(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013913
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】フックボルトの研磨装置
(51)【国際特許分類】
B24B 55/10 20060101AFI20230119BHJP
B24B 23/02 20060101ALI20230119BHJP
B24B 23/00 20060101ALI20230119BHJP
B24B 29/08 20060101ALI20230119BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
B24B55/10
B24B23/02
B24B23/00 A
B24B29/08
E04G23/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000742
(22)【出願日】2022-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2021117433
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】512064354
【氏名又は名称】日本パーミル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508324112
【氏名又は名称】株式会社ユーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】安西 英男
【テーマコード(参考)】
2E176
3C047
3C158
【Fターム(参考)】
2E176AA05
2E176AA23
2E176BB36
3C047FF07
3C047HH13
3C158AA06
3C158AC05
3C158CA01
3C158CB06
(57)【要約】
【課題】より的確にフックボルトを研磨することが可能でありながら、研磨の際に発生する粉塵の飛散を抑制することができるフックボルトの研磨装置を提供する。
【解決手段】研磨装置10は、円筒回転体11と、カバーと、を備える。円筒回転体11は、所定の軸線を中心に円筒状に形成され、内面にブラシが設けられる。カバーは、円筒回転体の周囲を囲うように配置される。カバーには、カバーの内部に発生する粉塵を吸引する吸塵機を接続可能な吸塵口が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フックボルトを研磨する研磨装置であって、
所定の軸線を中心に円筒状に形成され、内面にブラシが設けられる円筒回転体と、
前記円筒回転体の周囲を囲うように配置されるカバーと、を備え、
前記カバーには、前記カバーの内部に発生する粉塵を吸引する吸塵機を接続可能な吸塵口が設けられている
フックボルトの研磨装置。
【請求項2】
前記円筒回転体は、
駆動部の動力が伝達されることにより前記軸線を中心に回転する外部円筒部材と、
前記外部円筒部材の内部に脱着可能に設けられ、内面に前記ブラシが設けられる内部部材と、を有している
請求項1に記載のフックボルトの研磨装置。
【請求項3】
前記内部部材は、円筒状に形成され、且つ内面に前記ブラシが設けられる内部円筒部材である
請求項2に記載のフックボルトの研磨装置。
【請求項4】
前記内部円筒部材は、ねじ構造により前記外部円筒部材に組み付けられ、
前記内部円筒部材は、前記円筒回転体の回転方向とは逆方向に前記外部円筒部材に対してねじ込まれることにより前記外部円筒部材に組み付けられている
請求項3に記載のフックボルトの研磨装置。
【請求項5】
前記内部部材は、前記軸線を中心に螺旋状に形成され、且つ内面に前記ブラシが設けられる内部螺旋部材である
請求項2に記載のフックボルトの研磨装置。
【請求項6】
前記円筒回転体及び前記内部螺旋部材の少なくとも一方には、前記円筒回転体に対する前記内部螺旋部材の前記軸線を中心とする相対回転を抑制する抑制部材が設けられている
請求項5に記載のフックボルトの研磨装置。
【請求項7】
前記円筒回転体の内面には、前記抑制部材として、前記軸線を中心とする回転方向において前記内部螺旋部材と接触する突出部が形成されている
請求項6に記載のフックボルトの研磨装置。
【請求項8】
前記内部螺旋部材は、
前記ブラシと、
前記ブラシの一端部を挟み込んで固定する固定部材と、を備え、
前記固定部材は、前記ブラシが内側に位置するように螺旋状に折り曲げられている
請求項5~7のいずれか一項に記載のフックボルトの研磨装置。
【請求項9】
前記円筒回転体には、内面から外面に貫通する貫通孔が設けられている
請求項1~8のいずれか一項に記載のフックボルトの研磨装置。
【請求項10】
前記円筒回転体は、有底円筒状に形成されており、
前記円筒回転体には、前記貫通孔として、円筒状に形成されている部分を内面から外面に貫通する第1貫通孔と、円筒状に形成されている部分の一端部を閉塞するように設けられる底壁部を内面から外面に貫通する第2貫通孔とが形成されている
請求項9に記載のフックボルトの研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フックボルトの研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アスベスト(石綿)を含む屋根材としてスレートがある。スレートは粘土瓦と比較して非常に軽く且つ安価であるため、外装材や屋根材として多く使用されている。しかしながら、アスベストの粉塵が発生する環境下で人が長時間滞在する等してアスベストを大量に吸い込むと、肺癌の発生率が上昇するおそれがあることが指摘されている。そのため、アスベストを含む屋根材を使用している建築物の解体工事や改装工事には非常に厳しい規制が課せられている。このようなアスベストを含むスレートを除去することが可能な装置としては、下記の特許文献1に記載の除去装置がある。
【0003】
特許文献1に記載の除去装置は、吸塵機と、フードとを備えている。吸塵機は、屋根材を取り外す際に発生する粉塵を、フィルタを介して吸引する。フードは、吸塵機から延設される吸引ホースの先端部に取り付けられており、屋根材の表面に当接している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、屋根に対するスレートの固定は、一般的に、フックボルトと呼ばれる締結材を用いて行われることが多い。フックボルトはC形鋼やCチャンネルと称されることもある。このようなフックボルトの先端部はスレートの上面から露出しているため、風雨に曝されることになる。フックボルトの先端部が、長期間、風雨に曝されると、フックボルトの先端部に異物が付着したり、錆等が発生したりするおそれがある。これがフックボルトを劣化させる要因となっている。フックボルトの劣化が進むことによりスレートからフックボルトが脱落するようなことがあると、スレートが屋根から脱落するおそれがあるため、好ましくない。
【0006】
そこで、発明者は、フックボルトに補強剤や錆止め剤を塗布することによりフックボルトの劣化を抑制することを検討している。このような方法でフックボルトの劣化を抑制する場合、フックボルトの先端部に補強材や錆止め剤を適切に塗布するためには、フックボルトの先端部に堆積している異物等を除去する必要がある。この点、特許文献1に記載の除去装置は、屋根材を取り外す際に発生する粉塵を吸引することはできるものの、フックボルトの先端部に堆積する異物等を除去することは難しい。そのため、フックボルトの先端部に堆積する異物等を除去することが可能な装置が望まれている。また、フックボルトの先端部を実際に研磨するとなると、フックボルトの周辺に配置されるスレートが僅かに削られる可能性がある。この際に発生する粉塵にはアスベストが含まれているため、その飛散を抑制する対策も必要である。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より的確にフックボルトを研磨することが可能でありながら、研磨の際に発生する粉塵の飛散を抑制することができるフックボルトの研磨装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する研磨装置は、フックボルトを研磨する研磨装置であって、円筒回転体と、カバーと、を備える。円筒回転体は、所定の軸線を中心に円筒状に形成され、内面にブラシが設けられる。カバーは、円筒回転体の周囲を囲うように配置される。カバーには、カバーの内部に発生する粉塵を吸引する吸塵機を接続可能な吸塵口が設けられている。
【0009】
この構成によれば、円筒回転体の内部にフックボルトの先端部を挿入した後、円筒回転体を回転させれば、円筒回転体の内部に設けられるブラシによりフックボルトの先端部が研磨される。よって、フックボルトの先端部に付着している異物等を除去することができる。また、フックボルトの先端部を研磨する際に、仮にフックボルトの周辺のスレートが削られることにより粉塵が発生したとしても、その粉塵の飛散がカバーにより抑制されるとともに、カバーの内部の粉塵を、吸塵口を介して吸塵機により吸引することもできる。このように、上記構成によれば、より的確にフックボルトを研磨することが可能でありながら、研磨の際に発生する粉塵の飛散を抑制することができる。
【0010】
上記のフックボルトの研磨装置において、円筒回転体は、駆動部の動力が伝達されることにより軸線を中心に回転する外部円筒部材と、前記外部円筒部材の内部に脱着可能に設けられ、内面に前記ブラシが設けられる内部部材と、を有していることが好ましい。
この構成によれば、外部円筒部材から内部部材を取り外すことにより、内部部材のブラシに付着した異物等を容易に除去することができるため、研磨装置のメンテナンスが容易となる。
【0011】
上記のフックボルトの研磨装置において、円筒状に形成され、且つ内面に前記ブラシが設けられる内部円筒部材であることが好ましい。
この構成によれば、内面にブラシが設けられる内部部材を容易に実現可能である。
【0012】
上記のフックボルトの研磨装置において、内部円筒部材は、ねじ構造により外部円筒部材に組み付けられ、内部円筒部材は、円筒回転体の回転方向とは逆方向に外部円筒部材に対してねじ込まれることにより外部円筒部材に組み付けられていることが好ましい。
この構成によれば、円筒回転体が回転した際に、外部円筒部材及び内部円筒部材のねじ構造に緩みが発生することを回避できるため、外部円筒部材から内部円筒部材が脱落し難くなる。
【0013】
上記のフックボルトの研磨装置において、内部部材は、軸線を中心に螺旋状に形成され、且つ内面にブラシが設けられる内部螺旋部材であることが好ましい。
この構成によれば、内面にブラシが設けられる内部部材を容易に実現可能である。
【0014】
上記のフックボルトの研磨装置において、円筒回転体及び内部螺旋部材の少なくとも一方には、円筒回転体に対する内部螺旋部材の軸線を中心とする相対回転を抑制する抑制部材が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、外部円筒部材が回転した際に、外部円筒部材と一体となって内部螺旋部材が回転するようになるため、より的確にフックボルトを研磨することが可能である。
【0015】
上記のフックボルトの研磨装置において、円筒回転体の内面には、抑制部材として、軸線を中心とする回転方向において内部螺旋部材と接触する突出部が形成されていることが好ましい。
この構成によれば、円筒回転体に対する内部螺旋部材の相対回転を抑制する抑制部材を容易に実現可能である。
【0016】
上記のフックボルトの研磨装置において、内部螺旋部材は、ブラシと、ブラシの一端部を挟み込んで固定する固定部材と、を備え、固定部材は、ブラシが内側に位置するように螺旋状に折り曲げられていることが好ましい。
この構成によれば、螺旋状のブラシ構造を容易に実現することが可能である。
【0017】
上記のフックボルトの研磨装置において、円筒回転体には、内面から外面に貫通する貫通孔が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、フックボルトを研磨することにより発生する異物等が貫通孔を通じて円筒回転体の内部から外部に排出されるため、ブラシに異物等が堆積し難くなる。結果的に、研磨装置の異物の除去性能をより長く維持することが可能となる。
【0018】
上記のフックボルトの研磨装置において、円筒回転体は、有底円筒状に形成されており、円筒回転体には、貫通孔として、円筒状に形成されている部分を内面から外面に貫通する第1貫通孔と、円筒状に形成されている部分の一端部を閉塞するように設けられる底壁部を内面から外面に貫通する第2貫通孔とが形成されていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、ブラシによりフックボルトを研磨することにより発生する異物等が第1貫通孔及び第2貫通孔を通じて円筒回転体の内部から外部に更に排出され易くなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のフックボルトの研磨装置によれば、より的確にフックボルトを研磨することが可能でありながら、研磨の際に発生する粉塵の飛散を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態の研磨装置の斜視構造を模式的に示す斜視図。
【
図4】第1実施形態の円筒回転体の端面構造を示す端面図。
【
図5】第1実施形態の内部円筒部材の斜視構造を示す斜視図。
【
図6】第1実施形態の研磨装置の使用例を示す斜視図。
【
図7】第2実施形態の円筒回転体の端面構造を示す端面図。
【
図8】第2実施形態の円筒回転体の斜視構造を示す斜視図。
【
図9】第3実施形態の円筒回転体の断面構造を示す断面図。
【
図10】第3実施形態の内部螺旋部材の正面構造を示す正面図。
【
図11】第3実施形態のベース部材の正面構造を示す正面図。
【
図12】第3実施形態のベース部材の断面構造を示す断面図。
【
図13】第3実施形態の保持部材の平面構造を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、フックボルトの研磨装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
<第1実施形態>
図1に示される本実施形態の研磨装置10は、建築物の屋根にスレートを固定するためのフックボルトを研磨する装置である。はじめに、建築物の屋根の構造について簡単に説明する。
【0023】
図2に示されるように、屋根材を構成するスレート1は梁2の上に配置される。梁2はH形鋼等である。スレート1は、屋根の勾配方向Yに直交する断面形状が波状になるように形成されており、水平方向Xに山部1a及び谷部1bを交互に有している。複数のスレート1は、水平方向Xにおいて、それらの端部同士が重なり合うように配置されている。複数のスレート1は、山部1aに組み付けられるフックボルト3により梁2に固定されている。
【0024】
フックボルト3の上端部には雄ねじ部3aが形成されている。フックボルト3の下端部には、鋭角に屈曲したフック部3bが形成されている。フック部3bは梁2に係合している。雄ねじ部3aにナット4がねじ込まれることにより、スレート1がフックボルト3を介して梁2に固定されている。スレート1とナット4との間には座金5が挟み込まれている。
【0025】
このように屋根材としてスレートが用いられる建築物では、
図3に示されるようにフックボルト3の先端部3cが外部に露出している。このフックボルト3の先端部3cが、長期間、風雨に曝されると、フックボルト3の先端部3cに異物が付着したり、錆等が発生したりするおそれがある。
図1に示される研磨装置10は、このフックボルト3の先端部3cを研磨することにより、フックボルト3の先端部3cに付着する異物等を除去する装置である。
【0026】
図1に示されるように、研磨装置10は、円筒回転体11と、駆動部12と、把持部13とを備えている。
駆動部12は電動モータ等により構成されている。駆動部12の出力軸120の先端部には円筒回転体11が一体的に組み付けられている。駆動部12は電力の供給に基づき出力軸120を矢印Daで示される方向に回転させる。この駆動部12の動力が円筒回転体11に伝達されることにより、円筒回転体11も軸線m10を中心に矢印Daで示される方向に回転する。
【0027】
把持部13は、駆動部12の側面から外側に向かって延びるように形成されている。把持部13は、ユーザが研磨装置10を使用する際に手で把持する部分である。
円筒回転体11は、軸線m10を中心に回転することにより、フックボルト3の先端部3cを研磨する部分である。
図4に示されるように、円筒回転体11は、外部円筒部材20と、内部円筒部材30とを有している。外部円筒部材20及び内部円筒部材30はアルミニウム等の金属材料により形成されている。
【0028】
外部円筒部材20は、軸線m10を中心に有底円筒状に形成されている。外部円筒部材20は、軸線m10を中心に円筒状に形成される円筒部21と、円筒部21の一方の開口部を閉塞するように設けられる底壁部22とを有している。底壁部22の外面には駆動部12の出力軸120が一体的に連結されている。円筒部21の内周面には雌ねじ部23が形成されている。
【0029】
図5に示されるように、内部円筒部材30は、軸線m10を中心に円筒状に形成されている。内部円筒部材30は外部円筒部材20の内径と略同一の外径を有している。内部円筒部材30の外周面には雄ねじ部31が形成されている。内部円筒部材30の内周面には多数のブラシ40が設けられている。ブラシ40は、内部円筒部材30の内周面から中心軸m10に向かって内側に延びるように形成されている。本実施形態では、内部円筒部材30が内部部材に相当する。
【0030】
図4に示されるように、外部円筒部材20の雌ねじ部23に対して内部円筒部材30の雄ねじ部31が矢印Dbで示される方向にねじ込まれることにより、内部円筒部材30が外部円筒部材20に一体的に組み付けられている。矢印Dbで示される方向は、円筒回転体11の回転方向Daとは逆方向である。このような構造により、円筒回転体11が矢印Daで示される方向に回転した際に、外部円筒部材20の雌ねじ部23と内部円筒部材30の雄ねじ部31とにより構成されるねじ構造に緩みが発生し難くなっている。
【0031】
一方、外部円筒部材20に対して内部円筒部材30を矢印Daで示される方向に相対回転させれば、外部円筒部材20から内部円筒部材30を取り外すことが可能である。このように、本実施形態の研磨装置10では、外部円筒部材20に対して内部円筒部材30が脱着可能に組み付けられている。
【0032】
図6に示されるように、本実施形態の研磨装置10は、円筒回転体11の周囲を囲うように設けられるカバー50を更に備えている。カバー50は、アルミニウムや鋼材等の金属材料、ゴム等の弾性材料、並びに樹脂材料等により略半円筒状に形成されている。カバー50の両側壁51,52には、スレート1の山部1aの形状に対応する凹部53がそれぞれ形成されている。
【0033】
カバー50の上面には貫通孔54が形成されている。貫通孔54には、
図1に示される駆動部12の出力軸120が挿入されている。カバー50の内部には、
図1に示される円筒回転体11が配置されている。
図6に示されるように、カバー50には吸塵口55が更に設けられている。吸塵口55にはホース61が取り付けられている。ホース61には吸塵機60が接続可能である。吸塵機60は、カバー50の内部に発生する粉塵を、ホース61を介して所定の空気圧で吸引する。吸塵機60は、ホース61を介して吸引される空気中に含まれるアスベスト含有粉塵を捕集することが可能な多層フィルタ構造を有している。多層フィルタ構造は、例えばメインフィルタ、マイクロフィルタ、及びHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ等の複数のフィルタを組み合わせることにより構成されている。メインフィルタは、比較的大きな異物及びアスベスト含有粉塵を捕集することが可能なフィルタである。マイクロフィルタは、メインフィルタで捕集することができないミクロン単位の粉塵を捕集することが可能なフィルタである。HEPAフィルタは、マイクロフィルタで捕集することができないナノ単位の粉塵を捕集することが可能なフィルタである。
【0034】
次に、研磨装置10の動作例について説明する。
フックボルト3の先端部3cを研磨する際には、まず、作業者は、把持部13を手で掴んだ後、円筒回転体11の内部にフックボルト3の先端部3cを挿入する。このとき、
図6に示されるようにスレート1の山部1aにカバー50を密着させる。カバー50の両側壁51,52には凹部53がそれぞれ形成されているため、それらの凹部53がスレート1の山部1aの頂部に沿うようにカバー50を配置すれば、スレート1の山部1aにカバー50の下端部の周縁を密着させることができる。
【0035】
この状態で作業者が研磨装置10の駆動部12を駆動させると、円筒回転体11が回転することにより、フックボルト3の先端部3cがブラシ40により研磨される。これにより、フックボルト3の先端部3cに付着している異物等が除去される。
一方、フックボルト3の先端部3cを研磨する際には、その周囲のスレート1が削られることにより、アスベストを含む粉塵が発生する可能性がある。円筒回転体11の周囲はカバー50により囲われているため、アスベスト含有粉塵、並びにフックボルト3の先端部3cを研磨することにより発生する異物等はカバー50の外部に飛散し難くなっている。また、これらのアスベスト含有粉塵及び異物等は吸塵口55及びホース61を介して吸塵機60に吸引されるため、カバー50の外部に飛散することは殆どない。
【0036】
以上説明した本実施形態の研磨装置10によれば、以下の(1)~(3)に示される作用及び効果を得ることができる。
(1)本実施形態の研磨装置10では、円筒回転体11の内部に設けられるブラシ40によりフックボルト3の先端部3cに付着している異物等を除去することができる。また、フックボルト3の先端部3cを研磨する際に、仮にフックボルト3の周辺のスレート1が削られることにより粉塵が発生したとしても、その粉塵の飛散がカバー50により抑制されるとともに、カバー50の内部の粉塵を、吸塵口55を介して吸塵機60により吸引することもできる。このように、上記実施形態の研磨装置10によれば、より的確にフックボルト3を研磨することが可能でありながら、研磨の際に発生する粉塵の飛散を抑制することができる。
【0037】
(2)円筒回転体11は、外部円筒部材20と、外部円筒部材20の内面に脱着可能に組み付けられる内部円筒部材30とを有している。この構成によれば、外部円筒部材20から内部円筒部材30を取り外すことにより、内部円筒部材30のブラシ40に付着した異物等を除去することができるため、研磨装置10のメンテナンスが容易となる。
【0038】
(3)内部円筒部材30は、ねじ構造により外部円筒部材20に組み付けられる。内部円筒部材30は、円筒回転体11の回転方向Daと逆方向Dbに外部円筒部材20に対してねじ込まれることにより外部円筒部材20に組み付けられている。この構成によれば、円筒回転体11が回転した際に、外部円筒部材20及び内部円筒部材30のねじ構造に緩みが発生することを回避できるため、外部円筒部材20から内部円筒部材30が脱落し難くなる。
【0039】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の研磨装置10について説明する。以下、第1実施形態の研磨装置10との相違点を中心に説明する。
図7及び
図8に示されるように、本実施形態の研磨装置10は、円筒回転体11に、その内面から外面に貫通する複数の貫通孔111,112が形成されている点で第1実施形態の研磨装置10と異なる。
【0040】
第1貫通孔111は、円筒回転体11において円筒状に形成されている部分を内面から外面に貫通するように形成されている。具体的には、第1貫通孔111は外部円筒部材20の円筒部21及び内部円筒部材30を貫通するように形成されている。
第2貫通孔112は、外部円筒部材20の底壁部22を貫通するように形成されている。本実施形態では、外部円筒部材20の底壁部22が、円筒回転体11において円筒状に形成されている部分の一端部を閉塞するように設けられている部分に相当する。
【0041】
以上説明した本実施形態の研磨装置10によれば、以下の(4)に示される作用及び効果を更に得ることができる。
(4)ブラシ40によりフックボルト3を研磨することにより発生する異物等がブラシ40に多量に付着すると、研磨装置10の異物の除去性能が低下するおそれがある。この点、本実施形態の研磨装置10では、ブラシ40によりフックボルト3を研磨することにより発生する異物等が貫通孔111,112を通じて円筒回転体11の内部から外部に排出されるため、ブラシ40に異物等が堆積し難くなる。結果的に、研磨装置10の異物の除去性能をより長く維持することが可能となる。
【0042】
<第3実施形態>
次に、研磨装置10の第3実施形態について説明する。以下、第1実施形態の研磨装置10との相違点を中心に説明する。
図9に示されるように、本実施形態の円筒回転体11は、外部円筒部材20と、内部螺旋部材70と、保持部材80とを備えている。
【0043】
本実施形態の外部円筒部材20は、その内周面に雌ねじ部23が形成されていない点で、第1実施形態の外部円筒部材20と異なる。外部円筒部材20の底壁部内面24には、内部螺旋部材70が接触する突出部25が形成されている。外部円筒部材20の開口部内面26には、保持部材80が挿入される挿入溝27が形成されている。
【0044】
内部螺旋部材70は外部円筒部材20の内部に収容されている。内部螺旋部材70は、複数のブラシ71と、固定部材72とを有している。本実施形態では、内部螺旋部材70が内部部材に相当する。
図10に示されるように、固定部材72は、軸線m10を中心に螺旋状に延びる形状を有している。固定部材72は、ステンレス等の金属材料により形成されている。
【0045】
図9に示されるように、複数のブラシ71は、固定部材72の内面から軸線m10に向かって延びるように設けられている。ブラシ71は、例えば研磨剤を含有した6,4-ナイロン等の樹脂材料により形成されている。
図11及び
図12は、内部螺旋部材70の形成に用いられるベース部材90の正面構造及び断面構造をそれぞれ示したものである。
図11及び
図12に示されるように、ベース部材90は、直線状に延びるように形成される固定部材72と、固定部材72から延びるように形成される複数のブラシ71とを有している。
図12に示されるように、固定部材72は、平板状の金属部材をU字状に折り曲げることにより形成されている。複数のブラシ71の基端部は、U字状に折り曲げられた固定部材72によりかしめられて固定されている。
図11及び
図12に示されるベース部材90を、ブラシ71が内側に向くようにして螺旋状に塑性変形させることにより、
図10に示されるような内部螺旋部材70が形成されている。
【0046】
図9に示されるように、固定部材72の上端部は、円筒回転体11の回転方向Daにおいて外部円筒部材20の突出部25に接触している。
図13に示されるように、保持部材80は、例えば金属製のCリングである。保持部材80は、外部円筒部材20の挿入溝27に脱着可能に挿入されている。
図9に示されるように外部円筒部材20の挿入溝27に保持部材80が挿入されている場合、保持部材80は、外部円筒部材20からの内部螺旋部材70の脱落を防止している。外部円筒部材20の挿入溝27から保持部材80を取り外すことにより、外部円筒部材20から内部螺旋部材70を取り外すことが可能となる。
【0047】
以上説明した本実施形態の研磨装置10によれば、以下の(5)~(8)に示される作用及び効果を得ることができる。
(5)円筒回転体11は、外部円筒部材20と、外部円筒部材20の内部に脱着可能に設けられる内部螺旋部材70とを有している。この構成によれば、外部円筒部材20から内部螺旋部材70を取り外すことにより、内部螺旋部材70のブラシ71に付着した異物等を除去することができるため、研磨装置10のメンテナンスが容易となる。
【0048】
(6)円筒回転体11には、円筒回転体11に対する内部螺旋部材70の軸線m10を中心とする相対回転を抑制する抑制部材として、突出部25が形成されている。この構成によれば、外部円筒部材20が回転した際に、外部円筒部材20と一体となって内部螺旋部材70が回転するようになるため、より的確にフックボルト3を研磨することが可能である。
【0049】
(7)内部螺旋部材70は、ブラシ71と、ブラシ71の一端部を挟み込んで固定する固定部材72とを備えている。固定部材72は、ブラシ71が内側に位置するように螺旋状に折り曲げられて形成されている。この構成によれば、螺旋状のブラシ構造を容易に実現することが可能である。
【0050】
<他の実施形態>
なお、上記実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
・第2実施形態の研磨装置10では、円筒回転体11に第1貫通孔111及び第2貫通孔112のいずれか一方のみが形成されていてもよい。また、円筒回転体11には、単数の第1貫通孔111、あるいは単数の第2貫通孔112が形成されていてもよい。
【0051】
・第3実施形態の研磨装置10では、例えば内部螺旋部材70に形成される凸部が、外部円筒部材20の内周面に形成される凹部に嵌合することにより、円筒回転体11に対する内部螺旋部材70の相対回転が抑制されていてもよい。
・第1実施形態及び第2実施形態の円筒回転体11は、外部円筒部材20及び内部円筒部材30が一体化された単一の部材からなるものであってもよい。また、第3実施形態の円筒回転体11は、外部円筒部材20及び内部螺旋部材70が一体化された単一の部材からなるものであってもよい。
【0052】
・各実施形態の駆動部12は、電動モータに限らず、例えば圧縮空気を動力源として用いることにより出力軸120を回転させるものであってもよい。
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0053】
3…フックボルト、10…研磨装置、11…円筒回転体、20…外部円筒部材、25…突出部(抑制部材)、30…内部円筒部材(内部部材)、40,71…ブラシ、50…カバー、55…吸塵口、60…吸塵機、70…内部螺旋部材(内部部材)、72…固定部材、111…第1貫通孔、112…第2貫通孔。