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特開2023-139092タンパク質生成に対するキメラシグナルペプチド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139092
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】タンパク質生成に対するキメラシグナルペプチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20230926BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20230926BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230926BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230926BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230926BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20230926BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C07K7/08 ZNA
C12N15/63 Z
C12P21/08
C12N5/10
C07K14/00
C07K16/18
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116486
(22)【出願日】2023-07-18
(62)【分割の表示】P 2021536798の分割
【原出願日】2019-12-23
(31)【優先権主張番号】62/784,497
(32)【優先日】2018-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523255893
【氏名又は名称】臺灣生物醫藥製造股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Taiwan Bio-Manufacturing Corporation
【住所又は居所原語表記】3F., No. 335, Ruiguang Rd., Neihu Dist., Taipei City 114063, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】テング, チャオ・イー
(72)【発明者】
【氏名】チェン, イング・ジュー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】治療的タンパク質の調製において、タンパク質発現を最適化する、人工的なシグナルペプチドを提供する。
【解決手段】タンパク質発現のためのキメラシグナルペプチドは、N領域と、疎水性領域と、C領域とを含み、N領域及びC領域が第1のタンパク質の同一のシグナルペプチドによるものであり、疎水性領域が第2のタンパク質のシグナルペプチドによるものであり、第1のタンパク質は第2のタンパク質と異なる。第1及び第2のタンパク質は、BM40、IL2、HA、インスリン、CD33、IFNA2、IgGKリーダ、AZU及びSEAPからなる群から独立して選択され得る。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類宿主細胞におけるタンパク質発現のためのキメラシグナルペプチドであって、N領域と、疎水性領域(H領域)と、C領域とを備え、前記N領域及び前記C領域が第1のタンパク質のシグナルペプチドによるものであり、前記疎水性領域(H領域)が第2のタンパク質のシグナルペプチドによるものであり、前記第1のタンパク質は前記第2のタンパク質と異なり、前記キメラシグナルペプチドが、配列番号3のアミノ酸配列を含む、キメラシグナルペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載の哺乳類宿主細胞におけるタンパク質発現のための前記キメラシグナルペプチドをコードする単離されたDNA配列であって、配列番号23に記載のDNA配列を含む単離されたDNA配列。
【請求項3】
哺乳類宿主細胞から標的タンパク質を生成するための発現ベクターであって、請求項2に記載の前記単離されたDNA配列に機能的に連結されるプロモーターであって、前記標的タンパク質をコードするDNA配列にインフレームで連結されるプロモーターを備える発現ベクター。
【請求項4】
標的タンパク質を生成する方法であって、
a)請求項3に記載の前記発現ベクターで哺乳類宿主細胞をトランスフェクションするステップと、
b)前記哺乳類宿主細胞を培養して前記標的タンパク質を発現させるステップと、
c)前記標的タンパク質を採取するステップと、
を備える方法。
【請求項5】
前記哺乳類宿主細胞がCHO細胞である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記標的タンパク質が抗体である、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略として、治療的タンパク質の調製に関する。具体的には、本発明は、タンパク質発現を最適化する人工的なシグナルペプチドの適用に関する。
【背景技術】
【0002】
高レベルのタンパク質又は抗体を生成するCHOなどの安定した細胞株を開発することが、業界の動向となっている。これまで、哺乳類発現系の最適化は、主にダウンストリームプロセス及び媒体開発に焦点を合わせている。しかし、高収率、より迅速な開発及びより低い生産コストに対するニーズを満たすためには、発現ベクター及び他の構成要素の最適化も同様に考慮する必要がある。分泌タンパク質を生成する場合、タンパク質分泌に影響する律速ステップは、小胞体の内腔へのタンパク質の移行のステップである。これは、分泌シグナル、すなわち、シグナルペプチド(SP)の配列によって決定される。多数の研究は、元来のタンパク質又は抗体の内因性SPが通常は最適化されていないことを示し、満たされていない改善のニーズが未だに存在する。
【0003】
シグナルペプチドは、新規に合成されるタンパク質のほとんどのN末端に存在する、一般に5~30アミノ酸長の短いペプチドであり、細胞から分泌され、特定の細胞小器官(ゴルジ体又は小胞体)内に存在し、又は細胞膜中に挿入されるものを含む。
【0004】
シグナルペプチドは、N領域、疎水性領域(H領域)及びC領域からなる。シグナルペプチドのH領域は、単一のアルファヘリックスを形成しやすい疎水性アミノ酸(約5~16残基長)のストレッチを含む。多数のシグナルペプチドのN領域は、ポジティブインサイドルールとして知られるものにより移行中のポリペプチドの適切なトポロジーを強化するのに役立ち得る、正に帯電したアミノ酸の短いストレッチを含む。シグナルペプチドのC領域には、通常、シグナルペプチダーゼによる切断のために認識されるアミノ酸のストレッチが存在する。しかし、プロテアーゼ切断部位は、シグナルアンカー配列ともいわれるシグナルペプチドとして作用する膜貫通ドメインには存在しない。
【0005】
多数の研究は、タンパク質のほとんどの天然のシグナルペプチド(SP)が最適ではなく、SPを最適化すること又は天然のSPを代替のSPで置換することが、標的タンパク質の生成の増加につながり得ることを見出した。例えば、L Kober他は、ヒトアルブミン及びヒトアズロシジン(AZU)由来の天然のシグナルペプチドによってより良好な抗体発現が得られたことを示した(Biotechnol.Bioeng.,2013 Apr;110(4):1164-73.doi:10.1002/bit.24776)。
【発明の概要】
【0006】
本発明の実施形態は、キメラシグナルペプチドに関する。タンパク質発現のためのキメラシグナルペプチドは、N領域、疎水性領域及びC領域を含み、N領域及びC領域が第1のタンパク質のシグナルペプチドによるものであり、疎水性領域が第2のタンパク質のシグナルペプチドによるものであり、第1のタンパク質は第2のタンパク質とは異なる。
【0007】
本発明のある実施形態によれば、第1及び第2のタンパク質は、BM40、IL2、HA、インスリン、CD33、IFNA2、IgK、AZU及びSEAPからなる群から独立して選択され得る。
【0008】
本発明の一態様は、本発明のキメラシグナルペプチドを使用して標的タンパク質又は抗体を生成する方法に関する。本発明の一実施形態による方法は、本発明のキメラシグナルペプチドを含む発現カセットで哺乳類宿主細胞をトランスフェクションするステップと、哺乳類宿主細胞を培養して標的タンパク質を発現させるステップと、標的タンパク質を採取するステップとを備える。
【0009】
本発明の他の態様及び効果は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、異なるHC/LC比率でのハーセプチン生成の増強における種々の一般的なシグナルペプチドの効率を示す。
図2図2は、異なるHC/LC比率でのアバスチン生成の増強における種々の一般的なシグナルペプチドの効率を示す。
図3A図3Aは、キメラCD33_IgKシグナルペプチドのSignalP4.0予測の結果を示す。SignalP4.0は、C、S、Yスコアを予測する。Cスコアは、シグナルペプチダーゼがMPLLLWVLLLWAGALA-EVQLVESGGG(SEQ ID NO:(配列番号)11)の配列においてアラニン(A)の後かつグルタミン酸(E)の前を切断するはずであることを予測する。
図3B図3Bは、キメラCD33_IgKシグナルペプチドのSignalP-HMM予測の結果を示す。SignalP-HMMは、シグナルペプチドのN領域、H領域及びC領域を予測する。Signal-HMMはまた、シグナルペプチダーゼがMPLLLWVLLLWAGALA-EVQLVESGGG(配列番号11)においてアラニン(A)の後かつグルタミン酸(E)の前を切断するはずであることを予測する。
図3C図3Cは、キメラCD33_IgKシグナルペプチドのPrediSi予測の結果を示す。PrediSiもまた、シグナルペプチダーゼがMPLLLWVLLLWAGALA-EVQLVESGGG(配列番号11)においてアラニン(A)の後かつグルタミン酸(E)の前を切断するはずであることを予測する。
図3D図3Dは、キメラCD33_IgKシグナルペプチドのBLAST予測の結果を示す。配列相同性の比較によって、BLASTもまた、シグナルペプチダーゼがMPLLLWVLLLWAGALA-EVQLVESGGG(配列番号11)においてアラニン(A)の後かつグルタミン酸(E)の前を切断するはずであることを予測する。
図4図4は、キメラシグナルペプチドBMCD及びCDBMの双方が明確に定義されたシグナルペプチダーゼ切断部位を有することを示し、そのようなシグナルペプチドは恐らくその機能を保存されるはずであることを示す。
図5図5は、本発明の種々のシグナルペプチド配列を含む、個別の重鎖及び軽鎖の発現ベクターの構築物を示す概略図である。
図6図6は、本発明の種々のキメラシグナルペプチドの結果を示す。これらのキメラシグナルペプチドの幾つかは、AZUと同等又はより良好なレベルでタンパク質発現をもたらすことが可能である。より良好なキメラシグナルペプチドの中でBMCDが最良な結果を示す。
図7図7は、BMCDキメラシグナルペプチドがAZUよりも有意に良好であることを示す。BMCDによる発現レベルは、AZUの約1.5倍である。図7は、キメラシグナルペプチドの適切な配列が重要であることも示す。例えば、最後の2残基(LA)を欠損したBMCD変異体は、発現レベルが一層弱いシグナルペプチドである。
図8図8は、SEAP_AZUキメラシグナルペプチドが、デノスマブの生成を約40%増加することを示す。
図9図9は、異なるベクターがキメラシグナルペプチドの効率に影響を及ぼし得ることを示す。
図10A図10Aは、細胞培養及びタンパク質生成のプロトコルを示す手法を示す。
図10B図10Bは、AZUd及びSEAPAZUシグナルペプチドをそれぞれ使用するデノスマブ生成に対する2個の発現ベクターを示す。
図10C図10Cは、図10Bの発現ベクターを使用するデノスマブ生成の結果を示す。
図11A図11Aは、元来のシグナルペプチド、AZUdシグナルペプチド及びBMCDシグナルペプチドをそれぞれ使用する融合タンパク質3D5Rの生成に対するベクター構築物を示す。
図11B図11Bは、図11Aの発現ベクターを使用するタンパク質発現レベルを示す。AZUdシグナルペプチドを使用する3D5R融合タンパク質生成レベルは元来のシグナルペプチドを使用する場合の2.7倍である一方で、BMCDを使用する場合は元来のシグナルペプチドの場合の1.9倍である。
図12A図12Aは、元来のシグナルペプチド又はBMCDキメラシグナルペプチドを使用する、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン3(TIM3)に対する抗体の生成に対するベクター構築物を示す。
図12B図12Bは、図12Aの発現ベクターを使用するタンパク質生成の結果を示す。図示するように、BMCDシグナルペプチドは、元来のシグナルペプチドよりも生成レベルが一層高いタンパク質を生成する。一過性のトランスフェクションでは、BMCD生成レベルは元来のシグナルペプチドの場合よりも3倍高い一方で、安定的にトランスフェクションされた細胞では、BMCDシグナルペプチドは元来のシグナルペプチドの場合の2.6倍のレベルを生成する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態は、標的タンパク質の真核細胞系からの生成を増強するキメラシグナルペプチド及びその使用に関する。本発明の実施形態によれば、キメラシグナルペプチドは、真核宿主細胞において発現される標的タンパク質の発現及び/又は分泌を増強するように設計される。シグナルペプチドは、通常、5~30アミノ酸長を含み、N領域、H領域(疎水性領域)及びC領域に分割可能である。本発明のキメラシグナルペプチドは、例えば、第1のシグナルペプチドの疎水性領域を第2のシグナルペプチドによる疎水性領域と交換することにより構築され得る。
【0012】
本発明のキメラシグナルペプチドは、既知のシグナルペプチドに基づいてもよい。一般的に使用されるシグナルペプチドは、BM40(基底膜タンパク質40)、IL-2(インターロイキン2)、HA(ヘマグルチニン)、インスリン、CD33、IFNA2(インターフェロン アルファ2)、IgK(免疫グロブリン カッパ鎖)、SEAP(分泌型アルカリホスファターゼ)及びAZU(アズロシジン)タンパク質によるものを含む。以下の説明では、これらのタンパク質の名称は、それらのシグナルペプチド(SP)のことをいうのにも使用され得る。これらの天然のシグナルペプチドから、より良好なものが更なる最適化のために選択される。タンパク質生成の増強におけるこれらのシグナルペプチドの効率を評価するために、シグナルペプチドを含む発現ベクターを構築し、例えばELISA又は他のアッセイを使用してタンパク質発現のレベルをアッセイすることが可能である。以下の実施例は、標的タンパク質の例として抗体を使用する。しかし、当業者は、本発明の実施形態が、抗体だけでなく任意のタンパク質を発現するのに使用され得ることを理解するはずである。
【0013】
抗体を標的タンパク質として使用して、抗体の重鎖及び軽鎖をそれぞれ含む2個のベクターをクローニングする。代替的に、重鎖及び軽鎖の双方を含む発現ベクターが使用されてもよい。アッセイを容易にするために、これらのベクターは、タグ(例えば、それぞれ、赤色及び緑色蛍光タグ)も含み得る。試験シグナルペプチドを、抗体重鎖又は軽鎖の翻訳開始コドンATGの前に組み込む。そして抗体生成の効率を、これらのベクターの適切な宿主細胞へのコトランスフェクションにより評価した。アルブミン(ALB)、アズロシジン(AZU)、H5L1及びH7N1のような、効率の良いタンパク質生成を支援することが知られているいくつかのシグナルペプチドが、陽性コントロールとして使用され得る。
【0014】
タンパク質生成について、本発明のシグナルペプチドを含む構築物は、タンパク質発現系(例えば、大腸菌、酵母細胞、CHOなど)に適した任意の適切な発現ベクター内に構築され得る。例えば、我々の以前の研究では、(pTCAE8.3に基づく)適切な発現ベクターJ1.0delta及びJ1.0.2を、ハーセプチン及びアバスチンの生成のために構築した。各ベクターのシグナルペプチドは、AZU(アズロシジン)又はOri(元来のもの)である。より良好なシグナルペプチドを見出すために、重鎖又は軽鎖の核酸配列をそれぞれ含む別個のベクター中のAZU及びOriが、他のシグナルペプチドと置換され得る。一実施例では、全部で32個のベクターが構築され、各々が異なるシグナルペプチドと共に抗体(例えば、ハーセプチン又はアバスチン)の軽鎖又は重鎖を含む。
【0015】
これらの発現ベクターを、異なる重鎖(HC)対軽鎖(LC)の比率(1:1又は1:4)で、CHO細胞(例えば、DXB11細胞又はCHOK1(CCL61-S1)細胞)に一過性にトランスフェクションし、トランスフェクション/発現効率を評価した。そして抗体の発現レベルを、ELISAを使用して評価した。
【0016】
図1に示すように、標的タンパク質としてハーセプチンを使用して、シグナルペプチドとしてBM40及びCD33を有する構築物は、シグナルペプチドとしてAZUを使用する陽性コントロールと同等又はより良好な収率を得た。加えて、図1は、力価が、1:1のHC/LC比率で8~9μg/mlに到達可能であり、1:4のHC/LC比率で4~5.5μg/mlに到達可能であったことを示す。したがって、この実施例では、1:1のHC/LC比率でより高い収率が得られる。
【0017】
次に、我々は、異なるシグナルペプチドを適用してアバスチンを生成した。図2に示すように、BM40、CD33及びIgKシグナルペプチドを有する構築物は、元来のシグナルペプチド(ORI)を有する構築物よりもより高い収率を得た。BM40、CD33及びIgKシグナルペプチドによるタンパク質発現レベルは、陽性コントロール(AZU)と同等又はより良好である。異なるトランスフェクション比率(HC/LC=1:1又は1:4)は、収率において差を生じた。HC/LC=1:1の場合の力価は200~250ng/mlであり、HC/LC=1:4の場合の力価は300~550ng/mlに到達する。したがって、この実施例では、1:4の比率がより多くのタンパク質を生成した。
【0018】
これら及び類似の試験に基づいて、幾つかのシグナルペプチドが、陽性コントロールのAZUと比較してタンパク質発現を増強するのに同様又はより良好な能力を有することが見出された。これらのシグナルペプチドを、さらなる最適化のために選択する。これらの選択されたシグナルペプチドは、CD33、IgK、BM40、AZU及びSEAPシグナルペプチドを含む。
【0019】
上記のように、シグナルペプチドは、N領域、H領域(疎水性領域)及びC領域の3つの領域に分割され得る。シグナルペプチドの疎水性領域(H領域)は、シグナル認識粒子(SRP)との相互作用に重要なヘリックスを形成する。そのような相互作用は、SRPが新生タンパク質に結合することを可能とし、ER膜を越えるタンパク質の移行を促進する。H領域がそのような重要な機能を果たすので、我々はH領域の変化がシグナルペプチドの効率を改善し得るか否かを調査することにした。
【0020】
本発明の1つのアプローチは、第1のシグナルペプチドのH領域が第2のシグナルペプチドによる対応するH領域で置換されるキメラシグナルペプチドを創出することである。そのようなH領域の交換を行うために、我々はまずシグナルペプチドを分析し、各領域の境界及びシグナルプロテアーゼ切断部位を特定した。多数の方法/プログラム、例えばSignalP4.0、SignalP-HMM、PrediSi及びSignal Blastが、そのような分析に対して当技術分野では利用可能である。
【0021】
例えば、Technical University of DenmarkのCenter for Biological Sequence AnalysisがホストとなるSignalPサーバは、アミノ酸配列におけるシグナルペプチド切断部位の存在及び位置を予測する。方法は、幾つかの人工ニューラルネットワークの組合せに基づいて、切断部位の予測及びシグナルペプチド/非シグナルペプチドの予測を包含する。さらに、サーバはN領域、H領域及びC領域を予測する方法を提供する。
【0022】
例としてCD33_IgKキメラシグナルペプチド、MPLLLWVLLLWAGALA-EVQLVESGGG(配列番号11)を使用して、SignalP4.0はC、S、Yスコアを予測する。Cスコアは、シグナルペプチダーゼがMPLLLWVLLLWAGALA-EVQLVESGGG(配列番号11)の配列においてアラニン(A)の後かつグルタミン酸(E)の前を切断するはずであることを予測する。Sスコアは、配列がシグナルペプチドである可能性を示し、スコアが高いほどそれがシグナルペプチドである可能性が高いことを意味する。Yスコアは、C及びBスコアの組合せに基づく。Yスコアは、ペプチダーゼがグルタミン酸残基の前を切断するはずであることをさらに確認する(図3A参照)。
【0023】
同様のプログラム、SignalP-HMM(Proceedings of the Sixth International Conference on Intelligent Systems for Molecular Biology(ISMB6)、AAAI Press、メンローパーク、カリフォルニア州、pp.122-130(1998)における隠れマルコフモデル、Henrik Nielsen及びAnders Kroghに基づく)は、シグナルペプチダーゼ切断部位と同様にN領域、H領域及びC領域も予測する(図3B)。プログラムは、SignalP4.0の予測と一致して、ペプチダーゼがグルタミン酸の前を切断することも予測する。
【0024】
他のプログラム、PrediSi(Prediction of Signal Peptides、Karsten Hiller他、“Prediction of Signal Peptides and Their Cleavage Positions,”、Nucleic Acids Res.、2004、July 1、32::W375-W379、doi:10.1093/nar/gkh378)もまた、ペプチダーゼがアラニン(A)とグルタミン酸(E)の間を切断することを予測する(図3C)。最後に、BLASTプログラムを使用して、他の既知のシグナルペプチド切断部位との相同性比較によって切断部位を予測することも可能である(図3D)。
【0025】
これらの方法のいずれかは、シグナルペプチド及びそれらの対応するN領域、H領域及びC領域を予測し得るように使用され得る。それらは、一般に、一致した結果を生成する。仮に、わずかな不一致があるとしても、N領域、H領域及びC領域の間の境界の正確な区分は、本発明の実施形態に対して重大ではない。上記のように、H領域はαヘリックスを形成しやすい疎水性のストレッチである。シグナル認識粒子(SRP)のMドメインは、そのH領域に対してポリ-ロイシン(poly-Leu)を有する合成ペプチドを含む、H領域における多くの配列多様性によってシグナルペプチドに結合することが知られている(Kendall他、“Idealization of the hydrophobic segment of the alkaline phosphatase signal peptide,” Nature、1986;321:706-708)。したがって、あるαヘリックスを他のものと交換しても、αヘリックスに対する厳密な境界には影響されないはずである。
【0026】
本発明の実施形態によれば、上述の予測方法又は他の同様の方法に基づいて、H領域の交換を設計してキメラシグナルペプチドを創出することができる。例えば、第1のシグナルペプチドのH領域を、第2のシグナルペプチドによるH領域と交換してもよい。有望な上述のシグナルペプチド、例えば、CD33、IgK、BM40、AZU及びSEAPシグナルペプチドに基づいて、種々のキメラシグナルペプチドを創出することができる。
【0027】
この説明では、以下の表記がキメラシグナルペプチドに採用され、N領域及びC領域を提供する第1のシグナルペプチドを最初に記載し、その後にH領域を提供する第2のシグナルペプチドの名称を続ける。例えば、BM40_CD33(又はBM-CD若しくはBMCD)キメラシグナルペプチドは、BM40によるN領域及びC領域並びにCD33によるH領域を含む。同様に、CD33_BM40(又はCD_BM若しくはCDBM)キメラシグナルペプチドは、CD33によるN領域及びC領域並びにBM40によるH領域を含む。他の実施例は、CD33_IgK(IgKリーダの疎水性領域を有するCD33)、IgK_CD33(CD33の疎水性領域を有するIgKリーダ)、SEAP_AZU(AZUの疎水性領域を有するSEAP)、AZU_SEAP(SEAPの疎水性領域を有するAZU)を含む。これらのキメラシグナルペプチドの幾つかに対する核酸及びペプチドの配列を以下の表1に示す。
【表1】
下線部は、キメラシグナルペプチドにおける疎水性領域を示す。
【0028】
以下の章は、限定された数の特異的なキメラシグナルペプチドを実施例として使用して本発明の実施形態を説明する。しかし、当業者は、これらの限定された実施例が説明のみのためのものであり、本発明の範囲を限定することを意味しないことを理解するはずである。
【0029】
これらのキメラシグナルペプチドは、まずSignalPサーバ(又は他の同様なサービス)を使用してインシリコ(in silico)で分析され、それらが依然としてシグナルペプチドとして機能することができ、それらが依然としてシグナルペプチダーゼ切断部位を有していることを確認することができる。以下の実施例は、シグナルペプチドとしてBMCD及びCDBMキメラを使用して本発明の実施例を説明する。しかし、その説明は、本発明の他のキメラシグナルペプチドにも同様に適用可能である。
【0030】
図4に示すように、キメラシグナルペプチドであるBMCD及びCDBMの双方は、明確に定義されたシグナルペプチダーゼ切断部位を有し、そのようなキメラシグナルペプチドは恐らくその機能を保存されるはずであることを示す。他の全てのキメラ、CDIgK、IgKCD、SEAPAZU及びAZUSEAPは、同様に保存されたシグナルペプチダーゼ切断部位を有することが見出されている。
【0031】
そして、これらのキメラシグナルペプチドを、シグナルペプチドとして作用するそれらの能力について試験し、タンパク質の発現/分泌を支援及び増強するそれらの能力について評価するように試験する。図5に示す例示の構築物を使用して試験を行う。
【0032】
図5に示すように、キメラシグナルペプチドは、抗体の重鎖(HC)に対する発現ベクター及び抗体の軽鎖(LC)に対する他の発現ベクターに、シグナルペプチド(SP)位置でクローニングされ得る。この実施例では、発現ベクターは、適切なプロモーター(例えば、CMVプロモーター)の制御下にあり、リボソーム進入のための内部リボソーム進入部位(IRES)配列を含む。HCベクター及びLCベクターは、分析を容易にするように、それぞれ増強型緑色蛍光タンパク質(EGFP)及びイソギンチャク赤色蛍光タンパク質(DsRed)でタグ付けされ得る。そして2種の発現ベクターを、タンパク質生成のための宿主細胞(例えば、CHO細胞)にコトランスフェクションする。生成されるタンパク質の量は、ELISAのような任意の適した方法で分析され得る。
【0033】
標的タンパク質としてハーセプチンを使用して、図6は、種々のキメラシグナルペプチド(例えば、CD-IgK、IgK-CD、SEAP-AZU、AZU-SEAP、BM-CD及びCD-BM)からの結果を示す。確かに、幾つかのキメラシグナルペプチドは、AZU(陽性コントロール)の場合と同等又はより良好なレベルでのタンパク質発現をもたらすことができる。より良好なキメラシグナルペプチドの中で、BMCDが最良の結果を示す。
【0034】
上記の結果は、ハーセプチンのHC及びLC鎖の生成に対する2種の個別のベクターのコトランスフェクションからのものである。代替の方法は、同一のベクターからHC及びLCの双方を生成する発現ベクターを構築することである。1つのベクターによるベクター発現システムがより効果的であるか否かを試験するために、BMCDを含むHCベクター及びBMCDを含むLCベクターを適切な発現ベクター(例えば、pTCAE8.3に基づくJ2.0-PDSZ)にサブクローニングする。このベクターを使用するハーセプチンの発現を、CHO細胞において試験する。図7に示すように、BMCDキメラシグナルペプチドは、AZU(陽性コントロール)よりも有意に良好である。BMCDによる発現レベルは、AZUの場合の約1.5倍である。
【0035】
図7も、キメラシグナルペプチドの適切な配列が重要であることを示す。例えば、末尾の2残基(LA)が欠損したBMCD欠失変異体(配列番号12)は、恐らくこの欠損がシグナルペプチド切断を妨げるために、いくつかのシグナルペプチド機能を失っている。シグナルペプチドのC領域はより極性の高いカルボキシル末端を含むことが知られており、そこでは、(シグナルペプチダーゼ切断部位から数えて)-3及び-1位は、通常、アラニンのような小さい脂肪族残基を含み、芳香族又は荷電された残基であることはまれである。したがって、BMCDのC末端からのロイシン-アラニンの欠損は、シグナルペプチダーゼ切断を損ね、それによりタンパク質分泌を妨げ得る。
【0036】
上記の結果は標的タンパク質/抗体としてハーセプチンを使用するが、他のタンパク質(例えば、アバスチン、デノスマブなど)も試験されており、同様の結果を有することが見出される。例えば、図8は、SEAP_AZUキメラシグナルペプチドがデノスマブの生成を約40%増加することを示す。
【0037】
キメラシグナルペプチド自体に加えて、これらのキメラシグナルペプチドの状況/環境もまた、タンパク質生成の効率に影響を有し得る。すなわち、異なるベクターは、これらのキメラシグナルペプチドの効率をさらに増強し得る。例えば、我々は、発現ベクターJ2.0.2がJ2.0ベクターと比較して約2倍のレベルのデノスマブを生成することを見出した。同様に、アバスチンも、J2.0.2ベクターを使用してより良好に生成する。一方、ハーセプチン及びTim3抗体に対して、ベクターJ2.0はより高い収率を得る。図9に示すように、J2.0.2ベクターは、HC及びLC鎖に対して異なるプロモーターを有する。したがって、タンパク質生成を増強するキメラシグナルペプチドの能力は、より良好なベクターの選択によってさらに増加可能である。
【0038】
図10A~10Cは、SEAP_AZUキメラシグナルペプチドを使用してデノスマブを発現するようにJ2.0.2ベクターを使用するという他の実施例を示す。図10Aは、細胞培養及びタンパク質発現の手法を示す。簡潔には、CHO細胞(3×10細胞/ml)を、バッチ培養フラスコに播種する。5~6日間のバッチ培養の後、上清が回収され、ELISA又はHPLCを使用してタンパク質生成について分析され得る。図10Bは、J2.0.2-PDSB-DenoAZUd及びJ2.0.2-PDSB-DenoSEAPAZUに対するベクター構築物を示す。これらのベクターは、DHFR遺伝子を欠失するCHO細胞からの細胞株のトランスフェクションを促進するジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子を含む。図10Cは、双方のベクターについて5日及び6日目のデノスマブ生成を示す。生成レベルはこれらのベクター間で同様であり、SEAPAZUキメラシグナルペプチドが陽性コントロールAZUと同等に効果的であることを示す。
【0039】
上記の実施例は種々の抗体の生成を示すが、本発明の実施形態は(目的とする融合タンパク質のような)他のタンパク質の生成に対しても使用され得る。図11Aは、融合タンパク質3D5Rの生成に対する発現ベクター構築物を示す。3つの構築物は、元来のシグナルペプチド(SP、MRVPAQLLGLLLLWLPGARC、配列番号10)、AZUd(配列番号9)及びBMCD(配列番号5)をそれぞれ含む。図11Bは、タンパク質発現の結果を示す。C領域から7個のアミノ酸残基を欠損したAZUシグナルペプチドであり、AZUシグナルペプチドと同程度に良好であることが見出されたAZUdシグナルペプチドは、3D5R融合タンパク質の生成及び分泌において効率が良いことは明らかであり、生成レベルは元来のシグナルペプチドの場合の2.7倍である。同様に、キメラシグナルペプチドBMCDも、非常に効率が良く、元来のシグナルペプチドの1.9倍のレベルを生成する。
【0040】
図12A及び図12Bは、J2.0ベクター及びBMCDシグナルペプチドを使用する、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン3(TIM3)の生成に対する他の実施例を示す。図12Aは、元来のシグナルペプチド(ori)又はBMCDシグナルペプチドのいずれかを含むベクター構築物を示す。図12Bは、一過性のトランスフェクションの3日後又はトランスフェクションされた細胞のバッチ培養におけるフェーズI選択の6日後のTIM3の生成を示す。トランスフェクション-発現系の双方において、BMCDは、元来のシグナルペプチドを使用するベクターと比較して、3倍及び2.6倍のタンパク質発現レベルを生成する。
【0041】
上記の実施例は、本発明のキメラシグナルペプチドが、抗体を含む組換えタンパク質の生成及び分泌を効率良く増強可能であることを示す。増強は、一過性のトランスフェクション、及びバッチ培養における安定したトランスフェクションされた細胞において見られた。
【0042】
本発明の実施形態は、当技術分野で知られている任意の適切な方法で実施され得る。以下の記述は、幾つかの実施例を提供する。当業者は、これらの実施例が例示のみを目的とするものであり、本発明の範囲から逸脱することなく他の変形例及び変更例が可能であることを理解するはずである。
【0043】
細胞培養及び培地
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株DXB11を、コロンビア大学のLawrence Chasin博士より得た。(DUX-B11及びDUKXとしても知られる)DHFR陰性CHO DXB11細胞株は、歴史的に異種タンパク質の大規模生産に使用される最初のCHO細胞株であり、多くの複雑なタンパク質の生産に依然として使用される(C.S.Kaas他、「Sequencing the CHO DXB11 genome reveals regional variations in genomic stability and haploidy」 BMC Genomics、16、Article No.160(2015))。細胞培養を、温度37℃及び湿度95%で、5%CO下でインキュベーターにおいて行った。細胞培養の培地は、Hyclone及び混合培地(50%のCDFortiCHO及び50%のActiCHO)を含む。細胞のカウント及び生存率分析を、自動セルカウンターTC10(Bio-Rad、米国)を使用してトリパンブルーで染色した後に行った。
【0044】
トランスフェクションの構築物は、ピューロマイシン耐性遺伝子を含む。安定したプールを、ピューロマイシン耐性に基づいて選択した。それが単一クローンになると、選択は必要ない。
【0045】
ベクター構築物
実施例では、シグナルペプチド配列を含む各HC又はLCペプチド断片は、PCRを使用して増幅され、そして高い効能のIn-Fusion(登録商標)HD酵素(Clontech、TakaraBioUSA社、マウンテンビュー、カリフォルニア州)などの当技術分野で知られている任意の技術を使用して発現ベクターに組み込まれ得る。本発明の発現ベクターを構築するために、選択されたシグナルペプチド配列を、発現させるタンパク質(例えば、標的抗体のHC又はLC鎖)を含む適切なベクター(例えば、pcDNA3.1又はpTCAE型のベクター)にクローニングする。ベクターは、レポーター遺伝子(例えば、EGFP及びDsRed)を制御するIRES配列も含む。実施例としてCD33シグナルペプチドを使用して、CMV-HCCD33-IRES-EGFP及びCMV-LCCD33-IRES-DsRedを得た。他のシグナルペプチドは、同様に構築され得る。例えば、以下のシグナルペプチド配列(表2)を、同様の態様で発現ベクターに構築した。
【表2-1】
【表2-2】
【0046】
これらのベクターの構築は、任意の従来のクローニング技術を使用し得る。ある特定の実施例では、オーバーラップPCR技術、例えば、PCR増幅及び増幅されたオーバーラップ断片の結合が使用される。これらの技術は、日常的かつ従来のものである。
【0047】
CHO細胞のトランスフェクション
宿主細胞への構築物のトランスフェクションは、当技術分野で知られている任意の適切な方法及びセットアップを使用可能である。例えば、CHOK1細胞を、6-ウェルプレートにおいて培養した。各ウェルに、1×10個の細胞を8mMのGlutaMAX(商標)(Thermo Fischer社)を含む3mLのHyclone(商標)HyCell(商標)CHO培地(GE Healthcare社)において播種する。ハーセプチン構築物のLC及びHCを含むベクター(例えば、pcDNA3.1)のトランスフェクションは、親油性薬剤のFreeStyle MAX(商標)(Thermo Fischer社)のような当技術分野で知られている任意の適切な試薬を使用して行われ得る。例えば、ハーセプチンHCBM40CD33、ハーセプチンLCBM40CD33及びトランスフェクション試薬Freestyle MAX(商標)(Thermo Fixher社)を、OptiPRO(商標)SFM(Thermo Fixher社)に個別に添加し、表3に示すようにベクター溶液を調製した。これらの溶液を、トランスフェクション試薬に添加する前に5分間静置し、十分に混合した。結果として得られる溶液を、細胞へのトランスフェクションの前に20分間静置させた。そして、トランスフェクションの3日後に細胞を評価した。
【表3】
【0048】
タンパク質発現
試験CHO細胞におけるタンパク質/抗体生成に対して、抗体/タンパク質発現構築物は、商業的供給源によるものあってもよいし、当技術分野で知られている手順に基づいて調製され、抗体又はタンパク質の一過性の発現に対して試験CHO細胞にトランスフェクションされてもよい。トランスフェクションされたCHO細胞を、適切な期間(例えば3日間)培養し、標的タンパク質を生成した。代替的に、トランスフェクションは、従来の培養又はバッチ培養においてタンパク質を生成するのに使用可能な安定した細胞株を生成してもよい。安定したトランスフェクタント細胞株の選択を容易にする当技術分野で知られている任意の方法が、使用され得る。例えば、DHFR遺伝子を含むベクター及びDHFR遺伝子を欠失したCHO細胞を使用してもよい。トランスフェクションされたベクターを含むCHO細胞のみが、制限培地において生存するはずである。
【0049】
タンパク質発現レベルは、ELISA、HPLC又は他の方法などの任意の適切な方法を使用して評価され得る。発現タンパク質が酵素的な活性を有する場合(例えば、SEAP)、活性を使用してタンパク質発現レベルを評価することもできる。例えば、SEAPに対しては、GreatEscAPe(商標)化学発光キットをClontech社から得てもよい。5×希釈バッファーをddHOで1:5に希釈して1×希釈バッファーを調製する。タンパク質発現レベルを評価するために、トランスフェクションされた細胞又はモックトランスフェクションされた細胞からの25μlの細胞培養培地を、96-ウェルマイクロタイタープレートに移す。必要に応じて、プレートを、封止して後の分析のために-20℃で凍結することができる。96-ウェルマイクロタイタープレート中の各サンプルに、75μlの1×希釈バッファーを添加する。接着性のアルミホイル又は通常の96-ウェルの蓋でプレートを封止し、ヒートブロック又はウォーターバスを使用して、希釈したサンプルを65℃で30分間インキュベートする。
【0050】
サンプルを氷上で2~3分間冷却し、そして室温に平衡化する。各サンプルに100μlのSEAP基質溶液を添加する。読取りの前に、室温で30分間インキュベートする。96-ウェルプレートリーダールミノメーター(例えば、CLARIOstar(登録商標))を使用し、化学発光信号を検出及び記録する。培養上清中の抗体力価をELISAによって決定した。細胞特異的生産性(Qp)を、力価を1日の生細胞密度の曲線下の積分面積で除算することによって計算した。
【0051】
限定された数の実施形態に関して本発明の実施形態を説明したが、本開示の利益を有する当業者は、ここに開示されるように本発明の範囲から逸脱しない他の実施形態が考案可能であることを理解するはずである。したがって、本発明の範囲は、添付される特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12A
図12B
【配列表】
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