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特開2023-139075半導体デバイスの製造方法および半導体デバイス並びにテンプレート基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139075
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】半導体デバイスの製造方法および半導体デバイス並びにテンプレート基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20230926BHJP
   C30B 29/38 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
H01L21/02 B
C30B29/38
H01L21/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114724
(22)【出願日】2023-07-12
(62)【分割の表示】P 2022512217の分割
【原出願日】2021-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2020060814
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】正木 克明
(72)【発明者】
【氏名】荒木 正浩
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡単な支持構造によって品質に優れた半導体素子層を実現する導体素子の製造方法及び半導体素子基板を提供する。
【解決手段】半導体素子の製造方法であり、第1開口部(K1)および第2開口部(K2)を含むマスク層(ML)が表面に配された下地基板(UK)上に、第1半導体層(SL1)と、第1半導体層(SL1)よりも厚みの大きな第2半導体層(SL2)とを形成する工程と、第1デバイス層(DL1)および第2デバイス層(DL2)を形成する工程と、第1デバイス層および第2デバイス層を支持基板(SK)に接合する工程と、を含む。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地基板上に、互いに隣接する2つの開口部が第1間隔をあけて位置する第1マスク部と、互いに隣接する2つの開口部が、前記第1間隔よりも大きい第2間隔をあけて位置する第2マスク部と、を有するマスク層を形成するマスク層形成工程と、
前記マスク層上に、半導体層を成長させて半導体素子を形成する素子形成工程と、
前記下地基板側に配設される接合面を有する支持基板を準備する準備工程と、
前記半導体素子の上面と、前記支持基板の前記接合面とを接合する接合工程と、
前記マスク層上に形成された半導体素子を前記下地基板から剥離する剥離工程と、を含む半導体素子の製造方法。
【請求項2】
前記接合工程は、
前記半導体素子の上面に金属層を形成する金属層形成工程と、
前記金属層形成工程で形成された前記金属層上に、前記接合面を対向させて前記支持基板を配置する支持基板配置工程と、
前記支持基板配置工程で前記支持基板が配置された状態で前記金属層を加熱して溶解し、前記支持基板の接合面に接合する金属層接合工程と、を有する請求項1に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項3】
前記金属層接合工程における前記金属層が、AuSn、AuGe、AuIn、InPdおよびInSnのうち1種以上を含んでいる、請求項2に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項4】
前記金属層接合工程における前記金属層が、AuSnおよびAuCuのうち1種以上を含んでいる、請求項2に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項5】
下地基板と、
前記下地基板の成長面上に形成された、前記成長面から垂直な方向に第1高さ寸法を有する第1半導体素子層と、
前記下地基板の成長面上に形成された、前記第1高さ寸法よりも高い第2高さ寸法を有する第2半導体素子層と、
前記第2半導体素子層の上面に接合された接合面を有する支持基板と、を含む半導体素子体。
【請求項6】
第1方向に隣り合う第1開口部および第2開口部を含むマスク層が表面に配された下地基板を準備する工程と、
前記下地基板上に、平面視で前記第1開口部と重なる第1半導体層を形成する工程と、
前記下地基板上に、平面視で前記第2開口部と重なり、前記第1半導体層よりも厚みの大きな第2半導体層を形成する工程と、
前記第1半導体層上に第1デバイス層を形成する工程と、
前記第2半導体層上に第2デバイス層を形成する工程と、
前記第1および第2デバイス層を支持基板に接合する工程と、を含む、半導体素子の製造方法。
【請求項7】
前記マスク層は、第1マスク部と、前記第1開口部を介して前記第1マスク部に隣接し、前記第1マスク部よりも幅広の第2マスク部と、前記第2開口部を介して前記第2マスク部に隣接する第3マスク部とを備える、請求項6に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項8】
前記マスク層において、前記第2開口部の第1方向と直交する方向の長さが、前記第1開口部の長さよりも小さい、請求項6に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項9】
前記第1デバイス層上に第1金属層を形成する工程と、
前記第2デバイス層上に第2金属層を形成する工程と、をさらに含み、
前記第1および第2金属層を溶融させた状態で支持基板に接触させることで、前記第1および前記第2金属層を介して、前記第1および第2デバイス層を前記支持基板に接合する、請求項6~8のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項10】
前記第1および第2デバイス層が支持基板に接合する際に、前記第1および第2半導体層と下地基板との結合力が弱まる、請求項9に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項11】
前記第1および第2デバイス層と支持基板との接合後においては、前記第2金属層が第1金属層よりも薄い、請求項9または10に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項12】
前記第1および第2デバイス層と支持基板との接合時に、前記第2半導体層および前記第2デバイス層がスペーサとして機能する、請求項9~11のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項13】
前記第1金属層は、前記第1デバイス層上の電極として機能する、請求項9~12のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項14】
前記第1および第2金属層は、前記支持基板上に位置する第3金属層と接合する、請求項9~13のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項15】
前記第1および第2デバイス層の上面は、前記支持基板に対して傾いている、請求項9~14のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項16】
前記第1および第2デバイス層を支持基板に接合した後に、前記第1および第2半導体層を前記下地基板から離隔する工程を行う、請求項6~15のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項17】
前記第1および第2半導体層を前記下地基板から離隔する前に、前記マスク層を除去する、請求項16に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項18】
前記第1および第2半導体層を前記下地基板から離隔する前に、前記第1半導体層および前記第1デバイス層を、複数の半導体素子部に分割する、請求項16に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項19】
前記第1および第2半導体層は窒化物半導体を含む、請求項6~18のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項20】
第1半導体層と、平面視で前記第1半導体層と重なる第1デバイス層と、前記第1デバイス層上に配された第1金属層と、第2半導体層と、平面視で前記第2半導体層と重なる第2デバイス層と、前記第2デバイス層上に配された第2金属層と、
前記第1および第2半導体層と接続した下地基板、または、前記第1および第2金属層と接合した支持基板と、を備え、
前記第1および第2デバイス層、並びに前記第1および第2半導体層は、窒化物半導体を含み、
前記第2半導体層の厚みは、前記第1半導体層の厚みよりも大きい、半導体素子基板。
【請求項21】
前記第2金属層の上面は、前記第1金属層の上面よりも高位置である、請求項20に記載の半導体素子基板。
【請求項22】
前記第2金属層は、前記第1金属層よりも厚みが小さい、請求項20に記載の半導体素子基板。
【請求項23】
前記第2金属層は、前記第2デバイス層の端面に接触する、請求項22に記載の半導体素子基板。
【請求項24】
前記第1デバイス層は発光機能を有し、前記第2デバイス層は発光機能を有していない、請求項23に記載の半導体素子基板。
【請求項25】
前記第1および第2半導体層の幅が異なる、請求項20~24のいずれか1項に記載の半導体素子基板。
【請求項26】
前記第1デバイス層の端面にレーザ光の出射面が含まれる、請求項20~25のいずれか1項に記載の半導体素子基板。
【請求項27】
前記第1金属層は、電極として機能する、請求項20~26のいずれか1項に記載の半導体素子基板。
【請求項28】
複数の領域を有し、各領域に前記第1および第2半導体層が設けられている、請求項20~27のいずれか1項に記載の半導体素子基板。
【請求項29】
前記第1半導体層および前記第1デバイス層を含む半導体素子部を複数備える、請求項20~28のいずれか1項に記載の半導体素子基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体素子の製造方法および半導体素子体並びに半導体素子基板に関する。
【背景技術】
【0002】
GaN基板に複数の開口を備える成長マスクを形成した後、GaN基板から成長し、成長マスク上に延在した複数の島状のGaN系半導体層を形成して、このGaN系半導体層をGaN基板から剥離する技術が知られている(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1には、下地基板のエピタキシャルラテラル成長(EpitaxialLateral Overgrowth;ELO)によって形成されたGaN半導体層と支持基板とを接合する際に、接合面の外周にスペーサを設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-251304号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の半導体素子の製造方法は、下地基板上に、互いに隣接する2つの開口部が、予め定める第1間隔をあけて位置する第1マスク部と、互いに隣接する2つの開口部が、前記第1間隔よりも大きい予め定める第2間隔をあけて位置する第2マスク部とを有するマスク層を形成するマスク層形成工程と、
前記マスク層上に、半導体層を成長させて半導体素子を形成する素子形成工程と、
前記下地基板と対向させる接合面を有する支持基板を準備する準備工程と、
前記半導体素子の上面と、前記支持基板の前記接合面とを接合する接合工程と、
前記マスク層上に形成された半導体素子を前記下地基板から剥離する剥離工程と、を含む。
【0006】
本開示の半導体素子体は、前記下地基板の成長面上に形成され、前記成長面から垂直な方向に予め定める第1高さ寸法を有する第1半導体素子層と、
前記下地基板の成長面上に形成され、前記第1高さ寸法よりも高い予め定める第2高さ寸法を有する第2半導体素子層と、
前記第2半導体素子層の上面に接合された接合面を有する支持基板と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の第1実施形態の半導体素子体の構成を示す断面図である。
図2図1の切断面線II-IIから見た半導体素子体の一部を示す断面図である。
図3】半導体素子の製造方法の基本的な製造手順を説明するための工程図である。
図4】(a)から(c)は、それぞれ第1実施形態に係る素子形成工程を示す断面図である。
図5】下地基板上に形成した半導体素子層の写真である。
図6】半導体素子層の上面の傾きを示すグラフである。
図7】第1実施形態に係る準備工程を示す断面図である。
図8】(a)および(b)は、それぞれ第1実施形態に係る接合工程を示す断面図である。
図9】第1実施形態に係る剥離工程を示す断面図である。
図10】(a)から(c)は、それぞれ本開示の第2実施形態に係る半導体素子体の素子形成工程を示す断面図である。
図11】本開示の第3実施形態の半導体素子体の構成を示す断面図である。
図12図11の切断面線XII-XIIから見た半導体素子体の断面図である。
図13】第4実施形態にかかる半導体素子の製造方法を示す断面図である。
図14】第4実施形態にかかるマスク層の構成例を示す平面図である。
図15】第4実施形態にかかるマスク層の別構成を示す平面図である。
図16】第4実施形態にかかる下地基板の構成例を示す断面図である。
図17】第4実施形態にかかる半導体素子基板の構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示に係る実施形態について、模式的に示した各図を参照しつつ説明する。
【0009】
図3に示されるように、本実施形態の半導体素子は、例えば、マスク層形成工程S1、素子形成工程S2、準備工程S3、接合工程S4および剥離工程S5を含む工程を経て製造できる。ただし、素子形成工程S2および準備工程S3は、この順に行わなくてもよい。例えば、素子形成工程S2および準備工程S3を並行して行ってもよい。
【0010】
以下、図1から図3を参照しながら説明する。
【0011】
マスク層形成工程S1では、マスク12を形成する。マスク12は第1マスク部121と第2マスク部122とを有する。第1マスク部121は、下地基板11上に、互いに隣接する2つの開口部12bが、予め定める第1間隔ΔL1をあけて位置している。第2マスク部122は、互いに隣接する2つの開口部が、第1間隔ΔL1よりも大きい、予め定める第2間隔ΔL2をあけて位置している。
【0012】
素子形成工程S2では、開口部12bから露出している成長面11a上から半導体結晶の結晶成長層である半導体素子層13を気相成長させる。本開示の半導体素子層13は、窒化物半導体層である。半導体素子層13は、マスク層12の各開口部12bから露出している各成長面11aに接続した接続部13bを有している。マスク層12上には、半導体層を成長させて半導体素子15を形成する。
【0013】
準備工程S3では、下地基板11側に配設される接合面16cを有する支持基板16を準備する。接合工程S4では、半導体素子15の上面15aと、支持基板16の接合面16cとを接合する。剥離工程S5では、マスク層12上に形成された半導体素子15を下地基板11から剥離する。
【0014】
(第1実施形態)
図4は、第1実施形態に係る素子形成工程を示す断面図である。図4(a)に示されるように、下地基板11を準備する。下地基板11としては、例えばGaNテンプレート基板を使用できる。下地基板11はオフ基板であり、下地基板11の成長面11aの法線は、a軸<11-20>方向から0.3°傾いている。本実施形態では、a軸に対するオフ角は0.3°であるが、オフ角が0.1°から1°の基板を用いることが可能である。ただし、オフ角の上限値は、デバイスによって平坦成長する範囲において、適宜選択される値であり、必ずしも1°ではなく、1°を超えて設定される場合もある。また、オフ角が、0.1°未満ではELO半導体層の剥離ができなくなるおそれがあるため、0.1°以上がよい。また、オフ角の上限値である1°は、標準的なLED基板オフ角であり、
【0015】
このような下地基板11には、例えば下地基板11の成長面11aが所定の面方向になるように、GaN単結晶インゴットから切り出したGaN基板を使用することが可能である。下地基板11としては、窒化物半導体基板であればよい。また、窒化物半導体中に不純物がドーピングされたn型基板またはp型基板であってもよい。
【0016】
ここで、「窒化物半導体」は、例えば、AlGaInN(0≦X≦1;0≦Y≦1;0≦Z≦1;X+Y+Z=1)によって構成されてもよい。また、GaNテンプレート基板としては、例えばサファイア、SiまたはSiCを下地として用いることができる。
【0017】
次に、下地基板11上にマスク層12を形成する。マスク層12の材料は、例えば、例えば、酸化シリコン(例えばSiOなど)、窒化シリコン(SiN)または高融点金属(Ti,Wなど)であればよい。マスク層12は、例えば、PCVD(Plasma Chemical Vapor Deposition)法などによって形成すればよい。本開示では、例えば、成長面11aの上にSiO層を100nm程度積層する。続いて、フォトリソグラフィー法とバッファードフッ酸(Buffered Hydrogen Fluoride;BHF)とによるウェットエッチングなどによって、例えばSiO層をパターニングする。その結果、図4(a)に示されるマスク層12を形成する。
【0018】
マスク層12は、例えば、紙面に垂直方向に長い帯状部12aを所定の間隔で複数本平行に並べたストライプ状である。本開示の隣り合う帯状部12aの間の開口部12bの幅は、例えば5μm程度である。帯状部12aの幅は、例えば50μm~200μm程度である。また、開口部12bの幅は、例えば2μm~20μm程度である。
【0019】
マスク層12を形成するための材料としては、SiOのほか、気相成長によって、マ
スク材料から半導体層が成長しにくい材料であればよい。マスク材料は、例えば、パターニングが可能なZrO、TiOまたはAlOなどの酸化物、あるいは、WまたはC
rなどの遷移金属を使用することもできる。また、マスク12の積層方法は、蒸着法、スパッタリング、または塗布硬化など、マスク材料に適合した方法を適宜用いることが可能である。
【0020】
続いて、図4(b)に示されるように、開口部12bから露出している成長面11a上から半導体結晶の結晶成長層である半導体素子層13を気相成長させる。本開示の半導体素子層13は、窒化物半導体層である。
【0021】
結晶成長方法は、III族原料に塩化物を用いる塩化物輸送法による気相成長VPE(Vapor Phase Epitaxy)または、III族原料に有機金属を用いるMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を用いることが可能である。成長工程中にIII族元素の原料ガスの割合、不純物の原料ガスの割合などを変化させて、半導体素子層13をLED(Light Emitting Diode)またはLD(Laser Diode)として機能する多層膜として形成することも可能である。
【0022】
成長した結晶がマスク層12の開口部12bを超えると、マスク層上面12cに沿って横方向にも結晶を成長させる。結晶成長は、成長面11aから成長した半導体素子層13が、隣り合う半導体素子層13と互いに重なる前に終了する。このようにして、窒化物半導体をELO(Epitaxial Lateral Overgrowth)法によって成長させた半導体素子層13を得る。半導体素子層13の幅は、例えば、50μm~200μm程度であり、高さは10μm~50μm程度である。
【0023】
図5は下地基板11上に形成した半導体素子層13の具体例を示す写真であり、上述の方法でマスク層12の上に形成した半導体素子層13を上面から見たものである。図6は半導体素子層13の上面の傾きを示すグラフであり、図1に示される半導体素子層13の上面と基準面との距離を測定した測定結果を示す。
【0024】
帯状に形成された半導体素子層13の幅Wは35μmであり、幅方向において、右端側は、左端側よりも高く、両端の高低差は150nmである。半導体素子層13の第1面13a(上面)の傾斜角は、0.25°である。この半導体素子層13の成長に使用された下地基板11のオフ角は0.22°であり、第1面13aの傾斜角は、下地基板11のオフ角に対応したものとなっている。
【0025】
このように、下地基板11にオフ角をつけて半導体素子層13を成長させることは、品質に優れた結晶性の半導体素子層13を実現する上で好ましい。半導体素子層13は、第1面13aと第1面13aの反対側に位置している第2面13cとを有している。
【0026】
半導体素子層13を成長させた後、図4(b)に示されるように、半導体素子層13の第1面13aに金属層14を形成する。まず、下地基板11、マスク層12および半導体素子層13の上面全体をフォトレジスト膜で覆う。その後、フォトリソグラフィー法を用いて半導体素子層13の第1面13aが露出するように、開口部12bを設ける。その後、開口部12bにおいて、Cr層と、金と錫の合金であるAuSn層とを順に蒸着する。その後、リフトオフ法によって、不要な金属層をフォトレジスト膜とともに除去して、金属層14を形成する。この金属層14の厚さは、1μm~5μm程度である。
【0027】
金属層14を形成後、下地基板11、下地基板11上に形成したマスク層12、半導体素子層13および金属層14を、BHFに10分間程度浸漬し、マスク層12を除去する。これによって、図4(c)に示されるように、下地基板11上に半導体素子15が形成される。半導体素子15と下地基板11とは、マスク層12の開口部12bに成長した半導体素子層13の一部である接続部13bを介して下地基板11に繋がっている。接続部13bは、例えば、柱状のである。金属層14は、半導体素子15の電極として使用することができる。
【0028】
ただし、半導体素子15の構成によっては、金属層14は、必ずしも電極として使用しなくてもよい。半導体素子15の上面15aは、半導体素子層13の第1面13aと同様に傾いている。半導体素子層13は第1面13aとその反対側に位置している第2面13cとを有する。
【0029】
図7は、第1実施形態に係る準備工程を示す断面図である。続いて、半導体素子15に接続するための支持基板16を準備する。支持基板16は、基体16aとしてシリコン基板を用いる。基体16aの一方の面にAuなどの酸化されにくい金属層16bが位置しており、下地基板11に対向する金属層16bの表面が接合面16cである。金属層16bによって、半導体素子15の支持基板16への接合が容易になる。金属層16bはAu以外ではPtまたはPdなどの酸化されにくい貴金属材料またはそれを主成分とする材料を用いることができるが、これらに限定されない。
【0030】
続いて、基板接合装置(図示せず)を用いて半導体素子15を支持基板16に接続する。まず、下地基板11の成長面11aと、支持基板16の接合面16cとが平行になるように、下地基板11と支持基板16とを基板接合装置に取付ける。
【0031】
図8は、第1実施形態に係る接合工程を示す断面図である。続いて、図8(a)に示されるように、上記の金属層14を形成する工程で形成された金属層14上に、接合面16cを対向させた状態で支持基板16を配置し、支持基板16の接合面16cと半導体素子15の上面15aとを接触させる。上述のように、半導体素子層13の第1面13aは傾斜しているので、その上に形成される金属層14の上面である、半導体素子15の上面15aも傾斜している。
【0032】
続いて、図8(b)に示されるように、支持基板16を加圧して、金属層14を支持基板16に密着加圧させた後、300℃に加熱して、AuSn接合を行う。ただし、この金属層14による接合は、AuSn接合に限定されず、AuSnと同様に低融点の他の材料(例えば、AuIn、AuGe、InPdまたはInSnなど)を用いた各種の接合方法が可能である。また、ヒートシンクとして機能する熱伝導性に優れたAuSnおよびAuCuのうち1種以上を含んでいる金属層14による接合を行ってもよい。このとき、半導体素子15の上面15aの全面が接合面16cに対して当接するように半導体素子15が変位する。これにより、半導体素子層13の接続部13bに大きな応力が発生して接続部13bが破断させてもよい。
【0033】
図9は第1実施形態に係る剥離工程を示す断面図である。基板接合装置等によって、下地基板11および支持基板16などを冷却後、基板接合装置から下地基板11および支持基板16を取り出す。この際、半導体素子15は、支持基板16上に接合しており、また、接続部13bは破断しているので、下地基板11を容易に剥離することができる。図面では柱状の接続部13bは、半導体素子層13に付着している。接続部13bは、破断の状況に応じて、下地基板11側、半導体素子15側またはその両方に残存することが考えられる。このため、剥離後、半導体素子15に残った接続部13bは、研磨などで取り除いてもよい。
【0034】
上記の方法で接合、剥離した半導体素子体17において、支持基板16の表面である接合面16cに対して半導体素子層13の第1面13aは平行である。一方、半導体素子層13の第2面13cは、半導体素子層13の第1面13aの傾斜に対応して、支持基板16の表面に対して傾斜している。ここで、半導体素子層13の第1面13aは支持基板16の表面に対して、例えば0.5°未満の傾斜であれば平行であるとみなす。
【0035】
このように、第1実施形態の半導体素子体17は、支持基板16と、第1面13aと第1面13aに対して反対側に位置する第2面13cとを有し、第1面13aの側が支持基板16に固定されている。そして、半導体素子体17は、第2面13cが支持基板16の表面に対して傾斜している半導体素子層13を備えている。これにより、簡単な支持構造によって品質に優れた半導体素子層13を実現させることができる。
【0036】
このように、半導体素子15には、下地基板11の成長面11aに対して傾いた上面15aが形成されているので、接合工程S3で加圧したとき、柱状の接続部13bの端部にせん断応力が集中してせん断される。したがって、超音波などによって、下地基板11の表面に垂直方向に別途大きな力を加えなくても、加圧するだけで半導体素子15を下地基板11から分離することができる。このように、半導体素子15に過大な力を加えなくても、半導体素子15を確実に支持基板16に転写できるので、半導体素子15の歩留まりを向上させることができる。
【0037】
(第2実施形態)
図10は本開示の第2実施形態の半導体素子体の素子形成工程を示す断面図である。図10(a)に示されるように、まず、下地基板21を準備する。下地基板21としては、第1実施形態と同様に、GaNテンプレート基板を使用する。ただし、下地基板21の成長面21aの結晶面にオフ角はない。第1実施形態と同様の工程で、マスク層22を形成する。マスク層22の帯状体22aの開口部22bを通して成長面21aが露出している。
【0038】
次に、図10(b)に示されるように、第1実施形態と同様に、帯状体22aの開口部22bから露出している成長面20a上から窒化物半導体の結晶成長層である半導体素子層23を気相成長させる。その後、半導体素子層23の第1面23aにAuSn合金などの金属層24を形成する。
【0039】
続いて、図10(c)に示されるように、下地基板21上のマスク層22をエッチングして下地基板21上に半導体素子25を形成する。半導体素子層23の第1面23aおよび半導体素子25の上面25aは、下地基板21の成長面21aとほぼ平行である。第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、半導体素子層23は第1面23aとその反対側に位置している第2面23cとを有する。
【0040】
(第3実施形態)
図11は、本開示の第3実施形態の半導体素子体の構成を模式的に示す断面図である。図12は、図11の切断面線XII-XIIから見た半導体素子体の断面図である。前述の各実施形態と対応する部分には、同一の参照符を付し、重複する説明は省略する。前述の実施形態では、開口部12bがストライプ状に平行に延びる構成について述べたが、本開示の他の実施形態では、支持基板16の下地基板11に対するスペーサとして用いられる半導体素子層13を形成する部分には、<1-100>方向(例えば、図12の上下方向)に一定の間隔をあけて開口部12b1を形成してもよい。このような開口部12b1によれば、前述の犠牲層となる半導体素子層13を作らずに済み、無駄な半導体の結晶成長を行わず、生産性を向上することができる。
【0041】
以上のように、本開示の半導体素子の製造方法は、下地基板上に、互いに隣接する2つの開口部が、予め定める第1間隔をあけて位置する第1マスク部と、互いに隣接する2つの開口部が、前記第1間隔よりも大きい予め定める第2間隔をあけて位置する第2マスク部とを有するマスク層を形成するマスク層形成工程と、
前記マスク層上に、半導体層を成長させて半導体素子を形成する素子形成工程と、
前記下地基板と対向させる接合面を有する支持基板を準備する準備工程と、
前記半導体素子の上面と、前記支持基板の前記接合面とを接合する接合工程と、
前記マスク層上に形成された半導体素子を前記下地基板から剥離する剥離工程と、を含む。
【0042】
スペーサをエピタキシャル気相成長によるGaN半導体層の形成に用いた場合、GaN半導体層の高さのばらつきは面内分布を持つ。このため、面内全体に同じ高さのスペーサを用いると、場所によって接合層のGaN半導体層からのはみ出し量が異なる。接合層のはみ出し量が多い場合には、例えばGaN半導体層によって構築される半導体素子が半導体レーザであれば、接合層のはみ出し部分によって半導体素子の出射端面が覆われることもあり、製造上の歩留まりが低下することがあり得る。そこで、製造上の歩留まりが向上し得る半導体素子の製造方法および半導体素子体が望まれる。
【0043】
本開示の半導体素子の製造方法によれば、下地基板上でのマスク層は第1マスク部よりも間隔の大きい第2マスク部での半導体素子層の成長速度が速く、半導体素子層の厚みを大きくすることができる。これにより、半導体素子層の上面と支持基板の接合面との間の金属層のはみ出し量を一定に保つことができ、製造上の歩留まりが向上し得る。
【0044】
(第4実施形態)
図13は、第4実施形態にかかる半導体素子の製造方法を示す断面図である。図14は、第4実施形態にかかるマスク層の構成例を示す平面図である。図13および図14に示すように、第4実施形態にかかる半導体素子の製造方法は、第1方向(X方向)に隣り合う第1開口部K1および第2開口部K2を含むマスク層MLが表面に配された下地基板UKを準備する工程と、下地基板UK上に、例えばELO法を用いて、平面視で第1開口部K1と重なる第1半導体層SL1を形成する工程と、下地基板UK上に、例えばELO法を用いて、平面視で第2開口部K2と重なり、第1半導体層SL1よりも厚みの大きな第2半導体層SL2を形成する工程とを含む。第1および第2半導体層SL1・SL2を同じ成膜プロセス(例えば、ELOプロセス)で形成してもよい。
【0045】
マスク層MLは、第1マスク部M1と、第1開口部K1を介して第1マスク部M1に隣接し、第1マスク部M1よりも幅広の第2マスク部M2と(W1<W2)、第2開口部K2を介して第2マスク部M2に隣接する第3マスク部M3とを備える。第1および第2開口部K1・K2は、X方向と直交するY方向(第2方向)を長手方向とするスリット状である。下地基板UKとマスク層MLを合わせ持つ基板をテンプレート基板TSと称する場合がある。下地基板UK並びに第1および第2半導体層SL1・SL2は、例えば窒化物半導体を含む。第1および第2開口部K1・K2は、下地基板UKの上面(シード部)を露出させ、第1および第2半導体層SL1・SL2の成長を開始させる成長開始用ホールの機能を有し、マスク部M1~M3は、第1および第2半導体層SL1・SL2を横方向成長させる選択成長用マスクの機能を有する。マスク部と開口部は、マスク体がある部分とない部分という意味であり、マスク部が層状であるかは問わない。また、各開口部の全体がマスク部に囲まれていなくてもよい。
【0046】
図13および図14における幅方向はX方向であり、例えば、第3マスク部M3の幅W3は第2マスク部M2の幅W2と等しく、第1および第2開口部K1・K2の幅は等しい。この工程では、原料供給が多くなる第2半導体層SL2の厚みは、第1半導体層SL1の厚みよりも大きくなる。また、第1および第2半導体層SL1・SL2の組み合わせ構成を面内に周期的に配置することで、第1半導体層SL1の厚みが大きくなる領域では第2半導体層SL2の厚みも大きく、第1半導体層SL1の厚みが小さくなる領域では第2半導体層SL2の厚みも小さくなり、面内において、第1および第2半導体層SL1・SL2の厚みの差(高低差)が均一化される。なお、第2半導体層SL2の幅(X方向の長さ)は、第1半導体層SL1の幅よりも大きくてもよい。
【0047】
第1および第2半導体層SL1・SL2を形成した後に、第1半導体層SL1上に第1デバイス層DL1を形成する工程と、第2半導体層SL2上に第2デバイス層DL2を形成する工程とを行う。これにより、半導体素子基板HK1が形成される。第1および第2デバイス層DL1・DL2を同じ成膜プロセスで形成してもよい。第1および第2デバイス層DL1・DL2それぞれが、n型半導体層、活性層およびp型半導体層を含む構成とすることができる。
【0048】
第1および第2デバイス層DL1・DL2を形成した後に、第1デバイスDL1上に第1金属層CL1を形成する工程と、第2デバイス層DL2上に第2金属層CL2を形成する工程とを行う。第1および第2金属層CL1・CL2を同じ成膜プロセスで形成してもよい。例えば、第1および第2デバイス層DL1・DL2の厚みは同程度であるため、第2金属層CL2の上面位置は、第1金属層CL1の上面よりも高位置となる。
【0049】
第1および第2金属層CL1・CL2を形成した後に、第1および第2金属層CL1・CL2を溶融させた状態で支持基板SKに接触させ、その後に硬化させることで、第1および第2デバイス層DL1・DL2を、第1および第2金属層CL1・CL2を介して、支持基板SKに接合する工程を行う。接合時には、第2半導体層SL2および第2デバイス層DL2がスペーサとして機能し、第2金属層CL2は第1金属層CL1よりも薄くなる。
【0050】
第2金属層CL2が第2デバイス層DL2の端面(X方向またはY方向に平行な法線を有する面)に接触してもよい。第2金属層CL2によって、支持基板SKとの接合強度が高められる。なお、第1デバイス層DL1の端面(例えばY方向に平行な法線を有する面)にレーザ光の出射面が含まれていてもよい。上述のように、面内において、第1および第2半導体層SL1・SL2の厚みの差(高低差)が均一化されることで、第1金属層CL1が第1デバイス層DL1の端面に接触するおそれが低減する。第2半導体層SL2および第2デバイス層DL2は(半導体層素子として使用しない)犠牲層とすることもできるが、これに限定されない。第2デバイス層DL2の構成によっては半導体素子として使用できる場合がある。
【0051】
さらに、第1および第2デバイス層DL1・DL2が支持基板SKに接合する際に、第1および第2半導体層SL1・SL2に応力がかかり、固定された下地基板UKと第1および第2半導体層SL1・SL2との結合力が弱まる(例えば、結合部が破断)する。
【0052】
第1および第2金属層CL1・CL2を、支持基板SK上に位置する第3金属層KLに接合してもよい。第1金属層CL1は第1デバイス層DL1上の電極(アノードあるいはカソード)であってもよい。
【0053】
例えば、第1および第2デバイス層DL1・DL2と支持基板SKとの接合時に、第1および第2金属層CL1・CL2それぞれの上面が支持基板SKに対して0.05°~5°程度傾いていてもよい。この傾きは、例えば、下地基板UKのオフ角に起因するものであり、第1および第2デバイス層DL1・DL2が支持基板SKに接合する際に、第1および第2半導体層SL1・SL2に効果的に上向きの応力が生じる。
【0054】
支持基板SKを接合した後に、第1および第2半導体層SL1・SL2を下地基板UKから離隔する工程を行う。これにより、半導体素子基板HK2が形成される。第1および第2半導体層SL1・SL2を離隔する前に、マスク層ML(第1~第3マスク部M1~M3)をエッチング等によって除去してもよい。マスク層MLと第1および第2半導体層SL1・SL2はファンデルワールス力もしくは構成元素の相互拡散により密着する場合があるため、マスク層MLを除去することによって容易に第1および第2半導体層SL1・SL2を離隔することができる。なお、本開示では、支持基板SKを接合した後に、マスク層MLを除去している。
【0055】
なお、マスク層ML(第1~第3マスク部M1~M3)は、支持基板SKを接合するより前にエッチング等によって除去してもよい。接合する前はマスク層MLが表面に露出しているためウェットエッチングによって半導体素子基板全面のマスク層MLを容易に除去できる。また、第1および第2半導体層SL1・SL2を離隔する前に、第1半導体層SL1および第1デバイス層DL1を、Y方向に並ぶ複数の半導体素子部に分割しておいてもよい。
【0056】
図15は、第4実施形態にかかるマスク層の別構成を示す平面図である。マスク層MLは図14に限定されない。例えば図15のように、第2開口部K2の第1方向(X方向)と直交するY方向の長さが、第1開口部K1の長さよりも小さい構成でもよい。第2開口部K2は、例えば、スリット状の第1開口部K1に隣接するマスク部M4に形成され、例えば、第1および第2開口部K1・K2の幅は等しい。
【0057】
この場合、第2開口部K2上に成長する(X方向よりもZ方向の成長が速い)第2半導体層SL2の厚みは、第1半導体層SL1の厚みよりも大きくなる。そして、第1半導体層SL1の厚みが大きくなる領域では、第2半導体層SL2の厚みも大きく、第1半導体層SL1の厚みが小さくなる領域では第2半導体層SL2の厚みも小さくなり、面内において、第1および第2半導体層SL1・SL2の厚みの差(高低差)が均一化される。図15では、第2半導体層SL2の幅(X方向の長さ)は、第1半導体層SL1の幅よりも小さい。
【0058】
第4実施形態では、下地基板UKが窒化物半導体(GaN系半導体、AlN、InN、AlInN、BN等)を含み、第1および第2半導体層SL1・SL2が、窒化物半導体、例えばGaN系半導体(GaN、AlGaN、InGaN、AlInGaN等)を含む構成でもよい。この場合、第1および第2半導体層SL1・SL2の厚み方向(Z方向)を窒化物半導体の<0001>方向(c軸方向)、第1および第2開口部K1・K2が並ぶ第1方向(X方向)を窒化物半導体の<11-20>方向(a軸方向)、Y方向を、窒化物半導体の<1-100>方向(m軸方向)とすることができる。
【0059】
図16は、第4実施形態にかかる下地基板の構成例を示す断面図である。下地基板UKは、GaNのバルク結晶から切り出したGaNウエハでもよいし、SiCのバルク結晶から切り出したSiCウエハ(六方晶系の、6H-SiCあるいは4H-SiC)でもよい。バルク結晶から下地基板UKを切り出す際にオフ角を付けてもよい。
【0060】
下地基板UKが、GaN系半導体と格子定数が異なる異種基板1と、異種基板1上に形成された下地層4(シード層)とを有する構成でもよい。この場合、異種基板1をシリコン基板、下地層4をAlNあるいは炭化シリコン(6H-SiCあるいは4H-SiC)としてもよいし、異種基板1を炭化シリコン基板、下地層4をGaN系半導体あるいはAlNとしてもよい。
【0061】
下地基板UKが、異種基板1と、異種基板1上に形成された下地層4とを有し、下地層4が、下層側のバッファ層2と、バッファ層2上に形成されたシード層3とを有する構成でもよい。この場合、異種基板1をシリコン基板とし、バッファ層2がAlNおよび炭化シリコンの少なくとも一方を含む構成とし、シード層3をGaN系半導体としてもよい。バッファ層2にBN(窒化ホウ素)、シード層3にAlNを用いてもよい。図16の異種基板1の上面がオフ角を有していてもよい。
【0062】
図13の半導体素子基板HK1は、窒化物半導体を含む第1半導体層SL1と、平面視で第1半導体層SL1と重なる第1デバイス層DL1と、第1デバイス層DL1上に配された第1金属層CL1と、窒化物半導体を含む第2半導体層SL2と、平面視で第2半導体層SL2と重なる第2デバイス層DL2と、第2デバイス層DL2上に配された第2金属層CL2とを含む。第2半導体層SL2の厚みは、第1半導体層SL1の厚みよりも大きい。
【0063】
半導体素子基板HK1は、第1および第2半導体層SL1・SL2と接続した下地基板UKを有しており、第1および第2デバイス層DL1・DL2は窒化物半導体(例えば、GaN系半導体)を含む。第1および第2半導体層SL1・SL2が同じ窒化物半導体(例えば、GaN)を含んでいてもよい。第1および第2デバイス層DL1・DL2は同程度の厚みであるため、第2金属層CL2の上面は、第1金属層CL1の上面よりも高位置となる。半導体素子基板HK1には、下地基板UKと第1および第2半導体層SL1・SL2とに接するマスク層MLが設けられる。
【0064】
図13の半導体素子基板HK2は、窒化物半導体を含む第1半導体層SL1と、平面視で第1半導体層SL1と重なる第1デバイス層DL1と、第1デバイス層DL1上に配された第1金属層CL1と、窒化物半導体を含む第2半導体層SL2と、平面視で第2半導体層SL2と重なる第2デバイス層DL2と、第2デバイス層DL2上に配された第2金属層CL2とを含む。第2半導体層SL2の厚みは、第1半導体層SL1の厚みよりも大きい。
【0065】
半導体素子基板HK2は、第1および第2金属層CL1・CL2を介して、第1および第2デバイス層DL1・DL2と接合する支持基板SKを有しており、第1および第2デバイス層DL1・DL2は窒化物半導体(例えば、GaN系半導体)を含む。第1および第2半導体層SL1・SL2が同じ窒化物半導体(例えば、GaN)を含んでいてもよい。
【0066】
半導体素子基板HK2では、第2金属層CL2の厚みが、第1金属層CL1の厚みよりも小さい構成とすることができる。また、第2金属層CL2が、第2デバイス層DL2の端面T2に接触してもよい。第1デバイス層DL1は発光機能を有し、第2デバイス層DL2は犠牲層である(発光機能を有していない)構成でもよい。支持基板SK上に第3金属層KLが位置し、第1および第2金属層CL1・CL2が第3金属層KLと接合する構成でもよい。支持基板SKが実装基板(TFT基板等の駆動基板)であってもよい。
【0067】
半導体素子基板HK1・HK2では、第1および第2半導体層SL1・SL2が、窒化物半導体の<11-20>方向(X方向)に並んでいてもよい。第1半導体層SL1および第1デバイス層DL1が半導体素子部(例えば、発光素子部)を構成してもよい。第1デバイス層DL1の端面T1にレーザ光の出射面が含まれてもよい。第1金属層CL1は電極、例えばアノードとして機能してもよい。
【0068】
図17は、第4実施形態にかかる半導体素子基板の構成例を示す平面図である。図17に示すように、半導体素子基板HK1・HK2が複数の領域ARを有し、各領域ARに、第1半導体層SL1および第1デバイス層DL1並びに第2半導体層SL2および第2デバイス層DL2が設けられる構成でもよい。また、半導体素子基板HK1・HK2が、複数の半導体素子部HB(それぞれが第1半導体層SL1および第1デバイス層DL1を含む)を備える構成でもよく、複数の半導体素子部HBが、X方向およびY方向の少なくとも1方向に並んでいてもよい。
【0069】
以上、本開示について詳細に説明したが、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更、改良等が可能である。
【符号の説明】
【0070】
11 下地基板
13 半導体素子層
13a 第1面
13b 接続部
13c 第2面
14 金属層
15 半導体素子
15a 上面
16 支持基板
16c 接合面
17 半導体素子体
S1 マスク層形成工程
S2 素子形成工程
S3 準備工程
S4 接合工程
S5 剥離工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2023-08-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に隣り合う第1シード部および第2シード部が表面に配された下地基板と、平面視で前記第1シード部と重なる第1半導体層と、平面視で前記第2シード部と重なり、前記第1半導体層よりも厚みの大きな第2半導体層とを備える第1基板を準備する工程と
前記第1半導体層上に位置する第1デバイス層および前記第2半導体層上に位置する第2デバイス層を形成する工程と、を含む、半導体デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記第1デバイス層上に位置する第1金属層および前記第2デバイス層上に位置する第2金属層を形成する工程を含む、請求項1に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第1および第2デバイス層を、前記第1および第2金属層を介して第2基板に接合した後に、前記第1および第2半導体層を前記下地基板から離隔する工程を行う、請求項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項4】
互いに離隔した第1半導体層および第2半導体層と、平面視で前記第1半導体層と重なる第1デバイス層および第1金属層と、平面視で前記第2半導体層と重なる第2デバイス層と、第2金属層と、前記第1金属層および第2金属層と接合する支持基板と、を備え、
記第1半導体層および第2半導体層は、窒化物半導体を含み、
前記第2半導体層の厚みは、前記第1半導体層の厚みよりも大きい、半導体デバイス
【請求項5】
前記第1金属層および前記第1デバイス層の界面と、前記第2金属層および前記第2デバイス層の界面とを含み、
前記第2金属層および前記第2デバイス層の界面は、前記第1金属層および前記第1デバイス層の界面よりも前記支持基板に近い、請求項に記載の半導体デバイス
【請求項6】
前記第2金属層は、前記第1金属層よりも厚みが小さい、請求項4または5に記載の半導体デバイス
【請求項7】
前記第2金属層は、前記第2デバイス層の端面に接触する、請求項4~6のいずれか1項に記載の半導体デバイス
【請求項8】
前記第1デバイス層は発光機能を有し、前記第2デバイス層は発光機能を有していない、請求項4~7のいずれか1項に記載の半導体デバイス
【請求項9】
前記第1および第2半導体層の幅が異なる、請求項4~8のいずれか1項に記載の半導体デバイス
【請求項10】
前記第1デバイス層の端面にレーザ光の出射面が含まれる、請求項4~9のいずれか1項に記載の半導体デバイス
【請求項11】
前記第1金属層は、電極として機能する、請求項4~10のいずれか1項に記載の半導体デバイス
【請求項12】
複数の領域を有し、各領域に前記第1および第2半導体層が設けられている、請求項4~11のいずれか1項に記載の半導体デバイス
【請求項13】
前記第1半導体層および前記第1デバイス層を含む半導体素子部を複数備える、請求項4~12のいずれか1項に記載の半導体デバイス
【請求項14】
前記第1金属層の厚みは、前記第1半導体層と前記第2半導体層の厚みの差以上である、請求項4~13のいずれか1項に記載の半導体デバイス。
【請求項15】
下地基板を備え、
前記下地基板の表面に、窒化物半導体の成長起点となる第1シード部と、前記第1シード部から第1方向に離隔した第2シード部と、前記第1シード部を介して前記第1方向に隣り合う第1非シード部および第2非シード部と、前記第2シード部を介して前記第2非シード部と隣り合う第3非シード部とを備え、前記第2非シード部は、前記第1非シード部よりも前記第1方向の長さが大きい、テンプレート基板。
【請求項16】
下地基板を備え、
前記下地基板の表面に、窒化物半導体の成長起点となる第1シード部と、前記第1シード部から第1方向に離隔した第2シード部と、前記第1シード部および第2シード部の間に位置する、非シード部とを含み、前記第2シード部は、前記第1シード部よりも前記第1方向と直交する第2方向の長さが小さい、テンプレート基板。
【請求項17】
前記第1シード部および前記第2シード部の第1方向の長さが等しい、請求項15または16に記載のテンプレート基板。