IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ ニューヨーク ステム セル ファウンデーションの特許一覧

特開2023-139077マイクロ流体システムおよびその使用の方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139077
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】マイクロ流体システムおよびその使用の方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20230926BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20230926BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230926BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20230926BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20230926BHJP
   A61K 35/33 20150101ALI20230926BHJP
   A61K 35/545 20150101ALI20230926BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20230926BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230926BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230926BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20230926BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230926BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230926BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230926BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230926BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230926BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230926BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230926BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230926BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230926BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20230926BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20230926BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230926BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20230926BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230926BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12M1/34 B
C12N5/10
C12M1/26
C12M3/00 A
A61K35/33
A61K35/545
A61K35/12
A61P43/00 105
A61P9/10
A61P9/04
A61P9/00
A61P1/16
A61P25/16
A61P25/28
A61P3/10
A61P35/00
A61P19/02
A61P17/02
A61P37/04
A61P7/06
A61P25/14
A61P21/00
A61P25/02
A61P43/00 111
A61P3/00
A61P25/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114807
(22)【出願日】2023-07-13
(62)【分割の表示】P 2019526461の分割
【原出願日】2017-11-17
(31)【優先権主張番号】62/424,208
(32)【優先日】2016-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
(71)【出願人】
【識別番号】514136314
【氏名又は名称】ニューヨーク ステム セル ファウンデーション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ノッグル スコット
(72)【発明者】
【氏名】チャン スティーブン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】細胞をリプログラミングし、増殖させ、保存し、かつ任意で分化させるためのマイクロ流体システムおよび方法を提供する。
【解決手段】マイクロ流体チップ技術を利用して、細胞を含む患者試料を受け入れ、細胞を増殖させ、増殖させた細胞をリプログラミングし、次いでリプログラミングされた細胞をマイクロ流体チップ中に保存する、統合マイクロ流体システムを提供する。リプログラミングされた細胞を保存したこれらのマイクロ流体チップは次いで、特定の細胞型への遺伝的分化の状況で用いられ得る。全体として、このシステムおよびワークフローは、下流での診断用途または治療用途ためにあらゆる患者由来のiPSCの作製を可能にする、病院ベースの装置として適している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物試料を処理するためのマイクロ流体システムであって、
(a)該試料を処理するように動作可能な1つまたは複数のマイクロ流体ユニットであって、処理が、
(i)該試料から細胞を単離する工程、
(ii)任意で、単離された細胞を増殖させて増殖させた細胞の集団を生成する工程、
(iii)単離された細胞または増殖させた細胞をリプログラミングする工程、および
(iv)(i)、(ii)、または(iii)の1つまたは複数由来の細胞を保存する工程
を含む、マイクロ流体ユニット;ならびに
(b)処理(i)~(iv)の1つまたは複数を制御するための指示を含む、1つまたは複数のコンピュータメモリモジュール;ならびに
(c)指示を実行するように構成された、1つまたは複数のコンピュータプロセッサモジュール
を含む、マイクロ流体システム。
【請求項2】
(i)の単離された細胞、(ii)の増殖させた細胞、(iii)のリプログラミングされた細胞、またはそれらの組み合わせの解析を実施するようにさらに動作可能である、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
1つまたは複数のマイクロ流体ユニットが、iPSCを分化させて所望の細胞型の細胞を生成するようにさらに動作可能である、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
所望の細胞型の細胞に対する解析を実施するようにさらに動作可能である、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
所望の細胞型の細胞を保存するようにさらに動作可能である、請求項3記載のシステム。
【請求項6】
単離された細胞が体細胞である、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
単離された細胞が白血球である、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記試料が、全血、血液画分、血清、血漿、尿、汗、リンパ液、糞便、腹水、精液、痰、乳頭吸引液、術後漿液腫、創傷ドレナージ液、唾液、滑液、腹水液、骨髄穿刺液、脳脊髄液、鼻汁、羊水、気管支肺胞洗浄液、胸水、末梢血単核球、皮膚細胞、総白血球、リンパ節細胞、脾臓細胞、皮膚生検材料、臍帯血、臍帯組織、および扁桃腺細胞から選択される、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
解析が、画像解析、細胞数解析、細胞表面マーカー解析、サイトカイン分泌解析、細胞形態解析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)解析、配列解析、DNA解析、RNA解析、遺伝子発現プロファイリング、プロテオーム解析、メタボローム解析、イムノアッセイ、核排除解析、またはそれらの組み合わせを含む、請求項2記載のシステム。
【請求項10】
細胞を保存する工程が、細胞を凍結することを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項11】
グラフィカルユーザーインターフェースをさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項12】
少なくとも2つ、3つ、または4つのマイクロ流体ユニットを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項13】
マイクロ流体ユニットが無線でまたは電気的に連結される、請求項12記載のシステム。
【請求項14】
マイクロ流体ユニットが流体連結される、請求項12記載のシステム。
【請求項15】
マイクロ流体ユニットが単一収納容器内に配置される、請求項1記載のシステム。
【請求項16】
細胞がマイクロ流体チップ上に保存される、請求項1記載のシステム。
【請求項17】
細胞を-80℃以下で保存するための保存ユニットをさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項18】
保存された細胞に関連する試料データを処理および保存するようにさらに動作可能である、請求項1記載のシステム。
【請求項19】
細胞が、マスターセルバンクおよびワーキングセルバンクとして保存される、請求項1記載のシステム。
【請求項20】
細胞をリプログラミングする工程が、細胞を1つまたは複数の核リプログラミング因子と接触させることを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項21】
核リプログラミング因子が、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または小分子である、請求項21記載のシステム。
【請求項22】
分化が、細胞を1つまたは複数の分化因子と接触させることを含む、請求項3記載のシステム。
【請求項23】
1つまたは複数の分化因子が、ポリペプチド、ベクター無しの遺伝子調節因子オリゴヌクレオチド、マイクロRNA、分化因子をコードするメッセンジャーRNA、または細胞による分化因子の発現に影響を与えるオリゴヌクレオチドである、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
生物試料を処理するための方法であって、
(a)請求項1~23のいずれか一項記載のシステムに該試料を適用する工程;ならびに
(b)(i)該試料から細胞を単離すること、
(ii)任意で、単離された細胞を増殖させて増殖させた細胞の集団を生成すること、
(iii)単離された細胞または増殖させた細胞をリプログラミングすること、および
(iv)(i)、(ii)または(iii)のいずれかからの細胞を保存すること
を含み、それによって生物試料を処理する、該試料をシステムで処理する工程
を含む、方法。
【請求項25】
リプログラミングされた細胞を分化させて所望の細胞型の細胞を生成する工程をさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
(i)の単離された細胞、(ii)の増殖させた細胞、(iii)のリプログラミングされた細胞、所望の細胞型の細胞、またはそれらの組み合わせを解析する工程をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
解析が、画像解析、細胞数解析、細胞形態解析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)解析、配列解析、DNA解析、RNA解析、遺伝子発現プロファイリング、プロテオーム解析、メタボローム解析、イムノアッセイ、核排除解析、またはそれらの組み合わせを含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
対象から前記試料を得る工程をさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項29】
対象が、疾患または障害を有するか、またはそれらを有するリスクがある、請求項28記載の方法。
【請求項30】
システムにより処理した細胞で対象を治療する工程をさらに含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
対象が健常な個体である、請求項28記載の方法。
【請求項32】
対象が疾患または障害と診断されるまで、前記試料由来の細胞または前記試料から処理した細胞を保存する工程をさらに含む、請求項30記載の方法。
【請求項33】
保存された細胞を利用して、疾患または障害を治療する工程をさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
対象において疾患または障害を治療する方法であって、
(a)対象から試料を得る工程;
(b)請求項1~23のいずれか一項記載システムに該試料を適用する工程;
(c)(i)該試料から細胞を単離すること、
(ii)任意で、単離された細胞を増殖させて増殖させた細胞の集団を生成すること、
(iii)単離された細胞または増殖させた細胞をリプログラミングすること、
(iv)リプログラミングされた細胞を所望の細胞型に分化させること、および
(v)(i)、(ii)、(iii)、または(iv)のいずれか由来の細胞を保存すること
含む、該試料をシステムで処理する工程;ならびに
(d)(i)~(v)のいずれかの細胞を対象に投与し、それによって対象において疾患または障害を治療する工程
を含む、方法。
【請求項35】
(i)の単離された細胞、(ii)の増殖させた細胞、(iii)のリプログラミングされた細胞、所望の細胞型の細胞、またはそれらの組み合わせを解析する工程をさらに含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
解析が、画像解析、細胞数解析、細胞形態解析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)解析、配列解析、DNA解析、RNA解析、遺伝子発現プロファイリング、プロテオーム解析、メタボローム解析、イムノアッセイ、核排除解析、またはそれらの組み合わせを含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
対象において疾患または障害を診断する工程をさらに含む、請求項34記載の方法。
【請求項38】
請求項1~23のいずれか一項記載のシステムによって処理された細胞、またはその細胞画分を含む、薬学的組成物。
【請求項39】
請求項1~23のいずれか一項記載のシステムによって処理された細胞の1つまたは複数の集団を含む、細胞バンク。
【請求項40】
各集団が異なる試料に由来する、請求項39記載の細胞バンク。
【請求項41】
第2の装置と動作可能に連動された、少なくとも1つ、2つ、3つ、または4つのマイクロ流体ユニットを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項42】
第2の装置が、細胞培養装置、バイオリアクター、診断装置、画像装置、配列決定装置、核酸増幅装置、核酸もしくはタンパク質単離装置、ゲノム解析装置、細胞単離装置、細胞分画装置、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項41記載のシステム。
【請求項43】
第2のシステムが、(i)~(iv)の1つまたは複数を実施するように動作可能な非マイクロ流体装置である、請求項41記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2016年11月18日に出願された米国特許出願第62/424,208号の35 U.S.C.§119(e)に基づく優先権の恩典を主張し、該出願の全内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は概して、マイクロ流体装置の分野に関し、より具体的には、細胞をリプログラミングし、増殖させ、保存し、かつ任意で分化させるためのマイクロ流体システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景情報
マイクロ流体システムは、医療診断およびバイオテクノロジー研究において重要である。そのようなシステムの構成部品には、非常に小さなウェルおよびチャネルのネットワークが含まれ、それらを通じて、液体が、高精度に制御された量の化学物質、細胞、および分子を送達し、組み合わせることができる。システムは、試薬の混合、バイオ分子の単離および試験、ならびに生細胞の隔離および選別を含む、多様な作業に用いられる。必要とされる高精度な移動、混合、および正確な計測を達成するために、マイクロ流体チップおよび基体は、チップ内に組み込まれるマイクロバルブおよびポンプ、ならびに空気圧式アクチュエータ、電子ソレノイド、空気圧式アクチュエータ、ロボット制御装置、ならびにそれらの装置を制御するのに必要とされる複合コンピュータプログラムおよびシステムなど、複合制御機構を必要とする。
【0004】
マイクロ流体装置の使用は、標準的なベンチトップ型の方法に対して、例えば無類の量産効果ならびに高度の並列化および統合を含む、多数の利点をもたらす。技術の進歩に伴って、マイクロ流体装置は、大きさがますます小さくなり、ますます複数の作業を実施できるようになる。例えば、マイクロ流体アプローチは、細胞の分離および単離、細胞培養、細胞分化、ならびに細胞リプログラミング因子のスクリーニングに対して別個に提案されている。
【0005】
幹細胞は、長期間にわたり、細胞分裂を介して自己再生する性質の特定されていない細胞であり、特定の機能をもった細胞、つまり分化細胞へと誘導可能な細胞である。このような性質によって幹細胞は、様々な病状で損傷をうけた細胞や組織を取り替えるための治療で応用するのに大いに将来性がある。胚性幹(ES)細胞は初期胚の胚盤胞に由来し、内胚葉、外胚葉、および中胚葉(三胚葉)へと発生する能力を有する(つまり、ESは「多能性」である)。インビトロでES細胞は、自発的に様々な種類の組織に分化する傾向にあり、それらの分化方向を制御するのは難しい場合がある。ヒトES細胞を回収するために胚の破壊に関連する倫理的な問題は未だ解決しておらず、これらの問題は研究および治療への応用に対する利用可能性を制限している。
【0006】
成体幹(AS)細胞は分化した組織中に見られる。成体組織から得られた幹細胞は通常、より限定された範囲の細胞を形成する能力(つまり、「多分化能性」)を有し、典型的には、それらが見られた組織の細胞型にしか分化しないが、最近の報告では、特定の種類のAS細胞には、一定の可塑性があることを示している。また、その増殖能も概して限定的である。
【0007】
人工多能性幹細胞(iPSC)は、分化した成体細胞から実験的な手法によって作製される。iPSCは重要なツール、例えば医学研究を実施するのに重要なツールであると広く認識されている。これまでのiPSC作製技術は時間がかかり、労働集約的である。分化した成体細胞、例えば、線維芽細胞をリプログラミングし、培養して、単一のクローンを構成する個々のコロニーを形成させる。今までは、これらの細胞型を同定することが非常に難しかった。なぜならば、細胞の大部分が完全にはリプログラミングされていないiPSCのクローンだったからである。iPSCのクローンに関しては、細胞質に対して核の比率が高い細胞を含む、境界のはっきりとした所望のコロニーを、細胞の形態に基づいて選択するのが標準的である。クローンを同定したら、非常に薄いガラス製の道具を使ってそれらを手動で取り出し、そして、細胞の「フィーダー」層、一般的には、マウスの胚性線維芽細胞(MEF)上で培養する。この工程は通常、リプログラミングベクターを導入した14~21日後に行われる。その後、クローンをさらに14~21日間、またはそれ以上の期間増殖させ、その後、分子的な解析を行う。
【0008】
他の研究者らは、完全にリプログラミングされた成体線維芽細胞とその下流の分化能を迅速かつより正確に同定および解析するための技術の開発に焦点を当てている(Bock et al., 2011, Cell 144: 439-452(非特許文献1); Boulting et al., 2011, Nat Biotechnol 29: 279-286(非特許文献2))。例えば、2011年6月13日に出願され、同定のための蛍光活性化セルソーティング(FACS)の使用と、表面タンパク質のユニークな発現パターンによって特定されたユニークな小集団のその場での選別について記載している、共有の米国特許第13/159,030号(特許文献1)も参照のこと。
【0009】
したがって、幹細胞は、治療への応用、医学研究、薬学的試験などにとって魅力的な細胞の供給源である。患者特異的幹細胞およびリプログラミングされた体細胞の使用は、いくつか例を挙げると、癌および神経疾患の治療などの複数の医療的治療にとって極めて望ましい、免疫学的に適合性を有する細胞置換戦略になる。しかしながら、当技術分野において、最初の患者の血液の処理から患者特異的幹細胞およびリプログラミングされた体細胞を用いる同じ患者の個別化治療までを行う自動化された迅速なアプローチを用いて複数の作業を実施する統合アプローチを利用して、患者特異的な細胞を処理するための改良されたマイクロ流体装置および方法に対する、長期にわたるニーズが依然として残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第13/159,030号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Bock et al., 2011, Cell 144: 439-452
【非特許文献2】Boulting et al., 2011, Nat Biotechnol 29: 279-286
【発明の概要】
【0012】
本発明は、時間および費用効率のよいワークフローを研究室および/または医療ベースの環境に提供するために、生物試料を処理するシステムを利用するマイクロ流体ベースのシステムおよび方法を提供する。ワークフロー全体は、患者特異的治療を提供する能力を有する。
【0013】
したがって、一態様において、生物試料を処理するためのマイクロ流体システムが提供される。システムは、いくつかの試料を処理する工程を実施するように動作可能な1つまたは複数のマイクロ流体ユニットを含み、これにより試料からの細胞または試料に由来する細胞が、保存され、カタログ化され、最終的には試料を採取した患者を治療するために利用することができる。マイクロ流体ユニットは、試料から細胞を単離し、単離された細胞を増殖させ、該細胞をリプログラミングするように動作可能である。システムはまた、リプログラミングされた細胞を患者の治療に使用するのに望ましい細胞型へと分化させるマイクロ流体機能性も含む。処理の任意の点において、システムは、細胞を保存およびカタログ化するための機能性を含む。加えて、システムは、処理の任意の段階で細胞の分析を行い、細胞の定性的および定量的評価を行うように動作可能である。
【0014】
実施形態において、システムは、処理機能を制御するための指示を含む1つまたは複数のコンピュータメモリモジュールを、指示を実行するように構成された1つまたは複数のコンピュータプロセッサモジュールと共に含む。
【0015】
別の態様では、本発明は、本開示のマイクロ流体ベースのシステムを利用して生物試料を処理するための方法を提供する。方法は、該試料をシステムに適用する工程、および該試料に対して処理工程を実施して、リプログラミングされた細胞および/またはリプログラミングされた細胞に由来する所望の細胞型の細胞を生成する工程を含む。
【0016】
別の態様では、本発明は、本開示のマイクロ流体ベースのシステムを利用して対象において疾患または障害を治療する方法を提供する。方法は、(a)対象から試料を得る工程;(b)システムに試料を適用する工程;(c)試料をシステムで処理する工程;および(d)対象に処理された細胞を投与し、それによって対象において疾患または障害を治療する工程を含む。
【0017】
さらに別の態様では、本発明は、マイクロ流体システムによって処理された細胞またはその細胞性画分を含み、薬学的に許容される賦形剤を任意で含む、薬学的組成物を提供する。
【0018】
なお一層別の態様では、本発明は細胞バンクを提供する。細胞バンクは、本開示のシステムによって処理される細胞の1つまたは複数の集団を含む。実施形態において、各細胞集団は、将来の使用に適切な温度でカタログ化および保存される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態におけるマイクロ流体システムの概略図である。
図2】本発明の一実施形態におけるマイクロ流体システムの概略図である。
図3】本発明の一実施形態における線維芽細胞バンクを獲得するための工程を示す。
図4】本発明の一実施形態における線維芽細胞バンクから幹細胞アレイを得るための工程を示す。
図5】本発明の一実施形態におけるiPSCを生成するためのシステムにおける工程を示すフローチャートである。
図6A】本発明の一実施形態における自動化されたリプログラミング処理の間の、マルチウェル組織培養プレートを介した、患者試料のフローの例を示す。
図6B-1】本発明の一実施形態における自動化されたリプログラミング処理の間の、マルチウェル組織培養プレートを介した、患者試料のフローの例を示す。
図6B-2】本発明の一実施形態における自動化されたリプログラミング処理の間の、マルチウェル組織培養プレートを介した、患者試料のフローの例を示す。
図6C】本発明の一実施形態における自動化されたリプログラミング処理の間の、マルチウェル組織培養プレートを介した、患者試料のフローの例を示す。
図7A】本発明の一実施形態におけるワークフローを達成するための機器構成の例を示す。
図7B】本発明の一実施形態におけるワークフローを達成するための機器構成の例を示す。
図7C】本発明の一実施形態におけるワークフローを達成するための機器構成の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
本発明は、マイクロ流体チップ技術を利用して、患者試料を処理し、患者特異的なリプログラミングされた細胞および任意でリプログラミングされた細胞由来の特定の細胞型の分化した細胞を作製する、統合マイクロ流体システムを提供する。本発明のシステムは、標準化されたiPSC株を作製する効率および再現性を大幅に向上させる。典型的には、研究者は手作業でiPSCを作製しており、このことは、研究者間のばらつきがあることおよび多量の細胞を作製できないことから、該細胞の有用性を限定する。システムは、組織または細胞試料の受け取りから明確に定義されたiPSC株のストックのバンク作製まで完全に自動化したシステムによりこれらの課題を回避する。システムは、多数のドナーからの大量な細胞の作製で一貫性および不変性を可能にし、これはiPSC技術の使用を促進する。
【0021】
システムは、1つまたは複数の個別のマイクロ流体チップの形態であってもよい、1つまたは複数のマイクロ流体ユニットを利用して、試料を処理し、リプログラミングされた細胞を作製し、その後の回収および分化のためにマイクロ流体チップ(収容(hoteling))形式で該細胞を保持する。次いで、分化および増殖を実施して、所望の細胞型の細胞を作製する。全体として、ワークフローの方法論およびシステムは、下流の診断用途または治療用途でのあらゆる患者からの多能性細胞の作製を可能にする、研究室または病院ベースのシステムとして理想的である。
【0022】
本組成物および方法を記載する前に、この発明は、記載される特定の組成物、方法、および実験条件に限定されるものではなく、そのような組成物、方法、および条件は変わってもよいことが理解されるべきである。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲においてのみ限定されることから、本明細書において用いられる用語は特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図しないことも理解されるべきである。
【0023】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」には、別段の明確な指示がない限り、複数形の記載が含まれる。よって、例えば、「その(the)方法」への言及には、本開示などを読んだ当業者に明らかになるであろう本明細書において記載されるタイプの1つまたは複数の方法および/または工程が含まれる。
【0024】
他で定義されていない限り、本明細書において使用される全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する分野における当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似のまたは同等の任意の方法および材料が、本発明の実施または試験において用いることができるが、好ましい方法および材料が本明細書において記載される。
【0025】
本開示は、生物試料を処理するためのマイクロ流体システムを提供する。システムは、いくつかの試料処理工程を実施するように動作可能な1つまたは複数のマイクロ流体ユニットを含み、これにより、試料からの細胞またはiPSCなどの試料に由来する細胞を、保存し、カタログ化し、最終的には細胞を採取した患者を治療するのに利用することができる。実施形態において、患者試料から単離された成体細胞から作製されたiPSCは、患者を治療するための使用に適した所望の細胞型に分化される。
【0026】
本明細書で使用する場合「成体」は、胎生期以降、つまり、新生児期からその生命の終わりまでの間にいる生物を意味し、例えば、分娩後の胎盤組織、羊水および/または臍帯血から得られた細胞が含まれる。
【0027】
本明細書で使用する場合「成体分化細胞」という用語は、ある生物の成体から得られ、本発明で記載の自動化されたシステムを使ったiPSCの作製を受け入れることができる、広い範囲の分化した細胞型を包含する。この成体分化細胞は「線維芽細胞」であることが好ましい。線維芽細胞(より活性の低い形態では「線維細胞」とも呼ばれる)は、間葉に由来する。それらの機能には、細胞外マトリックス成分の前駆体、例えばコラーゲンの分泌がある。組織学的には、線維芽細胞は高度に枝分かれした細胞であるが、線維細胞は一般に、より小さく、紡錘型であると記載されることが多い。いかなる組織由来の線維芽細胞と線維細胞も、本発明において、自動化されたワークフローシステムの出発材料として使用することができる。
【0028】
本明細書で使用する場合「人工多能性幹細胞」、つまりiPSCという用語は、その幹細胞が、誘導されたまたは変化した、つまり、リプログラミングされた分化成体細胞から、三胚葉、つまり、中胚葉、内胚葉、および外胚葉の全ての組織に分化可能な細胞へと作製されたものであることを意味する。作製されたiPSCとは、それらが、自然に見られる細胞ではないことを意味する。
【0029】
本発明において有用な哺乳類の体細胞としては、例としてではあるが、成体幹細胞、セルトリ細胞、内皮細胞、顆粒上皮細胞、ニューロン、膵島細胞、表皮細胞、上皮細胞、肝細胞、毛包細胞、角化細胞、造血細胞、メラニン細胞、軟骨細胞、リンパ球(BおよびTリンパ球)、赤血球、マクロファージ、単球、単核細胞、線維芽細胞、心筋細胞、他の既知の筋細胞、および基本的に、全ての生きている体細胞が挙げられる。特定の実施形態では、線維芽細胞が使用される。本明細書で使用する場合、体細胞という用語は、成体幹細胞を含むことも意図する。成体幹細胞とは、特定の組織の全ての細胞型を生じることが可能な細胞である。成体幹細胞の例としては、造血幹細胞、神経幹細胞、および間葉幹細胞が挙げられる。
【0030】
本発明の利点の一つとしては、移植、創薬アッセイ、または疾患モデリングでの使用に適した同質遺伝的な、つまり同一遺伝子のヒト細胞を、本質的に制限なく供給できるということが挙げられる。iPSCは、免疫拒絶を回避しながら、患者に特異的に合わせられる。そのため、現行の移植方法に伴う重大な問題、例えば、宿主対移植片または移植片対宿主拒絶によって生じ得る、移植した組織に対する拒絶反応が、iPSCによって取り除かれる。創薬に用いる場合、この細胞は、創薬に用いる場合にそれぞれの患者の化学物質に対する反応、または疾患モデルにおける個々の患者の疾患症状を示す。iPSCのうちの数種、またはヒト由来の体細胞から誘導したiPSCから調製した完全に分化した体細胞は、細胞のライブラリーとして、iPSCバンクで保管することができ、また、そのライブラリー中の1種または複数種のiPSCを使用して、幹細胞治療を受ける患者による拒絶反応を生じない体細胞、組織、または臓器を調製することができる。
【0031】
本発明のiPSCを、いくつかの異なる細胞型に分化させて、当該分野において知られている方法により、様々な障害を治療してもよい。例えば、iPSCを誘導して、造血幹細胞、筋細胞、心筋細胞、肝細胞、軟骨細胞、上皮細胞、尿路細胞、ニューロン細胞などに分化させてもよい。次いで分化細胞を、病状の予防または治療のために、患者の体内に移植して戻すか、あるいは、先進的な医学研究または創薬アッセイに使用してもよい。従って、本発明の方法を、特定の細胞型/組織の増強もしくは置換、または細胞の脱分化が望まれる、心筋梗塞、うっ血性心不全、脳卒中/発作、虚血、末梢血管病、アルコール性肝疾患、肝硬変、パーキンソン病、アルツハイマー病、糖尿病、癌、関節炎、創傷治癒、免疫不全、再生不良性貧血、貧血、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、リソソーム蓄積病、多発性硬化症、脊髄損傷、遺伝性障害、および同様の疾患を患っている対象の治療として、または治療法の開発に使用することができる。
【0032】
「全能性」という用語は、成体内の全ての細胞、ならびに胚体外組織、例えば胎盤を作製する発生能を有する細胞を指す。受精卵(接合体)は、桑実胚(受精後、16細胞期まで)の細胞(割球)と同様に、全能性である。
【0033】
本明細書で使用する場合「多能性(pluripotent)」という用語は、分化条件で、全三胚葉、つまり、内胚葉(例えば、消化管組織)、中胚葉(血液、筋肉、および血管など)、および外胚葉(例えば皮膚や神経)の特徴を示す細胞型に分化する発生能を有する細胞を指す。多能性細胞の発生能は全能性細胞のものよりも低い。全三胚葉に分化する細胞の能力は、例えば、ヌードマウスのテラトーマ形成アッセイで決定することができる。いくつかの実施形態では、多能性の証拠は、胚性幹(ES)細胞マーカーの発現でも確認することができるが、細胞または本明細書に記載の組成物および方法を使用して生成した細胞集団の多能性に関する好ましい試験は、その細胞が三胚葉のそれぞれの細胞に分化する発生能を有することを実証することである。いくつかの実施形態では、多能性細胞を、「未分化細胞」と命名する。従って、「多能性」または「多能性状態」という用語は、本明細書で使用する場合、細胞が全三胚葉(内胚葉、中胚葉および外胚葉)に分化するための能力をもたらす、細胞の発生能を指す。当業者であれば、所与の細胞型を生じる胚葉または細胞系列を認識する。多能性状態にある細胞は、典型的には、長期間にわたって、例えば1年を超えて、または30回を超える継代の間にわたって、インビトロで分裂する能力を有する。
【0034】
「多分化能性細胞」の参照に関して使用される「多分化能性(multipotent)」という用語は、3つ全てではなく、1つまたは複数の胚葉の細胞に分化する発生能を有する細胞を指す。従って多分化能細胞は、「部分的に分化した細胞」と言うこともできる。多分化能細胞は当該分野において良く知られており、多分化能性細胞の例としては、成体幹細胞、例えば、造血幹細胞および神経幹細胞が挙げられる。「多分化能性」とは、ある細胞が、所与の細胞系列(他の細胞系列ではなく)の、多くの型の細胞を形成し得ることを示している。例えば、多分化能性の造血細胞は、多くの異なる型の血液細胞(赤、白、血小板など)を形成することができるが、ニューロンを形成することはできない。従って「多分化能性」という用語は、全能性および多能性未満の、一定の範囲の発生能を有する細胞の状態を指す。
【0035】
本明細書で使用する場合「幹細胞」または「未分化細胞」という用語は、自己再生する特徴と、複数の細胞型に分化する発生能を有するが、その発生能に関して特定の意味(つまり、全能性、多能性、多分化能性など)を持たない未分化または部分的に分化した状態にある細胞を指す。幹細胞は、その発生能を維持しながら、増殖可能であり、かつより多くのそのような幹細胞を生じることができる。原理的には、自己再生は2つの主要なメカニズムのいずれかによって起こり得る。幹細胞は非対照に分裂する場合があり、これは、不可避の非対照分化として知られている。この場合、娘細胞の1つは親幹細胞の発生能を保持し、もう一方の娘細胞は、他のいくつかの個別の特定の機能、表現型および/または親細胞由来の発生能を示す。娘細胞自体を誘導して増殖させ、後代を生成することができ、これがその後、親由来の発生能を有する細胞を1つまたは複数維持しながら、1つまたは複数の成熟した細胞型へと分化する。分化細胞は多分化能性細胞に由来し得、多分化能細胞自体は多分化能性細胞などから由来する。このような多分化能性細胞はそれぞれ、幹細胞と見なすことができ、それら幹細胞のそれぞれが生じ得る細胞型の範囲、つまり発生能は、相当に多様になる可能性がある。あるいは、ある集団の幹細胞の一部は対称的に2つの幹細胞に分裂する場合があり、これは確率論的な分化として知られている。その場合、その集団に含まれる幹細胞の一部は完全に維持され、他の細胞は分化した後代のみを生じる。従って、「幹細胞」という用語は、特定の環境では、より特化したまたは分化した表現型に分化する発生能を有し、かつ、特定の環境では、実質的に分化せずに増殖する能力を保持した細胞の小集団を指す。いくつかの実施形態において幹細胞という用語は、一般に、その子孫(後代細胞)が分化によって、例えば、胚性細胞および組織の進行性の多様化で生じるような、個々の特徴を完全に獲得することによって、多くは異なる方向に特殊化している天然に存在する親細胞を指す。一部の分化細胞は、高い発生能を有する細胞を生じる能力ももつ。そのような能力は、天然のものである場合も、または様々な因子を処理することで人工的に誘導されたものである場合もある。幹細胞として生じた細胞は、分化した表現型に向かって進んでいくかも知れないが、「逆方向に」誘導し、幹細胞の表現型を再び発現させることができ、当業者には、「脱分化」または「リプログラミング」または「逆分化(retrodifferentiation)」と呼ばれることが多い。
【0036】
本明細書で使用する場合「胚性幹細胞」という用語は、天然に存在する、胚盤胞の内部細胞塊の多能性幹細胞を指す(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第5,843,780号;同第6,200,806号;同第7,029,913号;同第7,584,479号を参照のこと)。そのような細胞は同様に、体細胞核移植に由来する胚盤胞の内部細胞塊から得ることができる(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第5,945,577号、同第5,994,619号、同第6,235,970号を参照のこと)。胚性幹細胞は多能性であり、発生する間に、三つの一次胚葉全て(外胚葉、内胚葉および中胚葉)の誘導体を生じる。言い換えれば、胚性幹細胞は、特定の細胞型に所与の十分かつ必須の刺激を与えた場合、成体の200を上回る細胞型のそれぞれに発生することができる。胚性幹細胞は胚体外膜つまり胎盤には寄与せず、すなわち全能性ではない。
【0037】
本明細書で使用する場合、胚性幹細胞に特徴的な性質を、「胚性幹細胞表現型」と定義する。従って、ある細胞が、胚性幹細胞表現型をもたない他の細胞から区別できる胚性幹細胞に固有の性質を1つまたは複数有する場合、その細胞は胚性幹細胞の表現型を有する。特徴的な胚性幹細胞の表現型の性質の例としては、特定の細胞表面または細胞内マーカー(タンパク質およびマイクロRNAを含む)の発現、遺伝子発現プロファイル、メチル化のプロファイル、脱アセチル化のプロファイル、増殖能、分化能、核型、特定の培養条件への応答性などが挙げられるがこれらには限定されない。いくつかの実施形態では、その細胞が「胚性幹細胞表現型」を有しているか否かの決定は、その細胞の1つまたは複数の特徴を、同じ実験室内で培養した胚性幹細胞株の1つまたは複数の特徴と比較することで行われる。
【0038】
本明細書で使用される「体性幹細胞」という用語は、胚以外の組織、例えば胎性、若齢、および成体の組織に由来する、任意の多能性または多分化能性幹細胞を指す。天然の体性幹細胞は、血液、骨髄、脳、嗅上皮、皮膚、膵臓、骨格筋、および心筋を含む様々な成体組織から単離されている。これらの体性幹細胞はそれぞれ、遺伝子発現、因子応答性、および培養中での形態によって特徴付けることができる。天然に存在する体性幹細胞の例としては、神経幹細胞、神経堤幹細胞、間葉幹細胞、造血幹細胞、および膵臓幹細胞が挙げられるがこれらには限定されない。本明細書に記載のいくつかの態様では、「体性多能性細胞」とは、本明細書に記載の組成物および方法を使用して、1つまたは複数のリプログラミング因子と接触させる、または1つまたは複数のリプログラミング因子を誘導することで、その発生能を変化させた、つまり多能性の状態まで発生能を高めた体細胞、またはその体細胞の後代を指す。
【0039】
本明細書で使用する「前駆細胞」という用語は、高い発生能をもつ細胞を、つまり、分化によって生じ得る細胞よりも、より原始的な(例えば、発生経路または進行のより初期の工程にある)細胞の表現型を有する細胞を指す。前駆細胞は有意なまたは非常に高い増殖能を有することが多い。前駆細胞は、発生経路や、その細胞が発生・分化する環境に応じて、より低い発生能をもつ複数の個別の細胞、つまり分化した細胞型を生じるか、または、単一の分化した細胞型を生じる可能性がある。
【0040】
本明細書で使用する場合「体細胞」という用語は、生殖細胞、着床前の胚に存在する細胞もしくは着床前胚から得られた細胞、またはそのような細胞のインビトロでの増殖によって生じた細胞以外の全ての細胞を指す。言い換えると、体細胞とは、生殖系列細胞の対語として、生物の体を形成する全ての細胞を指す。哺乳類では、生殖系列細胞(「配偶子」としても知られている)は精子と卵子であり、これらは受精の間に融合して、接合体と呼ばれる細胞を生成する。哺乳類の胚全体は、この接合体から発生する。哺乳類の体内にある他のそれぞれの細胞型(精子と卵子、それらが作られる細胞(生殖母細胞)、および未分化で多能性の胚性幹細胞以外)が、体細胞(内部の器官、皮膚、骨、血液、および体細胞から作られている結合組織)である。いくつかの実施形態において体細胞は、「非胚性体細胞」であり、これは、その体細胞が胚には存在しない、または胚から得られた細胞ではないこと、および、胚細胞のインビトロでの増殖によって生じたものではないことを意味している。いくつかの実施形態において体細胞は「成体体細胞」であり、これは、その細胞が胚または胎児以外の器官に存在する、または胚もしくは胎児以外の器官から得られた細胞であること、あるいは、そのような細胞のインビトロでの増殖によって生じたものであることを意味している。別段の指定のない限り、体細胞をリプログラミングするための本明細書に記載の組成物および方法は、インビボおよびインビトロの両方で実施することができる(この場合、インビボでは、体細胞は対象の体内に存在して実施され、インビトロでは、培養において維持されている単離された体細胞を用いて実施される)。
【0041】
「分化細胞」という用語は、本明細書では、その天然の形態において、多能性でない全ての体細胞を包含すると定義される。従って、「分化細胞」という用語は、部分的に分化した細胞、例えば多分化能性細胞もしくは安定で多能性でない部分的にリプログラミングされた細胞、または本明細書に記載の組成物および方法のいずれかを使用して作製した部分的に分化した細胞も、包含する。いくつかの実施形態では、分化細胞は、安定で中間的な細胞、例えば、多能性でなく、部分的にリプログラミングされた細胞である。培養中に多数の初代細胞を置くことによって、完全に分化した特徴のいくつかが失われる可能性があることに留意されたい。従って、そのような分化細胞または体細胞を単に培養するだけでは、これらの細胞は、非分化細胞(例えば未分化細胞)または多能性細胞にはならない。分化細胞(安定で多能性でない、部分的にリプログラミングされた細胞の中間体を含む)の多能性への移行には、培養に置いた際に部分的に分化した性質の消失を誘導する刺激を超える、リプログラミング刺激が必要である。リプログラミングされた細胞は、いくつかの実施形態では部分的にリプログラミングされた細胞は、発生能がより低く、通常、限られた回数の分裂しかできない親細胞と比較して、成長能を失うこと無く、長期間にわたって継代し続けられるという特徴も有する。いくつかの実施形態において「分化細胞」という用語は、その細胞が細胞分化過程におかれている場合には、あまり特殊化していない細胞型(つまり、発生能が高い細胞型)(例えば、未分化細胞またはリプログラミングされた細胞)に由来する、より特殊化した細胞型(つまり、発生能の低い細胞型)も指す。
【0042】
種々の実施形態において、システムは、定方向性ワークフローにおいて一連の処理を実施するよう構成される。システムによって実施される処理は、細胞を単離すること、単離された細胞を増殖させること、増殖させた細胞をリプログラミングすること、リプログラミングされた細胞を所望の細胞型に分化させること、および細胞を保存することを含む。
【0043】
様々な実施形態において、システムは生物試料から細胞を単離するように構成される。これは、特定の細胞型の分離および単離を含む。実施形態において、生物試料は予め単離された細胞を含んでもよく、この場合には、単離工程を実施する必要はない。マイクロ流体を用いて実施される単離技術および/または分離技術は当技術分野において公知であり、本発明の実施において利用され得る。そのような技術には、これらに限定されないが、細胞の捕獲および分離の方法論が含まれる。
【0044】
「生物試料」は、インタクトな細胞を含む、患者または対象から採取された生物材料の試料である。生物試料には、体液および組織(例えば、生検材料由来)または組織調製物(例えば、組織切片、ホモジネート等)から採取される試料が含まれる。「体液」は、本発明による使用に適した対象から得られたまたは対象に由来する任意の液体である。そのような液体には、全血、血液画分、例えば、血清および血漿、尿、汗、リンパ液、糞便、腹水、精液、痰、乳頭吸引液、術後漿液腫、創傷ドレナージ液、唾液、滑液、腹水液、骨髄穿刺液、脳脊髄液、鼻汁、羊水、気管支肺胞洗浄液、胸水、末梢血単核球、総白血球、リンパ節細胞、脾臓細胞、ならびに扁桃腺細胞が含まれる。実施形態では、試料は白血球を含むか、または単離された白血球の試料である。
【0045】
本明細書で用いられる場合「単離された細胞」という用語は、その細胞が本来見出された生物から取り出されている細胞、またはそのような細胞の子孫を指す。任意で、細胞は、例えば他の細胞の存在下で、インビトロで培養されている。任意で、細胞はその後、第二の生物に導入されるか、またはそれを単離したもとの生物(またはそれの由来となった細胞もしくは細胞集団)に再導入される。
【0046】
本明細書で使用する場合、単離された細胞集団に関する「単離された集団」という用語は、混合されたまたは不均一な細胞集団から取り出され、分離されている細胞の集団を指す。いくつかの実施形態において、単離された集団は、その細胞を単離または濃縮したもとの不均一な集団と比較して「実質的に純粋」な細胞集団である。いくつかの実施形態において、単離された集団は、その多能性細胞の由来である体細胞の不均一な集団と比較して、実質的に純粋な多能性細胞の集団を含む、単離された多能性細胞の集団である。
【0047】
様々な実施形態において、システムはまた、試料から単離された細胞を利用して細胞増殖工程を実施するようにも構成される。これは、下流の処理を実施するのに十分な数の細胞が存在することを確実にする。
【0048】
細胞を増殖させた後に、システムは、増殖させた細胞をリプログラミングする、例えば、iPSCを作製する機能性を含む。本明細書で使用する場合「リプログラミング」という用語は、細胞または細胞集団(例えば、体細胞)の発生能を、反転させる過程を指す。言い換えると、リプログラミングとは、細胞がより高い発生能の状態になるように誘導する過程を、つまり、より未分化な状態へと戻す過程を指す。リプログラミングする細胞は、リプログラミングの前には、部分的に分化したまたは完全に分化した細胞のいずれであってもよい。本明細書に記載の態様のいくつかの実施形態では、リプログラミングとは、分化した状態が、多能性の状態に完全にまたは部分的に逆転すること、つまり、細胞の発生能が高まることを包含する。いくつかの実施形態では、リプログラミングとは、その細胞が胚性幹細胞の同等の発生能を有するように、つまり、胚性幹細胞の表現型を示すように、体細胞を多能性の状態に誘導することを包含する。いくつかの実施形態においてリプログラミングは、細胞の分化した状態の部分的な逆転または発生能の部分的な向上、例えば体細胞または単能性細胞の多能性状態への変化も包含する。リプログラミングはまた、本明細書に記載の操作などの操作をさらに行った場合の、多能性状態への完全なリプログラミングに対する感受性がより高い状態にする、細胞の分化状態の部分的な逆転も包含する。そのような操作によって、細胞またはその細胞の後代で、リプログラミングに寄与するまたはリプログラミングを維持する特定の遺伝子の内因性発現が誘導される場合がある。一定の実施形態では、本明細書に記載の合成の修飾されたRNAおよびその方法を用いた細胞のリプログラミングによって、多分化能性状態にあると仮定される細胞(例えば、多分化能性細胞)が生じる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の合成の修飾されたRNAおよびその方法を用いた細胞(例えば体細胞)のリプログラミングによって、多能性様状態または胚性幹細胞表現型と仮定される細胞が生じる。本明細書では、得られた細胞を「リプログラミングされた細胞」、「体性多能性細胞」、および「RNA誘導性体性多能性細胞」と呼ぶ。本明細書では「部分的にリプログラミングされた体細胞」という用語は、本明細書で開示の方法によって、発生能が低い細胞からリプログラミングされた細胞を指す。部分的にリプログラミングされた細胞が、多能性の状態に完全にはリプログラミングされておらず、多能性ではない、安定な中間的な状態にある。そのような部分的にリプログラミングされた細胞は、多能性細胞よりは低いが分化能を有する細胞であると本明細書では定義する。部分的にリプログラミングされた細胞は、例えば、三胚葉のうちの1つか2つには分化できるが3つ全部の胚葉には分化できない。
【0049】
本明細書で使用する場合「リプログラミング因子」という用語は、発生能を変化させる因子であると本明細書では定義する。このような因子には例えば、その発現が細胞、例えば体細胞がより分化していないまたは未分化の状態にリプログラミングするのに寄与する、遺伝子、タンパク質、RNA、DNA、または小分子がある。リプログラミング因子は、任意の遺伝子、タンパク質、RNAまたは小分子などであって、インビトロでの細胞のリプログラミング法においてそのうちの1つまたは複数と置き換えることができるものなどの、例えば、細胞を多能性状態にリプログラミングする転写因子(例えばSOX2、OCT3/4、KLF4、NANOG、LIN-28、c-MYCなど)であってよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の合成の修飾されたRNAおよびその方法を用いた外因性リプログラミング因子の発現は、細胞をリプログラミングされた状態または部分的にリプログラミングされた状態で安定に維持するのに、外因性の1つまたは複数のリプログラミング因子の発現が必要なくなるように、内因性の1つまたは複数のリプログラミング因子の発現を誘導する。本明細書で使用する場合「インビトロでの多能性状態へのリプログラミング」とは、核移行もしくは細胞質移行または例えば、卵母細胞、胚、生殖細胞、または多能性細胞との細胞融合を必要としないおよび/または伴わない、インビトロでのリプログラミング方法を指す。リプログラミング因子は、「脱分化因子」と言い換えることもできる。脱分化因子は発生能を変化させる因子を指し、本明細書では、細胞を脱分化させて、より分化していない表現型へと誘導する、例えばタンパク質またはRNAであると定義する。つまり、脱分化因子は、細胞の発生能を向上させる。
【0050】
成体細胞をiPSC株を形成するように、形質移入および形質転換またはリプログラミングする方法は一般的に、例えば、Takahashi et al., 2007 Cell, 131: 861-872, 2007, Yu et al., 2007, Science, vol. 318, pp. 1917-1920が知られている。iPSCは、リプログラミング因子によって体細胞から誘導される。リプログラミング因子とは、例えば、転写因子を含むことを想定している。成体細胞をリプログラミングするための方法には、例えば、特定の転写因子の組み合わせ、例えばOct3/4、Sox2、Klf4とc-Myc遺伝子の組み合わせを導入・発現させることが含まれる。他の研究者らは、成体細胞を形質転換またはリプログラミングするのに、他の転写因子の組み合わせを使用してもよいことを示している。このような他の転写因子には、例えば、Takahashi et al., 2006 Cell, 126: 663-676 and Huiqun Yin, et al. 2009, Front. Agric. China 3(2): 199-208(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、例えば、Lin28、Nanog、hTertおよびSV40 large T抗原が挙げられる。
【0051】
翻訳されたときに、所望の1つまたは複数のタンパク質をもたらすRNAを細胞に直接導入することで、iPSCを同様に生成することができる。高等真核細胞は外来の「非自己」RNAに対する細胞の防御機構を進化させてきた。このような防御機構は最終的に、細胞内タンパク質合成の全体的な阻害を引き起こし、その結果、細胞毒性が生じる。この反応には部分的に、I型またはII型インターフェロンの生産が伴い、通常、「インターフェロン応答」または「細胞の自然免疫応答」と呼ばれている。この細胞の防御機構は通常、合成RNAを異物と見なし、そして、この細胞の自然免疫応答を誘導する。RNAを用いた、外因性の誘導されたタンパク質の持続的なまたは反復した発現を達成する能力が、この自然免疫応答の誘導によって妨害されている特定の態様では、この反応を回避するまたは低減する様式によって改変されている合成RNAを使用することが望ましい。自然免疫応答の回避または低減によって、例えば細胞の発生に関する表現型を改変するのに必要な、外因性の導入されたRNAからの持続的な発現が可能になる。一態様において、持続的な発現は、標的細胞またはその後代に、合成の修飾されたRNAを繰り返し導入することで達成される。本発明の方法には、天然のRNAまたは合成RNAが含まれる。
【0052】
一態様では、細胞内で目的のタンパク質の外因性の発現を誘導するために、天然の、修飾した、または合成のRNAを細胞に導入することができる。本明細書に記載の修飾した合成のRNAを用いた、目的のタンパク質の外因性の発現を誘導する能力は、例えば、目的のタンパク質を産生する細胞または生物の能力が損なわれるまたは妨げられる、細胞または生物の内因性の遺伝的欠損によって引き起こされる障害の治療に有用である。従っていくつかの実施形態では、本明細書に記載のRNAを含む組成物および方法を、遺伝子治療の目的で使用することができる。
【0053】
記載のRNAは、細胞の運命および/または発生能を変化させるのに、好都合に使用することができる。外因性RNAからタンパク質を発現する能力は、細胞の発生能を変化または逆転することのいずれか、つまり細胞のリプログラミング、およびより分化した表現型へと方向付けられた細胞の分化を可能にする。細胞の発生能の変化において重要な面は、細胞またはその直接の後代において、1つまたは複数の発生能を変化させる因子が持続的かつ長期間にわたって発現することが必要だということである。これまでは、そのような持続的な発現は、DNAまたはウイルスベクターを細胞に導入することによって達成されてきた。これらの方法は、挿入性の突然変異が生成される恐れのあることから、治療への応用には制限される。
【0054】
本明細書に記載の外因性RNAから、1つまたは複数の所望のタンパク質を長期間にわたって発現する能力によって、最も恩恵をこうむる分野の一つが、当初より分化した表現型をもっている細胞からの、多能性または多分化能性の細胞の生成である。この態様では、リプログラミング因子をコードしているRNAが、より分化していない表現型、つまりより高い発生能をもつ細胞へとリプログラミングするのに使用される。
【0055】
本明細書に記載のこの態様および全てのそのような態様のいくつかの実施形態では、合成の修飾されたRNA分子は、少なくとも2つの修飾されたヌクレオシドを含む。そのような一実施形態では、2つの修飾されたヌクレオシドは、5-メチルシチジン(5mC)、N6-メチルアデノシン(m6A)、3,2'-O-ジメチルウリジン(m4U)、2-チオウリジン(s2U)、2'フルオロウリジン、シュードウリジン、2'-O-メチルウリジン(Um)、2'デオキシウリジン(2'dU)、4-チオウリジン(s4U)、5-メチルウリジン(m5U)、2'-O-メチルアデノシン(m6A)、N6,2'-O-ジメチルアデノシン(m6Am)、N6,N6,2'-O-トリメチルアデノシン(m62Am)、2'-O-メチルシチジン(Cm)、7-メチルグアノシン(m7G)、2'-O-メチルグアノシン(Gm)、N2,7-ジメチルグアノシン(m2,7G)、N2,N2,7-トリメチルグアノシン(m2,2,7G)、およびイノシン(I)からなる群より選択される。本明細書に記載のこの態様およびそのような全ての態様の、そのような一実施形態では、少なくとも2つの修飾されたヌクレオシドは、5-メチルシチジン(5mC)およびシュードウリジンである。(例えば参照により本明細書に組み込まれる、Rossiらに付与されている米国特許第2012/0046346号を参照のこと)。
【0056】
本発明の方法で使用される遺伝子、タンパク質またはRNAには、OCT4、SOX1、SOX2、SOX3、SOX15、SOX18、NANOG、KLF1、KLF2、KLF4、KLF5、NR5A2、c-MYC、1-MYC、n-MYC、REM2、TERT、およびLIN28が含まれるがこれらには限定されない。
【0057】
成体線維芽細胞のiPSCへのリプログラミングには、単一の転写因子が、特定の小分子経路阻害剤と共に使用できることも分かっている。そのような経路阻害剤としては、例えば、トランスフォーミング増殖因子-ベータ(TGFb)経路阻害剤のSB431542(4-[4-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-5-(2-ピリジニル)-1H-イミダゾール-2-イル]-ベンズアミド)とA-83-01[3-(6-メチル-2-ピリジニル)-N-フェニル-4-(4-キノリニル)-1H-ピラゾール-1-カルボチオアミド]、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)と微小管関連タンパク質キナーゼ(MAPK/ERK)経路の阻害剤であるPD0325901(N-[(2R)-2,3-ジヒドロキシプロポキシ]-3,4-ジフルオロ-2-[(2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ]-ベンズアミド)、βカテニンを安定化することでWntシグナル伝達を活性化するGSK3阻害剤CHIR99021[6-((2-((4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(4-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)エチル)アミノ)ニコチノニトリル]、リシン-特異的脱メチル化酵素1であるパルナート(Parnate)(別名トラニルシプロミン(tranylcypromine))、3'-ホスホイノシチド-依存性キナーゼ-1(PDK1)の小分子活性剤であるPS48[(2Z)-5-(4-クロロフェニル)-3-フェニル-2-ペンテン酸]、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤の酪酸ナトリウムおよびバルプロ酸、ミトコンドリアの酸化(例えば、2,4-ジニトロフェノール)、解糖代謝(フルクトース2,6-二リン酸およびシュウ酸)、HIF経路の活性化(N-オキサロイルグリシンおよびケルセチン)を調節する小分子(その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Zhu et al., 2010, Cell Stem Cell 7: 651-655)が挙げられる。Zhuらは、Oct4およびParnateとCHIR99021の組み合わせが、成体ヒト表皮角化細胞のリプログラミングに十分であることを示している。
【0058】
個々のプロトコールは異なるが、リプログラミングのプロトコールは一般的に、組織試料、例えば、皮膚生検材料由来の分化した成体細胞を増殖させること、およびそれらを上述したようなリプログラミング因子と接触させること、例えば、それらに感染させること、つまり、例えば、多能性転写因子の転写産物を含むウイルス構築物などの発現ベクターで形質転換することから構成される。当該分野で知られている方法、例えば、組織を機械的に破砕し、その後酵素を使って解離させて線維芽細胞を放出させる方法、によって線維芽細胞を得て、その後、この線維芽細胞を当該分野で知られている方法、例えばDimos et. al., 2008, Science Vol. 321 (5893): 1218-1221に記載されている方法によって培養する。
【0059】
本発明の例示的な態様では、ベクター、例えば、ウイルスベクター、プラスミドベクターを使用するが、いくつかの態様では、mRNA分子を細胞に移行させることを含む形質移入の技術に、ベクターを必要としない。
【0060】
線維芽細胞への発現ベクターを使った形質移入は、所望のベクターと共に提供される説明に従って行われる。一定の期間おいた後(例えば、形質移入の約2~約10日後の範囲)、細胞を分離し、CD13NEG、SSEA4POSおよびTra-1-60POS表面マーカーに対する、蛍光標識した抗体と接触させる。分離され抗体で標識された細胞を次に、リン酸緩衝生理食塩水で再懸濁し、iPSCクローンの自動的な選別と単離に移る。表面マーカー陽性細胞を標識の色または有無によって選別し、組織培地の入った無菌的なチューブ、またはMEFもしくは細胞を含まない生物学的なマトリックスでコーティングしたマルチウェル(6~96ウェルの)組織培養用プレートに直接入れて、コロニーの形成が目で確認できるようになるまで培養する。
【0061】
その後、生じたコロニーを顕微鏡下で観察することで、または必要に応じて、蛍光でタグを付けた抗体で標識されたクローンを蛍光顕微鏡で観察することで、iPSCであることをさらに確認する。一定の実施形態では必要に応じて、選別と同定を容易にするために、ベクターの1つまたは複数によって、緑色蛍光タンパク質(GFP)発現マーカーも挿入する。多能性ES細胞系と一致する形態的な特徴を有する複数の個別のコロニーを培養物から回収し、個別に増殖させてモノクローナルな培養物を形成する。
【0062】
本発明のシステムの好ましい一実施形態では、iPSCであることを早い段階で確認し、同定するために、処理した細胞を遺伝的解析にかける。好ましくは、この遺伝的解析はサザンブロット法によって行われるが、マイクロアレイ、NanoString、定量的リアルタイムPCR(qPCR)、全ゲノム配列決定、免疫蛍光顕微鏡法、フローサイトメトリーを含むがこれらには限定されない、他の当該分野で知られている方法を使用してもよい。アルカリホスファターゼの酵素活性の検出、細胞膜表面マーカーであるSSEA3、SSEA4、Tra-1-60、Tra-1-81の発現が陽性であること、およびリプログラミングされたヒト線維芽細胞でのKLF4、Oct3/4、Nanog、Sox2転写因子の発現によっても、そのクローンがiPSCであることを確認できる。全てのマーカーが存在することが好ましい。
【0063】
当該分野で知られている任意の形質移入用ベクターがリプログラミング因子として使用でき、それらには例えば、mRNA、マイクロRNA、siRNA、アンチセンスRNAおよびそれらの組み合わせなどのRNAが含まれる。用いることができる他の発現ベクターとしては、例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、シンドビスウイルス、ポックスウイルス、バキュロウイルス、細菌性ファージ、センダイウイルスおよびそれらの組み合わせが挙げられる。使用されるベクターが、例えば非複製性に改変されたセンダイウイルスベクターなどの、複製しないベクターであることが好ましい。好ましいセンダイウイルスベクターは、複製能力がないと同時に、ベクターが保持しているタンパク質をコードしている核酸の生産的な発現を可能にすることを維持しており、それによって、ワクチンが他の細胞へまたは体内へ制御されていない状態で拡がる可能性を全て防いでいる。この種のセンダイベクターは、CytoTune(商標)-iPSCセンダイウイルスベクターキット(DNAVEC、DV-0301)として市販されている。
【0064】
そのようなベクターを成体線維芽細胞に挿入するためには、当該分野で知られている任意の形質移入法、例えば、電気穿孔法、遺伝子銃などを用いてもよい。必要に応じて、化学的な形質移入も、形質移入剤、例えば、ポリマー、リン酸カルシウム、陽イオン脂質、例えば、リポフェクション法などの手段によって行われる。ベクターまたは他の薬剤を成体線維芽細胞に運ぶためには、細胞透過性ペプチドも必要に応じて使用される。簡単に説明すると、細胞透過性ペプチドには、タンパク質由来のペプチド、例えば、タンパク質形質導入ドメインおよび/またはベクターまたは他の薬剤(ペプチドを含む)を細胞に運ぶ両親媒性ペプチドが挙げられる。細胞透過性ペプチドの対象は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Heitz et al., 2009 British Journal of Pharmacology, 157: 195-206によってまとめられている。他の細胞透過性ペプチドも当該分野で知られており、また、Heitz(上記)に開示されている。他の細胞透過性技術、例えば、リポソームおよびナノ粒子なども、本発明の方法に用いてもよいことが想定される。リポソームおよびナノ粒子に関しても、Heitz(上記)に記載されている。
【0065】
形質転換した細胞を同定するために、抗体を使用することもできる。ヒト多能性幹細胞の集団を同定し、特徴解析するためには、幹細胞特異的表面タンパク質に対する4つの抗体、SSEA3、SSEA4、Tra-1-60およびTra-1-81が一般的に使用されている。発生段階特異的胚抗原3および4(SSEA3およびSSEA4)は、ヒト2102Ep細胞に存在するガングリオシドの、連続した領域を認識する、2つのモノクローナル抗体である(Henderson et al., 2002 Stem Cells 20: 329-337; Kannagi et al., 1983, Embo J 2: 2355-2361)。Tra-1-60とTra-1-81抗体は、最初は、ヒト胎児性癌腫(EC)細胞に対して産生されたが(PW et al., 1984, Hybridoma 3: 347-361)、その後、ポドカリキシン(シアロムチンのCD34関連ファミリーのメンバー)と同定された、ケラタン硫酸化糖タンパク質の炭水化物エピトープを特異的に認識することが分かった(Badcock et al., 1999, Cancer Research 59: 4715-4719; Nielsen et al., 2007, PLoS ONE 2: e237; Schopperle and DeWolf, 2007, Stem Cells 25: 723-730)。他のいくつかの表面マーカーが、ES細胞で発現していること、ならびに、CD326またはEpCam(Sundberg et al., 2009, Stem Cell Res 2: 113-124)、CD24(熱安定成抗原)およびCD133(Barraud et al., 2007, Journal of Neuroscience Research 85, 250-259)(Gang et al., 2007, Blood 109: 1743-1751)が含まれることが示されている。Chanら(2009、上記)は、4つのレトロウイルス因子の形質導入を介したリプログラミングによる、線維芽細胞からの真性iPSCの同定は、ライブセルイメージングによって達成でき、かつ、長期にわたる観察によって、線維芽細胞が細胞表面マーカーCD13およびD7Fibの発現を消失し、多能性幹細胞マーカーSSEA4およびTra-1-60の発現を獲得することを報告した(Chan et al., 2009,上記)。
【0066】
したがって、本発明は、本明細書に記載の方法を用いて生成されたiPSC、ならびにそのような細胞の集団をさらに提供する。多様な細胞型に分化する能力を有する、本発明のリプログラミングされた細胞は、多様な適用および治療用途を有する。幹細胞の基本の性質、無限に自己再生する能力および体内であらゆる細胞型に分化できる能力は、それらを治療用途にとって理想的なものにする。
【0067】
様々な実施形態において、システムは、リプログラミングされた細胞を所望の細胞型に分化させる機能性をさらに含む。幹細胞技術の主要な目標は、幹細胞を所望の細胞型に分化させること、すなわち、方向性付けられた分化、または分化転換を介して細胞を生成することである。本明細書に記載の組成物および方法は、細胞のリプログラミングに有用なだけでなく、このような、細胞の所望の表現型への方向付けられた分化および分化転換にも適用できる。すなわち、リプログラミングに関する本明細書に記載の同じ技術が、リプログラミングされた細胞、またはさらに言えば任意の他の幹細胞もしくは前駆細胞の、所望の細胞型への分化に直接適用可能である。
【0068】
多種多様なさらなる細胞型が、分化、分化転換、および脱分化によって作製されてもよい。細胞個体発生の文脈において、「分化する」または「分化している」という用語は、その発生過程によって、細胞がその直接前駆細胞よりさらに下流の発生経路に進行している、発生過程を指す相対語である。したがって、いくつかの実施形態では、用語が本明細書において定義されるようなリプログラミングされた細胞は、続いて、その経路のさらに下流の他の型の前駆細胞(組織特異的前駆体など、例えば、心筋細胞前駆体)に分化することができる、系列が限定された前駆細胞(中胚葉幹細胞など)に、次いで、特定の組織型において特徴的な役割を果たし、さらに増殖する能力を保持していてもまたは保持していなくてもよい、最終段階の分化細胞に分化することができる。
【0069】
分化は典型的には、iPSCを1つまたは複数の分化因子と接触させることによって実施される。本明細書で使用する場合「分化因子」という用語は、本明細書で定義されるように、所望の細胞型へ分化するように細胞を誘導する、発生能を変化させる因子、例えば、タンパク質、RNA、または小分子などを指す、すなわち、分化因子は細胞の発生能を低下させる。いくつかの実施形態では、分化因子は細胞型特異的ポリペプチドであってよく、しかしながらこのことは必須ではない。特定の細胞型への分化には、2つ以上の分化因子が同時におよび/または連続して発現することを必要する場合もある。本明細書に記載のいくつかの態様では、最初に、細胞または細胞集団の発生能を、本明細書に記載のような合成の修飾されたRNAを用いるリプログラミングまたは部分的なリプログラミングによって向上させ、次に、そのようなリプログラミングによって生成された細胞またはその後代細胞を、分化因子をコードする1つまたは複数の合成の修飾されたRNAと接触させるかまたはそのようなRNAを導入することによって、分化するように誘導し、該細胞またはその後代細胞の発生能を低下させる。
【0070】
本明細書で使用する場合「多能性の中間的な細胞を形成せずに」という用語は、ある1つの細胞型が別の細胞型へと、好ましくは一工程で、分化転換することを指し;したがって、多能性の中間的な細胞を形成せずに、分化した表現型または細胞の発生能を改変する方法は、細胞をまず脱分化(またはリプログラミング)し、次いで、別の細胞型へと分化させることを必要としない。その代わりに、その細胞型は、より分化していない表現型を経ずに、1つの細胞型から別の細胞型へと、単に「切り替え」られる。したがって、分化転換とは、細胞の発生能の変化を指し、その変化によって、細胞が同じような発生能をもつ異なる細胞になるように誘導される、例えば、肝臓細胞から膵臓細胞へ、膵臓α細胞から膵臓β細胞へ誘導される。本発明のシステムおよび方法は細胞の分化転換によく適している。
【0071】
様々な態様において、細胞を分化、脱分化、または分化転換するのに有用な分化因子をコードする例示的な遺伝子には、OCT4、NANOG、SOX2、SOX17、HNF4、GATA4、HHEX、CEBPβ、CEBPδ、PRDM16、MYOD1、NKX2.5、MEF2c、ミオカルディン、RUNX2、PDX、NGN、SALL4、もしくはSOX9、またはそれらの組み合わせが含まれる。コードされる転写因子には、Oct4、NANOG、Sox2、Sox9、Sox17、HNF4α2、HNF4α4、HNF4α7、HNF4α8、HNF4γ、GATA4、Hhex、CEBPβ、CEBPδ、PRDM16、MyoD1、Nkx2.5、Mef2c、ミオカルディン、Runx2-I、Pdx1、Ngn3、Sall4、またはRunx2-IIが含まれる。例えば、中胚葉または線維芽細胞の脂肪細胞、軟骨細胞、骨細胞、および筋細胞への分化は、以下の転写因子:CEBPβ/CEBPδ(脂肪細胞)、Sox9(軟骨細胞)、Runx2(骨細胞)、およびMyoD1(筋細胞)を含むキメラタンパク質を用いて実施されてもよい。
【0072】
マイクロ流体を用いて実施される細胞分化技術は当技術分野において公知であり、かつ本発明の実施において利用され得る。そのような技術には、参照により本明細書に組み入れられるWO2013/188748に記載のものが含まれる。WO2013/188748には、ある1つの細胞型から別の細胞型へと細胞を分化転換するためのマイクロ流体装置が記載される。細胞は、1つまたは複数のベクター無しの遺伝子調節因子オリゴヌクレオチドと同時にまたはそれと連続して培養され、次いで、培養の細胞マーカーまたは形態が分化転換の完了を示すときに、回収される。適切な遺伝子調節因子オリゴヌクレオチドには、分化因子をコードするマイクロRNAおよびメッセンジャーRNAが含まれる。分化転換のための条件は、マイクロ流体装置の異なる培養チャンバーに細胞を分けることによって最適化される。細胞は、各チャンバー内で異なる添加剤と共に培養され、次いで、比較される。
【0073】
分化が完了した後、システムは、分化した細胞を増殖させて、下流での使用に十分な数の所望の細胞型を作製するための機能性を有する。
【0074】
処理の任意の段階で、本発明のシステムは、細胞を保存するための機能性を有する。例えば、単離された細胞が保存されてもよく、増殖した細胞が保存されてもよく、リプログラミングされた細胞が保存されてもよく、分化した細胞が保存されてもよい。保存は、細胞寿命を延長させるのに適した任意の条件下で、例えば、約-80℃以下で細胞を凍結させることによって、行われてもよい。
【0075】
さらに、システムは、処理の任意の段階で細胞を解析して、細胞の定性的評価および定量的評価を行う機能性も含む。解析には、当技術分野において公知の任意の種類の細胞解析、例えば、画像解析、細胞数解析、細胞形態解析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)解析、配列解析、DNA解析、RNA解析、遺伝子発現プロファイリング、プロテオーム解析、メタボローム解析、イムノアッセイ、核排除解析、またはそれらの組み合わせなどが含まれてもよい。
【0076】
図1は、処理工程のそれぞれを実施するように構成された単一マイクロ流体ユニット100を含むシステムの実施形態を例示する。システムは、処理工程を制御するための指示を含むコンピュータメモリモジュールおよび指示を実行するように構成されたコンピュータプロセッサモジュールを含む、単一コンピュータモジュール140も含むように示される。
【0077】
処理工程は1つまたは複数のマイクロ流体ユニットを介して実施されてもよいことが理解される。例えば、図2は、第1のマイクロ流体ユニット100および第2のマイクロ流体ユニット200を有するシステムの実施形態を示す。ユニット100は、細胞単離、細胞増殖、細胞リプログラミング、および任意で細胞保存を実施するように動作可能である。ユニット200は、細胞分化および保存を実施するように動作可能である。各ユニットは、単一コンピュータモジュール150によって制御される。
【0078】
任意の数の処理工程が単一マイクロ流体ユニットによって実施されてもよいことが想定される。例えば、各処理工程は、異なるマイクロ流体ユニットによって実施されてもよい。本発明の文脈において、マイクロ流体ユニットは、特定の作業、例えば、細胞の単離、増殖、リプログラミング、および分化をチップ上で実施し得るように設計されるマイクロ流体チップとしてフォーマットされてもよい。単一マイクロ流体チップは、様々なユニットをチップ上の異なる位置に整列させた、複数のマイクロ流体ユニットを含んでもよいことも想定される。実施形態において、チップは、マイクロ流体ユニットが処理過程のいくつかの段階で分離されてもよいように、分離可能であってもよい。例えば、リプログラミングは、チップの第1の領域上に配置されたマイクロ流体ユニットによって実施されてもよく、リプログラミングされた細胞の保存は、チップの第2の領域上に配置されたマイクロ流体保存ユニットによって実施されてもよい。この2つの領域は、リプログラミング領域が保存域から分離され、保存域のみを凍結できるように、相互に分離可能であってもよい。
【0079】
特定の処理作業を達成するために、マイクロ流体ユニットは、それを通じて流体の流れが方向付けられる複数のチャネルを含むように設計され、これらのチャネルは非多孔性基体で形成される。「非多孔性基体」という用語は、フォトリソグラフィーまたは他の適した処理を用いて、その上部に本発明のマイクロ流体ユニットが作製される、固体支持材またはマトリックスを意味する。この材料は典型的には、ポリジメチルシロキサン(PDMS)またはポリメタクリル酸メチル(PMMA)または当技術分野において公知の他の適した材料である。
【0080】
様々な実施形態において、フローチャネルの幅は、約5μmから約1000μmであってよく、より幅の広いフローチャネルでは、約100μm、約100μm以上約150μm以下、約150μm以上200μm以下、約200μm以上250μm以下、約250μm以上約300μm以下、約300μm以上約350μm以下、約350μm以上約400μm以下、約400μm以上約450μm以下、約450μm以上約500μm以下、約500μm以上約550μm以下、約550μm以上600μm以下、約600μm以上約650μm以下、約650μm以上約700μm以下、約700μm以上約750μm以下、約750μm以上800μm以下、約800μm以上約850μm以下、約850μm以上約900μm以下、約900μm以上約950μm以下、950μm以上1000μm以下であってよい。多くの適用において、フローチャネル幅の範囲は約75μmから約125μmが好ましい。しかしながら、ある特定の例では、チャネル幅は1000μmを上回ってもよい。より幅の狭いチャネルでは、幅は、約5μm以上かつ約100μm以下であってよい。チャネル幅は、約10μmから約75μm、約15μmから約50μm、および約20μmから約40μmであってよい。いくつかの実施形態では、チャネル幅は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、または75μmである。高さは、約5μmから約100μm、約10μmから約75μm、約15μmから約50μm、および約20から約40μmであってよい。いくつかの実施形態では、チャネルの高さは、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、または75μmである。断面積は、約20から約13000μm、約50から約10000μm、約200から約8000μm、約250から約5000μm、約500から約3000μmであってよく、多くの実施形態では、約1400から約1600μmであることが好ましい。いくつかの実施形態では、断面積は、約500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、または約2000μmである。本発明のマトリックス装置の個別のチャネルの断面の形状は、同じまたは異なっていてもよく、正方形、長方形、他の多角形、円形、楕円形、半円形、および半楕円形などのさまざまな形状を成してもよい。断面の形状および面積は、同じチャネルの中で異なっていてもよく、以前に記載された製造技術および当技術分野において公知である製造技術によって調製することが出来る。正方形または長方形のチャネル形状が概して好まれる。
【0081】
本発明は一部、機能的構成部品および様々な処理工程に関して記載される。そのような機能的構成部品および処理工程は、特定の機能を実施し、種々の結果を達成するように構成された、任意の数の構成部品、操作、および技術によって認識され得る。例えば、本発明は、様々な生物試料、バイオマーカー、要素、材料、コンピュータ、データ供給源、保存システムおよび媒体、情報収集技術および処理、データ処理基準、統計解析、ならびに回帰分析などを利用してもよく、多様な機能を実行し得る。加えて、本発明は医療診断の文脈において記載されるが、本発明は、任意の数の適用、環境、およびデータ分析と併用して実施されてもよく;記載のシステムは本発明の単なる例示的適用に過ぎない。
【0082】
本発明の様々な態様による処理するための方法は、任意の適切な形で、例えば、コンピュータシステムに対するコンピュータプログラム操作を用いて、実施されてもよい。本発明の様々な態様による例示的システムは、コンピュータシステム、例えば、プロセッサおよびランダムアクセスメモリを含む通常のコンピュータシステム、例えば、遠隔アクセス可能なアプリケーションサーバー、ネットワークサーバー、パーソナルコンピュータ、またはワークステーションと併用して実施される。コンピュータシステムはまた、さらなるメモリ装置または情報ストレージシステム、例えば、大容量ストレージシステムおよびユーザーインターフェース、例えば、通常のモニター、キーボード、およびトラッキング装置なども適切に含む。その一方で、コンピュータシステムは、任意の適切なコンピュータシステムおよび関連機器を含んでもよく、また任意に適切な形で構成され得る。1つの実施形態において、コンピュータシステムは独立型システムを含む。別の実施形態において、コンピュータシステムは、サーバーおよびデータベースを含むコンピュータのネットワークの一部である。
【0083】
情報を受け取る、処理する、および解析するのに必要とされるソフトウェアは、単一装置で実施されてもよく、または複数の装置で実施されてもよい。ソフトウェアは、情報の保存および処理がユーザーに対して遠隔で行われるように、ネットワークを介してアクセス可能であってもよい。本発明の様々な態様によるシステムおよびその様々な要素は、バイオマーカー解析を促進するような機能および操作、例えば、データの収集、処理、解析、報告および/または診断などを提供する。本システムは試料に関連する情報を保持し、また、解析および/または診断も促進し得る。例えば、本実施形態において、コンピュータシステムは、細胞の分析に関連する情報を受領、保存、検索、解析、および報告し得る、コンピュータプログラムを実行する。コンピュータプログラムは、様々な機能または操作を実施する複数のモジュール、例えば、生データを処理し、補足データを作成するための処理モジュール、および生データおよび補足データを解析して特定の作業を実施するシステムをもたらすための分析モジュールを含んでもよい。
【0084】
システムはまた、様々なさらなるモジュールおよび/または個別の機能を提供してもよい。例えば、システムは、例えば、処理機能および解析機能に関連する情報をもたらす報告機能も含んでもよい。システムはまた、例えばアクセスの制限および他の管理機能の実施など様々な管理機能および運営機能を提供してもよい。
【0085】
iPSCまたはそれらに由来する分化細胞を作製するのに必要とされるプロセスの全てまたはいずれかの部分は、マイクロ流体ユニット、または本発明のシステムのマイクロ流体ユニットに動作可能に接続された類似の自動化された処理を用いて実施されてもよいことが理解される。
【0086】
様々な実施形態において、本開示のシステムは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第2013/0345094号に開示されるような以下のワークフローシステムにおいて記載される、1つまたは複数のシステム(システム1~8)を利用するか、または該システムと動作可能に連動してもよい。
【0087】
ワークフローシステム
ワークフローシステムは、それぞれ独立して操作される、4つのユニットに分けられる。
(1)隔離所体細胞単離および成長(システム1);
(2)隔離所アッセイ(システム2);
(3)融解、感染および同定(システム3、4、および5);ならびに
(4)維持、QC、増殖、および凍結(システム6、7、および8)
【0088】
加えて、線維芽細胞を保存するための、自動化された-80貯蔵および回収システム、および1.4mLマトリックスのスクリューキャップ型チューブに入れた、最終的なクローンも本システムの一部である。各ユニットを動作させるシステム、ならびに工程および操作について以下で説明する。
【0089】
システム1、パートA:隔離所での体細胞の単離および成長ワークフロー、生検処理のためのマイコプラズマ予備試験
1.技師は、1週間当たり40個の生検材料を6ウェルディッシュにプレーティングする;
2.6ウェルプレートを、200枚のプレートを入れることができる隔離所インキュベーター中で維持する;
3.一体化されたCyntellect Celigo血球計算器を使用して、定期的に培養密度を確認する。
【0090】
これらの自動化された工程を実施するのに使用してもよいシステムの構成部品としては、一例ではあるが、全てHamilton Science Roboticsから入手可能な、STARlet Manual Load、1000μlのピペット操作チャネルのある、4/8/12ch./MPH用、8チャネル用のModular Arm、およびiSWAPプレート取扱い機が含まれる。遠心分離が必要であるか、望ましい場合には、AgilentのVSpinマイクロプレート用遠心器を使用することができる。ソフトウェアは、Celigo APIソフトウェアであってよい。インキュベーターは、Cytomat インキュベーターであってよい。プレートの取扱い用には、Cytomat 24バーコードリーダー、Cytomat 23mm台、およびCytomat 400mm移動用ステーションを使用することができる。プレートを傾けるためには、Multi Flex傾きモジュールを使用してもよい。システムのコントローラは、Windows XPの作動システムで動かす、Dell PGであってよい。キャリアパッケージはQ Growth キャリアパッケージであってよい。
【0091】
システム1、パートB:隔離所の成長ワークフロー、マイコプラズマ試験
1.インキュベーターから、隔離所Growth STARletのデッキに戻し、ELISAを利用したマイコプラズマ試験用に、培地をウェルからプレートに回収する。
2.96ウェルアッセイプレートを隔離所アッセイSTARletに手動で移す。
【0092】
システム1、パートC:マイコプラズマ試験を通過した後の隔離所成長ワークフロー
1.増殖させた線維芽細胞を、複数の凍結用バイアルに分配し、フタをして、-80℃のSAMに移す。
【0093】
これらの自動化された工程を実施するのに使用してもよいシステムの構成部品は、STARlet Auto Loadを使用しても良い以外は、隔離所の成長ワークフローで使用したものと同じ構成部品から選択することができる。スペクトル収集装置としてはSpectramax Lリーダーを使用することができる。
【0094】
システム2:隔離所アッセイのワークフロー
1.発光法(glow luminescence method)を用いるLonza MycoAlertによる試験。
2.スペクトル収集装置による発光プレートの測定。
【0095】
これらの自動化された工程を実施するのに使用してもよいシステムの構成部品には、全てHamilton Science Roboticsから入手可能な、STARlet Manual Load、1000μlのピペット操作チャネルのある、4/8/12ch./MPH用、8チャネル用のModular Arm、およびiSWAPプレート取扱い機が含まれる。発光アッセイ用には、BioTek Synergy HTリーダーを使用してもよい。システムのコントローラは、Windows XPの作動システムで動かすことのできるDell PGであってよい。キャリアパッケージは、Q Growthキャリアパッケージであってよい。
【0096】
システム3、4、および5:融解、感染および同定
融解モジュールと感染モジュール
1.-80℃のSAMから凍結用チューブを回収する(61、190)
2.加温ブロック上で融解する(122)
3.フタを取る(Hamilton Capper Decapper)(126)
4.培地を加えて凍結保護物質を希釈する(122)
5.スピンする(128)
6.プレーティングデータ中に再懸濁する(122)
7.6ウェルの1ウェル当たり1つの試料をプレーティングする(62、122)
8.インキュベーターに移動する(130、132)
9.線維芽細胞を約3~4日間回復させる
10.Cyntellect Celigo血球計算器で培養密度を確認する(124)11.リプログラミング当日に、全ウェルの線維芽細胞を継代する(122)
12.バッチ内で、トリプシンをウェルに通過させる(122)
13.Cyntellect Celigo血球計算器で細胞を計数する(124)
14.24ウェルプレートの1~3つのウェルに一定数の細胞をプレーティングし、最小限の枚数の24ウェルプレートに試料を固定する(64、122)
15.一晩、プレートをインキュベーターに戻す(130、132)
16.プレートを回収し、チューブ形式内のウイルスを融解し、24ウェルプレートに入っている線維芽細胞のそれぞれのウェルに加える(130、122)
17.毎日、培地の一部を交換する(122)
【0097】
磁気選別モジュール
18.アキュターゼ(accutase)で培養物を回収し、単一細胞の懸濁液にする(134)
19.染色用緩衝液で希釈する(134)
20.線維芽細胞表面マーカーに対する磁気ビーズで染色する(134)
21.洗浄工程(134)
22.磁気(Dynalビーズの場合)またはカラム(Miltenyiシステムの場合)にかける(134、136)
23.磁気を帯びてない画分を回収し、新しいウェルに移す(134)
24.Cyntellect Celigo血球計算器で細胞を計数する(124)
25.継代培地に入れた細胞を、96ウェルプレートの各ウェルにつき1~10個移すことで、細胞を適切な密度に希釈する(66、134)
26.4℃のインキュベーターから、新しいマトリゲルまたはマトリックスでコーティングされている96ウェルプレートを回収する(142)
27.細胞を計数した数に基づいて、例えば、感染1回分のプレート1枚当たり2つの細胞を、96ウェルマトリックスプレートに分配する(66、134)
28.プレートをインキュベーターに戻す(132)
29.毎日、培地の一部を交換する(122)
【0098】
コロニー同定モジュール
30.96ウェルプレートを、インキュベーターからコロニー同定用の液体取扱い機に戻す(66、132、138)
31.多能性表面マーカーを使った生細胞染色を行う(138)
32.Cyntellect Celigo血球計算器で撮影(140)
33.コロニーの境界が明確で、単一のマーカーに陽性なコロニーの入ったウェルを同定する(140)
34.技師は当たりを再確認して、継代用に最初の試料から6つの試料を選択し、プレートおよび陽性ウェルのIDを回収する。
35.単一のマーカー陽性コロニーが入ったウェルを選ぶ(138)
36.4℃のインキュベーターから、新しいマトリゲルまたはマトリックスでコーティングされている96ウェルプレートを回収する(68、142)
37.選択したウェルを回収し、新しい96ウェルマトリックスプレートに継代して、最小限の枚数のプレートにクローンを固定し、それぞれを継代培地中でプレーティングする(68、138)
38.毎日、培地の一部を交換する(122)
【0099】
これらの自動化された工程を実施するのに使用してもよいシステムの構成部品は、1つまたは複数のCORE 96 PROBEHEAD II(1000μlモデル)のプローブヘッドを加える以外は、隔離所の成長ワークフローで使用されているものと同じものから選択することができる。
【0100】
システム6、7、および8:維持、QC、増殖、および凍結
維持モジュール
39.コロニーが十分に高い密度になるまで、96ウェルのマトリックスでコーティングされている新しいプレート中に1:1で連続して継代していく(68~72、160)
40.毎日、96チップヘッドを使っておよそ75%の培地を交換することで、全てのプレートに栄養を供給する(160)
41.Cyntellect Celigo血球計算器を用い、コロニーの密度と成長速度を定期的にモニタリングする(166)
42.プレートを複製し、クローンQC用のプレートを作製する(74~86、160)
43.最終目標は、性質の良くないクローンを排除し、最初の試料よりも2~3倍品質の高いクローンを残すための複数のQCアッセイで使用するために、複数のプレート上でクローンを増殖させることである。
44.QC工程に合格したクローンを選んで再度整列させ、最小限の枚数のプレートに固定する。同時に、合格しなかったクローンは除去する(80、86、160)。
45.この過程を行っている間は毎日、栄養の供給を行う(160)
【0101】
QCモジュール
46.細胞を回収する(74、150)
47.細胞を計数する(164)
48.V型底プレートに、一定数の細胞(細胞数は、1ウェル当たり5000~10000個の範囲)をプレーティングする。1株につき、2~6つの複製を準備する(84、150)
49.インキュベーターに戻す(1g凝集)(172)
50.2日後に培地の交換を行う(150)
51.インキュベーター中でさらに12日間インキュベートする(172)
52.2日毎に培地を一部交換する(150)
53.ウェル中に胚様体を残したままウェルから培地を除去するために、核酸調製ステーションに移動させる(84、192)
54.各試料の複製をまとめて混合するためにRNA溶解緩衝液で再懸濁し、Nanostring nCounterアッセイでの解析に使用できるプレートを作製する(84、192)
【0102】
凍結モジュール
55.継代し、増殖させた後の96ウェルプレートから始める(88)
56.インキュベーター中で6日間インキュベートする(172)
57.毎日、培地の一部を交換する(154)
58.インキュベーターからプレートを取り出す(88、162)
59.培地を除去する(完全に除去する)(154)
60.冷えた予備凍結培地(成長培地で希釈したマトリゲル)を加える(154)
61.インキュベーター中で1時間インキュベートする(172)
62.培地を除去する(完全に除去する)(154)
63.冷やした凍結培地を少量加える(154)
64.プレートを密閉する(88、164)
65.試料を-80℃の貯蔵庫に移し、凍結させる(190)
66.気相の液体窒素中で保存する
【0103】
凍結バイアルの保存
67.継代し、増殖させた後の96ウェルプレートから始める(90)
68.6日間インキュベートする(172)
69.毎日、培地の一部を交換する(154)
70.ウェルを1:1の割合で24ウェルプレートに継代する(92、154)
71.6日間インキュベートする(172)
72.毎日、培地の一部を交換する(154)
73.ウェルを1:1の割合で6ウェルプレートに継代する(94、154)
74.4~6日間インキュベートする(172)
75.毎日、培地の一部を交換する(154)
76.インキュベーターからプレートを取り出す(162)
77.培地の一部を予備凍結培地に置換する(154)
78.インキュベーター中で1時間インキュベートする(172)
79.通常の継代の場合、細胞を凍結用に回収する(154)
80.マトリックスチューブに移す。1ウェルにつき、チューブは2~3本(96、154)
81.スピンして、培地を除去する(168、154)
82.冷凍結培地を加える(154)
83.チューブのフタをする(170)
84.試料を-80℃の貯蔵庫に移す(190)
【0104】
図3に、生検材料のプレーティング(2)、増殖および継代(4)(液体取扱いロボットによる回転培養)、QC(6)(自動化されたマイコプラズマ試験)、および(8)液体取扱いロボットによる自動凍結を含む、システム1によって実施される工程を示す。
【0105】
図4に、システム2、3、および4によって実施される工程を示す。自動化されたシステムによって線維芽細胞をプレーティングし(10)、自動化されたシステムでリプログラミング因子を導入し(12)、自動的な選別および単離によって、iPSCを単離し(14)、自動化されたシステムで所望のクローンを選択して増殖させ(16)、マーカーアッセイおよび胚様体アッセイにより、多能性の状態を自動的に品質確認し(QC)(18)、次いで、所望の細胞を自動的に凍結・貯蔵する(20)。
【0106】
図5は、システム1に含まれる工程(22)から(60)を示すフローチャートである。
【0107】
図5に、ワークフローの一例と、生検材料から線維芽細胞生成までの決定木を図示する。ワークフローは、隔離所の段階(58)とCleanの段階(60)に分けられる。生検材料が設備に投入されたら、技師が生検材料を6ウェルプレートにプレーティングし(22)、プレートを自動インキュベーターに集める(24)。所定の時間が経過し、生検材料がプレートに接着したら、液体取扱いロボットが、栄養を供給し、自動顕微鏡で増殖密度を確認するためにプレートを自動インキュベーターから取り出す(26)。プレートをインキュベーターに戻し、成長させる(28)。液体取扱い機によって、インキュベーターからプレートを取り出し、培地を、抗生物質および抗真菌剤を含まない培地と交換する(30)。ロボットによって、プレートはインキュベーターに戻され、さらに5日間インキュベートする(32)。その後、ロボットによってプレートが取り出され、マイコプラズマ試験用に培地を娘プレートに回収する(34)。マイコプラズマ試験用に、娘プレートを隔離所アッセイシステムに移動する(36)。アッセイの陽性シグナルに基づいて選択を行う(38)。マイコプラズマアッセイの結果、6ウェルプレートの全てのウェルが陽性であったら(40)それらは廃棄する。6ウェルプレートの全てのウェルが陰性で、マイコプラズマを含まなかったら、そのプレートを隔離所からclean成長システムに移す(46)。いくつかのウェルが陽性で、いくつかのウェルが陰性の場合、陰性のウェルを隔離所中で維持する(42)。陰性のウェルを新しいプレートに継代し(44)、インキュベーターに移し、陽性のウェルを含むもとのプレートを廃棄する。これらの培養物を、マイコプラズマの再検査まで進める(24、26、28、30、32、34、36、38)。Clean培養の成長をモニタリングし(50)、継代し(52)そして凍結バイアル中で凍結させる(54、56)。
【0108】
図6A、6B1、6B2、および6Cに、自動化されたリプログラミング過程を行っている間の、マルチウェル組織培養プレートを介した患者試料のフローの例を図示する。各図の上段は、ワークフローのそれぞれの工程(70、88、98)によって実施される手順のフローを説明するフローチャートである。各図の下段のマルチウェル細胞培養プレートは、プレートマップと共に示されている。例えば、灰色のウェルまたは試料の名前の付いているウェルのグループは、試料の入ったウェルを表している(61~68、72~86、88~96)。手順を介した試料の、プレート間またはウェル間の移動は、矢印で示すように、左から右方向に進行する。図6Aに示すように、自動化されたiPSCの誘導過程は、患者試料と対照の線維芽細胞試料(61)が、6ウェルプレートの個々のウェルにプレーティングされた時点から開始される(62)。これらの試料を、リプログラミング因子をコードしているウイルスを用いた感染用またはリプログラミング因子を細胞に導入するための他の手段用に、所定の細胞数で24ウェルプレートの個々のウェルに継代する(64)。次の工程では、セルソーティングまたは、好ましくは、磁気ビーズを使用した濃縮によって、リプログラミングされた試料からリプログラミングされていない細胞を除き、96ウェルプレートの複数のウェルに同じ密度でプレーティングする(66)。この例では、そのようなプレートのうちの2枚を示している。この例では、6つのウェル(ウェルの中央に書いた点で示す)を、自動撮像装置を使った免疫蛍光解析アッセイによって、多能性表面マーカー陽性で、単一のクローンを含むものと同定する(66)。これらのクローンを継代し、選んで最小限の96ウェルプレートに再配列させた(68)。例として示す図では、出発材料それぞれにつき6つのクローンを示しており、かつ、16種の出発材料由来のクローンを96ウェルプレートに並べることができることを示している。プレートの処理を促進するために、この選ぶ工程を複数回の継代にわたって行い、最小限の数のプレート上にクローンを固定することができる。図6B1および6B2に示すように、これらのクローンを、ウェル内の幹細胞コロニーの培養密度がそれぞれの出発材料と同程度になるまで、順次継代する(72)。次に各プレート上の試料を重複プレート上で複製して(74~86)、品質管理(6)および適切な幹細胞特徴を示すクローンの選択が行えるようにする。QC過程を開始するには、このシステムによって、個々のクローンの多能性状態を決定するために必要とされる多能性品質管理アッセイ用のプレートを1枚と(74)、さらに継代を続けるために、もう1枚のプレートを生成する(76)。さらに継代を続けるためのプレートを、再度、さらなる品質管理と増殖用に、3枚のプレートに継代する(78、80、82)。1枚のプレートは、核型と遺伝的多様性の解析を行うQCアッセイ用に回収する(78)。2枚目のプレート(82)は、v底プレートに継代し、iPSクローンの分化能を評価するQCアッセイ用に、胚様体を形成させる(84)。最後のプレート(80)はさらに増殖を続ける。前述の多能性QCアッセイによる品質管理に合格しなかった個々のクローン(図6ではウェル中の「×」で示す)についてはそれ以上継続しない。図6B2で示す例では、固定した単一の96ウェルプレート(86)には、それぞれにつき3つのiPSクローンとして32種類まで、またはクローン1つとして96種類までのiPS細胞株(または分化した細胞株)が含まれる。残りのクローンは、残りが1~3クローンになるまで、できるだけ少数のプレートに固定する(86~92)。図6Cに示すように、これらを、プレートに接着させながら凍結保存するために増殖させるか(88)、あるいはさらに増殖させて(92~94)、その後凍結用バイアル中で凍結保存する(96)。多能性マーカーを用いたスクリーニングからの任意のまたは全ての情報を図6Aに示す(70)。図6B1に示した品質管理アッセイは、単独でまたは組み合わせて用いることで、自動化された過程において、どのクローンを固定および整列用に選択するかを決定することができる。
【0109】
図7A、7B、7Cは、本発明の一実施形態におけるワークフローを達成するために必要とされる機器構成の例を図示している。図7Aに、線維芽細胞バンクの自動的な増殖および品質管理用のシステム構成を示す。図7Bは、患者試料、例えば線維芽細胞を自動的に融解するため、リプログラミング因子を患者試料、例えば線維芽細胞に自動的に導入するため、MultiMACSを使った自動化セルソーティング、および自動的なコロニーの同定および再配列のためのシステムの構成を示している。図7Cは、iPSクローンの自動的な増殖、自動的な胚様体産生、および自動的な凍結用のシステム構成を示している。
【0110】
本明細書において述べられるように、本開示のシステムを利用して処理される細胞は、下流での使用のために保存されてもよい。例えば、本発明の処理された細胞は、対象を治療するために利用されてもよい。例えば、リプログラミングされた細胞または分化した細胞は、対象において疾患または障害を治療するために利用されてもよい。したがって、本発明は、本開示のマイクロ流体ベースのシステムを利用して対象において疾患または障害を治療する方法を提供する。方法は、(a)対象から試料を得る工程;(b)試料をシステムに適用する工程;(c)試料をシステムで処理する工程;および(d)処理した細胞を対象に投与する工程を含む。
【0111】
実施形態において、対象は、試料を得るときに健常である。試料はリプログラミングされた細胞を生成するように処理され、リプログラミングされた細胞はカタログ化され保存される。疾患がありかつ医療的治療の必要があると対象が診断された後、リプログラミングされた細胞は、対象を治療するためにその後用いられる所望の細胞型の分化した細胞を生成するようにさらに処理されてもよい。いくつかの治療では、リプログラミングされた細胞が対象を治療するために用いられてもよい。(外胚葉系列、中胚葉系列、または内胚葉系列の)適切な分化細胞は、本発明の方法によって生成されたiPSCに由来してもよい。投与様式は、治療されるべき器官/損傷の種類に応じて、当業者によって決定することができる。例えば、iPSCまたはそれに由来する分化細胞は、(懸濁物として)注射によって投与されてもよく、または生分解性マトリックス上に移植されてもよい。
【0112】
「健常な」、「正常な」、または「臨床的に正常な」という用語は、対象が、疾患と相関する、公知のまたは明らかなまたは現在検出可能な疾患または機能不全を有さないことを意味する。
【0113】
別の実施形態において、試料が得られる対象は、疾患または障害と診断されているか、またはそれを有するリスクがある。試料は、リプログラミングされた細胞を生成するように処理され、リプログラミングされた細胞は任意で保存される。対象の医療的治療が決定された後に、リプログラミングされた細胞は、対象を治療するのにその後使用される、所望の細胞型の分化細胞を生成するように、さらに処理されてもよい。一部の治療では、リプログラミングされた細胞が対象を治療するために用いられてもよい。
【0114】
「対象」は、任意の動物種、好ましくは、哺乳類種のメンバーであり、ヒトであってもよい。よって、本明細書に記載される方法および組成物は、ヒトおよび家畜の疾患どちらにも適用可能である。さらに、対象は好ましくは生きている生物であるが、本明細書に記載の発明は、加えて死後分析で用いられてもよい。好ましい対象は人であり、最も好ましくは、「患者」であり、本明細書で用いられる場合「患者」は、疾患または状態に対する医療ケアを受けている、生きているヒトを指す。これは、症状の徴候について検査中である、明確な疾病を伴わない人を包含する。対象は、明らかに健常な個体、疾患を患っている個体、または疾患の治療を行っている個体であり得る。
【0115】
さらに、iPSCまたは分化した細胞を含む組成物、例えば、システムによって調製された有効量の細胞を含む、研究ツールとしてまたは薬学的組成物として利用される組成物もまた、本発明の範囲内であることが企図される。
【0116】
加えて本発明は、iPSC、それら由来の分化転換した細胞または分化した細胞と、例えば、1つまたは複数の目的の医用薬剤とを接触させること、および、その後、使用した医用薬剤が接触した細胞に及ぼす影響を検出することによる、医用薬剤を試験する方法に関する。効率を上げるために、医用薬剤を、一連のiPSCまたはそれら由来の分化細胞に使用する。目的の1つまたは複数の医用薬剤に、好ましく反応するまたは好ましくなく反応する細胞または組織型の同定を可能にするために、細胞は、組織源、分化した細胞型、または対立遺伝子源の点で、様々なものであってよい。
【0117】
さらに、本発明の自動化されたシステムによって作製されるiPSCは、遺伝的欠損、例えば骨形成不全症、真性糖尿病、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病)、様々な運動神経疾患(MND)(例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、原発性側索硬化症(PLS)、進行性筋萎縮症(PMA))などを修正するために遺伝子を導入するための媒体として使用してもよい。
【0118】
本発明の自動化されたシステムによって作製されるiPSCを使用して、生物医学的な研究用の特定の細胞型を提供することもでき、同様に直接または前駆体として、細胞を用いたアッセイ用の、例えば細胞毒性研究(被検化合物が細胞毒性に及ぼす影響を決定するための研究)用の特定の細胞型を産生することもでき、細胞を化合物で処理してその細胞に対する化合物の影響、例えば細胞の分化に対する影響を観察および/または記録することによって、被検化合物の催奇性または発癌性を決定することもできる。
【0119】
本発明は、上記実施例を参照して説明されているが、改変および変更が本発明の精神および範囲の範囲内で包含されることが理解されるであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B-1】
図6B-2】
図6C
図7A
図7B
図7C
【手続補正書】
【提出日】2023-08-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載された発明。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
なお一層別の態様では、本発明は細胞バンクを提供する。細胞バンクは、本開示のシステムによって処理される細胞の1つまたは複数の集団を含む。実施形態において、各細胞集団は、将来の使用に適切な温度でカタログ化および保存される。
[本発明1001]
生物試料を処理するためのマイクロ流体システムであって、
(a)該試料を処理するように動作可能な1つまたは複数のマイクロ流体ユニットであって、処理が、
(i)該試料から細胞を単離する工程、
(ii)任意で、単離された細胞を増殖させて増殖させた細胞の集団を生成する工程、
(iii)単離された細胞または増殖させた細胞をリプログラミングする工程、および
(iv)(i)、(ii)、または(iii)の1つまたは複数由来の細胞を保存する工程
を含む、マイクロ流体ユニット;ならびに
(b)処理(i)~(iv)の1つまたは複数を制御するための指示を含む、1つまたは複数のコンピュータメモリモジュール;ならびに
(c)指示を実行するように構成された、1つまたは複数のコンピュータプロセッサモジュール
を含む、マイクロ流体システム。
[本発明1002]
(i)の単離された細胞、(ii)の増殖させた細胞、(iii)のリプログラミングされた細胞、またはそれらの組み合わせの解析を実施するようにさらに動作可能である、本発明1001のシステム。
[本発明1003]
1つまたは複数のマイクロ流体ユニットが、iPSCを分化させて所望の細胞型の細胞を生成するようにさらに動作可能である、本発明1001のシステム。
[本発明1004]
所望の細胞型の細胞に対する解析を実施するようにさらに動作可能である、本発明1003のシステム。
[本発明1005]
所望の細胞型の細胞を保存するようにさらに動作可能である、本発明1003のシステム。
[本発明1006]
単離された細胞が体細胞である、本発明1001のシステム。
[本発明1007]
単離された細胞が白血球である、本発明1001のシステム。
[本発明1008]
前記試料が、全血、血液画分、血清、血漿、尿、汗、リンパ液、糞便、腹水、精液、痰、乳頭吸引液、術後漿液腫、創傷ドレナージ液、唾液、滑液、腹水液、骨髄穿刺液、脳脊髄液、鼻汁、羊水、気管支肺胞洗浄液、胸水、末梢血単核球、皮膚細胞、総白血球、リンパ節細胞、脾臓細胞、皮膚生検材料、臍帯血、臍帯組織、および扁桃腺細胞から選択される、本発明1001のシステム。
[本発明1009]
解析が、画像解析、細胞数解析、細胞表面マーカー解析、サイトカイン分泌解析、細胞形態解析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)解析、配列解析、DNA解析、RNA解析、遺伝子発現プロファイリング、プロテオーム解析、メタボローム解析、イムノアッセイ、核排除解析、またはそれらの組み合わせを含む、本発明1002のシステム。
[本発明1010]
細胞を保存する工程が、細胞を凍結することを含む、本発明1001のシステム。
[本発明1011]
グラフィカルユーザーインターフェースをさらに含む、本発明1001のシステム。
[本発明1012]
少なくとも2つ、3つ、または4つのマイクロ流体ユニットを含む、本発明1001のシステム。
[本発明1013]
マイクロ流体ユニットが無線でまたは電気的に連結される、本発明1012のシステム。
[本発明1014]
マイクロ流体ユニットが流体連結される、本発明1012のシステム。
[本発明1015]
マイクロ流体ユニットが単一収納容器内に配置される、本発明1001のシステム。
[本発明1016]
細胞がマイクロ流体チップ上に保存される、本発明1001のシステム。
[本発明1017]
細胞を-80℃以下で保存するための保存ユニットをさらに含む、本発明1001のシステム。
[本発明1018]
保存された細胞に関連する試料データを処理および保存するようにさらに動作可能である、本発明1001のシステム。
[本発明1019]
細胞が、マスターセルバンクおよびワーキングセルバンクとして保存される、本発明1001のシステム。
[本発明1020]
細胞をリプログラミングする工程が、細胞を1つまたは複数の核リプログラミング因子と接触させることを含む、本発明1001のシステム。
[本発明1021]
核リプログラミング因子が、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または小分子である、本発明1021のシステム。
[本発明1022]
分化が、細胞を1つまたは複数の分化因子と接触させることを含む、本発明1003のシステム。
[本発明1023]
1つまたは複数の分化因子が、ポリペプチド、ベクター無しの遺伝子調節因子オリゴヌクレオチド、マイクロRNA、分化因子をコードするメッセンジャーRNA、または細胞による分化因子の発現に影響を与えるオリゴヌクレオチドである、本発明1022のシステム。
[本発明1024]
生物試料を処理するための方法であって、
(a)本発明1001~1023のいずれかのシステムに該試料を適用する工程;ならびに
(b)(i)該試料から細胞を単離すること、
(ii)任意で、単離された細胞を増殖させて増殖させた細胞の集団を生成すること、
(iii)単離された細胞または増殖させた細胞をリプログラミングすること、および
(iv)(i)、(ii)または(iii)のいずれかからの細胞を保存すること
を含み、それによって生物試料を処理する、該試料をシステムで処理する工程
を含む、方法。
[本発明1025]
リプログラミングされた細胞を分化させて所望の細胞型の細胞を生成する工程をさらに含む、本発明1024の方法。
[本発明1026]
(i)の単離された細胞、(ii)の増殖させた細胞、(iii)のリプログラミングされた細胞、所望の細胞型の細胞、またはそれらの組み合わせを解析する工程をさらに含む、本発明1025の方法。
[本発明1027]
解析が、画像解析、細胞数解析、細胞形態解析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)解析、配列解析、DNA解析、RNA解析、遺伝子発現プロファイリング、プロテオーム解析、メタボローム解析、イムノアッセイ、核排除解析、またはそれらの組み合わせを含む、本発明1026の方法。
[本発明1028]
対象から前記試料を得る工程をさらに含む、本発明1024の方法。
[本発明1029]
対象が、疾患または障害を有するか、またはそれらを有するリスクがある、本発明1028の方法。
[本発明1030]
システムにより処理した細胞で対象を治療する工程をさらに含む、本発明1029の方法。
[本発明1031]
対象が健常な個体である、本発明1028の方法。
[本発明1032]
対象が疾患または障害と診断されるまで、前記試料由来の細胞または前記試料から処理した細胞を保存する工程をさらに含む、本発明1030の方法。
[本発明1033]
保存された細胞を利用して、疾患または障害を治療する工程をさらに含む、本発明1032の方法。
[本発明1034]
対象において疾患または障害を治療する方法であって、
(a)対象から試料を得る工程;
(b)本発明1001~1023のいずれかのシステムに該試料を適用する工程;
(c)(i)該試料から細胞を単離すること、
(ii)任意で、単離された細胞を増殖させて増殖させた細胞の集団を生成すること、
(iii)単離された細胞または増殖させた細胞をリプログラミングすること、
(iv)リプログラミングされた細胞を所望の細胞型に分化させること、および
(v)(i)、(ii)、(iii)、または(iv)のいずれか由来の細胞を保存すること
含む、該試料をシステムで処理する工程;ならびに
(d)(i)~(v)のいずれかの細胞を対象に投与し、それによって対象において疾患または障害を治療する工程
を含む、方法。
[本発明1035]
(i)の単離された細胞、(ii)の増殖させた細胞、(iii)のリプログラミングされた細胞、所望の細胞型の細胞、またはそれらの組み合わせを解析する工程をさらに含む、本発明1034の方法。
[本発明1036]
解析が、画像解析、細胞数解析、細胞形態解析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)解析、配列解析、DNA解析、RNA解析、遺伝子発現プロファイリング、プロテオーム解析、メタボローム解析、イムノアッセイ、核排除解析、またはそれらの組み合わせを含む、本発明1035の方法。
[本発明1037]
対象において疾患または障害を診断する工程をさらに含む、本発明1034の方法。
[本発明1038]
本発明1001~1023のいずれかのシステムによって処理された細胞、またはその細胞画分を含む、薬学的組成物。
[本発明1039]
本発明1001~1023のいずれかのシステムによって処理された細胞の1つまたは複数の集団を含む、細胞バンク。
[本発明1040]
各集団が異なる試料に由来する、本発明1039の細胞バンク。
[本発明1041]
第2の装置と動作可能に連動された、少なくとも1つ、2つ、3つ、または4つのマイクロ流体ユニットを含む、本発明1001のシステム。
[本発明1042]
第2の装置が、細胞培養装置、バイオリアクター、診断装置、画像装置、配列決定装置、核酸増幅装置、核酸もしくはタンパク質単離装置、ゲノム解析装置、細胞単離装置、細胞分画装置、またはそれらの任意の組み合わせである、本発明1041のシステム。
[本発明1043]
第2のシステムが、(i)~(iv)の1つまたは複数を実施するように動作可能な非マイクロ流体装置である、本発明1041のシステム。