(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139020
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】ルテニウム含有薄膜の製造方法およびこれにより製造されたルテニウム含有薄膜
(51)【国際特許分類】
C23C 16/18 20060101AFI20230926BHJP
H01L 21/285 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
C23C16/18
H01L21/285 C
H01L21/285 301
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109937
(22)【出願日】2023-07-04
(62)【分割の表示】P 2020543444の分割
【原出願日】2018-11-01
(31)【優先権主張番号】10-2017-0144420
(32)【優先日】2017-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0131423
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】515339697
【氏名又は名称】ディーエヌエフ シーオー., エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】DNF CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(72)【発明者】
【氏名】キム ミョンウン
(72)【発明者】
【氏名】イ サンイク
(72)【発明者】
【氏名】チョ スンウ
(72)【発明者】
【氏名】ハン ミジョン
(72)【発明者】
【氏名】イム ヘンドン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】単純な工程で薄膜内の不純物を低減し、純度の高いルテニウム含有薄膜を製造する方法を提供する。
【解決手段】ルテニウム含有薄膜の製造方法は、薄膜蒸着用の前駆体として下記式で示される化合物を使用し、反応ガスとしてヨード、(C1‐C3)ヨウ化アルキル、ヨウ化シランまたはこれらの混合物を使用する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜蒸着用の前駆体として下記化学式1-2で示される0価のルテニウム系化合物を使用し、
反応ガスとしてヨード、(C1‐C3)ヨウ化アルキル、ヨウ化シランまたはこれらの混合物を使用してルテニウム含有薄膜を製造するステップを含む、ルテニウム含有薄膜の製造方法。
[化学式1-2]
【化1】
(化学式1-2中、
R
1~R
10は、互いに独立して、水素または(C1‐C7)アルキルであり、
A
2は、‐(CR
11R
12)
n‐であり、R
11およびR
12は、互いに独立して、水素または(C1‐C7)アルキルであり、nは、1~3の整数である。)
【請求項2】
原子層蒸着(ALD)法、化学気相蒸着(CVD)法、有機金属化学気相蒸着法(MOCVD)、低圧化学気相蒸着法(LPCVD)、プラズマ強化化学気相蒸着法(PECVD)またはプラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)により行われる、請求項1に記載のルテニウム含有薄膜の製造方法。
【請求項3】
a)チャンバ内に取り付けられた基板の温度を80~500℃に維持するステップと、
b)キャリアガスおよび0価のルテニウム系化合物を注入するステップと、
c)ヨード、(C1‐C3)ヨウ化アルキル、ヨウ化シランまたはこれらの混合物である反応ガスを注入し、前記基板上にルテニウム含有薄膜を製造するステップとを含む、請求項1に記載のルテニウム含有薄膜の製造方法。
【請求項4】
前記反応ガスは、0価のルテニウム系化合物1モルに対して0.1~200モルで使用される、請求項1に記載のルテニウム含有薄膜の製造方法。
【請求項5】
前記c)ステップの後、熱処理するステップをさらに含む、請求項3に記載のルテニウム含有薄膜の製造方法。
【請求項6】
前記熱処理は、200~700℃で行われる、請求項5に記載のルテニウム含有薄膜の製造方法。
【請求項7】
前記反応ガスは、I2、CH3I、CH2I2、CHI3、CH3CH2I、CH3CHI2、ICH2CH2I、CH3CH2CH2I、CH3CHICH3、ICH2CH2CH2IまたはSiH2I2である、請求項1に記載のルテニウム含有薄膜の製造方法。
【請求項8】
前記キャリアガスは、窒素、水素、アルゴンおよびヘリウムからなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物である、請求項3に記載のルテニウム含有薄膜の製造方法。
【請求項9】
0価のルテニウム系化合物と、
反応ガスとして、ヨード、(C1‐C3)ヨウ化アルキル、ヨウ化シランまたはこれらの混合物とを含み、
前記0価のルテニウム系化合物は、下記化学式1-1、1-2および2で表される0価のルテニウム系炭化水素化合物からなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物である、ルテニウム含有薄膜蒸着用の組成物。
[化学式1-1]
【化2】
[化学式1-2]
【化3】
(化学式1‐1および1‐2中、
R
1~R
10は、互いに独立して、水素または(C1‐C7)アルキルであり、
A
1は、単結合または‐(CR
11R
12)
m‐であり、R
11およびR
12は、互いに独立して、水素または(C1‐C7)アルキルであり、mは、1~3の整数であり、
A
2は、‐(CR
11R
12)
n‐であり、R
11およびR
12は、互いに独立して、水素または(C1‐C7)アルキルであり、nは、1~3の整数である。)
[化学式2]
【化4】
(化学式2中、
R
1~R
6は、互いに独立して、水素または(C1‐C7)アルキルである。)
【請求項10】
前記反応ガスは、0価のルテニウム系化合物1モルに対して0.1~200モルで使用される、請求項9に記載のルテニウム含有薄膜蒸着用の組成物。
【請求項11】
前記反応ガスは、I2、CH3I、CH2I2、CHI3、CH3CH2I、CH3CHI2、ICH2CH2I、CH3CH2CH2I、CH3CHICH3、ICH2CH2CH2IまたはSiH2I2である、請求項9に記載のルテニウム含有薄膜蒸着用の組成物。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか一項に記載のルテニウム含有薄膜蒸着用の組成物を用いて製造され、比抵抗が100μΩ・cm以下であり、酸素の含量が3at%以下である、ルテニウム含有薄膜。
【請求項13】
炭素の含量が3at%以下である、請求項12に記載のルテニウム含有薄膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルテニウム含有薄膜の製造方法およびこれにより製造されたルテニウム含有薄膜に関し、より詳細には、薄膜蒸着前駆体としてルテニウム(0)系炭化水素化合物を、特定の反応ガスであるヨード、ヨウ化アルキル(alkyl iodide)、ヨウ化シラン(silyl iodide)またはこれらの混合物と反応させることでルテニウム含有薄膜を製造する方法およびこれにより製造されたルテニウム含有薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの薄膜電極材料として、様々な金属、非金属または遷移金属化合物が用いられている。
【0003】
このうち、金属ルテニウムまたはルテニウム酸化物は、低抵抗、大きい仕事関数(work
function)および熱的・化学的安定性によって半導体素子に広く使用されている。特に
、金属ルテニウムは、ルテニウム酸化物よりも電気特性に優れ、半導体デバイスの薄膜電極材料として好ましい。
【0004】
したがって、ルテニウム(Ru)薄膜は、半導体素子の配線構造においてシード層として使用されたり、トランジスタのゲートまたはキャパシタなどの電極などとして使用されており、半導体素子の高集積化および小型化に伴い、半導体素子に使用されるルテニウム(Ru)薄膜にも向上した均一性および塗布性が求められる。
【0005】
一方、半導体素子において、薄膜蒸着法として、分子ビーム成長法(Molecular Beam Epitaxy、MBE)、化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition、CVD)、および物
理気相蒸着法(Physical Vapor Deposition、PVD)などを用いた方法が研究されてい
る。近年、半導体素子の少量化によってデザインルールが減少するに伴い、低温工程、精密な厚さの制御、薄膜の均一性および塗布性を満たす蒸着方法として、自己制限表面反応メカニズム(self‐limiting surface reaction mechanism)による原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)を用いた薄膜の形成が広く研究されている。
【0006】
原子層蒸着法を用いてルテニウム薄膜を製造する方法について説明すると、従来、ルテニウム原料物質として、Ru(OD)3[tris(2,4‐octanedionato)Ruthenium(III)]、Ru(EtCP)2[bis(ethylcyclopentadienyl)Ruthenium(II)]などが適用された。しかし、このうち、Ru(OD)3は、酸素を内包しており、反応基板に純粋なルテニウムの蒸着を困難とし、さらには、基板の一部にRuOxが形成されるという問題がある。
【0007】
また、Ru(EtCP)2の場合には、シクロペンタジエン(Cyclopentadiene)系の
特性上、ルテニウム原子が化学的結合を切り独立して存在することが難しく、ルテニウム薄膜に不純物が多量残存する問題がある。それだけでなく、分解が容易でなく、O2プラズマを使用して蒸着することでRuO2膜が生成されるため、Ru膜を得るためには、再度H2を用いて還元する工程が必要になるという問題がある。それで、Ru(0)化合物の場合、反応ガスO2の量を調節してRuOxの薄膜の形成を低減したものの、問題が依然として解決されていない。
【0008】
したがって、単純な工程で薄膜内の不純物の含量を低減し、純度の高いルテニウム含有薄膜を製造する方法が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決するために、ルテニウム(0)系炭化水素化合物をルテニウム含有薄膜蒸着用の前駆体として使用するとともに、特定の反応ガスを使用するルテニウム含有薄膜の製造方法およびこれにより製造されたルテニウム含有薄膜を提供する。
【0010】
また、本発明は、ルテニウム(0)系炭化水素化合物および特定の反応ガスを含むルテニウム含有薄膜蒸着用の組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ルテニウム(0)系炭化水素化合物を前駆体として使用するとともに、特定の反応ガスを使用することで、単純な工程で純度高いルテニウム含有薄膜の製造方法を提供する。
【0012】
本発明のルテニウム含有薄膜の製造方法は、
薄膜蒸着用の前駆体としてルテニウム(0)系炭化水素化合物および
反応ガスとしてヨード、(C1‐C3)ヨウ化アルキル、ヨウ化シランまたはこれらの混合物を使用してルテニウム含有薄膜を製造するステップを含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の一実施形態によるルテニウム含有薄膜の製造方法は、原子層蒸着(ALD)法、化学気相蒸着(CVD)法、有機金属化学気相蒸着法(MOCVD)、低圧化学気相蒸着法(LPCVD)、プラズマ強化化学気相蒸着法(PECVD)またはプラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)により行われ得る。
【0014】
好ましくは、本発明の一実施形態によるルテニウム含有薄膜の製造方法は、
a)チャンバ内に取り付けられた基板の温度を80~500℃に維持するステップと、
b)キャリアガスおよびルテニウム(0)系炭化水素化合物を注入するステップと、
c)ヨード、(C1‐C3)ヨウ化アルキル、ヨウ化シランまたはこれらの混合物である反応ガスを注入し、前記基板上にルテニウム含有薄膜を製造するステップとを含む。
【0015】
好ましくは、本発明の一実施形態による反応ガスは、ルテニウム(0)系炭化水素化合物1モルに対して0.1~200モルで使用され得る。
【0016】
本発明の一実施形態によるルテニウム含有薄膜の製造方法は、c)ステップの後、熱処理するステップをさらに含むことができ、熱処理は、200~700℃で行われ得る。
【0017】
好ましくは、本発明の一実施形態によるルテニウム(0)系炭化水素化合物は、下記化学式1で表され得る。
[化学式1]
【化1】
(前記化学式1中、
Lは、二重結合が1個~4個存在する、炭素数2~10の非環状アルケン化合物、炭素数3~10の環状アルケン化合物、窒素または酸素から選択されるヘテロ原子が1個~4個含まれる炭素数2~8の非環状または環状ヘテロアルケン類似構造化合物およびカルボニル基含有化合物から選択される1種の化合物である中性リガンドであり、
R
1~R
6は、互いに独立して、水素または(C1‐C7)アルキルである。)
【0018】
より好ましくは、本発明の一実施形態による化学式1のルテニウム(0)系炭化水素化合物は、下記化学式1‐1または1‐2で表され得る。
[化学式1‐1]
【化1-1】
[化学式1‐2]
【化1-2】
(化学式1‐1および1‐2中、
R
1~R
10は、互いに独立して、水素または(C1‐C7)アルキルであり、
A
1は、単結合または‐(CR
11R
12)
m‐であり、R
11およびR
12は、互いに独立して、水素または(C1‐C7)アルキルであり、mは、1~3の整数であり、
A
2は、‐(CR
11R
12)
n‐であり、R
11およびR
12は、互いに独立して、水
素または(C1‐C7)アルキルであり、nは、1~3の整数である。)
【0019】
好ましくは、本発明の一実施形態によるルテニウム(0)系炭化水素化合物は、下記化学式2または化学式3で表され得る。
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
(化学式2および3中、
R
1~R
6は、互いに独立して、水素または(C1‐C7)アルキルであり、
R
7~R
10は、互いに独立して、水素または(C1‐C7)アルキルであり、
A
1は、単結合または‐(CR
11R
12)
m‐であり、R
11およびR
12は、互いに独立して、水素または(C1‐C7)アルキルであり、mは、1~3の整数である。)
【0020】
好ましくは、本発明の一実施形態による反応ガスは、I2、CH3I、CH2I2、CHI3、CH3CH2I、CH3CHI2、ICH2CH2I、CH3CH2CH2I、CH3CHICH3、ICH2CH2CH2またはSiH2I2であってもよく、前記キャリアガスは窒素(N2)、水素、アルゴンおよびヘリウムから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。
【0021】
また、本発明は、ルテニウム(0)系炭化水素前駆体化合物と、ヨード、(C1‐C3)ヨウ化アルキル、ヨウ化シランまたはこれらの混合物である反応ガスとを含むルテニウム含有薄膜蒸着用の組成物を提供する。
【0022】
好ましくは、本発明のルテニウム含有薄膜蒸着用の組成物の一実施形態による反応ガスは、ルテニウム(0)系炭化水素化合物1モルに対して0.1~200モルで使用され得、ルテニウム(0)系炭化水素化合物は、前記化学式1、化学式2および化学式3で表されるルテニウム(0)系炭化水素化合物から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。
【0023】
好ましくは、本発明のルテニウム含有薄膜蒸着用の組成物の一実施形態による反応ガスは、I2、CH3I、CH2I2、CHI3、CH3CH2I、CH3CHI2、ICH2CH2I、CH3CH2CH2I、CH3CHICH3、ICH2CH2CH2または
SiH2I2であってもよい。
【0024】
また、本発明は本発明の一実施形態による前記ルテニウム含有薄膜蒸着用の組成物を用いて製造されたルテニウム含有薄膜を提供し、前記製造されたルテニウム含有薄膜は、比抵抗が100μΩ・cm以下であり、酸素の含量が3at%以下であってもよい。
【0025】
好ましくは、本発明の一実施形態による本発明のルテニウム含有薄膜は、炭素の含量が3at%以下であってもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明のルテニウム含有薄膜の製造方法は、薄膜蒸着用の前駆体としてルテニウム(0)系炭化水素化合物を使用し、この際、特定の反応ガスであるヨード、(C1‐C3)ヨウ化アルキル、ヨウ化シランまたはこれらの混合物である反応ガスを使用することで、酸素を含まず、別の還元工程を必要とせず、簡単な工程でルテニウム含有薄膜を製造することができる。
【0027】
また、本発明のルテニウム含有薄膜の製造方法は、薄膜の厚さ2nm以下で均一な表面の薄膜を製造することができ、高い段差被覆性(step coverage)とボイド(void)なし
にギャップフィル(gap fill)を可能にする。
【0028】
また、本発明のルテニウム含有薄膜の製造方法は、反応ガスとして酸素を使用せず、ヨード、(C1‐C3)ヨウ化アルキル、ヨウ化シランまたはこれらの混合物を使用することで、炭素、酸素、水素などの不純物の含量が最小化し、驚くほど優れた薄膜の純度を有する。
【0029】
また、本発明のルテニウム含有薄膜の製造方法は、様々なルテニウム(0)系炭化水素化合物を前駆体として使用可能である。
【0030】
また、本発明のルテニウム含有薄膜蒸着用の組成物は、反応ガスとして特定の化合物であるヨード、(C1‐C3)ヨウ化アルキル、ヨウ化シランまたはこれらの混合物を使用することで、これを用いたルテニウム含有薄膜の形成の際、優れた段差被覆性およびギャップフィルを有し、密度の高い高純度の薄膜を容易に得ることができる。
【0031】
本発明による製造方法により製造されたルテニウム含有薄膜は、半導体素子の小型化による高いアスペクト比を有するトレンチ、コンタクトまたはビアパターンに対して、均一で優れた段差被覆性(step coverage)をもって蒸着され得る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】実施例1のルテニウム薄膜を水素雰囲気で熱処理した後、TEM分析によるギャップフィルの結果を示す図である。
【
図2】実施例2のルテニウム薄膜をTEM分析によるギャップフィルの結果(a)および段差被覆性結果(b)を示す図である。
【
図3】実施例2のルテニウム薄膜をTEM分析によるギャップフィルの結果(a)および段差被覆性結果(b)を示す図である。
【
図4】実施例1および比較例1~2で製造された薄膜のTEM分析の結果を示す図である。
【
図5】実施例7でルテニウム前駆体の注入時間によるルテニウム薄膜の成長率を示す図である。
【
図6】実施例8~10でルテニウム前駆体の注入時間によるルテニウム薄膜の成長率を示す図である。
【
図7】実施例11~13および比較例3で反応ガスの注入時間によるルテニウム薄膜の成長率を示す図である。
【
図8】実施例14~16および比較例4で基板の温度によるルテニウム薄膜の成長率を示す図である。
【
図9】実施例15、実施例17および実施例18で基板の温度によるルテニウム薄膜の成長率を示す図である。
【
図10】実施例19で工程周期によるルテニウム薄膜の厚さを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明のルテニウム含有薄膜の製造方法、ルテニウム含有薄膜蒸着用の組成物およびこれを用いて製造されたルテニウム含有薄膜について以下に詳述する。このときに使用される技術用語および科学用語において他の定義がなければ、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明で本発明の要旨を不明瞭にし得る公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0034】
本明細書に記載の「アルキル」、およびその他の「アルキル」部分を含む置換体は、直鎖状または分岐鎖状をいずれも含み、1~10個の炭素原子、好ましくは1~7、より好ましくは1~3の炭素原子を有する。
【0035】
また、本明細書に記載の「アルケン化合物」は、非環状または環状の炭化水素化合物として一つ以上の二重結合を含む炭化水素から誘導された有機ラジカルであり、
「ヘテロアルケン類似化合物」は、アルケン化合物に一つ以上のヘテロ原子を含むアルケン化合物として非環状または環状であってもよく、ヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄、リンなどから選択され得るが、好ましくは、酸素または窒素であってもよく、酸素または窒素が一つまたは二つ以上含まれ得る。
【0036】
本明細書に記載のカルボニル含有化合物は、ルテニウム(0)系炭化水素化合物のリガンドとして使用され得、カルボニル基を有する化合物であれば、いずれも可能であるが、好ましい一例として、COまたはアセチルアセトネートであってもよいが、これに限定されない。
【0037】
本発明は、ルテニウム(0)系炭化水素化合物を前駆体として使用し、特定の反応ガスであるヨード、(C1‐C3)ヨウ化アルキル、ヨウ化シランまたはこれらの混合物を使用することで、別の還元工程を必要とせず、単純な工程で高純度のルテニウム含有薄膜を製造する方法を提供し、薄膜の厚さ2nm以下で均一な表面の薄膜を製造することができ、高い階段被服性とボイド(void)なしにギャップフィルを可能にする。
【0038】
本発明のルテニウム含有薄膜の製造方法は、
薄膜蒸着用の前駆体としてルテニウム(0)系炭化水素化合物および
反応ガスとしてヨード、(C1‐C3)ヨウ化アルキル、ヨウ化シランまたはこれらの混合物を使用してルテニウム含有薄膜を製造するステップを含む。
【0039】
本発明のルテニウム含有薄膜の製造方法は、従来使用している反応ガスである酸素を使用せず高純度の薄膜を製造することができ、薄膜に含まれた酸素を除去するための別の還元工程を必要とせず、簡単な工程でルテニウム含有薄膜を製造することができる。
【0040】
本発明の一実施形態によるルテニウム含有薄膜の製造方法は、原子層蒸着(ALD)法、化学気相蒸着(CVD)法、有機金属化学気相蒸着法(MOCVD)、低圧化学気相蒸着法(LPCVD)、プラズマ強化化学気相蒸着法(PECVD)またはプラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)により行われ得、高い純度および優れた物性を有するための面
で、好ましくは、原子層蒸着(ALD)法または化学気相蒸着(CVD)法であってもよい。
【0041】
本発明のルテニウム含有薄膜の製造方法は、前駆体であるルテニウム(0)系炭化水素化合物を、ヨード、(C1‐C3)ヨウ化アルキル、ヨウ化シランまたはこれらの混合物である反応ガスと反応させてルテニウム含有薄膜を製造する方法であれば限定されるものではないが、好ましくは、本発明の一実施形態によるルテニウム含有薄膜の製造方法は、a)チャンバ内に取り付けられた基板の温度を80~500℃に維持するステップと、
b)キャリアガスおよびルテニウム(0)系炭化水素化合物を注入するステップと、
c)ヨード、(C1‐C3)ヨウ化アルキル、ヨウ化シランまたはこれらの混合物である反応ガスを注入し、前記基板上にルテニウム含有薄膜を製造するステップとを含むことができる。
【0042】
本発明の一実施形態によるルテニウム含有薄膜の製造方法において、前記前駆体として使用されるルテニウム(0)系炭化水素化合物は、薄膜蒸着のために加熱などの方法で気体状態に変化してプロセスチャンバに投入され得る。
【0043】
本発明の一実施形態によるルテニウム含有薄膜の製造方法において、前記反応ガスは、加熱などの方法で気体状に変化させ、ルテニウム(0)系炭化水素化合物が吸着された基板が存在するプロセスチャンバに投入され得る。
【0044】
本発明の一実施形態によるルテニウム含有薄膜の製造方法において、ルテニウム(0)系炭化水素化合物および反応ガスは、互いに有機的にまたは互いに独立して、チャンバに供給され得る。また、ルテニウム(0)系炭化水素化合物および反応ガスは、それぞれ連続的にまたは不連続的にチャンバに供給され得、不連続的な供給は、パルス(pulse)形
態を含むことができる。
【0045】
本発明の一実施形態によるルテニウム含有薄膜の製造方法において、b)ステップおよび/またはc)ステップの後、未反応のルテニウム(0)系炭化水素化合物ガスや副生したガスまたは未反応の反応ガスを排気するためにチャンバ内の不活性ガスを供給してパージ(purging)するステップがさらに行われ得ることは言うまでもない。前記不活性ガス
は、窒素(N2)、アルゴンおよびヘリウムから選択されるいずれか一つまたは二つ以上であってもよい。前記パージガスの注入量は、制限されないが、具体的には800~5,000sccm範囲の注入量で提供され得、より具体的には1,000~3,000sccm範囲の注入量で提供され得ることは言うまでもない。
【0046】
すなわち、本発明の一実施形態による製造方法は、a)チャンバ内に取り付けられた基板の温度を80~500℃に維持するステップと、b)キャリアガスおよびルテニウム(0)系炭化水素化合物を注入するステップと、d1)不活性ガスを用いてチャンバ内部をパージするパージステップと、c)ヨード、(C1‐C3)ヨウ化アルキル、ヨウ化シランまたはこれらの混合物である反応ガスを注入し、前記基板上にルテニウム含有薄膜を製造するステップと、d2)不活性ガスを用いてチャンバ内部をパージするパージステップとを含むことができる。
【0047】
本発明の一実施形態による基板は、当業者が認識する範囲内で使用可能なものであればいずれも可能であり、基板の温度も限定されるものではないが、好ましくは200~400℃であってもよく、前記温度範囲は、前駆体として使用されるルテニウム(0)系炭化水素化合物自体の分解特性および反応ガスとして使用されるヨード、(C1‐C3)ヨウ化アルキル、ヨウ化シランまたはこれらの混合物のような他の物質との反応特性に起因する温度範囲である。
【0048】
本発明の一実施形態において使用可能な基板は、Si、Ge、SiGe、GaP、GaAs、SiC、SiGeC、InAsおよびInPのいずれか一つ以上の半導体材料を含む基板;SOI(Silicon On Insulator)基板;石英基板;またはディスプレイ用のガラス基板;ポリイミド(polyimide)、ポリエチレンテレフタレート(PET、PolyEthyleneTerephthalate)、ポリエチレンナフタレート(PEN、PolyEthyleneNaphthalate)
、ポリメチルメタクリレート(PMMA、Poly Methyl MethAcrylate)、ポリカーボネート(PC、PolyCarbonate)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエステル(Polyester)などの可撓性プラスチック基板;タングステン基板であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0049】
本発明の一実施形態によるルテニウム含有薄膜の製造方法は、ルテニウム(0)系炭化水素化合物を前駆体として使用し、ヨード、(C1‐C3)ヨウ化アルキル、ヨウ化シランまたはこれらの混合物である反応ガスを使用する以外に該当する薄膜蒸着条件は、目的とする薄膜の構造または熱的特性によって調節され得る。
【0050】
本発明の一実施形態による蒸着条件としては、前駆体であるルテニウム(0)系炭化水素化合物の投入流量、キャリアガスの投入流量、圧力、RFパワー、基板の温度などが例示され得、かかる蒸着条件の非限定的な一例としては、ルテニウム(0)系炭化水素化合物の投入流量は1~1000cc/min、キャリアガスは1~1000cc/min、反応ガスの流量は1~1000cc/min、圧力は0.1~100torr、RFパワーは200~1000Wおよび基板の温度は80~500℃、好ましくは200~400℃の範囲で調節され得るが,これに限定されるものではない。
【0051】
好ましくは、本発明の一実施形態による反応ガスは、ルテニウム(0)系炭化水素化合物1モルに対して0.1~200モルで使用され得、これに制限されるものではなく、薄膜蒸着条件によって調節可能である。一例として、原子層蒸着(ALD)法、プラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)または化学気相蒸着(CVD)法の場合、好ましくは、ル
テニウム(0)系炭化水素化合物1モルに対して、1~100モル、より好ましくは1~50モル、さらに好ましくは2~30モルで使用され得る。
【0052】
本発明の一実施形態によるルテニウム含有薄膜の製造方法は、c)ステップの後、熱処理するステップをさらに含んでもよく、熱処理は、200~700℃で30分~4時間、好ましくは300~600℃で1時間~2時間行われ得、水素雰囲気下で行われ得る。
【0053】
本発明の一実施形態によるルテニウム(0)系炭化水素化合物は、ルテニウム含有薄膜蒸着用の前駆体として使用可能なルテニウム(0)系炭化水素化合物であればいずれも可能であるが、反応ガスであるヨード、(C1‐C3)ヨウ化アルキル、ヨウ化シランまたはこれらの混合物との好ましい組み合わせとしては、ルテニウム(0)系炭化水素化合物は、下記化学式1で表され得る。
【0054】
[化学式1]
【化4】
(前記化学式1中、
Lは、二重結合が1個~4個存在する、炭素数2~10の非環状アルケン化合物、炭素数3~10の環状アルケン化合物、窒素または酸素から選択されるヘテロ原子が1個~4個含まれる炭素数2~8の非環状または環状ヘテロアルケン類似構造化合物およびカルボニル基含有化合物から選択される1種の化合物である中性リガンドであり、
R
1~R
6は、互いに独立して、水素または(C1‐C7)アルキルである。)
【0055】
好ましくは、本発明の一実施形態による前記化学式1中、Lは、二重結合が1個~4個存在する、炭素数2~10の非環状アルケン化合物、炭素数3~10の環状アルケン化合物、窒素を1個~4個含まれる炭素数2~8の非環状または環状ヘテロアルケン類似構造化合物、COまたはアセチルアセトネートから選択される1種の中性リガンド化合物であってもよく、より好ましくは、Lは二重結合が1個~4個存在する、炭素数2~10の非環状アルケン化合物、二重結合が1個~4個存在する、炭素数3~10の環状アルケン化合物またはCOであってもよい。
【0056】
より好ましくは、本発明の一実施形態による化学式1のルテニウム(0)系炭化水素化合物は下記化学式1‐1または化学式1‐2で表され得る。
[化学式1‐1]
【化4-1】
[化学式1‐2]
【化4-2】
(化学式1‐1および1‐2中、
R
1~R
10は、互いに独立して、水素または(C1‐C7)アルキルであり、
A
1は、単結合または‐(CR
11R
12)
m‐であり、R
11およびR
12は、互いに独立して、水素または(C1‐C7)アルキルであり、mは、1~3の整数であり、
A
2は、‐(CR
11R
12)
n‐であり、R
11およびR
12は、互いに独立して、水素または(C1‐C7)アルキルであり、nは、1~3の整数である。)
【0057】
好ましくは、本発明の一実施形態による前記化学式1‐1または1‐2中、R1~R10は、互いに独立して、水素または(C1‐C5)アルキルであり、A1は、単結合または‐(CR11R12)m‐であり、A2は、‐(CR11R12)n‐であり、R11およびR12は、互いに独立して、水素または(C1‐C5)アルキルであり、mは、1~2の整数であり、nは、1~2の整数であってもよい。
【0058】
本発明の一実施形態において、反応ガスであるヨード、(C1‐C3)ヨウ化アルキル、ヨウ化シランまたはこれらの混合物との好ましい組み合わせによるルテニウム(0)系炭化水素化合物は、下記化学式2または化学式3で表され得る。
【0059】
[化学式2]
【化5】
[化学式3]
【化6】
(化学式2および3中、
R
1~R
6は、互いに独立して、水素または(C1‐C7)アルキルであり、
R
7~R
10は、互いに独立して、水素または(C1‐C7)アルキルであり、
A
1は、単結合または‐(CR
11R
12)
m‐であり、R
11およびR
12は、互いに独立して、水素または(C1‐C7)アルキルであり、mは、1~3の整数である。)
【0060】
好ましくは、本発明の一実施形態による前記化学式2または3中、R1~R6は、互いに独立して、水素または(C1‐C5)アルキルであり、R7~R10は、互いに独立して、水素または(C1‐C5)アルキルであり、A1は、単結合または‐(CR11R12)m‐であり、R11およびR12は、互いに独立して、水素または(C1‐C5)アルキルであり、mは、1~2の整数であってもよい。
【0061】
より好ましくは、本発明の一実施形態によるルテニウム(0)系炭化水素化合物は、下記構造から選択される化合物であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0062】
(前記R
1~R
10は、互いに独立して、水素または(C1‐C7)アルキルである。)
【0063】
好ましくは、本発明の一実施形態による反応ガスは、I2、CH3I、CH2I2、CHI3、CH3CH2I、CH3CHI2、ICH2CH2I、CH3CH2CH2I、CH3CHICH3、ICH2CH2CH2IまたはSiH2I2であってもよく、より好ましくは、CH3CH2I、CH2I2、ICH2CH2CH2IまたはSiH2I2であってもよい。
【0064】
本発明の一実施形態によるルテニウム含有薄膜の製造方法において、ルテニウム(0)系炭化水素化合物は、キャリアガスとともにチャンバに供給され得る。具体的には、キャリアガスは、窒素(N2)、水素、アルゴンおよびヘリウムから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物であってもよく、本発明の特定の反応ガスとの好ましい組み合わせとして、窒素(N2)、アルゴンおよびヘリウムから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物の不活性ガスであってもよい。
【0065】
ルテニウム含有薄膜は、ルテニウム前駆体を気相供給してルテニウム含有薄膜を製造する本技術分野において当業者が認識することができる範囲内で製造可能な薄膜であればいずれも可能である。具体的で実質的な一例として、ルテニウム含有薄膜は、通常、導電性を有するルテニウム、ルテニウム酸化膜、これらの混成膜であってもよく、その他にも当業者が認識可能な範囲内でルテニウムを含む高品質の様々な薄膜を製造することができる。
【0066】
また、本発明は、ルテニウム(0)系炭化水素前駆体化合物と、ヨード、(C1‐C3)ヨウ化アルキル、ヨウ化シランまたはこれらの混合物である反応ガスとを含むルテニウム含有薄膜蒸着用の組成物を提供する。
【0067】
好ましくは、本発明のルテニウム含有薄膜蒸着用の組成物の一実施形態による反応ガスは、ルテニウム(0)系炭化水素化合物1モルに対して、0.1~200モル、好ましくは1~100モル、より好ましくは1~50モル、より一層好ましくは2~30モルで使用され得、ルテニウム(0)系炭化水素化合物は、前記化学式1、化学式2および化学式3で表されるルテニウム(0)系炭化水素化合物から選択されるいずれか一つまたは二つ以上であってもよい。
【0068】
好ましくは、本発明のルテニウム含有薄膜蒸着用の組成物の一実施形態による反応ガスは、I2、CH3I、CH2I2、CHI3、CH3CH2I、CH3CHI2、ICH2CH2I、CH3CH2CH2I、CH3CHICH3、ICH2CH2CH2IまたはSiH2I2であってもよい。
【0069】
また、本発明は、本発明の一実施形態による前記ルテニウム含有薄膜蒸着用の組成物を用いて製造されたルテニウム含有薄膜を提供し、前記製造されたルテニウム含有薄膜は、比抵抗が、100μΩ・cm以下、好ましくは50μΩ・cm以下、さらに好ましくは30μΩ・cm以下であり、酸素の含量が、3at%以下、好ましくは1at%以下であってもよい。
【0070】
好ましくは、本発明の一実施形態によるルテニウム含有薄膜は、炭素の含量が、3at%以下、好ましくは1at%以下であってもよい。
【0071】
本発明のルテニウム含有薄膜はルテニウム(0)系炭化水素化合物と特定の反応ガスであるヨード、(C1‐C3)ヨウ化アルキル、ヨウ化シランまたはこれらの混合物を使用することで、高純度・高密度および高い耐久性を有するルテニウム含有薄膜を簡単な工程で製造可能である。また、ルテニウム含有薄膜の製造時に反応ガスとして酸素ではなく、ヨード、(C1‐C3)ヨウ化アルキル、ヨウ化シランまたはこれらの混合物を使用する
ことで、蒸着工程中に下部膜を酸化させないことができ、形成された後にもルテニウム含有薄膜の下部膜を酸化させないことができる。これにより、下部膜との界面に形成された酸化物によるルテニウム含有薄膜と下部膜との接触抵抗の増加を防止することができる。
【0072】
また、ルテニウム含有薄膜の製造の際、ルテニウム(0)系炭化水素化合物と特定の反応ガスであるヨード、(C1‐C3)ヨウ化アルキル、ヨウ化シランまたはこれらの混合物を使用することで、結晶品質を向上させ、薄膜の比抵抗を100μΩ・cm以下、好ましくは50μΩ・cm以下、さらに好ましくは30μΩ・cm以下に減少させることができ、薄膜内の酸素の含量を3at%以下、好ましくは1at%以下に減少させることができる。
【0073】
以下、本発明を下記実施例によってより具体的に説明する。その前に、本明細書および請求の範囲に使用された用語や単語は、通常的や辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈しなければならない。
【0074】
したがって、本明細書に記載の実施例と図面に図示されている構成は、本発明の最も好ましい一実施例に過ぎないだけであって、本発明の技術的な思想をすべて代弁するものではないため、本出願時点でこれらを代替することができる様々な均等物と変形例があることを理解しなければならない。
【0075】
また、以下のすべての実施例は、商用化したシャワーヘッド方式の200mmの枚葉式(single wafertype)ALD装備(CN1、Atomic Premium)を使用して公知の原子層
蒸着法(ALD)を用いて行った。また、商用化したシャワーヘッド方式の200mmの枚葉式(singlewafer type)CVD(PECVD)装備(CN1、Atomic Premium)で
公知のプラズマ気相化学蒸着法を用いて行うことができる。
【0076】
蒸着されたルテニウム含有薄膜は、シート抵抗測定装置(4pointprobe、DASOLENG、ARMS‐200C)を用いて比抵抗を測定し、透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、FEI(Netherlands)Tecnai G2F30S‐Twin)
により厚さを測定し、飛行時間による弾性反跳分光分析法(Time of Flight‐Elastic Recoil Detection(TOF‐ERD)、NEC)を用いて薄膜の組成を分析した。
【0077】
[実施例1]ルテニウム含有薄膜の製造
Ru含有前駆体化合物として
(化合物1)を使用し、反応ガスとしてヨードエタン(CH
3CH
2I)を使用し、原子層蒸着法(Atomic layer deposition)によってルテニウム含有薄膜を形成した。
【0078】
先ず、シリコン酸化膜基板は250℃に維持し、化合物1をステンレススチールバブラー容器に充填し、110℃に維持した。ステンレススチールバブラー容器内で蒸気化した化合物1をアルゴンガス(50sccm)をキャリアガスとして3秒間(0.0015g)供給し、シリコン酸化膜基板に移送され、シリコン酸化膜基板に吸着されるようにした
。次に、アルゴンガス(3000sccm)を用いて1秒間未反応の化合物1を除去した。次に、30℃に加熱されたヨードエタン(CH
3CH
2I)を0.1秒間(0.002g)供給し、ルテニウム含有薄膜を形成した。最後に、アルゴンガス(3000sccm)を用いて1秒間反応副生成物および残留反応ガスを除去した。反応ガス(ヨードエタン)は、ルテニウム(0)系炭化水素化合物(化合物1)1モルに対して2.7モルで使用された。前記のような工程を1周期とし、1500周期を繰り返してルテニウム含有薄膜を形成した。形成されたルテニウム薄膜は、炉(Furnace)内の水素雰囲気で450℃で
2時間熱処理した後、TEM分析によるギャップフィルの結果を
図1に図示した。
【0079】
詳細な薄膜の製造条件は、下記の表1に示した。
【0080】
【0081】
図1に図示されているように、実施例1で蒸着されたルテニウム含有薄膜は水素雰囲気熱処理後容易にギャップフィルを形成した。
【0082】
[実施例2]ルテニウム含有薄膜の製造
Ru含有前駆体化合物として
(化合物1)を使用し、反応ガスとしてジヨードメタン(CH
2I
2)を使用し、原子層蒸着法(Atomic layer deposition)によってルテニウム含有薄膜を形成した。
【0083】
シリコン酸化膜基板は280℃に維持し、化合物1をステンレススチールバブラー容器に充填して110℃に維持した。ステンレススチールバブラー容器内で蒸気化された化合物1をアルゴンガス(50sccm)をキャリアガスとして2秒間(0.001g)供給し、シリコン酸化膜基板に移送され、シリコン酸化膜基板に吸着されるようにした。次に、アルゴンガス(3000sccm)を用いて0.5秒間未反応の化合物1を除去した。次に、90℃に加熱されたジヨードメタン(CH
2I
2)を0.4秒間(0.005g)供給し、ルテニウム含有薄膜を形成した。最後に、アルゴンガス(3000sccm)を用いて0.1秒間反応副生成物および残留反応ガスを除去した。反応ガス(ジヨードメタン)は、ルテニウム(0)系炭化水素化合物(化合物1)1モルに対して5.9モルで使用された。上記のような工程を1周期とし、800周期を繰り返してルテニウム含有薄膜を形成した。形成されたルテニウム薄膜のTEM分析によるギャップフィルの結果および段差被覆性結果を
図2に図示した。
【0084】
詳細な反応条件は、下記の表2に示した。
【0085】
【0086】
図2に図示されているように、実施例2で製造されたルテニウム含有薄膜は、ギャップフィルの形成(
図2の(a))が容易であり、段差被覆性(
図2の(b))に優れることが分かる。
【0087】
[実施例3]ルテニウム含有薄膜の製造
Ru含有前駆体化合物として
(化合物1)を使用し、反応ガスとしてジヨードメタン(CH
2I
2)を使用し、化学気相蒸着(CVD)法でルテニウム含有薄膜を形成した。
【0088】
シリコン酸化膜基板は280℃に維持し、化合物1をステンレススチールバブラー容器に充填して110℃に維持した。ステンレススチールバブラー容器内で蒸気化された化合物1をアルゴンガス(50sccm)をキャリアガスとして70分間(2.1g)反応チャンバに注入すると同時に、90℃に加熱されたジヨードメタン(CH2I2)をアルゴンガス(25sccm)をキャリアガスとし、70分間(52.5g)反応チャンバに注入してルテニウム含有薄膜を形成した。チャンバ圧力を30torr以上に維持するためにアルゴンガス(5000sccm)を注入し、70分間工程を行ってルテニウム含有薄膜を形成した。反応ガス(ジヨードメタン)は、ルテニウム(0)系炭化水素化合物(化合物1)1モルに対して25.0モルで使用された。詳細な反応条件は、下記の表3に示した。
【0089】
【0090】
実施例3で蒸着されたルテニウム含有薄膜のTEM分析の結果を3に示し、
図3に示されているように、容易にギャップフィルを形成することができ(
図3の(a))、段差被覆性にも優れる(
図3の(b))ことが分かる。
【0091】
[比較例1]ルテニウム含有薄膜の製造
実施例1で反応ガスとしてヨードエタンの代わりに酸素を使用した以外は、実施例1と同様に実施してルテニウム含有薄膜を製造し、具体的なルテニウム含有薄膜蒸着条件は、下
記の表4に示した。
【0092】
【0093】
[比較例2]ルテニウム含有薄膜の製造
実施例1で反応ガスとしてヨードエタンの代わりに水素を使用した以外は、実施例1と同様に実施してルテニウム含有薄膜を製造し、具体的なルテニウム含有薄膜蒸着条件は、表5に示した。
【0094】
【0095】
比較例1と比較例2で蒸着したルテニウム含有薄膜のTEM分析の結果を
図4に示した。
図4に示されているように、反応ガスとして酸素を使用した比較例1の場合、ルテニウム含有薄膜が形成されたが、水素を反応ガスとして使用した比較例2の場合には、ルテニウム含有薄膜が形成されなかった。
【0096】
[実施例4]ルテニウム含有薄膜の製造
Ru含有前駆体化合物として
(化合物1)を使用し、反応ガスとしてジヨードシラン(SiH
2I
2)を使用し、原子層蒸着法(Atomic layer deposition)によってルテニウム含有薄膜を形成した。
【0097】
シリコン酸化膜基板は280℃に維持し、化合物1をステンレススチールバブラー容器に充填して110℃に維持した。ステンレススチールバブラー容器内で蒸気化された化合物1をアルゴンガス(50sccm)をキャリアガスとして2秒間(0.001g)供給し、シリコン酸化膜基板に移送され、シリコン酸化膜基板に吸着されるようにした。次に、アルゴンガス(3000sccm)を用いて0.5秒間未反応の化合物1を除去した。次に、34℃に加熱されたジヨードシラン(SiH2I2)を1秒間(0.003g)供給し、ルテニウム含有薄膜を形成した。最後に、アルゴンガス(3000sccm)を用いて約0.1秒間反応副生成物および残留反応ガスを除去した。反応ガス(ジヨードシラン)は、ルテニウム(0)系炭化水素化合物(化合物1)1モルに対して3.4モルで使用された。上記のような工程を1周期とし、800周期を繰り返してルテニウム含有薄膜
を形成した。詳細な反応条件は、下記の表6に示した。
【0098】
【0099】
[実施例5]ルテニウム含有薄膜の製造
Ru含有前駆体化合物として
(化合物2)を使用し、反応ガスとしてジヨードメタン(CH
2I
2)を使用し、原子層蒸着法(Atomic layer deposition)によってルテニウム含有薄膜を形成した。
【0100】
シリコン酸化膜基板は300℃に維持し、化合物2をステンレススチールバブラー容器に充填して36℃に維持した。ステンレススチールバブラー容器内で蒸気化された化合物2をアルゴンガス(10sccm)をキャリアガスとして2秒間(0.002g)供給し、シリコン酸化膜基板に移送され、シリコン酸化膜基板に吸着されるようにした。次に、アルゴンガス(3000sccm)を用いて5秒間未反応の化合物2を除去した。次に、90℃に加熱されたジヨードメタン(CH2I2)を0.4秒間(0.005g)供給し、ルテニウム含有薄膜を形成した。最後に、アルゴンガス(3000sccm)を用いて5秒間反応副生成物および残留反応ガスを除去した。反応ガス(ジヨードメタン)はルテニウム(0)系炭化水素化合物(化合物2)1モルに対して2.5モルで使用された。上記のような工程を1周期とし、800周期を繰り返してルテニウム含有薄膜を形成した。
【0101】
詳細な反応条件は、下記の表7に示した。
【0102】
【0103】
[実施例6]ルテニウム含有薄膜の製造
Ru含有前駆体化合物として
((isoprene)Ru(CO)
3、化合物3)を使用し、反応ガスとしてジヨードメタン(CH
2I
2)を使用し、原子層蒸着法(Atomic layer deposition)によってルテニウム含有
薄膜を形成した。
【0104】
シリコン酸化膜基板は250℃に維持し、化合物3をステンレススチールバブラー容器に充填して24℃に維持した。ステンレススチールバブラー容器内で蒸気化された化合物3をアルゴンガス(50sccm)をキャリアガスとして2秒間(0.0016g)供給し、シリコン酸化膜基板に移送され、シリコン酸化膜基板に吸着されるようにした。次に、アルゴンガス(3000sccm)を用いて5秒間未反応の化合物3を除去した。次に、90℃に加熱されたジヨードメタン(CH2I2)を0.4秒間(0.005g)供給し、ルテニウム含有薄膜を形成した。最後に、アルゴンガス(3000sccm)を用いて5秒間反応副生成物および残留反応ガスを除去した。反応ガス(ジヨードメタン)は、ルテニウム(0)系炭化水素化合物(化合物3)1モルに対して3.0モルで使用された。上記のような工程を1周期とし、400周期を繰り返してルテニウム含有薄膜を形成した。詳細な反応条件は、下記の表8に示した。
【0105】
【0106】
前記実施例1~実施例6および比較例1~比較例2で製造されたルテニウム含有薄膜に対する比抵抗および製造されたルテニウム含有薄膜の組成をTOF‐ERD(Time of Flight‐Elastic Recoil Detection)で分析し、その結果を下記の表9に示した。
【0107】
【0108】
表9に示されているように、反応ガスとしてヨウ化アルキルまたはヨウ化シランを使用した実施例1~6のルテニウム含有薄膜は、比抵抗が18~28μΩ・cmであり、水素を反応ガスとして使用した比較例2に比べて比抵抗が著しく低かった。
【0109】
また、反応ガスとしてヨウ化アルキルまたはヨウ化シランを使用した実施例1~6のルテニウム含有薄膜は、TOF‐ERD分析の結果、薄膜内酸素含量が0.6at%以下であり、酸素を反応ガスとして使用した比較例1に比べて薄膜内酸素含量が著しく低かった。
【0110】
また、
図1に示されているように、本発明の実施例1による水素雰囲気熱処理後、ギャップフィルの形成が容易であることが分かる。
【0111】
さらに、
図2~
図3に示されているように、本発明の実施例2~3で製造された薄膜のギャップフィルの形成が容易であり、優れた段差被覆性を有することが分かる。
【0112】
[実施例7]ルテニウム含有薄膜の製造に使用されるルテニウム前駆体の注入量による成長率の分析
実施例1で化合物1の注入時間を0.5秒から5秒まで変化を与えた以外は、実施例1と同様に実施してルテニウム含有薄膜を製造した。
【0113】
透過電子顕微鏡により分析された実施例7で製造されたルテニウム含有薄膜のルテニウム前駆体に対する飽和(Saturation)の結果を
図5に示した。
図5に示されているように、化合物1の注入時間2秒から飽和(Saturation)され、ルテニウム含有薄膜の成長率が一定であることを確認することができた。
【0114】
[実施例8]ルテニウム含有薄膜の製造に使用されるルテニウム前駆体の注入量による成長率の分析
実施例2で化合物1の注入時間を0.5秒から5秒まで変化を与えた以外は、実施例2と同様に実施してルテニウム含有薄膜を製造した。
【0115】
[実施例9]ルテニウム含有薄膜の製造に使用されるルテニウム前駆体の注入量による成長率の分析
実施例5で化合物2の注入時間を0.5秒から5秒まで変化を与えた以外は、実施例5と同様に実施してルテニウム含有薄膜を製造した。
【0116】
[実施例10]ルテニウム含有薄膜の製造のルテニウム前駆体の飽和(Saturation)
実施例6で化合物3の注入時間を0.5秒から5秒まで変化を与えた以外は、実施例6と同様に実施してルテニウム含有薄膜を製造した。
【0117】
透過電子顕微鏡により分析された実施例8~実施例10で製造されたルテニウム含有薄膜のルテニウム前駆体に対する飽和(Saturation)の結果を
図6に示した。
図6に示されているように、化合物1の注入時間2秒から、化合物2の注入時間3秒から、化合物3の注入時間2秒から飽和(Saturation)され、ルテニウム含有薄膜の成長率が一定であることを確認することができた。
【0118】
[実施例11]ルテニウム含有薄膜の製造に使用される反応ガスの注入量による成長率の分析
実施例1でヨードエタンの注入時間を0.1秒から5秒まで変化を与えた以外は、実施例1と同様に実施してルテニウム含有薄膜を製造した。
【0119】
[実施例12]ルテニウム含有薄膜の製造に使用される反応ガスの注入量による成長率の分析
実施例2でジヨードメタンの注入時間を0.1秒から5秒まで変化を与えた以外は、実施例2と同様に実施してルテニウム含有薄膜を製造した。
【0120】
[実施例13]ルテニウム含有薄膜の製造に使用される反応ガスの注入量による成長率の分析
実施例4でジヨードシランの注入時間を0.1秒から5秒まで変化を与えた以外は、実施例4と同様に実施してルテニウム含有薄膜を製造した。
【0121】
[比較例3]ルテニウム含有薄膜の製造に使用される反応ガスの注入量による成長率の分析
比較例1で酸素ガスの注入時間を0.1秒から5秒まで変化を与えた以外は、比較例1と同様に実施してルテニウム含有薄膜を製造した。
【0122】
透過電子顕微鏡により分析された実施例11~実施例13および比較例3で製造されたルテニウム含有薄膜の反応ガスに対する飽和(Saturation)の結果を
図7に示した。
図7に示されているように、ヨードエタンの注入時間0.1秒から、ジヨードメタンの注入時間0.2秒から、ジヨードシランの注入時間0.5秒から飽和(Saturation)され、ルテニウム含有薄膜の成長率が一定であることを確認することができた。一方、反応ガスとして酸素を注入した場合には、酸素ガスの注入時間2秒から飽和され、ルテニウム含有薄膜の成長率が一定であった。
【0123】
すなわち、ルテニウム含有薄膜の蒸着時に反応ガスとしてヨウ化アルキルまたはヨウ化シランを使用する場合、酸素を使用した場合に比べて迅速に飽和され、ルテニウム含有薄
膜の成長率が一定であることが分かる。
【0124】
[実施例14]ルテニウム含有薄膜の製造に使用される基板の温度による成長率の分析実施例1で基板の温度を200℃から360℃まで変化を与えた以外は、実施例1と同様に実施してルテニウム含有薄膜を製造した。
【0125】
[実施例15]ルテニウム含有薄膜の製造に使用される基板の温度による成長率の分析実施例2で基板の温度を200℃から360℃まで変化を与えた以外は、実施例2と同様に実施してルテニウム含有薄膜を製造した。
【0126】
[実施例16]ルテニウム含有薄膜の製造に使用される基板の温度による成長率の分析実施例4で基板の温度を200℃から360℃まで変化を与えた以外は、実施例4と同様に実施してルテニウム含有薄膜を製造した。
【0127】
[比較例4]ルテニウム含有薄膜の製造に使用される基板の温度による成長率の分析
比較例1で基板の温度を200℃から360℃まで変化を与えた以外は、比較例1と同様に実施してルテニウム含有薄膜を製造した。
【0128】
[実施例17]ルテニウム含有薄膜の製造に使用される基板の温度による成長率の分析実施例5で基板の温度を200℃から360℃まで変化を与えた以外は、実施例5と同様に実施してルテニウム含有薄膜を製造した。
【0129】
[実施例18]ルテニウム含有薄膜の製造に使用される基板の温度による成長率の分析実施例6で基板の温度を200℃から360℃まで変化を与えた以外は、実施例6と同様に実施してルテニウム含有薄膜を製造した。
【0130】
透過電子顕微鏡により分析された実施例14~実施例18および比較例4で製造されたルテニウム含有薄膜の基板の温度による成長率飽和区間の結果を
図8と
図9に示した。実施例14の場合、基板の温度300℃~340℃、実施例15の場合、基板の温度240℃~300℃、実施例16の場合、基板の温度260℃~320℃の広い範囲の基板の温度でルテニウム含有薄膜の成長率が一定であったが、比較例4の場合、基板の温度240℃~280℃の狭い範囲の基板の温度でルテニウム含有薄膜の成長率が一定であった[
図8]。
【0131】
すなわち、本発明のように、ヨードエタン、ジヨードメタン、ジヨードシランなどのようなヨウ化アルキルまたはヨウ化シランを反応ガスとして使用してルテニウム含有薄膜を蒸着する場合、広範な基板の温度でルテニウム含有薄膜の成長率が一定であることを確認した。
【0132】
また、実施例15、実施例17および実施例18のようにルテニウム前駆体化合物の種類を変更しても、ジヨードメタンなどのヨウ化アルキルを反応ガスとして使用してルテニウム含有薄膜を蒸着する場合にも、広い範囲の基板の温度でルテニウム含有薄膜の成長率が一定であることを確認することができた。
【0133】
[実施例19]ルテニウム含有薄膜の製造の蒸着回数による成長
実施例2で蒸着回数を10周期から300周期まで変化を与えた以外は、実施例2と同様に実施してルテニウム含有薄膜を製造した。
【0134】
実施例19で製造されたルテニウム含有薄膜の蒸着回数に対する薄膜成長結果を
図10に示した。
図10に示されているように、蒸着回数20周期以下でルテニウム核生成が行
われ、20周期以上からルテニウム薄膜が成長することを確認することができた。また、蒸着回数の増加に伴い、ルテニウム薄膜の成長が所定の勾配を有することを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明のルテニウム含有薄膜の製造方法は、薄膜蒸着用の前駆体としてルテニウム(0)系炭化水素化合物を使用し、この際、特定の反応ガスであるヨード、(C1‐C3)ヨウ化アルキル、ヨウ化シランまたはこれらの混合物である反応ガスを使用することで、酸素を含まず、別の還元工程を必要とせず、簡単な工程でルテニウム含有薄膜を製造することができる。
【0136】
また、本発明のルテニウム含有薄膜の製造方法は、薄膜の厚さ2nm以下で均一な表面の薄膜を製造することができ、高い段差被覆性(step coverage)とボイド(void)なし
にギャップフィル(gap fill)を可能にする。
【0137】
また、本発明のルテニウム含有薄膜の製造方法は、反応ガスとして酸素を使用せず、ヨード、(C1‐C3)ヨウ化アルキル、ヨウ化シランまたはこれらの混合物を使用することで、炭素、酸素、水素などの不純物の含量が最小化し、驚くほど優れた薄膜の純度を有する。
【0138】
また、本発明のルテニウム含有薄膜の製造方法は、様々なルテニウム(0)系炭化水素化合物を前駆体として使用可能である。
【0139】
また、本発明のルテニウム含有薄膜蒸着用の組成物は、反応ガスとして特定の化合物であるヨード、(C1‐C3)ヨウ化アルキル、ヨウ化シランまたはこれらの混合物を使用することで、これを用いたルテニウム含有薄膜の形成の際、優れた段差被覆性およびギャップフィルを有し、密度の高い高純度の薄膜を容易に得ることができる。
【0140】
本発明による製造方法により製造されたルテニウム含有薄膜は、半導体素子の小型化による高いアスペクト比を有するトレンチ、コンタクトまたはビアパターンに対して、均一で優れた段差被覆性(step coverage)をもって蒸着され得る。