに孔をあけて中空容器の一端におねじ部を挿
入してめねじ部に螺合させ、回転移動部材を中空容器内で進行させると、中空容器の第一
室と第二室とが連通する構成である、歯の漂白用キット。
【請求項18】
透湿・防水性材の外表面上に二酸化塩素トラップ部材を備える、請求項16又は17に
記載の歯の漂白用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜塩素酸又はその塩を使用する歯の漂白方法と、その方法の実施に適する歯
の漂白用デバイス及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歯の漂白、即ち、ホワイトニングには、過酸化水素や過酸化尿素等の酸素系
漂白剤が用いられている。しかし、これらの酸素系漂白剤を用いたホワイトニングで有効
な効果を得るためには、通常、8乃至10分間の処理を3回行うこと、即ち、合計で約3
0分間以上の処理時間が必要であり、数時間を要する場合もあった。
【0003】
日本において食品添加物としての使用が許可されている亜塩素酸ナトリウムを用いた歯
の漂白方法が、特許文献1及び2に開示されている。特許文献1によると、亜塩素酸ナト
リウムを酸味料と接触させて二酸化塩素を生じさせ、その二酸化塩素によって歯を漂白す
るのである。しかし、特許文献1に記載の方法では、酸性状態で漂白を行うため、歯の脱
灰を促進してしまうという問題がある。
【0004】
特許文献2の
図1には、亜塩素酸ナトリウムにクエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液を
加えて系のpHを低下させても、二酸化塩素はわずかしか生成されなかった旨が、また図
1及び
図3には、クエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液の代わりに無水コハク酸及びコハ
ク酸二ナトリウムを加えると、二酸化塩素が生成され且つ漂白効果が得られた旨が記載さ
れている。後者の実施例では、亜塩素酸ナトリウムに弱塩基性(5%水溶液のpHが7.
0乃至9.0)のコハク酸二ナトリウムを先に加え、その後、使用直前に無水コハク酸を
加えている。
【0005】
また、特許文献1及び2のいずれも、使用の直前まで、亜塩素酸ナトリウムと酸味料又
は有機酸無水物とを、物理的に相互に隔離した状態に保持する旨を教示している。
【0006】
特許文献3には、気体の二酸化塩素の緩慢な発生方法が開示されている。その方法は、
亜塩素酸塩の粉体、又は亜塩素酸塩若しくは安定化二酸化塩素の水溶液を塩基性固体物質
に混合又は吸着させた組成物に、酸若しくはエステルの蒸気を接触せしめることを特徴と
する。
【0007】
特許文献4には、二つの吐出開口のそれぞれから、互いに異なる流動体を同時に押し出
すことのできる分配包装体が開示されている。
【0008】
特許文献5には、亜塩素酸塩と水溶性酸性物質とを、用時に水の存在下で接触させて二
酸化塩素を発生させることができる二酸化塩素発生用キット、及びそのようなキットを用
いる二酸化塩素を発生させる方法が開示されている。
【0009】
非特許文献1には、デュアル・シリンジの一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2000-516221
【特許文献2】特表2009-536935
【特許文献3】特開昭61-48404
【特許文献4】特開2016-159931
【特許文献5】特開2017-222528
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】TAB Laboratories, Inc.のホームページ(http://dds.tab-labo.com/;2019年1月29日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、二酸化塩素を気体状態で発生させ、それを水性液体へ吸収、溶解させ
るという機構を利用する、歯の脱灰を生じさせない歯の漂白方法、並びにその方法の実施
に適する歯の漂白用デバイス及びキットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、気体の二酸化塩素を使用する歯の漂白方法を研究している間に、気体の
二酸化塩素を水に吸収、溶解させてなる水性液体が、ほぼ中性を示すことを見出した。こ
の知見に基づき、本発明者らは、以下の本発明を成し遂げた。
【0014】
本発明の歯の漂白方法(1)は、亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の酸性
の水性液体(a)を調製し、気体の二酸化塩素を発生させる工程1-1、二酸化塩素と反
応する物質を含まない水性液体(b)に、発生した気体の二酸化塩素を吸収させ、二酸化
塩素を含む水性液体(c)を得る工程1-2、及び工程1-2で得られた二酸化塩素を含
む水性液体(c)を歯に接触させる工程1-3を含む。水性液体(b)及び水性液体(c
)は、水性ゲルであることができる。
【0015】
本発明の歯の漂白方法(2)は、歯に水性ゲルを塗布する工程2-1、亜塩素酸又はそ
の塩を含む漂白剤前駆体(I)の酸性の水性液体(a)を調製し、気体の二酸化塩素を発
生させる工程2-2、及び歯に塗布された水性ゲルに、工程2-2で発生した気体の二酸
化塩素を吸収させる工程2-3を含む。
【0016】
これらの本発明に係る歯の漂白方法は、美容目的での歯の漂白にも適用できる。
【0017】
本発明の歯の漂白用デバイスは、防水性のカバー材及び透湿・防水性材を備える外部部
材、外部部材の内部の閉鎖空間内に存在する亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I
)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)、並びに漂白剤前駆体(I)
と酸性化剤(II)との接触防止用部材を備える。漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(I
I)は、それらの少なくとも一方が水性液体(d)の形態であるか、又は、漂白剤前駆体
(I)と酸性化剤(II)の両者が固体であり且つ外部部材の内部の閉鎖空間内には漂白
剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)とは接触しない形態で、亜塩素酸、亜塩素酸塩、そ
の水溶液が酸性を示す物質及び二酸化塩素のいずれかと反応する物質を含まない水性液体
(e)が存在しており、漂白剤前駆体(I)が水性液体(d)の形態である場合、その水
性液体のpH(25℃)は9乃至14であり、デバイス使用時には、閉鎖空間内で漂白剤
前駆体(I)及び酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(a)を調製できる構造を有す
る。なお、「pH(25℃)」は、25℃におけるpHを意味し、以下においても同様で
ある。
【0018】
上記の本発明の歯の漂白用デバイスには、次のような態様(A)乃至(G)が包含され
る:
(A)防水性のカバー材、及び、カバー材の末端部に接続し、カバー材と共にその内部に
閉鎖空間を形成している透湿・防水性材を備える外部部材、並びに、外部部材の内部の閉
鎖空間内に、その内部に亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)
であってそのpH(25℃)が9乃至14であるものを収容している防水性の第一収容部
材、その内部にその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)の水性液体(g)を
収容している防水性の第二収容部材、第一収容部材破損用部材及び第二収容部材破損用部
材を備え、第一収容部材破損用部材及び第二収容部材破損用部材は、それぞれ第一収容部
材及び第二収容部材を破損できる位置に存在することを特徴とする歯の漂白用デバイス。
この態様では、第一収容部材及び第二収容部材が接触防止用部材に相当し、並びに、漂白
剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)は、いずれも水性液体の形態である。第一収容部材
破損用部材及び第二収容部材破損用部材によって第一収容部材及び第二収容部材のそれぞ
れを破損することにより、二種類の水性液体(f)及び(g)が混ざり、閉鎖空間内で漂
白剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(a)が調製される。
【0019】
(B)防水性のカバー材、及び、カバー材の末端部に接続し、カバー材と共にその内部に
閉鎖空間を形成している透湿・防水性材を備える外部部材、並びに、外部部材の内部の閉
鎖空間内に、その内部に亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)
であってそのpH(25℃)が9乃至14であるものを収容している防水性の第一収容部
材、固体の、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II´)、及び第一収容部材
破損用部材を備え、第一収容部材破損用部材は第一収容部材を破損できる位置に存在する
ことを特徴とする歯の漂白用デバイス。この態様では、第一収容部材が接触防止用部材に
相当し、並びに、漂白剤前駆体(I)のみが水性液体の形態である。第一収容部材破損用
部材によって第一収容部材を破損することにより、漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)
に固体の酸性化剤(II´)が溶解し、閉鎖空間内で漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(
II)を含む酸性の水性液体(a)が調製される。
【0020】
(C)防水性のカバー材、及び、カバー材の末端部に接続し、カバー材と共にその内部に
閉鎖空間を形成している透湿・防水性材を備える外部部材、並びに、外部部材の内部の閉
鎖空間内に、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I´)、その内部にその水溶液が酸
性を示す物質を含む酸性化剤(II)の水性液体(g)を収容している防水性の第二収容
部材、及び第二収容部材破損用部材を備え、第二収容部材破損用部材は第二収容部材を破
損できる位置に存在することを特徴とする歯の漂白用デバイス。この態様では、第二収容
部材が接触防止用部材に相当し、並びに、酸性化剤(II)のみが水性液体の形態である
。第二収容部材破損用部材によって第二収容部材を破損することにより、酸性化剤(II
)の水性液体(g)に固体の漂白剤前駆体(I´)が溶解し、閉鎖空間内で漂白剤前駆体
(I)及び酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(a)が調製される。
【0021】
(D)防水性のカバー材、及び、カバー材の末端部に接続し、カバー材と共にその内部に
閉鎖空間を形成している透湿・防水性材を備える外部部材、並びに、外部部材の内部の閉
鎖空間内に、その内部に亜塩素酸、亜塩素酸塩、その水溶液が酸性を示す物質及び二酸化
塩素のいずれかと反応する物質を含まない水性液体(e)を収容している防水性の第三収
容部材、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I´)、固体の、その水溶液が酸性を示
す物質を含む酸性化剤(II´)、漂白剤前駆体(I´)と酸性化剤(II´)との接触
防止用部材、及び第三収容部材破損用部材を備え、接触防止用部材は、水性液体(e)透
過性であるか又は水溶性であり、第三収容部材破損用部材は第三収容部材を破損できる位
置に存在することを特徴とする歯の漂白用デバイス。この態様では、漂白剤前駆体(I´
)及び酸性化剤(II´)は、いずれも固体の形態であり、且つ接触防止用部材によって
互いに接触しない状態に保たれている。しかし、接触防止用部材は、水性液体(e)透過
性であるか又は水溶性であるので、第三収容部材破損用部材によって第三収容部材を破損
することにより、水性液体(e)に固体の漂白剤前駆体(I´)及び固体の酸性化剤(I
I´)が溶解し、閉鎖空間内で漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)を含む酸性の水
性液体(a)が調製される。
【0022】
(E)防水性のカバー材(x)及びカバー材(x)の末端部に接続した防水性の隔壁によ
って画された第一室、並びに、当該隔壁、当該隔壁の末端部であってカバー材(x)が存
在しない側の末端部にその一方の末端部が接続した防水性のカバー材(y)、及びカバー
材(y)の他方の末端部に接続した透湿・防水性材によって画された第二室を備え、第一
室及び第二室のいずれか一方には、亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)が収容
されており、他方には、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)が収容され
ており、漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)の少なくとも一方は水性液体(d)の
形態で存在しており、漂白剤前駆体(I)が水性液体(d)の形態である場合、その水性
液体のpH(25℃)は9乃至14であり、前記隔壁は破断され得ることを特徴とする歯
の漂白用デバイス。この態様では、カバー材(x)、防水性隔壁の外周部(カバー材(x
)の末端部及びカバー材(y)の末端部に接続している部分)、カバー材(y)及び透湿
・防水性材が外部部材である。この態様では、第一室及び第二室がいずれも閉鎖空間であ
り、隔壁が漂白剤前駆体(I)と酸性化剤(II)との接触防止用部材を構成している。
デバイス使用時に隔壁を折ることにより、第一室と第二室とが連通し、一つの閉鎖空間内
で、漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(a)が調製される
。
【0023】
(F)防水性のカバー材(z)及びカバー材(z)の末端部に接続した防水性の隔壁によ
って画された第一室、並びに、当該隔壁、及び当該隔壁の末端部であってカバー材(z)
が存在しない側の末端部に接続した透湿・防水性材によって画された第二室を備え、第一
室及び第二室のいずれか一方には、亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)が収容
されており、他方には、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)が収容され
ており、漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)の少なくとも一方は水性液体(d)の
形態で存在しており、漂白剤前駆体(I)が水性液体(d)の形態である場合、その水性
液体のpH(25℃)は9乃至14であり、前記隔壁は破断され得ることを特徴とする歯
の漂白用デバイス。この態様では、防水性のカバー材(z)、防水性隔壁の外周部(カバ
ー材(z)の末端部及び透湿・防水性材の末端部に接続している部分)及び透湿・防水性
材が外部部材である。この態様では、第一室及び第二室がいずれも閉鎖空間であり、隔壁
が漂白剤前駆体(I)と酸性化剤(II)との接触防止用部材を構成している。デバイス
使用時に隔壁を折ることにより、第一室と第二室とが連通し、一つの閉鎖空間内で、漂白
剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(a)が調製される。
【0024】
歯の漂白用デバイス(E)及び(F)は、第一室に水性液体が存在する態様、即ち、第
一室には漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)が存在し且つ第二室には固体の酸性化剤(
II´)が存在する態様、第一室には酸性化剤(II)の水性液体(g)が存在し且つ第
二室には固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I´)が存在する態様、第一室には漂白
剤前駆体(I)の水性液体(f)が存在し且つ第二室には酸性化剤(II)の水性液体(
g)が存在する態様、及び第一室には酸性化剤(II)の水性液体(g)が存在し且つ第
二室には漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)が存在する態様を包含する。
【0025】
歯の漂白用デバイス(A)乃至(F)では、「漂白剤前駆体(I)と酸性化剤(II)
との接触防止用部材」は、外部部材内部の閉鎖空間内に存在する。歯の漂白用デバイス(
E)及び(F)では、隔壁中、外部部材を構成している部分以外が、「漂白剤前駆体(I
)と酸性化剤(II)との接触防止用部材」である。
【0026】
(G)防水性の隔壁の一方の面上であってその一部に防水性のカバー材(r)の外周部が
接着することによって画された第一室、及び、当該防水性の隔壁の同一の面上であって他
の一部に他の防水性のカバー材(s)の外周部が接着することによって画された第二室を
備え、第一室と第二室は、カバー材(r),(s)の隔壁への接着部位を介して隣接して
おり、第一室及び第二室のいずれか一方には、亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(
I)の水性液体(f)であってそのpH(25℃)が9乃至14であるものが収容されて
おり、他方には、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)の水性液体(g)
が収容されており、前記隔壁はカバー材(r),(s)の存在しない側に開口する切欠き
を有し、当該切欠きは液体吸収・保持性の部材で被覆されており、前記隔壁のカバー材(
r),(s)の存在しない側には透湿・防水性材が接着されており且つ液体吸収・保持性
の部材の表面は透湿・防水性材によって被覆されており、その結果、液体吸収・保持性の
部材を収容する第三室が形成されており、第一室及び第二室は、前記隔壁が破断されると
各々開口を生じ、漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)と酸性化剤(II)の水性液体(
g)とが同時に放出される構造となっていることを特徴とする歯の漂白用デバイス。この
態様では、防水性のカバー材(r)、防水性のカバー材(s)、隔壁の外周部及び透湿・
防水性材が外部部材である。この態様では、第一室、第二室及び第三室がいずれも閉鎖空
間であり、第一室と第二室との間であってカバー材(r),(s)の隔壁への接着部位が
接触防止用部材に相当する。デバイス使用時には、隔壁が前記切欠きの個所で破断される
ことに伴って第一室及び第二室に開口が生じ、漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)と酸
性化剤(II)の水性液体(g)とが同時に放出され、それらが第三室内の液体吸収・保
持性の部材中で混ざり合い、漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)を含む酸性の水性
液体(a)が調製される。
【0027】
上記の歯の漂白用デバイス(A)乃至(D)には、透湿・防水性材の内側に、透水性基
板があり、破損用部材は透水性基板上に形成されている態様も包含される。
【0028】
歯の漂白用デバイス(A)乃至(F)において、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体
(I´)又は固体の酸性化剤(II´)は、スポンジやろ紙等の液体吸収・保持性の部材
に保持されていてもよい。
【0029】
上記の歯の漂白用デバイス(A)乃至(G)は、透湿・防水性材の外表面上に、さらに
二酸化塩素トラップ部材を備えることができる。また、二酸化塩素トラップ部材の外表面
上に、さらにポリマー製フィルム又はシートを備えることもできる。
【0030】
上記の歯の漂白用デバイスであって、二酸化塩素トラップ部材を備えないものは、透湿
・防水性材の外表面の外周部上に、及び/又は、透湿・防水性材の外側に、二酸化塩素ト
ラップ層を備える態様を包含する。二酸化塩素トラップ層とは、例えば、活性炭布や活性
炭シートといった活性炭を使用してなる層である。
【0031】
上記の歯の漂白用デバイスであって、二酸化塩素トラップ部材を備えるものは、二酸化
塩素トラップ部材の、透湿・防水性材に対向する側の反対側の面上であってその外周部上
に、及び/又は、二酸化塩素トラップ部材の外側に、二酸化塩素トラップ層を備える態様
を包含する。
【0032】
本発明には、本発明の歯の漂白用デバイスのいずれかを使用する、次の歯の漂白方法(
3)乃至(5)も包含される:
上記の本発明の歯の漂白用デバイスであって、二酸化塩素トラップ部材を備えるデバイ
スのいずれかにおいて、二酸化塩素トラップ部材に、二酸化塩素と反応する物質を含まな
い水性液体(b)を保持させる工程3-1、当該歯の漂白用デバイス中において、亜塩素
酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の酸性の水性液体(a)を調製し、気体の二酸化
塩素を発生させる工程3-2、発生した気体の二酸化塩素を移動させ、二酸化塩素トラッ
プ部材に保持された水性液体(b)に到達させる工程3-3、二酸化塩素トラップ部材に
保持された水性液体(b)に、移動してきた気体の二酸化塩素を吸収させ、二酸化塩素を
含む水性液体(c)を得る工程3-4、及び工程3-4で得られた二酸化塩素を含む水性
液体(c)を歯に接触させる工程3-5を含む、歯の漂白方法(3);
【0033】
歯に水性ゲルを塗布する工程4-1、上記の本発明の歯の漂白用デバイスのいずれかの
内部において、亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の酸性の水性液体(a)を
調製し、気体の二酸化塩素を発生させる工程4-2、発生した気体の二酸化塩素を歯に塗
布された水性ゲルに到達させる工程4-3、及び歯に塗布された水性ゲルに、移動してき
た気体の二酸化塩素を吸収させ、二酸化塩素を含む水性ゲルを得る工程4-4を含む、歯
の漂白方法(4);及び
【0034】
上記の本発明の歯の漂白用デバイスであって、デバイスの使用時にその最外部に透湿・
防水性材部分を有するもの(換言すれば、二酸化塩素トラップ部材を備えないもの)を用
いる歯の漂白方法であって、透湿・防水性材の外表面上に水性ゲルを保持させる工程5-
1、当該歯の漂白用デバイス内において、亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)
の酸性の水性液体(a)を調製し、気体の二酸化塩素を発生させる工程5-2、発生した
気体の二酸化塩素を移動させ、透湿・防水性材の外表面上に保持された水性ゲルに到達さ
せる工程5-3、透湿・防水性材の外表面上に保持された水性ゲルに、移動してきた気体
の二酸化塩素を吸収させ、二酸化塩素を含む水性ゲルを得る工程5-4、及び工程5-4
で得られた二酸化塩素を含む水性ゲルを歯に接触させる工程5-5を含む、歯の漂白方法
(5)。
【0035】
亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の酸性の水性液体(a)は、デバイス中
に含まれていた酸性化剤(II)も含んでいる。
【0036】
歯の漂白方法(3)乃至(5)は、美容目的での歯の漂白にも適用できる。
【0037】
本発明には、本発明の歯の漂白用デバイスの調製に使用される、次の歯の漂白用キット
(1)及び(2)も包含される:
中空容器と、その中空容器の一端部に螺合される回転移動部材とを含む歯の漂白用キッ
ト(1)であって、中空容器の外部部材は、円柱形で中空の(即ち、円筒形の)防水性カ
バー材、カバー材の一端を閉じている防水性の封止材、及びカバー材の他端を閉じている
透湿・防水性材を備え、中空容器の内部であって封止材の存在する側の端部にめねじ部を
有し、めねじ部と他端との間には防水性の隔壁を備え、中空容器の内部は前記隔壁によっ
て直列状に並んだ二室に分かれており、二室の一方には亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤
前駆体(I)が、他方にはその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)が存在し
、漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)の少なくとも一方は水性液体(d)の形態で
あり、漂白剤前駆体(I)が水性液体(d)の形態である場合、その水性液体のpH(2
5℃)は9乃至14であり、回転移動部材は、おねじ部を有し、中空容器の一端の封止材
を除去するか又はそれに孔をあけて中空容器の一端におねじ部を挿入してめねじ部に螺合
させ、回転移動部材を中空容器内で進行させると、中空容器の第一室と第二室とが連通す
る構成である、歯の漂白用キット(1);及び
【0038】
防水材料製のデュアル・シリンジと、そのデュアル・シリンジの一端部に結合される二
酸化塩素発生・漂白用部材とを備える歯の漂白用キット(2)であって、デュアル・シリ
ンジは、並列に配された第一及び第二のストリームと、各々がそれらのストリームの一端
からストリーム内部に挿入されている、先端にガスケットを有する二本のピストンと、そ
れらのストリームの他端を閉じている封止材とを備え、封止材は着脱可能であり、第一及
び第二のストリームの一方には亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の水性液体
(f)であってそのpH(25℃)が9乃至14であるものが、他方にはその水溶液が酸
性を示す物質を含む酸性化剤(II)の水性液体(g)が存在し、二酸化塩素発生・漂白
用部材は、中空構造であり、その一端は、前記封止材を除去したデュアル・シリンジの第
一及び第二のストリームの他端に着脱可能であり、且つ二酸化塩素発生・漂白用部材の他
端は透湿・防水性材で閉鎖されている、歯の漂白用キット(2)。
【0039】
歯の漂白用キット(1)及び(2)は、透湿・防水性材の外表面上に二酸化塩素トラッ
プ部材を備える態様も包含する。また、二酸化塩素トラップ部材の外表面上に、さらにポ
リマー製フィルム又はシートを備えることもできる。
【0040】
本発明には、本発明の歯の漂白用キットのいずれかを使用する、次の歯の漂白方法(6
)乃至(8)も包含される:
本発明の歯の漂白用キット(1)又は(2)であって、二酸化塩素トラップ部材を備え
るものを用いて調製した歯の漂白用デバイスの二酸化塩素トラップ部材に、二酸化塩素と
反応する物質を含まない水性液体(b)を保持させる工程6-1、当該歯の漂白用デバイ
ス中において、亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の酸性の水性液体(a)を
調製し、気体の二酸化塩素を発生させる工程6-2、発生した気体の二酸化塩素を移動さ
せ、二酸化塩素トラップ部材に保持された水性液体(b)に到達させる工程6-3、二酸
化塩素トラップ部材に保持された水性液体(b)に、移動してきた気体の二酸化塩素を吸
収させ、二酸化塩素を含む水性液体(c)を得る工程6-4、及び工程6-4で得られた
二酸化塩素を含む水性液体(c)を歯に接触させる工程6-5を含む、歯の漂白方法(6
);
【0041】
歯に水性ゲルを塗布する工程7-1、本発明の歯の漂白用キット(1)又は(2)を用
いて調製した歯の漂白用デバイス内において、亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(
I)の酸性の水性液体(a)を調製し、気体の二酸化塩素を発生させる工程7-2、発生
した気体の二酸化塩素を歯に塗布された水性ゲルに到達させる工程7-3、及び歯に塗布
された水性ゲルに、移動してきた気体の二酸化塩素を吸収させ、二酸化塩素を含む水性ゲ
ルを得る工程7-4を含む、歯の漂白方法(7);及び
【0042】
本発明の歯の漂白用キット(1)又は(2)を用いて調製した歯の漂白用デバイスであ
って、デバイスの使用時にその最外部に透湿・防水性材部分を有するもの(換言すれば、
二酸化塩素トラップ部材を備えないもの)を用いる歯の漂白方法であって、透湿・防水性
材の外表面上に水性ゲルを保持させる工程8-1、当該歯の漂白用デバイス内において、
亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の酸性の水性液体(a)を調製し、気体の
二酸化塩素を発生させる工程8-2、発生した気体の二酸化塩素を移動させ、透湿・防水
性材の外表面上に保持された水性ゲルに到達させる工程8-3、透湿・防水性材の外表面
上に保持された水性ゲルに、移動してきた気体の二酸化塩素を吸収させ、二酸化塩素を含
む水性ゲルを得る工程8-4、及び得られた二酸化塩素を含む水性ゲルを歯に接触させる
工程7-5を含む、歯の漂白方法(8)。
【0043】
「亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の酸性の水性液体(a)」は、デバイ
ス中に含まれていた酸性化剤(II)を含んでいる。
【0044】
歯の漂白方法(6)乃至(8)は、美容目的での歯の漂白にも適用できる。
【0045】
また、本発明の歯の漂白方法において、各工程は、上記の順に実施されるとは限らず、
合理的な範囲内において、工程の実施順序は前後してよい。
【発明の効果】
【0046】
本発明では、気体の二酸化塩素を水性液体に吸収、溶解させてなる、ほぼ中性の水性液
体を用いて歯のホワイトニングを行うため、歯が脱灰されない。また、本発明により、高
効率で、即ち、短時間で、歯のホワイトニングを実施できるようになる。さらに、本発明
により、飛躍的に高い歯の漂白効果が、容易に且つ確実に得られる。本発明により、自宅
やエステティックサロンにおいても歯の漂白を実施できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】
図1(a)は、本発明の歯の漂白用デバイス(A)の一例であるデバイス1aの模式的正面図であり、
図1(b)は、デバイス1aのI-I線における模式的断面図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明の歯の漂白用デバイス(A)の他の一例であるデバイス1bの模式的正面図であり、
図2(b)は、デバイス1bのII-II線における模式的断面図である。
【
図3】
図3(a)は、本発明の歯の漂白用デバイス(B)の一例であるデバイス2の模式的正面図であり、
図3(b)は、デバイス2のIII-III線における模式的断面図である。
【
図4】
図4(a)は、本発明の歯の漂白用デバイス(D)の一例であるデバイス3の模式的正面図であり、
図4(b)は、デバイス3のIV-IV線における模式的断面図である。
【
図5】
図5(a)は、本発明の歯の漂白用デバイス(E)の一例であるデバイス4の模式的正面図であり、
図5(b)は、デバイス4のV-V線における模式的断面図である。
【
図6】
図6(a)は、本発明の歯の漂白用デバイス(F)の一例であるデバイス5aの模式的正面図であり、
図6(b)は、デバイス5aのVI-VI線における模式的断面図である。
【
図7】
図7(a)は、本発明の歯の漂白用デバイス(F)の他の一例であるデバイス5bの模式的正面図であり、
図7(b)は、デバイス5bのVII-VII線における模式的断面図である。
【
図8】
図8(a)は、本発明の歯の漂白用デバイス(G)の一例であるデバイス6の模式的正面図であり、
図8(b)は、デバイス6のVIII-VIII線における模式的断面図であり、
図8(c)は、デバイス6のIX-IX線における模式的断面図である。
【
図9】
図9は、二酸化塩素トラップ層を有する本発明の歯の漂白用デバイスの一例の一部省略模式的断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の歯の漂白用デバイス用の固定具100の一例を示す模式的斜視図である。
【
図11】
図11(a)は、本発明の歯の漂白用キット(1)の一例を構成する中空容器8aの模式的断面図である。
図11(b)は、本発明の歯の漂白用キット(1)の一例を構成する回転移動部材8bの模式的断面図である。
図11(c)は、当該中空容器8aに当該回転移動部材8bを取り付けた状態を示す模式的断面図である。
【
図12】
図12(a)は、本発明の歯の漂白用キット(2)の一例を構成するデュアル・シリンジ9aの平面図である。
図12(b)は、本発明の歯の漂白用キット(2)の一例を構成する二酸化塩素発生・漂白用部材9bの平面図である。
図12(c)は、
図12(a)のX-X線における、封止材を除去した状態を示す模式的断面図である。
【
図13】
図13は、実験例2及び3で使用した歯の漂白用デバイスの模式的断面図である。
【
図14】
図14は、実験例4及び5で使用した歯の漂白用デバイスの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
先ず初めに、本明細書及び特許請求の範囲において使用する用語の意味等を説明する。
【0049】
「亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)」は、亜塩素酸又はその塩を必須成分
として含み、本発明の効果を損ねない限り、他の任意成分を含有していてもよい。「漂白
剤前駆体」と称しているのは、亜塩素酸又はその塩が、漂白剤である二酸化塩素の前駆体
であるからである。漂白剤前駆体(I)は、水溶液等の水性液体や、粉末等の固体の形態
等、様々な形態をとり得る。その形態が固体のものに限定される場合には、「漂白剤前駆
体(I´)」と表記する。
【0050】
漂白剤前駆体(I)に含有される亜塩素酸は、無色であり、水溶液の形態で存在する。
漂白剤前駆体(I)及び(I´)に含有される亜塩素酸塩の例としては、亜塩素酸ナトリ
ウム(CAS:7758-19-2)、亜塩素酸カリウム及び亜塩素酸リチウム等の水溶
性の亜塩素酸塩が挙げられる。亜塩素酸塩は、その塩基性(好ましくはpH(25℃)が
9以上)の水溶液は比較的安定である。亜塩素酸ナトリウムの水溶液は、無色乃至淡黄色
である。亜塩素酸ナトリウムには、無水塩と三水塩が存在する。無水塩は無色の結晶性粉
末であり、水に易溶であり、その水溶液は、塩基性では光にあてない限り安定である。し
たがって、漂白剤前駆体(I)として、固体(例えば、粉末状)の亜塩素酸ナトリウム又
はその塩基性水溶液を使用することが特に好ましい。また、漂白剤前駆体(I´)として
、固体の亜塩素酸ナトリウムを使用することが好ましい。
【0051】
「その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)」は、「その水溶液が酸性を示
す物質」を必須成分として含み、本発明の効果を損ねない限り、他の任意成分を含有して
いてもよい。酸性化剤(II)は、水溶液等の水性液体や、粉末等の固体の形態等、様々
な形態をとり得る。その形態が固体のものに限定される場合には、「酸性化剤(II´)
」と表記する。酸性化剤(II)は、漂白剤前駆体(I)の水性液体のpH(25℃)を
酸性にするために使用される。
【0052】
酸性化剤(II)に含有される「その水溶液が酸性を示す物質」は、無機酸又はその塩
でも、有機酸又はその塩でもよく、特に限定されない。「その水溶液が酸性を示す物質」
の例としては、ギ酸、酢酸、アスコルビン酸、リン酸類、クエン酸、硫酸及び塩酸、並び
にそれらの塩類、例えばアルカリ金属塩が挙げられる。反応性の観点からすれば、これら
の中で、リン酸、クエン酸及び硫酸からなる群から選択される少なくとも一種を使用する
ことが好ましい。安全性の観点からすれば、リン酸及びクエン酸が好ましい。また、酸性
化剤(II)として固体のものを用いる場合には、クエン酸及び縮合リン酸類、並びにそ
れらの塩類が好ましい。
【0053】
酸性化剤(II)において、「その水溶液が酸性を示す物質」が結晶や粉末形態の場合
には、そのまま使用してもよいし、水溶液等の水性液体として使用してもよい。
【0054】
「亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の酸性の水性液体(a)」は、亜塩素
酸又はその塩を必須成分として含有し、通常はその水溶液が酸性を示す物質をも含有し、
溶媒が水又は水系液体であり、酸性のものである。このような酸性の水性液体(a)には
、必須成分のみが水に溶解している水溶液のみならず、必須成分以外の成分をも含有する
水性液体、例えば、必須成分を含む生理食塩水溶液、緩衝剤水溶液及び水性懸濁液も包含
される。
【0055】
「水性液体(b)」は、気体の二酸化塩素を吸収させるために使用される。したがって
、二酸化塩素と反応する物質は含まない。水性液体(b)は、水、緩衝剤水溶液、生理食
塩水、若しくは水-アセトン、又はこれらの水性ゲルであってもよいし、あるいは、唾液
であってもよい。水性液体(b)は、例えば、二酸化塩素トラップ部材に保持される。水
性液体(b)が水性ゲルである場合には、漂白すべき歯や透湿・防水性材に塗布されても
よい。
【0056】
水性液体(b)の一種である水性ゲルは、ゲル化剤を使用して調製され得る。ゲル化剤
の例としては、例えば、食品添加物として使用されている増粘多糖類、具体的には、カル
ボキシメチルセルロース(cmc)、cmcのナトリウム塩、cmcのカルシウム塩、キ
サンタンガム、グァーガム、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン、ローカストビーン
ガム、カードラン、寒天、グルコマンナン及びアルギン酸が挙げられる。
【0057】
「水性液体(c)」は、水性液体(b)が気体の二酸化塩素を吸収した状態を指す。水
性液体(c)のpHは、5.0乃至7.0であることが好ましく、5.5乃至7.0であ
ることがさらに好ましい。
【0058】
「水性液体(d)」は、漂白剤前駆体(I)又は酸性化剤(II)が示す形態の一つで
ある。水性液体(d)には、必須成分(亜塩素酸又はその塩、又は、その水溶液が酸性を
示す物質)のみが水に溶解している水溶液のみならず、必須成分以外の成分をも含有する
水性液体、例えば、必須成分を含む生理食塩水溶液、緩衝剤水溶液及び水性懸濁液も包含
される。水性液体(d)が漂白剤前駆体の(I)の水性液体である場合には、そのpHは
9乃至14、好ましくは11乃至13である。
【0059】
「水性液体(e)」は、本発明のデバイス中において、固体の漂白剤前駆体(I´)及
び固体の酸性化剤(II´)を溶解、分散させるために使用される。水性液体(e)は、
亜塩素酸、亜塩素酸塩、その水溶液が酸性を示す物質及び二酸化塩素のいずれかと反応す
る物質を含まない。水性液体(e)の例は、水、緩衝剤水溶液及び生理食塩水である。水
性液体(e)は、水性液体(e)に固体の漂白剤前駆体(I´)及び固体の酸性化剤(I
I´)を溶解、分散させて得られる水性液体が、酸性のpHを示すことが出来るものでな
ければならない。
【0060】
「水性液体(f)」は、漂白剤前駆体(I)が示す形態の一つであり、亜塩素酸又はそ
の塩を含有し、溶媒が水又は水系液体であるものである。水性液体(f)には、必須成分
のみが水に溶解している水溶液のみならず、必須成分以外の成分をも含有する水性液体、
例えば、必須成分を含む生理食塩水溶液、緩衝剤水溶液及び水性懸濁液も包含される。保
存時における亜塩素酸又はその塩の分解を防止又は低減するために、水性液体(f)は塩
基性であり、好ましくはpH9乃至14であり、さらに好ましくはpH11乃至13であ
る。
【0061】
「水性液体(g)」は、酸性化剤(II)が示す形態の一つであり、その水溶液が酸性
を示す物質を含有し、溶媒が水又は水系液体であるものである。水性液体(g)には、必
須成分のみが水に溶解している水溶液のみならず、必須成分以外の成分をも含有する水性
液体、例えば、必須成分を含む生理食塩水溶液、緩衝剤水溶液及び水性懸濁液も包含され
る。
【0062】
本発明では、酸性化剤(II)を添加することによって、亜塩素酸又はその塩を含む漂
白剤前駆体(I)の水性液体(d)又は(f)のpHを酸性とする。このようにして、亜
塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の酸性の水性液体(a)を得、気体の二酸化
塩素を発生させる。「亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の酸性の水性液体(
a)」の好ましいpHは1乃至4であり、より好ましいpHは1乃至3である。
【0063】
当該酸性の水性液体(a)は、漂白剤前駆体(I)を必須成分とし、及び通常はその他
に酸性化剤(II)も含有する。本発明によって得られる効果を損ねない限り、他の任意
成分をも含有していてもよい。任意成分の例としては、プラチナ・ナノコロイド、二酸化
チタン、塩化白金酸、酸化コバルト等が挙げられる。これらの成分は、本発明の歯の漂白
用デバイスの漂白剤前駆体(I)に含まれていてもよいし、酸性化剤(II)に含まれて
いてもよいし、あるいは、これらとは別途に提供されてもよい。
【0064】
「外部部材」とは、本発明の歯の漂白用デバイスの形状を特定する部材であり、防水性
のカバー材と透湿・防水性材とを備える。外部部材の一部を構成する「防水性のカバー材
」は、少なくともその内側は防水性材料製(例えば、ポリエチレン、ポリウレタン、及び
ポリテトラフルオロエチレン等の防水性ポリマー製)の、例えばシートである。「防水性
のカバー材」として、ポリエチレン製シートやアルミ蒸着シートのような防湿性も兼ね備
えたものが好ましい。また、本発明の歯の漂白用デバイスの態様によっては、「防水性の
カバー材」は、防水性の硬質プラスチック製であってもよい。外部部材の他の一部を構成
する「透湿・防水性材」とは、水の分子は通過できないが、水蒸気や気体の二酸化塩素は
通過することのできる大きさの孔を有する材料製の、例えばシートである。その例は、高
密度ポリエチレンの不織布、ポリエチレン系多孔質フィルム、ポリウレタン系多孔質フィ
ルム、及びポリテトラフルオロエチレン多孔質フィルムである。後記する、本発明の歯の
漂白用デバイスの実施態様に関する説明から明らかなように、外部部材は、防水性のカバ
ー材及び透湿・防水性材のみからなる場合と、これらに加えて、他の材料製の部分も外部
部材の一部を構成する場合とがある。
【0065】
「漂白剤前駆体(I)と酸性化剤(II)との接触防止用部材」は、本発明の歯の漂白
用デバイスの保存時に、亜塩素酸又はその塩とその水溶液が酸性を示す物質とが互いに接
触しないように隔離することのできる部材である。具体的には、歯の漂白用デバイス(A
)乃至(C)における第一収容部材及び第二収容部材、歯の漂白用デバイス(D)におけ
る接触防止用部材、並びに歯の漂白用デバイス(E)及び(F)における隔壁である。歯
の漂白用デバイス(G)では、第一室と第二室との間に存在するカバー材(r)及び(s
)の隔壁への接着部位が、接触防止用部材である。
【0066】
歯の漂白用デバイス(A)乃至(C)における第一収容部材及び第二収容部材は、例え
ば、ポリエチレン、ポリウレタン、及びポリテトラフルオロエチレン等の防水ポリマーシ
ート製の袋である。歯の漂白用デバイス(D)における第三収容部材は、例えば、ポリエ
チレン、ポリウレタン、及びポリテトラフルオロエチレン等の防水性ポリマーシート製の
袋である。
【0067】
歯の漂白用デバイス(D)における接触防止用部材は、水性液体を透過させることがで
きる又は水溶性の材料製の部材である。その例としては、固体の漂白剤前駆体(I´)や
固体の酸性化剤(II´)が通り抜けない大きさの目を有する織物やメッシュ、及びろ紙
等の紙、並びに水溶性ポリマー製フィルムが挙げられる。歯の漂白用デバイス(E)乃至
(G)における隔壁は、例えば、防水性材料製(例えば、プラスチック製)の板である。
歯の漂白用デバイス(G)における防水性のカバー材(r)、(s)は、例えば、ポリエ
チレン、ポリウレタン、及びポリテトラフルオロエチレンといった防水性ポリマーシート
である。
【0068】
本発明のデバイスは、その使用時に閉鎖空間内で漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(I
I)を含む酸性の水性液体(a)を調製できる構造を有する。「閉鎖空間」は、密閉空間
ではない。閉鎖空間には、その空間の構成要素の一つである透湿・防水性材を通じて、気
体が流入・流出できる。水性液体(a)を調製するために、歯の漂白用デバイス(A)乃
至(D)は「破損用部材」を、歯の漂白用デバイス(E)乃至(G)は破断され得る隔壁
を有している。「破損用部材」は、第一、第二、又は第三収容部材を破損させることがで
きるものである。その例は、先端が尖った形状を有する硬質材料製(例えば、プラスチッ
ク製)の部材である。「破断され得る隔壁」は、例えば、切欠きを有する防水性材料製(
例えば、プラスチック製)の板である。
【0069】
「透水性基板」とは、形状を保てる硬さがあり、水等の水性液体を透過又は通過させる
ことのできる板状の部材である。その一例は、多数の孔を有するプラスチック製の板であ
る。
【0070】
固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I´)又は固体の酸性化剤(II´)や、水性
液体を保持する「液体吸収・保持性の部材」とは、そのものの有する小さな空隙に、固体
や水性液体を保持できる材料製のもの、例えば、スポンジ、ろ紙、織布である。
【0071】
「二酸化塩素トラップ部材」は、水性液体(b)及び(c)を保持できる材料製のもの
である。本発明においては、二酸化塩素トラップ部材に保持された水性液体(b)中に、
気体の二酸化塩素が吸収され、水性液体(c)となる。二酸化塩素トラップ部材の例とし
て、ろ紙、スポンジ、微細なブラシ、織布、及び不織布が挙げられる。また、その材料の
例としては、ポリエステル、ナイロン、ビニロン、ポリプロピレン、レーヨン、低密度ポ
リエチレン、及びエチレン酢酸ビニル共重合体が挙げられる。本発明のデバイスにおいて
、二酸化塩素トラップ部材は一つのみとは限らず、同じ材質又は異なる材質の二つ以上の
二酸化塩素トラップ部材が存在していてもよい。
【0072】
二酸化塩素トラップ部材の表面を覆う「ポリマー製フィルム又はシート」は、本発明の
歯の漂白用デバイスの保存時には、二酸化塩素トラップ部材の表面を覆っており、その使
用に際して剥離される。本発明の歯の漂白用デバイスが外袋に封入されている場合は、「
ポリマー製フィルム又はシート」はなくてもよい。このようなフィルム又はシートの原料
ポリマーの例は、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチ
レン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリエステル、アクリレートポリマー、メタクリ
レートポリマー及びポリエチレンテレフタラートである。
【0073】
「二酸化塩素トラップ層」は、漂白に使用されない気体の二酸化塩素、換言すれば、水
性液体(b)に保持されない気体の二酸化塩素を捕捉するための層(例えば、活性炭布や
活性炭シート等の活性炭を含む層)である。
【0074】
本発明における「歯の漂白用キット」は、そのキットを構成する部材を組み合わせるこ
とにより、本発明の歯の漂白用デバイスとなるものである。「歯の漂白用キット(1)」
において、中空容器を構成する「円柱形で中空の防水性カバー材」は、例えば、ポリプロ
ピレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリレートポリマー、メタクリレートポリマー
といった防水性で硬質のポリマー製である。「防水性の封止材」は、防水性カバー材内部
に存在する漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)を、外部から隔離できる材質、例え
ば、ポリエチレン、ポリウレタン、及びポリテトラフルオロエチレンといった防水性ポリ
マー製の、例えばシートである。「透湿・防水性材」は、水の分子は通過できないが、水
蒸気や気体の二酸化塩素は通過することのできる大きさの孔を有する材料製の、例えばシ
ートである。その例は、高密度ポリエチレンの不織布、ポリエチレン系多孔質フィルム、
ポリウレタン系多孔質フィルム、及びポリテトラフルオロエチレン多孔質フィルムである
。
【0075】
円柱形で中空の防水性カバー材の一端の内部には、めねじ部が存在する。めねじ部は、
例えば可撓性を有するゴム製の、より具体的にはシリコーンゴム製のリングと、そのリン
グの孔に密に装入された金属製のめねじとで構成されている。また、円柱形で中空の防水
性カバー材の内部に存在する隔壁は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレ
ート、アクリレートポリマー、メタクリレートポリマーといった防水性で硬質のポリマー
製である。
【0076】
回転移動部材は、そのおねじ部が中空容器のめねじ部と螺合し、且つ、回転しながら中
空の防水性カバー材の内部を進行することにより、中空の防水性カバー材の内部に存在す
る第一室と第二室とを連通させることのできるものである。具体的には、おねじ部の延長
線上に、例えば金属製の突起部分が存在し、その突起部分により、第一室と第二室との間
の隔壁に孔を開けることができるものである。
【0077】
「歯の漂白用キット(2)」において、「デュアル・シリンジ」の注射筒は、防水性の
、例えば、低密度ポリエチレンやポリプロピレン等のポリマー製である。ガスケットは、
例えばブタジエンゴムや熱可塑性エラストマー製であり、ピストンは、例えばポリエチレ
ン製である。「デュアル・シリンジ」において、ストリームの一端(ピストンが挿入され
ていない方の端部)を閉じている封止材は、例えば、第一及び第二のストリームの外側に
形成されたねじ山に螺合する、又は、第一及び第二のストリームの外側に嵌合する、プラ
スチック製の蓋である。
【0078】
二酸化塩素発生・漂白用部材は、例えば、中空で円柱形の部材であり、その材料は、防
水性の、例えば、低密度ポリエチレンやポリプロピレン等のポリマー製である。その一端
は、デュアル・シリンジの第一及び第二のストリームの外側に形成されたねじ山に螺合す
るか、又は、第一及び第二のストリームの外側に嵌合する。その他端は、高密度ポリエチ
レンの不織布、ポリエチレン系多孔質フィルム、ポリウレタン系多孔質フィルム、及びポ
リテトラフルオロエチレン多孔質フィルム等の、透湿・防水性材で閉鎖されている。
【0079】
本発明における「歯の漂白用キット」も、透湿・防水性材の外表面上に二酸化塩素トラ
ップ部材を備えていてもよく、また、二酸化塩素トラップ部材の外表面上にポリマー製フ
ィルム又はシートを備えていてもよい。
【0080】
「固定具」は、本発明の歯の漂白用デバイスを使用する際に、当該デバイスを支持する
ための器具である。
【0081】
次に、本発明の歯の漂白方法(1)について説明する。本発明の歯の漂白方法(1)は
、次の三工程を含む:
亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の酸性の水性液体(a)を調製し、気体
の二酸化塩素を発生させる工程1-1、
二酸化塩素と反応する物質を含まない水性液体(b)に、発生した気体の二酸化塩素を
吸収させ、二酸化塩素を含む水性液体(c)を得る工程1-2、及び
工程1-2で得られた二酸化塩素を含む水性液体(c)を歯に接触させる工程1-3。
【0082】
工程1-1は、亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)に、その水溶液が酸性を
示す物質を含む酸性化剤(II)を溶解させて、又は、当該漂白剤前駆体(I)を当該酸
性化剤(II)に溶解させて、漂白剤前駆体(I)の酸性の水性液体(a)を調製し、気
体の二酸化塩素を発生させる工程である。酸性の水性液体(a)のpHは、1乃至4であ
ることが好ましく、1乃至2であることがさらに好ましい。この工程を、30乃至60℃
に加温して実施すると、気体の二酸化塩素がより効率的に発生する。
【0083】
工程1-2は、工程1-1で発生した気体の二酸化塩素を、二酸化塩素と反応する物質
を含まない水性液体(b)に吸収させ、二酸化塩素を含む水性液体(c)を得る工程であ
る。例えば後記する本発明の歯の漂白用デバイスを使用して、発生した気体の二酸化塩素
を水性液体(b)に導き、それに吸収させる。二酸化塩素の20℃における水への溶解度
は0.8g/100mLであるから、気体の二酸化塩素が水性液体(b)に接触すると、
水性液体(b)が溶解度を超える二酸化塩素を溶解していない限り、気体の二酸化塩素は
その水性液体(b)に溶解して吸収される。
【0084】
工程1-3は、歯の漂白工程である。工程1-3では、工程1-2で得られた二酸化塩
素を含む水性液体(c)を歯に接触させる。その時間は、10秒乃至60分間程度であっ
てよく、通常は30秒乃至30分間である。工程1-3が終了したら、歯及び口中を漱ぐ
。
【0085】
さらに、本発明の歯の漂白方法(2)について説明する。本発明の歯の漂白方法(2)
は、次の三工程を含む:
歯に水性ゲルを塗布する工程2-1、
亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の酸性の水性液体(a)を調製し、気体
の二酸化塩素を発生させる工程2-2、及び
歯に塗布された水性ゲルに、工程2-2で発生した気体の二酸化塩素を吸収させる工程
2-3。
【0086】
工程2-1は、歯に水性ゲルを塗布する工程である。水性ゲルは、後の工程2-3にお
いて、気体の二酸化塩素を吸収・保持するために使用される。この水性ゲルは、歯の漂白
方法(1)における水性液体(b)に相当し、したがって、この水性ゲルは、二酸化塩素
と反応する物質を含まない。水性ゲルは、ゲル化剤を使用して調製され得る。ゲル化剤の
例としては、例えば、食品添加物として使用されている増粘多糖類、具体的には、カルボ
キシメチルセルロース(cmc)、cmcのナトリウム塩、cmcのカルシウム塩、キサ
ンタンガム、グァーガム、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン、ローカストビーンガ
ム、カードラン、寒天、グルコマンナン及びアルギン酸が挙げられる。
【0087】
工程2-2は、本発明の歯の漂白方法(1)の工程1-1と同じである。
【0088】
工程2-3は、発生した気体の二酸化塩素を、水性ゲルに吸収させる工程である。水性
ゲルは、二酸化塩素が飽和濃度に到達していなければ、発生した気体の二酸化塩素を吸収
し、保持する。水性ゲルは、工程2-1において歯に塗布されているので、工程2-3に
よって水性ゲル中に二酸化塩素が存在するようになることにより、歯の漂白が行われる。
【実施例0089】
次に、図面を参照して、本発明の歯の漂白用デバイスの好ましい実施態様を、順に説明
する。
【0090】
[歯の漂白用デバイス(A)]
図1は、本発明の歯の漂白用デバイス(A)の一例を示す。歯の漂白用デバイス1aは
、防水性のカバー材110及び透湿・防水性材120を備える外部部材1000、並びに
、外部部材1000の内部の閉鎖空間SP内に、防水性の第一収容部材101、防水性の
第二収容部材102、第一収容部材破損用部材111及び第二収容部材破損用部材112
を備える。
【0091】
透湿・防水性材120は、その末端部125において、カバー材110の末端部115
に接続している。第一収容部材101の内部10には、漂白剤前駆体(I)の水性液体(
f)が収容されており、第二収容部材102の内部11には、その水溶液が酸性を示す物
質を含む酸性化剤(II)の水性液体(g)が収容されている。第一収容部材破損用部材
111及び第二収容部材破損用部材112は、樹脂製で尖った形状をしており、それぞれ
第一収容部材及び第二収容部材を破損できる位置に存在している。
【0092】
歯の漂白用デバイス1aは、
図1(a)及び(b)のそれぞれに記載された図を180
度回転した状態、即ち、透湿・防水性材120が最上部となる状態で保存される。使用時
には、
図1(a)及び(b)のそれぞれに記載された状態で、カバー材110を上から押
すことにより、第一収容部材破損用部材111及び第二収容部材破損用部材112によっ
て、それぞれ第一収容部材101及び第二収容部材102を破る。それにより、閉鎖空間
SP内において、漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)と酸性化剤(II)の水性液体(
g)とが混ざり、酸性の水性液体(a)が生じ、気体の二酸化塩素が発生する。酸性の水
性液体(a)は閉鎖空間SP内に留まり、酸性の水性液体(a)に溶解しきれない気体の
二酸化塩素が、透湿・防水性材120内の気体透過性の孔を通って、換言すると、当該孔
内において空気中を移動して、デバイスの外に向かって移動する。
【0093】
デバイス1aは、透湿・防水性材120の外表面上に水性ゲルを保持させたうえで、そ
の水性ゲルを漂白すべき歯に押し当てることにより、又は、漂白すべき歯に水性ゲルを塗
布し、歯に塗布された水性ゲルにデバイス1aの透湿・防水性材120の外表面を押し当
てることにより、使用される。これらの水性ゲルには、透湿・防水性材120内の気体透
過性の孔を通ってデバイス1aの外に出てきた気体の二酸化塩素が吸収され、その結果得
られた二酸化塩素を含む水性ゲルにより、歯の漂白(ホワイトニング)が実施される。
【0094】
図2は、本発明の歯の漂白用デバイス(A)の他の一例を示す。歯の漂白用デバイス1
bは、歯の漂白用デバイス1aの構成要件に加えて、透湿・防水性材120の外表面上に
二酸化塩素トラップ部材130を、及び二酸化塩素トラップ部材130の外表面上にポリ
マー製シート190を有する。
【0095】
二酸化塩素トラップ部材130は、透湿・防水性材120の気体(湿分)透過性の孔を
閉鎖しないように、例えば点接着で透湿・防水性材120に接着されている。透湿・防水
性材120の孔の全てが塞がれてしまうと、水蒸気や気体の二酸化塩素が通過できなくな
ってしまうからである。
【0096】
ポリマー製シート190は、例えば弱い粘着又は接着力で、二酸化塩素トラップ部材1
30の表面に結合されている。ポリマー製シート190は、歯の漂白用デバイス1bの使
用に際し、二酸化塩素トラップ部材130から剥離される。歯の漂白用デバイス1bが、
例えば外袋に封入される場合には、ポリマー製シート190はなくてもよい。
【0097】
歯の漂白用デバイス1bは、
図2(a)及び(b)のそれぞれに記載された図を180
度回転した状態、即ち、ポリマー製シート190が最上部となる状態で保存される。使用
時には、ポリマー製シート190が剥離され、二酸化塩素トラップ部材130は、水等で
濡らされて又は唾液によって濡れることにより、水性液体(b)を保持する。
図2(a)
及び(b)のそれぞれに記載された状態で、カバー材110を上から押すことにより、第
一収容部材破損用部材111及び第二収容部材破損用部材112によって、それぞれ第一
収容部材101及び第二収容部材102を破る。それにより、閉鎖空間SP内において、
漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)と酸性化剤(II)の水性液体(g)とが混ざり、
酸性の水性液体(a)が生じ、気体の二酸化塩素が発生する。酸性の水性液体(a)は閉
鎖空間SP内に留まり、気体の二酸化塩素等の気体のみが、透湿・防水性材120内の気
体透過性の孔を通って、換言すると、当該孔内において空気中を移動して、二酸化塩素ト
ラップ部材130に保持された水性液体(b)に向かって移動する。
【0098】
二酸化塩素トラップ部材130に保持された水性液体(b)に、閉鎖空間SPから移動
してきた気体の二酸化塩素が吸収されて溶解し、水性液体(c)となる。水性液体(c)
を保持した二酸化塩素トラップ部材130を歯に接触させることにより、歯の漂白(ホワ
イトニング)が実施される。
【0099】
[歯の漂白用デバイス(B)及び(C)]
図3は、本発明の歯の漂白用デバイス(B)の一例を示す。歯の漂白用デバイス2は、
防水性のカバー材210及び透湿・防水性材220を備える外部部材2000、透湿・防
水性材220の外側の二酸化塩素トラップ部材230、並びに、外部部材2000の内部
の閉鎖空間SP内に、防水性の第一収容部材201、第一収容部材破損用部材211及び
固体の、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II´)を備える。透湿・防水性
材220は、その末端部225において、カバー材210の末端部215に接続している
。この実施態様においても、二酸化塩素トラップ部材230の表面が、ポリマー製シート
で被覆されていてもよい。また、透湿・防水性材220の外側に二酸化塩素トラップ部材
230が存在しない態様も、本発明のデバイスに包含される。
【0100】
第一収容部材201の内部10には、漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)が収容され
ている。第一収容部材破損用部材211は、樹脂製で尖った形状をしており、第一収容部
材を破損できる位置に存在している。固体の、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化
剤(II´)も、閉鎖空間SP内に収容されている。固体の酸性化剤(II´)は、固体
の酸性化剤(II´)が通り抜けない大きさの目を有する織物やメッシュ、又はろ紙等の
紙、あるいは水溶性ポリマー製フィルムで被覆されていてもよい。
【0101】
二酸化塩素トラップ部材230は、透湿・防水性材220の気体(湿分)透過性の孔を
閉鎖しないように、例えば点接着で、透湿・防水性材220に接着されている。透湿・防
水性材220の孔の全てが塞がれてしまうと、水蒸気や気体の二酸化塩素が通過できなく
なってしまうからである。
【0102】
歯の漂白用デバイス2は、
図3(a)及び(b)のそれぞれに記載された図を180度
回転した状態、即ち、二酸化塩素トラップ部材230が最上部となる状態で保存される。
使用時には、二酸化塩素トラップ部材230は、水等で濡らされて又は唾液によって濡れ
ることにより、水性液体(b)を保持する。
図3(a)及び(b)に示す状態で、カバー
材210を上から押すことにより、第一収容部材破損用部材211によって、第一収容部
材201を破る。それにより、閉鎖空間SP内において、漂白剤前駆体(I)の水性液体
(f)に酸性化剤(II´)が溶解し、酸性の水性液体(a)が生じ、気体の二酸化塩素
が発生する。酸性の水性液体(a)は閉鎖空間SP内に留まり、気体の二酸化塩素等の気
体のみが、透湿・防水性材120内の気体透過性の孔を通って、換言すると、当該孔内に
おいて空気中を移動して、二酸化塩素トラップ部材230に保持された水性液体(b)に
向かって移動する。
【0103】
二酸化塩素トラップ部材230に保持された水性液体(b)に、閉鎖空間SPから移動
してきた気体の二酸化塩素が吸収されて溶解し、水性液体(c)となる。水性液体(c)
を保持した二酸化塩素トラップ部材230を歯に接触させることにより、歯の漂白(ホワ
イトニング)が実施される。
【0104】
本発明の歯の漂白用デバイス(C)は、図示されていない。歯の漂白用デバイス(C)
は、
図3において、第一収容部材201の代わりに、その内部11に酸性化剤(II)の
水性液体(g)を収容している第二収容部材が存在し、固体の酸性化剤(II´)の代わ
りに固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I´)が存在し、第一収容部材破損用部材2
11の代わりに第二収容部材破損用部材が存在するものである。これら以外は、本発明の
歯の漂白用デバイス(B)と同様である。
【0105】
[歯の漂白用デバイス(D)]
図4は、本発明の歯の漂白用デバイス(D)の一例を示す。歯の漂白用デバイス3は、
防水性のカバー材310及び透湿・防水性材320を備える外部部材3000、透湿・防
水性材320の外側の二酸化塩素トラップ材330、並びに、外部部材3000の内部の
閉鎖空間SP内に、防水性の第三収容部材301、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体
(I´)、固体の、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II´)、漂白剤前駆
体(I´)及び酸性化剤(II´)をそれぞれ覆っている接触防止用部材300A及び3
00B、透水性基板340及び第三収容部材破損用部材311を備える。透湿・防水性材
320は、その末端部325において、カバー材310の末端部315に接続している。
この実施態様においても、二酸化塩素トラップ部材330の表面が、ポリマー製シートで
被覆されていてもよい。また、透湿・防水性材320の外側に二酸化塩素トラップ部材3
30が存在しない態様も、本発明のデバイスに包含される。
【0106】
第三収容部材301の内部12には、前記した水性液体(e)が収容されている。第三
収容部材破損用部材311は、樹脂製で尖った形状をしており、第三収容部材301を破
損できる位置に存在している。固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I´)と、固体の
、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II´)も、閉鎖空間SP内に収容され
ている。デバイス3の保存時、漂白剤前駆体(I´)と酸性化剤(II´)とが互いに接
触しないように、それらは各々、水溶性ポリマーシート300A及び300Bで被覆され
ている。
図3には、接触防止用部材として、固体の漂白剤前駆体(I´)と固体の酸性化
剤(II´)とをそれぞれ覆う水溶性ポリマーシート300A及び300Bが記載されて
いるが、固体の漂白剤前駆体(I´)と固体の酸性化剤(II´)の一方のみが水溶性ポ
リマーシートで被覆されていて、他方は被覆されていなくてもよい。また、接触防止用部
材は、その中に固体の漂白剤前駆体(I´)又は固体の酸性化剤(II´)を収納した水
溶性ポリマー製の袋であってもよい。接触防止用部材は、固体の漂白剤前駆体(I´)や
固体の酸性化剤(II´)が通り抜けない大きさの目を有する織物やメッシュ、ろ紙等の
紙であってもよい。
【0107】
閉鎖空間SP内には、透水性基板340も存在する。歯の漂白用デバイス3では、透湿
・防水性材320の内側に透水性基板340が配置されているため、第三収容部材破損用
部材311は透水性基板340上に形成されている。透水性基板340は、歯の漂白用デ
バイス3の必須構成要件ではないが、これが存在することで、カバー材310を押圧した
際に、第三収容部材301に確実に力が伝達され、第三収容部材301がより容易に破損
される。なお、先に説明した歯の漂白用デバイス(A)乃至(C)も、透水性基板を有し
ていてもよい。
【0108】
歯の漂白用デバイス3では、透水性基板340の外側に透湿・防水性材320が存在し
、さらにその外側には二酸化塩素トラップ部材330が存在する。液体は、透水性基板3
40を通過することができるが、透湿・防水性材320は通過することができない。透水
性基板340と透湿・防水性材320は、透水性基板340の透水又は通水孔を塞がない
ように、例えば点接着で接着されているか、又は、接着されていない。また、透湿・防水
性材320と二酸化塩素トラップ部材330は、透湿・防水性材320の気体(湿分)透
過性の孔を閉鎖しないように、例えば点接着で、透湿・防水性材320に接着されている
。透湿・防水性材320の孔の全てが塞がれてしまうと、水蒸気や気体の二酸化塩素が通
過できなくなってしまうからである。
【0109】
歯の漂白用デバイス3は、
図4(a)及び(b)のそれぞれに記載された図を180度
回転した状態、即ち、二酸化塩素トラップ部材330が最上部となる状態で保存される。
使用時には、二酸化塩素トラップ部材330は、水等で濡らされて又は唾液によって濡れ
ることにより、水性液体(b)を保持する。
図4(a)及び(b)に示す状態で、カバー
材310を上から押すことにより、第三収容部材破損用部材311によって、第三収容部
材301を破る。それにより、閉鎖空間SP内において、第三収容部材301に収容され
ていた水等の水性液体(e)に、水溶性ポリマーシート300A,300B、固体の漂白
剤前駆体(I´)及び固体の酸性化剤(II´)が溶解し、酸性の水性液体(a)が生じ
、気体の二酸化塩素が発生する。酸性の水性液体(a)は閉鎖空間SP内及び透水性基板
340の透水又は通水孔内にとどまり、気体の二酸化塩素等の気体のみが、透湿・防水性
材320内の気体透過性の孔を通って、換言すると、当該孔内において空気中を移動して
、二酸化塩素トラップ部材330に保持された水性液体(b)に向かって移動する。
【0110】
二酸化塩素トラップ部材330に保持された水性液体(b)に、閉鎖空間SPから移動
してきた気体の二酸化塩素が吸収されて溶解し、水性液体(c)となる。水性液体(c)
を保持した二酸化塩素トラップ部材330を歯に接触させることにより、歯の漂白(ホワ
イトニング)が実施される。
【0111】
[歯の漂白用デバイス(E)]
図5は、本発明の歯の漂白用デバイス(E)の一例を示す。歯の漂白用デバイス4は、
防水性のカバー材410Aと防水性の隔壁460によって画された第一室470及び当該
隔壁460と防水性のカバー材410Bと透湿・防水性材420によって画された第二室
480とを備える。透湿・防水性材420の外側には、二酸化塩素トラップ部材430が
存在する。第一室470には、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)の水
性液体(g)が収容されており、第二室480には、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆
体(I´)が収容されている。隔壁460には、歯の漂白用デバイス4の使用時に当該隔
壁460を容易に折ることが出来るように、第二室480側に開口している切欠き461
が形成されている。
【0112】
歯の漂白用デバイス4では、外部部材4000は、防水性のカバー材410A、防水性
のカバー材410B及び透湿・防水性材420、並びに防水性の隔壁460の外周部から
なる。カバー材410Aの外周部(即ち、末端部)412Aは、隔壁460の一方の面a
の外周部(即ち、末端部)465aに接着されており、カバー材410Bの一方の末端部
412Bは、隔壁460の他方の面bの外周部(即ち、末端部)465bに接着されてお
り、カバー材410Bの他方の末端部415Bには、透湿・防水性材420の外周部(即
ち、末端部)425が接着されている。透湿・防水性材420の外側には、二酸化塩素ト
ラップ部材430が存在する。この実施態様においても、二酸化塩素トラップ部材430
の表面が、ポリマー製シートで被覆されていてもよい。また、透湿・防水性材420の外
側に二酸化塩素トラップ部材430が存在しない態様も、本発明のデバイスに包含される
。
【0113】
歯の漂白用デバイス4では、第一室470に酸性化剤(II)の水性液体(g)が収容
されており、第二室480には固体の漂白剤前駆体(I´)が収容されているが、第一室
470及び第二室480の少なくとも一方に収容されているものが、水性液体の形態であ
ればよい。また、漂白剤前駆体(I)と酸性化剤(II)は、第一室470と第二室48
0とに別れて収容されていればよい。
【0114】
歯の漂白用デバイス4の使用時には、二酸化塩素トラップ部材430は、水等で濡らさ
れて又は唾液によって濡れることにより、水性液体(b)を保持する。
図5(a)及び(
b)に示す状態で、隔壁460の外周部を押し上げることにより、切欠き461において
隔壁460を折る。それにより、第一室470と第二室480とが連通し、第一室470
内の酸性化剤(II)の水性液体(g)に第二室480内の固体の漂白剤前駆体(I´)
が溶解し、酸性の水性液体(a)が生じ、気体の二酸化塩素が発生する。生じた酸性の水
性液体(a)は、連通した第一室470及び第二室480内にとどまり、気体の二酸化塩
素等の気体のみが、透湿・防水性材420内の気体透過性の孔を通って、換言すると、当
該孔内において空気中を移動して、二酸化塩素トラップ部材430に保持された水性液体
(b)に向かって移動する。
【0115】
二酸化塩素トラップ部材430に保持された水性液体(b)に、連通した第一室470
及び第二室480から移動してきた気体の二酸化塩素が吸収されて溶解し、水性液体(c
)となる。水性液体(c)を保持した二酸化塩素トラップ部材430を歯に接触させるこ
とにより、歯の漂白(ホワイトニング)が実施される。
【0116】
[歯の漂白用デバイス(F)]
図6は、本発明の歯の漂白用デバイス(F)の一例を示す。歯の漂白用デバイス5aは
、防水性のカバー材510と防水性の隔壁560によって画された第一室570及び当該
隔壁560と透湿・防水性材520によって画された第二室580とを備える。透湿・防
水性材520の外側には、二酸化塩素トラップ部材530が存在する。第一室570には
、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I´)が収容されており、第二室580には、
その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)の水性液体(g)が収容されている
。隔壁560には、歯の漂白用デバイス5aの使用時に当該隔壁560を容易に折ること
が出来るように、第二室580側に開口している切欠き561が形成されている。
【0117】
歯の漂白用デバイス5aでは、外部部材5000は、防水性のカバー材510、透湿・
防水性材520、並びに防水性の隔壁560の外周部からなる。カバー材510の外周部
(即ち、末端部)512は、隔壁560の一方の面aの外周部(即ち、末端部)565a
に接着されており、透湿・防水性材520の外周部(即ち、末端部)522は、隔壁56
0の他方の面bの外周部(即ち、末端部)565bに接着されている。透湿・防水性材5
20の外側には、二酸化塩素トラップ部材530が存在する。この実施態様においても、
二酸化塩素トラップ部材530の表面が、ポリマー製シートで被覆されていてもよい。ま
た、透湿・防水性材520の外側に二酸化塩素トラップ部材530が存在しない態様も、
本発明のデバイスに包含される。
【0118】
歯の漂白用デバイス5aでは、第一室570に固体の漂白剤前駆体(I´)が収容され
ており、第二室580には酸性化剤(II)の水性液体(g)が収容されているが、第一
室570及び第二室580の少なくとも一方に収容されているものが、水性液体の形態で
あればよい。また、漂白剤前駆体(I)と酸性化剤(II)は、第一室570と第二室5
80とに別れて収容されていればよい。
【0119】
歯の漂白用デバイス5aの使用時には、二酸化塩素トラップ部材530は、水等で濡ら
されて又は唾液によって濡れることにより、水性液体(b)を保持する。
図6(a)及び
(b)に示す状態で、隔壁560の外周部を押し上げることにより、切欠き561におい
て隔壁560を折る。それにより、第一室570と第二室580とが連通し、第二室58
0内の酸性化剤(II)の水性液体(g)に第一室570内の固体の漂白剤前駆体(I´
)が溶解し、酸性の水性液体(a)が生じ、気体の二酸化塩素が発生する。生じた酸性の
水性液体(a)は、連通した第一室570及び第二室580内にとどまり、気体の二酸化
塩素等の気体のみが、透湿・防水性材520内の気体透過性の孔を通って、換言すると、
当該孔内において空気中を移動して、二酸化塩素トラップ部材530に保持された水性液
体(b)に向かって移動する。
【0120】
二酸化塩素トラップ部材530に保持された水性液体(b)に、連通した第一室570
及び第二室580から移動してきた気体の二酸化塩素が吸収されて溶解し、水性液体(c
)となる。水性液体(c)を保持した二酸化塩素トラップ部材530を歯に接触させるこ
とにより、歯の漂白(ホワイトニング)が実施される。
【0121】
図7は、本発明の歯の漂白用デバイス(F)の他の一例を示す。歯の漂白用デバイス5
bは、防水性のカバー材510と防水性の隔壁560によって画された第一室570及び
当該隔壁560と透湿・防水性材520によって画された第二室580とを備える。隔壁
560には、歯の漂白用デバイス5bの使用時に当該隔壁560を容易に折ることが出来
るように、その面bの側に開口する切欠き50が形成されている。第二室580内であっ
て隔壁560の切欠き50が存在する個所及びその周辺には、液体吸収・保持性の部材3
0が存在する。透湿・防水性材520の外側には、二酸化塩素トラップ部材530が存在
する。第一室570には、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)が収容
されており、第二室580には、固体の、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(
II´)が、液体吸収・保持性の部材(具体的には、スポンジ)30に保持されて収容さ
れている。
【0122】
歯の漂白用デバイス5bでは、外部部材5100は、防水性のカバー材510、透湿・
防水性材520、並びに防水性の隔壁560の外周部からなる。カバー材510の外周部
(即ち、末端部)512は、隔壁560の一方の面aの外周部(即ち、末端部)565a
に接着されており、透湿・防水性材520は、液体吸収・保持性の部材30を覆っている
個所を除き、隔壁560の他方の面bに接着されている。防水性のカバー材510と防水
性の隔壁560との接着部は、符号515で示されている。透湿・防水性材520の外側
には、二酸化塩素トラップ部材530が存在する。この実施態様においても、二酸化塩素
トラップ部材530の表面が、ポリマー製シートで被覆されていてもよい。また、透湿・
防水性材520の外側に二酸化塩素トラップ部材530が存在しない態様も、本発明のデ
バイスに包含される。
【0123】
歯の漂白用デバイス5bの使用時には、二酸化塩素トラップ部材530は、水等で濡ら
されて又は唾液によって濡れることにより、水性液体(b)を保持する。
図7(a)及び
(b)に示す状態で、デバイス5bの左右の端を押し上げることにより、切欠き50にお
いて隔壁560を破断する。それにより、第一室570内の漂白剤前駆体(I)の水性液
体(f)が切欠き50の個所にできた開口を通って流れ出て、液体吸収・保持性の部材3
0に吸収される。液体吸収・保持性の部材30に吸収された漂白剤前駆体(I)の水性液
体(f)に、液体吸収・保持性の部材30に保持されていた固体の酸性化剤(II´)が
溶解し、酸性の水性液体(a)が調製される。酸性の水性液体(a)から気体の二酸化塩
素が発生する。生じた酸性の水性液体(a)は、液体吸収・保持性の部材30内、即ち第
二室580内にとどまり、気体の二酸化塩素等の気体のみが、液体吸収・保持性の部材3
0を覆っている透湿・防水性材520内の気体透過性の孔を通って、換言すると、当該孔
内において空気中を移動して、二酸化塩素トラップ部材530に保持された水性液体(b
)に向かって移動する。
【0124】
二酸化塩素トラップ部材530に保持された水性液体(b)に、第二室580から移動
してきた気体の二酸化塩素が吸収されて溶解し、水性液体(c)となる。液体吸収・保持
性の部材30が存在する個所において、水性液体(c)を保持した二酸化塩素トラップ部
材530を歯に接触させることにより、歯の漂白(ホワイトニング)が実施される。
【0125】
[歯の漂白用デバイス(G)]
図8は、本発明の歯の漂白用デバイス(G)の一例を示す。歯の漂白用デバイス6は、
防水性の隔壁660の一方の面a上に、カバー材610を、例えば
図8(a)に接着部分
615,615´として示されたような形状で接着することによって形成された、第一室
670A及び第二室670Bを備える。第一室670Aを構成しているカバー材を符号r
で、第二室670Bを構成しているカバー材を符号sで示す。第一室670Aには、亜塩
素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)が収容されており、第二室6
70Bには、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)の水性液体(g)が収
容されている。隔壁660の他方の面bには、当該隔壁660と透湿・防水性材620に
よって画された第三室670Cを備える。透湿・防水性材620の外側には、二酸化塩素
トラップ部材630が存在する。隔壁660には、歯の漂白用デバイス6の使用時に当該
隔壁660を容易に折ることが出来るように、その他方の面bの側に開口する切欠き50
が形成されている。第三室670C内であって隔壁660の切欠き50が存在する個所及
びその周辺には、液体吸収・保持性の部材40が存在する。
【0126】
歯の漂白用デバイス6では、外部部材6000は、防水性のカバー材610及び透湿・
防水性材620、並びに防水性の隔壁560の外周部からなる。カバー材610の隔壁6
60への接着部分615,615´は、切欠き50の個所で隔壁660を破断した際に、
第一室670Aと第二室670Bの両者が開口し、それらの中に収容されている水性液体
(f)及び(g)が同時に放出されるような形状を有する。この実施態様においても、二
酸化塩素トラップ部材630の表面が、ポリマー製シートで被覆されていてもよい。また
、透湿・防水性材620の外側に二酸化塩素トラップ部材630が存在しない態様も、本
発明のデバイスに包含される。
【0127】
歯の漂白用デバイス6の使用時には、二酸化塩素トラップ部材630は、水等で濡らさ
れて又は唾液によって濡れることにより、水性液体(b)を保持する。
図8(a)、(b
)及び(c)に示す状態で、デバイス6の左右の端を押し上げることにより、切欠き50
の個所において隔壁660を破断する。それにより、第一室670A内の漂白剤前駆体(
I)の水性液体(f)及び第二室670B内の酸性化剤(II)の水性液体(g)が切欠
き50の個所にできた開口を通って流れ出て、液体吸収・保持性の部材40に吸収される
。液体吸収・保持性の部材40内の空隙において、漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)
と酸性化剤(II)の水性液体(g)とが混ざり合い、酸性の水性液体(a)が調製され
る。酸性の水性液体(a)内において、気体の二酸化塩素が発生する。生じた酸性の水性
液体(a)は、液体吸収・保持性の部材40内、即ち第三室670C内にとどまり、気体
の二酸化塩素等の気体のみが、液体吸収・保持性の部材40を覆っている透湿・防水性材
620内の気体透過性の孔を通って、換言すると、当該孔内において空気中を移動して、
二酸化塩素トラップ部材630に保持された水性液体(b)に向かって移動する。
【0128】
二酸化塩素トラップ部材630に保持された水性液体(b)に、第三室670Cから移
動してきた気体の二酸化塩素が吸収されて溶解し、水性液体(c)となる。液体吸収・保
持性の部材40が存在する個所において、水性液体(c)を保持した二酸化塩素トラップ
部材630を歯に接触させることにより、歯の漂白(ホワイトニング)が実施される。
【0129】
上記した本発明の歯の漂白用デバイス(A)乃至(G)であって、二酸化塩素トラップ
部材を有するデバイスは、さらに、二酸化塩素トラップ部材の、透湿・防水性材に対向す
る側の反対側の面上であってその外周部に隣接して、及び/又は、二酸化塩素トラップ部
材の外側に、二酸化塩素トラップ層を備えるものであってもよい。
【0130】
図9は、二酸化塩素トラップ層を備える本発明の歯の漂白用デバイスの一例を示す、一
部省略模式的断面図である。この図においては、本発明の歯の漂白用デバイス(A)乃至
(D)の、閉鎖空間SP内部の図示を省略している。歯の漂白用デバイス7は、二酸化塩
素トラップ部材730の、透湿・防水性材720に対向する側の反対側の面上であってそ
の外周部に隣接して二酸化塩素トラップ層750Aを備えるとともに、二酸化塩素トラッ
プ部材730の外側にも、二酸化塩素トラップ層750Bを備えるものである。
【0131】
図示はしないが、本発明の歯の漂白用デバイス(E)や、歯の漂白用デバイス(F)の
中で、
図6に示した例も、同様に、二酸化塩素トラップ部材の、透湿・防水性材に対向す
る側の反対側の面上であってその外周部に隣接して、及び/又は、二酸化塩素トラップ部
材の外側に、二酸化塩素トラップ層を備えるものであってよい。
【0132】
二酸化塩素トラップ層は、例えば、活性炭布や活性炭シートのような活性炭を含むシー
ト、織布又は不織布製である。二酸化塩素トラップ層は、本発明の歯の漂白用デバイス内
部から透湿・防水性材を通って出てくる気体の二酸化塩素であって余分なもの、例えば、
二酸化塩素トラップ部材に保持された水性液体に吸収されなかった気体の二酸化塩素を捕
捉する層である。
【0133】
二酸化塩素トラップ層750Aは、例えば円形の二酸化塩素トラップ部材730の、透
湿・防水性材720に対向する側の反対側の面上の外周部上に、活性炭布を貼付すること
によって調製される。また、二酸化塩素トラップ層750Bは、活性炭布をデバイスの外
周部に巻き付けることによって調製される。
【0134】
上記した本発明の歯の漂白用デバイス(A)乃至(G)であって、二酸化塩素トラップ
部材を有さないデバイスも、二酸化塩素トラップ層を備えることが出来る。例えば、
図1
に示したデバイス1aにおける透湿・防水性材120の外周部であって外表面上に、及び
/又は、透湿・防水性材120の外側に、二酸化塩素トラップ層を設けてもよい。
【0135】
以下に、本発明の歯の漂白用デバイスの製造方法の例を示す。
【0136】
[
図1に記載の歯の漂白用デバイス1aの製造方法]
袋状部材に、漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)を入れ、開口部を閉じて第一収容部
材101を得る。別の袋状部材に、酸性化剤(II)の水性液体(g)を入れ、開口部を
閉じて第二収容部材102を得る。カバー材110の上(
図1(a)及び(b)において
はカバー材110の下)に、第一収容部材101及び第二収容部材102を載置する。透
湿・防水性材120の所定位置に、第一収容部材破損用部材111と第二収容部材破損用
部材112とを結合させる。カバー材110の開口部を、第一収容部材破損用部材111
と第二収容部材破損用部材112とが結合されている透湿・防水性材120で塞ぐ。この
際、第一収容部材破損用部材111と第二収容部材破損用部材112とが存在する側を内
側とする。カバー材110の末端部115に、透湿・防水性材120の末端部125を接
着させる。
【0137】
[
図2に記載の歯の漂白用デバイス1bの製造方法]
歯の漂白用デバイス1bの製造に際しては、透湿・防水性材120の所定位置に、第一
収容部材破損用部材111と第二収容部材破損用部材112とを結合させる工程及びカバ
ー材110の開口部を塞ぐ工程を、次のように行う。透湿・防水性材120と二酸化塩素
トラップ部材130とが点接着されたものを用意しておく。二酸化塩素トラップ部材13
0の表面を、ポリマー製シート190で被覆する。透湿・防水性材120の所定位置に、
第一収容部材破損用部材111と第二収容部材破損用部材112とを結合させる。カバー
材110の開口部を、第一収容部材破損用部材111と第二収容部材破損用部材112と
が結合されており、透湿・防水性材120と二酸化塩素トラップ部材130とが点接着さ
れており、二酸化塩素トラップ部材130の表面はポリマー製シート190で被覆されて
いるもので塞ぐ。
【0138】
[
図3に記載の歯の漂白用デバイス2の製造方法]
次の二点を除き、歯の漂白用デバイス1aの製造方法に準じて製造する。(1)第二収
容部材102の代わりに、固体(例えば粉状)の酸性化剤(II´)をそのままで又は水
溶性ポリマー製の袋に収納したものを使用する。(2)透湿・防水性材120の代わりに
、透湿・防水性材220と二酸化塩素トラップ部材230とが点接着されたものを用意し
、透湿・防水性材220の所定位置に、第一収容部材破損用部材211のみを結合させる
。カバー材210の開口部を、第一収容部材破損用部材211が結合されており、透湿・
防水性材220と二酸化塩素トラップ部材230とが点接着されているもので塞ぐ。
【0139】
[
図4に記載の歯の漂白用デバイス3の製造方法]
袋状部材に水性液体(e)を入れ、開口部を閉じて第三収容部材301を得る。カバー
材310の上(内側、
図4(b)ではカバー材310の下)に、第三収容部材301を載
置する。別途、透湿・防水性材320と二酸化塩素トラップ部材330とが点接着された
ものを用意しておく。透水性基板340の一方の面に、その透水孔を塞がないように、二
酸化塩素トラップ部材330と結合されている透湿・防水性材320を接着させる。透水
性基板340上に、透水性基板340の透水孔の直径よりは大きい粒子径の漂白剤前駆体
(I´)及び酸性化剤(II´)を載置し、それぞれの表面を水溶性ポリマーシート30
0A,300Bで覆う。水溶性ポリマーシート300A,300Bの末端部を、透水性基
板340に接着させる。透水性基板340の所定位置に、第三収容部材破損用部材311
を結合させる。以後は、歯の漂白用デバイス2の製造方法に準じて、カバー材310の開
口部を塞ぐ。
【0140】
[
図5に記載の歯の漂白用デバイス4の製造方法]
カバー材410Aに、酸性化剤(II)の水性液体(g)を収容する。酸性化剤(II
)の水性液体(g)の上に、切欠き部461を有する隔壁460を載せ、カバー材410
Aの外周部412Aを隔壁460の面aの外周部465aに接着させる。別途、透湿・防
水性材420と二酸化塩素トラップ部材430とが点接着されたものを用意しておく。透
湿・防水性材420の、二酸化塩素トラップ部材430に対向していない面の外周部42
5Bに、カバー材410Bの一方の外周部415Bを貼付し、内部に空間(後に第二室4
80をとなる)を有する筒状体を作製する。透湿・防水性材420の上に、固体の亜塩素
酸塩を含む漂白剤前駆体(I´)を載置する。カバー材410Bの他方の外周部412B
を、カバー材410A及び酸性化剤(II)の水性液体(g)を伴う隔壁460の面bの
外周部465bに接着させる。
【0141】
[
図6に記載の歯の漂白用デバイス5aの製造方法]
透湿・防水性材520と二酸化塩素トラップ部材530とが点接着されたものを用意し
ておく。透湿・防水性材520上の空間(後に第二室580をとなる)に、酸性化剤(I
I)の水性液体(g)を収容する。透湿・防水性材520の上に切欠き561を有する隔
壁560を載せ、透湿・防水性材520の外周部522と隔壁560の面bの外周部56
5bとを接着させる。隔壁560の上に、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I´)
を載置する。漂白剤前駆体(I´)の上をカバー材510で覆い、隔壁560の面aの外
周部565aとカバー材510の外周部512とを接着させる。
【0142】
[
図7に記載の歯の漂白用デバイス5bの製造方法]
透湿・防水性材520と二酸化塩素トラップ部材530とが点接着されたものを用意し
ておく。スポンジに酸性化剤(II)の水性液体(g)を吸収させ、乾燥させて、固体の
酸性化剤(II´)を保持している液体吸収・保持性の部材30を用意しておく。隔壁5
60の外周部であって三辺に、接着剤を塗布し、隔壁560と同じ形状及び大きさのカバ
ー材510を貼付する。このようにして調製された袋状部分(第一室570)に、漂白剤
前駆体(I)の水性液体(f)を収容し、開口している一辺も、接着剤を塗布して閉鎖す
る。
図7(a)において、符号515で示されている部分が、塗布された接着剤が存在し
ている個所である。隔壁560の面b上(
図6(b)においては面bの下)であって切欠
き50が存在する個所及びその周辺に、液体吸収・保持性の部材30を載置する。透湿・
防水性材520と二酸化塩素トラップ部材530とが点接着されたもので、透湿・防水性
材520の側を隔壁560に対向させて、液体吸収・保持性の部材30及び隔壁560の
面bを覆う。透湿・防水性材520を隔壁560に接着させる。このとき、透湿・防水性
材520の液体吸収・保持性の部材30を覆っている個所は、接着しない。
【0143】
[
図8に記載の歯の漂白用デバイス6の製造方法]
透湿・防水性材620と二酸化塩素トラップ部材630とが点接着されたものを用意し
ておく。隔壁660の外周部であって、一つの長辺を除く三辺と、デバイス6の中央付近
の、
図8(a)において符号615´で示された蛇行している個所に、接着剤を塗布し、
隔壁660と同じ形状及び大きさのカバー材610を貼付する。このようにして調製され
た2つの袋状部分(第一室670A及び第二室670B)の各々に、漂白剤前駆体(I)
の水性液体(f)及び酸性化剤(II)の水性液体(g)を収容し、開口している一辺も
、接着剤を塗布して閉鎖する。
図8(a)において、符号615及び615´で示されて
いる部分が、塗布された接着剤が存在している個所である。隔壁660の面b上(
図8(
b)においては面bの下)であって切欠き50が存在する個所及びその周辺に、液体吸収
・保持性の部材40を載置する。透湿・防水性材620と二酸化塩素トラップ部材630
とが点接着されたもので、透湿・防水性材620の側を隔壁660に対向させて、液体吸
収・保持性の部材40及び隔壁660の面bを覆う。透湿・防水性材620を隔壁660
に接着させる。このとき、透湿・防水性材620の液体吸収・保持性の部材40を覆って
いる個所は、接着しない。
【0144】
さらに、本発明の歯の漂白用デバイス(A)乃至(G)を使用する歯の漂白方法(3)
乃至(5)を説明する。
【0145】
本発明の歯の漂白用デバイス(A)乃至(G)のいずれかを用いる本発明の歯の漂白方
法(3)は、二酸化塩素トラップ部材を有する本発明の歯の漂白用デバイスを使用する。
歯の漂白方法(3)は、二酸化塩素トラップ部材に、二酸化塩素と反応する物質を含まな
い水性液体(b)を保持させる工程3-1、当該歯の漂白用デバイス中において、亜塩素
酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の酸性の水性液体(a)を調製し、気体の二酸化
塩素を発生させる工程3-2、発生した気体の二酸化塩素を移動させ、二酸化塩素トラッ
プ部材に保持された水性液体(b)に到達させる工程3-3、二酸化塩素トラップ部材に
保持された水性液体(b)に、移動してきた気体の二酸化塩素を吸収させ、二酸化塩素を
含む水性液体(c)を得る工程3-4、及び工程3-4で得られた二酸化塩素を含む水性
液体(c)を歯に接触させる工程3-5を含む。工程3-1は、例えば二酸化塩素トラッ
プ部材に保持される水性液体(b)が唾液である場合には、工程3-2の後に行ってもよ
い。
【0146】
デバイス(A)乃至(D)を使用する場合には、先ず、デバイスの二酸化塩素トラップ
部材に、水性液体(b)を保持させる(工程3-1)。デバイス(A)を使用する場合に
は、第一収容部材及び第二収容部材を破ると、デバイス(B)を使用する場合には、第一
収容部材を破ると、デバイス(C)を使用する場合には、第二収容部材を破ると、及びデ
バイス(D)を使用する場合には、第三収容部材を破ると、亜塩素酸又はその塩を含む漂
白剤前駆体(I)の酸性の水性液体(a)が調製されて気体の二酸化塩素が発生する(工
程3-2)。発生した気体の二酸化塩素は、デバイス中の透湿・防水性材の孔又は空隙中
を、例えば自動的又は能動的に移動し(工程3-3)、二酸化塩素トラップ部材に保持さ
れた水性液体(b)に吸収され、二酸化塩素を含む水性液体(c)が調製される(工程3
-4)。水性液体(c)を歯に接触させること(工程3-5)で、歯の漂白が進行する。
【0147】
デバイス(E)乃至(G)を使用する場合には、先ず、デバイスの二酸化塩素トラップ
部材に、水性液体(b)を保持させ(工程3-1)、次いで、デバイスの隔壁を折る。隔
壁を折ることで、デバイス内において亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の酸
性の水性液体(a)が調製され、気体の二酸化塩素が発生する(工程3-2)。発生した
気体の二酸化塩素は、デバイスの透湿・防水性材の孔又は空隙中を、例えば自動的又は能
動的に移動し(工程3-3)、二酸化塩素トラップ部材に保持された水性液体(b)に吸
収され、二酸化塩素を含む水性液体(c)が調製される(工程3-4)。水性液体(c)
を歯に接触させること(工程3-5)で、歯の漂白が進行する。
【0148】
二酸化塩素トラップ部材に保持される水性液体(b)は、水性ゲルであることが好まし
い。水性ゲルは、歯と漂白用デバイスとを接着させる役割を果たすからである。
【0149】
本発明の歯の漂白用デバイス(A)乃至(G)のいずれかを用いる本発明の歯の漂白方
法(4)は、歯に水性ゲルを塗布する工程4-1、前記歯の漂白用デバイスの内部におい
て、亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の酸性の水性液体(a)を調製し、気
体の二酸化塩素を発生させる工程4-2、発生した気体の二酸化塩素を歯に塗布された水
性ゲルに到達させる工程4-3、及び歯に塗布された水性ゲルに、移動してきた気体の二
酸化塩素を吸収させ、二酸化塩素を含む水性ゲルを得る工程4-4を含む。工程4-1は
、工程4-2の後に行ってもよい。
【0150】
デバイス(A)乃至(D)を使用する場合には、先ず、歯に水性液体(b)の一種であ
る水性ゲルを塗布する(工程4-1)。デバイス(A)を使用する場合には、第一収容部
材及び第二収容部材を破ることで、デバイス(B)を使用する場合には、第一収容部材を
破ることで、デバイス(C)を使用する場合には、第二収容部材を破ることで、及びデバ
イス(D)を使用する場合には、第三収容部材を破ることで、亜塩素酸又はその塩を含む
漂白剤前駆体(I)の酸性の水性液体(a)が調製されて気体の二酸化塩素が発生する(
工程4-2)。発生した気体の二酸化塩素は、デバイスの透湿・防水性材の孔又は空隙中
を、例えば自動的又は能動的に移動し、デバイス外に出て、歯に塗布された水性ゲルに到
達する(工程4-3)。デバイスの二酸化塩素トラップ部材を歯に塗布された水性ゲルに
押し当てることにより、歯に塗布された水性ゲルに、移動してきた気体の二酸化塩素が吸
収され、二酸化塩素を含む水性ゲルが得られる(工程4-4)。工程4-4では、同時に
、水性ゲルに吸収された二酸化塩素の作用により、歯の漂白が進行する。この二酸化塩素
を含む水性ゲルは、水性液体(c)の一種である。
【0151】
デバイス(E)乃至(G)を使用する場合には、先ず、歯に水性液体(b)の一種であ
る水性ゲルを塗布し(工程4-1)、次いで、デバイスの隔壁を折る。隔壁を折ることで
、亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の酸性の水性液体(a)が調製され、気
体の二酸化塩素が発生する(工程4-2)。発生した気体の二酸化塩素は、デバイスの透
湿・防水性材の孔又は空隙中を、例えば自動的又は能動的に移動し、デバイス外に出て、
歯に塗布された水性ゲルに到達する(工程4-3)。デバイスの二酸化塩素トラップ部材
を歯に塗布された水性ゲルに押し当てることにより、歯に塗布された水性ゲルに、移動し
てきた気体の二酸化塩素が吸収され、二酸化塩素を含む水性ゲルが得られる(工程4-4
)。工程4-4では、同時に、水性ゲルに吸収された二酸化塩素の作用により、歯の漂白
が進行する。この二酸化塩素を含む水性ゲルは、水性液体(c)の一種である。
【0152】
本発明の歯の漂白用デバイス(A)乃至(G)のいずれかを用いる本発明の歯の漂白方
法(5)は、デバイスの一方の面の最外部が透湿・防水性材で構成されているもの(換言
すれば、二酸化塩素トラップ部材を備えないもの)を用いる。歯の漂白方法(5)は、歯
の漂白用デバイスの透湿・防水性材の外表面上に水性ゲルを保持させる工程5-1、当該
歯の漂白用デバイス内において、亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の酸性の
水性液体(a)を調製し、気体の二酸化塩素を発生させる工程5-2、発生した気体の二
酸化塩素を移動させ、透湿・防水性材の外表面上に保持された水性ゲルに到達させる工程
5-3、透湿・防水性材の外表面上に保持された水性ゲルに、移動してきた気体の二酸化
塩素を吸収させ、二酸化塩素を含む水性ゲルを得る工程5-4、及び得られた二酸化塩素
を含む水性ゲルを歯に接触させる工程5-5を含む。
【0153】
デバイス(A)乃至(D)を使用する場合には、先ず、透湿・防水性材の外表面上に、
水性液体(b)の一種である水性ゲルを保持させる(工程5-1)。デバイス(A)を使
用する場合には、第一収容部材及び第二収容部材を破ることで、デバイス(B)を使用す
る場合には、第一収容部材を破ることで、デバイス(C)を使用する場合には、第二収容
部材を破ることで、及びデバイス(D)を使用する場合には、第三収容部材を破ることで
、亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の酸性の水性液体(a)が調製されて気
体の二酸化塩素が発生する(工程5-2)。発生した気体の二酸化塩素は、デバイスの透
湿・防水性材の孔又は空隙中を、例えば自動的又は能動的に移動し、デバイス外に出て、
透湿・防水性材の外表面上に保持された水性ゲルに到達する(工程5-3)。透湿・防水
性材の外表面上に保持された水性ゲルに、移動してきた気体の二酸化塩素が吸収され、二
酸化塩素を含む水性ゲルが得られる(工程5-4)。二酸化塩素を含む水性ゲルを歯に接
触させること(工程5-5)で、歯の漂白が進行する。この二酸化塩素を含む水性ゲルは
、水性液体(c)の一種である。
【0154】
デバイス(E)乃至(G)を使用する場合には、先ず、透湿・防水性材の外表面上に、
水性液体(b)の一種である水性ゲルを保持させる(工程5-1)。次いで、デバイスの
隔壁を折る。隔壁を折ることで、亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の酸性の
水性液体(a)が調製され、気体の二酸化塩素が発生する(工程5-2)。発生した気体
の二酸化塩素は、デバイスの透湿・防水性材の孔又は空隙中を、例えば自動的又は能動的
に移動し、デバイス外に出て、透湿・防水性材の外表面上に保持された水性ゲルに到達す
る(工程5-3)。透湿・防水性材の外表面上に保持された水性ゲルに、移動してきた気
体の二酸化塩素が吸収され、二酸化塩素を含む水性ゲルが得られる(工程5-4)。二酸
化塩素を含む水性ゲルを歯に接触させること(工程5-5)により、歯の漂白が進行する
。この二酸化塩素を含む水性ゲルは、水性液体(c)の一種である。
【0155】
次に、本発明の歯の漂白用デバイス用の固定具について説明する。
【0156】
図10は、本発明の歯の漂白用デバイスを使用して漂白を行う際に使用する、当該デバ
イスの固定具の一例を示す模式的斜視図である。固定具100は、歯の漂白用デバイスの
支持部Xと、把持部Yとを有する。支持部Xには、歯の漂白用デバイスのカバー材の面を
押し当てる。支持部Xへの歯の漂白用デバイスの固定は、例えば、両面粘着テープを使用
すればよい。あるいは、支持部Xに複数の小孔をあけ、その小孔を通じて把持部Y内部に
向かって気体を吸引することにより、歯の漂白用デバイスを吸着させて固定してもよい。
【0157】
歯の漂白用デバイスのカバー材は防水性であるが、その素材のポリマーの種類によって
は、ある程度の通気性を示す。したがって、支持部Xに複数の小孔をあけるとともに、把
持部Yに排気口を設け、把持部Y内に排気機構を構築してもよい。このような構造とする
ことにより、歯の漂白用デバイスのカバー材側から、余分な気体の二酸化塩素を排出する
ことが可能となる。
【0158】
さらに、本発明の歯の漂白用デバイスを調製できる歯の漂白用キットについて説明する
。
【0159】
図11は、本発明の歯の漂白用デバイス調製用のキットの一例である。このキット(1
)は、
図11(a)に示す中空容器8a、及び、
図11(b)に示す、その中空容器8a
の端部(封止材840が存在する側)に螺合される回転移動部材8bを含む。
図11(c
)は、中空容器8aに回転移動部材8bを螺合させた状態を示す。
【0160】
中空容器8aの外部部材は、円柱形で中空の防水性カバー材810、カバー材810の
一端815を閉じている防水性の封止材840、及びカバー材810の他端812を閉じ
ている透湿・防水性材820を備える。このカバー材810は、例えば硬質プラスチック
製である。中空容器8aの一端815側の内部には、例えば可撓性を有するゴム製の、よ
り具体的にはシリコーンゴム製のリング881と、そのリング881の孔に密に装入され
た金属製のめねじ883とで構成されているめねじ部材880が存在する。中空容器8a
内には防水性の隔壁860が存在し、中空容器8aの内部は、前記隔壁860によって画
され、直列状に並んだ二室870A,870Bに分かれている。それらの二室の一方(8
70A)には漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)が、他方(870B)には固体の酸性
化剤(II´)が収容されている。なお、透湿・防水性材820の外側には、二酸化塩素
トラップ部材が存在していてもよく、さらにその外側には、ポリマー製フィルム又はシー
トが存在していてもよい。
【0161】
回転移動部材8bは、操作部855、おねじ部850及び突刺部分853とを有する。
回転移動部材8bは、例えば金属製である。おねじ部850は、中空容器8aの内側に固
定されているめねじ部材880のめねじ883に噛み合う。突刺部分853は、おねじ部
分850の先端中央において突出している。
【0162】
使用時には、中空容器8aから防水性の封止材840を取り除き、回転移動部材8bを
回転させながら、そのおねじ部850をめねじ部材880のめねじ883と噛み合わせる
と、歯の漂白用デバイス8となる。歯の漂白用デバイス8において、操作部855を回転
させると、回転移動部材8bは中空容器8a内を軸方向に移動する。突刺部分853を移
動量S1だけ移動させて、隔壁860に孔を開けるか又は隔壁860を破壊する。これに
より、二室870A及び870Bが連通し、漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)に固体
の酸性化剤(II´)が溶解し、漂白剤前駆体(I)を含む酸性の水性液体(a)が生じ
る。水性液体(a)から、気体の二酸化塩素が発生する。生じた酸性の水性液体(a)は
、連通した二室870A及び870B内にとどまり、気体の二酸化塩素等の気体のみが、
透湿・防水性材820内の気体透過性の孔を通って、換言すると、当該孔内において空気
中を移動して、外部に移動する。
【0163】
漂白すべき歯に水性ゲルを塗布し、その水性ゲルに上記歯の漂白用デバイス8の透湿・
防水性材820を押し当てると、又は、透湿・防水性材820の外表面上に水性ゲルを保
持させ、その水性ゲルを歯に押し当てると、歯の漂白用デバイス8内部から透湿・防水性
材820内の気体透過性の孔を通って出てきた気体の二酸化塩素が水性ゲルに吸収されて
溶解し、水性液体(c)の一種である水性ゲルとなる。この水性ゲル中の二酸化塩素によ
り、歯の漂白がなされる。歯の漂白用デバイスが、透湿・防水性材の外表面上に二酸化塩
素トラップ部材を備える態様である場合には、二酸化塩素トラップ部材が水等で濡らされ
て又は唾液によって濡れることにより、水性液体(b)を保持し、その水性液体(b)に
、歯の漂白用デバイス内部から透湿・防水性材内の気体透過性の孔を通って出てきた気体
の二酸化塩素が吸収されて溶解し、水性液体(c)となる。二酸化塩素トラップ部材を歯
に押し当てることにより、水性液体(c)中の二酸化塩素によって歯の漂白がなされる。
【0164】
図12は、本発明の歯の漂白用デバイス調製用のキットの他の一例である。このキット
(2)は、
図12(a)に示す防水性材料製のデュアル・シリンジ9aと、
図12(b)
に示すデュアル・シリンジの端部に結合される二酸化塩素発生・漂白用部材9bとを含む
。
【0165】
デュアル・シリンジ9aは、並列に配された第一及び第二のストリーム970A及び9
70Bと、各々がそれらのストリームの一端915A及び915Bからストリーム内部に
挿入されている二本のピストン991A及び991Bと、ピストンの操作部950と、ス
トリーム970A及び970Bの他端912A及び912Bを閉じている封止材960と
を備える。ピストン991A及び991Bは、先端にガスケット981A,981Bを有
する。封止材960は、螺合機構によって着脱可能である。封止材960を取り除いた状
態におけるデュアル・シリンジ9aのX-X線の断面図を、
図12(c)に示す。第一の
ストリーム970Aには、漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)が、第二のストリーム9
70Bには、酸性化剤(II)の水性液体(g)が存在する。
【0166】
二酸化塩素発生・漂白用部材9bは、中空構造であり、その一端917は、透湿・防水
性材920で閉鎖されている。他端部918は開放端である。二酸化塩素発生・漂白用部
材9bは、デュアル・シリンジ9aから封止材960を取り外して、その代わりに結合さ
れる。なお、透湿・防水性材920の外側には、二酸化塩素トラップ部材が存在していて
もよく、さらにその外側には、ポリマー製フィルム又はシートが存在していてもよい。
【0167】
このデバイスの使用時には、封止材960を取り外し、二酸化塩素発生・漂白用部材9
bを取り付けることにより、歯の漂白用デバイス9を得る。ピストン991A及び991
Bの操作部950を押して、漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)及び酸性化剤(II)
の水性液体(g)を二酸化塩素発生・漂白用部材9bの内部970Cに導く。これにより
、二酸化塩素発生・漂白用部材9bの内部970Cにおいて、漂白剤前駆体(I)の水性
液体(f)と酸性化剤(II)の水性液体(g)とが混ざり、漂白剤前駆体(I)を含む
酸性の水性液体(a)が生じる。水性液体(a)から、気体の二酸化塩素が発生する。生
じた酸性の水性液体(a)は、二酸化塩素発生・漂白用部材9bの内部970Cに留まり
、気体の二酸化塩素等の気体のみが、透湿・防水性材920内の気体透過性の孔を通って
、換言すると、当該孔内において空気中を移動して、外部に向かって移動する。
【0168】
漂白すべき歯に水性ゲルを塗布し、上記歯の漂白用デバイス9の透湿・防水性材920
を押し当てると、又は、透湿・防水性材920の外表面上に水性ゲルを保持させ、その水
性ゲルを歯に押し当てると、歯の漂白用デバイス9の二酸化塩素発生・漂白用部材9bの
内部970Cから透湿・防水性材920内の気体透過性の孔を通って出てきた気体の二酸
化塩素が水性ゲルに吸収されて溶解し、水性液体(c)の一種である水性ゲルとなる。こ
の水性ゲル中の二酸化塩素により、歯の漂白がなされる。歯の漂白用デバイスが、透湿・
防水性材の外表面上に二酸化塩素トラップ部材を備える態様である場合には、二酸化塩素
トラップ部材が水等で濡らされて又は唾液によって濡れることにより、水性液体(b)を
保持し、その水性液体(b)に、歯の漂白用デバイス内部から透湿・防水性材内の気体透
過性の孔を通って出てきた気体の二酸化塩素が吸収されて溶解し、水性液体(c)となる
。二酸化塩素トラップ部材を歯に押し当てることにより、水性液体(c)中の二酸化塩素
によって歯の漂白がなされる。
【0169】
以下に、本発明の歯の漂白用デバイス調製用キットの製造方法の例を示す。
【0170】
[
図11に記載のキットの中空容器8a及び回転移動部材8bの製造方法]
(中空容器8aの製造方法)
中空で円柱形状の防水性カバー材810の一方の端812を、透湿・防水性材820で
封止する。透湿・防水性材820が底となるように、防水性カバー材810を立て、固体
の酸性化剤(II´)を挿入し、次いで防水性の隔壁860を密に挿入して第二室870
Bを形成する。防水性カバー材810の他方の端815に、ゴム製のリング881とその
リング881の孔に密に装入された金属製のめねじ883とで構成されているめねじ部材
880を挿入する。第一室870Aに、漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)を注入し、
他方の端815を封止材840で封止する。
【0171】
(回転移動部材8bの製造方法)
回転移動部材8bは、公知の方法により、例えば金属製の棒状体から、その一方の端部
に突刺部分853を削り出し、及びおねじ部分850を形成し、操作部855を結合させ
て製造する。
【0172】
[
図12に記載のキットのデュアル・シリンジ9a及び二酸化塩素発生・漂白用部材9b
の製造方法]
(デュアル・シリンジ9aの製造方法)
図12(a)に記載の構造を有するデュアル・シリンジ(市販品)を用意し、その封止
材960を取り外す。第一のストリーム970Aには漂白剤前駆体(I)の水性液体(f
)を、第二のストリーム970Bには酸性化剤(II)の水性液体(g)を吸引、注入し
、その先端を封止剤960で封止して、デュアル・シリンジ9aを製造する。
【0173】
(二酸化塩素発生・漂白用部材9bの製造方法)
中空で円柱形状の防水性カバー材910であって、封止材960を取り外したデュアル
・シリンジ9aに螺合するものを用意する。その一方の端917を、透湿・防水性材92
0で封止する。
【0174】
さらに、本発明の歯の漂白用デバイス調製用のキット(1)及び(2)を使用する歯の
漂白方法(6)乃至(8)を説明する。
【0175】
本発明の歯の漂白方法(6)では、本発明の歯の漂白用デバイス調製用のキット(1)
又は(2)を用いて調製した歯の漂白用デバイスであって、透湿・防水性材の外側に、さ
らに二酸化塩素トラップ部材を有するものを使用する。歯の漂白方法(6)は、本発明の
歯の漂白用デバイス調製用のキット(1)又は(2)を用いて調製した歯の漂白用デバイ
スの二酸化塩素トラップ部材に、二酸化塩素と反応する物質を含まない水性液体(b)を
保持させる工程6-1、当該歯の漂白用デバイス中において、亜塩素酸又はその塩を含む
漂白剤前駆体(I)の酸性の水性液体(a)を調製し、気体の二酸化塩素を発生させる工
程6-2、発生した気体の二酸化塩素を移動させ、二酸化塩素トラップ部材に保持された
水性液体(b)に到達させる工程6-3、二酸化塩素トラップ部材に保持された水性液体
(b)に、移動してきた気体の二酸化塩素を吸収させ、二酸化塩素を含む水性液体(c)
を得る工程6-4、及び工程6-4で得られた二酸化塩素を含む水性液体(c)を歯に接
触させる工程6-5を含む。工程6-1は、例えば二酸化塩素トラップ部材に保持される
水性液体(b)が唾液である場合には、工程6-2の後に行ってもよい。
【0176】
図11に記載されたキット(1)において、透湿・防水性材820の外側に二酸化塩素
トラップ部材を有するものを使用する方法は、具体的には次のとおりである。先ず、中空
容器8aの端部に存在する二酸化塩素トラップ部材(図示せず)に、二酸化塩素と反応す
る物質を含まない水性液体(b)を保持させる(工程6-1)。中空容器8aに回転移動
部材8bのおねじ部850を螺合させる。操作部855を持って回転移動部材8bを回転
させ、突刺部分853を隔壁860に到達させ、隔壁860を取り外すか又は隔壁860
に孔をあける。その結果、第一室870Aと第二室870Bとが連通し、漂白剤前駆体(
I)の水性液体(f)に固体の酸性化剤(II´)が溶解し、漂白剤前駆体(I)の酸性
の水性液体(a)が調製されて気体の二酸化塩素が発生する(工程6-2)。発生した気
体の二酸化塩素は、透湿・防水性材820の孔又は空隙中を、例えば自動的又は能動的に
移動し、デバイスの外に出て、二酸化塩素トラップ部材に保持された水性液体(b)に到
達する(工程6-3)。二酸化塩素トラップ部材に保持された水性液体(b)に、移動し
てきた気体の二酸化塩素が吸収されて溶解し、二酸化塩素を含む水性液体(c)が得られ
る(工程6-4)。工程6-4で得られた二酸化塩素を含む水性液体(c)を歯に接触さ
せる(工程6-5)ことにより、歯の漂白が進行する。
【0177】
図12に記載されたキット(2)において、透湿・防水性材920の外側に二酸化塩素
トラップ部材(図示せず)を有するものを使用する方法は、具体的には次のとおりである
。先ず、二酸化塩素発生・漂白用部材9bの端部に存在する二酸化塩素トラップ部材(図
示せず)に、二酸化塩素と反応する物質を含まない水性液体(b)を保持させる(工程6
-1)。デユアル・シリンジ9aから封止材960を取り外し、代わりに二酸化塩素発生
・漂白用部材9bを取り付ける。操作部950を押し込んで、第一のストリーム970A
内の漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)と、第二のストリーム970B内の酸性化剤(
II)の水性液体(g)を、二酸化塩素発生・漂白用部材9bの内部970Cに移す。こ
のようにして、漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)と酸性化剤(II)の水性液体(g
)とを混合し、漂白剤前駆体(I)の酸性の水性液体(a)を調製し、気体の二酸化塩素
を発生させる(工程6-2)。発生した気体の二酸化塩素は、透湿・防水性材920の孔
又は空隙中を、例えば自動的又は能動的に移動し、デバイスの外に出て、二酸化塩素トラ
ップ部材に保持された水性液体(b)に到達する(工程6-3)。二酸化塩素トラップ部
材に保持された水性液体(b)に、移動してきた気体の二酸化塩素が吸収されて溶解し、
二酸化塩素を含む水性液体(c)が得られる(工程6-4)。工程6-4で得られた二酸
化塩素を含む水性液体(c)を歯に接触させる(工程6-5)ことにより、歯の漂白が進
行する。
【0178】
本発明の歯の漂白方法(7)では、本発明の歯の漂白用デバイス調製用のキット(1)
又は(2)を用いて調製した歯の漂白用デバイスを使用する。二酸化塩素トラップ部材は
、存在してもしなくてもよい。歯の漂白方法(7)は、歯に、水性液体(b)の一種であ
る水性ゲルを塗布する工程7-1、調製した歯の漂白用デバイス内において、亜塩素酸又
はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の酸性の水性液体(a)を調製し、気体の二酸化塩素
を発生させる工程7-2、発生した気体の二酸化塩素を歯に塗布された水性ゲルに到達さ
せる工程7-3、及び歯に塗布された水性ゲルに、移動してきた気体の二酸化塩素を吸収
させ、二酸化塩素を含む水性ゲルを得る工程7-4を含む。工程7-3において、気体の
二酸化塩素は、透湿・防水性材を通って、又は、透湿・防水性材及び二酸化塩素トラップ
部材を通って、デバイスの外に出て、歯に塗布された水性ゲルに到達する。
【0179】
図11に記載されたキット(1)を使用する方法は、具体的には次のとおりである。先
ず、歯に、水性液体(b)の一種である水性ゲルを塗布する(工程7-1)。中空容器8
aに回転移動部材8bのおねじ部850を螺合させる。操作部855を持って回転移動部
材8bを回転させ、突刺部分853を隔壁860に到達させ、隔壁860を取り外すか又
は隔壁860に孔をあける。その結果、第一室870Aと第二室870Bとが連通し、漂
白剤前駆体(I)の水性液体(f)に固体の酸性化剤(II´)が溶解し、漂白剤前駆体
(I)の酸性の水性液体(a)が調製されて気体の二酸化塩素が発生する(工程7-2)
。発生した気体の二酸化塩素は、透湿・防水性材820の孔又は空隙中を、例えば自動的
又は能動的に移動し、デバイス外に出て、歯に塗布された水性ゲルに到達する(工程7-
3)。水性ゲルに到達した気体の二酸化塩素は水性ゲルに吸収されて溶解し、その結果、
二酸化塩素を含む水性ゲルが得られる(工程7-4)。この歯に塗布された水性ゲルによ
り、歯の漂白が進行する。この二酸化塩素を含む水性ゲルは、水性液体(c)の一種であ
る。
【0180】
図12に記載されたキット(2)を使用する方法は、具体的には次のとおりである。先
ず、歯に、水性液体(b)の一種である水性ゲルを塗布する(工程7-1)。封止材96
0を取り外し、代わりに二酸化塩素発生・漂白用部材9bを取り付ける。操作部950を
押し込んで、第一のストリーム970A内の漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)と、第
二のストリーム970B内の酸性化剤(II)の水性液体(g)を、二酸化塩素発生・漂
白用部材9bの内部970Cに移す。このようにして、漂白剤前駆体(I)の水性液体(
f)と酸性化剤(II)の水性液体(g)とを混合し、漂白剤前駆体(I)の酸性の水性
液体(a)を調製し、気体の二酸化塩素を発生させる(工程7-2)。発生した気体の二
酸化塩素は、透湿・防水性材920の孔又は空隙中を、例えば自動的又は能動的に移動し
、デバイス外に出て、歯に塗布された水性ゲルに到達する(工程7-3)。水性ゲルに到
達した気体の二酸化塩素は水性ゲルに吸収されて溶解し、その結果、二酸化塩素を含む水
性ゲルが得られる(工程7-4)。この歯に塗布された水性ゲルにより、歯の漂白が進行
する。この二酸化塩素を含む水性ゲルは、水性液体(c)の一種である。
【0181】
本発明の歯の漂白方法(8)では、本発明の歯の漂白用デバイス調製用のキット(1)
又は(2)を用いて調製した歯の漂白用デバイスであって、その一方の端の最外層が透湿
・防水性材であるもの(換言すれば、二酸化塩素トラップ部材を備えないもの)を使用す
る。歯の漂白方法(8)は、透湿・防水性材の外表面上に、水性液体(b)の一種である
水性ゲルを保持させる工程8-1、当該歯の漂白用デバイス内において、亜塩素酸又はそ
の塩を含む漂白剤前駆体(I)の酸性の水性液体(a)を調製し、気体の二酸化塩素を発
生させる工程8-2、発生した気体の二酸化塩素を移動させ、透湿・防水性材の外表面上
に保持された水性ゲルに到達させる工程8-3、透湿・防水性材の外表面上に保持された
水性ゲルに、移動してきた気体の二酸化塩素を吸収させ、二酸化塩素を含む水性ゲルを得
る工程8-4、及び得られた二酸化塩素を含む水性ゲルを歯に接触させる工程8-5を含
む。
【0182】
図11に記載されたキット(1)を使用する方法は、具体的には次のとおりである。先
ず、透湿・防水性材820の外表面上に、水性液体(b)の一種である水性ゲルを塗布し
て保持させる(工程8-1)。中空容器8aに回転移動部材8bのおねじ部850を螺合
させる。操作部855を持って回転移動部材8bを回転させ、突刺部分853を隔壁86
0に到達させ、隔壁860を取り外すか又は隔壁860に孔をあける。その結果、第一室
870Aと第二室870Bとが連通し、漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)に固体の酸
性化剤(II´)が溶解し、漂白剤前駆体(I)の酸性の水性液体(a)が調製されて気
体の二酸化塩素が発生する(工程8-2)。発生した気体の二酸化塩素は、透湿・防水性
材820の孔又は空隙中を、例えば自動的又は能動的に移動し、デバイスの外に出て、透
湿・防水性材820の外表面上に保持された水性ゲルに到達する(工程8-3)。水性ゲ
ルに到達した気体の二酸化塩素は水性ゲルに吸収されて溶解し、その結果、二酸化塩素を
含む水性ゲルが得られる(工程8-4)。この二酸化塩素を含む水性ゲルを歯に接触させ
る(工程8-5)ことにより、歯の漂白が進行する。この二酸化塩素を含む水性ゲルは、
水性液体(c)の一種である。
【0183】
図12に記載されたキット(2)を使用する方法は、具体的には次のとおりである。先
ず、透湿・防水性材920の外表面上に、水性液体(b)の一種である水性ゲルを塗布し
て保持させる(工程8-1)。封止材960を取り外し、代わりに二酸化塩素発生・漂白
用部材9bを取り付ける。操作部950を押し込んで、第一のストリーム970A内の漂
白剤前駆体(I)の水性液体(f)と、第二のストリーム970B内の酸性化剤(II)
の水性液体(g)を、二酸化塩素発生・漂白用部材9bの内部970Cに移す。このよう
にして、漂白剤前駆体(I)の水性液体(f)と酸性化剤(II)の水性液体(g)とを
混合し、漂白剤前駆体(I)の酸性の水性液体(a)を調製し、気体の二酸化塩素を発生
させる(工程8-2)。発生した気体の二酸化塩素は、透湿・防水性材920の孔又は空
隙中を、例えば自動的又は能動的に移動し、透湿・防水性材920の外表面上に保持され
た水性ゲルに到達する(工程8-3)。水性ゲルに到達した気体の二酸化塩素は、水性ゲ
ルに吸収されて溶解し、その結果、二酸化塩素を含む水性ゲルが得られる(工程8-4)
。この二酸化塩素を含む水性ゲルを歯に接触させる(工程8-5)ことにより、歯の漂白
が進行する。この二酸化塩素を含む水性ゲルは、水性液体(c)の一種である。
【0184】
以下に、本発明によって漂白作用が示されることを、実験例によって示す。
(実験例1)褐色鶏卵の殻の漂白
疎水性の多孔質ポリウレタンフィルム(透湿・防水性材に相当する)に、孔の全てを塞
いでしまわないように親水性のポリエステル織布(二酸化塩素トラップ部材に相当する)
が貼付されてなるヤマホン製の透湿防水布を用い、歯の漂白実験を行った。
【0185】
(1)気体の二酸化塩素発生用水溶液の調製
30w/v%亜塩素酸ナトリウム水溶液50μLに、水207.6μL、プラチナ・ナ
ノコロイド溶液2.4μL(プラチナ含有率:0.02重量%)及び3M硫酸40μLを
この順に添加した。硫酸添加後、40℃にて5分間加温した。なお、得られた水溶液は、
気体の二酸化塩素が発生しやすいように、過剰量の酸を含有させたもの(亜塩素酸ナトリ
ウム濃度:5w/v%、pH2以下)である。
【0186】
(2)漂白操作
透湿防水布のポリエステル織布の一部に20μLの水(水性液体(b)に相当する)を
染み込ませ、透湿防水布のその濡れた部分を、ポリエステル織布が鶏卵表面に向き合うよ
うに褐色鶏卵表面に貼りつけた。水を染み込ませた裏側、即ち、透湿防水布のポリウレタ
ンフィルムの上に、(1)で調製した気体の二酸化塩素発生用水溶液(水性液体(a)に
相当する)50μLをのせた。その水溶液の上から食品用ラップフィルムを被せ、その水
溶液をラップフィルムと透湿防水布とで挟み込んだ。このようにして、発生した気体の二
酸化塩素の外気への放散を簡易的に抑制した。この状態を5分間維持し、その後、ラップ
フィルムと透湿防水布とを除去し、褐色鶏卵を水で軽く洗った。
【0187】
漂白終了時、透湿防水布のポリエステル織布に染み込ませた水は黄色味を帯びており、
また、その水をpH試験紙に染み込ませると、pHは5乃至6であった。これらのことか
ら、気体の二酸化塩素のみが透湿防水布のポリウレタンフィルムを透過したことが示唆さ
れた。
【0188】
(3)色素偏差ΔE*
abの算出
漂白処理前及び漂白処理後に、褐色鶏卵の殻の色を、オリンパス株式会社製のクリスタ
ルアイを使用して測色した。具体的には、漂白処理前の褐色鶏卵の殻の色と、漂白処理後
のろ紙が貼付されていた個所の色について、白黒の傾向の差ΔL*、赤緑の傾向の差Δa*
、黄青の傾向の差Δb*をそれぞれ求め、これらの値から、以下の式にしたがって色素偏
差ΔE*
abを算出した。結果を表1に示す。
【0189】
【0190】
【0191】
表1に示すように、漂白前後での色素偏差ΔE*
abが5.69であり、このことから
、褐色鶏卵の殻が著しく漂白されたことが分かる。なお、漂白がなされなかった場合には
、ΔL*、Δa*及びΔb*のいずれも、約0となる。この結果から、気体の二酸化塩素を
、透湿防水布のポリウレタンフィルムを透過させ、ポリエステル織布に保持された水に溶
解させて得られる水溶液により、二酸化塩素による漂白効果が得られることが確認できた
。
【0192】
(実験例2)気体の二酸化塩素の生成に対する塩の影響
亜塩素酸又はその塩を含む酸性の水性液体から、より多くの気体の二酸化塩素を生成さ
せたい。そこで、酸性の水性液体に無機塩化物を添加することによって、気体の二酸化塩
素生成量が多くなるか否かを検討した。なお、この実験では塩化ナトリウム及び塩化リチ
ウムを使用した。
【0193】
(1)実験に使用するデバイスの製造
1.5mL容のマイクロチューブを、その蓋部分から1cm下の部分で切断し、切断面
をやすりでこすって平らにした。その切断面に、透湿防水布(ヤマホン社製;多孔質ポリ
ウレタンフィルムとポリエステル織布からなるもの)のポリウレタンフィルムの面を、非
水溶性の接着剤を用いて隙間のないように接着した。次に、透湿防水布のポリエステル織
布の面に、マイクロチューブの切断面に合わせて接着剤を塗布し、ろ紙を張り付けた。接
着剤が乾燥した後、透湿防水布及びろ紙をマイクロチューブの切断面の形状及び大きさに
合わせて切り取った。このようにして製造したデバイスの概要(断面図)を、
図13(1
)に示す。同図中、符号88は透湿防水布、符号81は多孔質ポリウレタンフィルム、符
号82はポリエステル織布、符号83はろ紙である。
【0194】
(2)亜塩素酸ナトリウムを含む酸性の水性液体の調製及び(1)で製造したデバイスへ
の採取
表2に示す、亜塩素酸ナトリウムを含む液体2-1乃至2-4を調製した。これらの亜
塩素酸ナトリウムを含む水性液体130μLに対し、85%w/vリン酸を20μL加え
た。その結果、得られた酸性の水性液体中の亜塩素酸ナトリウム濃度は3重量%、プラチ
ナ・ナノコロイド原液濃度は0.8重量%(プラチナ濃度は、0.00016重量%)と
なった。リン酸を加えた後、各々の酸性の水性液体を卓上撹拌機で5秒間撹拌し、10秒
後に、その中の50μLを、(1)で製造したデバイス内に入れ、蓋を閉めた。蓋を閉め
た状態の断面図を、
図13(2)に示す。同図中、符号81乃至83及び88は上記のと
おりであり、符号80は亜塩素酸ナトリウムを含有する酸性の水性液体である。
【0195】
(3)気体の二酸化塩素生成量を測定する装置及び測定
内容積20.8Lの発泡スチロール箱の内部に、(2)で調製した、亜塩素酸ナトリウ
ムを含む酸性の水性液体を収納した容器を入れ、発泡スチロールの蓋を閉じた。発泡スチ
ロールの蓋には、直径5mmほどの小さな孔が開いており、その孔には、シリコーン・チ
ューブが挿入されていた。そのチューブの外側末端には、60cc容のシリンジが接続さ
れていた。蓋を閉じて5分間経過した後、シリンジを20回ピストンすることで、箱内部
の空気を撹拌させた。シリコーン・チューブを抜き取り、代わりに、孔に気体の二酸化塩
素の検知管(ガステック社製No.23M;検知範囲:0.5乃至12ppm)を挿し込
み、内部の気体を吸引して気体の二酸化塩素の濃度を求めた。この二酸化塩素は、
図13
(2)に示す容器内で生成され、透湿防水布及びろ紙を通って容器外へ出てきたものであ
る。
結果を表2に示す。
【0196】
【0197】
表2の結果から明らかなように、亜塩素酸ナトリウムを含有する酸性の水性液体に無機
塩化物を添加することによって、気体の二酸化塩素生成量が明らかに増えることが分かっ
た。また、気体の二酸化塩素生成量は、無機塩化物の含有量の上昇に伴って増加すること
が分かった。
【0198】
(実験例3)二酸化塩素トラップ剤としての水及びアセトンの効果
本件発明では、発生させた気体の二酸化塩素を、二酸化塩素トラップ部材に保持された
液体に吸収、溶解させることによって捕捉する。そこで、二酸化塩素トラップ部材に保持
させる液体として、水及び水/アセトンを選択し、いずれが気体の二酸化塩素をより多く
捕捉するかを検討した。
【0199】
(1)実験に使用するデバイスの製造
実験例2の(1)と同様である。但し、二酸化塩素トラップ部材であるろ紙に、表3に
示す液体40μLを染み込ませたものも用意した。
【0200】
(2)亜塩素酸ナトリウムを含む酸性の水性液体の調製及び(1)で製造したデバイスへ
の採取
実験例2の(2)の実験例No.2-3(NaClを4M濃度で含有するもの)と同様
の液体を使用し、それを、(1)で製造したデバイスに収容した。
【0201】
(3)気体の二酸化塩素生成量を測定する装置及び測定
実験例2の(3)と同様の装置を用い、同様の方法で、発泡スチロール箱の内部の気体
中の気体の二酸化塩素濃度を測定した。ろ紙に何も染みこませていない場合(実験例2の
実験例No.2-3)の発泡スチロール箱内の気体の二酸化塩素濃度(3.4ppm)を
100%として、ろ紙に液体を染み込ませた例における気体の二酸化塩素濃度の減少率を
算出した。
結果を表3に示す。
【0202】
【0203】
表3の結果から明らかなように、二酸化塩素トラップ部材であるろ紙に、二酸化塩素ト
ラップ剤としての水を染み込ませただけでも、発泡スチロール箱の内部への気体の二酸化
塩素の放散量が約59%減った(即ち、気体の二酸化塩素がろ紙に染み込ませた水に捕捉
された)ことが確認できた。また、ろ紙に水/アセトンを含ませると、発泡スチロール箱
の内部への気体の二酸化塩素の放散量がさらに減少した。これらの結果から、トラップ剤
が水であっても、気体の二酸化塩素は効率的にトラップされ、トラップ剤を水/アセトン
とすれば、気体の二酸化塩素のトラップ量はさらに増えると考えられた。
なお、気体の二酸化塩素を吸収した液体(ろ紙に染み込ませた液体)のpHは、いずれ
も中性(pH=6程度)であった。
【0204】
(実験例4)放散される気体の二酸化塩素の濃度の低減
実験例2の(1)において製造したデバイスに活性炭シートを巻き付け、気体の二酸化
塩素放散量に対する活性炭シートの影響を検討した。
【0205】
(1)実験に使用するデバイスの製造
実験例2の(1)と同様のデバイスを製造した。別途、活性炭シート(フタムラ化学製
、KFF-002)を1cm×5cmに切り取り、この短辺をその長さが1/2となるよ
うに折り畳み、接着剤で接着し、0.5cm×5cmの活性炭シートとした。この活性炭
シートを、別途製造した前記デバイスの、透湿防水布及びろ紙の部分の外周部に一周巻き
付け、これも接着剤で接着した。この状態の断面図を、
図14(1)に示す。同図中、符
号80乃至83及び88は上記のとおりであり、符号84は活性炭シートである。また、
この実験の際、ろ紙83には水40μLを染み込ませた。
【0206】
(2)亜塩素酸ナトリウムを含む酸性の水性液体の調製及び(1)で製造したデバイスへ
の採取
実験例2の(2)の実験例No.2-3(NaClを4M濃度で含有するもの)と同様
の液体を使用し、それを、(1)で製造したデバイスに収容した。
【0207】
(3)気体の二酸化塩素生成量を測定する装置及び測定
実験例2の(3)と同様の装置を用い、同様の方法で、発泡スチロール箱の内部の気体
中の気体の二酸化塩素濃度を測定した。但し、ガス検知管は、ガステック社製No.23
L(検知範囲:0.05乃至1.2ppm)を使用した。
【0208】
測定された気体の二酸化塩素濃度は0.45ppmであり、ろ紙に何も染みこませてい
ない場合(実験例2の実験例No.2-3)の気体の二酸化塩素濃度(3.4ppm)に
対し、86.8%の減少率であった。
【0209】
(実験例5)褐色鶏卵の殻の漂白
実験例4同様の活性炭シートを使用したデバイスで、褐色鶏卵の殻の漂白を行った。
【0210】
(1)実験に使用するデバイスの製造
実験例4の(1)と同様の方法で、活性炭シートを使用してなるデバイスを製造した。
但し、使用した活性炭シートの大きさは、表4に記載のとおりとした。また、実験例No
.5-1では、活性炭シートは、実験例4と同様に折り畳んで使用したが、実験例No.
5-2及び5-3については、折り畳むことなく使用した。
【0211】
この実験では、褐色鶏卵の殻にデバイスを押し付けた。その際のデバイスの形状の断面
図を、
図14(2)に示す。同図中の符号の意味は、
図14(1)における符号の意味と
同様である。
【0212】
カルボキシビニルポリマー(岩瀬コスファ社製、カーボポール940)0.25gに水
約9gを加え、次いでpH調整のために5N水酸化ナトリウム20μLを加え(pH=7
)、最後に再度水を加えて全量を10gとした。このようにして、中性の水性ゲルを調製
した。この水性ゲル約40mgを、二酸化塩素トラップ剤として、実験に使用するデバイ
スのろ紙に塗り付けた。
【0213】
(2)亜塩素酸ナトリウムを含む酸性の水性液体の調製及び(1)で製造したデバイスへ
の採取
実験例2の(2)の実験例No.2-3(NaClを4M濃度で含有するもの)の液体
を使用し、それを、(1)で製造したデバイスに収容した。
【0214】
(3)褐色鶏卵の殻の漂白、並びに気体の二酸化塩素生成量を測定する装置及び測定
褐色鶏卵の殻については、漂白する部分を、オリンパス株式会社製のクリスタルアイを
使用して測色し、漂白前の色とした。
【0215】
卵の殻の漂白処理がなされる部分に、(1)で製造し、(2)に記載した亜塩素酸ナト
リウムを含む酸性の水性液体が添加されたデバイスを、ゲルを塗った面が卵の殻に接する
ように鶏卵に載せた。この状態を5分間維持した後、褐色鶏卵の殻からデバイスを外し、
ゲルを洗い流し、被漂白部分をクリスタルアイで測色し、漂白後の色とした。漂白前後の
値から、白黒の傾向の差ΔL*、赤緑の傾向の差Δa*、黄青の傾向の差Δb*をそれぞれ
求め、これらの値から、前記した式1にしたがって、色素偏差ΔE*abを算出した。結
果を表4に示す。
【0216】
【0217】
表4の結果から、この実験において使用した大きさにおいては、活性炭シートの大きさ
に関わらず、いずれの実験例においても漂白が進行したことが確認できた。