(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013909
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】水産物コールドチェーンHACCP知識システム推論及び応用モデル
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20120101AFI20230119BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021203447
(22)【出願日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】202110800202.4
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】516217413
【氏名又は名称】上海海洋大学
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI OCEAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.999, Huchenghuan Rd, Pudong New District, Shanghai 201306 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】葛艶
(72)【発明者】
【氏名】李清雨
(72)【発明者】
【氏名】鄒一波
(72)【発明者】
【氏名】陳明
(72)【発明者】
【氏名】王文娟
(72)【発明者】
【氏名】孫浩
(72)【発明者】
【氏名】黄朝良
(72)【発明者】
【氏名】楊文佳
(72)【発明者】
【氏名】姚海東
(72)【発明者】
【氏名】張旭
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水産物の流通過程中の品質及び食用の安全性を保証するために、生食用牡蠣HACCPプランと併用してコールドチェーンHACCP知識応用モデルを提供する。
【解決手段】水産物コールドチェーンHACCP知識システムの推論及び応用モデルは、生食用牡蠣HACCPプランをもとに、コールドチェーンHACCP知識応用モデルを構築し、ビジネスプロセスの全体及び危害要因分析・重要管理点(HACCP)システムの標準構造を分析するステップと、データ間のセマンティックスを分析し、マシンのデータに対する理解を深め、それを知識構造に抽象化するステップと、モデルで記述されるセマンティック知識を実現し、コールドチェーンHACCPプランの全体を完備し、プラン中の知識を科学的に表現、取得、整理及び記憶するステップと、ビジネスロジック規則を記述し、コールドチェーンの各段階間で効果的な完備及び共有を行うステップを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップを含む水産物コールドチェーンHACCP知識システムの推論及び応用モデル:
ステップ1)生食用牡蠣HACCPプランをもとに、コールドチェーンHACCP知識応用モデルを構築し、生食用牡蠣のビジネスプロセスの全体及び危害要因分析・重要管理点(HACCP)システムの標準構造を分析し、
ステップ2)データ間のセマンティックスを分析し、マシンのデータに対する理解を深め、それを知識構造に抽象化し、
ステップ3)前記モデルで記述されるセマンティック知識を実現し、コールドチェーンHACCPプランの全体を完備し、生食用牡蠣HACCPプラン中の知識を科学的に表現、取得、整理及び記憶し、
ステップ4)ビジネスロジック規則を記述し、知識の自動推論の能力を向上させることにより、コールドチェーンの各段階間で効果的な完備及び共有を行う。
【請求項2】
前記ステップ1)において、生食用牡蠣HACCPプランは、中国国家標準水産物危害要因分析・重要管理点(HACCP)システム及びその応用ガイドによって提供され、HACCP原理をもとに、提供水産加工業のためにHACCPシステムを構築するための基本計画、HACCPプランの準備手順、HACCPプランの立案、水産物中の潜在的な危害、関連危害の管理措置及びHACCPシステムの実施と保持を提供する応用ガイドであることを特徴とする、請求項1に記載の水産物コールドチェーンHACCP知識システム推論及び応用モデル。
【請求項3】
本発明の知識は、生食用牡蠣HACCPプランに基づいて抽出され、生牡蠣の受取、乾式冷蔵、及び牡蠣肉の貯蔵の3つの重要管理点をめぐって討論を行い、各重要管理点は、関連知識を取得するために、それぞれ顕著な危害、許容限界、監視内容、是正措置、検証、記録をカバーすることを特徴とする、請求項1又は2に記載の水産物コールドチェーンHACCP知識システム推論及び応用モデル。
【請求項4】
前記ステップ2)において、記述論理(Description Logic,DL)言語によりデータ間のセマンティックスを表し、マシンのデータに対する理解を深め、それを知識構造に抽象化することを特徴とする、請求項1に記載の水産物コールドチェーンHACCP知識システム推論及び応用モデル。
【請求項5】
記述論理は、対象に基づく知識表現の形式化であり、概念及び関係の上に構築され、知識表現の基礎であり、高い表現能力を有するとともに、決定可能性を有することを特徴とする、請求項4に記載の水産物コールドチェーンHACCP知識システム推論及び応用モデル。
【請求項6】
生食用牡蠣HACCPプラン中の知識を概念集合、関係集合、規則集合、実体集合に抽象化することを特徴とする、請求項4に記載の水産物コールドチェーンHACCP知識システム推論及び応用モデル。
【請求項7】
前記ステップ3)において、OWL2言語により前記モデルで記述されるセマンティック知識を実現し、コールドチェーンHACCPプランの全体を完備し、生食用牡蠣HACCPプラン中の知識を科学的に表現、取得、整理及び記憶することを特徴とする、請求項1に記載の水産物コールドチェーンHACCP知識システム推論及び応用モデル。
【請求項8】
スタンフォード大学がオントロジーを開発する実践中にまとめた7段階の方法を参考にし、本発明の知識に対してオントロジーモデリングを行うことを特徴とする、請求項7に記載の水産物コールドチェーンHACCP知識システム推論及び応用モデル。
【請求項9】
トップダウン手法を採用し、国家標準が提供した生食用牡蠣HACCPプランにおける構造化データから得られた知識を利用し、オントロジーエディターにより事前にオントロジーを構築し、モデリングの手順は、
(1)オントロジーの領域及び範囲の確定;
(2)領域中の重要な概念、用語の列挙;
(3)クラスの定義;
(4)クラス属性の定義;
(5)領域中の各概念間の関係の定義;及び
(6)インスタンスの生成;
であることを特徴とする、請求項8に記載の水産物コールドチェーンHACCP知識システム推論及び応用モデル。
【請求項10】
前記ステップ4)において、セマンティックWebルール言語SWRLによりビジネスロジック規則を記述し、知識の自動推論の能力を向上させ、コールドチェーンの各段階間を効果的な完備及び共有させ、生食用牡蠣コールドチェーン知識のインスタンス化を完成させ、それぞれ生牡蠣の受取、乾式冷蔵、及び牡蠣肉の貯蔵から知識サービスを提供し、HACCPのコールドチェーンにおける実用化を実現することを特徴とする、請求項1に記載の水産物コールドチェーンHACCP知識システム推論及び応用モデル。
【請求項11】
規則又は制約条件に基づいて推論結果を導き、コールドチェーンの各段階間の知識を完備することを特徴とする、請求項10に記載の水産物コールドチェーンHACCP知識システム推論及び応用モデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例は、知識表現分野に関し、特に水産物コールドチェーンHACCP知識システム推論及び応用モデルに関する。
【背景技術】
【0002】
中国の水産物市場は生産量と消費水準の面で持続的に向上しており、人工養殖を中心とした生産量は安定的な増加の兆しが見られており、淡水養殖の生産量は安定的であり、海水養殖は急速に発展している。世界的な経済情勢の弱体化と国民の消費能力の向上により、国内消費市場に転向する傾向が見られる。また、水産物市場の発展は、生産と販売の問題を徐々に明らかにしてきた。一般的な残留薬物の問題と養殖水環境の時折の汚染事件、販売段階の狭い地域性分布、及び水産物の深層加工の不足は、水産物業界がどのように高品質の水産物を生産し、さらに国民サービスを提供するかについて、より高い要求を提起している。
【0003】
知識工学は、コンピュータ内で知識を整理し、質の高い知識ベースを構築する方法、コンピュータが有用な知識を獲得し、検索し、知識を使用して問題を解決する方法、すなわち知識の獲得、表現、利用を研究する。危害要因分析・重要管理点(hazard analysis critical control point,HACCP)は、厳格な記録保持プロセスを持つ包括的かつ体系的な制御システムであり、製品に問題が生じた場合、その原因を容易に特定することができ、適時に誤りを是正し、製品を回収することができ、消費者に許容できない健康リスクを与えることを最小限に抑えることができる。HACCPに関する情報は、コールドチェーンの安全性と信頼性の向上に肯定的に作用し、ビジネス経営レベルの具体的な運用を指導するだけでなく、コールドチェーン関連の決定者が実際の運用において蓄積した経験と知識を総合する。
【0004】
HACCP管理体系はすでに中国の水産物加工企業、特に輸出水産物生産企業で広範な創立と応用を得て、水産物の安全衛生と品質を高める方面の役割もますます広く認められているが、問題も比較的明らかに暴露されてきた。一方、国家は水産物の安全問題を非常に重視し、大量の人材と物資を投入してHACCPシステムを構築し、資源を浪費し、中国のHACCP全体の業務の展開に影響を与えた。一方、中国は水産物の安全に関する管理部門が非常に多く、各部門の職責は主に監督管理段階によって区分され、各段階の根拠となる標準が一致せず、多段階の監視管理情報は共有できない。これらの問題に対して国内外の関連研究はHACCP関連情報の中に含まれている規律と知識を発掘し分析する。陳昭斌、葉飛らは抽出したHACCP情報を自動分類するBIRCHアルゴリズムを提案した。王開義、趙春江らは、農産物の加工過程における重要な制御点の知能発見問題を解決するために、ベクトル機械を支持する方法を提案した。朱麟、張友華らはオントロジーに基づいて食品加工業界におけるHACCP知識の獲得、組織と応用を通じて知識の共有を実現した。牟向偉、陳燕らはHACCPコールドチェーンの安全管理知識のモデリングと推論を通じて、農産物コールドチェーンのHACCP安全監視管理を統合し、完備した。Mark WealらはセマンティックWebテクノロジーを使用して、食品及び細菌汚染のリスクに関する知識をモデル化しました。Ioan Alfred Letia、Adrian Grozaらは2つのオントロジーを作り、可能な危害を特定の業務領域における危害オントロジーとHACCP標準の基本概念を定義するHACCPオントロジーに封入した。HACCPの水産物コールドチェーンにおける応用の多くは重要管理点(Critical control points,CCP)の監視を通じて発生する危険を予防することに集中している。葛艷、鄒一波、黄朝良らは生食用牡蠣HACCPプランをブロックチェーン技術に融合させ、品質トレーサビリティモデルを構築した。現在、水産物のコールドチェーンにおけるHACCPプランの知識の採掘と分析に関する研究はほとんどない。
【0005】
上述の国内外の研究進展と研究成果を見ると、HACCP情報化技術分野の研究に多くの学者が投入されている。知識表現とHACCPを結合して知識応用を実現する研究は現在多くないが、知識表現の発展に伴い、知識応用を加速化することはますます多くの関心を受けることになると考えられる。
【発明の概要】
【0006】
上記問題に対して、本明細書では知識モデリングと生食用牡蠣HACCP標準とを組み合わせてコールドチェーンHACCP知識応用モデルを構築し、生牡蠣の受取、冷藏、貯蔵などの流れを監視、是正及び記録し、HACCPに形成される知識に対してセマンティック記述を行うことにより、知識はコールドチェーンの各段階において統一に表現及び共有することができ、セマンティック方式により決定者に技術サポートを提供することは、水産物の生産安全のさらなる向上及びHACCPの応用には非常に重要な実質的意義を有する。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の技術的手段を採用する。
図1に示すように、以下のステップを含む水産物コールドチェーンHACCP知識システムの推論及び応用モデルであって、
ステップ1)生食用牡蠣HACCPプランをもとに、コールドチェーンHACCP知識応用モデルを構築し、生食用牡蠣のビジネスプロセスの全体及び危害要因分析・重要管理点(HACCP)システムの標準構造を分析し、
ステップ2)データ間のセマンティックスを分析し、マシンのデータに対する理解を深め、それを知識構造に抽象化し、
ステップ3)前記モデルで記述されるセマンティック知識を実現し、コールドチェーンHACCPプランの全体を完備し、生食用牡蠣HACCPプラン中の知識を科学的に表現、取得、整理及び記憶し、
ステップ4)ビジネスロジック規則を記述し、知識の自動推論の能力を向上させることにより、コールドチェーンの各段階間で効果的な完備及び共有を行うことを特徴とする、水産物コールドチェーンHACCP知識システムの推論及び応用モデル。
【0008】
一実施形態において、ステップ1では、生食用牡蠣HACCPプランは、中国国家標準水産物危害要因分析・重要管理点(HACCP)システム及びその応用ガイドによって提供され、HACCP原理をもとに、提供水産加工業のためにHACCPシステムを構築するための基本計画、HACCPプランの準備手順、HACCPプランの立案、水産物中の潜在的な危害、関連危害の管理措置及びHACCPシステムの実施と保持を提供する応用ガイドである。
【0009】
一実施形態において、ステップ1における知識は、生食用牡蠣HACCPプランに基づいて抽出され、生牡蠣の受取、乾式冷蔵、及び牡蠣肉の貯蔵の3つの重要管理点をめぐって討論を行い、各重要管理点は、関連知識を取得するために、それぞれ顕著な危害、許容限界、監視内容、是正措置、検証、記録をカバーする。
【0010】
一実施形態において、ステップ2では記述論理(Description Logic,DL)言語によりデータ間のセマンティックスを表し、マシンのデータに対する理解を深め、それを知識構造に抽象化する。記述論理は、対象に基づく知識表現の形式化であり、概念及び関係の上に構築され、知識表現の基礎であり、高い表現能力を有するとともに、決定可能性を有する。
【0011】
一実施形態において、ステップ2では生食用牡蠣HACCPプラン中の知識を概念集合、関係集合、規則集合、実体集合に抽象化する。
【0012】
一実施形態において、ステップ3ではOWL2言語によりこのモデルで記述されるセマンティック知識を実現し、コールドチェーンHACCPプランの全体を完備し、生食用牡蠣HACCPプラン中の知識を科学的に表現、取得、整理及び記憶する。
【0013】
より具体的には、上記ステップ3は、
(1)オントロジーの領域及び範囲の確定;
(2)領域中の重要な概念、用語の列挙;
(3)クラスの定義;
(4)クラス属性の定義;
(5)領域中の各概念間の関係の定義;及び
(6)インスタンスの生成;
を含む。
【0014】
一実施形態において、ステップ4ではセマンティックWebルール言語SWRLによりビジネスロジック規則を記述し、知識の自動推論の能力を向上させ、コールドチェーンの各段階間を効果的な完備及び共有させ、生食用牡蠣コールドチェーン知識のインスタンス化を完成させ、それぞれ生牡蠣の受取、乾式冷蔵、及び牡蠣肉の貯蔵から知識サービスを提供し、HACCPのコールドチェーンにおける実用化を実現する。
【0015】
一実施形態において、ステップ4では規則又は制約条件に基づいて推論結果を導き、コールドチェーンの各段階間の知識を完備する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の水産物コールドチェーンHACCP知識システム推論及び応用の生食用牡蠣HACCP知識抽出モデルである。
【
図2】本発明の水産物コールドチェーンHACCP知識システム推論及び応用の生食用牡蠣HACCPプランである。
【
図3】本発明の水産物コールドチェーンHACCP知識システム推論及び応用の概念集合構造図である。
【
図4】本発明の水産物コールドチェーンHACCP知識システム推論及び応用の知識推論層の実行フローである。
【
図5】本発明の水産物コールドチェーンHACCP知識システム推論及び応用の主な概念属性である。
【
図6】本発明の水産物コールドチェーンHACCP知識システム推論及び応用の主なデータ属性である。
【
図7】本発明の水産物コールドチェーンHACCP知識システム推論及び応用の主なインスタンスである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例の目的、技術的手段及び利点をより明確にするために、以下、本発明の実施例における技術的手段をより明確かつ完全に説明する。しかし、以下の実施例は、本発明の実施例の一部であり、全ての実施例ではない。本明細書に記載の実施例に基づいて、当業者によって創造的努力なしに得られる全ての他の実施例はいずれも本発明の保護範囲に含まれる。
【0018】
実施例1
本実施例によれば、水産物コールドチェーンHACCP知識システム推論及び応用モデルが提供される。本発明の技術的手段は以下の通りである。
【0019】
生食用牡蠣HACCPプランをもとに、コールドチェーンHACCP知識応用モデルを構築し、生食用牡蠣ビジネスプロセス全体及び危害要因分析・重要管理点(HACCP)システム標準構造を分析する。
【0020】
本発明のデータ及びデータ構造は国家標準によって提供される。
【0021】
中華人民共和国国家標準は、国標と略す。国家標準とは、国家標準化主管機関によって承認して発表され、全国の経済及び技術発展に重大な意義があり、全国的に統一された標準をいう。HACCPシステムは、食品安全危害を識別、評価、及び管理する科学システムである。HACCPシステムは、重要管理点、危害分析、監視、是正、検証、記録の7つの主なステップをめぐって計画を立てる。水産物危害要因分析・重要管理点(HACCP)システム及びその応用ガイドは、HACCP原理をもとに、水産加工業のためにHACCPシステムを構築ための基本計画、HACCPプランの準備手順、HACCPプランの立案、水産物中の潜在的な危害、関連危害の管理措置及びHACCPシステムの実施と保持を提供する応用ガイドである。国標中の生食用牡蠣プランは
図2に示される。
【0022】
HACCPの7つのステップでは、重要管理点を中心とし、他の原理は重要管理点を中心にユーザにサービスを提供する。HACCPシステムでは、構造化の知識も非構造化の知識があり、かつ作業流れの問題に及ぶため、HACCP中の関連知識を正確に記述し、マシンのデータに対する理解を深め、次の実用化のために良い基礎を築くことは、解決しようとする重要な課題となっている。
【0023】
本発明では、生牡蠣の受取、乾式冷蔵、及び牡蠣肉の貯蔵の3つの重要管理点をめぐって討論を行い、各重要管理点は、関連知識を取得するために、それぞれ顕著な危害、許容限界、監視内容、是正措置、検証、記録をカバーする
【0024】
生牡蠣の受取から乾式冷蔵を経て牡蠣肉の貯蔵まで、漁獲業者は、原料、捕獲産生捕獲標識ラベル、捕獲ライセンス、捕獲時間ラベルなどの標識を提供する。生産加工業者は、加工を行う。本発明の対象は生食用牡蠣であるため、加工過程は、牡蠣に対して簡単な処理を行うことである。物流輸送業者は、捕獲から冷蔵庫及び冷蔵庫から貯蔵室へ生食用牡蠣を輸送し、輸送過程中の食品の安全性を保証する。最後に、小売業者は、消費者に販売する。生牡蠣の受取には、病原菌汚染、病原菌増殖、環境化学汚染、天然毒素の4種類の顕著な危害がある。各危害に対してHACCPプランを立てる。乾式冷蔵及び牡蠣肉貯蔵の段階では、病原菌増殖は顕著な危害であるため、病原菌増殖に対してHACCPプランを立てる。HACCPプランの実施中、ライセンスのような監視情報があるため、各ビジネスプロセスにおいてその科学性及び合理性を証明する必要がある。監視内容は、許容限界に含まれる可能性のある温度、時間などを監視する。許容限界の要求を満たす場合、受取記録を直接産生し、満たさない場合、受取拒否という是正措置を産生する。また、監視、是正などを検証する必要があり、監視の結果が許容限界の要求を満たすにもかかわらず、このバッチの貨物の受取又は受取拒否の根拠として記録しなければならない。
【0025】
領域知識は、本発明の知識表現の基礎であり、知識表現は、知識モデリングの基礎であり、知識モデリングは、知識推論の基礎であるため、領域知識層は、本発明の研究基礎である。領域内の知識を幅広く分析することは、概念、関係の抽出などには非常に重要である。
【0026】
実施例2
記述論理言語によりデータ間のセマンティックスを分析し、マシンのデータに対する理解を深め、それを知識構造に抽象化する。
【0027】
生食用牡蠣HACCPセマンティックスを四重項:use-HACCP={C,R,U,I}として表す。式中、C(Concept)は領域の概念集合であり、R(Relation)は領域概念の属性関係集合であり、U(Rule)はSWRLで記述される関連式規則の集合であり、I(Instance)は生食用牡蠣HACCPプランをもとに抽出した関連インスタンスである。
【0028】
1)概念抽出
完全な概念抽出集合の構築は、オントロジーを構築する基礎である。use-HACCPの概念集合Cには、水産物コールドチェーンのロール概念Role、危害要因分析・重要管理点概念HACCP、水産物コールドチェーンのビジネスプロセス概念Step、及び監視情報担体概念Proofが含まれる。
水産物コールドチェーン中のロールは、主に原材料供給者Supplier、生産加工業者Producer、物流輸送者Transportation、小売業者Retailerなどを含む。原材料供給者は必要な原材料の提供を担い、生産加工業者は加工処理した後、卸売業者に渡し、物流輸送者は各地域の小売業者に輸送する。
【0029】
HACCPの7つの原理によって、危害要因分析・重要管理点概念HACCPを顕著な危害HA、重要管理点CCP、許容限界CL、監視内容CM、是正措置CA、検証VE、記録REに分ける。水産物危害要因分析・重要管理点(HACCP)システム及びその応用ガイドにおける生食用牡蠣HACCPプランにより、危害分析には、また病原菌汚染HA_germs_pollute、病原菌増殖HA_germs_grew、環境化学汚染HA_environment_chemistry_pollute、及び天然毒素HA_natural_poisonの4種類の危害が含まれる。許容限界は、製品が合格かどうかを判定するためのものであり、温度CL_Temperature、時間CL_Time、検査検出指標CL_Index、制限パラメータCL_Restrict、操作を可能にする指標パラメータCL_Targetなどから科学的かつ合理的な許容限界を設定することができる。
【0030】
ビジネスプロセス概念Stepは、水産物コールドチェーンビジネスプロセスにおける具体的なステップの抽象化であり、必要に応じてコールドチェーンビジネスプロセスを受取段階Step_reception、乾式冷蔵段階Step_omophagia_refrigeration、貯蔵段階Step_storeの3つの段階に分け、必要に応じてコールドチェーン輸送段階Step_transportation、販売段階Step_Retailer、貨物検収Step_cargo_acceptanceなどのビジネスプロセスを追加してもよい。
【0031】
監視情報担体概念Proofは、流れにおけるあるステップが科学的かつ合理的で、許容限界の要求を満たすことを証明するものである。具体的な構造は
図3に示される。
【0032】
2)関係抽出
関係は、2つの概念を繋げる「橋」であり、主体と客体の間は、属性により関連される。本発明において、主体は、この属性の作用を触発する概念を指し、客体は、この属性が作用する概念を指す。これらの属性によって関係集合が構成され、領域中の概念間の交互作用を示す。use-HACCPには5種類の関係が存在する。
(1)part-ofは、概念間の部分と全体の関係を示す。例えば、監視内容には監視対象、方法、頻度及び責任者などが含まれる。
(2)kind-ofは、概念間の継承関係を示し、オブジェクト指向における親クラスと子クラスとの間の関係に類似する。顕著な危害には、病原菌汚染、病原菌増殖、環境化学汚染、天然毒素などが含まれ得る。
(3)instance-ofは、概念のインスタンスと概念との間の関係を示し、オブジェクト指向におけるオブジェクトとクラスとの間の関係に類似する。各概念には複数のインスタンスが含まれ得る。例えば、捕獲から冷蔵時間は、許容限界に属するインスタンスである。
(4)attribute-ofは、ある概念が別の概念の属性であることを示す。例えば、温度、時間、検出指標などは許容限界に属する属性である。
(5)カスタムの関係集合は、ObjectProperty(概念属性)及びDatatypeProperty(データ属性)の2種類に分けられる。
【0033】
概念属性は、関係を作って異なる概念を繋げる。例えば、関係「next_step」を例とすると、次の段階を示し、それが作用する主体及び客体が共にコールドチェーンビジネスプロセスstepである。その主な概念属性を表1に示す。
【0034】
また、いくつかの概念属性は、自体の属性も有する。概念属性next_stepは、コールドチェーン作業手順時間上の前後論理関係を示し、推移性を有するため、next_stepのためにTransitive(対称属性)を設定して推移性の特性を増加させる。概念属性monitor_CLにInverse functional(逆属性)monitored_byを追加して監視措置CMが監視限界CLを監視することを記述する。概念属性is_charged_byに逆属性responsible_forを追加してコールドチェーン主体cc_roleがコールドチェーンビジネスプロセスcc_stepに責任を負うことを記述する。概念属性cause_byに逆属性causeを追加して危害分析HAが許容限界CLを作製する根拠であることを記述する。概念属性step_generate_proofに逆属性proof_from_stepを追加してコールドチェーンビジネスプロセスcc_stepに監視情報cc_proofを形成することを記述する。-
【0035】
概念には、互いの関係により繋がるだけではなく、自体に属するデータ属性もある。一般的なデータ属性は、例えば、dataTime、double、float、int、integer、long、stringなどである。本明細書に使用される主なデータ属性を表2に示す。
【0036】
3)規則抽出
規則は、特定の形式のある断言に基づいて得られた論理推論を記述することができる。SWRL(semantic web rule language)規則の応用及び拡張に対して複数のシンプルピアツーピアオントロジーのクラスでの対応関連を実現することにより、オントロジーの構築を達成し、オントロジー間の関連によりより大きく、多い知識を得る目的を達成する。前提及び結論はいずれも単一又は複数の基本命題を含んでもよい。基本命題の間は、論理積の関係であり、if-then(原因-結果)式文形のステートメントである。制約式P(?x,?y)中、x,yは変量又はインスタンスであってもよい。Pは特定の関係属性を示す。「?」はこのセマンティックス要素がある変量であることを示す。
【0037】
HACCPの原理は、原料、重要な生産プロセス及び製品安全に影響を与える人的要因を分析し、加工過程中の主な段階を確定し、監視プログラム及び監視標準を確立して完備し、規範的な是正措置を採り、各ステップで産生される記録を受信記録とすることである。生食用牡蠣HACCPプランをもとに領域知識層の内容を参照し、本明細書において関連する主な規則は以下の通りである。
【0038】
Rule-1:コールドチェーンにおけるあるステップインスタンスStepにある顕著な危害HAがあり、顕著な危害に応じて対応する予防措置の許容限界CLがある場合、監視措置CMにより許容限界CLに対して監視を実施し、記録REは特定の是正措置CAを検証するために用いることができ、是正措置CAは是正措置の1つのインスタンスであり、インスタンスStepにおいて産生される。この規則は以下のように記述される。
Has_HA_risk(?Step,?HA),has_CL(?HA,?CL),monitored_by(?CL,?CM),CA_proved_by(?CA,?RE)→step_generate_CA(?Step,?CA)
【0039】
Rule-2:コールドチェーンにおけるあるステップインスタンスStepにおいて特定の監視措置CMを実施し、監視措置CMが許容限界CLを監視し、監視対象情報担体Proofにより記録及び証明する場合、次の業務ステップが本ステップコールドチェーンの危害監視効果を検証するために、Stepにおいて本ステップで産生されるProofを提出する必要がある。この規則は以下のように記述される。
Has_CM(?Step,?CM),monitor_CL(?CM,?CL),CL_proved_by(?CL,?proof),proof_from_step(?proof,?Step)→step_submit_proof(?Step,?proof)
【0040】
Rule-3:コールドチェーン中にステップインスタンスStep1、Step2があり、かつコールドチェーンビジネスプロセスにおいてStep2がStep1の後の業務ステップであり、ステップインスタンスStep1中の許容限界CLが監視措置CMによって監視され、監視対象情報担体Proofによって証明される場合、Step1において許容限界CLを次のステップに伝達する必要がある。この規則は以下のように記述される。
Differentfrom(?Step1,?Step2),next_step(?Step1,?Step2),proof_from_step(?proof,?step1),monitored_by(?CL,?CM),CL_proved_by(?CL,?proof)→step_deliver_CL(?Step1,?CL)
【0041】
Rule-4:コールドチェーンにおけるあるステップインスタンスStepに顕著な危害HAがあり、ある監視措置CMが実施されており、CMがCLを監視し、監視情報を記録REとし、REを用いてある許容限界CLを検証することができる場合、インスタンスStepにおいて記録REが産生され、インスタンスStep中の受信記録を記録する。この規則は以下のように記述される。
Has_HA_risk(?Step,?HA),Has_CM(?HA,?CM),monitored_by(?CL,?CM),has_RE(?CM,?RE),CL_proved_by(?CL,?RE)→step_generate_RE(?Step,?RE)
【0042】
Rule-5:コールドチェーンにおけるあるステップインスタンスStepに顕著な危害HAがあり、各顕著な危害に対して許容限界CLがあり、監視措置CMがCLを監視し、許容限界CLが記録REにより証明され、監視措置CMが記録REにより証明され、誤差があると是正措置CAがある場合、CAは記録REにより証明され、そこに記録される。この規則は以下のように記述される。
Has_HA_risk(?Step,?HA),has_CL(?HA,?CL),monitor_CL(?CM,?CL),Cl_proved_by(?CL,?RE),CM_proved_by(?CM,?RE),has_CA(?CM,?CA)→CA_proved_by(?CA,?RE)
【0043】
Rule-6:コールドチェーンにおけるあるステップインスタンスStepに許容限界CLがあり、監視措置CMがCLを監視し、監視情報CMが記録により証明され、是正CAを産生し、検証措置VEが監視内容を検証する場合、この検証情報から関連記録を産生する。この規則は以下のように記述される。
Has_CL(?Step,?CL),monitor_CL(?CM,?CL),CM_proved_by(?CM,?RE),has_CA(?CM,?CA),has_VE(?CM,?VE)→VE_generate_RE(?VE,?RE)
【0044】
4)インスタンス抽出
前文にSWRL規則中の1つの制約式が説明された。また、C(x)において、xは変量又はオントロジーのインスタンスであり、Cはクラスであり、xがCの1つのインスタンスであることを示している。例えば、
CL(Limit_of_refrigeration_temperature);
CM(monitoring_of_refrigeration_temperature);
Monitor_CL(Limit_of_refrigeration_temperature,monitoring_of_refrigeration_temperature)
【0045】
このインスタンスが記述するのは、ある許容限界が乾式冷蔵庫温度許容限界Limit_of_refrigeration_temperatureであり、ある監視措置が冷蔵庫温度監視monitoring_of_refrigeration_temperatureであり、冷蔵庫温度が乾式冷蔵庫温度許容限界を監視することである。
【0046】
生食用牡蠣HACCPプランをもとに、コールドチェーン業務に関連するインスタンスを立てる。主なインスタンス及びその意味を表3に示す。
【0047】
実施例3
OWL2言語を用いてこのモデルが記述するセマンティック知識を実現し、コールドチェーンHACCPプラン全体を完備し、このモデルが記述するセマンティック知識を実現し、コールドチェーンHACCPプラン全体を完備し、生食用牡蠣HACCPプランにおける知識を科学的表示、取得、整理及び記憶する。
【0048】
本発明の知識モデリングとは、オントロジーモデリングを指す。オントロジーとは、共有概念モデルの明確な形式化仕様的説明である。本発明は、スタンフォード大学がオントロジーを開発する実践中にまとめた7段階の方法を参考にし、本発明の知識に対してオントロジーモデリングを行う。本発明で構築されたオントロジーは、主に生食用牡蠣の捕獲から貯蔵までの過程を中心に、生食用牡蠣HACCPプラン全体を完備し、各段階間を効果的に完備及び共有させることを目的とする。トップダウン手法を採用し、国家標準が提供した生食用牡蠣HACCPプランにおける構造化データから得られた知識を利用し、オントロジーエディターにより事前にオントロジーを構築する。
【0049】
実施例4
セマンティックWebルール言語SWRL描述ビジネスロジック規則によりビジネスロジック規則を記述し、知識の自動推論の能力を向上させ、コールドチェーンの各段階間を効果的な完備及び共有させ、生食用牡蠣コールドチェーン知識のインスタンス化を完成させ、それぞれ生牡蠣の受取、乾式冷蔵、及び牡蠣肉の貯蔵から知識サービスを提供し、HACCPのコールドチェーンにおける実用化を実現する。
【0050】
知識推理は、オントロジーモデリングをもとに推論エンジンが規則又は制約条件により新しい知識を取得する前向き推論システムであり、事実集合、規則集合、推論エンジンからなる。事実集合は、現在システムにおける概念、概念属性及び関係などを含む事実を記憶する。規則集合は、規則からなる。推理エンジンは、推論の実行を制御し、規則の条件部分により事実集合における事実とマッチングし、規則を満たす集合が触発され、特定のストラテジーに従って触発された複数の規則から1つを選び、選ばれた規則を実行することにより事実集合を充実する。実行の流れは
図4に示される。
【外国語明細書】