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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139087
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】固体撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/148 20060101AFI20230926BHJP
   H04N 25/70 20230101ALI20230926BHJP
【FI】
H01L27/148 B
H04N25/70
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115747
(22)【出願日】2023-07-14
(62)【分割の表示】P 2017169466の分割
【原出願日】2017-09-04
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 光人
(72)【発明者】
【氏名】平光 純
(72)【発明者】
【氏名】米田 康人
(72)【発明者】
【氏名】村松 雅治
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電荷転送効率が向上された固体撮像装置を提供する。
【解決手段】固体撮像装置は、第一方向D1に並んだ複数の光電変換部と、対応する光電変換部と第二方向D2で並び、かつ、対応する光電変換部で発生した電荷を転送する転送部と、を備える。光電変換部は、入射光に応じて電荷を発生する光感応領域6を有する。光感応領域は、第一不純物領域11と、第一不純物領域に比して不純物濃度が高い第二不純物領域12と、を含む。第二不純物領域は、光感応領域において、第二方向で一端6aから他端6bまで設けられており、平面視での形状は、光感応領域における中心線G1に対して線対称であり、幅Wは、転送方向TDで増加しており、光感応領域を第二方向にn分割(nは2以上の整数)した各区間における第二不純物領域の幅の増加率は、転送方向で次第に大きくなっている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に並んだ複数の光電変換部と、
対応する前記光電変換部と前記第一方向に交差する第二方向で並び、かつ、対応する前記光電変換部で発生した電荷を転送する転送部と、
前記第二方向で、前記転送部との間に前記複数の光電変換部が位置するように、前記複数の光電変換部と前記第二方向で並ぶ入力ゲート部と、を備え、
前記光電変換部は、入射光に応じて電荷を発生する光感応領域を有し、
前記光感応領域は、第一不純物領域と、前記第一不純物領域に比して不純物濃度が高い第二不純物領域と、を含み、
前記入力ゲート部は、
半導体層と、
前記半導体層上に配置されていると共に、所定の信号が与えられることにより、前記半導体層のポテンシャルを前記光感応領域のポテンシャルより浅い状態とする電極と、を含み、
前記第二不純物領域は、前記光感応領域において、前記第二方向で前記転送部とは反対側に位置する一端又は前記一端の近傍から前記転送部側に位置する他端まで設けられており、
前記第二不純物領域の前記第一方向での幅は、前記一端から前記他端に向かう転送方向で増加している、固体撮像装置。
【請求項2】
前記光電変換部は、前記第一方向での幅に対して前記第二方向での長さが大きい長尺形状を呈している、請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記半導体層のポテンシャルは、前記転送部でのポテンシャルの変化によらず、前記光感応領域のポテンシャルより浅い状態とされる、請求項1又は2に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記光感応領域を前記第二方向にn分割(nは2以上の整数)した各区間における前記第二不純物領域の前記幅の増加率は、前記転送方向で次第に大きくなっている、請求項1~3の何れか一項に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記各区間における前記第二不純物領域の前記幅は、隣り合う前記各区間における前記光感応領域の電位差が一定となるように設定されている、請求項4に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記各区間は、前記光感応領域を前記第二方向にn等分(nは2以上の整数)した各区間である、請求項4又は5に記載の固体撮像装置。
【請求項7】
前記各区間は、前記光感応領域を、前記第二方向での幅が前記転送方向で次第に狭くなるように分割した各区間である、請求項4又は5に記載の固体撮像装置。
【請求項8】
前記各区間のうち前記他端に最も近い区間における前記第二不純物領域の前記幅の増加率は、前記他端側で大きくなるよう変化している、請求項4~7の何れか一項に記載の固体撮像装置。
【請求項9】
前記各区間における前記第二不純物領域の前記幅は、前記各区間内において前記転送方向で単調に増加する、請求項4~8の何れか一項に記載の固体撮像装置。
【請求項10】
前記第一不純物領域と、前記第二不純物領域とは、第一導電型であり、
前記光感応領域は、前記第一不純物領域及び前記第二不純物領域と異なる層に位置すると共に前記第一不純物領域及び前記第二不純物領域とpn接合を形成する第二導電型の半導体層を更に含む、請求項1~9の何れか一項に記載の固体撮像装置。
【請求項11】
前記光感応領域は、一対の前記第一不純物領域を含み、
前記第二不純物領域は、前記第一方向で一対の前記第一不純物領域に挟まれている、請求項10に記載の固体撮像装置。
【請求項12】
前記第一不純物領域と、前記第二不純物領域と、前記入力ゲート部が含む前記半導体層とは、同じ導電型である、請求項1~11の何れか一項に記載の固体撮像装置。
【請求項13】
前記第二不純物領域の平面視での形状は、前記光感応領域における前記第二方向に沿った中心線に対して線対称である、請求項1~12の何れか一項に記載の固体撮像装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
第一方向に並んだ複数の光電変換部と、対応する光電変換部と第一方向に交差する第二方向で並び、かつ、対応する光電変換部で発生した電荷を転送する転送部と、を備えた固体撮像装置が知られている(たとえば、特許文献1)。特許文献1に記載の固体撮像装置において、光電変換部は、入射光に応じて電荷を発生する光感応領域を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-90906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような固体撮像装置において、たとえば光電変換部の第二方向での長さを長くする場合、電荷を転送する距離が長くなるので、電荷を効率よく転送する必要が生じる。従来、電荷を効率よく転送するために、光電変換部に不純物を追加注入することにより、光感応領域の不純物濃度を変化させることがある。たとえば、上記特許文献1に記載の固体撮像装置においては、光感応領域が、第一不純物領域と、第一不純物領域に比して不純物濃度が高い第二不純物領域と、を有している。第二不純物領域は、第二方向で、転送部とは反対側に位置する一端から転送部側に位置する他端に向かう転送方向で次第に幅広となる台形形状を呈している。このような形状の第二不純物領域により、光感応領域において、転送方向で次第に高くなる電位勾配が形成される。
【0005】
第二不純物領域の形状に応じて、形成される電位勾配が変化することが知られている。しかしながら、従来、第二不純物領域の形状は、これを決定する者の感覚や経験によることが多いため、電荷を効率よく転送するのに十分な電位勾配を形成することが難しい。その結果、電荷転送時間が増大してしまうという問題があり、電荷転送効率のさらなる向上が求められている。
【0006】
本発明は、電荷転送効率が向上された固体撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、たとえば上記特許文献1に記載されているように第二不純物領域が台形形状を呈している場合には、光感応領域において電位勾配の小さい箇所が生じてしまうとの知見を得た。この知見に基づき、本発明者らは、電位勾配の小さい箇所が生じ難い第二不純物領域の形状を形成することによって、電荷転送効率が向上することを見出した。そして、このような第二不純物領域の形状について本発明者らが鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明に係る固体撮像装置は、第一方向に並んだ複数の光電変換部と、対応する光電変換部と第一方向に交差する第二方向で並び、かつ、対応する光電変換部で発生した電荷を転送する転送部と、を備え、光電変換部は、入射光に応じて電荷を発生する光感応領域を有し、光感応領域は、第一不純物領域と、第一不純物領域に比して不純物濃度が高い第二不純物領域と、を含み、第二不純物領域は、光感応領域において、第二方向で転送部とは反対側に位置する一端又は一端の近傍から転送部側に位置する他端まで設けられており、第二不純物領域の平面視での形状は、光感応領域における第二方向に沿った中心線に対して線対称であり、第二不純物領域の第一方向での幅は、一端から他端に向かう転送方向で増加しており、光感応領域を第二方向にn分割(nは2以上の整数)した各区間における第二不純物領域の幅の増加率は、転送方向で次第に大きくなっている。
【0009】
本発明の固体撮像装置では、第二不純物領域の幅が転送方向で増加しているので、光感応領域において一端から他端に向かうにしたがい電位が高くなる電位勾配が形成されている。第二不純物領域は、平面視で、光感応領域における第二方向に沿った中心線に対して線対称の形状であるので、光感応領域においてはどの位置で電荷が発生しても同じ効率で電荷の転送が行われる。光感応領域を第二方向にn分割した各区間における第二不純物領域の幅の増加率は、転送方向で次第に大きくなっている。このような形状の第二不純物領域によって、光感応領域において電位勾配の小さい箇所が生じ難くなるので、電荷が効率よく転送される。したがって、電荷転送効率が向上された固体撮像装置が提供される。
【0010】
各区間における第二不純物領域の幅は、隣り合う各区間における光感応領域の電位差が一定となるように設定されていてもよい。このような幅の第二不純物領域によって、光感応領域における電位勾配が略一定となるので、電荷が効率よく転送される。
【0011】
各区間は、光感応領域を第二方向にn等分(nは2以上の整数)した各区間であってもよい。
【0012】
各区間は、光感応領域を、第二方向での幅が転送方向で次第に狭くなるように分割した各区間であってもよい。
【0013】
各区間のうち他端に最も近い区間における第二不純物領域の幅の増加率は、他端側で大きくなるよう変化していてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電荷転送効率が向上された固体撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】固体撮像装置の平面構成を示す図である。
図2】固体撮像装置の断面図である。
図3】固体撮像装置の光感応領域を模式的に示す図である。
図4】固体撮像装置において形成される電位の変化を説明するための図である
図5】第二不純物領域の幅を説明するための図である。
図6】ノッチ幅毎の光感応領域の電位を示すグラフである。
図7】各等分点に対応する第二不純物領域の各幅を示すグラフである。
図8】本実施形態の第二不純物領域を含む光感応領域をシミュレーションモデルとして作成した図である。
図9図8のシミュレーションモデルを用いて、光感応領域のポテンシャルをシミュレーションした結果を三次元空間で示すグラフである。
図10】転送方向での電位勾配を示すグラフである。
図11】従来の第二不純物領域を模式的に示す図である。
図12】光感応領域における電位勾配を、本実施形態と従来とで比較して示すグラフである。
図13】転送時間に対応するイメージラグの実測値を、本実施形態と従来とで比較して示すグラフである。
図14】他の実施形態に係る第二不純物領域を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0017】
まず、図1図4を参照して、本実施形態に係る固体撮像装置1について説明する。図1は、固体撮像装置1の平面構成を示す図である。図2は、固体撮像装置1の断面図であって、図1におけるII-II線に沿った断面構成を示す図である。図3は、固体撮像装置1の光感応領域6を模式的に示す図である。図4は、固体撮像装置1において形成される電位の変化を説明するための図である。
【0018】
図1に示されるように、固体撮像装置1は、受光部3と、複数の入力ゲート部4と、複数の転送部7と、電荷出力部としてのシフトレジスタ9と、を備えている。固体撮像装置1は、たとえば、埋込型のCCDリニアイメージセンサである。
【0019】
受光部3は、複数の光電変換部5を有している。複数の光電変換部5は、第一方向D1に並んでいる。光電変換部5は、入力ゲート部4と転送部7との間に位置する。光電変換部5は、第一方向D1での幅に対して第一方向D1と交差する第二方向D2での長さが約1~500倍である長尺の矩形状を呈している。本実施形態では、第一方向D1は、光電変換部5の二つの長辺の対向方向に沿う方向であり、Y軸に沿った正方向及び負方向の双方向を意味する。第二方向D2は、光電変換部5の二つの短辺の対向方向に沿う方向であり、X軸に沿った正方向及び負方向の双方向を意味する。第一方向D1と第二方向D2とは直交している。
【0020】
各光電変換部5は、入射光に応じて電荷を発生する光感応領域6を一つ有している。光感応領域6は、平面視において、二つの長辺と二つの短辺とによって形作られる矩形状を呈している。複数の光感応領域6は、第一方向D1に並んで配置されている。複数の光感応領域6は、第一方向D1を一次元方向として、当該一次元方向にアレイ状に配置されている。一つの光感応領域6は、受光部3における一画素を構成する。
【0021】
光感応領域6は、不純物濃度が異なる複数の不純物領域を含んでいる。図3に示されるように、光感応領域6は、一対の第一不純物領域11と、一対の第一不純物領域11に比して不純物濃度が高い一つの第二不純物領域12と、を含んでいる。第一不純物領域11及び第二不純物領域12の構成の詳細は、後述する。
【0022】
第二不純物領域12は、光感応領域6において、第二方向D2で一方の短辺6aから他方の短辺6bまで設けられている。本実施形態において、第二不純物領域12は、短辺6aから短辺6bまで連続的に延びている。短辺6aは、光感応領域6における転送部7とは反対側に位置する一端である。短辺6bは、光感応領域6における転送部7側に位置する他端である。第二不純物領域12は、第一方向D1で一対の第一不純物領域11に挟まれている。
【0023】
第二不純物領域12の平面視での形状は、光感応領域6における第二方向D2に沿った中心線G1に対して線対称である。中心線G1は、光感応領域6の一対の長辺6c,6dに平行であり、かつ、各長辺6c,6dからの距離が同等であるように位置する線をいう。本実施形態において「同等」とは、等しいことに加え、測定誤差又は予め設定された範囲での微差などを含んだ値を同等としてもよい。第二不純物領域12の平面視での形状が中心線G1に対して線対称であるとは、第二不純物領域12を中心線G1で分けたときに、中心線G1を挟んで位置する各領域の形状が互いに鏡像となっており、面積又は数が同等であることをいう。
【0024】
第二不純物領域12の第一方向D1での幅Wは、短辺6a側から短辺6b側に向かうにしたがい増加している。以下、第一方向D1での幅を単に「幅」とする。第二不純物領域12の形状の詳細については、図5を参照して後述する。
【0025】
第二不純物領域12によって、光感応領域6においては、短辺6a,6bの対向方向(第二方向D2)に沿って、短辺6aから短辺6bに向かう方向(図1のX軸正方向)で高くされた電位勾配が形成される。これにより、光感応領域6に発生した電荷は、光感応領域6において短辺6aから短辺6bに向かう方向で転送され、光感応領域6の短辺6b側から排出される。以下、短辺6aから短辺6bに向かう方向を「転送方向TD」とする。
【0026】
図1に示されるように、各入力ゲート部4は、光感応領域6にそれぞれ対応し、かつ、対応する光感応領域6の短辺6a側に配置されている。すなわち、複数の入力ゲート部4は、光感応領域6の短辺6a側に、第二方向D2で光感応領域6(光電変換部5)と並ぶように配置されている。入力ゲート部4は、光感応領域6の短辺6a側に所定の電位を与える。
【0027】
各転送部7は、光感応領域6にそれぞれ対応し、かつ、対応する光感応領域6の短辺6b側に配置されている。すなわち、複数の転送部7は、光感応領域6の短辺6b側に、第二方向D2で光感応領域6(光電変換部5)と並ぶように配置されている。転送部7は、光感応領域6とシフトレジスタ9との間に位置する。転送部7は、光感応領域6から排出された電荷を取得し、取得した電荷をシフトレジスタ9に向けて転送する。
【0028】
シフトレジスタ9は、各光感応領域6とで各転送部7を挟むように配置されている。すなわち、シフトレジスタ9は、光感応領域6の短辺6b側に配置されている。シフトレジスタ9は、各転送部7から転送された電荷を取得し、Y軸負方向に転送し、アンプAに順次出力する。シフトレジスタ9から出力された電荷は、アンプAによって電圧に変換され、光感応領域6毎の電圧として固体撮像装置1の外部に出力される。
【0029】
隣り合う光感応領域6の間及び隣り合う転送部7の間は、アイソレーション領域が配置されている。アイソレーション領域は、光感応領域6間及び転送部7間それぞれにおける電気的な分離を実現している。
【0030】
受光部3、入力ゲート部4、複数の転送部7、及びシフトレジスタ9は、半導体基板10に形成されている。すなわち、固体撮像装置1は、半導体基板10を有している。本実施形態では、半導体基板10としてシリコン基板が用いられている。半導体基板10は、図2に示されるように、半導体基板10の基体となる本体層10Aと、本体層10Aの一方面側に形成された表面層22~27と、を含んでいる。
【0031】
本体層10Aは、p型半導体層である。表面層22は、n++型半導体層である。表面層23は、n-型半導体層である。表面層24は、本体層10Aの上に形成された一対のn型半導体層24a及び一つのn+型半導体層24b(図3参照)と、n型半導体層24a及びn+型半導体層24bの上に形成された一つのp+型導体層24cと、を含んでいる。図3に示されるように、n+型半導体層24bは、第一方向D1で一対のn型半導体層24aに挟まれている。表面層25は、n-型半導体層である。表面層26は、n型半導体層である。表面層27は、p+型半導体層である。p型及びn型の各導電型は、前述したものとは逆になるように入れ替えられていてもよい。
【0032】
導電型に付された「+」は、高不純物濃度を示す。導電型に付された「-」は、低不純濃度を示す。低不純物濃度は、「-」が付された導電型の不純物の一部が、「-」が付された導電型とは逆の導電型の不純物により補償されることにより、見かけ上、低不純物濃度とされた態様も含む。「+」の数は、「+」が付された導電型の不純物の濃度の度合いを示し、「+」の数が多いほど、「+」が付された導電型の不純物の濃度が高いことを示す。n型の不純物としてはN、P又はAsなどがあり、p型の不純物としてはB又はAlなどがある。
【0033】
p型半導体層である本体層10Aとn型半導体層24a及びn+型半導体層24bとの界面には、pn接合が形成される。n型半導体層24a及びn+型半導体層24bにより、光の入射により電荷を発生する光感応領域6が構成される。n型半導体層24aは、光感応領域6のうち、前述した第一不純物領域11を構成する。n型半導体層24aの形状に対応し、第一不純物領域11の形状が形成される。n+型半導体層24bは、前述した第二不純物領域12を構成する。n+型半導体層24bの形状に対応し、第二不純物領域12の形状が形成される。
【0034】
n+型半導体層24bは、n型半導体層24aよりもn型不純物濃度が高い。図3に示されるように、n型不純物濃度が高いn+型半導体層24bの幅Wが、転送方向TDで次第に大きくなっている。転送方向TDで短辺6a側では、n型不純物濃度が高いn+型半導体層24bの幅が小さいため、ポテンシャルが浅くなり、転送方向TDで短辺6b側では、n型不純物濃度が高いn+型半導体層24bの幅が大きいため、ポテンシャルが深くなる。これにより、表面層24には、図4に示されるように、転送方向TDで次第に深くなるポテンシャルの傾斜(転送方向TDで次第に高くなる電位勾配)が形成される。
【0035】
表面層23に対して、電極41が配置されている。電極41は、絶縁層20を介して表面層23上に形成されている。電極41と表面層23とによって、入力ゲート部4が構成される。電極41には、制御装置102により制御される駆動回路101から信号IGが与えられ、この信号IGに応じて表面層23の電位が決定される。表面層23の電位は、表面層24の電位よりも低く決定される。よって、図4に示されるように、表面層23のポテンシャルは、表面層24のポテンシャル(すなわち、光感応領域6のポテンシャル)よりも浅い状態とされる。
【0036】
表面層25に対して、電極42が配置されている。電極42は、絶縁層20を介して表面層25上に形成されている。電極42と表面層25とによって、転送部7が構成される。電極42には、制御装置102により制御される駆動回路101から信号TGが与えられ、この信号TGに応じて表面層25の電位が変化する。表面層25のポテンシャルは、図4の(a)に示されるように表面層24のポテンシャルより浅い状態、又は、図4の(b)に示されるように表面層24のポテンシャルより深い状態とされる。このようなポテンシャルの変化により、転送部7は、光感応領域6から電荷を取得し、シフトレジスタ9へ送り出す。
【0037】
表面層26に対して、電極43が配置されている。電極43は、絶縁層20を介して表面層26上に形成されている。電極43と表面層26とによって、シフトレジスタ9が構成される。電極43には、制御装置102により制御される駆動回路101から信号PHが与えられ、この信号PHに応じて表面層26の電位が変化する。表面層26のポテンシャルは、図4の(a)に示されるように表面層24のポテンシャルより浅くかつ表面層25のポテンシャルより深い状態、又は、図4の(b)に示されるように表面層24のポテンシャルより深くかつ表面層25のポテンシャルより深い状態とされる。このようなポテンシャルの変化により、シフトレジスタ9は、転送部7から電荷を取得し、取得した電荷をアンプAに送り出す。
【0038】
表面層27は、表面層22~26を、半導体基板10の他の部分から電気的に分離している。前述したアイソレーション領域は、表面層27により構成できる。電極41~43は、たとえばポリシリコン膜からなる。前述した絶縁層20は、たとえばシリコン酸化膜からなる。
【0039】
次に、図5を参照して、第二不純物領域12の形状の詳細について説明する。図5は、第二不純物領域12の幅Wを説明するための図である。図5の(a)は、光感応領域6を模式的に示す図であって、第二方向D2で長さLの光感応領域6を第二方向D2にn分割した(nは2以上の整数)各区間L,…,L,…,L(kは2以上かつn-1以下の整数)における第二不純物領域12の幅W,…,W,…,Wを示す図である。各区間L,…,L,…,Lにおける第二不純物領域12の幅W,…,W,…,Wとは、たとえば、各区間L,…,L,…,Lにおける短辺6bに最も近い位置での幅であり、各区間L,…,L,…,Lにおける最大幅である。幅Wは、区間L1における最小幅であり、光感応領域6における転送方向TDで最も上流側の一端(短辺6a)での第二不純物領域12の幅である。各区間L,…,L,…,Lにおける第二不純物領域12の幅W,…,W,…,Wは、最大幅に限らず、各区間L,…,L,…,Lにおける幅の平均値などであってもよい。図5の(b)は、各区間L,…,L…,Lにおける光感応領域6の電位勾配を示すグラフである。図5の(b)の横軸は、光感応領域6における転送方向TDに沿った位置[μm]を示し、図5の(b)の縦軸は、各位置における最大電位[V]を示している。
【0040】
本実施形態において、各区間L,…,L…,Lは、光感応領域6を第二方向D2にn等分した各区間である。等分とは、等しい分量に分けることを意味するが、各区間は、測定誤差又は予め設定された±数μmの範囲の微差などが含まれることにより完全に等しい分量に分かれていなくてもよい。図5の(a)に示されるように、第二不純物領域12の幅W,…,W,…,Wの増加率ΔW,…,ΔW,…ΔW(ΔW=W-Wk-1)は、転送方向TDで次第に大きくなっている。各区間L,…,L…,L内において、第二不純物領域12の幅は、転送方向TDの上流側から下流側に向かって次第に大きくなっている。すなわち、各区間L,…,L…,L内において、転送方向TDの上流側の端部から下流側の端部まで、第二不純物領域12の幅は転送方向TDで単調に増加している。図5の(b)に示されるように、第二不純物領域12の幅W,…,W,…,Wは、隣り合う各区間L,…,L…,Lにおける電位差ΔV,…,ΔV,…,ΔV(ΔV=V-Vk-1)が、どの区間L,…,L…,Lでも一定となるように設定されている。ただし、ΔV=V-Vであり、Vは、幅Wに対応する光感応領域6の電位である。
【0041】
次に、前述の第二不純物領域12の形状を決定する方法について具体的に説明する。まず、第二不純物領域12の幅W,…,W,…,Wを求める方法について説明する。第一の手順として、転送方向TDで一定のノッチ幅(0.8μm~6.1μmの範囲の所定幅)を有する第二不純物領域12を有する固体撮像装置のモデルを用いて、ノッチ幅毎の光感応領域6の電位を算出する。図6は、ノッチ幅毎の光感応領域6の電位を示すグラフである。図6の横軸は、ノッチ幅[μm]を示し、図6の縦軸は、ノッチ幅に対応する光感応領域6の最大電位[V]を示している。図6の縦軸は、上方向にいくほど最大電位が大きく、下方向にいくほど最大電位が小さいことを示している。
【0042】
第二の手順として、図6のグラフから、ノッチ幅が0.8μm~6.1μmの範囲に対応する範囲の電位をn等分し(図6に示される例では、12等分している。)、n=1,…,k,…nの各等分点でのノッチ幅を読み取り、読み取られた各等分点でのノッチ幅を、各等分点に対応する第二不純物領域12の各幅W,…,W,…,Wとする。以上の第一及び第二の手順によって、隣り合う各区間における光感応領域6の電位差が一定となるような第二不純物領域12の各幅W,…,W,…,Wが求められる。なお、幅Wは、ノッチ幅の最小値(0.8μm)として求められる。
【0043】
続いて、求めた第二不純物領域12の各幅W,W,…,W,…,Wを用いて、第二不純物領域12の形状を決定する。具体的には、図7のグラフに示されるように、図6のグラフから求めた第二不純物領域12の各幅W,W,…,W,…,Wを、n=0,1,…,k,…nの各等分点に対応させてプロットする。図7は、各等分点に対応する第二不純物領域12の各幅W,W,…,W,…,Wを示すグラフである。図7の横軸は、n=0,1,…,k,…nの等分点を示し、図7の縦軸は、各幅W,W,…,W,…,Wの中心を基準とした位置[μm]を示している。図7の縦軸は、第二不純物領域12の第一不純物領域11に対する境界位置でもある。これにより、第二不純物領域12の形状が決定される。第二不純物領域12の形状は、光電変換部5の転送方向TDでの長さによらず、図7のグラフに示される形状と相似形状となる。
【0044】
次に、以上のようにして決定される第二不純物領域12の形状が、電荷転送効率を向上するのに最適な形状であることを示すためにシミュレーションを行った結果を図8図10に示す。図8は、本実施形態の第二不純物領域12を含む光感応領域6をシミュレーションモデルとして作成した図である。図9は、図8のシミュレーションモデルを用いて、光感応領域6のポテンシャルをシミュレーションした結果を三次元空間で示すグラフである。図9のx軸正方向が転送方向TDに相当する。図9の縦軸は、最大電位を示し、上方向にいくほど最大電位が小さく(ポテンシャルが浅く)、下方向にいくほど最大電位が大きい(ポテンシャルが深い)ことを示している。図10は、転送方向TDでの電位勾配を示すグラフであって、図9の結果に基づき、光感応領域6における転送方向TDでの位置に対応する電位の値をプロットしたグラフである。図10の横軸は、光感応領域6の転送方向TD(x軸正方向)での位置[μm]を示し、図10の縦軸は、各位置における光感応領域6の最大電位[V]を示している。図10の縦軸は、上方向にいくほど最大電位が小さく、下方向にいくほど最大電位が大きいことを示している。
【0045】
図10に示されるように、光感応領域6における電位勾配は、光感応領域6の転送方向TDに沿う略全領域に亘って、略一定となっている。光感応領域6に発生した電荷は、略一定の傾きの電位勾配に沿って転送されるので、効率良く転送される。
【0046】
続いて、従来技術と比較し、本実施形態の第二不純物領域12の形状が電荷転送効率を向上するために最適な形状であることを示す。図11は、従来の第二不純物領域50A,50Bを模式的に示す図である。図11の(a)に示されるように、第二不純物領域50Aは、幅Wの増加率が、短辺6aから短辺6b側の末端領域EAに至るまで一定となっている。図11の(b)に示されるように、第二不純物領域50Bは、幅Wの増加率が、短辺6aから短辺6bまで一定となっている。
【0047】
図12は、光感応領域6における電位勾配を、本実施形態と従来とで比較して示すグラフである。図12のグラフ60aは、第二不純物領域12を含む光感応領域6の結果を示しており、図10のグラフに対応する。図12のグラフ60b,60cは、第二不純物領域50A,50Bを含む光感応領域6をそれぞれシミュレーションモデルとして作成し、各当該シミュレーションモデルを用いて光感応領域6における電位をシミュレーションにより求めた結果である。グラフ60bは第二不純物領域50Aを含む光感応領域6の結果を示し、グラフ60cは第二不純物領域50Bを含む光感応領域6の結果を示している。
【0048】
図12のグラフ60a~60cに示されるように、第二不純物領域50A,50Bを含む光感応領域6では、何れも、特に光感応領域6の転送方向TDで中央から末端(100μm~200μm)にかけて電位勾配が減少する箇所が生じている。これに対し、本実施形態の第二不純物領域12を含む光感応領域6では、電位勾配が減少する箇所が生じておらず、略一定である。したがって、本実施形態では、従来に比して、光感応領域6の電位勾配の小さい箇所が生じ難く、電荷が効率よく転送されることがシミュレーションによって示された。
【0049】
図13は、転送時間に対応するイメージラグの実測値を、本実施形態と従来とで比較して示すグラフである。図13の横軸は、光感応領域6における電荷の転送時間[μs]を示し、図13の縦軸は、イメージラグ[%]を示す。イメージラグとは、転送しきれずに光感応領域6に電荷が残ることにより生じる残像である。図13のグラフ61aは、第二不純物領域12を含む光感応領域6のイメージラグの実測結果を示している。図13のグラフ61bは、第二不純物領域50Aを含む光感応領域6のイメージラグの実測結果を示している。図13のグラフ61cは、第二不純物領域50Bを含む光感応領域6のイメージラグの実測結果を示している。
【0050】
図13のグラフ61a~61cに示されるように、第二不純物領域50A,50Bを含む光感応領域6に比して、本実施形態の第二不純物領域12を含む光感応領域6では、イメージラグが大幅に減少している。したがって、本実施形態では、従来に比して、光感応領域6の電荷転送効率が向上することが実測値でも示された。
【0051】
以上、本実施形態に係る固体撮像装置1によれば、第二不純物領域12の幅Wが転送方向TDで増加しているので、光感応領域6において短辺6aから短辺6bに向かうにしたがい電位が高くなる電位勾配が形成されている。第二不純物領域12は、平面視で、光感応領域6における中心線G1に対して線対称の形状であるので、光感応領域6においてはどの位置で電荷が発生しても同じ効率で電荷の転送が行われる。光感応領域6を第二方向D2にn分割した各区間L,…,L…,Lにおける第二不純物領域12の幅W,…,W,…,Wの増加率ΔW,…,ΔW,…,ΔWは、転送方向TDで大きくなっている。このような形状の第二不純物領域12によって、光感応領域6において電位勾配の小さい箇所が生じ難くなるので、電荷が効率よく転送される。したがって、電荷転送効率が向上された固体撮像装置1が提供される。
【0052】
第二不純物領域12の幅W,…,W,…,Wは、隣り合う各区間L,…,L…,Lにおける電位差が一定となるように設定されている。このような幅W,…,W,…,Wの第二不純物領域12によって、光感応領域6における電位勾配が略一定となるので、電荷が効率よく転送される。特に、本実施形態のように光電変換部5が長尺であり光感応領域6における転送距離が長くなる場合には、このような略一定の電位勾配を形成することが有効である。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他に適用したものであってもよい。
【0054】
たとえば、第二不純物領域12の形状は、上記実施形態で示した例に限られず、図14に示される第二不純物領域12A~12Eのような種々の形状を取り得る。図14は、他の実施形態に係る第二不純物領域12A~12Eを模式的に示す図である。
【0055】
上記実施形態においては、第二不純物領域12が、光感応領域6において短辺6aから短辺6bまで設けられている例を説明したが、たとえば、図14の(a)に示される第二不純物領域12Aのように、短辺6aから離れた短辺6aの近傍から短辺6bまで設けられていてもよい。短辺6aの近傍とは、電荷の移動が妨げられない程度に短辺6aから離れた位置(短辺6aから数μm程度)である。短辺6aの近傍とは、たとえば、各区間L,…,L…,Lのうち短辺6aに最も近い区間Lにおける短辺6aよりも短辺6b寄りの位置である。
【0056】
上記実施形態においては、各区間L,…,L…,Lがn等分された区間である例を説明したが、各区間は等しい分量に分かれていなくてもよい。たとえば、図14の(b)に示される第二不純物領域12Bのように、各区間L,…,L…,Lは、光感応領域6を、第二方向D2での幅が、転送方向TDで次第に狭くなるように分割した各区間であってもよい。
【0057】
上記実施形態においては、各区間L,…,L…,L内で第二不純物領域12の幅Wが増加している例を説明したが、たとえば、図14の(c)に示される第二不純物領域12Cのように、第二不純物領域12の幅Wが、各区間L,…,L…,L内では増加せず、隣り合う各区間の境界位置で増加していてもよい。すなわち、第二不純物領域12Cの各区間L,…,L…,L内の外形形状が矩形状であってもよい。
【0058】
第二不純物領域12の各区間L,…,L…,L内は、一つの領域により形成されていてもよいし、複数の微小領域により形成されていてもよい。たとえば、図14の(d)に示される第二不純物領域12Dのように、各区間L,…,L…,Lが、複数の微小領域12dによって形成されていてもよい。
【0059】
各区間L,…,L…,Lのうち短辺6bに最も近い区間Lにおける第二不純物領域12の幅Wの増加率は、短辺6b側で大きくなるよう変化していてもよい。たとえば、図14の(e)に示される第二不純物領域12Eのように、光感応領域6を第二方向D2に少ない等分数(ここでは、たとえばn=3とする。)で等分すると共に、最も短辺6bに近い区間Lにおける幅Wの増加率が一定ではなく、短辺6b側で大きくなるように変化していてもよい。短辺6b側とは、区間Lにおける短辺6b寄りの位置であり、少なくとも区間の第二方向D2に沿った中心線よりも短辺6bに近い位置である。
【0060】
光電変換部5は、長尺でなくてもよく、各光電変換部5は、複数の光感応領域6を有していてもよい。すなわち、各光電変換部5に複数の画素が含まれていてもよい。この場合であっても、各光感応領域6の電位勾配が略一定となるので、電荷転送効率が向上する。
【符号の説明】
【0061】
1…固体撮像装置、5…光電変換部、6…光感応領域、6a…短辺(一端)、6b…短辺(他端)、7…転送部、11…第一不純物領域、12…第二不純物領域、D1…第一方向、D2…第二方向、TD…転送方向、G1…中心線、W…幅。

図1
図2
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図10
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