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特開2023-139153免疫療法に関するオルガノイドならびにそれを調製および使用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139153
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】免疫療法に関するオルガノイドならびにそれを調製および使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/09 20100101AFI20230926BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20230926BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20230926BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230926BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230926BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
C12N5/09
C12N5/078
C12Q1/02
A61P35/00
A61K35/17
A61P37/04
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023118838
(22)【出願日】2023-07-21
(62)【分割の表示】P 2020540738の分割
【原出願日】2019-02-01
(31)【優先権主張番号】62/625,628
(32)【優先日】2018-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504018057
【氏名又は名称】ウェイク・フォレスト・ユニバーシティ・ヘルス・サイエンシーズ
【氏名又は名称原語表記】Wake Forest University Health Sciences
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】スカーダル アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ヴォタノポーロス コンスタンティノス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】腫瘍オルガノイドおよび免疫細胞を含むオルガノイドを含むオルガノイド、ならびに、それを調製および使用する方法を提供する。
【解決手段】腫瘍モデルとして有用なインビトロ細胞構築物(例えば、「オルガノイド」)であって、生きた腫瘍細胞および少なくとも1つのタイプの生きた免疫細胞を含む、構築物を提供する。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍モデルとして有用なインビトロ細胞構築物(例えば、「オルガノイド」)であって、
生きた腫瘍細胞および少なくとも1つのタイプの生きた免疫細胞を含む、
構築物。
【請求項2】
請求項1の構築物であって、
前記の生きた腫瘍細胞は、対象内の腫瘍から集められ、および/または、得られる、
構築物。
【請求項3】
請求項1または2の構築物であって、
前記の少なくとも1つのタイプの生きた免疫細胞は、対象内のリンパ節(例えば、リンパ節生物試料)、骨髄、および/または末梢血から集められ、および/または、得られる、
構築物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項の構築物であって、
前記の生きた腫瘍細胞および前記の少なくとも1つのタイプの生きた免疫細胞は、同一対象から集められ、および/または、得られる、
構築物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項の構築物であって、
前記の少なくとも1つのタイプの生きた免疫細胞は、濾胞樹状リンパ細胞、線維芽細網リンパ細胞、白血球、B細胞、T細胞、任意の骨髄細胞(例えば、任意の骨髄起源(樹状細胞および食細胞を含む))、および/または任意のリンパ系起源細胞である、
構築物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項の構築物であって、
白血球をさらに含む、
構築物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項の構築物であって、
前記の生きた腫瘍細胞および前記の少なくとも1つのタイプの生きた免疫細胞は、約1:1~約10:1、50:1、または100:1(腫瘍細胞:免疫細胞)の比で前記構築物内に存在し、約5:1または約10:1の比で存在してもよい、
構築物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項の構築物であって、
良性細胞(例えば、血管内皮細胞、間質細胞など)をさらに含み、
ここで前記良性細胞は、前記の少なくとも1つのタイプの生きた免疫細胞および/または生きた腫瘍細胞が取得および/または得られる対象と同一の対象から集められてもよく、および/または、得られてもよい、
構築物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項の構築物であって、
前記の生きた腫瘍細胞のコアを取り囲んでいる(例えば、カプセル封入している)シェルをさらに含み、前記シェルは、前記の少なくとも1つのタイプの免疫細胞および/または生きた良性細胞(例えば、組織細胞、非癌性細胞など)を含み、
ここで前記の生きた良性細胞は、前記の少なくとも1つのタイプの免疫細胞および/または生きた腫瘍細胞が取得および/または得られる対象と同一の対象から集められてもよく、および/または、得られてもよい、
構築物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項の構築物であって、
前記の生きた腫瘍細胞は、悪性細胞を含む、
構築物。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項の構築物であって、
前記の腫瘍細胞、前記の少なくとも1つのタイプの生きた免疫細胞、および/または前記の良性細胞は、存在する場合、哺乳類の細胞(例えば、ヒト、マウス、ラット、サルなど)を含む、
構築物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項の構築物であって、
前記の腫瘍細胞および/または前記の少なくとも1つのタイプの生きた免疫細胞は、検出可能な化合物(例えば、蛍光化合物)を含む、
構築物。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項の構築物であって、
前記構築物は、1、2、3、4、5、6、7日、または1~2もしくは3週間、またはそれよりも長い期間、培地中で培養される、
構築物。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項の構築物であって、
前記の腫瘍細胞、前記の少なくとも1つのタイプの生きた免疫細胞、および/または前記の良性細胞は、少なくとも50%、60%、70%、80%、または90%の生着率を有する方法を用いて調製される、
構築物。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項の構築物であって、
前記構築物は、培養の1、2、3、または4週において、前記構築物内の細胞平均数に基づいて少なくとも75%、80%、85%、または90%の生きた細胞(例えば、生きた腫瘍、免疫、および/または良性細胞)を含む、
構築物。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項の構築物であって、
ヒドロゲルをさらに含む、
構築物。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項の構築物であって、
前記構築物は、約100万~約500万、1000万、2500万、5000万、7000万、または1億個の細胞の範囲での細胞合計数を有する、
構築物。
【請求項18】
免疫系モデルとして有用なインビトロ細胞構築物(例えば、「オルガノイド」)であって、
複数の生きた免疫細胞を含む、
構築物。
【請求項19】
請求項18の構築物であって、
前記の複数の生きた免疫細胞は、対象のリンパ節(例えば、リンパ節生物試料)、末梢血、および/または骨髄から集められ、および/または、得られる、
構築物。
【請求項20】
請求項18または19の構築物であって、
前記の複数の生きた免疫細胞は、濾胞樹状リンパ細胞、線維芽細網リンパ細胞、白血球、B細胞、T細胞、任意の骨髄細胞(例えば、任意の骨髄起源(樹状細胞および食細胞を含む))、および/または任意のリンパ系起源細胞を含む、
構築物。
【請求項21】
請求項18から20の構築物であって、
前記の複数の免疫細胞は、白血球を含む、
構築物。
【請求項22】
請求項18から21の構築物であって、
良性細胞(例えば、血管内皮細胞、間質細胞など)をさらに含み、
ここで前記良性細胞は、前記の複数の免疫細胞が取得および/または得られる対象と同一の対象から集められてもよく、および/または、得られてもよい、
構築物。
【請求項23】
請求項18から22の構築物であって、
前記の複数の生きた免疫細胞および/または前記の良性細胞は、存在する場合、哺乳類の細胞(例えば、ヒト、マウス、ラット、サルなど)を含む、
構築物。
【請求項24】
請求項18から23の構築物であって、
前記の複数の生きた免疫細胞は、検出可能な化合物(例えば、蛍光化合物)を含む、
構築物。
【請求項25】
請求項18から24の構築物であって、
前記構築物は、1、2、3、4、5、6、7日、または1~2もしくは3週間、またはそれよりも長い期間、培地中で培養される、
構築物。
【請求項26】
請求項18から25の構築物であって、
前記の複数の生きた免疫細胞および/または前記の良性細胞は、少なくとも50%、60%、70%、80%、または90%の生着率を有する方法を用いて調製される、
構築物。
【請求項27】
請求項18から26の構築物であって、
前記の構築物は、培養の1、2、3、または4週において、前記構築物内の細胞平均数に基づいて少なくとも75%、80%、85%、または90%の生きた細胞(例えば、生きた免疫細胞および/または良性細胞)を含む、
構築物。
【請求項28】
請求項18から27の構築物であって、
ヒドロゲルをさらに含む、
構築物。
【請求項29】
請求項18から28の構築物であって、
前記構築物は、約100万~約500万、1000万、2500万、5000万、7000万、または1億個の細胞の範囲での細胞合計数を有する、
構築物。
【請求項30】
目的化合物をインビトロで免疫活性に関してスクリーニングする方法および/または免疫系を調節する方法であって、
複数の細胞を含む少なくとも1つのオルガノイドを提供するステップ(例えば、前記の少なくとも1つのオルガノイドは、肝臓オルガノイド、心臓オルガノイド、腫瘍オルガノイド、免疫系オルガノイドなどであってもよい);
前記の目的化合物を前記の少なくとも1つのオルガノイドにインビトロで接触させるステップ;そして、
前記の目的化合物を前記の少なくとも1つのオルガノイドにインビトロで接触させるステップに応じて、前記の少なくとも1つのオルガノイドの免疫応答を(例えば、前記の目的化合物との接触前および/または接触不存在下でのオルガノイドの免疫応答/活性と比較して)判定するステップ、
を含む、
方法。
【請求項31】
請求項30の方法であって、
前記の少なくとも1つのオルガノイドは、請求項1から29のいずれか一項の構築物である、
方法。
【請求項32】
請求項30の方法であって、
前記の少なくとも1つのオルガノイドは、複数の良性細胞(例えば、肝臓細胞、心臓細胞、脳細胞など)を含む、
方法。
【請求項33】
請求項30から32のいずれか一項の方法であって、
前記の少なくとも1つのオルガノイドは、複数の生きた腫瘍細胞を含む、
方法。
【請求項34】
請求項30から33のいずれか一項の方法であって、
前記の少なくとも1つのオルガノイドは、複数の少なくとも1つのタイプの免疫細胞を含む、
方法。
【請求項35】
請求項30から34のいずれか一項の方法であって、
前記の少なくとも1つのオルガノイドを培養培地と接触させるステップをさらに含み、
ここで前記培養培地は、少なくとも1つのタイプの免疫細胞を含んでもよい、
方法。
【請求項36】
請求項30から35のいずれか一項の方法であって、
前記の少なくとも1つのオルガノイドを、白血球を含む培養培地と接触させるステップをさらに含み、
ここで前記白血球は、前記の複数の細胞と同一由来であってもよい、
方法。
【請求項37】
請求項30から36のいずれか一項の方法であって、
前記の目的化合物は、化学療法剤および/または免疫療法剤を含み、
ここで前記の目的化合物は、免疫療法剤(例えば、ベムラフェニブ、イピリムマブ、ニボルマブ、および/またはペンブロリズマブ)であってもよい、
方法。
【請求項38】
請求項30から37のいずれか一項の方法であって、
前記の目的化合物は、チェックポイント阻害剤(例えば、PD-1阻害剤、CTLA-4阻害剤など)である、
方法。
【請求項39】
請求項30から38のいずれか一項の方法であって、
前記の目的化合物は、改変された免疫細胞(例えば、CAR T細胞)を含む、
方法。
【請求項40】
請求項39の方法であって、
前記の少なくとも1つのオルガノイドは、生きた腫瘍細胞を含み、前記の目的化合物を前記の少なくとも1つのオルガノイドにインビトロで接触させるステップに応じて、少なくとも1つのオルガノイド内に存在する腫瘍細胞の増殖における低減(例えば、細胞増殖の欠如、細胞死、細胞浸潤における低減など)を判定する、
方法。
【請求項41】
請求項30から40のいずれか一項の方法であって、
前記の少なくとも1つのオルガノイドの免疫応答を判定するステップは、細胞遊走を判定するステップ(例えば、少なくとも1つのタイプの免疫細胞の遊走を判定するステップ)を含み、生きた細胞のトラッキングを用いてもよい、
方法。
【請求項42】
請求項30から40のいずれか一項の方法であって、
前記の少なくとも1つのオルガノイドの免疫応答を判定するステップは、細胞(例えば、前記オルガノイド内に存在する細胞および/または遊走細胞)上の活性化および/または枯渇および/またはT細胞機能障害マーカーの存在を判定するステップを含み、免疫蛍光を用いてもよい、
方法。
【請求項43】
請求項30から42のいずれか一項の方法であって、
前記の目的化合物を前記の少なくとも1つのオルガノイドにインビトロで接触させるステップに応じて、前記の目的化合物が、少なくとも1つのタイプの(the least one type of)細胞(例えば、免疫細胞)の免疫活性を活性化および/または増大させる、
方法。
【請求項44】
請求項30から43のいずれか一項の方法であって、
前記の目的化合物を前記の少なくとも1つのオルガノイドにインビトロで接触させるステップに応じて、少なくとも1つのオルガノイド内に存在する細胞(例えば、腫瘍細胞)の増殖における低減(例えば、細胞増殖の欠如、細胞死、細胞浸潤における低減など)が存在する、
方法。
【請求項45】
請求項30から44のいずれか一項の方法であって、
前記の少なくとも1つのオルガノイドは、生きた腫瘍細胞を含み、
前記方法は、前記の生きた腫瘍細胞の増殖における低減(例えば、腫瘍細胞の増殖の欠如、腫瘍細胞の死、腫瘍細胞による浸潤における低減など)を判定するステップをさらに含み、それは前記の目的化合物の抗腫瘍活性を示す、
方法。
【請求項46】
請求項45の方法であって、
前記の生きた腫瘍細胞の増殖における低減を判定するステップは、
前記の少なくとも1つのオルガノイド内の生存能力のある腫瘍細胞の数を判定するステップ、
前記の少なくとも1つのオルガノイド内に存在する生きた腫瘍細胞の数を判定するステップ、
前記の少なくとも1つのオルガノイドの容量を判定するステップ、および/または、
前記の少なくとも1つのオルガノイド内に存在する死滅した腫瘍細胞の数を判定するステップ
を含む、
方法。
【請求項47】
請求項30から46のいずれか一項の方法であって、
前記の少なくとも1つのオルガノイドは、少なくとも1つのタイプの免疫細胞を含み、および/または、前記の少なくとも1つのオルガノイドは、少なくとも1つのタイプの免疫細胞と接触されて、
ここで、前記の少なくとも1つのオルガノイドの免疫応答を判定するステップは、前記の少なくとも1つのタイプの免疫細胞の活性を判定するステップを含む、
方法。
【請求項48】
請求項30から47のいずれか一項の方法であって、
前記の少なくとも1つのオルガノイドの免疫応答を判定するステップは、免疫学的マーカーの存在を判定するステップ(例えば、T細胞活性化マーカーの存在を判定するステップ)を含む、
方法。
【請求項49】
請求項30から48のいずれか一項の方法であって、
前記の少なくとも1つのオルガノイドの免疫応答を判定するステップに応じて対象を管理するために(to administer a subject)、前記の目的化合物の用量および/または注入速度を計算するステップをさらに含む、
方法。
【請求項50】
請求項30から49のいずれか一項の方法であって、
前記の目的化合物を治療有効量で対象に投与するステップをさらに含み、それは、前記の目的化合物が前記腫瘍細胞の転移をインビトロで低減させる、オルガノイドのサイズをインビトロで低減させる、腫瘍細胞の数をインビトロで低減させる、腫瘍細胞の死をインビトロで誘導する、免疫細胞の活性をインビトロで増大させる、および/または、免疫細胞をインビトロで活性化すると判定された場合であってもよい、
方法。
【請求項51】
目的化合物をインビトロで抗腫瘍活性に関してスクリーニングする方法であって、
請求項1から17のいずれか一項の少なくとも1つの構築物を提供するステップ;
前記の目的化合物を前記構築物にインビトロで接触させるステップ;そして、
前記の目的化合物を前記構築物にインビトロで接触させるステップに応じて、(例えば、前記の目的化合物と接触されていない少なくとも1つの同様の構築物の腫瘍細胞と比較して、および/または、前記構築物または少なくとも1つの同様の構築物内の生きた良性細胞と比較して)生きた腫瘍細胞の増殖を判定するステップ
を含み、
前記の生きた腫瘍細胞の増殖における低減(例えば、腫瘍細胞の増殖の欠如、腫瘍細胞の死、腫瘍細胞による浸潤における低減など)は、前記の目的化合物の抗腫瘍活性を示す、
方法。
【請求項52】
請求項51の方法であって、
前記の少なくとも1つの構築物を培養培地と接触させるステップをさらに含み、
ここで前記培養培地は、少なくとも1つのタイプの免疫細胞を含んでもよい、
方法。
【請求項53】
請求項51から52のいずれか一項の方法であって、
前記の少なくとも1つの構築物を、白血球を含む培養培地と接触させるステップをさらに含み、
ここで前記白血球は、前記の生きた腫瘍細胞および/または少なくとも1つのタイプの免疫細胞と同一由来であってもよい、
方法。
【請求項54】
請求項51から53のいずれか一項の方法であって、
前記の目的化合物は、化学療法剤および/または免疫療法剤を含み、
ここで前記の目的化合物は、免疫療法剤(例えば、ベムラフェニブ、イピリムマブ、ニボルマブ、および/またはペンブロリズマブ)であってもよい、
方法。
【請求項55】
請求項51から54のいずれか一項の方法であって、
前記の目的化合物は、チェックポイント阻害剤(例えば、PD-1阻害剤、CTLA-4阻害剤など)である、
方法。
【請求項56】
請求項51から55のいずれか一項の方法であって、
前記の目的化合物は、改変された免疫細胞(例えば、CAR T細胞)を含む、
方法。
【請求項57】
請求項51から56のいずれか一項の方法であって、
前記の少なくとも1つの構築物の免疫応答を判定するステップをさらに含み、
ここで、前記の少なくとも1つの構築物の免疫応答を判定するステップは、細胞遊走を判定するステップ(例えば、少なくとも1つのタイプの免疫細胞の遊走を判定するステップ)を含んでもよく、生きた細胞のトラッキングを用いてもよい、
方法。
【請求項58】
請求項57の方法であって、
前記の少なくとも1つの構築物の免疫応答を判定するステップは、細胞(例えば、オルガノイド内に存在する細胞および/または遊走細胞)上の活性化および/または枯渇T細胞機能障害マーカーの存在を判定するステップを含み、免疫蛍光を用いてもよい、
方法。
【請求項59】
請求項51から58のいずれか一項の方法であって、
前記の目的化合物を前記の少なくとも1つの構築物にインビトロで接触させるステップに応じて、前記の目的化合物は、少なくとも1つのタイプの(the least one type of)免疫細胞の免疫活性を活性化および/または増大させる、
方法。
【請求項60】
請求項51から59のいずれか一項の方法であって、
前記の生きた腫瘍細胞の増殖における低減を判定するステップは、
前記の少なくとも1つの構築物内の生存能力のある腫瘍細胞の数を判定するステップ、
前記の少なくとも1つの構築物内に存在する生きた腫瘍細胞の数を判定するステップ、
前記の少なくとも1つの構築物の容量を判定するステップ、および/または、
前記の少なくとも1つの構築物内に存在する死滅した腫瘍細胞の数を判定するステップ
を含む、
方法。
【請求項61】
請求項51から60のいずれか一項の方法であって、
前記の少なくとも1つのオルガノイドは、少なくとも1つのタイプの免疫細胞を含み、および/または、前記の少なくとも1つのオルガノイドは、少なくとも1つのタイプの免疫細胞と接触されて、
ここで、前記の少なくとも1つのオルガノイドの免疫応答を判定するステップは、前記の少なくとも1つのタイプの免疫細胞の活性を判定するステップを含む、
方法。
【請求項62】
請求項51から61のいずれか一項の方法であって、
前記の生きた腫瘍細胞の増殖を判定するステップに応じて対象を管理するために、前記の目的化合物の用量および/または注入速度を計算するステップをさらに含む、
方法。
【請求項63】
請求項51から62のいずれか一項の方法であって、
前記の目的化合物を治療有効量で対象に投与するステップをさらに含み、それは、前記の目的化合物が、腫瘍細胞の転移をインビトロで低減させる、構築物のサイズをインビトロで低減させる、腫瘍細胞の数をインビトロで低減させる、腫瘍細胞の死をインビトロで誘導する、免疫細胞の活性をインビトロで増大させる、および/または、免疫細胞をインビトロで活性化すると判定された場合であってもよい、
方法。
【請求項64】
目的化合物をインビトロで免疫活性に関してスクリーニングする方法、免疫系、抗転移活性、および/または抗腫瘍活性を調節する方法であって、
免疫細胞オルガノイドおよび生きた腫瘍細胞オルガノイドを含むデバイスを提供するステップ;
前記免疫細胞オルガノイドおよび前記の生きた腫瘍細胞オルガノイドを増殖培地と接触させるステップ;
目的化合物を前記免疫細胞オルガノイドおよび/または前記の生きた腫瘍細胞オルガノイドに接触させるステップ(例えば、前記化合物を増殖培地に添加することによる);および
前記の目的化合物を前記免疫細胞オルガノイドおよび/または前記の生きた腫瘍細胞オルガノイドに接触させるステップに応じて、(例えば、前記の目的化合物と接触されていない少なくとも1つの同様の生きた腫瘍細胞オルガノイドの腫瘍細胞と比較して、および/または、前記オルガノイドまたは少なくとも1つの同様の生きた腫瘍細胞オルガノイド内の生きた良性細胞と比較して)前記の生きた腫瘍細胞の増殖を判定するステップ、
前記の生きた腫瘍細胞の増殖における低減(例えば、腫瘍細胞の増殖の欠如、腫瘍細胞の死、腫瘍細胞による浸潤における低減など)は、前記の目的化合物の抗腫瘍活性を示す、
および/または、
前記免疫細胞オルガノイドおよび/または前記の生きた腫瘍細胞オルガノイドの免疫応答を(例えば、前記の目的化合物との接触前および/または接触不存在下での前記免疫細胞オルガノイドおよび/または前記の生きた腫瘍細胞オルガノイドの免疫応答/活性と比較して)判定するステップ
を含む、
方法。
【請求項65】
請求項64の方法であって、
前記デバイスは、1つまたは複数のチャンバーを備え、前記免疫細胞オルガノイドおよび前記の生きた腫瘍細胞オルガノイドは、同一チャンバー内に存在し、
ここで前記チャンバー(すなわち、前記チャンバーは前記免疫細胞オルガノイドおよび前記の生きた(liver)腫瘍細胞オルガノイドを含む)は、2以上のゾーンを備えていてもよく、前記の腫瘍細胞オルガノイドの生きた腫瘍細胞の少なくとも一部は第1のゾーン内に存在し前記免疫細胞オルガノイドの免疫細胞の少なくとも一部は第2のゾーン内に存在してもよい、
方法。
【請求項66】
請求項64の方法であって、
前記デバイスは、1つまたは複数のチャンバーを備え、前記免疫細胞オルガノイドおよび前記の生きた腫瘍細胞オルガノイドは、流体連通している別個のチャンバー内に存在する、
方法。
【請求項67】
請求項64から66のいずれか一項の方法であって、
前記免疫細胞オルガノイドおよび前記の生きた腫瘍細胞オルガノイドを前記増殖培地と接触させるステップは、前記増殖培地を循環させるステップを含み、前記増殖培地を、前記免疫細胞オルガノイドを含む第1のチャンバーから前記の生きた腫瘍細胞オルガノイドを含む第2のチャンバーへ循環させてもよい、
方法。
【請求項68】
請求項64から67のいずれか一項の方法であって、
前記増殖培地は、少なくとも1つのタイプの免疫細胞(例えば、白血球)を含み、
ここで前記の少なくとも1つのタイプの免疫細胞は、前記免疫細胞オルガノイドおよび前記の生きた腫瘍細胞オルガノイド内のそれぞれ免疫細胞および/または腫瘍細胞と同一の対象から集められてもよく、および/または、得られてもよい、
方法。
【請求項69】
請求項64から68のいずれか一項の方法であって、
前記の生きた腫瘍細胞オルガノイドおよび免疫細胞オルガノイドとは異なる細胞を含む第3のオルガノイド(例えば、肝臓オルガノイド)をさらに含み、それは前記デバイスの別個のチャンバー内に存在してもよい、
方法。
【請求項70】
請求項64から69のいずれか一項の方法であって、
試験化合物が投与されない場合に前記の生きた腫瘍細胞オルガノイド内に存在する腫瘍細胞の数と比較して、前記の生きた腫瘍細胞オルガノイド内の腫瘍細胞の存在の低減(例えば、数または密度における変化)を判定するステップをさらに含む、
方法。
【請求項71】
請求項64から70のいずれか一項の方法であって、
前記の生きた腫瘍細胞オルガノイドは、請求項1から17のいずれか一項の構築物である、
方法。
【請求項72】
請求項64から71のいずれか一項の方法であって、
前記免疫細胞オルガノイドは、請求項18から29のいずれか一項の構築物である、
方法。
【請求項73】
請求項64から72のいずれか一項の方法であって、
前記の目的化合物は、化学療法剤および/または免疫療法剤を含み、
ここで前記の目的化合物は、免疫療法剤(例えば、ベムラフェニブ、イピリムマブ、ニボルマブ、および/またはペンブロリズマブ)であってもよい、
方法。
【請求項74】
請求項64から73のいずれか一項の方法であって、
前記の目的化合物は、チェックポイント阻害剤(例えば、PD-1阻害剤、CTLA-4阻害剤など)である、
方法。
【請求項75】
請求項64から74のいずれか一項の方法であって、
前記の目的化合物は、改変された免疫細胞(例えば、CAR T細胞)を含む、
方法。
【請求項76】
請求項64から75のいずれか一項の方法であって、
前記免疫応答を判定するステップは、細胞遊走を判定するステップ(例えば、少なくとも1つのタイプの免疫細胞の遊走を判定するステップ)を含み、生きた細胞のトラッキングを用いてもよい、
方法。
【請求項77】
請求項64から76のいずれか一項の方法であって、
前記免疫応答を判定するステップは、細胞(例えば、前記オルガノイド内に存在する細胞および/または遊走細胞)上の活性化および/または免疫系機能障害マーカーの存在を判定するステップを含み、免疫蛍光を用いてもよい、
方法。
【請求項78】
請求項64から77のいずれか一項の方法であって、
ここで、前記の目的化合物を前記免疫細胞オルガノイドおよび/または前記の生きた腫瘍細胞オルガノイドに接触させるステップに応じて、前記の目的化合物は、前記免疫細胞オルガノイドおよび/または前記の生きた腫瘍細胞オルガノイド内および/または周囲に存在する少なくとも1つのタイプの(the least one type of)免疫細胞の免疫活性を活性化および/または増大させる、
方法。
【請求項79】
請求項64から78のいずれか一項の方法であって、
前記の目的化合物を前記免疫細胞オルガノイドおよび/または前記の生きた腫瘍細胞オルガノイドに接触させるステップに応じて、前記の生きた腫瘍細胞オルガノイド内に存在する腫瘍細胞の増殖における低減(例えば、腫瘍細胞の増殖の欠如、腫瘍細胞の死、腫瘍細胞による浸潤の低減など)が存在し、それは前記の目的化合物の抗腫瘍活性を示す、
方法。
【請求項80】
請求項79の方法であって、
前記の生きた腫瘍細胞の増殖における低減を判定するステップは、
前記の生きた腫瘍細胞オルガノイド内の生存能力のある腫瘍細胞の数を判定するステップ、
前記の生きた腫瘍細胞オルガノイド内に存在する生きた腫瘍細胞の数を判定するステップ、
前記の生きた腫瘍細胞オルガノイドの容量を判定するステップ、および/または、
前記の生きた腫瘍細胞オルガノイド内に存在する死滅した腫瘍細胞の数を判定するステップ
を含む、
方法。
【請求項81】
請求項64から80のいずれか一項の方法であって、
前記免疫応答を判定する方法は、前記免疫細胞オルガノイドおよび/または前記の生きた腫瘍細胞オルガノイド内および/または周囲に存在する少なくとも1つのタイプの免疫細胞の活性を判定するステップを含む、
方法。
【請求項82】
請求項64から81のいずれか一項の方法であって、
前記免疫応答を判定するステップは、免疫学的マーカーの存在を判定するステップ(例えば、T細胞活性化マーカーの存在を判定するステップ)を含む、
方法。
【請求項83】
請求項64から82のいずれか一項の方法であって、
前記の生きた腫瘍細胞の増殖を判定するステップに応じて対象を管理するために、前記の目的化合物の用量および/または注入速度を計算するステップをさらに含む、
方法。
【請求項84】
請求項64から83のいずれか一項の方法であって、
前記の目的化合物を対象に治療有効量で投与するステップをさらに含み、それは、前記の目的化合物が、腫瘍細胞の転移をインビトロで低減する、オルガノイドのサイズをインビトロで低減させる、腫瘍細胞の数をインビトロで低減させる、腫瘍細胞の死をインビトロで誘導する、免疫細胞の活性をインビトロで増大させる、および/または、免疫細胞をインビトロで活性化すると判定された場合であってもよい、
方法。
【請求項85】
免疫細胞をエクスビボで活性化する方法であって、
前記方法は、
免疫細胞(例えば、リンパ球)を複数の生きた腫瘍細胞を含む生きた腫瘍細胞オルガノイドに接触させて、活性化された免疫細胞を(例えば、適応免疫メカニズムを介して)提供するステップ;
前記の活性化された免疫細胞を前記の生きた腫瘍細胞オルガノイドから分離して、分離された活性化された免疫細胞を提供するステップ;および
前記の分離された活性化された免疫細胞を増殖させて、活性化された免疫細胞の集団を提供するステップ
を含む、
方法。
【請求項86】
請求項85の方法であって、
前記の生きた腫瘍細胞は、対象内の腫瘍から集められ、および/または、得られる、
方法。
【請求項87】
請求項85または86の方法であって、
前記免疫細胞は、対象内のリンパ節(例えば、リンパ節生物試料)から集められ、および/または、得られる、
方法。
【請求項88】
請求項85から87のいずれか一項の方法であって、
前記の生きた腫瘍細胞および前記免疫細胞は、同一対象から集められ、および/または、得られる、
方法。
【請求項89】
請求項85から88のいずれか一項の方法であって、
白血球を前記の生きた腫瘍細胞オルガノイドに接触させるステップをさらに含み、
ここで前記白血球および前記免疫細胞は、混合されていてもよい、
方法。
【請求項90】
請求項85から89のいずれか一項の方法であって、
前記の生きた腫瘍細胞オルガノイドは、良性細胞(例えば、血管内皮細胞、間質細胞など)をさらに含み、
ここで前記良性細胞は、少なくとも1つのタイプの免疫細胞および/または生きた腫瘍細胞が取得および/または得られる対象と同一の対象から集められてもよく、および/または、得られてもよい、
方法。
【請求項91】
請求項85から90のいずれか一項の方法であって、
前記の生きた腫瘍細胞のコアを取り囲んでいる(例えば、カプセル封入している)シェルをさらに含み、
前記シェルは、生きた良性細胞(例えば、組織細胞、非癌性細胞など)を含み、
ここで前記の生きた良性細胞は、少なくとも1つのタイプの免疫細胞および/または生きた腫瘍細胞が取得および/または得られる対象と同一の対象から集められてもよく、および/または、得られてもよい、
方法。
【請求項92】
請求項85から91のいずれか一項の方法であって、
前記の生きた腫瘍細胞は、悪性細胞を含む、
方法。
【請求項93】
請求項85から92のいずれか一項の方法であって、
前記腫瘍細胞、前記免疫細胞、および/または前記良性細胞は、存在する場合は、哺乳類の細胞(例えば、ヒト、マウス、ラット、サルなど)を含む、
方法。
【請求項94】
請求項85から93のいずれか一項の方法であって、
前記腫瘍細胞および/または前記免疫細胞は、検出可能な化合物(例えば、蛍光化合物)を含む、
方法。
【請求項95】
請求項85から94のいずれか一項の方法であって、
集めるステップの前に、前記の生きた腫瘍細胞オルガノイドおよび前記免疫細胞が、1、2、3、4、5、6、7日、または1~2もしくは3週間、またはそれよりも長い期間、培地中で培養される、
方法。
【請求項96】
請求項85から95のいずれか一項の方法であって、
前記の生きた腫瘍細胞オルガノイドは、請求項1から17のいずれか一項の構築物である、
方法。
【請求項97】
請求項85から96のいずれか一項の方法であって、
前記免疫細胞を前記の生きた腫瘍細胞オルガノイドに接触させるステップは、前記免疫細胞を活性化する薬剤および/または活性化を助ける薬剤の不存在下である、
方法。
【請求項98】
請求項85から96のいずれか一項の方法であって、
前記免疫細胞を前記の生きた腫瘍細胞オルガノイドに接触させるステップは、前記免疫細胞を活性化する薬剤および/または活性化を助ける薬剤の存在下である、
方法。
【請求項99】
請求項85から98のいずれか一項の方法であって、
活性化された免疫細胞の集団を患者に投与するステップをさらに含み、
ここで前記患者は、1つまたは複数の細胞が取得および/または得られる対象と同一であってもよい、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権の陳述]
本出願は、合衆国法典第35巻第119条(e)の下で、2018年2月2日に出願された米国仮出願番号62/625,628の利益を主張し、その内容全体は本明細書中に参照により援用される。
【0002】
[政府支援]
本発明は、国立衛生研究所によって授与された助成金番号1U54TR001362-01、5UL1TR001420-03、および5P30CA012197-43の下で政府支援によってなされた。政府は本発明における一定の権利を有する。
【0003】
[分野]
本発明は、概して、腫瘍オルガノイドおよび免疫細胞を含むオルガノイドを含むオルガノイド、ならびに、それを調製および使用する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
免疫療法は、腫瘍を効率的に標的化するその能力に起因して魅力的な抗がん治療として現れた。しかしながら、そのような治療が一般的にまたは特定の患者に関して十分に試験され得るインビトロモデルは存在しない。
【0005】
最初は、動物モデルは、インビボの腫瘍生理学の複雑性の連想を与え得るので魅力的に思えた。しかしながら、インフラストラクチャーの要求および動物の使用に伴う倫理的問題の他にも、これらのモデルがヒトにおける結果を予測する力は弱々しい。患者由来腫瘍異種移植(PDX)技術は、最近になって、患者の腫瘍がどのように薬物に対して反応するか予測するために導入された。患者の腫瘍の小さなフラグメントが、免疫欠損マウス内に移植される。腫瘍フラグメントが十分なサイズまで増殖した時点で、腫瘍が取り出されて、数ピースに分割されて、新しいマウス内に再移植される。PDX技術の主な利点は:1)患者のがん細胞がインビボで拡大されて、がんの病理生物学に対して重大な貢献を与える腫瘍微小環境の構成要素を再形成すること、および2)患者の臨床治療の前に、患者の増殖している腫瘍に対して薬物を試験する能力である。しかしながら、PDX技術は、特定のサイズよりも小さい腫瘍を増殖させることができず、最も成功的なPDXは、非常に侵襲性の腫瘍から生じ、この技術を一部のがん患者に適用可能にさせるが、全ての患者ではない。さらに、PDXのための腫瘍微小環境(TME)はミューリン起源であり、したがって、ヒト特異的な間質エレメントがない。
【0006】
がん研究は、制御されたインビトロ環境における腫瘍進行およびシグナル伝達メカニズムを正確にモデル化することが不可能であるため制限されていた。上述のPDXモデルでの問題の他に、動物モデルは、制限された操作および試験のみ許容し、必ずしもヒトでの結果の予測ではない。伝統的なインビトロ2D培養は、3Dインビボ微小環境を再現することができない。薬物動態は劇的に変化し、2Dにおいて効果的な投与量は患者においてしばしば効果的でなく、細胞-細胞/細胞-マトリックス相互作用は不正確である。組織培養皿は、組織分布、剛性、および2D対3D構造に関してインビボ腫瘍とは異なる。さらに、2D培養は細胞に対して選択圧をかけ得て、分子および表現型特性を変化させる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、複数の免疫細胞を含む、免疫系モデルとして有用な(例えば、免疫活性を評価するのに有用な、および/または、免疫系を調節するのに有用な、および/または、1つまたは複数のがん治療および/または免疫療法をスクリーニングするのに有用な)インビトロ細胞構築物(または「オルガノイド」)に関する。
【0008】
本発明のさらなる態様は、生きた腫瘍細胞および少なくとも1つのタイプの免疫細胞を含む、腫瘍モデルとして有用な(例えば、免疫活性を評価するのに有用な、および/または、免疫系を調節するのに有用な、および/または、1つまたは複数のがん治療および/または免疫療法をスクリーニングするのに有用な)インビトロ細胞構築物(または「オルガノイド」)に関する。
【0009】
本発明の別の態様は、目的化合物をインビトロで免疫活性に関してスクリーニングする方法および/または免疫系を調節する方法に関し、複数の細胞を含む少なくとも1つのオルガノイドを提供するステップ(例えば、少なくとも1つのオルガノイドは、肝臓オルガノイド、心臓オルガノイド、腫瘍オルガノイド、免疫系オルガノイドなどであってもよい);目的化合物を少なくとも1つのオルガノイドにインビトロで接触させるステップ;それから、目的化合物を少なくとも1つのオルガノイドにインビトロで接触させるに応じて、少なくとも1つのオルガノイドの免疫応答を(例えば、目的化合物との接触前および/または接触不存在下でのオルガノイドの免疫応答/活性と比較して)判定するステップを含む。
【0010】
本発明のさらなる態様は、目的化合物をインビトロで抗腫瘍活性に関してスクリーニングする方法に関し、生きた腫瘍細胞および少なくとも1つのタイプの免疫細胞を含む少なくとも1つの構築物を提供するステップ;目的化合物を構築物にインビトロで接触させるステップ;それから、目的化合物を構築物にインビトロで接触させるステップに応じて、生きた腫瘍細胞の増殖を(例えば、目的化合物と接触されていない少なくとも1つの同様の構築物の腫瘍細胞と比較して、および/または、構築物または少なくとも1つの同様の構築物内の生きた良性細胞と比較して)判定するステップを含み、生きた腫瘍細胞の増殖における低減(例えば、腫瘍細胞の増殖の欠如、腫瘍細胞の死、腫瘍細胞による浸潤における低減など)は、目的化合物の抗腫瘍活性を示す。
【0011】
本発明の別態様は、目的化合物をインビトロで免疫活性に関してスクリーニングする方法、免疫系、抗転移活性、および/または抗腫瘍活性を調節する方法に関し、免疫細胞オルガノイドおよび生きた腫瘍細胞オルガノイドを含むデバイスを提供するステップ;免疫細胞オルガノイドおよび生きた腫瘍細胞オルガノイドを増殖培地と接触させるステップ;目的化合物を免疫細胞オルガノイドおよび/または生きた腫瘍細胞オルガノイドに接触させるステップ(例えば、化合物を増殖培地に添加することによる);および、目的化合物を免疫細胞オルガノイドおよび/または生きた腫瘍細胞オルガノイドに接触させるステップに応じて、生きた腫瘍細胞の増殖を(例えば、目的化合物と接触されていない少なくとも1つの同様の生きた腫瘍細胞オルガノイドの腫瘍細胞と比較して、および/または、オルガノイドまたは少なくとも1つの同様の生きた腫瘍細胞オルガノイド内の生きた良性細胞と比較して)判定するステップ(生きた腫瘍細胞の増殖における低減(例えば、腫瘍細胞の増殖の欠如、腫瘍細胞の死、腫瘍細胞による浸潤における低減など)は、目的化合物の抗腫瘍活性を示す)、および/または、免疫細胞オルガノイドおよび/または生きた腫瘍細胞オルガノイドの免疫応答を(例えば、目的化合物との接触前および/または接触不存在下での免疫細胞オルガノイドおよび/または生きた腫瘍細胞オルガノイドの免疫応答/活性と比較して)判定するステップを含む。
【0012】
本発明のさらなる態様は、免疫細胞をエクスビボで活性化する方法に関し、その方法は、複数の生きた腫瘍細胞を含む生きた腫瘍細胞オルガノイドに免疫細胞(例えば、リンパ球)を接触させて、活性化された免疫細胞を提供するステップ(例えば、適応免疫メカニズムの発現を介して);活性化された免疫細胞を生きた腫瘍細胞オルガノイドから分離して、分離された活性化された免疫細胞を提供するステップ;および、分離された活性化された免疫細胞を増殖させて、活性化された免疫細胞の集団を提供するステップを含む。
【0013】
一実施態様に関して記載された本発明の態様は、それに関して具体的に記載されていなくても異なる実施態様に組み込まれてよいことに注意されたい。すなわち、任意の実施態様の全ての実施態様および/または特徴を、任意の方法および/または組み合わせで組み合わせることができる。出願人は、適宜、任意の最初に出願したクレームを変更する、および/または、任意の新しいクレームを出願する権利を留保しており、これには、そのような様式で最初に特許請求されていなくても、任意の他のクレーム(単数または複数)の任意の特徴に従属させるため、および/または、それを組み込むために、任意の最初に出願したクレームを補正することができる権利が含まれる。本発明のこれらおよび他の目的および/または態様は、以下に示される明細書中に詳しく説明される。本発明のさらなる特徴、利点、および詳細は、以下の図面および好ましい実施態様の詳細説明を読むことによって当業者によって理解され、そのような説明は本発明の単なる例示である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A-1C】同一患者から得られた、対応する(matched)リンパ節に由来する免疫細胞を含むまたは含まない患者腫瘍オルガノイドに対する免疫療法効果を示す。図1Aは、培地のみ(コントロール)、培地+ペンブロリズマブ、および培地+ニボルマブで測定された結腸直腸腫瘍ミトコンドリア代謝を示す。適切な薬物(この場合ではニボルマブ)とともに免疫細胞が存在する場合にのみ代謝の増大が観察され、T細胞の活性化を示している。図1Bは、節細胞(node cell)を含むおよび含まない虫垂腫瘍オルガノイドの生存/死滅イメージングを示す。薬物なしでは僅かな違いが観察されたが、PD-1阻害剤ニボルマブおよびペンブロリズマブは、免疫細胞(リンパ)集団が取り込まれた場合にのみ効果的であることが分かる。図1Cは、チェックポイント阻害剤免疫療法に応答しないことが実証された(「無応答」)黒色腫患者に由来する腫瘍オルガノイドの生存/死滅イメージングを示す。患者腫瘍オルガノイドは、無応答患者表現型の再現を示す。ダブラフェニブ(dabrafenic)/トラメチニブによる代替治療(一番右のパネル)は、増大した死滅染色の応答を示した。
図2】本発明の実施態様に係る例示の2-オルガノイドシステムを示す。
図3A-3C】本発明の実施態様に係るマイクロ流体デバイスの略図である。図3Aは、マイクロ流体デバイスの層の組み立ての概略を示す。図3Bは、インサイチュのオルガノイドのパターニング技術を示す:マイクロ流体チャンバーを、HAヒドロゲル、光開始剤、および患者由来の腫瘍細胞を含むヒドロゲル混合物で満たし、それから、フォトマスクを通してUV光を照射する。暴露された前駆体はヒドロゲルへ架橋されて、領域内に細胞を引き留め、架橋されていないゲルはチャンバーから清浄なPBSを用いてチャンバーから洗い流される。最後に、インキュベーションのためにPBSをDMEMで置き換える。図3Cは、コンピューター制御されたぜん動ポンプにより促進される、各オルガノイド用の低容量の閉ループ流体回路を特徴とする全体的な測定設定の概要を示す。
図4A-4C】本発明の実施態様に係る、別個であるが隣接するゾーンに提供される、腫瘍細胞および免疫細胞を含むチャンバーの略図であり、相互作用のために互いに向かって細胞を遊走させ得る。
図5】様々なチェックポイント阻害剤に対する、黒色腫オルガノイドならびに黒色腫およびリンパ節オルガノイドの応答を示すグラフである。
図6】本発明の実施態様に係る、例示的なプロセスのダイアグラムを示す。
図7】本発明の実施態様に係る、固形組織から細胞を分離する例示的なプロセスを示す。
図8】本発明の実施態様に係る、オルガノイドを調製する例示的なプロセスを示す。
図9】本発明の実施態様に係る、培養培地に添加するための白血球を調製する例示的なプロセスを示す。
図10】本発明の実施態様に係る、薬物のスクリーニングおよび分析のための例示的なプロセスを示す。
図11A-11D】本発明の実施態様に係る、T細胞の注入およびそれらの活性化された状態のプライミングのために用いられ得る腫瘍オンチップ(TOC)デバイスの略図である。図11Aは、既存のTOCシステムの平行チャネルが一緒にデイジーチェーン接続されて、サーキュレーター経路あたりの患者腫瘍オルガノイド(PTO)の数を増大させることを示す。図11Bは、多くのPTOがデバイスの単一チャンバー内にパターン化され得ることを示す概要であり、それはPTOの数を劇的に増大させ得る。図11Cは、例えば腫瘍抗原認識に応答してプライミング/活性化を誘導するために、T細胞の注入および/または再循環の後に、循環しているT細胞を取り出して、暴露されていない対応する(matched)PTO TOCへ移して、例えば活性化レベルおよび/または腫瘍死滅化を試験することができることを示す例示的な概要を示す。デバイスチャネル構造の非限定的な例は、限定されないが、デイジーチェーン、例えば、単一のより大きなチャンバーを含む。これらのプライミングおよび/または活性化されたT細胞は、患者へ投与され得る。図11Dは、例えば腫瘍抗原認識に応答してプライミング/活性化を誘導するための、T細胞注入および/または再循環の後に、循環しているT細胞を取り出して、暴露されていない対応するPTO TOCへ移して、例えば活性化レベルおよび/または腫瘍死滅化を試験することができることを示す別の例示的な概要を示す。これらのプライミングおよび/または活性化されたT細胞は、患者へ投与され得る。
図11E図11Dに示されるプロセスの異なる段階におけるPTOの生存/死滅染色を示す。染色は、処置前(上の画像)、プライミング後(中央の画像)、および、以前に接触されていないPTOへ移行後(それらは腫瘍細胞死滅化を誘導する)(下の画像)を示す。
図12】本発明の一部の実施態様に係る、患者腫瘍オルガノイドへの免疫構成要素の取り込みを示す概要である。
図13】本発明の一部の実施態様に係る、患者腫瘍オルガノイドへの免疫構成要素の取り込みおよび個別化医療のための使用方法を示す概要である。
図14A-14C】腫瘍オルガノイド(すなわち、腫瘍細胞のみを含む)および腫瘍/免疫オルガノイド(すなわち、腫瘍細胞およびリンパ節細胞を含む)の生存能力を示すグラフである。オルガノイドの各セットは、1人の黒色腫患者から得られた細胞を用いて調製された(図14A、14B、および14Cは、3人の異なる黒色腫患者のそれぞれに関する個別化された結果を示す)。結果は、リンパ節細胞を用いて免疫増強された腫瘍免疫オルガノイドは、免疫チェックポイント阻害剤治療の下で腫瘍細胞死滅化を示すことが可能であったが、一方で、免疫増強なしの腫瘍オルガノイドは応答しないことを示す。
図15A-15B】腫瘍オルガノイド(すなわち、腫瘍細胞のみを含む)および腫瘍/免疫オルガノイド(すなわち、患者採血の白血球画分由来の免疫細胞および腫瘍細胞を含む)の生存能力を示すグラフである。オルガノイドの各セットは、1人の黒色腫患者から得られた細胞を用いて調製された(図15Aおよび15Bは、2人の異なる黒色腫患者のそれぞれに関する個別化された結果を示す)。結果は、採血の白血球画分由来の細胞を用いて免疫増強された腫瘍免疫オルガノイドは、免疫チェックポイント阻害剤治療の下で腫瘍細胞死滅化を示すことが可能であったが、一方で、免疫増強なしの腫瘍オルガノイドは応答しないことを示す。
図16A-16B】腫瘍オルガノイド(すなわち、腫瘍細胞のみを含む)および腫瘍/免疫オルガノイド(すなわち、患者採血の白血球画分由来の免疫細胞および腫瘍細胞を含む)の生存能力を示すグラフである。図16Aのオルガノイドは、1人の血管肉腫患者から得られた細胞を用いて調製された。図16Bのオルガノイドは、1人のDFSP患者から得られた細胞を用いて調製された。結果は、採血の白血球画分由来の細胞を用いて免疫増強された腫瘍免疫オルガノイドは、免疫チェックポイント阻害剤治療の下で腫瘍細胞死滅化を示すことが可能であったが、一方で、免疫増強なしの腫瘍オルガノイドは反応しないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで本発明は、本発明の実施態様が示される添付の図面を参照しながら、以下に、より完全に説明される。しかしながら、本発明は多くの異なる形態で具現化され得て、本明細書中に示される実施態様に制限されると解釈されるべきでなく;むしろ、これらの実施態様は、本開示が徹底的かつ完全なものとなり本発明の範囲を当業者に完全に伝えるために提供される。
【0016】
本明細書中で本発明の説明において用いられる専門用語は、特定の実施態様を説明する目的のみのものであり、本発明を限定することを意図しない。本発明の説明および添付の特許請求の範囲中で使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に別段の提示をしない限り、複数形も含むことを意図する。
【0017】
別段の定めがない限り、本明細書中で用いられる全ての用語(技術的および科学的用語を含む)は、本発明が属する分野における通常の技術者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書中に定義されるものなどの用語は、本出願および関連分野のコンテキストにおけるそれらの意味と一貫した意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書中に明白にそのように定義されていない限り、理想化されたまたは過剰に形式的な意味で解釈されるべきではないことがさらに理解されよう。本明細書中、本発明の説明において用いられる専門用語は、特定の実施態様を説明する目的のみのものであり、本発明を制限することを意図しない。本明細書中で言及される全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、それらの全体で参照により援用される。専門用語において矛盾する場合は、本明細書が支配する。
【0018】
また、本明細書において用いられる「および/または」は、関係がある列挙された項目のうちの1つまたは複数の任意および全ての可能な組み合わせ、ならびに、代替(「または」)と解釈された場合は組み合わせの欠如を指し、それらを包含する。
【0019】
文脈が別段の提示をしない限り、本明細書中に記載される本発明の様々な特徴が任意の組み合わせで用いられ得ることが明確に意図される。さらに、本発明はまた、本発明の一部の実施態様では、本明細書中に示される任意の特徴または特徴の組み合わせが排除または省略され得ることも考えられる。例示すると、複合体は構成要素A、BおよびCを含むと明細書が記述している場合、A、BまたはCのいずれか、またはそれらの組み合わせが省略および拒否され得ることが明確に意図される。
【0020】
本明細書において用いられる移行句「から本質的になる」(および文法上の変形)は、特許請求の範囲に記載された発明の列挙された物質またはステップ「ならびに基礎的および新規の特徴(単数または複数)に実質的に影響を及ぼさないもの」を包含するものとして理解される。Inre Herz,537 F.2d 549,551-52,190 U.S.P.Q.461,463(CCPA 1976)(強調は原文通り)を参照;MPEP §2111.03も参照。したがって、本明細書において用いられる用語「から本質的になる」は、「含む」と同等のものとして解釈されるべきではない。
【0021】
量または濃度などの測定可能な値に言及する場合に本明細書において用いられる用語「約」は、指定の値の±10%、±5%、±1%、±0.5%、または実に±0.1%の変動、および特定の値を包含することを意味する。例えば、Xが測定可能な値である場合の「約X」は、Xおよび、Xの±10%、±5%、±1%、±0.5%、または実に±0.1%の変動を含むことを意味する。測定可能な値に関して本明細書において提供される範囲は、その中の任意の他の範囲および/または個々の値を含んでよい。
【0022】
あるエレメントが別のエレメント「の上にある」、「に取り付けられる」、「に接続される」、「と連結される」、「に接触する」のように言及されている場合、他のエレメントの直接的に上にあってよく、直接的に取り付けられてよく、直接的に接続されてよく、直接的に連結されてよく、または直接的に接触してよく、あるいは、間にエレメントが存在してもよいことが理解されよう。対照的に、あるエレメントが、例えば、別のエレメント「の直接的に上にある」、「に直接的に取り付けられる」、「直接的に接続される」、「と直接的に連結される」、または、「に直接的に接触する」のように言及されている場合は、間にエレメントは存在しない。別の機構に「隣接」して置かれた構造または機構への言及は、隣接する機構に重なっているまたはその下にある部分を有していてよいことも、当業者によって理解されよう。
【0023】
「下(under)」、「下部(below)」、「よりも下(lower)」、「上(over)」、「上部(upper)」などの空間的に相対的な用語は、本明細書において、図に示される他方のエレメント(単数または複数)または機構(単数または複数)に対する一方のエレメントまたは機構の関係を説明するための説明を容易にするために用いられ得る。空間的に相対的用語は、図に描かれている向きに加えて、使用中または操作中のデバイスの異なる向きを包含することを意図することが理解されよう。例えば、図中のデバイスが反転されると、他方のエレメントまたは機構の「下(under)」または「下側(beneath)」と説明されるエレメントは、当該他方のエレメントまたは機構の「上(over)」に配向される。したがって、例示的な用語「下(under)」は、「上(over)」および「下(under)」の両方の向きを包含し得る。デバイスは、それ以外の方向に向けられる(90度または他の方向に回転される)ことができ、本明細書において用いられる空間的に相対的な記述子は、それに応じて解釈される。同様に、明確に別段の提示がない限り、用語「上向き(upwardly)」、「下向き(downwardly)」、「垂直(vertical)」、「水平(horizontal)」などは、本明細書において説明の目的のためにのみ用いられる。
【0024】
用語「第1」、「第2」などは、様々なエレメントを説明するために本明細書において用いられ得るが、これらのエレメントは、これらの用語によって制限されるべきでないことが理解されよう。これらの用語は、一方のエレメントを他方から区別するためにのみ用いられる。したがって、以下に議論される「第1」のエレメントは、本発明の教示から逸脱せずに「第2」のエレメントとも呼ばれる。操作(またはステップ)の順序は、明確に別段の提示がない限り、特許請求の範囲または図面に示される順番に制限されない。
【0025】
本明細書において用いられる用語「増大する(increase)」、「増大する(increases)」、「増大した(increased)」、「増大している(increasing)」および似た用語は、規定のパラメーターにおける、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、300%、400%、500%またはそれよりも多くの上昇を示す。
【0026】
本明細書において用いられる用語「減少する(reduce)」、「減少する(reduces)」、「減少した(reduced)」、「減少(reduction)」、「阻害する(inhibit)」および似た用語は、規定のパラメーターにおける、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または100%の低減を指す。
【0027】
本発明において用いられる「細胞(cells)」および「細胞(cell)」は、一般に、動物細胞、特に哺乳類および霊長類細胞であり、それらの例は、限定されないが、ヒト、イヌ、ネコ、ウサギ、サル、チンパンジー、ウシ、ブタ、ヤギを含む。細胞は、少なくとも部分的に、特定の細胞または組織タイプ、例えば、肝臓、腸、膵臓、リンパ節、平滑筋、骨格筋、中枢神経、末梢神経、皮膚、免疫系などに分化し得る。一部の細胞は、以下にさらに議論されるようにがん細胞であってよく、その場合、それらは、以下にもさらに議論されるように、検出可能な化合物を(天然に、または組み換え技術によって)発現してもよい。
【0028】
「三次元組織構築物」および「オルガノイド」は、本明細書において互換的に用いられ、本明細書において用いられるように、三次元または多層構造(単層とは対照的)に配置された、典型的には担体培地中の生きた細胞の組成物を指す。オルガノイドは、臓器、組織、それらの一部の機能および/または組織学的構造を模倣またはそれに似させるためにインビトロで作られた人工的な三次元構築物である。適切な担体培地は、ヒドロゲル、例えば以下に説明される架橋ヒドロゲルを含む。さらなる例示的なヒドロゲルは、限定されないが、PCT/US2015/055699、PCT/US2017/058531、および2018年10月10日に出願された米国出願番号16/156,535に記載されるものを含み、それらのそれぞれの内容はそれらの全体で参照により本明細書中に援用される。オルガノイドは、モデルとされるまたは真似られる特定の組織および/または臓器に応じて1つまたは複数の(例えば、1、2、3、4個、それよりも多い)分化した細胞タイプ(単数または複数)を含んでよい。一部のオルガノイドは、以下にさらに議論されるがん細胞を含んでよい。オルガノイドが、がん細胞を含む場合、それらは組織細胞を含んでよく、および/または、細胞を含まない組織模倣物、例えば、細胞外マトリックス(またはそれから得られたタンパク質および/またはポリマー)、ヒアルロン酸、ゼラチン、コラーゲン、アルギン酸など(それらの組み合わせを含む)を含んでよい。したがって、一部の実施態様では、細胞は、細胞外マトリックス、または架橋マトリックスと混合されてオルガノイドを形成し、他の実施態様では、細胞凝集体、例えばスフェロイドおよび/またはオルガノイドは予め形成されてよく、それから本発明の組成物および/または細胞外マトリックスと組み合わせられる。
【0029】
一部の実施態様では、オルガノイドは、チオール化ヒアルロン酸(本明細書において互換的にチオール修飾ヒアルロン酸とも呼ばれる)、メタクリレート化コラーゲン(本明細書において互換的にメタクリレート修飾コラーゲンとも呼ばれる)、および水を含むヒドロゲル内に存在してよく、および/または、そのようなヒドロゲル内に形成されてよい。1つまたは複数の(例えば、1、2、3、4、5、6、7個、またはそれよりも多い)さらなる構成要素が、ヒドロゲル内に存在してよい。例えば、一部の実施態様では、オルガノイドは、メタクリレート化ゼラチン(GelMa)、ヘパリンサルフェート、コンドロイチンサルフェート、アルギン酸ナトリウム塩、無修飾ゼラチン、エラスチン、非チオール化ヒアルロン酸、非メタクリレート化コラーゲン(例えば、I型、II型、III型、および/またはIV型コラーゲン)、組成物の弾性率を改変するための1つまたは複数の構成要素、細胞接着プロファイルの改変のための1つまたは複数の構成要素、組織特異的な生化学的改変のための1つまたは複数の構成要素、および/または、1つまたは複数の小分子(例えば、さらなる架橋能力を有することができる小分子、および/または、水素結合および/または非共有の複合体を提供することができる小分子)を含む、ヒドロゲル内に存在してよい。一部の実施態様では、本発明のオルガノイドは、光開始剤、約1%w/vのチオール化ヒアルロン酸、および約4mg/mLのメタクリレート化コラーゲンを含むヒドロゲル内に存在してよく、および/または、そのようなヒドロゲル内に形成されてよく、ここでチオール化ヒアルロン酸およびメタクリレート化コラーゲンは、1:3の容量比(チオール化ヒアルロン酸:メタクリレート化コラーゲン)で混合されてもよく、光重合を介して(例えばUV光を用いて)架橋されてもよい。一部の実施態様では、チオール化ヒアルロン酸およびメタクリレート化コラーゲンは、約3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、または1:5の容量比(チオール化ヒアルロン酸:メタクリレート化コラーゲン)で混合される。オルガノイドが中に存在するおよび/または沈着されるヒドロゲルの容量は、約1、5、10、15、または20μL~約25、30、35、40、45、50、55、または60μLの範囲であってよい。一部の実施態様では、オルガノイドが中に存在するおよび/または沈着されるヒドロゲルの容量は、約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60μLであってよい。
【0030】
一部の実施態様では、本発明のオルガノイドおよび/またはヒドロゲルは、1つのリザーバーおよび/または複数のリザーバー(例えば、ウェルプレートのウェル)内に存在してよい。リザーバー(単数または複数)は、オルガノイドおよび/またはヒドロゲルを保持する任意の適切なリザーバーまたはコンテナーであってよい。一部の実施態様では、リザーバーは、ウェルプレートのウェル、例えば、制限されないが、6ウェルプレート、12ウェルプレート、24ウェルプレート、48ウェルプレート、96ウェルプレート、または384ウェルプレート内のウェルである。
【0031】
一部の実施態様では、オルガノイドは、タンパク質(例えば、接着タンパク質)および/またはプロテオグリカン(改変タンパク質および/または改変プロテオグリカンであってもよい)を含むヒドロゲル内に存在してよい。一部の実施態様では、タンパク質および/またはプロテオグリカンは、1つまたは複数の官能基によって改変されてよく、例えば、マレイミドによって改変されてよく、チオール化ヒアルロン酸、非チオール化ヒアルロン酸、メタクリレート化コラーゲン、および/または非メタクリレート化コラーゲンに結合および/または架橋することができる。一部の実施態様では、オルガノイドは、フィブロネクチン、ヘパリン、および/またはラミニン(改変フィブロネクチン、改変ヘパリン、および/または改変ラミニンであってもよい(例えば、マレイミドによって改変される))、または他の細胞接着タンパク質(単数または複数)および/または細胞接着タンパク質ペプチド誘導体(単数または複数)を含むヒドロゲル内に存在してよい。
【0032】
1つまたは複数の増殖因子がヒドロゲル内に存在してよい。一部の実施態様では、ヒドロゲルは、ヘパリンペンダント鎖によって連結および/または結合された1つまたは複数の増殖因子を含む。1つまたは複数の増殖因子は、ヒドロゲル内に存在し得るおよび/またはヒドロゲルに添加され得る特定の細胞に適切であり得て、および/または、生産される特定の組織代用物および/またはオルガノイドに適切であり得る。一部の実施態様では、増殖因子および/または他の増殖促進タンパク質は、組織細胞に対応する組織由来の脱細胞化された細胞外マトリックス組成物(ECM)(例えば、生きた動物細胞が肝臓細胞である場合は、脱細胞化された細胞外肝臓マトリックス;生きた動物細胞が心筋細胞である場合は、脱細胞化された細胞外心筋マトリックス;生きた動物細胞が骨格筋細胞である場合は、脱細胞化された骨格筋マトリックス;など)内に提供され得る。さらなるコラーゲン、グリコサミノグリカン、および/またはエラスチン(例えば、細胞外マトリックス組成物を補うために添加され得る)なども含まれ得る。
【0033】
一部の実施態様では、オルガノイドは、1つまたは複数の(例えば、1、2、3、4、5個、またはそれよりも多い)組織(例えば、哺乳類の体内に見られる組織)の生化学的プロファイルと対応する(match)ようにカスタマイズされ得るヒドロゲル内に存在してよい。一部の実施態様では、接着タンパク質、例えば、特定の組織内に見られるものは、組成物内の構成要素(例えば、チオール化ヒアルロン酸および/またはメタクリレート化コラーゲン)への直接的な結合を可能にするように合成的に改変されてよい。増殖因子は、ヘパリンペンダント鎖を介して連結され得る。フィブロネクチン、ラミニン、および/または他の接着タンパク質は、組成物内の構成要素(例えば、チオール化ヒアルロン酸および/またはメタクリレート化コラーゲン)へ直接的に架橋する1つまたは複数の化学基を有するように合成的に改変され得て、それにより、組織特異的なカスタマイズを可能にし得る。一部の実施態様では、組成物内に共有結合したフィブロネクチンを含むことは、組成物内に形成および/または提供されたオルガノイド(例えば、肝臓オルガノイド)の機能を維持するのに重大な影響を有し得る。
【0034】
細胞は、カプセル封入されていない細胞として、または、スフェロイド内に前もってカプセル封入された細胞として、もしくは予め形成されたオルガノイド(上述)としての形を含む任意の適切な形で組成物および/またはヒドロゲル内に取り込まれ得る。ポリマースフェロイド内にカプセル封入または含有された動物組織細胞は、公知技術に従って生産することができ、または場合によっては市販される(例えば、Insphero AG,3D Hepg2 Liver Microtissue Spheroids(2012);Inspherio AG,3D InSight(商標)Human Liver Microtissues,(2012)を参照)。
【0035】
一部の実施態様では、本発明のオルガノイドは、ヒト由来細胞である細胞を含み、一部の実施態様では、オルガノイドは、ヒト由来細胞からなる細胞を含む。本発明のオルガノイドは、細胞によってインビボで生産されるバイオマーカーと同一の1つまたは複数の(例えば、1、2、3、4個、それよりも多い)バイオマーカーを発現および/または生産し得る。例えば、肝臓細胞はインビボでアルブミンを生産し、肝臓細胞を含む本発明のオルガノイドは、アルブミンを発現し得る。一部の実施態様では、オルガノイドは、対応する細胞によってインビボで生産および/または発現される平均量と同一の量またはその±20%、±10%、または±5%である量でバイオマーカーを発現し得る。例示的なバイオマーカーは、限定されないが、アルブミン、尿素、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)(例えば、α-GST)、ケモカイン(例えば、IL-8、IL-1βなど)、プロスタサイクリン、SB100B、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ホルモン(例えば、テストステロン、エストラジオール、プロゲステロンなど)、インヒビンA/B、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、および/または腫瘍壊死因子(TNF)を含む。細胞は、分化した細胞または未分化の細胞であってよいが、一部の実施態様では、組織細胞(例えば、肝細胞のような肝臓の細胞、膵臓細胞、心筋細胞、骨格筋細胞など)である。
【0036】
細胞の選択は、作製される特定のオルガノイドに依存し、細胞は、検出可能な化合物によって、例えば制限されないが、蛍光化合物(例えば、色素、タンパク質など)によって標識されてよい。例えば、肝臓オルガノイドのためには、肝臓の肝細胞の細胞(liver hepatocyte cell)が用いられ得る。末梢または中枢神経オルガノイドのためには、末梢神経細胞、中枢神経細胞、グリア細胞、またはそれらの組み合わせが用いられ得る。骨オルガノイドのためには、骨の骨芽細胞の細胞(bone osteoblast cell)、骨の破骨細胞の細胞(bone osteoclast cell)、またはそれらの組み合わせが用いられ得る。肺オルガノイドのためには、肺の気道の上皮細胞が用いられ得る。リンパ節オルガノイドのためには、濾胞樹状リンパ細胞、線維芽細網リンパ細胞、白血球、B細胞、T細胞、任意の骨髄細胞(例えば、任意の骨髄起源(樹状細胞および食細胞を含む))、任意のリンパ系起源細胞、またはそれらの組み合わせが用いられ得る。平滑筋および/または骨格筋オルガノイドのためには、平滑筋細胞、骨格筋細胞、またはそれらの組み合わせが用いられ得る。皮膚オルガノイドのためには、皮膚ケラチン生成細胞、皮膚メラニン形成細胞、またはそれらの組み合わせが用いられ得る。細胞は、組成物への最初の取り込み時に分化し得て、または、後に分化する未分化の細胞が用いられ得る。さらなる細胞が任意の組成物および/またはヒドロゲルへ添加されてよい。一部の実施態様では、腫瘍細胞および/または免疫細胞がオルガノイド(例えば肝臓オルガノイド)に添加されて、または、オルガノイドは元から免疫細胞を含むまたは含まない腫瘍細胞からなってよい。一部の実施態様では、本発明のオルガノイドは、1つまたは複数のタイプの免疫細胞を含み、から本質的になり、またはからなり、それは、白血球、末梢血単核細胞、濾胞樹状リンパ細胞、線維芽細網リンパ細胞、白血球、B細胞、T細胞、任意の骨髄細胞(例えば、任意の骨髄起源(樹状細胞および食細胞を含む))、および/または任意のリンパ系起源細胞から選択され得る。一部の実施態様では、1つまたは複数のタイプの免疫細胞は、リンパ節(例えば、リンパ節生物試料)から、骨髄から、および/または、対象の末梢血またはその画分(例えば、白血球画分、例えば、末梢血単核細胞(PBMC)画分)から、集められてよく、および/または得られてよい。
【0037】
一部の実施態様では、本発明のオルガノイドは、例えば腫瘍細胞および免疫細胞が同一のオルガノイド内に存在するという点で、混合オルガノイドであってよい(本明細書において、混合腫瘍/免疫オルガノイドとも呼ばれる)。一部の実施態様では、本発明のオルガノイドは、共生オルガノイドであってよい。本明細書において用いられる「共生オルガノイド」は、腫瘍細胞および免疫細胞が接触している少なくとも1つのオルガノイドを指す。一部の実施態様では、共生オルガノイドは、腫瘍細胞および免疫細胞を含む1つのオルガノイドからなる(例えば、混合オルガノイド)。一部の実施態様では、共生オルガノイドは、少なくとも2つのオルガノイドを含み、その少なくとも2つのオルガノイドのうち第1のオルガノイドは腫瘍細胞を含み、その少なくとも2つのオルガノイドのうち第2のオルガノイドは免疫細胞を含み、ここで第1のオルガノイドの少なくとも一部および第2のオルガノイドの少なくとも一部は互いに接触している。共生オルガノイドの言及において本明細書において用いられる「接触している」は、腫瘍細胞の少なくとも一部および免疫細胞の少なくとも一部が、物理的に接触するように、細胞間伝達を有するように、および/または、同一オルガノイド内および/または上に存在するように、十分に近いことを指す。一部の実施態様では、2以上の別個のオルガノイドは、一緒に増殖して共生オルガノイドを形成し得る。一部の実施態様では、免疫オルガノイドおよび離れた腫瘍オルガノイドの間の伝達を提供および/または可能にするために、細胞の移動が必要とされ得る(例えば、循環を介して)。
【0038】
本発明の患者由来腫瘍オルガノイド(PTO)は、例えば、腫瘍細胞を、関係がある間質および/または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)(それぞれ患者自身の腫瘍から得られる)とともに取り込むことによって、患者の腫瘍微小環境を再現し得る。リンパ節は、全ての個々の患者の免疫系発現の80%を取り込み、それらの豊富な抗原提示細胞(APC)を介して(though)適応免疫の発達において中心的な役割を有する。一部の実施態様では、本発明の免疫腫瘍オルガノイドは末梢血単核細胞を含んでよく、それはリンパ節組織が患者にとって利用可能でない場合であってもよい。
【0039】
本明細書において任意選択で用いられるがん細胞は、制限されないが、黒色腫、癌腫、肉腫(制限されないが、血管肉腫、粘液線維肉腫、平滑筋肉腫、隆起性皮膚線維肉腫を含む)、芽腫、神経膠腫、虫垂、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、頭頚部、胸部、肺、および星状細胞腫細胞などを含む、任意のタイプのがん細胞であってよい。一部の実施態様では、本発明において用いられるがん細胞はN-カドヘリンを発現し、および/または、上皮間葉転換を示す。がん細胞は、制限されないが、腸(小腸、大腸、結腸、虫垂)、肺、胸部、前立腺、皮膚、骨、脳、肝臓、膵臓、子宮、頸部、精巣、および卵巣のがん細胞などを含む、任意の組織起源由来のがん細胞であってよい。
【0040】
一部の実施態様では、細胞は、例えば、がん治療を受けている対象もしくは患者、および/または、がんを有する対象もしくは患者、および/または、免疫系が損なわれた対象などの対象から得てよい。一部の実施態様では、細胞は、例えば患者生検由来の腫瘍細胞のような腫瘍細胞であり、そのような細胞から調製されたオルガノイドは、潜在的に効果的な薬物および/または治療をスクリーニングするために用いられ得る。制限されないが、腸(小腸、大腸、結腸、虫垂)、肺、胸部、前立腺、皮膚、骨、脳、肝臓、膵臓、子宮、頸部、精巣、および卵巣の腫瘍細胞などを含む任意のタイプの腫瘍細胞が、本発明のオルガノイド、デバイス、および/または方法において用いられ得る。生検由来の腫瘍オルガノイドの例は、限定されないが、中皮腫、結腸直腸、虫垂、肺、黒色腫、および肉腫オルガノイドを含む。一部の実施態様では、細胞は、組織生検から得られた良性細胞(非癌性細胞とも呼ばれる)を含む。細胞は、少なくとも部分的に、例えば、脳、肝臓、腸、膵臓、リンパ節、平滑筋、骨格筋、中枢神経、末梢神経、皮膚、免疫系などの特定の細胞または組織タイプに分化し得る。生検由来の細胞(例えば、腫瘍および/または良性)が、本発明のオルガノイドを形成および/または調製するために用いられてよく、生じるオルガノイドは、生検後、約1、2、3、4、5、6、7、または8日以内に、本発明の方法および/またはデバイスにおいて調製および/または使用され得る。一部の実施態様では、細胞は、検出可能な化合物によって、例えば制限されないが、蛍光化合物(例えば、色素、タンパク質など)によって標識されてよい。一部の実施態様では、腫瘍細胞を含むオルガノイド、それを含むデバイス、および/または、それらの使用方法は、国際出願番号PCT/US2017/045277に説明されるとおりであってよく、その内容はその全体で参照により本明細書中に援用される。
【0041】
一部の実施態様では、本発明のオルガノイドは、不死化細胞株由来の細胞から調製されず、および/または、それを含まない。本発明のオルガノイドは、制限されないが、初代細胞および/または幹細胞、例えば、誘導された多能性幹細胞および/または分化したiPS由来細胞のような、高機能細胞を含んでよく、および/または、それを用いて調製されてよい。
【0042】
一部の実施態様では、本発明のオルガノイドは、生きた腫瘍細胞からなるコア;および、コアを取り囲んでいる(例えば、カプセル封入している)シェルを含み、シェルは、生きた免疫細胞および/または生きた良性細胞(例えば、組織細胞、非癌性細胞など)からなる。良性細胞は、例えば対象内の組織のような、対象から取得されてよく、および/または得られてよく、腫瘍細胞および/または免疫細胞と同一の対象から得られてもよい。一部の実施態様では、生きた良性細胞は、組織生検から取得および/または得られてよく、および/または組織特異的であってよい。生きた良性細胞を含むオルガノイドは、生きた腫瘍細胞および/または免疫細胞を含むオルガノイドから離れていてよい(例えば、別々に形成される、および/または、デバイスの異なるチャンバー内に存在する)。
【0043】
細胞(例えば、免疫細胞、腫瘍細胞、および/または良性細胞)が、対象から得られる場合、例えば対象由来の組織サンプルおよび/または腫瘍生検から得られる場合、異なる細胞集団が分離されて1つまたは複数の別個の細胞集団を提供してよく、1つまたは複数の別個の細胞集団は、標識されてよく、および/または、本明細書中に記載のオルガノイドを調製するために用いられてよい。異なる細胞集団を分離する方法は当業者に公知であり、制限されないが、蛍光活性化セルソーティング(FACS)のような任意の適切な方法を用いてよい。2以上の細胞集団が標識される場合、その2以上の細胞集団は、異なる検出シグナルを有してよい。一部の実施態様では、組織サンプルおよび/または腫瘍生検は、突然変異を同定するために部分的または全体的に遺伝学的にシーケンシングされてよく、同定された任意の突然変異は、対象のための治療的目的(例えば、免疫系調節活性および/または抗腫瘍活性)のための1つまたは複数の目的化合物を示し得て、および/または示唆し得る。本発明の方法は、遺伝学的シーケンシングにおいて同定された1つまたは複数の目的化合物をスクリーニングするステップ、および、1つまたは複数の目的化合物のそれぞれおよび/またはそれらの組み合わせを、組織サンプル由来の細胞を用いて調製されたオルガノイドに接触させるステップを含んでよい。本発明のオルガノイドは、対象においてインビボで見られる組織および/または腫瘍と同一または実質的に同一の異種性を有してよい。
【0044】
1つまたは複数の細胞集団(それぞれが標識化されてもよい)は、任意の適切な様式で組み合わせてよい。一部の実施態様では、1つまたは複数の細胞集団は、同一の一般的な培地および/またはヒドロゲルに添加され得る。一部の実施態様では、1つまたは複数の細胞集団を用いて、本発明のヒドロゲルによってカプセル封入された本明細書中に記載のオルガノイドを形成してよい。本発明のオルガノイド内の1つまたは複数の異なる細胞集団は、インビボの組織および/または腫瘍内のその集団内の細胞の量と実質的に同一(例えば約±20%以内)の量で存在してよい。一部の実施態様では、細胞が対象由来の組織サンプルから得られ、ソーティングされ、および/または標識された場合、異なる細胞集団は、組織サンプル内に存在する量と実質的に量で(in substantially the amount as)組み合わせられる。一部の実施態様では、本発明のオルガノイドのために用いられる細胞(例えば、腫瘍細胞)は、ソーティングされなくてよく、そのことは、生来の異種性を有するオルガノイドを提供するのを助け得る。例えば、一部の実施態様では、腫瘍細胞は、本発明の腫瘍オルガノイドおよび/または混合オルガノイドを形成する前にソーティングされず、そのことは、腫瘍オルガノイドが、例えば元々の生物試料および/またはサンプル内に存在する任意の間質細胞、内皮細胞、免疫細胞などを含むことによって生来の腫瘍異種性を模倣するのを可能にし得る。同様に、一部の実施態様では、免疫細胞は、本発明の免疫オルガノイドおよび/または混合オルガノイドを形成する前にソーティングされず、そのことは、オルガノイドが、例えばB細胞、樹状細胞、マクロファージのような(腫瘍細胞を死滅させるのに必要なT細胞の教育および/または活性化に重要であり得る)他の細胞をオルガノイド内に維持するのを可能にし得る。したがって、本発明のオルガノイドは、非腫瘍および/または非T細胞サポート細胞を含んでよく、そのことは、腫瘍または免疫(例えば、リンパ節)微小環境を維持するのを助け得て、および/または、様々なシグナル伝達メカニズムおよび一部の天然のECM再構築を介して生存能力を維持するのを助け得る。一部の実施態様では、本発明の腫瘍オルガノイドは、関係がある間質および/または腫瘍浸潤白血球(TIL)とともに腫瘍細胞を取り込むことによって、腫瘍微小環境を再現する。一部の実施態様では、免疫細胞が血液から得られる場合、赤血球を除去するために赤血球溶解が行われる。
【0045】
一部の実施態様では、少なくとも2個の(例えば、2、3、4、5、6、7、8個、またはそれよりも多い)異なるオルガノイドが、単一の対象から取得および/または得られた細胞を用いて形成されて(例えば、対象由来の1つまたは複数の生検を用いる)、少なくとも1つのオルガノイドは、対象由来の腫瘍生検由来の生きた腫瘍細胞を含み、少なくとも1つの別個のオルガノイドは、対象由来の生きた免疫細胞および/または生きた良性(例えば肝臓)細胞を含む。一部の実施態様では、少なくとも2個(例えば、2、3、4、5、6、7、8個、またはそれよりも多い)オルガノイドは、単一の対象から取得および/または得られた細胞を用いて形成されて(例えば、対象由来の1つまたは複数の生検を用いる)、少なくとも1つのオルガノイドは、対象由来の腫瘍生検由来の生きた腫瘍細胞を含み、対象由来の免疫細胞を含んでもよく、少なくとも1つの別個のオルガノイドは、生きた腫瘍細胞と同一の組織タイプである対象由来の生きた良性細胞を含み、対象由来の免疫細胞を含んでもよい。一部の実施態様では、本発明のオルガノイドは、対象由来の1つまたは複数の生検を用いて、単一の対象から取得および/または得られた細胞を組み合わせることによって作製され得る(例えば、対象由来の腫瘍生検から取得および/または得られた細胞および同一対象由来の別個のリンパ節生検から取得および/または得られた細胞を組み合わせることによって作製された混合腫瘍/リンパ節共生オルガノイド)。一部の実施態様では、対象から生検された組織を用いて本発明の1つまたは複数のオルガノイドを調製してよく、2mm×2mmの刻まれた組織から得られた細胞を用いてもよい。一部の実施態様では、本発明のオルガノイドは、腫瘍モデルおよび/または免疫系モデルとして有用で有り得る。例えば、オルガノイドは、免疫活性を評価および/または免疫系を調節するのに有用であり得て、および/または、1つまたは複数のがん治療および/または免疫療法をスクリーニングするのに有用で有り得る。例えば、本発明の腫瘍オルガノイド、例えば、混合腫瘍/免疫オルガノイド(例えば、混合腫瘍/リンパ節共生オルガノイド)は、患者自身のリンパ節/腫瘍共生オルガノイドに組み込まれた抗原提示細胞(APC)の表面上に提示された腫瘍抗原を患者の末梢血T細胞が認識するようにトレーニングすることを通して、適応免疫創成のスクリーニングを可能にし得る。
【0046】
一部の実施態様では、オルガノイドは、約50μm、100μm、または200μm~約350または500μm、例えば、約50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、または500μmの直径および/または最小寸法を有する。一部の実施態様では、オルガノイドは、約100、90、80、70、60、または50μm未満の直径および/または最小寸法を有する。一部の実施態様では、オルガノイドは、約1μL~約20μLの容量、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20μLの容量である。オルガノイドは、合計で約1,500、2,000、または5,000~約10,000、25,000、または50,000個の細胞、または、合計で約1,000、5,000、10,000、または50,000~約75,000、100,000、150,000、250,000、500,000、750,000、1,000,000、50,000,000、または100,000,000個の細胞を含んでよい。一部の実施態様では、本発明のオルガノイドは、1mLあたり約100万、200万、または500万~約1000万、2500万、5000万、または1億個の細胞を含んでよい。一部の実施態様では、本発明のオルガノイドは、1mLあたり約1000万個の細胞または1mLあたり2000万個の細胞を含んでよい。一部の実施態様では、本発明のオルガノイドは、1mLあたり約500万または1000万個の細胞~1mLあたり約1500万または2000万個の細胞を含んでよい。本発明のオルガノイドは、任意の適切な形状、例えば任意の三次元形状または多層形状であってよい。一部の実施態様では、本発明のオルガノイドは、スフェロイドの形態であってよい。一部の実施態様では、本発明のオルガノイドは、懸濁液または培地内で自己組織化し得る(例えば、架橋ヒドロゲル)。
【0047】
本明細書において用いられる「対象」は、一般にヒト対象であるが、本発明の態様は、他の動物対象、特に獣医および/または研究目的のための哺乳類対象(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ヤギ、ヒツジ)を用いて実行され得る。対象は、男性または女性であってよく、乳児、若年、青年、成年、および老年を含む任意の年齢であってよい。
【0048】
「増殖培地」および「培養培地」は、本明細書において互換的に用いられ、本発明の実施において用いられる細胞を維持する任意の天然または人工の増殖培地(典型的に水溶液)であってよい。例示は、限定されないが、必須培地または最小必須培地(MEM)、またはそれらの変形、例えば、イーグル最小必須培地(EMEM)およびダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ならびに、血液、血液血清、血漿、リンパ液などを含み、それらの合成模倣物を含む。一部の実施態様では、増殖培地は、pH変色指示薬(例えば、フェノールレッド)を含む。
【0049】
「試験化合物」、「候補化合物」および「目的化合物」は、本明細書において互換的に用いられ、薬理学的または生理学的活性、例えば細胞または組織(例えば、心臓組織)に対する薬理学的または生理学的活性が判定される、および/または、2つの試験化合物/薬剤の間の相互作用が判定される、任意の化合物または薬剤であってよい。例示目的のために、イソプロテレノール、キニジン、プロプラノロール、およびエピネフリンが試験化合物の例である。しかしながら、有機化合物、例えば、制限されないが、タンパク質、ペプチド、核酸、および/または小さな有機化合物(脂肪族、芳香族、および混合脂肪族/芳香族化合物)を含む任意の化合物/薬剤が用いられ得る。候補化合物は、任意の適切な技術によって生産されてよく、コンビナトリアル技術によって無作為に生産される、および/または、特定の標的に基づいて合理的に設計されることも含む。薬物の相互作用が試験される場合、可能性のある組み合わせ効果が判定される2つの(またはそれよりも多い)試験化合物は、同時に投与されてよく、一方(または両方)は公知の化合物であってよい。一部の実施態様では、2以上の試験化合物は、対象のためのインビボ投与と似た(例えば、2以上の試験化合物の段階分けされた注入と似た)様式で投与されてよく、同時的な投与または連続的な投与であってよい。一部の実施態様では、試験化合物は、金属、例えば制限されないが、アルミニウム、鉛などである。一部の実施態様では、試験化合物は、重金属、例えば、制限されないが、ヒ素、カドミウム、クロム、鉛、および/または水銀である。一部の実施態様では、試験化合物は殺虫剤である。一部の実施態様では、試験化合物は、化学療法剤および/または免疫療法剤、例えば、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)である。一部の実施態様では、免疫療法剤は、対象の免疫系の構成要素および/または活性の1つまたは複数を調節し、および/または影響を及ぼす。一部の実施態様では、免疫療法剤は、ベムラフェニブ、イピリムマブ、ニボルマブ、および/またはペンブロリズマブであってよい。一部の実施態様では、試験化合物は、チェックポイント阻害剤(例えば、PD-1阻害剤、CTLA-4阻害剤など)である。一部の実施態様では、試験化合物は、改変された免疫細胞、例えば、CAR T細胞を含む。一部の実施態様では、試験化合物は、免疫原性が弱毒化された免疫活性化ウイルスである。一部の実施態様では、薬物スクリーニングは、ハイスループット方法で実施され得て、および/または行われ得る。例えば、試験化合物は、1つのリザーバーおよび/または複数のリザーバー(例えば、ウェルプレートのウェル)内に存在してよい。一部の実施態様では、リザーバーは、ウェルプレートのウェル、例えば、制限されないが、6ウェルプレート、12ウェルプレート、24ウェルプレート、48ウェルプレート、96ウェルプレート、または384ウェルプレート内のウェルである。
【0050】
本明細書において用いられる「検出可能な化合物」は、蛍光化合物(例えば、蛍光タンパク質(例えば、赤色蛍光タンパク質、緑色蛍光タンパク質など))、抗原性タンパク質またはペプチド(酵素、蛍光、または放射性基、または他の標識に連結された抗体が特異的に結合する)、または任意の他の適切な検出可能な化合物であってよい。検出可能な化合物は、細胞内で天然に生じるもの(例えばがん細胞内で、例えば非がん細胞よりもがん細胞内で、高いレベルで発現される細胞マーカータンパク質)、または、遺伝子操作/組み換えDNA技術によって細胞内に挿入されたもの(すなわち、異種)であってよい。一部の実施態様では、検出可能な化合物は、量子ドット(QD)、蛍光有機色素、および/または蛍光タンパク質である。一部の実施態様では、細胞は、検出可能な化合物を(天然に、または組み換え技術によって)発現し得る。
【0051】
検出可能な化合物は、細胞および/または細胞集団の区別および/または同定を可能にする検出可能なシグナルを提供および/または産生する任意の適切な化合物であってよい。検出可能なシグナルは、細胞と関連する1つまたは複数の検出可能な化合物によって提供および/または産生され得る。一部の実施態様では、検出可能なシグナルは、細胞と関連した(例えば、細胞に添加された、細胞に付着された、細胞に結合された、細胞と複合化された)1つまたは複数の検出可能な化合物(例えば、化学物質、タンパク質など)によって産生されるシグナル(例えば、光学的および/または電気的シグナル)である。検出可能なシグナルは、光学的および/または電子的に検出可能であってよく、人の目によって視覚的に感じ取られてよく、および/または、当業者に公知の方法を用いて電子的に解読され、検出され、および/または得られてよい。一部の実施態様では、細胞および/または細胞集団に関する検出可能なシグナルは、シグナルの不存在であってよい(すなわち、細胞から、検出可能なシグナルがないこと、例えば検出可能な蛍光がないこと)。一部の実施態様では、細胞および/または細胞集団に関する検出可能なシグナルは、蛍光シグナルであってよい。
【0052】
本発明のデバイスおよび/またはシステムは、検出器(例えばカメラ)および/または励起源(例えば励起光源)を備えてよい。検出器は、細胞および/または細胞集団からの検出可能なシグナルを検出および/または撮像し得る。励起源は、検出可能なシグナルを産生するために用いられ得て、および/または産生し得て、例えば、検出可能な化合物が蛍光を発するようにさせ得る光を提供および/または産生するために用いられ得て、それにより、検出可能なシグナルを提供および/または産生する。
【0053】
一部の実施態様では、本発明のデバイス(例えばマイクロ流体デバイス)の少なくとも一部は透明である。例えば、一部の実施態様では、デバイスの上部および/または底部の基板は透明であってよく、および/または、デバイス内に存在するヒドロゲルは透明であってよい。デバイスは、デバイスと作動可能に関連する検出器(例えばカメラ)を備えてよい。検出器は、デバイスのチャンバーの1つまたは複数と作動可能に関連してよい。一部の実施態様では、検出器は、デバイスの上および/または下に提供されて、励起源はデバイスの上および/または下に提供されてよい。一部の実施態様では、検出器は、励起源(例えば、カメラのフラッシュのような光および/またはLED)を備える。検出器は、デバイスの1つまたは複数のチャンバー内の細胞を検出(例えば撮像)するように構成されてよい。一部の実施態様では、デバイスは、デバイスの1つまたは複数のチャンバーと接触している標識化細胞の画像が、リアルタイムで撮像および/または定量化されるのを可能にするように配置された検出器(例えばLED/CCD検出器)を備えてよい。一部の実施態様では、検出器は、所定の間隔で画像(例えば、蛍光画像)をキャプチャーしてよく、および/または、1つまたは複数のチャンバー内に存在するオルガノイド内の標識化細胞および/またはオルガノイドからの標識化細胞のコロニー化、遊走、および/または増殖の画像および/または発生率をキャプチャーしてよく、そのことは、オルガノイド内の細胞および/またはそれらの増殖、転移、遊走、および/または同様のもののリアルタイムの観察および/または定量化を可能にし得る。
【0054】
本発明の実施態様に従って、少なくとも1つのタイプの免疫細胞を含むオルガノイド(本明細書において免疫学オルガノイドとも呼ばれる)が提供される。少なくとも1つのタイプの免疫細胞は、対象内のリンパ節、骨髄、および/または末梢血(例えば、リンパ節生物試料、骨髄生検、および/または末梢採血)から集められてよく、および/または得られてよい。一部の実施態様では、少なくとも1つのタイプの免疫細胞は、濾胞樹状リンパ細胞、線維芽細網リンパ細胞、白血球、末梢血単核細胞、B細胞、T細胞、任意の骨髄細胞(例えば、任意の骨髄起源(樹状細胞および食細胞を含む))、および/または任意のリンパ系起源細胞から選択される。一部の実施態様では、少なくとも1つのタイプの免疫細胞を含むオルガノイドは、白血球を含む。一部の実施態様では、少なくとも1つのタイプの免疫細胞は、検出可能な化合物(例えば、蛍光化合物)を含む。
【0055】
一部の実施態様では、少なくとも1つのタイプの免疫細胞を含むオルガノイドは、インビトロのモデル免疫系としての役割を果たし、それは特定の対象/患者のためのものであってもよい。このことは、免疫系に影響を及ぼすことのできる薬物および/または免疫系を調節することのできる薬物、例えば、免疫療法薬(例えば、PD-1およびCTLA-4阻害剤、IL-2、インターフェロン)のスクリーニングを可能にし得て、それは、免疫細胞が腫瘍細胞を攻撃するのを可能にし得る。一部の実施態様では、本発明の免疫学オルガノイドは、好中球集団をトラッキングするために用いられ得て(組織炎症へのホーミングのコンテキストにおけるものであってもよい)、遺伝子分析を検証するために用いられ得て、および/または、対象/患者のための治療を選択および/または最適化するために用いられ得る。
【0056】
本発明のオルガノイドは、リンパ節由来の細胞(例えば対象のリンパ節由来の細胞)、骨髄、および/または白血球、および/またはそれらの構成要素(例えば対象由来であり、それはリンパ節細胞と同一の対象であってもよい)を含んでよい。一部の実施態様では、本発明のオルガノイドは、切除されたリンパ節の断片由来の細胞(腫瘍切除の際に除去されてもよい)、白血球(例えば末梢血から得られる)、および/または、骨髄生検から得られた細胞を含み、それらの細胞は全て、同一対象から取得および/または得られる。対象は、腫瘍および/またはがんを有してよく、および/または、免疫療法が対象のための治療選択肢であってよい。例えば、図12に示されるように、腫瘍細胞は、対象の腫瘍から得られてよく、および/または、免疫細胞は対象由来のリンパ節から得られてよく、腫瘍細胞および免疫細胞は、ヒドロゲル(例えば、ゼラチン、コラーゲン、ヒアルロン酸、接着タンパク質(例えば、フィブロネクチン、ラミニンなど)および/または増殖因子を含む生来のECMヒドロゲル)内で組み合わせられ、および/またはカプセル封入されて、免疫が増強された患者腫瘍オルガノイドを形成し得る。本発明の別の例が図13に示されていて、それは、患者由来の臨床腫瘍生検から腫瘍細胞を得ることができ、患者由来のリンパ節および/または白血球画分(WBCF)から免疫細胞を得ることができることを示す。図13に示されるように、患者由来のこれらの腫瘍細胞の一部を用いて、リンパ節またはWBCFサンプル由来の免疫細胞が存在しない腫瘍オルガノイドを形成することができ、患者由来の腫瘍細胞の別の部分をリンパ節またはWBCFサンプル由来の免疫細胞と組み合わせて、免疫が増強された腫瘍オルガノイドを形成することができる。一部の実施態様によれば、本発明の方法は、そのようなオルガノイドを1つまたは複数の試験化合物(例えば、化学療法剤および/または免疫療法剤)に別個に暴露および/または接触させるステップ、および、オルガノイドのための細胞が得られた患者を治療するために用いられ得る適切な試験化合物(例えば薬物、例えば免疫チェックポイント阻害剤(ICI))を判定および/または同定するステップを含む(図13)。
【0057】
一部の実施態様では、本発明のオルガノイドは、オルガノイド内にそれぞれ存在する1つまたは複数のタイプの生きた免疫細胞を、そのタイプに関して対象のリンパ節、骨髄、および/または血液内に存在する量とほぼ同じ量で含んでよい。例えば、T細胞は、対象のリンパ節内にインビボで存在するT細胞の量とほぼ同じ量で、本発明のオルガノイド内に存在してよい。一部の実施態様では、2以上の異なるタイプの生きた免疫細胞は、対象のリンパ節、骨髄、および/または血液内のようなインビボのそれぞれの免疫細胞の比または量と同様の比または量で、本発明のオルガノイド内に存在する。一部の実施態様では、1つまたは複数のタイプの生きた免疫細胞は、本発明のオルガノイド内に、約1,500、2,000、または5,000~約10,000、25,000、または50,000個の細胞、または約1,000、5,000、10,000、または50,000~約75,000、100,000、150,000、250,000、500,000、750,000、1,000,000、50,000,000、または100,000,000個の細胞の量で存在してよい。一部の実施態様では、本発明のオルガノイドは、1つまたは複数のタイプの生きた免疫細胞を、1mLあたり約100万、200万、または500万~約1000万、5000万、または1億個の細胞の量で含んでよい。
【0058】
本発明のオルガノイド(例えば、免疫学オルガノイド)は、腫瘍オルガノイド(例えば、リンパ節および/または白血球と同一の対象由来であってもよい腫瘍細胞を含むオルガノイド)を含むデバイス(例えばマイクロ流体デバイス)内で用いられ得る。デバイスは、1つまたは複数の免疫療法剤(例えば、PD-1および/またはCTLA-4阻害剤)が対象内の腫瘍を標的化する有効性をスクリーニングするため、および/または、デバイス内(例えば免疫学オルガノイド内)の免疫細胞が腫瘍細胞を攻撃するのを可能にするために用いられ得る。免疫細胞および/または腫瘍細胞は、T細胞活性化マーカーおよび/または腫瘍細胞の細胞死を示すものを用いて免疫細胞を位置特定する(colocalize)ために、および/または、トラッキングするために、蛍光で標識され得る。一部の実施態様では、腫瘍細胞の生存能力対細胞死は、本発明のデバイスを用いて評価され得る。一部の実施態様では、患者(例えば、細胞のうちの1つまたは複数が得られた対象)が治療(例えば免疫療法薬)を受ける場合、本発明のデバイスおよび/またはオルガノイドを用いたインビトロの応答は、現実の患者の結果と比較されてよく、またはその予測となり得る。一部の実施態様では、本発明の方法は、インビトロの結果をインビボの結果と関連付けるステップおよび/または予測するステップを含んでよい。
【0059】
一部の実施態様では、本発明のオルガノイドは、本明細書中に記載の少なくとも1つのタイプの免疫細胞および生きた腫瘍細胞を含む。生きた腫瘍細胞は、対象内の腫瘍から集められてよく、および/または得られてよい。一部の実施態様では、少なくとも1つのタイプの免疫細胞および生きた腫瘍細胞は、同一対象から集められてよく、および/または得られてよい。生きた腫瘍細胞および少なくとも1つのタイプの免疫細胞は、任意の適切な比でオルガノイド内に存在してよい。一部の実施態様では、生きた腫瘍細胞および少なくとも1つのタイプの免疫細胞は、約1:1または5:1~約10:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、または100:1(腫瘍細胞:免疫細胞)の比でオルガノイド内に存在してよい。一部の実施態様では、比は、白血球および/または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)のみが免疫細胞として存在する場合、約10:1~約100:1であってよい。一部の実施態様では、免疫細胞に対する腫瘍細胞の比は、約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、または10:1であってよい。一部の実施態様では、生きた腫瘍細胞および少なくとも1つのタイプの免疫細胞は、オルガノイド内に約5:1、10:1、50:1、または100:1の比で存在する。一部の実施態様では、同一対象由来の腫瘍細胞および/または免疫細胞を含むオルガノイドおよび/またはデバイスを提供することにより、オルガノイドおよび/またはデバイスを用いて標準的な化学療法剤および/または免疫療法剤が対象により効果的であり得るかどうか評価し得る。同一対象由来の免疫細胞および腫瘍細胞の両方を含むオルガノイドおよび/またはデバイスを提供することは、遺伝学的に同等の(matched)免疫系にインビトロの腫瘍モデル(例えば、腫瘍オルガノイド)を提供することができ、それは、1つまたは複数の免疫療法および/または化学療法剤をインビトロで試験および/またはスクリーニングするために用いられ得る。
【0060】
一部の実施態様では、本発明のオルガノイドは、良性細胞を含む。例えば、本発明のオルガノイドは、本明細書中に記載の少なくとも1つのタイプの免疫細胞および/または本明細書中に記載の生きた腫瘍細胞を含んでよく、良性細胞(例えば、血管内皮細胞、間質細胞など)をさらに含んでよい。一部の実施態様では、本発明のオルガノイドは、本明細書中に記載の少なくとも1つのタイプの免疫細胞および良性細胞(例えば、血管内皮細胞、間質細胞など)を含む。良性細胞は、少なくとも1つのタイプの免疫細胞および/または生きた腫瘍細胞が取得および/または得られる対象と同一の対象から集められてよく、および/または得られてよい。オルガノイド内の細胞(例えば、腫瘍細胞、免疫系細胞、および/または良性細胞)は、任意の適切な様式でオルガノイド内に配置され得る。一部の実施態様では、細胞(例えば、腫瘍細胞、免疫系細胞、および/または良性細胞)は、一緒に組み合わせられて、および/または混合されて、そして、オルガノイド内にランダムに分配されてよい。一部の実施態様では、本発明のオルガノイドは、生きた腫瘍細胞および/または生きた免疫系細胞のコア、ならびに、少なくとも1つのタイプの免疫系細胞および/または生きた良性細胞を含むシェルを含む。一部の実施態様では、良性細胞(例えば、内皮細胞および/または間質細胞)は、本発明のオルガノイドの少なくとも部分的に周囲に存在してよく、オルガノイドは腫瘍および/または免疫細胞を含んでもよい。一部の実施態様では、内皮層および/またはバリアは、本発明のオルガノイドの少なくとも部分的または完全に周囲に存在してよい。本発明のオルガノイド(例えば、腫瘍オルガノイドまたは混合オルガノイド)の上および/または周囲に存在し得る細胞は、限定されないが、インビボで腫瘍の周囲に存在し得る細胞を含む。本発明のオルガノイド(例えば、腫瘍オルガノイドまたは混合オルガノイド)の上および/または周囲に存在し得る細胞の例は、限定されないが、上皮細胞、間質細胞、線維芽細胞、星細胞、星状細胞、グリア細胞などを含む。一部の実施態様では、本発明のオルガノイドは、オルガノイド内に存在する細胞の合計数の約1%、5%、10%、25%、50%~約55%、60%、75%、80%、90%、95%、または100%の量で免疫系細胞を含む。一部の実施態様では、本発明のオルガノイドは、オルガノイド内に存在する細胞の合計数の約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の量で免疫系細胞を含む。本発明のオルガノイドが、オルガノイド内に存在する細胞の合計数の100%未満の量の免疫系細胞を含む場合、任意の適切な量の腫瘍細胞および/または良性細胞が、細胞の残りの数/パーセンテージを埋め得る。
【0061】
本発明のオルガノイドは、患者特異的なインビトロモデル系を提供し得て、それは患者のための治療を決定するために用いられ得て、それは治療および/または処置の開始前であってもよい。一部の実施態様では、目的化合物は、免疫活性、免疫系の調節、および/または抗腫瘍活性に関してスクリーニングされ得て、それは、制限されないが、遺伝子バイオマーカー評価および/または遺伝子プロファイリングのようなさらなるスクリーニング方法に加えてもよい。一部の実施態様では、本発明のオルガノイド、デバイス、および/または方法は、細胞のバイオマーカーの認識、バイオマーカー発現の定量化、および/または、免疫療法および/または化学療法の薬物有効性のリアルタイム試験(例えば、患者における治療的目的のために用いられ得る免疫原性ウイルスの有効性の試験を含む)を可能にし得て、および/または提供し得る。
【0062】
本発明のオルガノイドは、腫瘍突然変異を同定するのを助けるために、および/または、突然変異を対象に利用可能な薬物と関連付けるために、同定および/または使用され得る。一部の実施態様では、本発明の方法は、本発明のオルガノイドを用いて達成された結果によって治療を同定する。
【0063】
一部の実施態様では、本発明のデバイスおよび/または方法は、患者由来の腫瘍オルガノイドを免疫系由来の構成要素(例えば、腫瘍細胞が得られた患者のリンパ節生物試料に由来する細胞)と合わせてよい。これらのオルガノイド、デバイス、および/または方法は、個々の患者に関して免疫療法剤の薬物有効性をインビトロで評価する、個別化医療主導の(precision medicine-driven)薬物試験において用いられ得る(例えば、実行可能な(actionable)突然変異および/または遺伝子プロファイルおよびその後の治療カスタマイズを同定するために用いられ得る)。一部の実施態様では、腫瘍オルガノイドおよび/または混合腫瘍/免疫オルガノイド(例えば、混合腫瘍/リンパ節共生オルガノイド)は、新鮮な腫瘍から直接的に調製され得て、これらの腫瘍オルガノイドは、腫瘍微小環境を複製し得て、細胞のバイオマーカーの認識、バイオマーカー発現の定量化、および/または、免疫療法および/または化学療法の薬物有効性のリアルタイム試験を可能にし得る。本発明のオルガノイドは、マイクロ流体デバイス内に提供および/または含有されてよく、そのことは多数の薬物のパラレルスクリーニングを提供および/または可能にし得て、および/または、流体的に連通して多数の組織および/または腫瘍を提供し得る。一部の実施態様では、本発明のオルガノイドおよび/またはデバイスは、遺伝子スクリーニングを補い得て、および/または、悪性腫瘍の程度および/または個々の患者のための最適な治療を予測するために用いられ得て、それは患者への投与の前であってもよい。薬物スクリーニングは、様々な濃度で様々な試験化合物を用いて行なうことができ、結果は、約1週間未満(例えば、薬物スクリーニングで用いられるオルガノイドの調製において用いられる患者由来の細胞を得てから1週間未満)で得られてよい。対照的に、典型的な遺伝子スクリーニングサービスは、平均で3~4週間、実行可能な(actionable)データセットをもたらさない。
【0064】
本発明のデバイスは、免疫学オルガノイド(例えば、少なくとも1つのタイプの免疫細胞を含むオルガノイド)および別個の腫瘍オルガノイドを含んでよい。一部の実施態様では、本発明のデバイスは、腫瘍細胞および少なくとも1つのタイプの免疫細胞の両方を含むオルガノイドを含む。本発明のデバイス内の腫瘍細胞を含むオルガノイドは、免疫細胞と同一の対象由来の腫瘍細胞を含んでよく、制限されないが血管内皮細胞および/または間質細胞のような他の細胞集団を含んでもよい。腫瘍細胞を含むオルガノイド以外の細胞集団を含むことは、腫瘍異種性および/またはクローン性を保存するのを助け得て、腫瘍をより現実的に再現し得る。
【0065】
一部の実施態様では、免疫学オルガノイドは、別個の腫瘍オルガノイドの上流にあってよく、またはそれ以外の方法でそれと流体的に連通していてよく、流体(例えば、マイクロ流体)循環を通した腫瘍細胞へのT細胞ホーミングを評価するために用いられ得る。免疫療法の下で応答を開始することのできるインビボの腫瘍浸潤リンパ球(TIL)が存在してよいが、これらは全ての腫瘍において活性であるわけではない。したがって、免疫療法の下での一次免疫応答はしばしば、循環を介してリンパ節から生じる。一部の実施態様では、本発明のデバイスは、免疫細胞が上流の免疫学オルガノイドからデバイス内の腫瘍オルガノイドにホーミングする能力を評価するために用いられてよく、および/または、T細胞活性化および/または腫瘍死滅化を評価するために用いられてよい。一部の実施態様では、白血球がデバイス内に注入されてよく、それは、結節組織(nodal tissue)および/またはリンパ節細胞の数が十分でない場合であってもよい。
【0066】
患者特異的な生検由来の腫瘍オルガノイドを、同一患者由来の免疫細胞(例えば、リンパ節細胞)および/またはそのような細胞を含むオルガノイドと組み合わせるデバイスを提供することにより、例えば、遺伝学的に同等の(matched)ヒト免疫系が腫瘍オルガノイドに提供され得る。このデバイスは、免疫療法剤をスクリーニングするために用いられ得て、患者ごとに行われ得る。一部の実施態様では、本発明のデバイスおよび/または方法は、例えば、多数のサンプルを試験することができるので、エラーおよび/または偽陽性および/または偽陰性の可能性を減少させ得る。
【0067】
一部の実施態様では、本発明の方法は、免疫細胞をエクスビボで活性化するステップを含んでよく、その方法は、免疫細胞(例えば、リンパ球)を、複数の生きた腫瘍細胞を含む生きた腫瘍細胞オルガノイドに接触させて、活性化された免疫細胞を提供するステップ;活性化された免疫細胞を生きた腫瘍細胞オルガノイドから分離して、分離された活性化された免疫細胞を提供するステップ;および、分離された活性化された免疫細胞を増殖させて、活性化された免疫細胞の集団を提供するステップを含む。本明細書中に記載のもののような任意のタイプの免疫細胞を、生きた腫瘍細胞オルガノイドに接触してよい。一部の実施態様では、免疫細胞(単数または複数)は、非継代細胞(例えば、患者から得られた非継代細胞)であってよく、および/または、生きた腫瘍細胞オルガノイドを形成するために用いられる腫瘍細胞(単数または複数)は、非継代細胞(例えば、患者から得られた非継代細胞)であってよい。一部の実施態様では、免疫細胞および/または腫瘍細胞は、0、1、2、3、もしくは4回、またはそれよりも多く継代培養されてよい。一部の実施態様では、免疫細胞は末梢血単核細胞を含む。したがって、一部の実施態様では、本明細書中に記載の腫瘍オルガノイドおよび患者自身のリンパ球を用いてがんを治療し得る。例えば、黒色腫を有する患者のために、当該方法は、患者のリンパ球を、患者自身の黒色腫細胞またはそれらの産物を用いて産生または形成された腫瘍オルガノイドと接触させるステップを含んでよく、薬物を用いてまたは用いずに患者のリンパ球をエクスビボで活性化して、活性化されたリンパ球を集めて、それらの集団を拡大させて、そして、それらを患者に投与する。免疫細胞をエクスビボで活性化する方法の1つまたは複数のステップは、1回または複数回(例えば、オルガノイド内の細胞が生存し続ける限り多くの回数または長く)繰り返すことができる。一部の実施態様では、当該方法は、新たな腫瘍再発由来の細胞を用いて患者のために行われてよい。
【0068】
一部の実施態様では、活性化された免疫細胞は、適応免疫を有する免疫細胞(例えば、適応免疫を有するT細胞)および/または、患者自身の腫瘍抗原に対するエクスビボでの暴露から得られた免疫記憶を有する免疫細胞(例えば、免疫記憶を有するT細胞)であってよい。一部の実施態様では、プライミングおよび/または活性化された免疫細胞は、薬物への暴露に対してプライミングおよび/または活性化された応答性であってよい。一部の実施態様では、免疫細胞をエクスビボで活性化する方法は、患者のリンパ球(T細胞)を含む患者の採血由来の白血球画分を用いるステップ、それから、患者のリンパ球を患者自身の腫瘍細胞オルガノイドまたはそれらの分泌産物と接触させるステップを含んでよく、薬物を用いてまたは用いずにリンパ球をエクスビボで活性化し、それから、活性化されたリンパ球(例えば、T細胞)を集める。一部の実施態様では、患者のリンパ球を患者自身の腫瘍細胞オルガノイドまたはそれらの分泌産物と接触させるステップは、1つまたは複数の薬物の存在下であってよく、それはリンパ球の活性化の潜在性を増大させ得る。活性化されたリンパ球は、元の患者に注入してよく、注入前にインビトロで拡大してもよい。免疫細胞をエクスビボで活性化させる方法は、患者の外側でT細胞の活性化を提供し得て、および/または、不必要な薬物毒性から患者が免れるようにさせ得る。一部の実施態様では、免疫細胞をエクスビボで活性化する方法は、腫瘍細胞および/または腫瘍オルガノイドの近くに局在化されたものものよりも多くの細胞を活性化させ得る。
【0069】
図11を参照して、本発明のデバイスは、1つまたは複数のチャンバーを備えてよく、それは、オルガノイド(例えば腫瘍オルガノイド)を含む1つまたは複数のチャンバーのそれぞれとデイジーチェーン接続され得る1つまたは複数の平行チャネルによって接続され得て(図11A)、それにより、サーキュレーター経路あたりのオルガノイドの数(例えば患者腫瘍オルガノイド(PTO)の数)を増大させ得る。一部の実施態様では、2以上のオルガノイドが、同一チャンバー内に存在および/またはパターン化されてよい(図11B)。一部の実施態様では、1つまたは複数のT細胞は、例えば図11Cに示されるように本発明のデバイスおよび/または方法において注入および/または循環されてよく、それは、腫瘍抗原の認識に応答してT細胞のプライミングおよび/または活性化を誘導し得る。循環しているT細胞は、一定期間後にデバイスから取り出されてよく、および/または移されてよい。一部の実施態様では、取り出された循環T細胞は、例えば活性化レベルおよび/または腫瘍死滅化を試験するために、暴露されていない対応する(matched)患者腫瘍オルガノイド(例えば、非免疫増強腫瘍オルガノイド)に接触され得る。一部の実施態様では、プライミングおよび/または活性化されたT細胞が対象/患者に投与されてよい。
【0070】
一部の実施態様では、本発明の方法および/またはデバイスは、2以上の(例えば、2、3、4、5、6、7またはそれよりも多い)目的化合物のパラレルスクリーニングを提供し得て、および/または可能にし得る。一部の実施態様では、2以上の目的化合物のうちの少なくとも1つは免疫療法薬である。
【0071】
一部の実施態様では、本発明の方法および/またはデバイスは、対象から生検(例えば、リンパ節および/または腫瘍生検)が得られた後、約1または2週間以内(例えば、約2、3、4、5、6、7、8、9、または10日以内)に結果(例えば、薬物スクリーニング結果および/または治療的分析)を提供し得て、および/または与え得て、その細胞は、方法および/またはデバイスにおいて用いられた本発明のオルガノイドを調製するために用いられたものである。一部の実施態様では、本発明の方法は、対象から生検(例えば、リンパ節および/または腫瘍生検)が得られた後、約1、2、または3週以内(例えば、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日以内)に、対象を治療するステップ(目的化合物を用いてもよい)を含む(任意選択で、生検由来の細胞を用いて得られる結果(例えば、薬物スクリーニング結果および/または治療的分析)を得るステップに応じて)。
【0072】
本明細書中には、(a)チャンバー、およびチャンバーと流体的に連通しているチャネルを有するマイクロ流体デバイス;(b)チャンバー内の少なくとも1つのオルガノイド(例えば、免疫細胞および/または腫瘍細胞を含むオルガノイド);(c)チャネルおよびチャンバー内の増殖培地;(d)チャンバーおよびチャネルと作動可能に関連したポンプであって、チャンバーからチャネルを通ってチャンバーに戻るように培地を循環させるように構成されたポンプ;および(e)チャネル内の微孔膜(例えば、TRANSWELL(登録商標)微孔膜)であって培地がそれを通って流れるように配置された微孔膜、を備える、免疫細胞および/または腫瘍細胞をインビトロで評価するのに有用なデバイスも記載される。本発明のデバイスは、循環流および/または間欠流で維持されてよく、約1、2、または5μL/分~約7、10、15、20、25、50、100、150、200、250、300、350、400、450、または500μL/分の流速であってもよい。一部の実施態様では、オルガノイド内部の間質流(interstitial flow)を低減させるために間欠流が用いられてよく、それは、オルガノイドへの細胞および/またはオルガノイドからの細胞に関して遊走が試験および/または判定される場合であってもよい。一部の実施態様では、インビボでの薬物の投与(例えば注入)を刺激するために間欠流が使用されてよい。一部の実施態様では、デバイスは、制限されないが、生化学的アッセイおよびチップ上の直接イメージングのような分析試験のために構成され、および/またはそれに適している。一部の実施態様によれば、細胞(例えば、免疫細胞)は、本発明のデバイス内に注入されてよく、約1、2、または5μL/分~約7、10、15、20、25、50、100、150、200、250、300、350、400、450、または500μL/分の流速であってもよい。一部の実施態様では、本発明のデバイスの流速および/または細胞の注入速度は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20μL/分であってよい。
【0073】
一部の実施態様では、デバイスは、目的化合物をインビトロで免疫活性に関して、および/または、免疫系および/またはその活性の調節における活性に関して、スクリーニングするのに有用である。一部の実施態様では、デバイスは、腫瘍細胞の転移をインビトロで評価するのに有用であり、腫瘍細胞遊走および/または浸潤をインビトロで評価するのに有用であり、腫瘍細胞を含む構築物の増殖をインビトロで評価するのに有用であり、および/または、目的化合物に対する応答を評価するのに有用である。一部の実施態様では、デバイスは、構築物のサイズをインビトロで評価するのに有用であり得て、腫瘍細胞の数をインビトロで評価するのに有用であり得て、および/または、腫瘍細胞の死をインビトロで評価するのに有用で有り得る。
【0074】
一部の実施態様では、本発明の方法は、少なくとも1つの腫瘍オルガノイドの応答(例えば、腫瘍細胞の生存能力、細胞数、容量、アポトーシスなど)、少なくとも1つの免疫細胞活性、少なくとも1つのマーカーの活性化または枯渇(免疫蛍光バイオマーカーによって評価され得る)、および/または、少なくとも1つのT細胞活性化マーカーおよび/またはT細胞機能障害マーカーの存在を決定し得る。一部の実施態様では、本発明の方法は、結節細胞(nodal cell)の遊走を判定するステップを含んでよく、それは生きた細胞のトラッキングを介してもよい。試験化合物の有効性は、細胞の生存能力(生存/死滅)、生存細胞の数、生存細胞対死滅細胞の数、ミトコンドリア代謝(MTS)、LDH定量化(腫瘍細胞において陽性)、および/またはIHC(例えば、アネキシンV対KI67-アポトーシス対増殖性マーカー)によって判定され得る。
【0075】
一部の実施態様では、本発明の方法は、改変された免疫細胞(例えばCAR T細胞)によって課される腫瘍死滅率および/または有効性をインビトロで観察するために用いられ得て、および/または、改変された免疫細胞(例えば、CAR T細胞)の適切な投与量および/または注入速度を計算するために用いられ得て、それは、疾患の容量および有効性に基づく患者に関する合併症を防止するためであってもよい。
【0076】
目的化合物をインビトロで免疫活性に関してスクリーニングする方法および/または免疫系を調節する方法が本発明の一部の実施態様によって提供されて、その方法は、複数の細胞を含む少なくとも1つのオルガノイドを提供するステップ(例えば、少なくとも1つのオルガノイドは、肝臓オルガノイド、心臓オルガノイド、腫瘍オルガノイド、免疫学オルガノイド、混合オルガノイドなどであってもよい);目的化合物を少なくとも1つのオルガノイドにインビトロで接触させるステップ;および、目的化合物を少なくとも1つのオルガノイドにインビトロで接触させるステップに応じて、少なくとも1つのオルガノイドの免疫応答を(例えば、目的化合物との接触前および/または接触不存在下でのオルガノイドの免疫応答/活性と比較して)判定するステップを含む。一部の実施態様では、少なくとも1つのオルガノイドは、腫瘍オルガノイドおよび免疫細胞を含む別個のオルガノイドである。一部の実施態様では、少なくとも1つのオルガノイドは、腫瘍細胞および免疫細胞を含むオルガノイドである。一部の実施態様では、少なくとも1つのオルガノイドは、混合オルガノイド(例えば、混合共生オルガノイド)である。
【0077】
一部の実施態様では、本発明の方法は、少なくとも1つのオルガノイドを培養培地と接触させるステップを含む。一部の実施態様では、培養培地は少なくとも1つのタイプの免疫細胞(白血球であってもよい)を含み、少なくとも1つのタイプの免疫細胞は、少なくとも1つのオルガノイド内の細胞と同一由来であってよい。一部の実施態様では、培養培地は目的化合物を含む。
【0078】
本発明の方法は、細胞遊走を判定するステップ(例えば、少なくとも1つのタイプの免疫細胞の遊走を判定するステップ)を含んでよく、生きた細胞のトラッキングを用いてもよい。一部の実施態様では、本発明の方法は、細胞(例えば、オルガノイド内に存在する細胞および/または遊走細胞)上の活性化および/または枯渇マーカーの存在を判定するステップを含み、免疫蛍光を用いてもよい。一部の実施態様では、本発明の方法は、以下を含む:目的化合物を少なくとも1つのオルガノイドにインビトロで接触させるステップに応じて、目的化合物は、少なくとも1つの(the least one)タイプの細胞(例えば、免疫細胞)の免疫活性を活性化および/または増大させる。一部の実施態様では、本発明の方法は、以下を含む:目的化合物を少なくとも1つのオルガノイドにインビトロで接触させるステップに応じて、少なくとも1つのオルガノイド内に存在する細胞(例えば、腫瘍細胞)の増殖における低減(例えば、細胞増殖の欠如、細胞死、細胞浸潤における低減など)が存在する。少なくとも1つのオルガノイドが腫瘍細胞を含む場合、本発明の方法は、目的化合物を少なくとも1つのオルガノイドにインビトロで接触させるステップに応じて、少なくとも1つのオルガノイド内に存在する腫瘍細胞の増殖における低減(例えば、細胞増殖の欠如、細胞死、細胞浸潤における低減など)を判定するステップを含んでよい。一部の実施態様では、生きた腫瘍細胞の増殖における低減を判定するステップは、少なくとも1つのオルガノイド内の生存能力のある腫瘍細胞の数を判定するステップ、少なくとも1つのオルガノイド内に存在する生きた腫瘍細胞の数を判定するステップ、少なくとも1つのオルガノイドの容量を判定するステップ、および/または、少なくとも1つのオルガノイド内に存在する死滅した腫瘍細胞の数を判定するステップを含む。
【0079】
一部の実施態様では、本発明の方法は、対象を管理するために(to administer a subject)、目的化合物の用量および/または注入速度を計算するステップを含む。一部の実施態様では、本発明の方法は、目的化合物を少なくとも1つのオルガノイドにインビトロで接触させるステップに応じて、目的化合物を対象に治療有効量で投与するステップを含み、それは、目的化合物が腫瘍細胞の転移をインビトロで低減させる、オルガノイドのサイズをインビトロで低減させる、腫瘍細胞の数をインビトロで低減させる、腫瘍細胞の死をインビトロで誘導する、免疫細胞の活性をインビトロで増大させる、および/または、免疫細胞をインビトロで活性化することが判定された場合であってもよい。
【0080】
一部の実施態様では、腫瘍細胞および/または免疫細胞をインビトロで評価するのに有用なデバイスは、1つまたは複数の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれよりも多い)チャンバーを備え、各チャンバー内に少なくとも1つのオルガノイドを含み、互いに流体的に連通している。デバイスは、免疫活性を評価するのに有用であり得て、免疫系および/またはその活性、腫瘍細胞の転移をインビトロで調節するのに有用であり得て、腫瘍細胞の遊走および/または浸潤をインビトロで評価するのに有用であり得て、腫瘍細胞を含む構築物の増殖をインビトロで評価するのに有用であり得て、および/または、目的化合物に対する応答を評価するのに有用であり得る。一部の実施態様では、デバイスは、構築物のサイズをインビトロで評価するのに有用であり得て、腫瘍細胞の数をインビトロで評価するのに有用であり得て、および/または、腫瘍細胞の死をインビトロで評価するのに有用であり得る。デバイス内に存在する1つまたは複数のオルガノイドは、単一の対象から得られた細胞から調製され得る。一部の実施態様では、デバイスは、生きた腫瘍細胞オルガノイドを第1のチャンバー内に、および、免疫細胞を含むオルガノイドを第2のチャンバー内に含む。一部の実施態様では、デバイスは、生きた腫瘍細胞オルガノイドおよび免疫細胞を含むオルガノイドを同一チャンバー内に含む(例えば図2に示されるように互いから離れていてもよい)。一部の実施態様では、2以上のオルガノイドが同一チャンバー内に提供される場合、オルガノイドの細胞および/またはオルガノイドは、チャンバーの1つまたは複数の(例えば、2、3、4、5またはそれよりも多い)ゾーンおよび/またはエリア内に存在してよい。例えば、一部の実施態様では、チャンバーは、2以上のゾーンおよび/またはエリアを備え、一方のオルガノイド(例えば免疫細胞オルガノイド)の細胞は第1のゾーンおよび/またはエリア内に存在してよく、第2のオルガノイド(例えば腫瘍細胞オルガノイド)の細胞は第2のゾーンおよび/またはエリア内に存在してよい(例えば図4A図4Cに示される)。同一チャンバー内であるが異なるゾーンおよび/またはエリア内(それらは互いに隣接してもよい)に異なる細胞および/またはオルガノイドを有することは、オルガノイドを通る細胞の遊走を提供および/または強制し得るが、循環を通る細胞の遊走を提供および/または強制し得ない。生きた腫瘍細胞オルガノイドおよび肝臓オルガノイドは、同一対象から得られた細胞から形成されてよく、それは個別化された分析を提供し得る。
【0081】
一部の実施態様では、デバイスは:生きた腫瘍細胞オルガノイドを含む一次チャンバー;異なるオルガノイドを含む少なくとも1つの二次チャンバー;一次チャンバーと二次チャンバーとを接続してその間の流体的な連通(例えば増殖培地の流れなど)を提供する、少なくとも1つの一次導管を備えてよく;および、一次チャンバー、それぞれの二次チャンバー、および一次導管内に増殖培地を含んでもよい。一部の実施態様では、2以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8個またはそれよりも多い)二次チャンバーが提供されて、それぞれの二次チャンバーは、他とは異なる細胞を含むオルガノイドを含む。一部の実施態様では、少なくとも1つの二次チャンバーは肝臓オルガノイドを含み、ここで、生きた腫瘍細胞オルガノイドおよび肝臓オルガノイドは、同一対象から得られた細胞から調製されてもよい。さらなる例示のデバイスは、限定されないが、PCT/US2016/054611およびPCT/US2017/045277に記載されるものを含み、それぞれの内容はその全体で参照により本明細書中に援用される。
【0082】
一部の実施態様では、デバイス(例えば、マイクロ流体デバイス)の少なくとも一部は透明であり、デバイスは、微孔膜と作動可能に関連して微孔膜上の細胞(例えば、腫瘍および/または免疫細胞)を検出(例えば撮像)するように構成された、検出器(例えばカメラ)を備えてよい。
【0083】
デバイス本体は、それ自体、任意の適切な材料または材料の組み合わせから構成されてよい。その例示は、限定されないが、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリルアミド、官能化PEGを含むポリエチレングリコール(PEG)(例えばPEGジアクリレート、PEGジアクリルアミド、PEGジメタクリレートなど、または任意の前述のPEGのマルチアーム型など)、架橋または硬化され得る天然ポリマーまたはタンパク質(例えば、ヒアルロン酸、ゼラチン、コンドロイチン硫酸、アルギン酸などであり、架橋をサポートするための化学基によって官能化されたそれらの誘導体を含み、架橋型での上述の任意の「架橋可能なプレポリマー」を含み、それらの組み合わせを含む)を含む。デバイス本体は、成形、鋳造、付加製造(3Dプリント)、リソグラフィなどを含む任意の適切なプロセス(それらの組み合わせを含む)によって形成されてよい。
【0084】
構造的支持がデバイス内に含まれる場合、その構造的支持は、ヒドロゲルのように、パターン化されてよい(例えば、規則的または不規則なパターン、例えば規則的または不規則な格子、グリッド、スパイラルなど)。
【0085】
一部の実施態様では、本発明の方法において用いられ得る本発明のデバイスは、生理学的または超生理学的な流体対組織容量比を提供するように構成されてよい。例えば、デバイス内の1つまたは複数のチャンバーは、約2μL~約10μLの範囲の平均容量を有してよい。一部の実施態様では、デバイス内の1つまたは複数のチャンバーは、約2、3、4、5、6、7、8、9、または10μLの平均容量を有してよい。一部の実施態様では、本発明のデバイス(例えば、少なくとも2個または6個のチャンバーを備えるデバイス)は、約100μL未満、例えば、約95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40μLまたはそれよりも少ない量の液体を用いてよく、および/または、そのような容量を有してよい。本明細書において用いられるデバイスの容量は、デバイスのチャンバー(単数または複数)およびチャネル(単数または複数)を満たす容量を指す。一部の実施態様では、本発明のデバイス(例えば、少なくとも2個または6個のチャンバーを備えるデバイス)は、約50μL未満の量の液体を用いてよく、および/または、約50μL未満の容量を有してよい。一部の実施態様では、デバイスの容量は、外部の流体リザーバーとの統合および/または使用によって増大され得る。外部の流体リザーバーは、全体的なシステム容量を増大させ得て、および/または、デバイスの容量を制御するのを助け得る。
【0086】
本発明のシステム、デバイス、および/または方法は、1つまたは複数の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、またはそれよりも多い)異なる組織および/またはオルガノイド(それぞれ少なくとも1、2、3、4、5週間、またはそれよりも長く生存能力がある)を含んでよく、および/または提供してよい。一部の実施態様では、本発明のシステム、デバイス、および/または方法は、1つまたは複数の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、またはそれよりも多い)異なるオルガノイド(互いおよび一般的な水性増殖培地と流体的に連通していて、それぞれ少なくとも1、2、3、4、5週間、またはそれよりも長く生存能力がある)を含み、および/または提供する。したがって、一部の実施態様では、2、3、4、5、6個、またはそれよりも多くの異なるオルガノイドが、互いおよび一般的な水性増殖培地と流体的に連通していて、それぞれ少なくとも1、2、3、4、5週間、またはそれよりも長く生存能力がある。一部の実施態様では、オルガノイドのうちの1つまたは複数は、生存能力があってよく、1、2、3、4、5週、またはそれよりも長い週において、構築物内に存在する細胞の平均数に基づき少なくとも約75%またはそれよりも多い(例えば、約80%、85%、90%、95%またはそれよりも多い)生細胞を含んでよい。組織および/またはオルガノイドは、一般的な細胞サンプル(例えば、対象から集められた皮膚サンプルのようなサンプル)からの分化によって生産され得る。オルガノイドのうちの1つまたは複数は、対応する生来の(例えば、ヒト)組織内に存在する細胞の割合に似た割合で細胞を含んでよい。一部の実施態様では、オルガノイドのうちの少なくとも1つは、転移および/または悪性細胞を含む。一部の実施態様では、組織および/またはオルガノイドの機能および/または特性が判定および/または測定され得て、そして、対応する生来の組織の機能および/または特性と比較され得る(例えば、脳オルガノイドの特性が測定され得て、そして対象内の脳組織の同一の特性と比較され得る)。一部の実施態様では、組織および/またはオルガノイドの機能および/または特性は、対応する生来の組織の機能および/または特性と似ていてよい。
【0087】
本明細書に記載のように、細胞および/または細胞サンプルは、本発明のオルガノイドを形成するために本発明の方法において用いられ得る。本発明の方法は、生存能力のあるオルガノイドを提供することができる。一部の実施態様では、本発明の方法は、少なくとも50%またはそれよりも高い、例えば、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、またはそれよりも高い生着率(take rate)を達成することができる。例えば、90%の生着率は、90%の確率で、生存能力のあるオルガノイドまたは複数のオルガノイド(例えば、オルガノイドのセット)が本発明の方法により達成および/または提供されることを意味する。すなわち、90%の生着率については、本発明の方法に従って調製した場合、10個の細胞サンプル(例えば、腫瘍細胞サンプル)のうちの9個が、生存能力のあるオルガノイドまたは複数のオルガノイドを生じさせる。オルガノイドまたは複数のオルガノイドは、本発明の別の方法および/または診断において用いられてよい。一部の実施態様では、細胞および/または細胞サンプルは、例えば中皮腫生物試料および/またはGI腫瘍生物試料のような腫瘍由来であってよく、および/またはリンパ節生検由来であってよい。
【0088】
目的化合物をインビトロで抗転移活性および/または抗腫瘍活性に関してスクリーニングする方法は、本明細書に記載の腫瘍細胞を含む少なくとも1つのオルガノイドを含むデバイスを提供するステップ;デバイス内で培地を循環させるステップ;目的化合物を腫瘍細胞に投与するステップ(例えば、化合物を培地に添加することによる);および、微孔膜上に捕捉された腫瘍細胞を定量的または定性的に検出するステップによって行われ得て、ここで、捕捉された腫瘍細胞の数が(例えば、同様の条件下での他の腫瘍細胞および/または同様の条件下での非転移細胞と比較して)より少ないことは、目的化合物のより優れた抗転移活性および/または抗腫瘍活性を示す。一部の実施態様では、少なくとも1つのタイプの免疫細胞が、デバイス内(例えば、デバイスのチャンバー内の、培地内、腫瘍細胞を含む少なくとも1つのオルガノイド内、および/または、オルガノイド内)に存在してよい。
【0089】
目的化合物をインビトロで抗転移活性および/または抗腫瘍活性に関してスクリーニングする方法は、本明細書に記載のデバイス(例えば、生きた腫瘍細胞オルガノイドを含む一次チャンバーおよび少なくとも1つの二次チャンバーを備えるデバイス)を提供するステップ;デバイス内に培地を循環させるステップ;目的化合物を腫瘍細胞に投与するステップ(例えば化合物を培地に添加することによる);および、1つまたは複数の二次チャンバー内(例えば、二次チャンバー内に存在するオルガノイド上および/またはオルガノイド内であってもよい)に存在する腫瘍細胞を定量的または定性的に検出するステップによって行われてよく、ここで、1つまたは複数の二次チャンバー内に存在する腫瘍細胞の数が(例えば、同様の条件下での他の腫瘍細胞および/または同様の条件下での非転移細胞と比較して)より少ないことは、目的化合物のより優れた抗転移活性および/または抗腫瘍活性を示す。一部の実施態様では、少なくとも1つのタイプの免疫細胞が、デバイス内(例えば、デバイスのチャンバー内の、培地内、腫瘍細胞を含む少なくとも1つのオルガノイド内、および/または、オルガノイド内)に存在してよい。
【0090】
本発明の方法は、細胞(例えば、腫瘍細胞および/または免疫細胞)を検出可能な化合物、例えば、制限されないが、蛍光化合物(例えば、色素、タンパク質など)で標識するステップを含んでよい。
【0091】
本発明の前述および他の態様は、以下の実施例においてさらに説明される。
【実施例0092】
[実施例1-免疫療法(IT)薬物の有効性をインビトロで試験するための、新鮮な患者由来の肺TOCモデル内のリンパ節および白血球構成要素の統合。]
統合された腫瘍およびリンパ節オルガノイドのバイオファブリケーション:節細胞および白血球は、膜取り込み色素(PKH26-赤色またはPKH67-緑色)を通して標識化されて、腫瘍生物試料細胞と統合される。バイオファブリケーション後、免疫細胞の存在を免疫細胞表面マーカーに関する染色によって確認して、上述の膜色素により共局在を確証する。コントロールは、腫瘍オルガノイドのみからなる。
【0093】
PD-L1およびCTLA-4の評価:組織回収後に、免疫組織化学(IHC)を、PD-L1抗体を用いてそれぞれの腫瘍生検の一部に対して、または、CTLA-4抗体を用いて節生検に対して行なう。高いPD-L1またはCTLA-4発現を規定するために、確立された5%閾値値を用いて、それぞれ高発現または低発現として分類されて、IT感受性に関して各生物試料について仮説が作成されるのを可能にする。
【0094】
免疫療法薬パネルの編集:オルガノイドは、任意に少量で作製することができるので、薬物スクリーニング(および並べ替え)およびバイオマーカー同定のための、ほぼ任意の数のオルガノイドを作製する。ペンブロリズマブ(pembro)は、PD-1受容体を標的化する。ニボルマブ(nivo)は、PD-1受容体を標的化し、一般に、がんがBRAF突然変異を有さない場合に用いられる。イピリムマブ(ipi)は、CTLA-4を標的化することによって免疫系を活性化する。
【0095】
薬物スクリーニングのアウトプットのメトリクス:薬物は48時間投与されて、その後に、以下のようにして有効性が判定される;具体的には、細胞の生存能力は、(生存/死滅)、生存細胞のみの数、死滅細胞に対する生存細胞の数、ミトコンドリア代謝(MTS)、LDH定量化(腫瘍細胞において陽性)、およびIHC(アポトーシス、増殖性、および腫瘍細胞マーカーによって免疫標識された免疫細胞の共局在)によって評価される。図1Aは、統合された結腸直腸腫瘍-節オルガノイドのデータを示し、ニボルマブとのインキュベーションの際に、(おそらくT細胞活性化を通して)ミトコンドリア代謝における増大が観察されて、同様の低グレードの虫垂腫瘍-節オルガノイドにおける生存/死滅染色(図1B)では、pembroおよびnivo処置の下での細胞死の増大が観察された。これらの結果は、バイオマーカー分析を用いて確証される。さらに、図1Cは、ペンブロリズマブおよびイピリムマブ(ipilumimab)による応答がない(「無応答」)、以前に治療された黒色腫患者由来のPTOからのデータを示す。生存/死滅染色は、無応答表現型の再現を示し、ここで、これらの腫瘍由来のオルガノイドもこれらの免疫チェックポイント阻害剤に反応しなかったが、ダブラフェニブおよびトラメチニブには応答した(最も右のパネル)。このことは、患者のBRAFのワイルド状態を考慮すると、予測されないことであった。振り返ってみると、患者は、BRAF状態をバイパスしている下流のMEK突然変異を有することが見いだされた。代替療法は、MEK突然変異を確認したゲノムシーケンシングの4週間以上前にPTOスクリーニングによって同定されて、したがって、患者をトラメチニブに関して認定した。患者は、トラメチニブ(MEK阻害剤)を用いた治療を始めて、ほぼ即座に成功的に応答し始めた。
【0096】
[実施例2-マイクロ流体循環を通した腫瘍細胞へのT細胞ホーミングを評価するための、腫瘍オンチップ(TOC)から上流の、リンパ節オルガノイドの実施。]
2-オルガノイドのバイオファブリケーション:腫瘍オルガノイドを生産して、別個の節オルガノイドを生産して(実施例1と同様の様式だが腫瘍細胞と統合しない)、マイクロ流体デバイスの各チャンバー内に置く(図2)。あるいは、節オルガノイドが含まれないならば、循環を通して白血球を注入する。コントロールは腫瘍のみからなる。
【0097】
薬物スクリーニングのアウトプットのメトリクス:薬物の条件およびアウトプットは、実施例1に記載されるのと同様である。さらに、免疫細胞数の位置の検証が行われる。免疫細胞が処置存在下で下流腫瘍へ遊走して腫瘍関連抗原に曝され得るならば、蛍光タグはトラッキングおよび確認を可能にする(図2)。任意の特定の理論に拘束されることを望まないが、PD-1阻害のような条件は、T細胞のような免疫細胞が腫瘍細胞を認識し、腫瘍へ遊走し、腫瘍細胞の死を誘導するのを可能にし得ると考えられる。
【0098】
それぞれの個々のオルガノイドチャネル/チャンバー内にバイオファブリケートされたPTOを有するマイクロ流体デバイス構造は、図2のように用いられる。さらに、以前に平行だったPTOチャネルは一緒にデイジーチェーン接続されるので、T細胞が灌流される単一経路に全てのPTOが存在し(populate)(図11A)、したがって、循環中のT細胞による腫瘍抗原に対する暴露を最大にする。TOCあたりのPTO数は、単一のより大きなチャンバー内(図11B)または多数の平行チャネル内に、より大きな数のPTOを光パターニングすることによって著しく増大し得て、システム流体容量を減少させる。
【0099】
[実施例3-新鮮な患者由来の腫瘍オンチップモデル内としての、免疫療法薬の有効性を試験するためのリンパ節免疫系構成要素の導入。]
腫瘍切除中に取り出された切除リンパ節の断片由来の細胞を、患者特異的な腫瘍オンチップのオルガノイド内に取り込み、それにより、腫瘍を標的化する免疫療法剤の有効性のスクリーニングを容易にした。このアプローチは、特定の細胞集団の特性を明らかにする必要なく生来の異種性を再現する。組織サンプル由来(form)の細胞(例えば、腫瘍細胞、間質細胞、内皮細胞など)の全混合物を用いることにより、システムは、本質的にインビボの腫瘍異種性の代表となる。応答は、患者の結果と比較される。
【0100】
生物試料の取得および処理:患者は主に、大きな腹部内臓がん(major abdominal visceral cancer)切除のための外科的プラクティスを通して同意および登録され、または、進行中の免疫療法に対して抵抗性の残りの疾患の局所制御目的のために転移病変およびリンパ節を切除するための緩和手順を受けている患者である。全ての患者が両方の構成要素(腫瘍およびリンパ節)をサンプリングされる必要があるわけではない。サンプリングは、臨床的に示される手順のほんの一部である。換言すれば、示される外科的処置が両方の構成要素(腫瘍およびリンパ節)に対するアクセスを与えないのならば、サンプリングは、アクセス可能な、術野の構造内に存在するものからのみ行われる。新鮮な腫瘍生検は、細かく切り刻まれて、洗浄されて、消化されて、そして濾過されて、細胞懸濁液が得られる。全ての検体は、患者同一性へのアクセスを防止するためにコード化される。遺伝子プロファイルデータは、サンプルとともに無名で提供される。
【0101】
マイクロ流体デバイスのファブリケーション:マイクロ流体デバイスをプロトタイプ化するための、リソグラフィによって規定されたポリジメチルシロキサンエラストマーの従来の使用は、高価な透明マスク、デバイス規定のためのフォトリソグラフィ、連続鋳造、および正確な層配置に対する依存のため日数がかかり得る。このことは、スケールアップおよび臨床への移行(clinical translation)に対する挑戦を示す。しかしながら、このアプローチは、極端な分解能(extraordinary resolution)(約1μm)にのみ必要である。我々の3Dシステムは、折り畳みを介して自己整列および層化することのできる、単純な薄い、パターン化された接着フィルムを用いて組み立てられて、マイクロ流体構造を形成する(図3A)。チャンバーおよびチャネルの規定は、コンピューター制御されたレーザーカッターの使用を通して達成される。このプラットフォームを用いて、我々は、バルブ、ミキサー、および他の機能性マイクロ流体システムを含む、複数の複雑なデバイスを生産した。
【0102】
オルガノイド-デバイスの統合:3Dオルガノイドをマイクロ流体システム内に統合する挑戦を対処するために、我々は、組織工学および様々なバイオファブリケーション技術において広く用いられている、ヒアルロン酸(HA)およびゼラチン系のヒドロゲル(HyStem)を利用するインサイチュのバイオファブリケーションに関する方法論を開発した。組織構築物を組み立てる全般的な方法において、HAおよびゼラチン/コラーゲン構成要素は、組織オルガノイド、ならびに、チオール-アクリレート/メタクリレート光重合をサポートするための架橋剤および光開始剤と混合される。それぞれの細胞懸濁液は、最終的な統合構築物内のオルガノイド容量の比がヒト体内の臓器の容量比に匹敵するような密度でゲル前駆体に添加される(例えば、肝臓オルガノイドの質量は、心臓オルガノイドの質量の5倍である)。それぞれの細胞負荷基質(cell-laden substrate)は、マイクロ流体チャンバーへ連続して導入されて、ポジ型フォトマスクを用いてパターニングが達成されて、構築物の形状および位置を規定する(図3B)。架橋されたヒドロゲルは、チャンバーの上面および底面に付着して、多数の回路を並行してサポートするマイクロぜん動ポンプによって動力が与えられる流体流条件下で維持されるのを可能にする(図3C)。このパターニングは、任意の数の独立したマイクロ流体チャンバー内で行われ得る。生じた3D構築物はその後、循環流の下で、長期の生存能力で維持され得て、システム全体は、生化学的アッセイおよびチップ上での直接イメージングの両方を含む分析試験に適している。このパターニングは、任意の数の独立したマイクロ流体チャンバー内で行われ得る。生じた3D構築物はその後、循環流の下で、長期の生存能力で維持され得て、システム全体は、生化学的アッセイおよびチップ上での直接イメージングの両方を含む分析試験に適している。さらなるパターニング(例えば、さらなる細胞またはオルガノイドのタイプを用いる)もまた、マルチ構成要素の構造を生産するために用いられ得て、重大なシステム複雑性を可能にする。とりわけ、ヒドロゲル自体は、可溶化細胞外マトリックスの取り込みもサポートして、各組織オルガノイドに特異的なさらなる生体分子因子を与える。ECMプロファイルは、組織タイプの間で異なり、ECM構成要素を含むことは、細胞の生存能力および機能を改善させて、ECM構成要素は、共有結合またはヘパリン結合を介してヒドロゲル内に簡単に連結される。特異的なマトリックスタンパク質(例えば、ラミニン、コラーゲンI、コラーゲンIV)およびサイトカインの存在は、腫瘍の増殖および遊走(したがって薬物有効性)に影響し得るので、TOCデバイスにおけるこれらのプロファイルの再現は、インビボ系の正確な再現を確実にする。総合的に、この組み立て方法は迅速であり、低価であり、数多くの並行的な実験のために大量生産される率直な潜在性を有するモジュール式である。
【0103】
分析プラン:
サンプルのサイズおよびパワー:主要エンドポイントは、腫瘍オルガノイドおよび腫瘍/リンパ節オルガノイドの開発の実施可能性である。この研究は、20人の患者を登録して、オルガノイド開発の成功率として実施可能性を定義する。この率は、(成功したオルガノイド開発/20)の割合として表される。この率は、対応する95%信頼区間とともに報告される。計画されたサンプルサイズが20なので、観察された成功率が50%ならば95%信頼区間の幅は約+/-22.2%になる。
【0104】
一次結果の分析:一次結果は、オルガノイド開発の率であり;この率は、オルガノイド開発の成功を表わす。
【0105】
二次結果の分析:二次結果は、化学療法に対する個々の応答とオルガノイド化学感受性の相関である(3つのグループのうちの1つに分類される:疾患の安定(stable disease)、部分的な応答(partial response)または無応答(no response))。これらの3つのグループ内の小さなサンプルサイズを考慮すると、クラスカル・ワリス検定が、3つの応答グループにおいて観察される化学感受性における違いを評価するために用いられる。
【0106】
腫瘍-リンパ節オルガノイドのバイオファブリケーション:上述のバイオファブリケーション方法は、組織が切除された患者に特異的な腫瘍オンチップモデルを作成するために用いられる。腫瘍生検由来細胞に加えて、患者のリンパ節から分離された細胞が、ヒドロゲルオルガノイドのバイオファブリケーションのプロセスにおいて腫瘍生物試料由来細胞と組み合わせられる。リンパ節細胞は、膜取り込み色素(PKH26-赤色またはPKH67-緑色)を通して蛍光標識されて、その後の方法において実施される。腫瘍細胞に対する免疫細胞の近接を確実にするために、腫瘍細胞およびリンパ節細胞を5:1比(細胞数)で一緒に組み合わせることを我々は望むが、この比は調節されてよい。オルガノイドのバイオファブリケーションの後に、免疫細胞の存在が、免疫細胞表面マーカーに関する染色および上述の膜色素による共局在の検証によって確認される。
【0107】
免疫療法薬パネルの編集:オルガノイドは、任意に少量で作製することができるので、薬物スクリーニングおよびバイオマーカー同定のための、ほぼ任意の数のオルガノイドを作製する。インターフェロンは、既存の免疫細胞ががんと闘うのを助けるのを補助する。インターロイキン-2は、がんと闘うようにプライミングされた免疫細胞の数を増大させるのを補助する。ペンブロリズマブはPD-1受容体を標的化する。ニボルマブもPD-1受容体を標的化するが、一般に、がんがBRAF突然変異を有さない場合に用いられる。イピリムマブは、CTLA-4を標的化することによって免疫系を活性化する。ニボルマブ/イピリムマブ、併用療法。ベムラフェニブ/コビメチニブは、BRAF突然変異を有する腫瘍を標的化する。
【0108】
薬物スクリーニングのアウトプットのメトリクス:薬物治療の有効性は以下のように判定される;具体的には、細胞の生存能力は、(生存/死滅)、生存細胞のみの数、死滅細胞に対する生存細胞の数、ミトコンドリア代謝(MTS)、LDH定量化(腫瘍細胞において陽性)、およびIHC(アポトーシス対増殖性マーカー)によって評価される。さらに、免疫細胞の数および状態における変化の検証が行われる。また、腫瘍細胞と標識化免疫細胞の共局在がイメージングによって評価される。
【0109】
患者の応答に対する薬物有効性の関連付け:薬物スクリーニング、および所定の生物試料オルガノイドのセットに関してどの薬物が最も効果的であるかについての判定に従って、上述のように無名の(de-identified)データのみを用いて、これらのデータは患者のデータと関連付けられる。
【0110】
統計分析:実験は四重またはそれよりも多く行われて;データは、平均±平均の標準誤差として示される。スチューデントのt検定が、2つのグループの比較にα=0.05で用いられる。一元配置分散分析が、95%の信頼限界を有意と考えて多重比較に関して用いられる。
【0111】
[実施例4-患者腫瘍生物試料エクスビボ腫瘍オンチップオルガノイドへの、患者対応(patient-matched)リンパ節細胞集団の導入。]
生物試料の取得および処理:患者は主に、大きな腹部内臓がん切除または先端(extremity)腫瘍切除のための我々のCRS/HIPEC外科的プラクティスを通して同意および登録されて、ならびに、進行中の免疫療法に対して抵抗性の残りの疾患の局所制御目的のために転移病変およびリンパ節を切除するための緩和手順を受けているステージIVの黒色腫患者である。サンプリングは、臨床的に示される手順のほんの一部である。換言すれば、外科的処置が構成要素(腫瘍およびリンパ節)の両方に対するアクセスを与えないのならば、患者は、これらの研究に関して同意されない。Advanced Tumor/Tissue Bank Project(BG04-104)、IPHC Research Database(BG01-372)、および精密医療報告(遺伝子突然変異分析)からの組織およびデータも、利用可能である場合は本研究において用いられる。一般に、我々の予備的データとともに、我々は、結腸直腸、虫垂、腹膜中皮腫、および黒色腫組織を得ることを期待する。全ての検体は無名である。新鮮な生検は細かく切り刻まれて、洗浄されて、消化されて、そして濾過されて、細胞懸濁液が得られる。結節細胞の一部は、トラッキングのために蛍光標識される(QTrackerプローブ)。我々のゴールは、12個の別個の検体からオルガノイドのセットを作ることである。
【0112】
マイクロ流体デバイスの組み立て:3Dシステムは、折り畳みを介して自己整列および層化することのできる、単純な薄い、パターン化された接着フィルムを用いて組み立てられて、マイクロ流体構造を形成する(図3A)。特徴の規定は、コンピューター制御されたレーザーカッターによって達成される。
【0113】
オルガノイド-デバイスの統合:HAおよびゼラチン/コラーゲン構成要素は、細胞、ならびに、光重合のための架橋剤および光開始剤とインサイチュで混合される。細胞は、好ましくは2000万細胞/mLまたはそれよりも高い密度でゲル前駆体に添加されて、その後に、細胞ゲル混合物がマイクロ流体チャンバーに連続して導入されて、構築物の形状および位置を規定するためのポジ型フォトマスクを用いてパターニングが達成される(図3B)。提案された研究に関して、各デバイスは、一連の2個のチャンバー回路を備え、一方のチャンバー内には腫瘍オルガノイドが形成されて、他方にはリンパ節オルガノイドが形成される。あるいは、両方のオルガノイドは、同一チャンバー内であるが別々に存在し得る(図2)。別のフォームファクターでは、腫瘍細胞および免疫細胞は、隣接領域としてデバイス内に光パターニングされ得て、免疫細胞が腫瘍細胞を成功的に標的化するために、それらは腫瘍細胞抗原を認識させられて、活性化させられて、そして腫瘍領域へ遊走させられる(図4A~4C)。生じた3D構築物は典型的に、10μL/分の循環流の下で、長期の生存能力で維持される。
【0114】
オルガノイドの特性化およびベースラインの細胞遊走の研究:プラットフォームの開始後に、TOCデバイスは、1、7、および14日間、流れの下で(under flow)操作される。これらの時点において、オルガノイドはIHC分析のために固定される。腫瘍オルガノイドは、腫瘍タイプに依存してマーカーのパネルに供せられる(我々は、予備データにおいて示されたタイプのそれぞれから、オルガノイドを特徴付けた)。節オルガノイド(および、腫瘍オルガノイドへ遊走したと考えられる潜在的なリンパ細胞を、CD8、CD4、CD45、CD25、FOXP3、l-セレクチン、CD44、CTLA4、PD1に関する抗体を用いて評価して、リンパ球/白血球、TRegs、エフェクタータイプ、分化、およびネガティブフィードバックが同定される。FACSを用いることもできるが、IHCは、3Dオルガノイド内の時間と空間の情報を与える。データは、最初のスクリーニングに関して、オルガノイド組織切片において初めに評価されるが、その後に、ホールマウントのマクロ共焦点顕微鏡(Leica LCS TSI)によって3Dで評価される。細胞遊走は、生蛍光(live fluorescence)および標識化された節細胞の遊走のトラッキングを用いて、よりニュアンスの付けられた(more nuanced)様式で評価される。
【0115】
[免疫療法剤に対する患者特異的な腫瘍オルガノイド応答の評価(結節細胞の集団を含む、および含まない)。]
薬物パネルの編集:薬物スクリーニングが行われて、薬物濃度は臨床血漿レベルに基づく。腫瘍+節TOCと並行して、腫瘍のみTOCをコントロールとして用いる。スクリーニングした薬物は以下のとおりであり得る:
i)ペンブロリズマブ、PD-1受容体を標的化する。
ii)ニボルマブ、PD-1受容体を標的化するが、一般に、がんがBRAF突然変異を有さない場合に用いられる。
iii)イピリムマブ(Ipi)、CTLA-4を標的化することによって免疫系を活性化する。
iv)ニボルマブ/イピリムマブ、併用療法。
v)ベムラフェニブ/コビメチニブ、BRAF突然変異を有する腫瘍の標的化。
vi)イマチニブ、C-KIT(幹細胞マーカー)の活性化突然変異を有する腫瘍のための抗体。
vii)インターフェロンおよびインターロイキン-2、免疫活性化における補助。
【0116】
リンパ節細胞の活性化およびトラッキング:免疫細胞集団の活性化は、上述のIHCフレームワークのサブセットを用いて評価される。遊走している蛍光細胞のトラッキングは、上述のとおりに行われる。遊走のカイネティクスにおける量的変化は、患者TOCの各セットに関する実験間で判定される。
【0117】
薬物スクリーニングのアウトプットのメトリクス:薬物有効性は、細胞の生存能力(生存/死滅)、生存細胞のみの数、死滅細胞に対する生存細胞の数、ミトコンドリア代謝(MTS)、LDH定量化(腫瘍細胞において陽性)、およびIHC(アネキシンV対KI67-アポトーシス対増殖性マーカー)によって判定される。
【0118】
図5は、黒色腫腫瘍オルガノイドを用いた、および、リンパ節細胞を含む黒色腫腫瘍オルガノイドを用いた、薬物スクリーニングに関する細胞生存能力データを示す。チェックポイント阻害剤ニボルマブ(nivo)またはペンブロリズマブ(pembro)を用いた薬物スクリーニングに関して、全体的な代謝活性によって測定されるオルガノイド生存能力における有意な低減が、オルガノイドがリンパ節由来の細胞および腫瘍細胞の両方を含む場合にのみ観察された。
【0119】
[実施例5-薬物スクリーニングおよび疾患進行分析のための、腫瘍および関連組織オルガノイドの産生。]
患者腫瘍および関連組織から作られた、バイオファブリケートされたオルガノイドは、インビボ微小環境および免疫系のインビトロ模倣物として働く。そのような模倣物は、標準的な化学療法ならびに免疫系および適切な細胞を培養物へ統合することによる免疫療法を含む薬物スクリーニングのために用いられ得る。疾患進行は、構築物を用いてさらに研究され得て、改善された治療のための患者特異的な腫瘍挙動に対するより大きな洞察を与える。
【0120】
この例示の方法の実施において用いられるプロセスが図4~10に示される。開放コンテナーを含むすべての操作は、安全キャビネット(BSC)内で行われなければならない。BSC内へ入れられる物は、光噴霧を介して70%EtOHによって最初に浄化されなければならない。BSC内の任意の過剰なEtOHは、手順を行なう前に拭き取られるべきである。
【0121】
細胞培養容器は、インキュベーター内または顕微鏡上に置かれる前に70%EtOHで拭かなければならない。過剰のEtOHは、インキュベーター内に置かれる前に拭き取られるべきである。細胞を含むコニカルチューブもまた、遠心分離機内に置かれる前に70%EtOHで拭かれて、または噴霧される。
【0122】
[試薬調製]
DMEM-10:適切な容量のウシ胎児血清(FBS)をダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)へ合わせて、10%溶液を生じさせる。さらに、適切な容量のペニシリン/ストレプトマイシンおよびL-グルタミンを添加して、溶液中にそれぞれ1%を生じさせる。適切なサイズの培地フィルターを通して、合わせた培地を滅菌濾過する(500mL、1000mL)。
【0123】
消化溶液:計算された容量の再構成コラゲナーゼHAおよびBPプロテアーゼを低グルコースDMEM(VitaCyte)に添加する。消化溶液は、酵素の再構成の2時間以内に用いなければならない。
【0124】
[消化培地容量:]
XXmg×20mL消化培地
200mgの組織
【0125】
[培地への添加:]
6.6μl/mLのコラゲナーゼHA×調製される培地の容量=コラゲナーゼHAの容量
・コラゲナーゼHAは、滅菌バイアル内で、20mLの冷diHO中に再構成されるべきであり、1年間保管され得る。
6.4μl/mLのBPプロテアーゼ×調製される培地の容量=BPプロテアーゼの容量
・BPプロテアーゼは、滅菌バイアル内で、2mLの冷diHO中に再構築されるべきであり、2年間保管され得る。
【0126】
DPBS洗浄溶液:適切な容量の10mg/mLゲンタマイシンを、適切にラベルが付けられた滅菌コンテナー内でDPBSへ添加して、5μg/mLゲンタマイシンの最終濃度を得る。溶液を渦状に回して十分な混合を確実にする。DPBS洗浄溶液は、調製後17日まで用いてよい。
【0127】
抗生洗浄溶液:適切な容量のアミカシン(20mg/mL最終濃度)、アンホテリシンB(1μg/mL最終濃度)、ゲンタマイシン(5μg/mL最終濃度)、およびバンコマイシン(5mg/mL最終濃度)を、適切にラベルが付けられた滅菌コンテナー内でDPBSへ添加する。溶液を渦状に回して混合を確実にする。抗生洗浄溶液は、調製した同日に用いられるべきである。
【0128】
消化中和溶液:高グルコースDMEMおよびウシ胎児血清(FBS)を合わせて、10%FBSの最終濃度を得る。滅菌濾過して、適切にラベルを付ける。溶液を渦状に回して混合を確実にする。
【0129】
消化中和容量:用いられる消化中和培地の容量は、組織生物試料を消化するために用いられる消化溶液の容量と同じ容量であるべきである。
【0130】
Heprasil:DiHOを0.1%w/v Irgacureと合わせることにより、UV光開始剤のストック溶液を作製する。コニカルをスズ箔で覆って、37℃の室内に30分間、200rpmのシェイカープレート上に置く。Heprasilバイアルから箔キャップカバーを取り除き、1mLのストックUV光開始剤を添加する。バイアルを覆って37℃のインキュベーター内に45分間置く。
【0131】
メタクリレート化コラーゲン-I:メタクリレート化コラーゲン-Iボトルから箔キャップカバーを取り除く。16.8mLの製造元によって提供された酢酸をボトルに添加して、6mg/mLの濃度を得る。ボトルを4℃の冷蔵庫内に保管して、各実験のために適切な容量を取り出した。
【0132】
[ツールおよび供給準備]
PDMSによってコーティングされたプレート:エラストマー硬化剤をエラストマーベースと重量によって1:10の比で合わせる。スターラーを用いて3~5分間よく混ぜる。スターラーを用いて、PDMSの薄い層を48または24ウェルプレートの各ウェルに細雨状に注ぐ(drizzle)。プレートをやさしくロックして、各ウェルの底を完全に覆う。プレートを真空内に20分間置く。真空から取り出して、最低2時間、80℃内に置く。硬化した時点で、培養物との使用の前に、最低20分間、プレートをBSC内でUV光の下に置く。
【0133】
ピンセット:コニカル内の組織に用いるためのピンセットを、70%EtOHで最低30分間またはオートクレーブによって滅菌する。
【0134】
1.5mLエッペンドルフチューブ:オートクレーブ安全バッグ内にチューブを置いてシールして、オートクレーブテープをバッグ上に置く。オートクレーブを行ない、もっぱら組織処理のために用いる。
【0135】
[細胞処理]
細胞の分離:生検組織をBSC内に移して、調製された抗生洗浄溶液内で5分間、3回洗浄する(それぞれ、調製された殺菌溶液内で5分間ずつ3回の洗浄を後に行なう)。組織が洗浄されている間に、組織消化溶液のための消化酵素を再構成する。洗浄後に、組織を適切なサイズの組織培養皿へ移して、メスを用いて細かい断片に切り刻む。切り刻まれた時点で、調製された消化溶液内に組織を移して、暖かい室内でシェイカーテーブルセット上に200rpmで15分間置く。消化後、適切な容量の中和溶液を消化された組織へ添加して、穏やかにピペッティングして混合する。リンパ節については、100μmの遠心分離インサートを用いて手作業で細胞を分離する。細胞懸濁液を100μmのSteriFlip濾過ユニットへ移して、真空濾過する。通過画分を300xgで5分間、遠心分離する。上清をコニカルから除去して、細胞を1mLのDMEM-10中に再懸濁してカウントする。
【0136】
オルガノイドの調製:Heprasilを再構成して、37℃のインキュベーター内で、コラーゲンと合わせるまで保持する。メタクリレート化コラーゲン-Iをコニカル内に入れて、氷上に保持しながら製造元の中和溶液を1mLのメタクリレート化コラーゲン-Iあたり85μLで用いて中和させる。Heprasilをメタクリレート化コラーゲンと1:3の比で合わせて、必要とされるオルガノイドの数に関して計算された必要な容量を生産する。混合物を、泡が入らないようにして合わせて、氷上で45分間放置する。45分待っている間、各組織タイプの細胞をカウントして(腫瘍、リンパ節、肝臓)、計算に基づいて1.5mLエッペンドルフチューブ内にアリコートを作製する。腫瘍のみ、腫瘍およびリンパ節、および、肝臓のみのオルガノイドが作製されるべきである。腫瘍および肝臓のみのオルガノイドは、1mLあたり1000万細胞を含むべきであり、各オルガノイドは10μLである。リンパ節細胞を含む腫瘍は、1mLあたり1000万細胞の腫瘍細胞および1mLあたり500万細胞のリンパ節細胞を含むべきである。アリコートを含むエッペンドルフチューブは、500xgで3分間、遠心分離されるべきである。上清はチューブから除去されるべきであり、適切な容量のHeprasil/メタクリレート化コラーゲン-Iがそれぞれに添加されるべきである。再懸濁細胞はそれから、ウェルプレートのPDMSによってコーティングされたウェルそれぞれにピペッティングされる。それぞれのオルガノイドを、UV光を用いてそれぞれ3秒間架橋する。48ウェルにそれぞれ0.5mLとして、または24ウェルにそれぞれ1mLとしてDMEM-10培地を添加して、インキュベートする。
【0137】
添加のための白血球の調製:血液のバイアルは、処理されるのが可能になるまで室温で維持するべきである。調製の前に、もし既にしていたとしてもバイアルを穏やかに反転させて血液を混合させるので、もはや分離しない。15mLコニカルを用いて3.5mLのFicoll-Paque PLUSを添加して、それから血液をFicoll層の上に注意深く重ねて、Ficollと血液が混合しないようにする。15mLコニカルを、設定個別化を可能にする巨大遠心分離機内に置く。設定は以下のとおりであるべきである:開始速度-9、ブレーク速度(Break Speed)-1、温度-20°C、時間-40分、速度-400xg。遠心分離が完了したら、分離された層の混合または振動を避けてコニカルを取り出す。ピペットを用いて、完全な第2の分離層を取り出して、新しい15mLコニカル内に入れる。3mLのDMEM-10をコニカルに添加して、400xgで5分間遠心分離する。上清を除去して、1mLのDMEM-10で細胞を再懸濁させて、細胞をカウントする。いくつのウェルが25,000細胞/ウェルを受け入れることができるか計算する。
【0138】
[薬物のスクリーニングおよび分析]
実験プラン&白血球(WBC)を含むウェルの判定:腫瘍およびリンパ節細胞、ならびに腫瘍のみの細胞を含む、いくつのオルガノイドが作られたかを判定する。これらのオルガノイドのタイプのそれぞれに関して、5個ずつに分けて(divide by 5)、いくつの薬物条件を行なうことができるか判定する。
【0139】
免疫療法薬の選択:リンパ節またはWBCが培養物中に存在する場合は、免疫療法は、n=5ウェル/条件に施されるべきである。用量依存性および時間依存性は、用量依存性を優先して考えるべきである。免疫療法の前の治療が施された場合は、その薬物治療および少なくとも1つの他の免疫療法を使用する。リンパ節を用いておよび用いずに、ならびに、WBCを用いておよび用いずに施される。MTSアッセイにはn=3ウェルを使用し、組織学にはn=2ウェルを使用する。時間依存性を試験しないならば、4日間培地を交換せずに行なう。
【0140】
標準的な化学療法の薬物選択:腫瘍のみのオルガノイドに対して、がん起源および以前の患者治療に基づいて、標準的な化学療法の治療を選択する。用量依存性および時間依存性は、用量依存性を優先して考えるべきである。化学療法の前の治療が施された場合は、その薬物治療および少なくとも1つの他の化学療法を使用する。MTSアッセイにはn=3ウェルを使用し、組織学にはn=2ウェルを使用する。時間依存性を試験しないならば、4日間培地を交換せずに行なう。
【0141】
MTSアッセイ:製造元によって提供されるとおりに溶液の調製のためのMTSアッセイの説明に従って、FBSを含まない高グルコースDMEMを希釈に用いる。各ウェルから培地を取り除いて、200μLのMTSアッセイ希釈溶液で置き換えて、3個の空の無細胞ウェルに対してこれを行ない、コントロールとして同様に用いる。プレートを元のインキュベーター内に2時間置く。100μLの溶液を各ウェルから取り除き、清潔な96ウェルの平底プレートの個々のウェルの中に入れる。プレートリーダを用いて、490nmでウェルの吸光度を読み取る。
【0142】
パラフィン処理および切片化:オルガノイドは、パラフィン処理して、1スライドあたり4切片で5μmの厚い層に切片化すべきである。
【0143】
H&EおよびIHC切片染色:H&Eは、オルガノイドの細胞充実性を確実にするために、それぞれの条件の1つのスライドに対して行なわれるべきである。IHCは、細胞充実性が明らかである場合に追加で行なわれるべきである。IHCの選択は、がん細胞のタイプに基づいて、および、リンパ節または血液も培地中に用いられた場合に、判定されるべきである。
【0144】
[実施例6-免疫細胞活性化および腫瘍細胞死滅化の分析のための、PTOの使用。]
腫瘍生物試料の処理。黒色腫生物試料は、IRBプロトコルの下で得られ、このプロジェクトの両研究者はそのメンバーであり、この提案に記載されるデータはその下で作成された。それぞれの新鮮な生物試料は、クリニック/手術室内で分離されて、滅菌コニカル中のRPMI培地内に入れられて、処理のために研究室へ直ちに移される。生物試料は、細かく切り刻まれて、洗浄されて、そしてコラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼとともにインキュベートされてECMの主な構造上の構成要素を消化する。一部は組織学のために保存される。オルガノイドは、ヒアルロン酸、ゼラチン、およびPEG架橋剤を含むヒドロゲル内に形成される。
【0145】
TOC PTOアレイの設計。はじめに、図3に示されるように、それぞれの個々のオルガノイドチャネル/チャンバー内にバイオファブリケートされたPTOを含む同一のマイクロ流体デバイス構造が用いられる。PTOチャネルは一緒にデイジーチェーン接続されるので、T細胞が灌流される単一経路に全てのPTOが存在し(図11A)、したがって、循環中のT細胞による腫瘍抗原に対する暴露を最大にする。しかしながら、小さな活性化または細胞死滅化が観察されるならば、我々は単一のより大きなチャンバー内(図11B)、または多数の平行チャネル内に、より大きな数のPTOを光パターニングすることによって、TOCあたりのPTO数を著しく増大させて、システム流体容量を減少させる。
【0146】
培養後の組織学的分析。7日目に、各構築物を生存/死滅染色して、共焦点顕微鏡および偏りのないセグメント化(unbiased segmentation)によって試験して、全ての細胞の生存能力を判定する。このすぐ後に、サンプルをフォトブリーチして生存/死滅蛍光を除去して、それから連続して、一連の蛍光抗体(PNL2、HMB45、melan-A、CD4+、CD8+、PDL1、PD1、CD80/CD86、CTLA-4)を用いて標識化および撮像して、黒色腫細胞および免疫細胞サブタイプの位置を独立に判定する。連続的な標識化/撮像サイクルの数を制限するために、我々は、いくつかのスペクトル的に分離されたタグをグループにして、マルチスペクトルイメージングを行なう。
【0147】
免疫細胞の灌流/活性化。我々は、リンパ節生物試料由来のソーティングされていない免疫細胞を試験し、そのことは、Tリンパ球に関するFACSソーティングよりも時間とコストを節約する。さらに、このことは、節由来の細胞の異種性を保ち、いくつかの集団がその役割を果たす。第1のいくつかの生物試料セットは、どれくらいの多さのPTOがT細胞活性化を誘導するのに必要か、十分な活性化を達成するために免疫細胞はどれくらいの時間これらのTOC内を循環しなければならないか、および、免疫チェックポイント阻害剤が必要であるかどうかを判定するために用いられる。これらの因子は、T細胞の状態に関する以下の方法およびメトリクスを利用して判定される:T細胞の機能が備わっている(onboard)TOCの評価として、インビトロでのIFN-γ生産は、抗CD3+抗CD28抗体(BD)に応答して判定され、および、黒色腫抗原、gp100、MART-1、およびチロシナーゼに対応する市販の(Proimmune Inc)ペプチドプールに応答して判定される。条件は96時間維持される。IFN-γ生産は、ELISA(R&D Systems)によって評価される。T細胞の増殖は、サイトカインIFN-γ、IL-2およびTNFαを測定して、CFSEフローアッセイによって測定される。非酵素的ECM溶解または代替的にコラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼによってTOCから回収されたオルガノイド細胞の懸濁液は、フローサイトメトリーによって分析される。細胞は、CD3+、CD8+、およびCD4+でゲートされて、CTLA-4、TIM-3、LAG3、PD-1、およびCD160の表面マーカー発現を判定し、それらはT細胞「枯渇様(exhausted-like)」表現型と関連する。実験の他のセットでは、オルガノイドは固定されて、CD3+、CD4+、およびCD8+T細胞の蛍光染色と一緒に抗-PDL-1によって染色されて、上述のように腫瘍細胞に関するT細胞の相互作用および局在を評価する。切片は、inForm分析ソフトウェアを用いた定量的病理学によるマルチスペクトルイメージングを用いて評価される。
【0148】
潜在的な免疫チェックポイント阻害剤の治療。必要ならば、我々は、4つの条件:清潔な培地、臨床的に関連のある濃度のペンブロリズマブ、ニボルマブ、またはイピリムマブを含む培地のうちの1つの間欠流にTOCを暴露する。これらの2つの幅広く用いられるPD-1阻害剤および1つの幅広く用いられるCTLA-4阻害剤の濃度は、臨床治療ガイドラインから得られ、PTOの容量に合わせて調整される。現在のところ、約100nMの濃度が用いられていて、それらが免疫細胞を活性化してユーザーの意図的な腫瘍細胞の死滅化を引き起こさない限り、PTOに対してネガティブに作用しないと考えられる。
【0149】
我々は、マイクロ流体デバイス内部のPTOを確立する。構築物の形成において、我々のゴールは、インビボの腫瘍状態からの遺伝子変異を避けるために、継代培養されていない患者細胞を用いることである。しかしながら、任意の特定の理論に拘束されることを望まないが、このことは、取り込みに利用可能な細胞の数を本質的に制限し得る。予備研究において我々が処理したサンプルの大部分は、提案されたPTOに十分な細胞よりも多くを提供したが、我々は、同一生検に関して挑戦される2000万細胞/mLの標的細胞密度の達成をさらに見いだすことが可能である。そうならば、我々は、最初にマイクロ流体チャンバーの全体的な寸法を減少させて、最初に導入されるべき細胞含有前駆体の容量を最小限にして、全体的なPTO表面積を増大させながら細胞培養構築物の寸法をさらに減少させるためのアプローチを探求する。具体的には、我々は、精密なフォトマスク(石英上のクロム)と、より薄いガラススライドとの組み合わせを用いて、分解能を制限する光学的効果を減少させることができる。これらの方法において、我々は、100μm未満の構築物を得ることを予期する。我々は、少ない継代数へと拡張して(expand to low passage numbers)、それにより、遺伝的浮動を最小にすることを期待しながら細胞のアベイラビリティを増大することもできる。
【0150】
PTOに対する細胞療法として用いられる、教育および活性化されたT細胞の有用性の論証。節由来細胞は、「活性化」マイクロ流体デバイスから、細胞療法を介した細胞死滅化および適応免疫を試験するための活性化実験において用いられなかったTOCデバイスへ移される。免疫細胞の灌流に以前に暴露されていないPTOは、対応する(matched)PTO TOCアレイを通した灌流によって活性化された免疫細胞集団を用いて成功的に治療され得ると考えられる。
【0151】
免疫細胞の移行。T細胞活性化が確認された場合、プライミングのために循環されている免疫細胞懸濁液は、清潔な流体リザーバーに送り込まれて、そして、薬物または免疫細胞暴露なしで管理されている同一患者生物試料から、新鮮なPTO TOCへ移される(図11C)。これらの免疫細胞集団は10μL/分でTOCを通して注入されて、PTOの認識の際に生着(engraftment)を可能にする。
【0152】
ホーミングの評価。TOCへの注入の前に、免疫細胞集団は、膜色素(DiI/DiO、ThermoFisher)を用いて蛍光標識される。日常的な蛍光イメージングは、PTOに対するDiI/DiOタグ化細胞の運動性および相対的位置、ならびに、PTOへの生着および浸潤をトラッキングする。我々は、オルガノイドのコンテキストにおけるそのようなトラッキング方法の有効性を我々のオンチップ転移プラットフォームにおいて以前に示し、マイクロ流体プラットフォームを通した消化管から下流肝臓オルガノイドへの転移結腸直腸がん細胞株の転移を定量化するために同様の方法を使用した。
【0153】
治療的有効性の評価。腫瘍細胞の死滅化および最近接定量化が行われる。一定または間欠流を用いて各オルガノイドを3、7、または10日間サポートし、パーフォリンおよびグランザイムB(T細胞活性化を示す分泌マーカー)、ならびにIL-2(T細胞増殖および分化因子)のELISA分析、およびATP活性のために、培地のアリコートを毎日集める。3、7、および10日目に、構築物を生存/死滅染色して、共焦点顕微鏡および画像セグメンテーションによって検査して、全ての細胞の生存能力を判定する。このすぐ後に、サンプルをフォトブリーチして生存/死滅蛍光を除去して、それから連続して、マルチスペクトルイメージングを用いて蛍光抗体で標識および撮像して、黒色腫細胞および別個の免疫細胞サブタイプの相対的位置を判定する。我々は、細胞療法のためにPTOをさらにプライミングするために、チェックポイント阻害剤のさらなる使用を探求することができ、それが実行可能であることを予備試験データは示している。
【0154】
我々は、免疫チェックポイント阻害剤の有効性を、PTOの低および高PD-L1およびCD80/86発現のコホートの間で比較する。黒色腫における高PD-L1およびCD80/86発現に関する文献値は異なるが、黒色腫サブタイプによって典型的におよそ30~60%の出現率(prevalence)を示唆する。実験は三重またはそれよりも多く行われて;データは平均±平均の標準誤差として表される。スチューデントのt検定が、2つのグループの比較にα=0.05で用いられる。一元配置分散分析が、95%の信頼限界を有意と考えて多重比較に関して用いられる。
【0155】
[実施例7-個別化された免疫療法スクリーニングのための同一の患者由来の組み合わせリンパ節/腫瘍オルガノイドの設計。]
組み合わせリンパ節/黒色腫オルガノイドを、同一患者由来の細胞を用いて調製して、それにより、混合腫瘍/節オルガノイドを作製して、患者の腫瘍、間質および免疫系が、個別化された免疫療法のスクリーニングのために生存能力を維持するかどうか評価するために実験を行なった。混合オルガノイドは、個々の患者の腫瘍および間質および免疫系が、個別化された免疫療法のスクリーニングのために生存能力を維持するのを可能にし、患者自身のリンパ節/腫瘍共生オルガノイドに組み込まれたAPCの表面上に提示された腫瘍抗原を患者の末梢血T細胞が認識するトレーニングを介して適応免疫の創出を可能にした。
【0156】
方法:同一患者から外科的に得られた、対応する(matched)黒色腫およびリンパ節生物試料を実験室に移して、生理食塩水、抗生物質、および赤血球溶解バッファーで洗浄した。生物試料を分離して、ECM系のヒドロゲルシステムに取り込み、3Dの患者特異的な混合黒色腫/節オルガノイド内にバイオファブリケートした。細胞は、間質および免疫細胞構成要素を含む腫瘍異種性を保つために、腫瘍に関してソーティングされなかった。オルガノイドのセットを、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、イピリムマブ、およびダブラフェニブ(dafrafenib)/トラメチニブを用いて、並行して72時間スクリーニングした。代謝アッセイおよび生存/死滅染色の定量化は、特定の患者に関して黒色腫細胞を死滅化させる相対的な薬物有効性を記録した。光学顕微鏡、IHCおよび次世代シーケンシング(NGS)を用いて、オルガノイド黒色腫細胞と腫瘍黒色腫細胞を比較した。
【0157】
結果:5人のステージIIIおよびステージIVの黒色腫患者由来の生物試料を混合オルガノイドの開発に用いた。生存能力のあるオルガノイドのセットの成功的な確立の割合(すなわち、生着率)は、80%(4/5)であった。オルガノイド開発から免疫療法試験の開始までの平均時間は7日であった。免疫療法に対するオルガノイド応答は、3/4の患者において患者臨床応答と似ていた。4番目の患者のオルガノイドは、ニボルマブによる50%の黒色腫死滅化を示したが、その患者は薬物に対して臨床的に進行した。MEK経路を持つ黒色腫を有するBRAFワイルドの患者に関してトラメチニブに対する応答が、NGSの前にオルガノイド試験によって示唆されて、治療時の臨床応答によって確認された。
【0158】
結論:3Dの混合された免疫増強腫瘍/節オルガノイドの開発は、実行可能なプラットフォームであり、個別化された免疫療法応答の研究および適応免疫の創出のために、個々の患者の免疫系および腫瘍細胞が生存能力を維持するのを可能にする。
【0159】
リンパ節細胞によって免疫増強された黒色腫患者腫瘍オルガノイドを調製して、その後に、免疫チェックポイント阻害剤のような試験化合物を用いて試験した。免疫増強なしのオルガノイド(腫瘍のみオルガノイド)は応答しなかったが、腫瘍免疫オルガノイドは応答した(図14A~14C)。さらに、それぞれの患者に関する採血の白血球画分由来の免疫細胞によって免疫増強された黒色腫患者腫瘍オルガノイドを調製して、その後に、免疫チェックポイント阻害剤のような試験化合物を用いて試験した。免疫増強なしのオルガノイド(腫瘍のみオルガノイド)は応答しなかったが、腫瘍免疫オルガノイドは応答した(図15A~15B)。オルガノイドは、チオール化HA、チオール化ゼラチン、およびPEGDA架橋剤、または、チオール化HAおよびメタクリレート化コラーゲンを含むヒドロゲルを用いて、上記の実施例に記載のとおりに調製された。
【0160】
[実施例8]
それぞれの患者に関する採血の白血球画分由来の免疫細胞によって免疫増強された肉腫患者腫瘍オルガノイドを、血管肉腫患者(図16A)および隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)患者(図16B)から調製して、その後に、免疫チェックポイント阻害剤のような試験化合物を用いて試験した。免疫増強なしのオルガノイド(腫瘍のみオルガノイド)は応答しなかったが、腫瘍免疫オルガノイドは応答した。オルガノイドは、チオール化HA、チオール化ゼラチン、およびPEGDA架橋剤、または、チオール化HAおよびメタクリレート化コラーゲンを含むヒドロゲルを用いて、上記の実施例に記載のとおりに調製された。
【0161】
[実施例9]
患者自身の末梢T細胞を、循環内に、腫瘍免疫オルガノイドに7日間暴露させた培地とともに提供した(図11D)。これらの暴露されたT細胞を回収して、それから、同一患者の腫瘍生物試料由来の腫瘍オルガノイド(患者由来の免疫細胞とともに形成されたものでなく、または、T細胞に暴露されたものでない)へ移し、T細胞によって仲介される腫瘍の死滅化が観察された(死滅細胞に対する生存能力細胞の視覚的な染色によって示される)(図11E)。オルガノイドは、チオール化HA、チオール化ゼラチン、およびPEGDA架橋剤、または、チオール化HAおよびメタクリレート化コラーゲンを含むヒドロゲルを用いて、上記の実施例に記載のとおりに調製された。
【0162】
前述のものは本発明を例示するものであり、それを限定するものと解釈されるべきでない。本発明は以下の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲の均等物がそれに含まれる。本明細書中で引用した全ての刊行物、特許出願、特許、特許公開、および他の参考文献は、参考文献が示されている文章および/または段落に関連する教示のために、それら全体で参照により援用される。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B-4C】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A-B】
図11C
図11D
図11E
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図16A
図16B
【手続補正書】
【提出日】2023-07-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生きた腫瘍細胞および少なくとも1つのタイプの生きた免疫細胞、を含むインビトロ細胞構築物であって、
前記生きた腫瘍細胞は対象の腫瘍から集められ、および/または、得られ、前記少なくとも1つのタイプの生きた免疫細胞は前記の同じ対象から集められ、および/または、得られる
構築物。
【請求項2】
請求項1の構築物であって、
前記少なくとも1つのタイプの生きた免疫細胞は、前記対象の末梢血から集められ、および/または、得られる、
構築物。
【請求項3】
請求項1の構築物であって、
前記の少なくとも1つのタイプの生きた免疫細胞は、対象内のリンパ節、および/または、骨髄から集められ、および/または、得られる、
構築物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項の構築物であって、
前記少なくとも1つのタイプの生きた免疫細胞は、前記対象のリンパ節、および/または、前記対象の骨髄から集められ、および/または、得られる追加の生きた免疫細胞をさらに含む、
構築物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項の構築物であって、
前記の少なくとも1つのタイプの生きた免疫細胞は、濾胞樹状リンパ細胞、線維芽細網リンパ細胞、白血球、B細胞、T細胞、任意の骨髄細胞、および/または任意のリンパ系起源細胞である、
構築物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項の構築物であって、
白血球をさらに含む、
構築物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項の構築物であって、
前記の生きた腫瘍細胞および前記の少なくとも1つのタイプの生きた免疫細胞は、1:1~100:1(腫瘍細胞:免疫細胞)の比で前記構築物内に存在する、
構築物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項の構築物であって、
良性細胞をさらに含む、
構築物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項の構築物であって、
前記の腫瘍細胞および/または前記の少なくとも1つのタイプの生きた免疫細胞は、検出可能な化合物を含む、
構築物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項の構築物であって、
前記構築物は、少なくとも1週間、培地中で培養される、
構築物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項の構築物であって、
前記の腫瘍細胞、前記の少なくとも1つのタイプの生きた免疫細胞、および/または前記の良性細胞は、少なくとも50%の生着率を有する方法を用いて調製される、
構築物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項の構築物であって、
前記構築物は、培養の2週において、前記構築物内の細胞平均数に基づいて少なくとも75%の生きた細胞を含む、
構築物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項の構築物であって、
ヒドロゲルをさらに含む、
構築物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項の構築物であって、
前記構築物は、100万~500万、1000万、2500万、5000万、7000万、または1億個の細胞の範囲での細胞合計数を有する、
構築物。
【請求項15】
免疫活性および/または免疫系の調節に関して、目的化合物をインビトロでスクリーニングする方法であって、
請求項1~14のいずれか一項の構築物を提供するステップ;
前記の目的化合物を前記構築物にインビトロで接触させるステップ;そして、
前記の目的化合物を前記構築物にインビトロで接触させるステップに応じて、前記構築物の免疫応答を判定するステップ、
を含む、
方法。
【請求項16】
抗腫瘍活性に関して、目的化合物をインビトロでスクリーニングする方法であって、
請求項1~14のいずれか一項の構築物を提供するステップ;
前記の目的化合物を前記構築物にインビトロで接触させるステップ;そして、
前記の目的化合物を前記構築物にインビトロで接触させるステップに応じて、前記の目的化合物の抗腫瘍活性を示す、生きた腫瘍細胞の増殖を判定するステップ、
を含む、
方法。
【請求項17】
免疫活性、免疫系の調節、抗転移活性、および/または抗腫瘍活性に関して、目的化合物をインビトロでスクリーニングする方法であって、
請求項1~14のいずれか一項の構築物および生きた腫瘍細胞オルガノイドを含むデバイスを提供するステップ;
前記構築物および前記の生きた腫瘍細胞オルガノイドを増殖培地と接触させるステップ;
目的化合物を前記構築物および/または前記の生きた腫瘍細胞オルガノイドに接触させるステップ;および
前記の目的化合物を前記構築物および/または前記の生きた腫瘍細胞オルガノイドに接触させるステップに応じて、前記の生きた腫瘍細胞の増殖を判定するステップ、ここで、前記の生きた腫瘍細胞の増殖における低減は、前記の目的化合物の抗腫瘍活性を示す、および/または、前記免疫細胞オルガノイドおよび/または前記の生きた腫瘍細胞オルガノイドの免疫応答を判定するステップ
を含む、
方法。
【請求項18】
免疫細胞をエクスビボで活性化する方法であって、
前記方法は、
免疫細胞を複数の生きた腫瘍細胞を含む生きた腫瘍細胞オルガノイドに接触させて、活性化された免疫細胞を提供するステップ;
前記の活性化された免疫細胞を前記の生きた腫瘍細胞オルガノイドから分離して、分離された活性化された免疫細胞を提供するステップ;および
前記の分離された活性化された免疫細胞を増殖させて、活性化された免疫細胞の集団を提供するステップ
を含む、
方法。
【請求項19】
請求項18の方法であって、
前記複数の生きた腫瘍細胞は対象の腫瘍から集められ、および/または、得られ、前記免疫細胞は前記の同じ対象から集められ、および/または、得られる、
方法。
【請求項20】
請求項18または19の方法であって、
前記免疫細胞は前記対象の末梢血から集められ、および/または、得られる、
方法。
【請求項21】
請求項18または19の方法であって、
前記生きた腫瘍細胞オルガノイドは、複数の免疫細胞をさらに含む、
方法。
【請求項22】
請求項18~21のいずれかの方法であって、
前記生きた腫瘍細胞オルガノイドが、請求項1~14のいずれかのオルガノイドである、
方法。
【請求項23】
請求項18~22のいずれかの方法によって調製される、活性化された免疫細胞。
【請求項24】
対象における免疫チェックポイント阻害剤の有効性を判定する方法において用いるための、生きた腫瘍細胞および少なくとも1つのタイプの生きた免疫細胞を含むインビトロ細胞構築物であって、
前記生きた腫瘍細胞は対象の腫瘍から集められ、および/または、得られ、前記少なくとも1つのタイプの生きた免疫細胞は前記の同じ対象から集められ、および/または、得られ、
ここで、前記方法は、
前記免疫チェックポイント阻害剤を前記構築物にインビトロで接触させるステップ;そして、
前記免疫チェックポイント阻害剤を前記構築物にインビトロで接触させるステップに応じて、前記の生きた腫瘍細胞の増殖を判定するステップ、ここで、前記の生きた腫瘍細胞の増殖における低減は、前記対象における前記免疫チェックポイント阻害剤の有効性を示す;
を含む、
構築物。
【外国語明細書】