(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013907
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】コンクリートブロック及びそれを用いたコンクリートブロック壁体
(51)【国際特許分類】
E04C 1/40 20060101AFI20230119BHJP
E04C 1/39 20060101ALI20230119BHJP
E04C 1/00 20060101ALI20230119BHJP
E04B 2/02 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
E04C1/40
E04C1/39 110
E04C1/00 Z
E04B2/02 232
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196634
(22)【出願日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】P 2021117863
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000204170
【氏名又は名称】太陽エコブロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】石井 克侑
(57)【要約】
【課題】発泡樹脂ブロックを設けたコンクリートブロックと、発泡樹脂ブロックを設けないコンクリートブロックとを併用する場合に、コンクリートブロックの管理を容易に行うことができるコンクリートブロックを提供すること。
【解決手段】グラウト材を充填するための中空部11、12を有し、コンクリートブロック1の中空部11を占めるように、発泡樹脂ブロック2をコンクリートブロック1の中空部11の開口11aから装着するようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラウト材を充填するための中空部を有するコンクリートブロックであって、前記コンクリートブロックの中空部の一部を占めるように、発泡樹脂ブロックをコンクリートブロックの中空部の開口から装着するようにしてなることを特徴とするコンクリートブロック。
【請求項2】
前記発泡樹脂ブロックが、コンクリートブロックの下面と面一になるように装着されるとともに、発泡樹脂ブロックの上面に、横筋支持用スペーサを、該横筋支持用スペーサの横筋支持面がコンクリートブロックのウェブの上面より高い位置になるように、形成してなることを特徴とする請求項1に記載のコンクリートブロック。
【請求項3】
前記発泡樹脂ブロックが、移動防止部を備えてなることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリートブロック。
【請求項4】
前記発泡樹脂ブロックが、下面にグラウト材が充填される長さ方向に延びる凹溝を備えてなることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のコンクリートブロック。
【請求項5】
請求項1、2又は3に記載のコンクリートブロックを用いたコンクリートブロック壁体であって、Rr-55相当の音響透過損を備えてなることを特徴とするコンクリートブロック壁体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートブロック及びそれを用いたコンクリートブロック壁体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンクリートブロックをモルタルやコンクリート等のグラウト材と鉄筋によって補強した組積造からなり、鉄筋コンクリート造と同等の耐震性を有する、平成15年国土交通省告示第463号に規定される「鉄筋コンクリート組積造」(本明細書において、「RM(reinforced masonry)造」という。)が注目されている。
【0003】
ところで、RM造は、コンクリートブロックの中空部分に鉄筋を通し、グラウト材を充填(通常、逐次充填ではなく、すべてのコンクリートブロックの組積終了後に充填を行う階高充填工法が採用される。)して構造体とするものであるが、例えば、ブロック塀のように、基礎の上に「片持ち」で構築された場合、地震時にグラウト材が全充填された構造体は質量が大きい分、地震動による慣性力が大きくなり、倒壊を防ぐために、その分基礎を大きくする必要があった。
【0004】
一方、コンクリートブロックを軽量化するために、発泡樹脂ブロックを配設したコンクリートブロックが提案されている(特許文献1~2参照。)。
そして、コンクリートブロックに発泡樹脂ブロックを配設するために、コンクリートブロックの製造時に、型枠内に発泡樹脂ブロックを配置し、コンクリートを流し込むことによって、発泡樹脂ブロックを内蔵したコンクリートブロックを製造するようにしている。
しかしながら、このコンクリートブロックの製造方法は、コンクリートブロックの製造に手数を要するとともに、発泡樹脂ブロックを設けたコンクリートブロックと、発泡樹脂ブロックを設けないコンクリートブロックとを併用する場合、コンクリートブロックの管理が煩雑になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-25152号公報
【特許文献2】実開昭61-166006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のRM造の問題点や発泡樹脂ブロックを内蔵したコンクリートブロックの有する問題点に鑑み、発泡樹脂ブロックを設けたコンクリートブロックと、発泡樹脂ブロックを設けないコンクリートブロックとを併用する場合に、コンクリートブロックの管理を容易に行うことができるコンクリートブロック及びそれを用いたコンクリートブロック壁体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のコンクリートブロックは、グラウト材を充填するための中空部を有するコンクリートブロックであって、前記コンクリートブロックの中空部の一部を占めるように、発泡樹脂ブロックをコンクリートブロックの中空部の開口から装着するようにしてなることを特徴とする。
【0008】
この場合において、前記発泡樹脂ブロックが、コンクリートブロックの下面と面一にな
るように装着されるとともに、発泡樹脂ブロックの上面に、横筋支持用スペーサを、該横筋支持用スペーサの横筋支持面がコンクリートブロックのウェブの上面より高い位置になるように、形成してなるようにすることができる。
【0009】
また、前記発泡樹脂ブロックが、移動防止部を備えてなるようにすることができる。
【0010】
前記発泡樹脂ブロックが、下面にグラウト材が充填される長さ方向に延びる凹溝を備えてなるようにすることができる。
【0011】
また、本発明のコンクリートブロック壁体は、上記コンクリートブロックを用いたコンクリートブロック壁体であって、Rr-55相当の音響透過損を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコンクリートブロックによれば、コンクリートブロックの中空部の一部を占めるように、発泡樹脂ブロックをコンクリートブロックの中空部の開口から装着するようにしてなることから、発泡樹脂ブロックを設けたコンクリートブロックと、発泡樹脂ブロックを設けないコンクリートブロックとを併用する場合に、コンクリートブロックの管理を容易に行うことができる。
【0013】
また、発泡樹脂ブロックが、コンクリートブロックの下面と面一になるように装着されるとともに、発泡樹脂ブロックの上面に、横筋支持用スペーサを、該横筋支持用スペーサの横筋支持面がコンクリートブロックのウェブの上面より高い位置になるように、形成してなるようにすることにより、発泡樹脂ブロックのコンクリートブロックに対する装着状態が安定するとともに、横筋に対するグラウト材の十分なかぶり厚さを確保することができる。
【0014】
また、発泡樹脂ブロックが、移動防止部を備えてなるようにすることにより、発泡樹脂ブロックを装着した箇所以外のコンクリートブロックの中空部にグラウト材を打設した際に発泡樹脂ブロックが浮き上がったり、発泡樹脂ブロック上に横筋を載置した際に発泡樹脂ブロックが沈み込んだりすることを防止し、発泡樹脂ブロックのコンクリートブロックに対する装着状態を安定させることができる。
【0015】
また、発泡樹脂ブロックが、下面にグラウト材が充填される長さ方向に延びる凹溝を備えてなるようにすることにより、発泡樹脂ブロックとグラウト材の界面に水が浸入し、流動することを防止し、RM造の耐久性が低下することを防止することができる。
【0016】
また、本発明のコンクリートブロック壁体は、Rr-55相当の音響透過損を備えてなることから、優れた遮音性能を具備した壁体構造であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のコンクリートブロックの一実施例を示す外観斜視図である。
【
図2】同コンクリートブロックを示し、(a)は正面縦断面図、(b)は底面図、(c)は側面図である。
【
図3】同コンクリートブロックに用いる発泡樹脂ブロックを示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は側面図、(e)は外観斜視図である。
【
図4】本発明のコンクリートブロックの変形実施例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図5】同コンクリートブロックに用いる発泡樹脂ブロックを示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上方から見た外観斜視図、(d)は下方から見た外観斜視図である。
【
図6】本発明のコンクリートブロックを用いたコンクリートブロック壁体を示し、(a)は正面図、(b)は(a)のA-A断面図、(c)は(a)のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のコンクリートブロック及びそれを用いたコンクリートブロック壁体の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0019】
図1~
図3に、本発明のコンクリートブロックの一実施例を示す。
このコンクリートブロック1は、RM造に用いられるもので、グラウト材を充填するための中空部11、12を有し、コンクリートブロック1の中空部11、12の一部(本実施例においては、コンクリートブロック1の中央の中空部11。)を占めるように、発泡樹脂ブロック2をコンクリートブロック1の中空部11の開口11aから装着するようにしている。
ここで、コンクリートブロック1及び発泡樹脂ブロック2の上下方向の表記は、コンクリートブロック1の中空部12に鉄筋(縦筋。図示省略。)を通し、グラウト材を充填して構造体(RM造)を構築するときの上下方向をいう。
【0020】
発泡樹脂ブロック2は、ポリスチレンフォーム等の任意の発泡樹脂製のもので、コンクリートブロック1の中央の中空部11を占める成形部材からなる。
【0021】
発泡樹脂ブロック2は、その下面が、コンクリートブロック1の下面と面一になるように装着されるとともに、発泡樹脂ブロック2の上面に、横筋支持用スペーサ21を、この横筋支持用スペーサ21の横筋支持面21aがコンクリートブロック1のウェブ13の上面13aより高い位置になるように、形成するようにしている。
これにより、発泡樹脂ブロック2のコンクリートブロック1に対する装着状態が安定するとともに、横筋(図示省略。)に対するグラウト材の十分なかぶり厚さを確保することができる。
ここで、グラウト材の十分なかぶり厚さは、20mm以上、好ましくは、30mm以上確保できるようにすることが望ましく、本実施例においては、発泡樹脂ブロック2の上面に対する横筋支持用スペーサ21の高さを22mmとし、横筋支持面21aがコンクリートブロック1のウェブ13の上面13aよりも約30mm高い位置になるようにしている。
また、横筋支持用スペーサ21の横筋支持面21aに、横筋を定位置に載置するための凹み(図示省略。)を設けることもできる。
【0022】
また、発泡樹脂ブロック2は、移動防止部として、ウェブ13の下面に当接する当接部22を備えるようにしている。
これにより、発泡樹脂ブロック2を装着した箇所以外のコンクリートブロック1の中空部(本実施例においては、コンクリートブロック1の両側の中空部12。)にグラウト材を打設した際に発泡樹脂ブロック2が浮き上がることを防止し、発泡樹脂ブロック2のコンクリートブロック1に対する装着状態が安定する。
【0023】
ところで、発泡樹脂ブロック2の移動防止部の形態は、コンクリートブロック1のウェブ13の下面に当接する当接部22に限定されず、
図4~
図5に示す、本発明のコンクリートブロックの変形実施例のように、フェイスシェル14の下面に当接するとともに、目地材によって支持される当接部23とすることもできる。
これにより、発泡樹脂ブロック2を装着した箇所以外のコンクリートブロックの中空部
(本実施例においては、コンクリートブロック1の両側の中空部12。)にグラウト材を打設した際に発泡樹脂ブロック2が浮き上がったり、発泡樹脂ブロック2上に横筋を載置した際に発泡樹脂ブロック2が沈み込んだりすることを防止し、発泡樹脂ブロック2のコンクリートブロック1に対する装着状態を安定させることができる。
【0024】
また、
図5に示すように、発泡樹脂ブロック2の下面にグラウト材が充填される長さ方向に延びる、深さ数mm~20mm程度の凹溝24を備えるようにすることができる。
これにより、発泡樹脂ブロック2とグラウト材の界面に水が浸入し、流動することを防止し、RM造の耐久性が低下することを防止することができる。
【0025】
このコンクリートブロックによれば、コンクリートブロック1の中空部11、12の一部を占めるように、発泡樹脂ブロック2をコンクリートブロック1の中空部11の開口11aから装着するようにしてなることから、発泡樹脂ブロック2を設けたコンクリートブロック1と、発泡樹脂ブロック2を設けないコンクリートブロック1とを併用する場合に、コンクリートブロック1の管理を容易に行うことができる。
そして、発泡樹脂ブロック2を設けたコンクリートブロック1を用いて構築したRM造の構築体は、高い耐久性と強度を有するRM造としての利点を享有しながら、例えば、ブロック塀のように、基礎の上に「片持ち」で構築された場合でも、地震時にグラウト材が全充填された構造体と比較して質量が小さい分、地震動による慣性力を小さくして倒壊を防ぐことができる。
【0026】
次に、本発明のコンクリートブロックを用いて構築したコンクリートブロック壁体の遮音性能を、以下の試験を行うことによって測定した。
試験は、
図1~
図3に示すコンクリートブロックを用いて構築した、
図6に示すコンクリートブロック壁体を用いて行った。
その試験結果を表1及び
図7に示す。
【0027】
【0028】
表1及び
図7に示す試験結果から、本発明のコンクリートブロック(発泡樹脂ブロック2を内蔵した厚み21cmのコンクリートブロック1)を用いて構築したコンクリートブロック壁体(壁体全体の体積:0.21m×2m×2m=0.84m
3、発泡樹脂ブロッ
ク2の体積:0.0036m
3×50個=0.18m
3、壁体全体の体積に対する発泡樹脂ブロック2の体積の占める割合:0.18m
3÷0.84m
3=0.21)は、優れた遮音性能(Rr-55(等級4)(厚み26cmの鉄筋コンクリート)相当の音響透過損(JIS A1419-1))を具備していることを確認した。
【0029】
以上、本発明のコンクリートブロック及びそれを用いたコンクリートブロック壁体について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、RM造の外、例えば、グラウト材を部分充填する補強コンクリートブロック造(建築基準法施行令第62条)にも適用できる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のコンクリートブロック及びそれを用いたコンクリートブロック壁体は、発泡樹脂ブロックを設けたコンクリートブロックと、発泡樹脂ブロックを設けないコンクリートブロックとを併用する場合に、コンクリートブロックの管理を容易に行うことができることから、RM造や補強コンクリートブロック造の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 コンクリートブロック
11 中空部
11a 開口
12 中空部
13 ウェブ
14 フェイスシェル
2 発泡樹脂ブロック
21 横筋支持用スペーサ
22 当接部(移動防止部)
23 当接部(移動防止部)
24 凹溝